分野別ロードマップ概要(資料1)...概-1...

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-1 ○以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。 ○分野毎に2枚構成。 1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。 2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降) 研究開発段階 材料・素材研究 基礎研究 実証試験段階 実証試験 安全性 安定性 耐久性 製品開発研究 導入段階 効率向上 コスト低減 普及段階 転換、産業分野では1号機導入、 民生、運輸分野では市場で競合 できる時期 分野別ロードマップ概要(資料1) 民生(家庭) 民生(業務) 産業 運輸 転換 -2 (民生分野) 家庭では世帯当たり、業務では床面積当たりの「効用」はGDPに比例して増大。必要エネル ギー原単位を改善するため、①今後新たに出現する機器を含め、できる限り省エネ、②太陽光等の身の回 りのエネルギーを使って創エネ。①と②を究極まで進めれば、転換分野に頼らず自立化。また、再生可能 エネルギーによる創エネが進むにつれて、余剰エネルギーをネットワークを通じて融通。 (運輸分野) 自動車による「効用(≒台数×移動距離)」がGDPに比例して増大。必要エネルギー原単位を 改善するため、①動力の効率向上、軽量化等による省エネ。ただし、将来のエネルギー原単位改善、CO2 原単位改善のためには、モータによって動く燃料電池自動車または電気自動車が主流になる必要がある。 ②燃料側では、バイオマス燃料、合成燃料を混合した混合燃料が増大した後、石油ピークを迎える今世紀 半ば以降、水素または電気の割合が増大していく。 (産業分野) 製品による「効用(≒機能)」はGDPに比例して増大。必要エネルギー原単位を改善するため、 ①素材・製品の高性能化・高機能化、②製造プロセスの改善・革新的製造プロセスの開発(省エネ、エネル ギーの有効利用、プロセスでの物質・エネルギーの併産)、③製品中に取り込まれた物質資源・エネルギー の再生利用を図る。 また、製造プロセスを活用することによるクロスバウンダリー(産業と民生、産業間、産業と転換など)の取 組による社会全体での効率改善。 (転換分野) エネルギー需要を効率的かつCO2排出原単位改善を図りつつ満たすため、①化石燃料の効 率的利用を図りつつ、②原子力、再生可能エネルギーなどの非化石エネルギーによるエネルギー供給に シフト。さらに、③供給サイドの変動分を平準化する必要が増大することから、大規模な蓄エネルギーなど のネットワークシステムが必要となる。 ○分野毎の考え方 (全体) 需要分野では、得られる「効用(経済活動、生活の質など)」は、GDPに比例して増大することが共 通の前提。その上で、連鎖脱却に向け、必要エネルギー量(=転換分野からの供給エネルギー)の原単位 を最小化する等の必要な技術的備えを行う。 ※GDP(日本): 2050年で1.5倍、2100年で2倍程度と想定。

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Page 1: 分野別ロードマップ概要(資料1)...概-1 以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。 分野毎に2枚構成。1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降)

概-1

○以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。

○分野毎に2枚構成。

1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。

2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降)

研究開発段階

材料・素材研究基礎研究

実証試験段階

実証試験安全性安定性耐久性

製品開発研究

導入段階

効率向上 コスト低減

普及段階

転換、産業分野では1号機導入、民生、運輸分野では市場で競合できる時期

分野別ロードマップ概要(資料1)

民生(家庭) 民生(業務)産業

運輸 転換

概-2

(民生分野) 家庭では世帯当たり、業務では床面積当たりの「効用」はGDPに比例して増大。必要エネルギー原単位を改善するため、①今後新たに出現する機器を含め、できる限り省エネ、②太陽光等の身の回りのエネルギーを使って創エネ。①と②を究極まで進めれば、転換分野に頼らず自立化。また、再生可能エネルギーによる創エネが進むにつれて、余剰エネルギーをネットワークを通じて融通。

(運輸分野) 自動車による「効用(≒台数×移動距離)」がGDPに比例して増大。必要エネルギー原単位を改善するため、①動力の効率向上、軽量化等による省エネ。ただし、将来のエネルギー原単位改善、CO2原単位改善のためには、モータによって動く燃料電池自動車または電気自動車が主流になる必要がある。②燃料側では、バイオマス燃料、合成燃料を混合した混合燃料が増大した後、石油ピークを迎える今世紀半ば以降、水素または電気の割合が増大していく。

(産業分野) 製品による「効用(≒機能)」はGDPに比例して増大。必要エネルギー原単位を改善するため、①素材・製品の高性能化・高機能化、②製造プロセスの改善・革新的製造プロセスの開発(省エネ、エネルギーの有効利用、プロセスでの物質・エネルギーの併産)、③製品中に取り込まれた物質資源・エネルギーの再生利用を図る。

また、製造プロセスを活用することによるクロスバウンダリー(産業と民生、産業間、産業と転換など)の取組による社会全体での効率改善。

(転換分野) エネルギー需要を効率的かつCO2排出原単位改善を図りつつ満たすため、①化石燃料の効率的利用を図りつつ、②原子力、再生可能エネルギーなどの非化石エネルギーによるエネルギー供給にシフト。さらに、③供給サイドの変動分を平準化する必要が増大することから、大規模な蓄エネルギーなどのネットワークシステムが必要となる。

○分野毎の考え方(全体) 需要分野では、得られる「効用(経済活動、生活の質など)」は、GDPに比例して増大することが共通の前提。その上で、連鎖脱却に向け、必要エネルギー量(=転換分野からの供給エネルギー)の原単位を最小化する等の必要な技術的備えを行う。

※GDP(日本): 2050年で1.5倍、2100年で2倍程度と想定。

Page 2: 分野別ロードマップ概要(資料1)...概-1 以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。 分野毎に2枚構成。1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降)

概-3

省エネ

創エネ

エネルギーマネージメント

微少エネルギーの利用

使用機器の効率向上

住宅・建築物の断熱効率向上

熱を発しない照明 熱を発しない機器

電力変換効率向上

食品を冷温保存しない技術

ロスのほとんどない電力変換

微少エネルギーで作動可能を実現する省エネ

微少エネルギーを利用した創エネ(微小な圧力、温度、振動、電波等の利用)

太陽光発電

効率向上・耐久性向上

設置容易化曲面にも設置できる技術

窓にも設置できる技術ペンキのように塗るなどあらゆるところに設置できる技術

BEMS・HEMS

需要のマネージメント 需要と創エネのマネージメント 余剰エネルギーを地域で融通

(地域でのエネルギー供給) 地域の需給マネージメント

TEMS

【建築物・住宅の自立化】

【地域の自立化】

0 t-CO2/世帯

0 kg-CO2/m2

自立化

→ →

転換分野からの供給が必要な

エネルギー量※ (家庭/業務)45%/35%削減 80%/80%削減60%/55%削減

効率の良い加熱 効率の良い熱の移動、未利用エネルギーによる予熱→

→ 能動的な日射・入熱の調整

→ 地域での供給、貯蔵マネージメント →

CO2原単位 (家庭)(業務)

3.5 t-CO2/世帯(1倍)118 kg-CO2/m2(1倍)

1.9 t-CO2/世帯(1/2倍)77 kg-CO2/m2(2/3倍)

1.1 t-CO2/世帯(1/3倍)40 kg-CO2/m2(1/3倍)

0 t-CO2/世帯0 kg-CO2/m2

全必要エネルギー量 1.5倍 2.1倍1倍

2100205020302000

※GDPに比例して全必要エネルギー量が増加した場合を基準として、転換分野からの供給が必要なエネルギー(単位当たり)の削減量

民生

概-4

民生2100205020302000

創エネ

省エネ

空調・給湯

照明 高効率照明

高度太陽光利用照明 (高効率集光・伝送)

高効率LED 有機EL照明

蓄光、生化学発光自然光利用技術

高効率ヒートポンプ、蓄熱空調、太陽熱・排熱等未活用熱源利用

高断熱化、室内空気質改善、快適性向上住宅・ビル用高性能建材

高効率空調システム

高効率デバイス(電力変換等)

SiC GaN、AlN等 CNTトランジスタ/ダイヤモンド半導体 単電子トランジスタ

高効率給湯真空断熱貯湯高効率ヒートポンプ給湯

共通技術

未利用エネルギーを電力等に変換

熱電変換 圧電変換、磁歪変換、バイオ光電変換

太陽光発電薄膜型 色素増感型、有機薄膜型等 超高効率新型

エネルギーマネージメント

HEMS・BEMS

TEMS(地域でのエネルギー・マネジメントシステム)

エネルギー融通

エネルギー貯蔵・ネットワーク(電気・熱・水素)

能動調整機能付き建材

厨房 高効率調理長期常温保存長期品質保持

高効率調理器 新調理加工技術

低熱損失高効率照明

化石燃料利用分散電源

動力・その他

燃料電池コジェネ ハイブリッドシステム(業務用)

情報家電(大型ディスプレイ等)

省エネPDP・LCD、大容量光通信・ストレージ LED、ELディスプレイ

(水素利用超高効率燃料電池)

(高精細、大型、低消費電力)

低コスト化、高効率化、設置容易化

45nmプロセス

(食品)

モニタリング 需要予測ネットワーク化による連携制御 (ライフスタイルや快適性を取り入れた制御)

エネルギー貯蔵との連携制御 系統との連携制御

リチウム電池 新型二次電池、蓄熱 ローカル・エネルギー・ネットワーク(LEN)

分散エネルギー貯蔵水素利用燃料電池

Page 3: 分野別ロードマップ概要(資料1)...概-1 以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。 分野毎に2枚構成。1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降)

概-5

20%削減転換分野からの供給が必要な

必要エネルギー量※(運輸全体)70%削減50%削減

10~20%削減航空機・船舶・鉄道

必要エネルギー量※30~50%削減20~35%削減

必要エネルギー量※電化・水素化率CO2原単位

0%160 g-CO2/km (1倍)

30%削減1%以上

100 g-CO2/km(2/3倍)

60%削減40%

50 g-CO2/km(1/3倍)

80%削減100%

0 g-CO2/km

自動車

2100205020302000

省エネ

燃料転換

バイオマス燃料(混合)

合成燃料(混合)

自動車

燃料電池/蓄電池エンジン/モータ(ハイブリッドシステム)

圧縮水素 → 液体水素、水素吸蔵材料

蓄電池、キャパシタ等

モータ→

0 g-CO2/km(自動車)

ケーブル接続充電 → ケーブルレス非接触充電

バッチ輸送 → 高効率オンサイト製造 → パイプライン輸送(局所、地域)

航空機

船 舶

鉄 道

軽量化による省エネ

域内用途の超軽量小型車

[内航船] 水素駆動化・超電動駆動化[外航船] 大型化、低速運行システム

運輸システム連携による省エネ

(石油)→

[水素貯蔵]

[電力貯蔵]

軽量化による省エネ

(エンジン) →

エンジン効率向上

[液体燃料]

ハイブリッド駆動

効用(人・km、トン・km) 1.5倍 2.1倍1倍

[水素供給]

[電力供給]

運輸全体

※GDPに比例して効用が増加した場合を基準にして、転換分野からの供給が必要なエネルギー(単位当たり)の削減量

運輸

概-6

運輸 2100205020302000

副生水素バッチ輸送 オンサイト水電解 パイプライン輸送

蓄電リチウム電池 リチウム電池または新型蓄電装置

電気自動車(近距離用)電池・車体の軽量化、モータ・電力変換効率向上 太陽電池による補助給電

燃料電池ハイブリッド車

水素貯蔵圧縮、液化、貯蔵材料(無機、合金、炭素、有機)

太陽電池による補助給電FC効率向上、蓄水素部・車体の軽量化、モータ・電力変換効率向上

内燃機関ハイブリッド車

※燃費は現状内燃機関比を表す(軽量化等の効果含む)

軽量化

空調省エネ

超高張力鋼、高張力アルミニウム、マグネシウム、チタン、複合材

ヒートポンプ効率向上、断熱、遮光

自動車共通技術

バイオマス燃料

合成液体燃料

電気供給

オンサイト燃料改質

ケーブルレス自動非接触式(手動ケーブル接続式)

燃費 1.5倍 2倍

燃費 3倍 4倍 5倍

燃費 4倍 5倍 6倍

航空機

船舶

鉄道

[内航船] 軽量化 電動化・プロペラ配置の分散最適化・超電導モータ

[外航船] 大型化、航行速度最適化

水素燃料電池船

機体高性能化、ジェットエンジン効率向上

(非電化区間) ディーゼル・電池ハイブリッド車 水素FC・電池ハイブリッド車

軽量化、モータ・電力変換効率向上、架線・電池ハイブリッド化

GTL CTL

燃費 2倍

水素供給

自動車

超電導モータ

車体軽量化、エンジン効率向上、モータ・電力変換効率向上、システム制御高度化 (燃料電池ハイブリッド車に移行)

エタノールまたはETBE、BDF BTL

Page 4: 分野別ロードマップ概要(資料1)...概-1 以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。 分野毎に2枚構成。1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降)

概-7少ない資源での製品製造によるエネルギー削減 『良いものをつくる』

素材・部材の高機能化・高性能化(高強度化等)

製品の省素材化(構造・機構の高度化等)

製造プロセスにおけるエネルギー利用の高度化 『うまくつくる』

コジェネ・熱のカスケード利用

コプロダクション(物質とエネルギーの併産)

(製造プロセスの省エネ)革新的製造プロセスの開発バイオ・ナノ触媒の利用等

(化石資源利用) バイオマス/水素利用→

物質エネルギーの再生 『上手につかう』

分離・分別化容易設計耐久性向上

物質再生プラントの効率向上

資源循環型生産プロセス

分野を越えた物質・エネルギー

の再生利用

物質・エネルギーの連携・統合

ゼロエミッション型プロセス

クロスバウンダリーの取組

210020502030

25%削減

2倍3)高機能化(強度等)

(機能/物質量)

70%削減

4倍

40%削減

3倍

50%2)物質エネルギー再生率 80%60%

2000

製造量×製品の価値 2.1倍1.5倍1倍

1倍

※GDPに比例して効用(製造量×製品の価値)が増加した場合を基準として、転換分野からの供給が必要なエネルギー(単位当たり)の削減量

20%削減1)製造エネルギー原単位改善 50%削減30%削減-

産業

転換分野からの供給が必要な

必要エネルギー量※

概-8

産業

素材・部材の高性能・高機能化

高機能・高強度プラスチック、超高強度・軽量セメント、高機能・高品位紙

省エネルギープロセス

コプロダクション(物質・エネルギー併産) 電力・水素・化学品コプロダクション

革新的蓄熱増熱技術(産業用ヒートトランスフォーマー、化学蓄熱など)

製品の省素材化

物質エネルギー再生

電磁鋼板 高張力鋼、革新的構造材料、溶接材料等 次世代型機能性材料

SCOPE-21、新焼結等革新的プロセス技術の導入 革新的鉄鋼製造プロセス

既存セメント・エコセメントプロセスの省エネ化 ゼロエミッション型セメントプロセス

産業間連携 マテリアル・カスケード・マネージメント

非在来型化石燃料、劣質原料利用、廃棄物、バイオマスガス化

燃料電池型加熱炉ガス化技術、GTインテグレーション

物質・副産物・エネルギー再生技術

微量成分除去、分離・回収、再資源化技術

バイオマス利用 バイオマスIGCC バイオマスIGFC

高効率伝熱・断熱技術、高効率蓄エネルギー技術、産業用コジェネの高効率化、熱のカスケード利用、動力回生システム

廃棄物ガス化による電力・熱のコプロダクション

製鉄

化学

セメント

2100205020302000

現行プロセス省エネ、次世代圧延技術等新プロセスの開発

石油化学原料省エネ生産技術 サステイナブル・カーボンサイクル化学体系(SC3)

バイオマス生産・利用促進技術(バイオテクノロジー等の活用)

製造プロセスにおけるエネルギー利用の高度化 『うまくつくる』

物質エネルギーの再生 『上手につかう』

少ない資源での製品製造によるエネルギー削減 『良いものをつくる』

製品の省素材化(集積(モジュール)化、小型化)

革新的製造プロセス(バイオ・ナノ触媒の利用等)

共通

共通

化学

セメント

紙・パ

製鉄

その他

Page 5: 分野別ロードマップ概要(資料1)...概-1 以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。 分野毎に2枚構成。1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降)

概-9非化石エネルギーの導入

再生可能エネルギー

蓄エネ

設置容易化

効率向上

地熱

太陽 道路・ダムなどあらゆる場所に設置できる技術

原子力の活用

効率向上

負荷追従運転

核燃料サイクル

化石使用量の削減

化石資源利用の効率向上

燃料転換(石油)

(石炭)

天然ガス

石炭(クリーン・コール・テクノロジー+二酸化炭素回収・隔離(CCS))

バイオマス 木質・バイオマス(廃棄物系・未利用系)

燃料作物生産→

風力 陸上 海洋→

CO2原単位 270 g-CO2/kWh(2/3倍)

120 g-CO2/kWh(1/3倍)

0 kg-CO2/kWh

0 t-CO2/kWh

370 g-CO2/kWh(1倍)

2100205020302000

需要端での全エネルギー需要(最大ケース)

1.5倍 2.1倍1倍

CCS併用化石燃料使用時 110 g-CO2/kWh(1/3 倍)

電化・水素化率 2倍 4倍1倍

転換

概-10

転換 210020502030

ガス化発電・燃料製造技術発電(転換)効率 41% 46% 55% 65%

・石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)

・化学再生形IGFC

・IGCC 1500℃級GT

CO2回収・隔離技術

・石炭ガス化複合発電(IGCC)

・IGCC 1700℃級GT

50%

高圧ガスからの分離・回収技術

電力・燃料併産技術

化石資源利用+CO2回収・隔離技術

エネルギー貯蔵・輸送技術

軽水炉の効率向上日本型次世代型軽水炉

マイナアクチニド核変換 長半減期FP核変換

第4世代軽水炉(超臨界圧炉)

高度化 (ガス冷却FBR)

発電効率 34% 36% 43% 45%

44% 48% 発電効率 42%

原子力利用技術

原子力水素・高温水蒸気電解

再生可能エネルギー利用技術

2000

石炭ガス化水素製造技術

ネットワーク技術分散電源連携技術 電力貯蔵を含めた短期最適運用技術

パイプラインによる水素の輸送

電力・燃料貯蔵(水素・合成燃料等)

リチウム電池 新型二次電池、SMES、フライホイール 大容量エネルギー貯蔵

瞬時負荷平準化 日間負荷平準化(1日~数日間) 季節間調整

電解水素・水素貯蔵技術

※原子力最大利用の場合(核燃料資源制約による)

※化石資源最大利用の場合

浅部地熱系(蒸気発電、バイナリー発電) 深部地熱系 高温岩体発電地熱発電

太陽光発電小規模独立分散発電→広域連携

MW級大規模発電

薄膜型結晶型 超高効率新型

30% 40% 22% 発電効率 13% 太陽光・熱利用の水素製造

風力発電(陸上)大型化、低コスト化

沿岸近海着定式 洋上近海 洋上遠海浮体式(洋上)

バイオマス利用直接燃料 ガス化・ガス化改質 バイオマスガス化燃料・水素製造

大規模バイオマス発酵水素製造

高速増殖炉 FBR(核燃料サイクル)

メタン発酵、エタノール発酵

燃料作物生産

色素増感型等

Page 6: 分野別ロードマップ概要(資料1)...概-1 以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。 分野毎に2枚構成。1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降)
Page 7: 分野別ロードマップ概要(資料1)...概-1 以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。 分野毎に2枚構成。1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降)

民生分野ロードマップ(資料2-1)

民生(家庭) 民生(業務)

Page 8: 分野別ロードマップ概要(資料1)...概-1 以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。 分野毎に2枚構成。1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降)

民-2

民生分野の技術スペックの考え方

①ケース、分野共通の条件■資源制約の条件 :想定した石油ピーク(2050年)、天然ガスピーク(2100年)までに、他のエネルギー源と互換可能な

状態とする■環境制約の条件 :CO2排出量/GDPを2050年に1/3、2100年に1/10以下とする

②各ケースの技術スペック■効用はGDPに比例して増大■ケースA(石炭等化石資源とCO2回収・隔離の 大利用ケース)およびケースB(原子力の 大利用ケース)

転換部門からの電気または水素を100%エネルギー源とする(電気・水素化率100%)■ケースC(再生可能エネルギーの 大利用と究極の省エネルギー実施ケース)

省エネルギーおよび創エネルギーにより2100年には、外部に依存するエネルギー需要を80%削減。

③ケースCの2030年および2050年の技術スペック■電化・水素化率(転換部門および民生分野内での創エネルギー)は、2100年で100%とし、創エネルギーの導入可能量、

化石資源制約等を考慮し、2050年および2030年の電化率を設定。■家庭部門および業務部門におけるエネルギー需要の削減率、その削減率の省エネルギーおよび創エネルギーの内訳は

それぞれのエネルギーの導入の可能性を考慮し、2100年の 終技術スペックからバックキャストで設定。

※GDPに比例して全必要エネルギー量が増加した場合を基準として、転換分野からの供給が必要なエネルギー(単位当たり)の削減量

④各時点の個別条件を満たすために求められる技術スペック、時期等をロードマップとして整理

2030

55%/50%

45%/35%削減

30%/30%削減

15%/ 5%削減

1.9 t-CO2/世帯(1/2倍)

77 kg-CO2/m2(2/3倍

2050

70%/70%

60%/55%削減

35%/45%削減

25%/10%削減

1.1 t-CO2/世帯(1/3倍)

40 kg-CO2/m2(1/3倍)

2100

100%/100%

80%/80%削減

40%/50%削減

40%/30%削減

0 t-CO2/世帯

0 kg-CO2/m2

電化・水素化率 (家庭/業務)

転換分野から供給される

エネルギー量※ (家庭/業務)

省エネルギーによる削減の内訳 (家庭/業務)

創エネルギーによる削減の内訳 (家庭/業務)

CO2原単位 (家庭)

(業務)

2000

3.5 t-CO2/世帯(1倍)

118 kg-CO2/m2(1倍)

民-3

民生分野の技術スペック実現のための技術群の考え方民生分野における必要エネルギーおよびCO2排出原単位の技術スペック実現においては、「再生可

能エネルギー 大利用と究極の省エネルギー実施ケース」の場合が も技術的に困難なものとなり、他のケースの技術開発ニーズもこのケースに包含される。この技術スペック実現のためには、

(1) 今後新たに出現する機器を含めてできる限り省エネを実施(2) 太陽光等の身の回りのエネルギーを使って創エネを実施

(1)と(2)を究極まで進めることで、転換分野からのエネルギーに頼らない自立化が可能となる。また、再生可能エネルギーによる創エネ導入量の拡大に伴い、余剰エネルギーをネットワークを通じて融通、さらには分散貯蔵して 大限に活用することが可能となる。

①省エネは、トップランナー機器の導入により家庭が先行し業務がこれに続く。これに加えて空調関係では機器のみならず建物の断熱・遮熱性能の向上が、給湯についてはヒートポンプの導入がそれぞれ効果的である。中期的にはエネルギーマネジメントが一定の役割を果たす。生活の質の向上やライフスタイルの変化に合わせ新規に導入される機器も順次省エネが行われる。

②創エネは、太陽光発電を始めとして各地域の特色を活かして様々な種類のものが導入される。設置機会(スペースなど)やエネルギー価格等の条件により、当初は戸建ての家庭から始まり、順次、集合住宅、業務ビルに普及する。

③電化・水素化は、家庭および業務とも当初は省エネ機器の導入および高齢化などによるライフスタイルの変化、その後は再生可能エネルギーによる電気および水素の供給増、また外部からの化石エネルギーの減少により、2000年の水準からほぼリニアに上昇する。

④省エネ先行の後、創エネが進み、需給バランスがとれた戸建て等からエネルギーの自立化が始まり、地域大での創エネルギー普及に伴い、業務あるいは地域大の自立化が普及する。再生可能エネルギーの活用による自立化では、エネルギー貯蔵が重要な役割を果たす。

Page 9: 分野別ロードマップ概要(資料1)...概-1 以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。 分野毎に2枚構成。1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降)

民-4

省エネ

創エネ

エネルギーマネージメント

微少エネルギーの利用

使用機器の効率向上

住宅・建築物の断熱効率向上

熱を発しない照明 熱を発しない機器

電力変換効率向上

食品を冷温保存しない技術

ロスのほとんどない電力変換

微少エネルギーで作動可能を実現する省エネ

微少エネルギーを利用した創エネ(微小な圧力、温度、振動、電波等の利用)

太陽光発電

効率向上・耐久性向上

設置容易化曲面にも設置できる技術

窓にも設置できる技術ペンキのように塗るなどあらゆるところに設置できる技術

BEMS・HEMS

需要のマネージメント 需要と創エネのマネージメント 余剰エネルギーを地域で融通

(地域でのエネルギー供給) 地域の需給マネージメント

TEMS

【建築物・住宅の自立化】

【地域の自立化】

0 t-CO2/世帯

0 kg-CO2/m2

自立化

→ →

転換分野からの供給が必要な

エネルギー量※ (家庭/業務)45%/35%削減 80%/80%削減60%/55%削減

効率の良い加熱 効率の良い熱の移動、未利用エネルギーによる予熱→

→ 能動的な日射・入熱の調整

→ 地域での供給、貯蔵マネージメント →

CO2原単位 (家庭)(業務)

3.5 t-CO2/世帯(1倍)118 kg-CO2/m2(1倍)

1.9 t-CO2/世帯(1/2倍)77 kg-CO2/m2(2/3倍)

1.1 t-CO2/世帯(1/3倍)40 kg-CO2/m2(1/3倍)

0 t-CO2/世帯0 kg-CO2/m2

全必要エネルギー量 1.5倍 2.1倍1倍

2100205020302000

※GDPに比例して全必要エネルギー量が増加した場合を基準として、転換分野からの供給が必要なエネルギー(単位当たり)の削減量

民生

民-5

2100205020302000

創エネ

省エネ

空調・給湯

照明 高効率照明

高度太陽光利用照明 (高効率集光・伝送)

高効率LED 有機EL照明

蓄光、生化学発光自然光利用技術

高効率ヒートポンプ、蓄熱空調、太陽熱・排熱等未活用熱源利用

高断熱化、室内空気質改善、快適性向上住宅・ビル用高性能建材

高効率空調システム

高効率デバイス(電力変換等)

SiC GaN、AlN等 CNTトランジスタ/ダイヤモンド半導体 単電子トランジスタ

高効率給湯真空断熱貯湯高効率ヒートポンプ給湯

共通技術

未利用エネルギーを電力等に変換

熱電変換 圧電変換、磁歪変換、バイオ光電変換

太陽光発電薄膜型 色素増感型、有機薄膜型等 超高効率新型

エネルギーマネージメント

HEMS・BEMS

TEMS(地域でのエネルギー・マネジメントシステム)

エネルギー融通

エネルギー貯蔵・ネットワーク(電気・熱・水素)

能動調整機能付き建材

厨房 高効率調理長期常温保存長期品質保持

高効率調理器 新調理加工技術

低熱損失高効率照明

化石燃料利用分散電源

動力・その他

燃料電池コジェネ ハイブリッドシステム(業務用)

情報家電(大型ディスプレイ等)

省エネPDP・LCD、大容量光通信・ストレージ LED、ELディスプレイ

(水素利用超高効率燃料電池)

概要

(高精細、大型、低消費電力)

低コスト化、高効率化、設置容易化

45nmプロセス

(食品)

モニタリング 需要予測ネットワーク化による連携制御 (ライフスタイルや快適性を取り入れた制御)

エネルギー貯蔵との連携制御 系統との連携制御

リチウム電池 新型二次電池、蓄熱 ローカル・エネルギー・ネットワーク(LEN)

分散エネルギー貯蔵水素利用燃料電池

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民-6

2100205020302000

省エネ■ 省エネはトップランナー機器の導入により家庭が先行し業務がこれに続く■ これに加えて空調関係では機器のみならず建物の断熱・遮熱性能の向上が、給湯についてはヒートポンプの導入がそれぞれ効果的である■ 中期的にはエネルギーマネジメントが一定の役割を果たす■ 生活の質の向上やライフスタイルの変化に合わせ新規に導入される機器も順次省エネが行われる

30%30%

35%45%

40%50%

省エネ率(GDPの伸びに比例して増えると想定した必要エネルギー量からの削減率)

