資源開発環境調査 トルコ共和国 republic of turkey...
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資源開発環境調査
トルコ共和国
Republic of Turkey
目 次
第 1部 資源開発環境調査
1. 一般事情 ································································ 1
2. 政治・経済概要 ·························································· 2
3. 鉱業概要 ································································ 5
4. 鉱業行政 ································································ 6
5. 鉱業関係機関 ··························································· 12
6. 投資環境 ······························································· 13
7. 地質・鉱床概要 ························································· 18
8. 鉱山概要 ······························································· 19
9. 新規鉱山開発状況························································ 20
10. 探査状況 ······························································ 21
11. 製錬所概要 ···························································· 23
12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況························· 25
第 2 部 地質解析
1. 地質・地質構造 ························································· 26
2. 鉱床 ··································································· 30
2-1. 鉱床生成区 ··························································· 30
2-2. 主要鉱山・鉱床························································ 36
2-3. 探査状況 ····························································· 42
3. 鉱床胚胎有望地域························································ 43
資料（統計、法律、文献名、URL 等） ········································· 44
- 1 - トルコ
第 1部 資源開発環境調査
1. 一般事情
1-1. 面積 779,452 km2（日本の 2.05 倍。東西約 1,600km、南北約 650km）
1-2. 人口 6,960 万人（ 2002 年央推定 ）
1-3. 首都 アンカラ
1-4. 人種 トルコ人。他にクルド人、アルメニア人、ギリシャ人、ユダヤ人。
1-5. 公用語 トルコ語
1-6. 宗教 大部分がイスラム教。他にキリスト教、ユダヤ教。
1-7. 地勢等
トルコ共和国は北緯36°～42°、東経26°～45°に位置する面積78万 km2の国である。
北部は黒海、南部は地中海、西部はエーゲ海に面している（海岸線総延長約 8,000km）。北
西部はヨーロッパ、東部は CIS 及び中東に接している。
トルコ共和国の大半を占めるアナトリア半島は、東西に延々と伸びるアルプス－ヒマラ
ヤ造山帯の一部に位置しており、地形的には北縁（黒海沿岸）のポントス山脈、南縁（地
中海沿岸）のタウルス山脈及びこの二つの東西系の山脈に南北を挟まれたアナトリア中間
高原からなり、地形は主に北部、南部及び中部に分けられる。中部は海抜 1,000m 前後の高
原地帯であり、3,000m 前後のピークも多い。特に東部には 4,000m～5,000m の高峰も存在
する。北部及び南部には急崖が海岸線まで迫り、平野部は少なく地形は急峻である。水系
も地形に規制されており、中部は湖沼や傾斜の緩やかな河川が多く、北部及び南部には急
流が多い。
出典:MAPQUEST.COM
- 2 - トルコ
1-8. 気候
トルコ共和国の気候はエーゲ海及び地中海沿岸は温暖な地中海性気候、黒海沿岸は雨量
が多く温暖な海洋性気候、東部は寒暖の差が激しい大陸性気候、東南部は降雨量の少ない
ステップ気候に大別できる。
1-9. 国歌・国旗
国歌 独立行進曲（Istiklal Marsi）
国旗 赤地に白色の新月と星。月と星を合わせて「善と幸福」をあらわす。
1-10. 略史
1299 年 オスマン・トルコ帝国成立。最盛期にはバルカン、アナトリア、メソポタミア、
北アフリカ、アラビア半島にまで及ぶ大帝国に発展。
1922 年 オスマン・トルコ帝国滅亡
1923 年 共和国宣言（10 月 29 日）（初代大統領ケマル・アタテュルク）
2. 政治・経済概要
2-1. 政体 共和制（1923 年 10 月 29 日より）
2-2. 元首 アフメット・ネジデット・セゼル大統領（2000 年 5 月就任 任期 7年）
2-3. 議会 一院制（550 議席 2002 年 11 月 3 日総選挙 任期 5年）
2-4. 政府
2-4-1. 首相 レジェップ・タイップ・エルドアン（Recep Tayyip ERDOGAN）
2-4-2. 外相兼副首相 アブドゥッラー・ギュル（Abdullah GUL）
2-4-3. 副首相 アブドゥルラーティフ・シェネル（Mr.Abdullatif SENER）
2-4-4. 副首相 メフメット・アリ・シャーヒン（Mr. Mehmet Ali SAHIN）
2-5. 内政
80 年 9 月 12 日 軍事クーデター。
83 年 11 月 民政移管の総選挙。オザル内閣（祖国党）が成立。
89 年 11 月 オザル首相が大統領に就任。
93 年 4 月 オザル大統領が死去。同 5 月、デミレル首相が大統領に選出。同 7 月、正道
党新党首のチルレル女史が首相に就任。
95 年 10 月 チルレル連立内閣総辞職。同年 12 月 24 日総選挙。
96 年 6 月 28 日 福祉党と正道党によるエルバカン連立内閣成立。
97 年 6 月 18 日 エルバカン連立内閣総辞職。
97 年 6 月 30 日 ユルマズ連立内閣成立。
99 年 1 月 11 日 エジェビット少数単独内閣成立。
99年4月18日 総選挙。エジェビット首相率いる民主左派等が第4党から第1党に躍進。
99 年 5 月 28 日 第 2次エジェビット内閣成立。
2000 年 5 月 16 日 セゼル憲法裁判所長官が大統領に就任。
- 3 - トルコ
2002 年 11 月 3 日 総選挙。エルドアン党首率いる公正発展党（AKP）が圧勝。
2002 年 11 月 18 日 第 58 代ギュル内閣成立。
2003 年 3 月 14 日 第 59 代エルドアン内閣成立。
2-6. 外交・国防
外交基本方針
NATO 及び OECD の一員として、欧米寄りの立場をとる。また、ロシア、コーカサス・中
央アジア、バルカン・東欧、中東（アラブ・イスラエル双方）等周辺諸国との関係を重視。
なお、隣国ギリシャとの関係ではキプロス問題、エーゲ海領海・資源問題、シリア・イラ
クとの間にはユーフラテス・チグリス川の水利権問題等の係争点が存在。87 年 4 月、EC
正式加盟申請。95 年 3 月、EU と関税同盟協定調印。96 年 1 月 1 日 EU との関税同盟発効。
99 年 12 月、EU がトルコを加盟候補国として承認。
2-6-1. 軍事力
（1）予算 101 億ドル（99 年）
（2）兵役 徴兵制度 男子 15 ヵ月（18 歳～40 歳）
（3）兵力 約 66 万人（内務省軍を含む）
2-7. 産業構成 （GDP 比：02 年/国家計画庁） サービス業（63％）、工業（25％）、農業（12％）
2-8. GNP 2,392 億ドル（2003 年）
一人当たりの GNP 3,383 ドル（2003 年）
2-9. 経済成長率 5.9％（2003 年）
2-10. 物価上昇率 18.4％（2003 年）
2-11. 政府統計による失業率 11.5％（2003 年）
2-12. 総貿易額
輸出 508 億ドル（2003 年）
輸入 647 億ドル（2003 年）
2-13. 貿易品目
輸出 衣類、自動車、電気機器
輸入 石油・天然ガス、機械、電気機器
2-14. 主要貿易相手国
（03 年実績順） （1）輸入 独、米、英（2）輸出 独、伊、露
2-15. 通貨 トルコ・リラ（TL）
2-16. 為替レート 1＄＝約 1,417,299 リラ（2004 年 4 月末）
2005 年 1 月デノミ実施 新トルコリラ＝100 万旧トルコリラ
2-17. 経済概況
80 年代を通じ市場開放及び国際競争力の強化、輸出拡大及び持続的成長を政策目標とし
た。しかし、公共投資主導の経済成長、公共部門合理化の遅れ、税制の不備、農業補助金
等に起因する財政赤字が拡大。
- 4 - トルコ
近年の 2度に亘る金融危機（2000 年 11 月及び 2002 年 2 月）後、IMF 等の国際金融機関
の支援を得つつ、財政赤字削減を中心とした経済構造改革を推進中。景気は回復基調にあ
り、金融市場も安定して推移している（2003 年には経済成長率は 5.9％の高水準、インフ
レ率は約 18％の低水準を記録）。
AKP 政権は IMF との強調を重視しているが、公務員賃金の抑制や国営企業の人員削減な
どに対する AKP 支持層である低所得層の反対は根強いものがあり、今後の経済政策を見守
る必要がある。
対外債務残高 1,472 億ドル
トルコの領海 地中海、黒海 12 カイリ、エーゲ海 6カイリ。また、排他的経済水域は
黒海では 200 カイリ。地中海、エーゲ海では設定なし。
2-18. 経済協力（単位 億円）
我が国の援助（2001 年度までの累計）
有償資金協力 4,321 億円
無償資金協力 13.21 億円
技術協力 333.64 億円
2-19. 日本との関係
2-19-1. 外交関係
1924 年 8 月 6日 トルコ共和国承認
1925 年 3 月 23 日 在トルコ日本国大使館開設
1925 年 7 月 7日 在本邦トルコ大使館開設
1945 年 1 月 6 日 トルコ対日断交
1945 年 2 月 23 日 トルコ対日・独宣戦布告
1952 年 6 月 在本邦トルコ大使館再開
1953 年 5 月 在トルコ大使館再開
1965 年 1 月 1日 在イスタンブル領事館開設（1972 年 10 月総領事館昇格）
2-19-2. 経済関係
（対日貿易） 品目/貿易額（03 年、単位:百万ドル）
輸出（156） 加工食品、敷物、煙草葉、銅鉱石、棒鋼、衣類等
輸入（1,914） 自動車、繊維機械、原動機、化学光学機器等
我が国からの直接投資（2003 年） 現地法人 62 社、投資許可額 18.2 億ドル
2-19-3. 文化関係
1988 年 7 月 第 2ボスポラス橋開通記念式典（イスタンブル）
1990 年 エルトゥールル号事件百周年記念諸行事（日本、トルコ）
1998 年 5 月 土日基金文化センター開館
2000 年 6 月 エルトゥールル号事件百十周年追悼祭（於：串本町）（トルコ海軍艦船来訪）
2003 年 2 月 「日本におけるトルコ年」開催
- 5 - トルコ
2-20. 在留邦人数
アンカラ管内 272 名、イスタンブル管内 893 名の計 1,165 名（2003 年 10 月 1 日現在）
2-21. 在日トルコ人数 1,361 名（2002 年）
3. 鉱業概要
トルコ共和国の主要鉱物資源は、世界第 1 位の埋蔵量を有するボロン、3 位の埋蔵量を
有するソーダ灰、4 位であるバライトの工業原料の他、金属鉱物では、マグネシウム（マ
グネサイト）の埋蔵が第 4位、クロム鉱の埋蔵が第 7位にランクされている。
ETI Holding（旧国営鉱山会社 ETIBANK）によるクロム鉱の生産が世界第 5 位である他、
外資導入により合弁で開発された Cayeli 鉱山の 1994 年からの生産を加え、ETI Holding
傘下鉱山等による銅、鉛及び亜鉛の生産が行われている。
MTA（トルコ鉱物資源調査総局）や ETI Holding（旧国営鉱山会社 ETIBANK）は昔からト
ルコ共和国全土で探鉱活動を行っている。外資の探鉱活動はトルコ共和国西部の金探鉱と、
北東部黒海沿岸地域における塊状硫化物鉱床を中心に探鉱が行われてきた。近年、住民の
環境問題意識の高まりをうけ、金鉱床開発が一時塩漬けとなっていた例もある。Eurogold
Madenclik 社（オーストラリア Normandy Mining 社 100％出資会社）はトルコ共和国西部に
位置するOvacik金鉱山の開発が1992年に認可されたものの、1993年に政府体制が変わり、
従来型のシアン化合物を使う製錬方法への反対等により鉱山開発の許可を取り消されてい
たが、2001 年に保健省から 1年間のテスト操業の許可が下りた。この期間中は保健省の管
理下に置かれ、問題が発生した場合には直ちに操業停止となるが、1 年間のテスト操業に
おいて環境や近隣住民の健康に問題がない場合には、引き続き操業を続けることができる。
主要鉱産物の産出量及び埋蔵量は下表のとおりである。
(単位：t)
年 2000 2001 2002 2003
銅
鉛
亜鉛
ニッケル
74,700
15,900
26,000
0
74,700
17,900
25,300
0
74,700
17,300
33,100
0
74,700
17,400
34,800
800
出典：World Metal Statistics, February 2004
- 6 - トルコ
主要非鉄金属の生産量（2003 年）
鉱 種 トルコ（A） 世 界（B） （A）/（B）（%） ランク
銅鉱石（千 t） 74.7 13,675.6 0.5 21
銅地金（千 t） 60.0 15,236.7 0.4 28
鉛鉱石（千 t） 17.4 2,850.5 0.6 19
鉛地金（千 t） 9.0 6,864.7 0.1 39
亜鉛鉱石（千 t） 34.8 9,167.6 0.4 26
ボーキサイト（千 t） 300.0 147,819.2 0.2 19
アルミニウム地金（千 t） 62.9 28,001.3 0.2 36
アンチモン鉱石（t） 24 154,538 0.0 14
クロム鉱石（千 t） 300.0 15,826.9 1.9 6
出典：World Metal Statistics Yearbook 2004
鉱物資源埋蔵量
鉱 種 トルコ（A） 世 界（B） （A）/（B）（%） ランク
マグネシウム（千t） 160,000 3,600,000 4.4 5
出典：Mineral Commodity Summaries 2004
4. 鉱業行政
トルコ政府は、金鉱業を促進するため、鉱業法に環境に関する規則を追加することを検
討中であると伝えられているが、法案が提出されたとの情報はない。
トルコ政府は国有企業の売却・民営化を進めている。トルコ民営化委員会による Eti
Bakir 社と Samsum 製錬所(Karadeniz Bakir Isletmeleri 社資産)の売却に関する入札が
2004 年 2 月に行われ、トルコの建設会社 Ce-ka Insaat Madencilik 社が 33 百万 US ドルで
落札した。入札は 2003 年にも行われたが応札者がなく、延期されていた。2004 年 1 月に
締め切られた 1 回目の入札には 5 社が応札し、17 百万 US ドルが最高価格であった。さら
に 3 社により 31.5 百万 US ドルを最低価格として入札が行われたところ、2 社が辞退して
Ce-ka 社が落札した。
トルコ政府民営化委員会(OIB)はさらに政府が保有する2社の 100%の売却を2004年 3月
18 日に公示した。今回の対象は、クロム鉱山の Eti Krom A.S.と銀鉱山の Eti Gumus A.S.
