微量栄養素:ビタミンとミネラルonishi/28vitamins.pdfd(1,25-(oh)2-vd )の作用...

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1 微量栄養素:ビタミンとミネラル ビタミン微量で作用する低分子の栄養素. 種々の生命活動に必要であるが自ら合成することができず, 食事からとらなくてはならないもの. 不足→ 欠乏症 過剰→ ビタミンA過剰症,ビタミンD過剰症 ミネラル食事から適切に摂取されなくてはならない. 不足→ 鉄欠乏性貧血(鉄) クレチニスム,甲状腺腫(ヨウ素) 過剰→ 毒性症状 180713(2講時)生化学

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微量栄養素:ビタミンとミネラルビタミン:微量で作用する低分子の栄養素.種々の生命活動に必要であるが自ら合成することができず,食事からとらなくてはならないもの.

不足→ 欠乏症過剰→ ビタミンA過剰症,ビタミンD過剰症

ミネラル:食事から適切に摂取されなくてはならない.

不足→ 鉄欠乏性貧血(鉄)クレチニスム,甲状腺腫(ヨウ素)

過剰→ 毒性症状

180713(2講時)生化学

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水溶性ビタミン

-OH基,-COOH基,その他の極性基が存在構造は多彩(単純なビタミンC~大きく複雑なビタミンB12)

• ほとんどの水溶性ビタミンは補酵素の一部分

• それ自体が補酵素として機能:ビタミンC(抗酸化剤)

• カルボキシ基が酵素とアミド結合するのみ:ビオチン

代表的な補酵素• NAD+

• 補酵素A

脂溶性ビタミン

• ホルモン様作用がある ビタミンA, D• 抗酸化作用がある ビタミンE• 補酵素として機能する ビタミンK

脂肪とともに小腸より吸収主に肝臓や脂肪組織に蓄えられる→摂りだめが可能だが,過剰症状の危険もある

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ビタミン

3

B以外 (フィロキノン,メナキノン)

ビタミンB6 ピリドキシンピリドキサールピリドキサミン

text p47-

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ビタミンA系(レチノイド)レチナールレチノールレチノイン酸

カロテノイド天然色素 (赤,黄,橙,紫).多くはビタミンA前駆体.

4

還元

酸化

11-trans-retinol

111

12 µgのβ-カロテンは1 µgのレチノールに相当(食品).(総ビタミンAをレチノール当量で示す)

図3-12

ニンジンをはじめとする各種野菜に橙色を与えるβ-カロテンの開裂によって体内で生成.レチナールとなり,これからレチノールやレチノイン酸が作られる.

ビタミンA

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全trans-レチノール↓

11-cis-レチノール↓

11-cis-レチナールオプシン

ロドプシン(視覚色素)

オプシン全transレチナール

text p49図3-13参

ビタミンAは視覚にはたらいている

網膜で,レチナールが光感受性タンパク質のオプシンと結合し,桿体ではロドプシン,錐体ではヨードプシンを形成する.

網膜の色素上皮細胞において全trans-レチナールは異性化され,11-cis-レチノールとなり,さらに酸化されて11-cis-レチナールとなる.このアルデヒドがオプシンのLys残基と反応結合し,ロドプシンとなる.

光があたると,レチナールが11-cis-から全trans-に変換し,ロドプシン全体の構造が変化する.構造変化の過程でGタンパク質(トランスジューシン)を活性化し,神経伝達を起こす.レチナールがタンパク質から遊離する.

ビタミンAの欠乏により暗反応が遅くなり,弱い光の中での視力が低下する

還元

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レチノイン酸は標的組織において遺伝子発現や細胞分化に関与