家庭 0%業務 0%

照明技術■ 主照明用として、現在の蛍光灯の熱損失を低減した高効率蛍光灯および高効率化白色LED等の技術開発を推進し、省エネ技術スペックとして、 2030年で30%、2050年で35%

以上の削減率を達成する。■ 環境性にも配慮した無水銀蛍光灯の効率改善を進め、2050年以降に高効率蛍光灯としての置き換えを図る。■ 演色性の高い高効率白色光源を開発し、熱損失の大きな白熱電球に置き換えるとともに積極的に自然光利用を促進する。■ 蓄光を含む新しい照明技術を開発し、2050年頃、補助照明としての一部実用化を図る。

高効率LED照明

高効率LED(光源)GaN、AlN製造技術

白色LED用蛍光材料

100 lm/W 200 lm/W

高効率近紫外励起蛍光材料

有機EL照明高輝度白色EL 補助・特殊照明(高演色性)

LED光源の高輝度・低熱損失化(含近紫外高効率発光半導体)

蛍光材料の改良

>150 lm/W50 lm/W

高効率蛍光灯200 lm/W

高効率蛍光材料

高効率無水銀蛍光灯(低環境負荷光源)

熱損失低減技術

80-100 lm/W

>150 lm/W発光効率 80-100 lm/W

150 lm/W

30 lm/W 100 lm/W 200 lm/W

主照明

民-7

自然光利用技術

次世代照明技術

生化学発光(冷光等)材料

高輝度発光可能な燐光材料

タングステンに代わる高融点長寿命材料、微細加工技術 低損失家庭用高演色白色光源

高効率光伝送技術

高効率集光技術

高反射・長寿命光ダクト、低価格光ファイバー

自動追尾型受光部汚れ防止技術

蓄光技術(含生化学的、電気化学的)

高効率高演色白色光源

蓄光・その他新技術

補助照明

自然光利用設計技術

技術以外の要因● 省エネラベリング制度等によるトップランナー機器の導入普及施策

(マイクロキャビティー、クラスター発光等)

補助照明

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民-8

空調・給湯技術■ 家庭部門の消費エネルギーの約30%および業務部門の約40%を占める空調エネルギーを建物高断熱化、空調機器効率化で削減■ 家庭部門の約30%、業務部門の約20%を占める給湯用エネルギーを高効率ヒートポンプの導入により削減■ 熱需要とのバランスにより、化石燃料利用分散電源、将来的には水素利用燃料電池の導入により省エネが図られる

2100205020302000

高断熱化技術

能動調整技術

・低熱伝導率断熱材【材料】、断熱工法・低熱貫流率窓ガラス・高気密窓サッシ【材料】・屋上緑化、壁面緑化工法

室内空気質改善技術

・VOC低減(吸着・分解)建材開発による冬季・夏季の換気量削減【材料】・調湿(湿度調整)建材【材料】

外ブラインドなどの外部可動日射制御システムの開発・低価格化

その他

・光触媒による自浄性高光反射建材【材料】・親水性蒸散冷却促進建材【材料】・パッシブソーラー効果を高める潜熱蓄熱建材【材料】

住宅性能評価技術

・住宅性能設計技術・住宅性能評価技術・非破壊型断熱性評価技術

空調エネルギーの削減空調エネルギーの削減率 40% 50%

住宅・ビル用高性能建材■ 高気密・高断熱化により室外との熱の出入りを少なくして空調エネルギーを削減するとともに、計画換気により健全で快適な空気環境を保つ■ 簡便かつ高精度な住宅性能設計技術、住宅性能評価技術による高性能住宅の普及■ 断熱材料、調湿材料、蓄熱材料等の材料技術開発および建材への適用

熱伝導率 ▲50% ▲75%

技術以外の要因● 住宅性能表示制度の拡充と高性能住宅の普及施策

民-9

高効率ヒートポンプ

高効率換気・空調省エネ換気・空調、自然通風併用ハイブリッド空調システム

定格COP・部分負荷効率向上による年間消費電力低減・寒冷地対応ヒートポンプ(低温暖化係数冷媒・代替技術)・除湿モードの改善 ・潜熱・顕熱分離空調・ファン・ポンプ用高効率インバータ【業務】・冷凍・空調併用ヒートポンプ【業務】

・蓄熱空調(日・季節)・太陽熱・排熱利用空調・地中熱利用ヒートポンプ

COP 4~6

高効率空調システム省エネ率 40% 50%

未利用エネルギー・熱源の利用

ウエルネス空調

・被服・繊維による温熱制御・放射冷房システム

・タスクアンビエント空調システム【業務】・快眠、調湿エアコン、全館空調システム【家庭】

空調エネルギー診断

COP 5~7 COP 5~8

2100205020302000

高効率空調システム■ ヒートポンプ暖房の普及、トップランナー・省エネラベリング底上げにより2030年までに省エネ率40%達成■ 機器の省エネに加え、未利用エネルギー・熱源の利用技術開発・商品化・普及により2050年までに省エネ率50%達成■ 健康・快適(ウエルネス)と省エネを両立した技術でライフスタイルに応じた空間の質を向上

技術以外の要因● 省エネラベリング制度等によるトップランナー機器の導入普及施策

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民-10

(水素-電力相互変換技術)

小型高効率コジェネ技術

ガスエンジンコジェネ

40%80%

45-50%80%

家庭用コジェネ・高効率発電

高温排熱利用の高度化

化石燃料利用分散電源技術

発電効率 20%総合効率 80%

低コスト化、長寿命化、高効率化、軽量小型化

業務用コジェネ・高効率発電

発電効率の向上、高COP機器との組合わせによる更なる省エネ、機能高度化

発電効率 35-45%総合効率 80%

50%80%

65%

ガスエンジン等コジェネ

低温形燃料電池、高温形燃料電池

高温形燃料電池コジェネ業務用高効率発電技術

GT等とのハイブリッドシステム

低コスト化、長寿命化、高効率化、軽量小型化

60-70%

70%

(水素利用超高効率燃料電池)

(水素利用超高効率燃料電池)(水素-電力相互変換技術)

2100205020302000

化石燃料利用分散電源技術■ 熱の有効利用のため、2050年までは化石燃料利用コジェネの効率化、2050年以降はエネルギー貯蔵としての水素の利用のためコジェネを普及■ 家庭用:ガスエンジンコジェネ→低温形燃料電池、高温型燃料電池→水素利用高効率燃料電池■ 業務用:ガスエンジン等コジェネ→高温形燃料電池コジェネ→(GT等とのハイブリッドシステム)→水素利用超高効率燃料電池

省エネ率 40%

※化石燃料→水素

※化石燃料→水素

民-11

高効率ヒートポンプ給湯器

真空断熱貯湯・送湯

COP 6.8

高効率圧縮機

瞬間式(42℃出湯)

真空断熱材

潜熱回収型ガス給湯器95%

COP 5.3 COP 6.3

COP 6.5 貯湯タンク式(65℃出湯)

COP 5

高性能冷媒CO2冷媒 自然冷媒性能向上

太陽熱利用、未利用熱による予熱

断熱パイプ

COP 6

熱効率 80%

COP 3.2

未利用エネルギーの利用

高効率熱交換器

膨張動力回収技術

技術以外の要因● 省エネラベリング制度等によるトップランナー機器の導入普及施策

2100205020302000

給湯技術■ 高効率ヒートポンプ式給湯器等の高効率給湯器の開発■ 太陽熱利用技術および家庭内排熱などの未利用熱による予熱技術の開発および普及

給湯技術給湯エネルギー削減率 >30% 45% 50%

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民-12

厨房■ 調理機器の高効率化、新調理加工技術、省エネ型加熱調理容器(調理時間の短縮化)等の組合せにより、調理エネルギー使用量を2030年までに30%、2050年までに40%削減■ 2050年以降は、完全調理済み食品の長期常温保存技術等によっても調理エネルギーを削減し、機器の省エネと合わせて、厨房分野の省エネ技術スペックである家庭40%、業

務50%を達成■ 2050年には凍結乾燥食品を、2100年には常温保存食品の開発により、冷蔵・冷凍食品保存のためのエネルギーも削減

2100205020302000

高効率調理機器

食品の長期保存技術

凍結乾燥食品製造技術

長期常温保存食品製造技術完全殺菌技術 長期品質保持技術

完全調理済み長期常温保存技術生鮮食品の常温保存技術

凍結乾燥技術 完全調理済み凍結乾燥技術

高効率ガス・水素調理器

高効率IH調理器

新調理加工技術・機器

複合加熱調理器(熱風・スチーム等の複合)

新調理加工技術(加圧調理技術等)

90% 95%

高効率ガスバーナー調理器

水素燃焼調理器(水素コンロ、グリル)

調理時間 ▲20% ▲40%

省エネ型加熱調理容器(鍋・炊飯器等)

調理エネルギー削減率 30% 40%

調理エネルギー削減率 15% 30%

熱効率 85%

技術以外の要因● 省エネラベリング制度等によるトップランナー機器の導入普及施策

民-13

2100205020302000

技術以外の要因● IT、ユビキタス、ロボット等、電力需要の大幅な増大の可能性● 省エネラベリング制度等によるトップランナー機器の導入普及施策

省エネPDP

映像用高効率放電方式

省エネ型パネル製造技術

10 lm/W(60”) 20 lm/W(100”)

高効率蛍光材料

省エネLCD

高効率白色光源

その他のディスプレイ技術

15 lm/W(80”)

高効率PDPパネル

高透過率パネル

10 lm/W(60”) 20 lm/W(100”)15 lm/W(80”)

超薄型ディスプレイ(フレキシブル)

有機TFT技術

LED・ELディスプレイデバイスの高効率化(素子、発光材料、薄膜技術) パネル化技術

3Dディスプレイ自然画像3Dディスプレイ技術

20 lm/W(100”)

20 lm/W(100”)

1.5 lm/W (40”;全白表示時)

小型画面実用化

2 lm/W(全白表示時)

※発光効率[lm/W]は自然画像表示時の効率

動力・その他■ 将来出現する新たな機器も含めて様々な電気機器が省エネの対象として考えられるが、大画面ディスプレイで代表する■ PDP、LCD等の大画面化にあわせたFPDの省エネ化技術開発推進により、2050年度エネルギー削減率>40%を達成■ 2100年、発光効率 20 lm/W (画面サイズ100インチ級)を技術スペックとする自発光・固体次世代ディスプレイ技術の開発を推進する

高精細、大型、低消費電力化

高精細、大型、低消費電力化

高精細、大型、低消費電力化

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民-14

共通技術■ 照明、空調、給湯、動力その他全分野の共通技術としてパワーデバイスの高効率化が重要■ パワーデバイスは、空調・給湯、動力等の機器全般の高効率化およびHEMS・BEMS等のマネージメントにも必要

2100205020302000

高効率デバイス(電力変換等)

電源

窒化物デバイス

パッケージ型

出力密度 1 W/cm3 10 W/cm3 100 W/cm3 150 W/cm3

SiCデバイス

CNTトランジスタ/ダイヤモンド半導体

単電子トランジスタ

ボード型 1MW変換器次世代CPU電源

半導体回路線幅微細化(90 nm) 45 nm 22 nmプロセス 超極微細

CNT-LSI

GaN、AlN

民-15

2100205020302000

創エネ■ 太陽光発電を始めとして各地域の特色を活かしてバイオマスなど様々な種類のものが導入■ 設置工事、維持管理、廃棄に関しても技術の確立が重要■ 設置機会(スペースなど)、設置の容易性、エネルギー価格の条件により、当初は戸建ての家庭に始まり、順次、集合住宅、業務に普及

15%5%

25%10%

40%30%

創エネ率(GDPの伸びに比例して増えると想定した必要エネルギー量に対する割合)

家庭 0%業務 0%

未利用エネルギーの電力等への変換技術■ 技術的ハードル高い■ 個々のポテンシャルは小さいが、省エネとあわせ今後増加する電気機器の自立化に貢献

熱電変換

圧電変換

磁歪変換

バイオ光電変換

熱→電力 未活用排熱、地熱、太陽熱等マイクロ発電

歪み←→電力 アクチュエーター、小型センサー、マイクロ発電

歪み←→磁界 アクチュエーター、マイクロロボット

バイオセンサー、バイオコンピュータ

太陽光発電モジュール効率 22%

耐久 30年30%40年

40%40年

太陽光発電■ 結晶シリコン、薄膜シリコン、色素増感型など複数の方式の開発当面続き、発電効率、生産性、耐久性等の観点から選択されていく■ 多様な用途・設置場所・利用形態に対応するために、モジュールの多様化(軽量、フレキシブル、両面受光、インバータ内蔵など)、多機能化(遮音性、断熱性、防眩性等の機能

付加)、建材・部材との一体化等の付加価値増加に向けた技術開発も必要■ 効率、設備費、工事費、耐久性、適用性の改善、系統連係の規格化、連係機器の高性能化・低価格化によるトータルな経済性の向上

低コスト化、高効率化

フレキシブル太陽電池、シースルー太陽電池 太陽電池ペンキ設置容易化

(曲面、窓) (あらゆるところ)

技術以外の要因● 導入補助事業などの普及施策

薄膜型結晶型 超高効率新型色素増感型、有機薄膜型等

光→電子

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民-16

2100205020302000

エネルギーマネージメント■ 家庭、業務のニーズをより良い品質で満たし、かつ省エネを実現するために、機器の個別の制御を越えたエネルギーマネージメント(HEMS・BEMS)が導入され、さらに地域的に

統合されTEMSが形成■ 太陽光発電、バイオマス発電等によるエネルギー供給、エネルギー貯蔵により需要とのマッチングを図り、さらには系統との連携制御によりトータルな省エネを達成

HEMS・BEMS■ HEMSは2030年頃までに全世帯に導入。需要予測、エネルギーマネージメントによる省エネ効果10%■ 創エネ機器等とのネットワーク化による連携制御による省エネ効果15%■ BEMSは2030年頃までに事務所ビルの半数以上(大規模事務所ビル中心)に導入

HEMSモニタリング 需要予測ネットワーク化による連携制御 (ライフスタイルや快適性を取り入れた制御)

HEMSによる省エネ効果 10%

通信プロトコルの高度化

70% 80%

通信技術

15%

BEMS需要予測ネットワーク化による連携制御 (ライフスタイルや快適性を取り入れた制御)

適制御技術

需要予測技術

モニタリング

導入延床面積 60%

創エネとの連携 電力貯蔵との連携

モニタリングの高度化(使用履歴)

学習機能による予測(時間・暦・気温)

人の動きに対応(人感センサー等) (個人の好み(嗜好)に対応)

光LAN・ワイヤレス 通信プロトコルの統合

技術以外の要因● 家電製品・業務用機器の規格化、システムの標準化● ESCO事業の普及、ESP(エネルギー・サービス・プロバイザー)等の省エネビジネスの発展

全世帯に導入

民-17

2100205020302000

TEMS■ 太陽光発電などの分散電源の導入促進などを目的に、ローカル・エネルギー・ネットワーク(LEN)が形成される。■ BEMS・HEMSの普及にあわせ、地域のエネルギーマネージメント(TEMS)が始まる。■ 再生可能エネルギー導入に伴い、エネルギー貯蔵を含めたエネルギーマネージメントが行われる。■ TEMSが普及し、系統の電圧・周波数制御を分担する。

技術以外の要因● エネルギー特区、規制緩和などの施策による導入促進● ESCO事業の普及、ESP(エネルギー・サービス・プロバイザー)等の省エネビジネスの発展

熱の相互融通技術

TEMSエネルギー融通 ネットワーク化による連携制御

電気・水素の相互融通技術

需要予測技術需要アグリゲート技術

系統の制御機能分担ゲートウェイ

データ収集・分析、事故時開閉 常時開閉

HEMS・BEMSとの連携 エネルギー貯蔵との連携制御 系統との連携制御

通信プロトコルの高度化通信技術

光LAN・ワイヤレス 通信プロトコルの統合

地域熱(温水)相互利用システム熱相互利用システム(戸建住宅、集合住宅)

エネルギー貯蔵・ネットワーク■ 蓄電などのエネルギー貯蔵、セキュリティ向上、潮流変動抑制などの要件を持つ場所から導入が始まり、再生可能エネルギーの普及に伴い昼夜間の出力変動の対応などのた

めに導入が広まる (家庭の場合昼夜間での蓄電必要量は20kWh/世帯程度)■ 再生可能エネルギーの普及の進展により蓄電による貯蔵可能量を超えた分について、水素などによる貯蔵が開始され、水素利用技術も同時に実用化される■ 創エネの導入に伴い、貯蔵も含めたネットワークが形成される

エネルギー貯蔵・ネットワーク(電気・熱・水素)

リチウム電池 新型二次電池、蓄熱 ローカル・エネルギー・ネットワーク(LEN)

分散エネルギー貯蔵水素利用燃料電池

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民-18

民生分野における各エネルギー技術の寄与度

わが国における2000年度の民生部門の 終エネルギー消費は、全 終エネルギー消費の約1/4を占め、家庭と業務は各々その約1/2を占めている。この民生部門において、今回作成したエネルギー分野のロードマップにおける各分野の技術が技術スペックの実現に寄与する大きさは以下のように想定される。

家庭一世帯あたりの二次エネルギー消費は空調(暖房・冷房)で1/4、給湯で1/4、残りが照明および動力その他である。近年、暖房便座などにより電力消費量が伸びたように、今後もより快適な生活を志向する結果、何ら対策なしで推移した自然体(BaU)シナリオにおける家庭のエネルギー消費の合計量は、各用途で多少の伸び率の大小はあるものの、継続的に伸びるものと考えられる。

業務のエネルギー消費状況は、事務所、学校、飲食店、小売店、病院、ホテルなど業態により大きく異なり、省エネルギーの観点からは、病院、ホテルのような一定の熱需要を持つ需要とそれ以外とで取り組みが異なる。

この状況において、

(1) 空調は、家庭・業務とも、より広い面積をより長時間にわたり、より快適な室内環境を保つために、BaU的なエネルギー消費量は増大する可能性が高いが、材料や設計・診断技術の進歩による建物の断熱性能の向上および空調機器の性能の向上により、2050年に想定されるエネルギー消費量を約50%削減するために重要度の高い分野となる。

(2) 給湯は、給湯量が漸増すると想定されるが、高効率ヒートポンプなどの省エネルギー機器の導入、コジェネや太陽熱などとの組み合わせにより、大きな省エネルギー効果が期待される分野である。

(3) 照明は、全体に占める割合は小さいが、技術開発により大きな割合の省エネルギーが見込まれる分野である。

(4) 厨房および動力その他は、テレビの大画面化に代表される従来機器の高級化、高齢化・健康重視・情報機器の常時使用、調理に代表される電化の進展などのライフスタイルの変化に合わせ、新たな様々な機器などが導入され、今後 も大きなエネルギー消費の伸びが想定される。テレビ等の電気機器の高効率化、待機電力の 小化のための技術など、この分野の重要性は大きい。

(5) 高効率デバイス(電力変換等)は、電気製品の電源、制御などに用いられ、より効率的な運転制御とそれ自体の損失低減により、様々な分野に共通して重要な技術である。

(6) 創エネルギー分野において、 も広く適用可能な技術は太陽光発電であり、セル自体の開発に加え、様々な建物、施設あるいは空きスペースに本来の効用を損なわずに安価かつ広く導入するため、建材、施工技術などの役割は大きい。バイオマス、風力など他の再生可能エネルギーや熱電変換等の未利用エネルギーに関しても、住宅や業務用ビルのそれぞれの特色に応じて導入を図る必要がある。

(7) エネルギーマネジメント技術は、個別の機器の省エネに加えて自動消灯や空調の適性温度管理などを通して当面一定の省エネ効果が期待される。創エネの進展により再生可能エネルギーの導入量が増加し、省エネの進展と相まって自立的な運用が世帯、ビル単位で可能になる段階では、HEMS・BEMSによる蓄電も含めた 適運用が重要となる。再生可能エネルギー普及が更に進んだ段階では、エネルギーの相互融通、貯蔵、エネルギー供給の品質維持(電力の場合の電圧、周波数など)にTEMSは重要な役割を果たす。

参考として、図に3人世帯での2050年における省・創エネの導入の試算例を示す。

民-19

家庭部門 2050年世帯あたり用途別エネルギー消費内訳試算例

戸建て、東京、3人/世帯想定 民生WG試算

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

2000年(参照)

2050年(基準)

4.5kW太陽電池導入

エネ

ルギ

ー消

費量

(2000年

比)

動力、その他

厨房

給湯

空調

照明BaU的増エネ

高断熱化

空調・給湯器効率向上

家電効率向上

創エネ

※厨房はコンロの他、冷蔵庫、電子レンジ、換気扇等の厨房における機器を含む

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運輸分野ロードマップ(資料2-2)

運輸

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運-2

20%削減必要エネルギー量※(運輸全体) 70%削減50%削減

10~20%削減航空機・船舶・鉄道

必要エネルギー量※30~50%削減20~35%削減

必要エネルギー量※電化・水素化率CO2原単位

0%160 g-CO2/km (1倍)

30%削減1%以上

100 g-CO2/km(2/3倍)

60%削減40%

50 g-CO2/km(1/3倍)

80%削減100%

0 g-CO2/km

自動車

2100205020302000

効用(人・km、トン・km) 1.5倍 2.1倍1倍

②各ケースの技術スペック■効用(人・km、トン・km)は、GDPに比例して増大。自動車、航空機、船舶、鉄道のシェアは変わらないと仮定。■ケースA(石炭等の化石資源とCO2回収・隔離の 大利用ケース)およびケースB(原子力の 大利用ケース)

2050年までに現在の石油から合成燃料主体に移行。 2100年には電化・水素化率100%。■ケースC(再生可能エネルギーの 大利用と究極の省エネルギー実施ケース)

環境制約条件と需要分野間の省エネルギー可能性のバランスを考慮し、運輸分野では2100年に効用あたり70%の省エネルギーを目指す。さらに、輸送機関別の省エネ可能性を考慮して、自動車は2100年に80%の省エネを技術スペックとして設定。この技術スペックを実現するためには電化・水素化率100%が必要。

⑤各時点の個別条件を満たすために求められる技術スペック、時期等をロードマップとして整理。

結果的に、1/10以上を達成

運輸分野の技術スペックの考え方

③ケースCの2050年技術スペック①の共通条件、需要分野間の省エネルギー可能性のバランスとともに2100年技術スペックからのバックキャストを考慮し、

運輸分野全体および輸送機関別の省エネルギー技術スペックを設定。自動車の省エネルギー技術スペック実現に必要な電化・水素化率を設定。

④2100年、2050年の条件を満たす個別条件から、バックキャストによって2030年の個別条件を設定。(例)2050年で自動車の40%程度が電化・水素化するなら、2030年には市場で競合できる程度に普及開始が求められる。

①ケース、分野共通の条件■資源制約の条件 :想定した石油ピーク(2050年)、天然ガスピーク(2100年)までに、他のエネルギー源と互換可能な状

態とする■環境制約の条件 :CO2排出量/GDPを、2050年に1/3、2100年に1/10以下とする

※GDPに比例して効用が増加した場合を基準にして、転換分野からの供給が必要なエネルギー(単位当たり)の削減量

運-3

運輸分野の技術スペック実現のための技術群の考え方

技術スペック実現のためのパスは「省エネルギー」と「燃料転換」が主要な柱。省エネルギーには機器単体(車両、船舶、航空機)の省エネルギーと、交通システム全体の連携による省エネルギーとがある。

機器単体の省エネルギーでは、i) 駆動・推進システムの高効率化、および、ii)移動体(車体、船体、機体)の軽量化が重要。

燃料転換は、i) 石油消費削減のため天然ガスや石炭を原料とする合成燃料の導入、ii) カーボンニュートラルなバイオマス由来燃料の導入、そして究極的には、iii) 使用時にCO2を排出しない水素または電気への転換である。水素・電気への転換は、駆動・推進システムの変更も伴うため、駆動・推進システムの高効率化と表裏一体の関係にある。水素と電気の比較では、エネルギー貯蔵密度と補給速度の点で水素の方が有利であり、近距離用自動車と鉄道以外は水素の利用を想定。水素化・電化が難しい用途は、2100年時点でも炭化水素系燃料の使用を想定。

①自動車

■2100年のエネルギー需要を80%低減を達成するために、全ての自動車を効率の高い燃料電池ハイブリッド車(燃料は水素)や電気自動車に代替。その結果、電化・水素化率100%となり、車両からのCO2排出原単位はゼロになる。

■2050年にエネルギー需要を60%低減するため、燃料電池ハイブリッド車と電気自動車が合計で4割程度のシェア(ストックベース)を確保するとともに、残りの大部分は内燃機関ハイブリッド車となっていることが必要。

■自動車の主流は、「内燃機関従来車→内燃機関ハイブリッド車→燃料電池ハイブリッド車」と移り替わり、電気自動車は短距離走行が主体の小型車を中心に使用される。内燃機関用の燃料は、2050年までに石油から合成液体燃料主体に移行する。移行の過程では、石油系燃料と合成燃料が混合利用される。

②船舶、航空機、鉄道■2100年までに船舶40%、航空機50%、鉄道30%のエネルギー消費削減を目指す。■船舶のうち内航船は軽量化、動力効率改善などで省エネを進め、2050年以降、水素化による脱炭素化に向かう。■外航船は海外のエネルギーインフラ等の問題もあり2100年時点でも炭化水素系燃料に依存するが、省エネやバイオマス

利用等を推進し、化石燃料依存は極力抑制。■航空機は、水素・電気への転換が相対的に難しいため2100年時点でも炭化水素系燃料を使用。■元来効率の良い輸送であり既に電化率の高い鉄道は、電化・素化率100%を前提に効率改善を徹底。

③交通システム■交通流制御、無人運転(効率化・軽量化)といった既往システムの向上によりエネルギー効率の向上を進めることが第一。■これに加え、自動車主体に陥りがちな交通に関し、鉄道・船舶へのシフト・組み合わせによる効率化を推進する(根本的な

モーダルシフト)。これには設備機器の開発に加え社会システムの大きな改編が必要であるが、本検討では純粋に技術的な解決課題を対象とし、社会システムの改編によるエネルギー消費改善は含まない。

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運-4

20%削減転換分野からの供給が必要な

必要エネルギー量※(運輸全体)70%削減50%削減

10~20%削減航空機・船舶・鉄道

必要エネルギー量※30~50%削減20~35%削減

必要エネルギー量※電化・水素化率CO2原単位

0%160 g-CO2/km (1倍)

30%削減1%以上

100 g-CO2/km(2/3倍)

60%削減40%

50 g-CO2/km(1/3倍)

80%削減100%

0 g-CO2/km

自動車

2100205020302000

省エネ

燃料転換

バイオマス燃料(混合)

合成燃料(混合)

自動車

燃料電池/蓄電池エンジン/モータ(ハイブリッドシステム)

圧縮水素 → 液体水素、水素吸蔵材料

蓄電池、キャパシタ等

モータ→

0 g-CO2/km(自動車)

ケーブル接続充電 → ケーブルレス非接触充電

バッチ輸送 → 高効率オンサイト製造 → パイプライン輸送(局所、地域)

航空機

船 舶

鉄 道

軽量化による省エネ

域内用途の超軽量小型車

[内航船] 水素駆動化・超電動駆動化[外航船] 大型化、低速運行システム

運輸システム連携による省エネ

(石油)→

[水素貯蔵]

[電力貯蔵]

軽量化による省エネ

(エンジン) →

エンジン効率向上

[液体燃料]

ハイブリッド駆動

効用(人・km、トン・km) 1.5倍 2.1倍1倍

[水素供給]

[電力供給]

運輸全体

※GDPに比例して効用が増加した場合を基準にして、転換分野からの供給が必要なエネルギー(単位当たり)の削減量

運輸

運-5

2100205020302000

副生水素バッチ輸送 オンサイト水電解 パイプライン輸送

蓄電リチウム電池 リチウム電池または新型蓄電装置

電気自動車(近距離用)電池・車体の軽量化、モータ・電力変換効率向上 太陽電池による補助給電

燃料電池ハイブリッド車

水素貯蔵圧縮、液化、貯蔵材料(無機、合金、炭素、有機)

太陽電池による補助給電FC効率向上、蓄水素部・車体の軽量化、モータ・電力変換効率向上

内燃機関ハイブリッド車

※燃費は現状内燃機関比を表す(軽量化等の効果含む)

