道路の老朽化対策の取組道路の老朽化対策に関する取組みの経緯...

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道路の老朽化対策の取組 国土交通省道路局 国道・技術課道路メンテナンス企画室 課長補佐 中屋 正浩 1.道路メンテナンスの一巡目点検結果と課題、取組方針 2.道路メンテナンスを支える技術

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Page 1: 道路の老朽化対策の取組道路の老朽化対策に関する取組みの経緯 笹子トンネル天井板落下事故[H24.12.2] 道路ストックの集中点検実施[H25.2~]

道路の老朽化対策の取組

国土交通省道路局 国道・技術課道路メンテナンス企画室

課長補佐 中屋 正浩

目 次

1.道路メンテナンスの一巡目点検結果と課題、取組方針

2.道路メンテナンスを支える技術

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Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

道路の老朽化対策の取組

国土交通省道路局 国道・技術課道路メンテナンス企画室

令和2年2月

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目 次

1

1.道路メンテナンスの一巡目点検結果と課題、取組方針

2.道路メンテナンスを支える技術

Page 4: 道路の老朽化対策の取組道路の老朽化対策に関する取組みの経緯 笹子トンネル天井板落下事故[H24.12.2] 道路ストックの集中点検実施[H25.2~]

1. 道路メンテナンスの一巡目点検結果と課題、取組方針

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道路の老朽化対策に関する取組みの経緯

○ 笹子トンネル天井板落下事故[H24.12.2]

○ 道路ストックの集中点検実施[H25.2~]第三者被害防止の観点から安全性を確認

○ 定期点検に関する省令・告示 公布[H26.3.31]5年に1回、近接目視による点検

○ 定期点検要領 通知[H26.6.25]円滑な点検の実施のための具体的な点検方法等を提示

○ 定期点検に関する省令・告示 施行[H26.7.1]5年に1回、近接目視による点検開始(1巡目)

○ 道路法の改正[H25.6]点検基準の法定化、国による修繕等代行制度創設

○ トンネル内の道路附属物等の緊急点検実施[H24.12.7]ジェットファン、照明等

○ 定期点検要領 通知[H31.2.28]定期点検の質を確保しつつ、実施内容を合理化

● 定期点検 2巡目(H31~)

● 定期点検 1巡目(H26~H30)

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背景 (道路施設の高齢化・老朽化)

○ 建設後50年を経過した橋梁の割合は、10年後(2028年度)に 約52%に急増○ 5年に1回の定期点検の一巡目が終了し、計画的な修繕が必要

50年経過橋梁 50年経過橋梁

27%

52%

【橋梁】2029年時点2019年時点

橋梁・トンネル 建設年数の推移 メンテナンスサイクル

反映

長 寿 命 化 計 画

充実

点検

診断

記録

措置・補修・経過観察・通行規制など

橋梁・トンネル等は、国が定める統一的な基準により、5年に1回、近接目視による全数監視を実施

「点検→診断→措置→記録」のメンテナンスサイクルを実施

4

0

3,000

6,000

9,000

12,000

15,000

18,000

19

15

19

18

19

21

19

24

19

27

19

30

19

33

19

36

19

39

19

42

19

45

19

48

19

51

19

54

19

57

19

60

19

63

19

66

19

69

19

72

19

75

19

78

19

81

19

84

19

87

19

90

19

93

19

96

19

99

20

02

20

05

20

08

20

11

20

14

20

17

27% 52%

橋梁数

建設年度

※この他、古い橋梁など記録ができない建設年度不明橋梁が約23万橋ある。

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法定点検に係る基準の体系

① 省令・告示で 、5年に1回、近接目視を基本とする定期点検を規定、健全性の診断結果を4つに区分(トンネル、橋などの構造物に共通)

② 構造物の特性に応じ、道路管理者が定期点検をするために参考とできる主な変状の着目箇所、判定事例写真等を技術的助言として定期点検要領をとりまとめ (トンネル、橋などの構造物ごと)

法令点検に係る基準の体系

健全性の診断結果を、4段階に区分

道路法

政令

省令・告示

H25.9.2施行

・トンネルや橋などに損傷、腐食その他の異状であって、道路の

構造・交通に大きな支障を及ぼすおそれのあるものについて

定期点検を規定

・5年に1回、近接目視を基本として実施

・健全性の診断結果を、4段階に区分

定期点検要領

・維持、点検、措置を講ずることを規定

(トンネル、橋などの構造物)

最小限を規定する技術基準を制定

(トンネル、橋などの構造物)

各構造物毎に制定

・構造物の特性に応じ、点検をするために参考とできる

主な変状の着目箇所、判定事例写真等をまとめたもの

H25.9.2施行

H26.7.1施行

技術的助言として

5

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省令・告示の施行

○ 橋梁(約72万橋)・トンネル(約1万本)等は、知識と技能を有する者が5年に1度、近接目視を基本とする全数監視を実施

○ 点検を行ったときには、施設の健全性の診断を行い、その結果を統一的な区分に分類。

道路法施行規則(平成26年3月31日公布、7月1日施行) (抄)

区分 状態

Ⅰ 健全 構造物の機能に支障が生じていない状態

Ⅱ 予防保全段階構造物の機能に支障が生じていないが、予防保全の観点から措置を講ずることが望ましい状態

Ⅲ 早期措置段階 構造物の機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を講ずべき状態

Ⅳ 緊急措置段階構造物の機能に支障が生じている、又は生じる可能性が著しく高く、緊急に措置を講ずべき状態

トンネル等の健全性の診断結果の分類に関する告示(平成26年3月31日公布、7月1日施行)

トンネル等の健全性の診断結果については、次の表に掲げるトンネル等の状態に応じ、次の表に掲げる区分に分類

(道路の維持又は修繕に関する技術的基準等)点検は、知識及び技能を有する者が近接目視により、五年に一回の頻度で行うことを基本とする

6

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橋梁、トンネル等の点検実施状況

○平成26年度以降5年間(一巡目)の点検の実施は概ね完了。(橋梁で99.9%、トンネルで99.5%、道路附属物等で99.7%)

