大胆に、慎重に グローバルバンキングの今 2013-2014...2013/02/28  · ` o m Ü æ w...

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大胆に、慎重に グローバル・バンキングの今 2013–14 S

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大胆に、慎重にグローバル・バンキングの今 2013–14 SummarySummary

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Summary概 要

概 要

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Summary

大胆に、慎重に グローバル・バンキングの今 2013 –14

2012年上半期は、ユーロ圏の将

来に対する不透明感がさらに高

まった時期でした。欧州中央銀行

のマリオ・ドラギ総裁が、ユーロを

守るために「必要な措置はすべて

実行する」との方針を打ち出し、よ

うやく市場には若干の楽観的な見

方が戻ってきました。米国、日本、

英国の中央銀行によるさらなる量

的緩和策も市場への安堵感に繋

がりました。

欧州の政策立案者達は、国家と銀行間のフィードバックループを断ち切ることになるユーロ圏のバンキングユニオンの発足に関するロードマップには、大筋で合意しています。しかし、交渉が長引いていることから、その明確な構成や完全実施に向けてのスケジュールは、今後しばらくは具体化されないことが予想されます。

中国がハードランディングするのではないかとの予測から世界経済への不安が増大し、急成長市場全般での景気減速が信頼水準をさらに悪化させました。しかし、成長速度が鈍っているとはいえ、懸念されていたようなハードランディングには至らず、中国経済には復調の兆しが見えています。そのような中で中国の新指導部は明るい基調での船出を望んではいるものの、不動産市場、地方自治体への貸出、米国や欧州における問題が中国の経済回復に及ぼす今後の影響など、様々な不安定材料も存在しています。

米国では大統領選挙の終盤で投資活動が後退したものの、経済はゆっくりとした回復基調にあります。選挙結果によっていく分明確化した部分はあるものの、財政の崖(フィスカル・クリフ)による最悪の影響が回避されるか否かは依然不透明な状況です。暫定的な措置はさておき、オバマ大統領と議会は、交渉によって信頼のおける長期的な赤字削減策の実施を行い、債務上限の引き上げを巡る前回のような政治面での難航を回避する必要があります。

財政の崖が回避され、欧州や中国で今後衝撃的な事態が起こらない限り、2013年の世界経済はゆっくりと回復し、2014年にはさらに成長が加速し3.6%までGDPが伸びると予測されています。しかしながら、今後の景気後退への警戒感から、多くの企業や顧客は今後もしばらく不安定感を抱き続け、多額の支出や投資を決断する気にはなれない可能性があります。

先進国市場では銀行の自己資本不足が続き、現実的なレベルまで評価減を行い、貸倒れを積極的に受け入れようとする、又はそれが可能な状況にはありません。そのような銀行の多くは、中央銀行による流動性供給オペをできるだけ早くに返済するという難題にも直面しています。景気回復によってこのような問題の一部が解決されたとしても、今後短期・中期的に銀行再編が起きるものと思われます。

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Summary急成長経済圏の銀行は全体的に自己資本が充実し、組織再編よりも成長戦略に力を入れています。しかし市場が世界的景気後退の影響を払拭する中、近年の信用拡大によって一部の銀行はデフォルト率の上昇による影響を受けやすくなっています。他行との競争が激化していることから、急速な成長期を経て、今後は痛みを伴う時期がやってくることも予想されます。

特に欧州において、停滞する経済回復に追打ちをかけているのが今もなお流動的な規制の動きです。金融改革によって銀行業界の抜本的な再編が行われることははっきりしているものの、多くの規制が未策定のままであり、完成に向けたスケジュールは国や地域によって異なります。破綻処理計画、OTCデリバティブ改革、構造改革などの分野で規制要件が確定していないことから、グローバルでの体制作りに向けた銀行の取組みが今後困難になるものと思われます。

世界的な合意に至った自己資本に関する最低基準は、「過剰で不必要(gold-plating)」な規制要件であると受け止められることもままありますが、各国の規制当局がそれを受け入れ、守ろうとする傾向にあることが、さらなる懸念材料となっています。もっともな部分はあるにしても、銀行にとって新事業モデルの開発や新オペレーティングモデルの実施がこれまでよりもはるかに複雑でコスト高になっていることは事実であり、世界経済の成長見通しにとってもマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

