養鶏における天然植物色素の利用 - 東京都産業労働局...―27―...

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―27― 食卵の黄身の色(卵黄色)は、消費者の視覚に直接アピールできる大切な要素です。この卵 黄色は、ニワトリが摂取したエサに配合されている穀類などの色素(キサントフィル)が卵黄 へ移行したもので、専用のカラーファンによってスコア1から15までに数値化することができ ます(写真1)。 鶏卵生産現場では、卵黄色の濃さがタマゴの品質改良の指標のひとつとなっています。そこ で当センターでは、アシタバやパプリカ由来の色素による卵黄の色調強化について調査しまし た。 成果の概要 1 調査方法 4つのグループに分けた雌の東京うこっけいに、配合割合を調製したエサを給与して卵黄 色の変化を調べました。エサは、市販の鶏用配合飼料をベース(対照区)として、乾燥アシ タバ粉末を5%と10%代替した区(5%区および10%区)と、アシタバ粉末2.5%+パプリ カ抽出物を0.15%(キサントフィルとして7.5ppm)代替した区(併用区)の4種類として、 4週間給与しました。 2 成果 5%区および10%区では、アシタバの配合割合に比例して卵黄色が濃くなり、併用区では 給与開始後2週間でカラーファンスコア10以上になりました(図1、写真3)。3処理区と も対照区よりもエサを食べる量が増え、体重を増やすことができました。また、併用区の卵 殻の質は、対照区と同等かそれ以上でした(表1)。 このことから、アシタバやパプリカ由来の色素は、卵黄色改善効果があると言えます。5% および10%のアシタバは、1日1羽あたりのエサの量に換算するとそれぞれ8.4円および16.9 円かかりますが、併用区では4.3円で卵黄色を10以上へ高める効果があります。 3 まとめ 今回、アシタバやパプリカのエサへの添加給与が、卵黄の色調強化に有効であることが分 かりました。 最近では、キサントフィルが有する抗酸化作用などの機能が注目されており、アシタバに はキサントフィルの他にビタミンやミネラルなどの生理活性物質も含まれています。今後は、 アシタバやパプリカ抽出物の摂取がニワトリの体に及ぼす影響や生産された卵や肉への有用 成分の移行などの調査を進め、商品性の高い畜産物の生産技術を追究していきます。 (小嶋禎夫) 養鶏における天然植物色素の利用 ~商品性の高い畜産物の生産を目指して~ 農林総合研究センター 畜産技術科 14 背景と目的

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     食卵の黄身の色(卵黄色)は、消費者の視覚に直接アピールできる大切な要素です。この卵黄色は、ニワトリが摂取したエサに配合されている穀類などの色素(キサントフィル)が卵黄へ移行したもので、専用のカラーファンによってスコア1から15までに数値化することができます(写真1)。 鶏卵生産現場では、卵黄色の濃さがタマゴの品質改良の指標のひとつとなっています。そこで当センターでは、アシタバやパプリカ由来の色素による卵黄の色調強化について調査しました。

    成果の概要1 調査方法 4つのグループに分けた雌の東京うこっけいに、配合割合を調製したエサを給与して卵黄色の変化を調べました。エサは、市販の鶏用配合飼料をベース(対照区)として、乾燥アシタバ粉末を5%と10%代替した区(5%区および10%区)と、アシタバ粉末2.5%+パプリカ抽出物を0.15%(キサントフィルとして7.5ppm)代替した区(併用区)の4種類として、4週間給与しました。

    2 成果 5%区および10%区では、アシタバの配合割合に比例して卵黄色が濃くなり、併用区では給与開始後2週間でカラーファンスコア10以上になりました(図1、写真3)。3処理区とも対照区よりもエサを食べる量が増え、体重を増やすことができました。また、併用区の卵殻の質は、対照区と同等かそれ以上でした(表1)。 このことから、アシタバやパプリカ由来の色素は、卵黄色改善効果があると言えます。5%および10%のアシタバは、1日1羽あたりのエサの量に換算するとそれぞれ8.4円および16.9円かかりますが、併用区では4.3円で卵黄色を10以上へ高める効果があります。

    3 まとめ 今回、アシタバやパプリカのエサへの添加給与が、卵黄の色調強化に有効であることが分かりました。 最近では、キサントフィルが有する抗酸化作用などの機能が注目されており、アシタバにはキサントフィルの他にビタミンやミネラルなどの生理活性物質も含まれています。今後は、アシタバやパプリカ抽出物の摂取がニワトリの体に及ぼす影響や生産された卵や肉への有用成分の移行などの調査を進め、商品性の高い畜産物の生産技術を追究していきます。

     (小嶋禎夫)

    養鶏における天然植物色素の利用~商品性の高い畜産物の生産を目指して~

    農林総合研究センター 畜産技術科

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    背景と目的

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