安全な膵頭十二指腸切除術 膵安全な膵頭十二指腸切除術...

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安全な膵頭十二指腸切除術 和歌山県立医科大学外科学第 2 講座 はじめに 膵頭十二指腸切除術は外科手術の中で最も難度 が高い手術のひとつである.近年の手術手技およ び周術期管理の発達により High volume center における手術関連死亡は1~2%前後となってきて いるが,術後合併症の発生率は30~65%ときわめ て高く 1)~4) ,いまだ発展途上にある手術といって も過言ではない. 膵頭十二指腸切除術の術後合併症として膵液 瘻,腹腔内出血,腹腔内膿瘍,胃排泄遅延,胆汁 漏,胆管炎,消化管潰瘍,消化管出血などが考え られる.術後管理上,最も注意すべき合併症は膵 液瘻であり,膵液瘻由来の腹腔内出血や腹腔内膿 瘍は手術関連死亡にもつながる可能性がある重篤 な合併症である.また術後QOLの低下,在院期間 の延長の原因となる胃排泄遅延は膵頭部切除術 後,とくに幽門輪温存膵頭十二指腸切除術後の合 併症として頻度が高く重要である.本稿では,膵 液瘻と胃内容排出遅延にフォーカスをあてて,安 全な膵頭十二指腸切除術を目指すために必要な注 意点について解説する. 1.膵液瘻 膵液瘻を合併すると膵液中に不活性型として存 在する蛋白融解酵素であるトリプシノーゲンがエ ンテロキナーゼ活性を有する腸液や胆汁の存在下 で,または細菌感染により,活性型のトリプシン となり他の蛋白融解酵素を活性化し,さらに自己 消化により周囲組織障害を引き起こす.このため 組織融解による血管破綻に起因する腹腔内出血を 併発したり,感染性膵液による腹腔内膿瘍や敗血 症に起因する多臓器不全をきたす可能性がある. 膵頭十二指腸切除術に伴う膵液瘻の発生率は 5~20%と報告されているが 5) 6) ,1)ドレーン排液 中のアミラーゼ値,2)排液量,3)それらの持続 する日数が診断基準のパラメーターとして用いら れている.しかし膵液瘻の定義は施設間で様々で あったが,2005年に International study group of postoperativepancreaticfistula(ISGPF)による膵 液瘻の定義として,『ドレーン排液量にかかわらず 血清アミラーゼ値の 3 倍以上の排液アミラーゼ値 が術後3日以上持続する』と定義した 7) .さらに, 臨床症状によって膵液瘻を Grade A(臨床症状な し),GradeB(感染徴候はあるが保存的加療が可 能),GradeC(腹腔内出血や敗血症を併発するな ど重篤な膵液瘻であり ICU 管理や再手術を要す る)の3つのカテゴリーに分類した(表1).本来, 日本からこのような国際基準を発信すべきである が,現在のところ ISGPF の定義に従わざるを得な いのが現状である. 膵液瘻の危険因子として年齢,術前黄疸,正常 膵,主膵管径,膵外分泌機能,手術時間,術中出 血量,輸血量,ドレーン留置期間などが報告され ている 8)~11) .また,一般的な術後合併症の重症度 分類である Clavien-Dingo 分類のうち,膵臓外科 に特化した術後合併症の重症度分類を表2 に示 したので参考にして欲しい 11) (1)膵腸吻合 vs. 膵胃吻合 従来,膵腸吻合と膵胃吻合で膵液瘻の頻度に差 があるかどうかが議論されてきた.現在まで 4 編 の Randomized controlled trial (以下RCT)がなさ れ,3編では膵胃吻合と膵腸吻合では膵液瘻の発生 率は同等であると報告されている 12)~14) .しかし, Bassi ら の RCT は 13) ,膵液瘻の危険因子である soft pancreas にのみ限定して症例登録を行った 1

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Page 1: 安全な膵頭十二指腸切除術 膵安全な膵頭十二指腸切除術 和歌山県立医科大学外科学第2講座 山上裕機 はじめに 膵頭十二指腸切除術は外科手術の中で最も難度

安全な膵頭十二指腸切除術

和歌山県立医科大学外科学第 2 講座 山 上 裕 機

はじめに膵頭十二指腸切除術は外科手術の中で最も難度

が高い手術のひとつである.近年の手術手技および周術期管理の発達により High volume centerにおける手術関連死亡は1~2%前後となってきているが,術後合併症の発生率は30~65%ときわめて高く1)~4),いまだ発展途上にある手術といっても過言ではない.

