道路交通騒音対策の参考資料(平成 6 月) · 2...

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道路交通騒音対策の参考資料(平成 24 6 月) 国土技術政策総合研究所 環境研究部 道路環境研究室

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Page 1: 道路交通騒音対策の参考資料(平成 6 月) · 2 環境基準の達成状況(平成22年度)1) 1.自動車騒音常時監視の実施状況について 平成22

道路交通騒音対策の参考資料(平成 24 年 6 月)

国土技術政策総合研究所 環境研究部 道路環境研究室

Page 2: 道路交通騒音対策の参考資料(平成 6 月) · 2 環境基準の達成状況(平成22年度)1) 1.自動車騒音常時監視の実施状況について 平成22

はじめに

道路交通騒音対策は騒音に関する理解を深めた上で進めることが大切です。

そこで、騒音対策を進めるにあたって、把握しておくことが望ましい知見等を

整理した参考資料を作成しました。

本資料が騒音対策の一助となることを期待します。

:特に把握しておくことが望ましい基本的な事項

(解説):理解を深めるための解説

:他の文献等からの引用部分

下線 :把握しておくことが望ましい部分

網掛 :特に把握しておくことが望ましい部分

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目 次 1.道路交通騒音の現状 1

2.法律と基準 4

3.道路交通騒音の現況把握 14

4.道路交通騒音対策 19

4.1 発生源側での対策-自動車騒音単体規制 23

4.2 発生源側での対策-交通流対策 24

4.3 発生源側での対策-排水性舗装 31

4.4 伝搬経路での対策-遮音壁 33

4.5 伝搬経路での対策-その他 35

4.6 受音側での対策 39

4.7 道路構造による騒音対策の事例 41

[付属資料]

付属資料 A1 騒音の基礎知識

付属資料 A2 道路交通騒音の予測計算

付属資料 A3 遮音壁に関する技術の概要

付属資料 A4 自動車騒音の単体規制

付属資料 A5 建物防音

付属資料 A6 FAQ

付属資料 A7 用語

付属資料 A8 道路交通騒音関係の情報源

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(解説) 環境基準は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件につい

て、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望まし

い基準として政府が定めたものである。道路に面する地域における騒音の環境基準の達成

状況は、以下で公開されている。

1) 環境省:平成 22 年度自動車交通騒音実態調査報告, http://www.env.go.jp/air/car/noise/noise_h22/index.html

1.道路交通騒音の現状

道路に面する地域において昼間または夜間に環境基準を超過した住居等は、平成 22 年度

において 499 千戸(9%)と報告されている 1)(図-1.1)。 なお、騒音の環境基準を超過した沿道に防音性能が優れた住居が建設された場合でも、こ

れらの住居は非達成戸数に含まれる。

0% 20% 40% 60% 80% 100%

平成22年度

[5,759千戸]

平成17年度

[2,914千戸]

平成12年度

[523千戸]

達成戸数 非達成戸数

121千戸(23.1%)

456千戸(15.6%)

499千戸(8.7%)5259.8千戸(91.3%)

2458千戸(84.4%)

402千戸(76.9%)

図-1.1 道路に面する地域における騒音の環境基準達成状況

※評価延長:平成 22 年度評価は、高速自動車国道(1,305km)、都市高速道路(114km)、一般国道(12,546km)、都道府県道(20,307km)、4 車線以上の市区町村道(1,597km)、その他の道路(35km)に面する地域

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環境基準の達成状況(平成 22 年度)1)

1.自動車騒音常時監視の実施状況について

平成 22 年度は、全国 179 地方公共団体において、環境基準の達成状況の評価が実施さ

れた。評価の対象は、延長 35,903km の道路に面する地域の、5,759 千戸の住居等である。

平成 21 年度に比べて評価の対象は、道路延長で 5,002km、住居等で 687 千戸増加してい

る。なお評価の対象となる住居等は、道路端から 50 m の範囲にあるものとしている。

2.環境基準達成状況

(1)全体の状況

全体で集計したところ、評価の対象とされた 5,759.5 千戸のうち、昼間(6 時~22 時)

又は夜間(22 時~6 時)で環境基準を超過していたのは 498.7 千戸(8.7%)であり、昼

夜間とも環境基準を超過していたのは 247.9 千戸(4.3%)であった(図-1.2)。

幹線交通を担う道路に近接する空間※1の基準値が適用される地域における 2,397.8 千

戸について、昼間又は夜間で環境基準を超過していたのは 335.1 千戸(14.0%)、昼夜間

とも環境基準を超過していたのは 161.9 千戸(6.8%)となっている。

一方、非近接空間※1における 3,360.7 千戸について、昼間又は夜間で環境基準を超過

していたのは 163.5 千戸(5.0%)、昼夜間とも環境基準を超過していたのは 86.0 千戸

(2.6%)となっている。

(2)道路種類別の状況

全体を道路種類別に分けて集計したところ、昼間又は夜間で環境基準を超過していた

割合がもっとも高かったのは都市高速道路であり、46.6 千戸のうち 7.8 千戸(16.7%)で

あった(図-1.3)。

※1 「幹線交通を担う道路に近接する空間」 次の車線数の区分に応じ道路端からの距離により範囲が

特定される。 ・2 車線以下の車線を有する幹線交通を担う道路 15 メートル ・2 車線を超える車線を有する幹線交通を担う道路 20 メートル 「非近接空間」 幹線交通を担う道路に面する地域のうち、幹線交通を担う道路に近接する空間を除

く地域。「幹線交通を担う道路に近接する空間」の背後地にあたる。

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図-1.2 環境基準の達成状況の評価結果(全体)

図-1.3 環境基準の達成状況の評価結果(道路種類別・全体)

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2.法律と基準

道路交通騒音に係る法体系の概要を図-2.1 に示す。環境基本法において、環境の保全に

ついての基本理念、および施策の基本となる事項が定められ、環境基本法に基づく告示に

おいて環境基準が定められている。また、騒音規制法において、自動車単体から発生する

騒音の大きさの限度、および市町村長が都道府県公安委員会に道路交通規制等の措置を執

るべきことを要請する騒音の限度(いわゆる「要請限度」)が定められている。

図-2.1 道路交通騒音に係る法体系の概要

道路に近接する地域(空間または区域)における騒音の基準値等(環境基準および要請限

度)を表-2.1に示す。

表-2.1 幹線交通を担う道路に近接する地域における騒音の基準値等

基準等 根拠法

測定位置 基準値等 昼間

6:00-22:00

夜間

22:00-6:00

幹線交通を担う道路

に近接する空間に係

る環境基準

環境基本法

に基づく告

住居等の建

物の騒音の

影響を受け

やすい面

屋外 70 dB 以下 65 dB 以下

屋内 45 dB 以下 40 dB 以下

幹線交通を担う道路

に近接する区域に係

る要請限度

騒音規制法

に基づく省

道路の敷地の境界

線 75 dB 70 dB

幹線交通を担う道路:高速自動車国道、一般国道、都道府県道、および四車線以上の市町村道等

環 境 基 本 法

騒 音 規 制 法 [要請限度]

道路交通法の規定よる措置を要請 市町村長→公安委員会

道路構造改善等の意見具申 市町村長→道路管理者

[単体規制]

道路 運送車両法 道路運送車両の保安基準(国土交通省令)

[単体規制]

自動車騒音の大きさの許容限度(環境省告示)

騒音に係る環境基準(環境省告示)

自動 車騒音の限度( 総理府令)

道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(国土交通省)

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(解説:環境基準と要請限度) 環境基準値および要請限度値を定めた法令の抜粋を以下に記載する。この資料の読者が

把握することが望ましい箇所には下線および網掛を付している。(以下、同様) 環境基本法 (抜粋して部分的に加筆) (平成 5 年 11 月 19 日 法律第 91 号 最終改正:平成 20 年 6月 18 日法律第 83 号) 第三節 環境基準 第十六条 政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件

について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されること

が望ましい基準を定めるものとする。 2 前項の基準が、二以上の類型を設け、かつ、それぞれの類型を当てはめる地域又は

水域を指定すべきものとして定められる場合には、その地域又は水域の指定に関する事

務は、二以上の都道府県の区域にわたる地域又は水域であって政令で定めるものにあっ

ては政府が、それ以外の地域又は水域にあってはその地域又は水域が属する都道府県の

知事が、それぞれ行うものとする。 3 第一項の基準については、常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされ

なければならない。 4 政府は、この章に定める施策であって公害の防止に関係するもの(以下「公害の防

止に関する施策」という。)を総合的かつ有効適切に講ずることにより、第一項の基準が

確保されるように努めなければならない。

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騒音に係る環境基準について(抜粋し、部分的に//・・//で加筆) (平成10年9月30日環告64 改正:平成17年5月26日環告45) 環境基本法(平成5年法律第91号)第16条第1項の規定に基づく騒音に係る環境

基準について次のとおり告示する。 環境基本法第16条第1項の規定に基づく、騒音に係る環境上の条件について生活環

境を保全し、人の健康の保護に資する上で維持されることが望ましい基準(以下「環境

基準」という。)は、別に定めるところによるほか、次のとおりとする。 第1 環境基準 1 環境基準は、地域の類型及び時間の区分ごとに次表の基準値の欄に掲げるとおりと

し、各類型を当てはめる地域は、都道府県知事が指定する。

地域の類型 基 準 値

昼 間 夜 間

AA 50デシベル以下 40デシベル以下

A及びB 55デシベル以下 45デシベル以下

C 60デシベル以下 50デシベル以下

(注) 1 時間の区分は、昼間を午前6時から午後10時までの間とし、夜間を午後10時か

ら翌日の午前6時までの間とする。 2 AAを当てはめる地域は、療養施設、社会福祉施設等が集合して設置される地域な

ど特に静穏を要する地域とする。 3 Aを当てはめる地域は、専ら住居の用に供される地域とする。 4 Bを当てはめる地域は、主として住居の用に供される地域とする。 5 Cを当てはめる地域は、相当数の住居と併せて商業、工業等の用に供される地域と

する。 ただし、次表に掲げる地域に該当する地域(以下「道路に面する地域」という。)につ

いては、上表によらず次表の基準値の欄に掲げるとおりとする。

地 域 の 区 分 基 準 値

昼 間 夜 間

A地域のうち2車線以上の車線を有する道路に面

する地域 60デシベル以下 55デシベル以下

B地域のうち2車線以上の車線を有する道路に面

する地域及びC地域のうち車線を有する道路に面

する地域

65デシベル以下 60デシベル以下

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備考 車線とは、1縦列の自動車が安全かつ円滑に走行するために必要な一定の幅員を

有する帯状の車道部分をいう。 この場合において、幹線交通を担う道路に近接する空

間については、上表にかかわらず、特例として次表の基準値の欄に掲げるとおりとする。

基 準 値

昼 間 夜 間

70デシベル以下 65デシベル以下

備考

個別の住居等において騒音の影響を受けやすい面の窓を主として閉めた生活が営まれ

ていると認められるときは、屋内へ透過する騒音に係る基準(昼間にあっては45デシ

ベル以下、夜間にあっては40デシベル以下)によることができる。

2 1の環境基準の基準値は、次の方法により評価した場合における値とする。 (1)評価は、個別の住居等が影響を受ける騒音レベルによることを基本とし、住居等

の用に供される建物の騒音の影響を受けやすい面における騒音レベルによって評価する

ものとする。 この場合において屋内へ透過する騒音に係る基準については、建物の騒音の影響を受

けやすい面における騒音レベルから当該建物の防音性能値を差し引いて評価するものと

する。 (2)騒音の評価手法は、等価騒音レベルによるものとし、時間の区分ごとの全時間を

通じた等価騒音レベルによって評価することを原則とする。 (3)評価の時期は、騒音が1年間を通じて平均的な状況を呈する日を選定するものと

する。 (4)騒音の測定は、計量法(平成4年法律第51号)第71条の条件に合格した騒音

計を用いて行うものとする。この場合において、周波数補正回路はA特性を用いること

とする。 (5)騒音の測定に関する方法は、原則として日本工業規格Z8731による。ただし、

時間の区分ごとに全時間を通じて連続して測定した場合と比べて統計的に十分な精度を

確保し得る範囲内で、騒音レベルの変動等の条件に応じて、実測時間を短縮することが

できる。当該建物による反射の影響が無視できない場合にはこれを避けうる位置で測定

し、これが困難な場合には実測値を補正するなど適切な措置を行うこととする。また、

必要な実測時間が確保できない場合等においては、測定に代えて道路交通量等の条件か

ら騒音レベルを推計する方法によることができる。 なお、著しい騒音を発生する工場及び事業場、建設作業の場所、飛行場並びに鉄道の

敷地内並びにこれらに準ずる場所は、測定場所から除外する。 3 環境基準の達成状況の地域としての評価は、次の方法により行うものとする。 (1)道路に面する地域以外の地域については、原則として一定の地域ごとに当該地域

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の騒音を代表すると思われる地点を選定して評価するものとする。 (2)道路に面する地域については、原則として一定の地域ごとに当該地域内の全ての

住居等のうち1の環境基準の基準値を超過する戸数及び超過する割合を把握することに

より評価するものとする。 第2 達成期間等 1 環境基準は、次に定める達成期間でその達成又は維持を図るものとする。 (1)道路に面する地域以外の地域については、環境基準の施行後直ちに達成され、又

は維持されるよう努めるものとする。 (2)既設の道路に面する地域については、関係行政機関及び関係地方公共団体の協力

の下に自動車単体対策、道路構造対策、交通流対策、沿道対策等を総合的に実施するこ

とにより、環境基準の施行後10年以内を目途として達成され、又は維持されるよう努

めるものとする。 //解説:達成目標は H20 年度末(H21.3.31)であった。// ただし、幹線交通を担う道路に面する地域であって、道路交通量が多くその達成が著

しく困難な地域については、対策技術の大幅な進歩、都市構造の変革等とあいまって、

10年を超える期間で可及的速やかに達成されるよう努めるものとする。 (3)道路に面する地域以外の地域が、環境基準が施行された日以降計画された道路の

設置によって新たに道路に面することとなった場合にあっては(1)及び(2)にかか

わらず当該道路の供用後直ちに達成され又は維持されるよう努めるものとし、環境基準

が施行された日より前に計画された道路の設置によって新たに道路に面することとなっ

た場合にあっては(2)を準用するものとする。 2 道路に面する地域のうち幹線交通を担う道路に近接する空間の背後地に存する建物

の中高層部に位置する住居等において、当該道路の著しい騒音がその騒音の影響を受け

やすい面に直接到達する場合は、その面の窓を主として閉めた生活が営まれていると認

められ、かつ、屋内へ透過する騒音に係る基準が満たされたときは、環境基準が達成さ

れたものとみなすものとする。 3 夜間の騒音レベルが73デシベルを超える住居等が存する地域における騒音対策を

優先的に実施するものとする。 第3 環境基準の適用除外について この環境基準は、航空機騒音、鉄道騒音及び建設作業騒音には適用しないものとす

る。 附 則 この告示は、平成11年4月1日から施行する。

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騒音に係る環境基準の評価マニュアル 2.1)は公開されている。

(注意) 道路に面する地域の範囲

当該マニュアルにおける評価範囲は道路端から 50 m とされている。一方、道路に面する

地域とは、道路交通騒音が支配的な音源である地域であり、この評価範囲が「道路に面す

る地域の環境基準を適用する範囲」を示すものではないとされている。

騒音に係る環境基準の評価マニュアル Ⅱ 地域評価編(道路に面する地域)2.1) (環境庁 平成 12 年 4月) 道路構造条件や沿道条件が異なることから、道路に面する地域(道路交通騒音が支配的

な音源である地域)を一律に設定することはできない。その意味で、この評価範囲は「道

路に面する地域の環境基準を適用する範囲」を示すものではない。

評価区間における評価範囲等の概念図

2.1 ) 環境省: 騒音に係る環境基準の評価マニュアル, http://www.env.go.jp/air/noise/manual/index.html

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騒音規制法 (昭和四十三年六月十日法律第九十八号 最終改正:平成一七年四月二七日法律第三三号)

第四章 自動車騒音に係る許容限度等

(許容限度)

第十六条 環境大臣は、自動車が一定の条件で運行する場合に発生する自動車騒音の大き

さの許容限度を定めなければならない。

2 自動車騒音の防止を図るため、国土交通大臣は、道路運送車両法に基づく命令で、自動

車騒音に係る規制に関し必要な事項を定める場合には、前項の許容限度が確保されるよ

うに考慮しなければならない。

(測定に基づく要請及び意見)

第十七条 市町村長は、第二十一条の二の測定を行った場合において、指定地域内におけ

る自動車騒音が環境省令で定める限度を超えていることにより道路の周辺の生活環境が

著しく損なわれると認めるときは、都道府県公安委員会に対し、道路交通法 (昭和三十

五年法律第百五号)の規定による措置を執るべきことを要請するものとする。

2 環境大臣は、前項の環境省令を定めようとするときは、あらかじめ、国家公安委員会に

協議しなければならない。

3 市町村長は、第一項の規定により要請する場合を除くほか、第二十一条の二の測定を行

った場合において必要があると認めるときは、当該道路の部分の構造の改善その他自動

車騒音の大きさの減少に資する事項に関し、道路管理者又は関係行政機関の長に意見を

述べることができる。

(常時監視)

第十八条 都道府県知事は、自動車騒音の状況を常時監視しなければならない。

2 都道府県知事は、前項の常時監視の結果を環境大臣に報告しなければならない。

(公表)

第十九条 都道府県知事は、当該都道府県の区域に係る自動車騒音の状況を公表するもの

とする。

(環境大臣の指示)

第十九条の二 環境大臣は、自動車騒音により人の健康に係る被害が生ずることを防止す

るため緊急の必要があると認めるときは、次の各号に掲げる者に対し、当該各号に定める

事務に関し必要な指示をすることができる。

一 市町村長 第十七条第一項の規定による要請に関する事務及び同条第三項の規定に

よる意見を述べることに関する事務

二 都道府県知事又は第二十五条の政令で定める市町村(特別区を含む。)の長 第二

十二条の規定による協力を求め、又は意見を述べることに関する事務

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騒音規制法第十七条第一項の規定に基づく指定地域内における自動車騒音の限度を定める省令(平成十二年三月二日総理府令第十五号 最終改正年月日:平成一二年一二月一五日総理府令第一五〇号)

騒音規制法(昭和四十三年法律第九十八号)第十七条第一項の規定に基づき、騒音規制

法第十七条第一項の規定に基づく指定地域内における自動車騒音の限度を定める命令(昭

和四十六年総理府厚生省令第三号)の全部を次のように改正する。

(定義)

第一条

この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところ

による。

一 車線 一縦列の自動車(二輪のものを除く。)が安全かつ円滑に走行するために必要

な幅員を有する帯状の車道の部分をいう。

二 幹線交通を担う道路 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第三条に規定する高速

自動車国道、一般国道、都道府県道及び市町村道(市町村道にあっては四車線以上の車線

を有する区間に限る。)並びに道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第二条第八

項に規定する一般自動車道であって都市計画法施行規則(昭和四十四年建設省令第四十九

号)第七条第一号に規定する自動車専用道路をいう。

三 昼間 午前六時から午後十時までの間をいう。

四 夜間 午後十時から翌日の午前六時までの間をいう。

五 デシベル 計量法(平成四年法律第五十一号)別表第二に定める音圧レベルの計量単

位をいう。

(自動車騒音の限度)

