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半凝固金属スラリーを利用した 超薄肉ダイカスト法 東北大学大学院 工学研究科 准教授 板村正行 教授 安斎浩一

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Page 1: 半凝固金属スラリーを利用した 超薄肉ダイカスト法半凝固金属スラリーを利用した 超薄肉ダイカスト法 東北大学大学院 工学研究科 准教授

半凝固金属スラリーを利用した 超薄肉ダイカスト法

東北大学大学院 工学研究科 准教授 板村正行 教授 安斎浩一

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多くの工業製品に利用されている素形材とは?

材料加工技術

(原料)

(財)素形材センターHPより

「素形材」:  素材に熱や力が加えられ、形が与えられた部品や部材のこと

切削・研削加工  

塑性加工  

焼結加工  

鋳造・射出成形  

溶接・接合  

(微細加工)

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素形材の生産額

48%

16%

2%

29%

5%

鉄鋳物 Al鋳物・ダイカスト

銅鋳物 鍛造・プレス

粉末冶金

H19年度

64285億円

(財)素形材センターHPデータから作成

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鋳造品の主な用途 � 自動車用部品  ◦ 鋳鉄  � 砂型鋳造:FC,FCD(エンジン,足回り,等)  ◦ 軽合金:ダイカスト・金型鋳造  �  Al合金:(エンジン,足回り,電装品,等)  � Mg合金:(シートフレーム,ホイール,等)  

� 家電部品  ◦ 軽合金:Al合金・Mg合金ダイカスト       (PC・携帯筐体,など)

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80

85

90

95

100

105

110

銑鉄鋳物

ダイカスト

ネズミ鋳鉄

Al鋳物

球状黒鉛鋳鉄

銅・銅合金鋳物

精密鋳造品

可鍛鋳鉄

対前年比(%)

Fig.  各種鋳物の対前年比伸び率(平成14年度)

素形材センターHPより

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鋳造法の特徴

� 長所  ◦ 複雑形状部材を一度に製造可能  ◦ 多くの金属材料に適用可能  � 鉄:鋳鉄、鋳鋼  � 非鉄:アルミ合金、マグネ合金、Ti合金  � 超合金:Ni基、Co基  ◦ 大量生産が可能で安価  

� 短所  ◦ 鋳造欠陥が発生しやすい  ◦ 環境負荷低減・省エネルギーが課題  

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図:  鋳造欠陥の発生

• 湯流れ欠陥 気泡巻き込み、湯回り

• 凝固欠陥 引け巣、偏析

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半溶融・半凝固鋳造(ダイカスト)法

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100 µm

Al

Al+Si(共晶)

Al合金の半凝固組織

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半凝固法の特徴

低温

金型寿命が長い

寸法精度がよい

引け巣欠陥が減少

高粘性

空気の巻き込みが少ない

加工性がよい

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本技術の優れた点

� 従来の半凝固鋳造法の特徴はそのままに、超薄肉製品が成形できます!

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迅速半凝固スラリー製造法

� 金属容器にAl合金を注湯するだけで製造可 � 短時間(数十秒~)で製造可能 � Al合金とMg合金に適用可能 � 既存のダイカスト機で利用可能、設置面積小

※H18,H19年度地域新生コンソーシアムにて推進

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Al合金の半凝固スラリー製造実験

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半凝固ダイカストの適用事例

 高耐圧・高気密部品(材質ADC10)

 高耐圧・高気密部品(材質ADC5)

足廻り部品(材質AC4CH) 精密部品(材質ADC10)

(材質AC4CH&ADC12)

薄肉精密部品(厚み0.3~0.45mm)

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560

570

580

590

600

610

620

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

溶湯温度

時間(sec)

スリーブ内の溶湯温度計測結果

Plunger

Die

Sleeve

(c)50%

(b) 30%

(a) 10%

melt

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鋳造条件

スリーブキャストによる外観と金属組織

(普通ダイカスト)

(スリーブキャスト)

