大規模造成工事における、濁水処理対策への取り組みについて · 2019. 6....
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大規模造成工事における、濁水処理対策への取り組みについて 三井住友・日本国土・須藤特定建設工事共同企業体
上杉 仁志
1. はじめに
本事業は、愛知県企業庁が事業者となり、トヨタ自動車
の新研究開発施設用地の造成を行うものである。
事業区域は、旧下山村周辺の豊田市と岡崎市にまたが
る標高 350m~550m位の緩やかな山林に位置し、その周
辺には郡界川、保久川及びその支流が流れている。川沿
いには水田や集落が分布し、森林・谷津田で構成された里
山景観が形成されている。
用地造成工事は、工事区域の地形および土地利用から
東・中・西工区の3工区に分けて工事を実施する。
このうち西工区は、将来的に研究施設の実験棟、管理棟
等の施設用地となる箇所の宅盤造成を行うものである。
全体の改変面積約 266.4haのうち、西工区での改変面積
は約 40.3ha(15%)となる。
2. 工事概要(西工区)
・切盛土工量:190 万m3 ・造成法面:盛土部 47 千m2、切土部 49 千m2
・調整池:4箇所 ・橋梁:3 橋(東西連絡 1 号橋 146m、市道横断橋 33m、市道 B 橋 30m)
西工区
東工区
中工区
西工区
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3. 工事中防災を行う上での問題点と対策
本工事は大規模な宅盤造成工事であり、工事の手順としては、 防災工事 ⇒ 調整池工事 ⇒
本体土工事 の流れで計画を行い、その都度、土砂流出防止対策として、仮設調整池、仮設沈砂池
等を整備しながら施工を進める。この防災工事を計画する上で、当工事の現場地形に起因した問題点
とその対策方法について以下に示す。
問題点
① 主な盛土ヤードとなる約 16ha の排水勾配が当初(着手時)は K3 調整池側へ流れ、完成時は K2 調整
池側へ流れる。
② 盛土ヤードのうち K3 調整池への分担面積は約 4ha であり、施工時は不足分を補う追加の大型仮設調
整池が必要となる。
③ 計画されている仮設調整池 K3-1-1 は長大盛土法面の位置となっており、盛土の弱点となるばかりでな
く、後工程への影響が懸念される。
当初(着手時) 完成時
そこで、施工ステップ毎に、改変範囲に見合う堆砂容量を確保できる仮設調整池、仮設沈砂池を確
保しながら、工事中の濁水流出防止対策を行った。ポイントとしては
① 当初はK3調整池も沈砂池として考慮し、流末の濁水処理施設と合わせて、多段式での濁水流出
防止対策を行った。
② 極力早期に K2 調整池側へ導水ができるよう K2 側の盛土および導水経路の確保を行った。
③ K3-1-1 は施工位置と深さを変更し、盛土工事への影響を最小限にできるよう施工時期よって規模
を変化できるようにした。
以下に施工 STEP 毎の計画を示す。
STEP1 当初施工時の K3 調整池への導水の確保と濁水プラントを併用した濁度低減対策の実施
16ha 12ha
4ha
K3 調整池 K3 調整池 K2 調整池 K2 調整池
仮設調整池 K3-1-1
排水経路
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STEP2 仮調整池 K3-1-1 の設置 STEP3 K2 調整池への早期導水
(改変範囲を限定し、後施工に支障のない位置に変更)
STEP4 盛土の施工段階に合わせた仮沈砂池の設置 STEP5 盛土全面展開時
(仮沈砂池、集水桝) (盛土完成後、素掘側溝、仮沈砂池)
現在の施工状況(STEP4~STEP5)
盛土ヤード西側:K3 側 盛土ヤード東側:K2 側
K3 調整池 濁水プラント(K3 調整池) K3 濁水処理施設
仮設調整池 K3-1-1 仮設調整池 K2-1 K2 調整池
導水経路
導水経路
導水経路
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4. 工事中の仮設防災・汚濁防止への取り組み
工事中に実施した防災対策を以下に示す。
5.施工後を踏まえた汚濁防止対策
6. おわりに
工事着工後約 2 年近くたち、当工事も折り返し地点を過ぎたところである。切盛土工事は現在最
盛期となり、これから迎える梅雨、台風シーズンさらに、近年増えてきたゲリラ豪雨への対応につい
て、矢作川環境技術研究会の皆さまからのご指導、ご助言を参考に、濁水の発生抑制、流出防止
および周辺環境に留意した施工を心がけ、工事を進めていく所存であります。
仮設法面の養生
(チップ吹付、シート養生)
t
工事用道路入口部への
簡易舗装の実施
植生基材、チップ材吹付による法面保護 排水路脇の土砂止め対策(フィルターソックス)
仮設沈砂池の設置(竹粗朶、越流堰)
湿式タイヤ洗浄機の設置
盛土時の集水桝の設置(竪桝)
チップ吹付
シート養生
集水桝
(フィルターソックス土砂止め)