家電リサイクル 年次報告書 Ⅲ章47...

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45 2. 環境配慮設計(DfE)の取組 2.1 環境配慮設計の高度化に向けて 製造業者等は、製品の設計・製造段階における資源有効利用の推進等、「環境配慮設計 (DfE: Design for Environment)」(製品の全ライフサイクルを考慮し、環境負荷低減を 目的とした設計や製造を行うこと)に取り組んでいる。 (1)製品アセスメントマニュアルの活用 家電製品協会は、新製品の環境配慮設計への改善度を評価し、環境負荷 をより低減したものづくりを行う具体的な設計指針として「家電製品 製 品アセスメントマニュアル」を作成しており、製造業者等は同マニュアル を各社で活用している。平成 25 年度には第5版を発行した。 平成26年度には記載内容を要約したWeb版を家電製品協会ホームペー ジに公開した。 図表Ⅲ-2 環境に配慮した製品設計の主なポイント(家電リサイクル関連) 項目 具体的な取組内容 減量化・減容化 ・製品・部品の減量化・減容化 ・希少原材料の減量化 再生資源の使用 ・再生資源の使用 ・再生資源使用の表示 長期使用の促進 ・製品・部品・材料の耐久性向上 ・消耗品の交換性向上 ・手入れの容易性向上 ・保守点検・修理の可能性・容易性向上 ・長期使用のための情報提供 手解体・分別処理の容易化 ・手分解・分別対象物の処理・解体の容易化 ・リサイクルに配慮した使用材料の工夫 再資源化等の可能性の向上 ・リサイクルに配慮した使用材料の工夫 (2)環境配慮情報の公開 家電製品協会は、「家電製品 製品アセスメントマニュアル」の内容や、実際に製品設計 に取り入れられた改善事例等をまとめ、ホームページ上で公開している。 図表Ⅲ-3 製品アセスメント事例集ホームページイメージ 家電製品協会ホームページの製品アセスメ ント事例集ページ(次ページ掲載のURL参 照)から、製品の種類やメーカー名を選択す ると、製品ごとの取組内容や評価項目を確 認することができる

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Page 1: 家電リサイクル 年次報告書 Ⅲ章47 製造業者等のリサイクル研修会(ソニー(株)の事例) 環境配慮設計には省エネ、省資源、有害物質の管理等、製品のライフサイクル全般につ

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2. 環境配慮設計(DfE)の取組

2.1 環境配慮設計の高度化に向けて

製造業者等は、製品の設計・製造段階における資源有効利用の推進等、「環境配慮設計

(DfE: Design for Environment)」(製品の全ライフサイクルを考慮し、環境負荷低減を

目的とした設計や製造を行うこと)に取り組んでいる。

(1)製品アセスメントマニュアルの活用

家電製品協会は、新製品の環境配慮設計への改善度を評価し、環境負荷

をより低減したものづくりを行う具体的な設計指針として「家電製品 製

品アセスメントマニュアル」を作成しており、製造業者等は同マニュアル

を各社で活用している。平成 25年度には第5版を発行した。

平成26年度には記載内容を要約したWeb版を家電製品協会ホームペー

ジに公開した。

図表Ⅲ-2 環境に配慮した製品設計の主なポイント(家電リサイクル関連)

項目 具体的な取組内容

減量化・減容化 ・製品・部品の減量化・減容化 ・希少原材料の減量化

再生資源の使用 ・再生資源の使用 ・再生資源使用の表示

長期使用の促進 ・製品・部品・材料の耐久性向上 ・消耗品の交換性向上 ・手入れの容易性向上

・保守点検・修理の可能性・容易性向上 ・長期使用のための情報提供

手解体・分別処理の容易化 ・手分解・分別対象物の処理・解体の容易化

・リサイクルに配慮した使用材料の工夫

再資源化等の可能性の向上 ・リサイクルに配慮した使用材料の工夫

(2)環境配慮情報の公開

家電製品協会は、「家電製品 製品アセスメントマニュアル」の内容や、実際に製品設計

に取り入れられた改善事例等をまとめ、ホームページ上で公開している。

図表Ⅲ-3 製品アセスメント事例集ホームページイメージ

家電製品協会ホームページの製品アセスメ

ント事例集ページ(次ページ掲載のURL参

照)から、製品の種類やメーカー名を選択す

ると、製品ごとの取組内容や評価項目を確

認することができる

Page 2: 家電リサイクル 年次報告書 Ⅲ章47 製造業者等のリサイクル研修会(ソニー(株)の事例) 環境配慮設計には省エネ、省資源、有害物質の管理等、製品のライフサイクル全般につ

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家電製品協会のホームページで環境配慮設計の内容や改善事例

を確認できる。

環境配慮設計 ⇒ https://www.aeha.or.jp/project/environment/

製品アセスメント事例集 ⇒ https://www.aeha.or.jp/pa-aeha/assessment/index25.php

家電のリサイクル処理について ⇒ https://www.aeha.or.jp/action_of_recycling/

(3)再商品化施設とのコラボレーション

家電製品協会の製品アセスメント委員会は、再商品化施設と意見交換を行い、改善要望

を確認するとともに、処理方法に関するアンケート調査を実施することにより、製造業者

等が環境配慮設計に取り組む際のガイドラインや報告書を作成している。

図表Ⅲ-4 家電製品協会の委員会活動による取組

再商品化施設との意見交換 ガイドライン・報告書の例

改善事例

手解体・分別容易化のための取組

リサイクルマークの表示

リサイクルマーク 表示の意味 表示場所

取り外しねじ位置 取り外しねじの近傍に表示

穴開け位置 穴開け推奨位置に表示

コンプレッサーの冷媒封入パ

イプの向き

冷蔵庫背面の機械室カバー又は冷蔵庫背

面に表示

設計改善事例(冷蔵庫)

