鋼製スノーシェッド塗装管理計画について鋼製スノーシェッド塗装管理計画について...

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鋼製スノーシェッド塗装管理計画について 窪 宗昭 1 ・小島 達矢 2 1,2 北陸地方整備局 長岡国道事務所 管理第二課 (〒940-8512 新潟県長岡市中沢4丁目430-1長岡国道事務所管内は,北陸地域を結ぶ日本海国土軸と首都圏との交通の結節点となる交通 の要衝にある.また一方では,日本有数の豪雪地帯であり,多くの人々が雪とともに生活する 地域である.そのため,「雪に強い道路」を作ることを目指し,雪崩対策施設等を設置し防雪 対策に取り組んでいるところである.本稿は,長岡国道事務所にて鋼製スノーシェッドの維持 管理コストを考慮した塗装管理計画について検討したので報告するものである. キーワード 鋼製スノーシェッド,塗装管理計画 1. はじめに 長岡国道事務所管内は,北陸地域を結ぶ日本海国土軸 と首都圏を結ぶ交通の結節点となる交通の要衝に位置し ており,北陸地域の経済活動を支える重要な役割を担っ ている. その中で,首都圏と北陸地方を結ぶ国道17号は群馬 県境の三国峠など,世界でも稀にみる山岳豪雪地帯を始 めとした日本有数の豪雪地帯を通過しており,冬期間は この地域の多くの人々が雪とともに生活しており,一方, 通行車両にとっても雪崩などの冬期交通障害による影響 が大きい地域である. そのため,「雪に強い道路」を作ることを目指し,雪 崩対策施設等を設置し防雪対策に取り組んでいるところ である. 本稿は,そのうち鋼製スノーシェッドにおける今後の 効果的な維持管理を行う上で不可欠である塗装塗替作業 において,維持管理コストを考慮した塗装計画を検討し たので報告するものである. 2. 鋼製スノーシェッドの現状 今回,検討した鋼製スノーシェッドは,長岡国道事務 所湯沢維持出張所管内の3 箇所である.それぞれの概要 について以下に整理する. (1) 貝掛スノーシェッド 昭和57年に1期施工L=87m,平成45年に2期施工 L=82mL=30m施工した合計約L=200mの鋼製スノーシ ェッドである.谷側のみ鋼構造となっている.昭和57 年に施工した範囲において,完成後25年経過し,鋼材 腐食(塗装劣化),特に,柱脚部,ブレース取付部及び ボルト類に変状が顕著に現れている. (2) 三俣スノーシェッド 昭和41年に1期施工L=780m,昭和5354年に2期施 L=41mL=30m施工した合計約L=851mの鋼製スノー シェッドである.平成15年に部分塗装塗替を行った箇 ( 起点側から95100本目) は良好だが,柱には全体的 に腐食があり,支承ピンの腐食が顕著に現れている. ( 写真-1) (3) 堀切スノーシェッド 昭和60年に70m施工した鋼製スノーシェッドである. 斜め材や取付部に層状錆が見られボルトの一部に花状の 写真-1 三俣スノーシェッド 支承部

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Page 1: 鋼製スノーシェッド塗装管理計画について鋼製スノーシェッド塗装管理計画について 窪 宗昭 1・小島 達矢2 1,2北陸地方整備局 長岡国道事務所

鋼製スノーシェッド塗装管理計画について

窪 宗昭 1・小島 達矢2

1,2北陸地方整備局 長岡国道事務所 管理第二課 (〒940-8512 新潟県長岡市中沢4丁目430-1)

長岡国道事務所管内は,北陸地域を結ぶ日本海国土軸と首都圏との交通の結節点となる交通

の要衝にある.また一方では,日本有数の豪雪地帯であり,多くの人々が雪とともに生活する

地域である.そのため,「雪に強い道路」を作ることを目指し,雪崩対策施設等を設置し防雪

対策に取り組んでいるところである.本稿は,長岡国道事務所にて鋼製スノーシェッドの維持

管理コストを考慮した塗装管理計画について検討したので報告するものである.

