高速・高密度運転に対応するatc/atoシステム -...

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特集 鉄道システムの発展を支える最近の技術動向 高速・高密度運転に対応するATC/ATOシステム ATCandATOSystemsforHigh-SpeedandHigh-DensityTrafficOperation 高岡 征* 吉隆** 関野真一** 磯部栄介*** 7七血∫カブ Tbゑ〟〃々α 1/osゐ宮上αカα ∧切々α 5ゐオ〃'オc/zオ5どゐg乃〃 Eまゞ〟如 ノざ0∂g データ編集 運行データ ダイヤグラム 進路 余裕時分 連動表 車両運用 信号データ 駅位置 配線構造 閉塞(そく)速度制限 信号現示表 実行条件編集 出発指令 延着処理 進路制御 信号処理 ATC制御 定位置停止 制御 走行計算 加速度 速度 距離 発熱 エネルギー き電計算 電圧 電流 力率 デマンド 結果記録 表示,印刷 路線データ 二う配分布 曲線分布 トンネル 列車データ 列車性能 編成長 乗車率 走行抵抗係数 き電系データ 配線網 線路網記述 き電区分 短絡容量 変電所制御特性 注:略語説明 ATC(AutomaticTrainControl; 自動列車制御) 鉄道総合シミュレータ"NewJUMPS”(NewJustifiedModelsforPracticalSpecificati 安全で効率的な新しい鉄道システム構築のためには,構成するサブシステムを有機的に結合させた総合的なシミュレーシ ョン検討が必要である。 安全で効率的な鉄道システムの実現に向けて,鉄 道の高速化や高密度化が要請されている。この要請 にこたえるためには,他サブシステムとともにATC (AutomaticTrainControl:自動列車制御)システ ムやATO(AutomaticTrainOperation:列車自動 運転)システムの改善検討が必要である。従来もこれ らのシステムは個別に性能の改善が行われてきた が,現在の輸送能力の限界に近い状況を打破するた めには,双方を有機的に結合させ,しかも運行管理 などの他の鉄道のサブシステムも考慮に入れた総合 的な検討を要する。また,車両は新製車両を導入し て逐次性能改善が比較的容易にできるが,車両性能 向上の分だけシステム性能が向上する新しいシステ ムに再構築することが望ましい。 これらの状況を踏まえ,上述の要件を備えた新し い鉄道システムを総合的に検討するため,鉄道総合 シミュレータ"NewJUMPS''(NewJustified Modelsfor PracticalSpecification)を開発 これにより,ATCシステムやATOシステム,さらに は安全で効率的な新しい鉄道システムの開発を推進 していく考えである。 *l=亡製作所水ノ→l二場+二学博_L二・技術卜(電気・電子部門) **∩てJ二製作所水ナi_‾l二場 ***「ト土製作所交通事業部技術士(電気・電子部門) 27

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  • 特集 鉄道システムの発展を支える最近の技術動向

    高速・高密度運転に対応するATC/ATOシステムATCandATOSystemsforHigh-SpeedandHigh-DensityTrafficOperation

    高岡 征*

    仲 吉隆**

    関野真一**

    磯部栄介***

    7七血∫カブ Tbゑ〟〃々α

    1/osゐ宮上αカα∧切々α

    5ゐオ〃'オc/zオ5どゐg乃〃

    Eまゞ〟如 ノざ0∂g

    データ編集

    運行データ

    ダイヤグラム 進路

    余裕時分 連動表

    車両運用

    信号データ

    駅位置 配線構造

    閉塞(そく)速度制限

    信号現示表

    実行条件編集

    駅 機 能

    出発指令

    延着処理

    進路制御

    信号処理

    ATC制御

    定位置停止

    制御

    実 行 管 理

    走行計算

    加速度 速度

    距離 発熱

    エネルギー

    き電計算

    電圧 電流

    力率 デマンド

    結果記録

    表示,印刷

    路線データ

    二う配分布

    曲線分布 トンネル

    列車データ

    列車性能 編成長

    乗車率

    走行抵抗係数

    き電系データ

    配線網 線路網記述

    き電区分 短絡容量変電所制御特性

    注:略語説明 ATC(AutomaticTrainControl;

    自動列車制御)