膵頭十二指腸切除術の術後合併症として膵液瘻,腹腔内出血,腹腔内膿瘍,胃排泄遅延,胆汁漏,胆管炎,消化管潰瘍,消化管出血などが考えられる.術後管理上,最も注意すべき合併症は膵液瘻であり,膵液瘻由来の腹腔内出血や腹腔内膿瘍は手術関連死亡にもつながる可能性がある重篤な合併症である.また術後 QOL の低下,在院期間の延長の原因となる胃排泄遅延は膵頭部切除術後,とくに幽門輪温存膵頭十二指腸切除術後の合併症として頻度が高く重要である.本稿では,膵液瘻と胃内容排出遅延にフォーカスをあてて,安全な膵頭十二指腸切除術を目指すために必要な注意点について解説する.

1.膵液瘻膵液瘻を合併すると膵液中に不活性型として存

在する蛋白融解酵素であるトリプシノーゲンがエンテロキナーゼ活性を有する腸液や胆汁の存在下で,または細菌感染により,活性型のトリプシンとなり他の蛋白融解酵素を活性化し,さらに自己消化により周囲組織障害を引き起こす.このため組織融解による血管破綻に起因する腹腔内出血を併発したり,感染性膵液による腹腔内膿瘍や敗血症に起因する多臓器不全をきたす可能性がある.

膵頭十二指腸切除術に伴う膵液瘻の発生率は

5~20%と報告されているが5)6),1)ドレーン排液中のアミラーゼ値,2)排液量,3)それらの持続する日数が診断基準のパラメーターとして用いられている.しかし膵液瘻の定義は施設間で様々であったが,2005年に International study group ofpostoperative pancreatic fistula(ISGPF)による膵液瘻の定義として,『ドレーン排液量にかかわらず血清アミラーゼ値の 3 倍以上の排液アミラーゼ値が術後 3 日以上持続する』と定義した7).さらに,臨床症状によって膵液瘻を Grade A(臨床症状なし),Grade B(感染徴候はあるが保存的加療が可能),Grade C(腹腔内出血や敗血症を併発するなど重篤な膵液瘻であり ICU 管理や再手術を要する)の 3 つのカテゴリーに分類した(表1). 本来,日本からこのような国際基準を発信すべきであるが,現在のところ ISGPF の定義に従わざるを得ないのが現状である.

膵液瘻の危険因子として年齢,術前黄疸,正常膵,主膵管径,膵外分泌機能,手術時間,術中出血量,輸血量,ドレーン留置期間などが報告されている8)~11).また,一般的な術後合併症の重症度分類である Clavien-Dingo 分類のうち,膵臓外科に特化した術後合併症の重症度分類を表 2に示したので参考にして欲しい11).

(1)膵腸吻合 vs. 膵胃吻合

従来,膵腸吻合と膵胃吻合で膵液瘻の頻度に差があるかどうかが議論されてきた.現在まで 4 編の Randomized controlled trial(以下 RCT)がなされ,3編では膵胃吻合と膵腸吻合では膵液瘻の発生率は同等であると報告されている12)~14).しかし,Bassi らの RCT は13),膵液瘻の危険因子であるsoft pancreas にのみ限定して症例登録を行った

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表1 膵液瘻のISGPF国際基準によるGrading

CBAGrade

不良良好であること多い良好患者の状態要する要することあり不要処置・治療*1陽性陽性の場合あり陰性画像所見必要通常必要不必要長期ドレナージ*2要するなしなし再手術可能性ありなしなし膵液瘻による術死あるあるなし感染兆候あるなしなし敗血症要することあり要することありなし再入院

