鋼橋溶接部の非破壊検査のための tofd超音波探傷システムの性 … · 図-1...

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鋼橋溶接部の非破壊検査のための TOFD 超音波探傷システムの性能試験 三木 千壽 1 ・西川 和廣 2 ・白旗 弘実 3 ・高橋 4 1 フェロー会員 東京工業大学工学系長 教授 理工学研究科土木工学専攻 (152-8552 東京都目黒区大岡山 2-12-1) E-mail:[email protected] 2 正会員 国土交通省 国土技術政策総合研究所 研究総務官 (305-8516 茨城県つくば市南原 1-6) E-mail:[email protected] 3 正会員 武蔵工業大学助教授 工学部都市基盤工学科 (158-8557 東京都世田谷区玉堤 1-28-1) E-mail:[email protected] 4 正会員 独立行政法人 土木研究所 研究員 構造物研究グループ (305-8516 茨城県つくば市南原 1-6) E-mail:[email protected] 鋼溶接部における非破壊検査手法が放射線透過試験から超音波探傷試験に移行しつつある.Time of Flight Diffraction (TOFD) 法は英国で開発された超音波探傷試験の一つであり,我が国においても原子力容器などの 検査には適用例がある.しかしながら,鋼道路橋においては,実績例がほとんどないのが現状である.国土交 通省などを中心とした鋼道路橋への超音波探傷試験の適用性に関する共同研究が行われた.その中で,TOFD 探傷システムに対して回送試験を行った.本報告は回送試験の目的,概要および結果を述べるものである. Key Words : nondestructive evaluation, ultrasonic test, time of flight diffraction technique, round robin test, weld defect 1. はじめに 鋼溶接部の品質管理の手法として,放射線透過試験 から超音波探傷試験に移行しつつある.近年,鋼橋建 設において少数主桁橋が建設されており 1),2) ,フラン ジの板厚は 100mm となるものもある.フランジ板は現 場で溶接されるが,許容きずと不合格きずを確実に検 出する非破壊試験の実現は重要な課題である.従来か ら適用されている放射線透過試験は板厚 40mm をこえ る板には適用が困難であり,超音波探傷試験を適用せ ざるを得ないのが現状である. 飛行時間回折法 (Time of Flight Diffraction, 以下 TOFD) は英国で開発された超音波探傷技術の一つであ 3) Program for the Inspection of Steel Components (PISC 計画) 4),5) で行われた回送試験において, United Kingdom Atomic Energy Authority (UKAEA) によ り提唱された.その後,イギリス,アメリカなどにお いて,主にパイプや圧力容器の継手の検査に適用され てきた.日本においても圧力容器などへの適用例があ 6),7),8),9) -1 TOFD 法の概略を示す.-1(a) に示すよう に,TOFD 法では,溶接部などの検査箇所をまたぐよ うにして二つの探触子を対峙して配置する.一方を送 信探触子,片方を受信探触子とする.用いる探触子は一 般的に斜角縦波である.試験体に入射された超音波は 広がりを持つが,入射波の一部の成分は送信探触子を 出て板表面を通り,受信探触子で受信される.これをラ テラル波という.一方で入射波の別の成分は底面まで 到達し,底面で反射され受信探触子で受信されるもの も存在する.これを底面波と呼ぶ.-1(a) に示すよう に,溶接部にきずが存在する場合,きずから回折波が 発生する.各波の伝播経路はラテラル波,きず回折波, 底面波の順に長くなる.-1(b) に示すように,受信探 触子ではこの順番で波を受信することになる.つまり, ラテラル波と底面波の間に波形が得られた場合,きず が存在する可能性を示している.二つの探触子を溶接 線に平行に走査し,各位置での波形を並べ,振幅の高 さに応じて濃淡をつけて表示すると-1(c) に示すよう になる.-1(c) の表示方法を D スコープと呼ぶ.きず の上端部と下端部からの回折波を受信することができ るような分解能をもつ探傷条件とすれば,きずの高さ を評価することも可能である.一般に試験で適用され てきた超音波パルスエコー法 10),11),12),13),14),15),16),17) と比較して,きず高さ評価が可能な点が TOFD 法の長 所である.その一方で,検査箇所の幅方向,つまり溶 接線から垂直方向の位置の特定は特別に精細な検査が 土木学会論文集A Vol.62 No.4, 925-935, 2006. 10 925

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Page 1: 鋼橋溶接部の非破壊検査のための TOFD超音波探傷システムの性 … · 図-1 にtofd 法の概略を示す.図-1(a) に示すよう に,tofd 法では,溶接部などの検査箇所をまたぐよ

