豊橋市の反茂池と上ノ池で確認された淡水動物...47...

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豊橋市自然史博物館研報 Sci. Rep. Toyohashi Mus. Nat. Hist., No. 28, 47–53, 2018 豊橋市の反茂池と上ノ池で確認された淡水動物 坂本博一*・西 浩孝*・松岡敬二* Freshwater fauna of irrigation ponds Tanmo-ike and Kamino-ike in Toyohashi City, Aichi Prefecture, central Japan Hirokazu Sakamoto*,Hirotaka Nishi* and Keiji Matsuoka* はじめに 豊橋市は,農業が盛んな地域であり,市内には農 業用水の確保を主目的とした公共のため池が 100 池あ る.これらは,豊橋市産業部農地整備課が管理してお り,同課では 2007 年度から護岸等施設の点検整備や 耐震改修工事をすすめている.敷地内は立入禁止であ るが,釣り人の無断侵入や外来生物の生息に関する通 報が後を絶たないことから「魚釣り禁止」,「ブラック バスの放流禁止」などの看板を新たに設置するなどの 対策がとられている.また農閑期において,工事に伴 う水抜きをする際には,池内に生息する外来生物の駆 除作業が併せて実施されている.2015 年度までに 29 池で作業が行われ,2016 年度事業では新たに反茂池と 上ノ池の 2 池で実施された. 筆者らは,駆除作業にあわせて池内及びその周辺の 水生動物について調査を行ったので,それらの結果に ついて報告する. 調査場所 調査場所は,反茂池(第 1 図),上ノ池(第 2 図) である(第 1 表).2 池とも,池の周囲は金網のフェ ンスで囲われており,出入り口の扉は南京錠で施錠さ れている.豊橋市の許可なく立ち入ることはできない. 1.反 たんもいけ 茂池 駆除作業日は 2016 11 8 日.主な底質は泥で, 岸付近には大小の礫がある.護岸はコンクリート護岸 及び自然護岸.池周囲には,ガマ属の抽水植物が多く 見られる.採捕された在来種は,沢渡池(豊橋市大岩 町)に放流された. 2.上 かみのいけ ノ池 駆除作業日は 2016 11 18 日.主な底質は泥. 護岸はコンクリート護岸及び自然護岸.池の東側は, アシ等の抽水植物が繁茂している.採捕された在来種 は,宮前池(豊橋市岩崎町)に放流された. 豊橋市自然史博物館.Toyohashi Museum of Natural History1-238 Oana, Oiwa-cho, Toyohashi, Aichi 441-3147, Japan. Corresponding author: Hirokazu Sakamoto. E-mail: [email protected] 原稿受付 2017 12 8 日.Manuscript received Dec. 8, 2017. 原稿受理 2017 12 26 日.Manuscript accepted Dec. 26, 2017. キーワード : 淡水動物相,外来種,ため池. Key words : freshwater fauna, alien species, irrigation pond. * 所在地 満水面積(㎡) 台帳貯水量(㎥) 豊川用水の導水 反茂池 豊橋市大岩町字反茂 6-1 43,590 70,000 上ノ池 豊橋市飯村町字浜道 106-2 7,340 10,000 調査池の概要. 第 1 表.

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Page 1: 豊橋市の反茂池と上ノ池で確認された淡水動物...47 豊橋市自然史博物館研報 Sci. Rep. Toyohashi Mus. Nat. Hist., No. 28, 47–53, 2018 豊橋市の反茂池と上ノ池で確認された淡水動物

47豊橋市自然史博物館研報 Sci. Rep. Toyohashi Mus. Nat. Hist., No. 28, 47–53, 2018

豊橋市の反茂池と上ノ池で確認された淡水動物

坂本博一*・西 浩孝*・松岡敬二*

Freshwater fauna of irrigation ponds Tanmo-ike and Kamino-ike in Toyohashi City, Aichi Prefecture, central Japan

Hirokazu Sakamoto*,Hirotaka Nishi* and Keiji Matsuoka*

はじめに

 豊橋市は,農業が盛んな地域であり,市内には農業用水の確保を主目的とした公共のため池が 100池ある.これらは,豊橋市産業部農地整備課が管理しており,同課では 2007年度から護岸等施設の点検整備や耐震改修工事をすすめている.敷地内は立入禁止であるが,釣り人の無断侵入や外来生物の生息に関する通報が後を絶たないことから「魚釣り禁止」,「ブラックバスの放流禁止」などの看板を新たに設置するなどの対策がとられている.また農閑期において,工事に伴う水抜きをする際には,池内に生息する外来生物の駆除作業が併せて実施されている.2015年度までに 29

池で作業が行われ,2016年度事業では新たに反茂池と上ノ池の 2池で実施された. 筆者らは,駆除作業にあわせて池内及びその周辺の水生動物について調査を行ったので,それらの結果について報告する.