軽量化

空調省エネ

超高張力鋼、高張力アルミニウム、マグネシウム、チタン、複合材

ヒートポンプ効率向上、断熱、遮光

自動車共通技術

バイオマス燃料

合成液体燃料

電気供給

オンサイト燃料改質

ケーブルレス自動非接触式(手動ケーブル接続式)

燃費 1.5倍 2倍

燃費 3倍 4倍 5倍

燃費 4倍 5倍 6倍

航空機

船舶

鉄道

[内航船] 軽量化 電動化・プロペラ配置の分散 適化・超電導モータ

[外航船] 大型化、航行速度 適化

水素燃料電池船

機体高性能化、ジェットエンジン効率向上

(非電化区間) ディーゼル・電池ハイブリッド車 水素FC・電池ハイブリッド車

軽量化、モータ・電力変換効率向上、架線・電池ハイブリッド化

GTL CTL

概要

燃費 2倍

水素供給

自動車

超電導モータ

車体軽量化、エンジン効率向上、モータ・電力変換効率向上、システム制御高度化 (燃料電池ハイブリッド車に移行)

エタノールまたはETBE、BDF BTL

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運-6

2100205020302000

自動車の効率向上■ 自動車による「効用(≒台数×移動距離)」がGDPに比例して増大。■ 必要エネルギー原単位を改善するため、動力の効率向上、軽量化等による省エネが必要。■ 将来のエネルギー原単位改善、CO2原単位改善のためには、効率が高く走行時にCO2を排出しない燃料電池自動車または電気自動車が主流になる必要がある。

内燃機関ハイブリッド車■ 乗用車、小型トラック等の域内走行主体の自動車はハイブリッドシステム化が進み、2050年頃までに非ハイブリッド車はなくなる。■ 大型トラック等の遠距離走行車には、内燃機関ベースのハイブリッドシステムはメリットが小さいためハイブリッド化はほとんど進まない(従来車から直接、燃料電池車に移行)。■ 従来車、ハイブリッド車ともに、軽量化等による燃費向上がある。■ 21世紀末までに内燃機関自動車全体がなくなる。■ HCCI(予混合圧縮着火)エンジンが実用化された場合、3種類共存でなく2種類(または1種類)に統合される可能がある。

車体軽量化、エンジン効率向上、モータ・電力変換効率向上、システム制御高度化

燃費 1.5倍 2倍

内燃機関ハイブリッド車

内燃機関従来車

ガソリンエンジン

ハイブリッド用電池ニッケル水素 Liイオン、キャパシタ

ディーゼルエンジン

内燃機関従来車

乗用車

大型トラック

HCCIエンジン

排気対策

入出力パワー密度 1 kW/kg 2 kW/kg

※燃費は現状内燃機関との比(軽量化等による効果も含む)

燃費 1.0倍 1.3倍

車体軽量化、エンジン効率向上

燃費 1.0倍 1.1倍

(燃料電池ハイブリッド車に移行)

(燃料電池ハイブリッド車へも適用)

技術以外の要因● トップランナー方式等の燃費基準● 低燃費車に対する課税優遇、補助金

エンジン 効率向上

乗用車への適用拡大

(燃料電池ハイブリッド車に移行)

5 kW/kg

車体軽量化

運-7

2100205020302000

内燃機関自動車用燃料■ 内燃機関用の燃料は、2050年までに石油主体から合成燃料主体に移行する。移行の過程では、石油系燃料と合成燃料との混合利用を想定。■ エタノール(またはETBE)や植物油は比較的早期に導入される可能性があるが、供給量の点で制約があり、燃料の主成分とはならない。■ FT合成油は、まず軽油混合の形で導入される可能性がある。FT合成油をガソリンエンジンに用いるには、高オクタン価基材の製造技術開発が必要で導入時期はディーゼルエ

ンジン用より遅い。天然ガス、石炭等を原料とした合成ガスからのメタノール経由の合成ガソリンも利用される可能性がある。■ HCCIエンジン用燃料の仕様は現時点では不明。 エンジンの統合と関連して、燃料も2種類(または1種類)に統合される可能性がある。■ その他、DME、CNG、LPG等の利用も石油代替およびCO2排出削減に寄与する。

技術以外の要因● 新燃料に対する課税優遇● 燃料規格の改定、排ガス規制との整合

エタノールまたはETBE

ガソリンエンジン用

植物油(BDF)

ディーゼルエンジン用

HCCIエンジン用新燃料

HCCIエンジン用

天然ガス(GTL) バイオマス(BTL)石炭(CTL)

(軽油と混合利用)

(ガソリンと混合利用)

天然ガス(GTL) バイオマス(BTL)石炭(CTL)

再生可能エネルギーとのハイブリッド製造技術

高オクタン価基材製造技術 再生可能エネルギーとのハイブリッド製造技術

合成ガソリン(メタノール経由)

高効率製造技術

合成軽油(FT合成)

高効率製造技術

合成ガソリン(FT合成経由)

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運-8

2100205020302000

燃料電池ハイブリッド車■ 燃費は、 ガソリン(軽油)換算した単位水素消費量当たりの走行距離の比。水素タンク重量は、航続距離500kmを確保するのに必要な重量。■ 車載水素貯蔵技術の性能向上が も重要な課題。燃料電池の効率向上や車体軽量化等による燃費向上も水素タンク重量減に貢献。大型トラックに適用するには、相当に高性

能な水素貯蔵技術が求められる。■ 水素供給は、副生水素や炭化水素のオンサイト改質から始まり、化石燃料の価格上昇とともにオンサイト水電解が主流になる。水素消費量が増えて十分な需要密度が得られ

る地域では、集中製造+パイプライン輸送も行われると想定。

※燃費は現状内燃機関との比(軽量化等による効果も含む)

乗用車

大型トラック

燃費(現状ガソリン車比) 3倍水素タンク重量 170 kg

体積 300 L

太陽電池による補助給電FC効率向上、蓄水素部・車体の軽量化、モータ・電力変換効率向上

4倍30 kg40 L

5倍20 kg30 L

3.5倍50 kg50 L

燃費(現状ディーゼル車比) 1.2倍水素タンク重量 4.2 t

体積 5,000 L

1.5倍500 kg700 L

2倍350 kg500 L

モータ

燃料電池

永久磁石式同期機 インホイールモータ

効率 50%出力密度 1 kW/L

55%数kW/L

耐久性向上、抵抗低減、白金代替触媒、使用温度範囲拡大

高効率電力変換

(誘導機)

共通技術

60%

定格点効率 90% 95%

軽量化車両重量 30%減 50%減

空調省エネ空調エネルギー 30%減 50%減

超高張力鋼、高張力アルミニウム、マグネシウム、チタン、複合材

ヒートポンプ効率向上、断熱、遮光

太陽電池ルーフセル効率30%

定格点効率 95%出力密度 1 W/cm3

99%10 W/cm3 100 W/cm3 150 W/cm3

超電導モータ(大型車)

SiC GaN、AlN等 CNTトランジスタ45nmプロセス

運-9

水素貯蔵技術

技術以外の要因● 公共投資による水素供給ネットワーク整備、公共的車両への積極的導入、FC車特区● FC車および水素に対するインセンティブ(水素に対する課税優遇、FC車に対する課税優遇、駐車場での優遇、乗り入れ規制緩和、等)● 車両および燃料に関する規格、水素充填設備に関する規格、技術基準(国際標準含む)の整備● メンテナンス産業の育成、FC車特有素材のリサイクル体制整備

水素の供給が可能なスタンドの割合 5% 60% 100%

オンサイト水素製造・供給

水素ステーション

オフサイト水素製造・供給副生水素バッチ輸送

炭化水素燃料改質 水電気分解

パイプライン輸送水素製造・供給技術

50%1~10 t/日

60%10 t/日

70%液化技術

ガス冷凍-磁気冷凍ハイブリッド

%カルノー 30%冷凍能力 1 t/日

磁気冷凍

有機系7 wt%

水素供給技術

断熱タンク(車載)

貯蔵材料~8 wt%

液化水素

無機系(Mg、Li、N)

圧縮/合金系

低温/炭素

2 wt%

40 g/L、6 wt%

動作温度低温化、触媒開発、脱水素反応器 適化

BOG 5~7%/日放出ゼロ 0.5~1日間

0.5%/日14日間

<0.1%/日30日間

9 wt% 12 wt% 15 wt%

高圧容器化 革新的断熱材・タンク材料の開発

貯蔵密度 3 wt%, 17g/ L充填時間 5 分

9 wt%, 80g/L2 分

12 wt%, 95 g/L 15 wt%, 110 g/L※貯蔵密度はシステム貯蔵密度

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運-10

2100205020302000

電気自動車■ 燃費は、ガソリン(軽油)換算した単位充電電力量当たりの走行距離の比。蓄電装置重量は、航続距離200kmを確保するのに必要な重量。■ 蓄電装置の電力貯蔵密度向上と耐用年数の伸長が 重要課題。車体軽量化等による燃費向上も蓄電装置の重量減に貢献。小さくて軽い車の方が成立しやすい。■ モータ・電力変換技術は、一定性能の実用技術が確立済み。車両開発や充電設備・補助電源の新技術開発は、蓄電技術の見通しが立ってから始める。■ 200km以上の連続走行ニーズには、小型電源(数kW)を必要時だけ追加車載して対応することも可能。■ プラグイン・ハイブリッド車(燃料補給も充電も行い充電電力を優先使用、補足資料3参照)が純電気自動車に先立って実用化される可能性あり。

※燃費は現状内燃機関との比(軽量化等による効果も含む)

乗用車(近距離用)電池・車体の軽量化、モータ・電力変換効率向上 太陽電池による補助給電

5倍100 kg

6倍70 kg

小型トラック電池・車体の軽量化、モータ・電力変換効率向上

4倍300 kg

4.5倍220 kg

燃費(現状ガソリン車比) 4倍蓄電装置重量 200 kg

燃費(現状ディーゼル車比) 3.5倍蓄電装置重量 600 kg

モータ

高効率電力変換

(誘導機)

定格点効率 90% 95%

共通技術

軽量化 車両重量 30%減 50%減

空調省エネ空調エネルギー 30%減 50%減

超高張力鋼、高張力アルミニウム、マグネシウム、チタン、複合材

ヒートポンプ効率向上、断熱、遮光

太陽電池による補助給電

永久磁石式同期機 インホイールモータ

定格点効率 95%出力密度 1 W/cm3

99%10 W/cm3 100 W/cm3 150 W/cm3

SiC GaN、AlN等 CNTトランジスタ45nmプロセス

運-11

技術以外の要因● 公共投資による充電インフラ整備、公共的車両への積極的導入、電気自動車特区● 電気自動車に対するインセンティブ(自動車用電力に対する課税優遇、電気自動車に対する課税優遇、駐車場での優遇、乗り入れ規制緩和、等)● 車両に関する規格、充電システムの規格、技術基準(国際標準含む)の整備● メンテナンス産業の育成、電気自動車特有素材のリサイクル体制整備

車庫(自家用)

駐車場(共同用)

電気供給

長距離走行用追加電源水素燃料電池

ケーブルレス自動非接触式(手動ケーブル接続式)

太陽電池ルーフ

蓄電技術リチウム電池

リチウム電池または他の新型蓄電装置

200 Wh/kg10年

250 Wh/kg 300 Wh/kg貯蔵密度 150 Wh/kg寿命 5年

セル効率30%

ケーブルレス自動非接触式

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運-12

2100205020302000

自動車の軽量化■ 材料の軽量化(高強度化)および乗用車の小型車シフトにより車両を軽量化

技術以外の要因● 小型車シフトに対するインセンティブ、ユーザー意識

車両の軽量化車両重量 ▲20% ▲30% ▲50%

軽量化材料■ 現状もそうであるように、複数の材料が適材適所に使用されていく。

超高張力鋼

高張力アルミニウム

マグネシウム

チタン

強度 100 kgf/m2

低コスト化、異種材料間の接合技術、リサイクル技術、安全設計技術、変形破壊挙動解明・シミュレーション技術各材料共通

300 kgf/m2 500 kgf/m2 700 kgf/m2

50~60 kgf/m2 150 kgf/m2 200 kgf/m2 250 kgf/m2

50 kgf/m2 150 kgf/m2 200 kgf/m2 250 kgf/m2

複合材(CFRP等)高速成形技術 パネル部材への適用→構造部材への適用拡大

150 kgf/m2 250 kgf/m2 270 kgf/m2 300 kgf/m2

120 kgf/m2 300 kgf/m2 400 kgf/m2 500 kgf/m2

乗用車の小型車シフト

運-13

2100205020302000

航空機■ 省エネルギーのための主要技術は、機体の高度化とエンジン効率向上。両方併せて50%減が見込まれる。■ ジェット燃料は、現在の石油系から将来は合成液体燃料に替わる。燃料インフラの追加整備を 小限に抑えるため、合成液体燃料は石油系燃料と任意の比率で混合使用でき

ることが望ましい。■ 将来、自動車・船舶等での水素利用が一般化した場合には、航空機における水素利用の可能性も検討。

技術以外の要因● 徹底した安全性の追求

エネルギー消費 ▲20% ▲35% ▲50%

機体の高性能化

ジェットエンジンの効率向上

合成液体燃料(天然ガス、石炭、バイオマス等から製造、石油系燃料と混合利用)

エンジン用代替燃料

機体構造の軽量化・空力効率向上

各要素の性能改善、制御技術の向上、革新材料適用等

エンジン形態の改良(超高バイパス比、インテリジェントエンジン等)

(エネルギー消費への寄与分) ▲5% ▲10% ▲15%

(エネルギー消費への寄与分) ▲15% ▲25% ▲35%

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運-14

2100205020302000

船舶■ 各種省エネルギー技術を総合し、2100年までに40%の省エネルギーを目指す。■ 内航船は、車載用燃料電池、水素など国内インフラを活用できるため、水素駆動・電動となる(大型水素ディーゼルの総合効率が優れているため、小型船は電動、中大型船は

水素内燃機関船がそれぞれ主流)。これらは陸運の機器開発、インフラ開発に追随する形でシフトが進む。船の耐用年数が長いため移行期間も長い(20年以上)。■ 外航船は帰路の問題もあり化石燃料もしくは合成油による推進が基調。幹線は数十万トン級の超大型船によるハブ間輸送が主柱を占め、ローカルネットワークに引き継がれる。

大型船への混載集中を合理化できる海運システムの発達が必須。■ なお、現在相当の割合を占める化石燃料の輸入が将来減少するのであれば、海運需要が半減するため、このセクターでのエネルギー消費、CO2排出も低下。しかしながら、バ

イオマスの大量輸入の有無による。

エネルギー消費電化・水素化率

▲10%0%

▲20%0%

▲40%30%

小型船舶の軽量化

プロペラ配置の分散 適化・ユニット標準化

複数動力 適制御

主として内航船

水素利用

原子力船(原子力 大利用ケース)

多様化石燃料利用

航行速度 適化

主として外航船

貨物船大型化

水素燃料電池船

超電導モータ

電動化超電導モータ

船体形状の 適化

電動化

運-15

技術以外の要因● ハブ港主体の海運システム● 港湾と鉄道・道路等の一体化整備● 水素機器の標準化(自動車用との共用化)

エンジン用代替燃料

水素

燃料

原子燃料(原子力 大利用ケース)

海運システム

ハブ港ネットワーク

陸運との連携

大量・定常・低速運行管理

合成液体燃料(天然ガス、石炭、バイオマス等から製造、石油系燃料と混合利用)

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運-16

2100205020302000

鉄道■ エネルギー消費の約9割を占める電化区間では、電車のハイブリッドシステム化(蓄電装置搭載)により、回生電力の再利用率が向上。軽量化、モータ・電力変換器の改善と併

せた省エネ率は2100年までに30%を期待。■ 非電化区間では、ディーゼル車両のハイブリッド化とFCハイブリッド車両の導入でエネルギー消費を削減。FCハイブリッド車両の導入は、水素FC自動車の実用化の後になる。

単体の効率向上は大きいが、日本では非電化区間が少ないため量的効果は小さい。■ FCハイブリッド車両の導入により電化・水素化率は100%となる。

エネルギー消費電化・水素化率

▲10%90%

▲20%95%

▲30%100%

技術以外の要因● 高速化ニーズの動向(高速リニアモーターカーは増エネ要因)● 水素機器の標準化(自動車用との共用化)

車体軽量化

ディーゼル・電池ハイブリッド車

水素FC・電池ハイブリッド車

モータ・電力変換器の損失低減

架線・電池ハイブリッド化(回生蓄電付加)

共 通

電化区間

非電化区間

永久磁石モータ、直接駆動 高効率電力変換素子、超電導変圧器、超電導モータ

エンジン用代替燃料

エネルギー消費率 ▲30~40%

エネルギー消費率 ▲40~50%

エネルギー消費率 ▲10%

エネルギー消費率 ▲10%

水素

合成液体燃料(天然ガス、石炭、バイオマス等から製造、石油系燃料と混合利用)

運-17

交通システム体系

■ 自動車、鉄道、船舶、航空機といった個別の輸送機器の高度化に留まらず、現在とは異なる交通体系の実現によりエネルギー効率の優れた社会を実現する。

■ カテゴリー1については技術スペックのエネルギー消費削減の内数、カテゴリー2については技術スペックとするエネルギー消費削減の外数(追加的な手段)として位置づけ。

カテゴリー1: 陸海空それぞれの輸送体系における社会システム的な対応

【例】

自動車等の無人運転により安全設備の簡易化も含めドラスティックな軽量化を実現

ITSをさらに徹底し、域内道路交通流の 適制御の実現によりエネルギー効率、時間効率を改善

低速ではあっても定常化によるルーチン的輸送の効率化

低騒音技術等に基づく深夜輸送などにより交通流密度低減、インフラ設備の軽便化

等々

カテゴリー2:異なる運輸体系の長所・短所を補完する形で的確に組み合わせることで実現する総体としてのエネルギー効率向上

【例】

遠距離輸送を担う船舶、鉄道、大型トラックと域内輸送の合理的な組み合わせ(モーダルシフト、ハイブリッド輸送)

港湾、鉄道ターミナル等の結節点におけるコンテナ・パッケージの24時間自動仕分けシステム

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運-18

1.運輸分野詳細ロードマップ作成の手順

運輸分野2100年省エネ技術スペック

自動車2100年省エネ技術スペック

性能マイルストーン2100年主力技術

運輸分野2050年省エネ技術スペック

自動車2050年省エネ技術スペック

現状性能

技術スペック実現に必要なシェア構成

船、飛行機、鉄道船、飛行機、鉄道

ブリッジング技術

既存技術

性能マイルストーン

性能マイルストーン

現状性能

現状性能

自動車共通技術 性能マイルストーン

現状性能

2030年シェア

技術スペック実現のための技術構成要求性能

ロードマップ

バックキャスト

水素需要

電力需要

燃料需要

水素需要

電力需要

燃料需要

補足説明

運-19

2.自動車の車種別のシェアと二次エネルギー消費構成の想定イメージ

遠距離走行車(大型トラック等) 域内走行車(乗用車、小型トラック等)

車種シェア

従来

FCハイブリッド

0%

20%

40%

60%

80%

100%

2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100車種シェア

従来 内燃機関ハイブリッド FCハイブリッド/

電気自動車

0%

20%

40%

60%

80%

100%

2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100

二次エネルギー消費

水素   合成燃料バイオマス燃料

石油

0

100

200

300

400

500

600

2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100

[10^1

2 k

cal

]

二次エネルギー消費量

水素/電力   合成燃料バイオマス燃料

石油

0

100

200

300

400

500

600

2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100

[10^1

2 k

cal

]

Page 27: 分野別ロードマップ概要(資料1)...概-1 以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。 分野毎に2枚構成。1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降)

運-20

3.エンジン車、電気自動車と各種ハイブリッド車の位置づけ

エンジン単独

マイルド HB

パラレル HB

シリーズパラレルHB

シリーズ HB(燃料電池HB)

レンジエクステンダー付EV

車輪駆動力

モータ

エンジン

補給エネルギー燃料 電気

プラグインHB

純EV

電池容量

小←

→ 大

■ エンジンとモータ、燃料と電気を組み合わせたのがハイブリッド(HB)自動車であるが、組合せ方によって様々なハイブリッド自動車が考案され、実用化されている。縦軸に車輪駆動力(直接駆動力が何から得られているか)、横軸に補給エネルギー(自動車に補給するエネルギーは何か)をとって、種々のハイブリッド自動車とエンジン単独車、純電気自動車(純EV)を位置づけた。

■ エンジン単独車と純EVは両極端の対角に位置する。

■ パラレルHBにおいて、モータは動力面では補助の役割であるが、回生制動を可能にるすことで燃費向上に寄与する。シリーズパラレルHBはトヨタのプリウスが代表的であり、パラレルHBに比べてモータのみで車輪を駆動するモードがあることが特徴である。

■ シリーズHBは、エンジン動力を全て電力に変え、車輪を駆動するのはモータだけになる。燃料電池HB車も、ここに位置づけられる。ここまでは、自動車に補給されるエネルギーは燃料のみである。

■ 近、米国で提案されているのがプラグインHBで、これはシリーズパラレルHBやパラレルHBをベースに、搭載している電池を増強した上で、それを商用電力で充電して走行用エネルギーの足しにする考え方である。一般に燃料より電力の方が安価であるので、電力を優先的に使えば走行費用節約にもなる。

■ 純EVに小型発電機を搭載して航続距離を伸ばすのがレンジエクステンダーであり、これは純EVより少し左に位置づけられる。

■ エンジン単独車から純EVに向けて、ほぼこの順番で車両効率が高くなるが、一方で必要な電池容量が増えて車両コストも高くなる。

運-21

ガソリン

発熱量1) 10,150 kcal/kg

貯蔵密度2),3),4) 17g/L 110g/L 110g/L 240Wh/L 480Wh/L 700g/L

タンク1L当たり貯蔵エネルギー(kcal/L-tank)

491 3,179 3,179 206 413 7,105

ガソリンタンクに対する比

0.05 0.35 0.35 0.02 0.05 1

自動車燃費倍率 6) 3 5 2 4 6 1

ガソリンタンクに対する比(燃費倍率を考慮)

0.16 1.74 0.70 0.09 0.27 1

水素

28,900 kcal/kg

電気

860 kcal/kWh

4.水素、電力、液体燃料のエネルギー貯蔵密度の比較

(注)1) 燃料の発熱量は低位発熱量基準2) 水素と電気の貯蔵密度はロードマップ記載の現状値と 大値3) ガソリンの貯蔵密度は推定値4) 電気の体積ベース貯蔵密度は電池の比重を1.6として算出5) タンクと燃料の合計重量6) 水素の燃費倍率は、燃料電池自動車のガソリン(軽油)換算し

た単位水素消費量当たりの走行距離の比(低位発熱量換算)電気の燃費倍率は、電気自動車のガソリン換算した単位充電電力量当たりの走行距離の比

<解説>

①重量ベースの比較

発熱量ベースで比較すると、水素の貯蔵密度3wt%はガソリンタンクの約1/10、15wt%まで向上すると約1/2になる。燃料電池自動車では燃費が良いことを加味すると、3wt%はガソリンタンクの約3割に相当する。貯蔵密度15wt%で燃費倍率が2倍(大型トラックでの想定値)のとき、ほぼガソリンタンクと同等になる。

参考までに本ロードマップでは、21世紀末時点での水素飛行機、水素燃料電池船、水素燃料電池電車の燃費倍率は、それぞれ、2倍、1.7倍、2倍程度を技術スペックとしている(現状の化石燃料と内燃エンジン技術を基準)。

電池のエネルギー貯蔵密度は、水素より1桁小さい。300Wh/kgに向上し、自動車の燃費が6倍になっても、ガソリンの17%にしか達しない。

②体積ベースの比較

水素は、体積ベースの方が値がやや低くなり、電力は、体積ベースの方が値がやや高くなる。

ガソリン、水素、電気の相対関係は変わらない。

①重量ベースの比較

②体積ベースの比較

ガソリン

発熱量1) 10,150 kcal/kg

貯蔵密度2),3) 3wt% 15wt% 15wt% 150Wh/kg 300Wh/kg 90wt%

タンク1kg当たり 5)

貯蔵エネルギー(kcal/kg-tank)

867 4,335 4,335 129 258 9,135

ガソリンタンクに対する比

0.09 0.47 0.47 0.01 0.03 1

自動車燃費倍率 6) 3 5 2 4 6 1

ガソリンタンクに対する比(燃費倍率を考慮)

0.28 2.37 0.95 0.06 0.17 1

水素

28,900 kcal/kg

電気

860 kcal/kWh

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運-22

2.ユーザーが複数の電池セットを購入して、それらを交換して使う可能性はある。しかし、その場合でも次のような問題がある。

(1) 電池は液体燃料に比べて体積当たりのエネルギー貯蔵密度が小さく、車体の中で大きな体積を占めがちである。短時間の電池交換を前提とすると、 電池の配置に関する設計の自由度が制限され、十分な量の電池をコンパクトに配置することの妨げになる。

(2) 交換用電池のコスト負担のために経済性が低下する。

(3) 現在の電気自動車で一般的な電圧100V以上の電池をユーザーが触れることは安全面で懸念があり、メーカーも保証の対象には含めにくい。一方、電圧レベルを下げると、効率面、コスト面で不利になる。

(4) 遠方への長距離ドライブの際には役に立たない。

急速充電に必要となる電力を試算した(右表)。

10km/L相当のガソリン車で500km走行する場合、消費されるガソリンのエネルギー量は295Mcal、燃費4倍の電気自動車であれば消費エネルギーは99Mcal(=115kWh)である。これを仮に5分で充電すると、充電器効率×充放電効率=0.80と仮定して、1,700kWの電力が必要になる。燃費6倍の電気自動車であれば、必要エネルギー量は少なくなるが、ガソリン車と同じ補給時間(2分)を求めると、2,800kWの電力が必要になる。

こうした容量の充電設備を随所に用意することは、設備面および操作安全面でも現実的ではない(12V・233kA~6,600V・424A!!)。

ちなみに、ガソリン給油時のガソリン流量0.42L/秒は14,000kWに、また水素充填における水素流量200L/sec(気体)は1,800~2,800kWに相当する。

電池交換

1. 電池は電気自動車の構成要素の中で、車の性能を左右する も重要な部品であり、かつ高価である。これに対し貯蔵されている電気の価格は、電池価格に比べて2桁程度安い(乗用車の場合、電池価格が数十万円以上に対し電気は数千円)。電池交換システムにおいては、電気エネルギーとそれを貯めるための電池とが一体となって取引されるが、その場合、取引の主対象は高価かつ重要性が高いものになるのが自然である。つまり電池交換は、電池を売買するビジネス(新品・中古を含む)として登場する可能性はあるが、電気のみを売買するビジネスとしては成立し難いと考えられる。

電気自動車はエネルギー効率やCO2削減の面からは優れた特性を有するオプションであるが、以下に示すような急速充電、電池交換の制約から当面は主流となり難いと考え、本ロードマップでは、長距離走行に対応できる自動車として燃料電池車(FCV)を想定した。FCVの開発普及に伴い蓄電系の性能も向上し、それを活用することで主として近距離需要を満たす自動車として軽量な電気自動車が一足遅れて大きく普及するものと想定している。そして、電気自動車への現実的な電力補給としては車庫や駐車場といった停止時での充電のみを想定した。

急速充電

5.急速充電および電池交換による電力補給システムについて

ガソリン

発熱量 7,820 kcal/L

500km走行に必要なエネルギー

Mcal - - - - 391

燃費倍率 3 5 4 6 1

Mcal 130 78 98 65 391

Nm3 51 30 - - -

kWh - - 114 76 -

L - - - - 50

補給時間分 分 5 2 5 2 2

L/秒 168 253 - - 0.42

kW 1,819 2,728 1,705 2,842 13,640

電力

860 kcal/kWh2,580 kcal/Nm3

500km走行に必要なエネルギー(燃費倍率を考慮)

水素

補充速度

運-23

6.自動車、船舶の太陽光発電によるエネルギー補完可能性

(1) トラック・コンテナの屋根面に高効率太陽電池を設置した場合の補助能力を試算

(2) 外航用大型貨物船の甲板に高効率太陽電池を設置した場合の補助能力を試算

自動車、船舶の動力エネルギーとして、発電効率、重量等著しく性能の向上した太陽光発電の利用が想定される。屋根面の活用が容易な貨物自動車、および甲板の遊休度の高い外航大型貨物船を例に試算した。