ロケーションや業界内での地位のいかんにかかわらず、各銀行は現在、非常に重要な時期に差し掛かっています。なぜかといえば、この時期に下した決定が、先進国市場の経済回復、新たな規制の動き、急成長市場の新たな成長の波などからの恩恵をいかにうまく取り込み市場での位置を確立していくかを左右するからです。

このような決定は社内外の利害関係者との信頼関係の構築につながるだけではなく、自己資本コストを超える自己資本利益率を実現するような、持続可能なビジネスモデルに結びつかなくてはなりません。

既存のモデルには見直しの対象となる多くの要素が存在し、互いに関連し合っていることを考えると、それらを総合的に検討し、組織横断的な見地から大胆な決断を下せるようでなければ、達成へのハードルは高いといえるでしょう。

本版「グローバル・バンキング・アウトルック」には、銀行が検討すべき問題、課題、ビジネスチャンスの中から主要な10項目が説明されています。

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大胆に、慎重に グローバル・バンキングの今 2013 –14

Summary概 要

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1. 環境‐受け入れ、順応するROEが10%に満たないという現実は、多くの銀行が直面する厳しい状況を明白に示すものですが、そのような評価指標が健全な場合であっても、長引く低金利のような外的要因は、ビジネスモデルに悪影響を及ぼします。顧客の動向もまた、現状にとっての混乱要素となります。というのも、顧客は銀行のサービスを継続的に必要としていても、銀行以外のサービス提供者にも目を向け始めているからです。小売業やIT関連企業はこの傾向に乗じてビジネスを展開するでしょう。

銀行は、業界全体が直面している急激な変化に対し、徐々に変革するのでは対処できないと認識しつつあります。新たな環境に順応するには、組織の大幅な見直しや改革が必要となります。数行はすでに大胆な対応方針を発表していますが、より多くの銀行がそれに続く必要があります。経営幹部は複数の優先事項へのバランスを考えながら、過去にとらわれることなく、未来のビジネス構築のために十分な時間を費やすことが不可欠となります。

中小規模銀行間の統合が進む中、いくつかの銀行は姿を消すことになるでしょう。欧州では、レバレッジの縮小によってバランスシートの規模も2013年12月までに2兆5千億ドル以上減少すると予想されることから、生き延びた銀行の規模はもっと小さくなると考えられます。同時に、低金利を相殺するため、より高配当の利回りを求めている年金基金や保険会社のような存在があることから、彼らの資産基盤と自己資本が不足している銀行の持つノウハウや顧客基盤を結びつけるような提携は、今後もっと増えていくと考えられます。

子会社が売却され、支店が閉鎖を余儀なくされる中で、海外の顧客に対するサービス提供の機能も危機的な状況にあることは事実です。一方で、同様の課題に直面している異なる地域の銀行との連携の可能性、新市場における地場の銀行との協力関係の構築など、一部の銀行にとっては改革のチャンスが訪れる可能性を秘めています。また銀行は、他の業界の経験から学ぶこともできます。革新的な、取組みが進んだ金融機関は、インフラを共有しているメディア業界や公益企業の例にならってさらに改革を進めていくのではないかと予想されます。

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Summary2. 信頼‐取戻し、守る銀行業界を襲う変化の規模を理解することが第一歩であるとすれば、その後に続くのは、地に落ちた業界への信頼に向き合うことです。銀行との関係について、顧客はおおむね満足してはいますが、過去数年間に発生したスキャンダルによって業界全体の評判は傷つけられたままの状態です。さらに、2012年に発生したLIBORやマネーローンダリング防止に関連した規制やコンプライアンス上の問題、そして遅々として進まない銀行内の改革によって、銀行はさらに厳しい批判の矢面に立たされています。

銀行は投資家からの信頼も取り戻す必要があります。取り組むべき第一歩は、信頼のおける将来のビジネス戦略を策定し、実行することです。長期的な視野に立つ考え方を推進し、低リターン環境に合わせた報酬モデルを導入することで、株主との関係や株主へのリターンが向上することになります。

