勾配情報を用いた local binary pattern...

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DEIM Forum 2014 F5-4 勾配情報を用いた Local Binary Pattern の改良 寺島 裕貴 喜田 拓也 北海道大学大学院情報科学研究科 060–0814 北海道札幌市北区北14条西9丁目 E-mail: †{tera,kida}@ist.hokudai.ac.jp あらまし Local Binary Pattern (LBP) は,画像の認識や分類に用いることのできる特徴量の一つである.LBP は, 通常 3 × 3 の画素領域で計算され,局所的な特徴を抽出する.特に,照明の変化の影響を受けにくく,高速に計算で きるという特長がある.本稿では,この LBP の考えを元にした,より高精度の画像分類が行える特徴量を提案する. 本稿で提案する特徴量では,5 × 5 の領域から疎に参照点を選択し,さらに対象画素付近の輝度勾配の情報を付加す ることで 512 次元の特徴を表現する.LBP のほか,既存の改良手法である improved LBP uniform LBP との比較 実験を行い,顔画像の分類において本提案手法が有効であることを示した. キーワード Local Binary Pattern, Gradient Local Auto-Correlations, 画像認識, 画像分類, 勾配, 局所特徴量 1. はじめに 1. 1 研究目的と背景 近年,画像処理及び機械学習の技術の向上により画像解析や 指紋認証など様々な分野で画像認識が行われている.これらは, 計算機やスマートフォン等のカメラの性能向上により個人でも 気軽に扱える技術になりつつある.特に,コンピュータが画像 内の物体を一般的な名称で言い当てる一般物体認識には,物体 の名前を言い当てる特定物体認識,物体をカテゴライズする画 像分類,特定の物体の位置を特定する物体検出といった問題が 存在しそれぞれの問題には多くのニーズがある [1] [2].よって, これらの問題の速度や認識精度等の機能向上は過去盛んに行わ れてきた.その中でも特に,画像分類は,特定物体認識や物体 検出に応用可能であり重要な問題である. 本稿では,画像認識の問題の中でも画像分類に着目し分類精度 の向上を図る.画像特徴量には,特徴点ベースの特徴量,パター ンベースの特徴量そしてパワースペクトルベースの特徴量が考え られる.特徴点ベースの特徴量は,特徴点を抽出し特徴点ごとに 特徴を記述した Shift Invariant Feature Transform (SIFT)[3] Speeded-up Robust Feature (SURF) [4] 等がある. SIFT SURF は通常,画像分類を行うために特徴点を visual word 見立てた Bag-of-Keypoints [5] を用いる.パターンベースの 特徴量は,ラスタスキャンを行い注目画素の近傍領域でパターン を形成し,出現頻度を記述した Local Binary Pattern (LBP) [6] 等がある.パワースペクトルベースの特徴量には,注目画素との 相互関係をとる参照点のマスクを用意して輝度値の乗算をとった Higher Order Local Auto-Correlations (HLAC) [7] HLAC を改良した Gradient Local Auto-Correlations (GLAC) [8] Normal Local Auto-Correlations (NLAC) [8] 等がある.これ らの特徴量の中で,LBP は高精度かつ高速な特徴量であり,そ のアイデアは画像分類において非常に効果を発揮する.そこで 本稿では,パターンベースの特徴量である LBP に着目し,そ のアイデアを用いることにより,より高精度に画像分類が行え るような特徴量を提案する. これまでの研究において,局所特徴量では注目画素の周囲の 参照点を増やすことにより精度の向上が図れることが知られて いる [9] [10].しかし,参照点を増やしすぎると,特徴量の次元 数が爆発してしまい,取り扱いが困難になる.そこで,豊田ら は参照点を疎に特徴を選択することで次元数の爆発を抑える手 法を提案している [9].また,SIFT SURF,そして GLAC NLAC といった特徴量では勾配情報が特徴量の中で用いら れており画像分類において勾配情報が有効であることがわかっ ている.よって本稿では,LBP の参照点を多くすることで引き 起こる次元数の爆発を,勾配情報を用いた特徴量である GLAC を取り入れることで,512 次元に抑えたパワースペクトルベー スの特徴量を提案する. 実験では,顔画像のデータデットを用いて分類を行う.LBP の他,LBP の改良手法である improved LBP [11] uniform LBP [12] との比較実験を行い提案手法が優れていることを 示す. 1. 2 関連研究 本稿で既存手法として用いている LBP に回転不変性を付加 した rotated LBP [13] がある.これは,求めた LBP のパター ンに該当するヒストグラムのビンへ投票する際,パターンを回 転し,そのうちの最小値を新たなパターンとして用いる.また, 通常 LBP は画像分類に用いられるが,OpenCV (注1では物体 検出にも用いられている.これは物体検出では画像内から対象 の物体を見つける際に,2 クラスの正誤で分類する問題に帰着 することができるためである.そのほか,OpenCV では.積 分画像を用いることで画像内の特定領域の輝度を高速に求める Haar-like [14] LBP 同様に物体検出のための特徴量として用 いられている. 2. 2. 1 画像分類 画像分類とは,一般物体認識における1つの問題であり,画 (注1):http://opencv.org/