キーワード 鋼製スノーシェッド,塗装管理計画

1. はじめに

長岡国道事務所管内は,北陸地域を結ぶ日本海国土軸

と首都圏を結ぶ交通の結節点となる交通の要衝に位置し

ており,北陸地域の経済活動を支える重要な役割を担っ

ている. その中で,首都圏と北陸地方を結ぶ国道17号は群馬

県境の三国峠など,世界でも稀にみる山岳豪雪地帯を始

めとした日本有数の豪雪地帯を通過しており,冬期間は

この地域の多くの人々が雪とともに生活しており,一方,

通行車両にとっても雪崩などの冬期交通障害による影響

が大きい地域である. そのため,「雪に強い道路」を作ることを目指し,雪

崩対策施設等を設置し防雪対策に取り組んでいるところ

である. 本稿は,そのうち鋼製スノーシェッドにおける今後の

効果的な維持管理を行う上で不可欠である塗装塗替作業

において,維持管理コストを考慮した塗装計画を検討し

たので報告するものである.

2.鋼製スノーシェッドの現状

今回,検討した鋼製スノーシェッドは,長岡国道事務

所湯沢維持出張所管内の3箇所である.それぞれの概要

について以下に整理する.

(1) 貝掛スノーシェッド 昭和57年に1期施工L=87m,平成4・5年に2期施工

L=82m・L=30m施工した合計約L=200mの鋼製スノーシ

ェッドである.谷側のみ鋼構造となっている.昭和57年に施工した範囲において,完成後25年経過し,鋼材

腐食(塗装劣化),特に,柱脚部,ブレース取付部及び

ボルト類に変状が顕著に現れている. (2) 三俣スノーシェッド 昭和41年に1期施工L=780m,昭和53・54年に2期施

工L=41m・L=30m施工した合計約L=851mの鋼製スノー

シェッドである.平成15年に部分塗装塗替を行った箇

所(起点側から95~100本目)は良好だが,柱には全体的

に腐食があり,支承ピンの腐食が顕著に現れている.

(写真-1)

(3) 堀切スノーシェッド 昭和60年に70m施工した鋼製スノーシェッドである.

斜め材や取付部に層状錆が見られボルトの一部に花状の

写真-1 三俣スノーシェッド 支承部

Page 2: 鋼製スノーシェッド塗装管理計画について鋼製スノーシェッド塗装管理計画について 窪 宗昭 1・小島 達矢2 1,2北陸地方整備局 長岡国道事務所

腐食が見られる.柱には腐食が顕著に現れている. 以下,3箇所のシェッドに共通する腐食,塗膜劣化の

主な原因として,①融雪や屋根材からのしずく,漏水,

滞水等による水の影響②凍結防止剤の飛散による塩化物

の蓄積③通行車両からの排気ガス ④構造的,空間的な

要因が上げられる.②,③は路面からの飛散等が関与す

るため,交通量や車両の進行方向が影響していると考え

る.(写真-2)

3. 調査内容

(1) 現地塗膜調査

現地にて腐食損傷・塗膜劣化の程度・分布,塗膜付着

性試験,表面付着塩分量,塗膜・鋼材表面の詳細調査を

行った.

a)腐食損傷・塗膜劣化の程度・分布

「道路橋の定期点検に関する参考資料-橋梁損傷事例

写真- 1)」を参考に鋼製スノーシェッドに対応する長岡国

道事務所独自の劣化状況・評価の目安を作成した.また,

それを基に柱の損傷度の分布図を作成した.(表-1,表-2,表-3)

対策

錆;深さ(大)・面積(小)  深さ(小)・面積(大)

塗膜;はがれ(小)

錆;深さ(大)、面積(大)塗膜;はがれ(大)

塗替不要

Rc-Ⅲ(塗替)

Rc-Ⅰ(塗替)

Rc-Ⅰ(塗替)

色種類

錆;ほぼ無し

塗膜;ほぼ劣化無し

錆;深さ(小)・面積(小)