第二条

騒音規制法第十七条第一項の環境省令で定める限度(以下「限度」という。)は、別表

のとおりとする。

(幹線交通を担う道路に近接する区域に係る限度の特例)

第三条 別表に掲げる区域のうち幹線交通を担う道路に近接する区域(二車線以下の車線を有す

る道路の場合は道路の敷地の境界線から十五メートル、二車線を超える車線を有する道路

の場合は道路の敷地の境界線から二十メートルまでの範囲をいう。)に係る限度は、前条

の規定にかかわらず、昼間においては七十五デシベル、夜間においては七十デシベルとす

る。 (都道府県知事及び都道府県公安委員会が協議して定める限度)

第四条

前二条の規定にかかわらず、別表に掲げる区域のうち学校、病院等特に静穏を必要とす

る施設が集合して設置されている区域又は幹線交通を担う道路の区間の全部又は一部に

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面する区域に係る限度は、都道府県知事(騒音規制法施行令(昭和四十三年政令第三百二

十四号)第四条に規定する市にあっては、市長。以下同じ。)及び都道府県公安委員会が

協議して定める自動車騒音の大きさとすることができる。

(自動車騒音の測定方法等)

第五条

前三条に規定する限度は、次に掲げる方法により測定した場合における値によるものと

する。

一 騒音の測定は、計量法第七十一条の条件に合格した騒音計を用いて行うものとする。

二 騒音の測定は、道路に接して住居、病院、学校等の用に供される建築物(以下「住居

等」という。)が存している場合には道路の敷地の境界線において行い、道路に沿って住

居等以外の用途の土地利用が行われているため道路から距離をおいて住居等が存してい

る場合には住居等に到達する騒音の大きさを測定できる地点において行うものとする。こ

れらの場合において、測定を行う高さは、当該地点の鉛直方向において生活環境の保全上

騒音が最も問題となる位置とする。

三 騒音の測定は、当該道路のうち原則として交差点を除く部分に係る自動車騒音を対象

とし、連続する七日間のうち当該自動車騒音の状況を代表すると認められる三日間につい

て行うものとする。

四 騒音の評価手法は、等価騒音レベルによるものとする。

五 騒音の測定方法は、原則として、日本工業規格Z八七三一に定める騒音レベルの測定

方法によるものとし、建築物による無視できない反射の影響を避けうる位置で測定するも

のとする。ただし、建築物と道路との間(道路の敷地の境界線を含む。)の地点において

測定を行い、当該建築物による無視できない反射の影響を避けることができない場合にお

いて、当該影響を勘案し実測値を補正するなど適切な措置を講ずるときは、この限りでな

い。

六 自動車騒音以外の騒音又は当該道路以外の道路に係る自動車騒音による影響がある

と認められる場合は、これらの影響を勘案し実測値を補正するものとする。

七 騒音の大きさは、測定した値を時間の区分ごとに三日間の原則として全時間を通じて

エネルギー平均した値とする。

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別表

区域の区分

時間の区分

昼間 夜間

一 a区域及びb区域のうち一車線を有 る道路に面する区域 六十五デ

シベル

五十五デシ

ベル

二 a区域のうち二車線以上の車線を有する道路に面する区域 七十デシ

ベル

六十五デシ

三 b区域のうち二車線以上の車線を有する道路に面す 区域及びc区

域のうち車線を有する道路に面する区域

七十五デ

シベル

七十デ ベル

備考 a区域、b区域及びc区域とは、それぞれ次の各号に掲げる区域として都道府県知事が定めた区域をいう。 一 a区域 専ら住居の用に供される区域 二 b区域 主として住居の用に供される区域 三 c区域 相当数の住居と併せて商業、工業等の用に供される区域

附則 この府令は、平成十二年四月一日から施行する。 附則 (平成一二年一二月一五日総理府令第一五〇号) この府令は、内閣法の一部を改正する法律(平成十一年法律第八十八号)の施行の日(平成十三年一月六日)から施行する。

都道府県及び市(特別区)が法定受託事務として行う自動車騒音の常時監視については、

平成 23 年 9 月にマニュアル 2.2)が作成されている。

2.2) 環境省: 自動車騒音常時監視マニュアル, http://www.env.go.jp/air/car/noise/note_kanshimanual.html

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2.1) 再掲:環境省: 騒音に係る環境基準の評価マニュアル,

http://www.env.go.jp/air/noise/manual/index.html

3.1) 国立環境研究所: 全国自動車交通騒音マップ, http://www.env.go.jp/air/car/noise.html

3.2) 環境省水・大気環境局長: 騒音規制法第 18 条の規定に基づく自動車騒音の状況の常時監視に係る事

務の処理基準, 平成 23 年 9月 14 日

3.3) 環境庁大気保全局長: 騒音規制法第 17 条第 1 項の規定に基づく指定地域内における自動車騒音の限

度を定める命令の改正について, 平成 12 年 7月 17 日

3.道路交通騒音の現況把握

事業の計画・評価、環境問題への対応等では、自動車騒音常時監視の報告 3.1)(環境省)

または個別の騒音測定により道路交通騒音の現況把握が行われている。道路交通騒音は、

環境基準値または要請限度値で評価されている。主な評価方法は以下である。 (a) 住居等の用に供される建物の位置で測定した騒音レベルを環境基準値で評価。騒音は建

物から 1~2 m 離れて騒音の影響を受けやすい面で測定。 (b) 環境基準の達成状況を住居等の割合または戸数で評価。道路端*1で測定した騒音の測定

値および建物の地理情報に基づいて住居等における騒音レベルを推計。 (c) 道路端で測定した騒音レベルを要請限度値で評価。測定日数は、騒音規制法の要請限度

を適用する場合は 3 日間とされているが、騒音の現況把握においては一般的に 1 日。測

定値を環境基準値と比較する場合もある。 法令、マニュアル等に記載されている測定方法を表-3.1に示す。

表-3.1 道路交通騒音を測定する方法

環境基準での評価*2 要請限度での評価

建物の位置での測定 道路端での測定

測定日 騒音が 1 年を通じて平均的な状況を呈

する日

連続する 7 日間のうち当該自動車騒音の状

況を代表すると認められる 3日間

時間の区分 昼間:午前 6 時から午後 10 時

夜間:午後 10 時から翌日の午前 6 時

測定位置

-水平方向

建物から1~2 mで騒音の

影響を受けやすい面 2.1)

道路端の1

側 3.2)

道路に接して住居等が存している場合には

敷地の境界線、道路から距離をおいて住居

等が存している場合には住居等に到達する

騒音の大きさを測定できる地点

測定位置

-鉛直方向

住居等の平均的な高さで

地上 1.2 m~5 m2.1)

- 鉛直方向において生活環境の保全上騒音が

最も問題となる位置とし、一般的な平面道

路の場合は原則として地上 1.2 m3.3)

測定方法等 JIS Z 8731 により等価騒音レベルを測定

除外音の処

航空機騒音、鉄道騒音、建設作業騒音、鳥の声、マフラー改造による音、パトカーの

イレン等の自動車以外の音や平均的でない音は除外

その他 一般的な測定では、10 分間の測定を 1時間ごとに 24 回行い、昼夜別の等価騒音レベ

ルを算出する。

*1: 道路端とは、道路の敷地(敷地内に複数の道路の管理者が存在する場合は、各道路の管理者

が管理する敷地)の境界線をいう 3.2)。

*2:騒音の測定位置は、建物の位置(上記の(a)の場合)または道路端(上記の(b)の場合)。

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(解説)

3.1 自動車騒音常時監視の報告例

自動車騒音常時監視は、都道府県及び騒音規制法上の政令市が騒音規制法に基づく法定

受託事務として実施したものであり、調査結果はインターネットで公開されている。図-3.1

および図-3.2は騒音の測定値および環境基準の達成状況の公表例 3.1)である。

報告年度

調査自治体名称

一連番号

騒音測定地点番号

測定地点の住所

[1]路線名

[1]車線数

[1]道路種別

環境基準類型

Leq昼間(dB)

Leq夜間(dB)

緯度 経度

2008 札幌市 1042 1021札幌市白石区北郷3条1丁目

北郷1丁目線

4 5 B 67 59 43.065 141.4056

2008 札幌市 1043 3005札幌市西区宮の沢1条4丁目15

一般国道5号

4 3 C 71 68 43.0921 141.2669

2008 札幌市 1044 3011札幌市北区北32条西10丁目

一般国道5号

4 3 C 71 66 43.09991 141.3332

図-3.1 自動車騒音常時監視における騒音の測定値の公表例

報告年度

調査自治体名称

一連番号

評価区間番号

評価区間開始点住所

評価区間終了点住所

延長[1]路線名

[1]車線数

[1]道路種別

[2]路線名

[2]車線数

[2]道路種別

全体評価対象戸数(戸)

全体昼夜とも基準値以下戸数(戸)

全体昼夜とも基準値以下割合(%)

全体昼のみ基準値以下戸数(戸)

全体昼のみ基準値以下割合(%)

全体夜のみ基準値以下戸数(戸)

全体夜のみ基準値以下割合(%)

全体昼夜とも基準値超過戸数(戸)

全体昼夜とも基準値超過割合(%)

2006 札幌市 4751 40544札幌市清田区里塚3条7丁目

札幌市清田区平岡公園

2.3道央自動車道

4 1 67 66 98.5 0 0 1 1.49 0 0

2007 札幌市 5848 40544札幌市清田区里塚3条7丁目

札幌市清田区平岡公園

2.3道央自動車道

4 1 67 67 100 0 0 0 0 0 0

2008 札幌市 4713 40544札幌市清田区里塚3条7丁目

札幌市清田区平岡公園

2.3道央自動車道

4 1 67 67 100 0 0 0 0 0 0

図-3.2 自動車交通騒音実態調査報告における騒音の測定結果の例

3.2 騒音測定

図-3.3 に騒音測定の事例を示す。測定位置は道路の敷地の境界線上の高さ 1.2m として

いる。騒音計についている黒いスポンジのようなものは風雑音を防止するためのウインド

スクリーンである。

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道路の敷地の境界線で測定 騒音計

図-3.3 騒音測定の事例

3.3 騒音に係る環境基準での騒音の評価

騒音に係る環境基準の告示において、騒音を評価する位置、および環境基準の達成状況

を評価する方法を以下としている。

・「評価は、個別の住居等が影響を受ける騒音レベルによることを基本とし、住居等の用に

供される建物の騒音の影響を受けやすい面における騒音レベルによって評価するものとす

る。」

・「道路に面する地域については、原則として一定の地域ごとに当該地域内の全ての住居等

のうち環境基準の基準値を超過する戸数及び超過する割合を把握することにより評価する

ものとする。」

面的評価(環境基準に係る道路に面する地域の評価)では、電子化された住宅地図および

道路端での騒音の測定値に基づいて図-3.4 のように建物ごとの騒音を計算する。環境省は

50m幅の区域ごとの環境基準達成率を図-3.5のように環境 GIS3.1)として公表している。

図-3.4 建物ごとの騒音の計算事例

図-3.5 公表された面的評価の結果の事例

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17

3.4 その他

必要に応じて 1)道路の状況、2)社会的状況を調査する。 1) 道路の状況 平面図、断面図により幅員構成、車線数、道路構造の種類(盛土、切土、トンネル、橋

若しくは高架、その他の構造の別)を把握するとともに、対象道路に係る道路の区分(道

路構造令(昭和 45 年政令第 320 号)第三条に規定する道路の区分をいう)、設計速度、計

画交通量及び(道路交通センサスにより)交通量を把握する。 2) 社会的状況 土地の利用や法令による指定の状況等、以下に記載した社会的状況を把握する。表-3.3

は入手資料の一覧である(「道路環境影響評価の技術手法」(国土技術政策総合研究所)か

ら転載)。 (1) 土地利用の状況

土地利用の現況、土地利用計画の状況 (2) 交通の状況 主要な道路の位置、交通量等の状況 (3) 学校、病院その他の環境の保全についての配慮が特に必要な施設の配置状況及び住

宅の配置概況 学校、病院、幼稚園、児童福祉法に基づく児童福祉施設(保育所等)、老人ホー

ム、図書館等の配置の状況、集落の状況、住宅の配置の概況、将来の住宅地の面

整備計画の状況 (4) 環境の保全を目的として法令等により指定された地域その他の対象及び当該対象

に係る規制の内容その他の状況 ①幹線道路の沿道の整備に関する法律(昭和 55 年法律第 34 号)第五条第一項の規

定により指定された沿道整備道路 ②環境基本法(平成 5 年法律第 91 号)第十六条第一項の規定により定められた騒音

に係る環境基準の類型の指定状況 ③騒音規制法(昭和 43 年法律第 98 号)第三条第一項及び第十七条第一項に基づく

指定地域内における自動車騒音の限度、地域指定状況、区域の区分、時間の区分

の状況

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表-3.2 社会的状況を把握する資料

社会的状況の項目 文献・資料名 文献・資料から抽出する項目 発行者等 土地利用の状況 土地利用図 土地利用の現況

土地利用計画の状況 国土地理院

土地利用現況図 都道府県 土地利用基本計画図 土地利用動向調査

市町村 都道府県

都市計画図 市町村 交通の状況 道路交通センサス 主要な道路の位置

交通量等の状況 国土交通省 都道府県

学校、病院その他の環境の保全についての配慮が特に必要な施設の配置の状況及び住宅の配置の概況

住宅地図 病院名簿

学校、病院、幼稚園、児童福祉法に基づく児童福祉施設(保育所等)、老人ホーム、図書館等の配置の状況、集落の状況、住宅の配置の概況、将来の住宅地の面整備計画の状況

民間

教育要覧 土地利用動向調査 社会福祉施設名簿

都道府県

環境の保全を目的として法令等により指定された地域その他の対象の状況、当該対象に係る規制の内容の状況

例規集等 幹線道路の沿道の整備に関する法律第五条第一項の規定により指定された沿道整備道路

都道府県等

都道府県環境白書 環境基本法第十六条第一項の規定により定められた騒音に係る環境基準の類型の指定状況

都道府県 例規集等 都道府県等

都道府県環境白書 騒音規制法第三条第一項及び第十七条第一項に基づく指定地域内における自動車騒音の限度、地域指定状況、区域の区分、時間の区分の状況

都道府県 例規集等 都道府県等

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4.道路交通騒音対策

道路交通騒音対策は、騒音発生源での対策、伝搬経路での対策および受音側での対策に大

別できる。図-4.1は道路構造物等による対策の模式図である。

建物防音遮音壁遮音壁

高架裏面吸音板

排水性舗装

受音点対策

建物防音

伝 搬 経 路 対 策

遮音壁, 高架裏面吸音板, 半地下道路

発生源対策

単体規制, 排水性舗装

排水性舗装建物防音 遮音壁

環境施設帯 環境施設帯

図-4.1 道路交通騒音対策の模式図

備考:排水性舗装は、低騒音効果のある高機能舗装または低騒音舗装ともいわれる。

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(解説) 騒音対策の体系を図-4.2 に示す。多様な観点で騒音対策を検討する際の参考となる。 道路交通騒音対策の充実強化について(中間とりまとめ) (環境庁 平成 12 年 8月)

物流合理化による交通量抑制

道路交通騒音対策

物流拠点の適正配置 ・流通業務団地の整備

・トラックターミナルの整備

発生源対策

交通流対策 道路網の整備

物流の合理化

自動車構造の改善

・輸送の共同化

旅客輸送の合理化 人流対策の推進 ・公共交通機関の整備促進

・配送の効率化

・在庫の適正化

・道路の相互利用

・許容限度の強化

・技術開発の促進

・車輌検査、点検整備の徹底

・低公害車の開発及び利用の促進等

・環状道路、バイパスの整備

・中央卸売市場の移転・統合

・交通結節点整備による公共交通機関の利用促進

交通規制等 ・交通状況に即応した信号機の制御

・交通管制システムの高度化

・バス専用、優先レーンの設置

・駐車対策の推進

・速度超過車輌の取締りの徹底

・エンジン音等を低く抑えるための最高速度規制・大型車の中央寄り車線規制

・消音器等の不法改造車両等の取締り

道路構造対策 基本構造 ・堀割構造等の採用

・立体交差点化の推進

遮へい施設の設置 ・遮音壁・築堤の設置

・低騒音舗装等の敷設

・特殊吸音体の設置

環境施設帯の設置 ・環境施設帯の設置

路面の改良等 ・路面の舗装状態の改良

・橋梁ジョイント部の劣化防止

・連続桁の採用及び既設桁の連結

その他 ・2層構造道路の高架裏面吸音板設置

・植樹

沿道対策 緩衝空間の設置 公園・緑地の配置 ・公園の配置

・農地・緑地の配置

業務系空間の配置・用途地域・特別用途地区の指定における配慮・建築の用途・構造の指定

・土地区画整理・再開発等の都市計画及び計画事業

緩衝建築物の配置 緩衝建築物の立地誘導 ・建築物の高さ・間口率等の指定

・建築物の建ペイ率・容積率等の指定

・防火地域の指定

緩衝建築物の整備 ・建替・共同建替による緩衝建築物化

・新築住宅の防音構造化の義務付け

環境教育・啓発 ・ドライバーに対するマナー教育等

・公共施設の整備

・緩衝建築物の建築費用一部負担

沿道住宅の防音化 ・既設住宅の防音工事助成

図-4.2 道路交通騒音対策の体系図

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これらの騒音対策のおおまかな効果を表-4.1、図-4.3に示す。表-4.1の効果は現場条件に

より大きく異なることに注意する必要がある。

騒音の評価手法のあり方について 報告 (中央環境審議会騒音振動部会 騒音評価手法専門委員会 平成 10 年 5 月 22 日)

表-4.1 各種騒音対策の効果

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図-4.3 建物の防音性能の調査結果

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4.1 発生源側での対策-自動車騒音単体規制

自動車単体の騒音は、中央環境審議会答申を受けた道路運送車両法の保安基準により規

制されている。規制値および測定方法は、保安基準の細目を定める告示(自動車の騒音防

止装置)で定められている(図-4.1.1)。図-4.1.2 に示すように、これまでの規制により自

動車から発生する騒音は大きく低減された。規制値を 10 dB 小さくすると発生する騒音のパ

ワーは 1/10 に低減する。自動車単体規制については付属資料 A4 自動車騒音の単体規制に

も記載している。

騒音規制法

∟中央環境審議会答申 道路運送車両法

∟道路運送車両の保安基準(国土交通省令) ∟道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(国土交通省告示)

図-4.1.1 自動車騒音単体規制の法体系

70

75

80

85

90

95

46 48 50 52 54 56 58 60 62 64 66 68 70 72 74 76 78年

加速走行騒音規制値

(dB

大型車(トラック) 中型車(トラック)乗用車(乗車定員6人以下) 二輪自動車(小型)原動機付自転車(第一種)