*1 末梢輸液または高カロリー輸液,経腸栄養,抗生物質の投与,ソマトスタチン製剤,経皮的ドレナージなどの処置を要する*2  3週間以上のドレナージが必要Grade Aは臨床的に問題にならない膵液瘻である.Grade BとGrade Cの違いは,septicになっているか否かである.(引用文献7より改変)

表2 膵臓外科における術後合併症*1の重症度分類

定義Grade

通常の術後経過から逸脱するが,薬剤・外科手術・内視鏡的および放射線学的インターベンションを必要としない.制吐剤,解熱剤,鎮痛薬,利尿剤,点滴の使用は認める.創感染を含める.

I

薬物治療が必要な合併症輸血や高カロリー輸液を含める.

I I

外科手術・内視鏡的または放射線学的インターベンションが必要全身麻酔以外でのインターベンション全身麻酔下でのインターベンション

I I I I I Ia I I Ib

ICU管理が必要で,生命の危険がある合併症1臓器不全多臓器不全

I V I Va I Vb

術死V*1 Dingo D, Demartines N, Clavien PA. Classification of surgical complications:a new proposal with evaluation in a cohort of 6336 patients and results of a survey. Ann Surg 2004;240:205―213.(引用文献11より改変)

臨床試験であり,全体の術後合併症率および膵液瘻の頻度は変わらないものの,胆汁瘻・腹腔内液体貯留・胃内容排出遅延などの合併症は膵腸吻合で有意に高頻度であり,膵胃吻合で,複数箇所の術後合併症が有意に低かった.これは,臨床的に明らかな膵液瘻の頻度は変わらないが,subclini-cal inflammation は膵胃吻合で少ない可能性を示唆するものといえる.さらに,最近バルセロナ大学の Fernández らが行った RCT では15),膵胃吻合が胃を 2 つに分割して,大弯側に残膵を吻合する特殊な術式(図1)を採用しているが,通常の膵

腸吻合による臨床的に問題になる Grade B+C 膵液瘻が18.2%に対し,膵胃吻合では5.7%と膵液瘻が有意に抑制できた.この膵胃吻合は,残膵の吻合部が胃内容の流出路と分流されているので,縫合不全が少ないと結論されている.しかし,大きな問題点として,一般的に膵腸吻合におけるGrade B+C 膵液瘻の頻度は7~10%であるので,Fernández の報告18.2%は若干高すぎる頻度と考えられる.表 3に,現在までの膵腸吻合と膵胃吻合の RCT 結果をまとめた.

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図1 膵胃吻合の新しい術式胃大弯側をリニアステープラーで切離し,gastric partitionと残膵を吻合する.膵液の流れと胃内容および胆汁が分流されているのが特徴といえる.

(引用文献15より改変)

表3 膵胃吻合と膵腸吻合を比較検討したRCT

膵胃吻合vs.膵腸吻合

術死率(%)

全合併症(%)

膵液瘻(%)症例数出典

0 vs. 049 vs. 4312 vs. 1173 vs. 72Yeo et al.12)1995

12 vs. 1046 vs. 4716 vs. 2081 vs. 68Duffas et al.14)2005

0 vs. 129 vs. 3913 vs. 1669 vs. 82Bassi et al.13)2005

0 vs. 023 vs. 44 6 vs. 1853 vs. 53Fern冠 ndez et al.15)2008

膵胃吻合と膵腸吻合の膵液瘻を含む術後合併症の発生頻度は同等とする3編のRCTと膵胃吻合が優れている結果を示したRCT1編のまとめを示す.12)Ann Surg 1995;222:580―59214)Am J Surg 2005;189:720―72913)Ann Surg 2005;242:767―77315)Ann Surg 2008;248:930―938

(2)膵管上皮・空腸粘膜吻合法(duct-to-mucosa

anastomosis)vs. 陥入法(invagination or dun-

king method)

