英語文化学科...instructors are able to give lots of support and feedback to each student...

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授業紹介 目次 英語文化学科 授業紹介 閲覧したい画像又はタイトルをクリックしてください。 イギリス文学と格差社会 Oral English 認知の営みと言語表現

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授業紹介目次

英語文化学科 授業紹介閲覧したい画像又はタイトルをクリックしてください。

イギリス文学と格差社会 Oral English 認知の営みと言語表現

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授業紹介P.1

夏のオープンキャンパス藤女子大学英語文化学科 大桃陶子

イギリス文学と格差社会ミドルクラスの作家は労働者階級の困窮を描けるのか

現在は富裕層と貧困層の経済格差が開いた「格差社会」であると

いわれており、その点において同じく貧富の差がはげしかった19

世紀のヨーロッパと比較されることが多い。では、19世紀のイギリ

スを代表する作家チャールズ・ディケンズは格差をどのように描い

たのだろうか。

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授業紹介P.2

チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens, 1812-70)

ヴィクトリア朝を代表する小説家。父ジョンは海軍で経理の仕事をしていたが、金銭感覚

に乏しく、一家はつねに借金を抱えていた。やがて彼は借金の返済ができない人々が収

監される責務者監獄に入れられ、息子のチャールズ自身も靴墨工場で労働者階級の

人々とともに働かされる。この経験はまだ幼かった彼を傷つけ、後々にまで残るトラウマ

になった。その後ジャーナリストとして働くかたわら、雑誌に投稿した短編作品が掲載され

たことをきっかけに本格的に執筆活動を始め、『オリヴァー・ツイスト』(1837-39)や『クリス

マス・キャロル』(1843)、『大いなる遺産』(1860-61)など、多くの作品を生み出していった。

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授業紹介P.3

『オリヴァ―・ツイスト』(Oliver Twist, 1837-39)

ディケンズの初期の長編小説。救貧院生まれの少年オリヴァ―は、朝食の粥を「もう一杯ください」と訴えたばかりに、葬儀屋の小僧として売られた後、ロンドンでフェイギン率いる窃盗団の一味に引き込まれるが、最後には善良な紳士の養子となる。

ディケンズはこの小説を通じて、1834年に改正された新救貧法の非人間性を告発し、世論に影響を与えた。小説においてオリヴァ―は救貧院を管理する教区史のバンブル氏や、勤め先の人間にひどい扱いを受けるが、このように少年をいじめる登場人物たちは下層階級を酷使する中流階級の典型的な例であるといえる。

しかし、ディケンズは本当に貧困に苦しむ労働者階級の人々や彼らの生活を理解していたのだろうか?

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授業紹介P.4

「格差」を描く困難

ディケンズは実生活においても慈善活動に積極的に従事し、社会改革を目指した人物であった。しかし、現在では中流階級の知識人であるディケンズは実際に貧困に苦しむ労働者階級の人々を風刺漫画の人物のように誇張して書いたと批判されている。

これは文字を読むことができ、読書をする時間と金銭的余裕を持っていたのは中流階級以上の人間がほとんどであったから 、 彼らが労働者を描くときの視線は、 自分たちとは違った「他者」を見るようなものにならざるを得なかったためである。

しかし、ディケンズは「格差社会」を描くことに失敗しているわけではない。

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授業紹介P.5

ディケンズは階級のギャップにより、労働者階級のリアリティを実感することは

できなかったかもしれないが、格差社会に翻弄される人々が感じているであろ

う「理不尽」を何一つ落ち度のない善良な少年に襲い掛かる数々の困難として

表現している。

オリヴァ―は孤児として生まれ、虐待を受けながら育ち、やがて窃盗団の一員となる。これでもかというほどの逆境に見舞われながらも、それでも最後には幸福をつかむ少年の物語は、ディケンズの時代と現代とに共通している格差社会を生きるわたしたちの心を打つのだ。また、オリヴァーは「ひたすら純粋で善良な少年」というキャラクターである。少しも悪いところがないのに虐められ、つらい人生を強いられてきた純真な少年が最後には悪に勝利する姿に、過酷な時代を生きる人間はカタルシスを感じるのだと考えられる。

格差社会に翻弄される少年としてのオリヴァ―/ わたしたち

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授業紹介P.6

Oral EnglishPresented by Prof. Jeremy Redlich

• In Oral English classes, students work on developing their spoken fluency

• There are only 12 students in a class, so instructors are able to give lots of support and feedback to each student

• Usually in pairs or small groups, students practice communicating their opinions, asking questions, and deepening their conversations

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授業紹介P.7

Online Chats with Students in Other Countries

• Students in Oral English have conversations with students in other countries

• This is a great way to practice speaking skills, to build confidence, and to get to know people in another country and culture

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授業紹介P.8

Online Classes and Homework

• Using videoconferencing platforms, students are able to have pair and group discussions with their classmates, as well as receive feedback and support from instructors

• Students may be asked to complete their homework using Fuji’s Learning Management System (LMS)

• Homework assignments are multi-medial, and involve listening, speaking, vocabulary, grammar, and pronunciation practice

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授業紹介P.9

• You will have many opportunities to speak English in

your Oral English classes at Fuji Women’s University

• You will have 4 Oral English classes each week

• In each class you will practice speaking with your classmates, with your instructors, and with university students in another country

• You will be amazed at what you can do after just

one year of Oral English – and you will keep building

on this ability for the rest of your life!