平成元年

2   4    6    8   11  13  15昭和

図-4.1.2 加速走行騒音規制値の推移

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4.2 発生源側での対策-交通流対策

交通流対策として、バイパス整備等による交通の分散、大型車の通行規制、車両の速度

規制、および交通機関の利用促進が行われている。

4.2.1 バイパス整備等による交通の分散

バイパスが整備されて大型車の交通量が減少し、騒音値が下がった例は多い。環境ロー

ドプライシングは、図-4.2.1 のように並行する有料道路の路線間に料金格差を設けること

で、都心部の住宅地等を通過する交通を湾岸部等に転換させて、住宅地等の沿道環境の改

善を目指す政策である。大型車に高架橋の通行を促している例および有料 4 バイパスの夜

間無料化で沿道環境が大幅に改善した例を図-4.2.2 および次頁に示す。

図-4.2.1 環境ロードプライシング

(国土交通省の website より)

図-4.2.2 大型車に高架橋の通行を促している例

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有料 4バイパスの夜間無料化で沿道環境が大幅改善 4.1)

進まなかった有料 4バイパスへの交通転換

・現道 1号(有料 4バイパスとの並行区間)沿線地域では、進まなかった有料 4バイパス(藤

枝・掛川・磐田・浜名バイパス)への交通転換が問題に。

・騒音の悪化が著しく、特に夜間における環境改善が急務。

夜間、有料 4バイパスを無料化

・平成 11年 4月 1日に有料 4バイパスの夜間(22 時~翌朝 6時)無料化を実施。

・夜間の現道交通が大幅に転換され、現道 1号の沿道環境が改善。

4.1) 国土交通省: 有料 4バイパスの夜間無料化で沿道環境が大幅改善,

http://www.mlit.go.jp/road/koka4/8/8-37.html

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4.2.2 大型貨物車の通行規制等

大型貨物車の通行を抑制する措置として、夜間において車両通行区分を指定し、大型

貨物車の通行帯を中央寄り車線とする規制や土曜日の夜間に大型貨物車の走行を禁止す

る措置が講じられている例などがある。

1) 環状7号線等における大型貨物車の中央寄り車線規制

東京都内の環状7号線では、昭和48年3月から、騒音防止を目的とした車両通行区分の指

定が行われている。大型貨物車は、午前0時から5時までの夜間においては中央寄り車線を

通行しなければならない。

図-4.2.3 大型貨物車の中央寄り車線通行規制(車両通行区分の指定)の概念図4.2)

国道23号および国道1号の下表の区間においても、夜間の23時~5時の間で、大型貨物車

の中央寄り車線規制が行われている。

表-4.2.1 大型貨物車の中央寄り車線規制区間の例 4.3)

路線名 区間

一般国道 23 号 名古屋市緑区大高町~港区神宮寺一丁目(約 9.0km)

一般国道1号 豊橋市瓦町~豊橋市飯村町(約 1.1km)

一般国道1号 岡崎市八帖北町~岡崎市菅生町(約 2km)

4.2) 昭和 49 年警察白書

4.3) 愛知県(2006),『あいち 環境学習ハンドブック』

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2) 環状7号線以内、環状8号線の一部における大型貨物等の通行禁止

東京都内の環状7号線(環七通り)以内及び環状8号線(環八通り)の一部では、土曜日22

時から日曜日7時までの間は大型貨物等の通行が禁止されている。

・環七通り以内都心全域(環七通りも含む)

・環八通りのうち、田園調布警察署前交差点から四面道交差点までの間

図-4.2.4 大型貨物等の都心部の通行禁止区域および標識の例 4.4)

表-4.2.2 環状 7号線以内及び環状 8号線の規制車両 4.5)

規制対象車両

・特定中型貨物自動車(最大積載量 5トン以上 6.5 トン未満又は車両総重量 8トン以上 11 トン

未満の中型貨物自動車)

・大型貨物自動車(最大積載量 6.5 トン以上又は車両総重量 11 トン以上の貨物自動車)

・大型特殊自動車(ロードローラー、タイヤローラー等)

備考

・首都高速道路は通行可能だが、規制区域内にある出口から一般道路へ出ることはできない。

・湾岸道路(国道 357 号)は通行可能。

・環八通りの規制区間では横断は可能。

4.4) 警視庁 交通規制,『大型貨物等の都心部の通行禁止について』

4.5) 警視庁 交通規制,『大型貨物等の都心部の通行禁止について』より作成

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3) 国道 43号における大型貨物自動車等の通行帯指定その他

国道43号の兵庫県内の一部区間では、平成10年4月16日から、環境対策を目的とした車両

通行区分の指定が行われている。大型貨物自動車等は、夜間22時~6時においては第3通行

帯を通行しなければならない。また、平成24年3月からは、歩道寄りの車線を「環境レーン」

と称し、大型車には中央寄り車線の通行を促す対策が講じられている。

図-4.2.5 国道 43 号における大型貨物自動車等の通行帯指定等 4.6)

4.6) 国土交通省: 国道 43 号通行ルール(兵庫県域), http://www.kkr.mlit.go.jp/hyogo/43chousa/tukourule.pdf

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4.2.3 車両の速度規制

加減速のない定常走行を仮定すると表-4.2.3 に示すように速度が低下すると騒音レベル

が低下する*1。都道府県公安委員会は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円

滑を図り、又は交通公害その他の道路の交通に起因する障害を防止するため必要があると

認めるときは、政令で定めるところにより、信号機又は道路標識等を設置、及び管理し、

交通整理、歩行者又は車両等の通行の禁止その他の道路における交通の規制をすることが

できる(道路交通法第 4 条)。図-4.2.6 は騒音対策を目的とした規制速度の例である。国道

43 号の兵庫県内の一部区間では、騒音対策を目的として、規制速度を昭和 48 年に 60km/h

から 50km/h、平成元年に 50km/h から 40km/h に変更した。

表-4.2.3 走行速度の変化による騒音レベルの変化

走行速度(km/h) 減少量(dB)

100 → 80 約2

100 → 60 約4

80 → 60 約3

80 → 50 約4

60 → 50 約2

60 → 40 約4

50 → 40 約2 ※ASJ RTN-Model4.7)のパワーレベル式 (付属資料 A2 表-A2.1参照)から算出できる。

*1 (備考 1) 加減速を伴う非定常走行を仮定すると速度が低下しても沿道における騒音レベルは

低下しない。非定常走行では、速度が低下することによる騒音の減少は小さく、通過に要する時

間が長くなることで相殺されるためである。

(備考 2)速度の低減は交通安全にも寄与する。WHO は、自動車と歩行者が衝突した際の自動車

の走行速度と歩行者が致命傷を負う確率との関係を図-4.2.7 で示している。 国道 19 号では、

騒音・振動の低減および交通事故の減少を目的とし、規制速度の順守を促す交通誘導の取り組み

が木曽カメクラブと称して行われた。(図-4.2.8)

4.7) 日本音響学会道路交通騒音調査研究委員会:道路交通騒音の予測モデル“ASJ RTN-Model 2008”,

日本音響学会誌,Vol.65, No.4, pp.179-232, 2009.

国道 250 号

(夜間)

国道 2号

図-4.2.6 騒音対策を目的とした速度

規制

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図-4.2.7 衝突時の自動車の走行速度と歩行者が致命傷となる確率 4.8)

図-4.2.8 木曽カメクラブのロゴと車両 4.9)

4.8) WHO,Speed management- A road safety manual for decisio n-makers and practitioners,2008

4.9) 国土交通省, http://www.cbr.mlit.go.jp/iikoku/kisokameclub/html/gaiyo.htm より

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31

4.3 発生源側での対策-排水性舗装

排水性舗装は雨天時の安全確保を目的として開発されたものであるが、図-4.3.1 のよう

にタイヤと路面の間で空気が圧縮・膨張するのを空隙で緩和するとともに吸音することで

騒音を抑制する。

図-4.3.1 排水性舗装によるタイヤ/路面音の抑制

排水性舗装による騒音低減量は道路の種別、車種、走行速度により異なる。ASJ

RTN-Model4.7)では排水性舗装の補正式を約 40 km/h~140 km/h の定常走行データ(積雪地の

データは除く)から(4.1)~(4.6)としている。図-4.3.2 はこれらを図示したものである。排水

性舗装による平均的な騒音低減量は約 3 dB(表-4.1)である。排水性舗装の減音効果は経

年変化で低下する。

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32

[一般道路]

停止時

小型車類、大型車類 ΔLsurf =0

走行速度 60 km/h まで

小型車類 ΔLsurf = -5.7 + 7.3log10(y+1) (4.1)

大型車類 ΔLsurf = -3.9 + 3.6log10(y+1) (4.2)

ここで、y は施工後の経過時間[年]である.

[自動車専用道路]

走行速度 60 km/h 未満

小型車類 ΔLsurf = -5.7 + 6.4log10(y+1) (4.3)

大型車類 ΔLsurf = -3.9 + 3.6log10(y+1) (4.4)

走行速度 60 km/h 以上

小型車類 ΔLsurf = 3.2 -5log10V +6.4log10(y+1) (4.5)

大型車類 ΔLsurf = 5.0 -5log10V + 3.6log10(y+1) (4.6)

ここで、V:走行速度[km/h]、y:施工後の経過時間[年]

-9

-6

-3

0

20 40 60 80 100 120 140

V (km/h)

ΔLsu

rf (d

B) 大型車類 新設

大型車類 敷設後5年

自動車専用道路小型車類 敷設後5年

小型車類 新設

一般道路 小型車類敷設後5年

図-4.3.2 排水性舗装による騒音低減量

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33

4.4 伝搬経路での対策-遮音壁

遮音壁は、自動車からの直達音を遮断して騒音を低減する( 図-4.4.1 )。環境影響評価

法に基づく環境影響評価では、約 7 割の事業において環境保全措置として遮音壁が計画さ

れている。遮音壁は、図-4.4.2 に示すように様々な形式のものがある。遮音壁の設置にあ

たっては、車の乗り入れ口、景観、日照、交通安全、および防犯等の検討および沿道住民

との調整等が行われている。遮音壁の設置コストは現場条件や遮音壁の仕様により異なる。

図-4.4.1 遮音壁による騒音の低減

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34

透光性遮音壁 先端改良型遮音壁

植栽に覆われた遮音壁 先端改良型遮音壁

張り出し型 掘割構造と遮音壁

低層遮音壁 植栽と透光性遮音壁

図-4.4.2 様々な形式の遮音壁

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35

4.5 伝搬経路での対策-その他

環境施設帯を整備することで騒音、振動、排出ガスが距離減衰する。環境施設帯は、植

樹帯、路肩、歩道、副道等で構成される。

道路構造令の解説と運用 ((社)日本道路協会 平成 16 年より)

2-11 環境施設帯 2-11-1 概 説 環境施設帯とは、「道路環境保全のための道路用地の取得及び管理に関する基準につい

て」(昭和 49 年 4 月 10 日都市局長・道路局長通達)に基づいて設けられる幹線道路の沿

道の生活環境を保全するための道路の部分をいい、植樹帯、路肩、歩道、副道等で構成さ

れる。 2-11-2 環境施設帯の設置 第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域および

第2種中高層住居専用地域またはその他の地域であって、住居の立地状況その他土地利用

の実状を勘案し、良好な住居環境を保全する必要があると認められる地域を通過する幹線

道路については、当該幹線道路の各側の車道端から幅 10 m の土地を道路用地として取得

するものとする。 ただし、幹線道路が自動車専用道路であって、次の i)または ii)のいずれか一つに該当

し、かつ夜間に相当の重交通が見込まれるものについては、当該幹線道路の各側の車道端

から幅 20 m の土地を道路用地として取得するものとする。 なお、この場合において建築物の不燃堅牢化が進んでいる地域については、これを 10 m

とするものとする。 i) 当該幹線道路の構造が切土又は盛土であること ii) 当該幹線道路の構造が高架(他の道路の上部に設けられる場合に限る)であること また地形の状況その他の特別の理由により、やむを得ない場合においては、上記の値に

よらないことができるものとする。

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36

(参考)供用中の道路の沿道における環境施設帯の整備

① 事業の進め方

環境施設帯の事業の進め方の例を図-4.5.1 に図示する。

図-4.5.1 環境施設帯整備事業の進め方の例(中部地方整備局作成資料を一部修正)

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37

環境施設帯の整備事例

[国道 23 号品川町環境施設帯の整備]

図-4.5.2 環境施設帯整備事業の公表例 4.10)

4.10) 国土交通省, http://www.cbr.mlit.go.jp/meikoku/kisha/pdf/20070706_kisya.pdf より

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(参考)地表面効果による騒音の減衰

環境施設帯内の植栽により騒音が遮蔽される効果は見込めないが、地表面による騒音の

減衰は見込める。環境施設帯の地表面を草地とみなし、ASJ RTN-Model4.7)でユニットパタ

ーンを考慮して減衰量を計算した例を図-4.5.3 に示す。

r m

騒音測定点

高さ1.2 m

アスファルト10 m

基準点r = 0 m

草地

計算条件

50

60

70

80

0 10 20 30 40 50

騒音

レベ

ルd

車線からの距離 r m

幾何減衰のみ

(アスファルト相当)倍距離で - 3 dB

3 dB

草地の減衰

図-4.5.3 草地における騒音の減衰の計算例

(備考)点音源の幾何減衰は倍距離で -6 dB であるが、道路交通騒音のような線音源での

幾何減衰は倍距離で -3 dB となる。

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4.6 受音側での対策

道路事業者による受音側の対策として、沿道法に基づく対策および高速自動車国道等の

周辺における防音助成について概要を述べる。

1) 沿道法に基づく対策

都市における幹線道路周辺において、道路交通騒音による障害を防止し、あわせて適正

かつ合理的な土地利用を図ることを目的として、「幹線道路の沿道の整備に関する法律」(沿

道法)S55 年法律第 34 号、平成 8 年改正が定められている。沿道法では知事が沿道整備道

路を指定すること、道路管理者及び都道府県公安委員会が道路交通騒音減少計画を作成し、

区市町村が沿道地区計画を策定すること、および以下の自動車騒音の諸対策を進めること

を定めている。沿道法適用の流れの例を図-4.6.1に示す。

① 土地の取得費用の一部を国が市町村に無利子で貸付できること。

② 緩衝建築物の建築を促進するため、道路管理者が建築費の一部を負担すること。

③ 市町村条例により新設住宅の防音構造化が義務づけられたとき、道路管理者が既存住宅

の防音工事費用を助成すること。

④ 防音助成の住宅が老朽化し有効な防音工事の実施が困難な場合には、道路管理者が住宅

の移転・除去費用を助成できること。

沿道法による指定道路は、ほとんどが東京都内の道路である。沿道対策として建築基準

法に基づく建築制限条例を定めている区もあり、①建築物の用途の制限、②間口率の最低

限度、③建築物の高さの最低限度、④建築物の構造に関する遮音上の制限、⑤建築物の構

造に関する防音上の制限、⑥敷地面積の最低限度、⑦壁面の位置の制限などを規制してい

る例もある。

沿道地区整備計画の決定

沿道整備協議会の設置

道路交通騒音減少計画の策定

区域及び整備の方針決定

建築制限条例

沿道地区計画

沿道整備道路の指定

①沿道整備用地買入れの無利子貸付け②緩衝建築物の費用一部負担(間口長20m以上、高さ6m以上、間口率7/10以上)③その他

①防音工事助成(夜間Laeqで65dB以上)②住宅の移転等に対する助成

図-4.6.1 沿道法適用の流れ 4.11)

4.11) 阿部他:東京都における自動車騒音対策, 騒音制御, Vol.27, No.1, 2003

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2) 高速自動車国道等の周辺における防音助成

「高速自動車国道等の周辺における自動車交通騒音に係る障害の防止について」(昭和 51

年 7 月 21 日建設省都市・道路局長通達、平成 11 年 7 月 1 日一部改正)に基づいて、高速自

動車国道および自動車専用道路の沿道の住居等に対する防音助成が行われている。助成の

要件は以下となっている。

①夜間(22:00~6:00)の等価騒音レベルが 65 dB 以上。

②基準日(昭和 51 年 8 月 1 日。それ以降に供用された路線については供用開始日。)に居

住の用に供されていること。(いわゆる「先住者」を要件としている。)

防音助成以外にも移転の助成が行われている。

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4.7 道路構造による騒音対策の事例

4.7.1 苦情・要望等への対応の事例

騒音に対する苦情・要望等に対しては、現場条件等に応じて臨機応変に対応する必要が

ある。ここでは、様々な対応事例を示す。

a) すみやかに対策工事を施工した事例

夜間の騒音・振動が激しくて飛び起きることもあるとの苦情が電子メールと電話で道路

管理者に寄せられた。担当者は、ただちに現場に行き、原因が埋め戻しの跡やわだちぼれ

による路面の不陸であることを把握した。日交通量は約 2 万台である。道路管理者は、た

だちに延長約 170 m の舗装の打ち換え工事を行った。年間契約している維持工事で行うた

め、発注等の事務手続きに時間を要することもなかった。夜間工事となるために工事前に

は沿道の住民にビラを配って周知した。対策後は騒音・振動が解消し、住民からもお礼が

あった。なお、この事例においては騒音・振動の測定等は行っていない。

図-4.7.1 わだちぼれした路面のイメージ

b) 新たな装置を設置した事例

橋梁ジョイント(伸縮装置)部を車両が通過する際に発生する「突発騒音」に対する改

善要望が住民からよせられた。道路管理者は、「橋梁ジョイント部における突発騒音吸収装

置」(図-4.7.2)を設置した。装置は「突発騒音」対策として新たに開発したものである。

ジョイント直下部での 84 dB 以上の突発騒音の発生頻度は 36%から 2%に減少し、住民から

も改善されたと評価された。

開閉構造

(点検が容易)

図-4.7.2 橋梁ジョイント部における突発騒音吸収装置の設置

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c) 時間をかけて着実に改善した事例

住民の自治会から道路交通騒音の改善要望を受けた(起算時点 A 年度)。道路は、高架部 4

車線、平面部 6車線の二層構造であり、これまでに高さ 3 ~ 5 m の遮音壁等の騒音対策は講

じられていた。 騒音対策は、環境施設帯の設置、遮音壁の嵩上げ、舗装の打ち換えの順で計画した。環

境施設帯の用地取得はA + 3年度に完了したが、一部の商業施設で協力してもらえなかった。

この箇所では遮音壁も設置できなかった。A + 5 年度から A+8 年度に既設遮音壁( 高さ 3 ~

5 m )を高さ 8 m にする嵩上げの工事、A + 7 年度から A + 8 年度にかけて舗装の打ち換え

工事を施工した。遮音壁を設置することができなかった箇所では、商業施設と住宅地の境

界に遮音壁を設置して課題を解消した。

対策の進捗状況や騒音の測定値は、住民説明および広報誌で住民にお知らせした。

d) 騒音対策を講じることができない旨を説明した事例

バイパスの供用後に単路部およびオンオフランプ付近双方の住民から遮音壁の設置要望

を受けた。道路の敷地の境界線での騒音レベルは環境基準値(幹線交通を担う道路に近接

する空間の基準値)を 5 dB 以上下回っていた。住民には、騒音が環境基準値以下なので遮

音壁を設置することができない旨を説明して理解を得た。

経緯を以下に示す。

起算時点 バイパスの全線を暫定的に供用開始。 単路部沿道の住民から遮音壁の設置要望。

1 ケ月後 騒音測定。昼夜ともに環境基準値以下であるため遮音壁を設置することができない旨を住民に説明。

5 ケ月後 立体交差のオンオフのランプ付近の住民の自治会から遮音壁およびカーブミラーの設置要望。立体交差の高架部が工事中であったため直進車両もランプ部を通過していた。