鋼橋溶接部の非破壊検査のための

TOFD超音波探傷システムの性能試験

三木 千壽1・西川 和廣2・白旗 弘実3・高橋 実4

1フェロー会員 東京工業大学工学系長 教授 理工学研究科土木工学専攻 (〒152-8552 東京都目黒区大岡山 2-12-1)

E-mail:[email protected]正会員 国土交通省 国土技術政策総合研究所 研究総務官 (〒305-8516 茨城県つくば市南原 1-6)

E-mail:[email protected]正会員 武蔵工業大学助教授 工学部都市基盤工学科 (〒158-8557 東京都世田谷区玉堤 1-28-1)

E-mail:[email protected]正会員 独立行政法人 土木研究所 研究員 構造物研究グループ (〒305-8516 茨城県つくば市南原 1-6)

E-mail:[email protected]

鋼溶接部における非破壊検査手法が放射線透過試験から超音波探傷試験に移行しつつある.Time of Flight

Diffraction (TOFD)法は英国で開発された超音波探傷試験の一つであり,我が国においても原子力容器などの

検査には適用例がある.しかしながら,鋼道路橋においては,実績例がほとんどないのが現状である.国土交

通省などを中心とした鋼道路橋への超音波探傷試験の適用性に関する共同研究が行われた.その中で,TOFD

探傷システムに対して回送試験を行った.本報告は回送試験の目的,概要および結果を述べるものである.

Key Words : nondestructive evaluation, ultrasonic test, time of flight diffraction technique, roundrobin test, weld defect

1. はじめに

鋼溶接部の品質管理の手法として,放射線透過試験

から超音波探傷試験に移行しつつある.近年,鋼橋建

設において少数主桁橋が建設されており 1),2),フラン

ジの板厚は 100mmとなるものもある.フランジ板は現場で溶接されるが,許容きずと不合格きずを確実に検

出する非破壊試験の実現は重要な課題である.従来か

ら適用されている放射線透過試験は板厚 40mmをこえる板には適用が困難であり,超音波探傷試験を適用せ

ざるを得ないのが現状である.

飛行時間回折法 (Time of Flight Diffraction, 以下TOFD)は英国で開発された超音波探傷技術の一つである 3).Program for the Inspection of Steel Components(PISC計画) 4),5) で行われた回送試験において,UnitedKingdom Atomic Energy Authority (UKAEA) により提唱された.その後,イギリス,アメリカなどにお

いて,主にパイプや圧力容器の継手の検査に適用され

てきた.日本においても圧力容器などへの適用例があ

る 6),7),8),9).

図-1に TOFD法の概略を示す.図-1(a)に示すように,TOFD法では,溶接部などの検査箇所をまたぐようにして二つの探触子を対峙して配置する.一方を送

信探触子,片方を受信探触子とする.用いる探触子は一

般的に斜角縦波である.試験体に入射された超音波は

広がりを持つが,入射波の一部の成分は送信探触子を

出て板表面を通り,受信探触子で受信される.これをラ

テラル波という.一方で入射波の別の成分は底面まで

到達し,底面で反射され受信探触子で受信されるもの

も存在する.これを底面波と呼ぶ.図-1(a)に示すように,溶接部にきずが存在する場合,きずから回折波が

発生する.各波の伝播経路はラテラル波,きず回折波,

底面波の順に長くなる.図-1(b)に示すように,受信探触子ではこの順番で波を受信することになる.つまり,

ラテラル波と底面波の間に波形が得られた場合,きず

が存在する可能性を示している.二つの探触子を溶接

線に平行に走査し,各位置での波形を並べ,振幅の高

さに応じて濃淡をつけて表示すると図-1(c)に示すようになる.図-1(c)の表示方法をDスコープと呼ぶ.きずの上端部と下端部からの回折波を受信することができ

るような分解能をもつ探傷条件とすれば,きずの高さ

を評価することも可能である.一般に試験で適用され

てきた超音波パルスエコー法 10),11),12),13),14),15),16),17)

と比較して,きず高さ評価が可能な点が TOFD法の長所である.その一方で,検査箇所の幅方向,つまり溶

接線から垂直方向の位置の特定は特別に精細な検査が

土木学会論文集A Vol.62 No.4, 925-935, 2006. 10

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図-1 TOFD法概略

必要な以外は行わなく,実際にはそれほど行われない.

PISC計画の回送試験においても,TOFD法のよい検出性を示す結果が得られたことも報告されている 3).

破壊力学の観点からはきず高さの情報は非常に重要な

役割を持つ.現在のパルスエコー法の技術ではきず高

さを推定することは非常に困難である.TOFD法が鋼橋溶接部の品質管理に適用できる技術の一つであるこ

とは事実だが,このような観点で,鋼橋溶接部を特に

対象としたTOFD法の適用性に関する検討はそれほどなされていない.

