では、民間船舶等の協力を得て、霧の観測、発生情 …...八戸・釜石...

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平成27年4月23日 第二管区海上保安本部 三陸地方沿岸では、春から夏にかけて霧の多発 時期を迎えます。 霧の中での船舶の航行は、視界の不良により衝 突や乗揚げなどの海難の危険性が高く、昭和 40 年 代後半から昭和 50 年代に霧海難 ※1 が多発し、昭和 53 年には、貨物船と漁船が衝突し、14 名もの命が 失われる大惨事が起きています。 第二管区海上保安本部では、昭和 46 年から霧海 難防止の活動を行っており、今年で 44 年目になり ます。特に、平成 21 年からは、民間船舶等による 霧の観測、AIS ※2 やラジオ放送局による情報の 提供など、現在の官民一体となった体制に強化し て活動しています。 近年、レーダーやGPS等の航海計器の普及等 もあり、一時期に比べ霧海難は減少傾向にありま すが、今年も、霧海難“ゼロ”を目指し、官民一 体となって、次の取り組みを実施します。 1 実施期間 平成27年5月1日(金)から8月31日(月)まで 2 実施内容 (1)霧の観測(資料1、2) 太平洋側の八戸、釜石、宮城及び福島の各海上保安部及び行動中の巡視 船艇のほか、青森県むつ小川原港の協力機関、定時航行するフェリー、A IS搭載民間船舶の協力を得て、官民連携により、充実した霧の観測体制 を構築します。 問い合わせ先 第二管区海上保安本部 交通部安全課長 東 武 022-363-0111(内線 2620第二管区海上保安本部では、民間船舶等の協力を得て、霧の観測、発生情報 の提供を行うとともに、視界不良時における船舶運航の基本ルールについて 周知・指導の徹底を図り、官民一体となり「霧海難ゼロ」を目指します。

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平 成 2 7 年 4 月 2 3 日

第 二 管 区 海 上 保 安 本 部

三陸地方沿岸では、春から夏にかけて霧の多発

時期を迎えます。

霧の中での船舶の航行は、視界の不良により衝

突や乗揚げなどの海難の危険性が高く、昭和 40 年

代後半から昭和 50 年代に霧海難※1が多発し、昭和

53 年には、貨物船と漁船が衝突し、14 名もの命が

失われる大惨事が起きています。

第二管区海上保安本部では、昭和 46 年から霧海

難防止の活動を行っており、今年で 44 年目になり

ます。特に、平成 21 年からは、民間船舶等による

霧の観測、AIS※2やラジオ放送局による情報の

提供など、現在の官民一体となった体制に強化し

て活動しています。

近年、レーダーやGPS等の航海計器の普及等

もあり、一時期に比べ霧海難は減少傾向にありま

すが、今年も、霧海難“ゼロ”を目指し、官民一

体となって、次の取り組みを実施します。

1 実施期間

平成27年5月1日(金)から8月31日(月)まで

2 実施内容

(1)霧の観測(資料1、2)

太平洋側の八戸、釜石、宮城及び福島の各海上保安部及び行動中の巡視

船艇のほか、青森県むつ小川原港の協力機関、定時航行するフェリー、A

IS搭載民間船舶の協力を得て、官民連携により、充実した霧の観測体制

を構築します。

問い合わせ先

第二管区海上保安本部

交通部安全課長 東 武

022-363-0111(内線 2620)

第二管区海上保安本部では、民間船舶等の協力を得て、霧の観測、発生情報

の提供を行うとともに、視界不良時における船舶運航の基本ルールについて

周知・指導の徹底を図り、官民一体となり「霧海難ゼロ」を目指します。

(2)霧の情報提供(資料1、2)

観測した霧情報を国際VHF無線電話により、航行船舶に対して通報す

るとともに、沿岸域情報提供システム(MICS)※3及びAISメッセージ情

報により、広く霧情報の提供を実施するほか、NHKのラジオ放送局や地

方のFM放送局、そのほか太平洋沿岸にある漁業無線局※4などの協力を得

て、官民連携で充実した霧情報を提供します。

(3)啓発活動(資料3)