6 ケ月後 立体交差の供用開始までの暫定措置として仮設の遮音シートを設置。(高さ 1.8 m、全長 20 m + 110 m)

7 ケ月後 カーブミラーの設置。

12 ケ月後 交差点の立体化供用。仮設の遮音シートを撤去。

20 ケ月後 騒音測定。環境基準値以下であるため遮音壁を設置することができない旨を単路部沿道の住民に説明。

24 ケ月後 立体交差のオンオフのランプ付近の住民の自治会に報告。

道路事務所および施工業者は住民対応で以下に配慮している。

・電話があったら即対応する。

・できることできないことを明らかにし、困難なことは回答を保留し持ち帰って検討する。

・できること(おとしどころ)を見つける。

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e) 騒音が環境基準値以下の沿道における騒音対策要望への対応事例

衝撃的な騒音等が発生する場合には、騒音が環境基準値以下の場合でも改善要望を受け

て対策を講じることがある。表-4.7.1 は騒音の対策要望の要因と対応の事例である。

表-4.7.1 騒音が環境基準値以下の沿道における騒音対策要望への対応事例

苦情・要望の内容・要因 対策対応

車道内に設置した情報 BOX による段差通過音

対策済 下水道工事後の段差で振動(騒音)

高架ジョイント音

工事による施工継目による段差で騒音振動発生

大型車のエンジン音(勾配部) 未対応

排水性舗装の機能低下と車両の大型化

4.7.2 交差点近傍における騒音の測定値

交差点近傍では交差する双方の交通の影響を受けるため単路部よりも騒音は大きくなる

が、距離減衰を確保できる箇所、遮音壁を設置した箇所、立体交差部、および掘割部では

騒音が抑制されている。ここでは騒音対策の検討に資することを目的とし、様々な交差点

近傍における騒音の測定値を示す。騒音の測定値は、交通量等の条件により変化するため、

異なる日時で測定した騒音値の差には、交通量等の条件の違いによる差が含まれ、真の騒

音値の差と異なる場合がある。そこで、複数の地点で同時に測定した等価騒音レベル LAeq の

差で騒音の低減量を示すこととした。

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a) 距離減衰

距離減衰により騒音が低減していることを確認した例をに示す。

(a-1)

主道路:都道府県道、従道路:都道府県道 交差点の状況:遮音壁等がない平面交差。

等価騒音レベル LAeq の測定値

70dB(P2)

従道路の最近車線中央から5.1m離れた地点

67dB(P4) -5dB主道路・従道路双方から20m程度離

れた地点

68dB(P1)主道路の最近車線中央から5.1m離れ

た地点

72dB(P3)平面交差部。主道路・従道路双方から10.5m離れた地点

低層の植栽

※)調査地点 P4(敷地の境界線)から交差点までの間には低木の植栽が施されている。

交通条件

大型車類 小型車類

主道路 上り 74 382 16 50 排水性舗装(良好)下り 69 324 18 50 排水性舗装(良好)

従道路 上り 38 215 15 50 密粒舗装(良好)下り 51 258 17 50 排水性舗装(良好)

道路種別

進行方向

時間換算交通量(台/h) 大型車混入率(%)

規制速度(km/h)

舗装種別

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b) 遮音壁

遮音壁により騒音が低減している事例を二つ示す。なお、交差点近傍において遮音壁を

設置した場合のおおまかな騒音低減量および遮音壁の概要については 4.4 伝搬経路での対

策-遮音壁および A4 遮音壁関連資料に示す。

(b-1)

主道路:国道、従道路(測定側):市町村道 交差点の状況 ・主道路と従道路は平面交差で主道路の上部に高架道路が併設されている。 ・主道路および交差点部には遮音壁が設置されている。

等価騒音レベル LAeq の測定値

©2009 ZENRIN CO.,LTD.

(Z09EC第026号) 紙の資料

(Z09EC第027号) インターネット

67dB (P6)主道路の最近接車線中央か

ら23.0m、従道路の最近接

車線中央から4.5m

62dB (P4) -11dB主道路の最近接車線中央か

ら18.8m、遮音壁から14.9m

66dB (P7)主道路の最近接車線

中央から32.8m、従道

路の最近接車線中央

から4.5m

72dB (P2)主道路の最近接車線中央か

ら6.2m

72dB (P1)主道路の最近接車線中央か

ら5.4m

73dB (P3)主道路の最近接車線中央か

ら4.2m

44dB (P8) -29dB窓は単板ガラスの屋内。主

道路の最近接車線中央から

22.5m、遮音壁から18.6m

66dB (P5)主道路の最近接車線中央

から19.4m、従道路の最近

接車線中央から7.9m、遮

音壁端部から4.1m

主道路の車道端付近 ( P1、P2、P3 )での LAeq は 72~73 dB と大きいが、建物側では遮音壁中央部背後 ( P4 )

で 62 dB、遮音壁端部背後 ( P5、P6、P7 )で 66~67 dB となっており、遮音壁中央部背後において大きく低

減していた。遮音壁中央部背後建物の室内 ( P8 ) の LAeq は 44 dB に低減していた。 交通条件

大型車類 小型車類

主道路※1 北行 111 1,026 10 50 排水性舗装

南行 92 945 9 50 排水性舗装

従道路※1 西行 14 153 8 40 密粒舗装

東行 3 192 2 40 密粒舗装

高速道路※2

(高架部)

※1:交差点を挟む2つの断面交通量を実測し、平均して求めた。

※2:交通量は道路交通センサスによる。

時間換算交通量(台/h)

5 -- 上下計

47

大型車混入率(%)

規制速度(km/h)

舗装種別

890

道路種別

進行方向

--

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46

( b-2 )

主道路:国道、従道路:都道府県道 交差点の状況 ・従道路が高架の立体交差(主道路及び従道路の上部に高架道路)。 ・主道路に遮音壁が設置されている(交差点部の高さ: 約 5.5 m、主道路部の高さ: 約 9.5 m)。

等価騒音レベル LAeq の測定値

70dB(P3)

交差部。遮音壁の手

前。主道路の最近車

線中央から7.1m離れ

た地点

61dB(P4)-9dB

住居の位置で、遮音壁の

騒音低減効果が認められ

る箇所。遮音壁より約10

m離れた地点

67dB(P2)

従道路の最近車線中央から

8.8m離れた地点

64dB (P1)-6dB

遮音壁の端部

遮音壁

横断歩

道橋

※)調査地点 P4 では交差点からの騒音は十分に低減されている。

交通条件

大型車類 小型車類主道路 上り 163 294 36 50 密粒舗装(良好)

下り 171 333 34 50 密粒舗装(良好)

従道路 上り 77 207 27 50 排水性舗装(良好)下り 64 156 29 50 排水性舗装(良好)

時間換算交通量(台/h) 大型車混入率(%)

規制速度(km/h)

舗装種別道路種別

進行方向

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c) 距離減衰及び遮音壁

距離減衰及び遮音壁の双方により騒音が低減している事例を示す。 ( C-1 )

主道路:国道、従道路:都道府県道 交差点の状況 ・主道路と従道路は平面交差。主道路の下部に半地下道路が併設。 ・主道路には遮音壁、半地下道路には吸音ルーバーが設置されている。

等価騒音レベル LAeq の測定値

68dB (P1)主道路の最近接車線中央から

8.6m、従道路の最近接車線中央

から8.2m

68dB (P3)主道路の最近接車線中央か

ら7.0m

59dB (P6) -10dB主道路の最近接車線中央から16.2m、従道路の最近接車線中央から28.4m、遮音壁端部から8.7m

52dB (P7) -17dB主道路の最近接車線中央

から23.7m、遮音壁から

16.2m

69dB (P8)主道路の最近接車線中央から

25.1m、従道路の最近接車線中

央から4.1m

63dB (P5) -5dB主道路の最近接車線中央から

22.7m、従道路の最近接車線中

央から19.4m、遮音壁端部から

17.6m

56dB (P4) -12dB主道路の最近接車線中央から

22.7m、遮音壁から17.6m

69dB (P2)主道路の最近接車線中央から

10.3m、従道路の最近接車線中

央から7.8m

©2009 ZENRIN CO.,LTD.

(Z09EC第026号) 紙の資料

(Z09EC第027号) インターネット

主道路の車道端付近 (P1、P2、P3) の LAeq は 68~69 dB と大きいが住居側では、遮音壁中央部背後(P4、

P7) で 52~56 dB、遮音壁端部背後 (P5、P6)で 59~63 dB となっており、交差点からの騒音は特に遮音

壁中央部背後において大きく低減されている。なお、P8 では従道路の騒音の影響が大きい。 交通条件

大型車類 小型車類

主道路※1 北行 92 446 17 50 排水性舗装

南行 65 518 11 50 排水性舗装

従道路※1 東行 51 530 9 40 密粒舗装

西行 42 518 8 40 密粒舗装

高速道路※2

(半地下部)

※1:交差点を挟む2つの断面交通量を実測し、平均して求めた。

※2:交通量は道路交通センサスによる。

舗装種別

2,125

道路種別

進行方向

--上下計

350

時間換算交通量(台/h)

14 --

大型車混入率(%)

規制速度(km/h)

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48

d) 立体交差

立体交差では高架またはアンダーパスに交通が転換しているので交差点近傍の騒音は小

さい。以下に2事例を示す。 ( d-1 ) 騒音レベルが単路部よりも小さい事例

主道路:都道府県道、従道路:都道府県道 交差点の状況 ・主道路と従道路は立体交差。 ・主道路の立体部には遮音壁が設置されている。

等価騒音レベル LAeq の測定値

74dB(P1)主道路単路部。主道路の最近接

76dB(P2)主道路の側道分合流部。主道路

の最近接車線中央から5.8m離れ

68dB(P3)=P2-8dB主道路本線が立体部であり遮音

壁の設置されている地点。主道路

の側道最近接車線中央から6.6m

71dB(P4)=P2-5dB主道路の側道と従道路の交

差点部。

69dB(P5)従道路の交差点から90m地点。従

道路の最近接車線中央から6.8m

70dB(P6)従道路の交差点から190m地点。

従道路の最近接車線中央から

N

0m 50m

立体交差

主道路からの騒音が支配的な単路部地点 (P1、P2) での LAeqは 74~76 dB である。主道路本線が立体

部となる地点 (P3) では、立体化と遮音壁の効果により 68 dB に低減されているが、交差点部 (P4)では、従道路の影響を受けて 71 dB となっている。交差点部と主道路単路部を比較すると、交差点部のほうが3 dB 小さい。従道路からの騒音の影響が大きい地点 (P5、P6) では 69~70 dB となっている。

交通条件

大型車類 小型車類 二輪車主道路 本線 内回り 120 1,215 81 9 40 排水性舗装

外回り 141 1,395 99 9 40 排水性舗装側道 内回り 15 375 48 4 40 排水性舗装

外回り 21 420 69 5 40 排水性舗装※

従道路 上り 114 1,095 138 9 60 排水性舗装※

下り 36 1,023 120 3 60 排水性舗装※

※:交差点内は、密粒舗装

規制速度(km/h)

舗装種別道路種別

大型車混入率(%)

進行方向

時間換算交通量(台/h)

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49

( d-2 ) 騒音レベルが単路部と同程度の事例

主道路:都道府県道、従道路:都道府県道 交差点の状況 ・主道路と従道路は立体交差。 ・主道路の立体部には遮音壁が設置されている。

等価騒音レベル LAeq の測定値

69dB(P1)主道路単路部。主道路の最近接車線

中央から4.6m離れた地点。

67dB(P3)=P2-3dB主道路本線が立体部であり遮

音壁の設置されている地点。

主道路の側道最近接車線中央から4.8m離れた地点。

凡例 :騒音測定地点 :遮音壁位置

N0m 50m

70dB(P2)主道路の側道分合流部。主道路の最近

接車線中央から5.1m離れた地点。

69dB(P5)従道路の交差点から40m地点。従道

路の最近接車線中央から5.0m離れ

た地点。

70dB(P6)従道路の交差点から140m地

点。従道路の最近接車線中

央から5.5m離れた地点。

70dB(P4)=P2+0dB主道路の側道と従道路の交差

点部。 立体交差

主道路からの騒音の影響が大きい単路部地点 (P1、P2) での LAeq は 69~70 dB である。主道路本線

が立体部となる地点 (P3) では、立体化と遮音壁の効果により 67 dB に低減しているが、交差点部 (P4) になると、従道路の影響を受けて 70 dB となっている。従道路からの騒音の影響が大きい地点 (P5、P6) では 69~70 dB となっている。主道路単路部では渋滞の影響で定常時よりも騒音が約 1 dB 程度小

さくなっていたことが考えられる。 交通条件

大型車類 小型車類 二輪車主道路 本線 内回り 162 897 15 15 50 排水性舗装※1

外回り 120 1,395 39 8 50 排水性舗装※1

側道 内回り 12 423 30 3 50 排水性舗装※2

外回り 18 291 27 6 50 排水性舗装※2

従道路 上り 48 567 87 8 40 排水性舗装※2

下り 69 447 51 13 40 排水性舗装※2

※1:主道路本線は、渋滞の影響あり

※2:交差点内は、密粒舗装

時間換算交通量(台/h) 規制速度(km/h)

舗装種別道路種別

大型車混入率(%)

進行方向

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50

引用文献

1) 環境省:平成 22 年度自動車交通騒音実態調査報告,

http://www.env.go.jp/air/car/noise/noise_h22/index.html

2.1) 環境省: 騒音に係る環境基準の評価マニュアル, http://www.env.go.jp/air/noise/manual/index.html

2.2) 環境省: 自動車騒音常時監視マニュアル, http://www.env.go.jp/air/car/noise/note_kanshimanual.html

3.1) 国立環境研究所: 全国自動車交通騒音マップ, http://www.env.go.jp/air/car/noise.html

3.2) 環境省水・大気環境局長: 騒音規制法第 18 条の規定に基づく自動車騒音の状況の常時監視に係る

事務の処理基準, 平成 23 年 9月 14 日

3.3) 環境庁大気保全局長: 騒音規制法第17条第1項の規定に基づく指定地域内における自動車騒音の限

度を定める命令の改正について, 平成 12 年 7月 17 日

4.1) 国土交通省: 有料 4バイパスの夜間無料化で沿道環境が大幅改善,

http://www.mlit.go.jp/road/koka4/8/8-37.html

4.2) 昭和 49 年警察白書

4.3) 愛知県(2006),『あいち 環境学習ハンドブック』

4.4) 警視庁 交通規制,『大型貨物等の都心部の通行禁止について』

4.5) 警視庁 交通規制,『大型貨物等の都心部の通行禁止について』

4.6) 国土交通省: 国道 43 号通行ルール(兵庫県域), http://www.kkr.mlit.go.jp/hyogo/43chousa/tukourule.pdf

4.7) 日本音響学会道路交通騒音調査研究委員会:道路交通騒音の予測モデル“ASJ RTN-Model 2008”,

日本音響学会誌,Vol.65, No.4, pp.179-232, 2009.

4.8) WHO,Speed management- A road safety manual for decisio n-makers and practitioners,2008

4.9) 国土交通省, http://www.cbr.mlit.go.jp/iikoku/kisokameclub/html/gaiyo.htm

4.10) 国土交通省, http://www.cbr.mlit.go.jp/meikoku/kisha/pdf/20070706_kisya.pdf

4.11) 阿部他:東京都における自動車騒音対策, 騒音制御, Vol.27, No.1, 2003

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A1-1

付属資料 A1 騒音の基礎知識

A1.1 音と音圧

音は音源が振動することにより伝搬する空気の圧力変動である。人間が聞くことができる

周波数(可聴域)は 20~20,000 Hz。

[波長]道路交通騒音は約0.3m人の可聴域は0.017m ~ 17m

密密 疎疎

波長

図-A1.1 音の伝搬

音の大きさは音圧として測定され、音の強さは式(1)の「音圧レベル」で示される。人の

耳で聞き取れる最小の音圧は 20 μPa = 0 dB (鼓膜の振動振幅が水素原子の直径程度)とされ、

100 Pa = 130 dB の音圧になると耳に痛みを感じる。

20

2

10SP log10ppL (A1.1)

ここで、LSP:音圧レベル (dB), p: 音圧 (μPa), p0: 基準音圧 20 μPa

A1.2 デシベル

デシベル値は基準値 I0 に対する I の比 I / I0 を対数で表現したものである。log10 ( I / I0 )を

ベル(電話を発明したグラハム・ベルが語源)、10 log10 ( I / I0 )をデシベルという。基準値の

1 倍は log 1=0 なので 0 dB、2 倍は 10 log 2 = 3 dB、10 倍は 10 log 10 = 10 dB、1/2 倍は 10 log

1 / 2 = -3 dB、1 / 10 倍は 10 log ( 1 / 10 ) = -10 dB となる。0 dB とは何もないということでは

なく基準量の 1倍を意味する。

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A1-2

A1.3 聴感補正

同じ音圧でも低い音や高い音は聞こえにくくなる(図-A1.2 音の等感曲線)。騒音レベル

は、音圧レベルを図-A1.3に示す A 特性で補正した値である。

(Wikipedia website より)

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

10 100 1000 10000 100000

周波数(Hz)

周波数重み特性(dB)

図-A1.2 音の等感曲線 図-A1.3 A 特性補正

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A1-3

A1.4 騒音の種類と表示方法

騒音レベルの表示方法は時間変動により表-A1.1のように分類される。自動車交通騒音は変

動騒音に該当する。

土木研究所資料 第 4112 号 A1.1)より抜粋 一部加筆

表-A1.1 騒音の種類と表示方法

種 類 定常騒音 非 定 常 騒 音

変動騒音 間欠騒音 衝 撃 騒 音

分離衝撃騒音 準定常衝撃騒音 JIS Z 8731における表現

レベル変化が小さく、ほぼ一定とみなされる騒音

レベルが不規則かつ連続的にかなりの範囲にわたって変化する騒音

間欠的に発生し、一回の継続時間が数秒以上の騒音

個々に分離できる衝撃騒音 (衝撃騒音:継続時間が極めて短い騒音)

レベルがほぼ一定で極めて短い間隔で連続的に発生する衝撃騒音

時間変動特性の例

騒音レベル LA

時間

騒音レベル LA

時間

騒音レベル LA

時間

騒音レベル LA

時間

騒音レベル LA

時間

騒音源の例

発動発電機

トラクタショベル* バックホウ* アースオーガ アースドリル 自動車交通

移動式クレーン(吊り上げ作業)