調査場所

 調査場所は,反茂池(第 1図),上ノ池(第 2図)である(第 1表).2池とも,池の周囲は金網のフェンスで囲われており,出入り口の扉は南京錠で施錠されている.豊橋市の許可なく立ち入ることはできない.

1.反たんもいけ

茂池 駆除作業日は 2016年 11月 8日.主な底質は泥で,岸付近には大小の礫がある.護岸はコンクリート護岸及び自然護岸.池周囲には,ガマ属の抽水植物が多く見られる.採捕された在来種は,沢渡池(豊橋市大岩町)に放流された.

2.上かみのいけ

ノ池 駆除作業日は 2016年 11月 18日.主な底質は泥.護岸はコンクリート護岸及び自然護岸.池の東側は,アシ等の抽水植物が繁茂している.採捕された在来種は,宮前池(豊橋市岩崎町)に放流された.

豊橋市自然史博物館.Toyohashi Museum of Natural History, 1-238 Oana, Oiwa-cho, Toyohashi, Aichi 441-3147, Japan.

Corresponding author: Hirokazu Sakamoto. E-mail: [email protected]

原稿受付 2017年 12月 8日.Manuscript received Dec. 8, 2017.

原稿受理 2017年 12月 26日.Manuscript accepted Dec. 26, 2017.

キーワード : 淡水動物相,外来種,ため池.Key words : freshwater fauna, alien species, irrigation pond.

*

所在地 満水面積(㎡) 台帳貯水量(㎥) 豊川用水の導水反茂池 豊橋市大岩町字反茂 6-1 43,590 70,000 -

上ノ池 豊橋市飯村町字浜道 106-2 7,340 10,000 -

調査池の概要.第 1 表.

Page 2: 豊橋市の反茂池と上ノ池で確認された淡水動物...47 豊橋市自然史博物館研報 Sci. Rep. Toyohashi Mus. Nat. Hist., No. 28, 47–53, 2018 豊橋市の反茂池と上ノ池で確認された淡水動物

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材料及び方法

 池の水抜きおよび外来魚駆除作業は,市農地整備課職員等によって行われた.水生動物の調査は,定性的な調査を実施した.なお,特定外来生物は豊橋市資源化センターにて焼却処分された.

外肛動物(コケムシ類) 干上がった池底の付着基質となりうる礫,木,合成樹脂などの表面を目視により探索を行い,付着基質とともに採集し,乾燥標本を作製した.標本は豊橋市自然史博物館無脊椎動物資料(TMNH-IV-)として保管した.

軟体動物(貝類) 目視により探索を行い採集し,殻の乾燥標本を作製した.一部の個体は軟体部の 70%エタノール液浸標本を作製した.標本は豊橋市自然史博物館貝類資料(TMNH-MO-)として保管した.

節足動物(甲殻類) 目視により探索を行い採集し,70%エタノール液浸標本を作製した.標本は豊橋市自然史博物館甲殻類資料(TMNH-C-)として保管した.

脊索動物(魚類) 農地整備課職員等がタモ網を用いて残存魚類を採捕し,一部の魚類を標本用に譲り受けて持ち帰った.10%ホルマリン水溶液にて固定後,70%エタノール液浸標本を作製した.標本は豊橋市自然史博物館魚類資料(TMNH-F-)として保管した.

脊索動物(両生類) 農地整備課職員等によってタモ網及び徒手にて捕獲確認された.

結 果

 本調査により 1科 1種のコケムシ類, 8科 11種の貝類,2科 3種の甲殻類,4科 10種の魚類,1科 1種の両生類が確認された(第 2表).魚類の種の同定,学名,配列は,中坊(2013)に従った.なお,標本番号を記していない魚類及び両生類の種,全長,個体数については農地整備課から提供されたデータに基づくものである.