である。入札締切りは 4月 26 日で、応札書提出後に個別交渉で落札社が決められる。入札
保証金は、クロム鉱山で百万 US ドル、銀鉱山で 2百万 US ドルである。非居住者の場合、
直接外国投資法の対象となる。
- 7 - トルコ
4-1. 鉱業法
現行の鉱業法は1985年6月15日付け政府広報No.18785に掲載され同日付けで施行され
た鉱業法（第 3213）である。概要は次表のとおりである。
鉱業法概要
項目 内容
鉱業権管理機関 エネルギー天然資源省、在アンカラ
政府機関の権限
(1985 年鉱業法に基づ
く)
鉱業権(探査権、採掘権)の取得及び鉱山活動の監督。法は全て
の金属、エネルギー鉱物(石炭、ウラン)、鉱業鉱物、宝石の原
石を対象。
探査権の有効期間
(1985 年鉱業法に基づ
く)
探査権 Exploration License
3 回に渡る期間(8 か月毎)に分かれており、それぞれ期間の終
了時に報告書提出義務。更に、その後 6 か月に渡る
pre-operation も含まれる最大 30 か月となる。また、探査権
保持者による、ボーリング作業も可能とする。更新は、不可
能である。
採掘準備権 Pre-Operation License
探査活動終了後、採掘権取得のため必要となる pre-operation
ライセンスを取得する義務がある。期間は 3 年までとし延長
は不可能。
採掘権 Operation License
10 年間以上 60 年間以内において可能である。ただし、採掘す
る各鉱物に対しての、採掘許可(operation permission)取得
なしでは、採掘活動は許されない。
探査権取得にあたって
の
国籍要件の有無
(1985 年鉱業法に基づ
く)
現地人による探鉱事業への参加は不必要だが、探鉱権及び探査
許可はトルコ国民またはトルコ法人が保有するものとする。
申請基準
(1985 年鉱業法に基づ
く)
申請された鉱区
申請書
1/10 の保証金
企業登記簿
維持費
(1986 年鉱業法に基づ
く)
探査権申請料：61.26 百万リラ(ML)(約 38US ドル)
探鉱権料：153.35 百万リラ(ML)/年(約 96US ドル)+0.25ML/ha
採掘準備料：536.96 百万リラ(ML)/年(約 335US ドル)+0.50ML/ha
最低探鉱経費支出制限 なし
放棄要求制限 なし
譲渡制限
(1985 年鉱業法に基づ
く)
採掘権の譲渡は可能であるが、各鉱物に対しての採掘許可
(operation permission)の譲渡は不可能である。
環境関連法の規制等 環境影響評価法(2002 年 6 月 6 日施行、法 No.24777)により、採
掘プロジェクト、製錬プロジェクトは、その規模・性質により
環境影響評価ないし環境影響評価予備調査の対象となる。
探鉱段階では、同じ範囲における探鉱作業で合計掘削長が
3,000m 以上のものは、環境影響評価予備調査の対象となる。
- 8 - トルコ
4-2. 環境影響評価
4-2-1. 概要
ある種の産業への投資に関しては、助成、承認、許可を受ける前に環境影響評価報告書
および/または環境影響評価予備調査報告書の提出を求められる。環境影響評価については
環境影響評価法（Environmental Impact Assessment Regulation, 2002 年 6 月 6日、政府
広報掲載、No.24777）が規定している。
環境影響評価法は環境影響評価の過程における管理的及び技術的手続きを定めている。
本法が扱っている内容は次のとおりである。
・環境影響評価及び環境影響予備評価が求められるプロジェクトの種類、ならびに報
告書の内容
・環境影響評価の過程における管理的及び技術的手続き
・「環境影響評価に関する範囲決定、調査及び評価委員会」の形成に関する作業
・操業前、操業中、操業後における、本法の範囲内に関しての、プロジェクトの監視
と監査
・環境管理における環境影響評価の効果的かつ広範な実施に必要な教育的作業及びシ
ステムに関する制度的組織の強化
担当官庁は環境省である。環境庁は知事事務所に環境影響評価の実施の必要性を判断す
る権限を移譲することができる。
4-2-2. 環境影響評価
(1) 実施する必要のあるプロジェクト
環境影響評価を実施する必要があるプロジェクトは環境影響評価法（法 No.24777、2002
年 6 月 6 日施行）の付録Ⅰに示されている。また付録Ⅱのプロジェクトで、環境影響評価
が必要であるとの命令を受けたものも、環境影響評価を実施する必要がある。環境影響評
価法付録Ⅰに示された環境影響評価が必要なプロジェクトで、鉱業に関連するものを以下
に抜粋する。
・非鉄金属を溶融する設備で、設備能力が 5万 t/年以上のもの。
・採掘プロジェクト。許可法規や許可段階にかかわらず。
(a) 露天堀採掘及び鉱石準備設備で作業場が 25 ヘクタール以上のもの（採掘及び廃
棄範囲の合計）
(b) 石炭採取及び鉱石処理設備で露天掘採掘法を用い作業場が 150 ヘクタール以上
のもの（採掘及び廃棄範囲の合計）
(c) 鉱石濃縮設備（鉄鉱石を除く）で、生物学的、化学的、電気的ないし熱的処理
法を破砕及びふるいがけに加えて用いるもおんで、最終製品を 2万 t/年以上生産
するもの。
(2) 報告書の一般様式
報告書の一般様式は環境影響評価法付録Ⅲに示されている。
- 9 - トルコ
(3) 手順：委員会の開催
環境省は報告書を受理したのち、委員会の開催を委員に通知し、報告書のコピーを配布
する。委員会の議長は環境省の代表が、事務局は環境省が務める。委員は組織の代表とし
て委員会に参加する。環境省が必要と認めた場合は、大学、研究所、専門組織、専門家団
体、組合、協会、NGO 等の代表を委員として委員会に参加させることができる。
最初の会合はプロジェクトの情報を得るもので、プロジェクトの所有者が説明する。そ
してその場でプロジェクト場所の視察、一般参加会議、範囲決定会議の日程を決定する。
それらの日程は環境省から知事事務所に連絡される。一般参加会議と範囲決定会議は最初
の情報会議から 30 事業日以内に完了するものとする。
(4) 一般参加会議
情報会議後、プロジェクトの所有者は一般参加会議を開催して投資について説明し、一
般からプロジェクトに関する意見と提案を得るものとする。開催場所は知事事務所とプロ
ジェクト所有者により決定され、環境省に通知される。プロジェクト所有者は開催 5日前
までに新聞に通知を掲載するものとする。一般参加会議は地方環境局長が議長となる。議
長が参加者に意見を書面で提出するよう求める場合もある。会議録は環境省に送られ、写
しを知事事務所が保持する。一般参加会議の事務局は地方環境局とする。
(5) 報告書提出
作成されるべき環境影響評価報告書の内容に関する範囲決定手続きは、一般参加会議の
あとの委員会で行われ、その結果は議事録にする。環境省は結果をプロジェクト所有者に
環境影響評価特別仕様を連絡する。特別仕様の有効期限は 1 年であり、1 年以内に環境省
に環境影響評価を提出するものとする。1 年以内に提出されず、延長要請もなされなかっ
た場合は、申請は無効になったと判断される。適切と認められた場合は 6か月の延長が認
められる。
プロジェクト所有者から環境省に提出された報告書は、環境しょうが 7事業日以内に内
容を確認し、不備がある場合は差し戻す。半年以内に再提出されない場合は、申請は無効
になったと判断される。報告書はコピーが委員に送られるとともに、環境省ないし地方環
境局で一般に公開され、30 日間意見書の提出を受け付ける。
(6) 検討評価
委員会は最初の検討評価会議後 30 日以内に報告書を検査し評価する。委員会は絶対多数
の委員が招集されるものとする。必要に応じ、専門家の意見を徴する。これらに必要な経
費はプロジェクト所有者が負担する。報告書に不備があった場合、委員会はプロジェクト
所有者に補填を求める。補填が完了するまで委員会は停止する。補填要請は最大 2回まで
であり、それでも不備がある場合は、申請は無効とされる。委員会の検討評価項目は次の
とおりである。
・報告書が適切で十分であるか
・検査、計算、評価が適切なデータ、情報、文書に基づいているか
- 10 - トルコ
・プロジェクトの環境への影響が完全に評価されているか
・環境への悪影響を除くための必要な予防措置がとられているか
・一般参加会議が適切に開催され、会議で提示された事項に対して十分な説明が与え
られたかどうか
委員会による評価は公式報告書にされ、委員が署名する。検討評価会議が結論に達した
後、30 事業日以内にプロジェクト所有者は以下の書類を環境省に提出するものとする。
・委員会が検査した最終版の報告書
・当該プロジェクトとその付加物は彼らの責任下にあることを保障した書類と公証署
名（公的組織は署名不要）
30 事業日以内に提出されなかった場合は、「否認」命令が与えられる。
(7) 是認ないし否認命令
環境省は、委員会の活動を考慮し、10 事業日以内に「環境影響評価是認」ないし「環境
影響評価否認」の命令を下し、書面にてプロジェクト所有者と関係機関に通知する。知事
事務所は適切な手段により一般に広報する。是認を付与されたプロジェクトで、5 年以内
に関連する投資が行われなかった場合は、是認命令は無効となる。否認命令を付与された
プロジェクトに関し、否認に至った全ての環境が変化した場合、プロジェクト所有者は新
しい申請を提出できる。
4-2-3. 環境影響予備評価
(1) 対象
環境影響予備評価の対象となるプロジェクトは以下のとおりである。
・環境影響評価法付録Ⅱに示されたプロジェクト
・投資ないし操業段階における変更によりこの法規の範囲に該当するようになったプ
ロジェクト
・変更により法規の範囲外になったが、再変更により範囲内になったプロジェクト
環境影響評価法付録Ⅱに示されたプロジェクトで、鉱業に関連するものを以下に抜粋す
る。
・鉱業プロジェクト。許可法規及び許可段階にかかわらず。
(a) 鉱山における採取（付録Ⅰに含まれないもの）
(b) 大理石や装飾石の塊ないし破片の採取及び処理のための設備で5,000m3/年以上
のもの、及び切断、処理及び大理石研磨の年間能力が 10 万 m2以上のもの
(c) 100 万 m3/年以上のメタンの採取と貯蔵
(d) 1 万 t/年の能力の設備で二酸化炭素及び他のガスが採取・貯蔵ないし処理され
ているもの
(e) 原材料の採取ないし原材料のあらゆる種類の加工で、採石法に則ったもの
（25,000m3/年以上）
(f) 5 万 t/年以上の塩及び/ないしあらゆる種類の塩加工設備
- 11 - トルコ
(g) 鉱石の処理ないし濃縮設備（付録Ⅰに含まれないもの）
(h) 同じ範囲における探鉱作業で合計掘削長が 3,000m 以上のもの
(2) 予備的調査と検閲
プロジェクト所有者は、環境影響評価予備的調査報告書を地域の知事事務所に提出する
ものとする。報告書は付録Ⅳにのっとり準備されたものとし、評価申請書を添付する。地
方知事は予備的調査報告書を環境影響評価法付録4の基準により10事業日以内に検閲する。
報告書が適切なものであるとされた場合は、一般への啓蒙が行われる。
一般啓蒙の手順は知事事務所とプロジェクト所有者が決める。プロジェクト所有者が一