以前は陥入法が多く行われていたが,最近では膵管上皮・空腸粘膜吻合法を行う施設が多い.膵管上皮・空腸粘膜縫合法の特徴として,①縫合不全率が低い,②残膵の膵管の長期にわたる開存性が高いことがあげられる.われわれは一貫して膵管上皮・空腸粘膜吻合術を行い,膵液瘻の減少を認めているので,本法が膵液瘻の予防として有効と考えられる10)16)17).さらに,残膵の外分泌および

内分泌機能からみた長期予後では,膵管空腸粘膜吻合が優れていると報告してきた16).しかし,いずれも RCT による成績ではないので,どちらの術式が優れているか不明であったが,Bassi らにより RCT が行われ18),膵液瘻を含むすべての合併症で両術式に全く差がないことが証明された.ところが最近になって,陥入法と膵管空腸粘膜吻合法を比較する RCT が Thomas Jefferson 大学と Indiana 大学との共同研究として行われた.陥入法の膵液瘻の発生率が12%であるのに対し,膵管空腸粘膜吻合法は24%と高率であり(P<0.05),

2010年(平成22年)度前期日本消化器外科学会教育集会

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表4 膵管ステントチューブは必要か?

術死率(%)全合併症(%)膵液瘻(%)Grade B+C(%)症例数比較出典

3.5 vs. 1.8 58 vs. 57.4

vs. 27vs. 11.3

21.97.6

119 vs. 115非ステント vs. ロストステントWinter et al.23)2006

5 vs. 1.738.3 vs. 31.7vs. 6.7vs. 3.3

20 15

60 vs. 60非ステント vs. 外瘻ステントPoon et al.24)2007

0 vs. 240 vs. 54vs. 20vs. 6

266

50 vs. 50ロストステント vs. 外瘻ステントTani et al.25)2010

膵管ステント非挿入 vs. ステント挿入のRCTが2編あり,非ステントとロストステントの比較では膵液瘻を含む術後合併症の発生頻度に差がなかったが23),非ステントと外瘻ステントとの比較では非ステント群で有意に膵液瘻が高率に発生した24). ロストステントと外瘻ステントを比較したわれわれのRCTでは,両群で差を認めなかった25).23)J Gastointest Surg 2006;10:1280―129024)Ann Surg 2007;246:425―43525)Am J Surg 2010 Jan 12[Epub ahead of print]

Grade B+C 膵液瘻も7% vs. 17%と陥入法で低率であった.また,多変量解析では膵液瘻の発生に関与する因子は膵実質硬度,膵腸吻合法(膵管空腸粘膜吻合),施設の 3 因子であった19).このような,dual-institute での臨床試験はほとんどなく施設間格差の問題は存在するが,単施設での研究と比較して短期間で登録できることから,同等の手技能力を有する dual-institute で臨床試験を行うことで,今までは検証できなかったエビデンスが明らかになる可能性がある.しかし,本試験では,膵管空腸粘膜吻合の GradeB+C 膵液瘻が17%もあり,質が問われる研究ともいえる.以上のように,陥入法の短期成績は決して悪くはないが,今後は,残膵機能の温存からみた長期成績で両術式を再検討する必要がある.

(3)膵管ステントにより膵液瘻は減少するか?

膵腸吻合部にステントチューブを留置するかどうかについては,従来,一般的にはチューブ留置を行う施設が多く20)21),RCT ではないが前向き研究によってもステントチューブを留置することで,膵液瘻が減少する報告がある22).この命題に対して代表的な RCT が 3 編発表されている(表4).まず,Johns Hopkins 大学から発表されたRCT では,6cm 長のステントチューブ(ロストチューブ)を挿入する群と非ステント群で比較検討したところ,膵液瘻の頻度は予想に反して非ス