    鉄道総合シミュレータ"NewJUMPS”(NewJustifiedModelsforPracticalSpecification)のシステム構成安全で効率的な新しい鉄道システム構築のためには,構成するサブシステムを有機的に結合させた総合的なシミュレーシ

    ョン検討が必要である。

    安全で効率的な鉄道システムの実現に向けて,鉄

    道の高速化や高密度化が要請されている。この要請

    にこたえるためには,他サブシステムとともにATC

    (AutomaticTrainControl:自動列車制御)システ

    ムやATO(AutomaticTrainOperation:列車自動

    運転)システムの改善検討が必要である。従来もこれ

    らのシステムは個別に性能の改善が行われてきた

    が,現在の輸送能力の限界に近い状況を打破するた

    めには,双方を有機的に結合させ,しかも運行管理

    などの他の鉄道のサブシステムも考慮に入れた総合

    的な検討を要する。また,車両は新製車両を導入し

    て逐次性能改善が比較的容易にできるが,車両性能

    向上の分だけシステム性能が向上する新しいシステ

    ムに再構築することが望ましい。

    これらの状況を踏まえ,上述の要件を備えた新し

    い鉄道システムを総合的に検討するため,鉄道総合

    シミュレータ"NewJUMPS''(NewJustified

    Modelsfor PracticalSpecification)を開発した。

    これにより,ATCシステムやATOシステム,さらに

    は安全で効率的な新しい鉄道システムの開発を推進

    していく考えである。

    *l=亡製作所水ノ→l二場+二学博_L二・技術卜(電気・電子部門) **∩てJ二製作所水ナi_‾l二場

    ***「ト土製作所交通事業部技術士(電気・電子部門)

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  • 380 日立評論 〉OL.76 No.5=994-5)

