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大規模製品の開発における製 品アーキテクチャの選択: 日韓造船企業の事例研究 向井悠一朗 20161012日博士論文公開予備審査 1

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  • 大規模製品の開発における製品アーキテクチャの選択:日韓造船企業の事例研究

    向井悠一朗

    2016年10月12日博士論文公開予備審査

    1

  • 目次1章 背景と問題意識

    2章 先行研究2.1 製品開発に関する研究2.2 製品アーキテクチャ2.3 製品アーキテクチャの変化2.4 複雑な製品システム【2.5】 先行研究の小括【2.6】 本稿のフレームワーク

    3章 造船産業の概要3.1 方法・対象3.2 造船会社と顧客3.3 船舶の製品アーキテクチャ3.4 日本・韓国・中国の造船産業の現状3.5 各国の労務費・生産性の比較3.6 日韓造船会社のポジショニング

    2

  • 目次4章 相対的に複雑性が低い場合の製品アーキテクチャ戦略

    4.1 今治造船4.2 大島造船所4.3 常石造船4.4 名村造船所4.5 相対的に複雑性が低い場合の小括

    5章 相対的に複雑性が高い場合の製品アーキテクチャ戦略5.1 新来島どっく5.2 現代重工業5.3 三星重工業5.4 相対的に複雑性が高い場合の小括

    6章 まとめ6.1 複雑性×大きさ(容積)による製品アーキテクチャ選択6.2 本稿の貢献と今後の研究課題

    理論的貢献実務的貢献今後の研究課題 3

  • 目次

    7章 ディスカッション7.1 フレームワークの応用可能性7.2 フレームワークにおける位置取り戦略

    [補論] 日韓造船会社の非雁行形態論的な進化問題意識先行研究造船産業の概観日韓造船企業の戦略ポジションの変遷まとめ

    参考文献4

  • 出所• 本稿の一部の章は、下記の既出論文を加筆・修正している。

    • 2章

    • 向井悠一朗(2013)「組織の境界と知識の境界の不一致:複雑・大規模な製品の開発―経営学輪講 Brusoni, Prencipe, and Pavitt (2001)―」『赤門マネジメントレビュー』12(7),515-536.

    • 向井悠一朗 (2014)「複雑な製品システムのイノベーション―経営学輪講 Hobday (1998)」『赤門マネジメント・レビュー』 13(1), 21-36.

    • Mukai, Y. (2014). Technological change from analog to digital: Aircraft engine control system. Annals of Business Administrative Science, 13, 329-342.

    • 3章

    • 向井悠一朗(2016a)「非高付加価値市場における日本企業の優位性―造船産業の事例」『経営学論集第86集』日本経営学会

    • 4章

    • 向井悠一朗(2011)「製品アーキテクチャの変化と組織間コンフリクトの相互作用:船舶の機関部設計の事例」東京大学大学院経済学研究科修士論文

    • 向井悠一朗(2016c)「設計組織による製品アーキテクチャの改変:非高付加価値・非先端技術分野における日本企業の製品開発組織」『日本経営学会誌』37,29-39.

    • 補論

    • 向井悠一朗(2016b)「近年の造船産業の非雁行形態的進化」第20回進化経済学会東京大会,2016年3月26日,東京大学本郷キャンパス(口頭発表)

    5

  • 1章 背景と問題意識

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  • 1章 背景と問題意識

    • 実際に、様々な大規模で複雑な産業財において、一品一様ではない製品設計が模索されている。• 産業用冷蔵庫メーカーの前川製作所:従来、受注設計による開発と定置組立によって生産する、典型的な特注品ビジネスを展開していたが、近年では「Newton」という新たな製品シリーズを用意し、カタログ販売も行なうようになっている。

    • トラック業界のスウェーデンのスカニア社や日本の日野自動車など:特注品ビジネスの大型トラック市場において、粒度や程度の違いはあるがコンポーネントのモジュラー化を進めている。

    • 他にも、工作機械(朴,2001;柴田・玄場・児玉,2002)や建築物(藤本・野城・安藤・吉田,2015)など・・・

    • 大規模で複雑な産業財の製品開発において、それまでとは異なるアーキテクチャの選択を模索する動きも見られる。

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    大規模で複雑な産業財における、多様なアーキテクチャ選択の可能性を検討する意義はあると思われる。

  • 1章 背景と問題意識• 人工物の複雑性とアーキテクチャの関係

    • 一般的に、機能要求の高度化や制約条件の厳格化によって、人工物は複雑化(≒インテグラル化)しやすい。

    • Henderson and Clark(1990)、 Clark and Fujimoto(1991)、 Henderson and Cockburn(1994 )、Fixson and Park(2008)、藤本(2013)など・・・

    • 複雑性を軽減させるためにモジュラー化• Simon(1969)、Baldwin and Clark(2000)、 Gawer and Cusumano(2002)、Langlois(2002)、柴田・玄場・児玉(2002)、武石(2003)、具(2008)、立本(2013)など・・・

    • 電子・論理の世界で、情報処理能力が飛躍的に向上してモジュラー化• Baldwin and Clark(2000)、 Gawer and Cusumano(2002)、Cusumano and Selby、Langlois and Robertson(1992)・・・

    • 質量のある世界で、環境、安全・・の制約条件による複雑化の増大→対応しないと設計が難しくなるので、モジュラー化

    • 近能(2001)、柴田・玄場・児玉(2002)、武石(2003)、具(2008)、藤本・野城・安藤・吉田(2015)、VWのMQB・・・

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    人工物の「大きさ」がアーキテクチャの選択にどう影響するか、という視点は意外とないと思われる。

  • 1章 背景と問題意識

    •問題意識:

    製品の「大きさ」が、企業の製品アーキテクチャの選択にどのように影響するのか。

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    • 研究対象:大規模な製品である船舶の設計をとりあげる。

  • 2章 先行研究

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  • 2.1 製品開発に関する研究• 1960~1980年代の研究

    • 主に当時の最先端技術を使うような、国家的なプロジェクトを含む産業財開発か基礎研究に焦点。• プロジェクトの成否に関わる議論。顧客がプロであり、市場あるいは顧客のニーズは明確。• イノベーションに必要な情報源が開発組織の外部にあるという議論が盛んになった。• 企業の競争力に製品開発がどう影響するのかに関する視点は少なかった。

    • Myers and Marquis(1969)・Rothwell et al.(1974)・Allen(1977)・von Hippel(1988)など

    • 1990年代~• 製品開発が企業の競争力に与える影響:開発組織のプロセス(組織能力)→開発パフォーマンス(開発生産性・開発リードタイム・総合商品力)→総合的な競争力

    • 自動車産業の分析→他の産業に応用• 市場のニーズが曖昧で多面的な消費財・・・ユーザーのニーズと製品の設計をつなぐ製品コンセプト

    • 産業財開発において、イノベーションに有効な情報源が企業外部にのみあるとも言い切れない。• Clark and Fujimoto(1991)・Iansiti(1998)・Pisano(1994)・Cusumano and Selby(1995)・Christensen(1997)・桑嶋(2003)・富田(2008)など・・・

    • 本研究の対象は1980年代以前の研究に近いが、アーキテクチャの概念は導入前。11

  • 2.2 製品アーキテクチャ

    • 人工物は階層的な構造をもつシステム(Simon,1969)。• 階層的システムは、下位システム間の相互作用と下位システム内部における相互作用に分けて考えられる。

    • アーキテクチャ:設計要素間の結合状態

    • 人工物を設計とは、製品アーキテクチャの設定• Ulrich and Eppinger(1994)、Ulrich(1995)、Baldwin and Clark(2000)、藤本・武石・青島(2001)。

    • 製品アーキテクチャの概念• 製品への要求機能を各構造部分(部品)にどう配分し、部品間のインターフェースをどのように設計するかに関する、基本的な設計思想。

    • 製品アーキテクチャの相対的な性質の差異(インテグラルかモジュラーか、クローズドかオープンか・・・)の得失が議論されてきた。• Henderson and Clark(1990); Langlois and Robertson,(1992;1995)、 Ulrich and Eppinger(1994)、Ulrich(1995)、Sanchez and Mahoney(1996)、 Gopert and Steinbrecher(1999)、國領(1999)、Baldwin and Clark(2000)、藤本(2000;2001;2013)、藤本・武石・青島(2001) ・・・

