試験問題 詳説 - keio universityishigure.appi.keio.ac.jp/maxwell2018/exam2-solution2.pdf2 >...

15
1 試験問題 詳説 I. 最も基本的で重要な項目。ベクトル解析の教科書を参考に、知識を完全なものにしておくこと(1)(2)(3)(4)は、完全に記憶しておくこと。 ・今の段階でも、スカラーの勾配 f はベクトル、ベクトルの発散 A はスカラーであることを理解し ていない学生がいることは、残念。 ・(1)の解答で、 x y z A A A + + は不正解をした。問題ですでに、 x A y A z A は、 ベクトルの成分と定義している。 x A で微分を表すこともあるが、この場合には不可。 (5)は、電場と電位との関係、クーロンの法則を理解するのに必要な計算。 2 1 1 r r r =− r = − E 0 1 (, ,) 4 q xyz r = 2 0 1 4 q r r = r E II. (1) まず、 内側の正方形の各辺、あるいは、頂点に存在する電荷につ いて考える。 原点 P から等距離に、同じ大きさの電荷が対になって いる。重ね合わせの原理から、その各々の対がつくる電場は打消し あうため、原点 P の電場はゼロになる。 同様に、外側の正方形については、“ y 軸上の 2q および 4q 以外の電荷による電場は、内側の正方形の場合と同様に、ゼロで ある。 今、“ y 軸上の電荷 2q および 4q 存在する点を各々、点 Q1、 Q2 とすると、その位置ベクトル1 2 3 , 3 Q Q d d = =− r j r j 、一方、原点 P の位置ベクトルは、 0 P = r 前問 I.(6)参考にして、 1 2 (3 ) 3 , (3 ) 3 P Q P Q d d d d = =− = −− =+ r r 0 j j r r 0 j j これと、クーロンの法則、および、前問 I(6)より2q および 4q が原点につくる電場は、 1 2 2 2 0 0 1 1 1 4 2 2 0 0 2 2 1 2 1 2 ( ) 4 4 (3) 1 4 1 4 ( ) 4 4 (3 ) P Q q P Q P Q P Q q P Q P Q q q d q q d = = = = + r r E j r r r r r r E j r r r r 重ね合わせの原理より

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1

試験問題 詳説

I. 最も基本的で重要な項目。ベクトル解析の教科書を参考に、知識を完全なものにしておくこと。

(1)(2)(3)(4)は、完全に記憶しておくこと。

・今の段階でも、スカラーの勾配 f はベクトル、ベクトルの発散Aはスカラーであることを理解し

ていない学生がいることは、残念。

・(1)②の解答で、 x y zA A A+ + は不正解をした。問題ですでに、xA 、 yA 、

zA は、

ベクトルの成分と定義している。xA で微分を表すこともあるが、この場合には不可。

(5)は、電場と電位との関係、クーロンの法則を理解するのに必要な計算。

2

1 1

r r r

= −

r

= −E

0

1( , , )

4

qx y z

r

= ⇔

2

0

1

4

q

r r

=

rE

II.

(1) まず、内側の正方形の各辺、あるいは、頂点に存在する電荷につ

いて考える。原点 Pから等距離に、同じ大きさの電荷が対になって

いる。重ね合わせの原理から、その各々の対がつくる電場は打消し

あうため、原点 P の電場はゼロになる。

同様に、外側の正方形については、“ y 軸上の 2q− および 4q− ”

以外の電荷による電場は、内側の正方形の場合と同様に、ゼロで

ある。

今、“ y軸上の電荷 2q− および 4q− ” が存在する点を各々、点 Q1、 Q2 とすると、その位置ベクトルは

1 23 , 3Q Qd d= = −+r j r j 、一方、原点 P の位置ベクトルは、 0P =r

前問 I.(6)を参考にして、

1 2(3 ) 3 , ( 3 ) 3 P Q P Qd d d d− = − = − − = − − = +r r 0 j j r r 0 j j

これと、クーロンの法則、および、前問 I(6)より、 2q− および 4q− が原点につくる電場は、

1

2 2 2

0 011

1

4 2 2

0 022

1 2 1 2( )

