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7 章 文学部 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164〔現状〕 2001 年度及び 2002 年度上半期の文学部教員の研究業績は以下のようになっている。 1) 2001 年度 著書:単独 6 件・共同 5 件、翻訳書:単独 18 件・共同 5 件、原著論文:単独 31 件・共同 4 件、作品: 単独 4 件・共同 0 件、学会・学術集会(記録あり) :単独 23 件・共同 10 件、学会・学術集会(記録なし)単独 9 件・共同 0 件、その他の文筆活動:単独 61 件・共同 6 2) 2002 年度上半期 著書:単独 0 件・共同 3 件、翻訳書:単独 1 件・共同 0 件、原著論文:単独 1 件・共同 0 件、作品: 単独 1 件・共同 0 件、学会・学術集会(記録あり) :単独 1・共同 0 件、学会・学術集会(記録なし) :単独 1 件・共同 0 件、その他の文筆活動:単独 3 件・共同 0 〔点検・評価(長所と問題点)〕 数字の上では研究業績は望ましい水準にあるが、考慮すべき点が二つある。一つは著作物や論文、 学会発表の水準である。登録された業績(とりわけ論文)の中には、学外の学術団体によって一定の 評価を得たものが絶対値としては少ないように見受けられることである。もう一つは大部分の教員に よって研究業績が蓄積されているわけではないことである。一部に研究活動が著しく不活発な教員が 存在しており、しかも、そうした教員は長期にわたって業績を提示していない。その結果、一部学科 の業績が不十分に感じられる。 〔将来の改善に向けた方策〕 大学教員が教育と研究を職能とする職業である以上、一定の研究業績を求められることは当然であ る。その意味で今後は最低限二つの課題を解決するべく手段を講じる必要がある。すなわち、一つは 研究業績の水準を社会的に認知されやすいものにすることである。これは必ずしも世間的に有名な事 柄を扱うとか、マス・メディアに取り上げられるようにするといったことではない。少なくとも当該教 員の専門とする領域(専門家社会)において認知されるということである。 もう一つは業績成果の発表が不活発な教員に対して如何に対処するかということである。研究業績が 一朝一夕には成果として発表できないものもあることを考慮した上で、一定の猶予期間を置いた上で 警告、研究費の減額等の処置を文学部では既に講じており、今後は数年にわたってその措置の有効性 を確認する作業が必要である。 ただし、専門によっては各教員の業績が研究発表、論文という形式をとらず、文筆活動、映像制作 活動等の表現形式を取るものもあるので、それらを研究業績と等価に評価する作業が必要である。少 なくとも文学部においてはその作業は既に終了しており、業績登録の際には関連成果物に関しては研 究業績の諸基準に該当するものを確定できるようにしている。 今後の課題は、既存の分類枠組みには該当するものがない新しい内容の成果物を如何に扱うかに関 して、関連する学科・専攻教員との間で検討を行い、適切な評価を行うことである。 ② 国内外の学会での活動状況(項目№165〔現状〕 活動状況に関しては二つの点から捉えられる。一つは学会での研究発表である。これに関しては国 内では一定の発表状況にあるといえる。すなわち、学会において発表を行った件数が 2001 年度、 2002 年度上半期を合わせて、記録があるもので単独が 24 件、共同が 10 件、同じく記録のないものが単独 1273

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第 7 章 文学部

【文学部】

1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164) 〔現状〕

2001 年度及び 2002 年度上半期の文学部教員の研究業績は以下のようになっている。 1) 2001 年度

著書:単独 6 件・共同 5 件、翻訳書:単独 18 件・共同 5 件、原著論文:単独 31 件・共同 4 件、作品:

単独 4 件・共同 0 件、学会・学術集会(記録あり):単独 23 件・共同 10 件、学会・学術集会(記録なし):単独 9 件・共同 0 件、その他の文筆活動:単独 61 件・共同 6 件

2) 2002 年度上半期 著書:単独 0 件・共同 3 件、翻訳書:単独 1 件・共同 0 件、原著論文:単独 1 件・共同 0 件、作品:

単独 1 件・共同 0 件、学会・学術集会(記録あり):単独 1・共同 0 件、学会・学術集会(記録なし):単独 1件・共同 0 件、その他の文筆活動:単独 3 件・共同 0 件 〔点検・評価(長所と問題点)〕 数字の上では研究業績は望ましい水準にあるが、考慮すべき点が二つある。一つは著作物や論文、

学会発表の水準である。登録された業績(とりわけ論文)の中には、学外の学術団体によって一定の

評価を得たものが絶対値としては少ないように見受けられることである。もう一つは大部分の教員に

よって研究業績が蓄積されているわけではないことである。一部に研究活動が著しく不活発な教員が

存在しており、しかも、そうした教員は長期にわたって業績を提示していない。その結果、一部学科

の業績が不十分に感じられる。 〔将来の改善に向けた方策〕 大学教員が教育と研究を職能とする職業である以上、一定の研究業績を求められることは当然であ

る。その意味で今後は最低限二つの課題を解決するべく手段を講じる必要がある。すなわち、一つは

研究業績の水準を社会的に認知されやすいものにすることである。これは必ずしも世間的に有名な事

柄を扱うとか、マス・メディアに取り上げられるようにするといったことではない。少なくとも当該教

員の専門とする領域(専門家社会)において認知されるということである。 もう一つは業績成果の発表が不活発な教員に対して如何に対処するかということである。研究業績が

一朝一夕には成果として発表できないものもあることを考慮した上で、一定の猶予期間を置いた上で

警告、研究費の減額等の処置を文学部では既に講じており、今後は数年にわたってその措置の有効性

を確認する作業が必要である。 ただし、専門によっては各教員の業績が研究発表、論文という形式をとらず、文筆活動、映像制作

活動等の表現形式を取るものもあるので、それらを研究業績と等価に評価する作業が必要である。少

なくとも文学部においてはその作業は既に終了しており、業績登録の際には関連成果物に関しては研

究業績の諸基準に該当するものを確定できるようにしている。 今後の課題は、既存の分類枠組みには該当するものがない新しい内容の成果物を如何に扱うかに関

して、関連する学科・専攻教員との間で検討を行い、適切な評価を行うことである。 ② 国内外の学会での活動状況(項目№165) 〔現状〕 活動状況に関しては二つの点から捉えられる。一つは学会での研究発表である。これに関しては国

内では一定の発表状況にあるといえる。すなわち、学会において発表を行った件数が 2001 年度、2002年度上半期を合わせて、記録があるもので単独が 24 件、共同が 10 件、同じく記録のないものが単独

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第 7 章 文学部

10 件・共同 0 件である。他方、国外においての発表は 2 件とごく限られたものである。 もう一つは学会において何らかの役職に就いているかどうかである。これについても、国内におい

てはかなりの数の教員が役職を務め、学会活動に貢献している。海外に関しては乏しい状況にある。

また、一部教員が地方公共団体での学術活動に役職者として協力している。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 上記のように、国内における学会活動への貢献という点では文学部教員はそれなりの活動を行って

いると言えるが、海外の学会に関してはほとんど活動を行っていない。また、地方公共団体の学術活

動への協力は地道なものだが高く評価できる。 〔将来の改善に向けた方策〕 学会活動とは、単に学会に所属することではなく、発表や執筆を行い、自らの研究内容を発信しそ

れに対する批判を通じて自己の研究を質的に向上させることである。その点では、こうした活動を行

なっている教員が一部に集中している傾向をいかにして改善していくかが今後の課題である。 また、学会の役職者として運営に関わることは当該研究領域の現状を認識することのみならず、多

くの同学の研究者との交流の機会を拡大し、研究者個人のみならず文学部の研究の現状を発信する点

でも重要な意義がある。そこで、学会での役職活動を業績として積極的に評価する制度を学部内のみ

ならず大学においても確立することが肝要である。 ③ 当該学部、センター、研究所として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166) 〔現状〕 文学部の教員は過去 3 年間に、国内における学術賞を 2 件、国外における学術賞を 2 件受賞してい

る。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 文学部教員の学術賞受賞状況を見ると、ほぼ毎年何らかの学術賞を受賞していると言える。

〔将来の改善に向けた方策〕 本項目に関する改善策は、教員の研究活動に対する姿勢と業績評価にも関わるので、上記①・②と

密接な関連がある。全教員による積極的な研究活動が必要であることは言うまでもないが、加えて学

外に向けた研究成果の発信を促進するための支援策を講じる必要がある。 ④ 研究助成を得て行われる研究プログラムの展開状況(項目№167) 〔現状〕 文学部では、2001 年度文部科学省のいわゆる「科学研究費補助金」に対して研究代表として新規に

申請をおこなった教員が 14 名いた。このうち 7 名の申請が採択された(採択率 50%)。さらに前年度

からの継続者が 2 名いたので、文学部全体としては 9 名の教員が「科研費」を獲得していた。 2002 年度は 10 名が新規に申請をおこなったが採択されたものは 0 件であった。ただし、前年度か

らの継続者が 7 名いるので、本年度も 7 名が「科研費」を獲得して研究をおこなっている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 「科学研究費補助金」に対する近年の申請状況は徐々に増加しつつあるので、学外の諸研究費補助へ

の依存率も増大傾向にあると言える。また、本年度は採択件数が 0 であったが、これまでの傾向と不

採択となった申請に対する理由の提示が行われ、次年度以降はそれに対応した研究計画の作成が行わ

れると予測されるため、次年度以降、採択されるものが増えると推測される。

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第 7 章 文学部

このように、文学部は研究領域が全く異なる多くの学科・専攻によって構成されているにもかかわ

らず、「科研費」の獲得に対しては意欲的であると言える。 〔将来の改善に向けた方策〕 近年「科研費」の獲得が増加しつつあり、教員の申請件数も増加傾向にあるとは言え、申請し獲得

する教員が特定の学科・専攻の特定の教員に固まる傾向があるので、今後は申請教員の増加を期待す

るだけではなく、各教員が申請する際に必要なノウハウを提供し、支援する仕組みを有効に機能させ

ることが求められる。支援組織は、存在するだけではなく、実効性のある支援組織になっていなけれ

ばならないので、その仕事の内容を評価することも必要であろう。また、多数の教員が「科研費」を

獲得している大学での支援組織の実態を検討することも必要であろう。

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第 7 章 政治経済学部

【政治経済学部】

1. 研究活動 (1) 研究活動

論文等研究成果の発表状況(項目№164)① 〔現状〕 政治学科における 1985 年度から 2000 年度までの 5 年ごとの期間での論文等研究成果の発表状況

は以下の如くである。 1985 年度:著書 8、学術論文 9、 翻訳 0、学会記録 4、小計 21 (共同 1) (共同小計 1) 1990 年度:著書 1、学術論文 22、翻訳 0、学会記録 4、小計 27 (共同 5)(共同 3)(共同小計 8) 1995 年度:著書 4、学術論文 10、翻訳 1、学会記録 5、小計 20(共同 3) (共同小計 3) 2000 年度:著書 0、学術論文 11、翻訳 1、学会記録 5、小計 17(共同 3) (共同小計 3) なお、この他にも口頭発表、その他の文筆活動など、多くの研究成果が発表されているが割愛した。 経済学科における、1997 年度から 2001 年度にわたる過去 5 年間の経済学科専任教員名 13 の研究

活動は、著書 8 本、学術論文(原著論文、総説)65 本、その他(翻訳、学術書編集・監修、学会・学

術集会発表、その他の文筆活動)72 本であった。 経営学科における教員組織の研究活動は、現状では、各教員任せで必ずしも組織的な対応がなされ

ているとは言えないが、各教員が学会活動に活発に参加しており、学会の研究発表会での発表や、著

書の出版、大学紀要や学会誌などへの論文投稿が行われている。本年は、学会の若手研究者への奨励

賞をもらった教員もおり、全体としては社会的に認知される研究活動が行われていると言える。しか

しながら、その研究活動には教員によって大きなバラツキがあり、研究業績の不活発な教員に対する

活性化策として、大学からの科学研究費補助金申請の奨励策のほか、政治経済学部紀要への投稿の奨

励策などが行われている。学科としては従来、教員の研究活動の活発化のために教員相互の研究内容

の学科内での研究会を開催していたが、ここ数年来休止状態になっている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 理系とは異なり、人文社会系の学問分野においては、研究成果は個人を中心になされるのを常態と

するが故に、コンスタントに年間 20 程の研究成果が発表されてきたことは高く評価されるものと思

われる。しかも、発表されているものの内容については、その分野においては注目されるものが発表

されている。ただ、近年においては著作活動が鈍化しつつある傾向が認められる。その主たる原因と

しては出版事情が厳しいことと、研究に割く時間がとれなくなってきているということの 2 点を挙げ

ることができるであろう。また、研究成果を発表している政治学科の教員は特定化の傾向にある。こ

れは、積極的に発表している教員とあまり発表していない教員との二分化が進んでいるというように

判断されうる。 経済学科では論文発表の多くは紀要、行動科学研究が多く、これらは主に東海大学の教員を対象と

した雑誌である。さらに、これら以外の研究発表の方法や場においても偏りが多く、専門雑誌や学会

発表等においてもそのバラエティーは少ない。また、教員間に研究成果発表のバラツキが見られる。 経営学科における研究活動は、教員の自主的な研究活動にまかされており、組織的な研究活動への

圧力がないという意味では、教員一人ひとりが自分にあった研究活動を自主的にできるという研究の

自由が保障されていると言える。しかも、論文への研究奨励賞を受賞したり、出版物の刊行を行った

り、社会的に認知される研究活動を行っている教員もいることから、総体的には研究活動は活発に行

われているということができるであろう。しかしながら、教員の研究活動を組織的に評価するならば、

個人のバラツキが大きく、ここ数年来ほとんど研究のアウトプットのない研究活動が不活発な教員が

いることも確かである。 教員組織が活発に既知の知識、技術のレベルを超えるような研究活動を行い、

新しい知見、知識を創造していかなければ、学生への効果的な専門の先端的な教育・研究指導が行え

なくなる可能性がある。

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第 7 章 政治経済学部

〔将来の改善に向けた方策〕 研究活動を活発化させるためには何よりも研究環境の整備が重要である。そのためには、研究活動

により多くの時間を割くことができるようなシステムの構築、そして発表の場の確保、例えば、出版

助成金の充実、紀要の半年ごとの出版等を考える必要があろう。 また、研究業績の不活発な教員に対しては、現行ではプロモーションでインセンティブを与えるこ

としかできていない。この方策では、プロモーションに関心がない教員や、すでに教授に昇格してし

まった教員に対しては何ら効果がないことは明白である。従って、今後は、きちんとした評価システ

ムのもと、研究成果を積極的に発表することの意味づけを行うことも必要と思われる。 大学院研究指導教員としての資格を有する者には、3 年ごとに研究業績の審査が行われる。現在、

その基準は論文発表においては 3 年間で 2 本である。それ以外の教員は昇格人事の際、研究業績の審

査が行われる。この両方の場合において、研究業績の不活発な教員に対しては注意・勧告が行われる。

顕著な研究業績を上げた教員には研究休暇を与えて、研究業績活発化へのインセンティブを与えてい

る。 各教員任せの研究体制も上述したように、自由な研究ができるという意味ではよいが、組織的に見

た場合に、個人間の研究発表の活発度におけるバラツキが大きい。お互いの研究活動に対する動機づ

けを行う機会を設ける必要があると思われる。そのためには、まず、各教員が学会活動にどのように

関与し、どのような活動を行っているかについて、相互の研究内容についての関心を持つような組織

的体制作りが必要であり、従来から行われている学科内での共同研究活動や研究会を活発化させる必

要がある。また、学生への効果的な専門の先端的な教育・研究指導を行うためにも、教員が先端的な

研究を行う必要があることについて、教員組織内での意思統一と、動機づけを行う機会を持つ必要が

あり、研究活動が不活発な教員については、活発化を促す活動として、個別のコーチングも必要であ

ろう。

国内外の学会での活動状況(項目№165)② 〔現状〕 各所属学会等において相当の活動を行っている。所属学会は、政治学科 14 人の専任教員で延べ 37学会、経済学科 13 人で 45 学会、経営学科は 12 人で 35 学会であり、平均 3 学会に所属している。

このうち外国の学会に所属している教員は 6 名である。学会発表等は、上記①のごとくである。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 各教員の学会、研究会への出張は、授業対策を必要とし、かつ個人研究費等によるもののみが把握

されているが、2001 年度においては合計 40 人である。上記以外の主として関東地区での学会等への

出席はこれと同数以上と思われる。国外における学会、シンポジウム等の発表は、この数年 1、2 名

にとどまっている。学会賞等の受賞は 2 名であった。 また、各学科について共通していることだが、教員間に学会活動でのバラツキが見られる。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 学会等での顕著な活躍に対しては、学部長留保金における研究費の傾斜配分においてこれを報奨し

ているが、業績のきめ細かい評価によって活躍の動機づけを強めたい。発表等のインパクト・ファク

ターを勘案して、報奨することが考えられる。 国外における学会活動に関しては、現在研究推進部における助成措置があるが、学部のレベルでも

これを支援することによってインセンティブを与えることも必要であろう。 また、従来、教員の研究業績が学生に知られることは個人ベースによることが少なくなかったが、

学部内における広報をこの面でも広げる必要がある。

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第 7 章 政治経済学部

当該学部、センター、研究所として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166)③

〔現状〕 特になし。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 特筆すべき研究成果が上がっていないのは残念であるが、少なくとも各学科における研究会活動が

活性化されなければならない。政治学科では、定期的な研究会を催しているが、経済・経営の両学科

では今年度はいまだ開かれていないなど、問題がある。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 査読が要件とされる学術誌ももちろんであるが、学部紀要より手軽な試論としてミメオや電子媒体

によって、まず研究発表の手がかりをつける方法も必要であろう。また、学部あるいは学科で一定の

テーマを研究する叢書や個々の教員の研究叢書を創刊することも考えたい。 学会発表などと同様に、研究成果の発表の際、学部レベルでの助成を考えなければならない。広報

の面でも、上記②と同様である。

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第 7 章 法学部

【法学部】

1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164) 〔現状〕

1999 年度から 2001 年度にかけての専任教員 27 名(2002 年度における現員。特任教員を除く)に

よる研究活動の成果は、東海大学 WEB の「教員活動情報」の記載、および、最新業績の自己申告に

基づいて作成された以下の表によって知られる(したがって、大学の「教育研究年報」記載のデータ

とは若干の相違がある)。ただし、この期間に、教員の採用により教員数が変動している、退職者や特

任教員の業績は省かれているし、期間中途よりの教員による採用以前の業績も除外され、また、C 計

画海外派遣中の教員もいるため、1 年毎の増加件数は、あくまでも参考数値であり、この期間におけ

る学部の構成員全体の研究活動をそのまま反映するものではない。また、研究業績一覧を作成するに

当たり、1999 年度と 2000 年度の業績分類などは基本的に教員個人の申告に基づいているため、業績

分類などは必ずしも統一されているものではない。

研究業績(1999 年度から 2001 年度) 1999 年度 2000 年度 2001 年度 原著論文 32 25 31 編著・訳書 2 3 3 報告書、翻訳、

短評、判例解

説、その他

6 6 13

国内学会・国

際学会等報告 16 14 19

教育研究機関

などにおける

講演

9 10

新聞・テレビ

報道など 2

各種の業績数は、上記の表からわかるように、この 3 年間に関して、全体として緩やかな伸びを示

しており、部分的には、ほぼ同じ安定した水準の業績数を維持している。 法学部法律学科では、学科編集・発行の学部紀要として『東海法学』を毎年度 2 回発行している。学

部の活発な研究活動の成果が収録されている。その多くは通常号として発刊されるが、適宜、本学部

教員の退任を記念する特別号などとしても発行される。本誌は、教員の研究成果を広く公表し、もっ

て研究と教育の向上を図ることを目的とする。本誌への寄稿者は原則として本学部専任教員であるが、

一定の要件の下に、他からの寄稿を認めている。国内外の研究機関に定期的に送付している。 科研費の申請・採択状況は、以下のとおりである。1999 年申請 1 件採択 0 件,2000 年申請 2 件採択

0 件,2001 年申請 5 件採択 1 件。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 研究分野の違いがあるため、論文などの数によって単純に研究業績を評価することは必ずしも容易

ではない。また、自然科学系とは異なり、社会科学系の領域、特に法学の分野においては、公表媒体

としての雑誌などの数が非常に少ないことと合わせて、レフェリー制の専門誌も非常に少ない。した

がって、本来は、研究業績の単純な数による評価は適切ではない部分がある。このような制約を前提

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第 7 章 法学部

にして数量的な観点から見た場合、本学部の研究業績の総量はこの 3 年間を通じて安定して推移して

おり、教員一人あたりに直した年間の原著論文公表数はおよそ 1.2 本となる。このような状況に加え、

近年、とりわけ、「教育研究機関における講演」が著しく増加しているが、これは、学問と大学の社会

的役割に鑑みると、学部と学部教員の社会的役割意識の向上とともに、学問に対する社会的要請に応

えようとする教員の積極的な意識と活動の成果であると言える。 論文などの研究成果の発表について詳細に見ると、原著論文や国際会議発表といった業績については

個々の教員によって相違はある。しかし、これには、研究業績評価が過去三年間のデータにしか基づ

いていないこと、さらには当該教員の研究分野あるいはテーマによっては研究成果の公表にある程度

時間のかかる場合があることなどの事情は反映されていない。また、本学部においては、実務家から

も積極的に教員を採用することによって、学理と実務が理想的に融合した教育環境を構築することが、

本学部の誇るべき特徴となっており、特にここ数年、法学部では、複数の実務家(元裁判官、検察官、

弁護士、公務員など)出身者を採用している。実務家出身の教員にとっては、就任早々に研究論文と

いう形で学問的業績を公表することは、必ずしも容易なことではないが、実践的な判断活動の中で培

われた経験知を基礎とした研究業績も発表されている。 もっとも、公表された業績数の点で活発ではない教員が、わずかではあるにせよ、存在することは否

定できないが、このような問題に対する方策は検討されるに至っていない。 科研費の申請件数は、従来低かったものの、ここ数年では着実に増加傾向にあり、このような傾向が、

各教員の研究活動の活性化およびその業績の公表へ繋がっていくことが期待される。 〔将来の改善に向けた方策〕 大学にとって、少子化をはじめとして厳しい時代の到来に抗して、競争力の高い教育研究を行う前

提として、これからはさらに、学部の個々の教員と同時に、共同研究、さらには学部全体の研究方針

において、一層魅力的なテーマの設定とその研究を推進する能力が問われることとなる。厳しい競争

にさらされることになるが、能力ある研究者にとって奮起しがいのあるチャレンジであろう。受験生

をひきつける魅力ある学部とするためにも、研究活動が外部からはっきり見えることが必要であり、

共同研究はそのためにも有力な手段となるだろう。 科研費への応募件数を増加させることが採択件数を増加させる条件である。申請件数は増加している

とはいえ、さらに多くの申請と採択に向けて努力する余地があると考えられる。採択件数を増加させ

るためにも、より魅力あるテーマ設定を行い、積極的に申請する姿勢が必要であろう。 研究活動が不活発な教員に対する方策については、さまざまな個別的事情を考慮しつつ、何らかの活

性化を求める方策が考えられるべきである。 ② 国内外の学会での活動状況(項目№165) 〔現状〕 上記表からわかるように、教員が研究成果を内外の会議で発表する件数は、安定的に推移している。

とくに、この数年、研究成果を国際会議で報告する機会は増加している。 国外での学会活動については、1999 年度から 2001 年度における海外出張教員の延べ人数は 45 件で

あり、これらは基本的には、国外の国際会議において学術研究報告を中心とするものであるが、研究

報告のみではなく、多様な形態における、国際的学会、組織、などへの参加、協力、貢献が行われて

いる。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 国内の学会活動については、単なる研究発表にとどまらず、学会の理事や理事長、あるいは幹事な

どとしての活動、さらには、シンポジウムの司会、コーディネータ、ディスカッサント、パネリスト、

などといった形における研究参加の形態が多数見受けられる。ただし、こうした形態における学会研

究活動は、「研究報告」という形では数量化されていないために、上記の表に現れていない学会活動と

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第 7 章 法学部

なっている。 〔将来の改善に向けた方策〕 学会活動については、単なる研究発表にとどまらず、学術的貢献がなされている。ただし、こうし

た形態における学会研究活動は、「研究報告」という形ではデータを収集していないため、数値的には

表現できない。これまで、こうした学会活動の情報は、学部として集積するという体制がとられてい

なかったために、その全体像が把握しづらいという事態が生じている。こうした分野における学術研

究活動を正当に評価するためには、学部としても、普段より最新の情報を各教員から得ておくことが

必要になろう。 ③ 当該学部として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166) 〔現状〕 学部全体としての研究活動として特筆すべきは、学部等研究教育補助金に基づく、学部教員による

共同研究プロジェクトが上げられる。これは、国内外の法的諸問題の中から、焦眉の学問的・社会的

テーマについて、教員の共同プロジェクトチームが、各テーマについて、研究を遂行すると同時に、

国際的シンポジウムや講演会を開催している。たとえば、1999 年度においては、日常的法意識・紛争

意識の比較研究、WTO 新ラウンド交渉の分析、2000 年度においては、法治主義と行政統制をめぐる

日仏シンポジウム、現代社会における法形成の問題、2001 年度には、現代社会問題への刑事法的、お

よび外国法の対応の諸相、などのテーマが取り上げられた。 また、法学部教員が参加する「法学部研究会」を設けて、基本的に、毎年 6 回程度の研究報告会を設

けている。この中では、個別報告とあわせて、毎年、諸外国よりパネリストや講師を招いて、あるい

は共同研究会を行い、国際的学術交流を深める試みを行ってきている。2000 年度には米国から特別講

師を招き共同研究会、2001 年度にはフランス、中国、韓国からの講師とともに共同研究会を開催して、

日常的法意識、環境権、法学教育などの現代最重要な法的諸問題をテーマとして共同的研究を行って

いる。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 共同研究プロジェクトや国際的学術交流活動の実践は、明らかに、学部教員全体の国際的知見を広

め、研究意欲を向上させ、特色ある研究をいっそう進めるために大きく貢献している。これからも、

時代の要請に即した、オリジナリティーあふれるプロジェクトを積極的に推進していくことが求めら

れる。 〔将来の改善に向けた方策〕 近年、社会の法化が進むに従って、法と社会の接点が強く意識されるようになり、学外の社会的研

究プロジェクトへの参加や学外(企業や政府機関、研究所など)からの研究費獲得の要請が著しく増

加しているし、また実際に、例えば電子商取引、医事法や知的財産権、消費者保護などの分野におい

ては、委託研究などの外部資金を獲得する機会が増加しつつある。しかし、これらに関しては、科学

研究費の場合を除くと、学部として一元的にその情報を管理するシステムは制度化されていない。学

部のパフォーマンスを計る目安として、学外からの研究費獲得ということが大きくクローズアップさ

れる今日、学部の活躍を外部に伝える指標としての重要性を再認識すべきであろう。

1281

Page 10: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 教養学部

【教養学部】

1. 研究活動

(1) 研究活動 論文等研究成果の発表状況(項目№.164)①

「現状」 本学部教員は毎年度発行の「教養学部紀要」に論文を第三者査読の上で掲載する他、各々所属学会

などにて社会的に研究活動を展開している。人間環境学科では専任教員 1 名あたり毎年度平均 2 点以

上の著書、論文等の成果を上げている。芸術学科では実技系教員では演奏会、作品発表、デザイン活

動などの表現創作活動を活発に行い、学問系教員は紀要や研究誌へ論文を執筆し、翻訳書出版も手掛

けている。国際学科では紀要はもとより、他大学などの研究機関での活動、科学研究補助金の交付で

海外研究者との共同研究も見られる。 「点検・評価(長所と問題点)」 本学部各教員の研究活動について、以下のような取り組みの評価の視点および項目を設定して評価

を行った。 1) 目標:各学科教員の論文等研究成果の発表を活発に行っていくこと。 2) 評価の視点および項目

a 各学科教員の研究活動は活発に行われている。 b 各学科教員の研究活動の活性化へのどのような方策が取られているか。

3) 評価 a 本学部各学科の専門性によって、各々異なる研究活動を行っていることが特色でもある。人間

環境学科では論文を中心に年間一人当たり 1.8 件(過去 3 年平均)の研究成果を上げているが、

それらが社会的及び専門的に認知され得るものか一様に言うことはできない。芸術学科の実技

系教員は、年間一人当たり 2 回以上演奏会や作品発表を開催又は参加していて、それらの一般

社会での公共的活動により、安定した活動の継続が確認できる。デザイン活動では、産業界か

らの依頼に基づく活動が中心にあり、教員によって異なるとはいえ、一定数の依頼は受けてい

る。学問系では論文が中心となり、毎年必ず学会発表や本学部紀要の執筆がある。国際学科で

は、科学研究補助金が交付されること自体が一つの評価でもある。こうした各学科の研究活動

は社会に向けて為されているが、個人差があり十分とまでは言えない。さらに活発に、そして

学部の特色を反映された活動も求められる。 b 各学科共、教員間の研究活動に偏りは認められる。不活発な教員へは、卒業研究指導と連動し

た活動、科学研究補助金を始め外部研究資金導入、学務負担の効率化などの環境を整えること

を目指している。しかし、人間環境学科では直結した大学院のないこと、各学科で外部研究資

金への申請率が低いこと、現在問題山積の状況で学務負担が軽減できないこと等で、求める効

果は難しい点はある。 「将来への改善・改革に向けた方策」 様々な角度から、本学部の全教員の活発な研究活動を促進しなくてはならない。人間環境学科では、

学部教員の研究活性化に寄与する意味で、大学院設置を実現することが一つの学内環境として望まれ

る。また、外部研究資金導入を積極的に促進し、申請数の増加を目指すこと、各学科・課程の運営上

の学務を極力分担して効率良くし、各教員の負担軽減の努力をすることなどによって、現状の改善を

図っていく。

国内外の学会での活動状況(項目№165)②

1282

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第 7 章 教養学部

「現状」 本学部各教員は、各々専門分野の学会などに所属し活動を行っている。人間環境学科では、全専任

教員の学会及び学術集会への参加総数は過去 6 年間では年平均約 38 件になり、1 名あたり 2、3 件と

なるが、教員間の格差は少なくない。海外出張は年平均 8 件になるが、学会発表は少ない。芸術学科

の教員は、以下の学会(( )内の数字は所属者数)に所属して活動している。日本音楽学会(6)、美術史学会(2)、日本デザイン学会(6)、明治美術学会(2)、日本版画協会(1)、芸術工学会(1)、図学会(1)、日本広告グラフィックデザイン連盟(1)、建築学会(1)、日本インテリア学会(1)で

ある。国際学科では、国際政治学関係の学会を始め専門分野の関連組織で理事や評議員を勤める教員

が 2 名以上いる。海外でのシンポジウム、ワークショップでの発表を行う教員が 3 名以上いる。 「点検・評価(長所と問題点)」 本学部各教員の国内外の学会での活動状況について、以下のような取り組みの評価の視点および項

目を設定して評価を行った。 1) 目標:各学科教員の国内外の学会での活発な活動を求めていくこと。 2) 評価の視点および項目

a 各学科教員の国内外の学会での活動は活発に行われているか。 b 各学科教員の国内外の学会で顕著な活動を主なっているか。

3) 評価 a 人間環境学科では、代表者としての学会・学術集会等への参加のないものから、多数の参加ま

での教員格差が問題である。芸術学科では所属学会での発表、学会誌への寄稿などが少ないこ

とが問題であるが、デザイン学課程において学会での情報を教育に有効に反映させている面も

見られる。国際学科では、その専門性から海外での学会活動、発表などの活発化をより求めた

い。 b 各学科の特定の教員は、海外での学会発表、活動などの注目すべき例も見られる。国内におい

ても、専門分野や社会の一部からある程度関心を集めるものもない訳ではない。しかし、顕著

な例として取り上げるものは少なく、一層の研鑽が求められることが今後の課題としてある。 「将来への改善・改革に向けた方策」 何より教員一人一人の積極的な努力を求めていかなくてはならないが、着実な研究を積み重ねてい

って成果を上げることが重要であり、学部全体でその環境を整えていくことが必要である。そのため、

人間環境学研究科の大学院新設、外部研究資金導入への努力、教員相互の協力する体制など組織全体

で推進しなくてはならない。

教養学部として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166)③ 「現状」 本学部各学科における研究分野で特筆するものは少ないが、上げるとすれば芸術学科音楽学課程に

おける音楽療法の教育・研究は一つの特色としてある。それは、総合大学の利点として医学部及び付

属病院と連携して、卒業研究の臨床実験及び音楽療法セッションを行っている点にある。また年 3 回

程学外から音楽療法士、研究家を招いて講演会を開催し、広く一般に公開している。国際学科でも学

外の講師を招いてのレクチャーシリーズなども、同様な研究活動と言える。 「点検・評価(長所と問題点)」 本学部として特筆すべき研究分野での研究活動について、以下のような取り組みの評価の視点およ

び項目を設定して評価を行った。 1) 目標:各学科として特筆すべき研究分野での研究活動を求めていくこと。

1283

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第 7 章 教養学部

2) 評価の視点および項目 a 各学科として特筆すべき研究分野での研究活動は行われているか。 b 各学科の研究活動で特筆すべき研究成果、学術賞などの受賞はあるか。

3) 評価 a 芸術学科音楽学課程の音楽療法の教育・研究は特色と言える。講演会開催も学外一般からの参

加者も多く、音楽療法士を目指す学外からの科目履修生が毎年度多数あることにも、特色とし

ての社会からの注目度が測れる。こうした活性化によって、学生への教育的効果も大きい。他

学科でも、国際学科でのレクチャーシリーズなどの活動も、国際問題への研究活動として特筆

できる可能性を持っている。今後の課題として、こうした特筆できる研究活動を学部全体に求

めたい。 b 評価対象は音楽療法研究に限られるが、学生の医学部と連携した卒業研究指導とも連動し、学

会での発表も重ねており研究成果を上げている。学術賞などの突出した評価がある訳ではない

が、総合大学の利点を生かした本学でなくてはなし得ない研究として、着実な積み重ねが期待

できる。そうした堅実な蓄積が、将来評価される可能性も期待できる。 「将来への改善・改革に向けた方策」 本学各学科共、着実な研究を積み重ね研究成果を上げる必要性において変わりはない。また社会を

見据え、教育の原点である授業の質を高め、教育目標と研究活動を融合させるような取り組みも求め

られる。さらに分野をまたがる教員共著の著作、新機軸の総合的シンポジウム企画など、本学部の特

色を生かした積極的な研究活動も考えられる。

1284

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第 7 章 体育学部

【体育学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目No.164) 〔現状〕 2001年4月より2002年3月までの1年間における体育学部教員の論文等研究成果の発表状況は以

下の通りである(研究業績目録業績区分に従って集計した)。 著書(学術書) 3 件 著書(教科書) 2 件 著著(その他) 2 件 原著論文(学会誌) 6 件 原著論文(紀要) 13 件 原著論文(その他)21 件 その他の文筆活動 21 件 (学部内における共同研究は 1 件として集計した) 体育学部教員の過去 1 年間における論文等研究成果の発表状況は、総計 68 件ではあるが、共同研

究者を含めた論文等研究成果の発表者は 28 名、体育学部全教員(対象 53 名)の 53%という結果で

ある。特に体育学科所属教員の発表状況は悪く、共同研究者を含めた論文等研究成果の発表は体育学

科教員(対象 30 名)の 30%(9 名)という結果であった。 海外の研究誌への投稿論文の掲載は、Osterreichisches Journal fur Sportmedizin 誌、および American Journal of Physiology 誌の 2 件であり、ともに自然科学の領域の論文である。 〔点検・評価(長所と問題点)〕

1) 目標:教員組織の研究活動を評価・分析することを通して研究活動を活性化する。 2) 評価の視点及び項目

学部の教員組織の研究活動〔論文等研究成果の発表〕は、活発に行なわれているか。その論文等の

研究成果は、社会的に認知され得るものであるか。学部において研究業績の不活発な教員がいる場合、

活性化を促す方策はとられているか。 3) 評価

上記の現状に示されたように、体育学部教員の論文等研究成果の発表状況は良いものではない。し

かしながら、ここには体育学部特有の問題点が存在する。それは運動クラブ活動指導の問題である。

体育学部所属の教員の多くが「体育方法学」、あるいは「スポーツ方法学」をその研究領域としており、

これらの領域における研究はその指導実践と密接に関係している。すなわち、各種スポーツ種目の指

導理論をその指導実践に生かすことを求められる研究領域である。そして、この「体育方法学」、ある

いは「スポーツ方法学」をその研究領域とする体育学部教員のほとんどが、東海大学の体育会スポー

ツクラブの指導者、JOC 関連のスポーツ指導者としてその指導実践を求められているという現状があ

る。つまり、指導理論の研究成果は論文等の発表という形式ではなく、実際の指導実践として展開す

ることがまず求められるのである。勝敗、あるいは競技成績といった明確な形でその評価が為される

指導実践を追求することは大変な労力を要することであり、論文等の形式で研究成果を発表するまで

は至らないが現状であろう。このような状況が、体育学部における教員の論文等研究成果の発表の件

数の低下を招いているのではないかと考えられる。例えば、論文等研究成果の発表状況が特に悪かっ

た体育学科の場合、過去 1 年間において、共同研究者を含めた論文等研究成果の発表のなかった体育

学科所属の教員の内 71%(15 名)は運動クラブの指導者である。そしてこの運動クラブの指導者は、

全日本学生選手権大会、あるいは関東学生選手権大会・リーグ戦において好成績を修め、その指導理

論の研究成果を実際の指導実践として展開している。

1285

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第 7 章 体育学部

〔将来の改善に向けた方策〕 現在の「体育学」あるいは「スポーツ科学」といわれる研究領域は、その後発性が故に、先発の学

問、科学における研究の方法論を踏襲、追求し、その独自な方法論を発展させて来なかった。さらに、

指導実践における成果などは「経験主義的」であり、「非科学的」とされ、実験室における正確な、そ

して部分的な分析のみが評価されたという経緯がある。 その指導理論の実践は、例えば医学における症例研究や事例研究等のように、研究成果として発表し

得るはずである。しかしながら、先に述べたようにその発表の「形式」が体育・スポーツの研究領域

においては確立していないのである。将来の改善に向けて方策としては、東海大学紀要(体育学部)

等において、その指導理論の研究成果、およびその実際の指導実践の成果を発表し得る「形式」を開

発することであろう。さらにまた、体育・スポーツ科学における従来の発表「形式」をよく知る体育

学部教員と運動クラブの指導者とがチームを組み、共同研究という形でその指導理論を論文として公

表していくという方策も有効であろう。 ② 国内外の学会での活動状況国内外(項目No.165) 〔現状〕 2001年4月より2002年3月までの1年間における体育学部教員の研究成果の学会における発表は

26 件であった。26 件の内訳は、学会・学術集会における一般発表 19 件、学会・学術集会におけるコ

メンテーター、シンポジスト、キーノートレクチャー7 件である。また、海外における学会・学術集

会の発表は 3 件であった。共同研究者を含めた学会・学術集会の発表者は 20 名、体育学部全教員(対

象 53 名)の 38%という結果である。先の論文等研究成果の発表状況と同様に体育学科所属教員の活

動状況が低く、共同研究者を含めた学会・学術集会の発表者は体育学科教員(対象 30 名)の 17%と

いう結果であった。 〔点検・評価(長所と問題点)〕

1) 目標:国内外における活発な学会活動を通して、研究活動の向上を図る。 2) 評価の視点及び項目

学部の教員は、国内外の学会において、顕著な活動を行なっているか。 3) 評価 先に示された体育学部教員の論文等研究成果の発表状況と同様に、国内外の学会での活動状況は良

いものではない。しかしながら、先に述べた論文等研究成果の発表状況と同様に、運動クラブ指導者

の問題がそこには存在する。さらに、体育・スポーツの領域の多くの学会大会が夏から秋に開催され、

その期間は運動クラブのシーズンと重なっているという現状がある。例えば体育・スポーツ研究にお

いて最大の学会、日本体育学会の学会大会は毎年、体育の日を中心に開催され、それは球技系の運動

クラブの公式リーグ戦試合日と重なる。学会において発表を試みようとすれば試合の指導ができず、

また試合の指導を志せば学会における発表が困難となる。また先の論文等研究成果の発表状況の問題

点で述べたように、指導実践の成果における個別事例は体育・スポーツの領域の多くの学会では発表

困難であるという現状がある。

〔将来の改善に向けた方策〕 将来の改善に向けた方策は、指導実践の成果における個別事例の発表の場を自ら開拓することであ

ろう。種目毎の指導者講習会、有志による指導法の研究会、体育学部内の指導者のミーティングなど、

従来行われている集会を、学会・学術集会として認められるような場として変革していくことが求め

られる。また同時に大学も、ある条件を満たした場合、これらの集会を、指導実践の成果における個

別事例の発表の場であり、研究成果の発表の場であると認めることが必要である。

1286

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第 7 章 体育学部

③ 体育学部として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目No.166) 〔現状〕

2002 年 1 月に東海大学ハワイパシフィックセンターにおいて第 1 回環太平洋レジャー教育会議が

開催され、体育学部教員もこれに参画した。さらに、体育学部教員が中心となり「レジャー(ゆとり)

サービスシステムの構築に関する研究」が、東海大学総合研究機構プロジェクト研究として 2002 年

度よりスタートしている。 このように、従来の体育(身体教育)、スポーツという領域を含みながらもそれを超えた領域(スポー

ツ&レジャー)を対象とした研究活動が始まりつつある。この領域の研究は他の体育・スポーツ研究

機関ではほとんど行われておらず、本学体育学部として特筆すべき研究分野での研究活動といえよう。 〔点検・評価(長所と問題点)〕

1) 目標:学部として特筆すべき研究活動を促進する。 2) 評価の視点及び項目

学部として特筆すべき研究活動、研究成果、学術賞の受賞をあげているか。 3) 評価 これらの研究活動は始まったばかりであり、現時点ではその結果を評価することはできない。しか

しながら、このような新しい研究領域を開拓したことは十分に評価できる点である。さらに、現在体

育学部では、スポーツ&レジャー・マネジメント学科新設の計画が進行中であり、この新学科を中心

に「スポーツ&レジャー」という新たな概念の研究、啓蒙、教育が図られていくであろう。 問題点としては、新たなる研究領域であるが故に、その概念的な枠組み、研究の方法論等、検討す

べき事項が多々ある点である。早急に整理がつく問題でなく、ひとつひとつ丁寧に検討を進める必要

がある。

〔将来の改善に向けた方策〕 将来的にこの研究分野は、現在構想中の大学院体育学研究科博士課程における研究、教育の内容と

結び付けながら展開していく方策が必要となろう。 スポーツ実践と研究がリンクする体制作りによって、人間生活や競技活動に役立つ研究を推進する

ことが必要である。

1287

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第 7 章 理学部

〔理学部〕

1. 研究活動 (1) 研究活動

論文等研究成果の発表状況(項目№164)① 〔現状〕 〔理学部〕

1) 東海大学理学部紀要について 東海大学理学部紀要〔PROCEEDINGS OF THE SCHOOL OF SCIENCE OF TOKAI

UNIVERSITY〕には、理学部における優れた学術研究論文が発表されている。この紀要は国内の主

要大学・研究機関に 204 部、国外には 409 部送付されていて、極めて高い評価を受けている。紀要編

集委員会は理学部長が委員長となり各分野における各学科からの紀要委員によって構成され、投稿論

文には第一線の研究者による厳格なる査読が行われている。投稿論文の締め切りは通常 9月末であり、

査読と編集員会での検討を経て、出版されるのは年度末、すなわち翌年の 3 月末である。過去 5 年間

の各学科及び各年度の論文数は次のようである。 1997 年度 1998 年度 1999 年度 2000 年度 2001 年度 各学科

数学 1 1 1 1 1 5

情報数理 0 2 2 0 3 7

物理 6 9 8 1 1 25

化学 2 4 2 5 2 15

基礎教育 0 1 0 2 0 3

各年度 9 17 13 9 7 55

この結果をグラフとして示したのが次の 2 つである。学科としてみるならば物理学科が 25 編と最も

多く、次は化学科の 15 編である。年度で見るならば 1998 年度が 17 編と最も多い。この理由は不明

であるが、一つの到達可能年度単位論文数とみなせる。物理学科の論文数が多いのは明らかに物理学

科の活発なる研究活動を反映しているのであるが、論文数だけで研究活動を判定することは勿論不可

能であり、それゆえ他学科の研究活動が不活発ということはいえないであろう。 昨今、内外を問わず学会誌の中にはレベルの低い査読、編集委員会の恣意的な判断等により真の学

術的価値をもつ論文を不掲載にするものが多々見受けられる。これは学問の健全なる発展を阻害し、

研究者の意欲を喪失させる元凶となりうる。その対策としては本学理学部紀要のように独自の発表誌

を有することが最も有効である。その意味でも、本学理学部紀要の存在意義と、そこに多くの論文を

発表してきた理学部教員の研究活動は特筆すべきものである。 今後の課題としては、さらに多くの理学部教員が優れた研究論文を理学部紀要に発表するよう何ら

かの奨励措置をとることも一つの方法であるが、何よりもまず、現在の高いアカデミックなレベルを

保ちつつ、この優れた理学部紀要を維持発展させてゆくことが最大の課題であろう。

1288

Page 17: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 理学部

0

5

10

15

20

25

30

数学 情報数理 物理 化学 基礎教育

各学科紀要論文数〔1997-2001 年度〕

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

1997年度 1998年度 1999年度 2000年度 2001年度

年度毎紀要論文数〔1997-2001 年度〕

2) 学会誌等における研究論文の発表について 理学部紀要をふくめた学会誌等における研究論文の発表を見ると、本学部の中には活発に一流の学

会誌に優れた研究論文を多数発表している教員がいる。これらの教員は、国際会議、国内会議、国際

研究会、国内研究会、学会等での発表、招待講演等も活発である。 次に各学科および基礎教育研究室に関する論文等研究成果の発表状況について述べる。 〔数学科〕 数学科の、過去 5 年間(1997 年度~2001 年度)における論文等研究成果の発表状況は下の表の通

りである。

期間

著書

単独

(共同)

学術論文

単独

(共同)

翻訳

単独

(共同)

学会記録

単独

(共同)

口頭発表

単独

(共同)

その他文筆

単独

(共同)

小計

単独

(共同)

合計

0 4 0 6 0 1 11

1997 27 (6) (5) (0) (5) (0) (0) (16)

期間

著書

単独

(共同)

原著論文

単独

(共同)

論文総説

単独

(共同)

翻訳

単独

(共同)

学術書編集

学術書監修

単独

(共同)

学会・学術

集会

(記録あり)

単独

(共同)

学会・学術

集会

(記録なし)

単独

(共同)

その他文筆

単独

(共同)

小計

単独

(共同)

合計

0 10 2 0 0 5 1 1 191998 19

(0) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (0)

0 6 1 0 0 3 3 0 131999 22

(0) (6) (0) (1) (0) (2) (0) (0) (9)

2000 14 0 2 0 0 0 0 4 0 6

1289

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第 7 章 理学部

1290

(0) (7) (0) (0) (0) (1) (0) (0) (8)

0 5 0 0 0 8 2 0 152001

(2) (6) (0) (0) (0) (4) (1) (0) (13)28

表の数値は、「東海大学教育研究年報(研究業績目録)」に記載されている業績の数値に、同年報には

記載されていないが「教員活動情報データベースシステム」に登録されている業績の数値を足したも

のである。 〔情報数理学科〕

期間

著書

単独

(共同)

学術論

単独

(共同)

翻訳

単独

(共同)

学会記録

単独

(共同)

口頭発表

単独

(共同)

その他文筆

単独

(共同)

小計

単独

(共同)

合計

0 2 0 8 10 12 32 1997

(3) (4) (0) (9) (0) (0) (16)48

期間

著書

単独

(共同)

原著論

単独

(共同)

論文総

単独

(共同)

翻訳

単独

(共同)

学術書編集

学術書監修

単独

(共同)

学会・学術

集会

(記録あり)

単独

(共同)

学会・学術

集会

(記録なし)

単独

(共同)

その他文

単独

(共同)

小計

単独

(共同)

合計

0 9 0 0 0 9 3 0 211998

(0) (2) (0) (2) (0) (7) (3) (4) (18)39

0 4 0 0 0 8 2 0 141999

(0) (11) (0) (1) (0) (11) (1) (5) (29)43

0 6 0 0 0 5 3 1 152000

(1) (16) (0) (0) (0) (18) (3) (0) (38)53

0 2 0 0 0 2 6 1 112001

(1) (18) (0) (1) (0) (21) (5) (0) (46)57

情報数理学科の教員が 1997 年度から 2001 年度までに発表した学術論文の延べ数は 74 本である.ま

た Web 上のデータベースから一人の論文の延べ本数を見てみると 0 本 2 名 1 本 3 名 2 本 1 名 3 本 5 名 4 本 0 名 5 本以上 6 名

となっている。 〔物理学科〕 物理学科の研究活動は固体物理学、凝縮系物理学、統計物理学、レーザー物理学、プラズマ物理学、

宇宙物理学、分子生物物理学、素粒子物理学にわたっており、質の高い研究が行われている。研究成

果の発表は、内外の一流学会誌、国際会議、国内会議、学会等で活発に行われている。論文等による

研究成果の発表状況を見た場合、論文発表数は教員により差がある。

期間

著書

単独

(共同)

学術論文

単独

(共同)

翻訳

単独

(共同)

学会記録

単独

(共同)

口頭発表

単独

(共同)

その他文筆

単独

(共同)

小計

単独

(共同)

合計

1997 1 6 0 7 2 6 22 107

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第 7 章 理学部

1291

(0) (26) (0) (37) (22) (0) (85)

期間

著書

単独

(共同)

原著論文

単独

(共同)

論文総説

単独

(共同)

翻訳

単独

(共同)

学術書編集

学術書監修

単独

(共同)

学会・学術集会

(記録あり)

単独

(共同)

学会・学術集会

(記録なし)