新たな環境へ順応していくための組織改革を進める際、信頼という視点に立つことがこれまで以上に重要になるでしょう。信頼回復について率直に語り、信頼への今後のダメージを少しでも低く抑えようとする動きを開始している銀行もあります。今後数年間、既存モデルが修正される中、他行もこの動きに追随するでしょう。一般顧客の視点、株主の利益、風評リスクなどの観点から、新ビジネスのチャンスを検討していくことが当り前となっていくはずです。

事後的対応に終始するのではなく、先取の姿勢へとシフトすることも銀行業界には必要です。企業や年金基金のような機関投資家の仲介役として銀行が担う役割をしっかり示していくことが今後に役立つでしょう。またコンプライアンス違反が発生し、変化を余議なくさせられる前に、ビジネスコンダクト(業務遂行)の適切性や顧客適合性の評価への取組みを強化することも有益な結果をもたらすでしょう。

3. 文化、行動、報酬‐すべてを整合的に多くの銀行にとって、必要とされる改革の規模は、経営に行き詰まっている企業の再建と似たようなものとなります。信頼を取り戻すには外部の利害関係者との問題に対処することかもしれませんが、改革には多くの内部的な努力を必要とします。

銀行業界ではこれまでの過ちを補おうとして、急速なビジネス拡大路線を急激な縮小路線へと切り替えるなど、一部で極端な行動に出ていると言われています。組織を身の丈に合った新しい環境に馴染ませるには縮小策が必要ではあっても、ビジネスに対する姿勢など、より微妙な部分を変えていくことも重要です。

取締役会や経営幹部は、企業文化にも変化が必要であることを認識しています。しかし、コストや人員削減を伴うリストラ策を行う際には特に、適切で、従業員の意欲を駆り立てるような将来展望を明確化して伝える必要があります。プロジェクト疲労で悩まされている従業員が増えていることから、このような対応は今後ますます重要となります。また、異なる部門間で発生する可能性のある業務上の軋轢には、これまで以上に注意を払う必要があります。

報酬モデルの再構築は、一部の企業で実践されているように、行動の整合化プロセスの一部に組み込まれなくてはなりません。今後もそのような整合性を保っていくための手段としては、組織の財政の実態を反映すると同時に、高リスク部門の営業基盤を守るための長期的なインセンティブも考慮する新規の手法を取り入れることです。

4. 顧客‐要請、期待企業も個人客も、消費や投資に対し依然警戒感を持っているかもしれませんが、今後予想される顧客動向の見通しにおける変化は、景気の循環や風評的な問題だけに起因しているわけではありません。顧客が銀行のどんなところに期待するかその重点の置き方も変化しつつあります。したがって、銀行が組織内の業務行動改革を実践しようとするにあたって、顧客からの要請や期待をこの企業文化改革プロセスに組み込む必要があります。

従来型銀行も、顧客への対応を首尾よく行うため、ソーシャルメディアの活用などを通じて、これまで以上の取組みを図る必要があります。新たに誕生した、これまでの慣習にとらわれないサービス提供業者に比べ、従来型銀行の成功例は今のところ限られていますが、このような分野での確固とした存在感を築きあげるため、情報配信や広告出稿の枠に留まらない取組みを行う銀行が増えるのではないかとみています。ただし、硬直的な官僚主義がないスピート感のある企業のほうがが順調な成功を遂げることになるでしょう。

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大胆に、慎重に グローバル・バンキングの今 2013 –14

Summary概 要

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販売やサービス提供モデルの見直しが行われる中、銀行も個人顧客向けのモバイル・アプリケーションを、中小企業や大企業双方を含めた法人顧客のための新規ソリューションへと転換する方法を模索する必要があります。なお、このような改革は顧客との取引関係の強化に役立ちますが、コーポレートバンキング業務の営業基盤を維持するには、与信供与が最も重要であることは変わりません。

資本が十分とはいえない銀行はレバレッジの縮小を図る必要があるため、ビジネス上難しい選択を迫られています。とはいえ、顧客に対して短期の与信枠しか設けられないような銀行は、コーポレートバンキング業務の営業基盤がなくてもやっていけるビジネスモデルを将来に向けて検討する必要があるかもしれません。