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  • 2.2 製品アーキテクチャ

    •製品の機能をどのような構造によって実現するのか(製品の中・外)

    • Langlois and Robertson,(1992;1995) 、Goepfert and Steinbrecher(1999)、藤本(2000;2001;2013)、藤本・武石・青島(2001) ・・・

    • ミクロ/マクロアーキテクチャ(藤本,2013)。• ミクロ・アーキテクチャ:設計者(供給側)が決める、主に部品レベルのアーキテクチャ

    • マクロ・アーキテクチャ:製品全体のアーキテクチャで、ミクロ・アーキテクチャの集積。事後的に市場や顧客が選択する。

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  • 2.3 製品アーキテクチャの変化

    • 製品アーキテクチャの変化→企業の栄枯盛衰• アーキテクチュラル・イノベーション:コンポーネントレベルの基幹技術が大きく変わることなく(強化される程度)、製品アーキテクチャだけが変わる。(Henderson and Clark,1990)

    • 製品アーキテクチャの変化• どのように変化するか(インテグラル←→モジュラー/オープン←→クローズ)

    • Fine(1998)、國領(1999)、楠木・チェスブロウ(2001)、柴田・玄場・児玉(2002)など

    • どのような組織が変化に適応するか、変化をもたらすか• Ulrich(1995)、 Sanchez and Mahoney(1996)、國領(1999)、Baldwin and Clark(2000)、藤本(2000)、Baldwin

    and Clark(2000)、楠木・チェスブロウ(2001)、Prencipe(2000)など

    • 変化においてどのような能力や知識が必要か• Brusoni et al.(2001)、武石(2003)、具(2008)、中川(2008)、福澤(2008)など

    • 複雑性を軽減させるためにアーキテクチャを見直す(モジュラー化、ルール設定・・)• Ulrich and Eppinger(1995)、Baldwin and Clark(2000)、藤本・武石・青島(2001)、Suh(2001)、Langlois(2002)、立本(2013)など

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  • 2.4 複雑な製品システム

    • 複雑性(藤本,2000;2013)• 要素の多数性・多様性(Ashby,1956)/要素間の相互依存性(Thompson,1967)

    • CoPS(Complex Products and Systems)• CoPSイノベーションセンターによる研究(1996~2006@サセックス大・ブライトン大)• 高付加価値製品、資本財(産業財)、コントロールシステム、ネットワーク、Civil Engeneering

    Constructs(都市工学)であるため、ワンオフプロジェクトか小バッチになりやすい。• 複雑性:カスタマイズされたコンポーネント数、必要とされる知識やスキルの範囲、作るのにかかわる新知識の程度などを反映する。コンポーネント数、カスタマイゼーションの程度、知識の範囲がとくに製品設計の複雑性につながる。

    • <プロジェクト―小バッチ―大バッチ―マスプロダクション―連続生産>のフレームワーク(Woodward,1958)に従うと、CoPSはプロジェクト~小バッチに相当。• Hobday(1998), Barlow(2000), Gann and Salter(2000), Geyer and Davies(2000), Brusoni, Prencipe and

    Pavitt(2001), Davies and Hobday(2005)・・・

    • 複雑な製品はインテグラル・アーキテクチャであることが前提とされ、それをどう統合するかが議論されてきた。

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  • 【2.5】 先行研究の小括

    • 1960~80年代の製品開発研究の対象は比較的CoPSに近いが、アーキテクチャの概念が経営学に導入される以前の議論

    • Myers and Marquis(1969);Rothwell et al.(1974);Allen(1977);von Hippel(1988)・・・

    • 製品の複雑性が、製品アーキテクチャの選択に影響する。• Henderson and Clark(1990)、Clark and Fujimoto(1991)、 Henderson and Cockburn(1994)、 Ulrich and

    Eppinger(1994)、Langlois and Robertson,(1992;1995)、Ulrich(1995)、国領(1999)、Baldwin and Clark(2000)、藤本(2000;2001;2013)、藤本・武石・青島(2001)、Suh(2001)、立本(2013)・・・

    • CoPSの議論では、アーキテクチャは所与の条件となっていたため、アーキテクチャを選択するという観点が少なかった。

    • Hobday(1998), Barlow(2000), Gann and Salter(2000), Geyer and Davies(2000), Brusoni, Prencipe and Pavitt(2001), Davies and Hobday(2005)・・・

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    複雑な製品のアーキテクチャを所与としないことにより、そうした製品を設計する際のアーキテクチャ選択の議論に対して貢献することを試みる。

  • 補完財の規模との相対的な関係(物理的な制約からの自由度)が設計にどう影響するかは、意外と議論されてこなかった。

    【2.5】 先行研究の小括

    • 製品・部品の規模と、それが使われる上位システム(補完財)の規模との相対的な関係(物理的な制約からの自由度)• ハードウェアの製品であれば、部品がより上位の製品システムに組み込まれるとき、あるいは人間によって使用されるとき・・・

    • 上位システムに対する自由度→アーキテクチャ• Langlois and Robertson(1992;1995)、 Cusumano and Selby(1995)、国領(1999)、 Baldwin

    and Clark(2000)、小山・竹田(2001)・・・など、電子、ソフトウェア系の設計の研究• 浅沼(1990)、藤本・武石(1994)、延岡(1996)、Sako and Murray(1999)、近能(2001)、武石・藤本・具(2001)、武石(2003)、具(2008)・・・など自動車部品設計の研究

    • 操作する人間、使用される環境・・・質量のある人工物は、補完財の規模との相対的な関係によって、設計が変わる。

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  • 【2.6】 本稿のフレームワーク

    マクロ(外)アーキテクチャ:モジュラー

    ミクロ(中)アーキテクチャ:モジュラー

    マクロ(外)アーキテクチャ:インテグラル

    ミクロ(中)アーキテクチャ:インテグラル

    マクロ(外)アーキテクチャ:モジュラー

    ミクロ(中)アーキテクチャ:モジュラー

    マクロ(外)アーキテクチャ:インテグラル

    ミクロ(中)アーキテクチャ:インテグラル

    高18

    複雑性

    自由度

  • 【2.6】 本稿のフレームワーク

    ① 補完財の規模との相対的な関係はあまり考慮しなくて良い。内部は設計合理化。• マクロ(外)・アーキテクチャ:モジュラー

    • ミクロ(中)・アーキテクチャ:モジュラー

    ② 補完財の規模との相対的な関係は厳しく、内部は設計合理化が難しい。• マクロ(外)・アーキテクチャ:インテグラル

    • ミクロ(中)・アーキテクチャ:インテグラル

    19

  • 【2.6】 本稿のフレームワーク

    ③ 補完財の規模との相対的な関係はあまり考慮しなくて良い。内部は設計合理化。• マクロ(外)・アーキテクチャ:モジュラー

    • ミクロ(中)・アーキテクチャ:モジュラー

    ④ 補完財の規模との相対的な関係は厳しく、内部は設計合理化が難しい。• マクロ(外)・アーキテクチャ:インテグラル

    • ミクロ(中)・アーキテクチャ:インテグラル

    20

  • 3章 造船産業の概要

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  • 3.1 方法・対象

    •方法:複数の企業の事例研究にもとづく仮説構築(Eisenhardt,1989;横澤・辺・向井,2013)

    •対象:日本と韓国の複数の造船会社を取り上げる。• 製品の「大きさ」が、設計において重要であると考えられる。

    • (外航船の船舶の場合)1隻あたり部品は30万点、鉄鋼は8000トン程度必要で、人工物として構成要素が多く、複雑性がある。

    • 全長数百m×全幅数十m×全高数十mと、人工物としては大規模である。

    • 船舶は容積や重量が巨大→安全性、使用環境の制約、顧客の特定の使用状況(海事システム)との兼ね合いの問題が顕在化。

    • 主に機関室の設計に注目

    • 顧客からの要求・クレームが来やすく、かつ業界標準品を用いてシステムを統合する必要がある→どのようなアーキテクチャを選択するか迫られている。

    22

  • 3.1 方法・対象

    • 産業全体の中で先発国である日本企業と、後発国である韓国企業の製品戦略の位置取りを俯瞰する。

    • 各企業の竣工船種の設計工数比から算出される複雑性と、各企業の竣工船の1隻あたりの平均のサイズの2軸から、各企業の相対的な製品戦略の違いを整理する(3.6節)。