単独

(共同)

その他文筆

単独

(共同)

小計

単独

(共同)

合計

0 2 0 0 0 2 0 0 41998

(0) (38) (0) (0) (0) (42) (36) (0) (116)120

0 2 1 0 0 8 1 0 121999

(1) (45) (0) (0) (1) (74) (19) (2) (142)154

0 1 0 0 0 14 1 0 162000

(0) (34) (2) (0) (0) (104) (2) (1) (143)159

0 4 1 0 0 12 2 1 202001

(2) (33) (0) (0) (0) (49) (2) (1) (87)107

〔化学科〕 理学部化学科の教員 16 名が 1997 年度から 2001 年度までの 5 年間に発表した著書、原著論文、紀

要、学会発表・その他の発表、その他の文筆の状況を次表に示した。

期間

著書

単独

(共同)

学術論

単独

(共同)

翻訳

単独

(共同)

学会記録

単独

(共同)

口頭発表

単独

(共同)

その他文筆

単独

(共同)

小計

単独

(共同)

合計

0 1 0 2 2 2 7 1997

(1) (12) (0) (27) (6) (0) (46)53

期間

著書

単独

(共同)

原著論

単独

(共同)

論文総

単独

(共同)

翻訳

単独

(共同)

学術書編集

学術書監修

単独

(共同)

学会・学術

集会

(記録あり)

単独

(共同)

学会・学術

集会

(記録なし)

単独

(共同)

その他文

単独

(共同)

小計

単独

(共同)

合計

0 3 0 0 0 3 1 0 71998

(1) (11) (0) (0) (0) (21) (0) (0) (33)40

0 5 0 0 0 7 14 3 291999

(2) (14) (1) (0) (0) (29) (0) (0) (46)75

1 2 0 0 0 9 21 7 402000

(1) (12) (0) (0) (0) (30) (1) (0) (44)84

0 4 0 0 0 18 17 2 412001

(2) (18) (0) (0) (0) (41) (0) (0) (61)102

〔基礎教育研究室〕 組織上の所属が異なる主任を除いた所属教員が1997年度から2001年度までに登録した業績は次表

の通りである。

期間

著書

単独

(共同)

学術論

単独

(共同)

翻訳

単独

(共同)

学会記録

単独

(共同)

口頭発表

単独

(共同)

その他文筆

単独

(共同)

小計

単独

(共同)

合計

0 0 0 0 0 0 0 1997

(0) (2) (0) (3) (0) (0) (5)5

Page 20: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 理学部

期間

著書

単独

(共同)

原著論

単独

(共同)

論文総

単独

(共同)

翻訳

単独

(共同)

学術書編集

学術書監修

単独

(共同)

学会・学術集

(記録あり)

単独

(共同)

学会・学術

集会

(記録なし)

単独

(共同)

その他文

単独

(共同)

小計

単独

(共同)

合計

0 0 0 0 0 0 0 1 11998 3

(0) (2) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (2)

0 2 0 0 0 1 1 0 41999 8

(0) (2) (0) (0) (0) (2) (0) (0) (4)

0 0 0 0 0 0 0 0 02000 0

(0) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (0)

0 1 0 0 0 0 0 0 12001 1

(0) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (0)

〔点検・評価(長所と問題点)〕 〔理学部〕 学部全体では、研究成果は平均的で普通である。しかし、第 7 章①-(1)-③に記載があるように、4学科各々に優れた研究成果の上がっている分野があり、この点は高く評価できる。 〔数学科〕 過去 5 年間の総論文数は 51 本である。過去 5 年間の教員の移動を考慮すると、過去 5 年間の数学

科教員数は、平均して 15.6 名である。よって、一人当たりの過去 5 年間の平均論文数は、3.3 本であ

る。数学の場合、研究分野にもよるが、毎年論文を発表するためには相当の研究能力と研鑚を要する。

5 年間に 4 本以上の論文発表を以って活発な研究活動が行われていると判断し、数学科全体の研究活

動は活発とまでは言えないが、ある程度の成果を得ていると評価する。 研究分野別に見ると、過去 5 年間の数学科在籍期間中に 4 本以上の論文数のある教員は、代数学系

で 2 名、幾何学系で 1 名、解析学系で 1 名、確率・統計系で 1 名、計算機数学系で 1 名いる。これら

6 名の教員は活発な研究活動をしているといえる。また、在籍期間が 5 年に満たない若手の教員は、

就任前の期間をふくめると過去 5 年間に活発な研究活動をしていて、今後の活躍が期待できる。 〔情報数理学科〕 一人あたりでは 4.4 本となり 5 年に 4 本を基準とするとそれを上回っていることになる。 〔物理学科〕 年度ごとに、各教員は業績報告を義務付けられており、論文に関しては発表誌の審査の有無、共著

者、等のデータも含めて学科主任の内容確認を経て、Web 上に公開される。論文に関する審査基準は

主に発表学会誌、発表論文数に基づいている。発表論文数でみるならば、約半数の教員がレベルの高

い学会誌、例えば Physical Reviews 誌等、に年間平均 2 編程度以上の論文を発表しており、一応評

価できる水準に見える。しかし、中には多数の共著者との共著論文も含まれ、論文数のみで研究活動

の活性度を判定することは困難と思われる。基礎的な研究を単独で進めている研究者の論文発表数と、

十数人から数十人もの共同研究者と研究を行っている研究者の論文発表数とを同列に比較することは

間違いであろう。また、大学における教育活動のレベルを維持し、常に新しい進展を取り入れてゆく

ために大学教員の研究活動は不可欠であるとの認識が浸透しているとは思えない。 〔化学科〕 次に示す項目と視点にしたがって、研究論文の発表を活発化させることを目標に自己点検・自己評

価を行った。 学会誌に積極的に研究成果を発表することにより、本学科の研究レベルを維持すると共に成果を教

1292

Page 21: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 理学部

育に活かすことを目標とする。 [項目および評価の視点] 項目:研究の活性度 評価の視点:研究論文は審査が設けられていることから、論文の数を見ることで活性度を見ることが

できるものとする。 [評価基準]:紀要を含めて研究者は少なくても 1 年 1 編の論文を書き、その 2 倍の 1 年 2 回の口頭

発表を行うことを基準とし、基準の 1/2 以下であれば非常に悪い、4/5 以下であればかなり悪い、

同じであれば平均的で普通、紀要を含めず 1 年 1 編であればかなりよい、紀要を含めず 5 年 6 編であ

れば非常によいとする。5 年 7 編は国立大学を含めた全国平均の値である(慶伊富長編大学評価の研

究、東京大学出版会、1984)。 [評価] 理学部化学科の 16 名の教員が発表した論文をすべて含めると 82 編となり、これを 16 名で割ると

5 となり、紀要を含めて平均一年に 1 編の論文を書いたこととなる。評価基準に照らして、評価を行

うと平均的で普通となる。ここでは質を問わず、量から判断したが、今後は質そのものを問う必要が

あると考える。 〔基礎教育研究室〕 5 年間の全論文数は 9 報であり、教員一人当たり年 0.5 報と少ない。研究対象分野、所属教員の専門

分野が異なる、教材開発等業績に現れないものも多い等の要因もあるが他の学科に比べて研究が活発

に行われているとは言い難い。 〔将来の改善に向けた方策〕 〔理学部〕 研究業績を厳正に評価し研究レベルの向上に努める。学部の教育方針である「問題発見・解決型人

材の育成」のためには、教員の研究レベルの向上が不可欠であることを周知徹底させる。 〔数学科〕 5 年間の一人当たりの平均論文数 4 本以上を目標に研究活動を続ける。談話会を活発に開催するとと

もに、数学科内で小研究集会を随時設け、完成途上の研究をも発表できるようにし、学科全体の研究

環境を向上させる。また、論文の件数のみではなく、質を判定する基準を、数学会の動向を見つつ教

員の合意の下に定める必要がある。 〔情報数理学科〕 数学系の研究者は論文が出しにくい傾向にあるが、比較的採択されやすい紀要等の雑誌や外国での

Proceeding 等に発表することを勧めている。 〔物理学科〕 発表論文に関する現在の評価基準で改善すべき点は共著者数をどのように考慮するかであろう。数

名もしくは 1名の著者による論文と数十人の共著者による論文をどのような重みをつけて評価するか

は評価の公正さを考えた場合、早急に対処すべき問題であるといえる。簡単かつ明瞭なる方策の一つ

は論文数に共著者数の逆数を乗じた有効論文数を用いることであろう。この点については未だ学科と

しての意見の一致はなく今後の最重要課題である。 〔化学科〕 評価結果は普通との判定であったが、紀要を除いた一般の学会誌に年間 1 編、口頭発表 2 件のかな

りよいを目標とすべきである。 〔基礎教育研究室〕 研究活性化のため、学科からの卒業研究生の受け入れ、他の学科、学部、研究所等との共同研究等

を推進する。

1293

Page 22: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 理学部

国内外の学会での活動状況(項目№165)② 〔現状〕 〔理学部〕 過去 5 年間(1997 年度~2001 年度)の国内外の学会での活動状況は以下の通りである。物理学科、

化学科では活発な学会・学術集会活動が行われている。 〔数学科〕 過去 5 年間(1997 年度~2001 年度)における数学科教員の学会・学術集会発表件数は以下の通り

である。 1997 年 1998 年 1999 年 2000 年 2001 年 記録あり 11(5) 5(4) 5(2) 1(1) 12(2)

0 1 3 記録なし 3(1) 4(2) ( )内は国際学会での発表

〔情報数理学科〕 情報数理学科の教員が 1997 年度から 2001 年度までに行った学会・学術集会での発表件数は、「教

員活動情報データベースシステム」によれば合計で 164 件であり,また一人の発表件数を見ると 0 回 3 名 1,2 回 5 名 3,4 回 1 名 5,6 回 0 名 7 回以上 8 名 となっている. 〔物理学科〕 物理学科の研究活動は分子生物物理学、固体物理学、凝縮系物理学、統計物理学、レーザー物理学、

プラズマ物理学、宇宙物理学、素粒子物理学にわたっており、質の高い研究が行われている。研究成

果の発表は、内外の一流学会誌、国際会議、国内会議、学会等で活発に行われている。国内外の学会

での活動状況を見た場合、非常に活発である。教員の国内外の学会への参加経費は通常教員個人の大

きな負担となるが、A 計画、B 計画により大学からの援助を受けることができる。この A・B 計画が

教員の活発なる国内外学会での発表の重要な原動力となっているといえる。物理学科で A 計画の補助

を受けた教員は 1997 年度~2001 年度に 7 名、B 計画の補助を受けた教員は同じ期間で 3 名である。 〔化学科〕 理学部化学科の教員 16 名が 1997 年度から 2001 年度までの 5 年間に行った学会発表の総数は、記

録のあるものが 187 記録のないものは 62 でありその内訳は次表に示す。 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年

記録あり 29(2) 24(4) 36(1) 39(7) 59(7)

記録なし 8 1 14 22 17

( )内は国際学会での発表

〔基礎教育研究室〕 1997 年度から 2001 年度までに所属教員が国内で発表した件数は 7 件である。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 〔理学部〕 物理学科と化学科の国内外の学会・学術集会での活動状況は十分満足できるレベルであるといえる。

数学科、情報数理学科の学会・学術集会での発表件数は、教員間にかなりの差がある。数学科・情報

数理学科・基礎教育研究室については、学会・学術集会で研究成果を積極的に発表するよう全教員に

周知徹底させる必要がある。

1294

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第 7 章 理学部

〔数学科〕 教員一人当たり平均して 5 年間に 3 件の発表件数である。5 年間で 4 件以上の発表を、活発な学会・

学術集会活動とすれば、ある程度の活動が行われていると評価できるが、教員間の差が大きい。過去

5 年間で 4 件以上の発表回数のある教員は 4 名(解析学系、幾何学系、確率・統計系、計算機数学系

でそれぞれ 1 名)であり、これらの教員で全体の発表件数の 73 %を占める。上に挙げた解析学系、

確率・統計系、計算機数学系の教員は、国際学会でも活発に発表している。 〔情報数理学科〕 一人あたりの発表回数は 5 年で 9 件であり、他分野に比べてかなり少ない。 〔物理学科〕 年度ごとに、各教員は業績報告を義務付けられており、国内外の学会における発表に関しても学科

主任の内容確認を経て、Web 上に公開される。学会発表の評価基準は主に、招待講演か一般講演か、

正式のプロシーディングに発表内容が公表されているか、また学会運営に関して、例えば国際的な学

会の組織委員等の寄与をしているかどうかは評価の基準である。 国内外の学会での活動を発表に関してみるならば十分満足ゆくレベルであるといえる。しかし、よ

り積極的な学会活動として、国際会議の組織委員として実際の運営に参加すること、あるいは国際会

議や国際研究会の開催といったレベルでの活動は十分とはいえない。今後の課題として、より積極的

に「情報の発信源」としての役割を担う方向も目指すべきである。 〔化学科〕 学会活動としての 5 年間の総数は 249 件で、化学科の年平均学会発表数は、3.1 であり活動状況と

しては良いといえる。またその内国際学会における発表数は 1997 年 2 件、1998 年 4 件、1999 年 1件、2000 年 7 件、2001 年 7 件であり年々国際学会での発表数も増加し良いといえる。 〔基礎教育研究室〕 他の学科の状況と比べて、発表件数が少なく、積極的な成果発表が望まれる。 〔将来の改善に向けた方策〕 〔理学部〕 今後の課題としては本学理学部あるいは学科が主催する、あるいは共催する会議・研究会であろう。

できれば国際会議あるいは国際研究会といった国際性のあるものが望ましい。それは東海大学という

国際色豊かな大学の特色を最大限に生かすことになるであろうし、情報の国際的な発信源として東海

大学の学生にも夢と希望を与えることになろう。東海大学には望星丸という最新鋭の外洋船があり、

ハワイやデンマーク等にも大学施設を有する。このような恵まれた条件を十分に生かすことが今後の

最大課題であろう。大学が独自に外洋船を有することは全世界的にも稀であり、例えば外洋上での国

際研究会などは参加者にとっても貴重な体験となるであろうし、東海大学の名を世界に広める良い機

会ともなろう。 〔数学科〕 教員は、セミナー、学会、研究集会に積極的に参加し、研究発表・情報収集を行う。

数学科主催の研究集会を活発に開催し、情報発信の場とする。 〔情報数理学科〕 学会だけでなく研究集会、談話会等での発表を極力勧めている。 〔物理学科〕 本学科の教員が中心となって国際的な研究会あるいは会議を開催するような積極性のある学会活動

が望ましい。幸い本学には研究会や会議を開催するための資金援助のシステムが存在し、さらに山中

湖セミナーハウスのような小規模国際会議に最適な最新機器を備えた施設も完備している。教員はこ

のような恵まれた環境を積極的に利用すべきである。

1295

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第 7 章 理学部

〔化学科〕 学会活動全体としては、良いという評価結果であるので、今後もこの程度の学会活動を継続すると

共に、国際学会を含めより質の高い学会・シンポジウムでの発表を行うよう努める。 〔基礎教育研究室〕 業績の発表を奨励するとともに、他の学科、学部、研究所等との共同研究を推進するなどして、活

動の活性化を図る。

該当学部、センター、研究所としての特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166)③ 〔現状〕 〔理学部〕 各学科・基礎教育研究室で、特筆すべき研究分野での研究活動が行われている。中でも、物理学科

と化学科が突出している。 〔数学科〕 過去 5 年間の特筆すべき研究活動状況を報告する。 幾何学分野では、第 44 回全日本トポロジーシンポジウムで招待講演(1 件)を行って いる。解析

学分野では、「応用解析」研究会例会(第 307 回)で特別講演(1 件)を行っている。確率統計分野で

は活発な研究を続けており、International Federation of Operational Research Societies(第 15 回)

にて招待講演(1 件)を行っている。解析学、確率統計学のシンポジウム(発展方程式、西東京統計

研究会)開催にあたっては東海大学総合研究機構の援助を得ている。 〔情報数理学科〕 過去 5 年間の特筆すべき研究活動状況を報告する。 各分野とも優れた業績をあげているが、特に統計学分野では The Second World Conference of the International Association for Statistical Computing にて招待講演(1 件)を行っている。西東京統

計研究会のシンポジウム開催は東海大学総合研究機構の援助を得ている。グラフ理論に於いても、生

態系に対する離散数学的アプローチをテーマにユニークな研究成果を得ている。 〔物理学科〕 理論では凝縮系における場の量子論の研究が内外で高い評価を受けており、実験では分子生物物理

学、レーザー物理学、プラズマ物理学、宇宙物理学が活発な研究活動を行っている。とくに宇宙物理

学では朝日賞の受賞(共同受賞)、分子生物物理学では米国コンクリート学会論文賞の受賞(共同受賞)、

松前賞の受賞などがある。これら理論 1 分野、実験 4 分野が特筆すべき研究分野である。 〔化学科〕 理学部化学科の 5 年間における学会からの表彰は、日本分析化学会より、1997 年にイオンクロマ

トグラフィー奨励賞授賞一名である。授業改善・学生による授業評価に関する特別講演・招待講演が

2000 年度 20 回、1999 年度 13 回である。 〔基礎教育研究室〕 現在、CAI、e-learning 等を用いた教育方法に関する研究を中心に研究活動を行っているが、学会

からの受賞等はない。ただし、当該研究分野において、委員委嘱、原稿執筆、講演等が依頼されるよ

うになってきている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 〔理学部〕 物理学科、化学科の特筆すべき研究分野での活動状況は高く評価できる。数学科、情報数理学科で

は各種賞の受賞はないものの、いくつかの分野で特筆すべき研究活動が行われていて十分評価に値す

る。 〔数学科〕 数学の分野にはもともと各種賞は少なく、目立たないが、解析学、代数学、幾何学、確率統計学の

1296

Page 25: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 理学部

活躍が著しい。 〔情報数理学科〕 情報数理の分野には各種賞は少なく、目立たないが、グラフ理論、統計学分野の活躍が著しい。 〔物理学科〕 学会賞等の受賞、招待講演数、大学院集中講義数、主要論文の引用頻度、関連学会誌の審査委員、

学内外の専門家の意見等によりある程度の自己評価は可能であるが客観的な基準は困難である。例え

ば学会賞についても種々のものがあり、学会や会議の招待講演についても様々なレベルのものがあり

現時点ではそれらの客観的な評価はできていない。 限られた設備、時間という制約を考慮するならば、本学科の規模でこれだけの特筆すべき研究分野

があることは高く評価できる。しかし、現在の人的資源をみるならば、より多くの研究分野で成果を

期待できると思われる。とくに若い教員のより活発な研究活動に期待したい。 〔化学科〕 次に示す項目と視点にしたがって、研究を活発化させることを目標に自己点検・自己評価を行った。 特定分野の研究成果を出すことにより、学科全体の研究活動を活性化し、研究・教育活動が活発に

行われることを目標とする。 〔評価の視点および項目〕 項目:学会からの表彰、特別講演・招待講演 評価の視点:学会からの表彰、特別講演・招待講演は業績が認められた者に与えられるので、表彰や

特別講演・招待講演数を見ることにより、特定分野の研究活動が活性化していると見ることを評価の

視点とする。 〔評価基準〕:1000 名規模の学会を想定すれば、学会からの表彰の確率は 0.5%以下と見ることが妥当

であるので、表彰がなくて普通、学会からの表彰が 5 年間の間に一件でもあれば、かなりよい、2 件

以上であれば非常によいとする。特別講演や招待講演も確率は 1%以下と見ることが妥当であるので、

学会の表彰と同じ基準とする。 〔評価〕 現状で報告したように実績は学会からの表彰が一件、特別講演・招待講演 33 件である。学会から

の表彰ではかなりよい、特別講演・招待講演は 33 件であり、非常によいと判断できる。特別講演・

招待講演は全てが学会やシンポジウムではないが充分な数であると判断できる。 〔基礎教育研究室〕 研究活動が認知される方向に進んではいるが、活発とはいい難い。 〔将来の改善に向けた方策〕 〔理学部〕 研究業績に対する評価を厳正に行い、研究活動の活発な研究者に対する報奨を積極的に導入する。 〔数学科〕 数学は若い教員が最も先進的な研究を行っている。彼らに活発な研究活動を展開させるためには、研

究業績に対する厳正な評価とそれに見合う報奨を積極的に導入すべきであると思われる。 〔情報数理学科〕 情報数理の分野は若い教員の活躍の場が広いのだから、彼らの奮起が望まれる。また、研究活動の

活発な研究者に対する報奨を積極的に導入すべきであると思われる。 〔物理学科〕 潜在能力を秘めた若い教員に活発な研究活動を展開させるためには研究業績に対する厳正なる評価

とそれに見合う報奨を積極的に導入すべきと思われる。一方、研究活動に不熱心なる教員への対策も

必要である。 〔化学科〕 学会からの表彰はかなり困難なことであるので、今後少なくても 5 年間に一件を確保すれば、充分

1297

Page 26: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 理学部

である。特別講演・招待講演については、現状を維持すれば充分である。 〔基礎教育研究室〕 報奨の導入等を含め、研究の活性化を図る必要がある。

1298

Page 27: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 電子情報学部

【電子情報学部】 1. 学部における研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目NO.164) [現状] 東海大学教員の研究活動(論文等研究成果の発表)は東海大学教育研究年報および、ホームページ上

に置かれたキャンパスライフエンジン(教員活動情報システム)において公表されている。この資料に

基づき算出した電子情報学部教員の過去 3年間における論文等研究成果の発表状況は以下の通りであ

る。 1999 年度 著作・著書・学術論文等:254 件 学会・学術集会:361 件

2000 年度 著作・著書・学術論文等:193 件 学会・学術集会:314 件

2001 年度 著作・著書・学術論文等:178 件 学会・学術集会:311 件

2002 年 7 月現在キャンパスライフエンジンに登録されている電子情報学部の教員数は 94 名であり、

教員一人当たり一年に、“著作・著書・学術論文”は 2.2 件、“学会・学術集会”は 3.5 件となる。な

お、教員一人当たりの過去 3 年間における“著作・著書・学術論文”および“学会・学術集会”の総

計は、最高 108 件、最低 0 件であり、この値が 10 以上の教員数は 45 人である。 また、学術論文はその大部分が内外の著名な学会または東海大学紀要に発表されており、査読を有

している。また学会・学術集会での発表においても、多くは著名な学会の全国大会、シンポジウム等

で行われたものである。 東海大学では 1997 年より教員の自己申告に基づく“大学院研究指導教員資格再審査制度”が導入

されている。再審査は、博士課程後期および博士課程前期の大学院研究指導教員資格を有する専任教

員を対象として実施される。再審査の結果、その業績が特に優れていると判定された教員には奨励措

置が適用される。また大学院研究指導教員として十分な業績を挙げていないと判定された教員には大

学院運営委員長から本人宛に警告が出される。さらに次の再審査においても指導教員としての十分な

業績を挙げていないと判定された場合には大学院研究指導教員資格を喪失することになる。 [点検・評価(長所と問題点)] 目標の実現に向けた取り組みを評価の視点および項目を設定して評価を行った。以下に示す。 1) 目標:電子情報学部教員個々の研究活動(論文等研究成果の発表)の活性化を目指すとともに、

その研究成果を広く社会的に認知し得るものとする。また研究業績の不活発な教員に対しては

適切な方策により活性化を促し、電子情報学部全体としての研究活動の活性化を図る。 2) 評価の視点および項目

a . 電子情報学部教員の研究活動は活発に行われているか。 b . 研究成果は社会的に認知され得るものであるか。 c . 研究業績が不活発な教員に対して、活性化を促す方策がとられているか。

3) 評価 a . [現状]において述べたように、電子情報学部教員の過去 3 年間に渡る研究業績は“著作・著

書・学術論文等”については総計 625 件、“学会・学術集会等における発表”では総計 986 件

であり、教員一人当たりにすると一年平均として著作・著書・学術論文”は 2.2 件、“学会・学

術集会”は 3.5 件となる。この数値を見る限り教員の研究活動は活発であると考えることがで

きる。しかしながら過去 3 年間における発表件数が少ない教員も存在し、研究活動が活発な教

員とそうでない教員とに分化している様子が見られる。従って、電子情報学部全体としての研

1299

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第 7 章 電子情報学部

究活動の活性化を図るという目標を達成するためには、研究活動が不活発な教員に対してその

活性化を促すことが必要であると考える。 b . 電子情報学部の教員により発表された“著作・著書・学術論文”の大部分は“学術論文”で

ある。これらの“学術論文”は査読を有し内外の著名な学会の論文誌に公表されている。また

“学会・学術集会における発表”においても、それらの多くは各教員の専門分野に対する学会

で行われており、同じ分野の研究を行う研究者との間で意見の交換が行われていると考えられ

る。従って、発表された研究成果は内外の研究者に認知されている物と考えられ、その意味に

おいて研究成果は社会的に認知され得るものであると判断する。 c . 大学院研究指導教員の資格を有する教員に対しては“資格再審査制度”があり、一定期間毎

に教員の研究活動が十分であるかどうか判定がなされる。この制度により研究活動な活発な教

員については奨励措置がとられ、また不活発な教員については警告により研究活動の活性化が

促される。その意味において“資格再審査制度”は教員の研究活動の活性化を促す方策である

と言うことができる。しかしながら、“資格再審査制度”は大学院研究指導教員の資格を有す

る教員に対してのものであり、その他の資格を有しない教員に対しては適用されないという問

題点がある。 [将来の改善に向けた方策] 電子情報学部全体としての研究活動の活性化を図るためには、研究活動が不活発な教員に対してそ

の活性化を促す必要がある。具体的には大学院指導教員の資格を有しない教員に対しても一定期間毎

の研究教育業績の自己申告による評価制度を実施し、優れた業績を挙げた教員に対して奨励措置をと

るといった制度を設ける必要があると考える。 ② 国内外での学会での活動状況(項目NO.165) [現状] 東海大学教員の国内外の学会での活動状況は、東海大学教育研究年報および、イントラネット上に

置かれたキャンパスライフエンジン(教員活動情報システム)において公表されている。この資料に基

づき算出した電子情報学部教員の過去 3年間における学会または学術集会における発表件数は以下の

通りである。 1999 年度:361 件、 2000 年度:314 件、 2001 年度:311 件、 国内外の学会における委員等に代表される学会運営の件数については 1999 年度:33 件、 2000 年度:27 件、 2001 年度:43 件

となる。ここで学会運営に関わっている教員数は 27 名であり、他の 67 名は過去 3 年間において学会

運営には携わっていないことになる。 学会発表等による海外出張件数は

1999 年度:89 件、 2000 年度:98 件 となっている。ここで上記 2 年間に海外出張を行った教員数は 52 名であり、他の 42 名は 1999 年度

および 2000 年度には海外での学会発表を行っていない。 なお、東海大学では“東海大学国内・外研究派遣計画”の公募を毎年実施しており、学会出張を含

む国内外における研究の助成を行っている。 [点検・評価(長所と問題点)] 目標の実現に向けた取り組みを評価の視点および項目を設定して評価を行った。以下に示す。 1) 目標:電子情報学部教員の国内外における学会活動の活性化を目指すとともに、その活動状況

を広く社会的に認知し得るものとする。 2) 評価の視点および項目

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第 7 章 電子情報学部

a . 電子情報学部教員の学会発表は活発に行われているか。 b . 電子情報学部教員の学会運営への参加は積極的に行われているか。 c . 電子情報学部教員の海外における学会活動は活発に行われているか。

3) 評価 a . 過去 3 年間における電子情報学部教員の学会または学術集会による発表件数は総計で 986件である。これは教員一人当たり一年間におよそ 3.5 件の学会発表を行っていることになる。

この数値を見る限り教員の学会発表は活発であると考えることができる。しかしながら発表件

数が少ない教員も存在し、学会発表が活発な教員とそうでない教員とに分化している様子が見

られる。 b . 過去 3 年間における国内外の学会における学会運営に電子情報学部教員が関わっている件

数は総計で 103 件である。学会発表の場合には発表件数の多少を問わなければ全ての教員が何

らかの形で行っているのに対して、学会運営の場合には関わっている教員とそうでない教員が

はっきりと分化している。すなわちある特定の教員に学会運営件数が集中し、他の教員は全く

これに関わっていない。この視点から評価した場合電子情報学部教員の多くが学会運営に貢献

しているとは言い難い。 c . 1999 年度および 2000 年度の 2 年間における電子情報学部教員の海外出張件数は 187 件で

ある。その多くは海外で開かれた学会における発表を目的とする物であるが、海外の研究機関

との共同研究や海外における技術指導も含まれている。海外における発表件数は国内における

学会発表件数に対して少なく、また発表を行っている教員数も多いわけではない。今後海外に

おける学会活動を促すための何らかの方策が必要であると考えられる。 [将来の改善に向けた方策] 電子情報学部教員の国内外における学会活動の活性化という目標を達成するためには以下の改善

が必要であると考える。 1) 発表件数が少ない教員の活性化を促す。 2) 多くの教員が学会運営に積極的に関わる。 3) 教員に対して海外における学会活動の活性化を促す。 1)および 2)については一定期間毎の学会活動に関する自己申告による評価制度を実施し、活発に学

会活動を行った教員に対して奨励措置をとるといった制度を設ける等の方策が必要であると考える。

また 3)については海外での学会活動には少なからぬ渡航費用が掛かるといった現実的な問題点があ

る。このため全ての教員の海外における学会活動の活性化を促すことは容易ではないと思われる。現

在東海大学では“東海大学国内・外研究派遣計画(A 計画)”があり、海外における学会発表等の助成

を行っているが、採択される件数はそれほど多くはない。この採択件数を増加させる等、何らかの形

で海外における学会活動を助成する方策が今後必要とされると考えられる。 ③ 特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目NO.166) [現状] 工学部の改組に伴い、工学部の電気系、応用物理系、経営工学系が新たに電子情報学部として 2001

年度から発足した。従って、従来の電気系、応用物理系、経営系の研究分野は、そのまま電子情報学

部へ引き継がれており、その研究分野も基礎研究分野から応用研究分野まで多岐にわたっている。研

究活動の指標となる教員の業績は、「東海大学教育研究年報」に研究活動状況に関わるすべてを網羅し

た形で毎年度刊行されている。 特筆すべき研究課題としては、文部科学省の科学研究費補助金取得研究課題が一応の目安と考えら

れる。科研費の採択件数は、1999 年度は、工学部 33 件(内電子情報学部関連 9 件)、2000 年度は、

工学部 33 件(内電子情報学部関連 10 件)、2001 年度は、電子情報学部関連 9 件である。

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第 7 章 電子情報学部

表彰・受賞は、東海大学教育研究年報に公表されており、1999 年度は、工学部 14 件(内電子情報

学部関連 3 件で、国内 2 件、外国 1 件)、2000 年度は、工学部 19 件(内電子情報学部関連 4 件で、

国内 3 件、外国 1 件)、2001 年度は、電子情報学部関連 3 件(国内 1 件、外国 2 件)である。 [点検・評価(長所と問題点)] 研究活動の指標となる教員の論文発表は、「東海大学教育研究年報」に見られるように.特に問題

はなく活発である。しかし、文部科学省の科学研究費補助金採択件数は 9 件程度であり、十分とはい

えない。 [将来の改善に向けた方策] 電子情報学部として 2001 年度から発足したのに伴い、10 数名の新しい教員が加わったことから、

今後、より一層科研費の採択件数が増加するものと期待できる。また、公的資金・民間資金の導入は、

教員の研究課題と密接な関連があることから、社会から要請される受託研究課題を積極的に推し進め

る必要がある。

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第 7 章 工学部

【工学部】 1. 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目NO.164) 〔生命化学科〕

「現状」: Proc., Natl. Acad. Sci. USA, J. Biol. Chem., Angew. Chem. Int. Ed. Engl, J. Am. Chem. Soc.,

FEBS Lett., Tetrahedron Lett. などインパクトファクターの高い学術雑誌への成果の発表をつづけ

ており、最近は学科構成教員全体で年間 15~23 報の実績がある。

「点検・評価」 活発な学術研究活動を行っていると評価できる。また、大学院担当教員の資格再審査制度により、

学術研究業績の不活発な教員に活性化を促すことができる。

「将来の改善・改革に向けた方策」 研究者としての責任である研究成果の発表は現状を維持し、さらに学部教育についての教育効果な

どの研究を推進する。 〔応用化学科〕

「現状」 研究活動は、研究活動として、国内外の研究発表、論文執筆、著書執筆等を中心に行っており、外

部研究機関、起業との共同研究、委託研究も行っている。その具体的な内容は、各教員に一任してい

る。 「点検・評価」 研究活動に関する点検・評価は、東海大学教育研究年報によって毎年報告され、公表されている。

また、その評価方法は、現在、学部並びに大学院授業や学生指導などの教育業務も多く、研究活動と

教育活動の両立をふまえて、学部評価委員会によって検討されている。

「将来の改善・改革に向けた方策」 社会的貢献を含めた、産学協同の研究活動を展開し、推進していきたいと考えている。そのために

も、より高度な研究レベルの向上に向けて、研究設備や施設の充実を図る必要がある。 〔応用理学科光工学専攻〕

「現状」 研究室によっては、多くの大学院生を指導しており、活発に研究が行われている。その結果、国内

外の学会への発表、権威有る論文等への研究成果の発表は極めて活発に行われている。 「点検・評価」 教員活動情報システムによる、過去 10 年間の研究活動状況より、活発な研究活動が行われており、

評価できる。しかし幾つかの問題点がある。大学院生の研究室間の人員数のアンバランスが大きく、

研究アウトプットの差に関連している。博士課程へ進学する学生が極めて少なく、より高度な研究活

動の維持に問題がある。

「将来の改善・改革に向けた方策」 良質な大学院生の確保が、今後の大学の位置づけを左右する重要な課題である。それには、授業料

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第 7 章 工学部

に対する助成措置が重要と思われる。是非検討してほしい。国内外の研究院の受け入れの機会を増す

ことも、研究の活性化に重要である。 〔応用理学科エネルギー工学専攻〕

「現状」 関連研究分野の学会誌並びに主要雑誌に毎年多数の研究・技術論文が発表され、高い評価を得てい

る。 「点検・評価」 「教員活動情報システム」による過去 10 年間の研究活動状況から、活発な展開が持続的に行われ

ており評価できる。 「将来の改善・改革に向けた方策」 特になし。

〔材料科学科〕

「現状」 日本金属学会、日本鉄鋼協会、資源・素材学会など権威ある国内の主要学会のほか、海外の権威あ

る学会にも頻繁に参加し、きわめて活発な研究成果の発表の活動が展開されている。研究分野によっ

て発表論文数に多寡があるのは致し方ないが、総体的には非常に高いレベルである。

「点検・評価」 総体的には非常に高いレベルである。問題なし。

「将来の改善・改革に向けた方策」 現在の活発な研究活動をこのまま推進すべきである。

〔建築学科〕

「現状」 全国的な学会及び国際会議において、大学院生等とともに、活発な論文発表が行われている。また、

建築設計活動においても、設計競技への参加が各研究室単位で積極的に取り組まれている。教員個人

においても、随時研究成果を審査付き論文として発表している。 「点検・評価」 教員自身の研究成果の向上とともに、卒業研究及び修士論文・設計のレベルを上げ、その成果を学

会や設計競技、論文奨励賞への応募へと繋げるような教育体制を目標としたい。教育・研究両面から

みると、努力が認められるもののその成果が十分に発揮されているとは言い難い。 「将来の改善・改革に向けての方策」 分野と超えた共同研究の計画等を積極的にはかり、学科内での教育・研究両面での効果を上げてい

く必要があろう。 〔土木工学科〕

「現状」 土木工学科の教員 15 名は、過去 4 年間に 126 編(2001 年度は 30 編)の審査付き学術論文の研究

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第 7 章 工学部

業績を挙げている。これは、1 名の教員で平均 2 編/年に相当する数である。しかし、論文業績数は

一部の教員に偏っており、比較的業績の多い 5 名の教員の平均数は 5 編/年程度であるのに対し、業

績の少ない 5 名の教員のそれは 0.25 編/年でありその差は非常に大きい。

「点検・評価」 専門によっては研究業績を挙げ難い分野もあるが、今後これらの業績の差を是正していく努力が必

要である。また、ここで挙げた研究業績は全て東海大学外の審査員による審査を経たものであり、社

会的に認知されたものである。

「将来の改善・改革に向けての方策」 現在、土木工学科の教員の研究活動は、15 名の教員全てが独立した体制で行っている。このため、

研究業績の不活発な教員に対する方策はとられてこなかった。しかし、今後は、学科内で教員間の研

究組織等を構成し研究活動に対する更なる活性化を施す必要がある。 〔精密工学科〕

「現状」 精密工学科所属教員が 1998 年度~2000 年度までの最近 3 年間に発表した論文等の研究成果は、著

書 10 件、原著論文 57 件、総説 14 件、翻訳 1 件、学術書編集・監修 3 件であり、その他日刊工業新聞

解説記事・雑誌コラム・書評などの文筆活動 12 件となっている。総数 97 件で、平均すれば教員 1 人

当たり年間約 3 件の論文発表を行っていることになる。さらにこれらのうち 42 件は英文論文として

発表されており、半数近くの論文が海外に向かって発信されていることになる。 「点検・評価」:

1) 目標・評価の視点および項目 a .精密工学科の教員組織の研究活動(論文等研究成果の発表)は活発に行われているか。 b .その論文等の研究成果は、社会的に認知され得るものであるか。 c .研究業績の不活発な教員がいる場合、活性化を促す方策はとられているか。

2) 評価 a a.精密工学科所属教員 1 人当たり年間平均 3 件程度の論文発表を行っていることは、十分活

発に研究活動が行われていることを示している。しかもその半数近くが英文論文であることは、

海外に対する情報発信も極めて積極的に進められていることの証左といえる。 b .原著論文のほとんどは当該分野の中心的な学協会誌に対する投稿であり、また総説・解説、

コラム記事なども各分野の先導的な雑誌や新聞社からの依頼に応じたもので、これは精密工学

科の教員が各専門分野において中心的な活動をしていることの表れでもある。 c .毎年数件以上の論文を発表している教員が多い中で、若干名ながら 3 年間で 5 件未満の教員

がいることも事実である。これらの教員に対しては、注意や昇格や資格維持に絡めて督励する、

という方策を執っている。 「将来の改善・改革に向けた方策」 学科全体としては極めて活発は研究活動を行っており、特に次代を担う若い教員はほとんどが頻繁

に海外への情報発信に努めており、メンタル面での問題は少ないといってよい。更なる活性化を図る

ためには、むしろ研究環境等の“インフラ”整備が不可欠の課題といえる。具体的には、(1)現在の

狭隘な研究室スペースを拡大するよう大学当局への働きかけを強めること、(2)大学支給の研究費の

大幅増額を求めると同時に学内外の公的補助金制度の積極的活用や委託研究の活発化などにより外部

研究費の導入を積極的に働きかけること、などが重要と認識している。

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第 7 章 工学部

〔機械工学科〕

「現状」 1999 年度および 2000 年度の論文等研究成果の発表状況は以下の通りである。 1) 1999 年度の論文等研究成果の発表総数は 74 であり、その内訳は下記の通りである。

著書 0、原著論文 23、総説 5、学会・学術集会(記録あり) 41、学会・学術集会(記録なし)

1、その他の文筆活動 4 2) 2000 年度の論文等研究成果の発表総数は 58 であり、その内訳は下記の通りである。

著書 2、原著論文 24、総説 3、学会・学術集会(記録あり) 27、その他の文筆活動 2 参考資料 東海大学教育研究年報 2000 年度 p92 東海大学教育研究年報 2000 年度 研究業績目録 p155 「点検・評価」

1) 目標(目的);大学の使命は教育と研究であり、研究活動を活発に行うことにより社会に貢献

し、さらにその成果を教育に反映する。 2) 評価の視点および項目

a .研究活動は活発に行われているか。 b .論文などの研究成果は社会的に認知され得るものであるか。 c .研究業績の不活発な教員がいる場合、活性化を促す方策はとられているか。

3) 評価 a .2000 年度の論文等研究成果の発表総数は 58 であり、1999 年度の 74 より減少しているが、

原著論文は概ね 23~24 件で、一人あたり年間 1.7 件にあたり、平均的には活発であるが、個

人差が大きい。 b .論文等の発表は、ほとんどが権威ある学協会に発表されており、社会的に認知され得るもの

である。 c .大学全体として研究業績を登録するシステムが整備されており、年度ごとに研究業績が公表

されるほか、学科内では、研究発表会を年に数回行っており、その中で論文の芽になるような

ものを論文化するためのアドバイスなども行われており、活性化を促す方策が採られている。 「将来の改善・改革に向けた方策」 個人的な研究活動の差が大きい点を解決していくことが必要であり、引き続き研究発表会などで活

性化を計るが、能力的な面以外にも授業コマ数や学内運営などの面でのアンバランスが現実的には存

在する。教育面、学内運営面等に対する教員の負荷の平準化とあわせて対処する必要がある。また、

研究活動をより活性化させるために研究環境の整備も必要である。 〔動力機械工学科〕

「現状」 学術論文、著書等(過去 5 年間、1997 年 4 月~2002 年 3 月)の業績は、 1) 教員の総計 173 編(主著者として登録された論文等であり、学内教員と連名で投稿した論文等

は二重カウントしていない純粋な数値である)。 2) 学科構成教員 17 名において、一年当たり一教員平均 2.0 編である。上記数値は、学内審査を

経て登録許可・ウエブ公開されている、社会的に認知された成果である。 「点検・評価」 一教員年間 2.0 編の論文発表等がなされていることから、当学科では十分活発な研究活動が行わ

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第 7 章 工学部

れていると評価できる。ただし、個人差の大きいところに改善の余地がある。 「将来の改善・改革に向けた方策」 活発な教員に対しては、さらに円滑に研究活動が進むよう時間、資金面等で援助する。不活発な教

員に対しては、学内(学科内)共同研究などを促進させ、独自の研究が立ち上げられるまでサポート

する。 航空宇宙学科 「現状」 過去 5 年間の専任教員の論文数は、合計 102 編であり、1 人当り年間約 2 編である。これらのうち

の研究成果は、一部社会的に認知されている。 「点検・評価」

1 人当り年間約 2 編は、必ずしも十分とはいえない。学科での研究費配算は傾斜配分制をとってお

り、研究業績の活発な教員に対しては研究費予算の増額、不活発な教員に対しては、主任教授からの

口頭での研究奨励の忠告と予算減額される。 「将来の改善・改革に向けた方策」 予算面設備面での改善も必要であるが、それでも研究が不活発な教員に対しては、具体的にどのよ

うな条件が必要なのかの討論も必要と考える。また、厳しい資格審査や降格などの罰則も場合によっ

ては必要であるとも感じる。 ② 国内外の学会での活動状況(項目NO.165) 〔生命化学科〕

「現状」 国際糖質学会、国際複合糖質学会をはじめ、国際リューマチ学会、インスリン受容体と作用に関す

る国際シンポジウム、米国ペプチド学会などでの口頭およびポスター発表を行っている。国内学会で

は日本生化学会、日本農芸化学会、ペプチド討論会、日本糖質学会などでの口頭、ポスター発表が大

学院生を主発表者とするものを中心に年間 40 件程度行われている。

「点検・評価」 活動状況は活発であり妥当である。

「将来の改善・改革に向けた方策」 現状を維持し、より活性化を図る。

〔応用化学科〕

「現状」 活動状況は、旧工業化学科として 1999 年度に 99 件、2000 年度に 51 件の学術発表を行っている。

その詳細は東海大学教育研究年報にまとめて報告している。 「点検・評価」 当学科の国内外の学会での活動状況は、工学部 16 学科中約 10%を占めており、比較的活発に研究

活動を行っている。学会での活動は、大学院生などへの研究教育効果も高く、積極的に取り入れてい

る。

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第 7 章 工学部

「将来の改善・改革に向けた方策」 今後も、継続的に学会活動に参加できるよう、学内の研究活動、教育を進め、より精力的に活動す

る。 〔応用理学科光工学専攻〕

「現状」 物理学会、応用物理学会、日本光学会、レーザー学会、日本分光学会、Optical Society of America,

SPIE, 日本形成医科学会、炭素材料学会、電子写真学会、液晶学会、国際レーザー医学会、天文学会

等国内外の学会において学科教員は座長や委員等を含む顕著な活動を行っており、外部から注目され

ている分野も多い。また、大学院生を中心に活発に発表を行っている。

「点検・評価」 教育活動システムによる学会活動より、顕著な活動が評価できる。但し、教員間のばらつきが大き

いことが問題である。

「将来の改善・改革に向けた方策」 現在、学科運営を 6 名の教員で行っており、これが、研究活動の足かせとなっている。これ以上の

研究活動の充実には、教員数の増員が求められる。 〔応用理学科エネルギー工学専攻〕

「現状」 関連学会において開催される発表会において毎年の発表がなされるとともに、座長や委員として学

会の活性化に貢献している。また、国際学会においても多数の発表がなされている。 「点検・評価」 「教員活動情報システム」による過去 10 年間の学会活動状況から、顕著な活動が行われているが

評価できる。

「将来の改善・改革に向けた方策」 特になし。

〔材料科学科〕

「現状」 国内外の学会、研究会、シンポジウムなどの委員、座長、委託研究員、評議員など、多方面にわた

る教員の活躍が顕著である。

「点検・評価」 現状のままで問題ない。

「将来の改善・改革に向けた方策」 現在の活発な学会活動をこのまま推進すべきである。

〔建築学科〕

「現状」 各分野の学会の委員会活動や研究会活動は、各教員において活発に行われている。また、国際会議

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第 7 章 工学部

への参加は、教員個人の研究発表とともに、研究室によっては大学院生も含め主体的に行われている。 「点検・評価」 学科及び研究室、大学院生を含めた学会活動の活性化を目指して、各教員は努力している。学生や

大学院生の学会活動への参加については、都心部の大学に比較して低く、教員による啓発が必要と考

えられる。 「将来の改善・改革に向けての方策」 研究室単位で、学会活動への参加を義務づける等、研究及び実社会との接点を教員側で、積極的に

準備していく必要があろう。 〔土木工学科〕 「現状」 土木工学科の教員は 2001 年度実績で、国内の学・協会開催の学会等に 40 回程度、海外での国際会議

等に 15 回程度出席し、研究発表、座長、委員会参加等の活動を積極的に行っている。 「点検・評価」 学会活動についても総体的には上記①と同様、比較的活発に研究活動が行われている。教員の学会

活動は、大学院生や卒業研究生などへ与える研究教育効果も大きいが、学会活動においても教員間に

偏りが見られる。 「将来の改善・改革に向けた方策」 学会活動を積極的に行うことにより、新たな研究テーマの発見や産学連携の研究などを行う機会も

より増加するので、今後も積極的・継続的な学会活動を行う必要がある。 〔精密工学科〕

「現状」 1998 年度~2000 年度の最近 3 年間における学会・学術集会での口頭発表(記録あり)は精密工学

科全体で 141 件に上る。教員 1 人当たり年間約 5 件の発表を行っていることになり、論文発表の場合

と同様に極めて活発に研究成果の公表に努めているといえる。その内で海外での発表も 30 件を超え

ており、国際的活動も積極的に行っている。また基調講演やキーノートスピーチなどの依頼講演も多

く含まれており、各専門分野で第一人者として活躍している者も多い。

「点検・評価」 1) 目標・評価の視点および項目;精密工学科の教員は、国内外の学会において顕著な活動を行っ

ているか。 2) 評価;教員 1 人当たり年間平均 5 件の学協会主催の研究集会に参加して研究成果を発表してお

り、そのうち 1 回は国際会議へ出席しての発表であることは、十分活発な研究活動を行ってい

ると評価できる。また単に会議に出席して発表するだけでなく、会議の主催者(実行委員長、

講演会運営委員長)として実行委員会を組織・運営したり、セッションオーガナイザーや座長

として学会運営に協力するなど、中心的役割を果たす例も多く、学協会の発展にも大きく寄与

している。 「将来の改善・改革に向けた方策」 総体的には上記①の場合と同様に精密工学科の学会活動は現状でも既に十分活発であると判断で

きるが、さらなる活性化を図るためには、研究スペースの増大と研究費の増額が不可欠の課題といえ

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第 7 章 工学部

る。特に他学科に比べても研究スペースが狭すぎるため新しい研究の遂行に必要な新たな装置を導入

しようにもその場所がない、といった現状を改善するには、共同利用研究施設の積極的利用を促すと

ともに、学部全体としての研究室スペースの再配分など“行政”に期待するところ大である。研究費

の確保に関しては上記①に記したことと基本的に変わるところはない。 〔機械工学科〕

「現状」 本学科の国内外の学会での活動状況は下記の通りである。 1) 2000 年度に国外学会発表を行った教員は 4 名であり、国名はカナダ、イギリス、アメリカ、

タイ、オーストラリア、中国である。 2) 論文等研究成果の原著論文や学会・学術集会(記録あり)のほとんどが学会に関係した発表で

ある。 3) 日本機械学会、日本ガスタービン学会、可視化情報学会、トライボロジー学会等、機械工学に

関連した主要学会で役員,専門委員、国際会議の役員,委員などとして活発に活動している複

数の教員もいる。 参考資料 東海大学教育研究年報 2000 年度 p133 東海大学教育研究年報 2000 年度 研究業績目録 p155 「点検・評価」

1) 目標(目的);学術研究活動を活発化することにより技術の高度化や社会のニーズに応えてい

く。 2) 評価の視点および項目;学科の教員は、国内外の学会において、顕著な活動を行っているか。 3) 評価;全員ではないが、海外での学会活動も行われており、また研究発表のほとんどが国内外

の権威ある学会のものである。学科としては平均以上の活動であると判断される。また、一部

の教員は顕著な活動を行っていると評価される。 「将来の改善・改革に向けた方策」 引き続き、学科内研究発表会等を通じて、研究に対する討論をさらに活発化させ、国内外において

論文発表を積極的に奨励する雰囲気を醸成する。 〔動力機械工学科〕

「現状」 学会・学術集会(過去 5 年間、1997 年 4 月~2002 年 3 月)としての業績は、 1) 学科教員の総計 190 件(主著者として登録された学会・学術集会発表等であり、学内教員と連

