大学図書館における先進的な取り組みの実践例[Ⅰ.学 …...1 Ⅰ.学習支援...

10
. 学習支援

Upload: others

Post on 08-Feb-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 大学図書館における先進的な取り組みの実践例[Ⅰ.学 …...1 Ⅰ.学習支援 お茶の水女子大学は、学生数約3,000人の比較的小規模な大学です。小規模大学の「弱み」を「強み」

Ⅰ.学習支援

Page 2: 大学図書館における先進的な取り組みの実践例[Ⅰ.学 …...1 Ⅰ.学習支援 お茶の水女子大学は、学生数約3,000人の比較的小規模な大学です。小規模大学の「弱み」を「強み」

1

Ⅰ.学習支援❶

 お茶の水女子大学は、学生数約 3,000 人の比較的小規模な大学です。小規模大学の「弱み」を「強み」に変えるため、附属図書館では、学生や学内の様々な施設や組織と協働の取り組みを進めています。

 幅広い資料に接することで学生自身の学習意欲を高める「学習支援」効果と、サービスの受け手から提供者になることによる「キャリア形成支援」効果を目的とした LiSA プログラムは、2007 年 11 月の開始以来、現在までに延べ 210 名が参加しています。各人が半年間に約 50 時間の業務実施計画を立て、図書館が提示する業務に携わります。資料に直接触れる業務を中心に多様な選択肢を提示し、職員が指導助言を行ったり講習会を開催したりすることにより、カウンター業務から選書・受入・修理・除却に至るまで、ほぼ全ての図書館業務に参画することができます。ポップの作成、企画展示など、LiSA が自ら発案し、実施する企画も増えています。 また、ラーニング・コモンズと、交流や共同学習のためのスペースであるキャリアカフェは、図書館と様々な学内施設・組織が協働する場となっています。ラーニング・コモンズに設置された 70 台のパソコンの管理、ラーニングアドバイザーとして常駐する TA の派遣については、情報基盤センターの全面的な協力を得ています。キャリアカフェでは、キャリア支援センターによる「エントリーシート書き方講座」やグローバル教育センターの「出張留学相談」が定期的に実施されています。学園祭での学生による受験生相談会、東日本大震災のボランティア報告会など、学生主体のイベントにも活用されます。

 LiSA プログラムを通じ、図書館に対する学生の率直な意見が聞けるようになったことは、職員の意識変革とサービス向上に役立っており、LiSA 経験者から、国立大学法人の図書館に就職する者が現れていることも成果の一つと言えるでしょう。 また、日常的に多くの学生が集まる図書館が「場」を提供することで、各施設・組織による効果的な学生支援が実現されています。学生は「ICT」、「就職相談」、「留学相談」など多様なサービスをワンストップで利用することができ、図書館は新たな利用者を呼び込むことができるなど、三者三様のメリットが生まれています。 さらに、職員にとっては、大学の中で孤立しない図書館の在り方を考える機会となっています。

 学内における図書館の認知度が高まるにつれ、図書館に対する期待は多様化、高度化してきました。今後の課題は、教員との連携を強めていくことと、学生が創意工夫を発揮する雰囲気を高めることにあります。そして、さらなる「図書館サービスと業務運営のイノベーション」を創出していきたいと考えています。

写真:LiSA 対象の図書修理講習会風景

図書館における学生・学内協働の取り組みお茶の水女子大学

目的・趣旨

実施内容

実施成果

今後の展開

Page 3: 大学図書館における先進的な取り組みの実践例[Ⅰ.学 …...1 Ⅰ.学習支援 お茶の水女子大学は、学生数約3,000人の比較的小規模な大学です。小規模大学の「弱み」を「強み」

Ⅰ.学習支援

2

静岡大学

Ⅰ.学習支援❷

 大学図書館の役割は大きく変化しており、電子ジャーナルに代表される「見えない図書館」として機能する一方、人々が集まる「場としての図書館」の機能強化が求められています。本取り組みは、図書館全体を一つの公園に見立て、利用者はそれぞれの目的にしたがって自由に図書館を使い、図書館全体を多様な人たちが集う場へと転換を図るものです。学生は学習・研究のサポートを受けながら、快適に図書館で過ごすことができます。 また、災害時に在館者を把握するための新たなシステムを導入するなど、長時間滞在する利用者のため、安全確保の観点からも見直しを進めました。