般啓蒙、意見受付をし、20 事業日以内に知事に結果を提出する。一般啓蒙手順は知事事務
所の監督の下で行われる。手続き費用はプロジェクト所有者が負担する。必要な場合には
知事事務所はプロジェクトの現場調査を行う。
知事事務所は環境影響評価予備報告書を 7事業日以内に環境省に提出する。提出する報
告書は一般啓蒙と、現地調査を実施した場合はそれに関連した情報及び書類その他のコピ
ー5部で、プロジェクト所有者により作成されたものとする。
環境省は環境影響評価法付録Ⅰ、Ⅱのリストと付録Ⅳの基準に基づいてプロジェクトの
書類を検査する。必要と認められた場合は、委員会を招集し、関係機関の意見を聴取する。
環境省は 45 日以内に検査と評価を終え、「環境影響評価必要」ないし「環境影響評価不要」
の結論に達し、知事事務所とプロジェクト所有者に通知する。不要の命令を下すためには、
当該環境影響評価予備調査報告書とその付録が自分の責任下にあることを保証したプロジ
ェクト所有者の公証署名付き文書が必要である。ただし公的組織は署名不要である。期限
以内に必要な書類が環境省に提出されなかった場合、申請は無効となる。
知事事務所は結果を適切な方法で公表する。
環境影響評価不要の命令を受けたプロジェクトで、関連する投資が 5 年以内に開始され
なかった場合、当該命令は無効となる。
環境影響評価必要の命令を受けたプロジェクトは、上述の環境影響評価の手続きを行う
ものとする。5 年以内に手続きを開始しない場合は、環境影響評価予備調査の申請は無効
となる。
4-2-4. 監視と監査
環境影響評価是認ないし環境影響評価不要の命令を得たプロジェクトに関し、報告書で
定められた内容がプロジェクト所有者により満たされているかどうか、環境省は監視と監
査を行う。
プロジェクト所有者は、環境影響評価是認ないし環境影響評価不要の命令を得たのち、
環境省へ、投資の開始、操業及び閉鎖後に関する報告書を提出する義務がある。環境省は
その情報を広報のために知事事務所に伝達する。
環境影響評価是認ないし環境影響評価不要の命令なしに開始された投資が発覚した場合、
知事事務所がその投資を中止させる。中止は環境影響評価是認ないし環境影響評価不要の
- 12 - トルコ
命令を得るまで継続される。
環境影響評価是認ないし環境影響評価不要の命令を得たプロジェクトが報告書に記され
ている義務を満たしていないことが発覚した場合、知事事務所は 60 事業日の猶予期間を与
え、義務を満たすよう求める。その後も満たされない場合は、投資は中止される。義務が
満たされるまで中止は継続される。
4-2-5. その他
プロジェクト所有者に変更があった場合、他の手続きなしに新所有者は前所有者の義務
を引き継ぐものとし、新所有者は環境省に通知するものとする。
本法に関する手続きで疑義がある場合は、環境省の決定が勝る。
5. 鉱業関係機関
5-1. 鉱業関連行政組織
5-1-1. エネルギー・天然資源省
エネルギー・天然資源省（Ministry of Energy and Natural Resources）がトルコの鉱
業とエネルギー部門を管轄し、鉱業及びエネルギー政策や施策、計画の準備及び施行を責
務とする。鉱業に関する主な業務内容は、天然資源の鉱業権の管理である。
エネルギー・天然資源省に属する組織は以下のとおりである。
水力総局（General Directorate of State Hydraulic Works）
石油総局（General Directorate of Petroleum Works）
電力資源調査・開発局（General Directorate of Electrical Power Resources Survey
and Development Administration）
鉱物資源・開発総局
（General Directorate of Mineral Resources and Exploration, MTA）
トルコ原子力エネルギー公社（Turkey Atom Energy Corporation）
またエネルギー・天然資源省に関連する組織は以下のとおりである。
電力配給総局（General Directorate of Distribute Electricity）
電力伝送総局（General Directorate of Transmission of Electricity）
電力生産物総局（General Directorate of Electricity Product）
電力販売総局（General Directorate of Electricity Commercial）
石炭生産総局（General Directorate of Coal Operating）
トルコ石油天然ガス公社（National Oil and Natural Gas Company of Turkey）
石油パイプライン公社（Petroleum Pipeline Corporation）
Eti Holding 社総局（General Directorate of Eti Holding）
トルコ石炭社総局（General Directorate of Turkey Coal Corperation）
鉱業総局（General Directorate of Mining Affairs, MTGEM）はエネルギー・天然資源
省に属し、鉱業法の管理を行う主要責務は探鉱許可と鉱業権の付与、操業条件や最小生産
- 13 - トルコ
率、ロイヤルティ支払いの決定、鉱物生産、販売、雇用に関する情報の収集を各事業所毎
に行うこと、並びに鉱物の輸出入に関連する法規の準備と施行である。
5-1-2. 鉱物探鉱調査総局
鉱物探鉱調査総局（General Directorate of Mineral Exploration and Research, MTA）
は、天然資源に関する科学的な調査を政府及び民間企業のために行うため、1935 年に設立
された。MTA は地質調査所としての役割と、鉱物資源探鉱局としての役割を果たしている。
探鉱活動としては、衛星画像解析、地質調査、地化学探査、物理探査及びボーリングを行
う。必要に応じて坑道調査も行う。対象とするのは、工業用原料、金属鉱物、エネルギー
原料（石油・天然ガスを除く）である。地形図の作成や経済性評価も行う。鉱物資源探査
としてのボーリングのほかに、水、地熱のためのボーリングも行う。
6. 投資環境
6-1. 税制
トルコの税制は収入税、支出税、財産税からなる。収入税は法人収入税と故人収入税か
らなる。支出税は付加価値税、銀行及び保険取引税、印紙税からなる。財産税は相続贈与
税と資産税からなる。
6-1-1. 収入税
トルコでは収入税は、トルコに住する故人と法人の、国内及び海外双方の収入に課税さ
れる。トルコに居住しない者の、雇用や財産所有、営業活動その他の行為による収入も課
税の対象となるが、トルコ起源の収入のみが対象となる。
税の観点からは、会社は有限責任会社と個人会社に分類できる。法人税は有限責任会社
に適用される。国営企業も法人税課税対象である。トルコに本社を置く法人は法人税が完
全に適用される。その場合、全世界における収入が課税対象となる。トルコに居住しない
法人会社が支社ないし共同企業により事業を行った場合は、トルコにおける利益収入につ
いてのみ課税される。トルコに居住しない場合は、一般に収入に対して源泉徴収税が課せ
られる。重課税防止協定が締結されていれば、源泉徴収税率は軽減される。基本法人税率
は 30%である。追加税が基本法人税の 10%課せられ、合計税率は 33%になる。トルコ外に本
社があり、トルコに支社を設立している法人は、トルコ法人から得た収入に基づいた年収
が課税対象となる。非居住者の行った専門的サービスや技術的支援、ロイヤルティ、賃貸
料は源泉徴収税の対象で、税率は 10%から 25%である。
個人収入税率は 15%から 45%である。
6-1-2. 付加価値税
付加価値税（VAT）率は 1%から 40%である。
6-1-3. 銀行及び保険取引税
本税は銀行が融資等により得た収入に対し課税するものである。
- 14 - トルコ
6-1-4. 印紙税
契約書、合意書、保証書等の幅広い書類に適用される。書類の価値に応じた税率で課税
される。
6-1-5. 相続税及び贈与税
相続税率は 1%から 30%である。
6-1-6. 財産税
財産税は土地と建物の価値に対して、0.3%から 0.6%の税率で課税される。財産を売買し
た場合は、売り手と買い手の双方に売買額の 4.8%が課せられる。財産が capital-in-kind
に寄付する場合は、税率が 2.4%に下げられる。
6-2. 欧州との関税同盟
外国貿易に関し、トルコは 1996 年 1 月 1 日に欧州連合と関税同盟を設立した。それによ
り外国貿易戦略と輸出入法制度を欧州連合標準と整合性のあるものとすることを開始した。
6-3. 輸出入令
輸出は外国貿易局（Undersecretariat of Foreign Trade）が管轄する。輸出に関しては
1996 年の輸出令（Export Regime Decree）が、輸入に関しては 2001 年の輸入令（Import
Regime）が規定している。これらの令は、欧州連合との関税同盟や、トルコが加盟してい
る世界貿易機構（WTO）と調和している。
6-4. 機材の輸入
欧州連合、米国、日本、スイス等の国からの機器・機械類の輸入は、一部製品を除いて
無税である。一部製品は、販売後の維持、修理が保証される場合に限り輸入が認められる。
それらはエアコン、洗濯機、湯沸かし機、土除去機器、旋盤、テレビ、自動車、耕運機等
である。一方、古いもの、使用済みのもの、修理されたもの、機能しないもの、時代遅れ
なものの輸入は貿易局の許可が必要である。
6-5. 外国投資政策
外国に居住する者が会社を設立したり、既存会社のパートナーになったり、支店を開く
場合は、1人あたり最低 5万 US ドルを持ち込む必要がある。
外国資本を含む会社は、国内資本と同等の権利と義務を有する。
外国資本比率の制限はない。ただし包装は 20%、航空、海運、港湾サービス、付加価値
通信サービスは 49%を上限とする。
利益、料金、ロイヤルティを清算・売却時の株式の本国引き上げは自由に行うことがで
きる。
国内民間資本に開かれている産業分野は、海外民間資本にも原則として開かれている。
ただし放送、航空、海運、石油、鉱業については、国家の安全と公共の秩序、健康、専門
職水準を保障するため、外国投資家の権利と義務ないし制限を他の法規で規定している。
規制は以下のとおりである。
- 15 - トルコ
・放送に関しては株式の最大 20%まで（ラジオ・テレビ放送設立法 No.3984）。
・航空、海運、港湾サービス、付加価値通信サービスは最大 49%までの参加（民間航
空法 No.2920、国内運航制限法 No.815、トルコ通商法 No.6762）。
・不動産取引と漁業は外国投資家を除外。
外国人を経営者ないし技術スタッフとして雇用することに制限はない。
ライセンス、ノウハウ、技術支援、経営協定の承認は必要なく、財務局（Undersecretariat
of Treasury）に登録するのみでよい。