名で発表した数はカウントしていない純粋な数値である。) 2) 学科構成教員 17 名において、一年当たり一教員平均 2.2 件 3) 国際学会等での発表は、総計 19 件。一年当たり一教員平均 0.2 件である。上記数値は、学内

審査を経て登録許可・ウエブ公開されている、社会的に認知された成果である。 「点検・評価」 一教員年間 2.2 件の成果発表は、学科としては十分活発な学会活動といえる。しかしながら、国

際学会等での発表が一教員年間 0.2 件であり、この部分が改善すべき反省点である。また、発表に

関しては個人差が大きく、ほとんど無い教員もある。 「将来の改善・改革に向けた方策」

1310

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第 7 章 工学部

学会活動(発表)を行わない理由の一つは、業績評価として、論文が主にその対象となっているこ

とが考えられる。学科、大学の研究活動をアピールする上でも学会活動は不可欠であることから、発

表等に関して十分に奨励する雰囲気を作る。 〔航空宇宙学科〕

「現状」 過去 5 年間の専任教員の学会発表数は、合計 157 件であり、1 人当り年間約 3.1 件である。シンポジ

ウムなどを含めるともっと増える。 「点検・評価」 大学院生博士課程前後期生:43 名(教員 1 人当りの大学院生約 4 名)を考慮すると、この学会発表

数は必ずしも十分とはいえない。すなわち、少なくとも、大学院生 1 人当り年間 1 件の発表が標準的

な基準と考えられ、これを超える数の学会発表数が望ましい。これは教員の研究活動度に密接に関連

する。

「将来の改善・改革に向けた方策」 教員の研究活性化の方策と同様である。即ち、外部資金の調達が出来得る質の高い研究と研究能力

の向上が必要であり、そのための議論と具体的行動(科研費などの獲得、企業との共同研究など)に

ついての方策を講じる。 ③ 当該大学院・研究科、学部、センター、研究所として特筆すべき研究分野での研究活動状況

(項目NO.166) 〔生命化学科〕

「現状」 生命化学科教員を中心に構成された提案がハイテクリサーチセンター整備事業に採択され、糖鎖工

学研究施設の建設とともに 2001 年度より活動が行われている。 「点検・評価」 本学科教員の中で教授 2 名、助教授 2 名および講師 1 名が当該研究施設でポスドクおよび大学院博

士課程前期学生を中心に研究活動を展開している。

「将来の改善・改革に向けた方策」 研究成果はこれからであるが、研究活動を活性化するためにはポスドクの採用制度など、研究活動

の活性化に向けてさらなる改善・改革が必要である。 〔応用化学科〕

「現状」 本学科では特質すべき研究分野はないが、各専任教員の研究室を中心に研究を展開している。その

主な研究分野は、有機分離膜の開発、回転円盤法による廃水処理、光機能性材料の開発、超伝導材料

の開発、流体に関する研究、生分解性高分子材料の開発、液晶に関する研究、熱電材料の開発、二次

電池材料の関する研究、有機-無機複合化による多孔質体の合成などである。

「点検・評価」 本学科では、「地球環境負荷の軽減を目指した応用化学の新たな挑戦」を掲げ研究・教育を展開し

ている。そして、これらの技術が社会に貢献できるよう学科一丸となって挑戦している。

1311

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第 7 章 工学部

「将来の改善・改革に向けた方策」 本学科の研究が外部から評価される事になれば、これを機にさらなる研究の飛躍を期待している。

〔応用理学科光工学専攻〕

「現状」 光工学の分野は、現在の高度情報化社会において、中心的な位置づけを占めている。従って、基礎

研究、応用研究において、重要な研究が、各教員によりなされている。応用分野は多岐にわたり、材

料、加工、エネルギー、情報、画像、医療、天文等先端技術には欠かせないものとなっている。産業

界とは多くの接点を持ち、委託研究等は活発に行われている。学会活動においても、各研究は時代の

要請を強く反映しており、画像表示等の分野で液晶学会虹彩賞、色彩フォーラムポスター賞、ナノデ

バイス研究等の分野で応用物理学会奨励賞等々の受賞をしており、特筆すべき研究活動の例となって

いる。

「点検・評価」 多面的な研究活動が行われていることは評価できる。

「将来の改善・改革に向けた方策」 今後、研究拠点となるには、博士課程の学生の確保とポスドク等の内外の研究員を受け入れる下地

を作る必要がある。 〔応用理学科エネルギー工学専攻〕

「現状」 原子力学会をはじめ、関連学会等において、内田裕久教授、石野栞教授、大江俊昭教授、岡本毅助

教授らが論文賞はじめ数件の受賞を獲得している。また、学会等の委員を委嘱される者も多く、研究

活動は活発に行われている。

「点検・評価」 エネルギー工学という広い分野にまたがり、学内研究者間の交流は出来にくい面があるが、学外に

おける共同研究等は活発に行われている。「教員活動情報システム」による過去 10 年間の受賞状況か

ら、評価できる。 「将来の改善・改革に向けた方策」 学科内の交流を深めるための談話会の開催計画等、展開方法を検討中。

〔材料科学科〕

「現状」 「非晶質材料の物性計測と物性制御に関する研究」、「先進機能材料の高性能化と計測方法の研究」

(西義武教授)、「拡散法によるビスマス系酸化物高温超伝導体の導体化に関する研究」(山田豊教授)、

「宇宙機用ろう付技術の研究」(有賀正教授)などを主体として、極めて活発な研究活動が展開されて

いる。

「点検・評価」 極めて活発な研究活動が展開されている。

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第 7 章 工学部

「将来の改善・改革に向けた方策」 現在の活発な研究活動をさらに推進すべきである。

〔建築学科〕

「現状」 各教員の研究及び設計活動は、積極的に行われており、数々の受賞もみられる。建築設計では、神

奈川県の建築家協会の卒業制作展において、東海大学の学生による上位入賞は固定化しており、社会

的評価も獲得している。

「点検・評価」 個人はともかく、研究面での学科の社会的評価を獲得するための努力は常になされているが、特筆

すべき研究活動としては成果があげられているとは言い難い。 「将来の改善・改革に向けての方策」 教員相互のテーマ性をもった共同研究等の企画や取り組み等が検討されるべきであろう。

〔土木工学科〕

「現状」 土木工学科所属教員の過去 3 年間における学術論文賞等の主な受賞実績は、以下の通りである。 1) 中村俊一教授:平成 11 年度土木学会賞田中賞(論文部門) 2) 中村俊一教授:平成 13 年度土木学会論文賞 3) 茂庭竹生教授:日本水環境学会学術賞(平成 12 年 6 月)

「点検・評価」 上記の受賞は全て権威ある学会から贈られたものであり、十分な実績として評価できる。過去 3 年

の受賞は、特定の教員に限られている。賞は狙ってとれるものでもないが、学科の知名度を上げるた

めには非常に有効である。今後は所属教員が各専門分野で質の高い成果を上げられるように研究環境

の整備が必要といえる。

「将来の改善・改革に向けた方策」 学科としての特色を出すべき研究分野を定めて、重点的な取り組みを行うことも、将来的には必要

であろう。土木分野に対する厳しい世論の中、社会のニーズに対応した特色のある学科とすべく検討

する。 〔精密工学科〕

「現状」 精密工学科教員の加入している各分野の主要学協会や研究会において、会長、副会長、理事、評議

員、主査、各種委員会委員など組織運営の中枢で活動する教員が多く居り、全体として活発に活動し

ているといえる。研究成果に対する評価も高く、1999 年以降だけでも、(社)日本塑性加工学会会田

技術奨励賞(1999 年)、(社)日本機械学会関東支部技術賞(1999 年)、工作機械技術振興財団工作機

械技術振興賞(1999 年、2000 年、2001 年の 3 年連続)、International Wire Association ベスト論

文賞(2000 年、2002 年)など多数の受賞を数えている。また、(社)精密工学会学術講演会ベストオ

ーガナイザー賞(2000 年、2002 年)など学会運営に関わる表彰も認められる。また学科主催で研究

会「精密フォーラム」を毎年 2 回以上開催している。これは専任教員の研究・教育の啓蒙や活性化を図

る目的で実施している。先端研究や教育法に関する第一線の研究者を講師として招いている。

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第 7 章 工学部

「点検・評価」

1) 目標・評価の視点および項目;精密工学科において、特筆すべき研究活動、研究成果、学術賞

の受賞をあげているか。 2) 評価;最近の受賞は全て各分野で権威ある学協会、財団から贈られたものであり、十分な実績

として評価できる。ただ、これまでのところ受賞者が特定の教員に限られているのも事実で、

今後は所属教員がいずれの分野でも質の高い成果を上げ得るよう研究環境の整備が必要とい

える。研究活性化のため実施している学科主催の研究会の実施は、非常に有効といえる。 「将来の改善・改革に向けた方策」 重要な研究業績は、柔軟かつ独創的な発想が可能な若い時期に達成される確率が高いことは周知の

事実であり、その意味でも特に若手教員が十分な研究成果を挙げられるような研究環境が用意される

べきである。しかしながら学科の多くの“雑用”がむしろ若手教員に任されているのが実状であり、

上記①および②で指摘した研究スペースや研究費の充実だけでなく、研究活動に打ち込める時間的余

裕の確保も今後十分考慮して行く必要がある。そのためには、各種事務処理や学内委員会の簡素化に

よる教員の負担軽減、若手教員に負担が偏りがちな教育活動の均等化、などが望まれる。これらは一

精密工学科としてだけでなく、学部さらには大学全体として取り組む必要のある大きな課題でもある。 〔機械工学科〕

「現状」 2000 年度の学術賞受賞は「日本ガスタービン学会賞論文賞」の一件である。 参考資料 東海大学教育研究年報 2000 年度 p122 「点検・評価」

1) 目標(目的);社会の進歩、ニーズに応えうるような特筆すべき研究分野の育成を奨励する。 2) 評価の視点および項目;特筆すべき研究活動を行い研究成果をあげ、権威ある学術賞を受賞し

ているか。 3) 評価;権威ある学術賞の受賞は 2000 年度一件であった。学会賞のようなものは狙ってできる

ものではなく、結果として評価されるものであるので、目標にはしにくい。 学科として現状では特に重点研究分野は定められていない。

「将来の改善・改革に向けた方策」 将来的には、学科として特色を出すべき研究分野を定め、重点志向で臨むことも必要と考える。社

会のニーズ、本大学の特色なども勘案して長期計画的に検討する。 〔動力機械工学科〕

「現状」:以下の教員が、過去 5 年間の学会賞を受賞している。 飯島敏雄教授 1999 年 12 月 第 13 回タイ国機械学会 タイ国機械学会功労賞 押野谷康雄助教授 1998 年 4 月 日本 AEM 学会奨励賞

1998 年 4 月 日本機械学会奨励賞(研究) 神本武征教授 2001 年度自動車技術会副会長

2002 年度同会長

②「点検・評価」 学会賞の件数は多いとは評価できないが、当学科では上述のように産官学の研究活動を取りまとめ

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第 7 章 工学部

ている教員がいる。また、林義正教授が東海大学モータースポーツプロジェクトの責任者であり、産

学プロジェクトとして特筆すべき研究活動がなされている。

「将来の改善・改革に向けた方策」 輸送機械・エネルギー関連などに焦点を絞り、学科として特色を出すことができる重点研究分野を

検討する。 〔航空宇宙学科〕 「現状」 関連学会等において、数件の学会賞を獲得している。また、特筆すべき研究活動としては、日本の

宇宙工学分野で、例えば殆ど全てのロケットや人工衛星や南極気球に当該学科の機器が搭載されて、

宇宙科学研究所と共同研究していることなどがある。

「点検・評価」 教員活動情報システムによる過去のデータ、研究データから、一部の教員に対しては評価できる。

「将来の改善・改革に向けた方策」 研究の活性化に繋がることであるので、活性化をいかにするかの討論だけでなく、サバティカルや

奨励賞の人数を増やしたり、時間と予算面での待遇改善が望ましい。 ④ 研究助成を得て行われる研究プログラムの展開状況(項目NO.167) 〔生命化学科〕

「現状」 ハイテクリサーチセンター整備事業が糖鎖工学をテーマとして採択され、2001 年度より発足している。 「点検・評価」 本整備事業により「糖鎖工学研究施設」が設立され、糖鎖生化学の応用(糖鎖工学)を指向して 1)

人工糖質ライブラリー、 2)ワクチン開発、 3)ドラッグデリバリーシステムの開発、 4)新規

検査法の開発、をテーマにプログラムがスタートした。研究機器の整備を終え、現在は実質的な研究

が軌道に乗り始めたところである。

「将来の改善・改革に向けた方策」 本プログラムと生命化学科とは組織上異なるものであるが、プログラムの構成研究者の大部分が生命

化学科教員であること、テーマが生命化学科で研究展開を図っている目標であるだけにその活動は学

科の評価と切り離しては考えられないものであると認識している。また、改組改変の完成年度である 2004 年度には生命化学科を卒業し、大学院進級者の受け入れも視野に研究を推進する。

〔材料科学科〕

「現状」 日本学術振興会などからの助成を受けた「アクチュエター材料群の萌芽的研究」(西)、あるいは科

学研究費補助金に関連するものには「拡散法によるビスマス系酸化物高温超伝導体の導体化に関する

研究」や核融合科学研究所との共同研究「超伝導工学開発」(以上、山田)がある。また、宇宙開発事

業団からの委託による「宇宙機用ろう付技術の研究」(有賀)、日本宇宙フォーラムおよび文部科学省

宇宙科学研究所宇宙基地利用実験費による「スペースマテリアルプロセッシングに関わる基礎研究」 (神保)などがある。

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Page 44: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 工学部

「点検・評価」 極めて特色のある研究者たちにより、積極的に展開されている。

「将来の改善・改革に向けた方策」 社会に貢献する人材教育を念頭に置くなど、学生を育てる研究にも努力したい。

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第 7 章 第二工学部

【第二工学部】

1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164) 〔現状〕 論文等研究成果の発表の状況として、論文数は、ほぼ満足するものがある。これら論文の社会的評

価としては、学会の委員会活動や公的機関の各種委員を行う研究者が増加している。これらの情報は、

東海大学教育研究年報に記載されているばかりでなく、キャンパスライフエンジン(教員活動情報シ

ステム)のホームページに掲載され、大学内に限り公開されている。学部紀要は、第二工学部の発足

時の考え方から学部単独には刊行していない。現状における主たる論文は、工学部・電子情報学部の

紀要に投稿され記載されている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 現在、研究環境の充実を年次計画として推進しているところであるが、社会的に評価を受ける研究

成果は急速に上がっている。これらを維持し、更なる推進のためにも研究環境の充実を図らなければ

ならない状況にあるといえる。また、代々木キャンパスに大学院を持たない学部であることが問題点

といえる。学部紀要を持っていないことは大きな問題点ではない。研究業績を上げるため、大学施策

の「国内外の研究留学制度」、「国内外の学会発表補助計画」、「国内外短期調査研究補助計画」、「研究

設備拡充計画」等への申請が促されている。これ等が大学としての長所といえる。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 現在工学研究科の専攻科コースを、研究者・研究環境から代々木キャンパスに設置することが教育・

研究効果をあげるものとして準備が計られている。この大学院との有機的連携は重要なこととして協

力していきたい。学部紀要の刊行は、教授会において議論をしていきたい。 ② 国内外の学会での活動状況(項目№165) 〔現状〕 国内外の学会における活動は、研究成果の質の向上とともに学会運営のための各種委員を担当する

教員も年々増加している。これらの情報は、東海大学教育研究年報ばかりでなくキャンパスライフエ

ンジン(教員活動情報システム)に載せられ公開されている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 教員の研究成果の学会発表、そして、研究成果の社会的評価が高くなることは望ましいことである

が、研究成果を上げ学会活動を積極的に行っている教員は授業と学会活動の比重をいかにすべきか悩

んでいることが問題点である。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 学部としては補講期間を年度スケジュールに載せ教員と学生に示し、現況における休講の問題はな

いが、このことは重要なこととして教務委員会、教授会において議論をしていきたい。 ③ 当該学部、センター、研究所として特質すべき研究分野での研究活動状況(項目№166) 〔現状〕 社会的に認知され評価の高い研究分野の主たる研究活動としては、情報工学分野の衛星リモートセ

ンシングに関する研究、発変電工学分野の超伝導システムに関する研究、建築史分野の歴史的建造物

の保存と歴史に関する研究、建築環境工学分野の室内空気質・光環境・温熱環境に関する研究、メカ

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第 7 章 第二工学部

トロ工学分野の電磁アクチュエータの開発とそのシミューション法の研究、シミュレーション工学分

野の高速回転体の強度に関する研究等がある。これらの研究成果はそれぞれの分野における学会活動

も顕著に成果をあげ社会的に評価の高いものである。いくつかの研究は研究所等の共同研究として実

施されおり、また国内外で高い評価を受け、海外からの招待を受け発表されている。学術賞を受賞し

たものについては、数年前にいるが、‘01 年度、‘02 年度においてはいない。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 教員が研究するのに研究環境のひとつとして所在する地域の問題がある。本学部の所在は都心にあ

り、他研究機関の研究者、研究機関との情報交換にはよい環境にあるといえる。また、リモートセン

シング研究の草分け的研究を行った本学の情報技術センターが代々木キャンパスに所在することから

ソフトウエア工学、画像情報工学分野の共同研究をするのに地理的に都合がよいことが長所といえ、

本学部の研究者の一部は情報技術センターの兼務研究員として登録され共同研究を実施している。問

題点としては研究環境の充実を現在推進中であることが言える。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 将来の改善・改革に向けた方策:本学部の研究環境を一時も早く充実させることはもちろん、学内

外の研究機関との研究交流・共同研究を奨励するとともに促したい。

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Page 47: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 開発工学部

【開発工学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164) [現状]

2000 年度における教員数は 4 学科で教授 35、助教授 10、講師 6 人、基礎教育系その他 20 人の合

計 71 人である。これらの教員による 2000 年度における研究発表の合計は、著書 11、研究論文 101(うち和文誌 39)、総説 57、研究発表 231(うち国内発表 165)、その他の発表 35 件であった。従っ

て、研究論文数は年間一人あたり 1.4 であり、4 学科ではそれぞれ情報通信工学科 1.0、素材工学科

3.1、生物工学科 1.9、医用生体工学科 0.8 であった。また、論文誌の種類では英文誌 62 件に対し、

和文誌が 39 件と英文誌の方が多いが、英文誌の中には国際会議の要旨集がかなり含まれている。一

方、それぞれの専門分野の代表的な国際誌にも多く発表されている。 教員間で研究発表の件数に若干の差が認められるが、職務上、学科運営、学生指導などに時間を割

かざるを得ない場合もあり、それらを考慮しなければならない。現状では各教員の事情を正確に把握

することは難しいため、今後、教員の研究活性化のための方策を検討する必要がある。 [点検・評価(長所と問題点)] 当学部では、他の私立大学と同様に国公立大学と比較して学生数に対して教員数が少なく、学生の

教育に多くの時間が割かれているのが現状である。このような状況下であって、海外の一流学術誌に

研究成果を報告し、国際会議で研究発表を活発に行っている状況は評価できる。いくつかの研究室で

は著しい成果が挙げ、これらの研究成果は、科学技術の発展に貢献するだけではなく、授業に最新の

教材としても使われている。 [将来の改善・改革へ向けた方策] 学部として研究開発の活性化に努めているが、学部独自の方策は特に取っておらず、大学が行って

いる施策を公平に運用して研究の活性化に努めている。すなわち、松前重義賞(学術賞)、総合研究機

構による研究奨励補助金、国内外研究派遣、研究教育補助金等の選考および科研費をはじめとして外

部研究費獲得のための便宜を通して活性化を促している。また、一部には研究の活性化を促すため次

のような研究業績評価の強化を講じるべきであるとの意見もある。すなわち、①研究の業績を教員の

昇格や給与の一部に積極的に反映する。著しい成果を挙げた教員には、研究休暇や特別昇格・昇給等

を与える。②現在、研究の業績を主に論文の数で評価しているが、発表される学術誌によって論文の

質が異なるので、論文学術誌によって異なる評価点数を与える。また、論文投稿料、別刷り費用等の

給付などの優遇措置を設けることも望まれる。 口頭研究発表件数は多いが、それが論文数に十分繋がっていない傾向もみられる。学会で発表した

研究発表内容を確実に論文に仕上げる努力が求められる。さらに、研究活動を活性化させるためには、

大学院博士課程の設置も可能性の一つとして検討に値する。 ② 国内外の学会での活動状況(項目№165) [現状] 前述のように学会等における研究発表件数は 2000年度で国内 165、国際会議 66、合計 231である。

年間一人あたり平均 4.5 回の研究発表を行っており、そのうち国際会議は 1.3 回となっている。その

ため、国際会議出席等のため海外出張の件数は 1999 年度においては 34 件、2000 年度においては 32件であった。 本学部の教員が中心になって「超高密度光記録国際シンポジウム」、「離散・計算幾何学国際会議」、

「医用画像工学研究会」等の国際、国内会議を当地において主催・共催している。また、本学部設立

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Page 48: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 開発工学部

時以来、日本植物工場学会の事務局が生物工学科内に置かれ、学会活動の中心的役割を果たしてきた。

さらに、各教員はそれぞれの所属する学会、学術団体や政府系委員会等の委員、役員等として活躍し

ている。 [点検・評価(長所と問題点)] 国内での学会発表、活動はかなり活発に行われていると判断される。しかし、教員間での活性度の

相違はかなりある。また、研究の国際化が著しい最近の傾向からみると、一部の教員を除くと全体的

にはさらに活発に国際的活動が望まれる。 [将来の改善・改革に向けた方策] 海外渡航費の拡充、特に若手研究者への優遇措置、また会議開催への援助等が望まれる。

③ 当該学部として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166) [現状] 情報通信工学科では、後藤研究室が日本学術振興会未来開拓学術推進事業研究プロジェクト「高機

能空間光変調を用いた極限情報処理」を 1997 年から 5 年間で総額 4.2 億の研究費を投じて超高密度

記録・再生システムの実現を目指した研究開発を活発に行い、特許出願 8 件を含む多くの成果を出し

ている。この研究に対して、後藤教授は本学松前記念学術賞をはじめ国内外から学会賞を受けている。

また、福島・虎谷研究室で行われている「OCTS 及び GLI による海色データ抽出のアルゴリズムの開

発」等の研究は宇宙開発事業団(NASDA)、国立環境研、中央水産研から毎年 1 千万円以上の委託研究

費を受けて、地球観測衛星データ処理システムの開発を一部担当している。さらに、情報通信工学科

を中心に学部として「マルチメディア教育教材の開発」を進めており、本学部が目指す電子化キャン

パスの実現に大きく貢献している。 生物工学科平山教授を中心とした東海大学総合研究機構「創薬プロジェクト」が医学部と協力して

スタートし、学部を越えた協力で成果が期待される。 一方、本学部は企業等と連携した研究開発を積極的に推進しているが、パルプスラッジ・港湾底泥

の利用、竹炭を利用したお茶栽培、救急医療機器・福祉機器などの開発を地元企業等と共同して行い、

それぞれ成果を出している。これらに対して、社団法人静岡県紙パルプ技術協会技術賞、日本植物工

場学会学会賞等を受賞している。この他社団法人可視化情報学会功労賞、日本植物工場学会学術奨励

賞、学術賞、論文賞等を 1999、2000 年度に得ている。 [点検・評価(長所と問題点)] 学内業務や学生教育などに多くの時間を割かざるを得ない状況下で教員は努力していると評価で

きる。現在、科研費をはじめとして研究費はかなり潤沢に提供されている環境ではあるが、外部から

の獲得研究費は減少傾向にある。研究スタッフの不足、教員年齢の上昇などを含めていろいろな原因

があり、これらに対する対策が必要とされる。 [将来の改善・改革へ向けた方策]

4 学科がそれそれ先端的な研究開発と学科を横断した協力によって学際的な領域に威力を発揮して

社会に貢献することが本学部の研究面における目標である。これは現在でも正に時代の要請であり、

先見性のある目標である。その意味においても、今後より一層、研究の活性化に向けて、どのような

組織・体制でどのように運営すべきかを検討して、他者と競合し、十分戦える体制を整える必要があ

ろう。その中には教員の性格付けと評価も含まれるべきである。

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Page 49: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第7章 海洋学部

【海洋学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164) 〔現状〕 海洋学部は、7 学科 2 課程、分野別では工学・理学・水産・商船学系に分類され、研究成果の発表

内容も多岐にわたっている。1999 年度(1999 年 4 月~2000 年 3 月)の海洋学部全教員の原著論文

数は、140 編、学会・学術集会での発表は 148 編となっている。

〔点検・評価〕 1999 年度の海洋学部全教員数は 131 名であり、この年の原著論文数は 140 編の教員一人当たりの

論文数は 1.06 編となる。これは大学職国際調査が示した我が国の平均的大学教員 1 年間の論文数 1.15 より少ない。

〔改善・改革の方策〕 海洋学部全教員の 1 年間の平均論文数は、全国平均を若干下回っており、平均を上回るような研究

活動が望ましい。これは個人間の格差が非常に大きいことが原因であり、特に過去数年にわたって論

文 0 の教員の奮起が望まれる。また、論文作成に充分な時間がとれる環境整備が必要である。 ② 国内外の学会での活動状況(項目№165) 〔現状〕 海洋学部の教員は工学・理学・水産の各分野で様々な学会活動を行っている。ほとんどの教員が各

学会に所属し、各種学会の会長、理事、評議員、支部長、各種委員会委員などに就任している者も多

い。また、国際会議および国内における年次大会の主催を国内、静岡県内、海洋学部などで行ってい

る。 〔点検・評価〕 各学科において少なくても複数の教員が各種学会の会長、理事、評議員、各種委員会委員などに就

任しており、学会活動としては評価できるものと考えられる。 〔改善・改革の方策〕 国内外の学会活動については、各教員間に大きな格差が生じているのが現状である。大学の教員は

教育活動、研究活動および学会・社会活動がバランス良くとれているのが理想であるが、現実には教

員によって偏っているので教員の総合業績評価を厳密に実施しながら教員の自己啓発を促すことが必

要である。 ③ 当該学部、センター、研究所として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166) 〔現状〕 本学部における特筆すべき研究分野として、リモートセンシングを用いた海洋環境問題の解決に資

する研究、無人海洋大気観測艇愛称「カンちゃん」の開発と運用実験、海洋深層水、沿岸域における

海水浄化などがある。特に、学部内の各分野が有機的に結びつき対応している研究について紹介する。

海洋深層水は、我国においては高知県、富山県、沖縄県において取水がなされ、さまざまな分野への

応用がなされている。駿河湾においても、1997 年から静岡県焼津市沖の深層水についてその利活用の

研究・検討がなされている。本学部においては、深層水の物理、化学、生物学的特性や安全性、放水

による海域影響等の基礎的研究について、深層水研究会を設立し、種々の問題に対応している。 また、沿岸海域の開発は人間活動の上からも必要不可欠であるが、現状の自然環境を破壊すること

は、重要な問題である。従来は、行政による規制型環境保全が主体であったが、最近では創造型環境

1321

Page 50: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第7章 海洋学部

保全へ転換されてきた。すなわち、開発によって失われた自然環境の回復・創造をはかり、環境のバ

ランスを保つことである。本学部においても沿岸域の水質汚濁に伴う藻場の減少、絶滅危惧種の保全

等、自然と共生する沿岸環境の復元または創造に多くの教員が関与している。特に、カブトガニが生

息・繁殖できる環境を修復するため、2002 年 7 月から岡山県の笠岡湾において、1 日約 1 万トンの海

水を浄化できる浄化船による大規模な実験が開始された。

〔点検・評価〕 上記の海洋深層水および海水浄化に関しては、海洋学部の多くの教員が関与し、さまざまな分野で

活躍している。これら以外の地球環境問題、海洋汚染、食糧問題など海に関する諸問題に学部・学科

として対応していることは評価に値するが、さらなる各専門分野の有機的な結合を進める必要がある。

〔改善・改革の方策〕 海洋の諸問題を解明するためには、各専門分野の密接な繋がりが必要である。したがって、海洋に

おける諸問題に対して、学部・センター・研究所の横の繫がりをさらに強める施策を今後考える必要

がある。

1322

Page 51: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 医学部

【医学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164) [現状] 当医学部においては研究活動の促進を計り大学教員の質の向上と共に研究成果の社会への還元に努

めている。その成果として論文等の発表状況を示す。

著書 原著論文 論文総説 学会発表

(総数) 2001 年度 174 471 281 873 2000 年度 153 317 179 709 1999 年度 172 371 226 679 1998 年度 182 456 308 815 ※2001 年度 18 291 20 108

※ 英文論文もしくは国際学会発表 [点検・評価(長所と問題点)] 表に見られるとおり論文数・学会発表においても活発な活動が見られるものの、2001 年度の例を取

って英文による論文数を見ると、原著論文で全体の 62%とかなり高いことがわかる。しかし学会発表

では全体数の約 15%が国際学会での発表であり、必ずしも国際学会の発表の機会が多いとは言えない。

これは日本の地域性によるものか、英語での発表が苦手であるのかわからない。論文の質についての

パラメーターは難しいが、インパクトファクターを指標とすると平均約 1.6~1.7 程度であり、国際的

に高水準であるとは言い難い。この数値にも複数の因子が含まれており、統計には表れないが、本学

の研究者の名前が載ったレベルの高い論文のいくつかは他大学との共同研究である場合がある。 また、教員個人による研究活動の格差は大きく、活発な教員は国際的に評価の高い者が複数名いる一

方、活発であるとは言い難い教員も混在する事も事実である。 [将来の改善・改革に向けた方策] 研究活動が活発とは言い切れない教員に対する対策としては、活発な研究グループへの参加等が可能

なシステムが構築されてはいる。しかし実際的に研究室を横断的に移動することには未だ多くの妨げ

が存在することも事実である。 また、早急に対策を講じなければならない問題は年齢が高く、かつ研究にあまり活発でない教員の扱

いである。改善策としてこれらの教員は教育を重点的に担当する様現在計画している。教育に重点を

置く教員は教材の開発や多くの授業コマ数を担当し、学生との密接な接触による教育指導などに専念

する。一方研究に重点を置く教員は授業負担を軽減し、研究費の獲得、研究の企画、遂行、指導に専

念する。現在、研究に重点をおく教員と教育に重点を置く教員を区別する方策を検討中である。 将来の展望としては、本学部からの論文数・学会発表数は共に充分の数に達しているので、論文の質

を更に上げ、また国際学会等で積極的に発表する様改善して行かなければならない。そのためには当

然のことながら質の高い研究と英語能力に優れた教員が必要である。我が国の研究の評価は一般に論

文の数と獲得した研究費の額でなされる傾向にある。この体質は改善されなければならない。今、日

本は論文大国であり、科学研究費大国であるが、それは必ずしも科学の質が高いことを意味するもの

ではない。

1323

Page 52: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 医学部

② 国内外の学会での活動状況(項目№165) [現状] 研究活動の成果発表の場としての学会活動は重要な位置を占めている。本医学部における学会活動、

成果発表は非常に活発に行われている。過去 5 年間の統計には大差はないので、2001 年度の活動状

況を表に示す。 特別講演など 一般発表 シンポジウムなど

国内 国際 国内 国際 国内 国際 75 14 873 85 76 9

[点検・評価(長所と問題点)] 表からも明らかなように特別講演などの招待によるものは全体で 89 件が記録されているが、中で

も国際学会への招待は全体の約 16%である。一般発表においては総数約 958 件のうち国際学会は約

9%に留まっている。シンポジウムでは総数 85 件のうち国際学会の割合は約 10%程度である。これ

らの結果は本医学部の教員の多くが国内の学会では活発に論文の発表を行っているが、国際学会にお

ける活動は充分であるとは言い難い状況である。国際学会での活動に関して指摘しておかなければな

らないことは、この数値の一部は同じ教員による複数回の国際学会活動が含まれていることである。

従って、教員個人別での国際学会での活動の様子はまた異なったものであると考えられる。本学のみ

ならず日本人の研究者の平均的な国際学会での活動は、英文論文数との対比において低いと判断でき

る。これは一つには、日本人の英語による発表が充分訓練されていないこと、及び日本が置かれてい

る世界的に見た地域性によって国際学会に参加するに費用がかかりすぎると言う点も指摘しておかな

ければならない。 総じて述べれば、これらの学会活動を教員数で割ると一人の教員が年平均約 3 回学会発表をしている

計算になる。この数値は欧米の研究者の学会活動に比して決して少なくない。上にも述べたように、

問題はその質である。国内の学会で発表して満足していたのでは質の向上は望めない。 [将来の改善・改革に向けた方策] 本医学部の研究者の国際学会での活動状況で特筆したい事の一つは、一部の研究者の活動は国際的に

非常に活発である事である。逆に教員の一部は国際的にはほとんど不活発である。この状況を改善す

る良い方法は見つからない。今後は若い教員を訓練する事が重要である。若い教員に国際性を身につ

けさせ、質の高い論文を国際学会で発表できるようにするには外国人研究者を一部採用し、日常の実

験上の討論を英語で行うと共に、学内、研究室内のセミナー等も英語で行うことである。複数の研究

室でこのことを心がけるだけでも長期的には大きく改善することが期待できる。 ③ 当該学部、センター、研究所として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166) [現状] 本医学部には複数の有能な研究グループを有しており、それらは国内外に高く認識されている。そ

の研究活動状況を示すパラメーターとして、本医学部を拠点として行われた主な研究プロジェクトと

その研究課題及び研究費総額を示す。 ( )内:(研究代表者名・研究期間(年度)・研究費総額(千円))

1) 学術フロンティア:がん、免疫不全、難治性遺伝病などに対する新しい細胞移植治療法の開 発プロジェクト(加藤俊一 教授・1997~2001・441,318) 2) ハイテク・リサーチ・センター:発生工学を用いたヒト疾患モデル動物の開発・臨床応用(木

村 穣 教授・1999~2003・456,801)

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第 7 章 医学部

3) 未来開拓学術研究推進事業: a 糖酸化反応経路の解明、及び糖酸化ストレスのシグナリングとレドックス制御機構の解明(宮

田 敏男 助教授・1996~2000・259,463) b 機能再生の医工学(堀田 知光 教授・1997~2001・469,930) c 粘膜細菌感染症の集学的制御法(中江 太治 教授・1997~2001・126,374) d 生体系を用いた心・腎疾患の進行機序の解明(市川 家國 教授・1998~2002・324,627) e マイクロサテライト多型を用いた疾患関連遺伝子の解明(猪子 英俊 教授・2000~2004・

550,000) 4) 受託研究:

a 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性(猪子 英俊 教授・2000~2004・1,000,000)

b 次世代単色X線診断治療システムの研究開発(田中 越郎 助教授・1999~2003・125,000) c 老化(Ageing)に関する研究(石井 直明 助教授・2001~2003・15,000)

また、医学部研究活動の特筆すべき事は、医学部研究委員会が統一テーマを決めて研究公募をする

医学部独自の研究プロジェクトを 3 件有することである。その研究活動状況は研究発表会にて研究委

員会が評価し助言するという、研究委員会主導型の研究プロジェクトである。 5) 医学部プロジェクト研究統一テーマ「ポストゲノム」

a 蛋白質の結晶化及び三次元立体構造解析システムの構築 b ヒト疾患責任遺伝子の解明と疾患モデルマウスの開発 c DNA マイクロアレイを用いた抗癌剤耐性細胞の遺伝子発現プロファイリング解析と個別化医

療のための遺伝子検査法の開発

[点検・評価(長所と問題点)] 最近の研究活動の主な流れとして、上記研究課題にも見られるとおり、(ⅰ)猪子らによる遺伝子

解読、病因遺伝子の探索に関する研究(ⅱ)市川らによる疾患モデル動物とヒト疾病解析(ⅲ)堀田・

加藤らによる細胞移植、再生医療の研究(ⅳ)中江らによる感染症治療に関する研究(ⅴ)木村らに

よるトランスジェニック動物を用いた疾患モデル動物の解析(ⅵ)田中らによる単色 X 線を用いた微

小血管診断の研究(ⅶ)石井らによる老化のモデル実験などに関する研究等生命科学分野の研究が主

流となっている。これらの研究プロジェクト・リーダーは国際的にも高く評価されている研究者であ

り、外部研究費の導入も相当額に及んでいる。これは本医学部の生命科学分野における研究が高いレ

ベルで評価されているものと認識できる。 ただし、このように時代の要求に合った研究プロジェクトは活発に研究活動を行っているが、一方で

純粋な基礎研究を推進する研究グループが比較的薄いことが感じられる。医学部という特殊性を考え

ると応用研究が多くなることはやむを得ない事であるが、医学につながる基礎研究にも重点を置くこ

とを検討しなければならない。 また、上記 5)の医学部プロジェクト研究は、必ずしも論文の数を稼ぐことを目的とせず、医学部に

新しい研究システムを構築することを目的としている。従来自由課題で公募が行われ、審査結果によ

り評価の高い研究を採択していたが、新たに統一テーマを決めて公募するという、医学部としての研

究活動の方向性を示したことは医学部全体の今後の研究活動に少なからず影響を当たえるものと評価

できる。 [将来の改善・改革に向けた方策] 研究活動は上部から押しつけられて行うことではなく、研究者から自発的に上がってくることが望ま

しい。しかしながら特筆すべき研究を推進するためには、組織の後ろ盾は欠かすことができない。そ

のような意味において次のような改善策が必要となる。

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第 7 章 医学部

1) 学内研究費の増額 近年学内研究費は減額の一途を辿っている。基礎系教員一人当たりの学事予算は約46万円であり、

数年前の約 1/3 である。因みにこの額は他大学の医学部のそれと比べても 1/3 から 1/5 である。これ

では外部研究費が得られなかった場合、研究を中断せざるを得ない。 2) 医学部が推進する研究の方向の策定

上にも述べたように個々の研究は自発的になされるものであるが、これら個々の研究を伸ばすため組

織としての医学部が未来型の方向を打ち出すことは可能である。例えば「生体成分の原子・分子構造

に立脚した生物医学の研究」とか「生物ナノマシナリー解析と医学・生物学」など、このような方向

を打ち出し、設備を充当すれば研究テーマに関わりなく参加できる。 3) 研究支援組織及び設備の改善

共同利用研究室、技術支援室などの主として技術職員が係わる組織を近代化すると共に設備の総点

検を行うことにより研究遂行上のサービスを強化する。 4) 教員の任期制と外国人研究者の採用

国際的に評価の高い研究を創出するためには、教員の流動性を図り、日本の伝統に縛られない外国

人研究者を導入することも必要である。 ④ 研究助成を得て行われる研究プログラムの展開状況(項目№167) [現状] 文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業として 1997 年度に学術フロンティア推進事業、1999年度にハイテク・リサーチ・センター整備事業の選定を受け 5 年間の研究活動を展開している。概要

を以下に示す。 1) 学術フロンティア推進事業

a 研究組織名:細胞移植治療開発プロジェクト b 研究プロジェクト名:がん、免疫不全、難治性遺伝病などに対する新しい細胞移植治療法の開

発プロジェクト c 研究代表者:遺伝子工学・細胞移植研究センター 次長

医学部 小児科学部門 助教授 加藤 俊一 d 研究施設:遺伝子工学・細胞移植研究センター e 研究期間:1997 年度~2001 年度 f 研究概要:東海大学においては 1980 年頃より大学独自の大型プロジェクトとして骨髄移植や

臍帯血移植などの造血幹細胞移植に取り組み、全国でも有数の医療施設として多数の治療実績

を有している。造血幹細胞移植は白血病等の造血器腫瘍、先天性免疫不全症や先天性代謝異常

疾患等の遺伝病などに対する根治療法として積極的に臨床応用されている。本プロジェクトに

おいてはこのような実績を踏まえて 21 世紀の新しい細胞治療法の開発を目的として、近い将

来に臨床に応用しうるような基礎的研究を行って来た。 g 国際シンポジウムの実施:2001 年 8 月 28 日(火)東海大学国際シンポジウム「細胞治療と再

生医療の最前線」を開催。海外からの参加者を含め合計 120 名の参加があり、海外からの参加

者 3 名を含む 23 名の外部評価者による評価が行われた。 2) ハイテク・リサーチ・センター整備事業

a 研究組織名:疾患病態解明及び新治療法研究開発グループ b 研究プロジェクト名:発生工学を用いたヒト疾患モデル動物の開発・臨床応用 c 研究代表者:遺伝子工学・実験動物研究センター センター長 医学部 分子生命科学部門

教授 木村 穣 d 研究施設:遺伝子工学・実験動物研究センター e 研究期間:1999 年度~2003 年度

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第 7 章 医学部

f 研究概要:がん、神経変性疾患、自己免疫疾患、糖尿病、腎疾患、動脈硬化、感染症(AIDS)などの難治性疾患の克服は医学研究の重要な課題であるが、これらの疾患は未だ十分に解明さ

れていない。これらの疾患に対して有効な治療法を確立する上でも、病態の分子レベルでの解

明が待たれている。当該研究では、疾患の病態解明のため、責任遺伝子が同定される疾患をタ

ーゲットとして発生工学的手法を用いて難治性疾患の特徴を持ったモデル実験動物を作製す

る。それらが真の疾患モデルたりうるかを詳細に検討すると共に、これを用いて疾患の進展を

制御する新しい治療法の開発を目的とする。

[点検・評価(長所と問題点)] 研究成果の評価は文部科学省に提出した「研究進捗状況報告書」「研究成果報告書」によってなされ、

当該研究成果に対する私立大学研究高度化推進委員会委員による評価結果は次のとおりである。 1) 学術フロンティア推進事業(事後評価)

総合所見:【A】【A】 臍帯血幹細胞による移植治療など臨床的に注目される研究が進行しており、それを支える基礎的研

究にも十分な成果がみられる。(14 高私助第 3 号 平成 14 年 4 月 10 日) 2) ハイテク・リサーチ・センター整備事業(中間評価)

総合所見:【A】【A】 改善すべき点も多く、未だ成果といえるものは見えていないが、本プロジェクトの性格を考慮に入

れ、且つ、問題点を自ら挙げて解決しようとする冷静な視点を評価し、将来に期待したい。 本研究施設は、大学における発生工学センター的な役割を持つものと想像される。ならば、本プロ

ジェクト終了後も、継続するための方策を今から練る必要がある。 (14 高私助第 18 号 平成 14 年 7 月 25 日) 上記評価のとおり、当該プロジェクトは高いレベルで研究活動が展開されていると評価できる。た

だし、問題は 2)のコメントにもあるように研究期間(補助対象期間)終了後の研究施設の運用方法

及びランニングコストに対する対応策を早急に検討することである。 [将来の改善に向けた方策] 研究期間終了後の研究施設の運用について次のような方策を検討していく。

1) 遺伝子工学・細胞移植研究センターは、学術フロンティア推進事業の終了に伴い、当該プロジ

ェクトの研究成果をベースに更に発展した形で当研究施設において研究を継続することが決

定し、既に学術フロンティア構想調書(継続分)が文部科学省に提出されている。この申請が

採択されれば、研究費および研究施設のランニングコストに対し補助を受けることが可能とな

り、一層の研究活性化が図れる。 2) 遺伝子工学・実験動物研究センターは、未だ研究期間中であるが、研究期間終了後については、

先進医学研究運営委員会において、プロジェクトの継続を前提に検討がなされている。同セン

ターのランニングコストは光熱水費だけでも年間約 4 千万円かかる。この費用を捻出するため

にも補助対象事業として継続申請をすることは勿論であるが、遺伝子改変マウスの作製等の高

い技術力を生かし、外部からの受注をうけるシステムを構築することを検討する。

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第 7 章 健康科学部

【健康科学部】

1. 研究活動 (1) 研究活動

論文等研究成果の発表状況(項目№164)① <看護学科>

1) 看護学科所属の専任教員(2002 年 4 月現在 38 名)の研究業績は以下の通りである。 年度 著書 学術論文 学会発表 左記以外の業績 1997 22 48 73 28 1998 4 39 63 23 1999 21 66 75 27 2000 22 59 84 43 2001 13 53 79 46

2) 文部科学省科学研究費応募件数および採択件数は以下の通りである。1998 年度からの応募状況

は毎年 20 件を上回っている。採択率も 40%を超え、2001 年度は 52%、2002 年度は 50%と

なっている。 1998 1999 応募 採択 応募 採択

0 0 0 0 特別推進研究 0 0 0 0 重点領域研究A 0 0 0 0 基盤研究A一般 2 1 4 0 基盤研究B一般 8 5 8 5 基盤研究C一般 0 0 0 0 基盤研究A展開 2 0 1 0 基盤研究B展開 0 0 0 0 基盤研究C企画 6 2 4 1 萌芽研究 5 2 5 4 奨励研究A

2000 2001 応募 採択 応募 採択

0 0 0 0 特別推進研究 0 0 0 0 特定領域研究A 0 0 0 0 地域連携推進研究 1 0 0 0 基盤研究A一般 0 0 0 0 基盤研究A一般(国) 0 0 2 0 基盤研究B一般 0 0 0 0 基盤研究B一般(国) 12 5 13 7 基盤研究C一般 0 0 0 0 基盤研究A展開 0 0 3 2 基盤研究B展開 0 0 0 0 基盤研究C企画 0 0 0 0 基盤研究A海外 1 0 0 0 基盤研究B海外 6 3 4 1 萌芽的研究 4 3 5 4 奨励研究A

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第 7 章 健康科学部

2002 応募 採択

0 0 特別推進研究 0 0 特定領域研究 0 0 特定領域研究B 0 0 地域連携推進研究 0 0 基盤研究A一般 0 0 基盤研究A(展) 1 0 基盤研究B一般 2 2 基盤研究B一般(展) 9 5 基盤研究C一般 0 0 基盤研究C企画 0 0 基盤研究A海外 0 0 基盤研究B海外 0 0 基盤研究S 7 1 萌芽的研究 0 0 若手研究A 3 3 若手研究B

3) 委託研究等は以下の通りであり、各種財団、株式会社、有限会社、個人など、さまざまなとこ

ろから研究費の助成を受け、研究を推進している。 1997 1998 1999 2000 2001

1 1 (財)神奈川科学技術アカデミー 1 (財)大山健康財団 2 2 (財)喫煙科学研究財団 1 (財)トステム建材産業振興財団

International society of nurses in Genetics Emilia 1 1 1 東京都 1 1 ジョンソン・エンド・ジョンソン㈱ 1 (株)メディカル東友 1 (株)ゼクセルライフビジネス 2 1 (有)オクヤマエンタープライズ 1 3 2 Tiemi TAIRA Margarida など個人

4) 東海大学国内・外研究派遣計画採択件数は以下の通りである。1998 年以降減少傾向であり、

2001 年度は 0 であった。 1997 1998 1999 2000 2001 件数 年度

1 4 5 3 0 海外派遣旅費補助金(短期) 1 1 0 0 0 海外派遣旅費補助金(中期) 0 1 0 0 0 海外派遣旅費補助金(長期) 2 6 5 3 0 合計

〔点検・評価〕 論文等研究成果の発表状況について見ると、著書は年度による差はあるものの 20 件程度、学術論

文は 1999 年度以降 50 件を超えている。学会発表は少ない年度で 63 件、他の年度はすべて 70 件を

超え、一人当たり約 2件の発表を行っていることになる。左記以外の業績についても増加傾向である。 文部科学省科学研究費応募件数および採択件数は、特別推進研究、特定(重点)領域研究の応募は

最近 5 年間なく、これらの応募を心がける必要があろう。 論文等の研究成果の社会的認知では、専任教員の研究業績を分析した結果、個人差はあるものの多

くの教員の論文は、客観的 に権威のある国際学会・全国学会レベルの学会誌に掲載されたものを含

んでいた。

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第 7 章 健康科学部

また、学術著書についても国の内外において高く評価されたものが多かった。 〔将来の改善に向けた方策〕 以上の研究活動については、今後も引き続き研究成果を上げる努力が求められよう。 また、今後、さらに研究活性化方策の検討が必要である。特に、研究業績の不活発な教員に対する

活性化方策として、健康科学部では、2002 年度に教員資格審査基準を設定し、採用あるいは昇格にあ

たっては、それぞれの職位にふさわしい業績を客観的に評価できるようにした。この基準は、専任教

員が自らの業績をふり返り、各自の研究業績を評価することにも役立ち、研究業績の不活発な教員の

気づきを促進している。また、研究業績の不活発な教員に対しては、健康科学部特別研究に応募を勧

めるなど、特別の配慮を行っているが、今後もこの対策を推進することが必要である。 <社会福祉学科> 〔現状〕 過去 1999 年度から 2001 年度までの本学科専任教員による論文等研究発表状況は、東海大学教員活