    • 2009年~2016年に訪問した日本と韓国の造船会社14社*のうち、3.6節の製品戦略の位置取り分析にもとづいて、7社の事例を取り上げる(4章・5章)。

    • 7社の選択理由① 3.6節のマトリクス上の4つのセルを埋めるように選択。② 00年代、10年代通して同じセルに位置。

    *日本の今治造船(丸亀事業本部)、大島造船所(大島工場)、尾道造船(尾道造船所)、川崎重工業(坂出工場)、新来島どっく(大西工場)、常石造船(常石工場)、名村造船所(伊万里事業所)、三菱重工業(長崎造船所・香焼工場)、ジャパンマリンユナイテッド(津事業所)、韓国の三星重工業(巨済造船所)、現代重工業(蔚山造船所)、現代三湖重工業(三湖工場)、大宇造船海洋(ソウル本社)に訪問した(国ごとに五十音順)。加えて、この13社と別に、中国の南通中遠川崎船舶工程有限公司(川崎重工業と中国遠洋運輸集団の合弁企業)。

    23

  • ミクロ・アーキテクチャ

    3.3 船舶の製品アーキテクチャ

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    船体船舶

    (製品)

    居住区

    機関室

    居住室

    操縦室

    主機

    ボイラー

    ポンプ

    発電機

    その他部品

    船装

    船殻

    マクロ・アーキテクチャ

    【補完財】(海事システム)

    ・使用環境(航路、港湾の地理的条件、荷役設備、環境規制・・・)

    ・顧客(オペレーター、オーナー業、船員、荷主・・・)

  • 3.6 日韓造船会社のポジショニング

    <複雑性>

    • 製品の種類(船種)とサイズ(船型)から製品カテゴリーを区別(麻生,2013;杉浦,2015)• 船種により設計工数が異なる・・・本稿では複雑性の指標とする。

    • ばら積み船→タンカー→コンテナ船→ガスキャリア→自動車運搬船→ドリルシップなどの特殊船の順で登場。

    • 各船種の設計工数の比(複数の造船会社の技術者へのインタビューによる):• ばら積み船 1:タンカー 1.5:コンテナ船 1.7:ガスキャリア 2:その他の船種(自動車運搬船、ドリルシップなど) 4程度

    • 設計工数指数=log(1×ばら積み船割合+1.5×タンカー割合+1.7×コンテナ船割合+2×ガス運搬船割合+4×その他割合)• 1≦設計工数指数≦4• 1.5未満ならば必ずばら積み船を生産しており、1.5以上ならばばら積み船を生産しているとは限らない。

    25

  • 3.6 日韓造船会社のポジショニング<「大きさ」>

    • 1次元の長さ、2次元の面積、3次元の容積もある。また、重量・・・なども考えられる。

    • 容積:総トン数• 船の容積の大小が、航路上の運河や港湾、海底の地形など、船が使用される外部環境(補完財)から受ける制約の厳しさか、逆に外部環境に船がどれだけプレッシャーを与えるかを示す変数と考えられる。

    • 造船業界で最も広く使われている。総トン数が課税基準となり、公刊資料でも艦船以外のすべての商船について掲載されているので、データをとりやすい。

    • おおむね中間値となる5万総トンを境に、それ以上だと比較的大きい、それ以下だと比較的小さいとみなす。

    • 船種が変わると設計工数は変わる。総トン数が変わっても、設計工数はさほど変わらない(各社の設計技術者へのヒアリングによる)。

    26

  • • GT(総トン数):船の大きさ(容積)を示す。全ての閉囲場所の寸法を元に算出される。港税など各種税金の算出根拠となる。

    27

    (トン数について)

    •DWT(載貨重量トン数):満載喫水線の限度まで貨物を積載したときの全重量から船舶

    自体の重量を差し引いたトン数。この中には運航に必要な燃料・水・食料などの重量も含まれるが、積める貨物の量を示す目安となり、船舶の新造、売買、傭船契約などの取引の基準として使用される。

    (出所)日本海事協会ホームページ(http://www.kaijipr.or.jp/mamejiten/index.html)、明和海運株式会社ホームページ(http://www.meiwakaiun.com/index.html)

    http://www.kaijipr.or.jp/mamejiten/index.htmlhttp://www.meiwakaiun.com/index.html

  • 3.6 日韓造船会社のポジショニング

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    設計工数指数と船型からみた日韓造船企業のポジショニング(2000~2009年)

    *NACKS・DACKS:川崎重工業と中国の海運大手COSCOの合弁企業。(出所)KPDATAをもとに作成

  • 3.6 日韓造船会社のポジショニング

    29

    設計工数指数と船型からみた日韓造船企業のポジショニング(2010~2014年)

    *JMU:ジャパンマリンユナイテッド(2013年1月~)(出所)KPDATAをもとに作成

  • 3.6 日韓造船会社のポジショニング• ポジショニング分析→製品のサイズの違いが製品アーキテクチャの選択にどのように影響するのか。• 4章:複雑性が低い場合

    • 5章:複雑性が高い場合

    30

    平均総トン数小 大

    設計工数指数

    5.1

    4.1 4.2 4.3

    5.2 5.3

    4.4

    5万総トン

    1.5

  • 4章 相対的に複雑性が低い場合の製品アーキテクチャ戦略

    4.1 今治造船

    4.2 大島造船所

    4.3 常石造船

    4.4 名村造船所

    4.5 小括

    (4.1~4.4は補足資料に)31

  • 4.5 相対的に複雑性が低い場合の小括今治造船(4.1) 大島造船所(4.2) 常石造船(4.3) 名村造船所(4.4)

    生産隻数約2倍(49隻(2003年)→113隻(2012年))

    約2倍(23隻(2003年)→39隻(2011年))

    約3倍(23隻(2003年)→77隻(2012年))

    約2倍(8隻(2004年)→14隻(2007年)

    設計工数指数(2000年代)

    1.41 1.04 1.22 1.11

    主力製品の船種

    ばら積み船*ただし、タンカー、コンテナ船、LNG船

    も維持ばら積み船 ばら積み船 ばら積み船

    平均総トン数(2000年

    代)45238.4 34553.8 39614.0 57853.0

    主力製品のサイズ

    ハンディ(約3~4万DWT)パナマックス・ポストパナマックス(約8万~10万DWT)ケープサイズ(約18万DWT)

    ハンディ(約3~6万DWT)パナマックス・ポストパナマックス(約8万~10万DWT)

    ハンディ(約4~6万DWT)パナマックス・ポストパナマックス(約8万~10万DWT)ケープサイズ(約18万DWT)

    パナマックス・ポストパナマックス(約7万~10万DWT)ケ ー プ サ イ ズ ( 約 18 万 DWT )230ORE、WOZMAX(約25万DWT)

    船体の設計

    個別にカスタマイズしない。28BCや I-STAR,NEXTARなどのシ

    リーズを用意。

    できるだけ船体は変えない。

    (個別の顧客要求に対する細かいカスタマイズはありうる)

    基本設計はTESS58、カムサマック

    スなどのモデルを原価企画によって開発し、できるだけ変えない。

    (ただし個別の顧客要求に対する細かいカスタマイズはありうる)

    基本的に特定用途に対して船型をカスタマイズ。ただしWOZMAXは顧客(荷主)がリオティント1社のみなので、船型は1種類。

    機関室の設計 モジュラー インテグラル→モジュラー インテグラル→モジュラー インテグラル

    機関艤装レベルのアーキテクチャ

    変化なし

    「モジュール」はないが、冗長性を持たせた設計。

    ユニット(番船ごとに特殊設計)→モジュール(番船間で共通化→流用化)

    *ただし「工作性」が良い設計案を残し、流用しない場合もある。

    ユニット(番船ごとに特殊設計)→モジュール(番船間で共通化→流用化)

    変化なし

    部品そのものも、配置・配管も大幅に変わる主機変更も受け入れる。

    アーキテクチャの設定に関与した組織

    設計設計

    製造

    設計

    サプライヤー(舶用部品メーカー)

    設計

    顧客(荷主・オペレーター)

    32

  • 4.5 相対的に複雑性が低い場合の小括

    • 小型が主力(4.1今治造船、4.2大島造船所、4.3常石造船)• 用途が不確定、運航パターンが汎用的・・・できるだけ積載効率を高めながら、ある程度どこでも通過可能な設計(例:パナマ運河の要件を満たす)