ディーゼルパイルハンマ* 油圧パイルハンマ* インパクトレンチ

ブレーカ*

騒音規制法に基づく表現

騒音計の指示値が変化せず、又は変動が少ない場合

騒音計の指示値が不規則かつ大幅に変動する場合

騒音計の指示値が周期的又は間欠的に変動し、 ①その指示値の最大値が概ね一定の場合 ②その指示値の最大値が一定でない場合

騒音計の指示値が周期的又は間欠的に変動し、 ①その指示値の最大値がおおむね一定の場合 ②その指示値の最大値が一定でない場合

騒音計の指示値が周期的又は間欠的に変動し、その指示値の最大値が概ね一定の場合

騒音評価量

騒音計の指示値又はその平均値

測定値の 90%レンジの上端の数値

①変動ごとの指示値の最大値の平均値 ②変動ごとの指示値の最大値の 90%レンジの上端の数値

①変動ごとの指示値の最大値の平均値 ②変動ごとの指示値の最大値の 90%レンジの上端の数値

変動ごとの指示値の最大値の平均値

記号

LA

LA5 LAeq

①LA,Fmax ②LA,Fmax,5

①LA,Fmax ②LA,Fmax,5

LA,Fmax

注)表中の*は、騒音規制法に規定する特定建設作業で使用される建設機械である。

A1.1) (独)土木研究所: 道路環境影響の技術手法 4.2 建設機械の稼働に係る騒音,

土木研究所資料 第 4112 号, 2007

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A1-4

A1.5 騒音レベルの目安

地方公共団体の試験研究機関を会員とする全国環境研協議会では、全国 25 の機関が参加

して 2007 年度と 2008 年度の 2 ケ年で「騒音の目安」を作成して報告している。

「騒音の目安」作成調査結果と活用について A1.2)より抜粋

表-A1.2 騒音の目安

調査区分および調査項目 (調査件数)

騒音 レベル(dB)

調査区分および調査項目 (調査件数)

騒音 レベル(dB)

パチンコ店(10) 90 航空機内(8) 77 居酒屋(17) 75 一般地下鉄(114) 76 地下街等(12) 69 鉄道車内 都心・近郊線(128) 73 ファーストフード店(43) 66 〃 ローカル線(48) 73 コーヒーショップ(94) 66 〃 新幹線(35) 69 商店街 昼間(38) 66 〃 グリーン車(7) 65 コンビニ(19) 63 自動車内 高速道路(39) 70 喫茶店(102) 62 〃 一般道路(41) 64 タクシー車内(9) 60 会議室内(6) 63 銀行内(16) 59 海浜(13) 61 病院内(13) 58 蝉の声(10) 72 図書館(25) 43

A1.2) 鴨志田均他:「騒音の目安」作成調査結果と活用について, 騒音制御, Vol.34, No.5,

pp.429-432,2010

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A1-5

A1.6 等価騒音レベル LAeq と中央値 LA50

等価騒音レベル(equivalent continuous A-weighted sound pressure level)は、ある時間範囲 T に

ついて、変動する騒音の騒音レベルをエネルギー的な平均値として表した量とされ(JIS

Z8731)、(A1.2)式で定義されている(ASJ RTN-Model 2008 4.7))。

20

2

1

2

10,Aeq

)(1

log10p

dttpTL

t

t A

T

 

  (A1.2)

ここで、LAeq,T:時刻 t1 から t2 までの時間 T (s)における等価騒音レベル(dB)、pA(t):対象とする

騒音の瞬時 A 特性音圧(Pa)、p0:基準音圧(20 μPa)。「T」は省略する表記が多く、「A」は省略

する表記もみうけられる。

騒音レベルの中央値 L50,Tとは、対象とする時間 T の 50%にわたって騒音レベルがその値

以上となる値である(JIS Z8731 を加筆修正)。 A 特性を意味する A を付け、T を省略し、LA50

と表記する場合が多い。

変動する騒音の等価騒音レベル LAeq と中央値 LA50 を図-A1.4 に例示する。LAeq は 65dB と

なり、騒音レベル(dB)の算術平均値 61 dB よりも大きくなるのは、LAeq の計算では 10 dB 大

きい騒音レベルは 10 倍の重みをつけて計算するためである。一方、LA50 は 60dB となり、

図の 100 秒間のうち 50 秒間において騒音レベルが 60dB 以上となっている。

50

55

60

65

70

75

0 20 40 60 80 100

騒音レベル(dB)

時間(s)

LA50=60dB

LAeq=65dB

図-A1.4 等価騒音レベル LAeq と中央値 LA50 の例

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A2-1

付属資料 A2 道路交通騒音の予測計算

道路交通騒音の予測計算は、1)事業の計画段階での環境影響評価、2)供用済の道路にお

ける騒音対策計画等で行われている。国土交通省では環境影響評価法に基づく環境影響評

価における騒音予測の基本的な手法を「道路事業に関する環境影響評価の実施について」

(平成 11 年 6 月 11 日 道路局長)(最終改正:平成 18 年 9 月 30 日)において、(社)日

本音響学会の道路交通騒音の予測モデル(ASJ RTN-Model)によることとしている。ASJ

RTN-Model は環境影響評価法によらない騒音予測でも使用されている。日本音響学会は

ASJ RTN-Model を 5 年間隔で定期的に改訂しており、最新版は ASJ RTN-Model 2008 4.7)で

ある。

A2.1 計算法の種類

騒音の予測方法には、大別して 1) 幾何音響、2) 波動音響、および 3) 模型実験がある。

ASJ RTN-Model の本文で示されている計算方法は、1) 幾何音響に分類される。エネルギー

ベースで計算し、干渉の影響は考慮しない。2) 波動音響は、音を波動として扱い、干渉の

影響を考慮する。FDM(差分法)、FEM(有限要素法)、BEM(境界要素法)等の数値計算

方法がある。ASJ RTN-Model の本文で示されている計算法のなかには、波動音響で計算し

た結果を実務者向けに簡便式で示したものもある(例:半地下構造道路からの騒音の計算

式)。3) 模型実験は、現場条件が複雑な場合に実施することがある。図-A2.1のように無響

室内に実寸法の 1/n の模型を製作し、n 倍の周波数(波長は 1/n)の音を発生させることで音

の伝搬を模擬する。例えば、遮音壁高さ 8 m、道路交通騒音のピーク周波数 1 kHz、および

波長 34 cm を n = 25で模型実験する際には、遮音壁高さ 32 cmとなり、音源は周波数 25 kHz、

波長 1 cm の超音波となる。

図-A2.1 模型実験の例

4.7) 再掲 日本音響学会道路交通騒音調査研究委員会:道路交通騒音の予測モデル“ASJ RTN-Model 2008”,

日本音響学会誌,Vol.65, No.4, pp.179-232, 2009.

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A2-2

A2.2 ASJ RTN-Model による予測計算の概要

ASJ RTN-Model による予測計算の概要は以下である。

1) 適用範囲

適用範囲は以下のとおりである。

(1) 対象道路:道路一般部(平面、盛土、切土、高架)、道路特殊箇所(インターチェンジ

部、連結部、信号交差点部、トンネル坑口周辺部、掘割・半地下部、高架・

平面道路併設部、複層高架部)

(2) 交通量:制限なし

(3) 自動車の走行速度:自動車専用道路、一般道路の定常走行部 40~140 km/h 一般道路の非定常走行部 10~60 km/h インターチェンジ部などの加減速・停止部 0~80 km/h

(4) 予測範囲:道路から水平距離 200 m、高さ 12 m(検証されているのはこの範囲までで

あるが、原理的には適用範囲に制限はない。)

(5) 気象条件:無風で特に強い気温の勾配が生じていない状態を標準とする。

2) 予測計算の流れ

対象とする道路上を 1 台の自動車が通過する際のユニットパターン(図-A2.2のような

騒音レベルの時間変化のパターン)から予測地点における単発騒音暴露レベル LAEを計算

し、時間当たりの走行台数分で積算することで予測地点の等価騒音レベル LAeqを計算する。

騒音の発生量については車種および速度を考慮し、騒音の伝搬については地表面や遮音壁

等による減衰を考慮する。計算手順は以下である。

伝搬距離 r (m)

予測地点

Time  t (s)

騒音

レベ

ル(d

B) ユニットパターン

離散点音源

図-A2.2 ユニットパターン

(1)道路構造・沿道条件・予測地点の設定

道路条件・沿道条件に基づいて、予測に必要な音源の位置、伝搬経路上の遮音壁など

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A2-3

音響障害物の位置、地表面性状および予測地点を設定する。

(2) 音源のパワーレベルの設定

音源の A 特性音響パワーレベル LWAは自動車の走行状態(定常、非定常、加速、減速)、

走行速度及び補正条件(舗装路面の種類、道路の縦断勾配、指向性及びその他の要因に

よるレベル変化)を考慮して設定する。図-A2.3は自動車走行騒音の A 特性音響パワー

レベルの模式図、表-A2.1は 4 車種分類のパワーレベルである。図-A2.4は 60 km/h にお

ける A 特性補正した音響パワー(W)を車種別に示したものである。1台当たりの騒音は

この重みで加算されることになる。

80

90

100

110

120

0 140速度 [km/h]

LW

A

10km/h 60km/h

加速走行状態,非定常走行状態

減速走行状態,定常走行状態

1km/h

図-A2.3 自動車走行騒音の A 特性音響パワーレベルの模式図

表-A2.1 パワーレベル式(4 車種分類)

b b

乗用車 46.4 82 76.4

小型貨物車 47.6 83.2 77.6

中型車 51.5 87.1 81.5

大型車 54.4 90 84.4

L W A = a + b log10 V ここで a と b は車種別, 走行状態別のパラメータ.V は速度 (km/h)

停止および減速での L W A (V≦10 km/h)は減速時の10 km/hでの値とする。

82.3

非定常走行状態10km/h≦V ≦60km/h

減速走行状態10km/h≦V ≦140km/h

加速走行状態1km/h≦V ≦60km/h

a a

3053.2

車種分類

定常走行状態40km/h≦V ≦140km/h

83.2

79.6

10大型車類

88.8

二輪車 49.6 85.2

小型車類

46.7

減速走行状態および停止状態

V <10km/h

L W A

76.7

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A2-4

0

50

100

150

200

大型車

(総重量8t以上)

中型車 乗用車 動力付二輪車 動力付二輪車

(違法マフラー)

60km

/hに

おけ

A特

性補

正し

た音

響パ

ワー

(×10-

3W

)

(注:違法マフラーの測定値は、規制が強化された平成 22 年 以前の測定例である。環境基準においては除外音処理の対象 となるため通常の騒音予測では見込まない。)

図-A2.4 60 km/h における A 特性補正した音響パワー

(3) 等価騒音レベル LAeq の計算

等価騒音レベル LAeq は、車両および走行車線別の音響パワー(W)が伝搬することによる

予測地点の騒音エネルギーの時間平均(W/m2)をデシベル(dB)に換算したものである。計算

は音源位置、車種別の走行台数分の加算を基本としている。詳細は ASJ RTN-Model による。

(参考) パワーレベル 100 dB の音源(固定)からの騒音は音響パワーの基準量 10-12 ( W )の 10100/10

倍= 10-2 ( W )となる(ただし、A 特性補正した音)。この音のエネルギーが音源から 10 m 離れ

た地点に半円球状に拡散すると面積が 2×3.14×102 = 628 m2 となるので音の強さは 10-2 / 628 = 1.59×10-5 ( W / m2 )となる。これは基準の音の強さ 10-12 ( W / m2 )に対して 1.59×10-5 / 10-12=1.59×107 倍になり、デシベルに換算すると 10・log ( 1.59×107 ) = 72 dB となる。道路交通騒

音の予測では音源が移動し、車種(音響パワー)が複数になるので計算が複雑になる。

(4) 様々な補正

予測計算においては、排水性舗装、回折、地表面効果等の補正を行う。これらの補正の

概要を以下に示す。

① 排水性舗装

排水性舗装による騒音低減効果は道路の種別、車種、走行速度により異なる。ASJ

RTN-Model 2008 での補正量は 4.3 発生源での対策-排水性舗装に記載した。

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A2-5

② 遮音壁などによる回折

遮音壁、高架道路の壁高欄の上端部、あるいは盛土、切土の法肩部では音が回折して伝

搬する。回折した音と直達音との差を ASJ モデルでは回折補正量 ΔLd とし、音源 S から受

音点 P までの直達音と上の回折パスとの行路差 σ を変数とした計算式が(A2.1)および表

-A2.2に示されている。行路差と回折補正量の関係のグラフを図-A2.5に示す。

ΔLd =

0)]||(sinh0.175,0min[

10)(sinh0.175

)(log1020

spec414.01

spec414.01

specspec10

σ      δ

σ          δ

1σ           δ

cc

cc

cc

spec

spec (A2.1)

表-A2.2 係数 cspecの値

騒音の分類 cspec 自動車走行騒音

密粒舗装 0.85 排水性舗装 0.75

1年未満 0.65 高架構造物音 橋種区分無し 0.60

-30

-20

-10

0

0.001 0.010 0.100 1.000 10.000

回折行路差δ[m]

回折

補正

量⊿

L[d

B]

Model2008密粒舗装

Model2008排水性舗装新設

δ=l OS+l OP-l SP

図-A2.5 回折行路差と回折補正量

ここで、排水性舗装の回折補正量の絶対値が小さくなる(=遮音壁の効果が小さくなる)

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A2-6

のは、排水性舗装が密粒舗装よりも卓越する音の周波数が低く遮音壁の効果が小さくなる

ためである。

平面道路の高さ 1 m 程度の低層遮音壁については図-A2.6のように挿入損失で計算する

方法を示している。音源 S から受音点 P までの直達音と上の回折パスとの行路差 δ1による

回折補正量を ΔLd1、下の回折パスとの行路差 δ2による回折補正量を ΔLd2とし、回折補正量

ΔLdif は(A2.2)式で計算する。

ΔLdif =ΔLd1 -ΔLd2 (A2.2)

図-A2.6 ΔLdif をインサーションロスで与える場合の二つの回折パス

(参考)例題

◇図-A2.7の条件での騒音の低減効果は?

5m

8m

5m

道路交通騒音の再生音

騒音計

遮音壁

図-A2.7 音源と遮音壁の幾何配置

Step 1:行路差の計算

(5+5)-8=2m

Step 2:回折補正量

図-A2.5の回折補正量のグラフで回折行路差 δ=2 m の値は約 -22dB

道路交通騒音予測の実務では、音源が図-A2.2のように線音源となることを考慮する。

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A2-7

③ 地表面効果による減衰

地表面効果による減衰は地表面の種類、伝搬経路の高さによって異なる。ASJ モデルで

は地表面の種別で、1)コンクリート、アスファルト、2)スポーツグラウンドなどの固い地

面、3)芝地、田んぼ、草地、4)表面の柔らかい畑地、耕田の 4 種類について、伝搬経路の

高さの考え方と地表面効果を計算する式を提示している。草地での計算例を図-4.5.3 草

地における騒音の減衰の計算例に示した。

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A3-1

付属資料 A3 遮音壁に関する技術の概要

遮音壁を設置するにあたっては、遮音量の他に様々な条件を考慮する必要がある。遮音

壁に関し、遮音量の測定事例、基準類、設置計画、および設計の概要を示す。なお、この

資料は現況を整理したものであり、基準類に該当するものではない。

A3.1 概要

1)遮音壁による遮音量の測定事例

遮音壁を連続して設置した条件での遮音量を構内で正確に測定した例を図-A3.1 に示す。

遮音壁の高さは 4 m とし、パネルは吸音性のある金属性とした。ユニットパターンを考慮

して音源は複数配置した。また、遮音壁の側方から回折する音の影響を除外する処理をす

るため TSP 音源とした。遮音壁による道路交通騒音の遮音量を現道で測定した例を図-

A3.2 に示す。遮音壁の設置の有無以外の条件はできるだけ一致させ同時測定した。双方の

測定において計算値と測定値は整合した。しかし、遮音壁を計画する現場では、車の乗り

入れ口の開口部等で騒音低減効果が小さくなることに留意する必要がある。

:受音点( 数値は減音量(dB) )

4m

7.5m 5m

7.5m

10m

20m

高さ1.2m音源高さ 0.3m

高さ5m

高さ7m

高さ9m

遮音壁旧公団仕様金属製延長80m、高さ4m

(注意)図を見やすくするために高さ方向を拡大している。

密粒舗装

-23 -23 -22 -21

-17 -19 -19 -20

-14 -16 -19

-11 -17

図-A3.1 遮音壁による遮音量の構内試験結果の例

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A3-2

L Aeq(80min) L Aeq(80min) 減音量

遮音壁有 遮音壁無  

P1 76 Pr1 76

P2 57 Pr2 74 -18

P3 55 Pr3 70 -15

P4 55 Pr4 70 -15

P5 60 Pr5 72 -12

P6 54 Pr6 67 -13

P7 58 Pr7 71 -13

1.07 3.73

H=2.5m

歩道側溝

フェンス

3.95

▽ 1.4

0.5 0.5

0.1

9.1

1.05 1.053.5 3.5

車線2車線1

▽ 4.0

▽ 1.2

▽ -0.2 ▽ 0.0

▽ 3.35

▽ 4.0

▽ 1.2植え込み

植え込み

0.18

0.57

P1P2

P3

P4

P5

P6

P7

上り線下り線

1.07 3.95 4.65

駐車場

9.0

3.53.51.0 1.0

0.18

車線1 車線2

0.1

▽ -0.2

▽ 1.4

0.571.1

▽ 4.0 ▽ 4.0

▽ 1.2 ▽ 1.2

▽ 0.0

歩道

植え込み

遮音壁相当位置

Pr1Pr2

Pr3

Pr4

Pr5

Pr6

Pr7

-12dB

-15dB

-13dB

-13dB

図-A3.2 遮音壁による遮音量の現場測定結果の例

2)遮音壁の構造

遮音壁の構造の体系を図-A3.3 に示す。主に「遮音板」、「支柱」、「基礎」で構成され、付

属物として落下防止ワイヤーや笠木などがある。また、先端改良型遮音壁では、上記の構

造に「先端改良装置」が付加される。

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A3-3

・反射型  コンクリート製 通常遮音壁、低層遮音壁

  透光性の素材 透光性遮音壁、低層遮音壁  その他

・吸音型  金属製 通常遮音壁  その他

・吸音型・干渉型 先端改良型遮音壁

・その他

・H型鋼・その他

・直接基礎・杭基礎

・構造物取付・その他

基 礎

遮音壁 遮 音 板

先端改良装置

支 柱

図-A3.3 遮音壁の体系図

3)遮音壁の種類、材質

遮音壁は、遮音板の材料および構造で分類すると表-A3.1となる。

表-A3.1 遮音壁の分類

区分 遮音板 主な材質 説明 通常の遮音壁 金属(亜鉛鉄板等) 設置実績が最も多い。

コンクリート

透光性遮音壁 透光パネル プラスチ

ック アクリル 日照阻害対策や景観対策を目的として設

置される透光性の遮音壁。 ポリカーボネート

ガラス 木製遮音壁 木製パネル 間伐材 純木

集成材 低層遮音壁 通常の遮音壁と同じ 高さ 1.0 m 前後。

透光パネル 透光性遮音壁と同じ

先端改良型遮

音壁 各種 遮音壁上端の形状および吸音性により、

騒音低減効果を高めた遮音壁。

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A3-4

A3.2 基準類

1)国内の状況

東・中・西日本高速道路株式会社(以下 NEXCO と呼ぶ)は、「遮音壁設計要領」A3.1)