動情報データベースシステムの登録によると、1999 年は 64 件、2000 年、56 件、2001 年、53 件で

あった。過去 3 年間の総数は、173 件であった。過去 3 年、年間 50 件以上の論文等研究発表の成果

があった。論文等研究内容は、福祉分野において、児童から高齢者に関するする幅広いものがあった。

福祉分野に加え、医療、教育、社会学、芸術等の分野における幅広い研究成果であった。社会福祉学

科として、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士の国家資格を取得できる教育を行うための教員

にかかる負担は大きく、研究の時間が制約されることも否めない現状がある。 1) 社会福祉学科所属の専任教員の研究業績の実数は以下の通りである。

学会・学術集会

年度 著書 学術論文 その他 国内 海外

学科 1997年 11 27 12 24 4

学科 1998年 8 31 10 27 0

学科 1999年 17 35 10 38 5

学科 2000年 15 33 8 43 4

学科 2001年 10 33 7 31 2

学科 合計 61 159 47 163 15

2) 東海大学国内・外研究派遣計画採択件数は以下の通りである。 件数 1997 1998 1999 2000 2001

海外派遣旅費補助金(短期) 1 1 4 2 0

海外派遣旅費補助金(中期) 1 0 0 0 0

海外派遣旅費補助金(長期) 0 0 0 0 0

合計 2 1 4 2 0

〔点検・評価〕 評価の視点として、社会福祉関連の研究の実証・調査研究のみでなく、理論研究や臨床・実践研究

があり、その多様性を考慮する必要があった。教育・授業運営と、研究との負担割合を配慮する必要

があった。 〔将来の改善に向けた方策〕 社会福祉の分野は、高齢者・少子化等の経済・社会・文化的変化の時代にあり、その研究分野は多

岐にわたっている。多様性のある現状の社会調査とともに、今後社会福祉の専門職教育の質の向上に

関する研究も要求されるようになり、その変化に応ずる研究成果が達成できるよう体制を整備してい

きたい。教育と研究とのバランスをどのようにしていくか、今後の社会福祉学科の課題である。

国内外の学会での活動状況(項目№165)② <看護学科> 〔現状〕

1330

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第 7 章 健康科学部

上記 1-(1)-①の 1)に示した通り、国内・外の学会での発表は活発に行われているが、それらの学会

において、多くの教員が国内はもとより国外において、理事長、理事などの役員を務め、学会の運営

に貢献している。 <社会福祉学科> 〔現状〕 過去 1999 年度から 2001 年度までの社会福祉学科専任教員による国内外の学会での発表状況は、上

記 1-(1)-①の 1)の一覧表に示したとおり、1999 年は国内学会・学術集会での発表は 38 件、海外、5件であり、2000 年度、国内、43 件、海外、4 件、2001 年度、国内、31 件、海外、2 件であった。過

去三年間の総件数は、国内、112 件、海外、11 件であった。大学を取り巻く社会福祉分野において、

実践活動に対する評価は高いが、研究・学会活動に対する評価が必ずしも高いものであるとは限らな

いという傾向が見られた。また、東海大学国内・外(海外)派遣計画採択件数は、上記1-(1)-①の 2)の一覧表のとおり、1999 年度は 4 件であったが、2000 年度は 2 件、2001 年度は 0 件と減少してい

る。 〔点検・評価〕 現状分析の中で述べたように、実践への評価に対し、学会発表活動等への参加は、福祉分野におい

て、社会福祉教育者や実践者からは高く評価されるとは限らないといった学外における“空気”を考

慮する必要があった。また、国内学会として社会福祉学会、地域福祉学会、社会福祉実践理論学会、

介護福祉学会等と少なく、海外の発表に関してもソーシャルワークに関する国際会議(International Association of Social Workers)は 4 年に一度のみというものもある。点検・評価を加えるとき、国

内、海外での発表数のみでなく、その発表内容に関する配慮が必要であった。 〔将来の改善に向けた方策〕 福祉分野のみでなく、医療、教育、社会学といった幅広い学会、学術集会への参加と発表ができる

体制作りが今度の課題である。また、海外での発表を可能にする時間的・経済的にサポートする体制

も必要となる。学内の整備とともに、実践活動へのかかわりともに、社会福祉学科内・外の“研究・

学会発表活動等の活性化”への挑戦も、今後の課題となろう。

特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166)③ <看護学科> 〔現状〕 健康科学部では、専任教員の研究の活性化に資するため、1999 年度から特別研究制度が設けられて

いる。初年度から、2002 年度までの研究件数は、以下の通りであり、社会福祉学科の共同研究を含め

て、毎年 4~5 件採択されている。 年度 件数 主な内容 1999 4 ・諸外国における遺伝看護教育の実態調査

・小規模企業労働者の健康の維持・増進活動の現状と課題 2000 5 ・初産婦における母乳栄養確立に影響を与える要因の検討

・看護学生の対人関係形成に関する検討 2001 5 ・湯たんぽの援助技術に関する実態調査

・家族援助に困難を感じている看護職に対するコンサルテーションの 効果と有効な家族援助方法

2002 4 ・妊娠低栄養マウスのサイトメガロウイルス胎内感染について ・救命救急外来受診を経験した患者の家族援助のあり方に関する研究

〔点検・評価〕 これらの研究により、学科間の研究交流が推進され、幅広い研究成果が上がっている。

〔将来の改善に向けた方策〕 今後もこのような研究活動を推進すると共に、得られた研究結果を広く公表していくことが課題で

1331

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第 7 章 健康科学部

ある。そのための助成や学内へのフィードバックシステムをさらに強化しなければならない。 <社会福祉学科> 〔現状〕 過去 1999 年度から 2001 年度までの本学科専任教員による研究活動状況として、文部科学省研究費

取得は、1999 年は 15 件、2000 年度、10 件、2001 年度、10 件であった。厚生科学研究費(長寿科

学)取得は、1999 年、1 件、2000 年、1 件、2001 年、1 件であった。テーマで行われた。2000 年度

の健康科学部特別研究費として 4 件取得した。 1) 文部科学省科学研究費応募件数および採択件数は以下の通りである。

1998 1999

応募 採択 応募 採択

特別推進研究 0 0 0 0

重点領域研究A 1 0 1 0

基盤研究A一般 1 0 1 1

基盤研究B一般 1 0 2 0

基盤研究C一般 7 3 7 4

基盤研究A展開 0 0 0 0

基盤研究B展開 0 0 0 0

基盤研究C企画 0 0 0 0

萌芽研究 6 3 3 2

奨励研究 2 0 0 0

2000 2001

応募 採択 応募 採択

特別推進研究 0 0 0 0

特定領域研究A 0 0 0 0

地域連携推進研究 1 0 0 0

基盤研究A一般 1 1 1 1

基盤研究A一般(国) 0 0 0 0

基盤研究B一般 1 0 0 0

基盤研究B一般(国) 0 0 0 0

基盤研究C一般 7 4 7 3

基盤研究A展開 0 0 0 0

基盤研究B展開 0 0 1 1

基盤研究C企画 0 0 0 0

基盤研究A海外 0 0 0 0

基盤研究B海外 0 0 0 0

萌芽的研究 2 0 1 0

奨励研究A 0 0 0 0

2002

応募 採択

特別推進研究 0 0

特定領域研究 0 0

特定領域研究B 0 0

地域連携推進研究 0 0

基盤研究A一般 2 1

基盤研究A(展) 0 0

基盤研究B一般 3 2

基盤研究B一般(展) 1 1

基盤研究C一般 5 2

基盤研究C企画 0 0

1332

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第 7 章 健康科学部

基盤研究A海外 0 0

基盤研究B海外 0 0

基盤研究S 0 0

萌芽的研究 0 0

若手研究A 0 0

若手研究B 1 0

〔点検・評価〕 今後の研究において、今後の研究の発展を進めていく上において、特に若い研究者の参加が積極的

に行われているかという視点で評価をした。 〔将来の改善に向けた方策〕 文部科学省の科学研究費は、社会福祉分野において、その専門分野で知名度のある研究者は何回も

取得し、新規に若い研究者が取得する困難さが見られた。今後、若い研究者が研究費を取得していけ

る体制と、研究申請に関するガイダンスを実施していくことが、今後の課題として考えられる。

1333

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第 7 章 総合教育センター

【総合教育センター】

1. 研究活動 (1) 研究活動

論文等研究成果の発表状況(項目№164)① [現状] 当センター教員 21 名の過去 3 年間(1999~2001)における研究活動状況(論文と著書)を、「教

員活動情報システム」を利用して調査した。実際上利用できた数字は、当システムに登録のあるもの

16 名である。(有効数字は小数点以下 1 桁) 表 7-1-1-① 各系の教員における研究業績(論文・著書)

系 項目 論文 著書 論文+著書 21 8 29 人文系 本数/3 年間4.2 1.6 5.8 (教員数 5) 1 人当り平均本数1.4 0.5 1.9 1 人当り平均本数/1 年間

20 2 22 社会系 本数/3 年間5 0.5 5.5 (教員数 4) 1 人当り平均本数

1.7 0.2 1.9 1 人当り平均本数/1 年間

34 3 37 自然系 本数/3 年間4.9 0.4 5.3 (教員数 7) 1 人当り平均本数1.6 0.1 1.8 1 人当り平均本数/1 年間

75 13 88 合計 本数/3 年間4.7 0.8 5.5 (教員数 16) 1 人当り平均本数1.6 0.3 1.8 1 人当り平均本数/1 年間

最高の値:11 本/3 年間 ~ 最低の値:1 本/3 年間 また職分での集計は以下の通りである。

身分 該当数 ~本/3 年間 5.4 教授 5 名 5.7 助教授 7 名 5.3 専任講師 4 名

[点検・評価]

1) 論文等研究成果の発表状況は活発か。 以上の数値から、各構成員は 1 年間に平均して 1.8 本の論文あるいは著書の形の研究発表を

していることが分かる。各個人によっても差があるが、各分野における研究内容の性質の違い、

あるいは職務上の拘束の度合いなどを鑑みれば、論文数が多い者と少ない者があるのは致し方

ないことと思われる。特に、人文社会系と自然系(なかでも物理系)とは論文発表数の違いが

顕著である。全般からみて、1.8 という数値は決して低い数値ではないと思われるが、活発と

は言えない。また、年齢が上がって教授レベルになると業績数が減るという指摘を多く聞くが、

当センターでは数値上はそのような差はなかった。 2) 研究成果は社会的に認知され得るものであるか。

社会的に認知されうるということの基準がはっきりしないが、論文の場合はレフリー付きで

あればそれに該当すると思われる。上のデータから、レフリー付きの論文数の平均を取り出す

と、1 人当り 4.7 本/3 年間で年平均 1.6 本/年であり、これらの論文は社会的に認知されうる

と考えられる。 3) 研究業績の不活発な教員に活性化を促す方策はとられているか。

特にとられていない。 [将来の改善に向けた方策] 活発な研究活動と判断するには、1 年平均で 1 人当り 2 本以上の論文著作数が望ましいであろう。

1334

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第 7 章 総合教育センター

各自の専門領域の他に、大学内の教養教育に関する論文(現在はきわめて少ない)なども業績として

今後期待できると思われる。

国内外の学会での活動状況(項目№165)② [現状] 「教員活動情報システム」を利用して、登録のある当センター教員 16名の過去 3年間(1999~2001)

における学会発表の状況を調査した。(有効数字は小数点以下 1 桁) 表 7-1-1-② 各系の教員における研究業績(論文・著書)

系 国内 国外 国内外合計 5 0 5 人文系 回数/3 年間1 0 1 5 名 1 人当り平均回数

0.3 0 0.3 1 人当り平均回数/1 年間

7 0 7 社会系 回数/3 年間1.8 0 1.8 4 名 1 人当り平均回数0.6 0 0.6 1 人当り平均回数/1 年間

60 16 76 自然系 回数/3 年間8.5 2.3 10.8 7 名 1 人当り平均回数2.9 0.8 3.6 1 人当り平均回数/1 年間

72 16 88 全員 回数/3 年間4.5 1 5.5 16 名 1 人当り平均回数1.5 0.3 1.8 1 人当り平均回数/1 年間

国内外合計値 最高の値:46 回/3 年間 ~ 最低の値:0 回/3 年間 [点検・評価] 以上の数値から、各構成員は1年間に平均して1.8回の国内外の学会発表をしていることが分かる。

だが、特に物理系教員の発表回数が群を抜いており(国外での活動においても同様)、活発な活動をし

ていると判断できるが、その他の教員はそのようには評価できないのが現状である。しかし、ここで

も、各分野における研究の性質の違い、学会の種類による質的な違いなどが大きいと推察され、一概

には比較できず、評価は難しい。 [将来の改善に向けた方策] 活発な活動をしている教員からは、研究活動のための環境整備(学内運営的な負担の軽減、教育活

動の負担の軽減などの措置)を望む声も聞かれる。特に学会発表が多くなれば、講義の休講が増える

という問題がある。

当センターとして特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166)③ [現状] 当センターにおける特筆すべき研究活動や研究成果は特にない。学術賞の受賞については、「教員

活動情報システム」を利用して、登録のある当センター教員 16 名の過去 3 年間(1999~2001)にお

ける学術賞の受賞状況を調査した結果、1999 年の情報文化学会における第 5 回情報文化学会賞受賞

の 1 件のみであった。 [点検・評価] 特筆事項なし。

[将来の改善に向けた方策] 特筆事項なし。

1335

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第 7 章 外国語教育センター

【外国語教育センター】

1. 研究活動 (1) 研究活動

論文等研究成果の発表状況(項目No.164)① [現状] 外国語教育センターでは教員各自が各々の分野で活発に研究発表をしており、研究成果を発表する

場として年 1 回発行の「所報」と「紀要」がある。「所報」は言語教育全般に関する論文や実践報告を扱っ

ており、特に専任ばかりではなく非常勤教員にも広く門戸を開けている。「紀要」は原則として専任教

員のみが研究成果を発表している。投稿論文の審査については紀要委員会が採用の可否を決定してい

る。(過去 6 年間の発表は大学発行の「総覧」を参照)。 また、この他に「異文化交流研究会」の機関誌「異文化交流」(2000 年創刊)と英文ジャーナル

「Monograph」(1998 年創刊)も発表の場を提供している。各教員の業績はインターネットで見ることが

できる。 [点検.評価(長所と問題点)] 目標の実現に向けた取り組みについて、評価の視点と項目を設定し評価を行なった。 1) 目標:論文等研究成果の発表システムの構築。 2) 評価の視点および項目:

a 論文等研究成果の発表状況。 b 紀要・所報等において掲載原稿の厳密な査読が行われているか。

3) 評価: a 2000 年度に発表された論文等は以下の通りである。

著書単独

(共同)

原著論文単独

(共同)

論文総説単独

(共同)

翻訳単独

(共同)

学術書編集単独

(共同)

学会発表等単独(共同)

その他単独

(共同)

小計単独(共同)

2 32 1 1 2 42 33 113(5) (1) (0) (3) (0) (5) (2) (16)

これを見ると、単独研究で論文に偏っているといえる。「学際」という言葉がキーワードとなっ

ている今日、共同研究の増加が望まれる。また、論文だけではなくその他の発表活動も必要であ

ろう。 現時点でセンター全体の上記数値が適切であるかどうか判断する基準がないが、教員の間にも

研究発表に熱心な向きと消極的な向きがあることは問題である。個々の教員の業績評価について

は、現在評価委員会で検討がなされており、2002 年度末に数値化される。この様に本項目の点検

は目下進行中である。 なお、インターネットでも教員の業績を公開している。

b 「所報」と「紀要」の発行に当たっては、現在紀要委員会において応募原稿を審査し、掲載の可

否を決定している。しかし、紀要委員が全ての分野のエキスパートであるわけはない。当該原

稿の内容が紀要委員の研究分野とあまりにかけ離れている場合、分野の近い専任教員の意見を

聞くことになる。しかしこの方法には限度がある。専任教員は採用時に専門分野が重複しない

ように配慮されているからである。つまり、専任教員の原稿をセンター内で査読できることは

稀であると考えなければならないのである。この点から、審査を当センター以外に幅広く依頼

することも検討しなければならないであろう。 [将来の改善、改革に向けた方策] 語学教員はノルマとしての授業(8 コマ)の他に、グループ単位で行なわれる語学教育プロジェクトの

1336

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第 7 章 外国語教育センター

立ち上げと運用、留学プログラムに関わる試験問題作成などの作業、休暇中の各留学研修引率といっ

た仕事がある。英語教員はさらに入試問題の作成、付属高校の英語問題委員まで付け加わる。このよ

うに研究時間以外のノルマが多く、研究に没頭できる体制とはいえない。研究発表を活性化するには、

サバティカル制度に類似した「委員ならびに超過勤務免除制度」とでもいうものを検討すべきであろ

う。あるいは、研究補助金等の援助も好ましいことである。かつて研究格差を是正し、研究発表を奨

励するため、研究費の比例配分という案があったが、その後発展をみていない。要検討事項であろう。

また、インターネット上の業績発表を全面的に外に向かって公開することも考慮すべきであろう。

国内外の学会での活動状況(項目No.165)② 〔現状〕 外国語教育センターの専任教員は、第一類(英語)と第二類(中国語、ドイツ語、フランス語、コリア

語、ロシア語、スペイン語)のそれぞれにおいて、諸学会に所属して役職に就き顕著な活動を行ってい

る。 具体的には、過去 4 年間で以下のような活動状況が挙げられる。

第一類:日本英語学会大会準備委員、日本イエイツ協会理事・幹事・委員、日本英語表現 学会評議委員、駿河台英文学研究会事務局長、ジョージ・エリオット協会運営委員、日本 アイルランド協会幹事・編集委員、JACET 委員、日本ジョンソン協会編集委員、日本時 事英語学会委員・支部幹事、日本ジョンソン・クラブ委員、第 12 回国際応用言語学会東 京大会運営委員、JALT 支部役員等。 第二類:東京スペイン語学研究会代表者、日本ロシア文学会理事、ロシア民話研究会副会

長・事務局長・運営委員、ドストエフスキーの会事務局長、日本フランス語・フランス文 学会幹事、日本地中海学会幹事、ゲルマニスティネンの会幹事、東アジア地域研究学会理 事、日本独文学会支部理事、ビジネス中国語学会理事等。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 目標の実現に向けた取り組みについて、評価の視点と項目を設定し評価を行なった。 1) 目標:学会活動の活性化。 2) 評価の視点および項目:専任教員は国内外の学会で適切な活動を行っているか。 3) 評価: 第一類と第二類に共通して、上述のように当該学会の理事・幹事・委員等としての活

発な活動が挙げられる。第一類では、文学・言語学等の多分野の諸学会において、多方面にわ

たるバランスのとれた学会活動が行なわれている。第二類では、所属する 6 言語すべてにお

いて諸学会の活動が行なわれている。海外学会においても、国内ほどではないが発表も行われ

ているが、[現状]で挙げたような役職を引き受けるまでにはいたっていない。 [将来の改善に向けた方策]

21 世紀は IT 情報化の時代で、本センターの研究活動も内外で変貌を迫られている。国内では、今

後 18 歳人口が減少し大学の大衆化はいっそう顕著になるだろう。産学共同研究も時代の要請になっ

てきている。そのような時代の変化に対応する学会活動の新しい展開も、本センターではすでにみと

められる。例えば、文部科学省からの学術審議会専門委員の委託、日本貿易振興会からの委員会委員

の委託である。このような方向性は、今後いっそう求められなければならない。 海外に目を向けると、世界のボーダーレス化は自明のことになりつつある。それに伴い、国内にと

どまらず、海外での学会活動にも積極的に参加する必要性が出てきている。そのような意味から、本

センターは全言語において学会活動の国際性をいっそう高めていかなければならない。

1337

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第 7 章 外国語教育センター

当該学部、センター、研究所として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目No.166)③ 〔現状〕 外国語教育センターでは、紀要等の研究成果と並んで特筆すべき研究活動が実践されている。本学

には早くから海外の大学と長期・短期協定留学制度があり、本センターも学生引率等で積極的に関わ

ってきた。その国際交流の知的蓄積は学部等研究教育補助費の助成を受け、1997 年に『留学の愉しみ』

として結実した。 この出版を契機に、「東海大学外国語教育センター異文化交流研究会」が発足する。その後、同研究

会は定期的に研究例会を開催し、留学協定国と日本との関係史の視点から歴史・文化研究を深めてい

った。この学術的な研究活動は 1998 年の『若き日本と世界』、1999 年の『日本の近代化と知識人-若き日本と世界 11』の刊行へと発展を遂げた。このようにして、同研究会は研究成果を学内・学外に問

う機会を得た。さらに 21 世紀という、かつて人類が経験したことのないグローバル化の時代の要請

に応えるために、通時的な視点と同時に共時的なアプローチでの異文化研究、をスローガンとして同

研究会は機関誌『異文化交流』を創刊した。これは年に 1 回発表され、すでに 3 号を発刊している。 第一類は外国語教育に関する英文のモノグラフを、1996 年から 2000 年にかけて 5 冊シリーズで発

刊した。ここでも充実した外国語教育を展開するための活発な研究活動が実践されている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 目標の実現に向けた取り組みについて、評価の視点と項目を設定し評価を行なった。

1) 目標:研究活動の活性化。 2) 評価の視点および項目:特筆すべき研究活動の効果とその問題点。 3) 評価: 歴史・文化理解のための学術研究と外国語教育に関する研究が、本センターでは両輪

として機能している。その研究アプローチとして、通時的視点と共時的視点のバランスが良い

といえる。しかも、それらの研究活動は自己完結にとどまらず、本学の講義・授業にもフィー

ドバックされ、その質と内容を高めている。こうした両輪として機能する特徴を持っているに

もかかわらず、語学教育のみを実践すれば良しとする向きが内外にあることは、問題点といえ

るだろう。 〔将来の改善に向けた方策〕 ボーダーレス化の時代にあって、「異文化交流」は今まで以上に海外の研究機関に目を向けなければ

ならない。その国際性の真価は研究分野に限らず、人的交流にも求められるべきだろう。海外の協定

大学にも「異文化交流」のテーマに取り組む研究機関がある。そのような海外研究機関との緊密な交流、

またその外国人研究者との共同研究が実現すれば、本センターの研究活動にも一層の深化・発展が期

待できるであろう。

研究助成を得て行われる研究プログラムの展開状況(第二類) (項目No.167-1)④ 〔現状〕 「ロシア語と日本語を共存させたインターネット利用の CAI 教材作成システムの研究」

という題目が 1999 年度科学研究費補助金の特定領域研究(A)(2)に採択された。さらに、 「日本語 Windows で動く音声付露語活用電子辞書と CALL 教材作成システムの研究」

が 2002 度科学研究費補助金(基盤研究(C)(2))に採択された。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 目標の実現に向けた取り組について、評価の視点と項目を設定し評価を行なった。 1) 目標 I: ロシア語と日本語を共存させたインターネット利用のCAI 教材作成システムの研究。

a ロシア語と日本語をパソコン上で同時使用するシステムを研究開発し、それを用いて、新し

1338

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第 7 章 外国語教育センター

いロシア語 CAI 教材とインターネットを利用した新教材を作る。 b そのような CAI 教材教材、インターネット教材をロシア語教員が容易に作成できる汎用性の

あるシステムを開発する。 目標 II: 日本語 Windows で動く音声付露語活用電子辞事と CAI教材作成システムの研究

a パソコンの日本語 Windows で動くコンピュータ用の音声付のロシア語活用電子辞典を作る

システムを研究し、スキャナーで取り込んだり、キーで打ち込んだりしたコンピュータ上のテ

キストでその音声付活用電子辞典を実際に活用できるようにするシステム、かつコンピュータ

ー教材(ロシア語(CALL 教材)にそれを利用できるシステムを研究する。期間内に必須単語

5000 語程度の音声付き活用亀子辞典を試作し、コンピュータ上に取り込んだロシア語文の中に

出て来る単語で、本辞典に収録されている語であれば、その語をクリックすれば、その単語の

発音を聞くことができるようにする。 b 将来的に 2 万語程度のロシア語音声付き活用電子辞典、さらにはロシア語音声データベース

が作れるような音声データベース化の方式を確立する。この研究の過程でできた音声付のロシ

ア語活用電子辞典を、たとえ単語数が少なくても、ロシア語学習者と教授者にとって有効なの

で、インターネット上に公開して、いつでも利用できるようにする。 c この音声付ロシア語活用辞典の試作品を活用できるロシア語 CALL 教材作成システムを研

究し開発し、ロシア語教員が容易に、コンピュータを利用した教材(CALL 教材)作ることがで

きるシステムを開発し公開する。 d 科研費のデータベースの項目でロシア語音声データベースとして申請できるようにする。

2) 評価の視点および項目: a 研究目標が達成されているか。 b 学会等から評価されているか。 c 実際の授業で利用できているか。

3) 評価 I: ロシア語と日本語を共存させたインターネット利用の CAI 教材作成システムの研究」 a この目的を果たすために、システムと教材を開発した結果、次の三種類が完成した。 ア Microsoft の Windows 版の CAI 教材

CAI 教材作成のシステムに基づいて、Microsoft の Word を使って作成したロシア語 CAI教材の試作品とこの種の教材を作るためのロシア語 CAI 教材作成システムの試作品。これ

は、問題作成上の約束を決め、それにしたがって Word で打ち込んだリッチテキストを、シ

ステムで CAI 教材に変換させて作った教材である。 イ インターネットを介したロシア語 CAI 教材

Web ファイルで作成したロシア語教材をインターネットを介して使う試作品。またその教

材をインターネット上で運用するためのシステムの試作品。 ウ ロシア語会話 CALL 教材

ロシア語初級者を対象にした簡単なロシア語会話の練習教材の試作品。 b 平成 13 年 1 月 22 日に開かれた第二回特定領域全体会議で、上記の三種類のロシア語 CAI教材、CML 教材の試作品をポスターセッション、デモンストレーションできた。

c 選択コース「ロシア語CAI」で実際に学生に使用してもらい、その評価も受けることができた。

また、インターネット(http://150.7.45.1/russian など)に載せ、学生が自宅から試用できるよう

にした。 評価 II: 「日本語 Windows で動く音声付露語活用電子辞書と CALL 教材作成システムの研究」

a システムを開発し、音声の収録の方法の検討が行われている段階であるが、秋には試作品が

できる。 b 9 月の日本情報学会の研究発表で試作品を紹介することになっている。 c これに類した教材をインターネット(http://www.150.7.45.1/russian2)上に載せ、学生の学習

1339

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第 7 章 外国語教育センター

を助けることができている。

〔将来の改善に向けた方策〕 「ロシア語と日本語を共存させたインターネット利用の CAI 教材作成システムの研究」では、

作成システムに基づいた教材を作成し、ロシア語学習の補助教材の位置を確立したい。 「日本語 Windows で動く音声付露語活用電子辞書と GALL 教材作成システムの研究」では、計画を

実行し、試作品が年度末までにできるように、システムの開発とデータの収録をおこなう。

研究助成を得て行われる研究プログラムの展開状況(第二類) その 2(項目No.167-2) ④ [現状] 文部科学省助成(通称科研費)により、調査研究を継続実施している。

1995 年度より 1997 年度まで 3 カ年継続で、「ラテンアメリカ日系人の精神保健に関する研究」という

テーマで調査研究を行なった。 近年、日本在住のラテンアメリカからの日系人が急増していることに鑑み、スペイン語あるいはポ

ルトガル語を母国語とする日系 2/3/4 世に対する、精神保健面に関する調査を実施した。ブラジル

からの日系人が 25 万人、他のラテンアメリカ諸国(メキシコ、ペルー、アルゼンチン、パラグアイ等)からの人々5 万人程度が、現在日本に在住している。これは、1990 年に入国管理法が改正され、日系

人の就労が認められたため、就労日的の日系人が激増した結果であるが、就労人口だけでなく、その

家族もともに来日するケースも少なくない。当初から、日本語の話せない子どもたちの教育をどうす

べきかということが、問題となり、文部科学省による教育面の対策もたてられてきている。 スペイン語とポルトガル語はいわば姉妹語であり、相互のコミュニケーションにはほとんど支障が

ないため、ブラジル日系人に対しても、スペイン語を通じて調査を行なっている。調査結果として、

日本在住の日系人において、精神保健上の間顕がある程度みられることが明らかになったが、それは、

異文化に対する適応上の問題にとどまらず、日系人のアイデンティティに関わる不全感が関与してし

いることが明らかになった。 上記の 3 年間の調査研究をうけて、科研費により、1998 年度より 2001 年度までの 4 年間継続で、

「ラテンアメリカ日系人の適応とアイデンティティに関する研究」のテーマで再度調査を実施した。 日系人のアイデンティティの問題を端的に表現すれば次のようになろう。日系人は、現地諸国では

小さい頃から日本人とみなされ、日本人として育ってきており、白分を日本人として位置づけている。

しかし、日本に来て生活し始めるやいなや、やがて、白分が外国人だという認識を余儀なくされる。

どちらの国にいても外国人とみなされるという体験を日系人はほぼ共通して持っているが、これをア

イデンティティの葛藤とみなすことができよう。 この 7 年間にわたる調査研究から、ラテンアメリカ諸国在住の 200 万人におよぶ日系人が、潜在的

にアイデンティティに関わる葛藤を抱いていることは、我々、日本人が真剣に考えるべき、重大な問

題と考えられる。 [点検・評価(長所と問題点)] 目標の実現に向けた取り組みを行ない評価を行なった。

1) 目標: 科研費による調査研究を実施し、有用な資料を蓄積、資料の分析を行ない、調査結果

を検討する。また、調査資料や結果を、日系人にフィードバックする。 2) 評価: 7 年間にわたる日系人の精神保健に関する調査を実施し、適応上の間顕、アイデンテ

ィティに関わる葛藤に焦点をあて、間顕点が明らかになったことは、大きな成果といえる 100年ほど前に始まった日本人移民が今日に残した遺産は、膨大であり、また、貴重であるが、こ

の 100 年間を通じて、徐々にマイナス面も表面化してきている。調査を通じて資料の蓄積を図

るために、多くの日系人に接触し、同時に、問題や葛藤を持つ日系人に対し、精神保健面でケ

1340

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第 7 章 外国語教育センター

アするかたちでの対応をする結果になったことは、当初の目標には含まれていなかったもので

あるが、調査における重要な一面として高く評価すべき点であろう。日本においてのみならず、

メキシコやアルゼンチン、あるいは、ブラジルなどの、ラテンアメリカのいくつかの国々にお

いて、調査結果のフィードバックを試みているが、これはやはり重要な点で、現地との接触を

密にすることにもなり、また、調査対象者の信頼性を確保する意味でも必須といえようが、こ

の点でも、かなり積極的な現地での活動がなされていて、評価できるものである。全体として、

問題点はとくにみあたらないが、テーマの重要性を考慮した時、今後いかに調査費用を継続し

て確保していくかという点の、長期の展望があるともっと良いと思われる。 [将来の改善に向けた方策] これまでは、ラテンアメリカ諸国ということで、一括して調査研究を実施してきているが、これに

よりすでに全体としての状況が把握できてきたと考えられる。今後は、個々の国々ごとの状況につい

て検討できるような調査方法が必要となろう。全体から個別への、アプローチの転換点に来ていると

考えることもできよう。 また、すでに述べたこととも関連するが、今後、いかに調査研究や、日系人へのフィードバック活

動を継続実施していくかという点が重要になろう。科研費だけでなく、他の財団への申請も行い、調

査活動費用の多元化を試みるべきと思われる。

1341

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第 7 章 課程資格教育センター

【課程資格教育センター】

1. 研究活動 (1) 研究活動

論文等研究成果の発表状況(項目№164)① 〔現状〕 現在在籍する専任教員による研究成果としての 1996 年以降の著作類は 48 点となっている。 教員毎の著書・学術論文等の発表点数は、最多 15 点、最小 1 点である。発表媒体別にみると、論

文類には、紀要類 25 点、学会誌 10 点、商業誌 8 点、他 5 点と続く。著書では、テキストとしての著

書が多く、専門辞書、ハンドブック、書誌の執筆などもある。また、発表時期別に見ると、1996-1998年度が合計 39 点、1999 年度以降が合計 9 点となっている。 内容面では、教育学、図書館情報学、博物館学それぞれの視点からのもののほか、教授法や大学カ

リキュラムに関する考察がみられる。また、専門職教育である教職課程、司書課程、学芸員課程とし

て、現場との関係からの成果物もみられる。 〔点検・評価(長所と問題点〕 特徴的な点をふたつあげる。まずひとつは、研究成果の内容である。本センター所属教員は基本的

に、教育学、図書館情報学、博物館学を主たるよりどころとしているが、それらはいずれも現場を持

つ実学の傾向が強い。学校教育、社会教育、情報サービスなどの現場との関係が、研究内容にも強く

反映されている。これは、資格教育を主要な任務とする本センターの設置主旨とも合致する。 二つ目は、近年の生産性の低落である。検討対象とした期間の前半と後半で、後半(最近)3 年間の生

産性が極端に落ち込んでいる。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 本センターは 3 課程の集合であって、教職課程、司書課程、学芸員課程それぞれの専任教員数は、

4、2、1 である。しかしながら組織の中の単位として機能するための最低限の仕事量は共通するもの

があり、少人数になればなるほど、ひとりあたりの負担は増す。近年の大学改革の動きに伴う学務分

担の増加が、こうした少数組織には特に影響が大きいことが考えられる。それを踏まえたうえで、生

産性低下の原因の把握と、向上のための対策が求められる。そのうえで、教育活動とのバランスを意

識した研究活動が可能かつ評価されるようにしていく必要がある。

国内外の学会での活動状況(項目№165)② 〔現状〕 現在在籍する専任教員毎の学会・学術集会等での 1996 年以降の発表件数は、合計 25 件である。 教員毎の発表件数を見ると、最多 9 件、最小 0 件である。また、発表時期別に見ると、1996-1998年度が 20 件、1999 年度以降が 5 点となっている。 内容面では、教育学、図書館情報学、博物館学それぞれの視点のもののほか、教授法や大学カリキ

ュラムに関する考察がみられる。また、専門職教育である教職課程、司書課程、学芸員課程として、

現場との関係からの成果物も見られる。 また、1996-2001 年度の間に学協会の委員等の任務が合計 8 件、学協会運営上の幹事等の任務が合

計 2 件である。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 学会発表等についての特徴は、前項目(「論文等研究成果の発表状況」)と同様、現場との関係の上

に成立しているテーマが多い点、近年の落ち込みが強い点が指摘できる。 学協会に関する各種役職について、特に幹事等の職務は、大規模大学として、学協会活動を支える

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第 7 章 課程資格教育センター

業務を比較的担当しやすい状況にあると考えられる。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 学会発表等については、前項目(「論文等研究成果の発表状況」)と同様のことがいえる。すなわち、

少人数組織ゆえの学務分担の増加による影響を念頭に、生産性低下の原因の把握と向上のための対策

が求められ、また、教育活動とのバランスを意識して研究活動を伸ばしていく必要がある。 仕事量の増大というデメリットが容認できる範囲であれば、学外関係者とのコミュニケーションチ

ャンネルの確保や、専門職養成上の実際的情報交換、研究教育面でのメリットが期待でき、また、間

接的には大学広報活動の一助となろう。したがって、これらについては支援できる体制を整えていく

ことが望ましい。

当該学部、センター、研究所として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166)③ 〔現状〕 1966 年以降、本センター3 課程(教職課程、司書課程、学芸員課程)の専任教員による、学術賞の受

賞等の特筆すべき研究活動はない。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 3 課程それぞれ学校教育、社会教育、情報サービスなどの現場との関係が強い。たとえば専門職能

集団を対象とした研修教育など、社会に対する啓蒙普及活動などが日々相当の位置を占めている。ま

た、設置主旨のから、教育活動の比重が大きい。所属教員それぞれは研究を続けているが、業務全体

におけるプライオリティの問題として、狭義の研究以外の活動が相対的に優先される傾向にある。 また、近年学術上の生産性が低下していることにもあらわれているように、研究活動をおこなうう

えでの制約が増す傾向にある。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 教員個々の研究活動を大切にするのはもちろんであるが、本センター設置の主旨を踏まえれば、教

育活動、啓蒙普及活動を軽く扱うことはあってはならない。むしろそれらの実践を通じ、相互に好影

響を与え合う研究活動が望まれる。その点を踏まえた研究環境の整備が必要である。

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第 7 章 留学生教育センター

【留学生教育センター】 1. 研究活動 (1) 研究活動

論文等研究成果の発表状況(項目№164)① 〔現状〕 当センターの教員の専門分野はまちまちだが、日本語関係(文系)の研究論文・著書は、随時出さ

れている。数の上では、若手の専任教員に多い。理科系のものは数が少ない。 〔点検・評価〕 論文等が、直接社会的に認知されたかどうかの判断は難しい。しかし、こうした研究の成果が日本

語の教科書執筆の際などに活用されて、当センターのみならず、他の日本語学校等でも広く使用され

ている。論文等の発表状況については、若手教員はおおむねよい。ベテラン教員については、研究活

動の活性化が必要であろう。 〔将来への改善策〕 若手・中堅教員については、現在の研究活動を今後も継続することが望まれる。当センターでは、

留学生を対象としている関係上、学生指導等に関する細かい業務や学生との日常的な接触が多く、体

力的・時間的に研究時間をとることが困難なので、夏期休暇期間などの時間が重要となる。今後、職

場全体として、これらの休暇期間を研究目的で有効に使えるように配慮していくことが必要であろう。

また、理数系のベテラン教員については、留学生教育に関した研究にも目を向ける必要がある。研究

業績が活発でない教員がいる場合の活性化方法については、教室会議等の機会をとらえて所長が呼び

かけを行うなどの方策が採られている。 ② 国内外の学会での活動状況(項目№165) 〔現状〕

日本語関係については国内での活動が多いが、ヨーロッパ学術センター等を通じての国際セミナー

への教員参加など、国外で開催される日本語セミナー等への出席機会は多い。 〔点検・評価〕 日本語という特殊な分野の関係で、日本国内での学会発表が多くなり、海外での発表機会は相対的

に少ない。 〔将来への改善策〕 外国の大学の日本語担当教員などと連携して、日本語や語学に関する研究会等の活動を活性化して

いく必要がある。

センターの特筆すべき研究活動状況(項目№166)③ 〔現状〕 これまで当留学生教育センターが蓄積してきた日本語教育方法に関して、2004 年度の出版を目標と

して、テキスト『日本語教育法概論』の執筆に取りかかっている。 〔点検・評価〕 日本語教育法は、新しい分野ではないが、教科書という形での公表はこれまであまりないので、評

価できる。

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第 7 章 留学生教育センター

〔将来への改善策〕 留学生教育センターだけができる研究分野を開拓するためには、普段の研究時間の確保が最大の課

題である。その中から、新しい研究も生まれてくるはずである。

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第7章 総合情報センター

【総合情報センター】

1. 研究活動 (1) 研究活動

論文等研究成果の発表状況(項目№164)① 〔現状〕 総合情報センターの教員組織は情報処理研究教育施設にあたり、ここでは所属する 7 名の教員の発

表状況について述べる。 1996 年度から 2001 年度までに、論文等の研究成果の発表数は当組織より計 70 編あり、そのうち

約 79%の 55 編が海外の学術雑誌等、約 21%の 15 編が国内の学術雑誌等に印刷公表されている。そ

の概要をまとめたものが以下の表である。(参考データ:キャンパスライフエンジン・教員活動情報シ

ステム http://www.tsc.u-tokai.ac.jp/)

表 研究成果の論文発表数 英語論文 和論文 小計

1996年度 8 1 9

1997年度 10 2 12

1998年度 7 1 8

1999年度 6 1 7

2000年度 11 9 20

2001年度 13 1 14

合計 55 15 70

〔点検・評価(長所と問題点)〕 目標の実現に向けた取り組みを評価の視点および項目を設定して評価を行った。以下に示す。

1) 目標:活発に研究を行い、その成果を論文等の場で印刷公表する。 2) 評価の視点および項目

a 当該学部等の教員組織の研究活動(論文等研究成果の発表)は、活発に行われているか。 b その論文等の研究成果は、社会的に認知され得るものであるか。 c 当該学部等において研究業績の不活発な教員がいる場合、活性化を促す方策はとられているの

か。 3) 評価

a 当該組織では、年度平均 12 編の論文が研究成果として発表されている。特に毎年度、平均 9編の英語の論文を活発に発表し、世界に向けて幅広く成果を公表していることは高く評価でき

る。2000 年度には和雑誌への投稿が増え、これまでで 高の計 20 編の論文が発表されたが、

2001 年度以降国内での発表がまた減少する傾向にある。 論文等の発表数だけでなく研究分野別に見ると、コンピュータシミュレーションを中心とし

たニューラル・ネットワークや分子軌道計算、また実験研究を中心とした宇宙飛翔体の打ち上

げ実験や超高速衝突実験など、当組織の各教員の特色を活かした幅広い研究分野で成果を発表

していることも評価できる。 b 例えば、人間の知能を模倣する新しい計算モデルを提唱し、人工知能システムの開発に道を切

り開くための研究成果を英語論文で多数発表している。特に経済、言語、心理学、英語教育の

専門研究者と積極的に共同研究を行い、異分野の研究者と研究の認知度を深めあいながら、論

文等の成果発表を行っていることは高く評価できる。また、宇宙ゴミの研究成果を論文にまと

めて発表した後、研究についてテレビ局 TBS の取材を受けたり、インターネットの MSN ジャ

ーナルに啓蒙を含めたコラムを寄稿し、研究者のみならず一般に対して社会的に認知されるた

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第 7 章 総合情報センター

めの活動も行っていることは評価できる。 c 当組織は 7 名の教員から組織され、半数の教員が積極的に研究活動を行っている。校費の 1つである学部長留保金で研究費を支援する体制があり、これまで学部長等留保金は有効活用さ

れ、年度平均 9 編の英語の論文を発表することに結びついていることは評価できる。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 教員によって研究論文の数に差が大きくある。これは、各教員が取り組んでいる研究分野の特色

によって、進み具合や成果発表の場が大きく異なることに起因している。 例えば、日本国内に適切な学術雑誌が存在しない場合があったり、発表の場も学術雑誌に止まら

ず“教室”が教育研究の発表の場となることもある。この点を考慮して論文等の発表数のみで評価

するのではなく、その内容も定量的に評価できるようなシステムを導入することができれば、より

活発な研究活動を促すことができると考えられる。しかし現実は、客観的なものさしを持った評価

システムを作り出すことは多くの検討時間が必要で、導入が困難である。 そこで、まず集中して研究活動を行えるような環境整備が必要だと考える。教育と研究の両立が

理想であるが、現段階では当該組織では教育に重点をおいた活動を行っているため、将来に向けて

研究するための時間と予算の確保も重要な改革の 1 つであると考える。

国内外の学会での活動状況(項目№165)② 〔現状〕

1996 年度から 2001 年度までに、学会等での論文発表数は当組織より計 24 編あった。約 33%の

8 編が国内外での国際会議や学会において英語で発表され、約 67%の 16 編が国内の学会で発表さ

れている。概要をまとめたものが以下の表である。(参考データ:キャンパスライフエンジン・教員

活動情報システム http://www.tsc.u-tokai.ac.jp/)ここに記載した学会発表数は、当組織の教員が主

著者として発表した論文数のみで、これ以外にも、国内外の大学や研究機関との共同研究やプロジ

ェクトの一員として、多数の成果が学会で発表されている。 表 国内外の学会発表数

英語論文 和論文 小計

1996年度 3 1 4

1997年度 0 1 1

1998年度 1 0 1

1999年度 0 0 0

2000年度 3 11 14

2001年度 1 3 4

合計 8 16 24

〔点検・評価(長所と問題点)〕 目標の実現に向けた取り組みを評価の視点および項目を設定して評価を行った。以下に示す。 1) 目標:研究成果を国内外の学会で活発に発表する。 2) 評価の視点および項目 当該学部等の教員は、国内外の学会において、顕著な活動を行っているか。 3) 評価 論文等の成果発表と対照的に、学会での活動は主に国内での和論文での発表が 16 編と多数を占め

ている。特に、タンパク質の分子構造に関する研究、またデブリの超高速衝突実験の研究が活発に発

表されている。2000 年度は充実した研究発表が行われたが、その後活動が減少する傾向が見られる。 学会での発表数という形では評価できないが、学会組織の理事や委員として管理と運営に携わり、

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第7章 総合情報センター

指導的な立場で学会に関わる活動を積極的に行っている教員がいることも付記する。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 国外での学会発表数が少ないが、研究分野の特色によって進み具合や成果発表の場も大きく異なる

ことに留意しながら改善策を検討したい。当該組織では海外での論文発表を促進するため、学部長留

保金という予算を有効活用している。今後さらに発表を活発化させるために予算の充実や外部資金の

導入などを検討する必要がある。

当該学部、センター、研究所として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166)③ 〔現状〕 合田・日向寺祥子講師は、2000 年 10 月に情報化学討論会において「ポスター賞」を受賞した。巨

大な生体分子間の相互作用について計算化学的手法を用いて再現し、理解できることを示した数少な

い研究ということで高い評価を受けた。また田中真講師は 2000 年 11 月に開かれた Hypervelocity Impact Symposium で、日本人で初めて「Best Poster Presentation Award」を受賞した。国際宇宙

ステーションを守るデブリ防護シールドについて、防御能力を低下させることなく金属板から新素材

の高強度繊維に切り替えてシールド開発を行った点で評価を受けた。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 目標の実現に向けた取り組みを評価の視点および項目を設定して評価を行った。以下に示す。 1) 評価の視点および項目 特筆すべき研究活動、研究成果、学術賞の受賞をあげているか。 2) 評価 国内外において高い評価を受けている。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 国内外での研究成果発表をさらに活発に行い、質の高い研究を心がけることが必要である。そのた

めには、研究時間をできるだけ十分に確保し、研究活動や研究成果を本の出版やインターネットのサ

イト作成などによって社会的に認知させるための啓蒙活動や社会的活動(フィールドワーク)を積極的

に行うことが必要である。

研究助成を得て行われる研究プログラムの展開状況(項目№167)④ 〔現状〕

1) 発表を終えた研究プログラム 東海大学の国内・外研究派遣計画(C 計画)により、2000 年 4 月 1 日から 2001 年 3 月 31 日までの 1

年間、カナダのモントリオールにあるマギル大学へ研究留学をし、ニューラル・ネットワークの研究

活動を積極的に行い、多数の原著論文を発表した教員がいる。また 2001 年度の総合研究機構「研究

奨励補助金」を交付され、高強度繊維を使ったデブリ防護シールを開発し、その成果を宇宙開発事業

団が主催する 2002 年 3 月の宇宙ステーション講演会で発表した教員がいる。 2) 現在進行中の研究プログラム 外部資金(科学研究費補助金、基盤 C 一般)を導入し、2001 年度より総合情報センター教育研究プロ

ジェクトを組織し教育研究を行っている。これは、未来科学技術共同研究センターのクリエイティブ

コミュニケーションプロジェクトの中に位置し、未来メディア教育研究部門として実施されている。

創造性のプロセスの科学的な研究の知見を生かし、学生の創造性を伸ばすためのデジタルメディア活

用法の研究をおこなっている。さらに、2002 年度の文部科学省・宇宙科学研究所との共同研究が採択

され、スペースプラズマ装置の 1 つであるレールガンを用いた超高速衝突実験を行い、デブリ衝突か

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第 7 章 総合情報センター

ら国際宇宙ステーションを守る新しいシールドを開発する研究を行っている。また 2002 年度より日

本電気株式会社の研究補助を受け、糖鎖に関係する疾病に対する治療薬開発についてコンピュータシ

ミュレーションの立場から共同研究を進めている。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 目標の実現に向けた取り組みを評価の視点および項目を設定して評価を行った。以下に示す。 1) 目標:研究助成による研究プロジェクトを活発に行う。 2) 評価の視点および項目 研究助成による研究プロジェクトを積極的に行っているか。 3) 評価 少数の教員ではあるが研究助成を受けて積極的に研究活動を行っている。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 各教員に配分される研究費だけでは、十分な研究活動をサポートできない。そこで積極的に科学研

究費補助金や財団の研究助成に応募し、外部資金主導で研究できる体制作りが早急に必要である。ま

た産学官の連携も視野に入れた共同研究を押し進め、ビジネス分野にも進出できる研究テーマの選定

や活動の必要性もあると考える。

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第 7 章 文学研究科

【文学研究科】

1. 研究活動 (1) 研究活動

論文等研究成果の発表状況(項目NO.164)① [現状] 本研究科では、原則として学部教員から資格審査をへて研究指導教員・講義担当教員として認定し

ている。資格審査資料は発表論文数等の研究業績であり、それを毎年、研究科委員長に提出し、3 年

毎に審査している。十分な研究業績を残せなかった教員に対しては警告等の処分がある。この警告を

受けた教員は、ごく少数であるのが実状である。 [点検・評価(長所と問題点)] 研究指導教員・講義担当教員の資格審査を定期的に設けてきたことは、教員の一定の水準を保つ効

果があった。この点は評価できる。 問題点は、研究成果の発表状況などについて、組織的に集約・分析をするシステムの構築が遅滞し

ていたことである。学部ではすでに「学部評価委員会」が稼動し、教員の研究業績の集約を行ってき

ている。しかしながら研究科では「大学院評価委員会」が、本年度にようやく立ち上がったばかりで

あり、研究業績の集約などの作業は今後ということになる。 すでに述べたように資格審査を受けているため、研究業績が不活発な教員は原則としていないとい

うことになる。そのため、とくに活性化を促す方策はとっていない。

[将来の改善に向けた方策] 資格審査についてはこれまでの方式でよい。上で述べた研究科内での研究業績の集約とその後の措

置については「大学院評価委員会」の議論を待ちたい。

国内外の学会での活動状況(項目NO.165)② [現状] 先の項目に述べたように、本研究科の研究指導教員・講義担当教員は、学部教員と原則的に重複し、

かつ 3 年毎に資格審査を受けている。したがって、研究科構成教員は、学会等で一定の活動をしてい

ると判断している。Web 上に公表された教員活動記録を検索しても、ほとんどの教員は何らかの学会

の成員となっている。さらに、本研究科教員の何人かは学会の指導的役員に就いたりもしている。し

かしながら、活動の質を問う議論を研究科内で十分に展開していないため、「顕著な活動」をしている

かについては明言できない。 [点検・評価(長所と問題点)] 本研究科内において、文明、史学、日本文学は学会組織をもち、院生と一体となった教育活動を展

開している。また、複数の教員が学外の全国的規模の学会の幹事等、指導的役員を引き受けている。

その意味では、大学院教員が求められる社会的責務の一端を担っていると判断できる。これらの点は

評価してよい。 問題とすべきは、学会等での活動状況を集約するシステムが構築されていない点である。また、活

動の質を客観的にどう評価するかの基準があいまいである点である。 [将来の改善に向けた方策] すでに NO.164 でも述べたと同じように、これについては「大学院評価委員会」の議論を待ちたい。

その上で、客観的な評価基準を作成する必要がある。

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第 7 章 文学研究科

当該学部、センター、研究所として特筆すべき研究分野での活動状況(項目NO.166)③

[現状] ここでは、外にみえるかたちでの本研究科の活動状況と教員・院生の関わりを整理しておく。 きわめて外から見えやすい活動としては、共同調査があげられる。たとえば、学部歴史学科考古学

