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製造業で働く Into The Manufacturing Industry 製造業の未来 “Japan as No.1” と言われた1980 年代、日本の製造業は世界マーケットを席巻していました。当時は、系列と言われる大メーカーを頂点にしたピラミッド型グループが、大量生産を前提 に、高品質でかつ価格競争に強い製品を世界中に売りまくりました。家電、コンピュータ、自動車と言った消費財から、生産設備、精密部品等生産財まで、マーケットシェアを独占する ような時期でした。その後、新興国の猛烈な追い上げや、成熟した消費マーケットへの変遷などにより、国際競争は激化、多品種少量生産へのシフトなどにより、徐々に日本の製造業は 競争力を失いつつあります。今、製造業の国際マーケットの状況をゲームのオセロに例えれば、売上高が比較的大きい、半導体、スマートフォン(通信)、家電の三隅を押さえられ、辛う じて4 つ目の角である自動車産業で存在感を保っているのが現状だと言われています。 日本は、人口が減少し、生産年齢人口も今後激減し、人材不足が益々激化していくことは周知の事実です。 “Japan as No.1” と言われた時代においても、中小製造業は3K イメージが強く、 若年層の人材確保が難しい状況でした。それでも、業績が好調であれば、賃金に跳ね返り、製造業で働くモチベーションを維持できる環境ではありましたが、前述したように、これまで の日本の製造業モデルで、国際競争を勝ち抜くことは至難の業となり、 3K 環境で、同じ製品を毎日毎日作り続けることは、労働意欲を維持することが難しくなってきています。製造業の 名門と言われてきた大企業の中にも、不正や経営のかじ取りに失敗し、倒産、売却、縮小など、何が起きても不思議ではない不透明な時代に、今、中小製造業で、作り手の夢やロマンが 感じられるようなミッションに挑戦し、若い技術者が結集している企業が数多く出現してきており、力強い胎動を響かせています。これまでの、典型的な製造業イメージを払しょくし、 やりがい、働きがいのある現場を実現しようという取り組みを幾つか紹介したいと思います。夢やロマンだけでは生き抜くことはできませんが、イノベーションがない産業は、活力を失 い存在すらできない時代に入ろうとしています。日本という国は、第 3 次産業だけでは生きていけません。変容を遂げようとしている製造業の未来をもう一度見直し、就職、転職時に ものを作る 産業界も、選択肢の一つとしてぜひ考えてください。日本にも、 Google Amazon Tesla Facebook のような、これまでの業界の枠組みを超える企業が生まれてくることを願 います。その夢を実現する次世代人材に期待します !! 製造業で働くには 大学等の理工学系の教育を受けていない方でも、学びなおしのチャンスはあります。国の職業能力開発機関が京都府内に設置されており、技術系の職業能力開発 プログラムを提供しています。興味のある方は、ぜひサイトでご確認ください !! ポリテクセンター京都 京都府長岡京市 http://www3.jeed.or.jp/kyoto/poly/ ポリテクカレッジ京都 京都府舞鶴市 http://www3.jeed.or.jp/kyoto/college/ 京都府立京都高等技術専門校 京都府京都市伏見区 http://www.pref.kyoto.jp/kyokgs/index.html 福知山高等技術専門校 京都府福知山市、 http://www.pref.kyoto.jp/fukukgs/index.html 機械加工・金属加工編 発行:ポリテクセンター京都

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Page 1: 製造業で働く - jeed.or.jp€¦ · 製造業で働く. Into The Manufacturing Industry 製造業の未来 “Japan as No.1”と言われた1980年代、日本の製造業は世界マーケットを席巻していました。当時は、系列と言われる大メーカーを頂点にしたピラミッド型グループが、大量生産を前提

製造業で働く

Into The Manufacturing Industry

製造業の未来

“Japan as No.1”と言われた1980年代、日本の製造業は世界マーケットを席巻していました。当時は、系列と言われる大メーカーを頂点にしたピラミッド型グループが、大量生産を前提に、高品質でかつ価格競争に強い製品を世界中に売りまくりました。家電、コンピュータ、自動車と言った消費財から、生産設備、精密部品等生産財まで、マーケットシェアを独占するような時期でした。その後、新興国の猛烈な追い上げや、成熟した消費マーケットへの変遷などにより、国際競争は激化、多品種少量生産へのシフトなどにより、徐々 に日本の製造業は