コケムシ類ハネコケムシ科 Plumatellidae

1.ハネコケムシ属の一種 Plumatella sp. [第 3図, 第 4図] 標本:5資料(TMNH-IV-47~ 51),反茂池,2016

年 11月 8日,松岡敬二採集;上ノ池(TMNH-IV-52

~ 55),2016年 11月 18日,松岡敬二採集. 備考:チャートの礫表面に枝状に分岐した群体が付着.枝状部分には長軸に沿った稜がある.群体の周りには付着性休芽が多数付着している.休芽は円形から楕円形で,その長径が 0.50~ 0.69 mm,短径が約 0.33~ 0.41 mm.

貝類リンゴガイ科 Ampullariidae

1.スクミリンゴガイ Pomacea canaliculata[第5図 a] 標本:1個体(死殻;TMNH-MO-28209),反茂池,

坂本博一・西 浩孝・松岡敬二

反茂池. 上ノ池.第 1 図. 第 2 図.

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49豊橋市のため池で確認された淡水動物

2016年 11月 8日,西 浩孝採集. 備考:南米原産の外来種で,日本の侵略的外来種ワースト 100(日本生態学会,2002),「愛知県において対策が必要な移入種」(愛知県移入種データブック検討会, 2012)に選定されている.

タニシ科 Viviparidae

2.オオタニシ Cipangopaludina japonica[第 5図 c] 標本:4個体(死殻;TMNH-MO-28205~ 28208),反茂池,2016年 11月 8日,西 浩孝採集. 備考:環境省第 4次レッドリストで「準絶滅危惧(NT)」と評価されている.

3.ヒメタニシ Sinotaia quadrata histrica[第 5図 b] 標本:3個体(生貝;TMNH-MO-28202~ 28204),反茂池,2016年 11月 8日,西 浩孝採集;3個体(TMNH-MO-28233~ 28235),上ノ池,2016年 11月

18日,西 浩孝採集.

カワニナ科 Semisulcospiridae

4.カワニナ Semisulcospira libertina[第 5図 d] 標本:1個体(死殻;TMNH-MO-28232),上ノ池,2016年 11月 18日,西 浩孝採集.

ヒラマキガイ科 Planorbidae

5.ヒラマキガイモドキ Polypylis hemisphaerula[第

種名 反茂池 上ノ池外肛動物(コケムシ類)

ハネコケムシ属の一種 + +軟体動物(貝類)

スクミリンゴガイ +オオタニシ +ヒメタニシ + +カワニナ +ヒラマキガイモドキ +メリケンコザラ? + +ヒメモノアラガイ +モノアラガイの一種 +サカマキガイ + +ヌマガイ +マシジミ? +

節足動物テナガエビ +スジエビ +アメリカザリガニ + +

脊索動物(魚類) コイ + +フナ属未同定種 + +モツゴ + +タモロコ +カマツカ +コウライモロコ +カダヤシ +ヨシノボリ属未同定種 +ウキゴリ +カムルチー +

脊索動物(両生類) ウシガエル +

ハネコケムシ属の一種 Plumatella sp. (TMNH-IV-47).反茂池,スケールバー:5 mm.

ハネコケムシ属の一種 Plumatella sp. (TMNH-IV-52).上ノ池,スケールバー:5 mm.

第 3 図.

第 4 図.

反茂池及び上ノ池で確認された淡水動物.第 2 表.

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50坂本博一・西 浩孝・松岡敬二

5図 e] 標本:2個体(生貝 1,死殻 1;TMNH-MO-28213

~ 28214),反茂池,2016年 11月 8日,西 浩孝採集. 備考:環境省第 4次レッドリストおよび愛知県第三次レッドリスト(愛知県環境部,2015)で「準絶滅危惧(NT)」と評価されている.

6.メリケンコザラ? Ferrissia fragilis ?[第 5図 f] 標本:1個体(生貝;TMNH-MO-28212),反茂池,2016年 11月 8日,西 浩孝採集;1個体(TMNH-

MO-28238),上ノ池,2016年11月18日,西 浩孝採集. 備考:メリケンコザラは齊藤(2017)により和名が新称されたアメリカ原産の外来種であり,ヨーロッパやアジア各地に分布を広げている(Walther

et al., 2006).小型であることや雌雄同体であること,停滞した水域に生息できること,夏眠できることが侵入能力の高さに関係していると考えられる(Walther et al., 2006).カワコザラ Laevapex nipponicus

と形態が酷似しており,カワコザラの近年の記録

のほとんどがメリケンコザラの誤同定である可能性が指摘されている(齊藤,2017).メリケンコザラの殻形態は産地によって変異が大きく,殻形態のみで完全に識別できない可能性もあるため,同定にはDNAの塩基配列を調べる等,より詳細な検討が必要である.

