東京都内湾の赤潮そして青潮 - mlit.go.jp · 2012. 12. 3. · heterocapsa sp. 470 640...
TRANSCRIPT
東京都内湾の赤潮そして青潮
東京都環境局自然環境部水環境課
風間 真理
羽田沖浅場
調査地点図
水深25m
東京都の赤潮の定義
• 海水が、茶褐、黄褐、緑色などの色を呈している。
• 透明度が、おおよそ1.5m以下に低下している。
• 顕微鏡下で赤潮プランクトンが多量に存在しているのが確認できる。
• クロロフィル濃度が50mg/㎥以上ある。ただし、動物プランクトン等クロロフィルを有さないものはこの限りではない。
赤潮発生回数及び発生日数の経年変化
0
5
10
15
20
25
30
35
232119171513119753H16260585654S52
0
20
40
60
80
100
120
140発生回数
発生日数
発生日数(日/年) 発生回数(回/年)
年度赤潮発生件数、日数は変化なし
今年度:5月から9月 24調査/28調査
水面の変色状況
8月1日 8月2日
St.8
広域26暗緑色
St.35
暗灰黄緑色
広域23
茶色
緑褐色
St.22
St.6
St.11
緑褐色
St.23
St.25
お台場
緑褐色
茶色
暗灰黄緑色
St.5
St.25
St.23
St.35
広域26
広域23
St.8
灰黄緑色
St.22
茶色
暗灰黄緑色
茶色
潮目
潮目
St.6
緑褐色
St.11
St.5
お台場
(暗灰黄緑
当日の水質など
調査項目
地点名St.5 St.6 St.8 St.11 St.22 St.23 St.25 St.35 広26
気温 (℃) 30.5 31.1 31.1 30.8 31.2 29.5 30.3 30.4 30.8風向 S S S S SW SE SE S S風速 (m/s) 4.0 4.0 3.0 5.0 4.0 2.0 3.0 2.0 2.0全水深 (m) 11.1 11.3 4.7 16.0 13.2 5.4 15.1 24.5 27.0透明度 (m) 1.3 0.9 0.8 1.1 1.5 1.0 0.9 1.7 3.2
概観 黄褐色 茶褐色 灰黄緑色 黄褐色 茶褐色 黄褐色 茶褐色 黄褐色 緑褐色(色番) 36 37 7 36 37 36 37 36 24
透明度板 黄緑色 黄褐色 灰黄緑色 黄緑色 灰黄色 黄緑色 黄褐色 黄褐色 黄緑色(色番) 6 27 7 6 31 6 27 27 5
水温 (℃) 28.0 29.2 29.8 28.6 29.5 29.9 29.2 29.0 27.1塩分 22.0 23.0 13.2 23.1 25.2 17.4 22.2 25.9 29.8pH 8.5 8.8 8.0 8.7 8.9 8.5 8.8 8.7 8.5
濃度 (mg/L) 8.9 11.6 4.0 11.3 12.2 11.4 14.9 10.9 6.0飽和度 (%) 128.9 172.4 56.9 166.3 184.4 166.2 220.4 164.0 87.1
クロロフィルa (mg/m3) 113.0 99.4 19.1 116.0 31.5 92.5 94.7 27.1 6.8
フェオ色素 (mg/m3) 28.5 23.8 6.0 43.6 8.2 31.4 24.8 8.0 1.5
クロロフィル (mg/m3) 141.0 123.0 25.1 159.0 39.7 123.0 119.0 35.1 8.3
(mL/m3) 200 450 200 250 650 200 600 370 100
COD (mg/L) 7.9 6.7 4.7 7.2 5.0 7.3 7.1 4.6 2.5T-N (mg/L) 3.63 1.83 2.75 2.47 1.02 4.85 1.86 0.99 0.49T-P (mg/L) 0.325 0.205 0.242 0.281 0.094 0.477 0.193 0.089 0.045
Nauplius larvaof Copepoda
other Micro-flagellates
動物プランクトン優占種(個体数基準)
Mesodiniumrubrum
Mesodiniumrubrum
Mesodiniumrubrum
Mesodiniumrubrum
Oligotrichida OligotrichidaMesodinium
rubrumOligotrichida
Thalassiosira-ceae
other Micro-flagellates
other Micro-flagellates