    m はじめに

    人都心の通勤線区や新幹線で,高速化・高密度化が紫

    求されており,双方のドi川音達成が要求さ才Lる場合も少な

    くない。通常,高速化と高密度化の達成は二白二いに和瓦す

    る域介が多く,■モーごj速化を阿ると■宕招f度化性能が低‾卜し,

    逆に肘掛引ヒをlズⅠると高速化性能は低下しやすし、。この

    ような状況から,旅客サービス向_卜のための運転速度向

    卜と,輸送力増強のための列小本数の増加とを合わせて

    リミちユするためには,鉄道システム全体にわたる械断的な

    検.汁を資する1)・2)。

    一ノ/,i亡i速・ ーーつの列車の運転の乱

    れが令体の列車の逆転の乱れの傾国となり,遅れが拡人

    する。そのため,運転操作に個人差の少ない均一-・さと即

    応怖が‾柴求される。このために,古襟度運転を実現する

    ためのATCシステムと,■曽i鮒空運転の状況‾卜で安定で効

    ヰ対l勺な運転を一夫現するATOシステムの有機的な軋1み合

    わせが今後の■モモJi速・高射空運転実現への有力な武器にな

    るものと考える3)。

    ここでは,ATCシステムとATOシステムの概要,導入

    例,および新しい鉄道システムを総介的に検討する鉄道

    総†ナシミュレ一夕について述べる。

    田 ATC/ATO装置の技術的変遷

    ATC装置やATS(Automatic′Ⅰ、raillStop:‖軌列中

    仲止)装i左などの†粁女装宗引ま,地上装荷と車上装置で構成

    している。他卜装芯では,先行列巾の仔在を検知し,光

    て√列小と後続列車の州対伸雄から後続列坤の走行許容速

    J生(ATC装ii与の場介)信号ないしは制動開始地一l烹(ATS

    装-;程の場合川;-り一を申_上装㍍引こ仏達する。申__卜装i賀では,

    ノ受イi;した仁り・に対応した許容速度以‾卜に列二・ト速度を低‾卜▲

    させる制御を才一ナう。このように仁与÷に対応した許苓通性

    と列中速度との関係を照査し,ブレーキ指令を発する機

    能を速度照合機能と称し,保′左制御申_卜装揖の小心的な

    機能である。

    A′I「C巷さi耳の技術的変遷は,区=にホすようにコントロ

    ーラハードク)何ではアナログ演算からディジタル演算

    へ,ディジタル演算でも小規模集積阿路から人規模集積

    1l-り路やマイコン(マイクロコンピュータ)演算へと変化し

    てきた。また,列車制御ノJJ〔の面では,従来の段階制御

    1三体の制御から,パターン制御や一段ブレーキ制御の方

    l;りに移子fする傾向にある。

    ATOシステムは197n牛代に実用化された。ATO装置

    28

    の機能は人別して,駅l‾封走行のための左速走行機能と駅

    停止のための左位置停止機能に分けることができる。左

    通運串云機能はATC制限速度の数キロメートル毎時‾‾卜仲

    通度を目標速度として,次駅までの走行を白軌化する技

    術である。-一方,定位置停l卜機能は駅の左11大に列巾を件申

    させる機能で,停+上二桁度の高さと乗リノL、地が良いことや仔

    止時の減速度が大きいことが濱求される。ATOもATC

    と同様にアナログからディジタルに,さらにはマイコン

    へと変化してきた。またF】封J制御技術の何では,二Il初は

    PID(比例・積分・微分)制御によるATOでスタートし

    た。すなわち,H標伯と制御値との偏差にⅠ)(比例)・Ⅰ(横

    分)・D(微分)操作を加えて制御出力とする制御ガJ(で

    ある。このPID制御〟式の欠瓜ま,熟練した人間の操作に

    対し,制御の卜手さなどの点で劣る場†ナがあることであ

    る。最近ではこのような欠∴!二くを避けるため,ファジィ制

    御などのAl制御技術を導入し,熟練した運車去十に近し、運

    転が可能な予見ファジィATOとして実Hj化している。

    同 最近のATC/ATOの概要

    3.1最近のATC装置

    最近のATC装置の動向としては,高墟さ度運転をH的と

    1970年 1980年 19gO年

    システムヘの

    向上/呈票化 保守性 高速度

    ニース化 経済性 高密度

    コントローラ

    ハード

    アナログ

    回路 ティシタル/

    8ビット/16ビット/32ビット

    マイコン/マイコン.′マイコン

    回路 J

    /大規模集積回路

    制御技術 P旧制御/蒜宗棚/適応制御子誓警告イ,ニュ_。)

    ATC詫ログティジタ

    ATC

    怒宝島/㌶コン

    ATO 欝 ㌶ジイ

    注:略語説明

    マイコン(マイクロ]ンピュ.一夕),PID(比例・積か微分)

    ATO(AutomatjcTrainOperat【0∩:列車自動運転)