※( )内は、平成30年度末時点管理施設のうち点検の対象となる施設数(平成26~30年度の間に撤去された施設や、上記分野の点検の対象外と判明した施設等を除く。)

※道路附属物等:シェッド、大型カルバート、横断歩道橋、門型標識等

平成26~30年度の点検実施状況

H26年度 H27年度 H28年度 H29年度 H30年度

橋梁(717,391)

トンネル(10,718)

道路付属物等(39,873)

9%

13%

15%

19%

16%

21%

27%

18%

21%

27%

24%

20%

18%

27%

22%

99.9%

99.5%

99.7%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

実績

実績

実績

7

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41%

2%

32%

49%

56%

52%

10%

41%

15%

0.1%

0.6%

0.08%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

橋梁

(696,356)

トンネル

(10,499)

道路附属物等

(37,293)

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

橋梁、トンネル等の判定区分状況

○ 全国の橋梁における判定区分の割合は、早期に措置を講ずべき状態(判定区分Ⅲ)が10%(約68,400橋)、緊急に措置を講ずべき状態(判定区分Ⅳ)が0.1%(約700橋)となっている。

橋梁・トンネル・道路附属物等の判定区分の割合(全道路管理者合計)

※( )内は、平成30年度末時点管理施設のうち点検の対象となる施設数(平成30年度末時点で診断中の施設を除く)

※四捨五入の関係で合計値が100%にならない場合がある。

区分 状態

Ⅰ 健全 構造物の機能に支障が生じていない状態。

Ⅱ 予防保全段階 構造物の機能に支障が生じていないが、予防保全の観点から措置を講ずることが望ましい状態。

Ⅲ 早期措置段階 構造物の機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を講ずべき状態。

Ⅳ 緊急措置段階 構造物の機能に支障が生じている、又は生じる可能性が著しく高く、緊急に措置を講ずべき状態。

1%

0.1%53%

(716,466)

(10,645)

(39,678)

8

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損傷事例 (橋梁)

判定区分Ⅲ

判定区分Ⅳ

国管理 床版鉄筋露出 地方自治体管理 主桁腐食 地方自治体管理 支承腐食

地方自治体管理 床版鉄筋露出 地方自治体管理 橋脚洗掘国管理 主桁腐食・欠損

※床版:橋の裏側

早期措置段階「構造物の機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を講ずべき状態」

緊急措置段階「構造物の機能に支障が生じている、又は生じる可能性が著しく高く、緊急に措置を講ずべき状態」

9

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○全国の橋梁において、次回点検までに措置を講ずべき橋梁(判定区分Ⅲ・Ⅳ)のうち修繕に着手した割合は、国土交通省管理で53%、地方公共団体管理で20%。また修繕が完了した割合は、国土交通省管理で18%、地方公共団体管理で12%。(修繕未着手は、国土交通省管理で約0.2万橋、地方公共団体管理で約5.0万橋)

○地方公共団体が管理する橋梁について、H30末時点の点検結果を踏まえた措置の状況は、想定しているペース(判定区分Ⅲであれば次回点検の5年以内に修繕を実施)に比べて遅れている。

管理者うち完了(C)

3,4271,811

(53%)

617

(18%)

1,616

(47%)

2,647846

(32%)

457

(17%)

1,801

(68%)

地方公共団体

62,97712,700

(20%)

7,430

(12%)

50,277

(80%)

都道府県政令市等

20,5864,889

(24%)

2,684

(13%)

15,697

(76%)

市区町村 42,3917,811

(18%)

4,746

(11%)

34,580

(82%)

合計 69,051 15,357(22%) 8,504(12%) 53,694(78%)

22%

36%

24%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

橋梁

(69,051)

トンネル

(4,416)

道路附属物等

(6,062)

事後保全型(判定区分Ⅲ、Ⅳの修繕)

(H26~H30)

12%

22%

12%

修繕着手済み施設数(B)

※平成26~30年度に点検診断済み施設のうち、判定区分Ⅲ・Ⅳと診断された施設で、修繕(設計含む)に着手(又は工事が完成)した割合(H30年度末時点)

修繕完了済 修繕着手済

92%

77%

62%

28%

13%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

78%

49%

41%

25%

7%

34%

35%

26%

16%

9%

35%

26%

20%

9%

5%

27%

16%

11%4%

2%

25%

21%

13%5%

3%

55%

31%

15%

10%

4%

39%

27%

12%

7%

8%

35%

29%

22%

11%

6%

26%

18%

12%

4%

2%

H26

H27

H28

H29

H30

:H30末時点で次回点検までの修繕実施を考慮した場合に想定されるペースH26点検実施施設(4年経過):80%H27点検実施施設(3年経過):60%H28点検実施施設(2年経過):40%H29点検実施施設(1年経過):20%H30点検実施施設(0年経過): 0%

修繕着手率(B/A)、完了率(C/A)修繕未着手施設数

修繕が必要な施設数(A) 点検年度

国土交通省

高速道路会社

措置の状況(判定区分Ⅲ、Ⅳ)

判定区分Ⅲ・Ⅳの橋梁における修繕着手・完了率

H26

H27

H28

H29

H30

H26

H27

H28

H29

H30

H26

H27

H28

H29

H30

H26

H27

H28

H29

H30

10

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長寿命化修繕計画の策定状況

計画的な修繕実施のため、点検結果を反映した長寿命化修繕計画(個別施設計画)の策定・更新を促進する必要

■長寿命化修繕計画(個別施設計画)策定状況 (平成30年度末時点)

※( )は団体数※割合は個別施設計画策定対象の施設を管理する団体数により算出

※大型の構造物は横断歩道橋、門型標識、シェッド、大型カルバートであり、いずれかの施設の個別施設計画が策定されていれば策定済みとしている

■インフラ長寿命化計画の体系

・個別施設計画(道路)の策定期限⇒国:H28年度(策定済)⇒地方公共団体:2020年度

インフラ長寿命化基本計画【国】

(平成25年11月策定)

インフラ長寿命化計画【国交省】

(平成26年5月策定)

インフラ長寿命化計画【地方公共団体】

(平成28年度までに策定)

