論文内容の要旨ginmu.naramed-u.ac.jp/dspace/bitstream/10564/3387/1/01甲...icwr&fioico...

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様式第5 号(第 9 条関係) 論文内容の要旨 報告番号 空欄 氏名 吉井由美 Implementation o f a r a p i d a s a y o f ADAMTS13 a c t i v i t y was a s o c i a t e d with improved 30 day s u r v i v a l r a t e i n p a t i e n t s w i t h a c q u i r e d primaηthrombotic t h r o m b o c y t o p e n i c purpura who r e c e i v e d p l a t e l e t t r a n s f u s i o n s (和訳) ADAMTS13 活性測定法の迅速化は、血小板輸血を受けた後天性原発性血栓性血小板 減少性紫斑病患者の3 0 日生存率の向上に寄与した 論文内容の要旨 後天性原発性血栓性血小板減少性紫斑病( a T P ) の本態は、 von W i 1 l e b r a n d F a c t o r (V WF) の切断酵素である ADAMTS13 活性が著減することで、超高分子量 VWF マルチマーれ正- VWF) が切断されず、微小血管内でこの UL-VWF に血小板が凝集し血小板血栓が多発する ことで引き起こされる枯渇性血小板減少と臓器障害である。このため 、 aTTP 患者への血小板 輸血は「火に油を注むこととなり従来、禁忌とされていた。しかし、近年では血小板輸血が aTTP 患者に不利益をもたらす証拠は必ずしもないとしち報告も散見される。そこで今回我々 aTP 患者への血小板輸血の影響について解析した。 20 年から 2013 年までに当科で ADAMTS13 活性及び抗体価を測定し、かっ臨床情報 を追跡できた初発 aTP 患者 2 6 3 名について解析した。このうち、 aTP の経過中に血小板 輸血を受けた,患者は 48 名いたが、血小板輸血の有無と 30 日生存率に有意な相関はみられ なかった。 次に、 ADAMTS13 活性の検査法に着目したところ、 205 年以前は結果判明までに約 1 間を要する VWF M u l t i m e r 法で測定していたが、 205 年以後は検体収受当日に結果が判 明する ELISA 法での測定が可能になり、主治医への結果報告に要する時聞が著明に短縮さ れた。そこで、旧検査法で測定していた時期を P e r i o d 1 ,新検査法への移行後を P e r i o d 2 して別々に解析を行った。 P e r i o d 2 では血小板輸血を受けた 3 1 例と受けなかった 1 4 3 例で は生存率に有意な差はみられなかったが、 P e r i o d 1 においては血小板輸血を受けた 1 7 例は 受けなかった 74 例と比較して有意に死亡率が高かった。 なお、多変量解析の結果、 P e r i o d 1 では血小板輸血、年齢( 6 0 歳以上)が早期死亡の危険 因子として同定されたが、 P e r i o d 2 では血小板輸血は有意な予後因子ではなく、 TTP の重症 度 がリスク因子であ り、血襲交 換、ステロイド投与を行 った症例 にお いて有意に予後がよかっ た。 以上より、診断に時間がかかり適切な治療を早期に選択しにくい状況では TTP 患者への 血小板輸血は明らかに有害で、あった。しかし早期に診断され、血援交換やステロイド治療など の標準療法を早期に実施できた症例においては、致死的な出血症状などのやむを得ない状 況下においてのみ血小板輸血は許容される可能性がある。

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Page 1: 論文内容の要旨ginmu.naramed-u.ac.jp/dspace/bitstream/10564/3387/1/01甲...ICWr&fioico Period 2 31 143 Period 1 17 74 Period 1 Period 2 TTP TTP Created Date 11/24/2017 10:42:14

様式第5号(第 9条関係)

論文内容の要旨

報告番号 空 欄 氏名 吉井由美

Implementation of a rapid assay of ADAMTS13 activity was associated with

improved 30 ・day survival rate in patients with acquired primaηthrombotic

thrombocytopenic purpura who received platelet transfusions

( 和訳 )

ADAMTS13 活性測定法の迅速化は、血小板輸血を受けた後天性原発性血栓性血小板

減少性紫斑病患者の30 日生存率の向上に寄与した

論文内容の要旨

後天性原発性血栓性血小板減少性紫斑病(aTTP) の本態は、 von W i1l ebrand Factor (V WF)

の切断酵素である ADAMTS13 活性が著減することで、超高分子量 VWF マルチマーれ正-VWF) が切断されず、微小血管内でこの UL-VWF に血小板が凝集し血小板血栓が多発する

ことで引き起こされる枯渇性血小板減少と臓器障害である。このため、aTTP 患者への血小板

輸血は「火に油を注むこととなり従来、禁忌とされていた。しかし、近年では血小板輸血が

aTTP 患者に不利益をもたらす証拠は必ずしもないとしち報告も散見される。そこで今回我々

は aTTP 患者への血小板輸血の影響について解析した。

2000 年から 2013 年までに当科で ADAMTS13 活性及び抗体価を測定し、かっ臨床情報

を追跡できた初発 aTTP 患者 263 名について解析した。 このうち、 aTTP の経過中に血小板

輸血を受けた,患者は 48 名いたが、血小板輸血の有無と 30 日生存率に有意な相関はみられ

なかった。

次に、 ADAMTS13 活性の検査法に着目したところ、 2005 年以前は結果判明までに約 1週

間を要する VWF Multimer 法で測定していたが、 2005 年以後は検体収受当日に結果が判

明する ELISA 法での測定が可能になり、主治医への結果報告に要する時聞が著明に短縮さ

れた。そこで、旧検査法で測定していた時期を Period 1,新検査法への移行後を Period 2 と

して別々に解析を行った。 Period 2 では血小板輸血を受けた 31 例と受けなかった 143 例で

は生存率に有意な差はみられなかったが、 Period 1 においては血小板輸血を受けた 17 例は

受けなかった 74 例と比較して有意に死亡率が高かった。

なお、多変量解析の結果、 Period 1 では血小板輸血、年齢(60 歳以上)が早期死亡の危険

因子として同定されたが、 Period 2 では血小板輸血は有意な予後因子ではなく、TTP の重症

度がリスク因子であり、血襲交換、ステロイド投与を行った症例において有意に予後がよかっ

た。

以上より、診断に時間がかかり適切な治療を早期に選択しにくい状況では TTP 患者への

血小板輸血は明らかに有害で、あった。しかし早期に診断され、血援交換やステロイド治療など

の標準療法を早期に実施できた症例においては、致死的な出血症状などのやむを得ない状

況下においてのみ血小板輸血は許容される可能性がある。