日赤からの情報提供 ー個別nat - japanese red cross society...2 2...
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日赤からの情報提供
ー個別NAT導入効果ー
平成28年度赤十字血液シンポジウム
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2
Ⅰ.最近の安全対策 1.HBc抗体の基準変更 2.個別NAT導入 3.ALT基準値の変更
3
HBc抗体判定基準の変更
3
4
輸血HBV感染の原因血液の変遷
(1年当たりのHBV受血者感染症例数) 4年
(2004.8~2008.7) 4年
(2008.8~2012.7)
5.63.2 2.7
1.1
1.50.7
2.7
3.0 4.7
0.9
0.30.5
0
2
4
6
8
10
12
50p-NAT 旧20p-NAT 20p-NAT
ウインドウ期(個別NAT陽性) ウインドウ期(個別NAT陰性)
感染既往(個別NAT陽性) 感染既往(個別NAT陰性)
10.3 8.0
ウインドウ期 (個別NAT陽性)
ウインドウ期 (個別NAT陽性)
8.6
4年7ヵ月
(2000.2~2004.7) (件数)
4
5 HBc抗体検査判定基準の変更
前提条件:HBs抗原陰性 HBc抗体
1≦C.O.I<12 C.O.I≧12
HBs抗体 ≧200mIU/mL 適
(20pool-NAT)
適 (20pool-NAT)
<200mIU/mL 適 (20pool-NAT)
出庫不可
HBc抗体:CLEIA法にてC.O.Iが1未満のみ適合
HBc抗体 C.O.I<1 C.O.I≧1
HBs抗体 ≧200mIU/mL 適
(20pool-NAT)
適 (20pool-NAT)
<200mIU/mL 適 (20pool-NAT)
出庫不可
2012.8より
5
6
NAT時期別の1年当たりHBV受血者感染症例数
(献血者感染状況別分類)
4年 (2004.8~2008.7)
4年 (2008.8~2012.7)
5.63.2 2.7 2.6
1.1
1.50.7
0
2.7
3.0 4.7
0
0.9
0.30.5
0
0
2
4
6
8
10
12
50p-NAT 旧20p-NAT 現行20p-NAT HBc基準変更後
ウインドウ期(個別NAT陽性) ウインドウ期(個別NAT陰性)
感染既往(個別NAT陽性) 感染既往(個別NAT陰性)
10.3 8.0 8.6
6
2年 (2012.8~2014.7)
2.6
個別NATスクリーニングによる検出が期待
される
(件数) 4年7ヵ月
(2000.2~2004.7)
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個別NAT導入
7
8
81 122
175
PANTER system (NOVARTIS)
8
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9
MMLV 逆転写酵素およびT7 RNA ポリメラーゼを利用した転写反応によって目的核酸を約1010倍に増幅
反応温度は一定 ➜ サーマルサイクリング不要
DNA・RNAの両方の鋳型を増幅可能
増幅産物はRNA
ワンステップ反応 ➜ 反応が始まれば試薬の追加が不要
ワンチューブ反応 ➜ 抽出・増幅・検出を1本のチュー ブ内で実施
導入した個別NAT(TMA法)の特徴
10 ウイルス核酸の抽出の原理 磁気ビーズへの
固定化
TTTTT・・・
DNA
RNA
RNA
ウイルスの分解
DNA/RNAの遊離
RNA
AAAAA・・・
特異的配列
*キャプチャープローブ
キャプチャー プローブ*への結合
HBV用プローブ
HCV用プローブ
HIV用プローブ
IC用プローブ
IC(内部標準)
HBV
HCV
HIV
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DNA/RNA増幅法(TMA)
一本鎖DNA
逆転写酵素 RNAポリメラーゼ
・ ・ ・
RNA分解
DNA合成
転写 (RNA合成)
100-1000コピー
鎖置換
逆転写
DNA合成
Pro-P1
P2 RNA分解
逆転写
Pro-P1
P2
Pro-primer primer
DNA合成
一本鎖RNA
HCV, HIV HBV
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12 個別NAT導入による感度向上
項目 検出感度(IU/mL)
感度比 20P-NAT (2014.7.31以前)
ID-NAT (2014.8.1以降)
HBV 64 4.3 15
HCV 248 3.0 83