テント群7.6%,ロストステント群11.3%(soft pan-creas に限ると10.7% vs. 21.0%)と統計学的には有意差がないが,非ステント群で膵液瘻の発生頻度が低いことが示唆される結果であった23).Hong Kong 大 学 Queen Mary 病 院 か ら の RCTは,外瘻による膵管ステント留置群と非ステント群を比較した研究で,膵液瘻は外瘻ステント群で有意に減少し(6.7% vs. 20%),多変量解析でも膵液瘻の危険因子は,非ステントおよび膵管径が3mm 以下の 2 項目であっ た24).以 上 の 2 編 のRCT 結果から,膵管ステントは挿入した方が安全であろうと推測できるが,本当にロストステントは危険か否かが次の臨床研究の課題となる.そこで,われわれはロストステント群と外瘻ステント群における術後合併症を比較する RCT をおこなった(図2).その結果,ロストステント群と外瘻ステント群における全膵液瘻および Grade B+C 膵液瘻の頻度は,それぞれ26% vs. 20%,6% vs.6%と全く差を認めなかった.また,soft pan-creas,hard pancreas 毎に膵液瘻の発生を検討しても,両群で差がなかった.しかし,ロストステント群で有意に在院日数が短いことから,ロストステントを推奨したい25).

(4)膵腸吻合における新術式

本邦では,柿田式の膵腸吻合(密着法)が開発され,多くの施設で臨床応用されている26)27).従

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図2 膵管外瘻式ステント vs.膵管ロストステントのRCT(和歌山医大第2外科)Randomized controlled trial on pancreatic stent tube in pancreaticoduodenectomy.(ClinicalTrial.gov ID:NCT00628186)外瘻式ステント50例(図左)とロストステント50例(図右)の比較を行った.

来の 2 列縫合と比較して膵液瘻の発生頻度が減少するか否かのエビデンスはないが,膵断端と空腸をより確実に密着させるために開発された方法であり,今後,本邦から確固たるエビデンスを発信する必要があると考えられる.柿田式とほぼ同じコンセプトで,米国 Sloan-Kettering がんセンターの Blumgart らは“New transpancreatic U-suturetechnique”を開発した.膵実質と空腸を密着させる方法であり,Grade B+C 膵液瘻の発生頻度が4%~7%と報告されている28)29).さらに,膵腸吻合を isolate させて,膵液の流れと胃内容・胆汁の流れを分流させる術式では,isolated loop の長さが40~50cm と長くすることで,膵液瘻の頻度が14.2%から4.3%に減少することが報告されている30).しかし,これらの報告はすべて RCT ではないので,今後,より膵液瘻の少ない術式を RCTにより証明する必要があろう.

最近,中国の Peng らにより,新しい膵腸吻合の術式が報告された.陥入法で膵腸吻合を行った後,吸収糸で binding する新術式である.217例でRCT を行ったところ,膵液瘻の発生頻度は従来の陥入法では7.2%,binding 法では0%であり,bind-ing 法により膵液瘻を完全に抑制することができた. また,全合併症の発生率は36.9% vs. 24.5%,

と binding 法で優れていた31).ただし,膵液瘻の頻度が両群とも低いにもかかわらず,術死率が6.3% vs. 2.8%, 全体平均でも4.6%と高率であり,研究の質が問われる RCT である.その後,フランスで Peng の binding 法の追試が行われ,前向きコホート研究で本法による soft pancreas に対する GradeB+C 膵液瘻の発生頻度は8.9%であり,膵液瘻の high risk 群において10%以下の発生頻度は推奨に値するが,Peng の RCT のように膵液瘻が0%にはならなかったと報告している32).吸収糸で binding するという物理的な方法で膵液瘻が減少するとは考えにくいが,このような新術式を RCT の手法で開発していく姿勢は評価できるものである.