    • 今治造船の主力「今治のニッパチ」(1990~2014年で累計200隻以上):船体は設計変更しない。機関室設計も基本設計でほぼ固定化(冗長性を持たせる)。

    • 常石造船の原価企画・大島造船の船体設計・・・造船所の設計部門の側が市場調査を通じて標準船を設計。

    • 常石造船の「モジュール」・大島造船所の「ユニット」・・・機関室内部でモジュラー化• 要求・クレームが来やすい機関艤装を、数パターンからの選択式に。• 内部に舶用部品間の艤装設計のすり合わせを局所化、個別製品(番船)の間で共通化。

    • マクロ・アーキテクチャ(外アーキテクチャ):モジュラー型/ミクロ・アーキテクチャ(中アーキテクチャ):モジュラー型。

    33

  • 4.5 相対的に複雑性が低い場合の小括• 大型が主力(4.4名村造船所)

    • 番船間で、できるだけ船体の基本設計は不変に。ただし、限られた顧客によって、使用される航路や港湾や用途が限定的・・・限定的なニーズに合わせた設計を行なう必要。

    • 技術力のある国内大手顧客が中心。• 例:WOZMAX・・・特定用途に適した船体設計。機関室設計は主機選択も含めて顧客要求に対応。これに伴って、機関艤装はカスタマイズ(個別対応)される。

    • マクロ・アーキテクチャ:インテグラル型/ミクロ・アーキテクチャ:インテグラル型。

    • 製品ポートフォリオの比重がどこにあるか→製品アーキテクチャの選択

    34

    総トン数小 大

    設計工数指数

    モジュラーインテグラル

    マクロ・アーキテクチャ総トン数

    小 大

    設計工数指数

    モジュラーインテグラル

    ミクロ・アーキテクチャ

  • 5章 相対的に複雑性が高い場合の製品アーキテクチャ戦略

    5.1 新来島どっく

    5.2 現代重工業

    5.3 三星重工業

    5.4 小括

    (5.1~5.3は補足資料に)

    35

  • 5.4 相対的に複雑性が高い場合の小括新来島どっく(5.1) 現代重工業(5.2) 三星重工業(5.3)

    生産隻数約1.2倍39隻(2004年)→48隻(2009年)

    約2.5倍47隻(2003年)→105隻(2009年)

    約2倍38隻(2003年)→78隻(2011年)

    設計工数指数(2000年代) 1.94 1.68 1.77

    主力製品の船種多様なプロダクトミックス(ケミカルタンカー、PCC、ばら積み船)

    タンカー、コンテナ、ガスキャリア(とくにLNG船)

    が主力。ただしリーマンショック以降はばら積み船も。

    近年ばら積み船を作らず、タンカー、コンテナ、ガスキャリア(LNG運搬船)と複雑性の高い船に特化

    平均総トン数(2000年代) 25466.0 72516.7 74834.5

    主力製品の船型(サイズ)小型:ハンディ(3~6万DWTクラス)(全長300mまで)

    2万総トン未満~10万総トン以上までまんべんなく。

    10万DWT以上の割合が高い。特に20万DWT以上の割合が高い。

    船体の設計可能な限り不変。

    (ただし細かい部分のカスタマイズはありうる)

    顧客要求に対してできるだけカスタマイズ

    標準船はない。受注ごとにカスタマイズする。ドリルシップ、LNG-FPSOなど新船種の基本設計は欧州企業から購入→後にEPC契約を試みる。

    機関室の設計インテグラル→モジュラー(1990年代初頭)

    インテグラル(ただし、10隻以上の場合)*10隻以下なら、編集設計

    インテグラル

    機関艤装レベルのアーキテクチャ

    機能別モジュールを活用。「パッケージ」モジュールを活用。*10隻以上なら、新規設計できる。

    なし

    アーキテクチャの設定に関与した組織

    設計

    サプライヤー設計

    設計顧客

    海外のエンジニアリング会社

    36

  • 5.4 相対的に複雑性が高い場合の小括• 小型が主力(5.1新来島どっく)

    • シリーズ船化を進め船体・機関室設計を番船間で共通化、機関室艤装のレベルでもモジュラー化。• 1990年代初頭から機関室艤装のモジュラー化。• マクロ・アーキテクチャ:モジュラー型/ミクロ・アーキテクチャ:モジュラー型

    • 大型が主力(5.2現代重工業、5.3三星重工業)• 船体・機関室は番船ごとにカスタマイズ。顧客の用途、使用条件(積荷、航路、港湾)が限定され、運航パターンが決定されてから設計が行なわれる・・・特定の顧客の使用条件にすり合わせられる。• 日本企業の5~10倍の設計技術者、うちカスタマイズ作業の詳細設計以降に多数。

    • マクロ・アーキテクチャ:インテグラル型/ミクロ・アーキテクチャ:インテグラル型• 現代の「パッケージ」:新規設計される。 (同一設計が10隻以上の場合)

    • 10隻以下なら、編集設計。

    • 三星は、複雑性の高い製品を受注ごとにカスタマイズ。

    37

    総トン数小 大

    設計工数指数

    モジュラーインテグラル

    マクロ・アーキテクチャ総トン数

    小 大

    設計工数指数

    モジュラー インテグラル

    ミクロ・アーキテクチャ

  • 6章 まとめ

    38

  • 6.1 複雑性×大きさ(容積)による製品アーキテクチャ選択

    39

    ③(5.1)

    マクロ(外)アーキテクチャ:モジュラー

    ミクロ(中)アーキテクチャ:モジュラー

    ④(5.2・5.3)

    マクロ(外)アーキテクチャ:インテグラル

    ミクロ(中)アーキテクチャ:インテグラル

    ①(4.1・4.2・4.3)

    マクロ(外)アーキテクチャ:モジュラー

    ミクロ(中)アーキテクチャ:モジュラー

    ②(4.4)

    マクロ(外)アーキテクチャ:インテグラル

    ミクロ(中)アーキテクチャ:インテグラル

    複雑性

    高 (物理的な制約からの)自由度=補完財の規模との相対的な関係 低

  • 6.1 複雑性×大きさ(容積)による製品アーキテクチャ選択

    • マクロ・アーキテクチャ:大きくなるほど、インテグラル型• 補完財(用途、使用環境)の規模による制約(相対的な関係)が厳しくなる。• 小さいほど、補完財の規模との相対的関係による制約から自由に設計できる。• 技術力のある顧客が多く、要求が多い。

    • ミクロ・アーキテクチャ:大きくなるほど、インテグラル型• スペースに余裕がある大型船は、上位システム(マクロレベル)の設計に対して、すり合わせた設計が可能になる。

    • スペースに余裕がない小型船の場合、あらかじめ冗長性を持たせる、モジュールを採用する・・とモジュラー的な設計になる。• ただし、複雑性が高い場合、大型船でも内部構造の複雑性を軽減する必要性が高くなり、生産量や人員などの条件付きでモジュラー化志向はありうる。(現代) 40

    • 問題意識:

    製品の「大きさ」が、企業の製品アーキテクチャの選択にどのように影響するのか。

  • 6.2 本稿の貢献と今後の研究課題

    <理論的貢献>

    •大規模な産業財の製品開発を取り上げ、製品の複雑性と「大きさ」を分けて分析することにより、製品の規模と補完財の規模との相対的な関係(物理的な制約)が、製品アーキテクチャの選択に影響する可能性を示唆した。

    • 先行研究では複雑性がアーキテクチャの選択に影響することが論じられてきたが、製品の「大きさ」(製品の規模と補完財との相対的な関係)の要因は検討されていなかった。

    41

  • 6.2 本稿の貢献と今後の研究課題

    <実務的貢献>

    •企業が製品アーキテクチャを選択する際、製品の複雑性だけでなく、「大きさ」による制約=補完財の規模との相対的な関係にも注意を払う必要がある。

    •産業財企業が「高付加価値化」を志向するとき、単に複雑性を高めて、大型化しても、「高付加価値」になるとは限らない。• 製品ポートフォリオの2つのスペクトル(複雑性×大きさ)にあわせて、製品アーキテクチャを選択する必要。