5. プロダクトミックスに関するジレンマ規制の厳格化、自己資本比率規制の強化、調達コストの上昇、需要の低迷、低金利、価格競争の激化、購買行動の変化のすべてが収益率に影響を及ぼしている中、利ざやの縮小は銀行市場全体に見られる特徴の一つになりつつあります。スケールメリットや特殊な分野における専門知識がますます重要になっています。また前述のように、顧客の期待も見逃してはならない要素です。

一部の銀行の費用対収益比率が80%を超えていることから、現実的な意思決定をこれ以上遅らせることはできません。今後は、海外への事業展開や商品ポートフォリオの縮小を行う銀行がますます増えることになるでしょう。また債券や商業不動産などの資本集約的な分野でも、高い評判を持ち合せていない銀行は、低いリターンと厳しい競争によって順調な事業展開ができず、注目されているウェルスマネジメント分野においても将来的な成長の鈍化は免れないでしょう。

銀行が将来最も収益を確保できる分野を予測し、事業縮小すべき分野に関し他行に先手を打とうとする際、ある意味、知識や分析力よりも直観や感覚のほうが現実の決定に重要になることもあります。となると弱肉強食の世界ということになり、中には幸運に恵まれる企業も出てくるでしょう。また銀行が包括的なサービスを維持しようと努力する中、年金基金や他行など第三者との契約やパートナーシップも今後増えると予想されます。

急成長市場をベースにしていたり、投資先としている銀行の将来展望は、より楽観的です。純資金運用収益は減少し、一部では不良債権の懸念が水面下で忍び寄ってきていますが、従来型商品やイスラム金融商

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Summary品に関しては、新規顧客、既存顧客ともに高い成長が見込まれています。

法人向け金融については、資本市場の拡大やインフラ投資への支援は拡大するでしょう(アジア開発銀行は、今後10年間で8兆ドル以上と予想しています)。地域の主要行として台頭しようとする地方銀行が増えていることから、国内外での取引機会を開拓しようとする中で、そのような銀行が業務能力や業績を高めていくことが予想されます。

6. プライシング‐以前からの課題と新モデル貸出金の調達コストの高騰は、バーゼルⅢによる自己資本賦課の追加に加え、流動性規制やレバレッジ規制の導入により追打ちをかけられています。同時に顧客動向も変化し、銀行のサービスに対する期待も高まっています。

多国籍企業の顧客は、銀行が直面する課題を理解しつつも、銀行からは安定した与信枠や、市場と整合したプライシングモデルを確保したいと考えています。自己資本や流動性が不足している銀行は、そのような要望に応えることがますます難しくなっていくでしょう。それとは対照的に、データモデルの開発に投資可能な銀行は、機動的な自己資本や流動性の配分やプライシングを通じて、顧客への商品展開でも差別化が図れるようになるでしょう。

個人客に対するプライシングモデルは市場によってかなり異なり、多くのリテール戦略のモデルは依然としてクロスセリングを前提としています。しかし、プライシングが妥当か否かを問わず、大半の個人客は既存の取組みには満足していないことから、複数の銀行と取引する顧客が増え、従来のモデルは減少することになるでしょう。

市場間での競争が激しくなり、顧客の銀行離れが進み、新規の金融サービス業者が市場に参入する中、差別化へチャンスがまわってきたことは明らかです。画期的な「新ビジネス」の提供に乗り出す組織が現れてくるのでしょうか?それは、銀行、小売業、IT企業などのうち、どのような組織なのでしょうか?