1999年に,建設省 (当時)土木研究所を中心とした超音波試験の鋼橋溶接部の品質管理に対する適用性に関

する共同研究が発足した.その中で,超音波自動探傷

装置の適用性に関する検討 18)とともに,TOFD法の適用性も検討された.共同研究においては回送試験が実

施された.回送試験においては 7つの TOFD探傷システムが鋼橋溶接部をモデルとした試験体に対して,試

験を行った.超音波自動探傷パルスエコー法と比較し

た TOFD法の検出性能,検出が容易な溶接きずや困難な溶接きずに関する検討を行った.本報告は TOFD探傷システムの回送試験と,試験結果について述べるも

図-2 回送試験で用いられた試験体

のである.

2. 回送試験の実施

(1) 試験体

回送試験はまず,参加会社の公募と試験体の製作か

ら始まった.公募ののち,参加会社は土木研究所に設

置された試験体を定められた要領で検査し,検査デー

タを提出した.全参加会社の試験ののち,試験体の破

壊試験が行われた.破壊試験で試験体に実際に含まれ

るきずの情報を得た.検査データと実際のきずデータ

を比較することで各参加システムの性能が評価できる.

評価においてはきずの検出および空振りが考慮された.

空振りとはきずが実際にはないにもかかわらず,きず

が存在するとした場合である.

送信 受信

底面波

底面波

ラテラル波

ラテラル波

回折波

底面波

ラテラル波 きずからの回折波

(a)

(b)

(c)

溶接線方向

溶接線方向

板厚方向の情報を与える

600

40

40

60

60 80

60

60

80

10080

100100

500単位 (mm)

平面図

立面図

40 mm

80 mm

100 mm

60 mm

60 mm

40 mm

溶接面

底面

溶接面

底面

溶接面

底面

溶接面

底面

溶接面

底面

溶接面

底面

タイプ 1

タイプ 1

タイプ 2

タイプ 2

(a)

(b)

(c)

(d)

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図-3 TOFDの探傷条件パラメータ

表-1 回送試験参加システムの探傷条件:1番

試験体 探傷面 探傷ラ 周波数 屈折角 探触子距

イン (MHz) (度) 離 (mm)

40 mm 検査せず

60 mm 検査せず

80 mm 検査せず

100 mm 溶接面 1 2 60 240

回送試験で製作された試験体を図-2に示す.試験体は板厚の組み合わせ,溶接開先形状などが実際の鋼橋

主桁フランジの現場溶接継手と同じものとなっている.

溶接は V型開先,二酸化炭素ガスシールドアーク多層盛溶接である.試験体の板厚に応じて 4種類の試験体が作られた.図-2(a),(b),(c)および (d)の試験体をそれぞれ板厚 40mm,60mm,80mmおよび 100mm の試験体と呼ぶことにする.図-2に示すように試験体の溶接面および底面を定義する.図-2に示す板厚 40mm,60mmの試験体はテーパーと溶接面により,さらに 2つの試験体に分類できる.テーパーと溶接面が同じ側にある

ものをタイプ 1,テーパーと溶接面が反対側にあるものをタイプ 2 と呼ぶことにする.テーパーの傾きは 1対 5であり,テーパー部の長さは 100mmである.各板厚において 3体の試験体が製作された.板厚 40mmと60mmに関してはタイプ 1が 1体,タイプ 2が 2体製作された.すべてで 12体が製作された.試験体は溶接条件を人為的に変えることで,溶接き

ずを導入した.溶接きずは実際の継手に発生するもの

と同じものになるように注意した.導入された溶接き

ずの種類はブローホール,スラグ巻き込み,融合不良,

および割れである.

(2) 参加会社の公募および各システムの探傷条件

回送試験参加の公募に 7社が参加を表明した.これらには現在,パイプなど他分野で用いられているシス

テムや新たに開発されたシステムが含まれている.公

募ののち,参加予定各システムには探傷条件を報告す

ることが要求された.探傷条件としては,使用する探

触子の屈折角,周波数,送受信探触子距離,探傷面,探

傷ライン数およびきず長さ推定方法アルゴリズムであ

る.図-3にこれらのパラメータを示す.探触子距離は送受信探触子間の距離であり,探傷面近傍を検査する

場合は距離は近づき,底面近傍を検査する場合は距離

は長くなる.探触子から出される超音波ビームは広が

りをもっているが,ビームの広がりに対し,板が厚い

と一度だけの走査では板厚全体をカバーできなくなる.

厚板に対しては,探触子間距離をかえ,探傷ライン数

を増やすことになる.