    • 「高付加価値化」と言った場合、複雑性の高い製品種類(いわゆる「高付加価値製品」「ハイテク製品」etc・・・)にシフトする志向を持つ企業が多い。

    42

  • 6.2 本稿の貢献と今後の研究課題

    <今後の研究課題>

    複数事例にもとづく仮説的なフレームワーク構築の研究→検証・・・

    •製品アーキテクチャの操作化、測定

    •取り巻く補完財である海事産業側(顧客、港湾管理者・・)の調査・分析。

    • フレームワークの一般化可能性

    43

  • 7章 ディスカッション

    44

  • フレームワークが意味を持たない:• ソフトウェア・・・質量がなく、論理設計されるものであるため、設計を簡素化するにも、物理的要因を考慮する必要がない。

    7.1 フレームワークの応用可能性• 人工物の規模と補完財の規模に関する相対的な関係→アーキテクチャ

    • 船舶は、世の中の人工物の中では相当大規模な、あくまで極端な例。

    45

    造船産業と類似のパターン:• 建築物・・・イノベーションが起こるほど容積的に大規模なものになっていく。同時に、大規模になるほど、土地と基礎や構造/日照と高さ/意匠と文化・・・など、その建築物が存在し使用される周囲の環境との関係がセンシティブになり、すり合わせられる(藤本・野城・安藤・吉田,2015)。

    • トラック・・・大型(ただし重量)なほど道路にダメージを与えるので、通行が規制され、用途や通行経路が特殊なものになる(税金も高くなる)。また、アメリカのクラスエイトや、ヨーロッパや中東などで長距離輸送用途に使われるような大型トラックの場合、エンジンチューンやトランスミッションのギア比など製品の階層システムの下位レベルにおいて、顧客ごとにカスタマイズされることも多い→大型になればなるほど、(製品システムのどこかの階層で)相対的にインテグラルなアーキテクチャになる。

    造船産業と逆のパターン:• コンデンサ・・・小型化と大容量化(集積度)が技術進歩の方向である。周囲との干渉問題がセンシティブな問題となっている場合ほど、小型規格のものが求められる。

    • HDD・・・小型化と大容量化(集積度)が技術進歩の方向である。断続的なイノベーションが起こると小型化し(Christensen,1997)、より小型のPCなど周辺部品との干渉問題の難易度が上がるような、より新分野の電子機器に対応する。ある規格(サイズ)の中では、大容量化される方向で技術が発達する。

    • ノートPC・・・より薄型で、よりCPUの処理速度が早いほど高額商品になる。たとえば発売当初の価格が20万円ほどのソニーVaioZ(2010年モデル)は、薄型化のため、形状が専用設計されたCPU4個がマザーボードに密着するように設計されており、交換にはメーカーの専用ツールが必要。・・・薄型化を図るほど、よりインテグラルな設計が選択される。

  • 7.2 フレームワークにおける位置取り戦略

    •本稿は、各セル内でどのようなアーキテクチャ戦略が適切なのかを検討してきた。

    •複数セルへのポジショニング、他のセルに位置取る可能性はあるのか。

    • 右上のセルの三菱重工業が、左下のセルの今治造船との技術提携を強化。

    • 右上のセルの現代重工業が、左下に子会社として現代尾浦を設立している。

    • 右下の名村造船は、左下のセルの函館どつくや、右下でも相対的に左寄りの佐世保重工業を買収。

    46

  • 補足資料(4章・5章)

    4.1 今治造船

    4.2 大島造船所

    4.3 常石造船

    4.4 名村造船所

    5.1 新来島どっく

    5.2 現代重工業

    5.3 三星重工業

    47

  • 4.1 今治造船

    • 1980~90年代:50000総トン以下の中小型船が大半。

    • 2000年代~:50000総トン以上の船も増加。

    • ばら積み船、タンカー、コンテナの各船種で「シリーズ船」として標準船戦略がとられ、いくつかの船型に絞られている。• ハンディサイズのばら積み船(例:「今治のニッパチ」(28000DWT級ばら積み船)・・・1990年の建造開始から

    2014年まで累計200隻• 76000DWT級ばら積み船・・・2001年の建造開始から2014年までで累計190隻。

    • 「シリーズ船」:基本的に1度設計した船体は10年以上変えずに生産

    48

    製品ポートフォリオ(1980~1989年) 製品ポートフォリオ(1990~1999年)製品ポートフォリオ(2000~2014年)

  • 4.1 今治造船

    •船体設計:• 船体(船殻)個別にカスタマイズしない。 28BCやI-STAR,NEXTARなどのシリーズを用意。(ばら積み船・タンカー・コンテナ船)

    • 1モデルあたり数十から200隻建造。

    • 28000 DWTのばら積み船を、同一設計の船体で25年間で200隻建造(1990~2014年) 。

    •機関室設計:• 基本設計で機関艤装のパターンはほぼ決まっている(配管など細かい部分でのカスタマイズはありうる)

    • あらかじめ、冗長性を持たせた設計を行なっている(モジュールの採用まではしていないが。)

    49

  • 4.2 大島造船所

    • 1980年代:ほぼ50000総トン以下の船型に集中、船種はばら積み船が半分程度、その他の特殊船(主に自動車運搬船)が半分程度。

    • 1990年代~:船種はほぼすべてばら積み船、船型は50000総トン以下のハンディマックス、パナマックス、ポストパナマックス(3万8000~10万4000DWT)• 業界内では「バルクの大島」

    • 統計上、タンカーなど他の船種に分類されるものもあるが、液体バルクとドライバルクの混載用など実質的にばら積み船と同様の製品である。(2000~2014年)

    50

    製品ポートフォリオ(1980~1989年) 製品ポートフォリオ(1990~1999年) 製品ポートフォリオ(2000~2014年)

  • 4.2 大島造船所

    •船体設計:• 番船間では、できるだけ変えない(個別の顧客要求に対するカスタマイズはありうる)。

    • 船体(船殻)の形状は最終組立工程(ドック工程)の生産性に影響を与える場合があるので、できるだけ変えない(1ドックに同時に4隻が収まるように)

    •機関室設計:• 「家系図」方式・・作りやすい設計を共通化。

    • 全体のアーキテクチャ:クローズド・インテグラル→クローズド・モジュラー• 「ユニット」、「モジュール」レベル:ユニット(番船ごとに特殊設計)→モジュール(番船間で共通化→流用化)*「工作性」が良い設計案を残す。

    51

  • 4.2 大島造船所• 新しい「ユニット」と従来の「ユニット」を比べて、作りやすいものを新しい推奨パターンとして残し、次の番船以降にできるだけ引き継がれる(「家系図」)。

    • 設計案は顧客要求に応じて発散させつつも、事後的に生産しやすい設計案が発見されればそれに集約。結果的に中身(構成部品とその周囲の艤装)が安定化する(「熟成される」)

    • 主機、発電機、ボイラーなど艤装設計に影響を及ぼす舶用部品• 顧客の自由な要求を受け入れる。• 設計が一定でも、これら舶用部品の組み合わせが個別の製品(番船)によって異なり、艤装設計も異なる。• 機関室の艤装設計や生産現場での艤装作業は、生産量の増加にともなって負荷が増大した。

    • 先行艤装(サブアッセンブリー)の「ユニット」:• 「ユニット」の生産のしやすさ(工作性)は、選ばれる舶用部品の組み合わせのパターンに左右される。

    • そこで、顧客との交渉に際して推奨の舶用部品の組み合わせパターンを用意する。そのパターンから外れた要求を受けたときは、新しい「ユニット」を設計して対応する。

    • 新たに作る段階では、作りやすいかどうかは定かではないため、当該製品(番船)に合わせた一品一様の「ユニット」となる。

    • 「工作性」(作業の間違いにくさ、作業しやすさ)に関するフィードバックを重視。• 設計部門の中に生産部門の机がある。• 設計部門の技術者:「実際に問題は工作から出てくる」• 生産部門側の技術者:「工作から出た声に対して設計は応じてくれる」

    52

    家系図

  • 4.3 常石造船• 1980年代~:

    • 主力船種:ばら積み船• ただし、1980年代~90年代:他にタンカーやコンテナ船、自動車運搬船なども作っていた

    • 主力船型:の「ハンディサイズ」( 4~6万DWT=2~3万総トン数程度)の小型、「パナマックス」(カムサマックス)( 8万DWT程度 =4万総トン程度)、「ポストパナマックス」(10万DWT=5万総トン程度)の中型• 2000年代以降~最大船型18万DWT(9~10万総トン程度)の建造が可能なドック(長さ450.0×幅60.0×深さ11.50)を擁するフィリピン・セブ工場や、国内工場よりもサイズの大きなドック(長さ450.0m×幅40.0m×深さ12.3m)を擁する中国・舟山工場の生産比率が高まっていることもあり、5万総トン以上の船型がやや増加。

    53

    製品ポートフォリオ(1980~1989年) 製品ポートフォリオ(1990~1999年) 製品ポートフォリオ(2000~2014年)

  • 4.3 常石造船

    • 船体設計:• 1990年代~2000年代初め:「TESSシリーズ」は、実際には既存設計の製品を製造、販売するものではなく、顧客からの引き合いから設計が開始される受注設計・生産方式であった。そのため、1隻1隻でみると実質的に特注品に近い性質だった。

    • 2000年代半ば~:受注量の増加、海外工場の立ち上げ→生産量が急増。そのため、従来の設計方法では設計負荷が急増していた。そこで、船体の設計に関しては、原価企画を徹底することにより、基本設計(標準設計)が固められたうえで、詳細設計以降で細かいカスタマイズ対応がなされることになった。

    • ハンディマックス(4万~6万DWT)の現行モデル「TESS58」(2006年に初竣工~2015年8月で累計160隻竣工)

    • 7~8万DWTクラスのパナマックスは、8万1600DWTの「カムサマックス 」(2005年に初竣工~2015年9月時点で累計220隻竣工)

    • 「TESS○○」などの標準船のモデルはあるが、個別の顧客要求に対する細かいカスタマイズはありうる。

    • 機関室設計:• 全体のアーキテクチャ:以前は一品一様→機能別「モジュール」(各数パターン)の組み合わせ• 「ユニット」、「モジュール」レベル:ユニット(番船ごとに特殊設計)→モジュール(番船間で共通化→流用化)

    • アーキテクチャの設定に関与する組織:設計・サプライヤー(舶用部品メーカー)

    54

    ~2004年 2005年~(原価企画)1.引合 1.マーケティング調査2.見積もり設計 2.商品企画3.入札 3.調達企画4.基本設計 4.標準設計5.受注 5.販売・受注6.詳細設計 6.番船(詳細)設計7.建造 7.建造8.引渡し 8.引渡し

  • 4.3 常石造船

    • 機関室のアーキテクチャの見直し• 「PSPO」(Power Station Plug and Operation):9社の舶用部品サプライヤーが開発に関与。

    • 単独ではアーキテクチャの見直しを行なうことが困難だった。

    • 設計面の生産性向上を図っている• 海外に生産拠点を2か所もち、その生産量の割合を高めている。そのため、海外拠点に提供しやすい簡素な設計にして、流用を進める。

    55

  • 4.4 名村造船所• 主力船種:一貫してばら積み船

    • 1980年~1990年代)タンカーが次に多い• 2000年代~:タンカーの比重↓、ばら積み船の比重↑。

    • 主力サイズ• 5万総トン以下の小型・中型も生産しているが、5万総トン以上の大型船の割合が高い。• 2000年代~:ハンディサイズ(3万4000DWT級ばら積み船(「34BC」))、パナマックスサイズの8万

    2000DWT級ばら積み船、ケープサイズ(17万4000DWT)、230ORE、25万DWT(250ORE;WOZMAX)の大型のばら積み船が中心。

    製品ポートフォリオ(1980~1989年) 製品ポートフォリオ(1990~1999年) 製品ポートフォリオ(2000~2014年)

    56

  • 4.4 名村造船所

    • 船体設計:• 特定用途に合わせ込んだ基本設計(例:230ORE→WOZMAX)

    • ただし、モデルライフの間、個別の番船間で船体の基本設計はできるだけ変えない。

    • 機関室設計:• 艤装設計は基本的に一品一様。結果的に1番船の設計が「標準」となり、2番船以降はそこからカスタマイズ設計される。• 機器の追加にともなって、他の機器との相互干渉の問題が発生する。また、機器追加を見込んであらかじめ冗長性を持たせた標準設計などは行なっていない。

    • 主機メーカーの売り込み、顧客企業の要求などによる主機の変更には対応する。これにより、配置などのカスタマイズが生じる(WOZMAXなど)

    • 過去には燃料供給機能などに関してモジュラー化に取り組んだこともあるが、顧客要求に応じてカスタマイズする必要が生じ、機能別のモジュールを作るには至らず、先行艤装のユニット化にとどまった。

    • 主力の大型船の主要顧客には規模の大きな運航会社が多い。• 機関長や造船会社勤務の経歴を持つ技術者がいる場合が多く、技術水準が比較的高い。• 船体設計はあまり変わらないが、技術力の高い顧客から要望が寄せられる機関の艤装設計は、顧客ごと(あるいは注文ごと)に機器配置や配管が異なるカスタマイズ設計が通常となっている。このことは、社内において「異船主同型」と表現されている。

    • 「異船主同型」(船体設計は比較的仕事量が変わらないが、艤装設計はカスタマイズ作業が必要となる)

    57

  • 4.4 名村造船所• 個別の製品のサイズそのものよりも、製品ポートフォリオの比重がどこにあるかによって製品アーキテクチャの選択が異なる可能性。

    • 大型船型の割合が高ければ、大型船型の顧客ニーズに対応するような製品アーキテクチャの選択が、大型船型でも小型船型でもなされると考えられる。

    • WOZMAX(大型ばら積み船)• 2008年9月(リーマンショック直前)に、リオティントからWOZMAXを20隻を受注。• WOZMAX:西オーストラリアの主要3港(ポートヘッドランド、ポートウォルコット、ダンビア)から鉄鉱石を積載する用途に特化した25万DWT級鉄鉱石ばら積み船。

    • 従来型(23万DWT級)があったが、18mの浅喫水を維持して載貨重量25万DWTを確保するために完全に新規設計。その後でリオティントに提案。

    • 自社の生産設備などのリソース(元VLCC用の大型のドック)を踏まえ、それを最も効果的に活用できるニーズを探索。• 船殻設計は、サイズが近いばら積み船である23万DWT級鉄鉱石運搬船(230ORE)をベースに、新規設計。• 顧客要求により、三菱重工業UEの主機が採用された番船(1・2番船)もあり、その他の番船は標準のMAN B&Wが採用。艤装設計はこれに対応して設計し直された。さらに、顧客ごとに詳細な要求が異なる。(異船主同型)

    • パナマックスバルカー(中型ばら積み船)• 船型を開発するたびに開発コンセプトをもとに標準の船体設計が行なわれる。• このような中型船型は、荷役、航路がワールドワイドで、荷物は多岐にわたる・・・やはり「異船主同型」になりやすい。

    • ハンディサイズ34BC(小型ばら積み船)• 顧客要求に従って対応して艤装設計を一品一様にカスタマイズしている。• むしろ、34BCの方が、他の船型よりもスペースが少ない分、顧客からのコメント要求が多い傾向があるという。ただし、スペースにの限界があるので、大型船型よりカスタマイズの難易度が高い。

    58

  • 5.1 新来島どっく• 1980年代~2000年代:

    • 船種:ばら積み船だけではなく、ケミカルタンカー、コンテナ船、自動車運搬船などの複雑性が相対的に高い船種が主力。

    • サイズ:大半が5万総トン未満。中でも3万総トン未満の割合が高い• ただし、自動車運搬船の一部で5万総トン以上。

    • 1980年代には単発的に10万総トンを超えるタンカーも建造したことはある。

    製品ポートフォリオ(1980~1989年) 製品ポートフォリオ(1990~1999年) 製品ポートフォリオ(2000~2014年)

    59

  • 5.1 新来島どっく• 船体設計:

    • シリーズ船として、基本設計は固定。• 番船ごとに細かい部分で差異はある。

    • 機関室設計:• 1980年代以前:毎回新規設計が行なわれることとなり、膨大な設計工数や、設計ミスや図面の修正、納品後の品質不良などが発生

    • 1990年代~:艤装設計を番船間で共通化• クローズド・インテグラル→クローズド・モジュラー。(1990年代初頭から)

    • モジュールの共同開発に参加したのは、主に日本全国に展開している舶用機器メーカー。長期、継続的な取引があることと、同社が国内でも有数の生産規模であるため、モジュール開発についていった。