腸内粘膜でレチノール,β-カロテンが吸収↓

腸内粘膜で長鎖脂肪酸とエステル結合する.キロミクロン成分としてリンパ系に分泌,肝臓に取込まれ貯蔵

↓必要に応じて放出される.レチノール結合タンパク質と結合し肝外の組織に輸送

↓標的細胞表面の受容体に結合し,レチノールだけが細胞内に入る

↓細胞質内でレチノイン酸となり核内へ移行し,核受容体と結合

↓ある特定の遺伝子のプロモーターに結合し転写を調節する

レチノイン酸核受容体(RAR, RXR)• レチノイン酸受容体 (RAR): 9-cis-レチノイン酸,全trans-レ

チノイン酸と結合• レチノイドX受容体 (RXR): 9-cis-レチノイン酸と結合

ビタミンD,甲状腺ホルモンなどの核内受容体と二量体を形成し,ホルモン作用に関与する

6ビタミンAの欠乏,過剰はビタミンDや甲状腺ホルモンの機能を傷害

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ビタミンAの作用• 視覚作用• 細胞分化や遺伝子発現に関与• 成長促進

ビタミンAの欠乏により食欲低下(味蕾の角質化が原因か?).骨の成長が遅れて,神経系の発育に見合う成長速度が維持できずに,中枢神経系の障害が生じる

• 免疫細胞の分化• 正常な生殖

男性:精子形成,女性:胎児吸収の阻害など• 上皮細胞の維持

正常な上皮細胞の分化,粘液の分泌に重要

ビタミンA欠乏症夜盲症 night blindness(緑色認識弱化→暗順応遅延→夜盲症)眼球乾燥症 xerophthalmia(角膜のケラチン化,完全失明)

ビタミンA過剰症 hypervitaminosis AビタミンAが結合タンパク質に結合しきれなくなると非結合型による組織障害を引き起こす.中枢神経系(脳圧亢進),肝臓(組織変化を伴う肝腫大),カルシウム代謝(長骨肥厚,髙Ca血症,軟部組織石灰化),皮膚(過剰乾燥,落屑,脱毛症) 7

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ビタミンD作用: カルシウムの吸収と恒常性の維持

ホルモン様作用をもつ皮膚で合成されるD2からD7のうち,生理活性のあるものは2つ• エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)植物由来• コレカルシフェロール(ビタミンD3)

① 食品(動物由来)② 7-デヒドロコレステロールより生合成

ビタミンDは肝臓と腎臓で活性化(水酸化)肝 VD → 25-OH-VD腎近位尿細管 25-OH-VD → 1,25-(OH)2-VD

7-デヒドロコレステロール

食品

紫外線 皮膚

欠乏症(小児)くる病 rickets(成人)骨軟化症 osteomalacia

8

VD3

VD2

text p20,88参照

3

1

25

エルゴステロール

紫外線 皮膚

25-OH-VDはビタミンD結合性グロブリンと結合して血流を循環長期間過剰摂取→腎Ca沈着による尿毒症

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活性型ビタミンD(1,25-(OH)2-VD )の作用①自身の量の調節:24-ヒドロキシラーゼを誘導し,腎の1-ヒドロキシラーゼを阻害②血中カルシウム濃度の維持

腸管からのカルシウム吸収の増加血流を介して標的細胞に到達すると,細胞内に入り受容体と結合し,核内に移行し,特異的なDNAと相互作用し(転写調節),その結果,特異的なカルシウム結合タンパク質の合成が増え,カルシウム吸収が促進カルシウム排出の抑制(遠位尿細管から再吸収促進)骨吸収(骨芽細胞を介して破骨細胞の形成を促し骨塩の動員促進)

③その他 インスリンの分泌副甲状腺ホルモンの合成分泌甲状腺ホルモンの合成分泌インターロイキン合成(T細胞)免疫グロブリン産生(B細胞)抑制単球の分化細胞増殖の調節

9

大部分の作用は,ステロイドホルモンのように,核内受容体と結合して遺伝子発現を促進することによる

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ビタミンEトコフェロール(α, β, γ, δ)とトコトリエノール( α, β, γ, δ )がある.α-トコフェロールが最も生理活性が高い

機能:細胞膜および血漿リポタンパク質の主要な抗酸化剤.不飽和脂肪酸の酸化を防止し,フリーラジカルを捕捉し,細胞膜の機能保全に働く.(膜にはリン脂質の成分として多価不飽和脂肪酸が多く含まれ,非常に酸化を受けやすい)自身が反応することによる.