4 4 ( 3 )

1 4 1 4( )

4 4 (3 )

P Q

q

P QP Q

P Q

q

P QP Q

q q

d

q q

d

−− −= = −

−−−

−− −= = +

−−

r rE j

r rr r

r rE j

r rr r

重ね合わせの原理より

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2

2 4 2

0

2

0

2

0

2 2

0 0

1 1( 2 )( ) ( 4 )( )

4 (3 )

1 ( 2)( 1) ( 4)( 1)

4 (3 )

1 (2 4)

4 (3 )

1 2

4 (3 ) 18

q q q qd

q

d

q

d

q q

d d

− −= + = − − + − +

= − − + − +

= −

= − = −

E E E j j

j

j

E j j

(2)積分形のガウスの法則から電場の閉曲面 Sに関する表面積分は閉曲面 Sに囲まれる体積 V中に存在する電

荷の総量に比例する。すなわち、

0 0

0

1 1( 3 ) ( ) ( 2 ) ( 3 ) ( ) ( 2 )

8

S V

S

d dV q q q q q q

qd

= = + + − + + + + + − + +

=

E S

E S

(3)問題に対称性がないため、電場が球面上で一定とならない。したがって、

24S

d r E E S である。

*単に“電場が一定とならない”という解答は、不可。“球面上で”あるいは“面 S上”という文言が必要。

(4)点 Qj(位置 ベクトル jr )に存在する電荷 jq が、点 P(位置ベクトル r )につくる電位は、

0

1( )

4

j

j

j

q

R

=r (II-4-1)

ただし、 , , j j j jR x y z= − = − = + +R r r r r r i j k

*前問 I(5)参照のこと。この場合、

jR は電荷の存在する点から、電位を求める点に

向かうベクトルで、大きさは両者の距離。

この問題では、双極子電荷、すなわち、

2個の電荷が存在し (j=1,2)、

点 Q1 12

d= +r i 電荷 q−

2

2 2

1 1 1 1, 2 2

d dx y z R x y z

= − = − + + = − = − + +

R r r i j k r r (II-4-2)

図 II-2

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3

点 Q2 22

d= −r i 電荷 q+

2

2 2

2 2 2 2, 2 2

d dx y z R x y z

= − = + + + = − = + + +

R r r i j k r r (II-4-3)

* 電荷の符号が、演習問題とは逆であることに注意

上の式(II-4-1)に、(II-4-2)、(II-4-3)を代入

12

0 12 2

22

0 22 2

( ) 1( )

4

2

( ) 1( )

4

2

q q

R dx y z

q q

R dx y z

− −= =

− + +

+ += =

+ + +

r

r

(II-4-4)

重ね合わせの原理から

1 22 2

0 02 2 2 2

1 1( ) ( ) ( )

4 4

2 2

q q

d dx y z x y z

− += + = +

− + + + + +

r r r

2 20

2 2 2 2

1 1 ( )

4

2 2

q

d dx y z x y z

= − + + + − + +

r (II-4-5)

二つの電荷の距離に比較して、十分遠い位置 x d を考えると、次式が成り立つ。

22 2 2 2 2 2

2 2 2

2

2

22 2 2 2 2 2

2 2 2

( / 2)4

1

( / 2)4

dx d y z x xd y z

x xd y z

xdr

r

dx d y z x xd y z

x xd y z

+ + + = + + + +

+ + +

= +

− + + = − + + +

− + +

2

2 1

xdr

r

= −

(II-4-6)

さらに、式(II-4-6)で二つの電荷の距離に比較して、十分遠い位置(2r x d )、に対しえは、次

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4

の式が成り立つ。

22 2 22

2 2

1 1 1 1 11

2( / 2)1 1

xd

r rxd xdx d y zr r

r r

= +

− + + − −

(II-4-7a)

22 2 22

2 2

1 1 1 1 11

2( / 2)1 1

xd

r rxd xdx d y zr r

r r

= −

+ + + + +

(II-4-7b)