会社の設立、増資、既存トルコ会社株式の購入のために導入された外貨（現金を含む）
は外貨預金口座でブロックされることがある。
国営企業の民営化にあたり、外国資本の参入が望まれている。国際調停を認め、外国資
本直接投資を阻害するものを除くようトルコ憲法を修正した以降は、エネルギーや通信、
インフラ事業への外資の参加が期待されている。
6-6. 外国直接投資促進策
外国直接投資を促進する法令は 1954 年制定の法律第 6224 号が主に関係する。その基本
方針は、国内資本と海外資本を公平に扱うということである。外国企業の助成策としては、
一般助成法（General Incentive Regime）、中小企業助成、後開発地助成がある。一般助成
法による主な助成には関税と基金課税の免除、投資控除、輸入ないし地元調達機器の付加
価値税免除、税等の免除、信用供与がある。
投資のために輸入された機械・機器の関税及び資金への課税が免除される。輸入される
機械・機器は外国投資総局により承認された機械・機器リストに載っている必要がある。
中間製品や原材料はこの制度では免除の対象とならない。
投資控除は法人税の免除である。投資助成証明の範囲内における建物、機械、機器、輸
送、設置の経費は投資控除となる。
外国投資総局が認めた輸入機器リストに載っている機器の輸入に際し、付加価値税は免
除される。また外国投資局が認めたリストに載っている機器を国内で調達する場合、付加
価値税は免除される。
投資の完了から 2年以内に 1,000US ドル以上の輸出を達成した投資家は、税、関税、料
金の免税を以下に関して受けることができる。
・会社設立
・投資期間内における増資
・1年以上の投資信用供与の授与
・投資関連の土地・不動産の登録
信用供与が受けることができるものは次のとおりである。
・技術開発投資
・環境保護のための投資
・科学技術最高委員会ないしトルコ科学技術研究委員会
- 16 - トルコ
（TUBITAK : www.tubitak.gov.tr）による最優先技術分野
・技術発展ゾーン内での投資
・地域開発を目的とした投資
6-7. 会社設立手順
6-7-1. 第 1 段階
外国投資総局に以下の書類を提出する。
・海外で登録されている法人：活動証明書（関連トルコ領事館の認証付きないし外国
公式書類合意による承認の必要の廃止条項にのっとったもの）及び前年の活動報告
・海外に居住する個人：パスポートの写し（公証人の認証付き）及び詳細な通商産業
的背景と証拠書類
・会社資本として各外国人パートナーが最低 5万 US ドルをトルコにもたらすことにつ
いての合意書
・設立を予定する会社の条項案
・申請手続きにおいて対応者となる弁護士への株主からの手続き委任状
・添付参考資料にのっとり準備された申請書
6-7-2. 第 2 段階
会社設立を公表するため、産業通商省に申請する。
6-7-3. 第 3 段階
許可証（赤紙）を裏書するため、外国投資総局に以下の書類で申請する。
・許可証原本
・その会社の設立が公表された貿易登録公報（Trade Registry Gazetta）
・外国資本がトルコリラに換金された場合は換金証書。外国預金口座に保管されてい
る場合は銀行の書類。（換金証書ないし銀行書類は、外国資本会社の名と外国人パー
トナーの名、外貨の送金元の国名、通貨量、US ドル換算額、トルコリラ換算額、通
貨が会社の資本として導入された旨の記述が必要である。）
6-8. 自由貿易ゾーン
2002 年現在で 22 の自由貿易ゾーンが設定されている。それらは Europe、Istanoul
Ataturk Airport、Istanbul Leather and Industy、IMKB、Istanbul Thrace、Kocaeli、Bursa、
Izumir Menemen Leather、Aegean、Denizil、Antalya、Kayseri、Mersin、Adana-Yumurtalik、
Gaziantep、Mardin、Eastern Anatolia、Rize、Tranbzon、Samsun である。自由貿易ゾー
ンの利点は以下のとおりである。
・ゾーン内の活動による収入は全ての税（収入、法人、付加価値）が免除。
・許認可は１つの政府機関が取り扱うので、官僚主義の弊害が少ない。
・世界の他のフリーゾーンと異なり、トルコ国内への販売も認められる。（国内市場へ
の販売は商取引額の 0.5%の手数料の対象となる。）
・フリーゾーンの収益と収入はトルコを含むいかなる国へも送金可能で、事前承認が
- 17 - トルコ
不要であり、税、関税、手数料の対象とならない。
・地中海、エーゲ海、黒海の主要港の近傍にある。
・操業許可期間は、賃借人は最大 10 年、ゾーン内に事務所を設置したいと望む投資家
は最大 20 年である。操業許可が製造に関するものである場合は、それぞれ 15 年と
30 年が最大となる。操業許可は 99 年まで延長可能。
・ゾーンでの操業開始後 10 年間はストライキや工場閉鎖は適用されない。労使間の団
体交渉に起因する争議が発生した場合は最高仲裁委員会で取り扱われる。
・フリーゾーンにおいて、フリーゾーン法の条項に反する地方自治体法、パスポート
法、外国投資法、外国投資促進法その他の法律の条項は適用されない。
6-9. 労働事情
6-9-1. 労働法
労働法（No.1475）の規定によれば、1年以上雇用する場合は契約書を交わす義務がある。
労働契約の取り消しは、15 日前の事前通告を条件として双方にとって可能である。
法定労働時間は週 45 時間である。残業は 1日 3時間、年 90 日を越えてはならない。また
地下作業では残業は禁止されている。通常の残業代は日中の 50%増しで、日曜日と祝日は
100%増しである。
外国人をトルコで雇用する際は、外国投資総局で雇用許可を取得するとともに、内務省
で在留許可を取得する必要がある。ただし外国人が就ける職種には制限があり、医師、歯
科医、助産婦、看護婦、獣医、眼科医、公認会計士、弁護士、病院管理責任者、医薬品工
場の責任者はトルコ市民でなければならない。
6-9-2. 労働組合
労働組合の主なものは以下の４団体である。加盟労働者数は 2,648,927 人で、組織率は
11.9%である。
DISK （Confederation of Revolutionary Worker's trace Unions）
TISK （Turkish Confederation of Employers' Union）
TURK-IS （Confederation of Turkish Workers' Trade Union）
HAK-IS （Confederation of Rights of Turkish Workers' Trade Union）
6-9-3. 休日
有給休暇日数は以下のとおりである。
勤務年数 有給日数
1－5 12
1－15 18
15+ 24
祝日は 1/1、4/29、5/19、8/30、10/29 であり、その他に断食 3日、犠牲 4日がある。
- 18 - トルコ
7. 地質・鉱床概要
トルコは、古生代後期にはテチス海の海域であったが、ジュラ紀から始まるアルプス造
山運動により火成活動を伴う変動帯として陸化した。
構造区としてはトルコの北から南に以下の東西系の帯状構造に 4区分される。
Pontid belt(ポントス帯):黒海南岸に沿う地域で、基盤岩はデボン紀から石炭紀の変成
岩類及び貫入花崗岩類で、変動帯の背弧側にあたる。白亜紀に黒海の拡大が起こり、この
背弧海盆に堆積岩が堆積し、海成火山活動が生じ、第三紀には陸上の火山活動が起こった。
鉱床としては、VMS、Porphyry copper、Skarn 及び Vein(Au)などがある。鉱山としては、
Cayeli(18Mt,Cu4.3%,Zn7%) 、 Murgul(99Mt,Cu1.16%) 、 Kure-Asikoy(15.2Mt,Cu1.69%) 、
Kure-Bakibaba((4.4Mt,Cu3.59%) 、 Lahanos(2.3Mt,Cu3.6%,Zn2.4%) 、
Cerattepe(2.8Mt,Cu5.1%:3.6Mt,Au3.8g/t,Ag151g/t)などがある。
Anatoid belt(アナトリア帯): 変動帯の中軸にあたり、古生代から白亜紀の変成岩が及
びオフィオライトが分布し、さらに第三紀には陸上の火山活動が起こった。鉱床としては、
交代鉱床、Porphyry copper、Skarn、Vein(Au)、ラテライト、硼砂、クロム鉱床などがあ
る。鉱山として Ovacik(openpit0.56Mt,Au13.3g/t:underground0.66Mt,Au12.5g/t)、ニッ
ケルラテライト鉱山として Caldag(110Mt,Ni1.1%,Co0.05%)、Gordes(70Mt,Ni1%,Co0.1%)が
ある。
Taurids(タウルス帯): 変動帯の前弧側にあたり、テチス海に堆積した石灰岩等の中生代
の地層からなり、第三紀には陸上の火山活動が起こった。鉱床としては、VMS、Porphyry
copper、Vein(Au)、Mississippi Valley-type、交代鉱床、クロム鉱床などがある。鉱山と
しては Ergani―Madenkoy(56Mt,Cu1.35-5.5%)がある。
Border fold belt(周辺褶曲帯):シリア、イラク国境沿いに分布しており、カンブリア紀
から第三紀に至るまで継続的に堆積された地域である。
金属鉱床の徴候は明らかでないが、石油資源として重要地域である。
- 19 - トルコ
8. 鉱山概要
トルコの主要鉱山の概要を表に示す。
鉱山名 鉱種 会社名 概要
Cayeli Zn
Cu
Inmet Mining(加、55%)
Eti Holding(45%)
VMS 型鉱床。2002 年の生産量(精鉱中金属量)は
亜鉛 33,100t、銅 32,600t。
Murgul Cu
Zn
Blacksea Copper VMS 型鉱床。1993 年生産開始。鉱量枯渇による
閉山間近との報道あり。
Ergani Cu Etibank 1930 年開山、1998 年に銅精鉱 8,000t/年生産。
1998 年時点で閉山間近との報道あり。
Caldag Ni European Nickel(英) 鉄ニッケル・ラテライト型鉱床。2003 年 4 月生
産開始。粗鉱生産3万 t/月。ニッケル品位1.4%、
資源量 44 百万 t。
Ovacik Au
Ag
Newmont Mining(加) 2001 年生産開始。浅熱水性石英脈。金品位
15g/t。2004 年 1～8月、金生産量 3.4t。
銅は Cayel 鉱山、Murgul 鉱山、Ergani 鉱山、Kure 鉱山から、亜鉛は Cayeli 鉱山から生
産されている。2003 年には Caldag ニッケル鉱山が生産を開始した。その他に、環境問題
に関する長い係争の後に 2001 年に生産を開始した Ovacik 金鉱山がある。
Inmet Mining 社（本社カナダ）が経営する Cayeli 鉱山の 2002 年の生産量（精鉱中金属
量）は、亜鉛が 33,100t で前年の 30.8%増、銅が 32,600t で 1.2%減であった。売上高は 73.