(平成 21 年 7 月)を定めており、首都高速道路株式会社(以下 MEX と呼ぶ)は「附属施

設物設計施工要領(遮音壁編)」(平成 21 年 12 月)を定めている。国土交通省においては、

各地方整備局等で設計要領を定めている場合がある。

2)国外の状況

欧州(EU 加盟国)および米国における遮音壁に関する基準類の整備状況を以下に示す。

(1) 欧州(EU加盟国)

CEN(欧州標準化委員会)が発行する EN(欧州規格)において、遮音壁を対象とした

音響性能と安全性に関する要求水準および検証方法が定められている。欧州各国は、原則

として EN(欧州規格)そのものを自国規格として採用するため各国の基準(例えばドイ

ツでは LTV-Zsw06)の中で、該当する EN の引用を行う。

なお、音響性能ついては EN1793-1、1793-2、および 1793-3 で定められ、音響性能以外

の要求性能については EN1794-1、および 1794-2 で定められている。

(2) 米国

米国連邦道路庁(FHWA)が発行している「高速道路遮音壁設計ハンドブック(Highway

Noise Barrier Design Handbook)」には、遮音壁に関して材料の種類・音響性能・施工・維持

管理・コスト等が記載されているが、要求水準、検証方法は示されておらず、ガイドライ

ン的な内容である。

A3.1) 設計要領第 5集 遮音壁設計要領(東日本, 中日本, 西日本高速道路株式会社(NEXCO),

平成 21 年 7月

A3.3 設置計画における留意事項

1)遮音壁の設置位置

遮音壁の設置では、遮音性能とともに道路の建築限界、遮音壁の基礎に要する幅、のり

肩の保護、遮音壁前面の修景、自動車走行時の圧迫感、照明・標識、周辺地域の自動車の

衝突、除雪幅、および地形が考慮されている。さらに、高架併設区間、交差部、および分

合流部等については、沿道の土地利用状況等が考慮されている。

2)設置高さ

遮音壁の高さは目標とした遮音量の計算値およびパネルの規格を考慮して計画されてい

る。計算方法の概要を 4.4 伝搬経路での対策-遮音壁に示す。

3)設置延長

遮音壁の上方からの回折音は減音できても、設置延長が十分でない場合には側方回折音

が大きくなることもあるため、十分に注意が必要である。

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A3-5

4)パネルの選定

遮音壁のパネルを選定するにあたっては、遮音性能、経済性、安全性、日照阻害、景観、

住民意見および荷重が考慮されている。

(1) 遮音性能

遮音壁を新たに設置することで反射音が生じて騒音レベルが上昇する条件(図-A3.4 の模

式図)では吸音性の遮音壁を設置することが必要な場合がある。

図-A3.4 反射音影響範囲

(2) 経済性

特段の制約や配慮が必要とされない場合は、経済性の高い遮音壁が選定されている。

(3) 安全性

荷崩れした荷物の衝突等による遮音パネルの落下・破損および車輌火災等による延焼な

どの二次災害を防止することが必要な箇所では、落下防止策および燃えにくい材料の選定

が行われている。

(4) 耐久性

遮音壁の劣化による音漏れや美観を損ねることがないように耐久性の高い材料が選定さ

されている。

(5) 日照阻害

遮音壁による日照阻害が生じる可能性がある場合に透光性の遮音壁を選定することがあ

る。

(6) 景観

外部景観またはドライバーの快適性が求められる場合に景観に配慮した遮音壁を選定す

ることがある。

(7) 住民意見

住民の意見は多様である。治安や景観のために遮音壁の設置を望まない場合、およびプ

ライバーシの保護のため透光性の遮音壁を望まない場合もある。遮音壁の設置にあたって

は住民意見が反映されている。

(8) 荷重

高架・橋梁部やボックスカルバートに遮音壁を設置する場合には、許容される荷重が制

約され、軽量の遮音パネル等を選定する等の留意が必要になる場合がある。

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A3-6

A3.4 構造および性能

1)遮音板

(1) 構造

一般的な遮音壁は支柱(H鋼)に遮音板をはめ込む構造であり、遮音板の寸法は所定の

支柱間隔に適合するように規格化されている。以下に標準的な金属製のパネルの外形寸法

を示す。

表-A3.2 標準的な遮音板の諸元

記号※ 長さ

L(mm) 有効たて幅 H(mm)

厚さ D(mm)

備考

20-05 1960 500 95 支柱間隔 2.0m 対応 20-10 1960 1000 95 支柱間隔 2.0m 対応 40-05 3960 500 95 支柱間隔 4.0m 対応 40-10 3960 1000 95 支柱間隔 4.0m 対応

※記号の表記:例) 2 0支柱間

- 0 5有効たて幅

を示し、支柱間 2m、有効立て幅 0.5m であることを示す。

(2) 材料

遮音板には、強度と耐久性を有する材料が使用されている。材料基準の例を表-A3.6 に

示す。遮音板には耐火性と耐衝撃性の基準が定められている A3.3)。さらに、透光パネルに

関しては、黄色度(YI)、全光線透過率、曇価の変化(ΔH)に関する基準が定められてい

る A3.2)。

表-A3.3 遮音板の材料基準 A3.2)

(金属製の遮音板)

項目 適用基準 内容 正面板 JIS H 4000 アルミニウム及びアルミニウム合金の板 背面板、側面板、天板、底板、補強板 JIS G 3302 高耐候性めっき鋼板 吸音材 JIS A 6301 吸音材料

(コンクリート製の遮音板)

板種別 寸法 ひび割れ荷重 破壊荷重 コンクリート製遮音板 3960×500×90mm 2.0kN 10.4kn

(透光性遮音板)

板種別 適用基準 ポリカーボネート JIS K 6735 アクリル JIS K 6718-1(キャスト板)、JIS K 6718-2(押出板) 網入板ガラス及び線入板ガラス JIS R 3204 合わせガラス JIS R 3205 強化ガラス JIS R 3206

A3.2) 遮音壁施工管理要領(東日本, 中日本, 西日本高速道路株式会社(NEXCO), 平成 21 年 7月

A3.3) NEXCO 試験方法 第 9編環境関係試験方法(東日本, 中日本, 西日本高速道路株式会社(NEXCO),

平成 21 年 7月

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A3-7

(3) 設計荷重

遮音板を単純梁とし、風荷重による応力が許容値以下となるように設計されている。

(4) 音響性能

遮音板の遮音性能は JIS A 1416(空気音遮断性能試験)で測定する音響透過損失で規定さ

れている。吸音性の遮音板の吸音性能は、JIS A 1409(残響室法吸音率の測定試験)で測定す

る吸音率で規定されている。

(5) 安全性

車輌からの荷崩れした荷物の衝突または車両火災により、遮音板が飛散または燃焼し、

二次災害が生じるおそれがある箇所に設置する遮音壁では、二次災害を回避する遮音パネ

ルが選定されている。二次災害のおそれがある箇所を以下に示す。

(a) 道路や鉄道と交差する箇所

(b) 橋梁部などで道路や鉄道と並行する箇所

(c) 人家に隣接する箇所

(d) 河川や湖沼と交差し、河川敷や湖沼面が娯楽施設等に利用されている箇所

遮音板は、耐火性と耐衝撃性が規定されている A3.3)。

2)支柱と基礎

(1) 構造

支柱は、経済性と施工性から、H 形鋼が多く使用されている。基礎は、遮音板と支柱が

受ける風などの外力に耐えうる必要がある。基礎形式は以下が多い。

(a) 鋼管杭基礎

(b) 直接基礎

(c) 構造物取付

土工部の遮音壁基礎は経済性と施工性を考慮して鋼管杭基礎とされており、土質状況、

構造物等の近接区間、その他の理由により鋼管杭の施工が困難な場合には直接基礎とさ

れている。橋梁壁高欄、あるいはカルバート上等に遮音壁を設置する場合には直接これ

らに取りつけられている。

(2) 材料

支柱および基礎には、十分な強度と耐久性をもつ材料が使用されている。NEXCO の施工

管理要領 A3.2)では支柱は溶融亜鉛めっきを施した JIS 規格の一般構造用圧延鋼材とされ、

基礎の鋼管も JIS の規格品とされている。

(3) 設計荷重

遮音壁の設計で考慮されている標準的な荷重は、①死荷重、②風荷重、および③土圧で

ある A3.1)。

(4) 安定度照査

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A3-8

鋼管杭基礎では転倒に対する安定度照査を行うこととされており、直接基礎では鉛直支

持力、転倒、および滑動に対する安定度照査を行うこととされている A3.1)。

3)落下防止対策

車輌の衝突等により、支柱や遮音板の落下が想定される以下のような箇所では落下防対

策が講じられている。

(a) 鉄道、道路と交差する箇所

(b) 鉄道及び交通量の多い道路と平行する箇所

(c) 人家に隣接する箇所

(d) 河川や湖沼と交差し、河川敷や湖沼面が娯楽施設等に利用されている箇所

さらに、遮音板の落下防止が必要となる箇所は、上記の(a)~(d)に併せて、以下の

部分を含む箇所である。

(e) 遮音壁の張出部

破損落下防止範囲および落下距離については、道路構造、沿道状況を勘案の上、決定さ

れいる。NEXCO の設計要領 A3.1)では、遮音板の落下防止装置として、板落下防止装置(I

ボルト)のついた遮音板に索を通し、両側を支柱に固定するものとしている。また、支柱

落下防止装置についてはワイヤーロープ(共心ロープ JIS G 3549)を用いるものとしてい

る。

引用文献

A3.1) 設計要領第 5集 遮音壁設計要領(東日本, 中日本, 西日本高速道路株式会社(NEXCO),

平成 21 年 7月

A3.2) 遮音壁施工管理要領(東日本, 中日本, 西日本高速道路株式会社(NEXCO), 平成 21 年 7月

A3.3) NEXCO 試験方法 第 9 編環境関係試験方法(東日本, 中日本, 西日本高速道路株式会社(NEXCO),、

平成 21 年 7月

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A4-1

付属資料 A4 自動車騒音の単体規制

A4.1 経緯

環境省の website(http://www.env.go.jp/council/08noise/y080-03/ref02_2.pdf)を一部修正

自動車騒音の発生源対策として、昭和 27 年に定常走行騒音及び排気騒音に対する規制

が導入され、さらに昭和 46 年からは、市街地を走行する際に発生する最大の騒音である

加速走行騒音に対する規制が導入された。その後、以下のように逐次規制強化されてき

ている。

昭和 27 年 騒音規制の導入(定常走行騒音、排気騒音)(運輸省令)

昭和 46 年 加速走行騒音規制の導入(運輸省令)

昭和 51.52 年 加速走行騒音、全車種規制強化

(環境庁告示及び運輸省令、以下同じ)

昭和 54 年 加速走行騒音、全車種規制強化

昭和 57~62 年 加速走行騒音の逐次規制強化

昭和 61 年 二輪車・原動機付自転車に対する近接排気騒音規制の導入

昭和 63~平成元 年 四輪車に対する近接排気騒音規制の導入

平成 10 年 大型バス、乗用車(6人以下)、軽二輪、第1種原付の規制強化

平成 11 年 GVW1.7t 以下の小型車、ボンネット型軽貨物自動車、乗用車(6人超)

の規制強化

平成 12 年 中型バス、GVW1.7t 超の小型車、キャブオーバ型軽貨物自動車の規制強化

平成 13 年 大型車の全輪駆動車、トラクタ、クレーン車及びトラック、中型車の全輪駆動車及び

トラック、小型二輪、第2種原付の規制強化

平成 22 年 交換用マフラー等の規制強化

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A4-2

A4.2 現在の規制値

国土交通省の website より

/100:車両の後部に原動機を有するもの

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A4-3

A4.3 測定方法

国土交通省の website からの抜粋 a)近接排気騒音の測定方法例

[騒音測定] 騒音計:JIS C1505-1988「精密騒音計」又は同等の性能を有するもの

周波数補正: A 特性、動特性:FAST

[測定方法] 最高出力時の回転速度の 75%の回転速度で 5 分間程度無負荷運転されている

状態から加速ペダルを急速に放して騒音の最大値を測定(図-A4.1)

0.5m

microphone

排気流方向排気流方向

≦0.3m

排気管の間隔が0.3m以下の場合は最も外側の排気管を測定

図-A4.1 近接排気騒音の測定方法例

b) 定常走行騒音・加速走行騒音の測定方法例

[試験路] JIS D8301-1993(ISO 10884)による。密粒度アルファルトコンクリート、最大

粒径 8 mm、空隙率 8 %未満

[マイクロホンの位置] 走行方向の直角に車両中心線から左側へ水平距離で 7.5m 離れた位

置。高さ 1.2 m

[騒音測定] 騒音計:近接排気騒音と同じ仕様

[測定方法(定常走行騒音)] 原動機の最高出力時の回転数の 60%の回転数で走行した場

合の速度で定常走行させ、騒音の最大値を測定

[測定方法(加速走行騒音)] 原動機の最高出力時の回転数の 75%の回転数で走行した場

合の速度で定常走行し騒音測定区間で加速ペダルを一杯に踏込み加速走行させ、騒音の最

大値を測定(図-A4.2)

20m20m

7.5m

microphone

騒音測定区間 図-A4.2 定常走行騒音・加速走行騒音の測定方法例

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A4-4

A4.4 自動車等に備える消音器の基準の見直し

交換用マフラーや並行輸入車等に備えるマフラーの規制が強化され、近接排気騒音だけ

でなく、加速走行騒音も有効に防止する性能が新たに求められることになった。

環境省の website (http://www.env.go.jp/council/08noise/y081-08/mat07_1.pdf)および 国土交通省の website (http://www.mlit.go.jp/common/000017831.pdf)を加筆修正

1.経緯 平成 20 年 12 月 18 日:中環審答申

26 日: 国交省による道路運送車両の保安基準関連法令改正 同日、登録性能等確認機関の申請受付開始

平成 21 年 4 月 28 日~9 月 8 日:登録性能等確認機関として 4 者が登録 平成 22 年 4 月 1 日:規制開始(この日以降製作される自動車が対象)

2.規制の概要 (1) 自動車又は原動機付自転車(以下「自動車等」といいます。)について、使用過程

車及び並行輸入車等の非認証車に備える消音器(マフラー)は、「原動機の作動中に

加速走行騒音を有効に防止し、かつ、その性能を損なうおそれのないもの」でなけれ

ばならない。これにより、交換用マフラーや並行輸入車等に備えるマフラーは、近接

排気騒音だけでなく、加速走行騒音も有効に防止する性能が新たに求められることに

なった。 (2) 次の①から⑤までのいずれかに該当するものは、(1)の基準に適合しない。 (⑤が新たに追加された。) ① 消音器の全部又は一部が取り外されているもの ② 消音器本体が切断されているもの ③ 消音器の内部にある騒音低減機構が除去されているもの ④ 消音器に破損又は腐食があるもの ⑤ 消音器の騒音低減機構を容易に除去できる構造その他の騒音防止性能を容易に変

更することができる構造であるもの (3) 次に掲げる消音器であって、(2)①から⑤までのいずれにも該当しないものは、

(1)の基準に適合する。 ① 次のいずれかの表示がある消音器 イ 純正品表示

型式指定自動車等の製作者が当該型式指定自動車等に備える消音器に行う表示 ロ 装置型式指定品表示

道路運送車両法(昭和 26 年法律第 185 号)第 75 条の2に基づき、装置型式指

定を受けた騒音防止装置の一部又は全部である消音器に表示される同法第 75 条の

3第1項の特別な表示 ハ 性能確認済表示

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A4-5

「後付消音器等の性能等を確認する機関の登録規程」に基づく登録を受けた機関に

より、性能等の確認を受けた型式の後付消音器等に表示される「性能確認済表示」 ニ 国連欧州経済委員会規則(ECE 規則)適合品表示

ECE 規則に基づく E マーク表示 ホ 欧州連合指令(EU 指令)適合品表示

EU 指令に基づく e マーク表示 ② 次のいずれかに該当する自動車等が現に備えている消音器 イ 公的試験機関が実施した試験の結果を記載した書面により、別添 40「加速走行騒

音の測定方法」に定める方法により測定した加速走行騒音をdB で表した値が82dB 以下(原動機付自転車にあっては 79dB 以下)であることが明らかである自動車等

(ハに掲げる自動車を除く。) ロ 外国の法令に基づく書面又は表示により、ECE 規則又はこれらと同等の EU 指令

に適合することが明らかである自動車等 ハ 乗車定員が 11 人以上の自動車、車両総重量が5トン以上の自動車、大型特殊自動

車又は小型特殊自動車

関係条項:道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第 40 条第2項、第 118 条第2項、第 196 条

第2項、第 252 条第2項、第 268 条第2項及び第 284 条第2項

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A5-1

付属資料 A5 建物防音

A5.1 地方自治体による行政指導

地方自治体では、道路沿道において集合住宅を建築する事業者に対して建物の防音対策

を指導している(表-A5.1)。横浜市では室内での夜間の騒音レベルが 40 dB 以下、大阪市で

は居室内で昼間 45 dB 以下、夜間 40 dB 以下としている。神戸市および尼崎市では道路に面

する住居の外壁の総合透過損失が 25 dB あるいは 30 dB 以上となるように指導している。総

合透過損失 25 dB は「幹線交通を担う道路に近接する空間」の環境基準を設定する際に考慮

した住宅の室内外音圧レベル差 25 dB(平均値)と同じである。重交通の道路沿道では総合

透過損失 30 dB とされ、屋外騒音が要請限度と同じ(昼間 75 dB、夜間 70 dB)であっても

室内では「屋内へ透過する騒音に係る基準」程度になると考えられる。

表-A5.1 地方自治体における建物防音の指導例

自治体 制 度 名

横浜市 ●集合住宅等の防音対策指導書 道路沿道及び鉄道沿線地域に新築する住宅の室内騒音レベルの目標値を設

定。道路交通騒音:夜間40 dB以下

大阪市 ●大規模建築物の建設計画の事前協議に関する取り扱い要領 一定規模以上の建築物(例えば70戸以上の集合住宅)の建築事前評価制度。 室内LAeqで45 dB(昼間)、40 dB(夜間)以下。