other Micro-flagellates
other Micro-flagellates
other Micro-flagellates
Euglenophy-ceae
other Micro-flagellates
水色
溶存酸素(DO)
プランクトン沈殿量
植物プランクトン優占種(細胞数基準)
プランクトン調査結果(2012年8月1日2日) St.5 St.6 St.8 St.11 St.22 St.23 St.25 St.35
8月2日 8月2日 8月2日 8月2日 8月2日 8月1日 8月1日 8月1日
9:30 10:20 10:47 9:55 11:20 9:30 10:00 10:38
クリプト植物 クリプト藻 Cryptomonadaceae 240 250 96 2,180 720 2,780
渦鞭毛植物 渦鞭毛藻 Prorocentrum minimum 2 140
Prorocentrum triestinum 330 520 3 1,830 410 380 780 170
Gymnodiniales 470 2,770 52 146
Heterocapsa sp. 470 640 2,720 740 380 730
Protoperidinium bipes 13 62
Ceratium fusus 32
Peridiniales 130
黄色植物 珪藻 Cyclotella sp. 128 950
Skeletonema costatum 4,720 230 630 1,320 2,720 3,540 1,580
Thalassiosira sp. 274 134 730 880
Thalassiosiraceae 1,170 1,580 2,150 3,280 2,390 4,280 1,250 3,620
Leptocylindrus danicus 8
Chaetoceros subgen.Hyalochaete sp. 680 3,370 76 1,240 6,750 950 54
Rhizosolenia fragilissima
Cerataulina pelagica 26
Cylindrotheca closterium 128
Nitzschia sp. 34 62 230
Heterosigma akashiwo
ミドリムシ植物 ミドリムシ Euglenophyceae 12,700 8,640 12 15,600 1,820 8,260 5,640 360
緑色植物 プラシノ藻 Prasinophyceae
その他の微細鞭毛藻類 other Micro-flagellates 10,600 17,700 278 108,000 65,400 25,800 63,600 182,000
その他 others 55 152 0 10 332 158 25 56
31,121 33,826 3,441 135,653 78,912 50,460 78,277 186,858
原生動物 繊毛虫 Mesodinium rubrum 15.50 7.10 0.47 8.05 4.10 0.80 17.10 1.55
Tiarina fusus 0.02
Tintinnopsis sp. 0.19 0.01 0.09 0.74 0.80
Helicostomella fusiformis 0.31 0.60 0.13 0.21 3.70 0.17 0.32 2.10
種 名 個体数(単位:×106個体/m3)
門 綱 種 名 細胞数(単位:×106細胞/m3)
門 綱
東京都 隅田川
目黒川
品川埠頭
大井埠頭その1
勝島
平和島
大井埠頭その2
京浜島呑川
東京国際空港
神奈川県
多摩川
昭和島 東京灯標
◎
13
号地
14号地12号地
号地
15
晴海埠頭
豊洲埠頭
荒川
中川
旧江戸川
浦安市
人工なぎさ
中央
内側埋立地
防波堤
中央防波堤外側埋立地
2012年9月28日隅田川河口部で青潮が発生(勝どき橋下流から通報)
佃大橋、新大橋にて表層DOが0.6mg/L,1.1mg/Lであることを確認
臭気あり
新大橋ではマハゼが岸で鼻上げ状態であった。
木場やお台場でも青潮確認との情報あり
隅田川河口部の青潮
被害情報は
市民などから得られた情報(お台場方面)
• 昨日(9月30日)、お台場海浜公園に生態調査で潜ってきました。青潮が完全に入っていて、非常に腐敗臭があり水深1mの海底では、多毛類の瀕死もしくは吺を出した状態での死がいゾーンもしくは、こんなに居たのかと驚くほどのニホンスナモグリの瀕死もしくは死がいゾーンがありました。午後(13:00頃)潜った時には、海水の色が白っぽくなり腐敗臭が減り、硫黄臭が強くなってました。(海辺つくりS氏)