下表に示すように、晴天時には運行に必要な出力(自動車は 大出力×0.5、船舶は 大出力×0.8と仮定)の数%~10%程度を賄える出力を確保できる可能性がある。船舶は大型化・低速化された場合にはさらに寄与率が高くなるが、それでも他からのエネルギー供給に頼らない「自立化」は困難と考えられる。

車種 2ton 4ton10ton

コンテナ車トレーラー

全長(mm) 6,440 8,590 11,940 18,000

全幅(mm) 2,195 2,360 2,490 2,490

排気量(cc) 4,500 7,961 12,503 12,503

エンジン 大出力(kW) 96 147 206 206

走行時出力(kW) 48 74 103 103

パネル幅(m) 2.0 2.0 2.0 2.0

パネル長(m) 5.0 7.0 9.0 17.5

パネル面積(m2) 10.0 14.0 18.0 35.0晴天時水平面日射強度(kW/m2)

0.8 0.8 0.8 0.8

発電出力(kW)

η:20% 1.6 2.24 2.88 5.6

η:30% 2.4 3.36 4.32 8.4

η:40% 3.2 4.48 5.76 11.2

寄与率(%)

η:20% 3.3 3.0 2.8 5.4

η:30% 5.0 4.6 4.2 8.2

η:40% 6.7 6.1 5.6 10.9

10万トン級コンテナ船

設置面積(m2)300m×60m×80%

14,400

晴天時水平面日射強度(kW/m2)

0.8

主機関 大出力(kW) 74,600

航行時出力(kW) 59,680

発電出力(kW)

η:20% 2,304

η:30% 3,456

η:40% 4,608

寄与率(%)

η:20% 3.9

η:30% 5.8

η:40% 7.7

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運-24

7.モーダルシフトによるエネルギー消費削減の可能性

1)旅客部門の2000年の輸送量は2.1兆人・km。輸送機関別のシェアは、自動車67%、鉄道27%、航空機6%(図2左端)。

2)貨物部門の2000年の輸送量は5,800億トン・km。自動車(シェア57%)と船舶(同40%)が大半を占める(図6左端)。

3)2000年のシェア固定のまま、2100年に輸送量が2.1倍になった場合、各機器の燃費改善(図1、図5)により、旅客部門のエネルギー消費量は約50%減(図3) 、貨物部門は30%減となる(図7)。

4)自動車から鉄道へのモーダルシフトが進むと(旅客部門図2右端、貨物部門図6右端)、自動車と鉄道のエネルギー需要の和は約40%減少する(図4、図8)*1,*2。

*1旅客部門(2100年時点): 自動車から鉄道へのシフトはシェア1%につき11PJのエネルギー消費減

鉄道から航空機へのシフトはシェア1%につき21PJのエネルギー消費増*2貨物部門(2100年時点): 自動車から鉄道へのシフトはシェア1%につき16PJのエネルギー消費減

自動車から船舶へのシフトはシェア1%につき14PJのエネルギー消費減

鉄道から航空機へのシフトはシェア1%につき130PJのエネルギー消費増

旅客輸送

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2000 2030 2050 2100

[年]

エネ

ルギ

ー消

費量

[P

J/年

]

図 3

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2000 2030 2050 2100

[年]

エネ

ルギ

ー消

費量

[P

J/年

]

船舶

航空機

鉄道

自動車

図 4

貨物輸送

0%

20%

40%

60%

80%

100%

2000 2030 2050 2100[年]

輸送

量シ

ェア

船舶

航空機

鉄道

自動車

図 2

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2000 2030 2050 2100

[年]

エネ

ルギ

ー消

費量

[P

J/年

]図 7

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2000 2030 2050 2100

[年]

エネ

ルギ

ー消

費量

[P

J/年

]

船舶

航空機

鉄道

自動車

図 8

0 5 10 15 20 25

自動車

鉄道

航空機

船舶

エネルギー消費原単位 [kJ/トンkm]

2000年

2100年

図 5

0%

20%

40%

60%

80%

100%

2000 2030 2050 2100[年]

輸送

量シ

ェア

船舶

航空機

鉄道

自動車

図 6

シェア固定 シェア固定

モーダルシフト モーダルシフト

0 5 10 15 20

自動車

鉄道

航空機

船舶

エネルギー消費原単位 [kJ/人km]

2000年

2100年

図 1 [MJ/人km] [MJ/トンkm]

運-25

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運-26

運-27

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産業分野ロードマップ(資料2-3)

産業

産-1

②技術スペック設定の基本的な考え方と連関■ケースA(石炭等の化石資源とCO2回収・隔離の 大利用ケース)およびケースB(原子力の 大利用ケース)

大規模集約設備ではCO2の回収隔離が、それ以外の施設では電化・水素化が求められる。■ケースB(原子力の 大利用ケース) 原材料として必要な場合以外は、電気/水素によって製造することが求められる。■ケースC(再生可能エネルギーの 大利用と究極の省エネルギー実施ケース)

経済発展しながら資源制約、環境制約を克服するためには、効用あたりの必要エネルギー量を70%削減することが求められる。産業分野では、ケースCが技術的に も厳しいのでこれを中心に、以下のように技術スペックを設定した。1) 製造プロセスに必要なエネルギーの原単位を50%削減する。ただし、物質に保存されるエネルギーを除く。2) 製品中に保存されるエネルギーの80%を物質エネルギーとして再生する。3) 製品価値の総量をGDPに比例して増大させつつも、その効能や機能に必要な物質量を減らす「高機能化」を4倍にする。この3つの技術スペックを追求して、産業分野での多様性に対応するとともに、さらなる飛躍ポテンシャルを用意した。

③2100年からバックキャストで技術スペックを設定2100年からバックキャストして、2050年および2030年の技術スペックを設定した。

④各時点の個別条件を満たすために求められる技術スペック、時期等をロードマップとして整理。

産業分野の技術スペックの考え方

210020502030

25%削減

2倍

必要エネルギー量※

3)高機能化(強度等)(機能/物質量)

70%削減

4倍

40%削減

3倍

50%2)物質エネルギー再生率 80%60%

2000産業

製造量×製品の価値 2.1倍1.5倍1倍

1倍

※GDPに比例して効用(製造量×製品の価値)が増加した場合を基準として、転換分野からの供給が必要なエネルギー(単位当たり)の削減量

20%削減1)製造エネルギー原単位改善 50%削減30%削減-

①ケース、分野共通の条件■資源制約の条件 :想定した石油ピーク(2050年)、天然ガスピーク(2100年)までに、他のエネルギー源と互換可能な状

態とする■環境制約の条件 :CO2排出量/GDPを、2050年に1/3、2100年に1/10以下とする

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産-2

産業分野の技術スペック実現のための技術群の考え方 (1)

産業分野は、資源に乏しい我が国の経済基盤を支えるとともに、各分野における技術シーズを提供する役割を担っている。ここでは我が国の産業が資源制約や環境制約を克服しつつ国際競争力維持向上に寄与する革新的な技術をエネルギー分野から洗い出すことに挑戦した。

産業分野は多様なプロセスで生産活動を行っており、またエネルギー利用形態も様々であるため、エネルギー多消費型の素材系4業種(製鉄、化学、セメント、紙パ)とその他との5つに分けて検討した。その他には、農林水産業、鉱業、建設業などの非製造業、機械、食料品などの工業が含まれる。

素材系4業種では、(天然)資源から製品を生産するともにその生産プロセスにおいて多用なエネルギー転換が同時に行われるという特徴を有しつつ、物質生産(物質転換)部門とも認識することができる。

【製造プロセスにおけるエネルギー利用の高度化 『うまくつくる』】素材系の物質生産(物質転換)部門におけるエネルギー

消費構造を右図に示す。投入されたエネルギーは、①物質中に化学エネルギーとして保存されるもの②燃焼過程等でエクセルギー損失となるもの③プロセスでの廃熱

の3つになる。②と③がプロセスで消費したエネルギーであり、これらを削減することにより、必要エネルギー量を削減する。このうち、②を電気や水素として回収するのが、コプロダクション(物質とエネルギーの併産)である。

【物質エネルギーの再生 『上手につかう』】製品(物質)は自らの中に化学エネルギー①を保存しており、製品が社会での使命を終えたあと、このエネルギーを物質あるいは

エネルギーとして再生させる。製造時必要とするエネルギーの60%以上を物質として保有している化学品および紙の製造プロセスでは、物質エネルギー再生による改善効果が大きい。さらに、産業間連携にとどまらず、セクターを横断して廃棄物を製造プラントに利用したり、併産した電力や水素などをバウンダリーを越えて利用するなど、クロスバウンダリーの取り組みが重要となる。

【少ない資源での製品製造によるエネルギー削減 『良いものをつくる』】「少ない資源での製品製造によるエネルギー削減」は、「高機能化」を達成するための技術群を列挙しており、わが国の国際競争

力の維持拡大のために欠かせないアイテムであるだけでなく、各分野における技術革新のシーズを提供する重要な課題である。

物質エネルギーとして再利用

(物質エネルギー再生)

電力・水素として回収

(コプロダクション)

プロセス廃熱を少なくする

(省エネ)

①物質中に保存

②エクセルギー

    損失

③廃熱

化学プロセス

投入したエネルギ

産-3

産業分野の技術スペック実現のための技術群の考え方 (2)

【製鉄】 現在の高炉による生産プロセスは副生ガスや排熱などが高度に回収利用されるなど、極めてエネルギー効率が高い。今世紀前半は既存プロセスの改善更新や次世代プロセスの導入と、廃棄物(廃プラ・廃タイヤ・バイオマス)の活用による一次投入エネルギーの削減が進められると考えられる。また、再生可能エネルギーを利用した水素供給が可能となるまでの間、副生水素が水素供給源の一翼を担う。今世紀後半には、技術革新に加えて資源・環境制約の観点から、還元材の非炭素化や高炉-転炉法に代わる革新製鉄プロセスの登場も想像できる。また還元材としての石炭の利用と環境制約を両立させる手段として、製鉄プロセスで発生するCO2を未活用の中低温排熱を利用して分離回収する技術も有効である。

【化学】 石油(ナフサ)を原料および主燃料として利用しているので、2050年までには、石油を使わない新規の製造プロセスを完成させなければならない。現在は、ナフサを熱分解してエチレン、プロピレンあるいはBTXなどの基礎原料を製造する工程と基礎原料を基にして数万種類といわれている化学品にする合成工程とで成り立っている。

新規プロセスとしては、バイオマス、廃棄物および石炭をガス化して、COとH2の合成ガスとし基礎原料を製造し、合成プロセス以降は、既存の製造インフラを利用するのが合理的と思われる。化学では、投入エネルギーのうち60%が物質として保存されているので、製造プロセスで消費される40%のエネルギーを省エネおよびコプロダクションで削減するとともに物質中に保存されている60%のエネルギーを物質エネルギー再生するためガス化炉に投入することによって、必要エネルギー量の削減を目指す(このシステムをサステイナブル・カーボンサイクル化学体系(SC3)と命名する)。

【セメント】 原料として石灰石を、主燃料として石炭等を利用してセメントを製造しているが、廃棄物・副産物(高炉スラグ、石炭灰、副産石膏、廃タイヤ等)を受け入れて原料、燃料として利用し、廃棄物の固定化にも寄与している。将来的には、各分野や他業種で導入されるガス化炉からの残渣や紙パ産業からの再生できない紙の廃棄物など、多様な 終廃棄物を原料あるいは燃料として利用し、石灰石および燃料を一切を使わない「ゼロエミッション型セメント」プロセスが期待される。

【紙パ】 現在でも製品の60%を再生し、おおむね3回程度循環利用するとともに、パルプ工場の黒液は、重油や石炭などの燃料と一緒に製紙工場で電力や熱のエネルギーとして再生利用されている。将来的には、バイオマスガス化複合発電設備の採用により、化石燃料をまったく使わず、生産活動を行うだけでなく、外部への電力供給も行えるような製造プロセスが期待できる。また、バイオテクノロジーを利用した高成長樹木を生育させる技術は、業界を越えた効果が期待できる。

【共通技術】 炭素を物質として利用する業種を中心として、バイオマスや廃棄物は貴重な原料・燃料となってくるので、これらを含めた物質のマネージメント技術も今後必要となってくる。

Page 33: 分野別ロードマップ概要(資料1)...概-1 以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。 分野毎に2枚構成。1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降)

産-4少ない資源での製品製造によるエネルギー削減 『良いものをつくる』

素材・部材の高機能化・高性能化(高強度化等)

製品の省素材化(構造・機構の高度化等)

製造プロセスにおけるエネルギー利用の高度化 『うまくつくる』

コジェネ・熱のカスケード利用

コプロダクション(物質とエネルギーの併産)

(製造プロセスの省エネ)革新的製造プロセスの開発バイオ・ナノ触媒の利用等

(化石資源利用) バイオマス/水素利用→

物質エネルギーの再生 『上手につかう』

分離・分別化容易設計耐久性向上

物質再生プラントの効率向上

資源循環型生産プロセス

分野を越えた物質・エネルギー

の再生利用

物質・エネルギーの連携・統合

ゼロエミッション型プロセス

クロスバウンダリーの取組

210020502030

25%削減

2倍3)高機能化(強度等)

(機能/物質量)

70%削減

4倍

40%削減

3倍

50%2)物質エネルギー再生率 80%60%

2000

製造量×製品の価値 2.1倍1.5倍1倍

1倍

※GDPに比例して効用(製造量×製品の価値)が増加した場合を基準として、転換分野からの供給が必要なエネルギー(単位当たり)の削減量

20%削減1)製造エネルギー原単位改善 50%削減30%削減-

産業

転換分野からの供給が必要な

必要エネルギー量※

産-5

素材・部材の高性能・高機能化

高機能・高強度プラスチック、超高強度・軽量セメント、高機能・高品位紙

省エネルギープロセス

コプロダクション(物質・エネルギー併産) 電力・水素・化学品コプロダクション

革新的蓄熱増熱技術(産業用ヒートトランスフォーマー、化学蓄熱など)

製品の省素材化

物質エネルギー再生

電磁鋼板 高張力鋼、革新的構造材料、溶接材料等 次世代型機能性材料

SCOPE-21、新焼結等革新的プロセス技術の導入 革新的鉄鋼製造プロセス

既存セメント・エコセメントプロセスの省エネ化 ゼロエミッション型セメントプロセス

産業間連携 マテリアル・カスケード・マネージメント

非在来型化石燃料、劣質原料利用、廃棄物、バイオマスガス化

燃料電池型加熱炉ガス化技術、GTインテグレーション

物質・副産物・エネルギー再生技術

微量成分除去、分離・回収、再資源化技術

バイオマス利用 バイオマスIGCC バイオマスIGFC

高効率伝熱・断熱技術、高効率蓄エネルギー技術、産業用コジェネの高効率化、熱のカスケード利用、動力回生システム

廃棄物ガス化による電力・熱のコプロダクション

製鉄

化学

セメント

2100205020302000

現行プロセス省エネ、次世代圧延技術等新プロセスの開発

石油化学原料省エネ生産技術 サステイナブル・カーボンサイクル化学体系(SC3)

バイオマス生産・利用促進技術(バイオテクノロジー等の活用)

製造プロセスにおけるエネルギー利用の高度化 『うまくつくる』

物質エネルギーの再生 『上手につかう』

少ない資源での製品製造によるエネルギー削減 『良いものをつくる』

製品の省素材化(集積(モジュール)化、小型化)

革新的製造プロセス(バイオ・ナノ触媒の利用等)

共通

概要

共通

化学

セメント

紙・パ

製鉄

その他

Page 34: 分野別ロードマップ概要(資料1)...概-1 以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。 分野毎に2枚構成。1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降)

産-6

省エネルギープロセス

製鉄

化学

製造プロセスにおけるエネルギー利用の高度化『うまくつくる』

革新的鉄鋼製造プロセス

未利用排熱回収(中低温、スラグ顕熱)

現行プロセスの省エネ、次世代圧延技術等新プロセスの開発

SCOPE-21、新焼結等革新的プロセス技術の導入

石油化学原料省エネ生産技術(ナフサ接触分解プロセス等)

重質油・石炭ガス化−化学原料化

サステイナブル・カーボンサイクル化学体系(SC3)

製造プロセスにおけるエネルギー利用の高度化『うまくつくる』省エネルギープロセス製鉄:新たな鉄鋼プロセスは長期の開発期間を要する。少なくとも今世紀半ば頃までは現行プロセスの効率改善、改良型プロセスの開発導入などを促進することが重要となる。

すなわち、2050年ごろまでは高炉-転炉+電気炉を基本とした現行プロセスの効率化が中心となる。この間、現行プロセス改良型(SCOPE-21等)の開発導入も設備更新タイミング等に合わせて行われる。今世紀後半に至ると、資源・環境等のさまざまな制約や、製品ニーズの変化等に応じた革新プロセスの具体化が求められると考えられる。超長期的には資源・環境制約の状況に応じて非炭素系還元材利用プロセスの可能性も視野に入れる必要がある。

化学:21世紀前半では、化石原料を使用するプロセスの省エネ生産技術、新規融合反応場等を導入する。後半は、ガス化を伴うサステイナブル・カーボンサイクル化学体系(SC3)により省エネルギー化を図る。すなわち、化学原料は、石油・天然ガスから石炭、重質油、バイオマスおよび廃棄物に移行していく。このため熱分解オレフィン製造からガス化–SC3に置き換わり、2030年で10%、2050年で60%導入される。2030年までは、ナフサ熱分解プロセスが接触分解プロセスに代替される。

セメント:既存プロセスのセメント省エネ推進、エコセメントプロセスの省エネルギー化、 終的には石灰石・エネルギーがゼロ、即ち、廃棄物のみでセメントを作るプロセス(ゼロエミッション型セメントプロセス)が導入される。

紙・パ:高効率乾燥技術、抄紙電力削減など、新しい省エネルギープロセスが開発される。超長期的には製紙産業自身は、購入電力、あるいは石炭等の燃料が不要となる。産業全体・共通:省エネ診断・ESCO等の活用、未利用エネルギーの地域での有効活用、産業間連携、工業炉やボイラーの高効率化、蓄エネルギー技術、バイオ・ナノ触媒の利用

等による革新的製造プロセスなどにより省エネルギー化を図る。単純なボイラー燃焼からガスタービンコージュネ等に移行する。

新規触媒開発による合成プロセスの省エネ

新規融合反応場(超臨界流体・マイクロリアクター、反応・分離精製を融合した反応場)

マイクロ波、超音波、プラズマ、レーザーなどを利用した非平衡反応プロセス

省エネ型分離技術(HIDiC・膜分離等)

2100205020302000

産-7

セメントエコセメントプロセスの省エネ

既存セメントプロセスの省エネ(排熱回収、ミルの高効率化など)

ゼロエミッション型セメントプロセス

高温排熱有効利用 低温排熱有効利用

高効率伝熱・断熱技術

蓄熱・増熱技術

高効率燃焼技術 再生燃焼 酸素燃焼 ハイブリッド加熱

工業炉・ボイラーの高効率化

水素燃焼タービンー蒸気発生器

産業全体・共通

技術以外の要因● 新プロセスの開発には、運転管理を含めたエンジニアリング的な開発要素が不可欠となるが、大規模な実証設備が必要となるため、民間だけでの研究開発には限界

がある。国家プロジェクトとしての決断が将来的には必要となる。

動力回生システム

未利用エネルギーの地域での有効活用

産業間連携による電気・熱等のユーティリティーの共同利用

電動機・ポンプの高効率化

省エネ診断・ESCOの活用

バイオマス生産・利用促進技術(バイオテクノロジー等の活用)

革新的製造プロセス(バイオ・ナノ触媒の利用等)

リチウム電池 新型二次電池、高性能キャパシタ、SMES、フライホイール

熱のカスケード利用

産業用コジェネの高効率化

Page 35: 分野別ロードマップ概要(資料1)...概-1 以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。 分野毎に2枚構成。1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降)

産-8

2100205020302000

コプロダクション(物質・エネルギー併産)従来、失われていたエクセルギー(有効に取り出しうる仕事量)を、電力あるいは水素として回収し、プロセスの省エネルギーを図る。

共通技術:ガス化技術、それに伴うガス生成技術として重要である膜分離技術等を導入する。さらに、ガスタービンインテグレーション、および、ガスタービン、燃料電池の排熱による加熱方式の開発・導入を行う。 終的には、燃料をまず一旦燃料電池で発電して、その排熱を加熱炉に用いる燃料電池型加熱炉を導入する。

製鉄:2030年ごろまでは、運輸分野へのCOG副生水素供給と、COG顕熱を利用した改質による水素増産の技術を確立する。また、製鉄プロセスによるバイオマスを含む廃棄物の熱分解ガス化技術などの高効率転換技術を確立する。2030年以降は、ガス化プラントと製鉄関連プロセスとの融合により、バイオマス・廃棄物利用を拡大する。

化学:電力・水素・化学品のコプロダクション等を導入する。紙・パ:バイオマスおよび廃棄物を導入することにより、黒液ボイラー等をバイオマスガス化、IGCCあるいはIGFCに置き換えることによって高効率に物質・エネルギー併産を行う。

コプロダクション(物質・エネルギー併産)

ガス化技術・灰処理技術

CO、水素、その他のガスの低エネルギー負荷分離技術/分離膜(SOx, NOxおよび微量成分分離)

GTインテグレーション

燃料電池型加熱炉

COGからの水素併産

コプロダクション型ガス化発電

GT、燃料電池排熱による加熱

COG改質水素併産

石炭・バイオマス・廃棄物の熱分解ガス化化学原料併産 水蒸気改質ガス化

共通

製鉄

産-9

化学

セメント

電力・水素・化学品コプロダクション(物質とエネルギーの併産)

燃料電池型反応器

革新的蓄熱増熱技術(産業用ヒートトランスフォーマー、化学蓄熱など)

廃棄物ガス化による電力・水素コプロダクション

バイオマス利用および古紙からのエネルギー回収技術

バイオマス・黒液ガス化燃焼

バイオマスIGCC バイオマスIGFC

(黒液回収ボイラーの性能向上)

紙・パ

水蒸気圧力 7 MPa 12 MPa

発電効率 40% 55%

技術以外の要因● 短期的にはいわゆる排熱利用等のエネルギー有効利用技術の導入が主力となるが、中・長期的には廃棄物等が有するエネルギーを積極的に活用することが求めら

れている。このため、バイオマス・廃棄物のプロセス利用については、技術開発に加えて、集荷システムを含む制度構築や廃掃法等法制度面の改革が重要となる。

Page 36: 分野別ロードマップ概要(資料1)...概-1 以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。 分野毎に2枚構成。1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降)

産-10

2100205020302000

物質エネルギーの再生『上手につかう』製品中に保存された物質エネルギーを物質として再生、あるいはエネルギーとして

再生する。例えば、化学品をガス化して合成する技術体系や廃棄物を原料化する技術が求められる。共通技術:産業間連携、あるいはマテリアル・カスケード・マネージメント、エコマテリアル化技術等を導入する。製鉄:従来からのスクラップの利用に加え、廃棄物の鉄鋼プロセスによるエネルギー利用、物質再生の拡大、スラグ等副産物の利用拡大を図る。化学:非在来型化石燃料、劣質原料、廃棄物、バイオマス等をガス化炉に導入し再資源化を図る。物質エネルギー再生率として2030年で50%、2050年で60%、2100年で80%を想

定している。それに繋げるまで化学品の3R技術で物質エネルギー再生の基礎とする。他の重要な技術としては、バイオマスの有効活用がある。セメント:重金属の回収あるいは再資源化技術、廃棄物の燃料化技術が重要となる。 終的には化石エネルギーを全く使わずにセメントを廃棄物エネルギーだけで製造する。紙・パ:現在の紙のリサイクル率60%は運用等の課題を解決しながら75%程度まで向上させ、木材チップの消費を現状の水準で維持しつつ紙の需要を賄う。単位面積あたりの木

材収量を増やすため、優良遺伝子の探索や遺伝子工学等のバイオテクノロジーの活用が期待される。

共通物質エネルギー再生

物質エネルギーの再生『上手につかう』

マテリアル・カスケード・マネージメント

産業間連携

エコマテリアル化

化学50% 60% 80%物質エネルギー再生率

(サステイナブル・カーボンサイクル化学体系(SC3))

非在来型化石燃料・劣質原料・廃棄物・バイオマスガス化

化学品の物質再生・ガス化・再資源化技術

(化学品の3R)

製鉄

廃プラ・廃タイヤ・バイオマスの製鉄プロセス利用、非在来型化石燃料・劣質原料利用

新製鋼プロセスフォーラムの適用

副産物の利用再生(スラグ、ダスト)

微量成分分離・再資源化技術スクラップの利用(物質再生)

廃棄物のプロセス利用(エネルギー・物質再生)

スラグ利用技術の拡大 ダストの鉄源回生

物質エネルギー量)(製品中に保存された

再生された量)量)+(エネルギーの有するエネルギー(物質再生された物質率= 物質エネルギー再生

産-11

重金属回収・再資源化技術

廃棄物の原材料化

高効率脱塩技術

廃棄物・バイオマスの燃料化

廃棄物の100%原材料化

ゼロ化石エネルギー

新規加熱方式、伝熱技術の導入(誘導加熱、水素燃焼炉、水素燃焼タービン等) →水素併産

セメント

紙・パ

高成長・高繊維素含有樹木遺伝子の探索開発

低質古紙回収製紙原料化RPF利用・バイオマス資源の確保

クラフトパルプの高収率化技術

古紙再生填料の開発普及

65%20%

70%20%

75%20%

紙のリサイクル率 57%エネルギー再生率 10%

収率 50% 55% 60%

バイオテクノロジーによるバイオマス生産の高効率化 (耐塩・耐干害・耐病虫害性樹木の開発等)

技術以外の要因● 21世紀前半では、物質・エネルギー源の多様化を図るため、バイオマス等の再生可能資源の活用が必要となる。● バイオマス等の再生可能資源の利用については、技術開発に加えて、集荷システムを含む制度構築や廃掃法等の法制度面の改革も重要となる。

バイオマスコンビナート

バイオマスからの抽出・分離(バイオマスリファイナリー)

微量成分除去、分離・回収、再資源化技術(化学)

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産-12

少ない資源での製品製造によるエネルギー削減『良いものをつくる』素材・部材の高性能・高機能化産業分野は各分野における技術革新のシーズを提供しており、このため、製品の高機能化は重要な課題である。国際競争力維持向上の観点からも重点的かつ継続的に取り組む必要がある。

製鉄:高張力鋼、高機能性電磁鋼板等の性能向上を図る。超長期的には現在の性能を大きく革新する新機能材料を開発する。化学:高機能・高強度プラスチック等を導入する。一般的にコモディティ分野といわれる基礎化学品・基礎素材から、スペシャルティ分野である高機能物質、機能材料、部材・デバ

イスへ移行し、高度部材産業が化学の中心になる。セメント:軽量セメントや超高強度セメント等を導入する。紙・パ:紙はかなり軽量化が進んでいるため、高機能化が中心となる。

製品の省素材化製品の集積(モジュール)化、小型化により省素材化を推進する。

製鉄

化学

素材・部材の高性能・高機能化

製品の省素材化

少ない資源での製品製造によるエネルギー削減『良いものをつくる』

高張力鋼(鋼材削減・自動車軽量化)、革新的構造材料、溶接材料等

次世代型機能性材料

現行プロセスによる製品性能向上電磁鋼板(モーター・発電機・トランス効率改善)

次世代プロセスによる新機能製品・代替材料・複合材料

超高強度化・軽量化・高機能化

高機能・高性能プラスチック

紙の不透明化、質感増加、高機能化

セメント

紙・パ

製品の集積(モジュール)化、小型化

2100205020302000

産-13

2100205020302000

その他(産業全体共通)CO2分離・回収技術:特に製鉄において重要。製鉄の場合、まずCO2を高濃度に含む副生ガス(高炉ガス)からのCO2分離が も効率的と考えられ、まず取り組まれるべきである。

また、将来製造プロセスの改善等により副生ガス中のCO2が減少した場合には、副生ガス燃焼排ガスからのCO2回収も合わせて考慮することが重要となる。水素・電力高効率利用技術:転換部門からの電気、水素の高効率利用。水素燃焼タービン技術等水素を高効率に燃焼させる技術が重要となる。物質マネージメントシステム:技術のみではなく、社会システム設計が重要となる。

製鉄

その他(産業全体共通)