10

図3-14

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HO

O

O

O

OH

ビタミンE

ビタミンEが抗酸化物質として反応した生成物(ビタミンE自身が酸化された)

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酸素,活性酸素呼吸のために酸素を取り込み,クエン酸回路,酸化的リン酸化などを利用してエネルギー(ATP)産生に使う.この時,酸素自身は還元されて水分子になる.副生成物として“活性化された酸素分子”を生じ,活性酸素 active oxygenと総称される.

生成を加速:放射線,加齢,炎症,紫外線,化学物質

生体には防御する活性酸素除去システムが備わっている.(スーパーオキシドジスムターゼ,カタラーゼ)

2 •O2- + 2 H+ H2O2 + O2

2 H2O2 2 H2O + O2

スーパーオキシドジスムターゼ

カタラーゼ

スーパーオキシドアニオンラジカル

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活性酸素酸素(3O2,三重項酸素)よりもさらに反応性の高い酸素原子を含む物質の総称.核酸,タンパク質,細胞膜や血漿リポタンパク質などの脂質に傷害を与える(がん,アテローム性動脈硬化症,冠動脈疾患,自己免疫性疾患)

13

●スーパーオキシドアニオンラジカル O2-•

●ヒドロキシラジカル HO•

●一重項酸素 1O2

●過酸化水素 H2O2

●アルコキシラジカル LO•

●ペルオキシラジカル LOO•

●ヒドロペルオキシラジカル HOO•

●オゾン O3

●一酸化窒素 NO•

●脂質ヒドロペルオキシド LOOH

活性酸素

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ラジカル(遊離基,フリーラジカル)は不対電子をもつ反応性の高い分子.他の分子と衝突して電子を引き抜くか,供与して安定な状態になる.寿命が非常に短い(10-9~10-12秒).衝突した相手の分子を新たなラジカルにする(あるいは分子は破壊される).生物にとって最も傷害性の高いラジカルは酸素ラジカルである.

スーパーオキシドアニオンラジカル O2-•

ヒドロキシラジカル HO•

ラジカルは分子の熱あるいは光による分解,放射線分解,電子線照射,金属還元などにより生じる

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抗酸化ビタミン●ビタミンA●ビタミンC●ビタミンE●β-カロテン

これらは活性酸素種と反応してフリーラジカルを無害化する

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ビタミンK Koagulation(独)coagulation(英)

作用カルボキシラーゼの補酵素

• 血液凝固因子(Ⅱ, Ⅶ, Ⅸ,Ⅹ,プロテインC, プロテインS)

• オステオカルシン

生成した γ-カルボキシグルタミン酸残基 (Gla) はカルシウムと結合して,血液凝固,石灰化の調節などに働く.

腸内細菌叢 15

α

γ

ビタミンK作用をもつ3つの物質

ビタミンK2(メナキノン)ビタミンK2(メナキノン)微生物チーズ,納豆

ビタミンK3(メナジオン)

ワルファリン(ビタミンK拮抗阻害薬脳梗塞,心筋梗塞予防)

ビタミンK欠乏症:新生児メレナ(新生児における消化管からの出血)

合成活性最強体内でK2になる.副作用強いのでヒトには使用しない

ビタミンK1(フィロキノン)植物

図3-16

図3-15

翻訳後修飾(Glu残基をカルボキシ化する反応)

CO2

ビタミンK

(NADPH)

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チアミン(ビタミンB1)補酵素型:チアミンピロリン酸(TPP):糖代謝などに重要

• ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体

ピルビン酸 + CoA + NAD+ アセチルCoA + CO2 + NADH + H+

TPP, FAD, Mg2+, リポ酸

• α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体(クエン酸回路)• 分岐α-ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体(分岐アミノ酸の異化)

欠乏症脚気 beriberi末梢神経に異常が起こる多発性神経炎Wernicke脳症ウェルニッケ中枢神経障害(B1不足,アルコール依存,摂食障害) 16

ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体

酸化的脱炭酸反応

チアミン

ピロリン酸(二リン酸)

