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日配工 藤田
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JWD-T33「EV 普通充電用電気設備の施工ガイドライン(第 1 版)」の概要

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1. ガイドラインの適用範囲

車載の蓄電池を用いて電動機を駆動し公道を高速で走行可能な車両

(=EV, PHV)を、このガイドラインでは『EV』と総称しています。

このガイドラインは EV の『普通充電設備』について取扱い、『急速充電

設備』は除外しています。

普通充電設備とは、交流 250V 以下の電路を車両に接続して EV へ充電す

るための電気設備を指します。

2. 負荷設備としてのEVの特徴

今日国内で発売される EV は、商用交流 200V/100V を供給することで

充電可能な「普通充電」用充電器を車両に搭載しており、身近な電力で

充電出来ることを特長としています。

しかし、電気機器等へ電力を供給している建物の低圧屋内配電設備から

見ると、負荷設備としての EV は、高負荷・連続負荷・高頻度負荷・屋

外使用負荷という特徴を併せ持ちます。

EV は前述の通り、従来一般家庭で使用されていた如何なる家電機器と

も性質を異にする大容量の負荷設備であり、給電設備には相応の電気

的・機械的耐力を要します。

当ガイドラインを制定した 2011 年 1 月現在、電気設備技術基準(省令)・

電気設備技術基準の解釈・内線規程とも、前述した特徴を持つ EV へ日

常的に給電する電気設備を想定していない為、EV 充電用電気設備のた

めの施工の定めがなく、施工現場に於ける具体的な施工要領の整備が求

められていました。

日本配線器具工業会では、前記法令や内線規程等の設備規定を補完する

民間規定として、技術資料 JWD-T33「EV 普通充電用電気設備の施工ガ

イドライン」を取り纏め、平成 23 年 1 月 17 日付で第 1 版を制定、公表

しましたので、ここにご紹介します。

当工業会が担当する住宅用分電盤やコンセントの設計・施工部分を中心

に、一般住宅等に於ける EV 普通充電用電気設備の望ましい施設方法を

明確にし、施工現場での混乱を無くすことを通じて、EV 普及促進の一

助とすることを目的としています。

3. EV充電には専用回路が必要

図表②に記載の通り、EV には 10A を超える大電流が長時間連続して流

れます。

従い、EV 充電設備には専用の分岐回路を施設して下さい。

※ 一般回路のコンセントで EV 充電を行うと、過電流でブレーカーが作動

し、同一回路の複数コンセントや照明があわせて停電となるおそれがあ

りますので、このような施設はしないで下さい。

※ 電動二輪車など、一部の小型 EV・PHV では、100V 数 A 程度の小規模

な充電電流で使用可能な車種があります。 このガイドライン第 1 版

では、100V 回路による EV 充電を扱っていませんが、現在審議中の第 2版にて追加規定する予定です。

4. 分岐回路と適用遮断器

EV 充電用分岐回路の種類と適用する遮断器は、図表④記載の何れかと

します。(EV 充電設備新設の際は、所要充電時間の短い、単相 200V 回

路の施設をお勧めします)