6 百 C ドル、操業利益は 24.9 百万 Cドル、純利益は 9.2 百万 US ドルであった。Cayeli 鉱
山では 2002 年 10 月 25 日に落盤事故があり、6週間出鉱できなかった。12 月 9 日に生産能
力の 50%で再開したが、フル操業は 2003 年の第 2四半期になるみこみである。事故による
生産停止にもかかわらず、相当量の精鉱の在庫があったため、販売に影響はなかった。
Cayeli 鉱山における 2002 年の設備投資額は 8百万 US ドルで、主に粗鉱処理能力を 25%増
強して年 125 万 t とする工事と、廃さいパイプライン交換に向けられた。2003 年は 6百万
US ドルの予定で破砕機の増強、深部鉱体採掘に関する技術的な詳細検討を行う。Inmet
Mining 社は 2002 年 3 月に Cayeli 鉱山を有する Cayeli Bakir Isletmeleri 社の株式 6%を
3. 2 百万 C ドルで買い増して所有比率を 49%から 55%とした。2004 年 5 月に同社と Aur
Resource 社（トロント）の合併計画が持ち上がったが、6月には契約交渉が中止となった。
2004 年 9 月には、Inmet Mining 社（トロント）は 4,925 万 US ドルでトルコの Cayeli 銅・
鉛鉱山の 45％の権益を購入し、既に所持していた 55％を加え、100％の権益を取得した。
2005 年 1 月 26 日、Cayeli 銅亜鉛鉱山の操業状況を発表した。同鉱山は、2003 年末の時
点で確認埋蔵量が 660 万ｔ、予想埋蔵量が 940 万ｔ（銅品位 3.6％、亜鉛品位 5.6％）、2004
年は 76.5 万ｔ（銅品位 3.9％、亜鉛品位 5.8％）生産した。2002 年 10 月の支柱崩壊事故
- 20 - トルコ
で、年産 125 万ｔの生産目標は不可能となっていたが、これまで及び今後の投資 22 百万ド
ルで、2006 年にはこの目標に達することは可能であるとしている。また同社は、Cayeli
銅亜鉛鉱山から東に100km離れたCerattepe銅鉱床を開発し、2005年末には2.5万ｔ生産、
Cayeli 鉱山の処理工場で処理を始めるとしている。
トルコの銅生産の 1/3 を占める Myrgul 鉱山は Blacksea Copper Enterprises 社が経営し
ているが、残存鉱量は 1 年を切ったと報道されている。国営企業である Karadeniz Bakir
Isletmeleri 社は 2002 年に銅 32,500t をトルコ北部の Samsum のプラントで生産し、うち
2,500t を輸出した。2001 年の生産量は 32,000t であった。2003 年は 2002 年と同じ 32,500t
を計画している。
クロム鉄鉱の採掘は Eti Holding 社他によって行われている。Antalya プラントは低炭
素フェロクロム 8,600t、Elazig プラントは高探査フェロクロム 8万 tの生産能力がある。
9. 新規鉱山開発状況
9-1. Cerattepe
Inmet Mining Corporation の所有で、Artvin 市の北 5km、Cayeli 鉱山から 200km の距離
にある。
鉱量は以下のように見積もられている。
Category Mt Cu(%) Zn(%) Au(g/t) Ag (g/t)
Probable 1.32 10.0 0.5 1.3 29
過去に採掘されたことがあり、以下のように見積もられていた。
Category Mt Cu(%) Au(g/t) Ag (g/t)
Probable(oxide) 3.0 - 4.2 151
Probable(sulphide) 3.7 5.2 1.2 25
Indicated(oxide) 5.2 3.8 117
Indicated(sulphide) 0.2 5.2 1.8 30
火山性塊状硫化物鉱床で、厚さは最大 70m に及び、輝銅鉱からなる高品位の二次富化帯が
あり、鉱化年代は上部白亜紀である。
9-2. Kisladag
トルコ西部にあり、Eldorado Gold Corporation の所有で、確定・推定鉱量は 135Mt、
Au1.16g/t と見積もられている。2005 年度には生産開始し、初年度生産量 5.1t、2 年度は
7.5t の計画で、 Mine Life は 14 年の予定である。
- 21 - トルコ
10. 探査状況
10-1. Cayeli Bakir Isletmeleri 社
Cayeli Bakir Isletmeleri 社は Teck Cominco 社(カナダ)から Rize 鉱区を 2003 年 7月に
取得した。取得価格は 15万 US ドル及び 2%の net smelter return である。Teck Cominco 社
が 1988 年に取得した Rize 鉱区は Cayeli 社の Cayeli 鉱山を取り囲んでおり、鉱床下盤の
Cayeli 流紋岩が 10km に渡り分布しているが、十分な探鉱は実施されていない。Inmet 社の
Frank Balint 副社長は、新しい塊状硫化物鉱床の発見の可能性が高く、Cayeli 鉱山の既存
設備を利用できるという利点があると述べている。Inmet 社は 2003 年 4月にも Teck Cominco
社からCayeli鉱山から200kmの地点にあるCerattepe銅・金鉱床を取得している。Cerattepe
鉱床の開発も Cayeli 鉱山の既存設備を利用する計画である。
10-2. Anatolia 社と Rio Tinto 社
Anatolia Mineral Development 社(カナダ)と Rio Tinto Mining & Exploration 社(英)
は、2000 年 4 月に締結したトルコにおける共同探鉱合意について、2007 年末まで 3年延長
することで 2003 年 11 月に合意した。合意によれば、Rio Tinto 社の初期探鉱への最低支
出金額は 1年目が 30 万 US ドル、2～6年目は 50 万 US ドルである。Anatolia 社の事務所経
費として年 216,000 US ドルを支払う。初期探鉱の操業権は Anatolia が有する。プロジェ
クトの 3分の 2を取得するためには Rio Tinto 社は選択したプロジェクトそれぞれについ
て最低 10 百万 US ドルを調査に支出し、Anatolia 社に 1.5 百万 US ドルを支払う必要があ
る。
Rio Tinto社はCopler金鉱床の経済性に関する概念検討を終え、Anatolia社に連絡した。
Anatolia 社の発表によれば、Rio Tinto 社の検討は JORC 基準による推定資源量(Inferred
resource)評価、概念的露天掘り採掘計画、予備的冶金試験からなる。推定資源量は酸化鉱
が 13.2 百万 t、金品位 3.0g/t で、硫化鉱が 32.8 百万 t、金品位 2.3g/t であった。冶金試
験の結果、酸化鉱も硫化鉱もまずまずの回収率を示した。酸化鉱の回収率はmanganese zone
が 92%、marble zone と main zone は 80%であった。硫化精鉱からの回収率は、main zone
が 80%、manganese zone が 83%であった。Bio-reaching と roasting 後はそれぞれ 92%と 96%
に改善された。その後の計画は発表されていない。Anatolia 社は｢重大な欠点は見つかっ
ていない｣と慎重なコメントを発表している。
10-3. Odyssey 社と BHP Billiton 社
Odyssey Resources 社(カナダ)は BHP Billiton 社(英豪)と共同でトルコでの銅金鉱床探
査を進めている。2003 年にその第 1フェーズを終了した。対象地域はトルコ南東にある面
積 15 万 km2の範囲で、隣国イランで斑岩型銅・金鉱床が多く知られている地質ゾーンの延
長にある。同社は既存情報や衛星画像(LANDSAT)の解析を行ったうえで、50 か所以上につ
いて現地踏査を行い、斑岩型鉱床が期待される有望地 3 か所を抽出した。現在両社は第 2
フェーズの計画を検討中であるが、さらなる現地調査の実施と鉱区の設定申請が含まれる
見込みであると Odyssey 社はコメントしている。
- 22 - トルコ
Odyssey 社はその他に Altintepe 鉱区でボーリング調査を実施中である。また Tavsan 鉱
区ではトレンチ調査を実施中である。対象鉱種はいずれも金である。
10-4. Eldorado Gold 社
トルコの Kisladag 金鉱床開発を進めている Eldorado Gold 社(カナダ)によれば、トルコ
の付加価値税制が変更され、同プロジェクトの経済性にマイナスの影響が出るという。こ
れまでは金の輸出に関する付加価値税は免除され、金鉱山に係る設備の輸入や建設に関し
ても免除されていたが、変更によりいずれも免除されなくなるため、建設コストと生産コ
ストが上昇する。トルコの付加価値税率は一般に 18%である。税制を再変更して免税が適
用されるよう、同社はトルコ政府と交渉中である。同プロジェクトは経済性評価の見直し
中であり、2004 年 5 月の完了を予定している。2004 年 3 月現在、同社は許可取得の最終段
階にある。地表権の取得はほぼ終了に近いという。
10-5. Eurasian Minerals 社
Eurasian Minerals 社(カナダ)は浅熱水性金鉱床及びポーフィリー型金銅鉱床を対象と
した初期探鉱をトルコと行うべく、2004 年 1 月までに 20 鉱区取得した。それらの既存情
報を整理し、2004 年の探鉱計画を立案中である。なかでも 2004 年 1 月に入札により政府
より取得したSisorta鉱区はトルコ政府鉱物資源局(MTA)により1995年から1998年にかけ
て調査され、ボーリング調査により金鉱化が把握されている。
なお、同社は Barrick Gold 社（加）とトルコにおける探鉱に関する戦略的提携契約に署
名したと 2004 年 9 月 23 日に発表している。両者は 4年間にわたり広域的探鉱を行う探鉱
ジョイントベンチャーを形成し、Eurasian 社がトルコに有する 64 の探鉱鉱区、計 1,724
ｋｍ２について排他的に探鉱を行う。探鉱事業の操業者は Eurasian 社であり、Barrick 社
は 4年間で合計 2百万 US ドルを探鉱費として提供する。
Barrick 社は特定地域を選定して指定プロジェクトとすることができ、指定プロジェク
トに 10 百万 US ドル支出することで権益 70％を得ることができる。最初の特定地域は
Sisorta 鉱区であり、高硫化型金鉱床の存在が既往調査により知られている。
10-6. European Nickel 社
European Nickel 社(英)は BHP Billiton 社(英豪)とニッケル・ラテライト鉱石のヒープ・
リーチング工程を共同開発することで合意したと2004年3月に発表した。European Nickel
社は Caldag 鉱床(トルコ)の開発準備中であり、2006 年の生産開始と最終ニッケル生産規
模 15,000t/年を目標としている。Caldag 鉱床はバルカン型ニッケル・ラテライト鉱床で、
鉱石は粘土成分含有量が低く、大気圧下での単純なヒープ・リーチングでニッケルを回収
できるという長所がある。トルコからバルカン半島にかけて同種のニッケル鉱床が多数分
布するが、同社は今後それら鉱床を取得し、開発したい意向である。
さらに European Nickel 社は Caldag ニッケル鉱床(トルコ)の経済性評価を開始したと
2004 年 4 月 27 日に発表した。ロンドン株式市場で 15 百万ポンドを調達した同社は、Major
社と 16,000m の RC ボーリング実施契約を結んだほか、Wardel Armstrong 社と資源推定と
- 23 - トルコ
鉱山設計について、Scott Wilson 社と環境影響評価について、GBM 社と冶金設計について
契約を締結済みである。試験ヒープ・リーチングが本評価の鍵を握っており、その結果に
より操業計画と操業許可申請が行われる。同社はニッケル年産 15,000t 規模での 2006 年の
生産開始を予定している。
なお、同社は、2004 年 10 月から開始している同社のトルコ Caldag ニッケルプロジェク
