一般演題 ポスター 補助循環 - jasect...360 体外循環技術 vol.46 no.3 2019...

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360 体外循環技術 Vol.46 No.3 2019 【背景】 VV-ECMOを要する小児重症呼吸不全に対して当院では、 本邦で唯一使用可能なヨストラ体外循環肺補助用カニュー レ N を使用していたが、2015 年の供給停止以降、海外で十 分な使用実績を持つ AVALON ELITE Bi-Caval Dual Lu- men Catheter(Avalon カニューレ)を倫理委員会の承認 を得て使用している。今回 CMV 肺炎に羅患した重症呼吸 不全に至った患児に対して Avalon カニューレを新生児に 国内で初めて使用、評価した一例を報告する。 【目的】 Avalon カニューレ 13Fr の流量の性能と安全性を評価する。 【方法】 VV-ECMO の遠心ポンプ回転数、実測流量、Recirculation を記録し、海外にて報告されている Avalon カニューレ 13Fr の Rpm-FlowRate のグラフを用いて検討した。 【症例】 生後 1 ヶ月の女児、体重 3.3kg、身長 54cm。咳嗽を主と した感冒様症状につき近医受診、呼吸状態増悪したため、 人工呼吸管理開始、HFO の効果もなく、内科的管理限界の ため、当院転院、VV-ECMO の運びとなった。VV-ECMO System は MP-23H(泉工医科工業社製)=2,700rpm、流量 =400mL/min(120mL/kg/min)にて導入した。 【結果】 遠心ポンプ 2,300 ~ 2,700rpm において Avalon カニュー レ 13Fr の Rpm-FlowRate のグラフと相似した良好な流量 を出せることができ、また Recirculation についても大きな 変動無く安定していたことが確認できた。 【考察】 海外での文献によると、カニューレ留置において穿孔や タンポナーデなどの報告もあがっており、日々のカニュー レ位置確認が重要と考える。Avalon カニューレはデータも 少なく、新生児における本邦での使用経験報告がない状態 で今回 VV-ECMO 導入に至っているが、本症例において経 過中明らかな異常はなく、適切なカニューレ留置によって Avalon カニューレの流量性能を最大限発揮し、Recircula- tion も大きな変動なく安全に管理することができたと考える。 【結語】 乳児重症呼吸不全に対する Avalon カニューレを使用した V-VECMO を経験し明らかな異常はなく安全に管理するこ とができた。今後更なる検証を深め、本邦での Veno venous dual lumen cannula の使用に期待できると考える。 1)あいち小児保健医療総合センター 中央検査科 臨床 工学室 2)同 心臓血管外科 3)同 集中治療科 池田 誠 1) 、近藤 典子 1) 、中前 慶亮 1) 松村 雄基 1) 、小林 かな 1) 、山田 悠希 1) 村山 弘臣 2) 、池山 貴也 3) 、亀井 祐介 1) 乳児重症呼吸不全に対して AVALON ELITE Bi-Caval Dual Lumen Catheter を使用し VV-ECMO で救命した 本邦初の症例の検討 一般演題 ポスター 補助循環 P-34 【はじめに】 従来から開心術では、人工心肺中に使用される心筋保護 液、術野洗浄液などの余剰水分除去を目的とした限外濾過 (ECUM)が行われている。役割の大部分は、心筋保護液に よって大量に投与されるカリウム(K)の除去である。し かし、効率的な Dilutional Ulutrafiltration(DUF)による K 補正を行わなければ、術中術後の高 K 血症が余儀なくさ れる。当院では、Purfusionist ごとに ECUM 返血部位と補 液部位が異なるのが現状である。 【目的】 ECUM 施行時のリザーバーへの返血部位、補液部位の違 いによる洗浄効果の比較検討をする。 【対象および方法】 対象は 2018 年 1 月から 2019 年 4 月に 1 本脱血による人 工心肺を使用した単弁置換術とした。ECUM 返血をカルデ ィオトミーリザーバー側へ返血した 15 例を CR 群、静脈リ ザーバー側へ返血した 14 例を VR 群とした。なお、透析患 者症例は除外した。比較検討項目として、心筋保護液量、 DUF 置換液量、血清 K 値とし、両群間の有意差検定は t 検 定にて行い、p<0.05 を有意差ありとした。 【結果】 生理食塩水による DUF 置換液量において、CR 群 6,266± 2,737mL vs VR 群 4,571±1,452mL(p<0.05)で VR 群にお いて有意に少なかった。人工心肺離脱時の血清 K 値におい ても、4.8±0.4mEq/L vs 4.3±0.3mEq/L(p<0.01)で VR 群において有意に低値であった。 【考察】 ECUM 返血部位、補液部位の違いによる洗浄効果の違い を認めた。VR 群では、より少ない DUF 置換液量で血清 K 値を低下させることが可能であった。これは、VR 側への返 血、CR 側への補液を行うことにより、リザーバー内での心 筋保護液拡散を抑えることができ、効率よく K 除去ができ たためと考える。また、濃厚赤血球輸血によって懸念され る K 値上昇においても同様に抑制することができたと考え られる。 【結語】 ECUM 返血部位を VR、補液を CR にすることでより効 率的な K 除去が可能であった。 愛媛大学医学部附属病院 ME 機器センター 伴野 誠幸、三木 航太、塚本 伶央奈、品部 雅俊 山田 文哉 人工心肺中の ECUM 返血部位と補液部位の違いによ る洗浄効果の検討 P-33

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  • 360 体外循環技術 Vol.46 No.3 2019