副生ガスからの回収(30百万t-CO2/年) 副生ガスおよび燃焼排ガスからの回収(33百万t-CO2/年)CO2分離・回収

中容量水素燃焼タービン

水素燃焼炉

水素エンジン クローズド水素エンジン

電気を利用した不純物除去技術

大規模水素燃焼タービン

クローズド水素ディーゼルコンバインド゙

水素・電力高効率利用技術

効率(HHV) 36% 45% 55%

効率(HHV) 60%

産業用ヒートポンプ

COP = 5 COP = 6 COP = 7 COP = 10

高効率燃料電池 水素利用高効率燃料電池

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産-14

物質マネージメントシステム

適物質マネージメントシステム設計(実践可能な社会システムの構築)

マテリアル・カスケード・マネージメント

エコマテリアル、エコデザイン(易分別解体設計技術、易再生設計技術)

物質輸送 適化システム設計

物質再生技術の 適配置(社会システム設計)

(国民・企業への啓発)

技術以外の要因● 末端の消費者が使用した産業製造物を如何に回収して、原材料などの原料として利用できるかがポイントである。このため製品は容易に分別解体が可能である設

計、また容易に再生可能な設計が必要となる。● 一方、末端にまで散在した製品等を効率よく回収するための社会的共通理念が必要となる。ここで産業設備等で発生する不要物質等は、比較的容易にシステムの

構築は可能と考えられるが、一般消費者に行き渡った物質(製品)を効率よく回収し、また原材料等に戻してゆくためには、物質の輸送(物質輸送の 適化)、社会的適合性の評価(地域社会への導入)、さらには個人あるいは小規模事業者に対する啓発を併せて進めることが必要となる。

地域社会への導入(フィージビリティスタディ)

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産業分野ロードマップ補足資料

産業分野における CO2 排出量削減の方策と戦略

1.産業分野の特徴

産業分野は、大きく①製鉄、②化学(化学繊維、石油製品を含む)、③セメント、④

紙・パルプ(板紙を含む)、⑤その他の産業に分類される。⑤その他には、農林水産業、

鉱業、建設業などの非製造業、機械、食料品などの工業が含まれる。2000 年度におけ

るエネルギー消費の割合(電力を含む)は、順に 25%、33%、4%、6%、32%である。

産業分野ごとにエネルギーの利用形態が大きく異なるため、必要エネルギーを削減す

る方策は分野ごとに異なり、また、実現できる削減の程度も異なる。従って、産業ご

とに個別に方策を設定する必要がある。また、2100 年の CO2 排出量/GDP を、2000 年

に対して 1/10 とする目標は、個々の産業ごとではなく、産業全体で達成する方向で検

討を行う。

そこで、①~④について、国内のエネルギーフローを各々モデル化して表記し、2100

年の目標達成に向けて、そのモデルがどのように変化する必要があるかを示す。⑤の

その他については、①~④の産業の合計と同様の変化をするものとして取り扱う。 また、それぞれの産業分野でのエネルギー効率改善には限界がある。現在すでに取

り組まれている産業間連携に加え、民生部門で発生する廃棄物を再生資源として産業

部門で利用したり、産業部門で発生する電気や水素などのエネルギーを民生部門や運

輸部門で利用するなど、セクターの垣根を越えたクロスバウンダリーの取り組みがよ

り重要になる。 2.生産プロセスにおけるエネルギー消費の削減

図 2-1 は物質生産(物質転換)部門におけるエネルギー消費構造を示している。投

入されたエネルギーは、①物質中に化学エネルギーとして保存されるもの、②主に燃

焼過程でエクセルギー損失となるもの、③プロセスからの廃熱、の3つになる。 図 2-1 物質生産(物質転換)部門におけるエネルギー消費削減

物質エネルギーとして再利用

(物質エネルギー再生)

電力・水素として回収

(コプロダクション)

プロセス廃熱を少なくする

(省エネ)

①物質中に保存

②エクセルギー

    損失

③廃熱

化学プロセス

投入したエネルギ

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エクセルギーとは

エネルギーには、熱エネルギー、電気エネルギー、

化学エネルギー、機械エネルギーなど、さまざまな

形態があるが、エネルギー量は同じでも形態によっ

て質が異なり、有効な仕事として取り出せる割合は

異なっている。このエネルギー総量のうち有効に取

り出しうる仕事量をエクセルギーといい、その割合

をエクセルギー率という。エネルギーは放逸がなけ

れば熱力学第一法則により保存されるのに対して、

エクセルギーは不可逆な状態変化やエネルギー変

換過程で失われ減少する。

②と③を合わせたものが、プロセスで消費したエネルギーである。エネルギーを有効

利用し、エネルギー消費を低減させるためには、それぞれ以下の1)~3)に示すよ

うな対策がある。 1)物質エネルギー再生:物質あるいはエネルギーとして再利用する。 2)コプロダクション:失われていたエクセルギーを電力あるいは水素として回収す

る。 3)省エネ:プロセスの省エネルギー化により、プロセス廃熱を低減させる。また、

熱のカスケード利用等により排熱の有効利用を図る。 この1)~3)を組み合わせることによって、エネルギー消費の低減を図る。同時

に、素材や製品の高性能化・高機能化を進めることによっても、製造に必要な原料お

よびエネルギーを大幅に低減させることができる。以下に、①素材・製品の高性能化・

高機能化による省資源・省エネル

ギー、②物質エネルギー再生、③

コプロダクション、④省エネ、に

ついて、各々の考え方を説明する。 ここでは、エクセルギー損失を

極限まで削減したシステムを描き、

それに必要な技術を洗い出してき

たが、現段階で具体的な技術のイ

メージになっていないところもあ

る。これは、2100 年の目標を達成

するために、理論的に可能性を突

き詰めた結果である。 2.1 素材・製品の高性能化・高機能化による省資源・省エネルギー

素材や製品の品質を向上することは、国際競争力を維持し、市場を確保していく上

で最も重要なことである。同時に長期的視点で、素材・製品の高機能化・高性能化に

よっても大幅な省エネ・省資源が達成できる。例えば、強度が2倍になれば半分の素

材で同じ機能・効用が得られる。さらに、小型化、構造化により半分の素材で同じ機

能を持つ製品を得るならば、1/2X1/2=1/4でエネルギー・資源の消費量は

1/4となる。 4倍の高機能化を行うことで、効用当たりの必要エネルギーが大幅に低減する。高

機能化により製造量当たりの必要エネルギーが増加しないとすれば、効用あたりの必

要エネルギー量は 1/4(75%削減)となる。効用当たり 70%削減の技術スペックを目

指す観点から、高機能化を4倍とする技術スペックを設定した。高機能化により若干

の製造エネルギーの増加があり得るので、他の技術スペックと組み合わせて取り組む

必要がある。 素材・部材の高性能化・高機能化としては、鋼材削減や自動車の軽量化などに寄与

する高張力鋼、革新的構造材料、溶接材料等あるいは高機能・高性能プラスチックの

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研究開発さらには紙の軽量化技術・不透明化技術、質感増加技術などが重要となる。

こうした高機能部材を利用した製品の省素材化技術も普遍的な重要技術である。 2.2 物質エネルギー再生

物質とエネルギーは保存されているが、ともに利用する過程で劣質化する。劣質化

した廃棄物を物質再生させるには、不純物の分離・精製にエネルギーを必要とする。

エネルギー資源量の制約と CO2 排出量の制約に加えて、物質循環の制約(原材料資源

量の制約と廃棄物排出量の制約)を考慮すると、できる限り物質再生とそれに必要な

エネルギーの低減を図り、原料資源と生産エネルギーの消費を抑制することが重要と

なる。また、物質再生を行わない廃棄物は物質の持つエネルギーを回収(エネルギー

再生)する。

物質の有するエネルギーとは、その物質を完全に酸化させたときに得られるエネル

ギーであり、物質エネルギーと呼ぶこととする。例えば鉄は 1 トン当たり 7.4 GJ の物

質エネルギーを持っている。製品に保存された物質エネルギーを物質として再生する、

もしくはエネルギーとして再生する割合を物質エネルギー再生率と呼び、下記の式で

表す。

物質エネルギー量)(製品中に保存された

再生された量)量)+(エネルギーの有するエネルギー(物質再生された物質率= 物質エネルギー再生

原料のエネルギーが全て製品に保存される極端なケースでは、物質エネルギー再生

率を 70%とすることで、効用当たりのエネルギー消費の技術スペックである 70%を達

成することが可能である。

製品に保存される以外に、エクセルギー損失および廃熱としての損失があることを

考慮し、物質エネルギー再生率を 70%以上に設定することが望まれる。そこで、技術

スペックとしては、70%より若干上げた 80%を設定した。

物質エネルギー再生率を上げるには、化学品をガス化し合成する技術体系や廃棄物

図 2-2 物質エネルギー再生の概念

エネルギー

エネルギーエネルギー

物質再生

物質転換エネルギー再生

製品 廃棄物

廃棄原料資源

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を原料化する技術が求められる。 2.3 コプロダクション エネルギーは放逸がなければ熱力学第一法則により保存されるのに対して、エクセ

ルギーは、不可逆な状態変化やエネルギー変換過程で失われ減少する。我が国の一次

エネルギーのうち有効に使われている割合は3割弱に過ぎず、6割以上が無駄になっ

ている。このうち大部分はエクセルギー損失であり、主に化学エネルギーをエクセル

ギー率の低い熱エネルギーに変換(燃焼)したためである。 エクセルギーの観点から、エネルギーを有効に使うためには、 1)エネルギー変換・利用の過程でエクセルギー損失が少なくなるように工夫する 2)廃熱の有効利用を図るのではなく、廃熱そのものを出さないようにする 3)低レベルの熱を燃料の燃焼で得るのではなく、ヒートポンプやコジェネを利用す

る などが重要となる。 エクセルギー損失が少なくなるように、できる限り熱は発電あるいは物質生産(発

熱反応)とともに発生させるか、燃料としてはエクセルギー率の低い水素に排熱を利

用して変換してこれを燃焼させて得る。既存のエネルギー・物質生産体系を見直し、

物質とエネルギーの併産(コプロダクション)を図ることによって、エネルギーと物

質の消費を極力抑える。例えば、化学品とエネルギーのコプロダクション化を目指し

て、熱化学ヒートトランスフォーマー技術およびエネルギーインテグレーションを駆

使したプロセス設計創生手法を開発し、エクセルギー損失の最小化を図る。 2.4 省エネ 現在行われている省エネを推進し、プロセスで消費するエネルギーを削減し、廃熱

を減らすことが必要であるが、それだけでは必要エネルギーを大幅に削減することは

困難である。革新的なプロセスを開発し、技術体系を構築することが求められる。

コプロと省エネにより、製品当たり製造に必要なエネルギー(製品に保存されるエ

ネルギーを除く)を 50%削減することを技術スペックとした。このことだけでは、効

用当たりの必要エネルギーを 70%削減することは不可能であり、他の技術スペックと

組み合わせ合理的に実現することが求められる。

後述の産業各分野のモデルでは、省エネで 33%程度の削減を、コプロダクションで

失われたエクセルギーの 33%程度を再生することを目安に検討を行った。

製鉄では、次世代圧延技術の開発や新焼結等革新プロセス技術を導入し、さらには、

革新的鉄鋼製造プロセスの開発が求められる。化学では、新規触媒開発による合成プ

ロセスの省エネだけではなく、物質エネルギー再生を可能とするカーボンをリサイク

ルする化学体系が求められる。

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3.分野ごとの方策 製鉄、化学、セメント、紙・パルプについて、分野ごとにエネルギーフローをモデ

ル化して 2000 年実績と 2100 年に想定される姿を示し、2100 年への変遷を提案する。

3.1 製鉄産業

(1)鉄鋼プロセスの現状

図 3.1-1 に鉄鋼プロセスの概要を示す。鉄鋼プロセスは、鉄鉱石を主原料とする高

炉-転炉法と、鉄スクラップを主原料とする電気炉法に大別される。現在の国内粗鋼

生産に占める転炉鋼と電炉鋼の比率は 7 対 3 程度で推移している。生産される鉄鋼製

品は、厚板、鋼管、薄板、表面処理鋼板、線材、形鋼など多岐にわたっており、約 35%

強が鋼材として、約 23%が自動車などの製品として輸出されている。

鉄鋼プロセスのエネルギー利用上の特徴は、①鉄鉱石を還元する製銑工程で約 80%

のエネルギーが消費されること、②コークス炉-高炉-転炉工程で副生ガスが発生し、

燃料、電力、その他の用役にカスケード利用されること、③排熱回収が徹底されてい

ること、④電力・工業ガス等の系外供給が行われていること、⑤廃プラスチックなど

廃棄物のプロセス利用が行われていることなどがあげられる。

図 3.1-1 鉄鋼プロセスの概要 (2)現在~今世紀半ばまでのシナリオ

我が国の鉄鋼業は、70 年代の石油危機以降、連続鋳造設備に代表されるような生産

プロセスの効率化や排熱回収設備の開発導入を積極的に行ない、90 年代にはほぼ一巡

する状況となった。以降のプロセス効率改善は、鉄鋼プロセスの更新に伴う効率改善

と廃棄物の有効利用が中心となってきたが、今世紀前半もその延長線上にあるものと

想定される。 鉄鋼プロセスは一般に設備規模が大きくまた寿命が長いという特徴を有する。例え

ば高炉の場合、現在国内で 28 基が稼動中であるが、それぞれ 15~25 年に一度、数百

億円をかけて改修が行なわれる。改修にあたっては高炉の基本プロセスは変わらない

ものの、制御システムや周辺機器などにその時々の最新技術が導入され、エネルギー

高炉

原料炭

コークス炉

焼結機

鉄鉱石

コークス

焼結鉱

転炉

溶銑

電気炉

スクラップ

石灰石

⑤廃プラ

連続鋳造設備

二次精錬

溶鋼

溶鋼

厚板

熱延

線材

形鋼

ブルーム

ビレット

スラブ

スラブ

冷延

表面

処理

鋼管

熱延コイル

冷延コイル

線材・棒鋼

H形鋼・シートパイル

表面処理鋼板

厚板

鋼管

自動車・家電・建築・土木・輸出

原材料 ①製銑工程 製鋼工程 製品工程 市場

②副生ガス 燃料 電力 用役

③排熱回収

化成品

社会

④系外供給

鉄鋼プロセス

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- 86 -

・鉄鋼製造にとってコークスは必要不可欠・将来の設備更新に向けて革新技術を開発

①省エネルギー製造エネ▽20%削減

②環境改善③劣質原料対応力④生産性改善

*国内コークス炉基数:44基

京都議定書目標達成計画2010年までに1基導入

▽40万t-CO2 ▽10万kL

石炭事前処理工程 高効率乾留工程 コークス改質工程

・鉄鋼製造にとってコークスは必要不可欠・将来の設備更新に向けて革新技術を開発

①省エネルギー製造エネ▽20%削減

②環境改善③劣質原料対応力④生産性改善

*国内コークス炉基数:44基

京都議定書目標達成計画2010年までに1基導入

▽40万t-CO2 ▽10万kL

*国内コークス炉基数:44基

京都議定書目標達成計画2010年までに1基導入

▽40万t-CO2 ▽10万kL

石炭事前処理工程 高効率乾留工程 コークス改質工程

効率も確実に改善されている。またコークス炉の場合、現在国内で 44 基が稼動中であ

るが、向こう四半世紀の間に順次設備寿命を迎える。コークス炉の更新にあたっては、

石炭事前処理工程と高効率乾留工程並びにコークス改質工程を特徴とする次世代コー

クス炉(SCOPE-21)の導入が期待されている。以上のように、今世紀半ばまでは既存

プロセスの改修改善に加え、設備更新タイミングにあわせた次世代プロセスの導入に

よる飛躍的改善も一部の工程で期待される。図 3.1-2 に初号機導入が計画されている

次世代コークス炉(SCOPE-21)の概要を示す。

図 3.1-2 次世代コークス炉(SCOPE-21)の概要

また高炉やコークス炉は、高温・還元雰囲気など反応炉や分解炉としての優れた条

件をそろえており、廃プラスチック等の廃棄物のリサイクルに適している。加えて廃

プラ等の熱分解によって発生したガスや炭化水素油、コークスもすべて既存のプロセ

スで高効率に利用することができるため、極めて高い物質・エネルギー利用効率を得

ることができる。今後は廃プラスチックに加えて、廃タイヤ、バイオマスなど、さま

ざまな廃棄物の活用による一次投入エネルギーの削減がさらに進められると考えられ

る。図 3.1-3 にコークス炉における廃プラスチック再資源化の概要を示す。また原料

炭や廃プラスチックからコークスを製造する際コークス炉ガスが発生する。コークス

炉ガス中には大量の水素が含まれており、PSA 法等によって簡便に分離回収すること

ができる。再生可能エネルギーを利用した水素供給が可能となるまでの間、この副生

水素が民生・運輸部門における水素供給源の一翼を担うものと期待される。加えて、

現在未回収となっている廃熱による水素を増幅は、省エネルギー(排熱回収)の観点

からも重要な課題である。図 3.1-4 に副生水素供給の概要を示す。

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- 87 -

図 3.1-3 コークス炉での廃プラスチック有効利用の概要

図 3.1-4 副生水素の供給の概要 (3)今世紀後半のシナリオ 今世紀後半には、現時点では技術的にも経済的にも成立困難な還元剤の非炭素化・非

化石化や、高炉-転炉法に変わる革新製鉄プロセス実現の可能性はある。しかしこの

ようなプロセス革新は、現在確立している原料炭を出発原料としたエネルギーのカス

ケード利用システムや、セクターを越えた廃棄物の利用システムなどに大きな影響を

与えると考えられ、これらの課題を克服する対策技術の検討もあわせて必要となる。 また一貫製鉄所においては、原料炭から持ち込まれる炭素の約90%は副生ガスとなる。

加えて未だに未活用となっている低レベル廃熱が存在する。そこで製鉄プロセスで発

生する CO2 を中低温未利用廃熱を利用して回収する技術も、還元材としての石炭の利

用と環境制約を両立させる手段としては有効と考えられる。図 3.1-5 に一貫製鉄所で

の CO2 回収の概要を示す。

プラスチック成型体 コークス炉での乾留工程

コークス炉:炭化室と加熱室が交互に並ぶ炭化室内の原料炭とプラスチックは空気を遮断された状態で加熱室側から間接加熱されることにより、揮発成分(ガス・油等)を完全に分離され強固なコークスとなる

40%コークス炉ガス

40%炭化水素油

20%コークス

既存発電所で高効率発電水素供給

プラスチック原料・塗料原料等として再利用

高炉還元材として原料炭代替

プラスチック分解生成物 終利用形態

原料炭

廃プラ

コークス

軽油・タール

COG

40%

40%

20%

6%

22%

72%

混入比Max1.5%約140億Nm3/年

CO23%

CO6%

CmHn3%

CH430%

H255%

N23%

副生水素供給ポテンシャル約80億Nm3=FC車1000万台相当

 H255%CH4

30%

COG組成(vol%)

PSA法による簡便な水素製造

未利用COG顕熱利用H2増幅約8億Nm3=FC車100万台相当

廃熱有効利用のためのエネルギーキャリアとして期待

2030年断面のH2供給源として期待

実証・システム構築重要

触媒技術開発重要

JHFC実証試験

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- 88 -

図 3.1-5 中低温未利用廃熱を利用した副生ガスからの CO2 分離回収の概要

(4)製品性能改善の重要性 鉄鋼産業に限らず製造業にとって製品の性能は競争力の源泉である。天然資源に乏

しい我が国が将来にわたって国力を維持するためには、産業の国際競争力維持向上は

必須である。また、今回検討のテーマであるエネルギー資源の有効利用、環境制約へ

の対応を各セクターが実現するためにも、性能の優れた製品を供給する責任は産業部

門が負っている。 図 3.1-6 に高張力鋼板(ハイテン)の利用拡大による自動車軽量化効果とこれに伴う

燃費改善効果を、また図 3.1-7 に電磁鋼板の性能改善による鉄損の改善効果とそれに

よる CO2 削減効果をそれぞれ示す。いずれも素材品質の改善による最終商品の性能改

善を示しているが、このような高い技術力が国際競争力の確保とともに、民生・運輸・

転換部門における製品を通じたエネルギー資源有効利用・環境対応の源泉を担うこと

になる。

高炉

中低温未利用廃熱

二酸化炭素吸収設備

BFG

二酸化炭素吸収媒体

吸収液再生設備

発電所等BFG利用設備

分離された二酸化炭素

鉄鋼プロセス

・BFG配管系統に化学吸式 CO2分離回収設備を設置・中低温排熱の利用により CO2分離のためのエネル ギー消費を 小化・CO2分離後のBFGは発電 所等で高効率利用

・高濃度CO2含有副生ガス(BFG)が存在・製鉄所内に大量の中低温未利用廃熱が存在

地中貯留・海洋隔離

20

30

40

50

1990 1995 2000 2005 20102

4

6

8

%

%

ハイテン比率

軽量化・燃費改善比率

軽量化比率

燃費改善比率

ハイテン比率

推定値

図 3.1-6 高張力鋼板比率拡大による自動車軽量化効果

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- 89 -

製鐵所境界

亜鉛

発 電 所

電 力

排 熱 蒸 気

ダストリサイクル設備

ダスト

化成品工場

肥料 硫酸スチレン

鉄鉱石

石灰石

水素

CO2

酸素窒素

アルゴン

廃プラ

原料炭

廃タイヤ

タール・軽油 還元鉄

焼結設備

コークス炉

高 炉 熱間圧延冷間圧延

表面処理

石灰焼成炉

転炉・CC

バイオマス

水素製造設備

炭酸ガス製造設備

空 気 分 離 設 備

Ar

排熱回収設備

スラグ処理設備

セメント 骨材 路盤材 断熱材

スクラップ

スラグ スクラップスラッジ塗料

薬品

熱媒体

プラスチック

燃料

電 力

蒸 気

鉄鋼製品

CO2副 生 ガ ス

図 3.1-7 電磁鋼板性能改善による損失低減効果 (5)クロスバウンダリーの取り組みの重要性 鉄鋼を始めわが国の産業の多くはすでに省エネルギーを徹底しており、単独での更

なる効率改善は極めて困難状況にある。近年取り組みが本格化してきた産業間連携は、

異なる事業者同士が連携してエネルギーや副産物を利用しあい、コンビナート大での

総合効率を改善しようとするものである。また鉄鋼業が取り組んでいる廃プラスチッ

クの有効利用や、将来期待される副生水素の供給は、民生・運輸部門とセクターを越

えて物質やエネルギーを供給しあい、総合効率を高めようとする取り組みである。こ

のようにセクターを越えたクロスバウンダリーの取り組みはトータルのエネルギー効

率、物質利用効率の改善に繋がるものであり、今後さらに重要性を増すものと考えら

れる。図 3.1-8 に

鉄鋼業における

クロスバウンダ

リーの取り組み

の概要を示す。製

鉄所の境界をは

さんで、鉄鋼生産

のための原材料

や鉄鋼製品以外

のさまざまな物

質やエネルギー

が出入りしてい

ることがわかる。

-300

-200

-100

0

100

200

300

19

60

19

70

19

80

19

90

19

95

20

00

20

05

20

10

CO

2削

減効

果[

対1

96

0年

] (

万㌧

/年

-1 .5

-1

-0 .5

0

0 .5

1

1 .5

無負

荷損

[3

00

MV

A]

(kW

/M

VA

省エネ効果(軽量化効果)

省エネ効果(鉄損向上)

鉄損値

変圧器の寿命:30年と仮定した計算値

Base:1960年

高配向性

薄手材(0.23mm)

磁区制御材

図 3.1-8 鉄鋼業におけるクロスバウンダリーの取り組み

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原油 熱分解 モノマープラスチック

製品 エネルギー廃棄物

ケミカルリサイクル

マテリアルリサイクル

リユース

サーマルリサイクル

従来技術

石炭バイオマス

重質油

合成ガス(CO,H2)

プラスチック

製品 廃棄物ガス化

ガスタービン燃料電池

エネルギー

排熱

物質エネルギー再生

新技術: 物質・エネルギー再生

モノマー

3.2 化学産業 (1)2100 年の想定される姿

エネルギーとして安価な原料が素材原料としても使われてきたが、石炭以外の化石

燃料が使えない 2100 年になっても、同様に安価な原料が利用されるであろう。よって、

バイオマス、廃棄物および石炭をガス化して CO と H2 からエチレン、プロピレンある

いはBTXなどの基礎原料(モノマー)を製造し、数万種類に達するといわれている既

存の化学品の合成インフラに乗せていくのが、唯一の解と思われる。

化学産業では、原料の 60%のエネルギーが物質中に保存され、30%がエクセルギー

損失であり、廃熱はおおよそ 10%である。大幅にエネルギー消費を低減するには、60%

を占める物質中に保存される物質エネルギーを再生し利用する仕組みが欠かせない。

プラスチックを例にして、現状の物質の流れを示したのが図 3.2-1 である。エネル

ギーが保存されている物質、いわゆる廃棄物は、モノマーに分解されて再重合される

か、プラスチックのまま再成型される、もしくは、そのままの製品形状で再利用され

る。また、焼却によりエネルギーに変換される。

図 3.2-1 従来技術および新技術における物質のフロー(プラスチック)

2100 年には、原油や天然ガスが存在せず、また生産と処理に関する二酸化炭素排出

量を大幅に削減することが求められている。つまり上述の従来技術では、廃棄物の量

は減るものの、原料取得の制約を根本的に解決できない。

また、物質(ここではプラスチック)は加熱処理を行うことで分子量の低下という

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100

87

87

39

(1) 現行石油化学プロセス

熱分解合成

プロセス

60 物質中に保存

30 エクセルギー損失

10 廃熱

(3) コプロダクション 33%

60 物質中に保存

13 エクセルギー損失

7 廃熱

エクセルギー損失(20%) x 1/3 = 7%を電力・水素で回生

SC3 合成プロセス

60 物質中に保存

20 エクセルギー損失

7 廃熱

40%(エクセルギー損失+排熱) x 2/3 = 27%

(2) プロセスの省エネ 33%減 (4) 物質エネルギー再生 80%

60 物質中に保存

13 エクセルギー損失

7 廃熱

物質中に保存(60%) x 0.8 = 48%を物質エネルギー再生

ナフサ100

化学品60

廃棄物・バイオマス39 (32)

化学品60

電力・水素7 (0)

合成プロセスSC3

合成プロセスSC3

7 電力・水素で回生

48 物質エネルギーとして再生 7 電力・水素で回生

劣質化が生じてしまうため、一部の廃棄物は焼却せざるを得ないことになり、二酸化

炭素が排出することになる。

従って、資源制約と二酸化炭素排出量削減に対応するためには、まず廃棄物を殆ど

ゼロにするシステムが求められる。そこで廃棄物をガス化し、ガス化により製造され

た合成ガス(一酸化炭素と水素)からプラスチック等の原料を合成し製品を製造する、

物質エネルギー再生が必要となる。

このガス化するための原料としては、廃棄物だけではなく、バイオマスなどを使用

することも可能となる。

上記の概念を定量的に説明したものが図 3.2-2 である。(1)に示すように現行石油化

学プロセスでは、おおよそ投入エネルギー100 の内、60 が物質中に保存され、30 がエ

クセルギー損失、10 が廃熱となっている。プロセスの改善により省エネを実施するこ

とで、エクセルギー損失と廃熱量を減らすことが可能である。例えば、(1)におけるエ

クセルギー損失と廃熱量を 2/3 に減らすことができた場合には、製品を 60 のままとす

ると、(2)に示すように原料を 100 から 87 に減らすことができる。

さらに、コプロダクションの導入により、エクセルギー損失を減らし電力・水素に

再生することが可能である。(3)はコプロダクションによって、エクセルギー損失のう

ち 1/3 を回生して、電力・水素が 7、生産されたとして図示している。

化学産業では、このように省エネおよびコプロダクションを推進しても、製品 60

のために原料が 87 必要となる。そこで省エネルギー目標を達成するためにさらに、物

質・エネルギー再生の概念を導入し、物質中に保存されたエネルギー、60 のうちの 80%、

すなわち 48 を、原料に戻すことができると仮定すると、(4)に示すように、原料を 39

まで低減することが可能となる。

最終的に新たな39のエクセルギーと回収された48のエクセルギーから60の製品を

生み出し、7 の電気・水素を生産することになる。この概念を実現するには、ガス化

図 3.2-2 化学産業のモデル

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により廃棄物を受入れガス化するとともに、ガス化で生成した合成ガスから化学製品