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リボフラビン(ビタミンB2)ビタミンB2はエネルギー代謝において中心的役割補酵素FMN:リボフラビンがリン酸化FAD:FMNにAMPが結合

おもな供給源:牛乳,乳製品

フラビン補酵素は酸化還元反応における電子運搬体

ミトコンドリア呼吸鎖脂肪酸酸化,アミノ酸酸化クエン酸回路

欠乏症皮膚炎,口角症(口角の亀裂),舌炎(平坦で,紫がかって見える舌)

リボフラビンビタミンB2

FMNフラビンモノヌクレオチド

FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)

ATPADP

ATPPPi

17

フラビンにリボースが付いたもの

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ニコチン酸とニコチン酸アミドの総称①補酵素②ADP-リボースの供給(NAD)タンパク質のADPリボシル化核タンパク質のポリADP-リボシル化

ナイアシン

NAD+

ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドNADH

(還元型)

NADP+

ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸 18

ニコチン酸

酸化経路,特に解糖,クエン酸回路,ミトコンドリアの呼吸鎖における酸化還元反応

ミトコンドリア外で行われる脂肪酸合成,ステロイド合成,ペントースリン酸経路のような還元を含む過程

ビタミンB3

• 補酵素型は NAD+とNADP+

• 脱水素酵素(デヒドロゲナーゼ)の補酵素• 体内で合成可能(肝でTrpから)• 欠乏症:ペラグラ(特徴:光過敏性皮膚炎,

下痢,認知症)トリプトファンおよびナイアシン欠乏

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ピリドキシン(ビタミンB6)

• アミノ酸代謝およびグリコーゲン代謝に必要アミノ基転移,脱炭酸グリコーゲンホスホリラーゼ

• ステロイドホルモン作用において重要ホルモン-受容体複合体をDNA結合から遊離させ,ホルモン作用を終結させる

19

欠乏症:稀.結核治療薬,イソニアジドはピリドキサールリン酸と不活性型の誘導体を形成して結核治療中にビタミンB6欠乏症を誘発する.

ピリドキサミン

ピリドキサール

イソニアジド

ピリドキサールリン酸(PLP)活性型補酵素

ピリドキシン

ビタミンB6 5’-リン酸エステルピリドキシン ピリドキシンリン酸ピリドキサール ピリドキサールリン酸ピリドキサミン ピリドキサミンリン酸6つの化合物がB6活性(相互変換する)

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葉酸 folic acid体内でTHFに変換される核酸のプリンおよびピリミジン塩基合成,アミノ酸代謝に必要Ser, Gly, His(供与体)から1炭素単位を転移する酵素の補酵素

セリン + THF → グリシン + メチレンTHFウリジル酸 + メチレンTHF → チミジル酸 + THF

テトラヒドロ葉酸(THF)活性型補酵素

葉酸

20

プテリジン環 p-アミノ安息香酸 グルタミン酸

B12欠乏→葉酸欠乏症:巨赤芽球性貧血不足すると,胎児の二分脊椎(妊婦)

5’-ホルミルTHF

5’-メチルTHF 5 10

還元

5’-メチレンTHF

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葉酸 ジヒドロ葉酸 テトラヒドロ葉酸

ジヒドロ葉酸還元酵素

葉酸還元酵素

メトトレキサート

メトトレキサート

メトトレキサート(葉酸代謝拮抗剤)は抗がん剤に用いられる

DNA合成に必須な反応デオキシウリジン一リン酸 チミジン一リン酸

TH葉酸 DH葉酸

チミジル酸シンターゼ

ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害することに基づく核酸合成が阻害

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コバラミン(ビタミンB12)植物に存在しない.微生物により合成.動物由来食品:肝臓,全乳,卵,カキ,

新鮮エビ,豚肉,鶏肉

補酵素型― メチルコバラミンアデノシルコバラミン

分子内にCoを含むので赤色核酸の合成,メチル基転移反応,アミノ酸代謝

22

動物細胞内で補酵素型ビタミンB12を必要とする酵素は2つのみ• メチルマロニル-CoA ムターゼ• メチオニンシンターゼ

シアノコバラミン:(抽出する際にシアノ基が結合)

