運転室内の報知・警報の決定法 · 音サイン・ボイスの判断...
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運転室内の報知・警報の決定法(How to decide specifications of aural warnings in train cabs)
【概要】運転室内の報知・警報音は従来はベルやブザーが主でしたが、現
在では音色の自由度が高まっています。また、提供できる情報の量も増えています。このような音の増加・多様化が運転士の混乱につながることのないよう、運転室内での報知・警報音を決める際の考え方を提案しました。
図1のように、運転室内で提示する情報の重要性を4段階の危険性レベルに分類し、各レベルに対応する警告感を持つ音サインの例やボイス(言葉による提示)の仕様を参照して音の仕様を決定する手法を提案しました。これにより、音から直感的に、提示された情報の重要性を理解できるようになります。
【特徴】提示したい報知・警報の「危険性レベル」を「特徴リスト」で判断できます。提示したい情報を音サインとボイスのどちらで知らせたらよいか判断できます。音サインについて、例示音と避けるべき音がわかります。ボイスを利用する場合、どのような口調でどのような情報を含めればよいかわ
かります。
危険性レベル
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ
特徴リスト
□記憶の補佐□予測を支援す
る情報□視覚表示に対
して補助的に
使うもの□予告□操作に対する
機器の反応
□必ずしも危険を知らせるものでない
□保安装置により停車・減速する
□保安装置動作後に、
危険がなくなる/なくなった
□警報の無視が事故に
至る可能性が低い
□危険の存在を知らせる□保安装置により停車す
る□保安装置動作後、通常
状態に復帰しない
□警報の無視が事故に至る可能性が高い
□通常状態からの逸脱状
態を表す
□危険の存在を知らせる
□保安装置等のバックアップがない
□警報の無視が事故
に直結する□予告ではない□保安装置の未投
入・無効を示す
音サイン(高頻度)
・短い音・減衰する音
・連続音(三角波)・2音(組み合わせ)
・連続音(鋸波)・断続音・交代音・既存ベル音
・激しい音(速いテンポ、ベル、周波数が変化、 2kHz程度の断続音)
ボイス(低頻度)
普通の口調で危険性レベル報知音と「状況」、危険性レベル報知音と「とるべき行動」、「状況」と「とるべき行動」を提示。音は省略可。
強い命令口調で「とるべき行動」と「状況」を提示。「とるべき行動」が自明、文言が長い、選択肢が多くて確定できない場合は、危険性レベルを知らせる音と「状況」を提示し、「行動」を省略。
危険性
レベル判断
音サイ
ン・ボイスの仕様決
定
伝えたい
情報
決定手順
図1 運転室内の報知・警報の決定法
公益財団法人鉄道総合技術研究所人間科学研究部 人間工学
【用途】運転室内の報知・警報音を設計する際や追加する際に使用します。保安装置としてATS警報型、ATS速度照査型を対象としています。視覚表示(ランプ等)と併用します。
情報の意味の分類
①分類軸の抽出エキスパートへのヒアリング
②分類軸の絞り込み運転士750人のアンケート調査報知・警報20種類を6つの分類軸で評価
③分類法の作成エキスパートとの議論危険性レベル判断のための特徴リストを作成
音の仕様の対応付け
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ♪ ♪ ♪ ♪
【研究の流れ】
①音サインの印象評価試験
運転士44人音色、時間パターン、音の組み合わせなどを変更した33種類の音
②ボイスの印象評価試験運転士44人情報の構造の異なる10種類のボイス運転士10人へのヒアリング調査
③避けるべき音の検討
ヒアリング調査風景 音の印象評価風景
危険性レベル判断音サイン・ボイスの判断
音サイン・ボイスの仕様決定
•その機能の一般的状況で考えます。•音サインが多くなりすぎないようにします。
• 音サインは、対応する危険性レベルの例示音を参考に作成します• ボイスの文言は、短い、一義的である、聞き取りやすい、類似した発音
の言葉を避ける、などを考慮して決めます。