A.取り組みの内容(1)自動入退館管理システムの導入(平成 21 年 3 月)

入館時のみならず退館時にも認証することにより、在館者を常時把握し、災害時に在館者リストを出力し、初動に備えるシステムとしました。

(2)改修によるフロア構成の再構築(平成 22 年 3 月竣工)一般閲覧室に加え、ギャラリー、ハーベストルーム(ラーニング・コモンズ)、PC ワークエリア、セミナー室、個人ブースなど多用途のエリアを新設しました。

(3)学生、教員と連携した図書館スペース活用法の創出(平成 22 年 4 月〜)ギャラリーでの企画展や、ハーベストルームの活動を図書館職員がサポートしています。

B.体制・方法 学生、教員参加の意見交換会を実施するなど、利用者の意見を積極的に取り入れました。

(1)平成 22 年度の入館者数は 24 万人強。前年度に比べ約 37.5%増えました。(2)ハーベストルームでは自主ゼミや就職支援活動など、利用者の自発的で多様な活用が生まれていま

す。(3)ギャラリーでは平成 22 年度に 8 本の企画展が実施されました。研究成果や作品発表の場として定

着してきており、図書館が学生や教職員の活動・交流空間となるとともに、図書館職員との協働も広がっています。

 Learning Park を舞台に、学生の自発的な活動を支援し、学生参加型の図書館活動を進めることで、学習・研究活動の活性化に寄与します。 リニューアル前後に実施した利用者アンケート調査の分析を行い、サービスの質の向上を目指します。

目的・趣旨

実施内容

実施成果

今後の展開

Learning Park─安全確保と利用スペースの高活用による新たな学習支援の取り組み─

Page 4: 大学図書館における先進的な取り組みの実践例[Ⅰ.学 …...1 Ⅰ.学習支援 お茶の水女子大学は、学生数約3,000人の比較的小規模な大学です。小規模大学の「弱み」を「強み」

3

目的・趣旨

実施内容

実施成果

今後の展開

 これまで大学図書館は、個人が静かな環境で学習・研究できる場であることに重点を置いてきました。しかし、今日の学習ニーズや学習形態の変化に合わせて、学習や IT などへの支援が受けられ、グループでの議論や共同作業、発表ができる新しい学習空間が必要となっています。名古屋大学では、中央図書館の 2 階にラーニング・コモンズを設け、そのような学習支援を始めています。

 名古屋大学ラーニング・コモンズは、多様な学習を支援するグループ・ラーニング・エリア、多目的ラーニング・エリア、ライティング・サポート・エリア、AV エリアの 4 つのエリアで構成されています。 グループ・ラーニング・エリアは、議論や共同作業が効果的に行えるグループ学習空間として、オープンなスペースに移動可能な机や椅子、プロジェクター、ホワイトボードが使いやすく配置されています。 多目的ラーニング・エリアでは、PC と図書館資料を同時に利用できる広いデスクスペースを用意し、幅広い学習に対応します。 また、ライティング・サポート・エリアでは、論文作成に必要なソフトを搭載した PC を配置し、サポートスタッフの支援も受けながら作業できるワーキングデスクを設置しています。  これらのエリアを有効に活用してもらうために、総合サポートカウンターを設け、留学生を含む大学院生のサポートスタッフが、IT支援や図書館利用支援、学習内容に関する相談、論文作成に関する支援を行っています。留学生へは中国語、英語でのサポートも行っています。

 グループ・ラーニング・エリアでは、多くの学生グループによる可動式の机・椅子、ホワイトボードを利用した、学習や共同作業が熱心に行われ、多目的ラーニング・エリアでは、PC と図書館資料とを有効に活用した学習が行われるなど、それぞれのエリアの特性を生かした学習が積極的に展開されています。また、グループ・ラーニング・エリアのオープンなスペースを利用して、アカデミック・ライティングに関するワークショップが定期的に開催されるなど、ラーニング・コモンズは学習支援の場として活発に利用されています。ラーニング・コモンズは、これまであまり図書館を利用しなかった学生の足を図書館に向けさせ、その結果、中央図書館全体の入館者数も前年度比約 12 パーセント(約 9 万人)増加しました。