ヒント:Taylor展開により、 1X のとき、

1 1( ) 1

21f X X

X=

式(II-4-7a および b)で2

xdX

r= と考えれば、十分はなれた点では、

2r x d より 1X 。

式(II-4-7aおよび b)を式(II-4-5)に代入して、

2 2

0

3

0

1 1 1 1( ) 1 1

4 2 2

( )4

q xd xd

r r r r

q xd

r

= − − +

= −

r

r

(5)1枚の無限平板に、一様に電荷が表面電荷密度 で分布している場合の電場は、

02E

=

*プリント第 II編 p.47 §3.4.2 参照のこと

これと重ね合わせの原理を用いる。今、 02

あたり、1本の電気力線を対応させることにすると

問題では、電気力線の本数は、以下の図のようになる。

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5

電気力線1本あたり、電場の大きさ 02

E

= に相当するから、各本数に

02E

= をかけると以下に

なる。また、その方向も図から明らか。

(5)領域 A

0

5( )

2

= −E i

or 0

5

2

= −E i

領域 B

0

3

2

=E i

領域 C

02

=E i

領域 D

0

5

2

=E i

III

(1)① この円筒導体の単位長さ(1m)あたりの側面の面積BS は、

(高さ1m)×(円周の長さ2 b )=2 b

面電荷密度=(全電荷)/(面積)= 2

BQ

b

②“軸”対称性

③ および z 。ただし、軸対称性という場合、 方向の一様性をいうのが一般的なので、 のみでも

○とした。また、この問題では、電場の z 方向成分は、持たない。

他、解答例参照のこと。

(2)積分形のガウスの法則より、

0S

Qd

= E S (III-2-1)

ここで、Qはガウスの積分面 S 内部の全電荷量。ただし、問題の対称性から、積分面は図のように半径

( )r b r c 、高さ1mの円筒面と上下の二つの円で囲まれる面を選ぶ。このとき、積分面内部にある

のは導体 A と導体 B であるが、問題の条件から導体 B の電荷のみを考慮(*注)すればよい。導体 B

の表面には単位長さあたり BQ の電荷が存在するから、

BQ Q= (III-2-1)

このとき、電場は r 方向成分しか持たないので、上下の円についての面積分がゼロ。

側面の面積分のみが残り、対称性から側面上で電場は一様である。したがって、

2 BCS

d rE = E S

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6

0

0

2

2

BBC

BBC

QrE

QE

r

=

=

*注1:導体中に電流が流れていると、電流を担う電荷を考える必要があると考えるかもしれないが、

一般に、導体の電流を担うのは、電子であるが、もともと電気的中性であり、等しい量の正電

荷が存在する。従って、基本的には導体中には、正味の電荷は存在しないと考えてよい。ただ

し、導体を電場中に持ち込み、十分時間が経過すると、いわゆる誘導電荷が導体表面近傍に現

れる。ここでは、その影響を簡単のため無視している。詳細は、秋学期の“応用電磁気学同演

習”で取り上げる。

*注2:上のように高さ1m の円筒面と上下の二つの円ではなく、高さ h の円筒面と上下の二つの円

を積分面として選んだ場合には、円筒面(側面)の面積は 2 2cylinderS r h rh = = 、積分面の

内部には、r単位長さあたりの電荷量が BQ であるから、 BQ h。したがって、答えは同じ。

2 BCS

d rhE = E S ⇒ 0

2 BBC

Q hrhE

= ⇒

0

2

BBC

QE

r =

(3) 次に導体 B より内側の領域(a r b )の電場の大きさ AE を考える。

(2)と同様に半径 ( )r a r b の積分面を考える。このとき、この積分面の内部

には題意から、電荷が存在しない。(上記(2)注1も参照のこと)

0

02

0

A

A

rE

E

=

=

さらに、導体 C より外側の領域(c r d )での電場 CE を考える。上と同様に、半径 ( )r c r d

の積分面を考える。このとき、積分面内部の全電荷は、 B CQ Q− であるから、

0

0

2

1

2

B CC

B CC

Q QrE

Q QE

r

−=

− =

(4)一般に、電位は“単位電荷を電場による力さからって、点 Pから点 Qまで移動するのに要する仕事”に

よって定義される。単位電荷に働く力は、 =1Cq q= → =F E F E

したがって、この問題で求める電位は、導体 C上の点 P から、

Q

PW d= − E r (III-4-1)

