国際関係論 - bpia...リベラリズムliberalism • utopian, idealistと呼ばれる...
TRANSCRIPT
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
国際関係論
The Tragedy of Great Power PoliticsBy John J. Mearsheimer
BPIA2016 新緑セミナー2016.6.11倉重英樹
「大国政治の悲劇」
1
BPIA新緑セミナー 2016.6.11
第一次世界大戦
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
20世紀「暴力の時代」
900万人第二次世界大戦 5,000万人日露戦争
1914-181939-451904-05日露戦争
ノモンハン事件 1939対ソ干渉戦争 1918-20ソ連・ポーランド戦争1920-21イラン・イラク戦争 1980-88冷戦下の代理戦争
朝鮮・ベトナム・アフガニスタン・ニカラグア・アンゴラ・エルサルバドル
2
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
人類の歴史=戦争の歴史
3
地球上に起きた戦争:大きなものだけで14,500件戦死者の総数:30億人以上
過去4000年で・・・
戦争・内戦・虐殺・テロ・・・・・・人類は歴史に学ばず、あらゆる口実の下に、殺し合いと破壊を繰り返してきた
第一次世界大戦と第二次世界大戦で民間人を含め6,000万人が死亡
20世紀の2つの大戦
中東・アジア、アフリカ中心に150件の戦争、2,300万人死亡
20世紀の後半
RMA(Revolution in Military Affair)21世紀は新たな戦争の世紀
サイバーウォー
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
RMA ITを駆使した軍事技術
4
• コンピュータ戦車:戦闘状況の蓄積されたデータベースを受信し、自軍と敵軍の配置状況を目視にて確認
• 無人飛行機:特殊センサーで敵軍戦車、ヘリコプターを感知し、ミサイルを発射
• 地雷探索ロボット、特攻自爆無人機
RMAでは敵をあらゆる条件で探知し、センサーで収集した情報をネットワークで共有、ミサイル、空爆機などの攻撃システムとリアルタイムで連動
• 偵察衛星の識別能力:地上約10cm四方の物体
• 無人偵察機(UAV):400マイルの範囲を40時間以上飛行、曇天でも画像捕捉可能なSARなどで収集した画像を通信衛星でリアルタイム配信
車両のナンバープレート赤外線カメラ搭載で夜間撮影可能
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
国際関係論 International Relations Theories
• 国際関係がどういう仕組みで動いているのか?• 国際関係での色々な現象はなぜ起ったのか?
(戦争、平和、同盟など)
どの理論も完璧ではなく、それぞれ長所・短所あり。
リベラリズム Liberalismリアリズム Realismコンストラクティヴィズム Constructivism
今後の外交政策を考える際に大変重要である。
5
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
各論の比較
基本仮説
分析対象手段
思想家
冷戦後の予想
問題点
国家は権力/安全を求めて常に競争する
国家経済的・軍事的パワーHans Morgenthau
大規模な権力闘争の再開
国際的な変化が説明できない(例えば冷戦の終結)
経済的・政治的な利益、リベラルな価値への関心>権力への関心国家国際機関、経済相互依存、民主主義の促進Michael Doyle
リベラルな価値、自由市場、国際機関の拡大による国家間協力の増加権力(パワー)の役割を無視しがち
国家の行動はリーダーの思想、集団的規範、社会のアイデンティティーによる社会・国際社会思想や規範
Alexander Wendt
予測不可(新しい思想の予測はできない)
未来を予測できない(過去の説明には優れている)
Realism Liberalism Constructivism
Kenneth Waltz Robert Keohane John Ruggie
Stephen M Walt, "International relations: One world, many theories" Foreign Policy, Spring 1998
参照:
出典: Securitygirl.net: IR theories
6
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
リベラリズム Liberalism
• Utopian, Idealistと呼ばれる
国際政治の主役は国家である国家の性格の違いが国家の行動に大きな影響を与える
民主国家同士は戦わないー民主制平和論