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Page 1: 勾配情報を用いた Local Binary Pattern の改良db-event.jpn.org/deim2014/final/proceedings/F5-4.pdfDEIM Forum 2014 F5-4 勾配情報を用いたLocal Binary Patternの改良

DEIM Forum 2014 F5-4

勾配情報を用いたLocal Binary Patternの改良

寺島 裕貴† 喜田 拓也†

† 北海道大学大学院情報科学研究科 〒 060–0814 北海道札幌市北区北14条西9丁目

E-mail: †{tera,kida}@ist.hokudai.ac.jp

あらまし Local Binary Pattern (LBP)は,画像の認識や分類に用いることのできる特徴量の一つである.LBPは,

通常 3× 3の画素領域で計算され,局所的な特徴を抽出する.特に,照明の変化の影響を受けにくく,高速に計算で

きるという特長がある.本稿では,この LBPの考えを元にした,より高精度の画像分類が行える特徴量を提案する.

本稿で提案する特徴量では,5× 5の領域から疎に参照点を選択し,さらに対象画素付近の輝度勾配の情報を付加す

ることで 512次元の特徴を表現する.LBPのほか,既存の改良手法である improved LBPや uniform LBPとの比較

実験を行い,顔画像の分類において本提案手法が有効であることを示した.

キーワード Local Binary Pattern, Gradient Local Auto-Correlations, 画像認識, 画像分類, 勾配, 局所特徴量

1. は じ め に

1. 1 研究目的と背景

近年,画像処理及び機械学習の技術の向上により画像解析や

指紋認証など様々な分野で画像認識が行われている.これらは,

計算機やスマートフォン等のカメラの性能向上により個人でも

気軽に扱える技術になりつつある.特に,コンピュータが画像

内の物体を一般的な名称で言い当てる一般物体認識には,物体

の名前を言い当てる特定物体認識,物体をカテゴライズする画

像分類,特定の物体の位置を特定する物体検出といった問題が

存在しそれぞれの問題には多くのニーズがある [1] [2].よって,

これらの問題の速度や認識精度等の機能向上は過去盛んに行わ

れてきた.その中でも特に,画像分類は,特定物体認識や物体

検出に応用可能であり重要な問題である.