「霧海難防止五戒」のリーフレットを活用し、海上保安官による船舶、

船舶代理店、漁協等への訪問指導や、漁業者・小型船舶操縦者等を対象と

した海難防止講習会等の実施、部署が実施・参加する各種イベント等での

周知・啓発活動を行い、船舶運航者の安全意識を高めます。

※1 霧海難とは、霧発生時(視程 1,000m 未満)に発生した衝突、乗揚げ及び船位喪失※5の

海難をいいます。

※2 AIS(船舶自動識別装置)とは、船名、現在位置などの情報を自動的に船舶間やAI

S陸上局と送受信する航海用機器であり、AIS搭載船舶はAIS陸上局からのメッセー

ジ情報を自動的に受信することができます。

※3 沿岸域情報提供システム(MICS)とは、一般船舶やマリンレジャー活動等の海域利用者に

対して、インターネットや携帯サイトを通じ、リアルタイムに気象・海象情報、緊急情報

等の海の安全に関する情報を提供しているシステムです。

http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/mics/ (インターネット)

http://www6.kaiho.mlit.go.jp/sp/index.html (スマートフォン・試験運用中)

http://www6.kaiho.mlit.go.jp/m/index.html (携帯電話)

インターネット スマートフォン 携帯電話

※4 漁業無線局とは、漁船が漁業のために使用する漁業用の沿岸無線局をいいます。

※5 船位喪失とは、視界不良などの原因で自船位置がわからなくなる海難をいいます。

参考資料

資料1 霧情報の提供

資料2 霧海難防止対策実施海域及び観測機関位置図

資料3 霧海難防止対策 関係協力先

資料4 霧海難防止五戒(日本語・英語版)

資料5 昨年度の活動状況

資料6 各月の霧観測日数と霧通報延べ件数(過去3年分)

資料7 過去14年間の霧海難防止対策期間における霧海難船種別発生状況(隻数)

資料8 霧海難の事例

八戸・釜石宮城・福島の各海上保安部

霧とは、微小な浮遊水滴により視程が1000メートル未満に制限された状態をいう

仙台管区気象台

主要変針点付近を航行中の民間船舶

霧の観測:1日5回(5時、6時半、9時、12時、15時)むつ小川原国家

石油備蓄基地事務所

行動中の巡視船艇

資料1

各地域の漁業無線局

(霧観測成果の通報)

各ラジオ放送・NHKローカル局・民間FMラジオ局

NHKラジオ第一放送

霧情報の観測・報告

第二管区海上保安本部

霧情報の提供

:霧情報の報告:霧情報の提供

国際VHF無線通報AISメッセージ情報

沿岸情報提供システム(MICS)

:海上保安部

福島海上保安部

宮城海上保安部

釜石海上保安部

八戸海上保安部

むつ小川原石油基地

駒ヶ峯AIS送受信所

牛転峠AIS送受信所

鮫角AIS送受信所

:むつ小川原石油基地

巡視船

巡視船

トドヶ埼

金華山

巡視船

塩屋埼 塩屋埼AIS送受信所

霧海難防止対策実施海域及び観測機関位置図

尻屋埼

41°N

40°N

39°N

38°N

37°N

140°E 141°E 142°E

福島県

宮城県

山形県

秋田県

岩手県

青森県

尻屋埼灯台から90度に引いた線

陸岸から20海里の線

陸岸から20海里の線

北緯36度50分の緯度線

鮫角

尻屋埼AIS送受信所

資料2

:航行中のAIS搭載船舶による霧観測海域

:AIS送受信所

巡視船

霧海難防止対策 関係協力先

1 霧観測の協力依頼先

・独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構

むつ小川原国家石油備蓄基地事務所

・太平洋フェリー(株)

・商船三井フェリー(株)

・川崎近海汽船(株)

2 霧情報放送依頼先

・NHK仙台放送局

・NHK青森放送局

・NHK盛岡放送局

・NHK福島放送局

・エフエムベイエリア(株)

・(株)ビーエフエム

・(株)いわき市民コミュニティ放送

・(株)エフエム岩手

4 海難防止指導依頼先

・青森県

・岩手県

・宮城県

・福島県

・一般社団法人 日本船主協会

・日本水先人会連合会

・一般社団法人 日本旅客船協会

・日本内航海運組合総連合会

資料3

日本語、英語版のほか、

中韓露、計 5ヶ国語のリーフレット

資料4

昨年度の活動状況

資料5

小型船舶所有者に対する霧海難防止講習

漁船に対する訪船指導

民間FM局等に対する霧情報の提供(FAX) 海上工事作業会社に対する啓発活動

内航貨物船に対する訪船指導

海上工事作業員に対する霧海難防止講習

資料6各月の霧観測日数と霧通報延べ件数(過去3年分)

15 15

23

18

16

26

23

1011

25

17

20

0

5

10

15

20

25

30

5月 6月 7月 8月

各月の霧観測日数(過去3年分)