    • モジュールの組立は、本社工場の近隣にある下請け工場で、新来島どっく出身者によって行なわれている。• 屋外作業が多いため体力的に負担の大きな造船所内(特にドック)の作業が厳しくなってきた従業員に対して、屋内で作業環境を良くできるモジュール組立作業を発注することにより、再雇用にも。

    60

    モジュールユニット名称 装備機器1 主機燃料油供給ユニット FO供給ポンプ、FO循環ポンプ、FO加熱器、粘度制御装置、流量計2 燃料油清浄機ユニット FO清浄機、FOスラッジタンク、清浄機FO加熱器、同左温調弁3 燃料油漉器ユニット 主機FO2次漉器、発電機FO2次漉器、流量計4 発電機A重油ポンプユニット 発電機DO供給ポンプ5 主機関冷却清水ユニット 主機CFWポンプ、FW冷却器、主機ジャケット、プレ加熱器、温調弁6 温水循環ポンプユニット カロリファイヤー、温水循環ポンプ7 潤滑油清浄機ユニット LO清浄機、LOスラッジタンク、清浄機LO加熱器、同左温調弁8 ビルジポンプユニット ビルジポンプ、スラッジポンプ9 清水圧力タンクユニット FW圧力タンク、DW圧力タンク、FWポンプ、DWポンプ、流水殺菌器10 燃料油移送ポンプユニット FO移送ポンプ、DO移送ポンプ11 潤滑油漉器ユニット LO2次濾器、スラッジコレクタ、主機排気弁作動油ポンプ12 発電機燃料油供給ユニット FO供給ポンプ、FO循環ポンプ、FO加熱器、粘度制御装置、流量計13 バラストポンプユニット FIRE BB ポンプ、FIRE GSポンプ、バラストポンプ14 冷却海水ポンプユニット CSWポンプ15 カスケードタンクユニット カスケードタンク、ドレンクーラー、給水ポンプ(出所)新来島どっく提供資料

  • 5.2 現代重工業• 1980年代

    • 船種:ばら積み船とタンカーが中心。• サイズ:5万総トン以下の小型・中型、VLCCやULCCのタンカーも(10万総トン以上)の大型船も主力。

    • 1990年代• 船種:設計工数がより多くなる方向へとシフト(コンテナ船やLNG運搬船などのガスキャリアの割合が増加)• サイズ:大型化の傾向(従来の主力であったタンカーを中心に)

    • 2000年代~• 船種:タンカー、コンテナ、ガスキャリア(とくにLNG船)が主力となり、ばら積み船の割合は減少)。00年代半ば以降、ドリルシップにも進出。• サイズ:2万総トン未満~10万総トン以上までまんべんなく。(ただし、タンカーやガスキャリアを中心に大型化する傾向も)

    61

    製品ポートフォリオ(1980~1989年) 製品ポートフォリオ(1990~1999年) 製品ポートフォリオ(2000~2014年)

    *三湖重工業、尾浦造船を含まず。1980年は欠損値。

  • 5.2 現代重工業• 船体設計:

    • 顧客要求に対して、できるだけカスタマイズする。• 使用される積荷・運航ルートなどの用途によって要求仕様が異なる。• できるだけ、10隻以上まとめて受注を獲得。

    • 機関室設計:• 機関室の艤装設計に対して、毎回カスタマイズ要求が出る。• ライブラリに蓄積されたモジュール(「パッケージユニット」)を選択する「編集設計」。その後、配置図(パイピング・レイアウト)を作り、生産設計に入る。• 主機→発電用エンジン→その他の舶用部品の選定・艤装など全ての仕様・設備が決定する。• 主機が同じであれば、パッケージユニットの中身も同じ。主機ごとにパッケージユニットは固定化されている。• 船種が異なると主機が異なり、主機が異なるとパッケージユニットが異なる。• 完全に新たな艤装設計を行なうには、最低10隻ないとペイしない。• 艤装量全体の50%がパッケージ化されている。• 設計工数、生産工数ともに半減。

    • パッケージユニットは25年以上前に取り組み始めた。• パッケージは現代重工業側が設計し、サプライヤーが生産。

    62

  • 5.3 三星重工業• 1980年代

    • 船種:ばら積み船・タンカーが中心、少量のコンテナ船• サイズ:5万総トン以下の小型・中型が中心。ばら積み船の一部に10万総トン前後の大型船

    • 1990年代• 船種:コンテナ船の割合が大幅に増加、ばら積み船の割合は低下。• サイズ:コンテナ船、タンカーが大型化

    • 2000年代• 船種:タンカー、コンテナ、ガスキャリア(LNG運搬船)と複雑性の高い船に特化。ばら積み船を作らず。00年代半ば以降、ドリルシップ、石油FPSO、LNG-FPSOにも進出。

    • サイズ:5万総トン以上の大型の割合が高い。

    製品ポートフォリオ(1980~1989年) 製品ポートフォリオ(1990~1999年) 製品ポートフォリオ(2000~2014年)

    63

  • 5.3 三星重工業

    •船体設計:• 今は、標準船をまったくやっていない。受注ごとにカスタマイズする。

    • LNG-FPSOなど、基本設計の図面を海外の会社から購入する場合もある。

    •機関室設計:• 自社で性能設計はしない。性能は顧客要求により決まる。

    • 船種もしくは船型が違えば、エンジンルームの設計は別物に。• コンテナ船で積載TEUが増加すると、必要なエンジンのシリンダー数が増えて、結果的にエンジンルームは大きくなる。

    • LNGなら、ガス燃料のエンジンを使うため、エンジンは全く別物に。

    64

  • [補論] 近年の造船産業の非雁行形態的進化

    65

  • 問題意識

    •後発国(企業)のキャッチアップ開始から長期間たっている産業は多い。すると、先発国(企業)が技術や資本などの面で後発に追い抜かれる可能性は十分ある。

    • このような状況で、先発国(企業)はどのような戦略をとることができるのか。

    • 先行研究であまり想定されていない状況

    66

  • 先行研究

    • 比較生産費説• 国ごとに資源量や科学技術知識が異なるため、ある財をつくるために必要な投入労働量の差が生まれ、国の間で生産性の差が生じる。その比較優位にもとづいて国際分業体制ができ、貿易が行なわれる(Ricardo,1817)

    • 雁行形態論(赤松,1956;小島,2003)• 各産業:輸入→国内生産→輸出• 国全体:消費財→生産財/農業→軽工業→重工業• 後発国:このプロセスをキャッチアップ。

    • プロダクトライフサイクル仮説(Vernon,1966)• 先進国で最初に新製品が設計され、その後で製品設計が標準化するにつれて、低賃金国に生産拠点が移転する。• 賃金格差が維持されることを前提とし、コストで有利な後発国に追い越されるため、先発国は人件費の不利を補完するために先端技術を追求する必要がある。

    • 後発国のキャッチアップ• 後発国は、すでに先発国で蓄積された新技術を利用できるので、早期に技術的に高度な水準に到達する。

    • Gerschenkron(1962)、末廣(2000)

    • 工業製品の輸入を減らすために、労働集約的で技術集約度の低い産業から順次輸入代替・国内生産を開始する• 末廣(2000)。

    67

  • 先行研究

    • 東アジア・東南アジアの国々が経済成長し、企業による直接投資が分業体制を形成するようになってきた。そこで、経営学的な観点から・・・

    • 国ごとに立地優位性があることが前提となり、それにもとづく企業の分業、活動の配置、そのマネジメントが、企業の競争力に影響する。

    • Penrose(1959)、 Porter(1986;1990)、 Kogut(1985)、天野(2005 )

    • (日本企業の日本と東アジアの活動配置・・・)日本では高付加価値な製品や活動に特化し、東アジアでは低付加価値の製品や活動に特化することが、企業の競争優位をもたらす

    • 天野(2005 )

    • 組織能力・製品アーキテクチャとの関係で議論されている。• 藤本(1997)、藤本・武石・青島(2001)、藤本・天野・新宅(2009 )

    • 一般的な傾向・・・知識・資本集約的なインテグラル型製品は日本、労働集約的なモジュラー型製品は中国、韓国は日本と中国の中間、知識・資本集約的なモジュラー型製品はアメリカ

    • 藤本・天野・新宅(2009 )

