信頼性試験・不揮発性メモリ評価装置高周波エレクトロマイグレーション評価システムのご紹介...

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特集: 信頼性試験・不揮発性メモリ評価装置� 技術レポート� Sn-Ag-Cu系鉛フリーはんだの信頼性に及ぼす要因� 1 技術解説� 不揮発性メモリの動向と評価装置� 7 トピックス� 高周波エレクトロマイグレーション評価システムのご紹介� 13

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  • 特集:�信頼性試験・不揮発性メモリ評価装置�

    技術レポート�

    Sn-Ag-Cu系鉛フリーはんだの信頼性に及ぼす要因� 1

    技術解説�

    不揮発性メモリの動向と評価装置� 7

    トピックス�

    高周波エレクトロマイグレーション評価システムのご紹介� 13

    表1出力 02.6.18 1:59 PM ページ 1

  • 1 エスペック技術情報 No.30

    技術レポート�

    青木 雄一* 田中 浩和* 片柳 寛子**�

    1. はじめに�

    Sn-Ag-Cu系鉛フリーはんだの使用にあたって、温度サイクル試験と高温放置試験を行い、接合強度による信頼性評価を実施した。今回は接合強度劣化要因の調査のため、Sn-3.5Ag-0.75CuとSn-2Ag-0.75Cu-3Biについて解析を行った。解析方法は、はんだ組織および接合界面合金層変化を、SEMによる組織観察、EPMAによる元素分析で行った。その結果、はんだ組織の変化は、Ag3Snのネットワーク構造が変化する。また、信頼性試験後の強度劣化は、合金層の異常成長と関係することがわかった。�

    *技術開発本部 信頼性研究室 �**エスペック環境試験技術センター株式会社 宇都宮試験所�

     近年、鉛フリーはんだの接合信頼性に関する研究が多数報告されており1)~6)、Sn-Zn系はんだなどの実用化に関する報告も行われている。当社においても、Sn-Ag-Cu系の鉛フリーはんだを対象として、製品の鉛フリーはんだ化を推進してきた。これに先立ち、評価基板によるQFPパッケージについて、温度サイクル試験と高温放置試験後の接合信頼性を確認した。その結果については、すでに過去のエスペック技術情報(No.23、24号)で報告してきた。本報告では、それに加えて、鉛フリーはんだの界面組織と接合強度に着目し、強度低下の要因を解析したので報告する。�

    2. 実験方法�

     Sn-Ag-Cu系鉛フリーはんだの接合強度が、信頼性試験後に低下する要因を調べた。はんだ材料と、信頼性試験条件を表1、2に示す。比較する試料として、総合的に優れていたSn - 3 . 5Ag - 0 . 7 5Cuと、融点を下げるために用いたSn-2Ag-0.75Cu-3Biを分析対象とした。部品めっきの種類はSn-Pb(Sn-10Pb)めっき、Pd(パラジウム)めっきの2種で行った。� 評価基板は、内部をディージーチェーン接続した100ピンタイプのQFPパッケージを実装したものを用い、温度サイクル試験(冷熱衝撃試験器 TSA-100S-W、エスペック製)、高温放置試験(恒温器 PHH-200、エスペック製)を実施した。接合強度については、評価基準としてSn-Pb共晶はんだを用いた。接合強度試験方法は基板に対して、角度45度にて一定速度(20mm/min)で引っ張り、破断時の最大荷重を測定した。�

    Sn-Ag-Cu系鉛フリーはんだの信頼性に及ぼす要因�

    表1 はんだ材料�

    3. 結果と考察�

    3-1 接合強度�

     接合強度の試験結果を図1に示す。Sn-PbめっきとSn-2Ag-0.75Cu-3Biの組み合わせでは、温度サイクル、高温放置いずれの試験でも時間経過にともない、強度が著しく低下した。一方、Pdめっきにおいては、はんだの種類による強度の大きな違いはなかった。� 接合強度試験後の破断形態を図2に示す。多くの試料は、リードとはんだの接合界面からの剥離で破断するが、Sn-2Ag-0.75Cu-3BiとSn-Pbめっきの組み合わせでは、高温放置、および温度サイクル試験後に、ランドとはんだの接合面から剥離するものが多く見られた。これは強度測定値からも推察されるように、高温放置、温度サイクル試験によるSn-2Ag-0.75Cu-3BiとSn-Pbめっきの強度低下と関係があると考えられる。�

    3-2 Sn-Ag-Cu系鉛フリーはんだの実装後のはんだ組織�

     Sn-Pbめっきにおける、Sn-3.5Ag-0.75Cu、Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi�についてSEMによる微細組織観察を行った。試験前後の微細組織の変化を図3に示す。Sn-Ag系鉛フリーはんだでは、Ag3Sn粒子がSnを網目状に取り巻くネットワーク構造を形成することが知られているが、いずれの試験でも試験経過にともない、Ag3Snのネットワーク構造は初期と比較すると崩れはじめ、粒状のAg3Sn相が目立つようになっていることが確認された。Ag3Snは高温放置されても容易に粗大化しないが1)、温度サイクル試験によってネットワーク構造の微細組織が粒状成長することも報告されている2)。しかしながら本試験結果で見られるクラックのほとんどは界面から発生しており、粒状のAg3Snの影響は少ないと考えられる。�

    ①�

    ②�

    ③�

    はんだ材料(mass%)�

    Sn-3.5Ag-0.75Cu�

    Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi�

    Sn-37Pb(基準)�

    融点(℃)�

    216~220�

    205~218�

    183

    表2 信頼性試験条件�

    試験項目�

    温度サイクル試験�

    高温放置試験�

    試験条件�

    -40℃/125℃(各30分)、2000サイクル�

    125℃、2000時間�

    技術レポート 02.6.18 10:49 AM ページ 1

  • 2エスペック技術情報 No.30

    図1 接合強度の試験結果�

    図3 Sn-Ag-Cu系鉛フリーはんだの微細組織の変化�

    (a)リフロー後(初期)�

    (b)温度サイクル試験2000時間後�

    図2 Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi(Sn-Pbめっき)の接合強度試験後の破断形態�

    (a)Sn-3.5Ag-0.75Cu 初期� (d)Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi 初期�

    (b)Sn-3.5Ag-0.75Cu�高温放置2000時間後�

    (e)Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi�高温放置2000時間後�

    (c)Sn-3.5Ag-0.75Cu�温度サイクル2000サイクル後�

    (f)Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi�温度サイクル2000サイクル後�

    10μm�

    サイクル数�

    (a)温度サイクル試験(Sn-Pbめっき)�

    00

    2

    4

    6

    8

    10

    500 1000 1500 2000

    強度(N)�

    サイクル数�

    (b)温度サイクル試験(Pdめっき)�

    00

    2

    4

    6

    8

    10

    500 1000 1500 2000

    強度(N)�

    時間(h)�

    (c)高温放置試験(Sn-Pbめっき)�

    00

    2

    4

    6

    8

    10

    500 1000 1500 2000

    強度(N)�

    時間(h)�

    (d)高温放置試験(Pdめっき)�

    00

    2

    4

    6

    8

    10

    500 1000 1500 2000

    強度(N)�

    Ag3Snのネットワーク構造�

    Sn-3.5Ag-0.75Cu

    Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi

    Sn-37Pb

    Sn-3.5Ag-0.75Cu

    Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi

    Sn-37Pb

    Sn-3.5Ag-0.75Cu

    Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi

    Sn-37Pb

    Sn-3.5Ag-0.75Cu

    Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi

    Sn-37Pb

    リード�

    リード�

    ランド�

    ランド�

    はんだ�

    はんだ�

    Ag3Sn

    Ag3Sn

    技術レポート 02.6.18 10:49 AM ページ 2

  • 3 エスペック技術情報 No.30

    �3-3 接合界面合金層の成長�

     はんだとCuパッドの接合界面について解析を行った。Sn-Ag-Cu系鉛フリーはんだの接合界面は、Sn-Pb共晶はんだと同様に、SnとCuによる合金層が形成される。図4に合金層のEPMA*1(JXA-8100:日本電子製)分析結果を示す。合金層はCu6Sn5とCu3Sn の2重層であり、信頼性試験により合金層が成長したことを確認した。�

    3-4 接合界面の元素分布�

    図6からわかるように、Sn-Pbめっきにおける合金層の成長は高温放置が要因として影響すると考えられる。また、Sn-2Ag-0.75Cu-3BiとSn-Pbめっきの反応層が著しく成長したことから、その要因を調べるため、Sn-PbめっきのSn-3.5Ag-0.75Cu、Sn-2Ag-0.75Cu-3Biについて、初期と高温放置試験125℃2000時間についてEPMAによる分析を行った。結果を図7(p.4)、図8(p.5)に示す。�

    (a)Snマップ像�

    (b)Cuマップ像�

    図4 Sn-Pbめっき(Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi 高温2000時間後)の合金層マップ像�

    図6 接合界面合金層の成長速度�

    図5 Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi合金層の成長の様子�

     合金層の成長は、はんだの接合信頼性に大きな影響を及ぼす。そこで合金層の層厚を測定し、経時変化を調べた。時間経過により成長した合金層の層厚は、平坦な状態で成長せずに、図5に示すように不均一に成長する。これは、液相からの凝固過程における成長の寄与によると報告されている3)。そこで、層厚を画像処理により平均化した。その結果を図6に示す。なおグラフ上の温度サイクル試験の経過時間は、1サイクル=1時間としてプロットしている。� Pdめっきでは、合金層の成長は時間の平方根にほぼ比例関係にあり、拡散律速*2と考えられる。一方、Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi とSn-Pbめっきの合金層は著しく成長していた。この原因は、Sn、Pb、Bi三元素による低融点共晶組成に近くなるためと報告されているが4)、 Sn-3.5Ag-0.75Cuについ

    ても比較的成長が加速しており、Sn-3.5Ag-0.75CuとSn-Pbめっきとの組み合わせによっても、合金層は成長しやすくなることを示唆する。� 温度サイクル試験では、ひずみストレスにより強度低下の要因となり、試験中に破断を引き起こす可能性がある。一方、高温放置試験では機械的ストレスがないため、試験中に破断する可能性は低いが、振動などの要因によっては機械的ストレスになることも報告されている5)。�

    (a)初 期� (b)2000サイクル後� (c)2000時間後�

    試験時間の平方根(√h)�

    (a)Sn-3.5Ag-0.75Cu

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    7

    0 10 20 30 40 50

    合金層厚さ(μm)�

    試験時間の平方根(√h)�

    (b)Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    7

    0 10 20 30 40 50

    合金層厚さ(μm)�

    Cuリード�

    Cuパッド�

    はんだ�はんだ�

    Cu3Sn

    Cu3Sn

    Cu6Sn5

    Cu6Sn5

    合金層�合金層�

    Sn-Pbめっき(高温放置)�

    Pdめっき(温度サイクル)�

    Sn-Pbめっき(温度サイクル)�

    Pdめっき(高温放置)�

    Pdめっき(高温放置)�

    Sn-Pbめっき(高温放置)�

    Pdめっき(温度サイクル)�

    Sn-Pbめっき(温度サイクル)�

    2000h

    1000h500h250h

    2000h1000h

    500h250h

    Sn  ― 10 μm�

    Cu  ― 10 μm�

    技術レポート 02.6.18 10:49 AM ページ 3

  • 4エスペック技術情報 No.30

    図7 Sn-Pbめっきにおける初期の元素分析マップ像�

    はんだ種類� Sn-3.5Ag-0.75Cu Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi

    反射電子像�(SEM像)�

    Pbマップ像�

    Biマップ像�

    Snマップ像�(拡大)�

    Pbマップ像�(拡大)�

    Biマップ像�(拡大)�

    CP  ― 20 μm�

    Pb  ― 20 μm�

    Bi  ― 20 μm�

    Sn  ― 10 μm�

    Pb  ― 10 μm�

    Bi  ― 10 μm�

    CP  ― 20 μm�

    Pb  ― 20 μm�

    Bi  ― 20 μm�

    Sn  ― 10 μm�

    Pb  ― 10 μm�

    Bi  ― 10 μm�

    Cuリード�

    はんだ�

    Cuパッド�

    Cuリード�

    はんだ�

    Cuパッド�

    界面合金層�

    技術レポート 02.6.18 10:49 AM ページ 4

  • 5 エスペック技術情報 No.30

    図8 Sn-Pbめっきにおける高温放置試験2000時間後の元素分析マップ像�

    はんだ種類� Sn-3.5Ag-0.75Cu Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi

    反射電子像�(SEM像)�

    Pbマップ像�

    Biマップ像�

    Snマップ像�(拡大)�

    Pbマップ像�(拡大)�

    Biマップ像�(拡大)�

    CP  ― 20 μm�

    Pb  ― 20 μm�

    Bi  ― 20 μm�

    Sn  ― 10 μm�

    Pb  ― 10 μm�

    Bi  ― 10 μm�

    CP  ― 20 μm�

    Pb  ― 20 μm�

    Bi  ― 20 μm�

    Sn  ― 10 μm�

    Pb  ― 10 μm�

    Bi  ― 10 μm�

    Cuリード�

    はんだ�

    Cuパッド�

    Cuリード�

    はんだ�

    Cuパッド�

    界面のPb濃化層�

    界面のPb濃化層�

    技術レポート 02.6.18 10:49 AM ページ 5

  • 6エスペック技術情報 No.30

    � 図7に示すように、Sn-3.5Ag-0.75Cu、Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi、どちらのはんだも初期では合金層が薄く、Pbは一様に、はんだ中に分布している。しかし、図8に示すように、高温放置試験2000時間後では、合金層がいちじるしく成長し、Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi接合部のPbが合金層界面に濃化層*3を形成している。これは合金層がSnの化合物であり、成長にともなって界面近傍のSnを奪っていくために、Pbが濃化すると考えられる4)。Biは3%で添加量としては少量ではあるが、図7、8からわかるように、BiはPbとともに濃化層を形成していると思われる。したがって、Sn-Pb-Biの低融点共晶組成に近い組成になり1)、高温放置試験によって液相が生じ、合金相が著しく成長したと考えられる。Sn-3.5Ag-0.75Cuでは、Biが存在しないために、合金層界面にPbの濃化層はそれほど目立たない。また、接合信頼性においては、界面に存在するBiが応力吸収を阻害し、界面への応力集中を高める作用から6)、いっそうの強度低下をもたらすことも考えられる。�

    4. 結論�

     Sn-Ag系鉛フリーはんだに対して、温度サイクル試験と高温放置試験を行い、接合信頼性における要因を解析した結果、以下のことがわかった�1)Ag3Snのネットワーク構造が高温放置の効果によりやや崩れかけており、粒状のAg3Sn相の変化が大きく見られるが、はんだ強度には影響を及ぼしていない。�

    2)高温放置によって界面合金層の成長を加速することができ、Pdめっきについては、時間の平方根にほぼ比例関係となり、拡散律速に成長していた。一方、Sn-2Ag-0.75Cu-3BiとSn-Pbめっきの組み合わせでは、合金層が著しく成長するため、温度サイクル、高温放置試験ともに顕著な強度低下を示した。�

    1)菅沼克昭、中村義一:「Sn-Ag共晶はんだとCuの接合界面の微細組織と強度」、日本金属学会誌、59、P.1299-1305、(1995)�2)荘司郁夫、森 史成、藤内伸一、山下 勝:「Sn-Ag系Pbフリーはんだを用いたマイクロ接合部の熱疲労組織」、エレクトロニクス実装学会誌4〔2〕、�  P.133-137、(2001)�3)菅沼克昭:「鉛フリーはんだ付け技術」、工業調査会、(2001)�4)今村武史、藤井俊夫、廣瀬明夫、小林紘二郎:「Sn-Ag系鉛フリーはんだを用いたQFPの継手強度に及ぼす界面反応の影響」、Mate2001、P.481-486、� (2001)�5)青木雄一、田中浩和、浜野寿之:「複合環境試験によるはんだ接合部評価方法の検討」、第15回エレクトロニクス実装学術講演大会、P.183-184、(2001)�6)中原祐之輔、二宮隆二、松永純一、竹本 正:「Sn-3.5Ag-3In-xBiはんだの機械的性質と接合強度」、Mate99、P.341-346、(1999)�

    〔参考文献〕��

    [用語解説]�

    *1. EPMA( Electoron Probe Microanalyzers)�電子線を試料に照射すると、元素に固有な波長を持つ特性X線を発生する。これを検出することで、元素分析を行う。特に、波長分散型では微細かつ高感度な分析が可能。�

    *2. 拡散律速(diffusion-controlling)�化学反応などの速度過程が、物質の拡散速度によって支配される状態をいう。�

    *3. 濃化層�本報告では、金属の拡散または粗大化などによって、単一元素の濃度が増した層を示す。�

    技術レポート 02.6.18 10:49 AM ページ 6

  • 7 エスペック技術情報 No.30

    1. はじめに�

    技 術 解 説 �

    矢野 功* 荻野 亮一*�

    不揮発性メモリの動向と評価装置�

    情報インフラの充実やPDA(Personal Digital Assistance)など携帯情報端末の応用分野が拡大している。これらのトレンドに向けて半導体メーカの開発競争も一層熾烈になっている。中でも電源が無くなっても記憶内容を保持できる不揮発性メモリに関する関心は高く、各種メモリが開発されている。不揮発性メモリの試験装置には、自由度の高い評価機能と高速処理が望まれている。当社では、不揮発性メモリの研究開発から量産までの試験、検査用の装置を提供しているので紹介する。�

     移動型情報機器の応用分野が広がり、不揮発性メモリに対する関心が高まっている。実用化で先行しているフラッシュメモリでは、セル構造を簡素化して低コスト化を図るためにMONOS構造*1への転換や大容量化のための多値化技術、高速書込みのためのセル構造の提案などが相次いでいる。� フラッシュメモリ以外の新しい不揮発性メモリ分野としてFeRAM、MRAM、OUMなどの開発競争が激しくなっている。� FeRAMではHigh-K*2と呼ばれる新しい材料を用いるため、素材の評価としてTDDB(酸化膜経時破壊)試験の必要性がある。また、不揮発性メモリとして、何回の書き換えができるかを評価するエンデュランス試験、データの書き換わりがないかを評価するディスターブ試験、データリテンション試験などの評価が重要とされている。これらの基礎評価は、テスターを用いて行われるが品質管理としての多数個評価において安価な評価装置が望まれている。� 当社では、不揮発性メモリの研究開発段階の素材評価装置、品質管理としての多機能高速処理が可能な評価試験装置、そして大量デバイスの検査装置をラインナップしている。�

    2. 不揮発性メモリの動向�

    *計測・テストシステム事業部 システム技術部�

    1

     不揮発性なら電源を入れて機器の状態を保持しておく必要がないため、未使用時はオフにして消費電力を抑えられる。このことは環境にもやさしいことにつながる。また、パソコンのインスタントオンが実現できるなど機器の利用形態が向上し、応用範囲の拡大が期待できるため、さらなる市場規模の拡大が見込める。さらに、ロジックとの混載が容易であればワンチップ化によって性能が一気に向上する。メモリがDSPやマイクロプロセッサと同じチップ上で通信でき、広帯域化と高性能化を達成できる。さらに、メモリをチップ上に集積すると低電圧、低消費電力になる。これらの結果1μW当りのMIPS値で3~5倍改善できるという報告がある。これらがDRAM並みの性能、価格を実現できれば4兆円を超える巨大なマーケットが発生する。� 従来の半導体不揮発性メモリとしては、MROM、PROM、UV-EPROM、EEPROMが使われていた。これらは、TAT(Turn Around Time:データの書き換えに要する時間)が長く、高速動作、低コスト、大容量といった市場ニーズに応えられるものではないため用途が限られていた。� 近年フラッシュメモリの低コスト、大容量化などもあり、携帯電話、デジタルカメラ、デジタル録音機、MP3の音楽�

    表1 各種メモリの機能比較�

    不 揮 発 性 メ モ リ� 揮 発 性 メ モ リ�

    フラッシュメモリ� FeRAM MRAM OUM SRAM DRAM

    読み出し� 中 高 速� 中 速� 中 速�高 速� 高 速� 高 速�

    書き込み� 低 速� 中 速� 中 速�高 速� 高 速� 高 速�

    集積度� 多値化技術に期待� 悪 い� 限界に近い�期 待 大� 期 待 大� 悪 い�

    論理回路との混載� 複雑→MONOSで改善� 可� 複 雑�可� 可� 可�

    低電圧動作� 不 可� 限 界 あ り� 限 界 あ り�可� 可� 可�

    動作電流� 10~100mA 10mA以上� 100mA10mA以上� 10mA以上� 10~80mA

    実用化� 実 用� 小容量で実用� 実 用�開 発 中� 開発中 2005年� 実 用�

    製造・研究�メーカ�

    富士通・日立・東芝�三菱・シャープ�サムソン�

    インテル・AMD

    富士通・日立・東芝・松下�NEC・ローム・サムソン�インフィニオン・ラムトロン�

    TI・ハイニックス�

    ラムトロン・ハイニックス�サムソン・インフィニオン�

    IBM・インフィニオン�モトローラ・NEC�サムソン・HP

    インテル・STマイクロ�エレクトロニクス�

    NEC・サイプレス�東芝・日立�など�

    不揮発性� あ り� 中 間� な し�あ り� あ り� な し�

    リフレッシュ� 不 要� 不 要� 必 要�不 要� 不 要� 不 要�

    セル面積� 4~8F2� 20F2� 10F2�20F2� 10F2� 40F2�

    書き換え回数� 105~6 1012~15 制限なし�1015 1013 制限なし�

    技術解説1 02.6.18 11:28 AM ページ 7

  • 8エスペック技術情報 No.30

    (1)フラッシュメモリ�

    ①フラッシュメモリとは�電気的に書き換え可能なEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)を一括消去にして高集積と低コストを実現したもので、利用範囲が広がっている。�フラッシュメモリセルは、図1に示すようにCG(Control Gate:制御ゲート)とシリコン基板との間にFG(Floating Gate:浮遊ゲート)を設けた2重ゲート構造からなるMOSトランジスタである。FGの電荷の蓄積量によってメモリセルに電流を流し始めるCGのしきい値電圧が異なり、論理データを記憶することができる。FGに電子を電気的に注入、もしくは放出した後で電源を切っても、FG内の電子は保持されるため、不揮発性メモリとなる。�FGへの電荷の蓄積方法やセル構成によって各種フラッシュメモリがある。表2にNOR型とNAND型/AND型の比較を示す。�

    (2)MRAM�

    MRAM(Magneto resistive Random Access Memory)は、不揮発性で低電圧動作、高い書き換え耐性、DRAM並みの高速性と高集積化が期待できるメモリとして注目されている。MRAMではトンネル磁気抵抗(TMR:tunneling magneto-resistance)効果を示すトンネル接合(MTJ:magnetic tunnel junction)構造をメモリセルとして用いる。これは磁化方向によって抵抗値が大きく変化する原理を利用している。書き込みでは磁化の有無によって抵抗値を制御し、読み出しでは磁化抵抗による電流値によって'1 'と '0 'を判定する。�TMR素子*3は微細化しやすく、DRAM並みの高速性、書き換え耐性が期待できる。MR比(抵抗値の変化量)を大きくできる材料やセル構造の開発に注力されている段階で、2005年頃には実用化されると言われている。�

    (3)FeRAM�

    DRAMのキャパシタは、微細化に伴い、蓄積電荷量が小さくなり、限界が見えてきている。そこでHigh-Kと呼ばれる高誘電率を持つ素材が注目され、FeRAMとして期待されている。現在の技術ではセルの微細化が難しいという課題がある。�当面はメモリカードやゲームへの応用が考えられる。�

    (4)OUM(Ovonic Unified Memory)�

    光ディスクの記録原理を半導体メモリとして応用したもので、書き込みでは印可する熱の制御によって結晶とアモルファスに状態を変化させることで抵抗値が変化する。読み出しは、電流変化によって'1'と'0 'を判定する。2005年の実用化が目標になっている。�

    ③NAND型/AND型フラッシュメモリ�消去・書き込みともFN電流によって行い、書き込み電流が小さく、複数バイトの同時書き込みが可能である。ランダムアクセスはできないが、書き込み・消去速度が速く、大容量が容易である。ファイルメモリ用途として、音楽録音、デジタルスチルカメラ、小容量ハードディスクの置き換えなどの用途が広がっているが、さらなる低価格化が期待されている。�

    図1 フラッシュメモリのデータ保持�

    表2 NOR型とNAND型/AND型の比較�

    録音など用途が急速に拡大している。この傾向は、携帯機器に対するさらなる機能性能向上の期待感を生み、そのキーデバイスとして不揮発性メモリが注目されている。� 不揮発性メモリには、低コスト、大容量、高速アクセス、書き換え耐性、低消費電力、ロジックとの混載のしやすさなどが期待されている。表1に各種メモリの機能比較を示す。�

    ②NOR型フラッシュメモリ�書き込み(電子の注入)は、ホットエレクトロン(シリコン表面から酸化膜へのエネルギー障壁を越えることができる電子)によって行う。消去は、FN(Fowler Nordheim)電流によって行う。書き込み電流が大きいため1バイト単位での書き込みしかできない。�ランダムアクセスが可能なため、従来はコード記憶用としてEPROMの置き換えやパソコンのBIOS記憶用として用いられていたが、携帯電話への用途が急拡大している。�消去・書き込み速度が遅いため改善提案がなされている。また、セル構造から、大容量化の限界が見えてきたので、MONOS構造などセル構造の見直しも行われている。�

    NOR型� NAND型/AND型�

    メリット� ・ランダムアクセスが速い� ・書き込み、消去が速い�

    用 途�

    コードメモリ用途�

    音楽配信 MP3�デジタルカメラ、ビデオ�

    携帯電話・ゲーム�従来のEPROMの置き換え�

    ファイルメモリ用途�

    デメリット� ・書き込み、消去が遅い�・ランダムアクセスが遅い�・バイト毎の書き込みができない�

    初期状態�

    ソース� ドレイン�

    P

    n+ n+

    書き込み状態�

    ソース� ドレイン�

    P

    n+ n+

    CG

    FG

    技術解説1 02.6.18 11:28 AM ページ 8

  • 9 エスペック技術情報 No.30

    図2 セクター消去動作の時間測定例�

    図3 Vt分布測定例�

    3-2 ディスターブ試験�

     消去/書き込みは、BL(Bit Line)とWL(Word Line)によって選択されたセルに対して行われる。しかし、BLとWLに接続された選択セル以外にもバイアス電圧が印加されることで、電子トンネルなどのトラップが発生してしきい値電圧Vtが変化してしまい、選択セル以外のセルのデータが書き換わってしまう。� WLとBLへの印加電圧を外部から制御できるテストモードを備えたデバイスにおいて、印加電圧を制御してデータの変化を評価する。�

    3-3 Vt分布測定�

     セル毎の電荷蓄積量を全セルに対して測定することで、セルの劣化状態を把握する。センスアンプの比較電圧を外部から制御できるテストモードを備えたデバイスにおいて、比較電圧を変化させて、読み出しデータが'0 'から'1 'に変化するビット数を電圧毎に積算することで分布をとる。�図3にVt分布測定例を示す。�

    3-4 バッドブロック管理�

    3-5 過消去�

     FGにある電子をFN電流で放出する場合に、過剰な放出が行われるとFGに正孔(正電荷)が残ることになり、しきい値電圧Vtが変化してしまい、正常な書き込みができなくなる。�

    3-6 データリテンション�

     FGから電子の抜けが起こることで、データが変わってしまう。この要因としては、セルへの高電圧印加によるFGの帯電やゲート酸化膜の欠陥がある。�

     NAND型/AND型フラッシュメモリでは、多数のブロックに分割しての消去・書き込みが可能なようになっているが、歩留まり向上のため規定した不良のブロック数以下であれば良品としている。この不良ブロックはフラッシュメモリ制御ソフトにより、良品ブロックと入れ替えて利用することになる。� 品質評価においては、バッドブロックが規定した数量以下であることを判定し、不良ブロックには、アトリビュートエリア(予備のメモリ)に良否情報をインプリントできる機能が必要になる。�

    3. フラッシュメモリの故障モードと評価技術�

    3-1 エンデュランス試験�

     エンデュランス(データ書き換え耐性)は、書き込み/消去の繰り返し動作に対して何回まで正常にデータを書き換えできるかを試験するものである。セルのしきい値電圧Vtが、電気的な書き換えのストレスによって変化してしまうことにより書き換えができなくなる。この評価試験には、下記の2種類がある。�(1)E/W(Erase/Write)サイクル試験�

    フラッシュメモリの書き換え回数は、106回程度であるが、MRAMなどでは、1015回となる。サイクル毎にダミー時間があると試験時間が大幅に増大してしまうので、試験装置としては、無駄のない高速書き換えのサイクル試験のできることが望まれる。�

    (2)動作時間測定�

    フラッシュメモリの書き込み/消去動作は、デバイス内部の制御回路によって規定のしきい値電圧(Vt)になるまで繰り返しの動作を行う。�この動作時間は、チャージ動作の繰り返し回数で決まりセルの劣化によって長くなる。この書き込み/消去時間を測定すればセルの劣化特性を把握することができる。図2に時間測定例を示す。�

    動作時間�

    (S)�

    E/W回数(回)�

    10

    5

    0101 102 103 104 105

    ビット数�

    電圧(V)�

    1.5 2.5 4.0 6.0

    書込� 消去�

    技術解説1 02.6.18 11:28 AM ページ 9

  • 10エスペック技術情報 No.30

    4-3 フラッシュメモリテスト装置(RBM-F3)�

     フラッシュメモリを主体にしたメモリ対応の量産用モニターバーンイン装置。NAND型、AND型では、16個同時測定を実現し、高速モニター試験が可能である。バッドブロック制御をハードウェアで行うことで高速処理を実現している。また、インプリント制御、マスターROMなどの機能もあり、テスターでは時間のかかる試験をバーンイン装置に移管できる性能・機能を有しており、テストコストの削減が可能である。�

    4-4 ウェーハバーンイン装置(WBD-03)�

     DRAM、SRAMなどのメモリにおいて量産ラインに導入されている。今後は,フラッシュメモリのバーンインにも利用が拡大されようとしている。バッドブロック制御にも対応可能である。� 携帯機器用のスタックタイプのフラッシュメモリでは、カスタム対応品が増えており、パッケージ後ではテストコストの増大が問題になっている。解決策として、ウェーハバーンインへの移行が強まると予測される。�写真2にWBD-03のシステム外観を示す。�

    写真2 ウェーハバーンイン装置(エスペック製 WBD-03)�

    バーンインテスタ�バーンインテスタ�

    テストヘッド�テストヘッド� プローバ�P8XL�UF200S

    プローバ�P8XL�UF200S

    5. 不揮発性メモリ評価装置�(新製品 RBM-F25シリーズ)�

     本装置は、フラッシュメモリやFeRAMなどの不揮発性メモリやシステムLSIなどのロジック系デバイスへの混載メモリを対象に、高速に評価試験を行うモニターバーンインシステムである。� 写真3(p.11)にRBM-F25のシステム外観、表3(p.11)に基本仕様を示す。�

    写真1 TDDB評価システム(エスペック製 AMM-1000)�

    4-1 半導体パラメータ自動評価システム�  (AMM-1000:写真1)�

     現在、フラッシュメモリのトンネル酸化膜はSiO2(シリコン酸化膜)を使用している。0.1μm以降のプロセスではこのトンネル酸化膜厚は10Å以下となり従来のシリコン酸化膜ではリーク電流が増大し使用できなくなる。酸化膜に変わる高誘電率膜の新材料を大量に評価する必要がある。� AMM-1000では、最大200チャンネルの一括評価が可能であり、大量のTDDB(酸化膜経時破壊)評価を安価に短時間に行うことが可能である。�

    4. 試験装置の紹介�

     不揮発性メモリの試験に対応できる当社装置を紹介する。�

    4-2 フラッシュメモリE/Wサイクル試験装置�(RBM-F2)�

     1993年に初号機を開発して以来、NAND型、AND型、NOR型、SPIシリアル、I 2Cシリアル、各種フラッシュカード、エンベデットタイプなど、さまざまなフラッシュメモリの評価技術と、各社への納入実績に基づくノウハウが蓄積された装置である。� フラッシュメモリの評価では、エンデュランス試験として、消去、書き込みの時間を測定してセルの劣化特性を評価する。また、セルごとのしきい値(Vt)分布測定を行うことでも評価する。フラッシュメモリでは、DFT(Design For Test)の考え方が当初から用いられ、コマンドや高電圧印加によってテストモードを設定することで、容易に評価用のBIST(Built In Self Test)が利用できるようになっている。�

    技術解説1 02.6.18 11:28 AM ページ 10

  • 11 エスペック技術情報 No.30

    図4 評価対象デバイス�

    (2)各種システムLSIの試験�

    最大32MWのベクタデータ発生とモニター機能により、システムLSIのモニターバーンイン試験を大量かつ高速に行うことができる。�ベクタジェネレータ*4とメモリパターンジェネレータ*5の両方の機能を持っており、同時に動作することも可能で、ロジックとメモリの混載デバイスの試験に対応できる。�JTAG*6機能の利用では、最大10MHzのテストサイクルでの試験が可能である。�マスターROM機能を用いて、TOC動作のデータを転送することができ、柔軟なベクタデータ発生機能により、BISTに対応することが可能である。�図4に評価対象デバイスを示す。�

    (3)フレキシブルな構成�

    進歩の著しいデバイスに対応するために、PG基板のパターン発生機能・制御機能およびドライバ基板の制御機能をフィールドでバージョンアップすることが可能である。�ドライバ基板には,自由度の高い2MBのワークメモリがあり、評価試験のデータ保存として利用可能である。これらにより、未知のデバイスの評価試験に柔軟に対応できる。�現状では、書き込み・消去の時間測定、バッドブロック管理、Vt分布測定、フェイルビット数カウントなどをハードウェア制御で高速に実現している。�

    (4)評価試験と量産試験�

    RBM-F25は、1枚1ゾーン構成で、各種評価試験を高速に行う。RBM-F25XはN枚1ゾーン構成の量産試験に対応している装置である。操作性、テストプログラム作成は共通であり、評価試験から量産試験まで対応できる自由度を持っている。�図5,6にシステム構成図を示す。�

    写真3 不揮発性メモリ評価装置(エスペック製 RBM-F25)�

    表3 RBM-F25基本仕様�

     システムLSIでは、多様なベクタデータの発生機能とクロック信号発生機能でテストを行い、モニター機能によりテスト結果を判断することが可能である。� フラッシュメモリでは、複雑なアルゴリズムを発生できるパターン発生機能と高速なバッドブロック管理機能などにより、テスターでのテスト機能の移管が可能である。また、FeRAMやMRAM、および新しく開発される不揮発性メモリのテストに対応できるように、拡張性と柔軟性をコンセプトとして開発した装置である。この装置の特徴を説明する。�(1)各種フラッシュメモリのE/Wサイクル試験�

    NOR型・NAND型・AND型など、各社各様のフラッシュメモリに対応したE/Wサイクル試験を大量かつ高速に行うことができる。�RBM-F2装置の上位互換で、RBM-F2装置のバーンインボード、テストプログラムを利用して評価試験をさらに高速に行うことが可能である。�バッドブロック管理機能、Ready/Busy信号制御機能により、効率的な試験が可能である。また、マスターROM機能により、大量のROMライタとして出荷時のデータを書き込むことが可能である。�

    項 目� 仕 様�

    最大テストサイクル� 10MHz、オンザフライ30

    電源装置� 2/オプション4

    電源電圧� 1~10V/10A、1~13V/5A

    ドライバch数� 114ch/オプション4ch 内モニター数64ch

    ドライバ電圧� VIH :1~6V、VIHH :1~13V/4ch

    OCP,OVPクロックエラー検出�あり�

    ベクタメモリ� 64ビット×標準8MW、最大32MW

    同測数� 8/4個�

    アドレス発生� 32/28

    データ発生� 16

    EPROM

    EEPROM

    MRAM

    OUM

    FeRAM

    フラッシュ�メモリ�

    不揮発性�メモリ�

    システムLSI�(BIST、BOST、TOC)�

    フラッシュカード�MMC、SD、ATA�メモリスティック�スマートメディア�

    NOR型�

    シリアル型�

    NAND型�AND型�

    特長・用途:�MP3、DSC、DVC�大容量・低価格�高速ブロック読み出し��

    特長・用途:�携帯・ゲーム�ランダムアクセス�

    技術解説1 02.6.18 11:28 AM ページ 11

  • 12エスペック技術情報 No.30

    図5 評価用システム構成図 RBM-F25

    図6 量産用システム構成図 RBM-F25X

    (5)自己診断機能�

    DUT電源の電圧出力や電流測定機能、波形出力、モニター機能、メモリチェックの自己診断が特別な診断ボートなしに可能で、定期的な診断が、容易に短時間で実現できる。�

    (6)バーンインチャンバーの集中管理�

    1台のホストコンピュータで、最大8台のバーンインチャンバーを集中管理することができる。�

    6. まとめ�

     不揮発性メモリでは自由度が高く、高速な評価装置が望まれている。大量の評価データを高速処理でき、また新たな機能にも対応できる柔軟性、拡張性を考え、お客様のご要望に最適な装置開発を行い提供したいと考えている。�

    1)「MRAM技術 基礎から応用まで」、サイペック㈱�2)日経マイクロデバイスセミナー、「不揮発性メモリ技術最前線」、(2001.12)�3)日経マイクロデバイス、(2002.2,3)�4)日経エレクトロニクス、(2001.2,9)�5)半導体産業新聞、「新たな段階を迎えたフラッシュメモリの全貌」、(2001.7)�

    〔参考文献〕��

    [用語解説]�

    *1. MONOS構造(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)�FG(Floating Gate:浮遊ゲート)構造では、小型化しようとすると欠陥が発生してこれ以上の微細化に対応できない。そこで、電荷蓄熱部をFGから窒化膜に変更したMONOS構造が注目されている。メモリセルの小型化、製造工程削減などの利点がある。�

    *2. High-K�電荷蓄積量が大きい素材。強誘電体メモリ素材としてはY1、PZTなどがある。小型化できるとともに、不揮発性の利点がある。�

    *3. TMR素子(Tunneling Magnet Resistive)�強磁性体層の間に絶縁膜を成膜したもの。片方の磁性体の磁化方向を変更することで、抵抗値が変化する。(書き込み)電流を流して電圧の大小で'1'、'0'を判断する。抵抗値変化が大きい素子が必要となる。�

    *4. ベクタジェネレータ�ロジックデバイスをテストするためのランダムなパターンを発生させる。�

    *5. メモリパターンジェネレータ�メモリデバイスをテストするための各種パターンを発生させる。�

    *6. JTAG(Joint Test Action Group)�4本の制御信号と1本のモニター信号からなり、シリアルデータでデバイス内部のレジスタを制御して機能試験を行い、試験結果のモニターで良否判断する。BIST、DFTの考え方の浸透で注目されている。�

    K=�4πε0 ε0=誘電率�1

    Ethernet RS-232C

    3台 max

    T/U ♯1

    ドライバ�

    電源�

    PG

    T/U ♯32 max

    ドライバ�

    電源�

    PG

    IEEE�1394

    プリンタ�

    UPS

    サーバ�パソコン�WIN-NT

    C/CS/C�パソコン�WIN2000

    チャンバー�

    Ethernet RS-232C

    ♯1♯1 ♯32 max

    ドライバ�

    電源�

    PG ドライバ�

    電源�

    ♯1♯8 max ♯32 max

    ドライバ�

    電源�

    PG ドライバ�

    電源�

    プリンタ�

    UPS

    サーバ�パソコン�WIN-NT

    C/CS/C�パソコン�WIN2000

    チャンバー8台 max

    IEEE�1394

    技術解説1 02.6.18 11:28 AM ページ 12

  • 13 エスペック技術情報 No.30

    1. はじめに�

     集積回路の信頼性を評価する手法の一つとして、高温、高電流密度のストレス印加状態で配線の寿命を加速試験する「エレクトロマイグレーション評価試験」があります。� エレクトロマイグレーション評価システムは、温度ストレス印加部、電気的ストレス印加部および計測部を組み合わせて、多数個のサンプルを一度に評価できるようにした信頼性評価システムです。� 当社では、エレクトロマイグレーション評価システムとして、DC評価専用のAEM-D100、AC/DC両用のAEM-1000のラインナップがありましたが、「より高速なパルス電流」のご要求にお応えするため、この度「高周波エレクトロマイグレーション評価システム AEM-HF」を開発いたしました。(写真1)�

    3. 特長�

     本システムには、次のような特長があります。�①ストレスとして、最速20MHzのACパルス電流の印加が可能です。Duty比を、10~90%まで10%単位で可変できます。�②電流源はTEG(Test Elements Group:サンプル)毎に独立しています。チャンネルごとに電流源をカスタムIC化することにより、高機能化と小型化を同時に実現しています。�③試験毎に、ACパルス電流、DCパルス、DC定電流ストレスが選択可能です。�④ダイレクトヒートボード(DHB)方式を採用しています。ヒートボードをTEG上面に接触させ試験温度を与える方式です。350℃までの試験が可能であるため、Cu配線に対応した評価が行えます。�⑤AC用電流プローブをTEGソケット下部に装備し、実際に印加されている電流の波形確認が容易に行えます。(チャンバー1台につきプローブ1台装備)�⑥従来の当社システムの操作性を踏襲しています。アーキテクテャー・操作性については、可能な限り従来システムを踏襲し、当社従来システムをお使いのお客様に、違和感の感じさせないシステムになっています。�

    2. エレクトロマイグレーションの現象と�  高周波の要求�

     エレクトロマイグレーションは、LSI配線などの微細配線に対して電流を印加すると、配線材料である金属原子が電流により電流方向に移動するという現象です。金属原子の移動による配線の断線や、移動した原子による隣接する配線とのショートというような故障が発生します。エレクトロマイグレーションを発生させる要因は、配線の電流密度が高いことであり、温度が高いと加速されます。配線の微細化に伴い、配線の電流密度が高くなってきているため、この評価は重要なものとなってきました。� 実際には、LSIは非常に速いパルス周波数で動作しています。しかし、ストレスとしてACパルス電流での評価はこれまであまりされておらず、DC電流印加での評価がほとんどでした。ACパルス電流印加では両方向に原子の移動が起るため、DC電流印加より寿命が延びると考えられていますが、最近のさらなる微細化、高密度化、高速化の要求によりAl配線からCu配線への移行、多層配線、Low-K膜(低誘電率膜)の使用など、プロセスの変化により、実動作に近いという観点からの評価が求められています。新しいプロセスで使われる絶縁膜が放熱を妨げ、配線の自己発熱により、熱に起因する故障が発生しないか、また多層配線により、絶縁膜がキャパシタとして働き、不具合が発生しないかなどの懸念に対して、実使用に近いACパルス電流による検証がより必要となっております。�

    高周波エレクトロマイグレーション�評価システムのご紹介�

    石川 稔* 遠山 恵一**�

    *計測・テストシステム事業部 システム技術部�**      同      システムインテグレートグループ��

    写真1 高周波エレクトロマイグレーション評価システム(エスペック製 AEM-HF)�

    DHBチャンバー� コントロールラック�

    TOPICS 02.6.18 10:50 AM ページ 13

  • 14エスペック技術情報 No.30

    4-1 システム仕様と構成およびブロック図�

     本システムの主な仕様を表1に、ブロック図を図1に示します。�

    4-2 ACパルス電流出力波形�

     実際の電流出力波形について、図2に波形の仕様、図3に実際の測定波形を示します。�

    ・Windows NTは米国マイクロソフト社の登録商標です。�

    図2 波形の仕様例�

    図3 実測波形�

    図1 システムブロック図�

    表1 主な仕様�

    型 式� AEM-HF

    ソフトウェア� OS:Windows NT

    ACパルス電流印可範囲�

    0.1mA~30mA(正負側とも)�電流値の設定分解能�3mAレンジ:0.01mA(10μA)�30mAレンジ:0.03mA(30μA)�

    ACパルス周波数� 100kHz~20MHz(最小パルス幅25ns)�

    設定Duty比範囲� 10%~90%(10%レンジの設定)�

    その他ストレス電源� DCパルス定電流・DC定電流(オプション)�

    測定精度� ±0.2%(印可電流1mA/100Ω測定時)�

    システム外法�DHBチャンバー� W1066×H 670×D 745mm

    システム�コントローラ部�

    W 530×H1800×D1100mm

    試験TEG数�10もしくは20TEG(DHBチャンバー1台)�チャンバー3台まで増設可能�

    試験温度範囲� +70~+350℃(温度分布±7℃:+350℃時)�

    電源電圧設備� AC200V 20A(DHBチャンバー1台)�AC100V 15A(コントロールラック部)�

    4-3 留意していただきたいこと�

     高周波電流でエレクトロマイグレーション評価を行う場合、TEGの作りこみには注意が必要です。交流を印加するため、ストレス電流は、TEGのインダクタンス成分またはキャパシタンス成分の影響を受けます。最近のプロセスでは、多層配線構造、絶縁膜などが、TEGの設計仕様によっては、インダクタンス成分またはキャパシタンス成分の発生する可能性があり、試験目的に応じてそれらを考慮することが必要です。�

    5. おわりに�

     今回、電流ストレスでACパルス電流、それも20MHzという高周波のストレスが印加できる装置をご紹介しました。関連システムとして、350℃の高温下で、Low-K膜の絶縁劣化特性を評価することができるLow-K膜絶縁劣化特性評価システム(BTS)も開発いたしました。Low-K膜の評価に、ぜひご利用ください。� これからもお客様のご期待にお応えできる「物作り」を展開してまいりますのでご期待ください。�

    ●お問い合わせ先�

     最寄りの当社営業所まで、お気軽にお問い合わせください。�

    TEGボード部のソケット上に抵抗器を取り付け、電流プローブを使用してオシロスコープで波形データを取得したものです。� (�(�

    4. 高周波エレクトロマイグレーション評価システム�

    ホストPC

    システムコントローラ部�

    ・試験管理ソフト:ユーザ・インタフェース�・統計処理ソフト:データ処理�

    GP-IB メジャーメント・コントローラ�

    ・試験スケジュール管理�・測 定�・チャンバー制御�

    PMS-CA

    E-BUS

    ヒートボード�

    TEGボード:�20ソケット(20CH)�

    CH1

    CH20

    パターンジェネレータ�

    スキャナー�

    直流定電流発生器�

    電圧計(マルチメータ)�

    f=10MHz、Ⅰ=±10.0mA、R=100Ω 純抵抗�

    50ns

    10mA

    DHBチャンバー�

    許容差は上下対称�

    公称値�許容差�

    f=10MHz、Ⅰ=±10.0mA、R=100Ω 純抵抗�

    10ns

    20ns40ns

    50ns

    110%�105%�95%�

    10mA

    TOPICS 02.6.18 10:50 AM ページ 14

  • ・発行日……2002年7月1日発行(年4回発行)�

    ・発 行……エスペック株式会社�

          大阪市北区天神橋3-5-6 〒530-8550�

    �●本誌に関するお問い合わせは� エスペック株式会社「エスペック技術情報」編集室まで� お申し付けください。 �TEL.06-6358-4511�FAX.06-6358-5505 �Eメール http://www.espec.co.jp/mailto.html

    http: / /www.espec.co. jp/

    エスペック技術情報�

    ETRJ030

    ・本誌からの無断転載、複製はご遠慮ください。�・本誌は再生紙および大豆油インクを使用しています。��◯C 2002 ESPEC CORP.

    E S P E C H o m e P a g e

    表4出力 02.6.18 11:08 AM ページ 1