 ラーニング・コモンズを中心として、学生の教育や学習を支援する場としての役割を果たせるように、図書館情報リテラシー教育の充実や教員と連携したライティング等の支援、授業との連携を進めていく予定です。

名古屋大学

Ⅰ.学習支援❸

ラーニング・コモンズの4エリアを活用した学習支援の取り組み

Page 5: 大学図書館における先進的な取り組みの実践例[Ⅰ.学 …...1 Ⅰ.学習支援 お茶の水女子大学は、学生数約3,000人の比較的小規模な大学です。小規模大学の「弱み」を「強み」

Ⅰ.学習支援

4

目的・趣旨

実施内容

実施成果

今後の展開

 近年、大学教育は、ティーチング(知識の教授)からラーニング(主体的学習)を重視する流れにあります。大学図書館は、これまで専ら静粛を旨とする閲覧環境を提供してきましたが、大阪大学附属図書館は、大学の教育改革に即した多様な学習環境を提供し、学習・教育支援の新しい在り方を追求するため、平成 21 年度に新たな〈学びの場〉としてラーニング・コモンズを開設しました。

 ラーニング・コモンズは、平成 20 年度の耐震改修を契機に、附属図書館4館のうち総合図書館及び理工学図書館に開設しました。( 総合図書館 756㎡、94 席、理工学図書館 236㎡、40 席 ) ともに、開放的な空間に無線 LAN を備え、隣接した区画には書架が並び、図書資料と電子資料を統合的に利用できる環境を提供しています。また、机や椅子は利用者が自由にレイアウトでき、パソコンとプロジェクターを使ってのグループ討議やプレゼンテーションなど多様な学習スタイルに対応しています。 また、教員による少人数セミナー型授業や図書館職員と教員との協働によるライティング指導講習会などが実施され、教育の実践の場としても積極的に活用しています。 さらに、ティーチング・アシスタントとして大学院生を配置し、専門知識を活かした学習相談や利用指導、講習会の企画・実施や選書、パスファインダーの作成など、多様なアプローチで、人による学びのサポートにも力を入れています。

 ラーニング・コモンズは、授業期間中は常時学生たちで満席状態です。また、授業での利用や、ティーチング・アシスタントによる講習会などを展開することで、学内学生団体等によるイベント ( 映像コンテスト、English Café)にも活用されるなど、多様な利用者の交流の〈場〉としても機能してきました。なお、ラーニング・コモンズ開設後、図書館入館者や貸出数が急増しています。 平成 22 年度の利用状況(ラーニング・コモンズ開設前(平成 20 年度)との比較)  総合図書館  入館者数 37 %増の 750,622 名 貸出冊数 12 %増の 211,697 冊   理工学図書館 入館者数 68 %増の 259,595 名 貸出冊数 20 %増の 65,940 冊

 ラーニング・コモンズをさらに活用し、図書館に「学びの仕組み」を構築していくことを目指しています。さらに大学内の多様な構成員と協働し、学習支援に関する経験の蓄積を重ね、学術情報の提供・保存だけにとどまらない大学図書館の役割を追求していきたいと考えています。

ラーニング・コモンズを活用した新しい学習・教育支援の取り組み

大阪大学

Ⅰ.学習支援❹

Page 6: 大学図書館における先進的な取り組みの実践例[Ⅰ.学 …...1 Ⅰ.学習支援 お茶の水女子大学は、学生数約3,000人の比較的小規模な大学です。小規模大学の「弱み」を「強み」

5

実施内容

実施成果

今後の展開

 開学以来、図書館の 24 時間・365 日オープンを継続しています。全学生の約 8 割がキャンパス内に居住しており、学生寮及び学生アパートから徒歩 5 分圏内で、22 時以降は ID カードにより図書館棟入口の開錠・入館が可能です。スタッフはシフト制で出勤しており、カウンターサービスは 2004 年の開学当初は朝 7 時まで、利用者のニーズを鑑みながら、深夜 3 時、深夜 2 時の段階を経て、現在は月曜日から木曜日は深夜 0 時まで、利用の少ない金曜日から日曜日は 22 時までとしています。カウンターサービス終了後は、警備員が図書館棟に常駐し、深夜でも安心して利用できるようにしています。また、自動貸出機により深夜 3 時までの貸出が可能であり、全てのサービスについて、英語・日本語の二ヶ国語対応を基本としています。       開館時間