    図I ATC/ATO技術の変遷 ATCはアナログ演算からディジ

    タル演算,マイコン演算へ,ATOはP】D制御からファジィ制御へと

    変化している。

  • 高速・高密度運転に対応するATC/ATOシステム 381

    した多段階--・段ブレーキ制御のための多段階速度月そi瀬や

    装苗の′J、型化,さらにはL′-1軌試験機能の充実による検収

    菜摘の簡妨化などが特徴的である。

    3.1.1東京急行電鉄株式会社納め一段制御ATC装置

    火う;く急行電鉄株式台祉では,山悼摺r川i満い新一1川l繰の

    輸送力増強および保′女度の向卜を‖的とし,新しいATC

    システム4)によって平成3年31Jから逆転を開始した。

    この新しいATCシステムは,多くの柑徴を持っている

    が,右主大の特徴は一段71レーキ制御方式の導入である。

    この一段ブレーキ制御方式は,既存の七;号保`左システ

    ム設備をできるだけi‾.1川できて,しかも様軌小の常業路

    紙とでのシステム変態が比車交杓谷妨であるという特徴を糾

    った,計射窒化対応の逆転保一女システムである。

    このような一段ブレーキ制御を実現するために,この

    システムは22種類のf.i与プー段を侍っている。運転-_L二への表

    ホとして、22段の信号情事lほ衣′Jミし,前方f.-;-~j一が低仰視

    ホの域′ナには速度計l人Jの前方-㌢f‡i表灯を上!よ滅するととも

    に,了㌧flTブザーを咄軌させて釆荷貝の操作を‾支援し,-111・

    めのブレーキ操作によるl-リ滑な逆転ができる。

    このような坤_卜肘+仰の基本となる速†虹りくi丑・制御部

    は,16ビットマイコンと号泣富な実績を鞘つATCカスタム

    LSIとを組み付わせた,リング演算J!てi合型フェイルセー

    フマイコンによって構成され,機能の人帖な増加にもかか

    わらず小生竺化を′実現した。ATC装置の外観を図2に示す。

    3.1.2 209系車両用ATC装置

    1jく浜束北練を走行する209糸車内川ATC装置5)は,′受fさ‡

    溺_二束系、制御部二束系の構成であり,′受fil淵;と制御部

    川の†∴‡J一受撼しをJ馴立教インタフェースとして継電芸注を

    行き,装置の′ト型・軽も主化を担Ⅰった。また,ATC装置の

    試験を白軌で行う検忠邦を付械しており,制御伝送装置

    受電器

    制御伝送

    装置

    速度

    発電機

    車上試験SW

    ・・・・・・・・く)

    ATC信号

    列春情報

    試験項目

    故障情報

    試験結果

    速度信号

    試焉兵SW条件

    し凋竹川名

    二面…蜜叩…

    図Z ATC装置外観 機能は従来の7情報から22情報に大幅に

    向上したが,外形は小型化された。

    からの小「二試臓指令に薦づき,試験項【1をFl軌的に設立

    指ホし,試験結果を分析して合否の二川⊥を[_1軌的に子ナう

    ことにより,検修業碕の簡易化をl司った。このAl、C装iF一:

    の構成を図3にホす。ATC装置は・受信郎(二重系),ノ受イiT

    共通部,制御部(二束系),分配盤,記蝕部および検奄部

    で構成している。終部相互のインタフェースは,′文一.消j

    と制御部側はh馴女数インタフェースとして,フェイルセ

    し一フ件能を亜祝した方式とし,検合邦と芥部描=まカレン

    トループでの此列データ化送として,効率化と約坊化を

    川った。また,制御部の照二溌・満貫制御トー1路は、16ビッ

    トマイコンと豊富な一夫績を持つATCカスタムIJSIとを

    刹‾Lみ合わせたリング満算照合!与リフェイルセーフマイコ

    ン(う)で構成した。

    3.2 最近のATO装置

    従来のATO装‾旨引ま,ATC制l眼速度にノ忠一丈に追従した

    迎転を行う場合が多かった。まl立近では,路練データをi言上惜

    したり,トランスポンダ導入による多情幸】i化などによって,

    よりきめの柵かい制御を行うようになっている。

    単打

    /\ル

    現示変化

    受信部ATC信号

    試琴釦白日

    試験結果

    受信

    共通郡

    ATC信号

    受信部

    情報

    キャブ点灯

    故障情報

    無信号検知系列表示灯

    速度指示計

    00000

    検査部

    分配盤

    試ち貪SW条件

    列番情報

    模擬速度

    信号

    速度信号

    速度信号

    記矧青報

    ATC信号

    記報部

    制御部l吉報

    制御部

    菖声信号

    故障情報

    フノレーキ出力

    故障出力

    後退検知出力

    ATC装置

    スピーカ

    (NSR)(NBAR)(EBAR)(CBAR)

    継電器盤

    ATC常用フ、‾レーキ

    ATC非常ブレーキ

    注:略語説明

    SW(Swltch)

    NSR,×R(無信号検知リレー)

    NBAR(常用ブレーキ指令リレー)

    EBAR(非常フ‾レーキ指令リレー)

    CBAR(後退根)

    図3 209糸車両用ATC装置

    の構成 制御伝送装置から

    の車上試験指令により,仕業・

    交番検査を自動的に行うLつ

    29

  • 382 日立評論 VOL.了6 No.5い994-5)