公共施設等総合管理計画=

道路 河川 空港

基本計画

行動計画

個別施設計画

公共施設等総合管理計画の策定指針(総務省)

大型の構造物

トンネル

道路 河川 空港

大型の構造物

トンネル

梁・・・ ・・・

0 20 40 60 80 100

国土交通省

高速道路会社

都道府県・

政令市等

市町村

全体

0 20 40 60 80 100

国土交通省

高速道路会社

都道府県・

政令市等

市町村

全体

0 20 40 60 80 100

国土交通省

高速道路会社

都道府県・

政令市等

市町村

全体

〈トンネル〉 〈大型の構造物〉〈橋梁〉

100%

100%

80%

89%

81%

100%

100%

92%

53%

46%

62%

57%

92%

100%

100%

( 10 )

( 6 )

( 10 )

( 6 )

( 97 )

( 1,714 )

( 1,827 ) ( 710 )

( 604 )

( 6 )

( 90 )

( 749 )

( 10 )

( 641 )

( 92 )

( 6 )

( 10 )

( 86 )

( 1,372 )

( 1,474 )

( 10 )

( 6 )

( 83 )

( 275 )

( 374 ) ( 468 )

( 6 )

( 367 )

( 85 )

( 10 )

■橋梁の長寿命化修繕計画(個別施設計画)の策定、記載内容、更新の状況 (地方公共団体)

11 1策定状況

1,781自治体 1,211自治体 1,211自治体

記載内容 更新状況

【未策定】337自治体(19%)

【公表済】1,211自治体(68%)

【修繕の情報なし】181自治体(15%)

【修繕の情報あり】1,030自治体(85%)

【策定後更新なし】350自治体(29%)

【策定後更新あり】861自治体(71%)

※平成31年3月31日時点(国土交通省道路局調べ)

【策定済】1,444自治体(81%)

【未公表】233自治体(13%)

【修繕費用】528自治体(44%)

地方公共団体はインフラ長寿命化計画に基づく個別施設計画を2020年度までに策定をする必要がある

橋梁の長寿命化修繕計画(個別施設計画)を策定した地方公共団体は81%

あり、公表までしている地方公共団体は68%。

公表している計画のうち、修繕の時期や内容を橋梁毎に示した計画となって

いる地方公共団体は85%あり、修繕費用を示した計画となっている地方公共

団体は44%。

また、公表している計画のうち、点検結果を反映するなど計画の更新を行った

ことのある地方公共団体は71%。

11

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-

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

50,000

H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 H31(案)

-

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 H31(案)

改築費等

維持修繕

※直轄は当初予算額、地公体は精算額(地方単独事業費は決算額)

1.9

13%

1.9

1.7

1.4 1.4 1.4 1.41.5 1.5 1.4 1.4

14% 16%24%20%

1.9

1.4

26%

4.74.4

4.24.4

3.83.5

3.9

3.5 3.4 3.5

改築費等

維持修繕

21%30% 38%

38%

[単位 兆円]

23%

0.25 0.24 0.220.350.30 0.38

0.99 1.00 1.17 1.31 1.50

維持修繕予算と橋梁点検実施状況

直轄

地方公共団体

[単位兆円]

※1:H26~H30の点検結果※2:H30年度末時点

橋梁管理施設数

判定区分ⅢⅣ ※1:約 3,400橋(点検済に占める割合) (9%)

修繕着手済 ※2 :約 1,800橋(修繕着手率) (53%)

<直轄>

:約38,000橋

橋梁管理施設数

判定区分ⅢⅣ ※1:約 63,000橋(点検済に占める割合) (10%)

修繕着手済 ※2 :約 12,700橋(修繕着手率) (20%)

<地方公共団体>

:約661,000橋

1.5

3.9

H24.12.2

笹子トンネル天井板崩落事故

H24.12.2

笹子トンネル天井板崩落事故

H31

12

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1

2

3

4

5

○ 予防保全の考え方によるインフラメンテナンスの実施を基本として、近年の取組の実績や新たな知見等をまえ、平成30年度に今後30年後までの維持管理・更新費を推計。

○ 事後保全の場合には、維持管理費は最大2.4倍に増加するが、予防保全の場合には最大1.5倍に抑制できるという試算結果。○ 予防保全の場合、今後30年間の地方を含めた維持管理・更新費の合計は、71.6~76.1兆円程度となる。○ 今後、引き続き、新技術やデータの積極的活用、集約・再編等の取組による効率化を図り、持続的・実効的なインフラメン

テナンスの実現を目指す。

※ 2018年度の値は、実績値ではなく、今回実施した推計と同様の条件のもとに算出した推計値

凡例:〔 〕の値は2018年度に対する倍率

約1.9兆円約1.7兆円

約4.1兆円~約3.9兆円

予防 事後2018(平成30)年

[予防保全]最大1.5倍

[事後保全]最大2.4倍

(兆円)

予防 事後2028年

予防 事後2038年

予防 事後2048年

変動幅

分野 2018年度※ 5年後(2023年度)

10年後(2028年度)

20年後(2038年度)

30年後(2048年度)

30年間 合計(2019~2048年)