 授業の課題が多いこともあり、夕食後深夜まで利用する学生も多数います。平成 22 年度の夜間利用一日平均(午前 0 時〜午前 8 時)は 106 人でした。2 割近くの学生が毎日、深夜から早朝にかけて図書館を利用しており、本学の学生にとって必要不可欠な施設であることがうかがえます。

夜間の利用状況表 (午前0時から午前8時まで)

 国際教養大学図書館は、地域に根差した学術情報センターとしての役割を担うため、資料及び施設を広く一般に公開しています。幅広い利用者に対して、それぞれのニーズに合ったサービスの向上と長時間の学習に適した環境づくり、そして気楽に足を運んでいただける開かれた図書館を目指しています。

開館時間 カウンターサービス

学生・教職員 24 時間月〜木 8:45-0:00金 8:45-22:00

土・日・祝祭日 9:00-22:00

一般月〜金 9:00-22:00 

土・日・祝祭日 9:30-18:00開館時間と同じ

2010年度 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 平均

1日平均 98 90 140 159 55 174 77 138 142 58 72 64 106

目的・趣旨

学生・教職員への24時間365日開館、一般への平日夜10時までの開放国際教養大学

─いつでも学習できる場と資料を提供する取り組み─

Ⅰ.学習支援❺

 国際教養大学は、国際的に活躍できる人材を育成する世界水準の大学を目指し、「授業は全て英語で行う」「少人数で議論し合う教育システム」「新入生は外国人留学生とともに 1 年間の寮生活」「在学中に全員 1年間の海外留学を義務付ける」そして「24 時間オープンの図書館での学習・研究環境の提供」などユニークな教育方針を掲げ、2004 年 4 月に日本初の公立大学法人として誕生しました。「いつでも学習できる場と資料を提供したい。」そのような大学の思いが国際教養大学図書館には込められています。

Page 7: 大学図書館における先進的な取り組みの実践例[Ⅰ.学 …...1 Ⅰ.学習支援 お茶の水女子大学は、学生数約3,000人の比較的小規模な大学です。小規模大学の「弱み」を「強み」

Ⅰ.学習支援

6

目的・趣旨

実施内容

実施成果

今後の展開

 大学の最も重要な使命は、研究と教育ですが、最近では大学における学生への学習支援機能の充実も重視されています。教育方法及び学習形態は非常に多様化しています。図書館としても従来型の研究・教育支援に加え学習支援機能を強化させるために、本学は学生のためのよりアクティブな「学習の場」を提供することを目的として、ラ−ニング・コモンズを設置しました。

 本学は既に、複数の学生が討論しながら学習することを目的とする予約制のグル−プ学習室を中央図書館(以下、図書館と省略)に設置していました。それとは別に 2009 年 10 月に図書館地下 1F の書架及び閲覧スペ−スの一部を改修し、多目的学習スペ−スとしてラ−ニング・コモンズをオープンしました。グル−プ学習室のような予約制ではなく、学生はいつでも自由に利用できます。また、テ−ブル、椅子、ホワイトボ−ド等の什器も自由に移動することによって、利用者が学習しやすいレイアウトにすることができます。 さらにプレゼンテ−ション準備やゼミ発表等のリハ−サル、セミナー開催などに利用できる機器を備えたエリアも設けました。プレゼンテーションエリアを使用する場合のみ事前に予約が必要です。 サービスの特徴として挙げられるのは、スタッフが常駐して学生の要望に対応する学習支援席を設置したことです。この学習支援席では本施設の利用案内、レポ−ト・論文作成指導、学習相談、資料収集案内を行っています。 また、有線及び無線LANが利用できるパソコン利用環境を整備してパソコン利用優先席を設け、併せてノートパソコンの貸出サービスも開始するなど設備・備品面でのサ−ビスも充実を図りました。

 既存のグル−プ学習室の高い利用率、パソコン利用スペ−スの不足等が指摘されていたことから、ラ−ニング・コモンズへのニーズは見込んでいました。実際、授業期間中の午後は、ほぼ満席に近い利用があり、ノ−トパソコンの貸出も予想以上に高い需要があります。オ−プンと同時に多くの学生が設備・機器を自在に扱い、自由闊達に議論をしながら学習している光景を見るたびに、ラーニング・コモンズを設置した意義は大きいと評価しています。