本稿では,画像認識の問題の中でも画像分類に着目し分類精度

の向上を図る.画像特徴量には,特徴点ベースの特徴量,パター

ンベースの特徴量そしてパワースペクトルベースの特徴量が考え

られる.特徴点ベースの特徴量は,特徴点を抽出し特徴点ごとに

特徴を記述した Shift Invariant Feature Transform (SIFT) [3]

や Speeded-up Robust Feature (SURF) [4]等がある.SIFTと

SURFは通常,画像分類を行うために特徴点を visual wordと

見立てた Bag-of-Keypoints法 [5]を用いる.パターンベースの

特徴量は,ラスタスキャンを行い注目画素の近傍領域でパターン

を形成し,出現頻度を記述したLocal Binary Pattern (LBP) [6]

等がある.パワースペクトルベースの特徴量には,注目画素との

相互関係をとる参照点のマスクを用意して輝度値の乗算をとった

Higher Order Local Auto-Correlations (HLAC) [7]や HLAC

を改良した Gradient Local Auto-Correlations (GLAC) [8] や

Normal Local Auto-Correlations (NLAC) [8] 等がある.これ

らの特徴量の中で,LBPは高精度かつ高速な特徴量であり,そ

のアイデアは画像分類において非常に効果を発揮する.そこで

本稿では,パターンベースの特徴量である LBPに着目し,そ

のアイデアを用いることにより,より高精度に画像分類が行え

るような特徴量を提案する.

これまでの研究において,局所特徴量では注目画素の周囲の

参照点を増やすことにより精度の向上が図れることが知られて

いる [9] [10].しかし,参照点を増やしすぎると,特徴量の次元

数が爆発してしまい,取り扱いが困難になる.そこで,豊田ら

は参照点を疎に特徴を選択することで次元数の爆発を抑える手

法を提案している [9].また,SIFT と SURF,そして GLAC

と NLACといった特徴量では勾配情報が特徴量の中で用いら

れており画像分類において勾配情報が有効であることがわかっ

ている.よって本稿では,LBPの参照点を多くすることで引き

起こる次元数の爆発を,勾配情報を用いた特徴量であるGLAC

を取り入れることで,512次元に抑えたパワースペクトルベー

スの特徴量を提案する.

実験では,顔画像のデータデットを用いて分類を行う.LBP

の他,LBP の改良手法である improved LBP [11] や uniform

LBP [12] との比較実験を行い提案手法が優れていることを

示す.

1. 2 関 連 研 究

本稿で既存手法として用いている LBPに回転不変性を付加

した rotated LBP [13] がある.これは,求めた LBPのパター

ンに該当するヒストグラムのビンへ投票する際,パターンを回

転し,そのうちの最小値を新たなパターンとして用いる.また,

通常 LBPは画像分類に用いられるが,OpenCV(注1)では物体

検出にも用いられている.これは物体検出では画像内から対象

の物体を見つける際に,2クラスの正誤で分類する問題に帰着

することができるためである.そのほか,OpenCV では.積

分画像を用いることで画像内の特定領域の輝度を高速に求める

Haar-like [14] も LBP同様に物体検出のための特徴量として用

いられている.

2. 準 備

2. 1 画 像 分 類

画像分類とは,一般物体認識における1つの問題であり,画

(注1):http://opencv.org/

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学習画像 分類画像

特徴量抽出 特徴量抽出

学習 認識

学習結果 認識結果

学習段階 認識段階

画像処理

機械学習

図 1 画像分類の流れ

図 2 LBP の計算法

像中の物体のクラスを求める問題である.例えば,車というク

ラスには,セダンやワゴンといった車の形態や,消防車やパト

カーや救急車といった種類の違うものが含まれる.画像分類は,

固有名詞ごとに分類を行うと物体認識になり,そして顔や非顔

画像等といったような正誤による分類を行うと物体検出になる.

そのため,画像分類はクラスの広狭により様々な問題に置き換

えることができとても重要な問題といえる.

図 1に画像分類の流れを示す.画像分類はまず初めに,学習

画像からそれぞれのクラスについて特徴量を抽出する.抽出し

た特徴量をクラスごとに統計的学習法により学習することで,

多クラスの分類器を生成する.

次に,分類画像から特徴量を抽出する.抽出した特徴量は,

事前に生成された多クラス分類器に入力され,分類画像がどの

クラスに分類されるかを調べる.画像分類では,入力される学

習画像と分類画像に,分類対象となる物体が画像中に大きく

写っていなければならない.したがって,入力される画像はあ

らかじめ分類対象の物体が切り取られている必要がある.