参加を表明した会社を順番に 1番から 7番とし,それぞれのシステムの探傷条件を表-1 から表-7に示す.表-1から表-7には探触子の屈折角,周波数,探触子間距離および探傷面が書かれている.ほとんどのシステ

ムで周波数 5MHzの探触子が使われている.屈折角は45度から 60度が多いものとなっている.探傷面はテーパーのない部分を選んでいるシステムが多いが,2 番と 3番のシステムではテーパー部からの試験も行っている.

きずの長さ推定のアルゴリズムを表-8に示す.カーソルとは表示された画像に対し,楕円型の曲線をフィッ

ティングし,きずの開始位置と終了位置を推定するソ

フトウェアの一つである.

12体の試験体は土木研究所内の異なる 2箇所に設置された.それぞれの参加会社には 2日半が与えられた.実際の探傷作業が行えるのは 23時間となった.2日半ごとに参加会社が交代し,順番に試験を行った.ある

会社が試験をしている間は他の会社はいっさい立ち入

ることを許さず,公平性と匿名性は厳正に保たれるよ

う考慮した.

(3) 提出データ

試験参加会社はきずの位置,長さに関するデータの

提出が要求された.位置に関しては,図-4に示すように x, k, d座標をもうける.ここに,x方向は溶接方向,

kは溶接中心からの距離,dは板厚方向である.きずの

位置に関するデータとして xs, xe および dが提出され

た.xsはきずの開始位置,xeはきずの終点位置,dは

それぞれきずの d座標値である.きずの長さ lは xeか

ら xsを引いた値となる.探傷試験方法の性格上TOFDはきずの k座標位置を推定することが困難であるため,

提出は要求されなかった.今回の回送試験は特に検出

性能を重視しており,きずの高さの報告は任意とした.

データの提出は試験終了後,2週間以内とした.

きずの検出限界寸法はきずの実際の x方向の長さ lで

与えられた.試験体の板厚を tとすると,長さ t/5mm

屈折角周波数

探触子距離

送信 受信

走査探傷ライン

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表-2 回送試験参加システムの探傷条件:2番

試験体 探傷面 探傷ラ 周波数 屈折角 探触子距

イン (MHz) (度) 離 (mm)

40 mm 溶接面 1 10 70 60タイプ 1 2 5 60 110

40 mm 底面 1 10 70 60タイプ 1 2 5 60 110

40 mm 溶接面 1 10 70 60タイプ 2 2 5 60 110

40 mm 底面 1 10 70 60タイプ 2 2 5 60 110

60 mm 溶接面 1 10 70 75タイプ 1 2 5 60 140

3 5 60 200

60 mm 底面 1 10 70 50タイプ 1 2 5 60 140

3 5 60 200

60 mm 溶接面 1 10 70 75タイプ 2 2 5 60 140

3 5 60 200

60 mm 底面 1 10 70 50タイプ 2 2 5 60 140

3 5 60 200

80 mm 溶接面 1 10 70 802 5 60 1553 5 60 210

80 mm 底面 1 10 70 502 5 60 1403 5 60 200

100 mm 溶接面 1 10 70 802 5 60 1553 5 60 260

100 mm 底面 1 10 70 502 5 60 1553 5 60 260

以上のきずを見落とさないようにすることが要求され

た 19),20).たとえば厚さ 40mm の試験体についてはt=40mmとなり,t/5=8mmである.

図-5は参加会社の中のあるシステムで得られ,提出されたデータをもとにした指示表示である.

(4) 試験体の破壊試験

すべての参加システムによる試験終了後,試験体の

図-6に示すような破壊試験が行われた.破壊試験に際しては,まず試験体の溶接部分が切り出された.図-6に示すように,k-d平面に平行に,つまり,x方向に垂

直に 0.5mmだけ切削し溶接断面のマクロ写真を撮った.

図-4 回送試験において提出するきずデータ

図-5 探傷試験により得られた指示の例

図-6 破壊試験溶接部切削状況

x

k

k

d

d

0.5mm 間隔

切削状況

きずの位置と種類を記録

x

x

k

k

k

d

d

l

d

座標系

断面

平面

xs

xe

溶接きず

溶接きず

(a)

(b)

厚さ

80mm

x軸 (溶接線方向 )d軸(板厚方向 )

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表-3 回送試験参加システムの探傷条件:3番

試験体 探傷面 探傷ラ 周波数 屈折角 探触子距

イン (MHz) (度) 離 (mm)

40 mm 溶接面 1 5 50 64タイプ 1

40 mm 底面 1 5 50 64タイプ 2

60 mm 溶接面 1 5 50 95タイプ 1

60 mm 底面 1 5 50 95タイプ 2

80 mm 溶接面 1 5 50 127

80 mm 底面 1 5 50 127

100 mm 溶接面 1 5 50 159

100 mm 底面 1 5 50 159

表-4 回送試験参加システムの探傷条件:4番

試験体 探傷面 探傷ラ 周波数 屈折角 探触子距

イン (MHz) (度) 離 (mm)