※ このガイドライン第 1 版では、100V 回路による EV 充電を扱っていま

せんが、単相 100V 回路による EV 充電については、第 2 版で追加規定

する予定です。

EV 充電用分岐回路に用いる分岐ブレーカーは、高速高感度形(15mA・

0.1s)の漏電遮断器を施設して下さい(EV 充電用分岐回路は、その使わ

れ方から地絡のおそれが高いと考えられる為です)。

※ 但し、EV 充電用コンセント近傍に漏電遮断器(ELCB OC なし)を施

設する場合は、当該分岐回路の遮断器を配線用遮断器(MCCB)とする

ことが出来ます。

5. EV充電用コンセント

EV 用充電コンセントは、日配工規格 JWDS-0033 規定の極配置と、同

規格に規定の要求性能を満たすよう求めています(図表⑤参照)。

日配工では平成 22 年 9 月 10 日付で、JWDS-0033「EV 充電用コンセ

ント・差込プラグ」を制定・公表し、2 極接地極付 20A-250V, 2 極接地

極付 30A-250V の 2 定格について標準化しています。

この規格に基づくコンセントは、日配工会員会社から平成 22 年より順

次発売されており、差込プラグについては、平成 22 年 12 月に国内販売

を開始した日産自動車㈱製 EV「リーフ」の充電用ケーブルアッセンブ

リーに初めて採用されています。

社団法人日本自動車工業会加盟各社が今後発売する EV, PHV の充電用

差込プラグには、JWDS-0033 適合の差込プラグが採用される予定です。

我が国に於ける EV 充電用差込接続器のスタンダードシートとして同規

格が引用され、接続互換性が確保されるよう、当工業会は関係各工業会

とも協力しながら周知を図って参ります。

従来のコンセント・差込プラグと比較し、同規格のコンセント・差込プラグ

に特有の機能・性能を挙げると、主なものは以下の通り。

①充電中、意図せずプラグが脱落し充電が中断することを防ぐ「抜け防止構

造」を有し、規定の試験方法にて 100N 1 分間の引抜き荷重に耐える。

②極配置に平刃を採用し、プラグの挿入・離脱操作の際、刃受けへプラグ栓

刃を真直ぐ挿抜するだけで電気的な接続・解除や、機械的保持のロック・解

除が容易に行える。

③開閉耐久は、負荷開閉 5,000 回+無負荷開閉 5,000 回を保証、プラグ抜

け防止機構やシャッター等の機械的作動部を含めた高頻度開閉に対応。

④差込プラグ挿入中、栓刃に指先が触れて感電すること(指先感電)を防ぐ

構造を持つ。

⑤外来固形物や水の浸入に対する IP 性能(JIS C0920 規定の保護等級)は、

コンセント・差込プラグが接続された状態またはコンセント単体で、防まつ

形のものは IP44,普通形のものは IP4X を満たす。

一般的な家電機器に比べ厳しい環境で使用される EV 充電用コンセン

ト・差込プラグに相応しい機能と性能を新たに規定するとともに、女性

やお年寄りのドライバーにも無理なく扱える易しい操作性も兼ね備え

ているものです。

JWD-T33「EV 普通充電用電気設備の施工ガイドライン(第 1 版)」の概要

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6. 分電盤の機器構成と選択

我が国の一般住宅に於いては、住宅用分電盤の主幹開閉器に高速高感度

型漏電遮断器(定格感度電流 30mA, 0.1s)が施設されています。 ガイド

ラインではこのことを考慮し、EV 充電用分岐回路の ELCB は定格感度

電流 15mA の高速高感度型と指定していますが、地絡時に主幹 ELCBとの間に選択遮断させるには速度協調が取れず、感度協調も充分とは云

えないことから、現状では地絡保護協調に課題を抱えています。

ガイドラインでは、住宅用分電盤の機器構成について詳しくページを割

き、需要家の利用状況に応じて、地絡時のリスクを最小化する施設方法

を詳述していますので、EV 充電設備を構築される際には原文をお取り

寄せ頂き、第 4 章本文並びに第 10 章の解説を御一読下さい。

7. EV充電設備の類別

EV 充電用設備は、普通充電設備と急速充電設備とに大別されます。

急速充電設備は、非車載の比較的大型の充電器を用いて車両へ直流高電

圧を供給し EV を充電するもので、20~30 分で蓄電池容量の 80%程度を

充電可能な特徴を持ち、公共施設や給油所等のパブリックスペースに主

として施設されています。

普通充電設備は、交流 250V 以下の電路を車両に接続し、EV 車載の充電

器を用いて蓄電池へ充電するもので、一般住宅やオフィスビル等に於い

て常用されます。 単体で施設する「EV 充電用コンセント」といった簡

易なものから、専用筐体内に遮断器・表示器や高度な制御機能を収めた

「EV 充電用スタンド」といった複雑なものまで、様々な種類があります

(図表⑦参照)。

急速充電設備については、我が国では CHAdeMO 協議会により、製品

規格並びに施工指針の標準化が行われ、事実上の業界標準となっていま

す。

一方、普通充電設備については、各社様々な仕様のものを製品化してお

り、EV 用充電設備として具備すべき機能・性能についての統一的基準

は当ガイドライン制定時の 2011 年 1 月現在未整備で、安全性や互換性

確保に懸念がありました。

このことから、EV 充電用に必要な機能・性能及び試験方法を日配工規

格「EV 普通充電用電気設備」として標準化すべく、平成 22 年 9 月、日

配工 配線器具専門委員会 技術小委員会の下に「EV 用コンセント規格

化 WG3」としてワーキンググループを新設し、審議中です。

8. 配線設計とEV充電用コンセントの施設方法

このガイドラインでは、単相 200V の EV 普通充電用分岐回路を「20A配線用遮断器分岐回路」「30A 分岐回路」の 2 種としています。

分岐回路の電線の太さは、現行の電気設備技術基準・電気設備の技術基

準の解釈・内線規程にて、前者は直径 1.6mm 銅線以上、後者は直径

2.6mm 銅線以上とされています。当ガイドラインでは、EV の負荷特性

に鑑み、直径 1.6mm 銅線の仕様は不充分と考え、前者にあっても直径

2.6mm 銅線を指定しています。 これは、高容量連続負荷に対する裕度

を持たせるとともに、将来 EV 負荷の容量 UP 時に 30A 分岐回路化する

ことも視野に入れた規定とした為です。

EV 充電用分岐回路は専用回路とし、受口の数は分岐回路当り 1 個とし

ます。 このことは、高負荷・連続負荷の EV へ安全に給電する過電流

保護上の要点となります。

EV 充電用コンセントには D 種接地配線を必須とし、住宅用分電盤に集

中接地端子を持つ場合、コンセントの接地配線は集中接地とするよう求

めています。 EV の多くはクラスⅠ機器であり、絶縁故障時の感電保

護に保安接地が必要であることから、このことは感電保護上の要点とな

ります。

9. 既存コンセントに関する注意

一般住宅やビル等の屋側に、図表⑨に示す「防雨コンセント」が多数施

設されています。 このコンセントは主として屋外設置される庭園

灯・看板灯や、屋外で一時使用される電動工具への給電等を意図して製

造されたもので、頻繁な抜き差し使用を行う EV 充電用としては耐久性

が充分でない場合があります。

また、屋外の既設コンセントには、長期に亘り使用されなかったものや、

経年使用で耐久限度を迎えたものなどが混在しており、EV 充電に常用

する回路としては利用に適さないものが散見されることから、「防雨コ

ンセント」は EV 充電用コンセントとして常用しないよう、注意喚起す

ることとしています。

EV を導入する住宅・オフィス等では、既存のコンセントの流用は避け、

本ガイドライン記載の要領で適切な充電設備の構築をお願いします。

ここでご紹介した日配工規格・日配工技術資料は、下記のホームページより、

「刊行物・パンフレット」のリンクをクリックすると、入手方法をご案内

しています。

〔日配工ホームページ〕http://www.jewa.or.jp/

文責:(社)日本配線器具工業会 配線器具技術小委員会 EV 用コンセント規格化 WG2 主査 藤田 昌宏(神保電器株式会社)