道路1.9

〔1.2〕2.1~2.2

〔1.4〕2.5~2.6

〔1.5〕2.6~2.7

〔1.2〕2.1~2.2 71.6~76.1

【参考】国土交通省所管12分野

合計5.2

〔1.2〕5.5~6.0

〔1.2〕5.8~6.4

〔1.3〕6.0~6.6

〔1.3〕5.9~6.5 176.5~194.6

主な推計の実施条件

1.国土交通省所管12分野(道路、河川・ダム、砂防、海岸、下水道、港湾、空港、航

路標識、公園、公営住宅、官庁施設、観測施設)の国、都道府県、市町村、地方公

共団体、地方道路公社、(独)水資源機構、一部事務組合(海岸、下水道、港

湾)、港務局(海岸、港湾)が管理者のものを対象に推計。

鉄道、自動車道は含まれていない。このほかに、高速道路6会社は、維持管理・更新

費として約19.4兆円(2019~2048年度)を予定。

2.更新時に、現行基準への適合のための機能向上を実施。

3.点検・修繕・更新等を行う場合に対象となる構造物の立地条件や施工時の条件等に

より、施工単価が異なるため、この単価の変動幅を考慮し、推計値は幅を持った値

としている。

用語の定義

約2.7兆円~約2.6兆円

予防保全施設の機能や性能に不具合が発生する前に修繕等の対策を講じること。

事後保全施設の機能や性能に不具合が生じてから修繕等の対策を講じること。

予防保全と事後保全の比較<道路関係>

維持管理・更新費の推計

13

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大規模修繕・更新補助制度

防災・安全交付金

制度概要

事業要件

国費率

制度概要

重点

国費率

平成27年度より、地方公共団体における大規模修繕・更新を集中的に支援するため補助事業を創設

地方公共団体が進める老朽化対策に向けて、大規模修繕・更新に対する支援を実施するもの

事業費 県・政令市 [修繕]5億円以上 [更新]35億円以上

市区町村 [修繕]1億円以上 [更新] 3億円以上

国費:5.5/10×δ(δ:財政力指数に応じた引上率)

地域住民の命と暮らしを守る総合的な老朽化対策や、事前防災・減災対策の取組、地域における

総合的な生活空間の安全確保の取組を集中的に支援するもの

・省令・告示に基づく定期点検 ・長寿命化修繕計画の策定

・修繕・更新 等

国費:5.5/10×δ※(δ:財政力指数に応じた引上率)※重点対象外については5/10×δ

メンテナンス関係の地方への財政的支援の概要 (現行)

14

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道路の橋梁等の老朽化対策にかかる個別補助制度(道路メンテナンス事業補助制度)の創設

■ 道路メンテナンス事業補助制度の創設

(令和2年度予算:2,223億円)

○ 概要

道路メンテナンス事業

地方公共団体が管理する橋梁、トンネル等が対象高度経済成長期に整備した道路施設の老朽化が急激に進んでおり、例えば橋梁では、建設後50年経過する橋梁の割合が、現在は25%であり、10年後には50%に急増する。平成26年度から平成30年度までの一巡目の点検において、次回点検までに措置を講ずべき橋梁は、全体の約1割(約6万橋)存在する。このうち、点検結果を踏まえて平成30年度までに修繕に着手した橋

梁は、地方公共団体管理で20%にとどまっており、措置が遅れている状況となっている。これらに対して、早急に対策を実施できるよう地方に対して計画的かつ集中的に支援を行う必要がある。

橋梁

長寿命化修繕計画

地方公共団体は、長寿命化修繕計画(個別施設計画)を策定・公表 橋梁、トンネル、道路附属物等の個別施設毎に記載された計画に位

置づけられた事業を支援

○○市

橋梁長寿命化修繕計画【個別施設計画】

記載内容・施設名 ・延長・判定区分・点検・修繕実施年度・修繕内容 ・対策費用 等

○○市

トンネル長寿命化修繕計画【個別施設計画】

記載内容・施設名 ・延長・判定区分・点検・修繕実施年度・修繕内容 ・対策費用 等

○○市

道路附属物等長寿命化修繕計画【個別施設計画】

記載内容・施設名 ・延長・判定区分・点検・修繕実施年度・修繕内容 ・対策費用 等

○ 道路の点検結果を踏まえ策定される長寿命化修繕計画に基づき実施される道路メンテナンス事業(橋梁、トンネル等の修繕、更新等)に対し、計画的かつ集中的な支援を可能とする個別補助制度を創設する。

損傷状況(ひび割れ)

(国庫債務負担行為を可能とし、効率的な施工(発注)の実施と工事の平準化を図る。)

修繕の様子(断面修復)

トンネル

損傷状況(目地部うき)

修繕の様子(剥落対策)16

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集約化・撤去等よる管理施設数の削減

集約化・撤去に対するニーズと課題

橋などの高齢化に対し、約2割の方が「集約や撤去を進める」と回答集約化・撤去を進めていく上で「予算確保」「事例共有」が課題

地方公共団体が管理する通行止め橋梁数が増加

維持管理に関する負担の増加

維持管理費の負担増が想定されるなか、点検結果や利用状況等を踏まえ、施設の集約化・撤去、または機能縮小を推進

道路施設の集約化・機能縮小

無名橋126(愛知県あま市)

通行止め橋梁

長尾小学校前歩道橋(兵庫県宝塚市)

通行止め橋梁の推移(地方公共団体管理)

※H31.4 道路局調べ

道路に関する世論調査

18.7%

7.8%

48.4%

20.8%

1.2% 0.3% 2.9%

補修するよりも積極的に更新を進める

傷みが大きくなってから補修し、必要に応じて更新

傷みが小さいうちに予防的な補修(できるだけ長持ちさせる)

特に補修はしない(利用できなくてもやむを得ない)

維持修繕を行う対象を絞って、集約や撤去を進める

その他

わからない

《設問》橋などの高齢化が今後進んでいくが、これらの橋などについて、どのように維持や修繕、更新を行うべきか

該当者数

1,815人

集約化・撤去に関する地方公共団体アンケート

(H28.9内閣府調査)

集約・撤去による維持・管理負担の支援

地方公共団体への財政的なインセンティブの付与についても検討が必要

出典:財政制度等審議会 財政制度等分科会資料抜粋(令和元年6月19日)

点検結果や利用状況等を踏まえ、道路施設の集約化・撤去等や、通行を歩行者に限定するなどの機能縮小に取り組む

<集約化・撤去のイメージ>

2,901

2008年

2,000

2013年

2,104

9771,000

3,000

2018年

※東日本大震災の被災地域は一部含まず※各年4月1日時点(2m以上の橋梁)