40 mm 底面 1 5 60 62タイプ 1 2 5 60 107

40 mm 底面 1 5 60 62タイプ 2 2 5 60 107

60 mm 底面 1 5 60 80タイプ 1 2 5 45 94

60 mm 底面 1 5 60 80タイプ 2 2 5 45 94

80 mm 溶接面 1 5 60 692 5 60 1313 5 45 118

100 mm 溶接面 1 5 50 692 5 60 1733 5 45 118

100 mm 底面 1 5 50 156

もしもその断面において溶接きずが存在する場合は,き

ずの種類と k方向と d方向の位置を記録した.断面の

マクロ写真の撮影は 0.5mmピッチで行われた.0.5mmの精度で x方向のきずのつながりを考慮し,きず長さ

lを求めた.

図-7は破壊試験で得られたデータをもとにきずを表示したものである.

(5) システムの評価項目

システムにより得られた非破壊試験データと破壊試

験より得られた実際のきずに関するデータを比較する

表-5 回送試験参加システムの探傷条件:5番

試験体 探傷面 探傷ラ 周波数 屈折角 探触子距

イン (MHz) (度) 離 (mm)

40 mm 検査せず

タイプ 1

40 mm 溶接面 1 5 60 93タイプ 2

60 mm 底面 1 5 60 138タイプ 1

60 mm 溶接面 1 5 60 138タイプ 2

80 mm 溶接面 1 5 60 185

100 mm 溶接面 1 5 50 230

表-6 回送試験参加システムの探傷条件:6番

試験体 探傷面 探傷ラ 周波数 屈折角 探触子距

イン (MHz) (度) 離 (mm)

40 mm 底面 1 5 60 92タイプ 1

40 mm 溶接面 1 5 60 92タイプ 2

60 mm 底面 1 5 60 138タイプ 1 2 5 45 80

60 mm 溶接面 1 5 60 92タイプ 2 2 5 45 80

80 mm 溶接面 1 5 60 922 5 45 107

100 mm 溶接面 1 5 60 1392 5 45 1333 5 45 160

100 mm 底面 1 5 60 1332 5 45 1393 5 45 160

ことで各システムの性能を評価した.評価項目として

はきずの検出と空振りに関する指標の二つである.

きずの検出および空振りは図-8に示す方法で定義した.図-8(a)に示すように,実際のきずを中心として周りに直方体を設定する.直方体の長さは実際のきずの

長さ Lに等しい.また,直方体の幅つまり k方向は溶

接部と同じ大きさであるとし,直方体の高さつまり d

方向は実際のきずを中心として,20mmとした.設定した直方体の内部に TOFDの指示が存在する場合,そのきずは検出されたこととした.TOFDの指示のうち,実際のきずの周囲に設定したいかなる直方体にも含ま

れない場合,空振り指示とした.検出および空振りの

土木学会論文集A Vol.62 No.4, 925-935, 2006. 10

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表-7 回送試験参加システムの探傷条件:7番

試験体 探傷面 探傷ラ 周波数 屈折角 探触子距

イン (MHz) (度) 離 (mm)

40 mm 底面 1 5 60 報告せず

タイプ 1 2 5 60 報告せず

40 mm 溶接面 1 5 60 報告せず

タイプ 2 2 5 60 報告せず

60 mm 底面 1 5 60 報告せず

タイプ 1 2 5 60 報告せず

60 mm 溶接面 1 5 60 報告せず

タイプ 2 2 5 60 報告せず

80 mm 溶接面 1 5 60 報告せず

2 5 60 報告せず

100 mm 溶接面 1 5 60 報告せず

2 5 60 報告せず

表-8 各参加システムのきず長さ判定アルゴリズム

システム番号 判定アルゴリズム

1 画像より円弧の接線長さを測定

2 カーソル

3 6dBドロップ法4 カーソル

5 Bスコープのセル画より推定6 6dBドロップ法7 回答せず

図-7 破壊試験により得られた実際のきず表示の例

判定には,探傷試験において,限界検出寸法以上の長

さであると報告してきた指示のみを,また,破壊試験

において,限界検出寸法以上の長さであるきずのみを

抽出し,比較している.図-8(b)(c)および (d)に検出されたきず,検出されなかったきずおよび空振りの例を

示す.

検出率および空振り率の評価項目は式 (1)および (2)で表される.