HIV-1 836 18.0 46
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20P-NAT ID-NAT*
検査時間 240検体/8時間 275検体/8時間
検査実施体制 4施設 全国8施設
*①感染症検査と同時
進行可能
②検体送付なし
↓
終日検査可能
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北海道BBC
(札幌市)
関東甲信越BBC
埼玉製造所(東松山市)
全国の検査施設(個別NAT導入後)
血清学的検査、NAT :8施設
東北BBC
(仙台市)
関東甲信越BBC
(江東区) 東海北陸BBC
(瀬戸市) 近畿BBC
(茨木市)
中四国BBC
(広島市)
九州BBC
(久留米市)
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14 個別NATと20プールNATの検査の流れ
全検体 血清学(-)、ALT 61 未満の検体
スクリーニングNAT スクリーニングNAT
プーリング
陰性 (+)
(-)
特定検査(※)
同定HBV
個別NAT 20プールNAT
※ プール検体から陽性検体を特定
同定HCV 同定HIV
(-)
同定HBV 同定HCV 同定HIV
陰性
(-)
(+)
(+)
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HCV HCV Ab(+) HCV Ab(-)
60 60 0
HIV HIV Ab(+) HIV Ab(-)
10 10 0
◆ HCV, HIVについては、全例で抗体が検出された。
個別NATで同定された各Virusの血清学的検査結果(中四国ブロック) 検査期間:2014.08~2016.03(20ケ月), 全検体数:512,074
HBV 血清学的検査※1
(+) 血清学的検査※2
(-)
157 153 4
※1:HBs抗原、HBc抗体及びHBs抗体のいずれかが陽性
※2:HBs抗原、HBc抗体及びHBs抗体が全て陰性
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HCV HCV Ab(+) HCV Ab(-)
518 517 1
HIV HIV Ab(+) HIV Ab(-)
57 57 0
◆ HIVについては、全例で抗体が検出された。
個別NATで同定された各Virusの血清学的検査結果(全国) 検査期間:2014.08~2015.10(15ケ月)、 全検体数:6,178,217
HBV 血清学的検査※1
(+) 血清学的検査※2
(-)
1,293 1,256 37
※1:HBs抗原、HBc抗体及びHBs抗体のいずれかが陽性
※2:HBs抗原、HBc抗体及びHBs抗体が全て陰性
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NAT時期別の1年当たりHBV受血者感染症例数
(献血者感染状況別分類)
4年 (2004.8~ 2008.7)
4年 (2008.8~ 2012.7)
3.23.2 2.7 2.6
0
1.1
1.5
0.52.7
3.0 4.7
0.9
0.3
0.7
0
2
4
6
8
10
12
50p-NAT 旧20p-NAT 20p-NAT HBc変更後 個別NAT後
ウインドウ期(個別NAT陽性) ウインドウ期(個別NAT陰性)
感染既往(個別NAT陽性) 感染既往(個別NAT陰性)
8.0 8.6
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2年 (2012.8~ 2014.7)
2.6 0 10.3
5.63.2 2.7 2.6 (1例)
1.1
1.5
0.52.7
3.0 4.7
0.9
0.3
0.7
0
2
4
6
8
10
12
50p-NAT 旧20p-NAT 20p-NAT HBc変更後 個別NAT後
ウインドウ期(個別NAT陽性) ウインドウ期(個別NAT陰性)
感染既往(個別NAT陽性) 感染既往(個別NAT陰性)
1年5ヵ月 (2014.8~ 2015.12)
8.6 10.3 8.0 2.6 0.6
4年7ヵ月
(2000.2~ 2004.7)
18
18
14
12
7 8
11 11
9 8
4 1
1 1 1 2
1
0
5
10
15
20
25
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
HBV HCV HIV
7
4 1
個別NAT導入 HBc抗体判定基準変更
NAT・感染症検査システムの高感度化
2004.8 2012.8 2014.8 2008.8