モノアラガイ科 Lymnaeidae

7.ヒメモノアラガイ Galba ollula[第 5図 g] 標本:1個体(死殻;TMNH-MO-28210),反茂池,2016年 11月 8日,西 浩孝採集.

8.モノアラガイの 1種 Lymnaea sp.[第 5図 h] 標本:1個体(TMNH-MO-28236),上ノ池,2016

年 11月 18日,西 浩孝採集.

サカマキガイ科 Physidae

9.サカマキガイ Physa acuta[第 5図 i] 標本:1個体(死殻;TMNH-MO-28211),反茂池,

反茂池と上ノ池で確認された貝類.a,スクミリンゴガイ(28209);b,ヒメタニシ(28202);c,オオタニシ(28205);d,カワニナ(28232);e,ヒラマキガイモドキ(28213);f,メリケンコザラ?(28212);g,ヒメモノアラガイ(28210);h,モノアラガイの 1種(28236);i,サカマキガイ(28237); j,ヌマガイ(28222);k,マシジミ?(28219).スケールバー:a, b, c = 15 mm;d, k = 10 mm;e,

i = 2 mm;f, g, h = 5 mm;j = 20 mm.( )内の番号は豊橋市自然史博物館貝類資料登録番号(TMNH-MO-).

第 5 図.

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51豊橋市のため池で確認された淡水動物

2016年 11月 8日,西 浩孝採集;1個体(TMNH-

MO-28237),上ノ池,2016年11月18日,西 浩孝採集. 備考:ヨーロッパ原産の外来種であり,「日本の侵略的外来種ワースト 100」(日本生態学会,2002)に選定されている.

イシガイ科 Unionidae

10.ヌマガイ Sinanodonta lauta[第 5図 j] 標本:12個体(生貝;TMNH-MO-28220~ 28231),反茂池,2016年 11月 8日,西 浩孝採集. 備考:本種とタガイ Sinanodonta japonicaは成貝の外部形態による種同定が困難であるが,繁殖期が異なっている.すなわち,本種は 4~ 5月に妊卵し7月までには幼貝を放出するのに対し,タガイは主として 11月~ 3月にかけて妊卵・抱卵する(福原ほか,1994).反茂池の個体は,殻形態に加え,妊卵している個体がなかったことからヌマガイと同定した.愛知県第三次レッドリスト(愛知県環境部,2015)ではヌマガイとタガイを統合した評価として「準絶滅危惧(NT)」とされている.水抜きを行い干上がることにより死亡する個体もあるため,池外で保護するなどの配慮が望ましい(例えば寺本,2016).そこで,反茂池でヌマガイ 65個体を捕獲し,豊橋総合動植物公園内のボート池に魚干し網(450

mm四方,高さ 550 mm,3段)2個を下げて蓄養し,2017年 3月 6日に水位の回復した反茂池に放した.その時点で 63個体が生存していた.

シジミ科 Corbiculidae

11.マシジミ? Corbicula leana ?[第 5図 k] 標本:1個体(死殻;TMNH-MO-28219),反茂池,2016年 11月 8日,西 浩孝採集. 備考:外来種のタイワンシジミ Corbicula fluminea

との識別点として貝殻内面の色が挙げられるが(増田・内山,2004),今回採集された個体は死殻で内面が白化しているため,確実な同定ができなかった.

甲殻類テナガエビ科 Palaemonidae

1.テナガエビ Macrobrachium nipponense

 標本:1個体(TMNH-C-42),反茂池,2016年 11

月 8日,西 浩孝採集.

2.スジエビ Palaemon paucidens

 標本:10個体以上(TMNH-C-43),反茂池,2016

年 11月 8日,西 浩孝採集.

アメリカザリガニ科 Cambaridae

3.アメリカザリガニ Procambarus clarkii

 標本:2個体(TMNH-C-44),反茂池,2016年 11

月 8日,西 浩孝採集;1個体(TMNH-C-45),上ノ池,2016年 11月 18日,西 浩孝採集. 備考:北米南部原産の外来種で,「日本の侵略的外来種ワースト 100」(日本生態学会,2002),「愛知県において対策が必要な移入種」(愛知県移入種データブック検討会, 2012)に選定されている.

魚類コイ科 Cyprinidae

1.コイ Cyprinus carpio

 確認状況:反茂池で 125個体(全長 40~ 80 cm),上ノ池で 20個体(全長 20~ 80 cm)採捕された.反茂池のコイには,鑑賞用改良品種であるカガミゴイ(ドイツゴイ)が含まれていた. 備考:「愛知県において対策が必要な移入種」(愛知県移入種データブック検討会, 2012)に選定されている.