今後集約撤去または単純撤去を予定されている橋梁が731橋存在

45%39%

63%

20% 18% 16% 14% 10%5% 7%

0%

20%

40%

60%

80%

集約化・撤去の予算が確保できない

集約化・撤去にあたり迂回路の再整備

等の予算が確保できない

地元や利用者の理解が得られない

集約化・撤去を進める順序、作業内容

がわからない

まちづくりの将来像が明確になっていな

いため、集約化・撤去ができない

地元や利用者の理解を得るための手法

が分からない

鉄道・河川など他管理者との調整に手

間がかかる

撤去にあたり占用物件の移設調整に手

間がかかる

集約する路線の管理者が異なり、道路

管理者間の調整に手間がかかる

その他

《設問》道路施設の集約化・撤去にあたってどのような課題があるか(複数回答可)

(R1.6道路局調査)予算確保 事例共有

(橋)

0

(R1.6道路局調査)

向田橋

松流橋

木野俣川

付替え道路整備

撤去

○集約化・撤去(撤去+迂回路整備)

向田橋(山形県鶴岡市)

下香春橋しもがわら

新下香春橋しん しも がわら

○機能縮小化(車道橋→人道橋)

下香春橋(福岡県香春町)

機能縮小前(車道橋)

機能縮小後(人道橋)

機能縮小

○単純撤去

江別横断歩道橋(北海道江別市)

跡地

撤去

撤去

小学校跡地

江別横断歩道橋

え べ つ

むかいだ39橋都道府県

100

49橋政令市

643橋市区町村

731橋地方公共団体合計

<集約撤去または単純撤去を予定されている橋梁>

16

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『道路メンテナンス会議』の設置

○ 関係機関の連携による検討体制を整え、課題の状況を継続的に把握・共有し、効果的な老朽化対策の推進を図ることを目的に、「道路メンテナンス会議」を設置

※平成26年7月7日までに全都道府県で設置

・地方整備局(直轄事務所)

・地方公共団体(都道府県、市町村)

・高速道路会社(NEXCO ・首都高速・

阪神高速・本四高速・指定都市高速等)

・道路公社

体制

1.維持管理等に関する情報共有

2.点検、修繕等の状況把握及び対策の推進

3.点検業務の発注支援(地域一括発注等)

4.技術的な相談対応 等

役割

会議状況(平成30年3月16日 広島県道路メンテナンス会議)

17

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○平成31年度より、関東及び中部地方整備局に「道路メンテナンスセンター」を設置

○当センターは、地域のメンテナンス拠点として、地方公共団体の施設の診断・修繕の代行、高度な技術を要する施設に関する相談、点検に関する技術指導や研修を実施

<直轄向け>• 直轄管理国道における橋梁等の健全性の診断等• 劣化予測や修繕計画の最適化などアセットマネジメントの検討・導入(メンテナンスデータの管理・分析等)

• 修繕工事の技術的支援(事務所への助言)<地方公共団体向け>

• 直轄診断、修繕代行• 道路構造物保全に関する相談窓口• 地方公共団体職員等を対象とした研修・講習会

<研究開発>• 橋梁メンテナンスに関する技術研究開発

道路メンテナンスセンターについて

■業務内容 ■関連イメージ

道路

メンテナンス

センター

国総研

土研

直轄

事務所

地方

公共団体

高度な案件の相談

相談

助言等

相談

助言等

直轄診断後自治体に説明する様子 研修実施状況

■取組内容例(令和元年9月時点)

項目 全体 備考関東 中部

技術講習会7回

(約210名)1回

(約30名)6回

(約180名)予定含む

実務者向け研修

10回(約390名)

4回(約220名)

6回(約170名)

予定含む

技術相談直 轄: 9件地公体:12件

直 轄:4件地公体:7件

直 轄:5件地公体:5件

18

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地方への技術支援

• 地方自治体が橋梁の定期点検を実施したと

ころ、コンクリート支柱が傾斜・洗掘している

事案が確認。

• 健全性の診断にあたり自治体から国へ技術

的な相談、支援要請があり、国職員を現地へ

派遣し技術的な助言を実施。

■技術的な相談への対応の例

○地方自治体からの定期点検や老朽化対策に関する技術的な相談に対し、国の研究機関や全国の地方整備局等の職員が対応することで、地方への技術支援を実施。

○平成26~30年度までに約330件の技術相談に対応。

地方自治体に対する技術支援件数

(棒グラフ:技術支援件数) (折れ線グラフ:のべ技術支援件数)

(年度)

国と地方自治体による合同現地調査

4931

71

2343

11

16

40

19

29

60107

218260

332

-400

-200

0

200

400

0

50

100

150

200

H26 H27 H28 H29 H30

地整 国総研 のべ技術支援整備局等 研究機関 のべ支援件数の合計

19

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直轄診断・修繕代行について

○地方公共団体への支援として、要請により緊急的な対応が必要かつ高度な技術力を要する施設について、地方整備局、国土技術政策総合研究所、土木研究所の職員等で構成する「道路メンテナンス技術集団」による直轄診断を実施。

○診断の結果、診断内容や地域の実情等に応じ、修繕代行事業、大規模修繕・更新事業等を実施。

【直轄診断実施箇所とその後の対応】【全体の流れ】

【平成30年度 直轄診断実施箇所】

■仁方隧道(広島県呉市) ■天大橋(鹿児島県薩摩川内市)