2. 2 Local Binary Pattern

Local Binary pattern(LBP) [6] はテクスチャ解析で用いら

れるパターンベースの特徴量であり,精度の高さや計算コスト

の低さから近年注目されている.特徴量はラスタスキャンに

よって算出され,注目画素の周囲の半径を R,近傍領域の画素

数を P として以下のように算出される.

LBPP,R =

P−1∑p=0

s(gp − gc)2p,

s(x) =

{1 (x >= 0)

0 (x < 0).

ここで,gc は注目画素の画素値を示し,gp は参照点の画素値

を表している.近傍領域は R = 1のとき近傍領域は 3× 3で

0

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210

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243

254

LBP

LBP

入力画像 LBP 画像

図 3 LBP の照明不変性

あり,P の最大は 8となる.R = 2のときは近傍領域は 5× 5

となり,P の最大は 16となる.LBPは注目画素 gc と近傍領

域の画素値 gp の大小比較によってパターン LBPP,R が算出さ

れ,その種類は 2P となる.LBPはこのパターンの頻度を記述

したヒストグラムの特徴量である.

LBP は理論上 P と R の値に制限はないが,特徴量の次元

数が爆発するため,実際は,R = 1,P = 8における LBPを

用いることが多い.本論文においても,R = 1,P = 8 の場

合について取り扱う.このとき,LBP は図 2 のように 3 × 3

の近傍領域の画素で算出される.このときパターン LBP8,1 は

28 = 256となり,これが特徴量の次元数となる.また,このパ

ターン LBPP,R で注目画素の画素値を置き換えた画像を LBP

画像と呼ぶ.

LBP は,画像における位置情報を特徴量に記述していない

ため位置不変性を有する.また,照明の変化における画像内の

明るさの大小関係が逆転することはないので,注目画素と近傍

領域の画素値の大小比較を行っている LBPは照明不変性を有

する.図 3にそれを示す.

LBPには様々な改良手法が提案されている.近傍領域の画素

値の平均を求め,その値と近傍領域の画素との大小比較を行っ

ている improved LBP [11] や,uniformパターンと呼ばれるパ

ターンを用いてヒストグラムを形成している uniform LBP [12]

等がある.また,パターン LBPP,R を回転し値を最小値となる

ように設定することで回転不変性を付加した rotated LBP [13]

も存在する.

2. 3 Gradient Local Auto-Correlations

Gradient Local Auto-Correlations (GLAC) [8]はHLAC [7]

を拡張した特徴量であり,曲率を特徴づけたパワースペクトル

ベースの特徴量である.参照点の勾配方向の量子化を行い,マ

スクパターンで指定される参照点の勾配方向の関係をパターン

化して勾配強度を特徴づけている.

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図 4 gradient orientation vector

1次 GLAC

0次 GLAC

図 5 マスクパターン

画像の勾配は ( δIδx, δIδy)t のように表され,勾配強度は n =√

( δIδx)2 + ( δI

δy)2,勾配方向は θ = arctan( δI

δx, δIδy) と表すこと

ができる.GLAC では図 4 のように注目画素の勾配方向の量

子化を行う.勾配方向の量子化は,注目画素の周囲を D 個の

成分に分解し,勾配方向を挟んでいる 2 つの方向に分解する.

これにより図 4のような疎なベクトル f(∈ RD)として表現さ

れる.このベクトルを gradient orientation vector (G-Oベク

ター)と呼ぶ.以上の定義から,N次の GLACの特徴量は以下

のような式で表すことができる.