知識人と政治指導者が理性を活用していけば、戦争を減らし、国際的繁栄を増加させることは可能
【善い国家(民主制)と悪い国家(独裁制)】
「善い国家」の行動にはパワーの利害計算がほとんどない【政治や経済などの要素が国家にとって重要】国家が経済的に相互依存度を増すと戦わなくなる
核となる考え方
7
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
コンストラクティヴィズム Constructivism
今までの理論でうまく説明できなかったこと(例えばなぜ冷戦は終わったか)を整理し説明。
何が「合理的だ」と思われるようになったのか、どのようなアイディアが国際関係を支配しているのか、という背景に注目
核となる考え方①個人の思想や信念は重要な変数である。人々の共通認識(間主観性: intersubjectivity)に注目。②国家の目的やアイデンティティーは歴史によって形作られる。③それぞれの国が自国や相手をどのように見ているかでその国の行動は決定される。
出典: Securitygirl.net: IR theories
8
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
リアリズム Realism の種類
A:パワーへの欲望(本質的に侵略的)人間性リアリズム Hans J. Morgenthau 「Politics among Nations」
B:最大限得られるだけ(覇権達成)
A:国際システムの構造:アナーキー(自国のサバイバル)デフェンシブリアリズム Kenneth N. Waltz 「Theory of International Politics」
B:既存のBalance of Power(現状維持)
オフェンシブリアリズム
A:国家にパワーを求めさせる原因は?B:国家はどれだけのパワーを欲しがるのか?
A:国際システムの構造:アナーキー(自国のサバイバル)B:最大限得られるだけ(覇権達成)
9
• 暴力のサイクルは、21世紀にも継続可能性大
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
オフェンシブ・リアリズム Offensive Realism
大国(Great Power)は互いを恐れ合う結果、Power(力・権力)を求めて争う大国の究極目標は覇権国(Hegemon)になること支配力は、自国のサバイバル保証の最有効手段
• 「最高の強さ」は「最高の安全」• 国際システムはアナーキー(無政府状態)
Balance of Powerを自国に有利にする
10
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
国家はなぜパワーを求めるか
Assumption国際システムはAnarchic状態(無政府的)
大国は合理的(Rational)な行動をする
恐怖 Fear
大国はある程度の攻撃的な軍事力を保持相手国の考えを完全に知ることは不可能大国の最重要目標は自国の生き残り(サバイバル)
国家の行動パターン
自助 Self-Helpパワーの最大化 Power Maximization
国際システムの中で、覇権国になること国家にとって理想的状態
11
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
国家はなぜパワーを求めるか
安全保障のディレンマ security dilemmaある国が自国の安全を増加させようとすると、それが他国の安全の減少につながる。他国の存続を脅かさずに自国の生き残りのチャンスを増加させるのは難しい。1815-1980の戦争63戦争:侵略側の勝利は39回(62%)
12
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
パワー
潜在的パワー potential power国の人口サイズ・経済力のレベル (軍事力構築のベース)
実質的パワー actual power「陸軍」とそれを補完する「空軍」や「海軍」の規模(核兵器の現在でも、「陸上兵力 land power」は軍事力の要)
恐怖のレベル• 核兵力を持つライバル国家同士:恐怖少ない• 海は攻撃する際に「戦力投射の問題*」を起こす• 国際システムのパワー分布状況は恐怖のレベルに作用
*power-projection problem
13
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
恐怖のレベル
二極システムbipolarity
大国は、意図でなく、能力に対してバランスを取る。大国間の恐怖のレベルは、パワーの分布状況よる。
潜在覇権国を含む多極システム multipolar system
潜在覇権国のいない多極システム
不安定多極システム unbalanced multipolarity
恐怖のレベル:高い
安定した多極システム Balanced Multiporlarity
恐怖のレベル:低い
恐怖のレベル:大国間では少ない
14