競争力を失いつつあります。今、製造業の国際マーケットの状況をゲームのオセロに例えれば、売上高が比較的大きい、半導体、スマートフォン(通信)、家電の三隅を押さえられ、辛うじて4つ目の角である自動車産業で存在感を保っているのが現状だと言われています。 日本は、人口が減少し、生産年齢人口も今後激減し、人材不足が益々 激化していくことは周知の事実です。“Japan as No.1”と言われた時代においても、中小製造業は3Kイメージが強く、

若年層の人材確保が難しい状況でした。それでも、業績が好調であれば、賃金に跳ね返り、製造業で働くモチベーションを維持できる環境ではありましたが、前述したように、これまでの日本の製造業モデルで、国際競争を勝ち抜くことは至難の業となり、3K環境で、同じ製品を毎日毎日作り続けることは、労働意欲を維持することが難しくなってきています。製造業の名門と言われてきた大企業の中にも、不正や経営のかじ取りに失敗し、倒産、売却、縮小など、何が起きても不思議ではない不透明な時代に、今、中小製造業で、作り手の夢やロマンが

感じられるようなミッションに挑戦し、若い技術者が結集している企業が数多く出現してきており、力強い胎動を響かせています。これまでの、典型的な製造業イメージを払しょくし、やりがい、働きがいのある現場を実現しようという取り組みを幾つか紹介したいと思います。夢やロマンだけでは生き抜くことはできませんが、イノベーションがない産業は、活力を失い存在すらできない時代に入ろうとしています。日本という国は、第 3 次産業だけでは生きていけません。変容を遂げようとしている製造業の未来をもう一度見直し、就職、転職時に”ものを作る”産業界も、選択肢の一つとしてぜひ考えてください。日本にも、Google、Amazon、Tesla、Facebook のような、これまでの業界の枠組みを超える企業が生まれてくることを願います。その夢を実現する次世代人材に期待します!!

製造業で働くには 大学等の理工学系の教育を受けていない方でも、学びなおしのチャンスはあります。国の職業能力開発機関が京都府内に設置されており、技術系の職業能力開発プログラムを提供しています。興味のある方は、ぜひサイトでご確認ください!! ポリテクセンター京都 京都府長岡京市 http://www3.jeed.or.jp/kyoto/poly/ ポリテクカレッジ京都 京都府舞鶴市 http://www3.jeed.or.jp/kyoto/college/ 京都府立京都高等技術専門校 京都府京都市伏見区 http://www.pref.kyoto.jp/kyokgs/index.html 福知山高等技術専門校 京都府福知山市、http://www.pref.kyoto.jp/fukukgs/index.html

機械加工・金属加工編

発行:ポリテクセンター京都

Page 2: 製造業で働く - jeed.or.jp€¦ · 製造業で働く. Into The Manufacturing Industry 製造業の未来 “Japan as No.1”と言われた1980年代、日本の製造業は世界マーケットを席巻していました。当時は、系列と言われる大メーカーを頂点にしたピラミッド型グループが、大量生産を前提

“ヤッターワンオブジェプロジェクト” 仲間と達成感を共有する!!

京都機械金属中小企業青年連絡会(通称:機青連)は、京都府内の中小製造業80社

の青年経営者及びそれに準ずる者で構成している任意団体で、設立35周年を迎えまし

た。「機青連ものづくり事業“ヤッターワンオブジェ”」の取り組みについて、ご紹介し

ます。このプロジェクトの中心的役割を担われた 有田一繁(株式会社有田製作所代表

取締役)さんにお話を伺いました。 ★ヤッターワンオブジェプロジェクトに取り組もうとした動機は何ですか?