〈地方公共団体〉

点検・診断

〈道路メンテナンス会議〉

現地調査を踏まえ直轄診断候補箇所の選定

〈国〉

直轄診断実施箇所の選定

直轄診断実施

結果とりまとめ

報告 推薦

報告

修繕代行事業、大規模修繕・更新補助事業等の実施

診断内容、地域の実情等に応じ、

下部工のひび割れ覆工コンクリートの剥落・貫通ひびわれ

実施年度 直轄診断実施箇所 措置

H26年度

三島大橋(福島県三島町) 修繕代行事業

大渡ダム大橋(高知県仁淀川町) 修繕代行事業

大前橋(群馬県嬬恋村) 大規模修繕・更新補助事業

H27年度

沼尾シェッド(福島県南会津郡下郷町) 修繕代行事業

猿飼橋(奈良県吉野郡十津川村) 修繕代行事業

呼子大橋(佐賀県唐津市呼子町) 修繕代行事業

H28年度

万石橋(秋田県湯沢市) 修繕代行事業

御鉾橋(群馬県神流町) 修繕代行事業

H29年度

音沢橋(富山県黒部市) 修繕代行事業

乙姫大橋(岐阜県中津川市) 修繕代行事業

H30年度

仁方隧道(広島県呉市) 修繕代行事業

天大橋(鹿児島県薩摩川内市) 修繕代行事業

R1年度

秩父橋(埼玉県秩父市) -

古川橋(静岡県吉田町) -

<天大橋の状況><仁方隧道の状況>20

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道路事業における地域一括発注の取組について

【イメージ図】

A市 B町 C村

都道府県等による受託

国・県にてニーズを取りまとめ

・市町村のニーズを踏まえ、地域単位での点検業務の一括発注等の実施

【手続きの流れ】

・国、都道府県にて市町村の意向調査を実施し、点検数量をとりまとめた上で、点検業者へ発注

市町村意向調査

意向とりまとめ

受委託方法説明

③点検数量とりまとめ

委託契約締結

点検業者へ発注

点検実施

3~5ヶ月

(1ヶ月)

(1ヶ月)

(1ヶ月)

(1ヶ月)

(1ヶ月)

○市町村の人不足・技術力不足を補うために、市町村が実施する点検・診断の発注事務を都道府県等が受委託することで、地域一括発注を実施

○平成30年度は36道府県(436市町村)が地域一括発注を活用

21

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研修の実施

○ 地方公共団体の職員を対象とした技術レベルに合わせた研修を実施

○橋梁、トンネル等の点検に関する研修について、初級、中級、特論の3種類を実施。

<初級>・地方公共団体の職員の技術力育成のため、点検要領に基づく点検に必要な知識・技能等を取得するための研修。・平成26年9月より、全国の地方整備局等で開催し、平成26~30年度で約200回開催、約5,600名が受講(うち、地方公共団体職員 約4,400名)

<中級>・直轄国道の点検・修繕に必要な知識・技術を取得するための研修(平成26年度より開催)

<特論>・専門的知識を有する職員の育成のため、三大損傷の発生メカニズム、対応等を取得するための研修(平成27年度より開催)

【研修の充実】

▲研修実施状況

22

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2.道路メンテナンスを支える技術

23

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定期点検の見直しについて

①損傷や構造特性に応じた点検対象の絞り込み

②新技術の活用による点検方法の効率化

▲橋梁の損傷写真を

撮影する技術

定期点検(法定点検)の質は確保

○ 損傷や構造特性に応じた定期点検の着目箇所を特定化することで点検を合理化

○ 特徴的な損傷の健全性をより適切に診断できるように技術情報を充実

○ 近接目視を補完・代替・充実する技術の活用

▲溝橋 ▲トンネル目地部▲水路ボックス ▲橋脚水中部の断面欠損

▲シェッド主梁端部破断

▲トンネルの変状写真を

撮影する技術

▲コンクリートのうき・はく離を

非破壊で検査する技術

▲PC鋼材の突出

※新技術利用のガイドライン等の作成

※積算資料への反映

24

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性能カタログに掲載された技術

○これまでに国で技術公募し、国管理施設等の定期点検業務で仕様確認を行った16技術を対象にカタログを作成(平成31年2月時点)。

③トンネル(覆工画像計測技術)

①橋梁等(画像計測技術)

②橋梁等(非破壊検査技術)

• カメラを搭載した車両で

トンネル内を走行し、覆工

の変状写真を撮影

• カメラを搭載したドローンや

アーム型ロボットで道路橋

の損傷写真を撮影

• ドローンやアーム型の機械

に搭載した打音機構や赤

外線等によりコンクリート

のうき・剥離を検査

※性能カタログ(案)目次より抜粋 25

Page 28: 道路の老朽化対策の取組道路の老朽化対策に関する取組みの経緯 笹子トンネル天井板落下事故[H24.12.2] 道路ストックの集中点検実施[H25.2~]

○ ガイドラインは、定期点検業務の中で受発注者が使用する技術を確認するプロセス等を例示。

○ 性能カタログは、国が定めた技術の性能値を開発者に求め、カタログ形式でとりまとめたもので、受発注者が新技術活用を検討する場合に参考とできる。

発注者受注者

活用技術を協議

活用技術を承諾

新技術の性能カタログ

新技術を選ぶ際に性能確認の参考として活用

新技術の性能カタログ

確認のあった新技術の性能確認に活用

技術を活用

技術を選定

点検支援技術の活用範囲や活用目的等を明確化

業務委託の準備

業務委託(技術活用を含む)

技術を確認

※予め道路管理者が点検支援技術の活用範囲や活用目的等を整理し、発注する場合

新技術利用のガイドライン

定期点検業務の中で受発注者が確認するプロセスを整理

ガイドライン・性能カタログの概要

26

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今後の点検方法の開発について

広く公募を行うことで、新技術を活用した点検・診断技術の開発、計測・モニタリング技術の検証を進め、近接目視によらない点検方法をベストミックス 27

損傷

外観から見える損傷

外観から見えない損傷外観から見えにくい損傷

現在

今後

近接目視 打音・触診

健全性の診断 健全性の診断

画像撮影技術 その他詳細技術+ +

又は

画像診断近接目視

健全性の診断

計測・モニタリング 打音・触診

健全性の診断

その他詳細技術

++

ドローン等により撮影した画像からAI技術を活用して自動診断

スクリーニング スクリーニング

近接目視によらない点検・診断方法を確立・導入※技術を適材適所に活用

R1・引張材・支承機能・洗掘・TN付属物

順次拡大順次拡大

R2R3

要素技術の公募(シーズマッチング型)

計測・モニタリング技術公募(ニーズ型)