専攻が行っているブルガリアでの考古学調査や、県内での考古学調査には、大学院担当教員や院生が

深く関わっている。また、学部アメリカ文明学科が行っている中南米の遺跡調査にも、同じく大学院

担当教員や院生が深く関わっている。また、歴史学科東洋史専攻では、外部資金を導入して中国南部

での民族調査を行っている。これらはともに、当該学界では高く評価されている調査である。 歴史学科日本史専攻や考古学専攻は、自治体の市史・町史編纂を委託されることがある(益子町史、

平塚市史、大磯町史、海老名市史)が、ここでも教員・院生が一体となって活動している。 その他、学会誌の編纂作業なども地味ではあるが重要な活動と位置づけることができるが、いくつ

かある学内発刊の学会誌の実務は院生が関わっている。 [点検・評価(長所と問題点)] 現状の学術レベルでは、一研究科が直ちに学界の最前線に立つという状況は想定し辛い。研究教育

の面でも、人材育成の面でも、地味に学界を支えることが、研究科各専攻の社会的役割である。その

意味では、「特筆すべき」という活動状況を創出しているかという問には答えにくいものがある。しか

しながら、前項であげたいくつかの事例は、学界で注目されている活動であり、評価できる。 ただ、専門領域によっては活動が、教員の多年にわたる個人的な研究活動によってしか示されない

ものもあり、これをどう評価するかは、今後の課題である。 [将来の改善に向けた方策] 前項で述べたように、研究活動には、目に立ちやすいものと立ちにくいものとがある。これらを客

観的にどう評価していくか、また、「特筆すべき」活動とは具体的に何を指すか等について、研究科内

で議論を重ね、客観的評価をどう行うかの基準つくりを早急にすべきである。 また、大学院と学部とが明確に分離していなく、研究指導・講義担当教員は、学部の授業とあわせ

るとかなりの負担を強いられている。活発な研究活動を保証する時間的ゆとりをどう創り出すかも、

検討すべき課題である。

研究助成を得て行なわれる研究プログラムの展開状況(項目NO.167)④ [現状] 学外研究助成の獲得についてはおりにふれて強く呼びかけており、すこしずつではあるが成果はあ

がってきている。学外研究助成の多くは、科学研究費補助金であるが、その他、三菱財団、トヨタ財

団の助成をうけている教員もいる。 14 年度に科学研究費補助金を得て研究活動を行なっている教員は、別表の通りである。

[点検・評価(長所と問題点)] 科学研究費補助金に代表される研究助成については、第一義的には獲得件数が点検・評価のポイン

トとなる。今年度の獲得状況は 5 件で、必ずしも多い件数とはいえない。件数の増加についての働き

かけが必要である。 ただ、現在は補助を受けていないが、過去において科学研究費補助金を得、成果を発展的にその後

の研究に活かしている教員もおり、年次の獲得数がただちに研究状況の盛・衰を示すものとはいえな

いのも事実である。

1351

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第 7 章 文学研究科

[将来の改善に向けた方策] 研究の展開状況については、これまで成果報告およびその後の活字化で周知されてきた。このこと

自体に問題はないが、展開状況を知るにはより速報性の強い情報発信があってもよい。たとえばHP

などに中間的な研究状況の提示をするなどの発信方法を検討すべきである。 教授 朝尾 幸次郎 英語学習者音声コーパスの作成と利用に関する応用的研究 13020242

教授 松本 亮三 アンデス北高地における先スペイン期の金山開発 13571022

教授 浅井 紀 中国明清時代の民間宗教と文化・社会構造 13610427

教授 渡部 武 『王禎農書』に見える中国伝統農具の総合的研究 13610428

教授 平野 葉一 小中高・数学教育におけるクロス教材(メカトロニクス教具を含む)作成の

基礎研究

13680331

1352

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第 7 章 政治学研究科

【政治学研究科】

1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164)

〔現状〕 大学院担当専任教員は、全員学部等に所属する教員であり、大学院専任教員はいない。従って、大

学院担当教員としての固有の研究活動を述べることも評価することも不可能である。現在(2002 年度)

政治学研究科に所属し教育・研究指導を担当する教員は、研究指導教員・非研究指導教員 24 名(内

特任教授 7 名)である(「2002 年度大学院要項」参照)。研究科独自の研究紀要等がないので「東海

大学教育年報 2000 年度」等により、かかる教員の研究活動についてみると、研究成果の発表は著書 5(内共著 4)、原著論文 13(内英文 4)、総説 3、翻訳 2、その他 4、学会発表 13(内英語によるもの

7)である。これらの研究成果は、当該学会等でそれなりの評価を得ているものと思われるが、受賞

等の記録は見当たらない。教員の研究活動の活発化のために設置されている「資格再審査」制度(再

審査対象期間 3 年間に少なくとも学術論文等 2 編必要)に基づき 2001 年度に実施された再審査にお

いて、対象となった教員 5 名の内、1 名が「不適」としての警告を受けた。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 大学院専任教員制になっていないので、独自の点検・評価を行うことはできない。全体的にいって

所属教員 24 名の研究成果としては必ずしも活発な研究活動とはいえないだろう。しかし海外で英語

による研究発表を 2 名の教員が計 7 回行っており、また英語による学術論文 4 編の成果は評価されよ

う。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 大学院教員としての研究活動を独自に点検・評価をするならば、「学部紀要」とは別に「研究科紀要」

(仮称)を創設することが必要である。また大学院における研究活動の活性化を図ろうとするならば、

大学院専任教員制を採る必要があろう。 ② 国内外の学会での活動状況(項目№165)

〔現状〕 現在国内における学会の会長職にあるもの 1 名、理事職にあるもの 2 名であり、国際的学会の理事

1 名である。国内学会ないし学術集会において研究発表した教員はのべ 4 名、国外学会でのそれは 3名(7 回)である(1999 年度)。1999 年度に国外での学会・学術集会において研究発表した、あるい

はそれらに出席した教員、文献・資料の収集等のために海外出張した教員は 15 名である。特に 6 回・

5 回・4 回出張した教員各 1 名であった。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 国内での学会運営に活躍している 2 名の、国外で活躍している 1 名の教員については大いに評価さ

れる。また国内外の学会等において研究発表した 7 名、特に 1 名は国外で 4 回研究発表する活躍は高

く評価される。しかし全体としては国内外での学会活動、とりわけ研究発表は多いとはいえないだろ

う。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 学会活動のみならず研究活動の活発化のためには、学部・大学院の教育等の負担の軽減を図ること

が求められる。そのうえで公正な評価制度を構築して大学院担当教員としての資格審査をより厳格に

行うべきである。そのために早急に大学院専任教員制の導入を検討することが必要である。

1353

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第 7 章 政治学研究科

③ 当該学部、センター、研究所として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166)

〔現状〕 ここ数年間における当研究科所属教員の研究活動で同学会賞の受賞等、学外から高く評価された特

筆すべき研究成果は、記録がない。しかし、宇都宮深志教授著『公正と公開の行政学』(三嶺書房、

2001 年刊)は、同教授の長年にわたるオンブズマン制度と情報公開制度に関する理論的かつ実証的研

究の集大成であり、当該学会のみならず政府・地方自冶体から評価され、今後当該政策の作成と実施

におおいに影響を及ぼすものである。また、白鳥令教授の学会活動、すなわち日本シミュレーション

&ゲーミング学会会長及び同世界学会理事としての活動は、広く社会科学及び隣接科学、なかんずく

政治学の「科学化」に貢献するものであり、それは当政治学科並びに政治学研究科が指向する「科学

的政治学の構築」という目標に合致する。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 各教員の研究活動は、それぞれ専門分野が異なるので確定的に評価することは困難であるが、それ

ぞれの専門分野においては一定の評価を受けている。それは、2 名の教員が政府関係(経済産業省・

総務省)の審議会等で委員として活躍しており、特に地方行政分野においては 6 名の教員が東京都・

神奈川県・横浜市・川崎市・平塚市・相模原市・秦野市等々の近隣自治体をはじめ多くの自治体(例

えば三重県・名古屋市等)における審議会等への委員委嘱、各種講演依頼、行政助言活動等に見られ

るからである。 このように各教員の研究活動が一定の社会的貢献を果たしていることは評価できる。しかし問題は、

①それが特定の専門分野、すなわち特定の教員に偏っていること、②そして学会賞を受賞するような

全国レベル及び世界に発信できる研究成果が挙がっていないこと、であろう。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 学会等社会的に評価を受けるような高度の研究活動及びユニークな研究成果を期待するためには、

まずもって研究条件を整備することが急務である。 また組織(研究科)として、科学研究費等の外部資金に基づく研究プロジェクト(チーム研究)を

計画・実行し、評価されうる研究成果を挙げる方途を探求すべきである。

1354

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第 7 章 経済学研究科

1. 【経済学研究科】 2. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目NO.164) 〔現状〕 本研究科の教員は政治経済学部教員の兼務であり、研究科独自の研究活動は分離不可能であり、そ

の研究成果は学部の研究成果のサブセットである。研究科として普段の研究活動に対する特別な推進

プログラムはないが、3 年毎の大学院指導教員資格再審査において研究・教育活動の業績が資格再審

査委員会を設けて慎重に審査され、最も優秀な業績を上げた指導教員に対して特別研究奨励休暇また

は特別研究奨励研究費が付与される。資格再審査において業績が不足し不適とされた指導教員には警

告が出され、2 度目の不適警告では指導教員資格を喪失することとなっている。この制度によって研

究活動に対するインセンティブはおおむね維持されている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 本学においては全ての研究科教員は学部教員の兼務であり、研究費は全て学部に配算され大学院に

は研究費が予算上存在しない。従って大学院と学部は不可分一体であり、学部の研究活動振興策が研

究科教員に適用される。この意味で、大学院独自の事前的な研究活動の振興手段はないが、結果的な

資格再審査を通じた事後チェックによる長期的研究維持活動は行われている。研究成果の累積がなけ

れば大学院担当にはなれないので、中堅以下の教員に対しての長期的インセンティブも働いている。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 大学院においては専門講義を別とすれば、研究指導は研究活動と教育活動とが渾然一体化した場合

が多く、このような大学院独自の研究活動推進にも研究費等の資源配分の配慮が必要と思われる。 ② 国内外の学会での活動状況(項目NO.165) 〔現状〕 ほとんどの研究科教員は各自の分野における学会など複数の学会に所属しており、数名の教員は学

会理事を務めるなど学会活動は日常的に行われている。昨年度は日本経済政策学会全国大会が本学で

開催されるなど学会活動が盛んに行われている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 経済、経営系の学会は質・量ともにピンからキリであり、学会活動を研究活動の評価基準とするこ

とはやや困難と思われるが、研究者の卵としての院生に研究発表の場を与えることは大切である。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 院生の研究成果の発表活動の場としての学会活動を推進して行くことが望ましい。

③ 当該学部、センター、研究所として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目NO.166) 〔現状〕 ここ数年において学術賞等の特筆すべき成果は記録されていない。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 研究科教員個人に任された個別研究活動のみでは、総じて研究活動が活発とは言い切れないものが

ある。担当教員には大学院としての研究費等の研究資源配分がない以上、研究科独自の研究振興策を

講じる事は難しいという意見もある。

1355

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第 7 章 経済学研究科

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 本研究科は、どちらかというと研究活動よりも教育活動に力を入れざるをえない状況にある。今後

は、研究活動の組織化などを行い、レベルアップに努めるべきである。大学院研究科でのより先端的

な研究を活発化させるためには、他大学にあるように研究資源配分機能のある学内研究所等との連携

が必要である。

1356

Page 85: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 法学研究科

【法学研究科】

1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目 No.164) 本研究科の専任教員は、全員、法学部専任教員であるので、本研究科として独自に取り組んでいる

事柄はない。したがって、この点については法学部の該当項目をもって代える。 ② 国内外での活動状況(項目 No.165) 本研究科の専任教員は、全員、法学部専任教員であるので、本研究科として独自に取り組んでいる

事柄はない。したがって、この点については法学部の該当項目をもって代える。 ③ 研究科として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目 No.166) 本研究科の専任教員は、全員、法学部専任教員であるので、本研究科として独自に取り組んでいる

事柄はない。したがって、この点については法学部の該当項目をもって代える。

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Page 86: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 芸術学研究科

【芸術学研究科】

1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164) [現状] 芸術学研究科では科研費による研究分担経験者は複数いる。また、研究活動は論文のほか、フィー

ルドワーク、演奏、制作、設計、その他の成果の形がある。特に造形作品制作では、公的施設への作

品設置、公的美術館からの依頼による個展開催・グループ展出品、自治体からの委嘱による作品制作・

設置・アドバイザー等などを行っている教員がいる。社会活動として雑誌等への寄稿、論文執筆、評

論、審査委員活動、座談等での発言など、様々な場面での活動も行われている。

[点検・評価(長所と問題点)] 1) 目標 論文等研究成果の発表の活性化 2) 評価の視点および評価項目

a .研究活動は活発に行われているか b .社会的に認知されているか c .研究活動の不活発な教員に対する対策はとられているか

3) 評価 a .活動の頻度においては、教員により相当の差が見られる。例えば 2001 年度では複数の作品発

表展覧会をおこなった者から、数年間に渡ってまったく発表しない者までがいる。活動領域は

学術的分野から制作分野にまで広がっていて、活発な部分と低調な部分が入り混ざっている。

専門領域の特性の違いが大きく一律に評価できるものではないが、全般的にはさらに研究活動

を活発に行える状況を作る必要がある。 b .成果の発表は組織的ではない場合も多く、社会的に認知されているかどうかの判断の基準を見

いだすのが困難な場合が多い。 c .研究業績の評価については基準を設けてあり、研究指導教員はこの基準によって評価されてい

る。この中で一定期間内に一定の成果を生むこととそれを報告することが義務づけられている。 [将来への改善・改革に向けた方策] 目標を達成し、それを維持して行くためには、以下の点を考慮すべきであると考える。 1) 研究活動を十分に行えるだけの精神的物理的余裕が必要である。大学院の組織運営の適切化が

必要であろう。特に事務仕事量の軽減が必要で、この点の解決策として助手およびティーチン

グアシスタントの採用など人事面での改善が必要である。 2) 研究成果を外部に発信する際には、その交流の事実を評価するのでなく、その研究内容の水準

を客観的に評価する必要がある。 3) 研究成果および活動を紹介し、外部の研究者・作家等と交流する機会を作る方策の検討も必要

であろう。 ② 国内外の学会での活動状況(項目№165) [現状] 芸術学研究科では「全日本音楽教育研究会」の理事、「日本音楽療法学会」の幹事、「演奏表現学会」

の理事を務めるなど学会運営に積極的に協力する教員がいる。また「日本デザイン学会」での活動や

「図学学会」発行の辞典等の執筆、学会の専門部会活動などを通して学会の発展に寄与する教員もい

る。

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第 7 章 芸術学研究科

[点検・評価(長所と問題点)]

1) 目標 教員の国内外の学会においての顕著な活動の確認 2) 評価の視点および評価項目 活動状況はどのようなものか 3) 評価 活動状況は教員により差が見られ、一概に評価できるものではない。例えば No.166 に記すよう

に学会功労賞受賞者がいるなど積極的に活動している分野と、造形制作をする教員とっては直接的

に関係のある学会は無いなどの差がある。こうしたことで一律の評価は出来ないが、学会関係では

多方面での活動が見られる。

[将来の改善に向けた方策] 目標を達成し、それを維持して行くためには、以下の点を考慮すべきであると考える。 1) 学会活動を十分に行えるだけの精神的物理的余裕が必要である。 2) 学会活動を紹介し、外部の研究者・作家等と交流する機会を作る方策の検討も必要であろう。

③ 当該研究科として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166) [現状] 芸術学研究科では音楽学学術賞として「小泉文夫民族音楽賞」「田辺賞」を受賞した教員がいる。

デザイン学学術賞として「日本デザイン学会功労賞」の受賞者、公立機関による作品収集として「北

海道立旭川美術館による作品買い上げ」対象者、展覧会作品受賞として「大阪トリエンナーレ 1988-彫刻 銅賞」受賞者などがいる。

[点検・評価(長所と問題点)]

1) 目標 特筆すべき研究活動、研究成果を得ること 2) 評価の視点および評価項目 特筆すべき研究活動、研究成果を得る事を促進する体制が整っているか 3) 評価 芸術学研究科では科研費での顕著な成果は少ないが、科研費による研究分担経験者は複数いる。

半数の指導教員が実技系であり、科研費になじまないので、研究に関する公的援助、補助を受ける

機会は少ない。また多くの場合個別性の強い領域であり、評価もそれに対応していて、一般性が低

い。最近は研究に費やす時間の確保が難しくなり、結果を得ることも少なくなりつつある。従って

体制は万全ではないと判断する。

[将来の改善に向けた方策] 目標を達成し、それを維持して行くためには、以下の点を考慮すべきであると考える。 1) 研究を盛んにする環境を作り上げるための方策を考え、これを実施すること。特に研究成果の

アピールだけでなく、研究育成を考慮した定期機関誌(音や図版を含む)の発行や発表会、演奏

会、展覧会の開催への支援などが考えられる。 2) 研究に従事する時間を量的に確保する方策を検討し、順次出来ることを実行する。

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第 7 章 体育学研究科

【体育学研究科】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164) [現状] 体育学研究科教員の論文等研究成果の発表状況は、体育学部教員のそれと全く同じである。全員が

学部に所属し、学部学生の教育(授業・生活指導・その他)、及び院生の教育・研究指導を行いつつ、個々

の教員は各自の専門領域で研究活動を行っている。 [点検・評価(長所と問題点)]

1) 評価項目 a 当該研究科の教員組織の研究活動(論文等研究成果の発表)は、活発に行われているか。 b その論文等の研究成果は、社会的に認知され得るものであるか。 c 当該研究科において研究業績の不活発な教員が居る場合、活性化を促す方策は取られているか。

2) 評価 a 体育学研究科に所属する研究指導教員は 12 名おり、それぞれの専門分野は、東海大学大学院

要項に示されている通りである。論文及び研究成果の発表状況は、過去 5 年間で約 40 件(単独

研究・共同研究)である。それらは、研究機関誌、専門研究誌、東海大学体育学部紀要等に発表

している。学部授業・学部学生の生活指導・就職支援活動および課外活動に関係しているなど、

大変多忙な中での成果であることを考えれば、良い方と言える。 b いずれの研究論文もその掲載に際しては、査読を経て掲載されていることから十分認知されう

るものであると考える。 c 東海大学では大学院研究指導教員の資格再審査制度があり、3 年に 1 度、研究成果の評価が行

われている。再審査基準を満たしていない教員に対しては警告が発せられ、さらに 3 年後の再

審査において連続して警告を受けた場合は、研究指導教員の資格が失われるようになっている。

従って、研究科独自で活性化を図っているわけではないが、十分活性化が促されていると考え

る。 [将来の改善に向けた方策] 現在、体育学研究科は、独立した組織として活動出る状態ではない。学部に所属する教員が研究指

導教員として院生の指導と学部学生の指導も同時行っている。研究室の狭さや雑務の多さ等を改善し、

研究活動に打ち込める環境整備が急務であろう。 ② 国内外の学会での活動状況(項目№165) [現状] 体育学関係の国内外の学会は、日本体育学会、体力医学会、日本武道学会、スポーツ社会学会、ス

ポーツ哲学会、スポーツ心理学会、スポーツ方法学会、レクリエーション学会、スポーツ産業学会、

日本バイオメカニクス学会、運動生理学会、国際スポーツ社会学会等があり、各研究科教員は自分の

専門分野に関係する学会に所属し、研究活動を行っている。また、それぞれの学会組織の運営活動に

携わっている教員も居る。 [点検・評価(長所と問題点)]

1) 評価項目 a 当該研究科の教員は、国内外の学会において顕著な活動を行っているか。

2) 評価

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第 7 章 体育学研究科

a .それぞれ各自が所属する学会においては、指導的な立場にあるものが多く、顕著な活動を行っ

ていると考える。 [将来の改善に向けた方策] 国内外の学会においてもっともっと顕著に活躍し、東海大学の研究の質を高める為には、やはり研

究環境(スペース・時間等)に整備が望まれる。2005 年度に改革を目指している研究科のカリキュラム

発足までには、せめて研究室の確保が必要であろう。 ③ 当該大学院研究科として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166) [現状] 体育学部が主催した国際的な研究活動である第 1 回環太平洋レジャー教育会議(ハワイにて開催)で

は、研究科教員も研究発表や学会の運営に携わった。 [点検・評価(長所と問題点)]

1) 評価項目 a 当該研究科において、特筆すべき研究活動、研究成果、学術賞の受賞を上げているか。

2) 評価 a 第 1 回環太平洋レジャー教育会議(ハワイにて開催)の開催が、特筆すべき研究活動として挙げ

られるが、まだまだ研究の成果を十分挙げているとは言い難い。 [将来の改善に向けた方策] 本研究科の研究活動は、各教員がそれぞれ自分の専門分野の学会に属して研究活動を行っている。

従って、個人研究、数名の研究者との共同研究が主となっている。やはり将来的には、プロジェクト

研究を計画・実践することが必要であろう。スポーツ医科学研究所との連携や工学部、医学部との共

同研究が出来るよう体制を整える必要がある。

1361

Page 90: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 理学研究科

【理学研究科】

1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164) 理学部の項を参照

② 国内外の学会での活動状況(項目№165) 理学部の項を参照

③ 該当学部、センター、研究所としての特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166) 理学部の項を参照

1362

Page 91: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 工学研究科

【工学研究科】

1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164) 【現状】 東海大学大学院工学研究科教員の研究活動(論文等研究成果の発展)は、東海大学教育研究年報お

よび WWW ホームページ上に置かれたキャンパスライフエンジン(教育活動の情報システム)にお

いて公表されている。なお、工学研究科教員の論文等研究成果の発表状況は、東海大学電子情報学部、

工学部および第二工学部の当該項目に記載されている。 【点検・評価(長所と問題点)】 目標の実現に向けた取り組みを、評価の視点および項目を設定して行った。以下にその内容を示す。 1) 目標:工学研究科教員個々の研究活動(論文等研究成果の発表)の活性化を目指す。また、研

究業績の不活発な教員に対しては適切な方策により活性化を促し、工学研究科全体としての研

究活動の活性化を図る。 2) 評価の視点および項目

a 工学研究科教員の研究活動は活発に行われているか。 b 研究業績が不活発な教員に対して、活性化を促す方策がとられているか。

3) 評価 a 工学研究科教員の研究内容は、国内外の著名な学術誌への掲載や学会での発表がなされ、質的

にも良いと判断する。しかし、教員によっては研究業績数に偏りがあり、工学研究科としての

研究活動の活性化を図るためには、研究活動が不活発な教員に対してその活性化を促すことが

必要である。 b 東海大学では 1997 年より、大学院研究指導教員の資格を有する教員に対して「資格再審査制

度」が設けられており、3 年ごとに教員の研究活動が十分であるかどうかの判定がなされてい

る。この制度により研究活動の活発な教員については奨励措置がとられ、また不活発な教員に

ついては警告により研究活動の活性化が促されている。従って本再資格審査制度は教員の研究

活動の活性化を促す方策であると言うことができる。 【将来の改善・改革に向けた方策】 工学研究科全体の教育領域を見据えた上で、常に最先端の研究を実施するために必要な研究教育活

動の見直しや改善も検討していく必要がある。 ② 国内外での学会での活動状況(項目№165) 【現状】 東海大学工学研究科教員の国内外の学会での活動状況は、東海大学教育研究年報および WWW ホ

ームページ上に置かれたキャンパスライフエンジン(教育活動情報システム)において公表されてい

る。なお、東海大学では、「東海大学国内・外研究派遣計画」の公募を毎年実施しており、学会出張を

含む国内外における研究の積極的な助成をおこなっている。 【点検・評価(長所と問題点)】 国内外学会活動の活性化を目指して各教員は努力している。今後もこの状況を維持することが必要

と考えられる。 【将来の改善に向けた方策】

1363

Page 92: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 工学研究科

学会活動が容易となるよう、専攻並びに研究科の支援態勢を強化する必要がある。 ③ 特筆すべき研究分野での研究活動状況〔項目№166〕 【現状】 研究活動の指標となる教員の業績は、「東海大学教育研究年報」に研究活動状況に関わるすべてを

網羅した形で毎年度刊行されているの。 また、WWW ホームページ上に置かれたキャンパスライフエンジン(教育活動情報システム)にお

いて公表されている。 【点検・評価(長所と問題点)】 社会の進歩、ニーズに応え、社会的評価を獲得するための努力は常になされている。

【将来の改善に向けた方策】 すでに教員と企業との共同研究が実施されているが、この共同研究等の活性化を図るため工学研究

科が橋渡し役を演じ、より活発な研究を展開できるよう努力する必要がある。

1364

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第 7 章 開発工学研究科

【開発工学研究科】

1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164) [現状]

2002 年度における教員数は情報通信工学専攻 12、素材工学専攻 9、生物工学専攻 11、医用生体工

学専攻 7 人、合計 39 人である。これらの教員による 2000 年度における研究発表の合計は、研究論文

50(うち和文誌 21)、研究発表 151(うち国内発表 99)であった。従って、研究論文数は年間一人あ

たり 1.4 であり、4 研究科ではそれぞれ情報通信工学専攻 0.8、素材工学専攻 2.8、生物工学専攻 1.6、医用生体工学専攻 0.4 であった。また、論文誌の種類では英文誌 29 件に対し、和文誌が 21 件と英文

誌の方が多いが、英文誌の中には国際会議の要旨集がかなり含まれている。一方、それぞれの専門分

野の代表的な国際誌にも多く発表されている。 教員間で研究発表の件数にかなりの差が認められるが、職務上、学科運営、学生指導などに時間を

割かざるを得ない場合もあり、それらを考慮しなければならない。現状では各教員の事情を正確に把

握することは難しいため、一見業績の上がっていない教員に活性化を促す方策はとっていない。これ

については今後、検討の余地がある。 [点検・評価(長所と問題点)] 当研究科では、学部教育も担当しており国公立大学と比較して教育に充当する時間が多く、いわば

学部教育に加えて大学院教育にも時間が割かれているのが現状である。このような状況下であって、

海外の一流学術誌に研究成果を報告し、国際会議で研究発表を活発に行っている状況は評価できる。

いくつかの研究室では著しい成果を挙げ、これらの研究成果は、科学技術の発展に貢献するだけでは

なく、授業に最新の教材としても使われている。しかし、研究活動にやや熱心でない教員も若干見ら

れ、一部の研究室は国内または国際の学術誌への投稿が見られない。 [将来の改善・改革へ向けた方策] 研究科としても研究開発の活性化に努めているが、研究科独自の方策は特に取っておらず、大学が

行っている施策を公平に運用して研究の活性化に努めている。すなわち、サバティカル制度、松前重

義賞(学術賞)、総合研究機構による研究奨励補助金、国内外研究派遣、研究教育補助金等の選考およ

び科研費をはじめとして外部研究費獲得のための便宜を通して活性化を促している。また、一部には

研究の活性化を促すため次のような研究業績評価の強化を講じすべきであるとの意見もある。すなわ

ち①研究の業績を教員の昇格や給与の一部に積極的に反映すべきである。著しい成果を挙げた教員に

は、研究休暇や特別昇格・昇給等を与える。②現在、研究の業績を主に論文の数で評価しているが、

発表される学術誌によって論文の質が異なるので、論文学術誌によって異なる評価点数を与える。ま

た、論文投稿料、別刷り費用等の給付などの優遇措置を設けることも望まれる。 口頭研究発表件数は多いが、それが論文数に十分繋がっていない傾向もみられる。学会で発表した

研究発表内容を確実に論文に仕上げる努力が求められる。さらに、研究活動を活性化させるためには、

研究助手や技術員の増員が難しい現状では、比較的実現可能な措置として大学院博士課程の設置が有

効であろう。 ② 国内外の学会での活動状況(項目№165) [現状] 前述のように学会等における研究発表件数は 2000 年度で国内 99、国際会議 52、合計 151 である。

年間一人あたり平均 4.2 回の研究発表を行っており、そのうち国際会議は 1.4 回となっている。国際

会議出席等もかなりあり、特に、情報通信工学専攻の後藤研、福島の両研究室で年間 10 数回海外で

1365

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第 7 章 開発工学研究科

研究発表を行っている。 本研究科の教員が中心になって「超高密度光記録国際シンポジウム」、「医用画像工学研究会」等の

国際・国内会議を当地において主催・共催している。また、本研究科設立時以来、日本植物工場学会

の事務局が生物工学科内に置かれ、学会活動の中心的役割を果たしてきた。さらに、各教員はそれぞ

れの所属する学会、学術団体や政府系委員会の委員、役員等として活躍している。 [点検・評価(長所と問題点)] 国内での学会発表、活動はかなり活発に行われていると判断される。しかし、教員間での活性度の

相違はかなりあると思われる。また、研究の国際化が著しい最近の傾向からみると、一部の教員を除

くと国際的活動が十分ではない。 [将来の改善・改革に向けた方策] 海外渡航費の拡充、特に若手研究者への優遇措置、また会議開催への援助等が望まれる。

③ 当該研究科として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166) [現状] 情報通信工学専攻では、後藤研究室が日本学術振興会未来開拓学術推進事業研究プロジェクト「高

機能空間光変調を用いた極限情報処理」を 1997 年から 5 年間で総額 4.2 億の研究費を投じて超高密

度記録・再生システムの実現を目指した研究開発を活発に行い、特許出願 8 件を含む多くの成果を出

している。この研究に対して、後藤教授は本学松前記念学術賞をはじめ国内外から学会賞を受けてい

る。また、福島・虎谷研究室で行われている「OCTS 及び GLI による海色データ抽出のアルゴリズム

の開発」等の研究は宇宙開発事業団(NASDA)、国立環境研、中央水産研から毎年 1 千万以上の委託研

究費を受けて、地球観測衛星データ処理システムの開発を一部担当している。さらに、情報通信工学

専攻を中心に学部として「マルチメディア教育教材の開発」を進めている。 生物工学専攻平山教授を中心とした東海大学総合研究機構「創薬プロジェクト」が医学部と協力し

てスタートし、研究科を超えた協力で成果が期待される。 一方、本研究科は企業等と連携した研究開発を積極的に推進しているが、パルプスラッジ・港湾底

泥の利用、竹炭を利用したお茶栽培、救急医療機器・福祉機器などの開発を地元企業等と共同して行

い、それぞれ成果を出している。これらに対して、社団法人静岡県紙パルプ技術協会技術賞、日本植

物工場学会学会賞等を受賞している。この他社団法人可視化情報学会功労賞、日本植物工場学会学術

奨励賞、学術賞、論文賞等を 1999、2000 年度に得ている。 [点検・評価(長所と問題点)] 学内業務や学生教育などに多くの時間を割かざるを得ない状況下で教員は努力していると評価で

きる。現在、科研費をはじめとして研究費はかなり潤沢に提供されている環境ではあるが、外部から

の獲得研究費は減少傾向にある。研究スタッフの不足、教員年齢の上昇などを含めていろいろな原因

があり、これらに対する対策が必要とされる。 [将来の改善・改革へ向けた方策]

4 専攻がそれぞれ先端的な研究開発と学科を横断した協力によって学際的な領域に威力を発揮して

社会に貢献することが本研究科の研究面における目標である。これは現在でもまさに時代の要請であ

り、先見性のある目標である。しかし、現状および少し先を見ると、意義ある存在としての本研究科

のあり方を基本的に再検討すべき時期であるかもしれない。すなわち、教育面からも、研究面からも

見かけでなく真に充実させるためにはどのような組織・体制でどのように運営すべきかを検討して、

他者と競合し、十分戦える体制を整える必要があろう。その中には教員の性格付けと評価も含まれる

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第 7 章 開発工学研究科

べきであり、また、一方では研究施設・設備面での更新、充実等を如何に図っていくかを検討する必

要もある。

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Page 96: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 海洋学研究科

【海洋学研究科】

1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164) 〔現状〕 海洋学研究科教員は海洋学部や海洋研究所の教員をほぼ全員兼ねており、したがって、海洋学研究

科においても海洋学部と同じシステムをとっていることになる。実績などは海洋学部と重複するので、

学部の項を参照されたい。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 特に、海洋学研究科に関わる目標の実現に向けた取り組みを、評価の視点および項目を設定して評

価した。 1) 目標:論文等研究成果の発表に活性化策はとられているか。 2) 評価の視点および項目:

当該研究科において研究業績の不活発な教員がいる場合、活性化を促す方策はとられているか。 3) 評価

学会誌、国際学術誌に比べて、学術的評価は低いが、論文発表の登竜門と評価されている紀

要(学内研究誌)がある。論文発表に消極的な教員を含め、海洋学研究科教員に対しては、紀

要の募集のタイミングで開催される研究科委員会で、研究成果の紀要への投稿を勧めており、

ある程度の成果が見られるが十分とはいえない。 また、不活発な教員に該当しないが、資金的な面で消極的になりがちな教員に対しても、海

外学会出張費補助(A計画)という論文発表のための海外出張費補助を行うシステムもあり、

年 3 人程度の教員が利用している状況で、この程度では資金的に潤沢とも言えない。 〔将来の改善に向けた方策〕 今後は、指導教員の一層の努力とともに、支援やインセンティブ付加するような制度的対策が必要

である。論文発表のための補助制度の一層の増強や、指導教員資格再審査などにおける数値化評価な

どを取り入れた総合的評価により、教員に研究成果の発表への意欲を高揚させる必要がある。 ② 国内外の学会での活動状況(項目№165) 〔現状〕 海洋学研究科教員は①と同じく海洋学部や海洋研究所の教員をほぼ全員兼ねており、したがって、

実績などは海洋学部と重複するので、学部の項を参照されたい。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 特に、海洋学部と共通するので、海洋学研究科については以下の 2 点の目標の実現に向けた取り組

みを、評価の視点および項目を設定して評価した。 1) 目標:当該研究科の教員の国内外の学会における活動は顕著か。

特に、海洋学研究科に関わる目標の実現に向けた取り組みを、評価の視点および項目を設定し

て評価した。 2) 評価の視点および項目:

a 教員が国内外の学会で活発に活動していくため、国際感覚の具備を含め、社会の要請に応える

自覚を促し、活発な活動を可能ならしめる努力がなされているか。 b 国内外の学会で活発に活動するモーティベーション作りは十分か。

3) 評価

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第 7 章 海洋学研究科

a 教員それぞれ個人の努力に負うところが多く、連携大学院や産学共同研究(K&K)などの外

部との連携についは当事者においては熱心であるが、組織としては十分でない。 b 教員の学会等での活動状況は毎月発行の「東海大学広報」の人事往来などで、海洋学研究科教

員の場合も知らされており、多くの教員が活発に活動していることが理解できる。しかも、様々

な分野で指導的な役割を演じている教員も多い。しかしながら、相互に刺激を促し、互いを啓

発するなどの取組みが不足している。 〔将来の改善に向けた方策〕 教員が学会で活発に活動し、指導性を図っていくためには、個人の意識とレベルの向上が不可欠で

ある。そのため、連携大学院や産学共同研究などの外部との連携を積極的に推進し、このような活動

に啓発されることによって、各教員が有する能力や研究成果に対する認識を行ない、社会が必要とす

るニーズを明確に把握するとともに、自分の研究の重要性をアピールさせる必要がある。また、研究

者、留学生の招聘などにより、海外との交流の活発化を図り、教員が国際感覚を身に付けるとともに

国際学会などでの活動がスムーズに進展するように努めることが望まれる。 海洋学研究科の範囲は広いので、国内外の学会も多岐にわたる。したがって、教員同士が啓発しあ

う環境整備のため、表彰制度などを設けることも一考である。 ③ 当該研究科として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166) 海洋学研究科教員は①と同じく海洋学部や海洋研究所との教員を兼ねており、したがって、研究活

動状況などは海洋学部と重複するので、これらの項を参照されたい。 ④ 研究助成を得て行われる研究プログラムの展開状況(項目№167) 海洋学研究科教員は海洋学部や海洋研究所の教員をほぼ全員兼ねており、したがって、海洋学部と

重複するので、該当する項を参照されたい。

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第 7 章 医学研究科

【医学研究科】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164) [現状]

2002 年度より医学研究科は学部よりの独立性を明確にし、従来の専攻に加えて、ゲノム多様性解析

センター、遺伝子工学実験動物研究センター(文部科学省ハイテク・リサーチ・センター推進事業)、

再生医学センター、発生工学センター、国際医療保健協力センターの 5つの研究センターを設置した。

これは旧来の専攻にとらわれた枠を超えて大学院生を含めた研究者が自由に結集してプロジェクト的

な研究を推進していくものである。特に 4 センターは研究面を重視したセンターとして学内の優秀な

研究者に対し、世界と伍してあるいは世界をリードして研究を進める拠点となるものである。 したがって、逆にいうとこれまではほとんど医学部と不可分の関係にあったために、本項目でもか

なりの部分が医学部での報告と重なる。一番の指標と考えられる原著論文では医学部教員全体で 1998年度以降、456 件、371 件、317 件、467 件と非常に多くの論文が国内外に発表されている。このう

ち 90-95%に医学研究科の合教員あるいは○合教員が参画している。また、医学研究科には研究活動

が主体である総合医学研究所教員もメンバーとして入っているため、医学研究科としての数字的に同

じ論文が発表されていると見てよい。特に、最近ではいわゆる一流誌への掲載が増加している。 [点検・評価(長所と問題点)] 2001 年度まで、学部教育と大学院教育は明確に区別されてはいたが、大学院ではより専門的で学際

性の高い研究中心の施策を実行し始めたことにより、今後、より質の高い大学院教育と研究成果が期

待される。 しかし、問題点がないわけではない。論文の発表状況にしても、その多くが医学研究科の合教員あ

るいは○合教員の力によるものであり、大学院学生、もしくは学位取得をめざす研究員の真の意味で

の力量が発揮されたものは少ない。また、成果を挙げている教員は大学院研究科といえども全体の一

部であり、総合的な実力の向上が望まれる。 [将来の改善・改革に向けた方策] 上記の問題については、研究主体の医学研究科という体制を明確にしていくことで、論文発表のた

めの語学教育等も含めて世界に伍する研究を推進するためにより質の高い大学院教育を行い、若手研

究者を育成する具体策を講ずる予定である。また、博士課程生も修士課程生と同様に本学医学部出身

者に限らず、全国から人材を集めていく方策を考えている。 また、教員の研究能力の向上についても、現在活躍中の教員を中心に海外の一流研究者招聘による

セミナーや、長期、短期の海外機関との共同研究を積極的に推進し、プロジェクト研究を通じて真の

意味で医学もしくは生命科学分野で世界的な研究が行える環境を整備する方策を準備中である。ゴー

ルは論文の数よりその質の向上にある。現在、大学院の構成教員は、ほとんどが学部構成教員により

組織されており大学院専任教員はいない。今後は研究センターを中心とした研究主体の教育課程を構

築することが必要であり検討している。また、それに伴いカリキュラムの抜本的改革および大学院を

専任とした教員組織を編成すべく検討中である。 ② 国内外の学会での活動状況(項目№165) [現状] 前項でも述べたが、医学研究科は 2002 年度より学部より独立色を強めた体制としたが、これまで

のデータはほとんど医学部のものと同様となる。医学部のデータではあるが学会発表が 1998 年度以

降 834 件、727 件、755 件、750 件と恒常的な活動を展開しており、2001 年度を例にとると特別講演、

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第 7 章 医学研究科

一般発表、シンポジウムともに、国内がそれぞれ 75 件、873 件、76 件であるのに対し、国際学会で

は 14 件、85 件、9 件と非常に少ない。これは医学研究科の関係教員によるものが 90%以上を占め、

総合医学研究所の教員の場合は比較的国際学会での活動が活発である点を含めても、国内の学会に偏

重していることは否めないが、全体の総合的な活動としては活発であるといえよう。 [点検・評価(長所と問題点)] 上述したように、全体として活動状況は良好であるが、国際学会での活動は比較的低調である。こ

の原因として交通費や旅費の不足問題もあるが、研究内容が世界的なレベルで競争力を持つに至って

いないと判断される。また、国際的な学会で活動する教員は一部に限られ、やはりこの面からも全体

的に大学院研究科の研究力を向上させる必要性が感じられる。一部にはほとんど研究成果の認められ

ない合教員、○合教員が存在することも事実である。 [将来の改善・改革に向けた方策] これは先の論文等研究成果の発表状況とも同一であるが、教員、大学院生ともに国際的な舞台で活

躍するための必要最低限の語学力を身につけること、それも個人的な努力によるものではなく、大学

院研究科のシステムとして語学教育に力を入れることが重要であると考えられる。native speaker による語学演習の教育を推進したい。また、指導教員の努力により、海外の研究室とのネットワークを

広げ、若手の研究者が抵抗なく海外の研究室に出入りし、研修するシステムを構築していく必要があ

る。また、現在は単発的に海外の研究者によるセミナーを開催しているが、これをさらに強化し海外

のトップクラスの研究者を招聘し、共同研究やセミナーを開催することも有効と思われるため、その

方策を検討中である。 ③ 当該研究科、学部、センター、研究所として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№

166) [現状] 文部科学省の「21 世紀 COE プログラム(研究拠点形成費補助金)」(以下「COE」という)は大学

院研究科博士課程もしくは研究所を対象に、若手研究者の育成も含めて世界に冠たる研究拠点を日本

の大学の中に求めるものである。幸い本学医学研究科機能系専攻の所属の教員を代表とする「ヒト複

合形質の遺伝要因とその制御分子探索」が採択された。これは総合医学研究所を含めた医学研究科に

属する 10 人の教員によって推進される予定であり、医学研究科としての努力が認められたものと考

えられる。 それ以外にも再生医学分野でも著名な教員が数人おり、来年度の医学分野での採択も期待され、先

の 2 項で述べた研究成果の発信も多くがこれらのメンバーからなされており、論文の引用件数、イン

パクトファクターにおいてもこれらの教員が群を抜いているのが現状である。 国内外の学術賞の受賞においても、学部では 1999 年度以来 2001 年度までに国内 16 件、国外 4 件

程度であるが、COE の参画教員 10 人で国際的学術賞 4 件、国内学会賞 6 件、財団賞等 25 件、また

3 年以内の国際学会の基調・招待講演 70 件、口頭発表 53 件といった活発な活動ぶりである。 [点検・評価(長所と問題点)] 公的科学研究費補助金の取得状況や他の競争的資金の採択状況をみても上記で言及した教員につ

いては問題ないが、やはり不活発な教員も存在しないわけではない。全体的に見れば、医学研究科と

しては所属する教員数に比べ、かなり低調である。非常に卓越した研究者が数人いるのは誇りにでき

る長所であるが、研究組織として若手が少ないことが大きな問題点として考えられる。 [将来の改善・改革に向けた方策]

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第 7 章 医学研究科

COE をはずみとして、プロジェクト研究主体の医学研究科としていくことで、若手の研究者の導

入を図り、そのための大学院教育を充実させていくことが何よりも必須であると考える。世界と伍し

てあるいは世界をリードして研究を進める拠点を提供するためには、大学院生たちが従来の部門制の

枠を越え自由に他分野の研究に接し、人的交流を図ることができる環境を整える必要がある。ハード

面での充実もさることながら、各プロジェクト研究セミナーへの参加、自身の研究のプレゼンテーシ

ョンと討論、海外の研究者を含む学外共同研究者のセミナー参加、学会参加、日々の研究指導など、

より質の高い大学院教育、また奨励研究員の充実などが重要な要素となろう。なお、大学院を修了し

た奨励研究員については年間 10 人をこえる若手研究者がキャンパス内において活躍している。

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Page 101: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 健康科学研究科

【健康科学研究科】

1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164) [現状] 健康科学研究科(看護学専攻、保健福祉学専攻)におけるこの 3 年間(1999~2001 年)の年度毎

の業績数は、学会発表 86~103 件、論文数 80~89 件、著書数 29~37 件であり、総じて看護学専攻

の業績数は保健福祉学専攻よりも多い傾向にある。 また、紀要についても学部と合同ではあるが毎年発行しており、研究活動の助成においても学部留

保金を利用した研究費の助成を実施し、翌年にその成果を発表することを義務付けている。 この 3 年間の全業績数の推移を見てみると、学会発表は、1999 年から順に 103、98,86 回。学術

論文は、89,80,86 編。著書は、37,29,30 編となっている。教員数の減少もあるため、単純に年

次比較することは難しいが、全体の業績数が 1999 年 229 件、2000 年 207 件、2001 年 202 件と減少

傾向にある。少数の教員を除いて業績数はあまり向上しておらず、全体的にみても原著論文が少ない

状況にある。専攻毎にその傾向を見てみると、看護学専攻の毎年の業績数は保健福祉学専攻よりも多

くなっているが、医学系教員が在籍しており、看護学関連分野とは異なる業績も含まれているため、

一概に当該分野の研究活動が活発であるとは言い難い点もある。保健福祉学専攻では、とりわけ単著

の出版が多い傾向にある。 [点検・評価(長所と問題点)] 業績の中で、数名の教員が学術書として出版しているのは特記すべきことであり、全般を通して、

ある程度の研究活動が実施されていると評価できる。しかし、近年の業績の減少傾向やごく少数の教

員を除いて、研究成果の公表が低迷化している点が気がかりな状況である。 また、大学院指導教員の研究および教育業績については、3 年ごとに資格再審査を行うことで業績

の活発化を促している。このため今年に入ってから指導教員の資格審査基準についても再度見直しが

行われ、規程として明文化しており、具体的な業績の成果を求めている状況である。しかしその成果

については、今年初めて再審査を実施した段階であり、充分な評価をするのは困難な状況であると考

える。 [将来の改善に向けた方策] 現在、研究指導教員資格の再審査を実施しているので、これを厳密に遂行することが必要と考える。

これにより、業績不良の教員には資格審査委員会から強く指導し、改善を促すことが重要である。ま

た、近年の業績数の減少からも研究活動助成のための支援環境を整備する必要があり、その具体策を

検討中である。 ② 国内外の学会での活動状況(項目№165) [現状] 健康科学研究科の設立後 3 年間の学会発表総数は 86~103 件で、看護学専攻が 52~56 件、保健福

祉学専攻は 30~51 件と、看護学専攻が概ね多くを占めており、発表数も毎年大きな差がない数の学

会発表を実施している。 学会活動については、両専攻とも活発な参加が行なわれているが、教員が会長として主催する全国

レベルの学会開催の経験はいまだない状況である。 また、大学院学生の学会発表を毎年盛んに行っている。これは各学生が 2 年間の在籍中少なくとも

1 回程度は発表する経験を持つよう各教員が指導しているためである。

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Page 102: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 健康科学研究科

[点検・評価(長所と問題点)] 看護学専攻と保健福祉学専攻の学会発表回数に差が生じていたり、看護学専攻の学会発表数が毎年

大きく変動しないのに対し、保健福祉学専攻は毎年減少傾向にある。これは学会数そのものが両専攻

分野で大きく差があることが要因にあげられると思われる。 また、学会において近年微増ではあるが招待講演や特別講演を行なう教員が増えており、個人の研

究活動の成果と評価することができる。特に保健福祉学専攻における傾聴ボランティアに関する研究

の取り組み、自閉症に対する関係障害臨床の研究などは、わが国でも特筆すべき内容の研究が成果を

見せつつある。 しかし、教員によって学会活動への参加の度合いに大きな開きがあるのも事実であり、参加の度合

いの低い教員を今後いかにして減らしていくかが課題であると考える。 大学院学生の学会参加ならびに発表については、かなり満足のいくものとなっており、学会参加お

よび発表については、旅費の援助も行われているので、学生の学会活動への参加の環境は現状では満

足のいくものになっているものと思われる。 [将来の改善に向けた方策] 今後は学会発表内容を極力論文化するように各教員に促すことが必要と考えるとともに、一つのテ

ーマをじっくりと深めていくような質の高い研究を行なうことが重要であると考える。従って、これ

らを具体的に実行するために、業績に対する新たな評価システムの構築や研究環境の提供が必要であ

る。 ③ 当該研究科として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166) [現状] 本研究科において、これまでに学会賞の受賞歴はないが、東海大学内で顕彰している松前重義賞(学

術部門)を 2001 年度に保健福祉学専攻の小林隆児教授が受賞している。 また、保健福祉学専攻においては傾聴ボランティアに関する研究の取り組み、自閉症に対する関係

障害臨床の研究などは、わが国でも特筆すべき内容の研究が成果を見せつつある状況である。 [点検・評価(長所と問題点)] 本研究科が設置以来、まだ 3 年間の期間しか経過していないことを考慮すれば、学術賞の受賞経歴

や研究成果についても発展途上にあり、現状の結果は妥当なものと判断せざる得ない状況である。た

だ、今後は注目されるであろう研究分野について成果が見えつつあり、社会的に評価されるものと非

常に期待が持てる状況である。 [将来の改善に向けた方策] 今後、新たな教員を大学院に迎え入れ、より複合的な視野に立った独自の研究活動を実施していく

ことが肝要である。また、現在推進中の研究においても、より内容を深めていき質の高い研究とその

成果を求めるべく、周辺環境を整備していく必要がある。それこそが、本研究科の理念に沿った活動

であり、東海大学健康科学研究科としての独自性を発揮できるものである。

1374

Page 103: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 文明研究所

【文明研究所】

1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 研究所の理念・目的(項目№3) 〔現状〕

1) 東海大学建学の理念 東海大学は「調和のとれた文明社会」を創造することを、建学以来、基本的な理念としてきた。人

類は、これまで、ややもすれば特定の宗教や思想に固執した文明を築き、異なる文明間の対立や戦争

を経験してきた。科学・技術の表面的成果である人工的環境を偏重することで、自然環境を破壊する

ことに無頓着であり続けた過去ももっている。また、学問の分野を文科系と理科系という異なった枠

組みに区分し、さらにこれらを小さな学術世界に細分し、地球上の諸文明、つまり人々の生活を総合

的に理解することを怠ってきたことも事実である。本学の理念である、「調和のとれた文明社会の創

造」とは、総合科学的な視野で人類の生活全般を理解する「文明の学」を確立し、文明の多様性を理

解し、人類集団同士の不用意な対立のない、そして自然と共生できる、活力ある新しい地球を創造し

ようとする試みである。

2) 文明研究所の設置目的 文明研究所は、この建学の理念を実現するための基礎的研究を行うべく設置された研究所である。

本研究所の創設は、1958 年にさかのぼるが、これまでは研究に加えて全学の共通教育を行う教育機関

としての性格も併せもっていた。しかし、21 世紀という新しい時代を迎えた 2001 年 4 月、その研究

範囲をさらに包括的なものとし、文明研究を全学的に推進しようという意図の元に、従来の文明研究

所から教育機関としての性格を取り除くとともに、社会科学研究所と芸術研究所を統合し、新しい研

究機関として再出発をすることになった。 新しく生まれ変わった文明研究所は、「文明を人類の営為の総体として捉え、その主体としての人間

とその具体相である生活を主軸として、学際的・総合的見地から文明を探求し、この成果を調和の取

れた文明社会創造に資する」ことを設置目的としている。また、この目的を実現するために、研究の

基本を、「21 世紀文明の創出」と定めている。

3) 基本運営方針 a コアプロジェクト:【現代文明の展開と社会文化的多様性】

文明という言葉は、これまでさまざまな意味で捉えられてきた。しかし、文明研究所は、これを 18~19 世紀的な「野蛮―文明」あるいは「精神文化―物質文明」という対立図式や「文明の進歩」とい