鋳造法 普通ダイカスト 半凝固ダイカスト

射出速度(低速) 0.2m/s 0.2m/s 射出速度(高速) 1.0m/s 1.0m/s

鋳造圧力 60MPa 60MPa 金型温度(固定) 250℃ 250℃ 金型温度(可動) 250℃ 250℃ 溶湯温度(AC4CH) 720℃ 650℃ スリーブ充填率 25% 25%

ショットタイムラグ 0sec 0sec

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冷却速度と結晶粒径の関係

 

微細組織

y = 65.881x-0.398

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亜鉛ダイカストの特徴

• 長所 • 寸法精度が良い • 安価

• 短所 • 60℃以上で変形  (ネジのゆるみ) • 重い (Zn:7.1、Al:2.7)

• ピックアップのニーズ 1.  寸法精度+コスト 2.  軽量 → Al化

技術課題: 既存のダイカスト技術では、亜鉛合金でしか必要な寸法精度を確保できない (亜鉛:0.02、Al:0.4程度)

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亜鉛金属でしか製品化出来なかった精密ダイカスト製品を

半凝固鋳造品は、金型の転写性が 「すごい」んです!

アルミ半凝固法で鋳造する技術開発

注目!

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固相率

外観

ピックアップ部

射出速度

射出速度 (最終部)

充填状況

0%

×

30%

×

40%

50%

Al合金AC4CHの固相率と充填挙動の関係

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半凝固鋳造法が実用化すれば..

� 鋳造欠陥の少ない鋳物を製造可能 ◦ ばらつきが少ない

� 低温のため金型寿命が長くなる ◦ 金型コストの低減、金型メンテ作業少

� ばりが発生しにくい ◦ 後加工コストの低減

� 展伸材の利用が可能 ◦ 高強度、高じん性製品の製造

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産学官協同研究事例紹介

� 鋳造シミュレーション技術(H3~) ◦  (TLO技術移転・製品化) ◦  (JAXA委託研究) ◦  (企業との共同研究) ◦  (科研費)

� 半凝固鋳造技術(H18~) ◦  (地域新生コンソーシアム) ◦  (企業との共同研究)

� 高強度ソルト中子成形技術(H15~) ◦  (企業との共同研究)

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産学連携の経歴

�  1991年ー1998年:企業約40社と鋳造CAEシステムを共同研究・開発・実用化

�  2006年ー2008年:地域コンソに採択 �  2009年ー2010年:サポイン2件採択 �  2010年ー2011年:サポイン2件採択 �  2011年ー2013年:サポイン2件採択 �  2011年ー2014年:先端技術実証1件採択 �  2012年ー2014年:サポイン2件採択 �  2012年ー2014年:先端技術実証2件採択 �  2014年ー2015年:サポイン2件採択

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お問い合わせ先

�  株式会社 東北テクノアーチ �  担当:最上静香

�  〒980-8577仙台市青葉区片平2丁目1-1

�  国立大学法人東北大学本部別館3 1階

�  TEL:022-222-3049

�  FAX:022-222-3419 �  E-mail:[email protected]

�  URL:http://www.t-technoarch.co.jp

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本技術に関する知的財産

�  発明の名称:ダイカスト方法及びダイカスト装置ならびにダイカスト品

�  出願番号:PCT/JP2012/73851

�  出願人:国立大学法人 東北大学

�  発明者:板村正行、安斎浩一

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企業への期待

� 基礎検討はほぼ終了し、技術移転のフェーズです。

� 具体的な製品ベースでの導入検討をお願いしたい。

� 不良で困っている会社からの相談を歓迎します。

� 超薄肉製品にチャレンジしたい会社からの相談をお待ちしています。

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実用化へ向けた課題

� 既存のハードを利用して、実用化の例あり。 � 製品の形状や要求仕様によっては、解決すべき課題(鋳造パラメータの最適化)が必要。

� 専用の鋳造機を開発することも検討中。

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ご静聴ありがとうございます。