検出率 =TOFDにより検出されたきずの個数

実際のきずの個数(1)

図-8 きずの検出および空振りの定義

空振り率 =架空に検出した TOFD指示の個数

TOFDで得られた指示の総数(2)

式 (1)および (2)においては,きずおよび TOFD指示長さは限界検出寸法以上のものを抽出している.

溶接欠陥が検出された場合には,補修を行うことに

なる.補修によって溶接部分の品質が悪くなる可能性

があり,補修は最低限にとどめる必要がある.空振り

の場合,補修は特に不要な手間となる.システムには

有害なきずを検出する性能が要求されることだけでは

なく,空振りをしない性能も同等に要求される.

3. 回送試験参加システムの評価結果

各参加システムの評価結果を図-9に示す.図-9は縦軸に検出率と空振り率を示している.横軸は参加した

7つのシステムに相当しており,検出率が高いシステムから順番に,検出率が同じ場合は空振り率が低い順番

に並べている.図-9(a),(b),(c),(d)および (e)はそれぞれ厚さ 40mm,60mm,80mm,100mmおよび全 12体

厚さ

80mm

x軸 (溶接線方向 )

d軸(板厚方向 )

xk

実際のきず長さ L

20mm

k

d

(a)

(b)

断面

断面

直方体領域直方体領域

平面

平面

実際のきず位置実際のきず

検出 検出

検出

TOFD 指示 TOFD 指示直方体領域 直方体領域

(c)断面

平面見逃し

見逃しTOFD 指示 TOFD 指示直方体領域 直方体領域

(d)断面 平面

空振り

空振り

TOFD 指示 TOFD 指示直方体領域 直方体領域

余盛幅

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Page 7: 鋼橋溶接部の非破壊検査のための TOFD超音波探傷システムの性 … · 図-1 にtofd 法の概略を示す.図-1(a) に示すよう に,tofd 法では,溶接部などの検査箇所をまたぐよ

図-9 回送試験 システム評価結果 (a)板厚 40mm, (b)60mm,(c)80mm,(d)100mm,(e)40mmから 100mmすべての試験体

の試験体の合計である.表-9には上位 3位までのシステム番号が示されている.著者らはパルスエコー法超

音波自動探傷システムについても同様の検討を行った

が 18),図-9においては,超音波自動探傷システムのうち,上位 3システムのものも示している.評価に際し,実際のきず長さを t/5mmとして抽出すると,12体の試験体中に検出すべききずの数は 110になる.

図-9(a)から (e)より,2番のシステムがすべてにわたり,高い検出率を示していることがわかる.また,図-9(a)および (b) より,板厚がそれほど厚くない場合,3番のシステムが 2番に次いで高い検出率を示している.

図-9(b)から (e)において,6番のシステムも高い検出率を示している.

表-1∼ 表-7より,2番のシステムが溶接面および底面の両方から探傷を行っていること,探傷ラインも他

のシステムよりも多いことが高い検出率の理由である

と考えられる.3番のシステムに見られるように,板厚がそれほど厚くない場合,溶接面と底面の両方から探

傷したほうが検出率が高くなるという結果となった.

6 番のシステムは板が厚くなると,探傷ラインが増え,厚さ 100mmの試験体においては 2番のシステムと同様に 3つのラインで探傷している.これが検出率を

(a) (b) (c)

(d) (e)

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

探傷システム

探傷システム

検出率

空振り率

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

探傷システム

探傷システム

検出率

空振り率

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

探傷システム

探傷システム

検出率

空振り率

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

探傷システム

探傷システム

検出率

空振り率

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

探傷システム

探傷システム

検出率

空振り率

板厚 40mm 板厚 60mm

板厚 60mm

板厚 80mm

板厚 80mm

板厚 100mm

板厚 100mm

全試験体

全試験体

板厚 40mm

パルスエコーTOFD パルスエコーTOFD パルスエコーTOFD

パルスエコーTOFDパルスエコーTOFD

パルスエコーTOFD

パルスエコーTOFD

パルスエコーTOFD

パルスエコーTOFD

パルスエコーTOFD

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表-9 回送試験検出率上位 3 システムの構成:板厚   

(a)40mm,(b)60mm,(c)80mm,(d)100mm,(e)40mm  

から 100mmすべての試験体

(a)板厚 40mm 検出すべききずの数 36システム 検出率 空振率

2 0.857 0.2373 0.735 0.2734 0.714 0.270

(b)板厚 60mm 検出すべききずの数 31システム 検出率 空振率

2 0.900 0.1313 0.767 0.2616 0.767 0.360

(c)板厚 80mm 検出すべききずの数 23システム 検出率 空振率

2 0.913 0.0457 0.696 0.2866 0.696 0.346

(d)板厚 100mm 検出すべききずの数 20システム 検出率 空振率

2 1.000 0.2326 0.700 0.3407 0.700 0.391

(e)12体全試験体 検出すべききずの数 110システム 検出率 空振率

2 0.907 0.1633 0.682 0.2606 0.667 0.411

高める理由になったと考えられる.