    68

  • 造船産業の概観• 日本・韓国・中国の3か国で世界の生産量の約90%を占める。

    • 日本は、後発国(韓国・中国)に抜かれる。

    69

    0

    5000

    10000

    15000

    20000

    25000

    30000

    35000

    40000

    45000

    千総トン 世界地域別竣工量(総トン数)の推移

    日本

    韓国

    中国

    西欧諸国

    その他

    (出所)『造船関係資料』(各年版)をもとに作成

    その後、日本は衰退せず、再び成長している

  • 造船産業の概観<各国の労務費・生産性>• 韓国企業の方が設計に投入できる経営資源が豊かであるため、技術集約的で工数をより多く必要とする製品分野において優位性を持つことができる。

    • 一部の日本企業は比較的シンプルな製品に集中することにより、結果的に優位に立てた。

    • 技術集約的で工数も多く要する、複雑で大規模な製品を重視した日本企業は、韓国企業にシェアを奪われ、競争力を失っていった。

    70

    24492597 2566 2628 2669

    2699 2770 27602907 2897

    2521

    907 969 1003 1013 10181076

    1935 1959

    22682545 2650

    762603 679

    832 9191000

    1536 14851723

    3910 3986

    365 358 347 376 388 392 404 428 461491 523

    0

    500

    1000

    1500

    2000

    2500

    3000

    3500

    4000

    4500

    2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

    現代重工 技術職 大宇造船海洋 技術職

    三星重工 技術職 日系18社平均 技術・事務職

    (出所)大野(2012)

  • 造船産業の概観<各国の労務費・生産性>

    日本・韓国・中国・ベトナムのコスト比較

    • 同等の船種、サイズの船1隻を生産するのに必要な製造工数について各社に聞き取り。• 生産性=製造工数の逆数。

    • いわゆる付加価値生産性ではない。設計工数を加味したものではない。

    71

    賃金(日本=100とした

    対比指数)

    生産性(日本=100とした

    対比指数)

    部品の国内調達比率(金額ベース)

    日本 100 100 95%以上

    韓国 100 85 40~70%

    中国(日系と中国の合弁企業) 20~30

    6530~40%

    中国(現地企業) 25

    ベトナム(現地企業)

    10 15 ?

    (出所)向井・新宅・朴・辺(2015) (2014年11月時点)

  • 造船産業の概観<各国の労務費・生産性>

    • 船舶1隻の建造コスト• 調達費約70%(鋼材36%、主機9%、購買品(舶用部品、装備品など)24%)、加工費(労務費)27%、設計費2%、その他の経費2%程度。

    • 労務費:• 加工費(労務費)は日本が韓国と同等かむしろ安い可能性がある。

    • 調達費:• 調達コストについては日本が最も有利な可能性がある。

    • 日本は95%以上を国内調達、韓国では70%以下。• ドリルシップの装備品などはヨーロッパからの調達比率が高い。• 中国も現地の舶用部品産業が育っておらず、日本や韓国からの輸入が多い。

    72(出所)向井・新宅・朴・辺(2015)

  • 造船産業の概観<日本・韓国・中国の造船産業>• 日本は低付加価値、複雑性(技術集約度)の低いばら積み船の割合が高い。

    • 後発国の韓国は、高付加価値、複雑性(技術集約度)が高い分野で先発国をしのぐ存在に。

    • 中国は00年代初頭はばら積み船が大半であったが、その後高付加価値船にシフトしつつある。

    73出所:『造船統計資料』(2014年3月)

    0%

    10%

    20%

    30%

    40%

    50%

    60%

    70%

    80%

    90%

    100%

    日本 韓国 中国

    2013年日本・韓国・中国の手持ち工事量

    その他

    客船

    自動車運搬船

    ガスキャリア

    コンテナ船

    タンカー

    ばら積み船

  • 日韓造船企業の戦略ポジションの変遷

    • 先発国の日本企業と、後発国の韓国企業に絞って、韓国の立ち上がり期の1980年代からの位置取りの変遷を見てみると・・・

    • 設計工数の比• ばら積み船1:タンカー1.5:コンテナ船1.7:ガスキャリア2:その他専用船(自動車運搬船、ドリルシップetc)4程度

    • 各船種の生産割合に各船種の設計工数の比を乗じて、• 設計工数指標=log(1×ばら積み船割合+1.5×タンカー割合+1.7×コンテナ船割合+

    2×ガス運搬船割合+4×その他割合)• 1≦設計工数指標≦4

    • 平均総トン数:各企業の1隻あたりの平均の容積• 製品の物理的な規模の変数に関して、1次元(長さ)、2次元(面積)、3次元(容積)、また重量も考えられる。本稿は、造船業界で最も広く使われている容積を示す総トン数を採用する。

    74

  • 1980-1989

    75(出所)KPDATAをもとに作成*新来島どっく:(旧)来島船渠

  • 1990-1999

    76

    *現代三湖:(旧)三湖重工業(出所)KPDATAをもとに作成

  • 2000-2009

    77(出所)KPDATAをもとに作成

  • 2010-2014

    78(出所)KPDATAをもとに作成

  • まとめ

    • 1980年代・・・後発国企業が新技術(プロダクト)・設備(プロセス)を導入、先発国と同位置で競争(cf末廣,2000)

    • その後は企業ごとに異なる位置取りのシフトのパターン。• 生産性向上(プロセス・イノベーション):(例)常石• 需要創造(プロダクト・イノベーション):(例)名村• まず製品技術で差別化、次に設備投資:(例)三菱• まず設備投資(プロセス)、次に製品技術開発(プロダクト)でキャッチアップ:(例)現代

    • その結果、既存の国際分業の分野ではあまり議論されていない現象が見られた。

    79

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    • 向井悠一朗・新宅純二郎・朴英元・辺成祐 (2015)「高付加価値船に集中する韓国造船業」『赤門マネジメント・レビュー』 14(3), 169-188.

    • Mukai, Y., Park Y.W., Hong, P.C. and Shin, G. C.(2016) “The impact of design architecture choices on competitiveness: comparison of Korean and Japanese shipbuilding firms”, International Journal of Technology Management,(forthcoming)

    • Myers, S., & Marquis, D. G. (1969). Successful Industrial Innovations: A Study of Factors Underlying Innovation in Selected Firms, Washington, DC: National Science Foundation.

    • 長塚誠治(1998)『21世紀の海運と造船―世界と日本の動向―』成山堂書店

    • 中川功一 (2008)「システミック・イノベーションに対するコンポーネントメーカーの事業戦略:TDKのHDD用磁気ヘッド事業の事例分析より」『一橋ビジネスレビュー』56(2), 200–211.

    • 名村造船所(2012)『名村造船所百年史』株式会社名村造船所

    • 「韓国サムスン、ベトナム事業多角化、家電やインフラに投資、1兆円規模」日経産業新聞2014年6月19日

    • 日本海事センター(2012)「各県別海事産業の経済学」日本海事センター企画研究部

    • 「サムスン重工/ベトナムに造船所建設。5億ドル投資。大島撤退後に後乗り」日本海事新聞2014年6月13日

    • 「国内ドック16年ぶり新設 今治造船、円安で競争力」日本経済新聞2015年1月29日

    • 日本造船工業会(各年版)『造船関係資料』83

  • • 日本造船学会(1973)『昭和造船史』原書房

    • 延岡健太郎(1996)「顧客範囲の経済:自動車部品サプライヤーの顧客ネットワーク戦略と企業成果」『国民経済雑誌』173(6)83-100.

    • 大木清弘(2014)『多国籍企業の量産知識:海外子会社の能力構築と本国拠点のダイナミクス』有斐閣

    • 大野真紀子(2012)「アナリストがみた造船産業のこれから(みずほコーポレート銀行産業調査部)」海運造船新技術戦略寄付講座終了記念シンポジウム発表資料

    • 「ものづくりの岐路(下)造船 受注激減に危機感(連載)」大阪読売新聞2013年5月19日

    • 大島造船所30年小史編集委員会(2004)『明るく強く面白く 大島造船所30年小史』株式会社大島造船所

    • O’Reilly, C.A. and Tushman, M.L.(2004) “The ambidextrous organization”, Harvard Business Review, 82,74-81.

    • 朴泰勲(2001)「工作機械メーカーの製品開発:製品アーキテクチャの階層管理による