(改善前) (改善後)

再商品化施設から、冷蔵庫のプラスチック製の透明棚に装着されている金属部品の取外しが困難なため、金属部品を使用しない方向で統一してほしいとの設計要望が寄せられた。

冷蔵庫内の透明棚の金属材料を取り外し容易にした例(写真上及び右)

同一部品に異種素材を極力使用しない方向で設計改善した。また同一部品に異種素材を使用する場合には、取り外しやすい構造に改善した。

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製造業者等のリサイクル研修会(ソニー(株)の事例)

環境配慮設計には省エネ、省資源、有害物質の管理等、製品のライフサイクル全般につ

いて考える必要があるが、リサイクルに関する配慮設計は、その必要性や重要性を理解し

ていないと希薄になりがちである。

そこで、リサイクルを考慮した環境配慮設計を推進するために、ソニー(株)では自社で

運営する再商品化施設と協業し、リサイクルについての研修会を行っている。研修会は、

企画・設計・調達・品証・デザイン等の幅広い部門から 15名程度を人選し、年2回開催し

ている。

実際のリサイクル現場で解体作業を体験し、現場の声を聞くことでリサイクル配慮設計

のポイントを学ぶことができる。

研修会の内容

座学 :リサイクルに関する法規制や再商品化施設での処理方法について学ぶ。

見学 :解体作業を間近で見学することで、解体作業の手順やどのような道具や設備が使わ

れているかを知る。

実習 :実際の解体作業を体験し、解体性、分別性の重要性を学ぶ。

研修会参加者の感想

・ 家電リサイクル法の背景や必要性が理解できた。

・ リサイクルしやすい設計、という概念が明確になった。

・ 実際の作業を見ることによって、解体性の大切さを感じることができた。

・ ねじの取り外しの大変さが分かりました。解体しやすい構造は必要と感じた。

・ 実際に手分解を経験することで、分解しやすい設計と機能を高める設計のバランスを考

えなければいけないと感じた。

・ リサイクル性を意識しながら設計を行う必要性があることを理解できた。

・ リサイクルした結果、多く再利用できるものがあることが分かった。また、適正にリサ

イクルに出すことの重要さが分かりました。

・ 商品設計時の配慮とともに、効率的な解体技術の開発も必要と感じました。

・ リサイクルと一言で言っても様々な手法や現場の皆さんの訓練・工夫によって質の高い

リサイクルが行われていることを学べました。

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(4)環境配慮設計の具体例

減量化・減容化

【液晶式テレビ】

電源基板とメイン基板を一体化し、基板部のみをバックカバーで覆うことで減量化

を図っている。

再生資源の使用

【エアコン】

室内機内部の主要部品に、対象機器廃棄物より回収した再生プラスチック(自己循

環リサイクルプラスチック)を採用。

基板部分をカバー 100 200 基板部分をカバー

電源基板 メイン基板

100

114

メイン/電源共通基板

200

51.

1

平成29年度モデル24V型 平成30年度モデル24V型

再生プラスチック使用部品例

ファンモーター 固定用部品 (PS)

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再生資源の使用

【冷蔵庫】

対象機器廃棄物より回収したプラスチックを再生し、冷蔵室の仕切り部品等に自己

循環リサイクルプラスチック(PPリサイクル材含有率100%)を採用。

再生資源の使用

【液晶式テレビ】

本体に使用しているプラスチック部品(約6.3kg)のうち、背面カバー、パネルの内

部フレームなど約54%(約3.4kg)の部品に再生プラスチック(※1)を使用。

※1:再生材の含有率30%から89%の樹脂を使用

再生材を使用している背面カバーとフック(爪)部分の拡大図

再生材を利用した冷気吹き出し口

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再生資源の使用

【洗濯機】

台板等の部品に再生プラスチック(含有率100%)を採用し、資源の有効活用を図っ

ている。

長期使用の促進

【エアコン】

熱交換器を55℃以上に加熱し、湿熱効果でカビ菌・細菌を除去する「熱交換器加熱除

菌機能」を搭載。手入れが難しいエアコン内部を清潔に保ち、長期使用を促進。

熱交換器加熱除菌機能

再生プラスチック使用部分例

(台板)

再生プラスチック使用部分例

(溢水(いっすい)トラップ)

再生プラスチック使用部分例

(ホルダー)

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長期使用の促進

【洗濯機】

洗濯槽の裏側などの見えない部分に付着した皮脂汚れや洗剤カスなどを洗い流す

「自動洗浄機能」を採用し、付着する汚れを低減。

手解体・分別処理の容易化

【冷蔵庫】

製品本体の上面後側に設置されている電子基板を取り付けるプラスチック製の基板

ケースに「難燃剤なし」の材質表示を表示し、“難燃剤を含有しないプラスチック”

を容易に分別できるようにした。

自動洗浄機能(イメージ図)

「難燃剤なし」の材質表示例