う楽観的な発展図式の中で捉えることはしない。文明を人類の営為もしくは生活様式の総体として理

解し、この基本的了解の上に立って、21 世紀においていかなる調和的な生活様式を作り出すことがで

きるかを究明しようとしている。コアプロジェクト、「現代文明の展開と社会文化的多様性」の研究は

その第一歩である。 現代文明は、大航海時代に拡大の契機を得、近代西洋の世界認識に端を発した生活様式だと言うこ

とができる。しかし、現代文明の成立と発展は歴史の必然的な帰結ではあるとはいえない。「産業化」、

「近代化」、「合理化」、「資本主義化」、「グローバリゼーション」、「近代世界システム」などとよばれ

る重層的プロセスへの「巻き込み」であり、その結果として、人類が共通の経験をするようになった

現象だと考えなければならない。また、現代文明の展開は、多様な地域的・社会的・文化的差異の中

で生じ、これらの差異が現代文明に対して、宗教運動やナショナリズムを始め、さまざまなリアクシ

ョンを起こしている、という現実にも目を向ける必要がある。これらの問題に関する研究の集大成と

して、文明研究所は、21 世紀文明に関する実践的研究を展開することを志している。

1375

Page 104: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 文明研究所

b 組織と子プロジェクト 前述のコアプロジェクトを遂行する上で、本研究所は、「文化的多様性と人間像」(第 1 部門)、「生

活様式と環境」(第 2 部門)、「知とアート」(第 3 部門)の 3 つの領域に焦点をあてて研究を行ってお

り、それぞれの研究を行う上で部門主任制をとっている。本研究所は原則として専任教員を置いては

いないが、各部門主任の統括と連携の下に、全学部の教員の中から研究所員と研究員を委嘱するとと

もに、学外からも共同研究員を募り、コアプロジェクトを親とする「子プロジェクト」を設けて、種々

の個別研究活動を行っている。2002 年度は以下の子プロジェクトが進行中である。 ①「価値形成と文化政策」、②「グローバリゼーションと経済・社会制度変容の多様性」、③「文明と

グローバリズムの間」、④「芸術と身体性」、⑤「「危険社会」における倫理システムの構築:自己再帰

的な近代化と産業合理性の再考」、⑥「マケドニア共和国の民族問題:民族間の経済的・社会的不平等

の分析」、⑦「科学知の地域的多様性と文化形成の関わりに関する基礎研究:民族科学の視点から」 また、本学の創立が、北欧デンマークのグルントゥヴィが創始した国民高等学校を範としており、文

明への視点も北欧文明のあり方に啓発されたものであるという経緯を重視して、「北欧研究会」を研究

所の常設研究会として設置している。北欧研究会では、「北欧における持続可能な発展戦略に関する研

究」と、「北欧デザインを作り上げた人々:生活と環境の視点からの再検討」という、二つの研究プロ

ジェクトが行われている。

c その他の活動 ア 文明研究所は、原則として月に 1 度(休暇期間を除く)、講演会、シンポジウム、 研究発

表会等の企画を実施している。本学の教員、職員、学生だけでなく、学外の研究者や学生も、

さらに、地域の方々をはじめとする一般の方々にも無料で参加できるよう案内している。 イ 機関誌『文明』を、10 月と 3 月、年 2 回刊行することを予定している。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 これまで、文明研究所は設立当時の理念から、教養教育の組織へと徐々に変化してきたが、教育機

関を分離することにより、「調和のとれた文明社会の創造」という建学の理念を具体化する研究機関と

しての性格を明確にすることができた。同時に社会科学研究所および芸術研究所を統合することによ

って、人類の営為の総体である文明を研究する総合科学を打ち立てる基盤が作り出されたということ

ができる。このことはまた、文明研究所を内外に向けた大学の「戦略的」研究機関とするという意図に

沿うものでもある。 しかし、いくつかの問題点も残っている。第一に、旧 3 研究所の母体となっていた組織において、

「研究所を取り上げられた」という意識がなかったわけではない。これはとりわけ、各研究所が発行

していた機関誌が廃止されるにあたって、若干の不満や抵抗となって現れた。こうした意識が新文明

研究所の活動に対して距離を置かせる要因となって残る可能性もあるだろう。組織改革の過渡期には

往々にして起こりがちなことでもあるが、文明研究所を全学的な文明研究の拠点とするためには乗り

越えなければならない問題である。 第二に、文明研究所の理念・目的を具体的に推進するための施設、人員、組織およびシステムはま

だ十分に整備されているとは言えない。これもまた古い組織を受け継ぎながら新しい活動を作り上げ

ていく過程ではやむを得ない面であろう。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 研究所の理念および目的については極めて明確になり、今後とも堅持していくべきものである。し

かし、上に述べた問題点を始め、文明研究所を中心とした研究活動をいかに活性化していくかという

点については、これからも弛みない工夫と改革が必要である。これらについては以下の各章において

述べることとする。

1376

Page 105: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 文明研究所

② 論文等研究成果の発表状況(項目№164) 〔現状〕 2001 年度から、本学の建学の精神を実践する新たな文明研究の拠点となるべく、旧文明研究所、旧

社会科学研究所、旧芸術研究所を統合して新文明研究所が発足した。新文明研究所は専任の研究員を

置かず、プロジェクトごとに研究員を組織している。したがって、ここでは各研究員の論文等研究成

果については言及せず、プロジェクトにおいて発表された研究成果のみを考慮する。2001 年度は旧組

織から新組織への移行のため、個別プロジェクトは旧 3 研究所においてそれぞれ選定・実施されたも

のの中から、新文明研究所の設立趣旨に合致した研究を一年に限って引き継いだ。研究所のコアプロ

ジェクトを除いて個別プロジェクト件数は 14 であった。これらのプロジェクトに関連して発表され

た論文は総数で 33 点である。また著書は 12 点、翻訳は 2 点、学術調査は 1 件である。 2002 年度から個別プロジェクトは、文明研究所のコアプロジェクトを具体的に分節化した子プロジ

ェクトとしての位置を与えられた。これは研究所主導のプロジェクトと全学から公募したプロジェク

ト、および北欧研究プロジェクト、デザインマネージメント実践研究によって構成されている。研究

所主導の子プロジェクトは研究内容を全学に周知して研究員を公募した。また公募プロジェクトは研

究計画および研究員を全学から公募している。子プロジェクト件数は全部で 10 件であるが、そのう

ち公募で採択されたものは 3 件である。今年度のプロジェクトに関連して発表された論文は 7 月現在

で 11 点である。 研究所における研究成果が主に発表される場となる機関誌についても言及する必要があろう。新文

明研究所では、2001 年度は旧研究所の機関誌『文明』『行動科学研究』『マトリクス』を引き継いで発

行した。この各機関誌はそれぞれ性格が異なっていた。『文明』は現代文明論を中心とした授業に関連

する教育的雑誌という性格が強かった。『行動科学研究』は社会科学の学術論文を掲載するレフェリー

付き雑誌で、『マトリクス』には芸術に関する広範な論考が掲載された。新しい『文明』は新文明研究

所の理念に基づいて広く文明に関する学術論文を掲載するレフェリー付き雑誌であり、これまでの学

部・センターを中心とした雑誌とは異なり全学的な性格を付与されている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 新文明研究所が設立されたのは、「調和ある文明社会を創造する」という建学の精神を実現するため

の総合的研究を行うためである。そのために、旧 3 研究所ではややもすれば個々の研究者グループの

関心の寄せ集めで、相互に関連性のないものとなりがちなプロジェクト研究に、研究所の理念に合致

した統一性をあたえる必要があった。また別の見方をするなら研究費が「ばらまき」になりやすく、研

究所としての一貫した成果とその蓄積を作りにくいという問題を解決する必要もあった。この点にお

いては、新文明研究所の設立そして 2002 年度からの新研究体制は有効だと考えることができる。 こうした長所があるのは疑いないところであるが、課題はどれだけ全学の研究者を理念的にも人的

にも組織し、活発な研究活動を展開できるかである。2002 年度の子プロジェクトへの参加、および公

募プロジェクトへの公募状況を見るなら新文明研究所設立の意義や大学全体における位置が十分浸透

したとは言いがたい。今後、どのようにして新研究体制を浸透させ、研究活動を活性化するか、常に

考えてゆかねばならないだろう。 論文等成果の発表の現状を見るなら、2001 年度と 2002 年度に総計で論文が 44 点、著書が 12 点刊

行されているのは評価できる。また、プロジェクトのうち 2 件が科学研究費を得ている点も社会的評

価がなされていることの表れと見ることができる。 文明研究所では、専任の教員を持たないので、研究活動が不活発な教員に直接活性化を促す方策は

とっていない。成果のないプロジェクトは打ち切り、活発な活動を行い成果を出したプロジェクトを

継続するという方法で活性化を図っている。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕

1377

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第 7 章 文明研究所

まず第一に、「文明研究所では何をやっているのですか」という声が聞こえてくることを常に意識し

て、広報活動に取り組む必要があるだろう。この点で重要な機能を果たすと考えられるのは、文明研

究所のホームページの充実であり現在整備を進めている最中である。また文明研究所講演会とシンポ

ジウムはそれ自体が広報活動の役割も果たしている。これらを充実させ学生および教職員、そして地

域住民の参加を促すことが重要だと言える。 第二に、プロジェクト研究の公募と研究成果の発表を工夫する必要がある。研究所ではどのような

公募プロジェクトを採用するのか、その理念と基準をさらに啓発的で明確なものにし、プロジェクト

への参加を促すとともに、成果を出すことへの刺激となるようなシステムを作り上げていかなければ

ならない。 第三に、機関誌『文明』の質を高め学内外で評価を得ることである。先に述べたように、以前の 3つの機関誌はそれぞれ性格が異なっていたため、『文明』への最初の投稿論文も性格がまちまちであり、

学術論文としての水準に達していないものもかなりあった。今後、レフェリーの基準を高く保つとと

もに、文明研究所の他の研究活動と連動させて特集などを活発に組み評価を得られるなら、投稿への

動機付けを強めることができるだろう。 ③ 国内外の学会での活動状況(項目№165) 〔現状〕 新文明研究所が発足してからの 2 年間のプロジェクトに関連して行われた学術口頭発表は、総計で

学会発表が 8 件、講演(研究)発表が 7 件、ワークショップ 1 件、また開催されたシンポジウムは 3 件

である。この数字は論文等研究成果の発表状況と同様に、文明研究所の各所員および研究員ごとの件

数の総計ではなく、プロジェクトごとの発表件数を集計したものである。またプロジェクトが開く研

究会もしくは例会における発表はこの中に含めていない。 〔点検・評価〕 文明研究所が専任の所員および研究員をもたないため、研究成果を発表件数で示すなら、それは各

所員および研究員の発表件数を総計した数字の一部を占めることになる。したがって文明研究所とし

ての学会での活動状況を単に数値によって評価することは難しいが、全体として学術口頭発表も活発

に行われていると見ることができる。 〔将来の改善・改革に向けての方策〕 基本的には、論文等成果の発表状況と同じで、プロジェクトの研究活動を活性化させることに帰着

するであろう。ただしプロジェクト関連の成果の学会等での発表は、比較的に制約が少ない論文発表

にくらべて行いにくい点はあるかもしれない。それゆえ、プロジェクトの成果を口頭で発表する機会、

たとえば講演会やシンポジウム、研究大会をさらに充実させることでそれを学外での発表に結びつけ

るようにすることができるだろう。 ④ 研究所として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166) 〔現状〕 文明研究所は、建学の理念を実現するための基礎的研究を行うべく設置された研究所であり、研究

の基本を「21 世紀文明の創出」と定めている。その第一歩としてコアプロジェクト「現代文明の展開

と社会文化的多様性」を立ち上げた。 コアプロジェクトを遂行する上で、本研究所は、「文化的多様性と人間像」(第 1 部門)、「生活様式

と環境」(第 2 部門)、「知とアート」(第 3 部門)の 3 つの領域に焦点をあてて研究を行っており、そ

れぞれの研究を行う上で部門主任制をとっている。本研究所は原則として専任教員を置いてはいない

が、各部門主任の統括と連携の下に、全学部の教員の中から研究所員と研究員を委嘱するとともに、

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Page 107: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 文明研究所

学外からも共同研究員を募り、コアプロジェクトを親とする「子プロジェクト」を設けて、種々の個

別研究活動を行っている。2002 年度は 7 件の子プロジェクトが進行中である。 また、本学の創立が、北欧デンマークのグルントゥヴィが創始した国民高等学校を範としており、

文明への視点も北欧文明のあり方に啓発されたものであるという経緯を重視して、「北欧研究会」を研

究所の常設研究会として設置している。北欧研究会では、「北欧における持続可能な発展戦略に関する

研究」と、「北欧デザインを作り上げた人々:生活と環境の視点からの再検討」という、ふたつの研究

プロジェクトが行われている。 本研究所の総合的文明研究としてさらに挙げられるのは、第 3 部門「知とアート」が人類の生活にお

ける芸術と想像力の問題を理論的・実践的に研究していることである。これは旧芸術研究所で行われ

ていた活動を引き継ぎながら新しい形態に発展させたものである。現在、「芸術と身体性」プロジェク

トおよびデザインマネージメント実践研究が行われている。 コアプロジェクトの一環として、シンポジウム、講演会(研究会)が開かれている。2002 年度には「い

ま、文明を問う」と韓国漢陽大学校との合同シンポジウム「東アジア世界の近代と自己認識」を開い

た。今年度にはさらに比較文明学会との合同シンポジウムが計画されている。講演会はコアプロジェ

クトのテーマに関連する問題について、学内および学外の講師を招いて 2001 年度に 4 回、2002 年度

に 2 回行った。今年度にはあと 1 回の講演会が計画されている。 〔点検・評価〕 コアプロジェクト「現代文明の展開と社会文化的多様性」は、「21 世紀文明の創出」という文明研究所

の基本理念を実践する研究の第一段階であり、ひいては「調和のとれた文明社会を創造する」という

本学の建学の理念を実現するためのプロジェクトである。私立大学にとって建学の理念は大学のアイ

デンティティの根幹を成すものであり、大学全体の活動や特性および進むべき方向性を生み出す推進

力となるべきものである。この理念をさらに現実的なものとすべく、これまでの 3 研究所の活動を引

き継ぎ統合して新文明研究所が設立され、コアプロジェクトが開始された意義は大変大きい。 コアプロジェクトが研究所主導の子プロジェクトとともに全学から公募した子プロジェクトから構

成されていることは、研究所の理念を全学に浸透させる効果を持つと同時に、大学全体に潜在する活

力とアイデアを一つの方向性をもって統合する働きをすることになるだろう。 北欧研究会のような本学創立の歴史的経緯から生まれた研究会が活発に活動し、社会的に認められ

る成果を生み出していることも評価される。また、文明研究所の活動の中に「知とアート」の問題領

域が含まれていることは特筆されてよい。従来、旧芸術研究所では「アート&デザイン展」や「レクチャ

ーコンサート」が開かれ、社会的に開かれた活動を展開してきたが、こうした性格を保持しながら、さ

らに深い文明研究の一環として発展されると期待できる。 コアプロジェクトの活動と成果が研究者集団に閉じられることのないよう、シンポジウムや講演会

を開催して全学の教職員、学生、地域住民に開かれていることも重要である。とりわけ、今年度の韓

国漢陽大学校との合同シンポジウムは外務省の後援を得ることができ社会的にも大きな意義があった

と評価できる。こうした国際シンポジウムや比較文明学会などとの合同シンポジウムを開くことがで

きる点は、文明研究所改革の成果だと言ってよいだろう。しかし、シンポジウムや講演会への教職員

や地域住民の参加はまだ少なく、改革の成果が十分に生かされるには至っていない。 〔将来の改善・改革に向けての方策〕 新文明研究所は 2001 年度に設立され、2002 年度から本格的な活動を開始した。いうならば改革の

第 1 歩を踏み出したところであり、改革の中心としてのコアプロジェクトの成果が期待されるのはこ

れからである。 文明研究所にふさわしいコアプロジェクトを計画し、子プロジェクトを組織して活発な研究活動と

成果の発表を行うために、基本的には『文明』、講演会、シンポジウムが将来においても 3 本柱にな

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第 7 章 文明研究所

るだろう。これらをさらに充実させることは言うまでもないが、シンポジウムや講演会に学生はもち

ろんのこと教職員や地域住民の参加を促すためには、Ⅱにおいて述べたように広報活動が重要だと考

えられる。 またコアプロジェクトを全学に知らしめるとともに、子プロジェクト間の連携を生み出しプロジェ

クト全体を活性化させる手段として文明研究所の研究大会を開くことは有効だと思われる。しかし、

より本質的にはコアプロジェクトに参加するポジティブな動機付けが必要である。必要最小限の教育

上の義務と自分の研究ができればそれでよしという個人的態度のほうが「得をする」のではなく、文

明研究所のプロジェクトに参加することで実質的な研究上のメリットと相応の評価が得られることが

望ましい。 ⑤ 研究助成を得て行われる研究プログラムの展開状況(項目№167) 2001 年度から 2002 年度における文明研究所のプロジェクトの中で、研究助成を得て行われるものは

以下の 2 プロジェクトで、計 4 件の助成を受けている。

プロジェクト名(p-10) 研究期間

アジア地域の労働者・貧困者の福祉増進政策―能力向上・

技術協力の視点から―

(旧社会科学研究所から継続) 2000 年 4 月~2002 年 3 月

プロジェクトメンバー

(〇印リーダー)

所 属

身 分

〇鳥飼 行博

万城目 正雄

教養学部人間環境学科

国際労働研修機構

助教授

主事

1) 2000 年度東海大学研究奨励補助金 a 補助金額 30 万円 b 研究経過

高所得国と開発途上国(低・中所得国)の 1980 年と 1996/97 年における CO2 排出量とエネルギー消費

を比較すると、高所得国では 1 人当たりエネルギー消費は増加したが、1 人当たり CO2 排出量は 12.3㌧で変化していない。他方、開発途上国にあっては、1 人当たりのエネルギー消費も CO2 排出量も増

加しているが、その絶対水準は高所得国よりも遥かに小さい。つまり、先進工業国にあっては、エネル

ギー消費の絶対量が多く、大気中への CO2 排出累積、すなわち環境債務の返済の責任があり、地球

温暖化には南北で「共通だが差異ある責任」を負っているといえる。 世界銀行と UNDP(国連開発計画)が中心となって運営している GEF(Global Environment

Facility)は、1995-1999 年の案件数の 32.9%(73 件)はエネルギー関連の計画で、そこに全融資額の

36.2%に相当する 5 億 8500 万㌦が投入されている。この再生可能エネルギーの GEF 支援計画では、

太陽、小規模水力、風力、地熱など自然エネルギーが中心となっている。電化されていない地域が多く

残っている上に、太陽の潜在的利用の余地が大きい熱帯地域は、自然エネルギー開発が持続可能な開

発に大いに寄与すると考えられる。 開発途上国では広範に農業が行われており、バガス(砂糖黍の絞りカス)など農産物のカス、家畜の

糞、樹木などを活用し、バイオマスエネルギーを有効利用することが考えられる。特に、家畜や水田か

ら排出されるメタンを回収して利用することは、環境負荷物質を削減しての地球温暖化防止にも結び

つく。草の根の環境支援を有効なものとするためには、ハイテク以上に現地の実状に見合った安価で効

率のよい中間技術を開発し、それを広く普及することが求められると結論できる。

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第 7 章 文明研究所

c 研究成果 ア 『環境問題と国際協力-持続可能な開発に向かって』青山社、2001 年 イ 「熱帯林の経済分析-草の根の環境保全の試み」田中廣滋編『環境ネットワークの再構築』

中央大学出版部、2001 年 ウ 「新しい援助政策-草の根援助・NGO・環境支援」論文所収著作名 丸尾直美他編『ポス

ト福祉国家の総合政策-経済・福祉・環境への対応』ミネルヴァ書房、2001 年

2) 2001 年度文部省科学研究費基盤研究(C)

a 補助金額 90 万円 b 研究経過

開発途上国の個人経営体は、製造業、サービス業などの一般企業、公共サービス、教育などの政府部

門に加え、農家、個人商店、町工場などで多くの雇用を吸収している。そこで、開発途上国における

雇用吸収力とエネルギー消費を、マクロ経済レベルで推計した。そして、そのための電子計算機関連

機材の充実が今年度の特色であった。つまり、開発途上国の雇用、エネルギー、薪炭利用について、

内外の図書館、資料センター、地方自治体事務所で、資料・情報を入手して、研究補助者の力を借り

ながら電子計算機を利用し整理した。 第二に、フィリピン、タイなど、開発途上国における農村調査の文献資料も用いて、農家を自作、

小作、土地なし農業労働者などの土地保有、土地面積、資本や家畜飼育の規模、薪炭利用、ローカル・

コモンズに注目して区分し、各々の個人経営体におけるミクロレベルでの雇用、エネルギー消費など

を計測する。しかし、土地保有などのミクロレベルの詳細な情報は、未だに十分に蓄積されていない。

そこで、開発途上国における現地実態聞き取り調査、資料収集、実測が不可欠であり、そのための外

国語による調査対象者にも分かりやすい質問表づくり・質問詳細通訳に、現地住民の助力を得るとと

もに、撮影機材を活用した。 第三に、環境ODAについては、日本の地域開発の現状が参考になる。つまり、日本の農漁村にあ

っては、土地改良、農道や漁港の整備などの公共事業と農業共同組合、漁業組合、森林組合などの団

体に個人経営体が加入し、開発金融支援の試みがあるが、これらを具体的に検証し、個人経営体への

功罪を明らかにすることで、開発途上国における個人経営体を対象とした草の根援助に結び付ける。

これは,今年度中に進展させる予定であるが,時間的余裕が少ないので、次年度に繰り越さざるをえ

ない可能性もある。

c 研究成果 ア 『社会開発と環境保全-開発途上国の地域コミュニティを対象とした人間環境論』東海大

学出版会、2002 年 プロジェクト名(P-2) 研究期間

グローバリゼーションと経済・社会制度変容の多様性 2002 年 4 月~2005 年 3 月 プロジェクトメンバー

(〇印リーダー)

所 属

身 分

〇川野辺 裕幸

浅野 清彦 米村 浩 横山 恵子

文明研究所社会科学部門主任

政治経済学部経済学科

文明研究所所員

政治経済学部経営学科

政治経済学部経営学科

政治経済学部経営学科

教授

教授

助教授

専任講師

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第 7 章 文明研究所

1) 日本証券奨学財団研究調査助成金「市場指向型制度改革の政治経済学的分析」 (平成 13 年 10 月~14 年 9 月)100 万円

a 研究目的 本研究は、立憲的政治経済学における制度間競争の観点から、近年における経済活動のグローバル化

を契機とした経済の相互依存性の上昇が、わが国を含む東アジア諸国における市場指向型の制度改革

にどのような影響をあたえるのかについて、次の 3 点から分析しようとするものである。1)わが国を

含む東アジア工業国における経済制度の特徴とその背景となる社会経済的・政治的要因等をサーベイ

し、資本主義制度に関する国際比較を行う。2)経済制度変化の時系列分析データをもとに、経済環境

の変化が制度改革に至る政治的決定を導くメカニズムを検討する。3)経済制度の収斂や多様化を示す

項目をグループ化し、ネットワーク外部性や収穫逓増等の属性を検討するとともに経済制度の収斂や

多様化をもたらす原因を摘出する。 b 研究経過

〈平成 13 年度〉 ア わが国を含む東アジア工業諸国における経済制度の特徴とその背景となる社会経済的・政

治的要因等のサーベイ、資本主義制度に関する文献調査 ・経済制度(競争制度・税制・政府規模・産業政策・社会保障政策・取引慣行等)、社会経済

的要因(技術革新・産業規模・産業組織・国際市場との連結等)、政治制度(選挙制度・政

権担当政党数・政体)等のサーベイ ・制度転換の経済分析に関する文献調査

イ わが国を含む東アジア諸国における経済制度と社会経済的・政治的要因に関する国際デー

タベースの作成 〈平成 14 年度〉

ア 経済制度の収斂と多様化に関する諸制度のグループ化と、ネットワーク外部性・収穫逓増

等の属性の検討 ・経済制度変化に関する時系列データの収集とデータベース化 ・経済制度ごとの属性のテスト

イ 制度の収斂・多様化の類型化と制度間競争メカニズムの解明 ・各要因の相関構造の推定と分類 ・各要因構造の国際比較分析

c 研究成果 ここから、各国制度の「経路依存性」を決定する要因を摘出し、

ア 各国の制度改革は多様な形態をとるものの、共通の度合いを増していること、 イ 制度改革の多様性は、政治制度を含む社会経済要因との間に密接な相関関係のあるとの知

見を得た。

2) 日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究(C)(2))「東アジアにおける市場指向 型制度改革の国際比較分析」(平成 14~16 年度) 240 万円

a 研究目的 本研究の特徴は、1) 東アジア諸国において制度改革が生じる原因を、個々の経済制度に関して社会

経済的・政治的要因と、それぞれの制度が固有にもつネットワーク外部性や収穫逓増要因、IT 革命の

特性から分析すること、とくに政治制度における競争的フレームワークや、チェック・アンド・バラ

ンスに基づく制度設計の程度と経済成果との関係を計量分析することによって類型化しようとするも

のである、2)密接な経済関係を持つ国々の間での経済制度の変化を通じた制度間競争のメカニズムを

明らかにすることにある。 制度改革をめぐる実証研究は未だ未成熟といわねばならないが、本研究は国際比較データを使用して、

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第 7 章 文明研究所

その要因を摘出するという側面から制度改革の相互波及のメカニズムを解明することでこの分野での

研究を一歩進めようとするものである。 b 研究経過

先進資本主義国間の制度間競争を経済制度の収斂と多様化という観点から分析し、各国における制度

改革とその背景となる社会経済的要因(技術革新・産業規模・産業組織・国際市場との連結・政府規

模)、政治制度(選挙制度・政権担当政党数・政体)等をサーベイし、金融・電気通信・航空輸送・陸

上輸送産業における各国の規制緩和の程度との相関性を分析した。 (2) 教育研究組織単位間の連携 附置研究所と東海大学・大学院との関係(項目No.168) 〔現状〕 文明研究所と東海大学の関係については、(1)-①において詳述したのでここでは繰り返さない。 現在のところ、文明研究所には大学院の学生を所属させていないが、所員が大学院で指導する学生

とは間接的なつながりをもっており、シンポジウムや講演会は大学院生の協力を得て開かれている。 〔点検・評価〕 本学の建学の理念は「調和のとれた文明社会を創造する」ことにあり、文明研究所の設置目的はこ

の理念を具体化する基礎研究を行うことである。コアプロジェクト「現代文明の展開と社会文化的多様

性」は、「21 世紀文明の創出」という文明研究所の基本理念を実現する研究の第一段階である。本学の

建学の理念をさらに現実的なものとすべく、これまでの 3 研究所の活動を引き継ぎ統合して新らしい

文明研究所が設立され、コアプロジェクトが開始された意義は大変大きい。新文明研究所の設置目的

と活動は、本学創立の源泉の一つでもある北欧文明に関する常設研究会が置かれていることも含めて、

東海大学の理念・目的を実現する上で極めて適切であり、欠くことのできないものと言える。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 上に述べたように、新しい文明研究所の設置は東海大学の歴史の中でも重要な意味をもつ改革の一

つである。文明研究所と東海大学の関係は極めて明確なものとなり、将来においても揺るぎないもの

であろう。今後、文明研究所は東海大学における文明研究の拠点として、文明学研究科をはじめとす

る大学院や本学の教育の中核である現代文明論とも連携をとることができるし、またそうあるべきだ

と言える。 とくに文明研究所の理念・目的に合致した研究を行う優秀な大学院生を 2年程度研究所に所属させ、

研究費を支給することも考えられる。そのことで、大学院生には将来の研究者としての可能性を広げ

るとともに、研究所にも新しい刺激と活力が生まれることが期待される。

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第 7 章 未来科学技術共同研究センター

【未来科学技術共同研究センター】

1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 研究所の理念・目的(項目№3) 未来科学技術共同研究センターは、2000 年 9 月に設立された研究所の性格と共同利用施設の両面

の機能をもつ研究機関である。本センターの設置目的および基本運営方針は以下の通りである。 <設置目的>

1) 全学的視野に立つ自然科学系学術拠点を目指す 2) 学部・学科を超えた先端的、学際的研究を行う 3) 外部資金導入による研究推進を実施する 4) 産学官(公)連携による、社会に開かれた研究活動拠点とする

<基本運営方針> 1) 研究期間限定のプロジェクト研究方式による研究を実施する 2) 研究成果に対する外部機関の研究者、識者による定期的評価を実施する 3) 評価に基づき、研究グループの流動性を高め、学内共同利用施設の有効利用を促進する

以上のように、本センターでは従来にない新しい大学研究所の運営方法を導入している。 これまでの研究所は、特定の分野を対象としてきたが、本センターでは東海大学の特徴である総合大

学(13 学部)としての全学的な視点から、自然科学を見直し、学際的で先端的な研究を推進すること

が期待されている。なぜ研究を活性化しなければならないかという根本的な理由は、活発な研究こそ

がより優れた教育に繋がるからである。特に自然科学系の教育においては、日々進歩する内容を学生

たちに伝え、共に研究することで、次世代を担う優れた人材を養成する必要がある。指導に当たる教

員が怠けた研究者であってはならず、社会と積極的に接点を持ちながら、研究成果、あるいは研究活

動を通して得られる体験、経験を、教育現場にフィードバックする責務がある。 研究活動を活性化し成果を期待するためには、しかるべき施設と研究費が必要となる。限られた学

内施設と学生からの授業料をベースとした資金を研究活性化に向けて有効利用するためには、従来の

ように研究活動とは無関係に、すべての教員(研究者)に研究費、研究施設を平等に割り当てるので

はなく、活発な研究活動を展開しようとする研究者、あるいは展開している研究者に対して、大学が

積極的な支援をする必要がある。 本センターが、研究機関という性格に加え、共同研究利用施設という性格を持つ理由はまさに学内

施設の有効利用という意味がある。従来のように、建物という入れ物が研究所のシンボルであっては

ならない、という反省に立っている。また、外部研究費の導入を前提としている理由も、研究活動が

社会とリンクしている、即ち自己満足ではなく、社会から高い客観的評価を得るような研究を行うべ

きであるという理由に基づいている。 また、当研究所において、研究成果を外部機関の研究者や識者が定期的に評価し、その結果に基づ

き大学が研究者に対して、学内研究施設利用の決定、延長許可を与える、または使用停止、退出を命

じるシステムはこれまでわが国においても前例はないと思われる。本センターを利用し、積極的な研

究活動を希望した研究者に対して、公募を行い外部審査委員による第一回プロジェクト研究選抜審査

委員会を 2000 年度に 2 日間にわたり実施した。当時の審査委員を以下に記す。 <未来科学技術共同研究センタープロジェクト研究第一回選抜審査委員会委員> 西沢 潤一 元東北大学 学長 金子 秀夫 東北大学 名誉教授・(社)未踏科学技術協会 副理事長 谷 順二 東北大学流体機械研究所 所長 川崎 雅弘 新技術事業団(現科学技術振興事業団)理事長 林 主税 (株)アルバック 相談役最高顧問

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第 7 章 未来科学技術共同研究センター

根岸 良吉 (財)神奈川県中小企業支援財団 顧問 元(財)神奈川科学技術アカデミー(KAST) 常務理事 元神奈川県工業試験所 所長 南出 健一 (株)オーパスシステムエンジニアリング 代表取締役社長 神奈川県技術アドバイザー この審査では、研究者が提示した研究目的、手法、業績、目的達成の見込み、予想される業績の他

外部研究費の導入の可能性、社会との連携性、受験生や社会に対するアピール度等、これまでにはな

い審査項目に基づいて審査が行われた。特に、私立大学という視点に重点を置き、社会との連携、社

会へのアピール度に重点が置かれた審査となった。 この審査の結果、現在、物性、エネルギ-、情報科学および生命・人間等広範な分野において 25

のプロジェクト研究が推進されている。 なお、以上の公募によるプロジェクト研究の他に、大学が独自に必要性を判断し、以下の 2 つのプ

ロジェクト研究を立ち上げた。 a モータースポーツプロジェクト b 音楽療法プロジェクト

さらに本センターの特徴は、外部資金を導入した研究推進を各研究者達に要請している点である。

学生の授業料をベースとした大学配算予算ではなく、外部研究費を積極的に導入し、研究活動を活性

化させる目的である。基本的に、各プロジェクト研究に対して大学は研究費補助を行っていない。各

プロジェクト研究グループは、国、自治体等の公的研究資金、科学研究費補助金、企業委託研究費、

研究寄付金等を導入し、研究を実施することが要求されており、外部審査の採点対象になっている。

基礎研究と応用研究では設備、人的支援を含め、研究費の絶対値は異なるのは当然であり、各研究者

に要求されていることは、外部資金を調達できるような成果を挙げ、成果を学外に発信することであ

る。 本センターの研究活動は、研究推進部が支援しており、外部資金(委託研究費、公的研究プロジェ

クト研究費、科学研究費補助金等)の申請・管理、企業と研究者のコーディネート業務、知的財産に

関わる業務、研究評価の実施等、本センターで研究を行っている研究者への支援を行っている。 ② 論文等研究成果の発表状況(項目No.164) 〔現状〕

2001 年度の論文成果は国内 276 報、国外 90 報である。25 の研究グループは基礎理論、基礎研究

の内容から、工学的な応用利用に関する研究内容と広範に広がっており、各研究グループの発表論文

数には大きな違いがみられる。また糖鎖工学研究グループは、これまでの業績が高く評価され、2000年度には文部科学省からハイテクリサーチセンター整備事業に採択され、新たに未来科学技術共同研

究センター付属糖鎖研究施設として活動を開始した。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 1) 目標 上述したように、本センターの基本的な目的を達成するために、外部機関の審査委員による中間評

価を行い、研究成果の評価を実施した。2000 年 9 月から本センターへ入居が始まり、実質的には各

研究グループは過去 1年間で研究体制を立ち上げてきた。立ち上げという初期の準備段階を考えれば、

論文数は十分に評価できる数である。どのグループも今後の論文発表数の増加は大いに期待できる状

況である。 ただし、グループの中には論文発表がまだないところもあり、外部審査でも指摘されている。本

センターの設立理念を実現するためには、定期的な研究成果に対する審査は不可欠である。2002年 3 月、2001 年度の成果に対する外部審査委員による中間評価審査会を実施した。審査委員は以

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第 7 章 未来科学技術共同研究センター

下の通りである。 <未来科学技術共同研究センター中間評価審査委員会委員> 相澤 益男 東京工業大学 学長 金子 秀夫 東北大学 名誉教授・(社)未踏科学技術協会副 理事長 谷 順二 東北大学流体機械研究所 所長 川崎 雅弘 新技術事業団(現科学技術振興事業団)理事長 林 主税 (株)アルバック 相談役最高顧問 根岸 良吉 (財)神奈川県中小企業支援財団 顧問 元(財)神奈川科学技術アカデミー(KAST) 常務理事 元神奈川県工業試験所 所長 南出 健一 (株)オーパスシステムエンジニアリング 代表取締役社長 神奈川県技術アドバイザー

2) 評価の視点および項目 この中間評価審査会では、成果の達成度、業績、外部資金の導入状況、本センターの利用状況など

が厳しく問われた。 3) 評価 審査委員からは多くのグループについて、成果の達成度、業績、外部資金の導入に対して概ね高い

評価を得ることができた。しかし、研究目的と実際の成果との食い違い、本センターの施設としての

有効利用についてコメントと問題提議があった。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 いくつかのグループについては、施設の利用面で有効性が低いと指摘され、各研究室の利用にあた

って学生教育に当てられている点が同時に指摘された。本当に本センターとして使っている 17 号館

施設が研究遂行上必要としているのかという指摘と、本施設が有する設備を有効に利用しているのか

という 2 つの指摘に集約できる。大学として学内の限られた施設を有効利用するという点から考えて

も、重要な問題点としてとらえている。学内にあるキャンパス利用委員会などと連携を取りながら、

本センター以外にも有効利用できる施設は研究に利用するようにして行きたい。 また、本施設は研究を実施する場所であり、学生教育に研究室が利用される是非についても指摘があ

った。卒業研究も大学院生の研究も自然科学系の学生、教員にとってきわめて重要な実践教育である。

研究遂行上、大学院生および学部卒業研究生が主体的に研究を実施していることは事実であり、また

きわめて重要な役割を果たしている。したがって、本センターの利用において、大学院生および学部

卒業研究生が教員とともに実験室、研究室を利用することは当然である。しかし、基本的に本センタ

ーが主として利用している 17 号館共同利用施設は研究実施を目的とした施設であり、電源、水回り

等、研究実施を目的に建築されている。こういった設備を有効に利用する教育が望まれ、一般の教室

で実施可能な教育は教室で行われるべきであるという指摘は各研究者にもフィードバックして行きた

い。 ③ 国内外の学会での活動状況(項目No.165) 〔現状〕 論文発表同様、学会発表も活発になってきている。学会発表は、国内 276 件、国外 90 件である。も

ともと公募で選抜された研究者集団であり、成果のアピールの重要性について十分な自覚がある結果

と考えられる。 〔点検・評価(長所と問題点)〕

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第 7 章 未来科学技術共同研究センター

1) 目標 学術活動において、学会発表は論文発表とは異なり、研究者自身が学会で成果をアピールできる機

会である。学会賞受賞、国際学会主催など、国内外の社会に対して本学の研究能力をアピールするた

めには学会活動はきわめて重要な機会と捉えている。また学会発表は企業や外部機関との共同研究の

契機になり易く、外部資金を導入するためにも重要な活動と考えられる。さらに大学院生の成果を院

生自身が発表することで、外部の研究者から質問を受け、討論することで、非常に大きな教育成果が

あると考えられ、人材育成という視点からも重要な機会と捉えるべきである。 2) 評価の視点

基本的には、研究活動の対外的なアピールと、これによる外部資金獲得、外部機関との共同研究の

きっかけを見いだす研究と、また学生が学会発表を行うことで学生自身の教育になるという二つの視

点がある。 3) 評価

研究という視点から見ると、各研究グループでは、研究者自身ならびに大学院生が数多くの発表を

行い、同時に国内外の学会で受賞した研究者、学会賞を受賞した研究者、国際集会を主催した研究者

が多くみられる。さらに今後、国際集会を計画している研究者もおり、本学の中でも学外に対して大

いにアピールできる研究者が本センターで活動している状況が確認できる。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 前項から教育という視点から見たとき、大学院生等の国内外での発表が顕著であり、今後は大学院生、

卒業研究生の学会発表なども評価項目として取り込むべきであると考える。 ④ 特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目No.166) 研究活動状況は、受賞 9 件、特許 26 件、マスコミ報道 21 件、国内外集会発表・主催 12 件である。

研究活動の積極性が窺える。 〔現状〕 上述したように、2000 年 9 月から入居した研究者たちの活動はかなり活発になっている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕

1) 目標 特筆すべき活動は、通常の研究活動から出てくるものであり、選抜された研究者には十分理解されて

いると確信している。 2) 評価の視点

特記すべき研究活動には、論文発表、学会発表、招待講演(ゴードンリサーチコンファレンスからの

講演依頼)、学会賞受賞、マスコミ報道等が挙げられる。私学として、社会や受験生からの注目度も成

果の対象としたい。 3) 評価 各研究グループから報告されている特記事項を参考に記す。

・本センターの一プロジェクト研究としてスタートした「糖鎖工学の展開」研究グループは、水落を

リーダーとし、2000 年度、文部科学省のハイテクリサーチセンターとして承認され、本センター付属

糖鎖工学研究施設を設立することができた。これは本センターで活動する研究者の能力と研究レベル

の高さ、社会からの客観的評価が高かった一例と考えられる。今後のさらなる展開が期待されている。 ・「先端セラミクス材料の開発と産業界への展開」研究グループリーダーの太刀川は、IEEE第一回

超伝導部会賞(米国)を受賞し、日本を代表する国際的な超伝導研究者という評価を受けている。太

刀川等のグループは特許申請も活発で、またマスコミによる報道も 2000 年度だけで 4 件あった。超

伝導の国際会議を 2001 年度に 2 回主催した。同グループの松下は粉体粉末冶金協会賞を受賞し、国

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第 7 章 未来科学技術共同研究センター

際会議MRSのセラミクスセッション議長を努めており、国際的に高い評価を得ている。 ・「界面ナノ物性制御による材料のスマート化」のグループは日仏間でインテリジェントマテリアルに

関する会議を定期的に活発に展開している。 ・「エコテクノロジー」研究グループは、エネルギー分野では「エコマテリアル国際会議」(文部科学

省、米国国立科学財団(NSF)共催、2001 年 10 月、ハワイ)、「日韓水素エネルギーシンポジウム」

(日本水素エネルギー協会共催、2001 年 10 月、東海大学湘南校舎)を主催した。またソーラーカー

チームは秋田県とオーストラリアで開催されたソーラーカーラリーで好成績を収めたが、これまでに

蓄積してきたニッケル水素電池、大容量コンデンサー導入、電気系統制御技術、車体設計などの基礎

研究成果が成果に繋がっている。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 現在の各グル-プの活動状況は、いままで報告したように活発であり、今後とも研究成果を期待で

きる状態である。 ⑤ 研究助成金を得て行われている研究プログラムの展開状況(項目No.167) 研究助成金は本センターで研究を実施する研究者にとって、外部資金導入という条を満たす意味で

きわめて重要な評価要素である。 〔現状〕 本センターで実施されている研究者が導入している研究助成金の主たる助成金は、以下のようなも

のである。 ・科学研究費補助金 ・NEDO ・企業からの委託研究費、研究寄付金 〔点検・評価(長所と問題点)〕

1) 目標 これまでも本センターで活躍する研究者の多くは積極的に企業初めNEDO、科学研究費補助金等

を獲得してきた。しかし、活発に研究を遂行する研究者にとって外部研究費を獲得するように努める

ことは自明の理であり、あえていうならば大学として研究者に対して実施できる支援方法を考えるこ

とも重要である。 2) 評価の視点

研究内容により研究費の額は異なる。したがって金額よりも外部資金を獲得している状況と、その

資金で研究を実施できていることが重要な視点である。 3) 評価

各研究グループによって獲得している助成金の種類は異なっている。しかし、概ねどのグループも

研究を実施する上で必要な研究費を獲得している。今後、大学としてさらに研究を支援するために、

外部資金応募に関する情報提供初め研究者に外部資金に応募しやすい環境づくりを考えるべきである。

これまでも外部資金獲得に関しては、研究推進部が担当してきており、すでに科学研究費補助金への

応募申請も電子文書で提出できる体制を取っている。これは高く評価できることであり今後、限られ

た人的資源という条件の中で、メールやインターネット等を利用した情報提供をより活発にする必要

があろう。 (2) 教育研究組織単位間の研究上の連携 附置研究所と東海大学・大学院との関係(項目No.168) すでに述べたように、東海大学未来科学技術共同研究センターは従来にない運営方針で研究活動を

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第 7 章 未来科学技術共同研究センター

活性化する目的で設置された。また活発な研究を通して、より質の高い教育を行うことを目的として

いる。特に学部の卒業研究生と大学院生の教育において、高度な研究を通して実践的な人材育成を行

うことが期待されている。 〔現状〕 上に記した 20 以上のプロジェクト研究では、卒業研究生、大学院生が指導教員とともに活発な研究

を行っている。論文発表、学会発表にみられる通りである。 〔点検・評価(長所と問題点)〕

1) 目標 学部の卒業研究生、大学院生が質の高い研究を行うことは、特に大学院教育においてきわめて重要で

ある。本センターで研究活動を展開している優れた研究者は、卒業研究あるいは大学院研究の指導教

員でもある。したがって研究者である教員がより活発な研究活動を学生たちと展開することが、より

質の高い教育に繋がると考えられる。 2) 評価の視点

基本的に、研究者である教員が行う研究活動から生まれる成果、業績が同時に質の高い学生教育に繋

がる。社会と接点も持たず、学内という狭い世界に目をとらわれた教員に、学生たちに現状の専門分

野の状況を説明することも、専門分野で役立つ人材を創出することもできない。自然科学系の大学院

では、特に教員が自ら学生たちに示す実践的教育が不可欠である。本センターがその役割を果たすべ

きであることは、はじめに述べた本センター設立趣旨にも記してある通りである。 3) 評価 現状では、各研究者が示す論文発表、学会発表が重要な指標である。事実、大学院研究指導教員再

資格審査を実施している本学では、より質の高い、また責任ある教育の実施を目指し、大学院研究指

導教員の研究活動に対する評価を行っている。こういった動きと連携して本センターの設立があった

ことも付記しておく。 やる気のある研究者、教員にはより優れた研究環境を与え、より質の高い教育を可能にしようとい

う考え方が、大学評価委員会の答申から生まれ、その結果、研究を支援する研究推進部が設立され、

連動して大学院研究指導教員資格の再審査制度の導入、本センターの設立と繋がってきた。 本センターの活動が評価されるのは、むしろこれからであり、研究機能と共同利用による学内施設

の有効利用という両面をもつ本センターが、今後当初の目的に向かってより高い評価を学外から得ら

れるかどうかが大きな課題であると考える。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 設立以来本センタ-は、広報誌である「トゥモロー」および研究推進部の「ネクサス」を作成し、

設立主旨、研究成果および支援体制を日本社会の将来に向けた産学官連携の重要性を含めてあらゆる

機会に情宣活動を展開している。今後さらに内容を充実し広報活動を通じて研究活動および教育の充

実に役立てていきたいと考えている。

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第 7 章 海洋研究所

【海洋研究所】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 研究所の理念・目的(項目№3) [現状] 海洋研究所は 1947 年に東海大産業科学研究所水産研究部として発足したが、1966 年に現在の海洋

研究所に名称変更した。 海洋研究所は総合大学の附置研究所の一つとして、建学の理念に文理融合を揚げる本学の特性を活か

し、学際的・先端的な研究を産・官・学の連携をとりながら国際的水準において展開し、研究成果を

広く社会に還元することを理念としている。また研究プロセスや研究成果をより質の高い教育に繋げ

るよう努力することも理念の一つである。このような理念のもとに、海洋研究所では特に海洋学や海

洋開発に関連する諸問題を総合的に研究することを目的としている。 海洋研究所では研究成果の公表を目的に 1978 年より「東海大学海洋研究所研究報告」を年に 1 回

発行し、2002 年 3 月には第 23 号を発行した。海洋研究所の専任教員は現在 7 名であるが、その研究

成果は、この海洋研究所研究報告や紀要海洋学部をはじめとして国内外の関連学会誌に公表されてい

る。また、より地域に密接した研究成果の一部は、1991 年から 2001 年まで石垣島、西表島において

11 回におよぶ研究発表会で公表されている。 また海洋研究所では海洋学研究の推進のため、海洋研究所のみならず海洋学部をも含めてプロジェ

クト・部門研究を公募している。採択したテーマは 1999 年 11 題、2000 年 11 題、2001 年 8 題の計

30 題である。 このような研究推進の施策の結果、専任教員の 1998 年から 2000 年までの原著論文は、総説を含め

て 35 編、専門著書が 15 冊、フィールドワークが 3 編の計 53 編であった。 [点検・評価(長所と問題点)] 目標の実現に向けた取り組みに対し、評価の視点および項目を設定して行った評価を以下に示す。

1) 目標:研究所の目的である海洋学や海洋開発の諸問題に対して活発に研究し、その成果を社会

に公表して研究所に対する社会的要請に応える。 2) 評価の視点および項目

a 研究所の研究活動は活発に行われているか。 b 論文等の研究成果は社会的に認知され得るものであるか。 c 研究内容に偏りはないか。

3) 評価 大学教授職国際調査によれば日本の平均的大学教員の論文数は 3 年間に 3.46 である。これに対し

海洋研究所の専任教員の論文数は平均 5.00 であり、専門著書とフィールドワークを含めると 7.57 で

研究業績は評価され、研究活動は活発であるといえる。論文等の社会的認知に関しては、論文が海洋

研究所研究報告や紀要海洋学部にやや偏りがみられ、今後の検討課題であろう。ただし海洋研究所海

洋研究報告や紀要海洋学部はともに査読のある学術雑誌であり、他の学術雑誌に引用される例も多く、

別刷りの請求も国内外からあることから、これらの雑誌の社会的認知は次第に高くなってきている。 専任教員の専門分野は限られているが、毎年実施しているプロジェクト・部門研究の公募により、