塗膜、変色、浮き

損傷・劣化・程度

三俣SS  谷側 柱

①②③④ ①②③④ ①②③④ ①②③④ ①②③④ ①②③④ ①②③④ ①②③④ ①②③④ ①②③④ ①②③④ ①②③④

ブロック1 ブロック2 ブロック8 ブロック9 ブロック10 ブロック11NO. 10 NO. 18 NO. 41

ブロック3 ブロック4 ブロック5 ブロック6 ブロック7 ブロック7’245 NO. 269NO. 179 NO. 194 NO. 212

対象除外 5NO. 225 NO.NO. 55 NO. 150 NO. 162

点谷

点谷

156,157,160 201,203

谷起

点谷

点谷

点谷

点谷

点谷

現状

谷起

点谷

点谷

点谷

b)塗膜付着性試験 塗膜の健全性を調査するために塗膜付着性試験(プル

オフ法)を行った.貝掛スノーシェッド,堀切スノーシ

ェッドは,大きな付着力(2.0MPa以上)を示しており,塗

膜の健全性が確認された.三俣スノーシェッドは,谷側

柱は一部を除き良好であった.山側柱は損傷形態として

は,塗膜での剥離あるいは素地からの剥離が見られ,塗

膜の劣化が進行していた.主梁については全体的に悪い

傾向(最低値 0.5MPa)にあった. c)表面付着塩分量調査 腐食環境を把握するために電導度法による表面付着塩

分量調査を行った.貝掛スノーシェッドでは谷側柱では

高さ方向の影響はあまり見られず比較的小さい値(計測

高さH=1m 89mg/m2)であった.傾向として,車道から

の距離が大きいほど付着塩分量がが小さいことから,谷

側柱の車両進行方向で凍結防止剤の飛散による影響が大

きいと考えられる.三俣スノーシェッドでは谷側柱の車

両進行方向で大きな値であった.山側柱ではH=1mで全

体的に非常に大きな値(H=1m 2,000mg/m2以上)であった.

全体的に谷側柱よりも山側柱の方が大きな値であった.

堀切スノーシェッドでは谷側柱は比較的小さな値

(H=1m 480mg/m2程度)であった. d)塗膜・鋼材表面の詳細調査 平均塗膜厚と塗替回数,層数を調査した.貝掛スノー

シェッド・堀切スノーシェッドでは,建設以降塗替はな

かった.三俣スノーシェッドでは,昭和41年建設以降,

塗替回数にバラツキがあった.柱では1期施工箇所で谷

側2~4回,山側3~5回(8~13年間隔),2期施工箇所

は谷側0~2回,山側2回(最小で12年間隔)であった.

全体的に塗膜厚は大きな値(220μm以上)であった.

(2) 現地腐食調査

各スノーシェッドで代表的な腐食損傷パターンを示

写真-2 三俣スノーシェッド 車両進行に正対する面

表-1 三俣スノーシェッド 柱の損傷,劣化の目安

○損傷なし

腐食a

塗替えなし

三俣

SS柱82

谷側終点側

中間部

三俣

SS柱104

山側起点側

中間部

三俣

SS柱104

山側車道側

中間部

△点錆等

腐食

塗装劣化c~d

Rc-Ⅲ

三俣

SS柱89

谷側起点側

中間部

三俣

SS柱104

谷側起点側

中間部

三俣

SS柱82

谷側車道側

中間部

三俣SS

柱122(113)

山側車道側

中間部

         点錆

浮き

三俣SS

柱122山側

終点側連結部

付近

(浮き、はがれ)

点錆(深さ小,面積大

/深さ大,面積

小)

部分的にはが

腐食c~d

塗装劣化d~e

Rc-Ⅰ

三俣

SS柱104

山側終点側

基部

三俣

SS柱141

谷側起点側

中間部

三俣

SS柱89

山側起点側

中間部

三俣

SS柱120

谷側車道側

中間部

三俣

SS柱80

山側擁壁側

中間部

三俣

SS

柱89山側

終点側連結部

柱120

山側起点側

中間部(浮き、はがれ)

×

錆(深さ大,面積大)

全体的

にはがれ

腐食d~e

塗装劣化d~e

Rc-Ⅰ

三俣

SS柱63

谷側起点側

基部

三俣

SS柱129

谷側起点側

中間部

三俣

SS柱120

山側終点側

中間部

三俣

SS柱120

谷側車道側

中間部

三俣

SS柱61

山側車道側

中間部

三俣

SS

柱120山側

終点側連結部

付近

(浮き、はがれ)

柱(山側ウエブ 中間部) 柱(車道側フランジ 中間部) 柱(フランジ エッジ部) 柱(連結部)

劣化の

状況評価

塗替え

塗装系

柱(ウエブ 基部) 柱(谷側ウエブ 中間部)

表-2 損傷度分布 凡例

表-3 損傷度分布 参考事例

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し,かつ最も腐食損傷が大きいと思われる部位を数カ所

抽出し,腐食損傷の詳細調査を実施した. 貝掛スノーシェッドでは断面欠損量が10%を超える箇

所は見られなかった.三俣スノーシェッド,堀切スノー

シェッドでは調査した箇所ほとんどで断面欠損量が10%を超えた.なお,断面欠損量は次の式 (1a,1b)により算

出した.