• 海底には中身が入ったまま口をあけて死んでいるアサリやホンビノス、 海底表面で死んでいるゴカイ類が大量にあり、魚類もほとんど見かけ ませんでした。ただ、大きなボラが目の前を通って行ったという話も 聞くので、私が見なかっただけとも思われます。 においもひどく、水中でマスククリアすると鼻の奥にドブをさらった時の 匂いがしました。(海辺つくりO氏)
青潮の前兆
0
2
4
6
8
10
12
14
4月13日
4月20日
4月27日
5月4日
5月11日
5月18日
5月25日
6月1日
6月8日
6月15日
6月22日
6月29日
7月6日
7月13日
7月20日
7月27日
8月3日
8月10日
8月17日
8月24日
8月31日
9月7日
9月14日
9月21日
9月28日
DO(mg・L)
DOの水深別推移(お台場)2012年
表層
2m層
B+0.5m層
貧酸素の厚さ
0
2
4
6
8
10
12
14
16
4月13日
4月20日
4月27日
5月4日
5月11日
5月18日
5月25日
6月1日
6月8日
6月15日
6月22日
6月29日
7月6日
7月13日
7月20日
7月27日
8月3日
8月10日
8月17日
8月24日
8月31日
9月7日
9月14日
9月21日
9月28日
10月5日
DO(mg/L)
DOの水深別推移(St.11)2012
表層
2m層
5m層
10m層
B+0.5m層
今年の貧酸素水塊の発生状況
St.5
0
2
4
6
8
10
12
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 月
(mg/L) H22
H23
H24
St.6
0
2
4
6
8
10
12
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 月
(mg/L) H22
H23
H24
St.11
0
2
4
6
8
10
12
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3月
(mg/L)
H22
H23
H24
St.22
0
2
4
6
8
10
12
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3月
(mg/L) H22
H23
H24
St.25
0
2
4
6
8
10
12
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3月
(mg/L)
H22
H23
H24
St.35
0
2
4
6
8
10
12
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3月
(mg/L)
H22
H23
H24
5月から9月の気象状況
当日までの気象状況(風)
ちなみに、10月18日にはSt.35で透明度10.5mあり、プランクトンは少なかった。
底質からの溶出状況調査
第三航路周辺
内湾部
芝浦運河周辺
第一航路周辺
三枚洲周辺
荒川河口部
運河部東側
隅田川河口部
運河部西側
勝島運河周辺
京浜島周辺
第二航路周辺
港内西部
0 1 2km
5
11
23
25
32
35
30
22
6
4
15
24
21
18
17
12
7
13
11
8
2
15
凡例
●:公共用水域水質測定地点(内湾)
●:公共用水域水質測定地点(運河部)
お台場
水質ー底質結合生態系モデルの概念図 水域区分(13水域)
大気との交換 水平移流
流入負荷量 DO: 4有機物(非生物態) 無機栄養塩類 植物プランクトン 窒素: -23.5
窒素: 19.4 りん: -1.5(DIN 73 %) 分解・無機化に伴う 硝化に伴う 光合成に伴う 呼吸量 DO -32りん: 1.1 酸素消費量 酸素消費量 酸素生成量(DIP 54 %) DO: -5 DO: -0.7 DO: 7 DO: -0.7
DO: -3 DO: -0.3 DO: 8 DO: -1.037.1% 3.7% 10.7%
沈降・堆積量 溶出量・酸素消費量 沈降・堆積量 窒素: 23.5窒素: -0.4 窒素: 0.5 窒素: -0.1 りん: 1.6りん: -0.1 りん: 0.1 りん: 0.0 DO 32.4
DO: -5 48.5%
隅田川河口部の物質循環図(6-9月平均、ton/日)
プランクトン呼吸10%