(5)膵液瘻の治療

膵液瘻とくに膵消化管縫合不全が診断された場合には,絶食・高カロリー輸液を行い,適切なドレナージ,抗菌薬投与,プロテアーゼ阻害薬の投与を行い,膵液瘻から二次的に腹腔内膿瘍と腹腔内出血が発症しないように注意する.しかしドレーン留置に関しては surgical site infection の観点から臨床症状のない膵液瘻であれば無用に長期留置するべきではない(ドレーン管理の項を参

2010年(平成22年)度前期日本消化器外科学会教育集会

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照).ドレーン長期留置により逆に膵液瘻が感染し,臨床症状が増悪することを念頭におかなければならない.ソマトスタチンやソマトスタチン類似体であるオクトレオチドなどの膵外分泌抑制作用のある薬剤が膵液瘻の予防と治療に用いられている場合もあるが,その有効性に関しては多くのRCT によっても意見が分かれており33)~36),有用性は明らかではない.

2.腹腔内膿瘍膵頭十二指腸切除術に伴う腹腔内膿瘍の発生率

は1.2~14%と報告され,大部分が膵液瘻や胆汁漏が原因となる.膵液瘻非合併例の腹腔内膿瘍発生率は1.8%であるのに対して膵液瘻合併例では31%と報告している37).また術前胆管ドレナージが術後腹腔内膿瘍の危険因子であるとの報告があり38)39),注意を要する.

術前胆管ドレナージによる減黄については,賛否両論であったが,オランダで行われた大規模RCT では40),術前減黄により明らかに周術期合併症が多く,とくに膵液瘻,創感染,胃内容排出遅延などが高頻度であった.したがって,術前減黄はルーチンに行うべきではなく,血清総ビリルビン値が250µmol(14.6mg�dl)以下であれば,減黄を行わずにできるだけ早期に手術すべきと結論している.しかし,Borderline resectable 症例に対して術前放射線化学療法を行う場合には,術前減黄は臨床的に必要であろう.その場合に,どのような胆管ステントが最も良いのかはつぎの臨床研究の課題である.

教室で施行した膵頭十二指腸切除術104例の術後に発生した腹腔内膿瘍と諸因子との関連を腹腔内膿瘍合併群(n=24)と腹腔内膿瘍非合併群(n=80)で比較した10).その結果,手術時間(7時間未満 vs. 7時間以上,p=0.025),術中出血量(1,500ml 未満 vs. 1,500ml 以上,p=0.043),ドレーン挿入期間(4日間 vs. 8日間,p=0.0003)に有意差を認めた.術中出血量を減少させることが腹腔内感染性合併症の予防につながるので,われわれは術前にMD-CT から腹腔内動脈を3D 構築し,下膵十二指

腸動脈(IPDA)の分岐形態を個々の症例で確認している.すなわち,上腸管膜動脈(SMA)根部から IPDA 分岐までの距離を術前 CT 画像から測定し,術中にまず IPDA を先行結紮するようにしている(CLIP method:CT-image guided ligation ofIPDA).その手技で48例に膵頭十二指腸切除術を行ったところ,手術時間が386±64分から365±80分に短縮し,術中出血量は1,210±776ml から996±748ml に減少し,輸血を行う率も56%から27%に減少した41).とくにドレーン挿入期間は多変量解析において腹腔内膿瘍発生の独立した危険因子であった(ドレーン管理の項を参照).

3.胃排泄遅延(delayed gastric empty:DGE)

術後の胃排泄遅延の発生によって,胃管長期留置,経口摂取開始時期の遅延,在院日数の延長などの弊害が生じる.胃排泄遅延の原因として消化管ホルモンであるモチリンの欠如42),胃幽門付近の虚血43),腹腔内膿瘍などの合併症に付随する二次的な胃運動障害44)などがある.胃内容排泄遅延は術死には至らないものの膵頭十二指腸切除術に特有の合併症である45).Akizuki らは膵頭十二指腸切除術後の食事量を記載し,total amount ofdietary intake(TDI)を検討した.胃内容排泄遅延を合併しなかった症例の TDI は胃内容排泄遅延を合併した症例より高値を呈したが,grade Aの TDI と同じであった.また高 TDI 群は低 TDI群と比較して術後1カ月目の体重減少が少なく,術後在院日数も短かった.多変量解析で TDI は性別,BMI,腹腔内感染,胃内容排泄遅延と関連したが,胃内容排泄遅延が合併しないにも拘らずTDI が低値となる因子は,単変量解析・多変量解析ともに同定できなかったことから,今後も,胃内容排泄遅延の原因ならびに予防方法を探索しなければならないとしている46).