トにおけるニッケル・ラテライト鉱石の試験的ヒープ・リーチング試験の初期の成果を発
表した。試験は、ニッケル品位 1.15％の鉱石 4,200ｔを破砕し、複数のプラスチック層の
上に積み、酸を散布してニッケルを回収するものであるが、鉱石の堆積物に酸を湿らせて
24 時間後には最初の液体のフローが、48 時間後には溶解液中にニッケルが認められ、3週
間以内で優れた成果を達成した。溶解液は更なる精製プロセスに必要なレベルの 50％のレ
ベルに既に達している。6,000ｔの鉱石による 2 回目のリーチング試験も計画されており、
本プロジェクトの経済性評価は 2005 年半ばに完了の予定である。この方式でニッケルが経
済的に回収できれば、トルコやバルカン半島に分布する類似のニッケル鉱床の開発に適用
できると同社は見込んでいる。
10-7. Nuinsco 社
Nuinsco 社（加）は、トルコ東北部の Berta 銅探鉱プロジェクトに関するオプション契
約を Noranda 社（加）と締結したと 2004 年 10 月 14 日に発表した。それによれば、Nuinsco
社は2005年10月末までに35万USドルを支出することで権益50％を得る。また契約では、
2004 年内に 5万 US ドル支出すること、2005 年 10 月末まで最低 1,000ｍのボーリングを行
うこと、Noranda 社は 1.5％のネット・スメルター・ロイヤルティを有すること、権益が
50％未満になるまでは Noranda 社が操業者となること等が規定されている。
Bertaプロジェクトは3鉱区計59.5679ｋｍ２からなり、黒海沿岸から50ｋｍ南に位置し、
標高 1,500ｍの急峻な山岳地帯にある。Cayeli 鉱山、Murgul 鉱山等の塊状硫化物鉱床を多
く有する。Pontide 鉱床地帯に属するが、Pontide 鉱床地帯はイランに続く Tethyian 鉱床
帯の一部でもあり、Tethyian 帯は Sarchesmeh（イラン）等の斑岩銅鉱床を多く有すること
で知られているが、Berta 地域におけるこれまでの探鉱活動は地質図作成と地化学探査に
限られている。両社は今年の野外調査を 10 月末までに終え、結果解析後、2005 年の野外
調査計画を立案する予定であるという。
11. 製錬所概要
トルコには銅精錬所が３つあり、うち 1つが Eti Holding 社、2つが Black Sea Copper
Works 社のものである。
クロム鉄鉱の採掘は Eti Holding 社他によって行われている。Antalya プラントは低炭
素フェロクロム 8,600t、Elazig プラントは高探査フェロクロム 8万 tの生産能力がある。
- 24 - トルコ
鉱山製錬所位置図
Kagithane
Gebze Istanbul
Bursa
Gordes
Izumir Kayseri
Ankara
Adana
Samsuｎ Cayeli
Murgul
Cerattepe
Turkey
Syria
Cyprus
操業鉱山 Turkey-Cu, Murgul,:Lat;41°16′N,Long;41°34′E. Turkey-CuZnAg, Cayeli, Lat;41°05′N,Long;40°44′E. 20Km E of Rize
?Turkey-Ni, Caldag, 70Km W of Izmir? Turkey-Ni, Gordes,: Lat;38°45′N,Long;28°17,′E. Manisa 地域 探鉱開発
Turkey-CuAu, Cerattepe,5Km N of Artvin, Turkey-Cu-General: Gumushane: Guzelyayla: Derekoy: Ulutas: 精錬所
Turkey-Cu, Gebze Copper Refinery, Gebze: Lat; 40° 47' 52N,Long; 29° 25' 50E Turkey-Cu, Kagithane,: Lat; 41° 4' 46N,Long; 28° 57' 53E Turkey-Cu, Samsun,: Lat; 41° 17' 12N,Long; 36° 19' 48E
- 25 - トルコ
Turkey-Zn, Kayseri,: Lat; 38° 43' 56N,Long; 35° 29' 7E
12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況（金属鉱業事業団、JMEC 等）
海外地質構造調査
1976～1977 年度 アナトリア
資源開発協力基礎調査
・資源開発調査
1973～1975 年度 トルコ北東部
1977～1980 年度 ツンジェリ・コプダウ
1984～1986 年度 ギュムシャネ
1988～1990 年度 チャナッカレ
1992～1994 年度 キューレ
1995～1997 年度 エスピーエ
2002～2004 年度 ホパ
・フォローアップ拡充／アフターケア
1987 年度 ギュムシャネ
1991 年度 チャナッカレ
- 26 - トルコ
第 2部 地質解析
1. 地質・地質構造
トルコの地質は一般的に、その地形上の特色と合致する形で、ポントス褶曲帯、アナト
リア中間地塊、タウルス褶曲帯及び縁辺褶曲帯の 4つに大きく分類される。
ポントス褶曲帯にはオルドビス紀以降の地層が分布する。東部にはジュラ紀から古第三
紀にかけて玄武岩－流紋岩の海底火山活動があり、古第三紀に花崗岩の貫入もみられる。
これに対し、西部ではカレドニアあるいはヘルシニアン造山運動があり、変成岩、古生代
の小規模花崗岩体が分布する。本褶曲帯は、第三紀漸新世には陸化している。
アナトリア中間地塊には、石炭紀以降の地層が分布し、オフィオライト累層、中生代末
構造運動、花崗岩小岩体が見られる。本地域は、第三紀漸新世から陸化の傾向が見られる。
タウルス褶曲帯はカンブリア紀以降の地層からなる。白亜紀以降に塩基性海底火山活動
があり、オフィオライト累層が見られ、中生代末の構造運動、小規模花崗岩の貫入があっ
た。本褶曲帯は、第三紀鮮新世に陸化している。
縁辺褶曲帯は、南東のアラブ台地の縁辺沈降帯でカンブリア紀から第三紀鮮新世に至る
まで断続的に堆積が行われた。
トルコのテクトニクスについては、これまでにいくつかの報告がなされているが、ここ
では主に Sengor and Yilmaz（1981）に基づいて記載する。
1-1. ペルム紀～三畳紀
ペルム紀には、現在のトルコ全土は古テチス海に面するゴンドワナ大陸の北縁の一部を
形成していた。東部ポントスでは、この時期赤色アルコース質岩、オルソクオーツァイト、
石灰岩－ホルンブレンド・黒雲母安山岩互層、凝灰岩及び他の珪質な溶岩類などからなる
厚い海成層が基盤の変成岩類上に堆積した。基盤の変成岩類は、複雑に変形を受けた石英・
長石質片岩、千枚岩及び粘板岩からなる。Gumushane 花崗岩の貫入もこの時期である。三
畳紀には東部ポントス地域では顕著なテクトニクスの変化はなかった。これに対し、アナ
トリア帯以南ではペルム紀初期に浅海性の炭酸塩岩の堆積があり、おだやかなプラットフ
ォームの環境にあったことが覗えるが、三畳紀にはこのプラットフォームの 2ヶ所で分裂
が始まり拡大性海盆が形成されていった。前期三畳紀には Biga 半島から Bilecik, Ankara
を経て Tokat massif にかけてリフト帯が形成された。
1-2. 前期ジュラ紀
地理学的には、前期ジュラ紀の古テチス海はペルム紀の状態が継続しているといえる。
しかしながら、この時期、古テチス海にはより多くのフリッシュ堆積物が供給されている。
古テチス海は中期ジュラ紀に閉じるが、この時期には北側のプレート（Scythian プラット
フォーム）への沈み込みにより砕屑物の供給が増えたことが覗える。東部ポントス地域で
は、この時期にソレアイト質の火山活動が活発になるとともに、古テチス弧南側の火山軸
の近くでリフトが形成された。
- 27 - トルコ
1-3. 中期ジュラ紀
中期ジュラ紀には、古テチス海が完全に閉じ、Cimmerican 大陸（ポントス）と Scythian
プラットフォームの衝突が起こった。東部ポントスの北部にはマグマ弧が現われ堆積作用
が中断されたが、南部ポントスでは堆積は続いている。古テチス海におけるフリッシュの
堆積は前期ジュラ紀末～中期ジュラ紀初期の間中断され、その後すぐに東部ポントスの大
陸性基盤が Scythian プラットフォームの堆積物とオフィオライト質層に衝上した。これに
より大規模な変形作用が起こり、海洋性岩相に緑色片岩相の変成作用をもたらした。後に、
この衝上断層に沿って花崗閃緑岩からト－ナライトといった組成を持つ多様な深成岩体の
貫入が起こった。
1-4. 後期ジュラ紀～前期白亜紀
プレートの収束は中期ジュラ紀の古テチス海の閉塞後も続き、東部ポントスの東部とコ
ーカサス地域ではさらに地殻の厚さが増すとともに、チベットタイプの火山活動が起こっ
た。東部ポントスでは、後期ジュラ紀から前期白亜紀にかけて陸棚域における炭酸塩岩の
堆積と、主にタービダイトによるコンチネンタル・ライズの成長が続いた。Sakarya 大陸
では、後期ジュラ紀の間、浅海性の炭酸塩岩の堆積環境にあったが、前期白亜紀に入ると
その環境は遠海性へと比較的急激に変化し、深海性のチャート質の炭酸塩岩が沈積した。
また、トルコに賦存する新テチス海のオフィオライトの大半はこの時代のものである。
1-5. 後期白亜紀～暁新世
後期白亜紀の初期にはポントスに沿って沈み込みが起こり始めた。アフリカとヨーロッ
パの相対的な位置関係は、148ma～80ma にかけて南北方向に大きな収束があった。東部ポ
ントスでは、白亜紀中の沈降、遠洋化に続いて、ソレアイト質玄武岩、流紋岩及び凝灰岩
の広い地域に及ぶ活発な火成活動が起こった。これらの火山岩は、一部では遠洋性の石灰
岩を不整合に覆った。後期白亜紀には、ロードープ－ポントス島弧の裏側に黒海が開き始
めた。Sakarya 大陸では、中期白亜紀の間カルクアルカリ系列の激しい火山活動があった。
後期白亜紀は新テチス海の構造史に大きな変化が起こった時代で、全ての前線で収束が始
まり、大規模なオフィオライトナッペが形成されている。ロードープ－ポントス岩塊の南
縁と Sakarya 大陸の間では、オフィオライト質のメランジが北方にオーバースラストして
いる。
1-6. 前期・中期始新世
後期暁新世から前期始新世の間に、アナトリアータウルスプラットフォームとポントス
の衝突が起こった。これにより、アナトリア－タウルスプラットフォーム内で大規模な変
形が起こると同時にポントスでは低角度のオーバースラストが広く発達した。前期及び中
期始新世にポントス全域ではカルクアルカリ系安山岩溶岩、砕屑岩及び火山性フリッシュ
堆積物等の火成活動がみられた。一方、ポントスとアナトリアの縫合帯は、浅水性及びテ
ラス性堆積物により覆われた。
- 28 - トルコ
1-7. 後期始新世～前期中新世
後期始新世から前期中新世にかけては、南北方向の収束が引き続き起こる一方、アナト
リアは上昇し、削剥が起こった。東部ポントスの Rize 深成岩体の貫入が完了したのもこの
時期である。
1-8. 前期・中期始新世
前期から中期始新世の間に、Cungus 海盆が完全に閉じられ、Bitlis 縫合帯に沿ってユー
ラシア大陸とアラビアプラットフォームの衝突が起こった。この衝突はトルコの構造に大
きな影響を与えた。北アナトリア及び東アナトリアトランスフォーム断層も、このアラビ
アプラットフォームの衝突によって形成されたものである。
1-9. 鮮新世～現在
収束はトルコ－イラン高原で続いており、これに伴う鮮新世～第四紀のチベットタイプ
の火山活動が広くみられる。一方、アラビアプラットフォームの北部では始新世の
Bitlis-Zagros 縫合帯での衝突に伴う褶曲－スラスト帯（縁辺褶曲帯）が形成された。
トルコの地質図及び地質構造図を図 1-1 及び図 1-2 に示す。
第 1-1 図 トルコの地質 (MMAJ 1981)
- 29 - トルコ
第 1-2 図 トルコの地質構造 (MMAJ 1981)
- 30 - トルコ
2. 鉱床
2-1. 鉱床生成区
西テチス域は、パキスタンからイラン、トルコを経て東欧に延びる複合マグマ弧に代表
される(第 2-1 図)。この弧はアフリカ大陸が衝突を始めたときにはじまり、数多くの副弧
が長期に渡る圧縮性の構造運動中にユーラシア大陸に付加された。この結果生じたプレー
トがプレートの下にもぐりこんだり、押し上げられたりし、鉱床生成の場となった。