非破壊検査

赤外線やレーザー計測等により非破壊で検査

R元年度 技術公募を実施【応募状況】・ニーズ型 20件・シーズマッチング型 27件

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技術検証に応募のあった技術

<ニーズ型(20技術)>

①PCケーブルや吊材5技術

②支承の機能障害7技術

③橋梁基礎の洗掘6技術

④トンネル付属物の変状2技術

<ケーブルの張力を計測する技術>

<ケーブルの腐食を計測する技術>

<斜材表面を撮影する技術>

(例)永久磁石を用いて張力を計測

N極S極

磁力線

健全部 腐食部

(例)磁束密度の変化から断面積を計測

(例)自走式ロボで斜材表面を撮影

<反力を計測する技術>

<ひずみを計測する技術>

画像解析により変位や回転量を計測する技術

(例)支承本体又は後付で反力を計測

(例)動画像を解析し変位・回転量を計測

(例)光ファイバセンサで動的ひずみを計測

<水底を3次元データ化する技術>

加速度センサから変位や傾斜を計測する技術

<超音波で地中を探査する技術>

↑探触子

↓探触子

↑バッテリー探査機

(例)超音波探査で空洞を測定

(例)3次元データから洗掘量を測定

(例)加速度データから土被り量を解析

加速度センサから変位や傾斜を計測する技術

(例)加速度データで落下・倒壊を防止

(出典:応募資料より引用し技術を例示)

28

技術検証に応募のあった技術

センサーで変位を視覚化・監視する技術

(例)OSVセンサーで変位を視覚化

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技術検証に応募のあった技術

<シーズマッチング型(27技術)>

変位・振動の計測技術10技術

詳細調査の技術4技術

画像計測・解析技術7技術

非破壊検査技術4技術

データ収集技術2技術

<桁端部の異常をセンサで計測>

加速度センサで振動特性を可視化

(例)加速度からたわみを計測

動画像解析でわたみ・横揺れを計測

(例)カメラで撮影した動画を解析

(例)変位を計測すると異常を通知

計測データを無線通信で送信・保存

(例)センサで計測したデータを無線通信で送信し遠隔で確認

鋼部材の塗膜下のき裂を計測

(例)渦電流探傷法でき裂を判定

3次元点群データを利用しスクリーニング

(例)設計CADデータと点群データの偏差解析から損傷個所を見える化

うき・剥離

<塩害補修効果のモニタリング>

(例)電極と腐食センサを設置し塩分浸透と鉄筋腐食を計測

<ロボットで画像を計測>

(例)ワイヤにロボットを吊下げ画像計測

<ひび割れ画像解析>

(例)画像解析によりひび割れ長さ/幅を定量的に評価

(出典:応募資料より引用し技術を例示)

29

技術検証に応募のあった技術

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点検技術者の質の確保

① 定期点検要領の改定

背景

38

76

110139

176

0

100

200

H26 H27 H28 H29 H30

② 民間登録資格(点検・診断)

資格取得に必要な実務経験等にバラツキがある

〈登録資格の累積(道路関係)〉

増加

資格 実務経験 技術研修点検関係の設問数

A点検実務7年

○ 5/50問

Bその他実務

4年○ 6/40問

Cその他実務

7年× 8/30問

Dその他実務

3年○

(点検実務1年)14/20問

〈登録資格の例〉

点検は(中略)知識及び技能を有する者が行うこととし、近接目視により、五年に一回の頻度で行うことを基本とする。

4.状態の把握健全性の診断の根拠となる状態の把握は、近接目視により行うことを基本とする。

(法令運用上の留意事項)定期点検を行う者は、健全性の診断の根拠となる道路橋の現在の状態を、近接目視により把握するか、または、自らの近接目視によるときと同等の健全性の診断を行うことができると判断した方法により把握しなければならない。

(付録:定期点検の実施にあたっての一般的な留意点)自らが近接目視によるときと同等の健全性の診断を行うことができると定期点検を行う者が判断した場合には、その他の方法についても、近接目視を基本とする範囲と考えてよい。

省令(道路法施行規則)

道路橋定期点検要領(平成31年2月)

活用是非の判断など、一巡目に比べて点検技術者の裁量が拡大

② 委託点検(橋梁)の技術者における経験

(R1.7道路局調べ)

0 5 10 15

点検業務の実務経験年数

B県

C市

A事務所(国)

1業務における技術者の実務経験年数

4 12

4 6

2 5

0 100 200 300

1業務における技術者の診断数(1年あたり)

B県

C市

A事務所(国)

一人あたり診断橋梁数/年(過去5年間の平均)

232 246

127 157

29 103

※1 研 修:国土交通省が実施する道路管理実務者研修又は道路橋メンテナンス技術講習※2 民間資格:国土交通省登録技術資格(公共工事に関する調査及び設計等の品質確保に資する技術者資格登録規定に基づく国土交通省登録資格)

点検技術者の保有資格の現状

① 点検実施者の保有資格・研修受講歴

※H30に点検を実施

した橋梁のうち、報告があった107,018

橋を対象に橋梁数ベースで算出

H30点検実施橋梁の直営点検と委託点検の割合

13%

87%

直営点検13,730橋

委託点検93,288橋

(H31.3末時点道路局調べ)

直営点検

3%

35%

8%

54%

研修受講かつ民間

資格保有

研修受講のみ

民間資格保有のみ

研修・資格ともになし

研修受講(38%)

研修・資格ともになし(54%)

委託点検

7% 3%

48%

42%

研修又は民間資格(58% )

研修・資格ともになし(42%)

点検技術者が備えるべき知識や技術を明確にし、適切な措置に必要な診断を確実に実施できる体制を整備 30

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○ 安全、高品質、低コストな道路サービスの提供、道路事業関係者のプロセス改善、産業の活性化を目的に、良い技術は活用するという方針の下、これまで新技術の活用が十分でなかった異業種、他分野、新材料等も含め、新技術開発・導入を促進。

○ このため、道路技術懇談会を設置し、毎年度の取組(新技術導入促進計画)を見える化。その際、技術公募や意見交換により検討を加速化するとともに、現場の課題解決や導入方法(基準類への反映)検討のための体制も強化。

○ これらの取組により、新技術導入の隘路となっている公共調達の壁や現場に内在されているニーズの抽出等の課題を克服。

<基本方針>

斬新なアイデアを取込んだ道路の多機能化・高性能化

業務プロセスの効率化に資するICT技術等の活用

異業種・他分野とのイノベーション

斬新なアイデアの取込み•従来の道路の概念にとらわれない新しい技術の取り込み

促進計画で取組む技術に対するリクワイヤメントの抽出

導入促進機関の審査

技術公募+

意見交換検討を加速化

新領域へのチャレンジ•道路と他分野との連携を積極的に推進

非接触充電技術

ドローン(点検技術)