「受注した部品製造を納期に間に合うよう

日々 黙々 と仕事に取り組んでいますが、自ら企

画・開発・設計をする機会が少ないので、自分

たちの技術力を結集し、完成品を作ることで、

関わった会員や社員さんのモチベーションを上

げる、達成感を感じる機会を共有し、京都・日

本のものづくりをアピールしようという思いで、

このプロジェクトに取り組みました。京都は、

アニメーションや漫画の作品も発信しています

し、聖地と言われる場所も数多くあり、コンテ

ンツビジネスも盛んな地域でもあるので、係わ

るメンバーが子どものときに親しんだ「ヤッタ

ーワン」製作に向けて、タツノコプロ様のご理

解もいただき、取り組むこととなりました。」 完成したオブジェは今後、京都府内に常設展示し、

多くの子どもさんたちに見て楽しんでもらい、お父さん、お母さん達に懐かしんでいただきた

いと思います。 ★このプロジェクトに取り組んでみて感じたことは? 「最初は、やはり大変でした。本業が終わってからや、休日に関係者が集合して、共

同作業を行うわけですから、思うように工程がこなせず、予定工期を大幅に超過する結

果になってしまいました。ただ、完成した時の達成感、満足感、安堵感は関わった者全

員が感じていたと思います。また、色々 な課題はありますが、製造業の中小事業者がお

互いの得意技術を持ち寄れば、下請け仕事だけではなく、大メーカーに依存せず、最終

製品を供給することもできるのではないかという可能性は感じました。」 ★このプロジェクトを通して、次世代人材への希望、または伝えたいことはあります

か? 「今回白紙の状態から、企画・開発・設計そして製作という全工程を、各社から関わ

ってくれたメンバーで担当したのですが、通常業務ではあまりやらない企画、加工した

事が無い3D形状を形にしていく開発設計面でだいぶ苦労しました。これからの現場技

術者は、加工する技術だけではなく、想像力や構想力と言ったクリエイティブな能力も

ぜひ伸ばしてもらい、市場変化に対応できる“ものづくり”に取り組んで欲しいと思い

ます。日本の製造業は、昔の3Kイメージや、同じ製品を大量に生産しているという状

況から、大きく変わろうとしていますので、若い方に、この業界でぜひチャレンジして

欲しいですね。」

★歴史のある会員企業が多いと思いますが、何を継承したいとお考えですか? 「まずは、先代から引き継いだ“信用”を傷つけないことです。それは、確かな品

質、納期を守る、サービスの質を下げないなど、信用を支えてきたこれらのことは、

きちんと継承したいと考えています。」 ★これからの中小製造業のビジョンについてお聞かせください 「もはや、日本の製造業には、大量生産時代は訪れないでしょうし、価格競争で消耗

するのも、苦労してものを作る意味がありません。以前から言われていたように、付加

価値の高い製品、高い技術力を求められる製品に特化していき、中小製造業が担う役割

が益々 細分化していくと思います。そういう時代で、生き残っていくには、得意分野を

必ず持つということが、中小の製造業事業者にとって重要だと考えています。そのため

には、共にがんばる若者が増えてくれることを願っています。」

言うまでもありませんが、日本の“もの づくり”を支えているのは、大メーカー だけではなく、様々 な技術分野で高品質 な部品を供給する中小企業の存在があ ったからこそ国際市場で戦ってくるこ とができました。ただ、国際社会の在り 様も大きく変化し、これまでの日本型事 業モデルでは、競争できなくなりつつあ ります。中小企業の若い経営者層は、イ ノベーションに取りくもうと必死です。 やる気のある企業で皆さんが力を発揮 されることを切に願います。

京都機械金属中小企業青年連絡会[KISEIREN]

代表幹事 土肥 秀則 氏 [土肥板金工業(株)] (H29.10.1 現在)

連絡先

[email protected]

ヤッターワン SPEC w2,483×d2,504×h3,360 重量 約 1.5t

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「魅力的な会社であり続ける!!」

株式会社由紀精密の挑戦 相模線北茅ヶ崎駅から徒歩5分のところに、由紀精密本社はあります。社屋・ 工場の外観は、どこにでもある日本の典型的な中小製造業の佇まいですが、今後 の日本の製造業の将来ビジョンを自ら切り開いている活力に溢れ、話を伺うだけ でも心がワクワクするものづくり企業でした。会社経営や、製造業の将来につい て三代目である代表取締役社長大坪正人さんにお話をお聞きしました。 ★由紀精密に転職した動機をお聞かせください 「当時、メディアでもよく取り上げられていた成長企業に勤めていたのですが、

ITバブル崩壊などもあり、家業の経営がギリギリで、親の体調も心配な状況でし た。真面目にコツコツと技術を積み上げてきた会社が時代の進化に取り残されて 無くなって良いのか、自分にはこの会社を存続させる使命があると強く感じて、 家に戻ることにしました。創業以来60年切削加工一筋で操業してきた会社だった のですが、量産品を作り続けていては、いつか仕事がなくなるだろうという危機感 から、経営ビジョンの切り替えに力を注ぎました。多品種少量生産、高品質、高精 度の製品供給を目指し、新たに設計部門も作り、試作、提案もできる新しい由紀精密への道を歩み始めました。由紀精密が継承してきた「信頼性」を背景に、航空宇宙関連、医療