西テチス域の鉱床生成は、白亜紀までさかのぼる。当時大量の火山性硫化物やこれに付
随する鉱物が海盆に生成された。その例としては東PontidesのCayeli鉱山があげられる。
海ができると大陸境界の沈下を引き起こし、大きな大陸棚を形成するため、下―中期白亜
紀には炭酸塩を母岩とする鉛・亜鉛鉱床が形成された。白亜紀後期の衝突縫合線において
海底プレートがせりあがったため、テチス海西部全体に、クロム、マンガンなどの鉱床が
形成された(第 2-2 図)。
白亜紀後期には Pontides 地域における沈み込みによる海底火山活動により Pontides に
VMS 鉱床が形成され、同時に Cyprus 型鉱床も形成された。
始新世から漸新世にかけては浅熱水性の鉱化作用があり、東 Pontides の Gumashane などの
Porphyry Copper 鉱床などが形成された(第 2-3 図)。
後期漸新世から中新世にかけては、大陸弧状のテクトニクスとマグマとの複合活動によ
り大規模な Porphyry Copper 鉱床や浅熱水性金鉱床も生成した(第 2-4 図)。
鮮新世後期から第四紀にかけては、第四紀堆積盆にホウ砂や重炭酸ソーダ石鉱床などが生
成した。
トルコの代表的な鉱床としては、以下のものがある。
VMS、Cyprus 型鉱床(第 2-5 図)
Deposit Size Age
Cayeli 25Mt: Cu4.7%,Zn7.3%,Ag65g/t U.Cretaceous
Kure 15Mt: Cu1.9%,Ag10g/t Jurassic
Maden 13Mt: Cu1.8% U.Cretaceous
Murgul 80Mt: Cu1.1%,Ag25g/t U.Cretaceous
Madenkoy 14.5Mt: Cu3.0%,Ag1g/t U.Cretaceous
Cerattepe 4.1Mt: Cu4.9%,Ag21g/t U.Cretaceous
Porphyry Copper 鉱床
Deposit Size Age
Gumashane 80Mt: Cu0.5% Palaeocene
Guzelyayla 186Mt: Cu0.3% Palaeocene
Derekoy 221Mt: Cu0.24%,Mo0.03% Palaeocene
Ulutas Low Grade Palaeocene
- 31 - トルコ
浅熱水性金鉱床(第 2-6 図)
Deposit Size Age
Ovacik 3Mt,Au10g/t,Ag9g/t Miocene
Kisladag 6M Oz Miocene
Mastra 60,000 Oz Pliocene
Efemcukuru 2.52Mt,Au13.7g/t Miocene
Kucukdere 1.4Mt,Au6.4g/t Miocene
Carbonate-Hosted Base Metal Deposit
Deposit Size Age
Derekoy-Karligin Many small deposits Eocene
Podiform Cr deposit
Deposit Location Province
Harmancik Northwest Bursa
Eskişehir Northwest Bursa
Elaziğ East Guleman
Erzincan Northeast Kopdağ
Adana Southeast Kayseri
Köyceğiz Southwest
Fethiye Southwest
Muğla Southwest
Ni Laterite
Deposit Size Location
Çaldag 38Mt, Ni1.14%,Co0.05% West
Gordes 70Mt,Ni1%,Co0.1% West
- 32 - トルコ
第 2-1 図 Tethyan Arcs の分布
出典:Peter Leaman, 2002
- 33 - トルコ
第 2-2 図 鉱床分布(1) 出典: Peter Leaman, 2002
第 2-3 図 鉱床分布 (2) 出典: Peter Leaman, 2002
- 34 - トルコ
第 2-4 図 鉱床分布(3) 出典: Peter Leaman, 2002
第 2-5 図 Pontides の VMS 鉱床の分布
出典: Peter Leaman, 2002
- 35 - トルコ
第 2-6 図 Anatolia の金鉱床の分布
出典: Peter Leaman, 2002
- 36 - トルコ
2-2. 主要鉱山・鉱床
2-2-1. 塊状硫化物鉱床
(1) Cayeli 鉱床
Inmet Mining Corporation の所有で、鉱山開発は 1990 年に始まり、1994 年 11 月から生
産が開始された。2004 年の生産量は 120 万 t(Cu4.25,Zn6.2%)を予定している。
Cayeli 鉱床周辺の地質は、下位より上部白亜紀の石英安山岩溶岩、同質火砕岩、第三紀
の玄武岩溶岩と酸性凝灰岩からなり、これらの地層にはマール、石灰岩、泥岩などがレン
ズ状の層をなして存在する。鉱床は白色粘土化、角礫化した石英安山岩溶岩や同質火砕岩
を下盤とし、上盤の玄武岩溶岩と酸性凝灰岩との境界部に生じている。塊状と鉱染状で硫
化鉱物として pyrite、chalcopyrite、sphalerite、稀に galena、tetrahedrite を伴う。
走向延長 400m、深さ方向 500m、厚さ数 m から 80m、平均厚さ 20m、平均傾斜 60°である。
なお、Cayeli 鉱山は、Rize Property(Inmet Mining Corporation 所有)の鉱区の内側にあ
る(第 2-7 図)。
第 2-7 図 Cayeli 鉱山 と Rize Property
出典:www.inmet-mining.com
(2) Murgul 鉱床
Blacksea Copper Enterprises の所有で、トルコの Cu 生産量の 15%を占める。Artvin 地
区 Murgul の南東約 2km に位置する。この鉱床はスピライト質玄武岩を下盤とする白亜紀末
の海底噴出石英安山岩質溶岩に胚胎され、スピライト質曹長石安山岩及び凝灰岩により覆
- 37 - トルコ
われ、赤色安山岩によって貫かれている。
母岩の石英安山岩は破砕され、珪化を受けており、珪化角礫体が鉱体となっている。鉱
石鉱物としては黄鉄鉱、黄銅鉱を主体に少量の閃亜鉛鉱、四面銅鉱及び方鉛鉱を伴う。鉱
体は ESE-WNW 方向に伸び、長さ 500m、最大幅 200m、厚さ 100m に達する。可採鉱量は 4,000
万 t、品位は銅 1.25%、亜鉛 0.1%、鉛 0.05%、銀 25ppm、金 0.2ppm である （Schneider et
al., 1988）。
鉱化は鉱染状、網状及び塊状を呈する。鉱染状鉱石は、他の全ての脈状鉱石に切られる
ことから、最も初期の鉱化作用によると考えられる。鉱染状鉱石は、鉱化帯全域で産出し、
鉱石鉱物は非常に細粒で、銅品位は 0.2～0.7％である。網状鉱石は銅品位 1.0～2.5％を示
す。網状鉱石の鉱石鉱物は鉱染状鉱石に比べて粗粒で、主要鉱石鉱物の黄鉄鉱、黄銅鉱に
加えて閃亜鉛鉱や方鉛鉱もしばしば肉眼で観察することができる。塊状鉱石は、銅品位 5.0
～10.0％で、比較的短い脈の連続で特徴づけられ、鉱体の中心部分に産出する。非常に粗
粒で自形を呈する黄鉄鉱、黄銅鉱及び石英が裂罅を充填し、部分的に二次鉱物の輝銅鉱が
薄く膜状に覆っており、これは最末期に地表付近で起こったものと考えられる。
また、Schneider et al.（1988）によれば、母岩の変質は 3 帯に分類される。中心は初
期に発達した phyllic 帯で、その周囲を取り囲むように argillic 帯が発達し、さらに末期
に発達した珪化帯が大きく広がっている。
(3) Lahanos 鉱床
Kizilkaya 層石英安山岩溶岩を下盤として、厚さ 5～6m(最大 15m)のレンズ状に発達する
塊状硫化物鉱床である。下盤の Kizilkaya 層は強い白色粘土化変質を受け、一部で珪化や
黄鉄鉱鉱染の強いところも認められる。
(4) Kure 鉱床
オフィオライトの変質玄武岩質火山岩類に伴う含銅硫化鉄鉱床である。上盤はジュラ紀
の黒色頁岩で、鉱床の形態は網状または鉱染状である。鉱石鉱物は、pyrite、chalcopyrite、
sphalerite、pyrrhotite、magnetite などである。
(5) Ergani-Madenkoy 鉱床
地質は上から、始新世の礫質石灰岩、絹雲母化粘板岩及び石灰質粘板岩、赤紫色粘板岩、
白亜紀末の礁性石灰岩、赤色・黒岩チャート薄層を挟むスピライト質凝灰岩・集塊岩・輝
緑岩・礫岩・蛇紋岩・スピライト溶岩・貫入輝緑岩、含銅硫化鉄鉱床、磁鉄鉱・黄鉄鉱・
黄銅鉱の鉱染する強珪化緑泥石岩、緑泥石化輝緑岩-斑レイ岩および橄欖岩・斑レイ岩・紫
蘇輝石斑レイ岩・蛇紋岩からなる。
白亜紀のオフィオライト活動に伴う含銅硫化鉄鉱床で北西から南東にかけて、Weiss、
Mizirtepe、Anayatak、Kisabekir などの鉱体がある。オフィオライト帯は東北東-西南西
に伸びており、その東部には Madenkoy、Kedak などがある。
- 38 - トルコ
2-2-2. 浅熱水性金鉱床
Ovacik 鉱床
Frontier Pacific Mining Corporation(Newmont Mining Corporation)の所有で、トルコ
西部に位置し、海岸から 19km、Izmir 市の北 106km にある。2001 年 6 月から生産を開始し
た。2004 年 1 月～8月までは金生産量 3,421kg であるが、同年 9月から操業を停止してい
る。売却先等を探している模様。
鉱床は、下部中新世の安山岩から石英安山岩質の火山岩類を母岩とする高品位の浅熱水
性の含金石英脈であり、北東から東方向の走向を持つ Bergama 地溝中に位置する。
周辺には古生代の変成岩類があり、マグマ活動は晩期漸新世から早期中新世にかけて起
こった。最初のマグマ活動で Kozak pluton が出現し、それに続いてその周囲に半深成岩の
貫入や火山岩の噴出を生じた。晩期から中部中新世にかけて地溝と断層が発達し、引き続
き火山岩の活動も活発であった。この地区の火山岩は主に斑岩質の黒雲母安山岩で、少量
の安山岩質角礫岩と岩屑フローを伴う。(第 2-8 図)
鉱床は 4 本の浅熱水性石英脈から構成される。そのうちの 2 本が主要鉱脈で、M 脈と S
脈と呼ばれている。M 脈は走向方向 400m、平均幅 8m で最大も 22m、傾斜方向 200m で、一
方、S脈は走向方向 400m、平均幅 10m で最大 35m、傾斜方向 200m である。なお、M脈の平
均金品位は 13.1g/t で、S脈の平均金品位は 8.1g/t である。(第 2-9 図)
金の鉱化は、早期の石英―氷長石脈と角礫岩中に認められる。
高品位の金・銀と低品位の砒素・アンチモンは石英―氷長石脈で認められ、低品位の金・
銀と高品位の砒素・アンチモンは鉱床上下盤の珪化帯に認められる。
流体包有物から鉱脈の生成温度は 150～250℃、塩濃度は 7.0 と 8.0wt%と推定される。
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第 2-8 図 Ovacik 鉱山の位置及び広域地質 出典:Huseyin Yilmaz(2002)
第 2-9 図 Ovacik 鉱床の地質及び地質断面 出典:Huseyin Yilmaz(2002)
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2-2-3. ラテライトニッケル鉱床
(1) Caldag 鉱床
2003 年に開始されたが、トルコ西部の Izmir の西 70km に位置する(第 2-10 図)。
European Nickel Plc.の所有である。鉱量は以下のように見積もられている。
Category Mt Ni(%) Co(%)
Indicated & Inferred 38 1.14 0.05
ジュラ紀のオフィオライト複合岩体中にあり、始新世から中新世の亜熱帯気候で Caldag
蛇紋岩にラテライトニッケル鉱床が形成された。鉱石の厚さは 10 から 50m である。
第 2-10 図 Caldag 鉱山の鉱区 出典:www.enickel.co.uk
(2) Gordes 鉱床