R(d0,..., dN ,a1, ...,aN) =∫I

min[n(r), n(r+ a1), ..., n(r+ aN)]

fd0(r)fd1(r+ a1)...fdN (r+ aN)dr.

fd は G-Oベクター fの d番目の要素を表している.また,ai

は注目画素からの変位ベクトルであり,図 5 に示すマスクパ

ターンの点を参照する.Nを増やすことで注目画素の周囲の参

照点を増やし多くの情報を取得することができるが,特徴量の

次元数が爆発するため実際は,N = 0とN = 1の GLACが用

いられる.0次と 1次の GLACはそれぞれ以下のようになる.

0次 : R(d0) =∑r∈I

n(r)fd0(r),

1次 : R(d0, d1,a1) =∑r∈I

min[n(r), n(r+ a1)]fd0(r)fd1(r+ a1).

0 次の GLAC では図 5 のように注目画素のみを参照し,特徴

量の次元数は D 次元となる.1次の GLACは図 5のように注

(a) (b)

図 6 LBP による参照点の位置

図 7 提案手法の参照点

目画素と 1つの点を参照し,特徴量の次元数は D + 4×D2 と

なる.

3. 提 案 手 法

本稿で提案する手法は注目画素における 0次の GLACを算

出し,R = 2,P = 6における LBPP,R を用いて場合分けした

ものである.0次の GLACは注目画素の周囲 3× 3の範囲の

情報を取得するために用い,LBPは注目画素の周囲 5× 5の

範囲の情報を取得するために用いている.GLACの G-Oベク

ターは D = 8 として扱った.最終的にこれらのパターンを組

み合わせることにより,64 × 8 = 512 個のパターンを形成し

パワースペクトルベースの特徴量を記述した.

dGLAC ではまず初めに,0 次の GLAC の特徴量を算出す

る.これは 3× 3の範囲の局所領域の情報を取得するためであ

る.dGLACでは G-Oベクターを D = 8として用いる.した

がって,GLACの次元数は 8次元となる.同じく 3× 3の範

囲の情報を取得している R = 1,P = 8における LBPを算出

した場合,特徴量は 256次元になるので大きく次元数を削減で

きている.勾配算出には 1次微分を用いており,画像 I の任意

の画素 I(x, y)における 1次微分は,勾配強度を n,勾配方向

を θ とすると,以下のような式で表される.

n =

√δI

δx

2

+δI

δy

2

θ = arctan(δI

δx,δI

δy),

δI

δx= I(x+ 1, y)− I(x− 1, y),

δI

δy= I(x, y + 1)− I(x, y − 1).

0次のGLACの算出が終わると次に,算出した 0次のGLAC

を分けるためのLBPを算出する.dGLACでは,R = 2,P = 6

として LBPP,Rを算出する.LBPの参照点は注目画素の半径 2

の範囲からは最大 16個選択することができるが,本論文では図

6(a) のように疎に 6つの参照点を選択する.これは参照点を疎

に選択しても十分な情報を取得できるためである [9].また,領

域を回転することにより 6点の参照点の選び方は図 6(b)のよ

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図 8 AT&T データセット

図 9 MIT CBCL データセット

うな場合も考えられる.本論文では,予備調査の結果,精度に

大きな差が確認されなかったため図 6(a)に統一した.これによ

り通常 R = 2,P = 16としたときの LBPでは,216 = 65536

次元になるのに対し,5× 5の範囲の情報を 26 = 64次元で表

すことができる.

最後に 0次の GLACを LBPによる 64個のパターンで分割

することで特徴量の記述を行う.0次の GLACは 8方向 (8次

元)で特徴づけられているので,dGLACは 512個のパターン

で表現される.特徴量は 0次の GLACの特徴量を基準として

いるので LBPのようなパターンベースの特徴量ではなく注目

画素の画素値の重みによって算出されるパワースペクトルベー

スの特徴量となる.最終的に,dGLACの参照点は図 7のよう

になる.算出される特徴量Dは,0次のGLAC特徴量R(d)と

LBP6,2 を用いて以下のように表せる.

DLBP6,2,d = R(d).

以上により,注目画素の周囲 5× 5の範囲から疎に参照点を

選択し勾配情報を用いて特徴量を算出することで,512次元の

特徴量として記述される.