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4.ドレーン管理Center for Disease Control and Prevention

(CDC)における surgical site infection 予防のガイドラインではドレーンは,1)もし必要なら,2)閉鎖式ドレーンを使用し,3)できるだけ早期に抜去することと述べている47).膵頭十二指腸切除術179例のドレーン留置に関する RCT において『腹腔内ドレナージによる合併症・死亡率の減少を証明できなかった』という報告がある48).しかしドレーンの性状,色調の観察や排液アミラーゼ値・ビリルビン値を測定することにより膵液瘻,胆汁漏および腹腔内出血の早期診断をすることが可能であり49),膵頭部切除の合併症が他の消化器手術と比較しても30~65%という高い発生率であることを考えるとドレーンを留置することが現実的である.事実,国内外のほとんどの膵臓外科 highvolume center でもドレーンを必ず留置している.

ドレーン留置の問題点は消化管由来の腸球菌や緑濃菌などがドレーンに付着しバイオフィルム

(Bio-film)を形成するという内因性感染50)と,ドレーン長期留置によるドレーンからの逆行性感染という外因性感染がある.つまり術後早期の腹腔内の情報を得るためのドレーンそのものが感染を媒体あるいは助長しうるということである.以上より,できるだけ早期にドレーンを抜去することが重要である.ではいつ(when)抜去するのか?ドレーン抜去の適正時期はいまだ多くの議論が残るが,われわれは,膵空腸吻合部近傍に閉鎖式ドレーンを 1 本のみ留置しており,排液の色調,性状と量を毎日観察するとともに,排液アミラーゼ値およびビリルビン値を術後第1,第 4 日目に測定し,術後 4 日目に必ず抜去している.ドレーン抜去時期に関しては教室で行った膵頭十二指腸切除術104例の Prospective study によって術後 4 日目ドレーン抜去群と術後 8 日目ドレーン抜去群を比較したところ,腹腔内感染の発生頻度は術後 8日目抜去群では38%,術後 4 日目抜去群では7.7%であり(p=0.0003),膵液瘻の発生頻度は術後 8 日目抜去群では23%,術後 4 日目抜去群では3.6%で

ある(p=0.0038)という術後長期(8日目)のドレーン留置は術後合併症の危険因子であるという結果に基づく10).明らかな膵液瘻,胆汁漏,腹腔内膿瘍などの合併症が無ければドレーンを不用意に長期留置することは慎まねばならない.もしドレーン抜去後,遅発性に発熱や腹痛などの臨床症状が出現した場合や,白血球増多や CRP 上昇などの感染徴候を認めた場合には(ISGPS:Grade B 以上),超音波あるいは CT 検査を行う.腹腔内に液体貯留を確認したならば経皮的穿刺ドレナージを速やかに行うことが肝要である51).

われわれが早期ドレーン抜去を提唱して以来,ヨーロッパを中心に膵頭十二指腸切除術におけるドレーン管理に関する臨床研究が始まった52).イタリア Verona 大学の Bassi らは,膵頭十二指腸切除術では81%の症例で術後 5 日目からドレーン留置が原因となる感染がはじまり,膵液瘻の原因となると報告した53).同時に,術後 1 日目のドレーン排液アミラーゼ値が5,000U�L 以上であることが膵液瘻の予測因子であることを明らかにした.さらに,Verona 大学では,術後 1 日目の排液アミラーゼが5,000U�L 以下の症例を,術後 3 日目の早期ドレーン抜去群と術後 5 日目の晩期抜去群に割り付ける RCT を行ったところ,術後 3 日目の早期抜去群で有意に膵液瘻をはじめとする術後合併症が減少した53).

以上より,術後排液アミラーゼが低値であれば,なるべく早期にドレーンを抜去することが有用であることが明らかになった.排液アミラーゼが高値である症例の術後管理をどのように行うかが,将来に向けたわれわれに課せられた研究テーマである.