から計算できる。積分の前の負号は、力に“逆らって”ということを数学的に表している。

この問題で求める電位は、導体 B と導体 C とにはさまれる領域(b r c )における任意の点 rの電

位。ただし、導体 C ( )r c= を基準に選ぶから、式(III-4-1)の積分の上限および下限は、各々、r

およびcにとる。このとき、

r

cW d= − E r (III-4-2)

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7

このとき、(3)から電場は、 r方向成分しか持たない。ここで、電場と電位の関係

= −E (III-4-3)

式(III-4-3)を式(III-4-2)に代入すると

( ) ( )r r r

c c cW d d d r c = − = = = − E r r (III-4-4)

* 以下の関係を用いた。きわめて重要!

( ) ( )

d d

d dx dy dzx y z

dx dy dzx y z

d

=

= + + + +

= + +

=

r

r i j k i j k

(III-4-5)

ベクトル解析のテキスト p.68-71 全微分参照のこと!

一方、前問(2)より、半径 ( )r b r c における電場は

0

1

2

Br

Q

r=E e

これから、

0 0

0 0 0

1

2 2

[log ] (log log ) log2 2 2

r r rB B

r rc c c

rB B Bc

Q Q drW d dr

r r

Q Q Q rr r c

c

= − = − = −

= − = − − = −

E r e e

0

( ) ( ) log2

BQ rr c

c

= − (III-4-6)

* 基準の値を ( ) 0c = に選んだ場合には、

0

( ) ( ) log2

BQ rr c

c

= − これも正解とした。

故に、導体 Bと導体 Cとの電位差は、 r b= として

0

( ) ( ) log2

BQ bb c

c

− = −

または、

0

( ) ( ) log2

BQ cb c

b

− =

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8

(5)問題の対称性から、積分形のアンペールの法則を用いることができる。

0 eC

d d = B r j S (III-5-1)

閉曲線 Cは、z 軸を囲む半径 r(0 r a )の円にとる。

まず、式(III-5-1)左辺の線積分は、 B =B e 、d rd =r e 、また、Bは閉曲線 C 上(積分路)

上で一定であるから

左辺=2 2

0 0( ) ( ) 2

Cd B rd Br d rB

= = = B r e e (III-5-2)

一方、式(III-5-1)右辺の電流密度の面積分は、

電流密度 2

0( ) [1 ( / ) ]e r j r a= −j kおよび 面積ベクトル d rdrd=S k より

2 2

0 0

22

00 0

[1 ( / ) ] ( ) [1 ( / ) ]

[1 ( / ) ]

eS S S

r

d j r a rdrd j r a rdrd

j r a rdr d

= − = −

= −

j S k k

(III-5-3)

まず、上式(III-5-2)の最初の “r” についての積分は

2 2

0 0 20 0 0

2 4 2 4

0 02 2

0 0

22

0 2

1[1 ( / ) ]

1 1 1 1 1 1

2 4 2 4

1 11

2 2

r r r

r r

j r a rdr j rdr r rdra

j r r j r ra a

rj r

a

− = −

= − = −

= −

(III-5-4a)

次に、上式(III-5-2)の””についての積分は、

2

02d

= (III-5-4b)

式(III-5-1)は、式(III-5-2)および 式(III-5-4a)(III-5-4b)より

22

0 0 2

1 12 1 2

2 2

rrB j r

a

= −

2

0 0 2

1 11

2 2

rB j r

a

= −

(III-5-5)

(6)導体 A と導体D で挟まれる領域(a r d )における磁束密度の大きさ ADB を考える。このとき、

(5)と同様にして、半径 r (a r d )の円を閉曲線 C(積分路)に選ぶ。

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9

このとき、a r d には電流は流れていない。したがって、この閉曲線 C 内部の全電流は、導体 A に

流れる全電流 AI に等しい。

22

00 0

[1 ( / ) ]a

A eS

I d j r a rdr d

= = − j S (III-6-1)