衛星技術

実務の効率化の例•計測・モニタリング技術の活用など、近接目視によらない点検・診断方法の確立・導入

•衛星によるモニタリングなど、防災点検・土木構造物点検を効率化 等

①安全、高品質、低コストな道路サービスの提供 ②道路事業関係者のプロセス改善 ③産業の活性化

新技術・新工法の積極的な導入•近年開発が進む軽量・高耐久の材料等を設計段階から取り込み、工事への活用を推進

•活用を可能とするための要求性能や性能の確認方法等の充実

新技術・新工法の導入を可能とする技術基準類の整備

<重点分野>

導入促進機関 技術の導入方法の検討 技術の公募・実証 従来技術との比較

<体制強化>

低位置照明

斬新なアイデアや新領域の例

道路技術懇談会

道路における新技術の積極的な活用について

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新材料・新工法の導入(修繕費用の縮減)

背景

技術基準の現状

① これまでの補修工事のコスト縮減 ②新材料や新工法の開発

新設 点検 修繕

道路橋 道路橋示方書

道路橋定期点検要領

トンネル トンネル技術基準

トンネル定期点検要領

新設 20年経過 80年経過

道路橋 100年 - -

修繕の技術基準がなく、各管理者がそれぞれ修繕方法を判断

修繕(補修・補強)に関する技術基準

技術基準で求められている耐久性能

新材料・新工法の性能の確認方法が明示されていないため、補修工事に採用しにくい

材料 工法(床版の場合)

技術基準(新設)

【材料としての性能】

• 材料特性が明らかで保証されていること

【部材としての性能】• 部材としての設計法が明らかで保証されていること

【床版としての性能】• 床版としての設計方法が明らかで保証されていること

性能の確認方法

鋼材、コンクリートのみ規定

鋼部材、鉄筋コンクリート部材、PC部材のみ規定

鋼床版、鉄筋コンクリート床版、PC床版、ずれ止め(桁との接合部)、ループ継手等のみ規定

• 定期点検や耐震補強と補修工事の同時施工による足場の共有など、主に施工方法を工夫することでコストを縮減

足場共有写真中国地整へ依頼中

橋梁点検と補修工事で足場を共有

クレーンで主桁を撤去して支承を補修主桁は工場で補修し再架設

• 近年、新材料や新工法の開発が進んでおり、補修工事への活用が期待されている

米国のFRP歩道橋の例(FRP:繊維強化プラスチック) プレキャスト床版

地方公共団体は修繕方法や工法の明示を要望

技術基準(道路橋に求める性能)

39.6%

32.9%

31.4%

25.2%

22.2%

20.2%

6.3%

0% 20% 40%

地方公共団体(有効回答数N=1,664)

修繕方法の明示

関係機関との円滑な調整

修繕工事の一括発注

修繕計画の立案

修繕の技術や工法の認証

国等による代行

その他

修繕を進めるために必要と考える取組(予算以外)

:体制支援

:技術支援

(R1.6道路局調べ)

鋼材やコンクリート以外の材料や部材等以外は規定されていない

補修・補強に係る技術基準(性能)、性能の確認方法、使える技術の見える化を産官学連携で整備し、修繕に係るコストを縮減

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軽量で耐久性に優れる新しい横断歩道橋の床版技術の公募

上面の雨水が凹部に滞水

下面

上面(コンクリート撤去後)

標準設計で示されていた横断歩道橋の床版構造

下面:鋼板の腐食・落下により、第三者被害が生じる可能性

横断歩道橋(全景)

上面(内部が確認できない)

デッキプレート(鋼板)

充填コンクリートアスファルトブロック舗装

上面:舗装の目地等から水が床版内に侵入し滞留。内部から腐食が進行するため、損傷が発見しにくい。

○ 腐食が進行している横断歩道橋の床版について、早急に適切な措置を行うことを目的に、管理者としてのニーズ及びリクワイヤメントを明示した上で新しい材料を想定した床版補修技術の公募を実施。

①腐食しない又は腐食しにくい高耐久性を有する床版

①補修によって同じ損傷を生じさせない

<ニーズ>

<リクワイアメント>

②従来の床版よりも軽量な床版

②補修の際に既存の構造に影響を与えない

③従来の床版よりも安価に施工・管理できる床版

③補修コストの低減や維持管理の省力化

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住民等からの意見要望 補修計画・施工 除雪作業道路巡回 道路監視

【現状】

・ 巡回結果を紙で保存し、書面作成

プラットフォーム

現 状

【課題】

・ 作業手間(書面作成)・パトロール時の見落とし・緊急事態の映像等の共有・異常発生時の伝達の遅れ

【現状】

・ 事務所で職員等がカメラ映像等データで監視し、異状を確認

【課題】

・ 常時監視の必要・パトロール時の見落とし

【現状】

・ 電話・メール等で受け付け処理

【課題】

・ 場所の確定、台帳確認等、対応に時間がかかる

【課題】

・ 補修計画を立案するための資料作成に期間を要する

【現状】

・ 現地測量を実施し、台帳関係を管理して補修計画を立案

【現状】

・ 技能を持つ熟練のオペレータが操作

ICT、AIを活用した新たな維持管理システム

基盤地図情報 DBサーバ

タブレットを活用した道路巡回システム

パトロール車への車載カメラ搭載によるリアルタイム映像共有

住民等の意見要望の受付・処理統合システム

AI技術を活用した異常時及び交通障害物の自動

検知システム

・各種台帳のデータベースとの連携・3次元点群データの活用システム

・GPSを用いた交通障害確認システム・除雪作業の自動化

新技術の実装

ICT、AIを活用した新たな維持管理システム (イメージ)

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【課題】

・オペレータが不足。・操作に熟練度が必要。

“スマートメンテナンス(仮称)”