4. 分 類 実 験

提案手法の有効性を調べるために顔画像を用いた画像分類の

実験を行う.実験にはAT&Tデータセット(注2)とMIT CBCL

データセット(注3)を使用した.

AT&T データセットは図 8 のような顔画像のデータセット

であり,40人のグレースケール画像が各 10枚ずつ,計 400枚

の画像からなる.全ての画像は 92× 112ピクセルで固定され

ている.また,データセットには目が開いているもの,目が閉

じているもの,笑っているもの,笑っていないもの,眼鏡をか

(注2):http://www.cl.cam.ac.uk/research/dtg/attarchive/facedatabase.

html

(注3):http://cbcl.mit.edu/software-datasets/heisele/

facerecognition-database.html

表 1 顔画像分類の性能

AT&T MIT CBCL

Proposed 90.770% 99.655%

LBP 88.760% 99.580%

improved LBP 87.500% 99.594%

uniform LBP 85.145% 99.530%

けているもの,かけていないもの等,様々な顔画像が含まれて

いる.

MIT CBCL データセットは図 9 のような顔画像のデータ

セットであり,10人のグレースケール画像が各 200枚ずつ,計

2000 枚の画像からなる.画像はクラスごとにサイズが正規化

されておらず,様々な角度から撮影されている.

これらのデータセットを用いて以下のような条件で画像分類

の実験を行った.

( 1) 各クラスからランダムに半分の画像を選択し,それを

学習画像とする.

( 2) 残りの半分の画像を分類画像とする.

( 3) 学習画像,及び分類画像から特徴量を抽出する.

( 4) 学習画像の特徴量を多クラス分類が可能な線形 SVM

により学習する.

( 5) 生成された分類器に分類画像の特徴量を入力する.

( 6) 出力された結果が正しいクラスに属しているか否かを

調べ,正しいクラスであれば正解とする.

AT&Tデータセットでは学習画像,分類画像はそれぞれ 5枚,

MIT CBCLデータセットでは学習画像,分類画像はそれぞれ

100枚となる.このような実験を 100回行い,その平均を求め

ることで,精度を求めた.提案手法は予備調査の結果,特徴量

を正規化しないほうが良い結果が得られていたため,正規化は

行っていない.提案手法に対する比較手法としては,LBPの他

に,improved LBPと uniform LBPを用いた.uniform LBP

では注目画素の周囲の範囲を 3 × 3 から 7 × 7 まで変化させ

たうえで,最良の結果を用いており,AT&Tデータセットでは

555次元を,MIT CBCLデータセットでは 243次元の特徴量

を使用している.

実験結果は表 1 のようになった.AT&T データセット

では,提案手法が 90.770%であるのに対し,既存手法では

LBP が 88.760%,improved LBP が 87.500%,unform LBP

が 85.145%という結果となり,提案手法が既存手法より優れ

ていることが確認できる.MIT CBCL データセットにおい

ても提案手法が 99.655%であるのに対し,LBP が 99.580%,

improved LBP が 99.594%,uniform LBPが 99.530%となり

いずれにおいても提案手法が優れている結果となった.これは,

提案手法が既存手法に対し,より多くに情報を特徴量に含んで

いる点,そして勾配情報を用いていることからそれぞれの人間

における固有の顔の情報を取得できているからであると考えら

れる.

5. お わ り に

本稿において,LBP の参照する範囲を広げることで特徴量

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の次元数が爆発しないように LBPの特性を活かしながら参照

点を設定し,0次のGLACの特徴量を取り入れることで,より

多くの情報を取得することができる特徴量を提案した.また,

顔画像の分類に関する分類実験では提案手法が既存の特徴量に

比べ精度が優れていることを示した.今後は,データセットの

変化に対して最善となるように,提案手法をより一般化できる

ようにさらなる改良を加えること,そしてテクスチャや人等と

いった多くのニーズがある対象物の画像に対しても実験を行う

必要がある.

文 献

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