    一般演題 ポスター

    【背景】 VV-ECMOを要する小児重症呼吸不全に対して当院では、本邦で唯一使用可能なヨストラ体外循環肺補助用カニューレ N を使用していたが、2015 年の供給停止以降、海外で十分な使用実績を持つ AVALON ELITE Bi-Caval Dual Lu-men Catheter(Avalon カニューレ)を倫理委員会の承認を得て使用している。今回 CMV 肺炎に羅患した重症呼吸不全に至った患児に対して Avalon カニューレを新生児に国内で初めて使用、評価した一例を報告する。

    【目的】 Avalonカニューレ13Frの流量の性能と安全性を評価する。

    【方法】 VV-ECMO の遠心ポンプ回転数、実測流量、Recirculationを記録し、海外にて報告されている Avalon カニューレ 13Frの Rpm-FlowRate のグラフを用いて検討した。

    【症例】 生後 1 ヶ月の女児、体重 3.3kg、身長 54cm。咳嗽を主とした感冒様症状につき近医受診、呼吸状態増悪したため、人工呼吸管理開始、HFO の効果もなく、内科的管理限界のため、当院転院、VV-ECMO の運びとなった。VV-ECMO System は MP-23H(泉工医科工業社製)=2,700rpm、流量=400mL/min(120mL/kg/min)にて導入した。

    【結果】 遠心ポンプ 2,300 ~ 2,700rpm において Avalon カニューレ 13Fr の Rpm-FlowRate のグラフと相似した良好な流量を出せることができ、また Recirculation についても大きな変動無く安定していたことが確認できた。

    【考察】 海外での文献によると、カニューレ留置において穿孔やタンポナーデなどの報告もあがっており、日々のカニューレ位置確認が重要と考える。Avalon カニューレはデータも少なく、新生児における本邦での使用経験報告がない状態で今回 VV-ECMO 導入に至っているが、本症例において経過中明らかな異常はなく、適切なカニューレ留置によってAvalon カニューレの流量性能を最大限発揮し、Recircula-tion も大きな変動なく安全に管理することができたと考える。

    【結語】 乳児重症呼吸不全に対する Avalon カニューレを使用したV-VECMO を経験し明らかな異常はなく安全に管理することができた。今後更なる検証を深め、本邦での Veno venous dual lumen cannula の使用に期待できると考える。

    1) あいち小児保健医療総合センター 中央検査科 臨床工学室

    2)同 心臓血管外科3)同 集中治療科

    ○ 池田 誠 1)、近藤 典子 1)、中前 慶亮 1)松村 雄基 1)、小林 かな 1)、山田 悠希 1)村山 弘臣 2)、池山 貴也 3)、亀井 祐介 1)

    乳児重症呼吸不全に対して AVALON ELITE Bi-Caval Dual Lumen Catheter を使用し VV-ECMO で救命した本邦初の症例の検討

    一般演題 ポスター 補助循環

    P-34

    【はじめに】 従来から開心術では、人工心肺中に使用される心筋保護液、術野洗浄液などの余剰水分除去を目的とした限外濾過

    (ECUM)が行われている。役割の大部分は、心筋保護液によって大量に投与されるカリウム(K)の除去である。しかし、効率的な Dilutional Ulutrafiltration(DUF)によるK 補正を行わなければ、術中術後の高 K 血症が余儀なくされる。当院では、Purfusionist ごとに ECUM 返血部位と補液部位が異なるのが現状である。

    【目的】 ECUM 施行時のリザーバーへの返血部位、補液部位の違いによる洗浄効果の比較検討をする。

    【対象および方法】 対象は 2018 年 1 月から 2019 年 4 月に 1 本脱血による人工心肺を使用した単弁置換術とした。ECUM 返血をカルディオトミーリザーバー側へ返血した 15 例を CR 群、静脈リザーバー側へ返血した 14 例を VR 群とした。なお、透析患者症例は除外した。比較検討項目として、心筋保護液量、DUF 置換液量、血清 K 値とし、両群間の有意差検定は t 検定にて行い、p<0.05 を有意差ありとした。

    【結果】 生理食塩水による DUF 置換液量において、CR 群 6,266±2,737mL vs VR 群 4,571±1,452mL(p<0.05)で VR 群において有意に少なかった。人工心肺離脱時の血清 K 値においても、4.8±0.4mEq/L vs 4.3±0.3mEq/L(p<0.01)で VR群において有意に低値であった。

    【考察】 ECUM 返血部位、補液部位の違いによる洗浄効果の違いを認めた。VR 群では、より少ない DUF 置換液量で血清 K値を低下させることが可能であった。これは、VR 側への返血、CR 側への補液を行うことにより、リザーバー内での心筋保護液拡散を抑えることができ、効率よく K 除去ができたためと考える。また、濃厚赤血球輸血によって懸念される K 値上昇においても同様に抑制することができたと考えられる。

    【結語】 ECUM 返血部位を VR、補液を CR にすることでより効率的な K 除去が可能であった。

    愛媛大学医学部附属病院 ME 機器センター

    ○ 伴野 誠幸、三木 航太、塚本 伶央奈、品部 雅俊 山田 文哉

    人工心肺中の ECUM 返血部位と補液部位の違いによる洗浄効果の検討

    P-33

    表紙46-3_1-2_001-002203_本扉-前付き類_203-256257_抄録_扉_257258_特別講演_野田先生_258259_教育講演_伊藤先生_259260_教育講演_西脇先生_260261_抄録_アワードグラント委員会報告_261262_抄録_シンポジウム_262-266267_抄録_パネルディスカッション_267-281282_抄録_学術セッション_282-284285_抄録_一般演題-口演_285-343344_抄録_一般演題-ポスター_344-366366-367間_綴込広告_367-368367-前_目次_i-ii367_投稿規定_367-369370_進行表_370371_CL・申告書・しおり_371-375376_編集後記・奥付_376377_後付広告_377-400表紙46-3_3-4_003-004