機器関連などに仕事をシフトしていき現在に至りました。」 ★若い世代が製造業で働くことを敬遠しがちですが 「まず、ものづくりの現場を知らない、ものづくりの魅力がわかっていないことが上げられると思います。それは、経営者の方にも問題があって、伝える努力、情報発信を怠っ

ていることもあります。今、日本の町工場の高い技術力を絶やさぬよう、“町工場はカッコいい”“大企業から中小企業へ”というコンセプトで、工場の加工機の音と動きにミュー

ジックをリミックスした映像が、ネットで配信されています。 “INDUSTRIAL JP”というレーベルで、私もアドバイザーとして立ち上げに参加しました。また、別のプロジェクトでは、「ARTSAT2 DESPATCH」という芸術衛星の設計支援・

製造も行ないました。社業には直接関係しないかも知れませんが、そういった取り組みで、メディアで社名を取り上げてもらう、社会認知度が上がるということが、若手人 材確保に有効だと思うからで、自社はこんな会社です、こういうことに取り組んでいますという情 報発信の一例です。中小企業には良い人材が集まらないとよく言われます。逆に小さい会社だから こそできることもあると自分は考えていて、経営者は自分の会社のビジョンを語り、社員一人ひと りの重要性を説き、彼らのアウトプットを評価して会社の成長に連結させることだと思っています。 “良い人材”から見て、魅力的な会社であることが、人材確保の全てではないかと考えています。」

★由紀精密が取り組んでいるプロジェクトをいくつか紹介します [PROJECT tourbillon] 日本を代表する独立時計師の浅岡肇氏、工具メーカーOSGとの共同プロジェクト。 機械式時計の中でも超複雑機構と言われている“トュールビヨン”を搭載した時計を ムーブメントからオリジナル設計で製作する試み。130を超える部品全てを削り出し で作りました。 https://ja-jp.facebook.com/ProjectTourbillon [たんぽぽ計画] 「生命は宇宙空間を移動するのではないか」というパンスペルミア仮説を検証する

ための試みで、由紀精密では、捕集パネルのエアロゲルを組み込む構造体部分の製造

を担当しています。

この他にも、胸躍るプロジェクトに由紀精密は取り組んでいます。

サイトでぜひ確認してみてください!! http://www.yukiseimitsu.co.jp/project/

★製造業を担う次世代人材へメッセージを

「今、時代は情報が錯そうしていて、何が本質かを見極めることが非常に難しくなったと感じています。誰かが言ったことを鵜呑みにしないで、原データから自分で考える力を

ぜひ培ってほしいですね。また、あまり日本という地域にこだわらず、世界でビジネスを展開するんだ位の気概も持って欲しいと思います。“ものづくり”は奥が深いので、ぜひ本

気で取り組んで欲しいと思います・」

株式会社由紀精密 〒253-0084 神奈川県茅ケ崎市円蔵370 従業員数 33名(パートタイマー7名含む) 主たる業務:航空宇宙関連部品の試作・量産、医療機器関連部品の試作・量産、電気・電子機器部品の試作

・量産、半導体製造装置・各種試験装置部品の試作・量産、自動車関連部品の試作・テスト装置の開発、

人工衛星筐体の設計・製作、人工衛星エンジンテストベンチの設計・製作、特殊環境(高温、低温、真空等)で用いられる装置の設計・製作

INDUTRIAL JP http://idstr.jp/jp/

ARTSAT2 DESPATCH https://artsat.jp/

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「好きならばやってみなさい!!」

AERO CONCEPT 職人 菅野 敬一

京浜東北線川口駅からバスで約20分、住宅と工場が混在する地域に小さな町工場 があります。どこにでもあるような板金工場、そこが世界中の目利きから注目され る「AERO CONCEPT」の製品が生み出される場所です。“ものづくり”への考え方、 若い人たちへのメッセージなど、“職人 菅野敬一“さんにお話をお聞きしました。