    3.2.1東京都交通局向けATC/ATO装置

    東京都営地下鉄12号線12000系車両には,ワンマン運転

    を支援するためのATOシステムが搭載されている。

    ATO装置は信頼性向上の観点から二重系化されている。

    ATO装置の主な諸元を以■‾Fに述べる。

    (1)ATO送受信部

    駅部に敷設した誘導ループを用いて,地一た検知および

    情報伝送を行う。地点の種別はループを経由し,伝送す

    る2,400ビット/sのデータ伝送で行い,地点の判別はルー

    プ撚(ねん)架点のレベル変化を検知して行う。また,駅

    停止位置のループでは,駅名,行先,列車番号などの情

    報を伝送する。

    (2)ATO制御部

    ATOの制御は,運転士の出発押しボタン操作によって

    起動し,駅間はATC制限速度の+3km/h--5km/hの

    速度範脚で列車を走行させ,次駅の定位置に停車させる

    までの一一連の運転操作を自動化する。ATOには子見ファ

    ジィ制御7)を導入しているが,これと駅間の路線データ

    の記憶とを合わせ,きめ細かく乗F)心地の良い運転制御

    を実現している。

    3.2.2 名古屋市交通局向けATO装置

    名古屋市営地下鉄6与j・線は,平成元年に中村区役所

    ~今池間を開業したが,今回今池~野並間の延長開業に

    あたり,ワンマン遷幸云のためのATO装置8)を設備した

    6000形車両が導入された。地上設備を図4に示す。地上

    子には多情報が伝送吋能なトランスポンダを使用し,停

    止駅ごとに4個の地上子を設置している。ATO地上了の

    種別と用途を表1に示す。

    車上装置の構成を図5に示す。ATO装置は片側の運転

    ATO

    車上装置

    ○列車停止位置

    ▲ ▲ ▲PI P2 P3 P4

    400m 18m

    ▲P3'

    ホー ム

    注:▲(無電源地上子)

    △(有電源地上子)

    外部機器

    (CTC駅装置など)

    駅ATO

    制御装置

    「‾‾‾‾‾1

    1l

    --1駅端子科

    中継器

    電源

    (AClOO〉)

    図4 ATO地上設備 地上子は停止駅ごとに4個設置され,多

    情報の伝送が可能なトランスポンダが使用されている。

    30

    表I ATO地上子の種別と用途 第4地上子は有電源地上子

    とし,可変情報の伝送が可能である。

    伝送方向 変調周波数 地上子種別 情報内容

    地上一車上 l.708±32kHz

    第l地上子

    (Pり地点種別(定位置停止制御用)

    第2地上子

    (PZ)地点種別(定位置停止制御用)

    第3地上子 地点種別(転勤防止用)

    (P3) 駅コード(路線位置認識用)

    第4地上子

    (P4)

    地点種別(定位置停止確認用)

    運転モード(運転パターン切

    換用)

    発駅地上子

    (P3り駅コード(路線位置認識用)

    車上一地上

    275kHz無変調無電源地上子

    (PしPZ,P3,P4)無電源地上子駆動用電力波

    3′000±32kHz第4地上子

    (P4)進行方向など将来対応

    室に設置され,予見ファジィ制御方式によって滑らかで

    効率的な運転を実現する。

    巴 鉄道システム総合シミュレータ

    経済的で効率的な鉄道システムの実現に向けて,与え

    られた課題は数多い。その一つが高速化や高密度化であ

    i),列車運行の高信梅化や省エネルギーなども重要な解

    決しなければならない課題である。これらの要求を満た

    すためには,一つのサブシステムの機能や件能の向上だ

    けでは不十分であり,鉄道システムの総合的なシミュレ

    ータによって検討する必要がある。このような観点から,

    鉄道の運転制御の面を中心とした鉄道総合シミュレータ

    "NewJUMPS''9)(NewJustifiedModelsforPractical

    Specification)を開発した。

    4.1システム構成

    ``NewJUMPS''のシステムを27ページの図に示す。シ

    ミュレーションは以下に示す各部が分担する。

    (1)駅機能部:退避,追い越し,折り返しの運用や停車

    時分,出発時刻などを管理する。

    (2)走行計算部:駆動系克行,運転操作,信号に従った

    保安制御など車【r二の機能を実行する。

    (3)信号処理部:地上側信号制御,進路制御を実際の線

    路配置と連動論理に従って実行する。

    (4)き電計算部:き電系各部を詳細に表現し,時々刻々

    の個々の列車の位置と電妄‾も的状態を反映する。

    これらの各計算部に,路線,列車,き電系,運行および

  • 高速・高密度運転に対応するATC/ATOシステム 383

    (野並駅方面)-

    遷幸

    →(中村区役所駅方面)6100形 6200形 6300形 6700形 6800形

    l l

    l運転台l

    閥巨平lr窯Lて五千J前石I…一

    ATO非常フレーキ

    制御部

    送受信郎

    「章上扇口

    L華__塁+捜_旦jlルー郡.