 学習支援席の機能を拡大するために、ライティングセンタ−の設置、留学生の学習支援機能の追加等も視野に入れています。また、学生生活・学習支援に資するセミナーの拡充も検討しています。 さらに、学内の部署との連携を図り、また教員の協力も得て、利用状況を踏まえてラーニング・コモンズのハード・ソフトの両面を強化しつつ、図書館としての学習支援機能のさらなる充実に努めていきたいと考えています。

学生・教職員への24時間365日開館、一般への平日夜10時までの開放 ラーニング・コモンズ(多目的学習スペース)の設置上智大学

─アクティブな「学習の場」を提供する取り組み─

Ⅰ.学習支援❻

Page 8: 大学図書館における先進的な取り組みの実践例[Ⅰ.学 …...1 Ⅰ.学習支援 お茶の水女子大学は、学生数約3,000人の比較的小規模な大学です。小規模大学の「弱み」を「強み」

7

「マイライフ・マイライブラリー」東京女子大学

─滞在型図書館による学生の社会的成長支援の取り組み─

Ⅰ.学習支援❼

目的・趣旨 従来の教育研究のための資料提供という機能に加え、学生たちの「学習を主とする学生生活の拠点」となるために(学習)滞在型図書館として機能することを目的としています。すなわち、学生一人一人が、図書館を「マイライブラリー」として個々のニーズに応じて利用しながら滞在し、「マイライフ」の構築を目指し、学習の成果を上げるとともに、社会的成長を図ることができるように支援するプログラムです。

 ハード面では、多様な空間を備えたフロアの提供を行い、学生一人一人の多様なニーズに対応できる環境を創出しています。 ソフト面では、4 種類の学生アシスタントが多様なサービスを提供することによって、学生を支援する

「学生協働サポート体制」を整備しており、学生アシスタント自身が活動を通じて、「支援される立場」から「支援する立場」に変わることによって、成長することを目指しています。また、情報検索等のガイダンス、基礎的日本語能力養成講習など、学習支援プログラムの提供も行っています。 対象は全学生であり、入学から卒業までの大学生活全体を通じて支援を行うものです。

 取り組みを全面的に実施した平成 20 年度以降、それまで減少し続けていた図書館入館者が急増し、その後も増加し続けています。 学生アシスタントの活動は当初から活発に行われ、学生アシスタントのミーティングでの意見やアンケートの結果、学生アシスタントの体験への満足度が高いことが確認され、学生アシスタントへの応募者も増加し続けています。さらに、学生協働サポート体制の中でロールモデルの提供ができ、他の学生アシスタントを目指すステップアップの動きが見られます。学習支援プログラムも成果が見られ、特に情報検索等のガイダンスの正規授業での活用が活発になっています。 本取り組みは、学外からラーニング・コモンズ的図書館の先進的事例との評価を受けています。また、平成 22 年度には自己点検・評価を実施し、それに基づく外部評価を受けました。(マイライフ・マイライブラリー『実績報告書』、『自己点検・評価報告書』、『外部評価報告書』は東京女子大学 Web ページで公開中。)

 平成 23 年度からは大学の経常的な事業として、プログラムを発展維持させることとなっており、自己点検・評価及び外部評価の結果明らかになった課題についても、全学的に改善方策の検討を続けています。

実施内容

実施成果

今後の展開

Page 9: 大学図書館における先進的な取り組みの実践例[Ⅰ.学 …...1 Ⅰ.学習支援 お茶の水女子大学は、学生数約3,000人の比較的小規模な大学です。小規模大学の「弱み」を「強み」

Ⅰ.学習支援

8

ラーニングアドバイザー制度立教大学

─大学院生によるピア・サポートの取り組み─

Ⅰ.学習支援❽

目的・趣旨 本学図書館では、図書館における学習支援として、図書館職員が正課授業に出向いて実施する「授業内情報検索講習会」や、図書館内で開催する「図書館活用講座」を実施していますが、2008 年度より大学院生によるピア・サポートであるラーニングアドバイザー制度を開始しました。「レポートや論文の書き方がわからない」「レポートのための情報収集の仕方がわからない」といった不安を抱える学生に対して、身近な存在である大学院生が、テーマの選び方、資料の探し方、レポート・論文の書き方を指導することにより、図書館資料の活用と学生の学習意欲向上を目指しています。加えて、質問事項の学部へのフィードバックにより、学部と連携した学習支援を進めています。