2.フナ属未同定種 Carassius sp. 標本:2個体(TMNH-F-2367),上ノ池,2016年11月 18日,坂本博一採集. 確認状況:反茂池で 551個体(全長 10 cm以下:455個体,同 11~ 20 cm:27個体,同 21~ 40 cm:52個体,同 41~ 60 cm:17個体)採捕された.上ノ池では,1,323個体(全長 10 cm以下:1,006個体,同 11~ 20 cm:273個体,同 21~ 40 cm:43個体,同 41~ 60 cm:1個体)が採捕された.

3.モツゴ  Pseudorasbora parva

 標本:3個体(TMNH-F-2371),反茂池,2016年11月 8日,坂本博一採集;2個体(TMNH-F-2366),上ノ池,2016年 11月 18日,坂本博一採集 確認状況:上ノ池で6個体(全長10 cm)採捕された.

4.タモロコ Gnathopogon elongatus elongatus

 標本:1個体(TMNH-F-2370),反茂池,2016年11月 8日,坂本博一採集.

5.カマツカ Pseudogobio esocinus esocinus

 標本:1個体(TMNH-F-2369),反茂池,2016年

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52坂本博一・西 浩孝・松岡敬二

11月 8日,坂本博一採集. 確認状況:上記標本以外の個体は確認されなかった.

6.コウライモロコ Squalidus chankaensis tsuchigae

 標本:1個体(TMNH-F-2372),反茂池,2016年11月 8日,坂本博一採集. 確認状況:農地整備課による 2016年 11月 8日の作業記録には,反茂池,「モロコ」,42個体(全長10 cm以下)とある.筆者の一人,坂本が採捕されていた複数個体のモロコ類を確認したところ,本種のみであったことから,この「モロコ」も「コウライモロコ」を指すものと推定される.

カダヤシ科 Poeciliidae

7.カダヤシ Gambusia affinis[第 6図 a] 標本:1個体(TMNH-F-2368),♂,上ノ池,2016

年 11月 18日,坂本博一採集. 確認状況:上ノ池において干上がった泥の上で発見し,徒手にて採集した.タモ網の目合いでは採集

困難な魚種である.周囲を探索したが,他の個体は確認できなかった. 備考:北米原産の外来種であり,外来生物法において「特定外来生物」に指定されているほか,「愛知県において対策が必要な移入種」(愛知県移入種データブック検討会, 2012),「日本の侵略的外来種ワースト 100」(日本生態学会,2002)に選定されている.

ハゼ科 Gobiidae

8.ヨシノボリ属未同定種 Rhinogobius sp. 標本:1個体(TMNH-F-2374),反茂池,2016年11月 8日,坂本博一採集. 確認状況:反茂池で多数の生息が確認された.

9.ウキゴリ Gymnogobius urotaenia

 標本:1個体(TMNH-F-2373),反茂池,2016年11月 8日,坂本博一採集. 確認状況:反茂池で 2個体(全長 5~ 10 cm)採捕された.

上ノ池で確認された魚類.a,カダヤシ(TMNH-F-2368);b,カムルチー(TMNH-F-2365).スケールバー:10 mm.

第 6 図.

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53豊橋市のため池で確認された淡水動物

タイワンドジョウ科 Channidae

10.カムルチー Channa argus[第 6図 b] 標本:1個体(TMNH-F-2365),上ノ池,2016年11月 18日,坂本博一採集. 確認状況:上ノ池で 13個体採捕された.うち幼魚は上記標本 1個体のみで,他の 12個体は全長約60~ 80 cmの成魚であった. 備考:中国北・中部,朝鮮半島原産の外来種であり,「愛知県において対策が必要な移入種」(愛知県移入種データブック検討会, 2012)に選定されているほか,愛知県漁業調整規則第47条により,「らいぎよ(卵を含む)」として本種の移植が禁じられている.

両生類アカガエル科 Ranidae

1.ウシガエル Lithobates catesbeianus

 確認状況:反茂池で 19個体採捕された. 備考:北米原産の外来種であり,外来生物法において「特定外来生物」に指定されている.

謝 辞

 本稿をまとめるにあたり,調査の機会を与えていただくとともに関連データの収集にご協力いただいた豊橋市産業部農地整備課の関係諸氏に感謝申し上げる.

引用文献

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