%100tdtr (1a)

trtdtr (1b)

ここに, :断面欠損量(%)

tr :平均腐食量

td :設計板厚

tr :平均腐食板厚

(3) 構造安全性の照査 建設時の構造解析モデルを用いて軸応力,曲げ応力度,

せん断力を照査した結果,全スノーシェッドで腐食後に

も十分な耐力を有する結果となった.よって,柱部材は

全て構造安全性に問題が無く,当板等の補修補強は不要

と判断した.

4. 補修対策の概略検討

調査結果を踏まえて,補修工法について4案を考案し

た.それぞれ比較検討(表-4)を行い,基本案を選定した.

(1) 第1案 塗装塗替工法(Rc-Ⅲ) 腐食部の錆を3種ケレン施工によって除去した後,弱

溶剤形変性エポキシ樹脂塗料から弱溶剤形フッ素樹脂塗

料上塗までを塗布する工法. (2) 第2案 塗装塗替工法(Rc-Ⅰ) 腐食部の錆をブラストによって完全に除去した後,

有機ジンクリッチペイントから弱溶剤形フッ素樹脂塗料

上塗までを塗布する重防食塗装工法.

(3) 第3案 金属溶射(AL-Mg溶射) 腐食部の錆をブラストによって完全に除去した後,ア

ルミニウム(95%)とマグネシウム(5%)からなる合

金線を溶射材料に用いてプラズマ溶射し,金属皮膜を形

成する工法.

(4) 第4案 コンクリート壁増設 谷側の既設柱を基礎天端から1mの位置で切断し,新

たにコンクリート壁(1m高)を基礎天端に増設する.

切断した柱下端にはベースプレートを現場溶接にて接合

し,アンカーボルトにてコンクリート壁に定着する. 比較検討の結果,第2案 塗装塗替工法(Rc-Ⅰ)を基本

案とした.(図-1)

505.80

259.10

53.30

164.60

74.60

270.00

151.00

85.50

236.50

351.80

266.70

189.40

0

100

200

300

400

500

600

1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100 2110 2120

西暦

補修

コスト

(百

万円)

第1案(Rc-Ⅲ)第2案(Rc-Ⅰ)第3案(金属溶射)第4案(コンクリート壁)

金属溶射:80年

柱中間Rc-Ⅰ:40年

1965年建設

11年経過

2065年建設後100年

2114年現在から100年

柱下端Rc-Ⅰ:20年柱中間Rc-Ⅲ:20年

2003年塗替え

金属溶射

基部Rc-Ⅰ

高欄改良

山側基部Rc-Ⅰ

金属溶射

基部以外Rc-Ⅰ

高欄以外Rc-Ⅰ

全面Rc-Ⅰ

全面Rc-Ⅰ

全面Rc-Ⅲ

基部Rc-Ⅲ

全面Rc-Ⅲ

柱下端Rc-Ⅲ:5年

5. 現地腐食環境調査

現状において塗膜の健全度が高く,塗装の塗り替えを

必要としない範囲の長期的な健全度などを確認するため,

ワッペン式暴露試験を実施した.幅50mm×厚2mmに

整形した鋼板を両面テープで構造物に触接貼付し,今後,

一定の暴露期間(1,3,5年間)を経た後に回収・分析し,

腐食による板厚減耗量を定量的に算定する計画である.

(写真-3)

図-1 各塗装工法のLCC

写真-3 ワッペン式暴露試験の設置例

表-4 各塗装工法の比較

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6. 現地施工確認調査

塗装管理計画を検討するにあたり,Rc-Ⅰ塗装系の施

工で最も重要であるブラスト(1種ケレン)について,

現地施工状況を確認し,施工上の問題点や課題を抽出し

た.抽出するにあたり,三俣スノーシェッドの腐食損傷

の激しい箇所を施工箇所として選定し試験施工を実施し

た.(写真-4、写真-5、写真-6)

(1)施工時の仮設,通行規制について 狭隘なスノーシェッド内で24時間の片側通行規制に

より,施工期間を通した足場・防護鋼の常設が必要であ

り,規制方法・時期の十分な検討が必要である.

(2)固着錆の除去について 固着錆を除去するためにはブラストと他の方法(電動

タガネ等)の併用が必要である.支承部は厚い錆が発生

している.直接ブラストでの除去は困難であり,前処理

による錆除去方法の検討・実施が必要である.