神戸市

●神戸市民の健康の保持及び良好な生活環境の確保のための自動車の運行等

に関する条例(平成14年4月) 指定した幹線道路の道路沿道に集合住宅を建築する場合に、外壁の総合音響

透過損失が25 dBあるいは30 dB以上となるように定めている。

尼崎市 ●尼崎市民の環境を守る条例(平成12年12月) 指定した幹線道路の道路沿道に集合住宅を建築する場合に、外壁の総合音響

透過損失が25 dBあるいは30 dB以上となるように定めている。

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A5-2

A5.2 CASBEE(建築環境総合性能評価システム)による住宅の性能評価・表示制度

CASBEE(建築環境総合性能評価システム)は建築物を環境性能で評価する制度であり、

一種のラベリング制度である。建築物の環境性能を表示することで市場原理により建築物

の格付けを行うことになる。評価は環境性能効率(BEE)により行う。BEE は建築物の環境品

質・性能 Q(Quality)と建築物の外部環境負荷 L (Loadings)により次式で求められる。性能に

優れ負荷が小さいほど高評価となる。

LQBEE

総合評価は BEE、L、Q を用いて行い、S ランク(素晴らしい)、A ランク(大変良い)、

B+ランク(良い)、B-ランク(やや劣る)、C ランク(劣る)の 5 段階で評価する。表-A5.2

は CASBEE の性能評価項目である。環境品質・性能 Q には、Q-1(室内環境)、Q-2(サー

ビス性能)、Q-3(室外環境(敷地内))が取り上げられており、外部環境負荷 L には、LR-1

(エネルギー)、LR -2(資源・マテリアル)、LR -3(室外環境)が取り上げられている。

騒音についてはこれらのうち、Q-1(室内環境)と LR -3(室外環境)に評価項目が設定

されている。環境品質・性能 Q としては、Q-1(室内環境)の音環境のなかで、騒音の項目

として、暗騒音レベル(室内騒音)、設備騒音対策(空調機などの騒音対策・低騒音化)が、

また室内音環境を保全するための遮音の項目として、開口部遮音性能(屋外からの騒音進

入の防止)、界壁障壁(隣室間の遮音)、界床遮音性能(上下界の遮音性能で飛び跳ねや物

の落下・衝突に関する騒音の遮断)が、さらに室内での反射による騒音増加を防止するた

めの吸音がある。また、外部環境負荷 L としては、LR-3(室外環境)のなかで、騒音・振

動・悪臭の防止の項目として、騒音・振動が取り上げられている。道路交通騒音の室内へ

の進入の防止に関連する項目は、Q-1(室内環境)-音環境-騒音の暗騒音レベルと遮音の開

口部遮音性能である。なお、開口部遮音性能については、集合住宅と戸建住宅の両方が対

象となる。

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A5-3

表-A5.2 CASBEE における建築物の環境品質・性能評価項目

(1) 暗騒音レベル (1) 昼光率 (1) 化学物質汚染(2) 設備騒音対策 (2) 方位別開口 (2) 鉱物繊維対策

(3) 昼光利用設備 (3) ダニ・カビ等(1) 開口部遮音性能 (4) レジオネラ対策(2) 界壁遮音 (1) 照明器具のグレア(3) 界床遮音性能 (軽量衝撃源) (2) 昼光制御 (1) 換気量(4) 界床遮音性能 (重量衝撃源) (2) 自然換気性能

(1) 設計照度 (3) 取り入れ外気への配慮(2) 設計照度均斉度 (4) 給気計画

(1) 設備容量 CO2の監視

(2) 負荷変動・追従制御性 喫煙の制御(3) 外皮性能(4) ゾーン別制御性(5) 温度・湿度制御(6) 個別制御(7) 時間外空調(8) 監視システム

1.1 機能性・働きやすさ(1) 広さ・収納性 (1) 耐震性 (1) 階高のゆとり(2) 情報設備への建築・設備的対応 (2) 免震・制振装置による付加価値 (2) 空間の形状・自由さ(3) バリアフリー計画

(1) 外壁仕上げ材の補修必要間隔(1) 広さ感・景観 (2) 主要内装仕上げ材の更新必要間隔 (1) 空調配管の更新性(2) リフレッシュスペース (3) 配管・配線材の更新必要間隔 (2) 給水配管の更新性(3) 内装計画 (4) 主要設備機器の更新必要間隔 (3) 電気配線の更新性

(4) 通信配線の更新性(1) 空調・換気設備 (5) 設備機器の更新性(2) 給排水・衛生設備 (6) バックアップスペース(3) 電気設備(4) 機械・配管支持方法(5) 通信・情報設備

(1) 躯体材料の再利用効率(1) 雨水利用システム (2) 非構造材料の再利用効率(2) 雑排水利用システム 2.2 持続可能な森林から産出された木材の活用

2.3 健康被害のおそれが少ない材料2.4 既存建築躯体などの再利用2.5 非最終処分予想量2.6 フロン・ハロンの回避

(1) 消火剤(2) 断熱材(3) 冷媒

Q-1 室内環境1.音環境 3.光・視環境 4.空気質環境

4.2 換気

1.1 騒音 3.1 昼光利用

2.1 室温制御 3.4 照明制御

1.2 遮音3.2 グレア対策

3.3 照度1.3 吸音

2.温熱環境

4.1 発生源対策

4.3 運用管理

2.2 湿度制御2.3 空調方式

Q-2 サービス性能1.機能性 2.耐用性・信頼性 3.対応性・更新性

3.1 空間のゆとり

2.2 部品・部材の耐用年数 3.2 荷重のゆとり

2.1 耐震・免震

1.2 心理性・快適性 3.3 設備の更新性

2.3 信頼性

Q-3 室外環境(敷地内)1.生物環境の保全と創出 2.まちなみ・景観への配慮 3.地域性・アメニティへの配慮

LR-1 エネルギー1.建物の熱負荷抑制 3.設備システムの高効率化 4.効率的運用2.自然エネルギー利用 3.1 空調設備

3.5 昇降機設備3.6 エネルギー利用効率化設備

4.1 モニタリング1.1 自然エネルギーの直接利用 3.2 換気設備 4.2 運用管理体制1.2 自然エネルギーの変換利用 3.3 照明設備

3.4 給湯設備

LR-2 資源・マテリアル1.水資源保護 2.低環境負荷材の使用

1.1 節水 2.1 資源の再利用効率1.2 雨水利用・雑排水再利用

LR-3 敷地外環境1.大気汚染防止 3.風害、日照障害の抑制

2.1 騒音・振動2.2 悪臭

2.騒音・振動・悪臭の防止 4.光害の抑制5.温熱環境悪化の改善6.地域インフラへの負荷抑制

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A5-4

A5.3 CASBEE における音環境の評価項目

文献 A5.1)を参考に CASBEE - 新築(簡易版)の音環境の評価項目の概要を紹介する。音

環境についての評価は、表-A5.3に示すような建物用途で分類し、用途毎に評価水準(レベ

ル) が定められている。道路交通騒音に関連する項目は、暗騒音レベルと開口部遮音性能

である。

表-A5.3 建物用途による分類

用途区分 略 用途名 含まれる用途

非住宅系

事 事務所 事務所、博物館、庁舎、図書館など

学 学校 各種学校

物 物販店 百貨店、スーパーマーケットなど

飲 飲食店 飲食店、食堂、喫茶店など

会 集会所 公会堂、劇場、体育館、パチンコ店など

工 工場 工場(生産ラインは除く)、観覧場など

住宅系

病 病院 病院、老人ホーム、福祉ホームなど

ホ ホテル ホテル、旅館など

住 集合住宅 (戸建住宅は対象外)

A5.1) 佐久間哲也: 建築物総合環境性能評価システム ( CASBEE ) における音環境評価の現状,

日本音響学会誌, 64.5 ( 2008 ), pp.316-321

1) 暗騒音レベル

室内の暗騒音レベルの評価水準(レベル)を表-A5.4 に示す。評価水準は 3~4 dB 幅で定

められており、騒音に係る環境基準や道路交通騒音の要請限度の刻み幅 5 dB とは異なって

いる。屋内における夜間の環境基準値 40 dB は住居系室内ではレベル 3 が相当する。

表-A5.4 室内の暗騒音レベルの評価水準( レベル )

用途区分 レベル (得点)

用途別評価水準 AL [dB]

建物全体 ・

共用部分

事・病・ホ・工・住 学 物・飲 会

1 50< AL 45< AL 55< AL 40< AL

2 47< AL ≦50 42< AL ≦45 52< AL ≦55 37< AL ≦40

3 43< AL ≦47 38< AL ≦42 48< AL ≦52 33< AL ≦37

4 40< AL ≦43 35< AL ≦38 45< AL ≦48 30< AL ≦33

5 AL ≦40 AL ≦35 AL ≦45 AL ≦30

住居 ・

宿泊部分

病 ホ・住

1 50< AL 45< AL

2 47< AL ≦50 42< AL ≦45

3 43< AL ≦47 38< AL ≦42

4 40< AL ≦43 35< AL ≦38

5 AL ≦40 AL ≦35

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A5-5

2) 開口部遮音性能

開口部遮音性能の評価レベルを表-A5.5 に示す。外壁開口部の遮音性能はサッシの遮音性

能で代表させて評価する。サッシの遮音性能は JIS A 4706「サッシ」に示されており、評価

は T 値で行う。T 値曲線を図-A5.1 に示す。T 値は 5 dB 間隔で定められているが、CASBEE

の評価では 5 dB の差がレベル 2 つに相当する。神戸市では外壁の総合透過損失を 25 dB あ

るいは 30 dB 以上と規定している。一般に建築音響では単一の数値で性能を評価する場合に

500 Hz の値を用いることが多い。総合透過損失を 500 Hz で代表させて考えると、神戸市の

制度はレベル 3 あるいはレベル 5 に相当する。

表-A5.5 開口部遮音性能の評価レベル

レベル (得点)

建物全体・共用部分 住居・宿泊部分 事・学・飲・病・ホ・工・住 病・ホ・住

1 T-1未満 2 - 3 T-1 4 - 5 T-2以上

備考 T-1:500Hz以上で透過損失が25dB以上 T-2:500Hz以上で透過損失が30dB以上

音響透過損失

[dB]

T-4 T-3 T-2 T-1

1/3 オクターブバンド中心周波数 [Hz]

図-A5.1 T 値曲線

3) その他

設備騒音対策は、空調設備や給排水設備などからの発生騒音に対する対策で評価する。

ただし、CASBEE - 新築(簡易版)では設備騒音対策は評価・表示の対象になっていない。

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A5-6

界壁遮音性能は、室間の界壁の遮音性能を室間音圧レベル差により評価する(JIS A 1419-1

「建築物及び建築部材の遮音性能の評価方法 - 第 1 部:空気音遮断性能」)。界床遮音性能

(軽量床衝撃源)は、軽量床衝撃源に対する上下階の界床の遮音性能を軽量床衝撃源(タ

ッピングマシン)に対する床衝撃音の音圧レベルにより評価する(JIS A 1419-2「建築物及

び建築部材の遮音性能の評価方法 - 第 2 部:床衝撃音遮断性能」)。界床遮音性能(重量床

衝撃源)は、重量床衝撃源に対する上下階の界床の遮音性能を重量床衝撃源(タイヤの落

下)に対する床衝撃音の音圧レベルにより評価する(JIS A 1419-2「建築物及び建築部材の

遮音性能の評価方法 - 第 2 部:床衝撃音遮断性能」)。

A5.4 自治体での CASBEE の活用

自治体での CASBEE による評価・表示制度の例を表-A5.6に、提出件数を表-A5.7に示す。

23 の自治体で CASBEE による評価・表示が行われており、平成 22 年度では約 1800 件の提

出があった。

表-A5.6 自治体での CASBEE の活用例

公共団体担当部署 制 度 名

名古屋市 住宅都市局建築指導部建築指導課建築指導

係 建築物環境配慮制度

大阪市 大阪市計画調整局開発調整部規制誘導担当 大阪市建築物総合環境評価制度 (CASBEE大阪)

横浜市 まちづくり調整局建築審査部建築環境課 横浜市建築物環境配慮制度 京都市 環境政策局地球温暖化対策室 特定建築物に係る制度 京都府 地球温暖化対策課 特定建築物排出量削減計画・報告・公表制度

大阪府 住宅まちづくり部建築指導室審査指導課建

築環境・設備グループ 建築物の環境配慮制度

神戸市 都市計画総局建築指導部建築安全課指導係 神戸市建築物総合環境評価制度 (CASBEE神戸)

兵庫県 県土整備部住宅建築局建築指導課 兵庫県建築物環境性能評価制度

川崎市 環境局環境評価室 川崎市建築物環境配慮制度 (CASBEE川崎)

静岡県 県民部建築住宅局建築確認検査室 静岡県建築物環境配慮制度 福岡市 住宅都市局建築指導部建築審査課 福岡市建築物環境配慮制度

札幌市 環境局環境都市推進部エコエネルギー推進

課 札幌市建築物環境配慮制度 (CASBEE札幌)

北九州市 建築都市局建築指導課 北九州市建築物総合環境性能評価制度 さいたま市 建設局 建築部 建築総務課 建築物環境配慮制度 備 考

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A5-7

表-A5.7 自治体での CASBEE の活用状況 A5.2)

(2011年3月末時点)人口* 対象建物の

(千人) 床面積の

下限(m2) H16年度 H17年度 H18年度 H19年度 H20年度 H21年度 H22年度 計

1 名古屋市 2,261 2,000 2004.04.1 148 234 210 229 173 100 152 1,246

2 大阪市 2,653 5,000 2004.10.1 26 72 97 109 73 54 68 499

3 横浜市 3,687 2,000(注1) 2005.07.1 - 93 123 113 102 39 172 642

4 京都市 1,472 2,000 2005.10.1 - 21 104 93 67 63 67 415

5 京都府 2,630* 2,000 2006.04.1 - - 37 45 33 37 43 195

6 大阪府 6,191* 5,000 2006.04.1 - - 60 101 115 108 102 486

7 神戸市 1,542 2,000 2006.08.1 - - 68 136 104 67 75 450

8 兵庫県 4,040* 2,000 2006.10.1 - - 81 162 187 151 162 743

9 川崎市 1,426 5,000 2006.10.1 - - 38 47 40 38 52 215

10 静岡県 3,759 2,000 2007.07.1 - - - 120 222 136 163 641

11 福岡市 1,469 5,000 2007.10.1 - - - 18 37 31 30 116

12 札幌市 1,900 2,000(注1) 2007.11.1 - - - 20 77 32 78 207

13 北九州市 973 2,000 2007.11.1 - - - 5 18 14 18 55

14 さいたま市 1,234 2,000 2009.4.1 - - - - - 44 67 111

15 埼玉県 5,628* 2,000 2009.10.1 - - - - - 43 165 208

16 愛知県 5,142* 2,000 2009.10.1 - - - - - 68 136 216

17 神奈川県 3,932* 5,000 2010.4.1 - - - - - - 59 59

18 千葉市 963 5,000 2010.4.1 - - - - - - 11 11

19 鳥取県 587 2,000 2010.4.1 - - - - - - 13 13

20 新潟市 801 2,000 2010.4.1 - - - - - - 31 31

21 広島市 1,175 2,000 2010.4.1 - - - - - - 58 58

22 熊本県 1,817 2,000 2010.10.1 - - - - - - 29 29

23 柏市 405 2,000 2011.1.1 - - - - - - 8 8

174 420 818 1,198 1,248 1,037 1,759 6 ,654

*人口については、都道府県下の自治体が含まれる場合には、当該自治体の人口を引いた値をその都道府県の人口とした。

(注1) 横浜市と札幌市の下限床面積はH21年度まで5,000㎡超、H22年度から2,000㎡以上。

共団体名 施行日提出状況(件数)

CASBEE 制度における環境品質・性能 Q に占める音環境の割合を表-A5.6 の 14 自治体を

対象として表-A5.8 に整理した。14自治体の全てで建物全体・共用部分については音環境に

ついて定めていた。加えて、名古屋市、大阪市、札幌市、静岡県の 4 自治体で住居・宿泊

部についても音環境の項目を評価に採用していた。音環境が環境品質・性能 Q に占める割

合は、14 自治体のうち大阪市が 4.5%で、他の自治体では 6.0%であった。名古屋市と大阪市

は暗騒音レベルが項目として取り上げられていないが、その代わり遮音の割合が高くなっ

ていた。

A5.2) (財)建築環境・省エネルギー機構: CASBEE 建築環境総合性能評価システム/自治体による CASBEE

の活用

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A5-8

表-A5.8 各自治体の CASBEE 制度における環境品質・性能 Qに占める音環境の割合

名古屋市 大阪市 横浜市 京都市 神戸市 川崎市 福岡市 札幌市 北九州市 さいたま市 京都府 大阪府 兵庫県 静岡県40.000% 40.000% 30.000% 40.000% 40.000% 40.000% 40.000% 40.000% 40.000% 40.000% 40.000% 40.000% 40.000% 40.000% 40.000%

6.000% 6.000% 4.500% 6.000% 6.000% 6.000% 6.000% 6.000% 6.000% 6.000% 6.000% 6.000% 6.000% 6.000% 6.000%2.400% 0.000% 0.000% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400%

(1) 暗騒音レベル 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400%(2) 設備騒音対策

2.400% 4.200% 3.150% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400% 2.400%(1) 開口部遮音性能 1.440% 2.100% 3.150% 1.440% 1.440% 1.440% 1.440% 1.440% 2.400% 1.440% 1.440% 1.440% 1.440% 1.440% 2.400%(2) 界壁遮音 0.960% 1.050% 0.960% 0.960% 0.960% 0.960% 0.960% 0.960% 0.960% 0.960% 0.960% 0.960%(3) 界床遮音性能 (軽量)(4) 界床遮音性能 (重量)

1.200% 1.800% 1.350% 1.200% 1.200% 1.200% 1.200% 1.200% 1.200% 1.200% 1.200% 1.200% 1.200% 1.200% 1.200%40.000% 30.000% 40.000% 40.000%6.000% 4.500% 6.000% 6.000%

0.000% 1.714% 1.714%(1) 暗騒音レベル 1.714% 1.714%(2) 設備騒音対策

4.200% 3.150% 3.000% 3.000%(1) 開口部遮音性能 2.100% 0.945% 0.900% 0.900%(2) 界壁遮音 1.050% 0.945% 0.900% 0.900%(3) 界床遮音性能 (軽量) 0.630% 0.600% 0.600%(4) 界床遮音性能 (重量) 0.630% 0.600% 0.600%

1.800% 1.350% 1.286% 1.286%

住居・

宿泊部

Q-1 室内環境1.音環境

1.1 騒音

1.2 遮音

1.3 吸音

建物全

体・共

用部分

Q-1 室内環境1.音環境

1.1 騒音

1.2 遮音

1.3 吸音

分項目

CASBEE-

新築(簡易)

地方公共団体のCASBEE評価制度における環境品質・性能Qに占める音環境のウエイト

自治体での CASBEE による評価結果の公表データのうち住居の用途の建物の音環境に関

するデータを整理した。住居・宿泊部の暗騒音レベルの全体の平均値は 3.1 であった。これ

は表-A5.9 より、得点 3 に相当するのが[38< AL ≦42dB]であることから、騒音に係る環

境基準の屋内へ透過する騒音に係る基準の夜間の値 40 dB と同程度である。住居・宿泊部の

開口部遮音性能の全体の平均値は 3.8 であった。これは表-6.10 より、サッシの性能として

は T-2(500 Hz 以上で透過損失が 30 dB 以上)に近い遮音性能であり、ほぼ 30 dB の遮音が

期待できる。

表-A5.9 暗騒音レベルの評価水準

用途区分 レベル (得点)

評価水準 AL [dB]

住居 ・

宿泊部分

1 45< AL

2 42< AL ≦45

3 38< AL ≦42

4 35< AL ≦38

5 AL ≦35

表-A5.10 開口部遮音性能の評価水準

レベル (得点) 評価水準 T

1 T-1未満 2 - 3 T-1 4 - 5 T-2以上

備考 T-1:500Hz以上で25dB以上 T-2:500Hz以上で30dB以上

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A5-9

引用文献

A5.1) 佐久間哲也: 建築物総合環境性能評価システム ( CASBEE ) における音環境評価の現状,

日本音響学会誌, 64.5 ( 2008 ), pp.316-321

A5.2)(財)建築環境・省エネルギー機構:CASBEE 建築環境総合性能評価システム/自治体による CASBEE

の活用

Page 88: 道路交通騒音対策の参考資料(平成 6 月) · 2 環境基準の達成状況(平成22年度)1) 1.自動車騒音常時監視の実施状況について 平成22

A6-1

付属資料 A6 FAQ

Q1:山間部においては騒音がこだまして増幅されるのではないか?