AI について、まず、r についての積分を行う

2 2

0 0 20 0 0

1[1 ( / ) ]

a a a

j r a rdr j rdr r rdra

− = −

2 4 2 4

0 02 2

0 0

22

0 2

2

0

1 1 1 1 1 1

2 4 2 4

1 11

2 2

1

4

a a

j r r j a aa a

aj a

a

j a

= − = −

= −

=

(III-6-2)

についての積分は、

2

02d

= (III-6-3)

式(III-6-2)および式(III-6-3)より、式(III-6-1)の閉曲線に囲まれる面 S(円)を横切る全電

流は

2 2

0 0

1 1 2

4 2AI j a j a = =

以上から、(5)と同様にして積分形のアンペールの法則より

0

2

0 0

2

12

2

AD A

AD

rB I

rB j a

=

=

2

0 0 4

AD

j aB

r

=

さらに、導体 Dより外側の領域( r d )での磁束密度 DB の大きさを考える。このとき、上と同様に

して、半径 r (d r )の円を閉曲線 C(積分路)に選ぶ。

この閉曲線 Cの内部に流れる全電流は、上の AI と DI− であるから、

02 ( )D A DrB I I = −

200

1

2 2D DB j a I

r

= −

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10

あるいは、括弧を展開して

2

0 0 0

4 2

DAD

j a IB

r r

= −

(7)① 導体 B と導体 C とにはさまれる領域(b r c )には、電場Eと磁場(磁束密度ベクトル)

Bの両方が存在する。このとき、電荷を持つ荷電粒子に働く力は、

( )q= + F E v B

したがって、運動方程式は、

( )d

m q vdt

= + v

E B

② ①の運動方程式の両辺に、vを内積すると

( )d

m q vdt = +

vv E B v (III-7-1)

ここで、まず、式(III-7-1)の左辺を考える。そのため、粒子の運動エネルギーの時間微分を

考えてみると

( )21 1 1

2 2 2

d d dmv m m

dt dt dt

= =

v v v v

21

2

d dmv m

dt dt

=

vv (III-7-2)

となる。何故ならば、

( ) 2d d d d

dt dt dt dt = + =

v v vv v v v v (III-7-3)

以上から、

式(III-7-1)の左辺=21

2

dmv

dt

(III-7-4)

一方、式(III-7-1)の右辺は、

( )q q v + E v B v (III-7-5)

ここで、第2項目は、v とB との外積である ( )vB とv とは、互いに垂直であるから

( ) 0q v =B v (III-7-6)

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11

故に

式(III-7-1)の右辺=q E v (III-7-7)

式(III-7-4)と式(III-7-7)から、式(III-7-1)は、

21

2

dmv q

dt

=

E v (III-7-8)

ここで、

= −E (III-7-9)

d

dt=

rv (III-7-10)

式(III-7-8)は、

21

2

d dmv q

dt dt

= −

r (III-7-11)

ここで、

x y z

dr dx dy dz

= + +

= + +

i j k

i j k

より、

( )

d dx dy dzx y z

dx dy dzx y z

d

= + + + +

= + +

=

r i j k i j k

(III-7-12)

したがって、式(III-7-11)の右辺は、

( )d d d

q q qdt dt dt

− = − = −

r (III-7-13)

故に、式(III-7-11)は、

21( )

2

d dmv q

dt dt

= −

(III-7-14)

さらに、

21

( ) 02

d dmv q

dt dt

+ =

21 0

2

dmv q

dt

+ =

(III-7-15)

これから、( )の中が一定となる。

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12

21

2mv q+ =一定 (III-7-15)

すなわち、保存力場では、全力学的エネルギー(運動エネルギー+ポテンシャルエネルギーの和)が、

粒子の運動中、一定に保たれる。

以上の過程 (式(III-7-14)から(III-7-14)の導出過程)は、運動方程式の第1積分、あるいは、

エネルギー積分と呼ばれ、非常に重要!