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作用①メチオニンシンターゼ:ホモシステインをメチル化してメチオニンを合成

メチルTHF THFホモシステイン メチオニン

メチルコバラミン

②メチルマロニルCoAムターゼ:メチルマロニルCoAをスクシニルCoAに変換脂肪酸 メチルマロニルCoA スクシニルCoA TCA回路へ

アデノシルコバラミン

欠乏:葉酸の代謝を損ない,その結果,赤血球産生を妨げ,未熟な赤血球前駆細胞が循環血流中に(巨赤芽球性貧血=悪性貧血)

• ビタミンB12の腸からの吸収不全(内因子が不足)• 菜食主義(細菌によって生成.植物には含まれていない.レバーなどの動物性

食品が供給源)

B12の作用と欠乏症

23

-(CH2)2-S-CH3

メチルTHFがTHFに戻る唯一の経路-(CH2)2-SH

B12が欠乏すると,ホモシステインの蓄積とメチルテトラヒドロ葉酸の蓄積

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24

食物からのB12の吸収に結合タンパク質が必要

B12(タンパク質に結合)を食べる

胃:胃酸とペプシンの作用でB12は遊離.コバロフィリンと結合.

十二指腸:膵プロテアーゼの作用でコバロフィリンが部分分解し,B12 は遊離.胃壁細胞由来の内因子に結合.

回腸:回腸上皮細胞表面に存在する多機能受容体であるキュブリンに結合し,体内に取り込まれる

唾液腺由来

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パントテン酸• 補酵素A(coenzyme A, CoA)

の構成成分であり,アシル基の転移反応に関わる

• 脂肪酸合成酵素の構成成分

CoAはチオール(-SH)を含み,チオールエステルとしてアシル基を運搬する

アシル基(R-CO-)ホルミル基 HCO-アセチル基 CH3CO-プロピオニル基 C2H5CO-ブチリル基 C3H7CO-マロニル基 -COCH2CO-スクシニル基 -CO(CH2)2CO-

CoAは,クエン酸回路,脂肪酸合成と酸化,アセチル化およびコレステロール合成の諸反応に関与

補酵素A(CoA)

25

パントテン酸

チオエタノールアミン

ATP

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ビオチンカルボキシ化反応において補酵素として,活性二酸化炭素の担体となる主に脂質・糖質代謝に関わる

アセチルCoAカルボキシラーゼプロピオニルカルボキシラーゼピルビン酸カルボキシラーゼ

欠乏症は稀生の卵白を多く摂取した場合(卵白タンパク質アビジンがビオチンと結合) 26

CH3CO~SCoA -OOCCH2CO~SCoA

酵素―ビオチン―COO- 酵素―ビオチン

ADP + Pi ATP + HCO3-

アセチルCoA マロニルCoA

脂肪酸合成

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アスコルビン酸(ビタミンC)

27

壊血病scurvy

アスコルビン酸(還元型)

デヒドロアスコルビン酸(酸化型)

モノデヒドロアスコルビン酸ラジカル

anti-scorbutic acid抗壊血病効果をもつ酸

• 強い還元力(抗酸化作用)• 水酸化反応に関与

コラーゲン合成の際のプロリン,リシン残基の水酸化

欠乏症:壊血病コラーゲンの生成が障害され,組織の結合力が弱まり脆弱な組織毛細血管の脆弱性(易出血性),歯肉の崩壊,歯の脱落,骨折

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アスコルビン酸の作用

• 補酵素銅含有ヒドロキシラーゼ

ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼチロシンからカテコールアミンの合成

(ドーパミン,ノルアドレナリン,アドレナリン)

鉄含有ヒドロキシラーゼプロリルヒドロキシラーゼリシルヒドロキシラーゼ

• 抗酸化作用:可逆的な酸化還元系を介した電子の授受• 腸での食物中からの無機鉄の吸収を促進する

プロコラーゲンからコラーゲンが合成された後の修飾に必要(両方)プロリルヒドロキシラーゼは

• オステオカルシンの生成• 補体C1q成分の合成