(3)付着塩分量について 付着塩分量については,ブラスト後に目標値

(50mg/m2)を超える場合は,対応方法(水洗,水洗+

ブラスト,これらの繰り返し等)を徹底する必要がある.

(4)施工時期について 積雪や雨水が屋根材の隙間等を通して,ブラスト及び

塗装の施工中に漏水,柱部材等を伝わりブラスト面を濡

らすと塗装の品質に大きく影響する.このことから積雪

期におけるブラスト施工は望ましくなく,適切な施工時

期を選定する必要がある.

7. 塗替塗装仕様・範囲の検討

現地塗膜調査及び現地腐食調査の結果を基に,塗膜の

健全度を総合的に評価,その評価結果を踏まえ,将来予

測を勘定して部位,劣化状況に応じた塗り替え工法につ

いて検討を行った.

(1)塗り替えの基本的な考え方 塗替の基本的な考え方は以下の通りとした. ①柱や主梁は,腐食・損傷の程度に応じ,一定の高さ

の範囲毎・側面毎にRc-Ⅰ塗装系やRc-Ⅲ塗装系,あるい

は塗装塗替なしを組み合わせて塗り分ける. ②横梁,横構,側面(斜材や棒鋼等)は,全面Rc-Ⅰ

塗装系で塗替る. ③屋根材は大きな損傷は見られないことから基本的に

は塗替しない.

(2)ケレン(素地調整)の種別の判定 ケレン(素地調整)の種別判定は以下の通りとした. ①腐食損傷が生じた部位では1種ケレン(ブラスト)

とする. ②点錆や塗膜の剥離が生じた部位など腐食損傷に至ら

ない場合には3種ケレンとする. ③現状は軽度の腐食損傷でも,常時湿潤環境や点検困

難な箇所,構造的に重要な箇所(柱基部や柱と主梁の結

写真-4 起点側施工箇所(ブラスト施工前)

写真-5 起点側施工箇所(ブラスト施工後①)

写真-6 起点側施工箇所(ブラスト施工後②)

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合部)はRc-Ⅰ塗装系での塗替を基本とする.

8. 将来の塗装計画の立案

これまでの調査・検討を考慮し,貝掛・三俣・堀切の

各スノーシェッドの各部位における塗装計画(案)を作成

した.(表-5)

9. まとめ

様々な調査・検討を行い,貝掛・三俣・堀切の各スノーシェッドの損傷,劣化状況に応じた塗装仕様・範囲とともに,塗装塗替時期を変化させたケースで LCC を算出,塗装計画(案)を作成した.概略検討において本検討の塗装塗替工法の基本案を示した. 金属溶射については,高い防食性能を示しながらも,

施工実績が少なく,スノーシェッド特有の構造に対する施工性や長期的信頼性が不明確であるため採用しなかった. 塗装を行わない範囲の選定においては,5. 現地腐食

環境調査施工で示したワッペン式暴露試験により今後も長期的な腐食環境の把握を行う必要がある.

6. 現地施工確認調査で示したように施工上の問題点・課題が多々ある. 今後も,それらについて継続的に調査・検討を行い,

施工年次等詳細な計画を作成していきたい.

10. 終わりに

積雪地域にとって,冬期交通の確保は地域経済にとっての生命線とも言える.北陸地域と首都圏を結ぶ交通の要衝にある長岡国道事務所管内における冬期交通確保の責務は非常に大きなものがある.北陸地域の地域振興に資するため「雪に強い道路」を作ることを目指し,本事業の取り組み等を通して,適切かつ合理的・経済的な道路施設の維持管理に取り組んでいく所存である.