    「--▲--「

    :ATC装置王+____.+

    【 【 【 ATC現示

    【 【 ATO出力ノ・け __L__

    【L_【l

    一ATC装引+____+

    虻召[蚕萌「妄巧幻j[還正宗[毒蚕ヨ0 0000 00 0

    云台ATO関係表示およぴスイッチ

    「妄レ語1L.____.+

    0l

    ′】†

    車上子

    l

    lT◆G■ ◎

    2・・主

    (表示灯)●ワンマン表示灯 ●出発成立表示灯 ●ATO表示灯 ●停止パターン表示灯

    (スイッチ)●運転切模スイッチ ●出発ボタン ●ATOスイッチ

    ●非常ブレーキボタン ●足踏みテッドマンスイッチ

    注:略語説明 T,G.(TachoGenerator)

    図5 ATO車上設備 予見ファジィ制御方式によるATO装置が,

    信号の各データブロックからシミュレーションデータが供

    給される。全体の動作は実行管理部によって制御される。

    4.2 シミュレータの特徴

    ``NewJUMPS''の主な特徴を以下に述べる。

    (1)車両の記述:現印されているj_ミな電気中駆動〟式

    (カム軸抵抗制御車,チョッパ制御卓,インバータ制御申)

    のモデルを組み込み,同一線トニ上を異なる裡数車種が混

    在して走行できる。また,パンタグラフ点電J_一戸は固定佑

    と詳細なき電回路計算のいずれかを選択できる。信号方

    式も,ウェイサイド信号とキャブシグナルの選択や,保

    安制御方式の選択も‾可能である。

    (2)線路条件:走行に関する全条件(こう配,曲線,列車

    抵抗)と速度制限条件(曲線,こう配,分岐器,臨時速度

    制限)が設定できる。

    (3)仁号制御・進路制御:列車の在線検知と後続列ヰヘ

    の信号現示展開を行う。また,転てつ器や軌道回路を含

    む接続関係を詳細に記述できるので,各列車ごとの進路

    設定が可能である。

    (4)き電設備モデル

    実際のき電系統の詳細な配線接続関係と山路定数,複

    数の変電所の設置場所および負荷・出生特性,オンオフ

    条件などの特性を記述できる。したがって,他の系(列車,

    運行管理機能)と連携した省エネルギー制御方式のシミ

    ュレーションが可能である。

    (5)ダイヤ(ダイヤグラム)の設定:各列車ごとの到着子

    [亘‡三I注:ぐ‾ぎ_1・(1.7Mル伝送波)

    r、′≧J・(3.OMH∠伝送波)

    「亘J(275kル電力濾)

    1セット搭載されている。

    左時刻,.刊発子定時刻,最小停車時分,着発番線,進行

    方向,運用種別などが設定できる。また,列車群走行に

    よる乱れ発生,トl復状況の検討や交差支障時分,析り返

    し支障時分,き電計算などが出力される。

    以卜に述べたようなシミュレータの開発により,ATC

    やATOの単独の件能だけでなく,他の主要サブシステム

    と有機的に結合させた,実路線への適用をイメージした

    シミュレーションが可能になった。

    時隔曲線の出力例とき電計算出力例を図6にホす。

    田 今後の動向

    ATCシステムは安全の確保に,また,ATOシステムは

    省力化や均一の運転の実現にそれぞれ大きく貢献して

    きた。しかし,鉄道に対する最も強いニーズの一つである

    高速・高密度運転の実現のためには,従来のATCシステ

    ムとATOシステムの性能向上が不‾叶欠である。高速・高

    密度運転を実現すると,単位時間内に走行する列串本数

    と走行距離が増加する。現実の運転では,これに外乱が

    加わると,列車群としての正常運転の確実性が低下しや

    すく,いったんダイヤが乱れると,この乱れが拡大され

    やすく,正常運転になかなか復帰できない。この傾向は

    高速・高密度化の度合いが増すほど顕著となる。

    この解決のためには,地上システムの情報化とともに

    中上システムの情報化を図り,双方を移動体通信を介し

    て結合し,列車群に対応した運転制御や運転整理が必要

    31

  • 384 日立評論 VOL.76 No.5(19945)