を製造するプロセスの技術が必要である。

(2)コプロダクションによるエクセルギー回収

ガスタービンインテグレーションによるコプロダクションについて、熱分解による

エチレン製造を例に説明する。

原料から化学品を吸熱反応である熱分解によって生成させる場合、通常、燃料を燃

焼し反応に必要な熱を投入する。また、発電は燃料を燃焼し、スチームを発生させ電

力とする。ガスタービンを導入し、ガスタービンにより発電し、その廃熱を熱分解反

応に利用するフローを図 3.2-3 に示す。図において、上段の数字はエンタルピーのレ

ベルを表し、下段はエクセルギーのレベルを示す。

従来の方式では、10 の燃料から4の電力を発生し、20 の原料から 120 の化学品を製

造していた。30 の原料・燃料をエクセルギーの損失を小さくなるよう加圧燃焼し、高

温高圧のガスによりガスタービンを駆動し、10 の電力を生む。一方、高温のガスター

ビン排気ガスを熱分解反応に使用し、120 の化学品を製造する。その結果、6 の電力を

生み出すことができる。このインテグレーションによりエクセルギーロスを小さくし

たことになる。

20

20

Fuel

20

 5

100

 95

原料

120

100

化学品

20

 5

100

 95

原料

120

100

化学品

ボイラー+ST

GT+熱分解

燃焼+熱分解

10

10

エンタルピー

エクセルギー

Fuel

電力

廃熱

10

 410

106

30

30

Fuel

30

15

電力

インテグレーションによるコプロダクションの例

燃料をエクセルギーの損失を 小にしながら加圧燃焼し、 ガスター

ビンにより電力と熱をコプロダクションする。 発生した熱で化学品を合

成するエネルギーとする。 このインテグレーションによりエクセルギー

ロスを 小とする

図 3.2-3 ガスタービンインテグレーションによるコプロダクション

(3)技術の推移について

2100 年の姿に至る過程では、石油や天然ガスを原料として使える期間がある。その

間に省エネを推進するだけではなく、来るべき 2100 年の姿にソフトランディングする

ための技術を開発していく必要がある。その意味から、2100 年から遡り、技術が推移

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2000 2050 2100

新規熱分解プロセス

接触分解プロセス

ガス化 合成ガスCO, H2

C1 化学 エチレンプロピレンBTX

メタンカップリング

プロピレン増産型FCC

改質

ナフザ

重質油

石炭

バイオマス廃棄物

天然ガス

する様を検討した結果を示す。

現在主流のナフサ留分の熱分解によるエチレン製造は極めて大量のエネルギー消費

プロセスであることから、化学産業での大幅な省エネ化を実現するためには基礎原料

(エチレン、プロピレン、BTX)製造段階への省エネ型プロセス導入が必要であり、

原料面からの技術推移を整理すると概ね図 3.2-4 のようになる。

図 3.2-4 化学産業における原料面からの技術推移

ナフサを原料とした熱分解プロセスは省エネ型新規熱分解プロセスを経て接触分解

プロセス(プロピレン増産型 FCC からさらにエチレン収率を高めたプロセス)へと移

行し、原油がピークアウトするまで存続する。一方で、化石資源のうち比較的埋蔵量

の多い天然ガスからの直接転換技術が開発され、メタンカップリング法1等によるオレ

フィン製造プロセスが導入される。

さらに、長期的には各種炭素源からのガス化による合成ガス(CO、H2)を経て、SC3

化学(Sustainable Carbon Cycle Chemistry:C1 化学体系を含んだ持続的なカーボン

サイクル化学)によるオレフィン製造に移行する。また、この過程においては重質油

の分解や天然ガスの改質(スチームリフォーミング、部分酸化、自己熱改質)を含みつつ、最終

的にはバイオマス、廃棄物などの再生可能資源からのガス化による合成ガス製造へと

集約化される。 また、現在の末端にまで広がった石油化学製品の成立背景および消費者の利便性を

考えるとこれら全ての化学品を合成ガスから直接合成することには相当の困難が伴う

ことから、多くの化学品においては現状の製造フローが踏襲されるが、一方では原料

の転換、また原料の取得方法の変化に伴う革新的な合成プロセスの開発が必要となる。 1 メタンカップリング法は気相酸素、触媒格子酸素、触媒吸着酸素などの酸素種の存在下でメタン 2 分子

を結合してエタンまたはエチレンに転換する反応である。

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- 94 -

次に、化学合成フローを製品面から眺めると、次のようになる。 ①ガス化:化学原料併産型 IGCC/IGFC

化石資源を含む多様な原料を用いてガス化(合成ガス製造)され、IGCC/IGFC によ

り電力生産が行われる一方、合成ガスが化学原料として利用される。ガス化原料は

最終的にはバイオマス等に移行する。

②SC3 化学(サステイナブル・カーボンサイクル化学体系):合成ガスからのエチレン、

プロピレン、BTX の直接合成技術

エチレン、プロピレン等を出発とした現在の石油化学製品の生産体系を維持する

ために、合成ガスからのエチレン、プロピレン製造が行われる。合成ガスからの直

接合成や、メタノール経由プロピレン生産など多様な技術が開発されているが、最

終的には経済合理性を持ったプロセスに集約されることになる。 ③革新的合成プロセス:インテグレーションによる化学品合成プロセスの革新 既存のエチレン、プロピレンからの石油化学フローは維持されるが、個々の化学製

品生産プロセスにおいては革新的な触媒開発等により、省エネ化が実現されること

になる。 ④接触分解:熱分解から低温接触分解へ 最終的なバイオマス/SC3 化学による石油化学体系に至る段階(~2050 年)において

は、石油精製において現在導入されている接触分解同様のプロセスにより基礎原料

の製造が行われる。

図 3.2-5 製品面からの化学合成フロー

(4)化学産業のプロセス導入ロードマップ

以上の基本的考え方およびエネルギー消費率等の見通しに基づいて、資源・環境制約

条件下における化学産業の技術を検証した結果、プロセス導入ロードマップは概ね次

のように整理される。

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- 95 -

2000 21002050

ガス化-C1化学

物質再生

GTL・メタノール

接触分解プロセス

コプロダクション省エネ化

熱分解プロセス

GDP

図 3.2-6 化学産業のプロセス導入ロードマップ

GDP 増大に伴い石油化学製品の生産量も増大するが、その原料であるオレフィン製

造技術のロードマップは、

・2010-2020 年:熱分解プロセスの省エネ化は進展するが、漸次、接触分解プロセ

スへ移行する。

・2010-2020 年:海外の低廉な天然ガスを利用した GTL・メタノール・DME が輸入

され、その一部が石化原料として用いられる。

・2040 年- :2020~2040 年にガス化/SC3 化学プロセスが逐次開発導入され、

2040 年以降に本格的な導入期を迎える。

3.3 セメント産業 (1)2100 年の想定される姿

資源制約と二酸化炭素削減の観点から、2100 年のセメント産業を考えた場合、他業

種や他分野から出てくるガス化残渣などの最終廃棄物を原料とし、石灰石や石炭等の

化石エネルギーを使用しない産業が想定される。

(2)技術ロードマップ

セメント産業における技術導入のロードマップは次のように想定している。 既存のポルトランドセメントは石灰石を主原料に粘土、珪石、鉄等を焼成して生産

されている。一方、廃棄物からの焼却灰中にはセメント製造に必要な成分が含まれて

いるため、これを利用することが可能であり、現在でも制限はあるものの実用化され

ている。 このように、セメント産業は原料や燃料に大量の廃棄物・副産物(高炉スラグ、石

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- 96 -

炭灰、副生石膏、廃タイヤ等)を利用できる静脈型産業であり、将来にわたって、各

産業および民生部門から排出された廃棄物の有効利用に資する。

エコセメントは都市ゴミ、焼却灰、下水汚泥を主原料にした新しい品質のセメント

であり、廃棄物問題を解決する一手段としての期待も大きい。現在は、原料廃棄物中

に含まれる塩素(約 1%)のため用途が限定されているが、脱塩素技術の開発により

通常セメントに近いものを開発することが可能である。

ゼロエミッション型セメントは廃棄物利用を一層進め、原料のほぼ 100%を廃棄物

としたものである。つまりセメント製造時はもちろんのこと、他産業部門での廃棄物

削減に多大な貢献が期待できる。 以上のように、セメント産業においては、図 3.3-1 に示すように現状よりも一層省エ

ネ化を進めつつ、将来の循環型社会における廃棄物を利用したゼロエミッション型セ

メントへと移行するものと推定される。

図 3.3-1 セメント産業のプロセス導入ロードマップ

(3)エネルギーバランスの推移

現在は、図 3.3-2 に示すように石灰石を原料とし、廃棄物等を燃料としてセメントを

生産している。ここで、国内と輸出は販売量であり、統計上、その合計が生産量と一

致していない。 2100 年においては GDP が 2 倍になると想定しているが、製品の高性能化を図ること

によりセメントの生産量を 1.6 倍に抑えることが可能となる。また、前述したように、

2100 年におけるセメントは全てゼロエミッション型セメントである。

このゼロエミッション型セメントを現行の 1.6 倍、生産するために、原料として廃

セメント・廃棄物等が投入される。ここで必要となるエネルギー量は現在の 1.6 倍と

なるが、省エネルギープロセスの導入により 33%が削減できると仮定している。

なお、原料廃棄物中には塩素、重金属等が含まれていることから、これまでに開発

された高効率脱塩技術、重金属回収技術により回収された塩素および希少金属の有効

利用を図ることが必要になる。

廃棄物の原料化燃料化

GDP

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- 97 -

石灰石 103

石炭等 3.1 MJ/t 電力 0.4 MJ/t

廃棄物等 33 国内消費 85

輸出 9

セメント

100

2100年生産量 1.6 倍高性能化 1.3 倍

廃セメント・廃棄物廃棄物ガス化残渣 100

廃棄物系 22.8 MJ/tエネルギー (33% 省エネ)

セメント

100

国内消費 85

輸出 15

希少金属塩素等

現行セメントプロセス

ゼロエミッション型セメントプロセス

ボイラー・ST 16 MJ/tコジェネ 0.8 MJ/t直接加熱・その他 1.4 MJ/t

製紙工場

用紙 60板紙 40

パルプ工場

18 MJ/t重油、石炭その他

12 MJ/t

黒液6 MJ/t

廃熱5 MJ/t

電力 3 MJ/t熱 10 MJ/t

国産チップ 20輸入チップ 53

40 100

古紙 60

廃棄30

輸出10

購入電力0.7 MJ/t

図 3.3-2 セメント産業におけるエネルギーバランスの推移

3.4 紙・パ産業における将来技術予測 (1)紙・パ産業の現状 紙・パ産業では製品の 60%を再資源化し、概ね 3 回程度循環利用され、循環型社会の

実現に近づいている。投入チップの約 50%は黒液に、また残りの 50%はパルプとなっ

て製紙原料となる。黒液は燃料として生産工程に必要な蒸気あるいは電力に転換させ

て利用しているが、黒液由来のエネルギーだけでは不足するので、化石燃料(重油・

石炭)を追加投入している。

図 3.4-1 紙・パ産業における現状のエネルギーバランス

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バイオマスIGCC/IGF8.1 MJ/t

電力 55% 4.5 MJ/t熱 30% 2.4 MJ/t

6.0 MJ/t

黒液25

4.0 MJ/t

エネルギー再生12.5

2.1 MJ/t

電力 2.1 MJ/t熱 2.4 MJ/t

パルプ25 100

物質再生 75

廃棄12.5

セメント用燃料

廃棄物系バイオマス木質バイオマス

12.52.1 MJ/t

チップ50

7.9 MJ/t

電力 2.4 MJ/t熱 0 MJ/t

パルプ工場 製紙工場

(2)2100 年の想定される姿

紙・パルプ産業は、現状でもバイオマスを原料とし、また、廃棄された紙の循環利

用が進んでいる。将来はエネルギーの不足分として、現在投入している化石系エネル

ギー供給をゼロとし、さらに他の産業にもエネルギーが供給できる姿を想定している。

黒液の他に、廃棄物系バイオマスおよび木質系バイオマスを加えてガス化し、高効率

なバイオマス IGCC/IGFC を適用することにより、外部から燃料を投入することなく、

業界外へ電力を供給できる。

図 3.4-2 エネルギー産業と連携・融合した紙・パ産業 (3)エネルギー産業と連携・融合した紙・パ産業

2100 年には、生産量は他の製造製品と同様に 1.6 倍となり、再資源化率は 75%まで

引き上げられる。再資源化率が上昇するとパルプ繊維は短くなりペーパースラッジと

して排出され、燃料としてエネルギー再生用に利用される。無機分が多いスラッジは

セメント燃料となる。

黒液を燃料として生産工程に必要な熱・電力を IGCC/IGFC によって発生させている

が、黒液だけのエネルギー供給だけではエネルギー需要を賄いきれないので、新たに

バイオマス燃料を 2.1 MJ/t 投入している。

また生産工程に必要な熱をIGCC/IGFCによって発生させるとした場合、製品2.4 MJ/t

の電力が余剰となり、他産業等へ供給することが可能となるので、紙・パ産業はエネ

ルギー転換産業の役割も果たすことができる。

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転換分野ロードマップ(資料2-4)

転換

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転-2

転換分野の技術スペックの考え方

②技術スペック設定の基本的な考え方

■需要分野が必要とするエネルギー量を各ケースにて不足無く供給していく。

CO2原単位 270 g-CO2/kWh(2/3倍)

120 g-CO2/kWh(1/3倍)

0 kg-CO2/kWh370 g-CO2/kWh(1倍)

2100205020302000転換

需要端での全エネルギー需要(最大ケース)

1.5倍 2.1倍1倍

CCS併用化石燃料使用時 110 g-CO2/kWh(1/3 倍)

電化・水素化率 2倍 4倍→約8兆kWh1倍

ケースA: 化石資源+二酸化炭素回収・隔離(CCS)利用ケース

ケースB: 原子力利用ケース

電化・水素化率 3倍 4倍→約8兆kWh1倍

ケースC:

電化・水素化率 2倍 3倍1倍

省エネ+再生可能エネルギー利用ケース

需要分野の省エネ0.3倍→約2兆kWh

※各ケースの発電量は、需要端での全エネルギー需要×電化水素化率(ケースCでは,需要分野の省エネを掛け合わせる)例)2100年のケースA:2000年の発電量約1兆kWh×2.1倍×4倍=約8兆kWh

①ケース、分野共通の条件

■資源制約の条件 :想定した石油ピーク(2050年)、天然ガスピーク(2100年)までに、他のエネルギー源と互換可能な状態とする

■環境制約の条件 :CO2排出量/GDPを2050年に1/3、2100年に1/10以下とする

転-3

転換分野の技術スペック実現のための技術群の考え方エネルギー需要を効率的かつCO2排出原単位改善を図りつつ満たすため、以下の3つの技術群の備えが必要。①化石資源利用の効率的利用

石油ピークに備えて天然ガスへの燃料転換、さらには資源量が比較的豊富な石炭への燃料転換を行う。しかしながら、石炭等の資源も有限であるため、発電(転換)効率向上など化石資源利用の高効率化が重要である。このためには、ガス化発電(燃料製造)技術、燃料電池と複合した高効率発電技術が必要である。また、CO2排出を伴うため、CO2回収・隔離(CCS)技術が必須となる。

②原子力利用技術核燃料資源の有効利用が必要である。そのためには、現状の軽水炉の効率向上ともに、核燃料サイクルの確立が必

須となる。③再生可能エネルギー利用技術

太陽、地熱、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーによる発電(転換)効率向上が重要である。太陽や風力などの設備利用率は低く、大きな設備容量を必要とするため、設置を容易にする技術も必要である。また、自然エネルギーは気象条件等に左右されるため、需要とのマッチングを図るには、大規模な蓄エネルギー技術や系統制御(エネルギーマネジメント)などのネットワークシステムが必須である。

■ケースA (石炭等の化石資源とCO2回収・隔離の最大利用ケース)需要側での省エネおよび機器効率向上がないという想定の下、エネルギー需要は2100年で約2倍、石油および天然ガスのピークに備えるために電化・水素化率が約4倍になるため、2000年の総発電量の約8倍の供給が必要となる。

■ケースB(原子力の最大利用ケース)ケースAと同様に約8倍の電力あるいは水素の供給が必要となる。

■ケースC(再生可能エネルギーの最大利用と究極の省エネルギー実施ケース)需要側での省エネ(需要側での創エネ含む)および機器効率向上のため、需要側が必要とするエネルギー量は、省エネ等がない場合に比べて約0.3倍に。電化・水素化率は、相対的に電気・水素以外の割合が大きくなるために約3倍。したがって、2000年の総発電量の約2倍の供給が必要となる。

③2100年、2050年の条件を満たす個別条件から、逆算によって2030年の個別条件を設定。

(例)ケースB:原子力最大利用ケースではウラン資源の制約から、ウラン利用率の向上が重要である。2100年では約80%、2050年では約30%が必要であり、2030年では現状の1%以下から5%程度にまで向上させることが必要となる。

④各時点の個別条件を満たすために求められる技術スペック、時期等をロードマップとして整理。

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転-4非化石エネルギーの導入

再生可能エネルギー

蓄エネ

設置容易化

効率向上

地熱

太陽 道路・ダムなどあらゆる場所に設置できる技術

原子力の活用

効率向上

負荷追従運転

核燃料サイクル

化石使用量の削減

化石資源利用の効率向上

燃料転換(石油)

(石炭)

天然ガス

石炭(クリーン・コール・テクノロジー+二酸化炭素回収・隔離(CCS))

バイオマス 木質・バイオマス(廃棄物系・未利用系)

燃料作物生産→

風力 陸上 海洋→

CO2原単位 270 g-CO2/kWh(2/3倍)

120 g-CO2/kWh(1/3倍)

0 kg-CO2/kWh

0 t-CO2/kWh

370 g-CO2/kWh(1倍)

2100205020302000転換

需要端での全エネルギー需要(最大ケース)

1.5倍 2.1倍1倍

CCS併用化石燃料使用時 110 g-CO2/kWh(1/3 倍)

電化・水素化率 2倍 4倍1倍

転-5

210020502030

ガス化発電・燃料製造技術発電(転換)効率 41% 46% 55% 65%

・石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)

・化学再生形IGFC

・IGCC 1500℃級GT

CO2回収・隔離技術

・石炭ガス化複合発電(IGCC)

・IGCC 1700℃級GT

50%

高圧ガスからの分離・回収技術

電力・燃料併産技術

化石資源利用+CO2回収・隔離技術

エネルギー貯蔵・輸送技術

軽水炉の効率向上日本型次世代型軽水炉

マイナアクチニド核変換 長半減期FP核変換

第4世代軽水炉(超臨界圧炉)

高度化 (ガス冷却FBR)

発電効率 34% 36% 43% 45%

44% 48% 発電効率 42%

原子力利用技術

原子力水素・高温水蒸気電解

再生可能エネルギー利用技術

2000概要

石炭ガス化水素製造技術

ネットワーク技術分散電源連携技術 電力貯蔵を含めた短期最適運用技術

パイプラインによる水素の輸送

電力・燃料貯蔵(水素・合成燃料等)

リチウム電池 新型二次電池、SMES、フライホイール 大容量エネルギー貯蔵

瞬時負荷平準化 日間負荷平準化(1日~数日間) 季節間調整

電解水素・水素貯蔵技術

※原子力最大利用の場合(核燃料資源制約による)

※化石資源最大利用の場合

浅部地熱系(蒸気発電、バイナリー発電) 深部地熱系 高温岩体発電地熱発電

太陽光発電小規模独立分散発電→広域連携

MW級大規模発電

薄膜型結晶型 超高効率新型

30% 40% 22% 発電効率 13% 太陽光・熱利用の水素製造

風力発電(陸上)大型化、低コスト化

沿岸近海着定式 洋上近海 洋上遠海浮体式(洋上)

バイオマス利用直接燃料 ガス化・ガス化改質 バイオマスガス化燃料・水素製造

大規模バイオマス発酵水素製造

高速増殖炉 FBR(核燃料サイクル)

メタン発酵、エタノール発酵

燃料作物生産

色素増感型等

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転-6

2100205020302000

化石資源利用+CO2回収・隔離技術■ 資源埋蔵量が比較的多い石炭、非在来型化石資源等の化石資源によってエネルギー供給を賄うために必要な技術■ 発電効率等の向上および化石資源の利用に伴って発生するCO2を回収・隔離する技術が必要■ 需要側での機器効率向上などによる省エネがないという想定の下では、エネルギー需要は2050年で1.5倍、2100年で2.1倍、電化・水素化率が2倍、4倍になるため、2000年の総

発電量約1兆kWh(3,800PJ)は、2050年には約3兆kWh(11,000PJ)、2100年には約8兆kWh(29,000PJ)のエネルギー供給が必要となる。

40%約3兆 kWh

電気・水素化率 20%必要総発電量 約1兆kWh

80%約8兆 kWh

石炭ガス化水素製造技術

CO2回収・隔離技術高圧ガスからの分離・回収技術

隔離量 15億t-CO2/年(転換分野でのCO2回収量 >95%)

低コスト化隔離影響評価・安全性評価技術

40億t-CO2/年( >95%)

石炭等化石資源量の確保 資源探査・開発技術、前処理(選炭・脱灰・改質・高品位化等)技術、輸送技術

全発電量を化石燃料で賄うのに必要な化石燃料の量

3億toe(13,000PJ) 5億toe(19,000PJ) 13億toe(54,000PJ)

発電・燃料製造効率の向上発電(転換)効率 41% 46% 55% 65%

・石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)

・化学再生形IGFC

・IGCC 1500℃級GT

・石炭ガス化複合発電(IGCC)

・IGCC 1700℃級GT

50%

※化石資源最大利用の場合

電力・燃料併産技術(コプロダクション)

化石燃料廃棄物処理・有効利用技術

2.5億toe(10,000PJ)

現状石炭火力 0.4億toe(1,700PJ)化石全体 1.3億toe(5,500PJ)

石炭等化石資源量の確保■ 2100年で約8兆kWh(29,000PJ)のエネルギー供給を賄うためには石炭等化石資源量の確保が必要となる。■ 現在の石炭火力による発電量は約2千億kWh(600PJ)であり、設備容量は約35百万kWである。2000年の年間の発電用石炭輸入量は、約0.6億トン(0.4億toe、1,700PJ)である。供

給するエネルギー量を全て化石燃料で補うとすると、発電(転換)効率向上を考慮しても、 2050年には7億トン(4.5億toe、19,000PJ)、2100年では約20億トン(13億toe、54,000PJ)の石炭調達が必要となり、資源探査・開発技術、選炭・脱灰等の前処理技術、大量輸送技術の開発が必要である。

■ 蒸気タービン等に利用する水の確保も重要となってくる。

発電・燃料製造効率の向上■ 化石資源の有効利用として、発電・燃料製造のさらなる高効率化が重要。■ 石炭ガス化複合発電(IGCC)に始まり、最終的には燃料電池と複合したIGFC、およびエクセルギーも有効利用する化学再生形IGFCにより高効率化を図る。■ 脱灰・改質などの前処理技術、排ガス処理・石炭灰の有効利用など、クリーン・コール・テクノロジーの周辺技術の開発も必要。

CO2回収・隔離■ 化石資源の利用にはCO2排出を伴うため、CO2の回収・隔離技術が必須である。化石資源を最大限利用するケースでは、40億トン-CO2/年の貯留場所の確保が必要となる。

(3,800PJ) (11,000PJ) (29,000PJ)

転-7

技術以外の要因● 他の化石に比べ埋蔵量が多い石炭の重要性が認識されているが、①経済の伸展、電力需要の今後の増大が不透明であり、さらに②電力自由化の拡大、③地球温

暖化に伴うCO2環境制約の今後の負担が不透明な状況にあることから、効率が高い大型火力、新たな発電システムの導入、CO2排出量の多い石炭火力導入は進みにくい状況。

● 地中隔離可能量:日本及び近海におけるCO2地中貯留可能量は約35~900億トン(エン振協調べ)とされる。2030年以降にCO2回収隔離が行われるとすれば、2085年程度にて貯留可能量を超える。隔離量確保の観点からも、海洋隔離の隔離影響評価・安全性評価、国際間取り決めが必要である。

● 総合効率向上(エネルギー有効利用)として大規模熱供給・有効利用技術/社会システムづくりも併せることが重要である。

超々臨界圧火力発電800/800℃600/610℃ 700/720℃

発電効率 42% 46% 49%

G/Tコンバインドサイクル発電

1700℃級LNG等ガス燃料、クリーン油用

1500℃級石炭直接利用

発電効率 51% 55%

既存発電方式

高耐熱・耐食性材料技術

(主蒸気/再熱蒸気温度)

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転-8

2100205020302000

原子力利用技術■ 運転時にCO2の排出を伴わない原子力によってエネルギー供給を行うのに必要な技術。■ ウラン資源の制約により、効率向上と核燃料サイクル技術の確立が重要。■ 需要側での省エネおよび機器効率向上がないという想定の下では、エネルギー需要は2050年で1.5倍、2100年で2.1倍、電化・水素化率が2050年で3倍(産業部門等需要部門で

の電化・水素化をすすめる必要があるため)、2100年で4倍になるため、2000年の総発電量約1兆kWh(3,800PJ)は、2050年には約4兆kWh(14,000PJ)、2100年には約8兆kWh(29,000PJ)のエネルギー供給が必要となる。

60%30%

約4兆 kWh

電気・水素化率 20%ウラン利用効率 <1%必要総発電量 約1兆kWh

80%80%

約8兆 kWh 5%

出力増強>20%、長寿命化>60年、超高燃焼度>100 GWd/t(6PJ/t)、運転サイクル>24ヶ月日本型次世代軽水炉

第4世代軽水炉(超臨界圧炉)

原子炉の効率向上36%発電効率 34% 43% 45%

小型炉実証原子力水素(熱化学法、軽水炉-水電解、高温水蒸気電気分解など)

高温ガス炉(第4世代炉)(トリウムTh利用も視野に)

(現状原子力発電量 0.32兆kWh)

効率向上■ ウラン資源の制約により、新型炉の開発などによる発電効率の向上が必要。

核燃料サイクルの確立■ ワンスルー型の核燃料利用ではウラン資源の制約があるため、核燃料サイクル技術の確立が必須である。また、原子力を最大利用する場合の2100年における発電量8兆kWh

(29,000PJ)を実現するためには、高速増殖炉(FBR)の早期立ち上げ(2030年頃)とプルトニウム倍増時間の短縮(現状の35年→20年)が必要となる。

電力・水素貯蔵技術と連携した負荷追従、コジェネ、コプロ

(3,800PJ) (14,000PJ)(29,000PJ)

マイナアクチニド・長半減期FP核変換

マイナアクチニド核変換 長半減期FP核変換 高度化 (ガス冷却FBR)

44% 48% 発電効率 42% ※原子力最大利用の場合(核燃料資源制約による)

高速増殖炉 FBR(核燃料サイクル)

核燃料サイクル技術

転-9

技術以外の要因● 原子力発電を大幅に伸ばすためには、設備量増大、発電効率向上も重要であるが、以下のような概念を確立し、社会的に理解され受容されることが必須の要件である。

・資源利用率向上・循環型社会(プルトニウムの増殖)・廃棄物低減

● 2050年さらに2100年における電力供給力の確保のためには、立地問題が制約となる可能性が高く、社会受容性を高める施策が必要である。● 廃棄物管理の問題は、発電量増大の制約となる可能性が有り、管理技術早期確立が、社会受容性からも必要である。● 核不拡散技術の確立は、社会受容性から必要であり、核燃料の国際管理技術の確立が必要である。● 高速増殖炉(FBR)のような新たな技術開発には、第4世代原子炉(Gen.IV)のような国際協力が不可欠である。● 原子力を有効に利用するためには、水素、熱、淡水化・・・などの利用領域拡大と発展途上国で利用できる中小型炉開発のような利用地域拡大が必要である。● 総合効率向上(エネルギー有効利用)として大規模熱供給・有効利用技術/社会システムづくりも併せることが重要である。

放射性廃棄物管理(地中埋設)技術

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転-10

2100205020302000

再生可能エネルギー利用技術■ 需要分野で究極的な省エネ・高効率利用、自立化によるエネルギー需要の低減をすすめ、運用時にCO2を発生しない太陽・風力・地熱やカーボンニュートラルなバイオマスエネ

