聴覚障がい者に対する...

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聴覚障がい者に対する 服薬指導支援ツールの重要性 ◯佐々木逸太郎、木村由紀恵、木原春日、畑中啓、原田芳徳多田浩明、小下和也、三宅惇也、熊谷恭子、中原拓也、古屋憲次株式会社ホロンすずらん薬局グループ 第51回 日本薬剤師会学術大会 2018年9月23日(日)・24日(祝) 金沢

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聴覚障がい者に対する服薬指導支援ツールの重要性

◯佐々木逸太郎1、木村由紀恵1、木原春日1、畑中啓1、原田芳徳1、多田浩明1、小下和也1、三宅惇也1、熊谷恭子1、中原拓也1、古屋憲次1

1株式会社ホロンすずらん薬局グループ

第51回 日本薬剤師会学術大会2018年9月23日(日)・24日(祝)

金沢

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【はじめに】我々は設立当初から「すべての人にやさしい薬局でありたい」という企業理念のもと

様々な障がいを持たれた方にきめ細やかなサービスを提供できるよう一貫してグループ全店で取り組んできた。2015年に行った各種障がい者団体へのヒアリングを通じ、障がい者向けの新たな服

薬指導支援ツール(遠隔手話通訳、筆談、音声文字変換システム)を全店に導入した。また、2017年に広島県聴覚障害者センターでのイベントにおいてお薬相談を実施し

た。今回、障がいを持たれた方の服薬指導支援について若干の知見を得たので報告する。

手話や筆談での対応、手話勉強会への参加 音声コードの薬情印字や点字シール対応

これまでの当社の取り組み

耳マーク設置、FAXカードでの夜間対応

聴覚障がい者向け

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個々の状況に応じた調剤と情報提供が可能な体制が必要

(例:視覚障がいの方への音声による情報提供・聴覚障がいの方への

手話、筆談など、また個別状況に応じた様々なニーズに)

臨機応変な対応と事前準備

○身体的・知的レベル能力に課題のある方

○お年寄りから乳幼児まで

○さまざまな国の言語を話す人等々

すべての人にやさしい薬局としての機能整備

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【目的及び方法】

薬局内外にて刷新した服薬指導支援ツールを積極活用する

当社ではかねてより耳マークを設置して筆談による対応を行い、「病院に手話のあるネットワークの会」に参加して医療手話の習得に努めていたが、以下の課題に直面していた。

➤ 手話の利用頻度が少なく職員が忘れる➤ 高度な会話になると筆談に頼ることになり時間がかかる➤ グループ全店に手話のできる職員を配置できない

◆課題

薬局における課題の解決を図るため、広島市ろうあ協会、広島県手話通訳問題研究会、広島県聴覚障害者センターにおいてヒアリングを実施し障がい者向けの取り組みを刷新する。

◆目的・方法

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聴覚障がい者団体へのヒアリング結果

ヒアリング結果 ヒアリング後の薬局対応

聴覚障がい者

全ろう ・長文、難しい言葉の理解ができない

共通

・筆談が煩わしい

・耳マークが見えるだけでとても安心できる

・分からなくても「分かった」と言う癖がある

・待ち時間が苦痛(受付に呼ばれるのを気にするため)

・障がいに気付かれにくく、健常者と同様に扱われる

・薬局で相談できず、障がい者団体に度々問い合わせがある

中途失聴者 ・薬剤師が話した内容を文字で見返したい

ヒアリング対象:広島市ろうあ協会、広島県手話通訳問題研究会、広島県聴覚障害者センター

①マニュアルに沿って対応一覧表を提示し、手話・筆談・音声認識を患者に選んでもらう

②簡単な挨拶(こんにちは・お大事)は手話で行う

③理解度や疑問点を通常よりも慎重に確認する

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ヒアリング後に導入したシステム

聴覚障がい者(手話言語者)

手話通訳コールセンターに接続

加齢による難聴・中途失聴者

手書き・音声文字変換機能(日本語)

中途失聴者(加齢による難聴者)

外国人の方向け

音声文字変換機能 多言語翻訳機能

遠隔手話通訳(Facetime)

筆談(UD手書き)

音声認識(UDトーク)

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アンケート処方せん応需1 2

iPadの準備3 服薬指導4

対応: 遠隔手話通訳 / UDトーク / UD手書き

処方箋受け取り後、下記の表でご案内する アンケート記入後、服薬指導の方法を下記の対応一覧表でご案内する

□ Wi-Fi(micaer)接続確認

□ ヘッドセット・台座準備

□ 音量最大の確認

□ 横画面へ変更

iPadでコミュニケーションツールを開く

□ Facetimeサインインの確認

聴覚障がい者への対応マニュアル

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広島県聴覚障害者センター祭り お薬相談ブース出展

広島県聴覚障害者センターで開催されたイベントで薬剤師と栄養士が体組成測定、お薬相談を実施した。聴覚障がい者の来場者12名に対し遠隔手話通訳や音声文字変換システムを

利用した結果、生活習慣についての日常的な疑問、ジェネリック医薬品や服用薬の副作用の相談など薬局の窓口で解決できる質問等が目立った。

日時:平成29年12月16日(土)

10:30~12:00

場所:広島県聴覚障害者センター

参加人数:12名(全ろう者11名、難聴者1名)

※当社から薬剤師1名、管理栄養士2名

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【結果1】導入したシステムを薬局で利用したところ、情報伝達量が相互に増え、き

め細やかな服薬指導が行えた。また、残薬調整や剤形変更につながる事例があり、安全な服薬指導や患者満足度の向上に繋がっていることが分かった。

・安心して薬の説明が受けられる

・時差なく手話が行われてスムーズ

・病院で質問できなかったことが解決できた

・いつもすぐに帰られた患者様が20分も楽しそうに話をされた

・今までできなかった雑談から患者背景を知ることができた

・サービスに感動されて、かかりつけ薬剤師の契約に繋がった

患者様からの声

薬剤師からの声

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【結果2】薬局外でのお薬相談ブースでは聴覚障がいを持たれた方が行列を作り、一

定の需要があることが分かった。また、日常生活での素朴な疑問、薬局窓口で解決できる質問などが目立ち、普段の服薬指導で十分なコミュニケーションが取れていない恐れがあると感じた。

・スポーツ飲料を飲んだ方がいい?

・肉が好きだけど中性脂肪やコレステロールが多いと病院で言われたが食べないほうがいい?

・ジェネリック医薬品は開発途中の薬だと思って拒否しているが…

・睡眠薬を飲むと寝坊するんだが…

参加者からの相談

参加者からの感想

・機会があればまた参加したい

・思ったより通訳がスムーズだった

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【考察】

1 聴覚障がい者への服薬指導支援システムの活用は、従来の筆談対応ではできなかった服薬に関する疑問解決や疑義照会につながり、聴覚障がい者とのコミュニケーションにおいて一定の効果が確認できた

3 各障がい者への対応についての知見が薬剤師会等の研修を通じて共有されていくことが急務と考えられる。また、大学教育の場でも障がい者対応に関する教育を早期に実施することも必要と考えられる。

2 同システムの導入・運用費から鑑みると薬局への導入は容易ではない

➤ 固定費+通話料 > 処方箋1枚技術料

➤ 広島市薬剤師会でワーキンググループを立ち上げ、広島市身体障害者福祉団体連合会の協力を得て「薬局に対する要望」についてのアンケート調査を各障がい者団体へ実施中

➤ 相手の目線に立った心配りや声掛けの姿勢が何よりも重要