0
20p NAT導入
年
件
輸血による感染が確認された症例の推移(全国集計:採血年)
19 個別NAT導入後の輸血後HBV感染症例
◆情報種別:献血後情報(遡及調査)
◆発 端 :スクリーニングNATの陽転
献血者 (頻回献血有)
15/11/19 15/12/8 16/1/8
HBV-DNA Pos(Genotype:Ae)
スクリーニング検査 :適
70歳代・女性 血液腫瘍
15/11/20 15/12/11 16/2/12
HBV感染?(推定)
バラクルード投与中 ALTの上昇なし
急性肝炎発症との情報あり
HBV-DNA Pos
HLA適合 HLA適合
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20
20
ALT基準値変更
21
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・ALTはHCVの代替マーカーとして導入され、61 IU/L以上を
製品化から除外してきた。
・現在はHCV等については、個別NAT及びCLEIA法の高感度
検査法が導入されている。
・ALTでその他の輸血感染症を有効に予防するデータはない。
・ALT高値のほとんどは脂肪肝他に由来する。
・現在のALT基準により、年間12~15万人からの献血血液が
不適格とされている。
ALTによる製品除外基準を101 IU/Lとする
(平成28年4月1日検査分より)
ALTの製品除外基準値の変更
22
22
ALT検査基準変更による製品化可能増加数の試算
ALT値 不合格率
61~100(IU/L) 2.28%
101(IU/L)以上 0.51%
合計 2.79%
平成28年度採血計画数 445,308本
61IU/L ↑(平成27年度までの基準
による検査落ち本数) 12,427本 (2.79%で換算)
101IU/L ↑(平成28年度の基準
による検査落ち本数) 2,267本 (0.51%で換算)
製品化可能増加本数 10,127本
平成27年度 ALT検査不合格率
平成28年度 ALT検査基準値変更による製品化増加数の試算
23
23
【全国】
期間 検査数 60(IU/L)以下 61~100(IU/L) 101(IU/L)以上 製品化率
平成27年4月 396,065 388,134 6,361 1,570
98.00 % 98.00 % 1.61 % 0.40 %
平成28年4月 397,873 387,400
8,258 99,096 (1年)
2,215 99.45 %
97.37 % 2.08 % 0.55 %
【中四国】
期間 検査数 60(IU/L)以下 61~100(IU/L) 101(IU/L)以上 製品化率
平成27年 4~6月
113,339 110,568 2,253 518
97.55 % 97.55 % 1.99 % 0.46 %
平成28年 4~6月
111,792 108,510
2,595 10,380 (1年)
687 99.39 %
97.07 % 2.32 % 0.61 %
ALT製品除外基準変更後の製品化状況 (平成28年4月~)
24 まとめ 1) HBc抗体検査基準の見直し
HBc抗体検査基準の見直しにより、感染晩期の血液による輸血感染はなくなった。故に、基準見直しの安全対策は効果が十分に認められた。
2) 個別NAT導入
平成26年8月より、スクリーニングNATを20プールから個 別NATへ変更した。その結果、現在まで輸血によるウイルス感染は1例のみであり、ウインドウ期の血液による感染防止も効果が認められている。
3) ALT検査の製品化基準値の変更
平成28年4月より、ALT検査の製品化基準値が61 IU/Lから101 IU/Lに変更された。この基準値変更により、平成28
年度では中四国ブロック管内で製品化される原料血液は約10,000本増加すると試算される。
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25 結語
HBV、HCVおよびHIVの個別NAT検査の導入は、現在実施しうる最大限の安全対策と考えられる。
しかしながら、個別NATを実施しても、輸血用血液のリスクをゼロとすることはできない。
問診事項20のさらなる徹底等、「責任ある献血」の啓蒙を今後も継続していくことが望まれる。
25
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平成28年度赤十字血液シンポジウム
COI開示
筆頭発表者名: 大熊 重則
演題発表に関連し開示すべきCOI関係のある
企業などはありません。
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