ルギー等再生可能エネルギーを最大限利用するために必要な技術。■ 需要分野での省エネ等により2100年での転換分野の供給必要量は約2兆kWh(7,200PJ)となる。■ 現在の再生可能エネルギーによるエネルギー供給量は900億kWh(320PJ)程度と見られ、2100年には約20倍の導入が必要となるため、供給量の確保のためには転換効率の向

上が必要である。■ 太陽・風力などは時間帯、気象条件等により出力が変動し、需要と供給のマッチングが困難なことから、エネルギー貯蔵技術やネットワークによるマネージメントおよび供給調整

が可能なバイオマス利用との調和が重要である。

太陽■ 大きな設置面積を必要とするため、転換効率向上が重要である。■ 結晶シリコン、薄膜シリコン、化合物半導体、色素増感型など複数の方式の開発が当面続き、発電効率、生産性、耐久性等の観点から選択されていく。ただし、発電効率が

30%を超えるためには、超高効率な新構造・新材料太陽電池が必要である。■ 民生分野での導入もあわせ、多様な用途・設置場所・利用形態に対応するために、モジュールの多様化(軽量、フレキシブル、両面受光、インバータ内蔵など)、多機能化(遮音

性、断熱性、防眩性等の機能付加)、建材・部材との一体化等の技術開発も必要である。■ 大規模水素製造には、太陽光による電力からの水電解、光触媒、あるいは太陽熱を利用した熱化学法等が考えられ、製造効率、コスト等などにより技術が選択される。

設置面積:80km四方で2兆kWh日本国土の約2%になる。

太陽光発電発電

水素製造

技術以外の要因● 化石燃料との価格差を埋める導入補助事業などの普及施策

太陽熱(熱化学)製造熱効率 30%

太陽炉の高効率化、小型化

太陽光(光触媒)

製造効率 0.01% 0.1%

太陽光(電気分解)

製造効率 28%太陽光利用 38%

製造効率 10% 製造効率 20%

太陽熱利用 >50%

小規模独立分散発電→広域連携MW級大規模発電

薄膜型結晶型 超高効率新型

30% 40% 22% 発電効率 13%

色素増感型等

40%50%

約1.5兆 kWh

電気・水素化率 20%需要分野の省エネ・創エネ化率 0%

必要総発電量 約1兆kWh

60%70%

約2兆 kWh

(現状再生可能エネルギー発電量 900億kWh(320PJ))

(3,800PJ) (5,400PJ) (7,200PJ)

転-11

2100205020302000

地熱■ 資源量確保のため、地中の高温水蒸気や熱水を利用する浅部地熱系から深部地熱系へ、さらには地中の高温状態にある岩の熱伝導を利用する高温岩体発電へと進む。■ 地下深部(高温岩体では5,000m級)の資源量の把握、地熱貯留層の正確な評価など地熱探査技術が必要である。

技術以外の要因● 台風・風の乱れ・雷などの厳しい日本の自然環境に適合し、また狭く険しい日本の国土にも建設しやすい日本に適合した大型風車の開発・導入● 欧州とは異なる日本の環境に適合した風車の標準規格制定、認証が必要● 風況による出力変動を電力系統運用と調和させるための費用の社会負担方法の明確化

大型化、低コスト化風力発電 (陸上)

沿岸近海着定式 洋上近海 洋上遠海浮体式(洋上)

賦存量 (NEDO報告書より)陸上: 3,524万kW (341億kWh/年、120PJ/年)

NEDO シナリオ2 3D×10D設置洋上:25,290万kW (4,027億kWh/年、1,500PJ/年)

海岸線から3km以内 3D×10D設置

賦存量(資源量の評価リスク有り)熱水対流型資源量 2,459万kWe (=1,700億kWh、610PJ)高温岩体資源量 11,000万kWe (=7,720億kWh、2,800PJ)

浅部地熱系(<2,000m)(蒸気発電、バイナリー発電)

深部地熱系(>2,000m)高温岩体発電

地熱発電

風力■ 現状(2003年度)の風力発電の導入量は約70万kWで、大型化、低コスト化により陸上での導入が進む。■ 陸上のみでは十分な電力供給ができないため、洋上風力発電が必要となる。

技術以外の要因● 現状では、発電規模が小さく掘削費用も高いため、発電コストが高く開発リスクが大きい。● 開発可能地域が自然公園法等の制約を受ける地域に多い。また、温泉等への影響の懸念がある。

・地下深部の資源量、地熱貯留層高精度評価技術・事業性、坑井採掘技術・熱水共存物質による抗井のスケール、腐食対策技術

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転-12

集中バイオマス利用直接燃料利用 ガス化・ガス化改質

大規模バイオマス発酵水素製造

2100年供給可能量 (「バイオエネルギー」山地著より国内木材バイオマス 640PJ/年国内食料残さバイオマス 177PJ/年世界木材バイオマス 58.8EJ/年

・電力・熱・気体燃料・液体燃料・固形燃料

【木質系】・直接燃料利用

(火力混焼等)・ガス化+燃焼(エンジン)・ペレット等固体燃料

【高含水系】・可溶化+メタン発酵+ボイラ/GE・エタノール発酵・消化汚泥処理・堆肥化・燃料化・水熱処理による炭化、燃料化

バイオマスガス化燃料合成(水素・合成燃料等)

バイオマス醗酵(水素製造)

新規醗酵菌の探索

水素収率 現状の100倍発生速度 現状の100倍

1000倍1000倍

ガス化改質

・電力・熱・気体燃料・液体燃料・固形燃料

75~80%

バイオマス■ 木質系バイオマス等で現在実用化されている直接燃焼による電力・熱の製造から、ガス化、さらにはガス化改質による電力、気体・液体燃料の製造に移行する。■ 高含水系バイオマス利用では、メタン発酵が技術的には実用化され、コジェネ等に利用されている。■ 産業分野でも利用するため、資源量確保のためのバイオマス利用の高効率化および収集・運搬技術が課題となる。■ 将来的には直接水素製造が考えられるが、製造効率の向上が必要である。

実験室レベルの基礎研究段階(発生速度 0.2×10-3Nm3/L・h)

メタン発酵、エタノール発酵

冷ガス効率(木質) 65~75%

2100205020302000

バイオマスガス化燃料・水素製造

技術以外の要因● バイオマス資源(間伐材、林地残材など未利用バイオマス)を効率的に、かつ低コストに収集運搬する社会システムと、地産地消の循環型社会システム構築が重要● 東南アジアなどとの国際協調(技術協力、CDMメカニズム利用等)によるバイオマスエネルギーの確保が必要● 廃棄物の規制緩和、税制上の施策などバイオマス利用促進のための施策も重要● バイオマス資源は、長期的には食料・飼料利用、マテリアル利用、エネルギー利用等の需給相関が時間軸と共に変遷すると考えられ、独自の戦略が必要

高効率化

燃料作物生産

転-13

2100205020302000

電力・燃料貯蔵技術■ 電力あるいは水素等の燃料を大規模に、かつ高効率に貯蔵する技術が必要。■ 新型二次電池、キャパシタ、SMES、フライホイールなどの電力貯蔵技術が、当面、負荷平準化等に用いられ、昼夜間の平準化などに適用が広がる。エネルギー貯蔵の期間、

量が増大するにつれて水素などの化学エネルギーによる貯蔵技術が重要となってくる。

リチウム電池 新型二次電池、高性能キャパシタ、SMES、フライホイール電力貯蔵技術

日間負荷平準化(1日~数日間)配電変電所レベルの最適運用

0.1 GWh/サイト(0.36TJ/サイト)

季節間調整超高圧系を含む最適運用

0.1 ~1GWh/サイト(0.36~3.6TJ/サイト)

瞬時負荷平準化

圧縮水素、液化水素、炭素系/有機系/合金系/無機系貯蔵水素貯蔵技術

大容量エネルギー貯蔵

備蓄

エネルギー貯蔵・輸送■ 化石資源利用、原子力利用の両ケースにおいては、需要地まで大量のエネルギー供給を行うために重要となってくる。■ 再生可能エネルギー利用のケースでは、太陽・風力など、時間変動・季節変動が大きい自然エネルギー利用では需要と供給のマッチングに必須な技術である。■ エネルギー貯蔵・輸送は、民生分野での創エネおよびエネルギーネットワーク、運輸分野でのエネルギー供給設備などにも重要な技術である。

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転-14

2100205020302000

技術以外の要因● ケーブル、架空のいずれの場合でも、環境/用地問題によりルート確保が極めて難しく、今後の長距離大容量送電の整備はかなり困難であり、長距離大

容量送電の整備の必要量を最小限にする需給バランスおよび電源の立地地点選定が重要。● 系統に対して自然エネルギーや分散電源等の影響が無視できないレベルになり設置・管理者が非常に多くなる場合に備え、故障などに対する保護責任の

明確化など、系統連系ルールの整備・拡充を進める必要がある。● 電源・流通設備を一体的に制御して、電圧、周波数、故障復旧などの電気の品質を適正な範囲に維持する電力系統の発電設備系統連系サービスに対する

コスト評価、社会の負担方法の明確化が必要。

電力・燃料輸送技術■ 化石資源利用あるいは原子力利用ケースにおいては大容量のエネルギーを輸送するために必要な技術。■ 再生可能エネルギー利用ケースでは、供給と需要の地域的あるいは時間的なバランスをとるために必要な技術。

電力輸送技術送配電ロス 5.6% 5% 4% 3%

大容量電源送電技術(交流送電/直流送電)

高温超電導送電技術新方式大容量送電技術

(多相送電、直流超高圧送電等)UHVAC 常温超電導送電技術

電力輸送ネットワーク技術分散電源連携技術 電力貯蔵を含めた短期最適運用技術

水素輸送技術(バッチ輸送) 大規模パイプラインによる水素の輸送地域ネットワークの出現

ローカルパイプラインによる水素の輸送

超電導限流器・変圧器

転-15

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転-16

補足説明

1.二酸化炭素回収・隔離(CCS)必要量と可能量について

エンジニアリング振興協会の調査結果を下表に示す。CO2の地中への隔離可能量は、カテゴリー1、2で35億t、カテゴリー3、4まで加えると約915億tである。2030年からCO2回収・隔離を開始し、2050年、2100年は、それぞれのCO2原単位目標値(それぞれ、1/3およ

び1/10)を達成するのに必要な量のCO2を回収・隔離し、各々のその間は、年率一定で回収・隔離量が増加していくとした場合の年間隔離量およびその累積量を下図に示す。2030年は5億t-CO2/年、2050年は15億t-CO2/年、2100年は40億t-CO2/年とすると、累積隔離量は、2085年

頃にカテゴリー1~4までを含めた915億tを超える。

0

10

20

30

40

50

2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100

西暦(年)

年間

CO

2隔

離量

(億

トン

/年

0

500

1000

1500

2000

2500

累積

CO

2隔

離量

(億

トン

日本及び近海におけるCO2地中隔離可能量

累積CO2隔離量(右軸)

年間CO2隔離量(左軸)

分類 定     義 貯留可能量カテゴリー1 大規模な既発見の油・ガス田にある油・ガス層及び帯水層 約 20億トンカテゴリー2 過去に国による基礎試錐が行われ、背斜構造が確認されている帯水層約 15億トン

小 計 確認されているトラップ構造内への貯留可能量 約 35億トンカテゴリー3 陸域で確認されている堆積盆地内の背斜構造を伴わない帯水層 約160億トンカテゴリー4 海域の堆積盆地内の背斜構造を伴わない帯水層 約720億トン

小 計 通常の帯水層への貯留可能量 約880億トン合 計 日本及び近海におけるCO2地中貯留可能量 約915億トン

CO2地中貯留可能量(カテゴリー別)(株)エンジニアリング振興協会調査

転-17

2.ウラン資源量について

利用可能年数

(2002年の発電量、発電効率において)

270年

85年

LWR(軽水炉)

ワンススルー

8,500年14,383千t-U未発見含む

総在来資源

2,550年4,589千t-U既知在来資源

FBR (高速増殖炉)

核燃料サイクル

資源量

ウラン鉱石の埋蔵量は有限であり、炉の形式の違いによる発電効率の違いや核燃料サイクル有無により原子力の利用可能年数が変化する。ウラン資源制約克服のためには核燃料サイクル技術の確立が重要である。

Uranium 2003:Resources, Production and Demand, OECD/NEA, 2004.

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転-18

2000年の総合エネルギー統計とエネルギー・経済統計要覧等から整理すると次のとおりである。水力を含む再生可能エネルギー発電量は約900億kWhである。

3.2000年の再生可能エネルギー発電量について

エネ総工研報告書

産業廃棄物(製紙・パルプを除くバイオマス原料)、H15年度

1.0億kWh(0.91PJ)バイオマス発電

900億kWh(840PJ)合計

総合エネルギー統計

黒液除く21億kWh ( 19PJ )廃棄物発電

総合エネルギー統計1.1億kWh ( 0.98PJ )風力発電

総合エネルギー統計3.3億kWh ( 30PJ )地熱発電

エネルギー・経済統計要覧

民生が主3.5億kWh ( 3.1PJ )太陽光発電

総合エネルギー統計872億kWh ( 785PJ )水力発電

※( )内の数値は、化石資源との比較のため、平均火力発電効率にて一次エネルギー換算値

転-19

4.太陽光発電

(1)分類例及び特徴太陽光発電は、右記のように多数の種類がある。結晶シリコン、アモルファスシリコン、化合物半導体、有機半導体、

色素増感型など複数の方式の開発が当面続き、発電効率、生産性、耐久性等の観点から選択されていく。ただし、発電効率が30%を超えるためには、超高効率な新構造・新材料太陽電池が必要である。

出典)日本エネルギー経済研究所資料より

(2)太陽光発電のポテンシャル下記資料によれば、9,680億kWhに対して効率15%の太陽光発電での発電ポテンシャルは、2,080億kWhである。

ケースCの必要発電量2兆kWhは、日本の国土の2%に匹敵する80km四方の面積に効率40%の太陽光発電を設置した場合の発電量に相当する。発電効率が高く、建築物の壁をはじめ、あらゆるところに設置が容易な太陽光発電設備の開発が望まれる。

利用可能面積 平均日射量 発電可能量

(km2) (kWh/m2/年) (TWh/年)北アメリカ 7,490 2,250 2,528 北アメリカ 4,123西ヨーロッパ 3,325 1,350 673 西ヨーロッパ 2,700日本 865 1,600 208 日本 968オセアニア 77,700 2,000 23,310 オセアニア 207計画経済アジア 81,200 1,650 20,097 計 経済アジア 1,081その他アジア 13,600 2,100 4,284 その他アジア*** 1,206中東・北アフリカ 303,200 2,700 122,796 中東・北アフリカ 379サハラ以南アフリカ 255,350 2,475 94,709 サハラ以南アフリカ 348ラテンアメリカ 42,600 1,650 10,544 ラテンアメリカ 626旧ソ連・東欧 30,000 1,600** 7,200 旧ソ連・東欧 1,028

世界合計 815,330 ‐ 286,438 世界計 12,664(注)*太陽電池の光電変換効率として15%を想定

   **旧ソ連領中央アジアの砂漠を想定

   ***アジア計より、中国・ベトナム・日本を引いたもの

(出所)山地・藤井(1995),「グローバルエネルギー戦略」:     IEA,"Energy Balances of OECD Countries", "Energy Balancesof Non-OECD Countries"

地域・国<参考>

2000年電力需要(TWh/年)

世界における太陽光発電のポテンシャル推定

実用レベル 研究レベル

単結晶シリコン大きな結晶から薄板を切り出して使用する。変換効率は高いが、製造コストも高い。

~18% ~25%

多結晶シリコンセルが一つの結晶ではなく、複数の結晶粒に分かれているもの。単結晶より変換効率は低いが、安価に製造できる。

~16% ~20%

製造方法が比較的容易であり、大面積化に適している。薄膜として利用されている。

12% ~18%

高効率で放射線耐性が優れているため、宇宙用太陽電池として実用化されている。多接合セルの場合、さらに高効率化が実現している。(GaAs、InP等)

22% ~37%

多結晶薄膜型のセルは製造コストが低いため、第2世代太陽電池として実用化が始まっている。(CdTe/CdS、Cu2S/CdS等)

- ~17%

光吸収係数が大きいため、薄膜型に適している。小規模であるが、実証試験も行われている。(CuInSe2、CuIn1-XGaxSe2、CuInS2等)

~14% ~19%

軽量で低コストではあるが、変換効率は低い。 - ~5%

増感剤(色素)の光励起状態の電子移動反応を利用したものであり、光触媒作用のある酸化チタン(TiO2)と色素を組み合わせて積層した構造と

なっている。

- ~11%

(出所)各種資料をもとに作成

シリコン系

化合物半導体

その他

結晶シリコン

カルコバイライト系半導体(CIS系、CIGS系)

有機半導体

色素増感型(湿式)

Ⅱ-Ⅵ族化合物半導体

Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体

アモルファス(非晶質)シリコン

<参考>変換効率特徴分類

太陽電池の分類例および特徴

(単位:万kW)物理的限界潜在量 2010年度目標値住宅用 6,750公共施設用 550計 7,300 482

(出所) 経済産業省 総合エネルギー調査会 新エネルギー部会資料(2000年12月、2001年6月)

我が国における太陽光発電設備の潜在普及規模

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転-20

5.地熱発電

わが国は世界有数の火山国であり、豊富な地熱資源に恵まれている。 ある試算では、全世界の約1割に相当する地熱エネルギーが日本列島に賦存するとされている。

当面可能な地熱開発量は、右記に示す通り527万kWとされる。気象条件等に左右され出力の変動がある風力や太陽光発電に対して、ベースロードとしての利用が可能なエネルギーである。

(単位;万kW)

資源密度・確度等からみて開発可能 527

開発範囲4km2以下 247

自然公園規制地域外 133

2km以内に幹線道路が存在 95

温泉地域から3km以上離隔 39

温泉地域から5km以上離隔 17

(出所)資源エネルギー庁「21世紀に向けた発電技術懇談会中間報告」、1996年

我が国で当面開発可能な地熱発電開発可能量

転-21

6.風力発電

風力資源算出の基本になっているNEDOの全国風況マップ(1994年)によると、シナリオ2「10D×3D」(風速5m以上のすべての陸上の土地、利用面積3,599km2、国土面積の1.0%)で3,500万kWである。設備利用率25%程度とすると年間770億kWhとなる。

陸上のみでは十分な電力供給ができないため、洋上風力発電が必要となる。海岸線から3km以内に設置すると想定すると、25,290万kW (4,000億kWh/年)となる。ただし、洋上の風況マップは今後の整備課題である。

2010年目標値

(A)の50%

250万kW 300万kW

風速 5m 風速 5m

可能面積 3,600km2 可能面積 939km

2

設置台数 7万基 設置台数 8,300基

110万kW

風速 6m

可能面積 394km2

設置台数 3,700基

(出所) 経済産業省 総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会資料(2000年1月)

220万kW

物理的限界潜在量

我が国における風力発電設備の潜在的普及規模

3,500万kW

(A)

500万kW

実際的潜在量

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転-22

7.日本及び世界のバイオマス賦存量/利用可能量/供給可能量の推定値

日本のバイオマス賦存量、利用可能量(PJ/年)1990年 2050年 2100年

木質系 木質系製紙系  ①究極供給可能量 1,011 1,017 959農業残さ  ②実際的供給可能量 678 678 640畜糞・汚泥食廃 食料系合計  ①究極供給可能量 536 525 495原油換算  ②実際的供給可能量 195 188 177

世界のバイオマス賦存量(EJ/年=103PJ) 世界のバイオエネルギー供給可能量(EJ/年)1990年 2050年 2100年

木質系 農業系 畜産系 小計 木質系アジア 5.9 27 15 49 38 87  ①究極供給可能量 32.0 58.3 97.3オセアニア 0.4 1.0 1.1 2.6 14 14  ②実際的供給可能量 17.2 33.0 58.8ヨーロッパ 5.0 8.0 3.8 17 24 41北米 7.7 9.5 3.1 20 21 41 食料系南米 1.9 5.2 5.4 13 18 30  ①究極供給可能量 51.5 22.5 188.2アフリカ 2.0 3.3 5.6 11 27 38  ②実際的供給可能量 17.2 4.7 72.6総計 23 55 34 112 142 288

※METI資料(日エネ学会、MRI:2002年12月)より ※「バイオマスエネルギー」(山地編、山本、藤野共著:2000年12月)

1,261 3,278万kL

プランテーション系

総計廃棄物系

賦存量471523141247285

1,667 4,334万kL

日本のバイオエネルギー供給可能量(PJ/年)利用可能量

39525484

247285

転-23

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超長期エネルギー技術ロードマップ用語解説

用語 民生 運輸 産業 転換 解  説資源制約 ○ ○ ○ ○ 本検討では、化石燃料である石油の生産量が頭を打つ石油ピークを2050年、天然ガスピークを

2100年と想定し、それまでに他のエネルギーと互換可能な状態となるように技術の洗い出しを行った。しかしながら、化石資源量推定には悲観的なものから楽観的なものまで様々な説があり、国際関係、社会経済など様々な要因によって前後する。その場合は、技術の研究開発・実証・導入・普及の時期を前後させる必要があり、時間軸は幅を持って考える必要がある。

環境制約 ○ ○ ○ ○ 本検討では、大気中のCO2濃度を550ppmで安定化させるシナリオに基づき、2050年および2100年でのCO2排出量を現状(2000年)の7~8Gt並みに抑え、GDPあたりのCO2排出量(CO2/GDP)を2050年で1/3、2100年で1/10以下に抑えることを環境制約として課した。温室効果ガスとしては二酸化炭素の他、メタンやフロン等があるが、本検討では、地球温暖化への寄与度が大きく、エネルギー問題に直接関連するCO2をターゲットとした。

バックキャスト ○ ○ ○ ○ 従来の、現状からの予測に基づき将来の目標を設定する手法(フォアキャスト)と異なり、まず未来のあるべき姿を設定し、それに基づき、その姿を達成する為の目標と取り組むべき事を設定する戦略検討の手法。具体的には、2100年までの長期的視野から、資源制約、環境制約を克服するための技術スペックを想定し、その技術スペックを実現するために必要な技術群の時間軸展開をロードマップとして整理した。

%カルノー ○ 高温熱源と低温熱源の温度差を駆動力とする理想的熱機関をカルノーサイクル、その効率をカルノー効率と呼ぶ。熱機関の効率のカルノー効率に対する比(すなわち、理想効率にどの程度近づいているかを示す指標)を称して%カルノーと呼ぶことがある。蒸気機関などのように、高熱源から熱を受け取り、その一部を仕事に変えて残りの熱を低熱源に捨てるサイクルを順カルノーサイクルと呼び、逆に、仕事を加えることで低熱源から熱を拾って高熱源へとくみ上げるサイクルを逆カルノーサイクルと呼ぶこともある。ヒートポンプや磁気冷凍サイクルの理想は逆カルノーサイクルである。

90/45/22nmプロセス

○ 半導体製造プロセスの一種。回路パターンの幅。現在の大半のプロセッサ(Pentium 4やPentiumMなど)は90nmプロセスで製造されており、、2005年末から2006年にかけて65nmプロセスが、2007年下半期から45nmプロセスでのマイクロプロセッサが開始される予定である(Intell)。さらに、32nm、22nmと微細化する。半導体回路の線幅微細化はプロセッサの小型化、高集積化、動作クロックの向上や低価格化につながる。

BEMS ○ Building Energy Management System。業務用ビル等において、室内環境・エネルギー使用状況を把握し、かつ、室内環境に応じた機器または設備などの運転管理によってエネルギー消費量の削減を図るためのマネジメントシステムをいう。BEMSは計測・計量装置、制御装置、監視装置、データ保存・分析・診断装置などで構成される。

BTL ○ バイオマスを原料とした液体燃料(Biomass To Liquid)。バイオマスをガス化、FT合成することによって得られる液体燃料で、輸送用燃料などに用いられる。バイオマスを原料とするため、ほぼカーボン・ニュートラルである。

BTX ○ ベンゼン、トルエン、キシレンの総称。化学品の基礎原料。多様な廃プラスチックから比較的安定して回収できることから、化学品のリサイクルプロセスとして有望である。

CCS ○ ○ 二酸化炭素回収隔離(Carbon dioxide Capture and Storage (または Sequestration))。固定発生源などから排出されるCO2を、化学吸収法、膜分離法などにより回収し、地中の帯水層などに隔離する技術。本検討では、石炭等の化石資源利用ケースでは必須の技術である。

CFRP ○ 炭素繊維強化樹脂(Carbon Fiber Reinforced Plastics)。ドライカーボンタイプは樹脂を染込ませたカーボンファイバーを型に貼り込み、圧力を掛けながら釜で焼き上げた物で、不必要な樹脂分が取り除かれるため、軽量かつ高強度である。現在では後加工がしにくいなどの欠点がある。

CNTトランジスタ

○ ○ カーボンナノチューブ(CNT)を素子に利用するトランジスタ。CNTは結合の様式によって金属や半導体のような性質を示し、p型半導体とn型半導体の性質を示すものが生成できるようになった。直径がnmオーダーと非常に小さいため、シリコン素子における小型化の物理的限界の到達時に、シリコンに代わる 有力候補となると期待されている。

COG ○ コークス炉ガス(Coke Over Gas)。コークス製造時に発生する水素やメタンを主成分とするガスであり、石炭トン当たり300~350Nm3発生する。従来技術においては、タール分の析出やコーキングを避けるため、COGを急冷してタール分を水とともに回収しているため顕熱エネルギーの有効利用がなされず、各種工業用などにそのまま燃料として利用するのみであったが、顕熱を利用した改質反応により水素を製造する技術などが注目されている。

CTL ○ 石炭を原料とした液体燃料(Coal To Liquid)。石炭をガス化、FT合成することによって得られる液体燃料で、輸送用燃料などに用いられる。液体のため、特別なインフラ投資を必要とせず、従来の軽油・灯油と同じ取り扱いができる。また、ガソリンとの混合利用が可能。

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用語 民生 運輸 産業 転換 解  説ELディスプレイ ○ 電圧をかけると発光する物質を利用したディスプレイ。ELディスプレイは低電力で高い輝度が得る

ことができ、視認性、応答速度、寿命、消費電力の点で優れており、液晶ディスプレイのように薄型にすることができる。従来は硫化亜鉛などの無機物を発光体に使う「無機ELディスプレイ」が主流であったが、カラー表示が難しいなどの問題があり、用途は限られていた。有機ELはカラー化が容易で、無機ELよりはるかに低電圧の直流電流で動作するなどの特長があり、携帯端末の表示装置などへの応用が期待されている。

ESCO ○ Energy Service COmpanyの略。従前の利便性を損なうことなく省エネルギーに関する包括的なサービスを提供し、その顧客の省エネルギーメリットの一部を報酬として享受する事業。もともと第二次石油ショックの後のアメリカで盛んになった手法で、わが国にも1990年代半ばからESCO事業者が登場し、公共設備を中心に普及が始まっている。

ESP ○ エネルギー・サービス・プロバイダー(Energy Service Provider)。電気事業者・都市ガス事業者に替わって、需要家に電気・熱などを供給する事業者。ESCOやエネルギーマネージメント、FM(ファシリティー・マネジメント)など多様なサービスを組み合わせて業務を受託し、需要家のユーティリティーに関する利点を保証する。

ETBE ○ エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル(Ethyl Tert-Butyl Ether)の略。エタノールとイソブチレンから合成でき、自動車用燃料としてガソリンと混合利用ができる。バイオエタノールに比べて、燃料蒸発ガスを増加させない、水分混入による分離がなく腐食性もないなどの利点を有している。ヨーロッパでは自動車燃料としてガソリンとの混合利用が開始されている。

FBR ○ 高速増殖炉(Fast Breeder Reactor)。核分裂反応で放出された高速中性子を減速せずにそのまま次の原子核にぶつけて核分裂反応を続けさせるよう設計された原子炉。核分裂の際、燃料内で発生した熱は、軽水炉では水で取り出すのに対し、高速増殖炉では中性子の減速の少ない液体ナトリウムで取り出す。また、プルトニウム炉心燃料の周りにブランケット燃料(ウラン238)を置き、燃料から出る中性子を吸収させてプルトニウムに変換し、燃料中で消費したプルトニウムよりも多いプルトニウムを生産するため、ウラン利用率を大幅に向上させることができる。このように、高速中性子を用いてプルトニウムが増殖することから高速増殖炉と呼ばれている。