A1:洞窟のような閉鎖的な空間では音が多重反射して減衰しません。しかし、山間部での

反射音は、草木や地面により反射時に減衰し、反射後は上方に拡散します。また、反

射音は直達音よりも伝搬経路が長いため大きく減衰します。このため、反射音による

騒音レベルの増加はほとんどありません。

なお、山間部における反射音の影響については、「谷の増幅効果」の事例がないこ

とおよび反射音による増加が 0.2dB との報告例 A6.1)があります。また、谷部で反射音

の寄与が大きい地形条件で直達音に対する反射音の寄与を測定した例 A6.2)を図-A6.1

に示します。反射音による騒音レベルの増加は最大でも約 1 dB でした。騒音計の検

定公差*1よりも小さい程度です。*1: 計量法での普通騒音計の検定公差 1.5 dB

θ= 8° θ= 8°

音源受音点1受音点2

斜面の反射面(表面コンクリート)

斜面の反射面(表面コンクリート)

0 20m

44m70m 51m

24m

19.5m

受音点1M:+0.6 dBT: +0.4 dB

受音点2M:+0.7 dB, T: +0.8 dB

受音点3M:+0.8 dBT:+1.0 dB

測定方法M: M系列変調相関法

T: TSP法

図-A6.1 測定点と測定値

A6.1) 山元一平,横田考俊,佐藤浩久:地形条件が騒音伝搬に与える要因,騒音制御, Vo1.36, No.2,

pp.133-138, 2012

A6.2) 曽根真理,吉永弘志: 山間部における反射音の測定, 第 29 回 日本道路会議,CD-ROM 1031,2011

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A6-2

Q2:エンジン音とタイヤ路面音の寄与はどの程度か?

A2:図-A6.2に示すように車種、走行状態により大きく異なります。

61

92

95

7

45

41

9

50

56

39

8

5

93

55

59

91

50

44

0% 20% 40% 60% 80% 100%

加速走行1)

定常走行1)

乗用車 高速での定常走行(100km/h)

加速走行1)

定常走行1)

中型車 高速での定常走行(100km/h)

加速走行1)

定常走行1)

大型車 高速での定常走行(80km/h) タイヤ騒音

タイヤ騒音以外

中央環境審議会騒音振動部会 自動車単体騒音専門委員会(第8回) (平成22年8月19日)

資料より抜粋

1) 自動車騒音試験方法

(TRAIAS20)による.

図-A6.2 タイヤ騒音の寄与率(標準タイヤ)

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A6-3

Q3:盛土構造区間の一部をコンクリート BOX にすると上を走行する自動車からの音が透過

してくるのではないか?

A3:盛土構造の一部をコンクリート BOX としても上部から透過してくる音の影響はほとん

どありません。

なお、参考までにコンクリート BOX の近くで測定した騒音の事例を図-A6.3 に示し

ます。コンクリ―ト BOX の前 A と盛土区間 B で騒音レベルに差がないことやコンク

リート BOX 内の騒音レベルが小さいことがわかります。

約35mA58.5 dB

C BOX内

54.9 dB

B58.8 dB

約10m約10m

図-A6.3 盛土区間の一部にコンクリートBOX近傍の騒音測定例

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A6-4

Q4:騒音の車種別寄与は?

A4:道路の種別、時間帯により大きく異なります。

なお、国土交通省が管理している道路の傾向を図-A6.4.1 および図-A6.4.2に示します。

図-A6.4.1 騒音の車種別寄与(都市地方別)

図-A6.4.2 騒音の車種別寄与(騒音レベル別、夜間)

(備考)大型車Ⅰ:普通貨物車、特殊用途自動車、乗合自動の大型番号標(車両総重量 8 トン以上等) 大型車Ⅱ: 〃 の中型番号標(車両総重量 8 トン未満等) 二輪車:二輪自動車、原動機付自転車 小型車類:大型車Ⅰ及び大型車Ⅱ、二輪車を除く自動車

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A6-5

Q5:環境影響評価法、道路局長通達、道路環境影響評価の技術手法、および ASJ-RTN Model

の関係は?

A5: 環境影響評価法、道路局長通達および ASJ-RTN Model の関係を図-A6.5(次頁)に

図示します。平成 9 年に成立し、平成 11 年から施行された環境影響評価法 A6.3)(以下、

「アセス法」と略称。)により、一定規模以上の道路、ダム、空港等の 13 種類の事業

については同法で定めた手続きで環境影響評価を行うことになりました。適用される

規模等は、 環境影響評価法施行令 A6.3)で定められており、道路事業においては、高速

自動車国道の新設、長さが 1 km 以上の高速自動車国道の改築、長さが 10 km 以上の

一般国道の新設・改築等とされています。これまでにアセス法の対象となった道路事

業は約 60 です A6.4)。国土交通省では環境影響評価法に基づく環境影響評価における騒

音予測の基本的な手法を「道路事業に関する環境影響評価の実施について」(平成 11

年 6 月 11 日 道路局長)(最終改正:平成 18 年 9 月 30 日)において、(社)日本音響

学会の道路交通騒音の予測モデル(ASJ RTN-Model4.7))によることとしています。

「道路環境影響評価の技術手法」(以下、「技術手法」。)は、アセス法の成立を契機

として大気質、騒音、振動、動植物・生態系等の環境影響評価に関する技術的な知見

をとりまとめたものです。旧土木研究所が平成 12 年に初版を刊行し、以後、国土技

術政策総合研究所および(独)土木研究所が知見の進展に伴う改定を行ってきました。

技術手法においても騒音予測の基本的な手法を ASJ RTN-Model によることとしてい

ます。技術手法はアセス法によらない環境影響評価においても広く活用されています。

A6.3) 法令データ提供システム http://law.e-gov.go.jp/

A6.4) 環境影響評価情報支援ネットワーク http://www.env.go.jp/policy/assess/index.html

4.7) 再掲 日本音響学会道路交通騒音調査研究委員会:道路交通騒音の予測モデル

“ASJ RTN-Model 2008”,日本音響学会誌,Vol.65, No.4, pp.179-232, 2009.

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A6-6

環境影響評価法

道路事業に関する環境影響評価の実施について

(平成9年6月13日法律第81号)(最終改正:平成23年8月30日法律第105号)

道路事業に係る環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針、環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令

(平成10年6月12日建設省令第10号)

(最終改正:平成18年3月30日国土交通省令第20号)

(平成11年6月11日 道路局長)(最終改正:平成18年9月30日)

予測の基本的な手法→音の伝搬理論に基づく予測式による計算

「音の伝搬理論に基づく予測式」

→(社)日本音響学会の道路交通騒音予測モデル(ASJ RTN-Model)

調査、予測及び評価の手法→事業の種類ごとに主務省令で定めるところにより選定

図-A6.5 環境影響評価法による騒音の予測評価の法体系

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A6-7

Q6:電気自動車等の静かな車でどの程度騒音が下がるか?

A6: 下記の文献や動向によるとエンジン系騒音がないまたは小さい自動車の普及等によ

る騒音低減も期待できます A6.5), A6.6), A6.7)。

①ハイブリッド車の増加 A6.8)(図-A6.6 )、

②高速バスの車内騒音が一般の乗合バスよりも 5 dB 小さい A1.2)。

③全ての自動車が低騒音車に転換した想定での騒音減少が約 6 dBA6.9)。

④燃料電池バスの運行例(図-A6.7 )。

国総研では低公害車等の騒音の発生量を構内の試験走路(密粒舗装)で測定しまし

た。乗用車の惰性走行および電気自動車は、公道で測定した一般的な乗用車 4.7)より

おおむね 5 dB 程度小さい値となりました(図-A6.8 )。低公害の中型車も公道で測定

した一般的な中型車 4.7)よりおおむね 5 dB 程度小さい値となりました(図-A6.9 )。

これら 5 dB の差は単にエンジン音だけではなく、路面状態等の現場条件によるこ

とも考えられますが、さらなる自動車の低騒音化により騒音が低減できると期待して

います。

A6.5) http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/2011report/2011nilim77.pdf

A6.6) 吉永弘志, 曽根真理: 自動車の低騒音化による道路交通騒音の低減に関する一考察,

第 38 回環境システム研究論文発表会講演集, pp.233-238,2010.

A6.7) 吉永弘志, 並河良治: 車両の電動化による騒音低減の予測, (社)日本騒音制御工学会研究発表会

論文集, pp.89 - 92, 2008.

A6.8) http://www.cev-pc.or.jp/.

A1.2) 再掲 鴨志田均他:「騒音の目安」作成調査結果と活用について, 騒音制御, Vol.34, No.5,

pp.429-432,2010

A6.9) 渡辺義則, 出口忠義: 電気自動車等の低騒音の車両導入による道路交通騒音の減少について,

土木計画学研究・論文集,No.13, pp. 939 - 947, 1996.

4.7) 再掲 日本音響学会道路交通騒音調査研究委員会:道路交通騒音の予測モデル

“ASJ RTN-Model 2008”,日本音響学会誌,Vol.65, No.4, pp.179-232, 2009.

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A6-8

0

10

20

30

40

50

60

H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20

推定

保有

台数

(万

台)

貨物車等

乗用車+軽自動車

図-A6.6 ハイブリッド車の保有台数(国内)A6.8)

図-A6.7 燃料電池バス (羽田空港リムジンバス)

80

90

100

110

20 70

L WA(d

B)

速度 (km/h)

①国内の平均的な乗

用車4)②惰性走行

(ガソリン1BOX 1)③惰性走行

(ガソリン1BOX 2)④惰性走行

(セダンハイブリッド車)⑤EV(軽乗用 1)

⑥EV(軽乗用 2)

⑦EV(原付四輪 1)

⑧EV(原付四輪 2)

5 dB

図-A6.8 乗用車の定常走行における測定結果

85

90

95

100

105

110

115

20 70

L WA

(dB

)

速度 (km/h)

①国内の平均的な中

型車4)

②ハイブリッド車1

③ハイブリッド車2

(冷蔵冷凍車のため

エンジン大)④天然ガス車1

⑤天然ガス車2

⑥小型貨物車

タイヤ路面音(参考)

5 dB

図-A6.9 中型車の定常走行における測定結果

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付属資料 A7 用語

用語

本資料での記載ページ

簡略した説明 [根拠、引用元等] イメージ図

環境基準法律行政

測定評価

4, 6

 大気の汚染,水質の汚濁,土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について,それぞれ,人の健康を保護し,及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準。[環境基本法]

要請限度(通称)法律行政

測定評価

4, 10

 道路の周辺の生活環境が著しく損なわれると認めるとき,市町村長が都道府県公安委員会に対し、措置を執るべきことを要請する限度。[騒音規制法]

幹線交通を担う道路

法律行政

11

 高速自動車国道、一般国道、都道府県道及び4車線以上の市町村道、並びに自動車専用道路。[騒音規制法に基づく総理府厚生省令]

幹線交通を担う道路に近接する区域

法律行政

11

 2車線以下の車線を有する道路の場合は道路の敷地の境界線から15m、2車線を超える車線を有する道路の場合は道路の敷地の境界線から20mまでの範囲。[騒音規制法に基づく総理府厚生省令]

常時監視法律行政

測定評価

10, 14 都道府県及び政令市が,騒音を測定して環境省に報告すること。[騒音規制法]

幹線道路の沿道の整備に関する法律(通称:沿道法)

法律行政

39

 幹線道路周辺における道路交通騒音による障害の防止と合理的な土地利用を目的とした法律。①土地の取得費用の一部の国による市町村への無利子貸付,② 道路管理者による緩衝建築物の建築費の一部負担,③道路管理者による既存住宅の防音工事費用の助成,および④道路管理者による住宅の移転・除去費用の助成を定めている。

デシベル測定評価

法律行政

A1-1

 デシベル値L は基準量I 0に対するIの比I /I 0からL =10 log10 ( I /I 0 )で計算

した値。

A特性測定評価

法律行政

A1-2 A特性補正は音圧レベルの周波数補正の一種。A特性補正した音圧レベルを騒音レベルという。[JIS C1502]

分野

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

10 100 1000 10000 100000

周波数(Hz)

周波

数重

み特

性(d

B)

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用語

本資料での記載ページ

簡略した説明 [根拠、引用元等] イメージ図分野

等価騒音レベルL Aeq

測定評価

法律行政

A1-5

 ある時間範囲Tについて、変動する騒音の騒音レベルをエネルギー的な平均値として表した量。[JIS Z8731,

ASJ RTN-Model1)]

L A50(中央値) 測定評価

法律行政

A1-5 対象とする時間T の50%にわたって騒音レベルがその値以上となる値。[JIS Z8731]

JIS Z8731測定評価

法律行政

P.7, 12 環境騒音の表示・測定方法を定めたJIS。

除外音処理(通称)

測定評価

7

 環境基準の適用対象外である騒音や、環境基準に基づく騒音の評価の妨げとなる騒音を測定値から除外すること。除外音は、航空機騒音,鉄道騒音,建設作業騒音,鳥の声,マフラー改造による音,パトカーのサイレン等の自動車以外の音や平均的でない音。 [ 騒音に係る環境基準の評価マ

ニュアル2) ]

面的評価測定評価

16

 環境基準の達成状況の道路に面する地域としての評価 [騒音規制法第18条の規定に基づく自動車騒音の状況

の常時監視に係る事務の処理基準3)]

環境施設帯騒音対策

35

 環境施設帯とは、幹線道路の沿道の生活環境を保全するための道路の部分をいい、植樹帯、路肩、歩道、副道等で構成される。[昭和49年4月10日都市局長・道路局長通達]

高架裏面吸音板騒音対策

19高架の裏面での反射音を抑制するための吸音板。

50

55

60

65

70

75

0 20 40 60 80 100

騒音

レベ

ル(d

B)

時間(s)

LA50=60dB

LAeq=65dB

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用語

本資料での記載ページ

簡略した説明 [根拠、引用元等] イメージ図分野

排水性舗装, 低騒音効果のある高機能舗装, 低騒音舗装

騒音対策

31, 21

 排水性舗装は多孔質な表層から浸透させた雨水を直下の不透水層で路側の排水施設に排水させる舗装。透水性舗装とは異なり、路盤以下に水を浸透させない。雨天走行時の安全性向上のほか、タイヤ摩擦音の一部が表層内の空隙に吸収されることにより、道路交通騒音の発生を減少させる等の効果がある。 排水性舗装以外の舗装でも騒音低減効果が確認されている例があるが、一般的には低騒音舗装は排水性舗装

のことをいう。[国土交通省web site4)]

単体規制騒音対策

法律行政

23, A4 自動車一台ごとの排出ガス規制、騒音規制。

ASJモデル、ASJRTN-Model

予測計算

A2-1

 (社)日本音響学会(ASJ)の騒音の予測モデルをASJモデルという。建設工事騒音の予測モデルASJ CN-Modelと道路交通騒音の予測モデルASJ

RTN-Model1)の双方が発表されている。

A 特性音響パワーレベルL W A

予測計算

A2-3

 音源が放射する音響パワー(1 s当たりに放射する音響エネルギー)に周波数重み付け特性Aをかけて評価した量をレベル表示した値(単位:dB)。[ASJ

RTN-Model1)]

ユニットパターン予測計算

A2-2

 道路上を1台の自動車が走行したとき、一つの予測点(観測点)における騒音レベルの時間変化のパターン。

[ASJ RTN-Model1)]

回折補正量ΔL d予測計算

A2-5 遮音壁などの音響障害物による回折に伴う減衰に関する補正量。[ASJ

RTN-Model1)]

4) 国土交通省用語解説ページhttp://www.mlit.go.jp/yougo/j-h1.html

1) 日本音響学会道路交通騒音調査研究委員会:道路交通騒音の予測モデル“ASJ RTN-Model 2008”, 日本音響学会誌,Vol.65, No.4, pp.179-232, 2009.

2) 騒音に係る環境基準の評価マニュアルhttp://www.env.go.jp/air/noise/manual/index.htm

3) 平成23年9月14日 環境省水・大気環境局長: 「騒音規制法第18 条の規定に基づく自動車騒音の状況の常時監視に係る事務の処理基準」

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付属資料 A8 道路交通騒音関係の情報源

道路交通騒音に関連する情報源の概要を下記に示す。多くはインターネットで入手可能。

1) 電子政府 e-GOV

法令データ提供システムは、「法令」のキーワードで検索してアクセス可能。

2) 環境省

自動車騒音の website は「環境省」、「自動車騒音」で検索。

環境影響評価法の website は「環境省」、「環境影響評価法」で検索。

3) 学会

a) 社団法人 日本音響学会

音声、聴覚、騒音・振動、建築音響、電気音響、音楽音響、超音波、音響化学、および

アコースティックイメージングの研究者が参加する学会。研究発表会、各種の講習会、セ

ミナーを開催している。学会が発表した ASJ RTN-Model は、「道路環境影響評価の技術手法」

にも転載している。ASJ RTN-Model は一部で「騒音・振動研究委員会」での発表論文を引

用している。論文は日本音響学会の website から購入可能。DVD も販売されている。ASJ RTN-Model に関する音響技術セミナーは年1回程度開催されている。

b) 公益社団法人 日本騒音制御工学会

騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り、もって生活環境の保

全と向上に寄与することを目的として 1976 年(昭和 51 年)に設立した環境省所管の社団

法人。全体の研究発表会、「騒音対策の基礎と考え方」「騒音・振動技術の基礎と測定実習」

「騒音・振動の苦情処理」等の技術講習会を毎年開催している。

4) 主な研究機関

a) 特例財団法人 小林理学研究所

物理学の基礎及び応用研究を指向する研究所として発足。現在は主として騒音振動を研

究している。

b) 大学

多くの大学で騒音に関する研究が行われているが、東京大学生産技術研究所、千葉工業

大学および九州大学での研究例が多い。

上記以外にも、名城大学、新潟大学、独立行政法人交通安全環境研究所、独立行政法人

産業技術総合研究所、株式会社高速道路総合技術研究所、国土交通省国土技術政策総合研

究所等の研究機関において研究されている。

5) 騒音計

リオン株式会社、スペクトリス株式会社(ブリュエル・ケアー・ジャパン)、株式会社小

野測器、株式会社アコー等の製品が販売されている。

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おわりに

騒音が課題になっている道路は物流等の役割が大きい道

路でもある。その機能を維持しつつ、騒音を低減させること

は容易ではなく、道路管理者でできる対策は限られている。

このため、通行するドライバーに静かな運転を心がけてもら

うことや道路管理者の願いを住民の方に理解していただく

ことも大切である。

最後にそのような啓発に資する横断幕を提案する。

横断幕の(案)