Meta Mining の所有で、トルコ西部に位置する。鉱量は以下のように見積もられている。
Category Mt Ni(%) Co(%)
Indicated & Inferred 70 1.0 0.1
2-2-4. ミシシッピバレータイプ鉱床
トルコ南部のタウルス帯には Mississippi Valley-type の鉱床が分布する。鉱化作用は
主に下部ペルム紀であるが、中部石炭紀からジュラ紀の石灰岩中に認められる。鉱床の形
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態は層状や亀裂、カルスト充填等である。主要な鉱石鉱物は菱亜鉛鉱、白鉛鉱、硫酸鉛鉱
などで、鉱化作用の下部では硫化鉱物である閃亜鉛鉱や方鉛鉱なども認められる。鉱山と
しては、Aladag、Derekoy、Cafana、Tekneli、Anamur、Bozkir などがある。
2-2-5. クロム鉱床
トルコのクロム鉱床は、podiform type で、トルコ国内の各地に分布する。クロムの生
産は世界第 3位であり、世界の生産量の 6%を占める。これまでに 100 万 t のクロムを生産
している。
主要な産地として、トルコ東部の Guleman 地区、南西部の Fethiye-Koycegiz-Denizli
地区、北西部の Bursa-Kutahya-Eskisehir 地区、南部の Mersin-Karsanti-Pinarbasi-Ilic
地区、東部の Erzincan-Kopdag 地区、南部の Iskenderun-Kahramanmaras 地区などがある。
これらの鉱床はいずれも規模が小さく、数千 tから数十万 tで百万 tクラスは稀である。
2-2-6. 鉄鉱床
トルコには多数の鉄鉱山があり、10 地域に分布するが、トルコ中部から南部の
Kayseri-Adana、西部の Balikesir-Kutahya、中部から東部の Sivas-Malatya、中部の
Kirsehir-Yozgat 地域が重要である。
トルコの鉄鉱床は、以下の 6タイプに分類される。
・スカルン鉱床:Divirigi A and B kafa(Sivas)、Karamadazi(Kayseri)
・熱水交代鉱床:Attepe(Adana)
・火山性堆積鉱床:Deveci(Malatya)、Buyuk Eymir(Balikesir)
・海底堆積鉱床:Camdag(Sakarya)
・ラテライト鉱床:Avsaoren(Eskisehir)、Karacam(Eskisehir)
・砂鉱床: Divirigi C kafa(Sivas)、Eastern Black Sea region beach deposits
なお、トルコでは酸化鉄型銅金鉱床タイプは知られていない。
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2-3. 探査状況
探査プロジェクトとしては、以下のものがある。
Project Name Type Company LocationAgidagi Au Fronteer Development Group Inc. northwest
Teck Cominco LimitedAltintepe Au Odyssey Resources Limited north(Gold Hill) Teck Cominco LimitedArmutabeli-Yolustu-Atizi Au,Cu,Pb,Zn Anatolia Minerals Development Limited southeastBaskil Porphyry Odyssey Resources Limited southeast
BHP BillitonBayat(Afyon Province) Sb Altai Resources Inc. west central Berta Copper Project Cu Noranda Inc. northeast
Nuinsco Resources LimitedBlack Sea Region Property VMS Anatolia Minerals Development Limited northCamurlutepe Au Odyssey Resources Limited centralCayeli Mine VMS Inmet Mining Corporation northeastCentral Anatolia Au,Cu Anatolia Minerals Development Limited central
Rio Tinto Mining and Exploration Ltd.Cerattepe VMS Inmet Mining Corporation northeast
Teck Cominco LimitedCopler(Cukurdere) Porphyry Anatolia Minerals Development Limited centralCorak Proterties Au Manhattan Minerals Corp. northeastDerinkoy Au,Cu,Pb,Zn Aldridge Minerals Inc. northeastEfemcukuru Au Eldorado Gold Corporation westGelemic Au,Cu Anatolia Minerals Development Limited west central
Rio Tinto Mining and Exploration Ltd.K-C District Au,Cu Anatolia Minerals Development Limited east central
Rio Tinto Mining and Exploration Ltd.Kabatas Au,Cu Anatolia Minerals Development Limited east central
Rio Tinto Mining and Exploration Ltd.Karacam Ni Rio Tinto Mining and Exploration Ltd. centralKaragoz Au Anatolia Minerals Development Limited south centralKaymaz Au Eldorado Gold Corporation westKeban Au,Cu,Pb,Zn Anatolia Minerals Development Limited southeastKemaliya Au,Cu Anatolia Minerals Development Limited central
Eldorado Gold CorporationRio Tinto Mining and Exploration Ltd.
Kirazli Au Fronteer Development Group Inc. westTeck Cominco Limited
Kirlangic Cu Anatolia Minerals Development Limited centralKisladag Au Eldorado Gold Corporation west centralKorgan Au Odyssey Resources Limited northKucukdere Au Eldorado Gold Corporation westLucky Star VMS Odyssey Resources Limited northeastMurgul VMS Dowa Mining Co. northeast
Inco LimitedOlucak Au Aldridge Minerals Inc. northeastOvacik Au Fronteer Pacific Mining Corporation west
Newmont Mining Corp. Rize VMS Inmet Mining Corporation northeast
Teck Cominco LimitedSaimbeyli Au,Cu,Pb,Zn Anatolia Minerals Development Limited southeastTac Property Au Manhattan Minerals Corp. northeast
Teck Cominco LimitedTavsan(Rabbit) Au Odyssey Resources Limited west
Teck Cominco LimitedTrab 23 Porphyry BHP Billiton northeast
Odyssey Resources LimitedTunceli Au,Cu,Pb,Zn Anatolia Minerals Development Limited east central
Rio Tinto Mining and Exploration Ltd.Uckapili Au Anatolia Minerals Development Limited south centralYahyali MV,Skarn Anatolia Minerals Development Limited south central
Teck Cominco LimitedYenipazar VMS Anatolia Minerals Development Limited central
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3. 鉱床胚胎有望地域
トルコの主要な銅鉱床は、
・ポントス帯東部に胚胎する白亜紀末の酸性火山活動に伴う黒鉱型鉱床(Cayeli、Murgul)
・ポントス帯北東部やアナトリア帯に分布する花崗岩類の活動に伴う Porphyry copper
・タウルス帯東部・中部に分布するオフィオライトに関連する含銅硫化鉄鉱床
オフィオライト帯はアナトリア帯にほぼ東西に走るものもあるが、Ergani-Madenkoy な
ど多くの含銅硫化鉄鉱床はタウルス帯東部のオフィオライト帯に胚胎している。Kure など
若干の鉱床が中部アナトリア帯に分布する。これまで発見された鉱床の規模などからタウ
ルス帯のオフィオライト帯のほうが含銅硫化鉄鉱床の胚胎の可能性は高いと考えられる。
ポントス帯東部は中生代末に島弧型のマグマ活動が盛んであった。これに伴う火山性塊
状硫化物鉱床が生成されている。これまでに多くの鉱床が発見されているが、まだ多くの
VMS 鉱床の発見される可能性の高い地域である。
上述のマグマ活動は花崗閃緑岩の活動で終了したが、この火成活動に伴う Porphyry
copper 鉱床が国境付近のアルメニア側で発見されている。この鉱化帯はポントス帯北東部
にもおよんでおり、Porphyry copper 鉱床が胚胎する。またアナトリア帯にも Porphyry
copper 鉱床の鉱徴が認められる。アナトリア帯のものは金品位の高いものも発見されてい
る。
下図に探鉱有望地域を示す。
第 3-1 図 探鉱有望地域 出典: www.anatolia-minerals.com
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資料
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Chamber of Mining Engineers of Turkey: www.maden.org.tr
Odyssey Resources Ltd.: www.odysseyresources.com
Eldorado Gold Corporation: www.eldoradogold.com
Fronteer Development Group Inc.: www.fronteergroup.com
Eurasian Minerals Inc.: www.eurasianminerals.com
Nuinsco Resources Limited: www.nuinsco.ca
Manhattan Minerals Corp.
Aldridge Minerals Inc.
Inmet Mining: www.inmet-mining.com
European Nickel PLC: www.enickel.co.uk
Ovacik Mine: www.frontierpacific.com
USGS: minerals.usgs.gov
InfoMine: infomine.com