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大胆に、慎重に グローバル・バンキングの今 2013 –14

Summary概 要

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銀行が新たな環境に順応するには、多くのオペレーティングモデルや組織体制はもはや適応不能な状態です。これまでは緩やかな変化で対応できたとしても、今ではより抜本的な組織改革が必須となっています。将来のビジネスモデルが今までよりもずっと単純なものになり、従来の組織構造はあまりにコスト高で複雑なものになる可能性も考えられます。新環境へ適応するために規模を縮小することには困難が伴いますが、それは同時に、企業文化の統一化を妨げかねない煩雑な縦割型の組織に風穴を開ける好機ともなるでしょう。

また、成長著しい組織では、従来のオペレーティングモデルでは対応しきれなくなり、より多くの明確な体制や手続が必要となります。監督当局がグローバル企業に対して、グローバルでの体制整備を期待する中、将来の組織体制は規制要件によっても影響を受けます。

銀行はこれをチャンスとして受け止め、これまで以上に顧客ニーズや自行の必要性に沿った組織再編を行う必要があります。商品や部署寄りの組織構造では、より透明性が高く、継続的で、包括的なサービスを顧客に提供するための取組みを進めることは難しいでしょう。

新体制は、顧客対応やそれをサポートする「手段」を含めすべての側面で、コストを削減し、業務効率をもっと高める必要があります。外部委託やオフショアリングがこれまで以上に進む傾向が続くと見られますが、一部地域への集中リスクや規制当局の懸念を意識して、銀行はその他の選択肢も検討することになるでしょう。

外部委託業務の内製化やより低コストの国内拠点の活用など、より多くの変化を目にする可能性があるほか、急成長市場の中には、業界全体でより多くのバックオフィスインフラを共有する余地もかなり残されています。

8. 業務拠点‐対面業務、ネットバンキング

7. 組織の(再)編成

多数の銀行は、グローバルでビジネス規模を拡大し、事業展開地域を拡大するため巨額の投資を行ってきましたが、今やそこで得たものの多くを手放そうとしています。主要市場でのコアサービス回帰を余儀なくされている欧州の銀行をはじめとして、一部の銀行は、すでにグローバルなコーポレートバンキング業務や投資銀行業務から撤退し始めています。

既存の支店の子会社化を外国銀行に義務付ける現地の規制を含めた新たな規制の実施に続き、コーポレートバンキング業務の営業基盤に深刻な影響を及ぼしかねないそれ以外の規制も、今後実施される予定です。欧州金融取引税の提案は、ユーロ圏の金融業にとってさらなる打撃となるかもしれません。数行のグローバル銀行が急成長市場から撤退した結果、その隙間は、グローバルな対応能力を高め、新市場へ参入する法人顧客を求める国内銀行や地場の銀行によって徐々に埋められていくと思われます。

急成長市場におけるリテール業務向けの支店ネットワークは、特に人口集中地域で著しく拡大するでしょう。それ以外の地域ではATMの普及により、「支店の自動化」が進むものと考えらます。また、スマートフォンの爆発的な伸びが続く中、より多くの顧客(地方、都市を問わず)が、モバイル・アプリケーションを使用するようになるでしょう。

先進国市場、急成長市場の双方で、支店における顧客対応業務には変化が続いています。基本的な取引に関しては、大半の顧客がセルフサービスを好みますが、助言や複雑な問題への解決策を求める際には個別の対応を期待します。支店のインフラコストを考えれば、この2つの棲み分けを進める必要がある銀行はますます多くなり、業務転換プロジェクトの数も増えることが予想されます。

9. システムシステムに関しても、銀行が対応を迫られている課題がいくつかあります。耐用年数の問題や長年の過少投資は、新たに実施される多くの規制によって追い打ちをかけられ、銀行のデータや報告に係るプラットフォームにはすでに著しいストレスがかかっています。特にシステムの陳腐化やデータ保存要件の急激な増加が考えられることから、サイバーセキュリティも今後常に対応すべき重要な問題となります。

システム変更や追加設備のような緩やかな変化を通じた対応ではなく、全行的な取組みしかこの変化に対応できる解決策はないとすでに認識している銀行もあります。先行投資には大きな意味がありますが、効率性をより高め、組織全体の実効性を改善することはそれにも増して重要な意味を持ちます。

昨年度版「アウトルック」には、今後の目標達成や差別化の新たなキーポイントはシステムであるとの記述がありました。2012年には、これまで以上に多くのシステム障害が重大ニュースとして取上げられたことから、この記述がより現実的なものとして受け止められることでしょう。