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
覇権国家 Hegemonic State
当該国の実利的利害関係にのみ基づいて他国に対する対応を決定し、敵対国に対する侵略戦争や先制攻撃によって(若しくは挑発を行なって相手に攻撃させ開戦の正当性や大義を主張し)領土の拡大や自国の安全保障を行い、同盟国や敵対国の反対勢力に対する軍事・経済協力を進める。 それを実行し、成功した国を覇権国家と言う。 Wikipedia
国際システムの中の全部の国を支配できるほど強力な権力を持った国
グローバル覇権国地域覇権国
Global HegemonRegional Hegemon
*アメリカは、過去100年間は「西半球の地域覇権国」*グローバル覇権国は事実上不可能
15
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
覇権国家 Hegemonic State
近代史における地域覇権国への挑戦
地域覇権国は、他の地域の大国がその地域で覇権国になるのを邪魔する
北東アジア 帝国時代の日本ヨーロッパ ナポレオン時代のフランス
ヴィルヘルム帝政時代のドイツナチスドイツ
両領域 冷戦時代のソ連地域覇権国による妨害
アメリカは、上記の日本、二つのドイツ、ソ連などに対しそれぞれの地域で優位にならないようにしてきた
自国以外の地域に少なくとも二つ以上の大国が存在することが望ましい
地域覇権国の視点
世界で唯一の地域覇権国であること地域覇権国の理想
16
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
アメリカのパワーポリティックス
Balance of Power(BOP)の考え方に根強い抵抗感W. Wilson 反BOPキャンペーンF.D. Roosevelt
「未来の世界ではPower Politicsという言葉でほのめかされるパワーの悪用が、国際関係をコントロールする要素になってはならない。」
B. Clinton 「暴政でなく、自由の進展している世界では、極端な権力政治の皮相な計算ではその答えを単純に出せなくなった。つまり権力政治(Power Politics)というのは新しい時代に不向きなのだ。」「20世紀に大国間で繰り広げられた領土をめぐる政治は21世紀も変わらない、というのは間違いだ。啓蒙された自己利益、共有された価値観は、国家の偉大さをより建設的な形で追求させて、互いに協力するよう促す。」
17
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
アメリカのパワーポリティックス
アメリカ国民の性格• 楽観主義・道徳主義• 「人間には無限に進歩する能力がある」と考える• 「時間と努力さえあれば、良識ある個人たちが協力して重大な社
会問題を解決できる」という信条
アメリカ人は、道徳を制度化し、悪い人間を撲滅させ、不正な制度や習慣を排除することを強く推し進めるユートピア的道徳主義者である。
社会学者Seymour M. Lipset
戦争に対する考え方独裁制との戦いや民主制の拡大というリベラリズムの唱える高尚なゴールのためには、戦争を正当化できるかもしれないが、BOPを変化させる、もしくは維持するための戦争は道徳的に間違っている。
18
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
アメリカのパワーポリティックス
レトリック(rhetoric)vs 実践• 公式の外交議論:リベラリズムの言葉を使用• 安全保障政策を担うエリートたちの密室:アメリカの主義・原則で
はなく、あくまでパワーの計算に基づいて政策を練る。• 公式の場でのレトリック ≠ 対外政策行動
「英語圏の人々は全体の利益という仮面の下に自己中心的な国益を隠す技術の達人」
E. H. Caar
このような偽善性はアングロ・サクソン独特の特徴
19
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
アメリカのパワーポリティックス
現実とレトリックの間の隔たりを、アメリカ人は気づいていない
②「スピン・ドクターズ(メディア操作の策士)」
原因①リアリストの政策が、リベラリズムの政策と偶然に一致する場合がある
リアリズムの政策がリベラリズムのレトリックによって正当化できてしまう。リアリスト的理由から、第二次世界大戦でファシズム、冷戦では共産主義を相手に戦ったが、この二つの戦いは、リベラリズムの理論でも理由づけできる。「イデオロギーの戦いだ」
パワーの計算がアメリカをリベラリズムの原理と反対方向へと動かすことになったら、スピン・ドクターズが現れ、リベラリズムの理想と合うようなストーリーをばら撒く。
20
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
中国は平和的に台頭できるか
中国が経済面で発展を続ければ、アジアを支配しようとする
強力な軍事力を保持していない