多くの研究者との共同研究を実施することで、研究分野の偏りは、かなりの程度是正されているとい

える。 また東海大学の大学評価委員会の下に組織されている研究所評価委員会による評価が毎年実施さ

れており、その結果は研究所の活動に大きく活かされていることは評価される。

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Page 119: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 海洋研究所

[将来の改善・改革に向けた方策] 大学の一層の充実が社会的に要求されるようになりつつある現在、附置研究所の社会的役割も当然

大きくなりつつある。この社会的要求に対応するためには、研究所として研究機能の向上が必要であ

る。そのためには、より積極的に大学院生を指導し、より質の高い教育と研究成果に繋げる努力が必

要である。 また専任教員と学部あるいは大学院教員との人事交流の促進は、研究時間の確保や刺激となり、有

効な方法の一つであろう。 ② 論文等研究活動の成果の発表状況(項目№164) [現状] 海洋研究所は 1947 年に東海大産業科学研究所水産研究部として発足し、1966 年に現在の海洋研究

所に名称変更した。その後 1976 年には沖縄県西表島に海洋研究所西表分室を開設し、その後、海洋

生物センター、地震予知研究センター、先端技術センター(現在のフロンティアリサーチセンター)

を設置した。なお 2002 年に西表分室を沖縄地域研究センターと名称変更した。現在の専任教員は 7名である。海洋研究所では研究成果の公表を目的に 1978 年より「東海大学海洋研究所研究報告」を

年に 1 回発行し、2002 年 3 月には第 23 号を発行した。海洋研究所の専任教員の研究成果は、この海

洋研究所研究報告や紀要海洋学部をはじめとして国内外の関連学会誌に公表されている。また旧西表

分室センターで実施され、より地域に密接した研究成果の一部については、1991 年から 2001 年まで

石垣島ならびに西表島において 11 回におよぶ研究発表会で公表されている。 さらに、海洋研究所では海洋学研究の推進のため、海洋研究所のみならず海洋学部をも含めてプロ

ジェクト・部門研究を公募している。採択したテーマは 1999 年 11 題、2000 年 11 題、2001 年 8 題

の計 30 題である。 このような研究推進の施策の結果、専任教員の 1998 年から 2000 年までの原著論文は、総説を含め

て 35 編、専門著書が 15 冊、フィールドワークが 3 編の計 53 編であった。 [点検・評価(長所と問題点)] 目標の実現に向けた取り組みに対し、評価の視点および項目を設定して行った評価を以下に示す。

1) 目標:研究専任教員の海洋に関する基礎的・応用的研究を活発化し、その成果を社会に公表し

て海洋学に対する社会的要請に応える。 2) 評価の視点および項目

a 研究所の研究成果は活発に行われているか。 b 論文等の研究成果は社会的に認知されているか。 c 研究業績の不活発な教員がいる場合、活性化を促す方策はとられているか。

3) 評価 大学教授職国際調査によれば日本の平均的大学教員の論文数は 3 年間に 3.46 である。これに対し

海洋研究所の専任教員の論文数は平均 5.00 であり、専門著書とフィールドワークを含めると 7.57 と

なるので、研究業績は評価され研究活動は活発であるといえる。論文等の社会的認知に関しては、論

文が海洋研究所研究報告や紀要海洋学部にやや偏りがみられ、今後の検討課題であろう。ただし海洋

研究所海洋研究報告や紀要海洋学部はともに査読のある学術誌であり、他の学術雑誌に引用される例

も多く、別刷りの請求も国内外からあることから、これらの雑誌の社会的認知は次第に高くなってき

ている。 [現状]の項で述べたように海洋研究所の研究対象とする分野は広範であり、専任教員数も決して

多くはない。したがって、すべての分野ですべての教員が毎年公表にいたる水準まで研究をもってい

くことには無理がある。その結果として、研究業績が不活発にみえる教員も年によって出てくるのは

やむを得ない。そのような場合であっても、毎年実施しているプロジェクト・部門研究の公募や海洋

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Page 120: 【文学部】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究 …第7 章 文学部 10 件・共同0 件である。他方、国外においての発表は2 件とごく限られたものである。

第 7 章 海洋研究所

研究所研究報告の発行は、研究の継続・実施や発表の機会を促すことに繋がるので、有効に機能して

いるといえる。 また東海大学の大学評価委員会の下に組織されている研究評価委員会による評価が毎年実施されて

おり、その結果は研究所の活動に大きく活かされていることは評価される。 [将来の改善・改革に向けた方策] 大学の一層の充実が社会的に要求されるようになりつつある現在、附置研究所の社会的役割も当然

のこととして求められるようになってきており、この要求は将来益々強くなることが予測される。こ

の社会的要求に対応するために、研究所として研究機能の向上が必要である。そのためには、より積

極的に学部の専門科目を担当して大学院への進学者を教育し、大学院生の指導に繋げ、研究成果をあ

げることが有効な施策の一つと考えられる。ちなみに、海洋研究所の教授職の授業担当時間数は週平

均 6.4 授業時間(1 授業時間 90 分)であり、海洋学部の 8.8 授業時間と比較すれば少ないものの、ほか

の研究所と比較すると多いほうである。また専任教員と学部あるいは大学院教員との人事交流の促進

は、研究時間の確保や刺激となり、有効な方法の一つであろう。 ③ 国内外の学会での活動状況(項目№165) [現状] 既に、前項②で記述したように、海洋研究所では海洋研究の促進のため、海洋研究のみならず海洋

学部も含めてプロジェクト・部門研究を公募している。採択したテーマは 1999 年 11 題、2000 年 11題、2001 年 8 題の計 30 題である。 専任教員の研究成果は、国内外の学会、研究会、シンポジウム等で口頭発表として公表されている。

1998 年から 2000 年までの専任教員による口頭発表は 29 題であった。 [点検・評価(長所と問題点)] 目標の実現に向けた取り組みに対し、評価の視点および項目を設定して行った評価を以下に示す。

1) 目標:研究所専任教員の研究成果を学会等で活発に公表し、海洋学に対する社会的要請に応え

る。 2) 評価の視点および項目

研究所の学会活動は活発に行われているか。 3) 評価 大学教授職国際調査によれば日本の平均的大学教員の学会発表数は 3 年間で 5.00 である。これに

対し海洋研究所の専任教員の学会発表数は平均で 4.14 であり、日本の平均的大学教員と比較して若干

少ないのが現状である。前項②の[現状]の項で記述したように、海洋研究所の研究対象とする分野

は広範であり、専任教員数も決して多くはない。したがって、すべての分野ですべての教員が毎年公

表にいたる水準まで研究を持っていくことには無理がある。その結果として研究業績が不活発にみえ

る教員も年によって出てくることはやむを得ない。しかしそのような場合であっても、毎年実施して

いるプロジェクト・部門研究の公募や海洋研究所研究報告の発行は、研究の継続・実施や発表の機会

を促すことに繋がり有効に機能してきているといえる。 また,東海大学の大学評価委員会の下に組織されている研究評価委員会による評価を毎年受けてお

り、その結果が研究所の活動に大きく活かされていることは評価される。 [将来の改善・改革に向けた方策] 既に前項②の[将来の改善・改革に向けた方策]で記述したように、今後の大学や附置研究所の質

的向上が社会的に要求されるようになる。この社会的要求に対応するためには研究所としても、より

積極的に学部の専門科目を担当して大学院への進学者を教育し、大学院生の指導に繋げ、研究成果を

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第 7 章 海洋研究所

挙げることが有効な方策の一つとして考えられる。 また専任教員と学部あるいは大学院教員との人事交流の促進は、研究時間の確保や研究上の刺激とな

り、有効な方法の一つと考えられる。 ④ 研究所として特筆すべき研究分野での研究活動状況(№166) 既に②の[現状]で述べたように海洋研究所には海洋生物センター、地震予知研究センター、先端

技術センター、フロンティアリサーチセンターが設置されている。ここでは、これらのセンターにつ

いて個別に記述する。 海洋生物センター [現状]

1978 年に開設されて以来、動物プランクトン標本(CSK 国際動物プランクトン標本)の管理運営を

行なってきている。この標本は、ユネスコの主催により 1965 年から 1975 年に実施された「黒潮とそ

の隣接水域における国際共同調査」の中で採集された小型動物プランクトン(大きさ 0.33mm 以上)であり、1978 年にユネスコ海洋科学部と東海大学との間で契約が結ばれたことにより当生物センターに

移管された。現在までに、世界の研究者の利用に供された動物群数は、ヤムシ類、オキアミ類、クラ

ゲノミ類など 20 群である。研究の終了した動物群については、研究者から出現種の標本一揃いを提

供してもらい、黒潮流域に出現する動物プランクトンの照合用標本(reference collection)を作製する計

画である。これは、黒潮とその隣接海域において実施されるさまざまな研究の発展に寄与することを

目的としている。 1979 年からは、上記標本管理とともに、それまで遅れていた大型動物プランクトン(大きさ 2mm

以上)の研究を始めた。1992 年までに、本学大型調査船を利用して駿河湾などから試料を収集し、約

40 種類の動物群に選別した。現在、魚類、頭足類、オキアミ類など 9 群の生態学的研究などが進めら

れている。この研究の目的は、大型動物プランクトンの動物群組成とそれらの生態分布の知見を蓄積

することが第一義的であり、それらの研究を通して、照合用標本を作製することも計画されている。 [点検・評価(長所と問題点)]

1) 目標:生物センターの特筆すべき研究活動としては、動物プランクトンの組成と生態分布につ

いての知見を蓄積し、さまざまな研究の基礎となる出現種を同定するために有用となる照合用

標本を作製することである。 2) 評価の視点および項目

a 動物プランクトンの生態等に関する研究は進展しているか。 b 研究後の動物群について、照合用標本作成は適切に行われているか。

3) 評価: a 動物プランクトンのうち、CSK 国際標本については、研究が進捗中の分類群もあるものの、損

傷のために種の同定ができない場合がしばしば報告されている。現在までに研究が終了した動

物群は、20 動物群のうち、枝角類、クラゲノミ類など甲殻類を主体とする 8 動物群である。こ

れらの研究成果については、学術誌に報告され、別刷りの寄贈を受けている。また、大型動物

プランクトンについては、海洋研究所および海洋学部教員あるいはこれらの教員指導のもと、

海洋学研究科大学院生などにより研究が進められてきた。それらの成果は、日本海洋学会など

で発表され、海洋研究所研究報告などで公表されてきた。 b CSK 国際標本については、研究が終了し送付されてきた標本を照合用標本として保管している。

しかし、その動物群数は多くはない。大型動物プランクトンのうちヤムシ類やカイアシ類につ

いても、同様に照合用標本が作製されている。

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第 7 章 海洋研究所

[将来の改善に向けた方策] 地球温暖化に伴う海域の変化は、まっさきに海洋生態系の底辺を担う生物に現れ、生物の多様性に

大きな影響を及ぼすと推定されている。生物の多様性を明らかにするためには、分類群ごとの専門家

の協力を欠くことはできない。しかし、日本のみならず世界的にみても、プランクトンのように小さ

な生物を扱う研究分野では、研究者の高齢化が進んでいる。専門家の養成には、時間がかかるだけで

なく、標本処理と種の同定作業には評価されるような研究成果はほとんど含まれないことにも関係が

ある。それでも、生物多様性に関わる課題には取り組むべきであるから、関連文献の収集や専門家の

養成を図るなどの方策を早急に確立しなくてはならない。さらに、照合標本を損傷(解剖)しなくても

すむように、標本画像のデータベース化(画像として保管すること)も検討する必要がある。これは、

照合標本を提供した専門家の尊重につながるからである。 なお、当生物センターでは、上述した研究体制以外の業務として、臨時職員による CSK 国際動物

プランクトン標本保存液の交換作業(pH 計測など)を開設以来継続している。これは、ユネスコ海洋科

学部と東海大学との協定によるものであり、標本の管理からは大切ではあるが、いつまで継続すべき

であるかは今後の課題である。 地震予知研究センター [現状] 静岡県は東海地震の想定震源域の中央に位置しているにもかかわらず、人が常駐して地震予知研究

を実施している機関は存在しない。そして地震予知の困難さが喧伝されるこの時代において、「直前地

震予知の可能性を少しでも高める」研究はまさに静岡で行うべきだとの考えから、1995 年 4 月、清

水校舎・海洋研究所に地震予知研究センターを設置した。 本センターでは地震現象を地殻内の応力集中による破壊現象として捉え、その準備・直前過程にお

いて生起する幅広い周波数領域での電磁気現象を正確に把握し、その物理機構を統一的に解明するこ

とを目的としている。 電磁気学的な手法を用いた地震予知研究はいわゆるアメリカ型グローバルスタンダードの研究で

はないが、地球物理学の国際組織としては最大の国際地球物理学連合(IUGG)等でこの種のシンポ

ジウムを開催すると、例えば 1999 年のIUGGバーミンガム総会では 100 を越える講演が集まるな

ど盛況を呈するようになった。このような状況を考え、IUGG 内に「地震・火山噴火に関する電磁現

象研究のワーキンググループ(WG)」を地震学(IASPEI)、地球電磁気学(IAGA)、火山学(IAVSEI)にまたがるインターアソシエーションの WG として設立する事を本研究センターが中心となり提案

し、2001 年暮に IASPEI/IAGA/IAVSEI のインターアソシエーション WG:Electromagnetic Studies of Earthquakes and Volcanoes:EMSEVが正式に発足し、当センター長が Secretary を務める事

が承認された。また、国内では地球惑星科学の合同学会(毎年 6 月に東京で開催)にて本研究分野の

特別セッションを過去 5 年に渡り実施している。いずれも当センター長がコンビーナーとして参加し

ている。 [点検・評価(長所と問題点)] 目標の実現に向けた取り組みに対し、評価の視点および項目を設定して行った評価を以下に示す。

1) 目標:地震現象を地殻内の応力集中による破壊現象として捉え、その準備・直前過 程において生起する幅広い周波数領域での電磁気現象を正確に把握し、その物 理機構を統一的に解明する。

2) 評価の視点および項目 a 研究活動は活発に行われているか。 b 論文等の研究成果は社会的に認知され得るものであるか。

3) 評価

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第 7 章 海洋研究所

地震予知研究センターでは 1996 年度から現在(2002 年度)まで、ほとんど全ての研究を科学研究

費や理科学研究所などからの外部資金により行っている。スタッフもその資金により雇用している。

本研究センターが設置された翌年の 1996 年から 2002 年現在までの研究成果は、著書 1、原著論文(査

読あり)欧文 28 編、原著論文(査読あり)和文 14 編、総説など(査読なし)17 編、国際会議 43 回、

国内学会等 51 回である。このように研究活動はきわめて活発であり評価できる。またこの研究を通

じて、電磁気学的な地震予知研究に関するデータは一元的に当研究センターに集約するシステムが構

築されており、異常がある場合には気象庁にも東海地震判定会の参考情報として、提供することにな

った。本研究はすでに外部評価を 2 度受け、いずれも極めて高い評価を得ている。この研究で構築さ

れた観測網およびデータ収録システム等は当センター(東海および中部地方)および千葉大学(房総

半島)などで維持・管理をしていくことになった。なおこの研究の主な成果は、インパクトファクタ

ー9 のアメリカ科学アカデミー機関紙(PNAS)に 2 度にわたり掲載された。したがって、研究成果

も社会的に十分認知されているものと評価できる。

[将来の改善・改革に向けた方策] 東海地震の発生に際し、被害を最小限に抑えるために地震予知研究の更なる進展が急務である。そ

のためには現在構築済みの観測体制のデータをリアルタイム化し、データに異常があるか否かを常時

モニターし、判断できるシステムを構築することが必要である。そのための人材と資金の確保を急ぐ

必要がある。 フロンティアリサーチセンター [現状] フロンティアリサーチセンターの前身である先端技術センター(TCAT)では 1996 年度から 2000

年度までの 5 年間は私立大学学術研究高度化推進事業により「海洋学分野におけるハイテクとバイオ

基盤技術の開発」をテーマに研究を実施してきた。本課題による研究を遂行するための研究体制は、

海洋植物研究チーム・海洋動物研究チーム・海洋化学研究チーム・海洋情報研究チームの 4 つの部門

からなり、合計 8 名の教員で構成された。この間に発表された研究成果は、著書 5 編、学術誌等 52編、紀要等 28 編である。 私立大学学術研究高度化推進事業が 2001 年 3 月で終了したため、2001 年度の 1 年間は、今後の先

端技術センターの在り方を検討し、「産学あるいは産学官共同研究による研究活動の活性化」を目標と

する「東海大学海洋研究所フロンティアリサーチセンター、英語名:Tokai University Frontier Ocean Research Center (T-FORCE)」の立ち上げを行った。2001 年 9 月より NCIBM―JAPAN 株式会社と

の最初の産学共同研究がスタートし、企業側から研究員(博士の学位を有する者)3 名と研修員 10名がセンター内に常駐するようになった。

2002 年 4 月からは、正式にフロンティアリサーチセンターがスタートし、これまでに共同研究を

開始している教員が 4 名加わり、合計 7 社の企業が参加している。2002 年 10 月からはさらに 1 社が

研究グループ単位で参加する。従って、合計 8 社との共同研究が成立し、実際に企業側の研究員(博

士の学位を有する者)5 名と研修員 27 名が登録されている。 [点検・評価(長所と問題点)]

1) 目標:産学あるいは産学官共同研究による研究活動の活性化 2) 評価の視点および項目

a 産学共同研究は十分に進展しているか。 b 産学共同研究の成果および方向性は正しいか。

3) 評価 a 現在継続中の共同研究は以下に示すように 8 社との共同研究である。

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第 7 章 海洋研究所

ア NCIBM―JAPAN 株式会社との産学共同研究(2001 年 9 月より実施) イ アースウエザー株式会社との産学共同研究(1998 年度より実施) ウ 朝日航洋株式会社との産学共同研究(2000 年度より実施) エ 株式会社リプロリサーチとの産学共同研究(2000 年度より実施) オ 株式会社関門海との産学共同研究(2000 年度より実施) カ 株式会社東海アクアノーツとの産学共同研究(2001 年度より実施) キ 株式会社東海教育産業との産学共同研究(2001 年度より実施) ク 株式会社ピース産業との産学共同研究(2002 年度より実施) また、現在 1 社との契約を検討している。フロンティアリサーチセンターの面積を考慮すれ

ば、これ以上の企業の参入は不可能であり、評価に十分値する。 b 先端技術センターとして 1996 年度から 2000 年度までの 5 年間は毎年、研究成果と当該年度

の予定についての会議を一般公開形式で実施してきた。また、TCAT ワークショップを毎年数

回開催し、最新の情報交換を実施してきた。しかし、2001 年度は移行時期でもあり研究成果に

関する評価は行っていない。フロンティアリサーチセンターとしては、毎年、年度末の 1 月か

ら 3 月にかけて、産学共同研究の成果および方向性に関して、評価・検討を行う予定である。

守秘義務の制約の中での評価・検討であることを考えれば方向性は正しいと考えられる。

[将来の改善に向けた方策] フロンティアリサーチセンターとしての目的は「産学あるいは産学官共同研究による研究活動の活

性化」であり、長期的な戦略としては、センター(10 号館)を「対外的な産学官共同研究」の拠点と

することを目指している。ここでいう「対外的な産学官共同研究」とは、海洋学部内の様々な分野の

教員がプロジェクトを構成して実施する比較的大きな公募研究である。例えば、旧来の振興調整費や

NEDO 等のプロジェクト研究を指す。したがって、この戦略に関しては、プロジェクトの立案作成や

関係当局との折衝を担当できる人材を集めていく必要が出てくる。 ⑤ 研究助成を得て行われる研究プログラムの発展状況(項目№167) 地震予知研究センター [現状] 地震予知研究センターは 1995 年 4 月に設置された比較的新しい研究センターである。これまでの

研究費のほぼ全額を外部からの委託研究や科学研究費で賄っていることは特筆されるべきであろう。 1995 年の阪神大震災の発生を受け、科学技術庁(当時)は「地震総合フロンティア研究」を立ち上

げた。そのうち科技庁傘下の理化学研究所では「地震国際フロンティア研究」を 1996 年度第三四半

期から、当地震予知研究センター内に本部を設置して開始することになり、地電流を含む電磁気学的

な手法による地震予知の基礎研究が開始された。地震国際フロンティア研究は外部評価でも極めて高

い評価を得たが、特殊法人改革等の影響もあり、第一期の 2001 年 3 月をもって計画を満了した。な

おこの間の委託研究費の総額は 4 億 4,093 万円であった。 1997 年から 2002 年までに単行本 2 冊、学術誌(査読あり)へ 32 編、その他の出版物にも 19 編

の論文を発表している。また特許も(株)フジタとの共同研究を通じ、特許 2002-357666 号を取得し

た。 科学研究費に関してはセンター長が代表として基盤研究 B(海外学術調査:2000 年度~2002 年度)

孔井内温度分布と年輪の解析によるカムチャッカ半島における気候変動の復元(総額 1,490 万円)を

実施するとともに、基盤研究 A(2002 年度~2005 年度)東海・関東地域をターゲットとした地震発

生直前過程における電磁現象の基礎研究(総額 3,130 万円)が採択されている。

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第 7 章 海洋研究所

[点検と評価(長所と問題点)] [現状]で述べたように、地震予知センターに専任のスタッフはセンター長 1 人であるが、これま

では外部資金により常時 5 人から 8 人の研究者を雇用して特に地震予知のための観測点の維持・管理

に当たってきた。2002 年度は「地震国際フロンティア研究」で設置した観測点の維持のために、理化

学研究所から 3 人分の人件費を含む総額 3,080 の委託を受け、特任助手 1 人、研究員 2 人を雇用して

研究を維持している。2004 年度以降は科研費および新たな委託研究費により観測点維持のための研究

員 1人の雇用を予定しているが、観測点維持のための継続的な人材確保が今後の最大の問題点である。 [将来の改善に向けた方策] 本研究センターの特徴として、(遠隔)観測点からの大量のデジタルデータの取得を経常的に実施し

なくてはならない宿命がある。このため、観測点維持の要員確保とデータ通信費が問題である。逆説

的であるが、東海大学に観測点維持の能力があるからこそ外部資金を獲得できる訳で、継続的な外部

資金確保のためにも、専任の研究員の確保が最大の課題であり、2003 年に 1 名の専任研究員を雇用

した。 フロンティアリサーチセンター [現状] 「海洋学分野におけるハイテクとバイオ基盤技術の開発」をテーマとする研究は、1996 年度から

2000 年度までの私立大学学術研究高度化推進事業により 5 年にわたり行われた。本課題による研究

を遂行するための研究体制は、海洋植物研究チーム・海洋動物研究チーム・海洋化学研究チーム・海

洋情報研究チームの 4 つの部門から成り、そのスタッフは合計 8 名で構成された。 海洋植物研究チームは、主にスサビノリを対象として無菌初代培養系の確立、完全合成培地の開発、

室内における生活環の完結およびその短縮化、純系や変異株の作出、極低温下での株の保存法の開発、

そして遺伝子の単離・塩基配列の決定等を行った。特には、本プロジェクトにより開発されたスサビ

ノリ TU-1 株を用いて海洋植物の分子生物学的研究を行った。研究成果は著書として 2 編、学術誌等

へ 20 編、紀要などへ 6 編が発表された。海洋動物研究チームは、海産動物のシロウオ、フグ、アオ

リイカ、ヒラメ、マアジ、カンモンハタ等を実験生物として開発するため、飼育法の開発、組織培養

法の開発及び初代培養系の確立を行った。特に、本プロジェクトで開発された実験系を用いて、海洋

動物の発生・形態形成・細胞分化・生態に関する細胞生物学的、環境生物学的研究を行った。研究成

果は著書として 3 編、学術誌へ 18 編、紀要等へ 14 編が発表された。海洋化学研究チームは、フグ毒

に関する生態学的・天然物化学的研究、そしてペプチド核酸(PNA)の有機化学・分子生物学的研究

が行われ、その研究成果は学術誌へ 5 編、紀要等へ 3 編が発表された。海洋情報研究チームは、人工

衛星データを用いた海洋情報アルゴリズムの開発研究の一環として、リモートセンシングデータによ

る海洋情報アルゴリズム開発研究及び海洋現象のシミュレーションプログラムの開発に関する研究を

行った。特に、本プロジェクトの成果が特許申請(特許第 3233623 号)に結びつき、企業により実用

化され日本経済新聞等マスコミにも紹介された。研究成果は学術誌へ 9 編、紀要等へ 5 編が発表され

た。 さらに本センターは民間や国公立の研究機関から広く人材を募り、産官学の交流を図り、新しい型

の共同研究を推進してきた。また、本センターでは、ハイテクリサーチセンター整備事業及び新技術

開発研究からの支援により、効率的にプロジェクトを推進するため、大学内外に関連する研究機関か

ら講師などを招聘し、1997 年から 2000 年まで 7 回の先端技術センター(TCAT)セミナー(ミニシ

ンポジウム)や 17 回の TCAT ワークショップ(技術研修会)を開催し、持続的な研究の発展に必要

な公開性・流動性・学術性を重視し、海洋生物と環境に関する総合的かつ先端的な研究を目指してき

た。

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第 7 章 海洋研究所

[点検と評価(長所と問題点)] 本プロジェクトの評価として特に優れている点としては次のことがあげられる。海洋生物や海洋情

報分野のように比較的先端的研究が遅れている現状の中では、本プロジェクトテーマは全体的にオリ

ジナリティーと新規性に富むといえる。また、本プロジェクトによる海洋の実験生物の確立、とくに

アマノリ類やシロウオそして魚類の培養細胞系等は世界に先駆けた実験生物の開発といえ、高く評価

できる。また、海洋情報のリモートセンシングアルゴリズム研究もオリジナリティーがあり、特許(第

3233623 号)として認可されたり、実用化の進んでいるものもあり、大きく期待できる。 問題点とその克服方法としては、次のことがあげられる。これまで、本プロジェクトによる研究成

果としては、質・量の両面で、それなりの水準を達成してきているといえる。中でも優れたものは、

その研究分野に関連する国際専門誌へ受理され、反響をよんだものもある。本プロジェクトのような

大規模プロジェクトにより設置された海洋の先端技術に関する研究施設・装置・設備はおそらく世界

的にも第一級のものであろう。しかし、研究スタッフの布陣についてはやや問題があった。それは本

プロジェクトスタッフの大半の教職員は学部兼任であり、学部の教育等との間でかなり多忙であった

点である。大規模プロジェクトにふさわしい、すなわち、当該研究分野の研究水準を大きく越えたイ

ンパクトの高い研究(例えば、ネイチャー、サイエンス、プロナス、セル等の超一流誌への掲載可能

な程度の研究)を目指すには、大きな成果が出そうなチームへの人材等の重点的投入や、兼任教員の

学部教育担当の軽減が望まれた。 [将来の改善に向けた方策] ハイテクリサーチセンター整備事業終了後の研究成果ならびに当該研究施設・研究装置・設備は、

今後は海洋研究所フロンティアリサーチセンターにおけるハイテクやバイオ基盤技術の研究や新規先

端教育に向けた産官学の共同研究開発の拠点として活用していく方向にある。

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第 7 章 総合医学研究所

【総合医学研究所】

1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164) 〔現状〕 本研究所における研究成果は全て国内外学会誌への投稿・発表を義務としている。過去 5 年間(1997年~2002 年)の業績は英文原著論文 144 件、英文総説 23 件、和文総説 88 件、国際学会発表 164 件、

国内学会発表 115 件である。英文原著論文の発表誌は各分野の専門学術・学会誌を主とし、さらに Nature Medicine、Nature Genetics、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、Genomics、FEBS Letter など

の著名な国際科学誌にも発表している。本研究所では 1999 年度より研究成果を公開発表しており、

研究業績冊子を研究年報として刊行している。 また、本研究所の特筆すべき研究成果として、遺伝性神経変性疾患(脊髄性筋萎縮症、若年発症型

筋萎縮性脊索硬化症)の原因遺伝子(NAIP、ALS2)の単離・同定に成功、大脳基底核変性疾患(ハ

ンチントン病、パーキンソン病)モデルミニブタを作出、腎糸球体メサンギウム細胞増殖性腎炎遺伝

子を同定、腎炎モデルマウスの作出、臍帯血幹細胞の体外増殖技術の開発と臍帯血移植による再生医

療応用展開、衛星通信を利用した国際遠隔医療ネットワークングなどが挙げられる。 〔点検・評価(長所と問題点) 本研究所の部門構成は 2000 年度まで 3 部門(分子病態学部門、分子神経科学部門、分子発生科学

部門:教授 3 名、助教授 3 名、講師 5 名、助手 1 名、研究員 20 名/2002 年度現在)であった事を勘

案すると研究業績の成果率は極めて高いと言える。 そして、これらの研究成果に対する高い評価の裏づけは、上述の国際科学・学会誌への発表論文数

に留まらず、同研究成果を元に申請した外部公的機関(旧文部省(文部科学省)、厚生労働省、旧科学

技術庁(文部科学省)、学術振興事業団、科学技術振興事業団、その他財団)の公募研究補助金や委託

研究あるいはプロジェクト研究への採択件数(総数 90 件)と交付研究費総額(約 53 億 8488 万円/

5 年間)である。 〔将来の改善に向けた方策〕 本研究所での研究業績は、国際的にも高い評価を受けているが、これを更に維持向上させ、さらな

る人事のダイナミズムを生むために研究費獲得に見合う研究スペースの拡大と再配置。また、年俸制

の教員・研究員を増やしていく方針である。また、医学部の研究部門との統合も考えるべきである。 ② 国内外での活動状況(項目№165) 〔現状〕 本研究所教員は国内での研究成果発表はもとより積極的に国外の学会やワークショップ、シンポジ

ューム等で発表しており、且つ招待講演や特別講演の件数も多い(1997 年~2002 年:国内 30 件、

国外 35 件)。所属している学会は日本腎臓学会、日本透析学会、日本生理学会、日本免疫学会、日本

分子生物学会、日本癌学会、日本発生生物学会、日本神経化学会、日本生化学会、日本内科学会、日

本再生医学会、日本小児科学会、日本輸血学会、日本臨床分子医学会、日本救急医学会などその他多

岐にわたっており、かつこれら学会での役員(理事長、理事、会長、監事、評議委員)としても活動

している。また、国外では American Society of Nephrology、American Society of Human Genetics、Human Genome Organization、Canadian Genetic Diseases Network、International Society of Nephrology、International Congress of Nephrology、Inter Academy Council、International Congress of Internal Medicine、American Telemedicine Assiciation 等に所属しており、且つ役員

(理事長、副理事長、常任委員)としても活動している。

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第 7 章 総合医学研究所

さらに、文部科学省日本学術振興会科学研究補助金(特定研究、基盤研究、未来開拓学術推進事業)

厚生労働省厚生科学研究補助金(長期慢性疾患総合事業、薬物療法等有用性向上推進研究、健康科学

研究事業、心の健康科学研究事業)の研究代表者、総括班長、班長あるいは主任研究者として他大学

および国公立研究機関の研究者達と研究チームを構成し基礎研究やプロジェクト研究等の遂行と総括

に関わる一方、分担研究者としても積極的な研究活動を行っている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 本研究所の学会活動および研究活動は学内においても際立っており、国内外での東海大学の評価に

大きく寄与しているといえる。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 今後も活発な学会活動および研究活動を推進し、より一層の活性化を図る。 ③ 当該研究所として特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166) 〔現状〕 過去 5 年間(1997 年~2002 年)にわたって当該研究所教員が蓄積してきた研究成果あるいは独創的

な研究計画等をもとに申請し、採択された科学研究補助金ならびに研究助成金、研究助成金、委託研

究費等は日本学術振興会(文部科学省)、厚生労働省、科学技術振興事業団(文部科学省)、特定生物

研究機構(農水省)、東海大学総合研究機構、国立循環器病センター、航空宇宙技術研究所、日本漢方

医学研究所、財団法人(木原記念横浜生命科学振興財団、日本脳神経財団、公益信託「生命の彩」、内

藤記念科学振興財団、ノバルディス科学振興財団、病態代謝研究会、小野医学研究財団、武田科学振

興財団、三共生命科学研究振興財団、東京生化学研究会、神奈川科学技術アカデミー、持田記念医学

苦学振興財団、日本心臓財団)、および私・企業(萬有製薬、三共株式会社、大正製薬、帝人創薬研究

所、日本電気、千代田商会、田 益久、西園寺悦子)である。 交付された研究補助金の総額は各々、文部科学省(学術振興会)研究補助金 27 億 8980 万円、厚生労

働省 3 億 6430 万円、科学技術振興事業団 19 億 6370 万円、特定生物研究機構 14 億 8000 万円、東海

大学総合研究機構 510 万円、国公立研究機関 2 億 4185 万円、財団法人 2580 万円、私・企業 4697万円である(総額 53 億 8488 万円/5 年間)。 なかでも、未来開拓学術推進事業(1996 年~2000 年、日本学術振興会)、日加国際共同研究事業(1995年~2000 年、科学技術振興事業団)、ミレニアムプロジェクト・革新的技術開発研究推進(2000 年~

2002 年、科学技術庁)、基礎的研究発展推進事業(2000 年~2002 年、科学技術振興事業団)、ヒトゲ

ノム・再生医療等研究事業(2000 年~2002 年、厚生労働省)、心の健康科学研究事業(2002 年~2005年、厚生労働省)等の複数の大型プロジェクト研究が継続・進行中であることは特記するに価する。 さらに、本研究所教員は財団法人腎研究会特別功労賞、財団法人長寿科学振興財団奨励賞、日本臨

床分子医学会学術奨励賞を受賞している。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 このように採択された外部研究費は広範囲の組織にわたっており当該研究所の研究評価が幅広い分

野に浸透していると評価できる。 また、東海大学は対外的に知的財産や特許についての活動がよく知られている。しかし現実としては、

日本政府の方針に対応した国内外でのベンチャー企業やバイオテクノロジーでの「ノウハウ」は東海

大学を含めて殆ど存在していないのが現状である。この点でも総合医学研究所からのベンチャーや関

連事業での試みと発展は際立っており、国内の注目を集めている。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕

1400

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第 7 章 総合医学研究所

本研究所では研究成果の社会還元の試みの一つとして、研究成果をベンチャー研究開発へと展開さ

せる事を積極的に勧めている。そのためにベンチャー研究開発について必要な研究施設の共用に便宜

を図っている。分子神経科学部門ならびに分子病態学部門の研究成果を基に、ゲノム創薬ベンチャー

への展開を目的として「神経変性制御」ならびに「腎疾患モデル動物」ベンチャー研究開発が本研究

所において現在遂行中である。 (2) 教育研究組織単位間の研究上の連携 附置研究所と東海大学・大学院との関係(項目№168) 〔現状〕 医学の目的は人類の健康を守り、病気から救い、健康と福祉に支えられた社会を実現することであ

り、このためには基礎科学と病気の科学的分析研究、それを基にした新しい治療法の開発まで幅広い

分野の研究者が協力する必要がある。さらに社会的視野から人類の幸福を実現するために、日本国内

に閉じこもることなく、国際的な医学貢献が望まれる。 このように多くの研究分野が協力して、総合的な医学の発展を目指す場が総合医学研究所の使命であ

る。そして全身の調節機構および病態などを分子や遺伝子レベルで説明できるようにすることを目的

としている。 本研究所は医学部と独立した研究機関として設置されているが、物理的には医学部と共通の建物内

にある。加えて、本研究所の職掌は純粋基礎医科学研究に留まることなく研究成果の臨床応用への展

開と橋渡しをも義務としている。従って、本研究所教員は医学部大学院教員を兼務し大学院生の教育

と研究指導にあたっている。また、医学部学生教育においても講義を一部分担している。さらに、医

師資格を有する本研究所教員は大学付属病院での診療活動ならびに医学部学生診療教育・トレーニン

グにも積極的に参画している。さらに、大型研究プロジェクト遂行にあたっては医学部教員らとの緊

密な共同研究体制のもとに行われている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 このように大学・大学院と総合医学研究所とはより密接な連携が図れるよう努力しているところで

あり、相互の研究活動活性化に寄与していることは評価できる。しかし、現在は全般的に研究活動に

大きな差があり、このような連携はごく一部に限られているのが現状である。このことは大学・大学

院と総合医学研究所の関係を保つ意味でも今後の課題と言える。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 大学全体として取り組み、解決しなくてはならない課題として、教員の人事と給与、研究スペース

がある。総合医学研究所では東海大学としては早くから、外部資金による「年俸制」による教員の採

用制度を導入しており、これをさらに拡大したい。日本では現在、国から高額の研究費が投資されて

いることを考えれば、このような研究資金を東海大学にあって獲得する研究者には、大学として待遇

ばかりでなく、研究室スペース、研究支援も積極的に対応すべきであろう。これが隘路になって活発

な研究グループの意欲をそがないことが肝要である。研究者の動きは国内ばかりでなく、世界へも広

がるので、大学の研究での発信を考えれば、「メリハリ」をつけた研究者対策が、大学生き残り政策と

しては国内での競争に勝つためにも必須であろう。人事予算と責任を含めた現場主義への思いきった

大転換が必要かも知れない。このような積極的は制度を導入しなければ、所詮は国立大学に勝てるよ

うなプログラムにはなれない。一点輝くような大学での研究成果をあげるような制度を確立したい。

1401

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第 7 章 教育研究所

【教育研究所】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 論文等研究成果の発表状況(項目№164) [現 状] 教育研究所所員(専任)が 1996 年度から 2000 年度の 5 年間に著した著書、発表した学術論文、

その他の研究業績データ一覧を表 1 に示す。本表で、各年度の左列の数は著書、論文等の数であり、

右の列の実数はその所員 1 人当たりの数である。たとえば、2000 年度の著書は 13 点で、その年度の

所員 1 人当たりのそれは 0.9 点である。この年度に限れば、ほぼ 1 人 1 点を著したことになる。

年 度

所 員 数

著 書 著 書 3 0.2 6 0.4 19 1.2 2 0.1 13 0.9

原 著 論 文 12 0.8 12 0.9 8 0.5 12 0.7 11 0.8

紀 要 論 文 8 0.5 10 0.7 11 0.7 5 0.3 12 0.9

総 説 0 0.0 0 0.0 9 0.6 1 0.1 4 0.3

合 計 20 1.3 22 1.6 28 1.8 18 1.0 27 1.9

学術書監修 0 0.0 0 0.0 1 0.1 0 0.0 2 0.

翻 訳 5 0.3 2 0.1 0 0.0 2 0.1 2 0.1

学 会 発 表 17 1.1 20 1.4 13 0.8 10 0.6 37 2.6

1997 1998 1999

14

表1 研究業績データ一覧

学 術 論 文

そ の 他

2000

1415 16 18

1996

1

[点検・評価(長所と問題点)] 次の目標のもとに、以下の項目について同視点、基準により自己点検・評価を行った。

1) 目 標 研究所の研究の活性度を高め、その成果を教育に活かす

2) 評価項目および視点、基準 評価項目: 研究の活性度 評価の視点: 学会の論文誌あるいは Transactions に掲載される論文は、その査読シ ステムを通じて

審査されるので、その数で活性度を計ることができるとする。 評価基準:「大学評価の研究」(慶伊富長編、東京大学出版会、1984)によれば、国立大学を含む研究

者の全平均論文数は 5 年 7~8 編の割合である。したがって、学術論文を対象として、年に 1.5 編の

論文を発表することを基準とし、図 1 の尺度で評価する。 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 かなり 悪 い 普 通 良 い かなり

悪い 良い 図 1

3) 評 価 学術論文の評価指数は常に 1.0 を上回っており、この間の年平均は 1.52 でその評価は「普通」である。

しかし、紀要論文を除いた年平均は 0.94 となり、若干「悪い」である。紀要は読者の範囲も限られて

おり、原著論文として学会誌等に発表する努力が求められる。 [将来の改善に向けた方策] 評価結果は学術論文全体では「普通」、紀要論文を除いた場合は若干「悪い」である。今後は学会誌の

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第 7 章 教育研究所

原著論文のみで 1 人当たり 2.0 以上の「良い」になるよう、紀要論文を原著論文にする努力をする。 ② 国内外での学会での活動状況(項目№165) [現 状] 教育研究所所員(専任)が 1996 年度から 2000 年度の 5 年間に就いた国内外の学会等の役職デー

タ一覧を表 2 に示す。本表で、割合とは 1000 人規模の学会を想定した場合の、会員に占める役職者

の割合(%)である。 また、各年度の左列の数は本研究所の学会役職者数であり、右の列の実数はその所員に占める割合

を、会員に占める役職者の割合で除したものである。すなわち、学会の各役職者の割合を 1 とした時

の本研究所の役職者率である。 たとえば、2000 年度の理事・評議員は 1 人で、その本研究所の役職率は 2.4 である(研究所の学会

理事・評議員者数が所員に占める割合は 7.1%、学会の理事・評議員者数の割合は 3.0%であるから、

役職率は 2.366≒2.4 となる)。それは本研究所の役職率が平均の 2 倍強であることを示している。

年 度役 職 割合

所員

会長・副会長 0.3 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0

理事・評議員 3.0 0 0.0 1 2.4 1 2.1 1 1.9 1 2.4

委 員 長 0.6 0 0.0 2 23.8 3 31.3 3 27.8 3 35.7

幹 事 ・ 委 員 5.0 0 0.0 3 4.3 4 5.0 6 6.7 7 10.0

1998 200014

表2 学会等役職データ一覧

199914 16 1815

1996 1997

[点検・評価(長所と問題点)] 学会は、研究発表の場としてのみならず、標準規格、専門家倫理綱領、専門家集団としての提言な

ど社会に対して少なくない影響力を持っている。そして、それ等の活動は専門家集団としての責任で

もある。 次の目標のもとに、以下の項目について同視点、基準により自己点検・評価を行った。

1) 目 標 研究所の社会への貢献度を高める

2) 評価項目および視点、基準 評価項目: 社会への貢献度 評価の視点:学会の役職者は研究業績をベースとして選挙や推薦で選ばれ、学会の運営に携

わる。したがって、その数によって貢献度を見ることができるとする。 評価基準:最も典型的と考えられる 1000 人規模の学会を想定し、表 2 に示す会員に占める

各役職者の割合(%)を基準として、本研究所の役職率求め、図 2 の尺度で評価

する。 0.4 0.8 1.0 1.2 1.6 かなり 悪 い 普 通 良 い かなり

悪い 良い 図 2

3) 評 価 過去 5 年間に、本研究所員の学会会長・副会長への就任はない。しかし、1996 年を除きその

他の役職の役職率は全て 1.9 を上回っており、それらの評価は「かなり良い」である。

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第 7 章 教育研究所

[将来の改善に向けた方策] 全体としての評価は「かなり良い」と満足すべき結果である。学会の役職は研究業績 をベースと

したものであるから、引き続き活発な研究活動の維持に努め、社会に貢献して行くべきである。 ③ 特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166) 対象なし

(2) 教育研究組織単位間の連携 附置研究所と東海大学・大学院との関係(項目№168) [現 状] 本研究所は、1987 年に学生生活研究所と教育工学研究所を統合して発足した。前身の二つの研究所

は、それぞれ、大学の大衆化が益々進み、主要な大学が紛争を経験して混乱に倦み疲れていた頃の 1970年と 1972 年に設立された。 創立者・松前重義は上述のような状況に鑑み、「教育の主体である学生を具体的な人間として全体

的にとらえ、その生活に科学的研究の焦点をあわせ、ここを起点として教育改革をおしすすめよう」

(学生生活研究所季報 Vol.1-No.1,1971)との趣旨で学生生活研究所を、また、「科学技術の発展と、

多人数教育の下では教育の効果を更に向上させるために教育工学の研究が望まれて来ている」(教育

工学研究所研究報告第 1 号,1973)として教育工学研究所を設立した。 つまり、その理念は「教育は、その主体である学生を人間として理解するということの上に立って、

科学的方法でなされなければならない」ということである。そして、それ実現するため、本研究所は

「本学の建学の精神にのっとり、学校教育に関する諸問題を総合的に研究し、教育の発展、充実に寄

与する」(教育研究所規程第 1 章第 2 条)を目的に掲げ、活動している。 今日、学校教育を取り巻く状況は、経済的、文化的グローバルゼーション、科学技術の進歩、大衆

化、少子化などの変化に伴い、教育内容、技術、評価、制度のみならず、FD(Faculty Development)活動、社会心理学的問題、情報技術の活用など、これまでの学問的成果や経験のみでは解決できない、

緊急に対処すべき問題が山積している状況である。 こうした状況に鑑み、本研究所は「教員の総合的業績評価の在り方」、「授業実践例の収集」、「教

員研修」、「学生実態調査」、「教育の情報化」、「青年期のメンタルヘルス」など広範囲にわたる研究

を展開している。 [点検・評価(長所と問題点)] 次の目標のもとに、以下の項目について同視点、基準により自己点検・評価を行った。

1) 目 標:研究所の設置目的に照らして適切な研究活動を展開し、その役割を果たす。 2) 評価項目および視点、基準

評価項目: 研究テーマ 評価の視点:研究所が何を教育上の今日的かつ緊急の課題と認識しているかは、その研究活動

の方向を決める重要な要素である。したがって、研究所の研究テーマが主要な今

日的課題を網羅しているかどうかで、その設置目的に照らして適切な研究活動を

展開しているかどうか見る。 評価基準:教育上の主要な今日的課題の「いくつかを網羅している」、「半分以上を網羅して

いる」、「大部分を網羅している」の 3 段階で評価する。 3) 評 価

現状の説明で述べたように、本研究所の研究テーマを見ると、「教員の総合的業績評価の在り

方」、「授業実践例の収集」、「教員研修、FD」のように教育機関の透明性(Accountability)、信頼度(Accreditation)を高めることに資するもの、また、「学生実態調査」、「青年期のメン

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第 7 章 教育研究所

タルヘルス」のように学生の実態を即した教育に資するもの、「教育の情報化」のように情報技

術を活用して効果的な教育を展開しようとするものなど、どれも今日的かつ緊急のテーマであ

る。 ただ、国際化に対応した教育上の課題、たとえば、インターネットを使った海外の大学との

合同授業などに関するものが見られないが、3 段階評価の 3 に相当する「大部分を網羅してい

る」と評価する。 [将来の改善に向けた方策] 研究テーマに関しての評価は、教育上の主要な今日的課題の「大部分を網羅している」である。し

かし、これからの研究は理論的解明のみならず、教育の現場で直に役立てられるという実践的面も重

要である。その意味で明確な成果を目標に掲げた研究を戦略的に推進する体制を整備する。

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第 7 章 スポーツ医科学研究所

【スポーツ医科学研究所】 1. 研究活動 (1) 研究活動 ① 研究所の理念・目的(項目№3) スポ-ツ医科学研究所は 1988 年の設置より、東海大学の創設者、松前重義博士の建学の精神と博

士自身の研究所設置の意向を受けて推進している。 その理念と目的は総合大学としての特性を生かし、研究活動は、広く学際的な視点から実践と科学

を融合させることを重要な基盤とし、スポ-ツにおける心身の効果的な育成と競技力の向上のための

基礎的、応用的研究及びスポ-ツ傷害の予防・治療技術の開発と応用等、実践的研究を進める。また、

その研究による成果は、単に学園の発展のみに止まらず、広く社会に還元し、人類の福祉と繁栄に貢

献していくことを目的とする。 [現状] 1995 年、15 号館が完成した。しかし、スポ-ツ医科学研究所の設置に際し、医科学研究部門、技

術研究部門、障害研究部門、国際交流部門の四部門を設け、研究活動は学際的な視点から実践と科学

を融合させることを目的としながらも、15 号館の建設には大半が各研究室として小分けされ、しかも

予算の不足が原因でトレ-ニング場と低圧室を除いては、研究室にはその為の実験設備、機材、器具

どころか、机、椅子すらない有様であった。外観から見る建物や部屋数だけで、無能者の集まりのよ

うな評価も受けてきた。その後、1997 年に大学が打ち出した Rainbow 計画に体育学部がその対象と

なり、それに伴う特別予算で動作解析機器やその他の機器が購入され、共同利用できることになった。

また、外部医療機器会社からの委託研究や共同研究による物理療法機器の提供・協力などを頂き、除々

にではあるが、環境整備は整いつつある。特にここ数年は、国内における他大学や他機関に先駆け、

上記四部門を更に、具体的な活動体制をとるために、東海大学スポ-ツ医科学研究所、独自のスポ-

ツサポ-トシステムを設け、総合的な立場から各競技団体や選手強化の支援活動を展開している。 1) トレ-ニング部門:トレ-ニングプログラムの作成と実技指導等 2) メディカル部門:医療機関と連携しながら、スポ-ツ障害の予防・治療及びリハビリテ-ショ

ン等 3) 科学的サポ-ト部門:スポ-ツ選手の競技力向上を目的に、さまざまな科学的測定を実施、選

手個々のデ-タはソフト開発されたデ-タバンクのシステム化により、管理され、必要に応じ

て、選手や指導者へフィ-ドバックできる 4) メンタルサポ-ト部門:メンタル面の強化を目的として、メンタルトレ-ニングの講習やスポ

-ツ現場での実践指導の実施 5) 栄養サポ-ト部門:学外のスポ-ツ栄養学研究会の協力を得て、各運動クラブの合宿所の食事

調査や献立指導、スポ-ツ選手の個別アドバイスやカウンセリング、食事法に関する講習会等 現在、学内でも 35 の競技団体と約 1000 名の選手がこの支援活動を受けている。また、これらの活

動と関連させて、サポ-トスタッフとして学外からは国公立・私立大学・専門学校等を卒業した人、

学内では現役の学生と各運動クラブのトレ-ニングリ-ダ-(学生)など、将来、トレ-ナ-やトレ

-ニングコ-チを目指す人達の養成がスポーツ医科学研究所と体育学部教員等により行われている。 [点検評価(長所と問題点)] 上記「現状」でも述べたが、ここ数年取り組んできたスポ-ツサポ-トシステムが軌道に乗り始め、