硝化に伴う消費6%
分解に伴う消費38%無機化に伴う消費
17%
底泥酸素消費14%
酸素消費物質の酸化15%
溶存酸素フラックスの全層の構成比率
溶存酸素フラックスの全層の構成比率 運河部東側
プランクトン呼吸18%
硝化に伴う消費5%
分解に伴う消費28%
無機化に伴う消費19%
底泥酸素消費22%
酸素消費物質の酸化8%
港内西部
プランクトン呼吸20%
硝化に伴う消費5%
分解に伴う消費35%
無機化に伴う消費18%
底泥酸素消費11%
酸素消費物質の酸化11%
芝浦運河周辺
プランクトン呼吸14%
硝化に伴う消費14%
分解に伴う消費25%
無機化に伴う消費21%
底泥酸素消費21%
酸素消費物質の酸化5%
隅田川河口部
プランクトン呼吸10%
硝化に伴う消費6%
分解に伴う消費38%無機化に伴う消費
17%
底泥酸素消費14%
酸素消費物質の酸化15%
お台場
プランクトン呼吸17%
硝化に伴う消費5%
分解に伴う消費24%
無機化に伴う消費16%
底泥酸素消費13%
酸素消費物質の酸化25%
運河部西側
プランクトン呼吸16%
硝化に伴う消費8%
分解に伴う消費27%無機化に伴う消費
18%
底泥酸素消費21%
酸素消費物質の酸化10%
勝島運河周辺
プランクトン呼吸22%
硝化に伴う消費1%
分解に伴う消費22%
無機化に伴う消費13%
底泥酸素消費36%
酸素消費物質の酸化6%
第二航路周辺
プランクトン呼吸21%
硝化に伴う消費3%
分解に伴う消費34%
無機化に伴う消費17%
底泥酸素消費13%
酸素消費物質の酸化12%
第三航路周辺
プランクトン呼吸21%
硝化に伴う消費2%
分解に伴う消費43%
無機化に伴う消費17%
底泥酸素消費10%
酸素消費物質の酸化7%
赤潮プランクトンの寄与は大きい。 広域で潜在的に青潮発生の可能性持っている。
全地点調査結果
底層DOの分布(7月) 透明度の分布(7月)
地域性の視点から
全窒素 全りん
B類型
0
50
100
150
200
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0
T-N
クロロフィル
夏期
冬期
B類型
0
50
100
150
200
250
300
0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30
T-P
クロロフィル
夏期
冬期
クロロフィル濃度と全窒素、全りん濃度との相関
平成20年度東京湾水質調査報告書(東京湾岸自治体環境保全会議)より
冬季(2月)の水温の推移
川と海の視点から
元から断つことが必要 生態系への影響は今は不明 →モニタリング必要
まとめ 1 一斉調査当日、東京港内には汽水性ミドリムシが多く、一部ではそれによる赤潮が形成された。近年珍しいことであった。また、夏季、通年多いはずのSkeletonema costatumが少なかった。
2 千葉沖に青潮が発生した後、 9月28日には隅田川河口部でも青潮が発生した。貧酸素層が例年になく厚い状態が続き、そこへ北風が吹いて起きたと見られる。
3 底質からの溶出をみたシュミレーションから、隅田川河口部でも貧酸素を起こす硫化水素の発生が予測された。
優占プランクトン種
・ミドリムシ藻綱が全体的に多く、一部で赤潮を形成した。最大で約1万5千細胞。
・ミドリムシ藻綱は淡水、汽水、海水に生息するが、今回出現したものは鞭毛の形状から、汽水海水性の種類であり、河川から流されてきたものではない。・ミドリムシ藻綱は東京湾では例年夏季に多くなる傾向があるが、ここ数年の調査において赤潮を形成したことはなかった。(昭和60年以
前は赤潮形成実績がある。)
・昨年、一昨年の夏季はほとんどSkeletonema costatumをはじめとする珪藻
が常に優先していたが、今年度は珪藻類はあまり多くない傾向にあった。
市民などから得られた情報(葛西方面)
• 29日:葛西のなぎさ周辺でも沢山の死魚が見られた。三枚洲までひどくなるのは最近ではなかった。ハゼ釣りシーズンで困っている。
• 西渚周辺では、マゴチ、アカエイ、スズキが多い。ガザミ、ツバクロエイも。新行徳橋下ではセイゴがパクパクしながら岸に寄ってきている。ホンビノスが苦しいのかいたるところで拾えるほど転がっている。アナジャコ屍骸も。
市民などから得られた情報(木場方面)
• 29日:新木場近くの
大横川、新田橋の水面におびただしい数のハゼが浮いている。
• 壁の水面だけでなく、肉眼ではその下30センチくらいまで層になってびっしり
• (海辺つくり:本山氏)