Build Confidence, Comfort, and Fluency

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英語学研究a,b

英語文化学科(言語・コミュニケーション専修)對馬 康博(つしま やすひろ)

認知の営みと言語表現—認知言語学の基本的な考え方—

授業紹介P.10

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はじめに

人間の「認知の営み」の観点から言葉、つまり言語表現を分析しようとするアプローチを「認知言語学」と言います。では、認知の営みと

はどのようなものでしょうか?人間は等しくさまざまな「認知能力」を持って生まれます。例えば、私たちが持っている認知能力というものに

は、モノを分類する「カテゴリー化能力」、同じモノ同士を関係づける「対応関係の確立能力」、2つのモノを組み合わせて1つのモノにする

「合成化能力」、物事を具体化していく「特定化能力」、あるいは逆に抽象化していく「抽象化能力」、モノを見る時に焦点を合わせて前景

と背景に区別して見ようとする「焦点調整能力」、ある立ち位置からモノを見ようとする「視点調整能力」などがあります。私たちは、こういっ

た言葉だけに使っているのではなく、生活全般に渡ってふつうに使っている一般的認知能力を用いることで物事を捉えようとしているわけ

です。このような私たちの日常生活の行為を認知の営みと言います。

こうした認知の営みがどのように言葉としての言語表現の中で生きているのか、今日は焦点調整能力が反映された例を取り上げて紹介

していこうと思います。

「焦点調整能力」の反映: 「図と地の分化」と「図と地の反転」

次の図形を見てみましょう。同じ状況でも、白に注目するのか、あるいは黒に注目するのかによって、2つの物が見えませんか?もう少し詳しく言うと、白と黒のどちらを前景とするのか、あるいは背景とするのかによって、異なるものが見えてきます。じっくりと見てください。「花瓶」のようなものが見えたり、「2人の向かい合う人の顔」が見えませんか。この図形は、エドガー・ルビンという人が考えた「ルビンの杯」というものです。私たちは日常生活においても同じ状況でもポジティブ(白)と捉えたり、ネガティブ(黒)に捉えたりしますよね。このように、焦点調整によって前景(「図」と言います)と背景(「地」と言います)に分かれることを「図と地の分化」と言います。では、図と地という概念が言語表現にどのような影響を与えているのでしょうか。

授業紹介P.11

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授業紹介P.12

まず、hypotenuse(斜辺)という言葉の定義について考えてみましょう。英英辞典では次のように定義されています。

“the side opposite the right angle of a right-angled triangle”(Oxford Advanced Learner’s Dictionary 第8版)

つまり、斜辺とは、「直角三角形において直角と相対する位置にある辺」ということになります。上の左図のように、斜辺という図(前景)を定義するためには、「直角三角形」という地(背景)がなければ定義ができないことになります。右図のように、直角三角形という地がなければ、ただの「斜めの線」になってしまうわけですね。このように、図と地の分化という現象は言葉の意味の定義を考える上で重要なものであることが分かります。

次に、右の写真のように、「水が半分グラスに入っている」ことを想定してみましょう。この状況は、次のように2つの表現で表すことができます。

(1) a. the glass is half-empty(グラスが半分空いている)b. the glass is half-full (グラスが半分一杯だ)

同じ状況でも、どちらに注目して図として焦点を置くのかによって、また、地として背景化させるのかによって表現が異なっていることが分かります。これは、図と地を入れ替えた現象、つまり、「図と地の反転現象」が反映された例です。

最後に次の例を見ましょう。

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授業紹介P.13

(2) a. The bicycle is in front of the building.(自転車が建物の前にある。)

b. ??The building is behind the bicycle.(??建物が自転車の後ろにある。)

右の写真は、ある日の横浜赤レンガ倉庫の様子を写真に収めたものです。

(小さいですが、左下に自転車が止められていることが分かりますね!)

この状況を適切に表したものは、どちらでしょうか。多くのひとは(2a)と答えるでしょう。そう、(2a)で

は、自転車を図として、建物を地としているのです。では、(2b)はどうでしょうか。今度は、建物を図と

して、自転車を地としています。これはやはりおかしいですね。図というものは前景となるため目立つ

ものです。実は、図になりやすいものには一定の法則があります。例えば、「大きな物よりも小さな物

の方が図になりやすい」「不動の物よりも動く物の方が図になりやすい」などです。こうした私たちの

認知の営みが言語表現にも反映されているので、(2a)の方が自然で、(2b)は不自然であると説明

できます。どうやら(1)で見た「図と地の反転現象」はいつでも成り立つわけではないようです。

このように、焦点調整としての「図と地の分化」や「図と地の反転」という人間の認知の営みは、言語表現にも影響を及ぼしているのですね!

さいごに

今日のお話では、人間の認知の営みの観点から、ほんのごく一部でしたが、言語の分析方法を紹介しました。特に、焦点

調整としての「図と地の分化」「図と地の反転」と言語表現の関係について考えてきました。他にも、私たちが日常生活で

行っているさまざまな認知の営みの観点から言葉を分析することができます。こうした分析方法は、言語学という学問領域

の中でも、特に「認知言語学」と呼ばれている分野で積極的に採用されています。

もし、興味を持たれた方がいらっしゃれば、続きは大学の授業の中で一緒に学びましょう!