H24 霧観測日数(日) H25 霧観測日数(日) H26 霧観測日数(日)

33

57

75 72

50

97

79

28

43

97

51

25

0

50

100

150

5月 6月 7月 8月

【単位:件】 各月の霧通報延べ件数(過去3年分)

平成24年度 平成25年度 平成26年度

資料7

海難種

用途

衝突

乗揚

船位喪失

衝突

乗揚

船位喪失

衝突

乗揚

船位喪失

衝突

乗揚

船位喪失

衝突

乗揚

船位喪失

衝突

乗揚

船位喪失

衝突

乗揚

船位喪失

衝突

乗揚

船位喪失

衝突

乗揚

船位喪失

衝突

乗揚

船位喪失

衝突

乗揚

船位喪失

衝突

乗揚

船位喪失

衝突

乗揚

船位喪失

衝突

乗揚

船位喪失

衝突

乗揚

船位喪失

貨物船 3 1 8 3 2 1 4 3 1 1 1 9 2 0

タンカー 1 2 3 1 1 1 0 0

旅客船 1 1 1 2 0 0 0

プレジャーボート 1 1 1 0 0 1

漁船 2 2 1 3 1 6 3 4 1 2 1 2 1 3 2 7 0 2

遊漁船 1 1 0 0 0

その他 2 1 1 1 0 1 0

合計 6 0 0 7 2 0 14 0 0 4 1 0 11 0 0 4 0 0 6 1 0 2 1 0 2 1 0 2 0 1 6 0 1 6 0 0 3 1 1 0 2 0 17 3 3

(注)平成21年以前は船位喪失を霧海難として計上していなかった。 過去14年間で霧海難による死者は平成15年の貨物船衝突海難による死者1名のみである。

過去14年間の霧海難防止対策期間中における霧海難船種別発生状況(隻数)

平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度平成16年度平成13年度 平成14年度 平成15年度 合計平成21年度平成20年度平成19年度平成18年度平成17年度

6 7

14

4

11

46

2 2 2

6 63

2

1

1

1 11

21

1

1

0

2

4

6

8

10

12

14

0

3

6

9

12

15

H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26

【単位:隻】 【霧海難隻数の推移】

船位喪失

乗揚

衝突

死者数

【単位:人】

平成15年以降霧海難は減少中!

【海難種別】乗揚げ

【発生日】 平成 26 年 7 月 14 日

【発生場所】岩手県大船渡市吉浜湾

【船舶要目】砂利運搬船、487 トン、5 名乗組み

【概要】函館港から吉浜湾内根白漁港向け航行中の同船は、

濃霧による視界不良のため船位を喪失、ホタテ養殖

施設に乗揚げ、絡索し航行不能となった。

【海難種別】衝突

【発生日】 昭和 53 年 6 月 21 日

【発生場所】岩手県大船渡市首埼沖合 3.6 海里

【船舶要目】①漁船(99 トン・まぐろ延縄 16 名乗組(内 14 名死亡・行方不明)

②貨物船(4995 トン・台湾籍)

【概要】焼津から八戸向け航行中の漁船の右舷中央部に、小樽から台湾向け航行

中の貨物船の船首がほぼ直角に衝突、漁船は転覆し乗組員2名は貨物船に救助さ

れたが、7名が後に遺体で収容され、7名が行方不明となった。

事故当時、海域は濃霧に包まれていた。

【海難種別】乗揚げ

【発生日】 平成 26 年 7 月 3 日

【発生場所】青森県三沢市高瀬川河口沖合

【船舶要目】潜水作業船、9 トン、1 名乗組み

【概要】むつ小川原新納屋漁港から八戸港向け出港した同船は、

当時、視界約 50 メートルの濃霧の中を航行中、視界不良

のため定置網の発見が遅れ、同定置網に乗り揚げた。

【海難種別】衝突

【発生日】 平成 15 年 8 月 5 日

【発生場所】宮城県金華山南東方沖合約 3.5 海里

【船舶要目】①貨物船(97 トン、68.77m、3名乗組(船長行方不明))

②油送船(1,499 トン、84.97m 7名乗組)

【概要】仙台塩釜港から気仙沼港向け出港した油送船と、九州から北海道向け、

ばら積み砕石海上輸送中の貨物船が金華山沖合海域で衝突した。

当時、視界は200メートル以下の状態であった。貨物船は右舷後部外板に

破口を生じて沈没し、貨物船船長は行方不明となった。

資料8