 ラーニングアドバイザーは原則として大学院博士後期課程の学生で、自らの学習・研究経験を元に、学部学生からのレポート・論文作成等の質問に対し、オンラインデータベースを中心とした図書館資料を用いながら相談に応じます。サービス時間は平日 12:00〜17:00、試験期間の土曜日 9:00〜12:30 であり、2011 年度は、池袋キャンパスの図書館本館と新座キャンパスの新座図書館に各 1 名を配置して運用しています。 ラーニングアドバイザーの実施状況は、図書館関連の会議に加え学士課程教育に関わる会議などでも報告し、学部と共有しています。

 利用者は学部 1 年次生が目立ち、学部学生は年次が上がると減少します。相談者のアンケートから、「レポートの形式や書き方が理解できた」、「文献の探し方が理解できた」等、相談したことについて満足し、再び相談したいという回答を得ています。ラーニングアドバイザー自身からも、コミュニケーション能力が向上したという報告を受けています。 多様な分野の相談に答えるため、複数名いるアドバイザーの専攻分野にも配慮しています。例えば、新座図書館では同キャンパス内に現代心理学部があるため、心理学固有の相談に対応すべく心理学専攻のアドバイザーを採用し、相談件数を大幅に延ばしています。 利用者は毎年徐々に増加しており、学習支援の取り組みとして学生・教員から評価を得ています。

 制度開始から 4 年間が経過し、図書館、そしてラーニングアドバイザー自身も経験を積んできました。本学では 2012 年度に中央図書館が開館し、新座図書館には学習支援スペースが設置されます。今後は学部との連携や広報の工夫に努め、ラーニングアドバイザーを含めた図書館の学習支援策を進めていきます。

実施内容

実施成果

今後の展開

Page 10: 大学図書館における先進的な取り組みの実践例[Ⅰ.学 …...1 Ⅰ.学習支援 お茶の水女子大学は、学生数約3,000人の比較的小規模な大学です。小規模大学の「弱み」を「強み」

9

ライティングサポートデスク国際基督教大学

─学内協同による学習支援の取り組み─

Ⅰ.学習支援❾

目的・趣旨

実施内容

実施成果

今後の展開

 ライティングサポートデスクは学生の情報リテラシー及び論文作成スキルの向上を目指し、自立した書き手に成長させることを目的としています。2010 年 12 月に図書館内に設置され、大学の教養学部長室と図書館の協同で運営を開始しました。ここでは授業以外の時間に個別に論文・レポート執筆を指導する場を提供しています。将来は、ライティングを総合的にサポートするライティングサポートセンターの設立を視野に入れ、現段階ではパイロットケースとして学生のニーズ、運営上の問題点を把握するよう努めています。

 学部生を対象とし、大学院生がチューターとなり授業のレポート、卒業論文、その他学術研究などのライティングを指導します。1コマ 40 分の予約制セッションで図書館ホームページから申し込みを受け付けています。図書館のレファレンスサービスセンター職員が、登録している約 10 名のチューターの中から 1 名を選び日時を調整し、申し込んだ学生はその日時にライティングサポートデスクで指導を受けます。セッションでは、チューターが書き手である学生に質問やヒントを投げかけ、書き手の語ることに耳を傾けるようにして気付きを促し、自身の力で論文の方向性、テーマ、構成や情報検索法などへの理解を深めていくことができるよう指導します。書く行為を通じて学生が成長することに重きを置くため、チューターは校正や添削を行わないようにしています。 2010 年冬学期 (2010 年 12 月〜2011 年 2 月 )は 12 件、2011 年度春学期(4 月〜6 月)は 23 件のセッションを行いました。

 セッションを受けた学生のアンケート調査結果について集計、分析したところ、セッションにおける満足度はいずれも高くなっています。ライティングサポートデスクの運営は始まったばかりですので、今後の動向についても引き続き調査分析していきたいと思います。

 広報活動や運営システムなどの改善を行い学生の利用を促したいと考えています。また、レポートや卒論のライティングに役立つパスファインダー作成などの調査にも着手しています。