★エアロコンセプトブランドが生まれた経緯をお聞かせください

「元々 は、東京の麻布で祖父の時代から続く板金工場でした。自分が引き継いで、

会社を倒産させてしまったのですが、飛行機のジュラルミン部品などを下請けで作っ

ていました。バブル景気がはじけて、取引先から仕事が入らなくなり、会社を潰してしまったのですが、その時期は非常に苦しい思いもしました。そんな時、自分用に製作し使っ

ていたジュラルミンケースを、お客さんから作ってくれないかという依頼があって、自分がカッコ良いと思って、好きなように作ったものでも売れるんだということに気づきまし

た。デザインの勉強もしたことがない、営業やプロモーションもやったことがない自分が好きで作っているものを、人様が買ってくれるということは、かなり嬉しかったですね。

その後、人づてに商品が知られるようになり、曲がりなりにも「AERO CONCEPT」というブランドで、昔から一緒にやってきた職人と共にやっていけるようになりました。」

★エアロコンセプトのポリシーについて教えてください

「一度、会社を倒産させていますので、残りの人生は自分が作りたいものを作っていこうと思っています。ありがたいことに、

これまでも、世界的に有名なブランドやメーカー、大店舗等からもコラボレーションのお話をいただきましたが、量産して大きく

利益を上げようとか、万人受けを狙おうとするとビジョンがぶれて、自分の思いとは違うものになってしまうことが、下請け仕事

の経験からわかりすぎるほどわかっていますので、丁重にお断りしてきました。ただ、自分のビジョンが共有できる仕事は、今後

も積極的に取り組んでいきたいと思っています。自分が考えるカッコ良さ、素敵なことを製品にし、まだまだ新しい「AERO CONCEPT」には挑戦していきたいと思っています。」

★若者が「ものづくり分野」の現場に少なくなってきている現状について

「相変わらず3Kイメージが強いですからね。製造業に限らず、職場を決める際は、まず、自分の内側をよく見る、自分は何が好

きなのか、何がしたいのかをとことん見つめ直すことが重要だと思っています。どんな業種・職種で働いても楽しいことや良い事ば

かりではありません。必ず我慢しなければならない局面は訪れるわけで、そんな時、本当に好きなことであれば乗り越えることがで

きるはずです。“ものづくり”をやりたいのであれば、まず、ものづくりが好きであることが必要です。給料やその他の労働条件も

要ではありますが、まず“自分が好きなことは何か”を真剣に考え、“好きならばやってみればいいのではないですか、若い人はチ

レンジしなければ”。最近の製造業は、効果・効率を重視し、ITや自動化技術により、どこの国でも、誰でも同じようなものが作れる

ような時代になりましたが、職人は全くの白紙からこれまでにない製品を作れる存在だと思っています。ものづくりが好きで、熱意や思いがあれば、職人には、夢があって面白い

ことが、これからも、まだまだあると思いますね。」

「AERO CONCEPT」ブランド製品は、ハリウッドスターのジョージ・ クルーニー、ロバート・デニーロなどが愛用する他、トム・クルーズ主演 の映画「ザ・マミー」の中でも使われています。「職人 菅野 敬一」さん にお会いしてお話を伺ってみると、その製品群は、菅野さんがこれまで歩ん でこられた世界観、人生観が色濃く反映していて、そこが目利きと言われる 消費者層の心をつかみ、口伝えに存在が知られるようになったんだなと感じ ました。ご本人は、非常に多趣味で、また、様々 な分野に造詣も深く、何に でも全力で向き合ってきたことがよくわかる人物でした。その生き様が、魅 力的な人脈形成に繋がり、仕事にも当然影響しながら、「AERO CONCEPT」 が進化していることもよくわかりました。これから、製造業で働こうかと考 えている若い皆さんにお伝えしたいことは、色々 なことに興味を持ち、自分 の感性を磨いていくことを大切にして欲しいことと、自分が本気で打ち込め るものは何かをぜひ真剣に考えていただきたいことです。「職人 菅野敬一」 さんが取り組まれていることは、誰にでもできることではありませんが、少 なくとも、自分が夢中にならなければ、チャンスも運にも巡り会えないと思 います。

近々 、「AERO CONCEPT」のショップが、京都にもオープン予定です。ご興味のある方は、ぜひ現物をご覧になって下さい。

「AERO CONCEPT」のアタッシュケースなどの開閉音は、“ライカ”のシャッター音がします。菅野さんがこだわって試行錯誤した成果です。使うのが楽しくなる素敵な音でした。

株式会社 エアロコンセプト 〒334-0012 埼玉県川口市八幡木3-8-10 事業内容 ・精密板金加工

・エアロコンセプト製品の製造・販売 従業員数 9名

URL:http://www.aeroconcept.co.jp/company.html