    距離(km)

    1.5

    1.0

    0.5

    0

    速度(km/h)

    100 50

    ㌫,;‾_‾∴lも。42_ノニ

    50201

    時間(10s/d】∨)

    (a)時隔曲線の出力例

    >上■州∴賠

    午、へ∴/、

    吋.〓

    い‥パ一

    ト+l【+●

    L-1

    11+

    +_+l l

    +_L

    ‡l

    +_+

    圧電

    畠∫∃芋二士甲′′ノル

    _し¶しさ事 l

    _L_+l l

    _L_Ll l

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    l

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    _+_+■Ll l l

    _+_+_+l1 -

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    +_+

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    ▼L_Ll【「

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    [二巨L 【

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    l】】11

    42 48 辞雛(kr†1

    AT

    (b)き電計算の出力例(電車側)

    図6 "NewJUMPS”出力例 列車や信号さらにはき電系を含めた総合的なシミュレーションが可能である。

    である。中上では,前ん列車情報などを地上システムか

    ら受信して,乱れを拡大しないように各列申レベルで対

    応し,小さな乱れの範岡の回役ノJについては,従来のシ

    ステムレベル以上の回復力を維持する。

    このため,高速・高密度運転に対応するATOシステム

    として,逐次変化するH標点(位置,時刻,速度)に対し

    列車の追従制御を行う目標点移動形のA-ATOシステ

    ム10)を提案する。このA-ATOシステムは,先行列車など

    の列車群の状況に対応し,最適な目標点を作り出して運

    転士の運転支援をする最適運転支援装置,目標点への列

    中の追従制御を行うA-ATO装置,および恕い時隔の遷

    幸云を可能とするA-ATC装置2)の3階層のシステムで構

    成する。このように地_1二・申_l∴のサブシステムを有機的

    に結合させることにより,`左合性などの鉄道の優れた特

    性を確保したうえで,高速化と高密度化の同時達成が実

    現できると考える。

    凶 おわりに

    以_L,ATC/ATOの技術的変遷と最近の実印システム

    の概要,今後の動向について述べた。安乍で効率的な鉄

    道システム実現のためには,ATC/ATO以外のサブシス

    テムも含む総合的な検討を要する。このような状況から,

    鉄道総合シミュレータ``NewJUMPS”を活用し,新し

    い鉄道システムの開発に積極的に,取り組む考えである。

    参考文献

    1)高岡,外:鉄道における高速・高額さ度運転システム,H_、IJ二

    評論,73,3,267~272(乎3-3)

    2)高札塚本:車上パターン制御AllCによる高速・高密度

    運転‾方式の提案,電気学会論文誌こD,Vol.112-D,No.8,

    712~721(1992)

    3)高岡,松丸:列車運転・運行システム,電気学会雑誌,

    110,4,257~262(199())

    4)村本:東急凹園部市練・新玉川線のATCシステム,鉄道

    と電気技術,15-24,Vol.1,No.1(1990)

    5)前川,外:JR東Fl本901系用ATC装置,鉄道におけるサイ

    バネティックス利用国内シンポジウム第29回,322-

    325(1992)

    6)高岡:逐次拡大チェック方式によるフェイルセーフなデ

    32

    イジタル演算ノブ式の開発,電イー情報通イ

    Vol.J75-A,No.6,1080~1089(1992)

    7)安信,外:ファジー制御による列車定位置停_1L制御,計測

    日勤制御学会論文集,19,11,873~880(1983)

    8)人須賀,外:名古犀市交通局6()()0形申両用ATO装置,鉄

    道におけるサイバネティックス利用同l勺シンポジウム第

    30桝,428~432(1993)

    9)門馬、外:鉄道総合シミュレータNewJumps,鉄道にお

    けるサイバネティックス利川国内シンポジウム第30帆

    211~215(1993)

    1の 村札外:高密度運転対応列や群制御方式,鉄道における

    サイバネティ ックス利川田内シンポジウム第3nl口1,

    216~220(1993)