• インド、日本、シンガポール、韓国、ロシア、ベトナムなど周辺国のほとんどはアメリカと共に中国を封じ込めようとする。
• 激しい安全保障競争となり戦争勃発の可能性も高まる。
オフェンシブ・リアリズムの示唆
アメリカは中国の地域覇権を阻止する多大な努力をする
現在の中国
中国の同盟国は少ない
• パワーバランス拡大の相手:インド、日本、ロシア
21
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
中国は平和的に台頭できるか
自分の行動を周辺国に認めさせる許容範囲を広げる。経済成長を追求して強力になった場合
「中国のルールに従わない場合は大きな代償を払うことになる」アメリカをアジア・太平洋地域から追い出す独自の「モンロードクトリン」を作成
・6件の大きな国境紛争を抱えている(外交交渉では解決は困難か)・ペルシャ湾の地域の石油に大きく依存・海上交通路sea lines of communications :SLOCsのコントロール
22
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
中国は平和的に台頭できるか
「中国は目立たないようにしながら、国際紛争になるべく巻き込まれないようにすべきだ」・・・経済発展最優先
鄧小平Deng Xiaoping格言
2009年までの中国は控えめだった。それ以降は数多くの領土紛争に巻き込まれ、アジアの国々から深刻な脅威と見なされている
現実の中国
インド、日本、ロシア、シンガポール、韓国、ベトナム・・・・アメリカ主体のバランシング同盟balancing coalition
「封じ込め containment」:中国の動きを牽制
23
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved. 24
中華人民共和国動向CHINA4.0By Edward N Luttwak戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問戦略家、歴史家、国防アドバイザー
BPIA新緑セミナー 2016.6.11
2016.6.11倉重英樹
戦略の論理
• 国家台頭 ➡ 他国の懸念(警戒感)誘発
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
ルートワック戦略論KW
• 戦略の論理が起きると二つのことが起きる内的バランシング:自国の軍備増強外的バランシング:外国との同盟関係の増強
➡ 他国の動きが発生(戦略の論理)
• 国の台頭:規模の拡大、経済的発展、軍備拡張など
25
逆説的論理 Paradoxical Logic
戦略的行動には「逆説的論理」が働く
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
ルートワック戦略論KW
状況が緊迫してくると、相手の反応の緊迫度も高まり、必然的に逆説的論理がより鋭く発動する。
26
戦争や戦場では、相手も何かを仕掛けたり裏をかく回り道や逆効果になると予測されるような手段が勝利を導くことも多い
相手国の「反作用」が時に大きなインパクトを持つ
「逆説的論理」遠回りの悪路で、雨の夜に攻撃
「線的理論 Linear Logic」直線・幅広道路で、真昼に最短距離のルートで攻撃
大国論
• 「大国」:戦争の必要性を正当化できる大規模国家現在:中国、ロシア、フランス、アメリカなど
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
ルートワック戦略論KW
他の大国がその小国を助けるから勝てない
過去:第二次大戦中の日本など
南シナ海における中国:戦略の論理に従って、アメリカやインドなどの大国が、フィリピンやベトナムを助ける
• 大国は、大きな国力を持っているがゆえに、大きな間違いを起こしうる。
• 大国は、小国に勝てない
27
シーパワー:
(日露戦争)• 海洋パワーを欠いたシーパワーは無力• 例外:港を必要とせず航行できる原子力潜水艦
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
海における軍事力(海軍力)戦艦の数や性能・乗組員の能力や規律
海洋パワー: シーパワー+他国との関係性
友好国との軍事的、外交的、経済的、文化的な関係に基づくもので、これらが「海洋パワー」という総合力を形成。
ルートワック戦略論KW
海洋パワーとシーパワー
28
Maritime Power and Sea Power
友好国の数、経済ネットワーク、他国港湾施設使用など
感情論
• 「疾風怒濤」ゲーテ「若きウェルテルの悩み」
Copyright:SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
ルートワック戦略論KW
• 国民やリーダーをして、直面する国家の政策を誤らせる集合的な感情の高まり
理性よりも感情の発露を強調した作風
真珠湾攻撃時の日本イラク戦争時のアメリカ
29