参考文献

1) 国土交通省国土技術政策総合研究所:道路橋の定期点検に関

する参考資料-橋梁損傷事例写真-.,2004年 12月

表-5 各スノーシェッドの塗装計画(案) 金額単位;千円

起点

終点

側谷側柱 山側柱 谷側柱 山側柱 主梁

1柱当たり

ブロック全体

1 12 12 11 Case4’ Case1’ 760 9,120 26

13 30 18 27 Case4’ Case1’ 777 13,986 11

31 50 20 39 Case4’ Case1’ 902 18,040 3

51 60 10 59 Case1’ Case1’ 918 9,180 6

61 70 10 65 Case4’ Case3’ 551 5,510 19

70 55,836

金額単位;千円

起点

終点

側谷側柱 山側柱 谷側柱 山側柱 主梁

1柱当たり

ブロック全体

1 14 14 10 11 Case4’ Case4’ Case4’ 1070 14,980 27

15 33 19 18 26 Case4’ Case4’ Case4’ 1096 20,824 17

34 44 11 41 39 Case4’ Case4’ Case4’ 1142 12,562 18

45 60 16 55 52 Case4’ Case1’ Case4’ 1188 19,008 29

61 63 3 Case4’ Case4’ Case4’ 1,198 3,594 21

64 79 16 Case1’ Case1’ Case4’ 1,234 19,744 14

80 84 5 Case1’ Case1’ Case4’ 1,234 6,170 22

85 94 10 Case4’ Case1’ Case4’ 1,202 12,020 16

95 111 17 Case4’ Case1’ Case4’ 1,170 19,890 20

112 121 10 Case1’ Case1’ Case4’ 1,234 12,340 8

122 131 10 Case1’ Case1’ Case4’ 1,234 12,340 5

132 138 7 Case1’ Case1’ Case4’ 1,234 8,638 9

139 147 9 Case1’ Case1’ Case4’ 1,234 11,106 7

148 155 8 150 152 Case1’ Case1’ Case4’ 1,230 9,840 4

156 173 18 162 165 Case4’ Case1’ Case4’ 1,151 20,718 28

174 187 14 179 187 Case4’ Case1’ Case4’ 1,100 15,400 24

188 198 11 194 197 Case4’ Case4’ Case4’ 1,111 12,221 25

199 214 16 212 214 Case4’ Case1’ Case4’ 1,155 18,480 23

215 235 21 225 224 Case4’ Case1’ Case4’ 1,190 24,990 15

236 261 26 245 252 Case1’ Case1’ Case4’ 1,230 31,980 12

262 272 11 269 268 Case1’ Case4’ Case4’ 1,198 13,178 13

272 320,023

金額単位;千円

起点

終点

側谷側柱 山側柱 谷側柱 山側柱 主梁

1柱当たり

ブロック全体

1 14 14 8 8 Case4’ Case1’ Case1’ 1472 20,608 10

15 19 5 Case1’ Case1’ Case1’ 1522 7,610 2

20 24 5 Case1’ Case1’ Case1’ 1522 7,610 1

24 35,828

概算総塗装費用優先順位

柱柱数

代表断面(柱)

塗装仕様のケース

概算総塗装費用柱

柱数

代表断面(柱)

塗装仕様のケース

89

106

120

129

135

145

塗装仕様のケース 概算総塗装費用柱

柱数

代表断面(柱)

優先順位の検討

損傷状況(劣化ランク)

工事費用+

施工順序

17

23

63

76

82

5

4

2

3

1

優先順位の検討

損傷状況(劣化ランク)

工事費用+

施工順序

優先順位

優先順位の検討

損傷状況(劣化ランク)

工事費用+

施工順序

優先順位

堀切SS

三俣SS

貝掛SS

Case1’

Case2’

Case3’

Case4’

Case5’

*各Case’はそれぞれの塗装仕様に対して、損傷状況を考慮してLCC(40年間)を算出。 上の3表では各SS毎に最小のLCCのものを掲載

下フランジ;RC-Ⅲ、

ウェブ;塗替えなし

下フランジ;RC-Ⅰ、

ウェブ;RC-Ⅲ*ただし、山側張出部は塗り替えなし

基部・柱下方・柱頂部;Rc-Ⅰ、柱上方;Rc-Ⅲ

下フランジ;RC-Ⅰ、ウェブ;RC-Ⅲ

下フランジ;RC-Ⅰ、ウェブ;RC-Ⅲ

基部・柱頂部;Rc-Ⅰ、柱下方・柱上方;Rc-Ⅲ

下フランジ;RC-Ⅰ、ウェブ;塗替えなし

下フランジ;RC-Ⅰ、ウェブ;塗替えなし

基部・柱頂部;Rc-Ⅰ、

柱下方・柱上方;損傷に応じた塗装仕様全て(下フランジ・ウェブ);Rc-Ⅲ

全て(下フランジ・ウェブ);Rc-Ⅰ

*ただし、山側張出部は塗り替えなし

山側柱 主梁(貝掛、堀切SS) 主梁(三俣SS)

全て(基部・柱頂部・柱下方・柱上方);Rc-Ⅰ 全て(下フランジ・ウェブ);Rc-Ⅰ 全て(下フランジ・ウェブ);Rc-Ⅰ

各部位の塗装仕様の説明

谷側柱