TOFDシステムとパルスエコーシステムを比較すると,パルスエコーシステムでは板厚が増加するにつれ

て,検出率が低くなる傾向があるが,TOFDシステムでは 2番のシステムは板厚増による検出率の低下は見られない.パルスエコー上位システムと比較して,TOFDの上位システムは空振りが少ないことがわかる.

パルスエコー法と比較したTOFD法の特徴として以下が考えられる.TOFDでは探触子を 1次元,つまり,図-4の x方向のみに走査するのに対し,パルスエコー

法では探触子を 2次元,つまり図-4の x方向および k

方向に走査することがあげられる.2 次元に走査する分,探触子位置に関する情報に誤差が累積されやすく

なり,板厚が厚くなるほどこの傾向は顕著となる.厚

板での TOFDの低い空振り率の理由と考えられる.

図-10 きず種類別の検出率

図-11 断面位置ごとのきずの検出率

4. 見逃し,空振りに関する考察

(1) 見逃しきずの種類と断面内分布

図-10にきず種類別の検出率を示す.図-10の縦軸は次の式で計算した.

∑きず種類きずを検出したシステム数∑きず種類きずを探傷したシステム数

(3)

式 (3)の和はたとえばブローホールなど,同一きず種類に関する和である.図-11(a)に示すように,断面を三つの領域にわける.一つは溶接面から板厚の 20%にあたる領域である.もう一つは底面から板厚の 10%にあたる溶接第一パス領域である.もう一つはどちらにも含

まれない領域であり,板厚中間部分と呼ぶことにする.

図-11(b)は各板厚方向でのきずの検出率を示したもの

40 60 80 1000

0.2

0.4

0.6

0.8

1

試験体厚さ (mm)

t

0.2t

0.9t

(a)

(b)

溶接面近傍部

溶接面近傍部

中間部

中間部

溶接第一パス部

溶接第一パス部

検出率

全試験体

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1全試験体

検出率

きず種類

ブローホール

割れ 融合不良 スラグ巻込

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図-12 見逃しやすいきずの例

である.図-11(b)の縦軸は式 (4)で表される.式 (4)の和は同一領域に含まれるきずに関するものである.

∑断面内の領域きずを検出したシステム数∑断面内の領域きずを探傷したシステム数

(4)

図-10は,割れを除いてはきず種類による検出率にはそれほど差がないことを示している.割れの 95%は図-11(a)で示す底面から板厚 10%領域内に存在している.

図-11(b)において,厚さ 60mmの試験体に関して,底面から板厚 10%領域のほうが検出率が高くなっている.タイプ 1の試験体にこの領域に存在するきずが多くなるが,タイプ 1の場合,テーパー部が溶接面側にあり,多くのシステムが底面から探傷したことによる

と考えられる.

図-12 に検出の困難であったきずの例を示す.図-12(a) は溶接第一パス領域に存在する割れであり,探傷を行った 6システム中,2システムがこのきずを検出した.図-12(b)は溶接面近傍領域に存在するブローホールであり,探傷を行った 6システム中,2システムがこのきずを検出した.図-12(b)には中間領域に存在する

図-13 検出限界寸法評価エラーによる空振り

図-14 検出限界寸法評価エラーによる見逃し

スラグ巻き込みも見られるが,探傷を行った 6システム中すべてのシステムがこのきずを検出した.図-12(c)は溶接第一パス領域に存在する割れである.探傷を行っ

た 6システム中,2システムがこのきずを検出した.

40mm60mm

80mm

(a) (b)

(c)

割れ (検出困難 )

割れ (検出困難 )

ブローホール(検出困難 )

スラグ巻き込み (検出容易 )

40 60 80 1000

0.2

0.4

0.6

0.8

1

試験体厚さ (mm)

断面 平面

TOFD 指示

TOFD による指示長さ l

長さ

l (> t/5:検出限界寸法)

L (< t/5:検出限界寸法)

(a)

(b)

実際のきず

空振りと判定

実際のきず長さ L

TOFD

指示が限界寸法

より長くなり空振り

と判定される割合

全試験体

40 60 80 1000

0.2

0.4

0.6

0.8

1

試験体厚さ (mm)

(b)

(a)断面 平面

TOFD 指示

実際のきず

l (< t/5:検出限界寸法)

長さ L (> t/5:検出限界寸法)

見逃しと判定

TOFD による指示長さ l

実際のきず長さ L

全試験体

TOFD

指示が限界寸法

より短くなり見逃し

と判定される割合

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(2) 検出限界寸法推定ミスによる見逃しおよび空振り

見逃しや空振りの原因としては検出限界寸法に関す

るものが多かった.図-13(a)に示すように,検出限界寸法である t/5mmよりも短いきずが存在し,システムによって,検出と判定されたとする.この場合,この

TOFD指示は空振りとなる.図-13(a)のケースで空振りとなった例がどれくらいあるか調査した.図-13(b)に結果を示す.図-13(b)の縦軸は次式で得られる.