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今後どれほど多くの銀行が、システムプロジェクトに果敢に取り組むかは定かではありませんが、その数は確実に増えることが想定されます。システム投資によって、収益面では直接的な恩恵だけでなく間接的な恩恵も生みだされるほか、システムの高度化によって、質の高いサービスを顧客に提供できるようになります。

端的に言えば、銀行は他の業界、特に小売業界などからも多いに学ぶことができるのです。また銀行は、業務上個々の小売企業をはるかに凌ぐ量のデータ収集を行っていることから、そもそも有利な立場にあるともいえます。したがって、顧客行動をモニタリングし、分析するための先進的なデータシステムを活用することで、個人顧客、法人顧客の双方に対し、より的を絞ったサービスやアドバイスを提供できるようになります。

10. モバイルマネー‐ついに急激に拡大か?出だしで多少のつまずきはあったものの、新しいプラットフォーム、顧客の期待、業界のイノベーションのすべてが相まって、銀行取引や支払い業務に対応したモバイルマネーの市場はついに急激な拡大を見せているように思われます。

大半の銀行はこの革新的変化をある程度受け入れています。銀行の中には、非接触型の支払システムを活用する新商品を開発したり、新しいモバイル・アプリケーションを使ったサービスを開始するなど熱心な取組みを行っているところもあります。中でも、支店インフラが不足していることで、かえって革新的なモバイルサービスの普及が進んでいる一部の急成長市場で、モバイルバンキングは最も高度化されていると言えます。

ただし、最先端を行くこのような銀行のすべてが成功を収めているわけではありません。苦情管理を除き、モバイル・バンキング・サービスは、顧客が銀行に不満を抱く原因を作っているという状況が続いています。それは、個人や法人顧客が依然としてセキュリティに対して不安を持っていることが一因と言えるでしょう。このようなサービスで後れをとっている銀行は、顧客の要望に沿うようなサービスの開拓に向けて早急に取り組む必要がありますが、機能性や実施への改善に関しては、これまでの失敗を教訓に取り組むことができます。

求められているサービスへ多額の投資を行う銀行が増えるのに合わせ、顧客を新サービスへと誘導することも必要となります。コストのかかる従来のサービスから顧客行動の変化を促せるような、「アメとムチ」を使い分けるアプローチを試みる銀行が増えるのではないかとみられています。

成長機会の活用や景気後退からの影響の軽減など、組織が直面する課題は様々ですが、事業体制の再構築には全社的なアプローチで臨むことが不可欠となるでしょう。ここに説明されているキーポイントは相互に関係し合っていることから、改革に向けての検討課題にはその点を反映する必要があります。

新たに生まれるテクノロジーの活用、地域間にまたがるサービス、複数チャネルの使用、新規制の導入などに伴い、顧客取引やサービス実施のモデルが進化する中、フロント、ミドル、そしてバックオフィスというこれまで存在した業務間の住み分けはますます曖昧なものになるでしょう。

業務を後押しする「原動力」であるオペレーティングモデルの再構築を銀行が行うにあたっては、外部環境の変化を反映してビジネスモデルが修正されるのと同じように、このような様々な変化を考慮する必要があります。今後の成り行きを静観する構えで緩やかな対応を続けているだけでは、このような改革への好機を見逃している可能性があり、投資家や顧客や従業員の期待に答えることは難しいでしょう。

銀行業界がこのような課題に対応している中、すでに大胆な戦略に乗出している金融機関もあります。これにならって、スピード感をもって行動を起こす金融機関が、(順調にいけば)今後数年間増えることになるでしょう。

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Ernst & Young ShinNihon LLC

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「アーンスト・アンド・ヤング」とは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのメンバーファームで構成されるグローバル・ネットワークを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。詳しくは、www.ey.com にて紹介しています。 アーンスト・アンド・ヤング ジャパンについてアーンスト・アンド・ヤングジャパンは、新日本有限責任監査法人、新日本アーンスト アンド ヤング税理士法人、アーンストアンドヤングトランザクションサービス株式会社およびアーンスト・アンド・ヤング・アドバイサリー株式会社など、日本におけるアーンスト・アンド・ヤングの9つのメンバーファームで構成されています。各法人は法的に独立した組織です。

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本資料はEYG No. EK0115の一部を翻訳したものです。ED None

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