その成果は現役の学生アスリ-トや多くの運動クラブを始めとして、オリンピックのメダリストやプ

ロの競技選手等、多くの競技者達によって明確に実証されて来ている。また、都道府県体育協会、各

種スポ-ツクラブ、他大学、高等学校、その他、多くの団体・個人の見学、体験学習、実践指導、コ

ンサルティング、講演などの依頼も多く、他大学や国体開催予定県などでは、このシステムを取り入

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第 7 章 スポーツ医科学研究所

れ始めているところも出てきている。ただ、本年三月に受けたブリ-フィングでのメンバ-各位の当

研究所の活動に対する理解や評価は極めて低いものであった。ここでも建物の外側と研究室の部屋数

に対する学会での研究発表や論文の数が満足して頂けなかったのか、このことに関しても各学会や専

門誌に、教員が個々に、かなり発表や投稿をされている。それと実際に指導して出た記録の結果を発

表すれば良いのでは、とよく云われるのだが、選手が一流であればあるほど、丸秘である。現役時代

にはとても外になどだせない。所詮、一般に云われるような研究所であるならば、施設と機材を備え

た部屋があれば、それなりの研究は可能だと思う。外国でもここのような総合的な視点でスポ-ツを

捉えている施設は研究所ではなく、センタ-と呼ばれているが、今後、大学としても検討して頂きた

い。また、研究所の評価もそれぞれの特徴に応じては、外部からの評価を是非、加えて欲しい。専任、

特任教員を除いた研究員による研究室の使用状況であるが、前にも触れたが、設置時の条件と建物の

中身が予算上の問題もあって、かなりの隔たりが生じてしまい、当初、予定されていた先生が個人の

研究室のような形で使用することになり、少しずつ改善はしてきたが、まだ修正が必要である。専任、

特任教員の研究室とスポ-ツサポ-トシステムに関わる部屋、共同実験室、低圧室以外は研究所の研

究テーマに相応しいものであれば、三年を限度に使用を許可する方向で、年度内で処理するように努

力したい。 [将来の改善・改革に向けた方策] スポーツ教育センタ-、体育学部、保健管理センタ-連携を密にして、現在進行中のスポ-ツサポ

-トシステムの更なる充実を図る、その為にも、特に希望したいのは保健管理センタ-を診療所とし

て機能させてもらいたい。トレ-ニング・治療・リハビリが一つのキャンパス内で完全な形で実施で

きる所は東海大学以外では無い、これは大学の判断で現状でも十分に可能であり、非常に大きな宣伝

にもなる。 ② 論文等研究成果の発表状況(項目№164) [現状] 東海大学の研究業績基準一覧にしたがって集計した 2001 年 4 月より 2002 年 3 月までの 1 年間に

おけるスポ-ツ医科学研究所専任教員(4 名)の論文等研究成果の発表状況は下記の通りである。 著書(学術書) 3 編 原著論文(学会誌) 1 編 原著論文(紀要) 6 編 学術書編集・監修 1 編 その他の文筆活動 19 編 (研究所内における共同研究は 1 編として集計した) スポ-ツ医科学研究所専任教員 4 名の過去 1 年間における論文等研究成果の発表状況は、総計 30編である。これらの研究業績の中で著書を含めた原著論文等研究成果は 10 編である。本研究所では、

もっとも重要視している研究業績がファ-ストオ-サの原著論文である。原著論文の内訳は、ファ-

ストオ-サが 5 編であり、そのうち 1 編が海外のスポ-ツ医学会誌(Österreichisches Journal für Sportmedizin)への投稿論文である。したがって、専任教員全員がファ-ストオ-サの原著論文を年

間に最低 1 編の研究業績があったことになる。 [点検・評価(長所と問題点)] 本研究所の設置趣旨は、「スポ-ツ・運動および、それに関する基礎的、応用的研究を行うとともに、

競技力向上、スポ-ツ障害の予防、対策等の新手法、新技術の開発とその応用の具体化、発展を期す

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第 7 章 スポーツ医科学研究所

る」ところにある。この趣旨を具現化するための組織としては、医科学研究、技術研究、障害研究、

国際交流の 4 部門があり、これらの部門の総合的視野の上に立った研究を推進する。したがって、本

研究所では、研究所全体のコアプロジェクトおよび専任教員の個別プロジェクトを含めたこれらの研

究に関する主要業績(学術論文、著書)に重きを置くものとする。 上記の現状に示されたように、本研究所における主要研究業績である著書(学術書)を含めた学術論

文等研究成果の発表状況は、全体で 10 編であり、これらの研究業績でファ-ストオ-サの原著論文

が 5 編である。これらの数と専任教員数(4 名)とで点検すると、原著論文(ファ-ストオ-サ)研

究成果は専任教員数の 125%となり、比較的良好と評価することができる。しかし、この 1 年間の原

著論文は、そのほとんどが紀要である。 そこで、本研究所の研究紀要である「東海大学スポ-ツ医科学雑誌」は、スポ-ツ医科学研究所が

設立された翌年、1989 年に創刊号が発行され、2002 年 3 月で 14 号を刊行している。この間、本雑

誌は、2000 年よりウィ-ン大学スポ-ツ科学研究所からの投稿論文も掲載されており、国際性も含め

た学際的な紀要となってきている。従来、本研究所では、本雑誌の発展のため、さらには、研究所全

体の活動および教員個々の研究活動とその研究内容を多くの人にアピ-ルし、より高い評価を受けら

れる研究所として存在するために、専任教員はコアおよび個別プロジェクトの研究成果を本雑誌に積

極的に投稿することが義務づけられている。このような経緯があるため、専任教員は、1 年間の研究

成果を紀要である本雑誌に掲載しているという現状がある。現在の本雑誌は、学内の各機関をはじめ、

海外(ウィ-ン大学スポ-ツ科学研究所、オ-ストリアスポ-ツ科学協会、オ-ストリアスポ-ツ医

学協会)および国内における他大学や公的機関、およそ 100 団体に配布している。さらに、雑誌送付

の請求が、新たに、年間にして 4~5 件はある。その研究成果の内容については、他大学の研究者と

積極的な意見交換や最新の知見の交流もなされており、将来への発展が期待でき、「スポ-ツ医科学雑

誌」での社会的評価は高まってきている。本雑誌は、情報サ-ビス活動に貴重な資料としても利用さ

れている。 [将来の改善に向けた方策] 本研究所の主要研究業績となるコアプロジェクトおよび専任教員の個別プロジェクトの研究テ-マ

および内容は、所長と専任教員との間で検討され、さらに、研究員を含めた合同会議で審議され、本

研究所の研究分野および重点活動から全体としてのコアプロジェクトと個別プロジェクトを決定して

いる。この際、それぞれの研究テ-マおよび内容が将来を見据えた研究で発展性があるか、さらには、

その研究が本研究所に大きな貢献度をもたらすかを検討している。また、外部資金の導入や社会的評

価の可能性についても検討され、それぞれの研究を選定している。 この研究活動の推進には、研究成果の論文発表等による社会的認知・社会への還元が必須であると

考えている。本研究所としては、教員個々の研究がオリジナリティの面を含めてより一層の成果が得

られる原著学術論文について選定を吟味して紀要のみならず、より学外に積極的に投稿して社会評価

を受けることを推進する。本研究所としては、本研究所ならではの特色ある研究成果の発展を図り、

学会誌は基より国際的な場での原著学術論文や著書としての発表を評価していくことを考えている。

既に、本研究所では、2000 年度より現在までにオ-ストリア・スポ-ツ医学協会発行の

Österreichisches Journal für Sportmedizin に他のスポ-ツ医科学研究所ではみられない本研究所の

特色ある研究成果が原著論文として 2 編掲載されている。今後は、さらに年間に 2~3 編の研究論文

を目標として、海外のスポ-ツ医科学雑誌に積極的に投稿するよう研究活動を推進していくことを決

定している。 ③ 国内外の学会での活動状況(項目№165) [現状] 学会発表 6 件(シンポジスト 1 件、特別講演・招待講演 1 件)

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第 7 章 スポーツ医科学研究所

(研究所内における共同研究は 1 件として集計) 2001 年 4 月より 2002 年 3 月までの 1 年間におけるスポ-ツ医科学研究所専任教員(4 名)研究成

果の学会での発表は、6 件である。その内訳は、学会・学術集会における一般発表が 4 件(発表者 2件、共同研究者 2 件)、学会・学術集会におけるシンポジスト 1 件、特別講演・招待講演者 1 件であ

る。海外における学会・学術集会の発表は 0 件である。過去 1 年間において、学会・学術集会におけ

る発表(共同研究は除く)のなかった教員は、2 名となっている。 [点検・評価(長所と問題点)] 上記の現状に示されたように、学会・学術集会における研究活動を点検すると、共同研究を除く発

表件数(4 件)は、専任教員数(4 名)の 100%という結果となり、先に示したスポ-ツ医科学研究

所教員の論文等研究成果の発表状況と同様に比較的良好と評価することができる。しかし、この 1 年

間において 1 度も学会・学術集会で発表(共同研究は除く)のなかった教員が 2 名もいたことも事実

である。これらのことを考慮して点検すると、研究発表した教員は、専任教員数の 50%となり、この

1 年間の学会での研究活動は良いものではないと評価する。その理由の 1 つとしては、体育会系クラ

ブ活動指導の問題である。スポ-ツ医科学研究所の教員は、体育会系クラブ活動指導者(部長、コ-

チ、専属ドクタ-、トレ-ナ-等)を兼務している。そこで、スポ-ツ医科学研究所教員が関連する

領域の主要な学会大会(日本体力医学会、日本体育学会、日本運動生理学会)が 8 月から 12 月まで

に多く開催され、その期間は体育会系クラブのシ-ズンであり、試合および重要な調整練習と重なる

可能性がある。このような状況が学会での発表人数の低下を招いているのではないかと考えられる。

しかし、教員個々の研究活動は、従来通り、活発に行われており、この 1 年間において学会での研究

発表の研究業績がない教員でも、先の論文等研究成果の発表状況で示したように学術論文等の形式で

研究成果を発表している。 [将来の改善に向けた方策] 研究活動の基本は、学会・学術集会での発表である。この場での積極的な意見交換や討論が将来へ

の研究の発展に繋がることにもなるのである。従来、学会・学術集会での発表については、教員個々

の自主性に任せていたという現状がある。前述の主要学会大会での発表が困難な場合は他の 2~3 月

に開催される学会・学術集会での発表に切り変えていくことが求められる。したがって、今後は、本

研究所専任教員が学会・学術集会で積極的に発表を行い、社会的評価を受けるとともに将来への発展

が期待できるようにするために、年度初めの会議で教員個々の年間計画を立てさせ、発表可能な学会・

学術集会を明示させるという方策も有効であろう。さらには、従来から行われている学内外向けの本

研究所主催「公開シンポジウム」を利用して発表することも可能であると考えている。 ④ 特筆すべき研究分野での研究活動状況(項目№166) [現状] 本研究所のコアプロジェクト研究は、2000 年度より 5 年計画で「健康・体力と競技力向上のため

の総合的研究」の題目で研究を推進している。本研究所は、国内における他大学や他の機関・各競技

団体等に先駆け、スポ-ツサポ-トシステムに重点をおき、トレ-ニング部門、科学サポ-ト部門、

メディカルサポ-ト部門、栄養サポ-ト部門、メンタルサポ-ト部門等、総合的な立場から各競技団

体や選手強化の支援体制を整えながら活動を展開しているところである。したがって、コアプロジェ

クト研究は、スポ-ツサポ-トシステムを中心とした重点活動を推奨する重点研究 4 項目(1.競技

力向上のためのトレ-ニング法に関する研究、2.モ-タ-スポ-ツのドライバ-に関する体力養成

およびメンタルトレ-ニング法の研究、3.音楽療法による競技力向上に関する研究、4.システム化

による選手のデ-タ管理)の選定を行い、総合大学として学際的な視点から実践と科学を融合させ、

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第 7 章 スポーツ医科学研究所

スポ-ツにおける心身の効果的な育成と競技力向上を目指しながら研究活動を推進していくことがス

ポ-ツ医科学研究所としての役割であり、大きな意義を有するものと考えている。 本研究所専任教員 4 名の個別プロジェクトは、健康維持と向上に関する研究として「肥満の減量に

対する高地および走者応答型トレ-ニングシステムの有効性に関する研究」(2001 年度、2002 年度の

文部科学省科学研究費「基盤研究(C)(2)」)、トレ-ニング方法および新技術の開発として「スポ-

ツ選手と一般人における筋力トレ-ニングの効果とプログラムに関する研究」(委託研究;旭化成工

業)、スポ-ツ障害の予防・対策として「慢性関節痛に対する筋肉トレ-ニングの有用性について」、

「運動競技選手および一般人の体組成に関する研究」等の研究が推進されている。 [点検・評価(長所と問題点)] 本研究所の設置目的の 1 つに「スポ-ツ選手の競技力向上」がある。この向上には、筋力、パワ-、

持久性などの基礎体力向上が基となる。本研究所教員の活動の 1 つとしては、低圧室、走者応答型ト

レ-ニングシステムおよびトレ-ニングセンタ-等における各種スポ-ツ選手の基礎体力の養成に関

するトレ-ニング指導、また、スポ-ツ障害予防の指導、スポ-ツクリニックがある。さらには、一

般学生および教職員の健康維持・増進に関するトレ-ニング指導等にも従事している。2001 年度は、

スポ-ツサポ-トシステムを含めたこれらの活動が積極的なものであったと評価できると考えている。 すなわち、低圧室およびトレ-ニングセンタ-を利用した競技力向上のためのトレ-ニング法に関す

る研究において各種競技(自転車、トライアスロン、硬式野球、柔道、バレ-ボ-ル、陸上等)で好

成績が得られたこと等のコアプロジェクト成果として良好の評価に値すると考えている。さらに、本

研究所では、新しく開発された走者応答型トレッドミルによる種々のコ-スをシミュレ-ションした

際の歩行および走行時の生理的応答について検討している。この研究成果は、論文等研究成果の発表

状況の項でも示したように、オ-ストリア・スポ-ツ医学協会発行の Österreichisches Journal für Sportmedizin に他のスポ-ツ医科学研究所ではみられない本研究所の特色ある原著論文として掲載

されている。これもコアプロジェクトの成果として良好の評価に値すると考えている。個別プロジェ

クトは、その成果をコアプロジェクトと相互的に検討するとともに、教員個々の研究がオリジナリテ

ィの面を含めてこの 1 年間は学会発表の評価を除くと活発な研究活動が行われたと評価できる。 [将来の改善に向けた方策] このように本研究所では、「学際的・総合的研究」の成果が充分にあげるよう努力するとともに、

コアプロジェクトの研究成果が各種スポ-ツ選手により一層還元できるように研究体制(スポ-ツ医

科学研究者と選手、監督、コ-チとの密接な連絡共同)を整えていくことも必要と考えている。次年

度は、コアプロジェクトは、5 年計画の後半であり、研究の進捗状況を報告する研究会や研究の再検

討を行い、4 項目の研究成果を全体の研究報告にまとめるよう準備するとともに最終年には「健康・

体力と競技力向上のための総合的研究」に関する公開シンポジウムを開催し、研究成果を広く社会に

還元することを考えている。 また、本研究所では、研究活動とは別に、スポ-ツ教育センタ-との活動協力の中で、スポ-ツサ

ポ-トシステムの活動と関連させた指導者の育成に関して、本研究所や体育学部の教員等による特別

講義や実践指導のもとに、スポ-ツサポ-トスタッフ(学外からは国公立・私立大学・専門学校等を

卒業した人、学内では現役の学生と各運動クラブのトレ-ニングリ-ダ-等)として、将来、トレ-

ナ-やトレ-ニングコ-チを目指す人の養成指導をも行っている。この活動も軌道に乗ってきており、

将来的には、本研究所の重要な教育活動の 1 つになると考えている。 ⑤ 研究助成を得て行われる研究プログラムの展開状況(項目№167) 2001年4月より2002年3月までの1年間における研究助成を得て行われる研究プログラムに関して

は、下記の 1 件が文部科学省科学研究補助を受け、研究成果報告書が提出されている。

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第 7 章 スポーツ医科学研究所

2001 年度、2002 年度科学研究補助金「基盤研究(C)(2)」 「肥満の減量に対する高地および走者応答型トレ-ニングシステムの有効性に関する研究」 さらに、下記の外部委託研究(旭化成株式会社)補助を受けている。 「スポ-ツ選手と一般人における筋力トレ-ニングの効果とプログラムに関する研究」 (2) 教育研究組織単位間の研究上の連携 附置研究所と東海大学・大学院との関係(項目№168) [現状] 本研究所の研究体制は、総合大学としての特性を生かし、本研究所専任教員および研究員として体

育学部、医学部、工学部、教養学部、理学部、健康科学部等の専任教員(合計 33 名)で構成され、

学際的研究組織としての研究活動を展開している。この研究活動の成果は、「東海大学スポ-ツ医科学

雑誌」に掲載されている。2001 年度の本雑誌では、原著論文 9 編(このうち 1 編がウィ-ン大学ス

ポ-ツ科学研究所からの投稿論文)があり、専任教員 4 編以外は医学部、体育学、電子情報学部の研

究員からの研究成果が掲載されている。 さらに、本研究所の実験室および研究室は、これらの学部の講義、実習、研究ゼミナ-ル(卒業論

文に関する研究を含む)等に活用され、教育研究組織単位間の連携も活発に行われている。 本研究所と大学院との関係は、とくに体育学部との連携が主であり、本研究所専任教員 4 名のうち 2名が大学院体育学研究科修士課程の講義および実習を担当している。さらに、本研究所を特徴づける

設備・機器である人工的高地トレ-ニングシステム(低圧室)および走者応答型トレ-ニングシステ

ムは、体育学部および工学部における院生の修士論文に関する研究および教育に活用されている。 [点検・評価(長所と問題点)] 本研究所では、専任教員以外の研究者もそれぞれの立場でスポ-ツ医科学研究所研究員として、東

海大学スポ-ツ医科学雑誌に研究成果を掲載しており、このような意味においても現在の本研究所の

存在はきわめて学際的研究組織と評価することができる。しかし、本研究所の構成メンバ-をみてみ

ると、この 1 年間においてコアプロジェクトに非協力的な研究員もいたことも事実である。 [将来の改善に向けた方策] 本研究所は、総合大学の付置研究所として、学際的研究組織としての更なる発展を目指しているが、

新しい成果を得るには構成メンバ-の相互の研究推進および測定技術開発への助言が必要であり、コ

アプロジェクトの中心となる研究課題の中心的人材や協力願える人材等の研究体制の見直しも必要で

あると考えている。 今後、本研究所では、東海大学が推し進めている産学連携を実現し、研究成果を広く社会に還元し

ていくことも考えている。 将来的に本研究所における研究分野は、体育学部との連携をより密にして、本研究所における研究プ

ロセスや研究成果を、現在、構想中の大学院体育学研究科博士課程におけるより質の高い研究、教育

内容に結び付けられるよう協力していく方策も必要と考えている。

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第 7 章 全学

4. 研究体制の整備 (1) 教育研究組織単位間の研究上の連携

学内共同利用施設等と大学院・学部等との関係(項目№169) 〔現状〕 学内共同利用施設は、東海大学の自然科学系学術研究拠点として全学的視野に立った研究活動推進

のため、学部・学科の枠を超えた世界的水準の研究を遂行することを主目的とし運用されている。 具体的には湘南校舎に未来科学技術共同研究センターや機械およびガラス工作室、伊勢原校舎に共

同利用研究室、清水校舎に海洋研究所などが設置されており、非常に高い専門性を有した職員も配置

し研究活動や教育支援を行っている。その施設を有効に活用しながら、研究者と共に多くの大学院生

や学部学生が研究の一翼を担い、さまざまな成果を生み出している。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 現在設置されている施設については本学に設置されている学部・学科・研究科の理念、すなわち建

学の精神に則り運用されており、またそれらには多くのニーズがあり、研究・教育の遂行に大きく寄

与している。特に限られた予算内で成果を出さなければならない状況においては、学内のこのような

施設を有効利用し、効率的な研究・教育が行われている。また、専門性を有した教職員による施設利

用の講習等も行われ、それらに携わる大学院生や学部生にとっては、基礎学力から社会での即戦力と

なる技能を身につけることができる。 加えて 2001 年度においては、国内外で 366 件の学会発表があり、そのうちの大多数が大学院生に

よるものであり、高度な研究を通して実践的な教育ができている。 しかしながらニーズが高い反面、それらに対応する職員数が不足しており、全てのニーズに対応し

切れていない部分がある。また、施設の利用方法が広く周知されていないため、利用者が偏る傾向も

ある。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 施設の利用についての広報活動を強化し、様々な分野の研究者・大学院生・学部生が利用できるよ

うな場とする。そうすることにより異なる分野からの意見を多く取り入れ学際領域の拡大を図り、施

設の活用度をさらに高めていく。また、人的な面での強化も不可欠であり、専門性を有した人材の確

保についての要望を出していく。

(2) 経常的な研究条件の整備 ① 個人研究費、研究旅費の額の適切性(項目№170) 〔現状〕

・ 個人研究費は、講師以上が 33 万円、助手が 31 万円を年間支給されているが、実際の運用

は学部学科により異なっている。 ・ 研究旅費については、学校法人東海大学内国旅費規程及び学校法人東海大学外国旅費規定

規程により算定し、支給されるが、その財源はとしては、個人研究費はもとより学内におけ

る特別な補助、科学研究費補助金、外部資金等様々である。また、回数については、国内外

ともに制限は設けられてはいない。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 日本私立大学連盟の調査報告書によれば、審査なしの個人研究費は、明確に旅費関係を明示してい

るものか否かを問わず、40 万円台が主流であり、次いで 30 万円台となっている。本学の個人研究費

の額に匹敵する 30 万円台を、35 万円以上とそれ未満に区分すると、若干、未満のクラスの分布が多

くなっている。

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第 7 章 全学

支給されている個人研究費(旅費を含む)の金額帯は、80 万円台から 15 万円台の範囲で分布して

おり、最高は 82 万 6 千円で、中には 24 万円の国内旅費を支給している大学もある。その他の特記事

項としては、大学から支給される研究費がすべて審査を経て行われる事例もある。 本学の個人研究費は現状で述べたような額であるが、支給額の分布では 2 番目の価格帯である 30万円台に位置しているが、この価格帯を中間値で割ってみると、下位の部類に当てはまる。上を見れ

ばきりがないが、必ずしも少額とは言えないけれど、消費税が導入された時代の見直しを除けば、金

額はほとんど据え置き状態であると言える。 また、講師以上と助手とでは支給額にかなりに差がある大学が見受けられるが、本学ではその差が

2 万円であり、優位な大学の部類に位置している。 このほかに本学では一定の条件下で個人に配算される研究費として、学部等研究教育補助金、研究

奨励補助金、学会補助、サバティカル、国内外派遣計画、特別研究休暇制度等がある。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 現在、大学が置かれている、社会的・経済的な現況下では、授業料の値上げやその他の収入を増加

させ、研究費の増額を図ることは厳しい状態であるので、持てるものを有効に使う策として、個人個

人に一律に配算しないで研究や教育実績を評価して、一方に厚く、他方に薄く行うことも必要ではな

いか。また、これと並行して研究者自身で国や自治体、企業等からの研究費獲得に臨むことが必要で

ある。 設置基準にも定義されているように、大学の使命は研究と教育であり、本学ではその研究分野の充

実を念頭に、総合研究機構・情報技術センターの設置をし、また、1997 年に研究推進部を組織し産官

学連携、知的財産の社会への還元等を目指して活動してきたが、研究者をサポートし、より一層外部

資金による研究費獲得のため、人材を育成し組織のパワーアップを図ることが必要である。 ② 共同研究費の制度化の状況とその運用の適切性(項目№171) 〔現状〕 個人研究費及び共同研究費として以下の支援施策を行っている。 <個人研究費>

1) 研究奨励計画 2) 国内・外研究派遣計画 3) 学部等研究教育補助金制度

<共同研究費> 1) 研究装置・設備拡充計画 2) 総合研究機構プロジェクト研究

個人研究費の、1)研究奨励計画については、2000 年度より計画を一部見直し、即効的に成

果の社会還元の期待できる研究又は今後成果の期待のできる若手研究者を、科学研究費補助金

に申請された研究計画から独自の委員会にて審査し、研究費として 60 件程度、1 件 10 万円か

ら 300 万円までを支給している。この計画の当初目的とされていた科学研究費申請率の向上に

ついては、1996 年度工学部の申請は 34.8%、2001 年度 40.7%となり、達成されている。

現在の計画については、1 件 300 万円とした研究は新規の特許創出他、具体的成果を上げてい

る。2)国内・外研究派遣計画については、研究者の研究活動の補助を目的とし、国内外の学

会発表に関する経費の補助を行っている。これは公募形式として、年間 50 件程度 1 件 15 万円

から 200 万円までの補助としている。2000 年度申請件数 65 件、2001 年度申請 91 件となって

いる。3.)学部等研究教育補助金制度については、学部単位で研究教育活動を活性化させるこ

とを目的として、学部長・所長に配算している。予算額は、大学評価委員会のもと学部等研究

教育補助金評価委員会を組織し、研究教育活動状況の評価により傾斜配分額を決定している。

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第 7 章 全学

全体の予算は教員一人当たり 3 万円を基礎算定額とし、全学教員数×7 万円に相当する額で、

これを各学部・研究所・センターへ傾斜配分としている。この予算は、学部長・所長のマネジ

メントに委ね、各学部・研究所・センターの特色に即した運用が図られている。 共同研究費の 1)研究装置・設備拡充計画については、年間予算 1 億円を上限とし、各学部

長・所長からの申請により、通常の研究費では購入不可能な高額な研究機材を購入する計画で

ある。2001 年度は 3 件採択している。2)総合研究機構プロジェクト研究については、学園の

研究活性化支援組織として 1976 年総合研究機構が発足後、「総合研究機構プロジェクト研究」

としてエネルギー・食料問題・地球観測等の 5 分野について学部問わず指名された研究者が

2000 年度まで共同研究を行い、研究マネジメントを含めたノウハウの蓄積及び各研究の成果を

あげた。2001 年度にはそれを基に、「学校法人東海大学プロジェクト研究取扱規程」を制定し、

2002 年度より規程に基づき、学園の専任教職員等研究者を対象とした公募形式による研究計画

を募集している。提出された研究計画はプロジェクト研究推進委員会が審査を行い、採択、予

算の決定及び研究推進に関わるコーディネートを行っている。現在、「標的分子の構造・機能

情報に基づいた医薬品分子設計」「南西諸島地域の総合的研究」「レジャー(ゆとり)サービス

システムの構築に関する研究」の 3 つの研究テーマを採択し、研究が行われており、学園ネッ

トワークを活用したグループ研究として遂行している。本年度は初年度であり、具体的成果は

まだ発表されていない。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 大学の研究支援のあり方について、研究支援組織を大学創設当初から形成し、旅費の補助及び研究

機器の購入補助の支援の他、研究全般に対し早くから経常的な研究費を競争的研究費補助として施し、

資金を投入してきたことは評価に値すると考える。また、研究成果に関しては、特許の創出の他、新

規の成果があがっている。ただし、次の問題点がある。 1) 競争的研究費とすることにより、研究評価制度が必要となるが、研究分野が多岐にわたること

によりその評価が困難となる。 2) 全体の学園内資金も厳しくなり、研究費は外部研究資金を獲得することなど応用研究にシフト

しているが、基礎研究の分野では外部資金の導入は困難であるがため、大学の基礎体力として

の基礎研究分野への継続的資金投資が今後の問題点である。 3) プロジェクト研究の場合、各プロジェクト研究は頻繁に研究会を開催し研究の連携を図らなけ

ればならないが、各研究グループの研究者は、異なった各学部学科の授業等のカリキュラムに

より教員は活動していることで、スケジュール等が合わず、研究の進捗が遅れる。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕

1) 大学設置基準のほか、学内規定も含め「前提となる決まり事」はあるが、その上で、学園とし

て推進するプロジェクト研究に参画する研究者については、授業などのコマ数を軽減など、研

究に従事する時間を増やすことが必要である。 2) 研究の高度化及び社会のニーズとのマッチングを図るため、流動的な人材投与を行うことを目

的とした、外部からの研究者の受入れに関する規定(特定研究員等)の内容を充実することが

必要である。 ③ 教員個室等の教員研究室の整備状況(項目№172)

〔現状〕 1) キャンパス内における教員一人あたりの研究室の面積は22.5㎡を目安として設置されており、

大学院生の研究室を併せ持つ場合は 2 倍とし、現状はほぼ 45 ㎡~50 ㎡で設置されている。こ

の数値は、私立大学の平均を上回っており、個々の教員のニーズに対してはともかく、全体的

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第 7 章 全学

な視点で見る限りでは研究目的を遂行するのに居室としては適切な環境であるといえる。 2) 近年、産官学連携による共同研究、委託研究の受け皿として共同利用研究施設(17 号館)、研

究目的を限定した海洋研究所フロンティアリサ-チセンター、遺伝子工学・実験動物研究セン

ター、糖鎖工学研究施設がそれぞれ国からの補助により設立された。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 各学部の諸事情、建築年度、建物の構造等があるため単純比較は出来ないが、学部毎個室率(研究

室数と専任教員数の比率)は、医学部が 44.9%、海洋学部が 87.6%、教養学部が 87.9%、文学

部が 92.9%となっており、その他の学部は 100%を達成している。 全般的に言える機能面での問題点としては、カリキュラムの関係からゼミ等の少人数クラスの授業

を研究室で実施する場合が生じたとき、研究室がゼミ室兼用となり現状の個室率や面積では、研究・

教育両面で満足できる状態にはなっていない。 また、校舎および研究棟が学生数の増加と共に増設され、また近年の改組・改変の影響もあり、特

に電子情報学部、工学部では各学科所属の教員の研究室および実験室が集中せず利便性の面からは適

切とは言えない状況である。 今日の IT 時代に対応するため、文系・理系を問わず情報環境の整備を行わなければならないが、

遅ればせながら清水校舎において研究室・事務部門を包括したキャンパス内 LAN が構築されたこと

により、研究室での活動をより一層充実させることが期待できる。 学部や大学院のための研究、委託研究・共同研究のための研究と言葉では区分けができるが、実際

の研究活動において線引きはできたからといっても、それを物理的に別の場所で行うことはなかなか

難しい問題であろう。しかしながら、いわゆる個人研究室の役割を定め、先進性・アピール性のある

産官学連携のための研究は未来科学共同研究センターの研究室との 2路線を堅持することにより研究

室の環境整備が図られる。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 1) キャンパス利用委員会の将来計画のマスタ-プランを検討する際に、上記の理由から一学部一

棟を基本として校舎の整備をすることが望まれる。 2) 近年の社会的なニーズの変化に伴い、委託研究分野が多様化し、学科を越えた研究成果を求め

られるケースが増加する傾向にあり、産学共同利用施設の増設を検討する必要性がある。 3) 昨今、大学院レベルの研究・教育の必要性が学内外を問わず叫ばれているが、本学がこれに対

応できるようにするためにも、問題点として指摘されている、研究室での少人数教育をやめ、

教室の整備を行うことによって、研究室の整備も進むものと考える。 ④ 教員の研究時間を確保させる方途の適切性(項目№173) 〔現状〕 教員の授業に関するノルマとしては、週 6 コマ、12 時間が下限で、上限は週 12 コマ、24 時間とな

っている。このほかに、教授会、委員会等で 4 日以上の出勤が義務づけられている。また医学部では

診療もあり非常にタイトなスケジュールの中での研究活動を強いられている。このような状況の中で

研究時間の確保は授業や診療を終えてから、もしくは夏期休暇・春期休暇等の長期休暇期間内になっ

ているのが現状である。しかしながら通常の研究時間のほか国内・外研究派遣計画、特別研究休暇制

度、大学院研究指導教員研究教育奨励制度等、年間 30 名前後の教員が長期の留学や研究ができる制

度も制定されている。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 セメスター制度の導入と共にオフィスアワーが設けられているが、この制度を導入するにあたって

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第 7 章 全学

は教員のノルマを軽減し研究活動に影響が少なくなるような配慮がなされている。また、国内・外研

究派遣計画、特別研究休暇制度、大学院研究指導教員研究教育奨励制度などの留学・研究奨励制度は、

半年から 1 年の長期間にわたり授業や各種委員会業務を免除され、給与・昇給についても保障されて

いる中で研究活動が行えるようになっている。 このセメスター制度導入により、半期完結型のカリキュラムの長所を生かし、教育に重点をおく期

間、研究に重点をおく期間を半々にするというようなシステムが可能にはなるが、その長所を生かし

きれてはいない。ただし、各種留学・休暇制度を利用する際には各学部学科でカリキュラムの調整が

しやすい環境にはある。また、国内・外研究派遣計画については、若手・中堅研究者の育成・研究促

進という目的の下に運用されているが、その他休暇制度との違いが見えにくくなっている部分があり、

再度この制度の目的を認識し運用していく必要性がある。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 大学の大きな使命のひとつである「研究成果の社会への還元」を達成するために、教員が研究に没

頭できる環境の整備は早急に行わなければならない。今後は各種留学・休暇制度取得者のみならず、

通常勤務をしている場合であっても、十分な研究時間が確保できるような体制作りが必要である。例

として、大きな研究プロジェクトのメンバーになっている教員は持ちコマ数を軽減する、現在医学部

以外で行われているセメスター制度の長所を生かし、半期は教育重視、もう半期は研究重視というよ

うなカリキュラムを組めるような体制も整える方策がある。もちろんそれは、学生指導・教育の重要

性を認識しながら、教育活動とのバランスを熟慮した上での施策である。そして今後教育職員の体制

を、研究専従、教育専従、両立という複線型人事についても検討することや研究科と学部の所属教員

を兼務ではなく明確に区別していくことも必要である。さらに、国内・外研究派遣計画の運用にあた

っては、私立学校等経常費補助金の特別補助を申請している「事業」でもあることから、採択された

教員向けて再度、当制度の目的を認識してもらうよう、事務サイドでの的確な指示・説明を行うよう

にする。

(3) 競争的な研究環境創出のための措置 ① 科学研究費補助金及び研究助成財団などへの研究助成金の申請とその採択の状況(項目№

174) 〔現状〕

1) 科学研究費補助金 科学研究費補助金への申請の状況は、ここ数年減少気味であることは否めない。 申請時期には、学部長会議での周知、各所属への通知などの方法で申請を促している状況であ

るが、特に人文社会系からの申請件数が伸び悩んでいる。反面、人文社会系での採択率は自然

科学系のそれよりも高いことが多く、特に 2001 年度の文学部では申請件数に対して 50%の採

択となった。 2000年 2001年 2002年

申請件数 採択件

数 採択金額 申請件数 採択件数 採択金額 申請件数 採択件

数 採択金額

571 220 526,300 549 200 464,400 522 192 456,000

※2002 年度の採択件数は 8 月 1 日現在のもの。金額は千円単位(間接経費除く) 2) 各種研究助成金

各種研究助成財団等への助成金申請は、研究推進部で把握している部分での現状はやや物足

りないように感じられる。ただし、各教員個人がHPなどの媒体を通して知り得た助成金に対

する申請状況は一概に判断しかねるという状況である。ただし、これらの助成金はある程度研

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第 7 章 全学

究分野が特定されており、東海大学全体としての研究活動の動向を判断する材料としてはやや

難しい部分があるのも現実である。 2000 年度 2001 年度

採択件数 金額 採択件数 金額

30 45,824 千円 38 45,657 千円

〔点検・評価(長所と問題点)〕

1) 科学研究費補助金 科学研究費補助金の申請に関しては、従来文部省(当時)から購入した計画調書に手書きも

しくは切り貼りしたものをコピーするという状況であったが、研究推進部において電子ファイ

ル化をして学内イントラにて公開するなど、申請へのサポート体制を整えている。しかしなが

ら、その後の事務方の作業が煩雑なため、学内での締切りを大きく前倒しにして計画調書の提

出締切りを設けている。そのため調書作成の期間が制限されてしまっており、申請をあきらめ

ざるを得ない場合もある。 2) 各種研究助成金

各種研究助成財団等への申請に関しては、各助成金の内容毎に一覧表を作成し、全所属に配

布している。各教員個人で大学に届いている助成金の募集要項の内容がわかるようになってお

り、申請書等は教員からの要望があり次第届けられるように準備されている。それらの一覧表

は、担当者が日々送付される各種助成金の公募要領等に全て目を通し作成している。そのため、

教員の手元に通知が届いたときには締切り間近となることも度々生じており申請チャンスを

逃してしまうこともある。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕

1) 科学研究費補助金 科学研究費補助金の申請件数及び採択件数を増加させるためには、まず、計画調書作成の労

力をできるだけ軽減するための方策をとりたいと考えている。例えば、事務方の取りまとめ作

業をできるだけ効率化することにより、調書作成の期間を可能な限り長く設定することや、計

画調書のチェックを教員個人で簡易的にできるようなシステム作り、学内での説明会開催等が

挙げられる。また現在のところでは学内の競争的研究費の一つである「国内・外研究派遣計画」

への応募資格に直近年度の科研費への申請を必須とするなどの条件を持たせるというような

方策を採っている。今後は 39 才未満の若手研究者は必ず申請しなければならないというよう

な大学としての施策を講じることも必要である。 2) 各種研究助成金

現在、各種助成金の周知に関しては案内通知を配布する方法を採っているため、教員が情報

を知り得るまでのタイムラグが発生してしまっている。それを解消するためにできるだけ早急

にイントラネット上で公開し、公募情報をリアルタイムで周知すると同時に申請書等も各自で

ダウンロードできるように環境を整えることを考えている。 ② 学内的に確立されているデュアルサポートシステム(基般(経常)的研究資金と競争的 研究資金で構成される研究費のシステム)の運用の適切性(項目№175)

〔現状〕 1) 研究奨励計画

特色ある優れた研究計画及びその内容を有する研究課題に対し研究促進・養成を目的とした

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第 7 章 全学

研究費補助、又は研究遂行に積極的な研究者に対し、研究費補助として「研究奨励計画」(総

合研究機構施策(法人施策))と称した制度を設けている。2000 年度より計画を一部見直し、

即効的に研究成果の社会還元が期待できる研究又は今後、研究成果の期待できる若手研究者を、

科学研究費補助金に申請された研究計画から独自の委員会にて審査し、研究費として 60 件程

度、1 件 10 万円から 300 万円までを配算している。この計画の当初目的とされていた科学研

究費申請率の向上については、1996 年度工学部の申請は 34.8%、2001 年度 40.7%となり、

達成されている。 2) 研究集会補助計画

本学の機関(学部・研究所・センター等)が主催する研究集会及び本学の教員が主催責任者

となる研究集会に対し、本学研究者における積極的な学術交流を行う研究者の支援を目的とし

て会場費の一部又は資料印刷費の補助をする「研究集会補助計画」(総合研究機構施策(法人

施策))と称する制度を設けている。研究交流の活性化はもとより、外部研究費など、外部の

競争的資金を獲得する上でも有効な施策であり成果を上げている。 3) プロジェクト研究

今後、「具体的に社会に成果を還元できる研究」又は「学園の教育現場等に還元できる研究」

をコンセプトに推進する研究を「研究奨励計画」の成果を参照しカテゴリーを策定し、総合大

学としての総合力の「場」として、「プロジェクト研究」を行う制度を設けている。 4) 学術図書刊行費補助計画

本学研究者による研究成果において、出版社等の企画・事業として刊行できない質の高い学

術研究の成果を、学術図書として刊行する「学術図書刊行費補助計画」を設けている。年間 3件程度を採択し、学園関連出版社を利用し刊行している。

5) 学部等研究教育補助金制度 学部単位で研究教育活動を活性化させることを目的として、学部長・所長に配算している。

予算額は、大学評価委員会のもと学部等研究教育補助金評価委員会を組織し、研究教育活動状

況の評価により傾斜配分額を決定している。全体の予算は教員一人当たり 3 万円を基礎算定額

とし、全学教員数×7 万円に相当する額で、これを各学部・研究所・センターへ傾斜配分とし

ている。この予算は、学部長・所長のマネジメントに委ね、各学部・研究所・センターの特色

に即した運用が図られている。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 1) 「研究奨励計画」については、文部科学省科学研究費補助金の申請率向上を目的として行われ、

その目標は達成された。さらに 2000 年度より計画を一部見直した、科研申請が基本となるが、

成果を継続的・拡張的に捕らえることの出来る研究に対し補助を行った結果、新たな特許取得

等、確実に成果を成してきている。ただし、具体的成果を鑑みた審査・採択を行うことについ

て、その研究評価・技術評価が問題となっている。 2) 「研究集会補助計画」については、30 万円という限度額があるが、年間約 20 件程度が採択さ

れ、研究活動の活性化の一翼を担っている。問題点として、採択後の研究成果に対する本計画

の効果の査定が困難であり、その結果、若手研究者の研究交流の促進の場の提供として良い計

画ではあるが予算拡大を図ることが困難である。 3) 「学術図書刊行費補助計画」については、基礎研究分野に関する学術図書の刊行を目的としてい

るため、「成果の社会還元」としては判定が困難である。また、年間 3 件程度といったことも

あり、あまり利用者がいない。原因の一つとして出版が本学の出版会に限られるなどの制約が

あるためと考えられる。 4) 学部等研究教育補助金制度

過去は学部の教員数のみの配算となっていたことから、教員数絶対数の少ない学部は不利で

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第 7 章 全学

あったが、1998 年度より各学部に対し、成果・業績を評価し傾斜配分することになり、計画内

容によって教員数絶対数の少ない学部でも、予算を獲得が可能となった。ただし、問題点とし

て、予算の弾力的な運用も可能となったため、評価基準の設定など、それぞれの成果・業績評

価が複雑となる。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 研究活性化のための施策であるが、従来から行っている施策に関しては、外部研究公募採択及び研

究成果創出の傾向も変化していることから、効果は薄くなっており、全般的に見直しが必要である。

特に科学研究費補助金の申請率は、全般的に採択件数が下がっていることから策を施してもむしろ下

がっている傾向にある。 対策として、従来の研究支援の方法は、研究の内容中、旅費経費などのスポット的補助であったが、

今後は、基礎研究、応用研究に分け、基礎研究では大学として行わなければならない研究と位置づけ

たものに研究分野ごと経常的に予算配算を行い、応用研究についてはプロジェクト研究化できるもの、

もしくは、即効的に成果の社会還元が可能な研究に対し重点的に予算配算を行う等、研究シーズにあ

ったトータルの評価の策定を行ない、研究内容ごとに配算することが必要である。これには、教員の

意識改革が一番必要ではないかと考えられる。また、事務支援に関しても、現在の組織規模、体制に

おいてはこれ以上大きい事務支援の変化は難しいと考えられるが、外部評価委員会の設置、及び外部

資金導入の啓蒙と事務の簡素化、効率化に務めることが必要である。 ③ 流動研究部門、流動的研究施設の設置・運用の状況(項目№176)

〔現状〕 2001 年度に発足した未来科学技術共同研究センターは,研究プロジェクトを学内公募し,学内外の

審査委員により審査され選ばれる。その基準は研究内容の独創性,萌芽性,先進性,研究者の業績,

外部資金の導入状況などによる。各プロジェクトの研究期間(3~5 年)において中間審査を行い成果

による利用制限(退去,延長)を行っている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 運用を開始して 1 年余経過している現状では,中間審査を 1 回実施したに過ぎないが,それでも研

究活動の進捗にははっきりとした差違が見受けられる。入居期間が 2 年を経過する今秋,それらのプ

ロジェクトチームは正念場を迎えるので,当初の設定どおり成果の出ないプロジェクトチームに退去

勧告を行い実行することが,今後の運用に大きな影響を与えるであろう。また,既得研究室の延長上

とならないためにも,毅然とした運用が必要である。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 現在の入居契約は,研究期間の長短にかかわらず 2 年間で契約更新の運びとなるが,この 2 年間と

いう制限はなんの意味を持たないので,研究期間イコール入居期間とし,退去・延長は一年間の研究

成果が,採択の基準をクリアできていなければ,一定の猶予を与え,その間にリカバリーできたチー

ムには利用を継続させる。その後,研究期間満了まで同様のサイクルで審査を行う。

(4) 倫理面からの研究条件の整備 ① 医療や動物実験のあり方を倫理面から担保することを目的とする学内的な審議機関の開

設・運営状況の適切性(項目№177) 〔現状〕 医療や動物実験のあり方に関する倫理面からの審査・検討体制については伊勢原校舎の医学部を中

心に体制が整えられて来た、まず、医学部では 1983 年から「医の倫理委員会」(規定は 1983 年 10

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第 7 章 全学

月 1 日施行)を設置し、以後、骨髄移植医療に関する倫理問題等を中心に個々の申請を検討して来た。

また、近年は遺伝子解析研究の申請が激増し(2001 年度 29 件)、3 省庁による「ヒトゲノム・遺伝子

解析研究に関する倫理指針」(2001 年 3 月 29 日制定)、科学技術会議による「ヒトゲノム研究に関す

る基本原則」(2000 年 6 月 27 日制定)をもとに、倫理委員会のメンバーも学外の学識経験者を入れ、

年間 80 件(2001 年度実績)の審査を活発に行っている。また、沼津校舎でも「『ヒトを対象とする

研究』に関する倫理委員会規定」を 1997 年 4 月 1 日に制定した。 動物実験に関しても、1988 年 6 月 8 日より「東海大学医学部動物実験指針」を設け(伊勢原キャ

ンパス動物実験指針として 1999 年 4 月 1 日改訂)、「動物実験委員会」を中心に、特に動物愛護の観

点から実験の適正化を求めている。近年はキャンパス内の動物実験に関しては、申請を提出、認可さ

れなければ、実験は認められないものとしており、年間 120 件程度の申請がある。 組み換え DNA 実験安全管理規定については、医学部、海洋学部、開発工学部、湘南校舎(多学部

が存在)、がそれぞれ 1983 年 7 月 12 日、1992 年 3 月 1 日、1992 年 3 月 1 日、1995 年 3 月 1 日(1997年 4 月 1 日改訂)、に規定を制定した。が、2001 年度医学部が 36 件の審査があったのに対し、海洋

学部 0 件、開発工学部 3 件、湘南校舎 0 件にとどまっている。 以上はいずれも「ヘルシンキ宣言」等を尊重するものであり、伊勢原キャンパスにおいては「院内

感染防止対策委員会」(設置 1979 年 4 月 2000 年 4 月 13 日規定改訂 5 月 1 日施行)や「東海大学

医学部・付属病院安全衛生管理規則」(1978 年 11 月 1 日制定)との整合性にも留意しながら審議を

進めている。これらは文部科学省あるいは厚生労働省の要求する要件をみたしている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 早くから医療、動物実験に対する倫理面からの検討機関や規定を制定して来たことは長所であり、

「医の倫理委員会」などでは市長や他大学の専門家、本学他学部の外部委員を積極的に委員に加えて

きたことは評価に値すると考えている。委員長は 2001 年度の医学部名誉教授であるが、従来も倫理

委員を担当し、倫理面全般に通じる適任者が選出されている。 また、2001 年度から下部機関として専門部会を設け、迅速な審査が可能になるようにしている。た

だ、問題点は 1) 件数が多くなって来たために詳細な検討が漏れがちになることと 2) 検討内容が以前より多岐にわっってきたこと

である。また遺伝カウンセリング体制の充実が今後の課題である。 「動物実験委員会」「組換え DNA 実験安全委員会」は件数は増加傾向にあるものの、十分な対処が

できていると考える。ただし、学内の動物実験場所の適正化が前者では大きな問題と認識している。 〔将来の改善に向けた方策〕 「医の倫理」関係では、1)適切かつ迅速な対応ができるように、専門部会を中心とした活動をさ

らに適正化すること、2)動物実験も含め、「ヒト ES 細胞の樹立及び使用に関する指針」(2001 年 9月 25 日施行)、あるいは「疫学研究に関する倫理指針」(2002 年 7 月 1 日施行)等で設置が必要な倫

理委員会を一本化して、無用に多くの倫理委員会を発足させないことが肝要であろう。また遺伝カウ

ンセリングは今のところ研究に関するものでは要望は一件も出ていないが、将来のために対応のマニ

ュアルを整備する計画である。 「動物実験」関係では医学部の敷地に病院が併設され、現在では動物飼育室が病院と同じ建物内に

ある。2005 年には新病棟が建つが、多くの教室内飼育を一本化する方向で執行部でも検討が進められ、

合意を得た。 医学部以外では、本項目の医療や動物実験のあり方に関する案件はあまりないが、将来を見据えた

準備は進めていく予定である。

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第 7 章 全学

② 倫理面から実験・研究の自制が求められている活動・行為に対する学内的規制システムの適

切性(項目№178)

〔現状〕 本学各校舎において、組換えDNAを始めとするヒト、生命に関わる研究について、規程を定めて

それに則り運営が行われている。また、付置研究所においても研究所運営委員会によって研究倫理に

ついての事項を審議する。湘南校舎においては、「東海大学湘南校舎組換えDNA実験安全管理規程」

を施行している。この規程に基づき、高度に専門的な知識及び技術と広い視野に立った判断が要求さ

れることを考慮した委員を置き、安全主任者、組換え実験の専門家の他、人文・社会科学者、予防医

学等の専門家、等で「委員会」を構成している。 「委員会」は研究者へは実験計画書の提出を義務付け、その内容を審議し、学長の承認を経て研究

活動を行うことの承認をする。現在、湘南校舎においては 3 件の組換え DNA 実験を行っており、各

校舎においても同様の手続きにおいて運営が行われている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕

・ ヒト、生命に関わる研究については、各校舎における委員会で研究倫理が審議の上、承認

をしており安全は確保されている。 ・ 委員会の一部の委員と実験従事者が重複しているため、今後、外部機関との共同研究等も

含め、新たな展開する場合には委員構成の考慮が必要である。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 組換え DNA 実験を始めとするヒト、生命に関わる研究に関しては各校舎に設置されている各委員

会において審査、審議に付される。しかし、その「委員会」の構成について、現在では学園内の研究

者・学識者で委員を構成している。今後、外部機関との共同研究等も含め、ヒト、生命に関わる実験・

研究が数多く展開される場合においては、各校舎が連携し、外部の専門家を委員に加えるなど、更に

安全確保に努めることが必要である。

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