5.幽門輪温存膵頭十二指腸切除術と膵頭十二指腸切除術の比較

膵 頭 十 二 指 腸 切 除 術 Pancreaticoduodenec-tomy(PD)は1912年に Kaush が報告したのが始まりである54).その後に Whipple がその手技を改変し,Vater 乳頭部癌患者に施行して以来55),一般的な術式として認知されるようになった.一

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方,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術 Pylorus-preserving pancreaticoduodenectomy(PpPD)はWatson が Vater 乳頭部癌に対し施行したのが始まりであったが56),Traverso と Longmire が慢性膵炎患者に施行した報告以降57),広く世界中で行われるようになった.PD ならびに PpPD についてそれらの術後合併症の比較については,2007年度の日本消化器外科学会教育セミナーテキストで詳細に記載したので,参考にして頂ければ幸いである.

PpPD における胃内容排出遅延(Delayed gas-tric emptying;DGE)は生命に直接の影響は与えないものの,嘔吐・嘔気・食欲不振などの消化器症状や,長期の経鼻胃管留置の必要性などで患者とその家族,ならびに医療従事者に不快な感情を抱かせるものであり,在院日数の延長など,医療経済の面からも望ましくない合併症である.PpPD と PD を比較した RCT のうち,1つの報告を除き DGE の発生率に差はなかったが,PpPDの DGE 発生率は22~38%という高いものであり,さらに,日本の多施設研究で PpPD を施行した1,066例のうち,46%に術後 DGE がみられ58),対策が必要である.

DGE の原因としては,1)十二指腸切除に伴う胃の運動を促す消化管ホルモンの欠損,2)血管処理による胃幽門付近の虚血,3)迷走神経切離,4)術後の幽門輪の攣縮,5)術後合併症による胃ならびに腸管の麻痺,6)術後の胃の形態の変化など,さまざまな原因が考えられるが,確立されたものはない.手術時に愛護的に操作し,十二指腸空腸吻合も狭窄など起こらないように慎重に行うことはいうまでもない.手術手技による DGE の予防法として,再建経路に関する retrospective studyでは結腸前での十二指腸空腸吻合で DGE の発生率が低いことが報告された59)60).しかし,エビデンスレベルの高い RCT の報告はなく,結腸前再建か結腸後再建か常に議論になってきた.そこで,われわれは,PpPD の再建を結腸前と結腸後でDGE を含めた合併症に差があるか否かに関するRCT を行った結果,結腸前での再建における

DGE が5%であるのに対し,結腸後では50%と著しく高い結果であり,DGE の発生率に大きな差を認めた61).このわれわれが行った RCT 結果を受けて,米国 Pen State 大学では,結腸前ルートで再建する際に胃背面に大網をパッチすることでさらに DGE が減少することを報告した62).以上より,PpPD では結腸前ルートで再建すべきことが明らかとなった.つぎの研究課題として,温存した幽門輪がどのような機能を有するのかについて科学的に検証することが重要である.われわれは幽門輪を温存する PpPD 群と幽門輪のみ切除して ほ ぼ 全 胃 を 温 存 す る pylorus-resecting PD

(PrPD)群で DGE をはじめとする術後合併症を比較検討する RCT を行った.講演ではその成績の詳細についても述べる予定である.

おわりに膵頭十二指腸切除術は高難度の手術であり,消

化器外科医の登竜門でもある.最も重要な合併症は膵液瘻と考えるが,膵管上皮・空腸粘膜吻合術をはじめとする手術手技の向上により発生頻度を減少させることができる.幽門輪温存膵頭十二指腸切除術では胃内容排泄遅延が問題になるが,これも再建法の工夫により予防することが可能になった.

このような膵臓外科における術式発展の節目には,RCT をはじめとする質の高い臨床研究の登場があったことを肝に銘じ,さらに多くのエビデンスを日本から発信することこそ,われわれに与えられたミッションである.

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安全な膵頭十二指腸切除術

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