初期条件から、この荷電粒子は導体 Cから速度 Cv で導体 B に向かって射出される。

問題(2)(4)から、導体 Cの電位は ( )c であるから、式(III-7-15)の定数は、

21( )

2cmv q c+ (III-7-13)

(7)④ 式(III-7-2)21

2

d dmv m

dt dt

=

vv

⑤ 式(III-7-9) = −E

*④および⑤については、上の②エネルギー保存の式の導出を参照。

(8)上の②エネルギー保存の式の導出を参照。

v とB との外積である ( )vB と v とは、互いに垂直。

( ) 0q v =B v

(9)(7)で導いたエネルギーの保存則より、

2 2

2 2

2 2

2 2

1 1( ) ( )

2 2

1 1( ) ( )

2 2

1 1( ) ( )

2 2

2 ( ) ( )

b c

b c

b c

b c

mv q b mv q c

mv mv q b q c

mv mv q b c

qv v b c

m

+ = +

= − +

= − −

= − −

導体 B、すなわち r b= において、2 0bv になると、 bv は虚数となってしまう。物理的には、導

体 Bに到達できないことに対応する。したがって、導体 Bに到達する条件は、

2 0 bv 2 2 2( ) ( ) 0b c

qv v b c

m = − −

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13

あるいは、

2 2( ) ( )c

qv b c

m −

または、 2

( ) ( )c

qv b c

m −

ここで、 ( ) ( )b c − は、(4)で求めた導体 Bと導体 Cとの電位差。したがって、

2

0

2log

2

Bc

q Q cv

m b

0

2log

2

Bc

q Q cv

m b

IV

(1)ビオ・サバールの法則は、以下のとおり、

0

2( )

4

a j j

j j

Id

R R

−=

s RB r

外積記号()によって、磁場(磁束密度)ベクトルの方向が、電流(素片 jIds )の方向と考えている

点と電流素片がある点とを結ぶベクトル jR の両方に垂直であることを示している。

jId ⊥s jR

詳細はプリント参照。

(2)① 線素ベクトルは、大きさ jdx で、 x 軸の負の方向を向くから、

j jd dx= −s i ( jdx iでも正解とした)

② (1)の④と =r 0、 j jx=r iから、

j j j jx x= − = − = −R r r 0 i i

③ j j jR x= − =r r

④ (1)のビオ・サバールの法則と上の①-③より

0

2 ( // 0)

4

a j j

A j j j j

j j

Idd d

R R

− = = より

s RB 0 s R s R

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14

重要なことは、“電流(素片)の方向 jds ”と“電流素片と考えている点を結ぶベクトル jR

の方向“が平行な場合に、磁束密度ベクトルはゼロになること!

(2)① 線素ベクトルは、大きさ jdy で、 y 軸の負の方向を向くから、

j jd dy= −s j ( jdy− jでも正解とした)

② (1)の④と =r 0、 j jy=r iから、

j j j jy y= − = − = −R r r 0 j i

③ j j jR y= − =r r

④ (1)のビオ・サバールの法則と上の①-③より

0

2 ( // 0)

4

a j j

B j j j j

j j

Idd d

R R

− = = より

s RB 0 s R s R

(4)① j ra=r e 、② j jd ad =s e 、ただし、 j の積分範囲は、③3

02

j

さらに、⑤ j j r ra a= − = − = −R r r 0 e e 、 jR a=

以上を、ビオ・サバールの法則の式に代入して、⑥は、

0

2

3 / 20

20

3 / 20

0

4

4

( )4

j j

CC

j j

j r

j r

Id

R R

Iad a

a a

Id

a

=

− =

= −

s RB

e e

e e

ここで

( )r r r − = − = =e e e e e e k (あるいは ze でもよい)

から、

3 / 20

0

3 / 20

0

0

4

4

3

4 2

C j

j

Id

a

I

a

I

a

=

=

=

B k

k

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15

以上から

03

8C

I

a

=B k

(5)重ね合わせの原理から

0

0

3

8

3

8

A B C

I

a

I

a

= + +

= + +

=

B B B B

0 0 k

k

0 03 3 or

8 8z

I I

a a

= =B k B e