図‐13(a)のパターンで空振りと判定されたケース数総空振り数

(5)図-13(b)より,板厚 40mmの試験体の場合,空振りと判定された場合のうち,約 40%には検出限界寸法よりも短いきずが実際には存在していたといえる.この割

合は厚さ 80mmよりも厚い試験体で多くなっている.図-14(a)に示すように,検出限界寸法である t/5mm

よりも長いきずが存在し,システムによってきず無しと

判定されたとする.この場合,このTOFD指示は見逃しとなる.このパターンで見逃しとなった割合を図-14(b)に示す.図-14(b)の縦軸は次式で与えられる.

図‐14(a)のパターンで見逃しと判定されたケース数総見逃し数

(6)図-14(b)より,板厚 60mmの試験体の場合,見逃しと判定された場合のうち,約 25%には検出限界寸法よりも長いきずが実際には存在していたといえる.

5. まとめ

回送試験評価結果をここにまとめる.

(1) TOFD法による探傷結果はパルスエコー法による超音波自動探傷試験結果よりも空振りが少ない傾

向にあった.検出率がもっとも高いシステムで比

較すると,TOFD法およびパルスエコー法の検出性能は同程度であった.

(2) 40mmと 60mmの厚さの試験体に対しては,溶接面と底面の両方の面から探傷したシステムのほう

が検出率が高かった.

(3) 80mmと 100mmの厚さの試験体に対しては,探傷ラインが増えると検出性能が高くなることが示

された.

(4) きずの見逃しはきずの断面内の位置の影響が大きかった.特に溶接第一パスや溶接面近傍に存在す

るきずの検出率が低かった.

(5) きずの見逃しや空振りはきずの検出限界寸法推定の誤りによるものがあった.

謝辞: 回送試験は鋼橋溶接部の非破壊検査手法に関す

る共同研究のもとに行われました.共同研究参加団体

の建設省土木研究所 (現在の独立行政法人土木研究所と

国土交通省国土技術政策総合研究所),東京工業大学,日本道路公団 (現在の独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構と東日本高速道路 (株)と中日本高速道路(株)と西日本高速道路 (株)),(社)鋼材倶楽部 (現 (社)日本鉄鋼連盟),(社)日本橋梁建設協会,(社)非破壊検査振興協会 (現 (社)日本非破壊検査工業会)さらにはアドバイザーの方々関係各位に謝意を表します.

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13) 廣瀬 壮一: 定量的非破壊評価 (QNDE)とフラクチャーメカニックス, 構造工学論文集, Vol.35A, pp.269-278,1989.

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測, 構造工学論文集, Vol.45A, pp.321-327, 1999.16) 三上 修一, 大島 俊之, 菅原 登, 山崎 智之: エコー波形

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mance of butt-welded joints containing various em-bedded defects, Structural Eng./Earthquake Eng.,JSCE, Vol.18, No.1, pp.13s-25s, 2001.

20) 三木 千壽, 西川 和廣, 高橋 実, 町田 文孝, 穴見 健吾:

横突合せ溶接継手の疲労性能への内部欠陥の影響と要求品

質レベルの設定, 土木学会論文集, No.752/I-66, pp.133-146, 2004.

(2005.10.18 受付)

ROUND ROBIN TEST OF TOFD ULTRASONIC TESTING SYSTEMSFOR WELDED JOINTS OF STEEL BRIDGES

Chitoshi MIKI, Kazuhiro NISHIKAWA, Hiromi SHIRAHATA and Minoru TAKAHASHI

The ultrasonic test could be applied to evaluate welded joints of steel bridges. The time offlight diffraction (TOFD) technique was developed in the United Kingdom in the 1980’s and thetechnique has been applied to pressure vessels of power plants. However, the applicability of theTOFD technique to steel bridges has not been investigated sufficiently. A collaborative study wasorganized by the Ministry of Construction. The collaborative study focused on the applicabilityof the ultrasonic testing to the steel bridges, including the TOFD technique. A round robin testof the TOFD systems was carried out. Considering the ratios of detection and overdetection, theperformance of the systems was evaluated. This paper describes the round robin test and someremarks on the applicability of the TOFD systems.

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