FCV ○ 燃料電池車(Fuel-Cell Vehicle)。燃料電池は水素を燃料にし、空気中の酸素と化学反応させることで電気を起こす装置。燃料電池車は、車にのせた燃料電池で発電した電気でモーターを回して走行し、排ガスを出さない。水素の供給方法、航続距離、低コスト化などの課題がある。

FT合成 ○ フィッシャー(Fischer)とトロプシ(Tropsch)が開発した、合成ガス(H2とCOの混合ガス)から炭化水素混合物を製造する技術。合成ガスは天然ガス、石炭、バイオマス等から容易に作ることができるため、FT合成油は石油代替油として期待されている。しかしその成分は直鎖炭化水素であり、セタン価は高いがオクタン価はゼロであるため、ディーゼル油として 適であるが、ガソリンとしてはそのままでは使えない。

GTL ○ 天然ガスを原料とした液体燃料(Gas To Liquid)。天然ガスを改質、FT合成することによって得られる液体燃料で、輸送用燃料などに用いられる。CTL、BTLとともに、特別なインフラ投資を必要とせず、従来の軽油・灯油と同じ取り扱いができる。また、ガソリンとの混合利用が可能。

GTインテグレーション

○ 石油、天然ガスの有限性から今後は石炭、バイオマス、廃棄物などの比較的低質な燃料・資源を高度利用する必要がある。その場合、低質な燃料・資源を水素、COやメタンなどへガス化した後に再度合成したり燃料として活用する技術が有効である。特に二次エネルギーとしての電力への変換にはガスタービン(GT)による高温エネルギー変換とランキンサイクルとの結合による総合発電システムが望ましい。

HCCIエンジン ○ 予混合圧縮自着火(Homogeneous Charge Compression Ignition)エンジン。予混合気を用いる点で火花点火エンジン(ガソリンエンジン),自発点火により燃焼が開始される点で圧縮点火エンジン(ディーゼルエンジン)の長所を併せ持ったエンジン。NOxや粒子状物質の生成が少なく、熱効率の高いエンジンが実現できると期待されている。

HEMS ○ 家庭において、室内環境・エネルギー使用状況を把握し、かつ、室内環境に応じた家電機器(冷蔵庫、エアコン)などの運転管理、将来は分散電源や蓄電池などの協調制御によってエネルギー消費量の削減を図るためのシステムをいう。HEMSは、BEMSと同様に計測・計量装置、制御装置、監視装置、データ保存・分析・診断装置などで構成される。

HIDiC ○ 内部熱交換型蒸留塔で、自己熱再生利用による省エネルギー蒸留分離システム。化学産業の全熱使用量の約40%を消費する蒸留プロセスをターゲットとして30%以上の大幅な省エネルギー化を目的とした新技術である。

IGCC ○ ○ 石炭ガス化複合発電システム(Integrated coal Gasification Combined Cycleの略)。現在石炭を燃料とした発電の主流は,ボイラに燃料を投入し高温高圧の蒸気を作り蒸気タービンにて電気を作っている。IGCCは,石炭をガス化し、現在天然ガスで主に利用されているガスタービンと排熱回収ボイラーを組み合わせたC/C(コンバインドサイクル発電)を利用することにより更なる高効率化を目指した発電システム。 250MW級の実証試験が行われており、商用機としては46~48%の発電効率が目標とされている。

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用語 民生 運輸 産業 転換 解  説IGFC ○ ○ 石炭ガス化燃料電池複合発電 システム(Integrated coal Gasification Fuel Cell combined cycleの

略)。IGCCのシステムに加え燃料電池が追加されたシステム。石炭をガス化し、高温高圧下でガス化剤である酸素と反応させ燃料電池の燃料となる水素や一酸化炭素を主成分とするガスを生成し、構成する燃料電池、ガスタービン、蒸気タービンにて発電する複合発電。送電端効率55%を目標に開発が行われている。

LCD ○ Liquid Crystal Display。液晶を利用した表示装置。2枚のガラス板の間に液晶を封入し、電圧をかけることによって液晶分子の向きを変え、光の透過率を増減させることで像を表示する。液晶自体は発光せず、明るいところでは反射光を、暗いところでは背後の蛍光燈(バックライト)の光を使って表示を行なう。液晶ディスプレイはCRTディスプレイやPDPなど他の表示装置に比べて薄くて軽いので、携帯用コンピュータや省スペースデスクトップパソコンによく使われている。

LED ○ 発光ダイオード(Light-Emitting Diode)。電流を流すと発光する半導体のこと。シリコン(Si)にガリウム(Ga)やリン(P)、ヒ素(As)などを加えて作った半導体のPN接合を持つ結晶体に、一定方向の電流を流す時に結晶内で発生するエネルギーが光になって放射されるという性質を利用した半導体発光素子。 近では青色も開発され、これで光の3原色RGBが揃ったことにより、白色やフル・カラーでの表示も可能になった。

PDP ○ Plasma Display Panel。2枚のガラスの間にヘリウムやネオンなどの高圧のガスを封入し、そこに電圧をかけることによって発光させる表示装置。発光する原理は蛍光燈と同じで、他の方式に比べてコントラストが高く、視野角が広いという特徴がある。高い電圧が必要なのでノートパソコンなどには向かないが、大型化が容易なことから壁掛けテレビなどへ応用されている。

RPF ○ Refuse Paper & Plastic Fuelの略で、サーマルリサイクルの一つの方法。製紙原料としての再利用に適さない古紙やプラスチック複合材料などの産業廃棄物を混合成型、あるいは粉砕して作った固形化燃料。原料が古紙とプラスチックだけなので、燃料の品質が安定しやすいのがメリット。カロリーも高く、取り扱いが容易なため、化石燃料の代替として注目が高まっている。

SC3 ○ 持続可能カーボンサイクル化学(Sustanable Carbon Cycle Chemistry)。本研究会での造語。循環型社会を実現するために、化学製品をリサイクルするにとどまらず、不要となった化学製品をガス化によりH2とCOとし、それらの合成により化学品を製造していく体系。

SiC ○ ○ シリコンカーバイドは、広禁制帯幅、高絶縁破壊電界、高飽和電子速度、高熱伝導度などの優れた物性を持ち、 p型、 n型の価電子制御が容易な半導体である。これらの特長のため、高電力デバイス、高周波高出力デバイスなど、既存の半導体(Si、GaAs など)では物性の限界のため実現できない次世代デバイス用半導体として注目されている。

SMES ○ ○ 超電動電力貯蔵装置(Super Conducting. Magnetic Energy Storage)。超電動コイルに電流を流し続け電力を直接電磁エネルギーとして貯蔵する技術である。特徴として電流の形で蓄えられるためエネルギー効率は90~95%と高く、応答時間が早く大容量化が可能であると言われている。

TEMS ○ 街区レベルエネルギーマネージメントシステム(Town Energy Management System、本研究会の造語)。IT技術、ネットワークを活用し、HEMS・BEMS、系統を連携して、街区レベルのエネルギー需給を管理し、電力の場合の周波数、潮流など供給側の系統の管理を支援するシステム。

UHVAC ○ 1000~1500kV級の超高電圧交流(Ultra High Voltage Alternating Current)送電技術。送電電圧を高くするほど、送電による損失を低減することができる。

VOC ○ 揮発性有機化合物(Volatile Organic Chemicals)。近年では、シックハウスの原因物質として関心を集めており、VOC低減建材や換気方法の技術開発が行われている。

アクチュエーター

○ 電磁石、電気電動機、油圧シリンダ、空気圧シリンダなど、機械を駆動する部分の総称。ロボットなどに用いる場合は、小型化、精密化が要求され、圧電アクチュエータなど従来とは異なる原理のものが多く開発されている。

圧電変換 ○ 圧電体に加えられた力を電圧に変換する、あるいは電圧を力に変換する技術。アクチュエータ、センサとしての利用の他、アナログ電子回路における発振回路やフィルタ回路にも用いられている。熱電変換などとともに極低電力機器などへの応用が期待される。

インテリジェントエンジン

○ 能動制御・先進診断・予測制御を統合したエンジン制御技術により、不適合検知・運用 適化・必要整備時期予測等を実現するジェットエンジン。

インホイールモータ

○ 電気自動車の車輪のホイール内に組み込むモータ。各輪の独立駆動制御が可能となる。モーターから車輪へ直接エネギーを伝達することが可能で、エネルギー伝達損失が 小限に抑えられる。また、減速機構が省略でき、部品点数削減、軽量化が可能という利点がある。

オンサイト水素製造、オフサイト水素製造

○ オンサイト水素製造は、燃料電池車などの水素利用機器に水素を充填する場所で都市ガス・石油系燃料の改質や水電解により水素を製造する方式を指し、オフサイト水素製造は、大量に水素を製造できる場所で集中的に製造し、必要な場所まで輸送する方式を指す。

化学発光 ○ 化学反応によって励起された分子が基底状態に戻る際、エネルギーを光として放出する現象。生物発光も酵素反応を利用した化学発光の一種である。発熱が少なく、低消費電力の照明技術として開発が進められている。

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用語 民生 運輸 産業 転換 解  説化学品の3R ○ 環境と経済が両立した循環型社会を形成して行くための取組み。Reduce(リデュース):省資源化

や長寿命化による資源利用効率を高めて、廃棄物の発生を抑制する。Reuse(リユース):一旦使用された製品を回収し、必要に応じて適切な処理を施しつつ製品として再使用を図る。Recycle(リサイクル):一旦使用された製品や製品の製造に伴い発生した副産物を回収し、原材料としての利用または焼却焼却熱のエネルギーとしての利用を図る。

架線・電池ハイブリッド

○ 近年の電車の多くは、走行時の運動エネルギーを電気エネルギーに換え、架線に返す回生ブレーキを装備している。しかし、近くに他の電車が走行していない場合は回生した電気が使用するところがないため、回生を行うことができなくなるという問題点があった。高性能電池を電車に搭載して、これに回生電力を貯蔵することで回生ブレーキが常に機能するようにする技術。

キャパシタ ○ ○ ○ 電気をためる装置のことで、次世代の蓄電装置として現在開発が進んでいる。鉛電池やリチウムイオン電池(二次電池)などと異なり電気を化学反応なしに電気のまま蓄える方法をとっているため、充電時間は短く、充放電による劣化がないため、理論的には半永久的に使うことが可能。高容量化・低抵抗化により、電気自動車あるいはハイブリッド自動車のモータ駆動、回生エネルギの蓄電が可能な新しいデバイスとして期待されている。また、キャパシタの構成物質のほとんどが炭素とアルミ箔であり、環境にもやさしいのが特長。

クラスター発光 ○ 金属等の原子・分子の集まりであるクラスターにマイクロ波を照射することによって得られる熱放射を光源として利用する発光メカニズム。 白熱電球より高温に加熱できるため、高演色性と長寿命性を持つ次世代光源として注目されている。

クラフトパルプ ○ クラフトパルプとは木材チップに溶解剤を混ぜ合わせて繊維質を抽出してつくられた化学パルプの一種であり、印刷・情報用紙のほとんどはこのパルプからつくられている。それに対して、機械パルプとはチップを機械ですりつぶしてつくられたパルプであり、新聞用紙等に使われてる。クラフトパルプは、木材に含まれるリグニン成分などをバイオマス燃料として製造工程に利用できるため、トータル(バイオマス燃料由来+化石燃料由来の合計)の CO2排出量は古紙パルプよりも多いものの、化石燃料由来の CO2排出量は古紙パルプよりも少なくすることができる。

クローズド水素エンジン

○ 水素を空気で燃焼させるエンジンではNOxが発生するが、アルゴンや水蒸気で酸素を希釈し水素を燃焼させるエンジンではNOxの発生がなくなる。このように、排気ガスとして水素燃焼により生じた水蒸気のみを排出し、アルゴンや一部の水蒸気を循環させて使用する水素エンジン。

クローズド水素ディーゼルコンバインド

○ クローズド水素エンジンとして燃焼温度の高いディーゼルエンジンルを用い、排出される水蒸気から更に動力を回収するために、蒸気タービンを取り付け、コンバインドサイクル化したもの。

高温形燃料電池

○ 固体酸化物形燃料電池(SOFC)や溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)のように作動温度が高い燃料電池。発電時の熱も有効に利用することができる。ビルや工場の向けの自家発電、コージェネレーションとして導入が図られている。また、電気事業用発電などでは燃料電池複合発電(IGFC)としての利用も期待されている。

黒液 ○ わが国で普及しているクラフトパルプなどの製造工程において、パルプになる繊維以外のリグニンなどを主成分とする廃液。濃縮することにより、バイオマスエネルギーとして利用することができる。この黒液で製紙産業の全エネルギーの約1/3(2002年、日本製紙連合会資料より)を賄っている。

古紙再生填料 ○ 印刷用紙にはパルプ繊維のほか填料として石灰石や粘土などの無機物が10~30%配合されている。現在の古紙再処理工程ではこの成分は廃棄しているが、回収精製技術を確立して資源として再利用する。

コプロダクション

○ ○ 物質およびエネルギー生産システムを統合・再設計し、物質とエネルギーを効率よく併産する技術。大幅な省エネルギー化が期待できる。化学・鉄鋼・セメントなどエネルギー消費型産業への適用が有効。

再生燃焼 ○ バイオマス、石炭などの炭素系エネルギー資源から水素を製造し、水素燃焼複合サイクルで燃焼発電する技術。従来は炭素系資源そのものを部分酸化させ発生した熱によりガス化あるいは液化を行うのに対して、(熱化学)再生燃焼では太陽熱や低レベルのプロセス排熱を利用することにより改質ガス化を行い水素を製造する。これは低レベルの熱エネルギーを炭素系化学エネルギーにより もエクセルギー率の低い水素エネルギーに変換する熱化学ヒートポンプとなり、このことによりエネルギー有効利用効率の飛躍的向上を図れる。

産業用ヒートトランスフォーマー

○ 特別に高熱源を使わず低熱源だけを駆動源にして、蒸発器で加熱蒸発させた冷媒蒸気が吸収器で吸収されるときの吸収熱で加熱・昇温された熱を利用する吸収式ヒートポンプ。 吸収式ヒートポンプは、機械的な圧縮機を使うのではなく、その圧縮過程を吸収剤の濃度変化による冷媒の分圧上昇に置き換えて物理化学的に動作するヒートポンプ。

シースルー太陽電池

○ 窓等にも利用できるように、採光しながら発電できる太陽電池。微少なスリットや孔を持つタイプは商品化もされている。また、発電素子自体が透明なタイプも研究開発が行われている。

色素増感太陽電池

○ シリコン半導体を使わずにヨウ素溶液を介した電気化学的なセル構造を利用する太陽電池。材料が安価であることと作製に大掛かりな設備を必要としないことから低コストの太陽電池として期待を集めている。 しかしながら、現在の光エネルギー変換効率は7~8%に止まっており、高効率化の研究開発が行われている。

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用語 民生 運輸 産業 転換 解  説磁気冷凍 ○ 磁性体に磁界をかけていくと磁性体が発熱し,磁界を取り去ると温度が下がる現象(磁気熱量効

果)を利用した冷凍システム。そのサイクルは逆カルノーサイクルであり、理論効率はカルノー効率となる。 ①フロンなどの冷媒を使用しない、②圧縮機が不用で気体の圧縮・膨張での損失がないので省エネを図れる可能性がある、といった特徴がある。

集光技術 ○ 凸レンズまたは凹面鏡等から構成され、自然の光を効率的に集める技術。日中の集光量を均一化するための技術(太陽追尾技術等)、防塵・セルフクリーニング技術などを含む。

住宅性能表示制度

○ 構造の安定、火災時の安全、高齢者等への配慮など、住宅の性能について評価し、住宅取得者に対して住宅の性能に関する信頼性の高い情報を提供するしくみ。この制度は、2000年に施行された住宅の品質確保の促進等に関する法律の中の大きな柱として定められた。また、2002年8月より中古住宅も対象となった。

需要アグリゲート

○ 多種、多様のエネルギー需要(負荷))をまとめてどの時間帯にどのくらいの量が必要となるのかを分析、予測する技術。電気や熱需要のパターン、あるいは熱電比が異なる需要家を組み合わせることにより、高効率なエネルギー供給が可能となる。エネルギーマネジメントの基礎的技術となる。

省エネラベリング制度

○ 2000年に制定された省エネ性能表示に関する制度。家庭で使われる製品が国の省エネルギー基準に達成しているか、どの製品が省エネ性能に優れているか、を一目で分かるようにラベルに表示するもので、製品を選ぶ際の性能の比較などに役立つ。 家電製品のうち、エアコン、冷蔵庫、冷凍庫、蛍光灯器具、テレビなど13機種が表示対象機器となっている。

磁歪変換 ○ 外部からの電界あるいは磁界に応じて歪みなどの機械力に変換する(あるいはその逆)技術。アクチュエーターやトルクセンサーなどに応用されている。

新型二次電池 ○ ○ ○ ○ ニッケル-水素二次電池、リチウムイオン二次電池などの次の世代の二次電池。リチウムポリマー二次電池、ナトリウムー硫黄型、亜鉛-塩素型、亜鉛-臭素型、レドックスフロー型などの研究開発が実施されている。

新製鋼プロセスフォーラム

○ 環境調和型金属系素材回生基盤技術。鉄鋼の生産活動が高度になると製品も高機能化し、亜鉛や銅、錫などの添加物の比率が高くなる。しかもリサイクルの回転数を増すと微量金属が蓄積され、鋼材そのものの性能にも悪影響を及ぼす。こうした劣化し添加金属の増したスクラップの回生技術。

新焼結 ○ 炭材内装熱間成型塊成鉱技術:石炭の熱可塑性を利用した鉄鉱石塊成化&炭材内装低温還元高速技術。従来の焼結鉱に対して新焼結鉱は、還元工程での反応が加速され従来よりも低還元材比での鉄鋼生産が可能となる。

生化学発光 ○ 生物発光。ホタルのように生体内の酵素の働きによる生化学反応による発光。発光効率は極めて高く、熱を発生しないため冷光とも呼ばれる。

潜熱回収型ガス給湯器

○ 従来型使用時に大気中に放出していた排気中の熱と潜熱を回収 するための専用二次熱交換器を搭載し、効率化、CO2排出削減を実現した給湯機。95%の熱効率を達成している。

潜熱蓄熱建材 ○ 物質が固体から液体(液体から固体)に変化する時に吸収(放出)する熱(潜熱)を蓄熱する機能を持つ建材。利用温度域で固体-液体に相変化する材料を用いる。比熱(顕熱)を利用した蓄熱材料(コンクリートなど)に比べて、単位体積あたりの蓄熱量が大きい。

ダイヤモンド半導体

○ 【窒化物デバイス参照】

タスクアンビエント空調システム

○ 室内全体を適温に空調するのではなく、通常人のいない場所(アンビエント域)は許容できる範囲内で温度を高く(冷房の場合)設定し、人のいる場所(タスク域)だけを適温に制御する快適性と省エネルギーの両立を狙った空調システム。温冷感は性別、年齢等で大きく異なり、パーソナル性を持った局所空調を用いれば個々の快適性を損なうことなく空調エネルギーを低減することが可能となる。

多相送電 ○ 現状の3相交流の送電に対し、6相化などにより必要となる相間の絶縁間隔低減する架空送電のための送電方式。一定の送電ルートにおいて送電容量を拡大することができると言われている。

単電子トランジスタ

○ 電子を1個の単位で操る事が可能な究極の低消費電力電子デバイス。現在のメモリではキャパシタに約10万個の電子の充放電をすることにより、1ビットを記憶している。これを単電子メモリーでは、量子効果により電子1個、もしくは数個で1ビットを記憶し、理論上従来のメモリと比較し、およそ10万分の1の消費電力となる。数 nm 以下の微細な量子ドットを安定して成形・量産する技術、トランジスタを流れる微細電流の検出技術などが課題。

蓄熱空調 ○ 割安な深夜電力を利用して夜間に冷温熱を蓄熱し、昼間の空調用消費電力を抑える空調技術。コンクリートなど躯体で蓄熱するタイプ、氷蓄熱冷房システムなどがある。電力の平準化にも寄与する。

地中熱利用ヒートポンプ

○ 日本の一般的な地下の温度は5~10mより深いところでは季節に関係なく10~15℃とほぼ一定している。地中熱利用ヒートポンプシステムは、地中と地上の温度差を利用して熱交換を行って冷暖房等を行う。米国等海外では普及が進みつつあるが、日本では、掘削費等のコストが高いこともあって取り組みが遅れている。より深部の地熱と区別するために地中熱と呼ばれる。

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Page 74: 分野別ロードマップ概要(資料1)...概-1 以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。 分野毎に2枚構成。1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降)

用語 民生 運輸 産業 転換 解  説窒化物デバイス

○ ○ 電力の省エネルギー化には電力変換に伴う損失の更なる低減が課題である。現在、電力変換にはSi系のスイッチングデバイスが使われており、その性能は物性上の限界値に近づくところまで来ている。これに対しワイドバンドギャップ半導体であるSiCや、GaN、 AlN等のIII-V族窒化物半導体,ダイヤモンド等はバンドギャップが大きいだけでなく熱的化学的に安定でハードエレクトロニクス材料として注目されている。その他、絶縁破壊電界、誘電率等の物性に関しても、Siにくらべて大きな性能指数を持つことが報告され、注目されている。

蓄光 ○ 太陽光や照明の紫外光エネルギーなどを蓄える技術。蓄えた光は、夜間、暗所などで発光する。階段やスイッチの位置を知らせる特殊照明としては商品化されている。

超々臨界圧発電

○ タービン入口蒸気条件565℃・240 気圧以上の火力発電を一般的にいう。水は大気圧(1気圧)の下では100℃で気体の水蒸気になるが、374℃・218 気圧を超える高温・高圧下では液体と気体の区別のなくなる状態、水の臨界点となる。設計発電端効率は亜臨界時代の30%から超臨界にて40%に達し、そして、 新の超々臨界圧プラントでは42%に達している。

超電導限流器 ○ 限流器とは電力系統の短絡事故時の電流制御を行う機器。近年の分散電源の増加に伴い、故障電流短絡事故の規模が現行の遮断器の容量を超えないように電流を抑制するために注目されている。超電導限流器(SFCL)とは、超電導体のS/N転移を利用したものであり、通常時は低インピーダンスであり、故障時大電流が流れると高インピーダンスとなり故障電流を低減する。

超電導送電 ○ 電気抵抗がゼロとなる超電導特性を利用した送電技術。電気抵抗がゼロのため、送電ロスを削減することができるとともに、大容量化を可能するものである。

超電導変圧器 ○ 超電導現象を応用した変圧器。効率向上、過電流に対する安全性、小型・軽量化などが期待されている。

長半減期FP核変換

○ 核反応を利用してFP(ウランやプルトニウム等の核分裂に伴って生じた核種及びその一連の放射性崩壊で生じる核種)を非放射性の核種に変換する技術。核分裂によってできた核種、またはそのような核種から放射性の崩壊によってできた核種のうちで半減期の長いものに、放射性毒性が強いあるいは放射性毒性が長期にわたる放射性核種に中性子等を照射し核変換を行い、非放射性核種あるいは短寿命核種核種に変える。

超臨界圧炉 ○ 第四世代軽水炉という次世代の原子炉概念の一つ。水の臨界圧の高圧(25MPa)かつ高温(500℃)で運転するため、高い熱効率(約45%)が達成できるとともに、貫流サイクルが採用できるので、気水分離系、再循環系が不要となり、機器の簡素化による経済性向上が図れる。

低温形燃料電池

○ 固体高分子形燃料電池(PEFC)のように作動温度が低い燃料電池(PEFC:約80℃)。作動温度が低いために、運転/停止が頻繁な用途に適しており、家庭用コージェネレーション、自動車、モバイル機器の電源用として注目を浴びている。

填料 ○ 製紙工程において、紙の不透明度や印刷インキの受理性を高めるなどのために用いる無機化合物。炭酸カルシウム、酸化チタン、粘度鉱物などが多く使用される。古紙の再生には、この填料を洗い落とす必要がある。この填料や微細化した紙繊維がペーパー・スラッジとなる。

動力回生システム

○ モーターやエンジンからの動力を減速する場合に、ブレーキのように熱として捨てるのではなく、発電モーターを回転させ電気等のエネルギーとして回生させるシステム。

トップランナー方式

○ ○ エネルギー消費機器のうち、省エネ法で指定するもの(特定機器)の省エネルギー基準を、各々の機器において、エネルギー消費効率が現在商品化されている製品にうち も優れている機器の性能以上にする」というものです。特定機器は、2003年4月時点で、次の18品目が対象とされている。乗用自動車、エアコン、蛍光灯器具、テレビ、VTR、コピー機、パソコン、磁気ディスク装置、冷蔵庫、冷凍庫、貨物自動車、ストーブ、ガスコンロ、ガス瞬間湯沸器・給湯付き風呂釜、石油温水機器、温水便座、自動販売機、変圧器。日本が世界に先駆けて採用した方式。

トリウム ○ Th、原子番号90の元素で、アクチノイド元素の1つ。天然では実質的にTh-232だけからなる天然

の放射性元素であり、その半減期は1.4×1010年である。中性子を吸収すると、ベータ(β)崩壊を経て核燃料物質であるU-233に転換する。

ナノ触媒 ○ 三次元的にナノ構造を制御し、必要な機能を単一の触媒上に付与する(例えば、1つの触媒上に、酸点-塩基点、酸化活性-還元活性、親水性-疎水性など互いに相いれない反応部位を組み込むなど、複合機能を集積化する)ことによって、廃棄物を出さない新しい触媒プロセスの実用化など、現在の生産工程が革新的に変革されることが期待される。

熱電変換 ○ 熱エネルギーを直接電気に変換する技術。可動部分がまったくなく、騒音や振動を出さずに発電ができる。熱電腕時計やろうそくの炎でラジオが聞ける防災機器「ろうそくラジオ」などに利用されている。将来的に、圧電変換などとともに、極低電力機器などへの応用が期待される。

バイオ光電子変換

○ 従来の半導体素子のかわりに、生体分子を用いる光電素子。光合成の光電変換の量子収率は100 %に達するなど、生体系では非常に高い効率を示す。タンパク質などの三次元構造を利用することにより、超省エネ型光センサーなどへ応用することを目的に基礎研究が進められている。

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用語 民生 運輸 産業 転換 解  説バイナリー発電 ○ 加熱源により沸点の低い液体を加熱・蒸発させてその蒸気でタービンを回す発電方式。加熱源系

統と媒体系統の2つの熱サイクルを利用して発電することから、バイナリーサイクル発電と呼ばれており、地熱発電などで利用されている。現在の地熱発電は地下から噴出する蒸気を利用する方式であり、蒸気とともに多量に噴出する熱水は発電に利用されず地下に還元されているが、この方式を用いると熱水も有効利用することができる。

バイパス比 ○ 燃焼に使う空気の重量とファンから吹きだす空気の重量の比。高バイパス比は、ファンからの空気量を大きくする方向となる。通常、バイパス比が高いほど燃費が良く、亜音速飛行に適した性能特性を持つ。

ハイブリッド加熱

○ ジュール加熱と高周波加熱など複数の方式を同時に行って加熱する技術。スチームオーブンレンジなど小型家庭用機器では商品化されている。

ハイブリッド自動車

○ ハイブリッドは混成という意味。ハイブリッド自動車は複数の動力源を有する自動車で、エンジンと電気モータを組み合わせて動力源とするものが代表的。エンジンとモータを適切に使い分けることにより、燃費が向上する。使用する動力源の組み合わせにより各種の方式が考案されている。マイルドHB:停車時にアイドルストップ、発進時にはモーター走行によりエンジンを再始動させる比較的簡易な方式。パラレルHB:エンジンは走行を主体とし、場合により電池を充電する動力源に、モータは発進時や加速時に作動し、二つの動力源が平衡して駆動に関与する。シリーズパラレルHB:スプリットHBとも呼ばれ、状況に応じてシリーズ方式とパラレル方式を使い分けたり、両方作動させる方式。動力分割機構により、発電・駆動の分担比を制御する。シリーズHB:エンジン、発電機、インバータ、モータが直列につながっており、発電しながら走行する。電気自動車の走行距離を延長させるために考案された方式。プラグインHB:ハイブリッド車にバッテリーユニットを付加して、完全な電気自動車としての走行を可能とした方式。

発光効率 ○ 1[W]の電力によりどれだけの光束が生成できるのかを示す値。白熱電球では約15[lm/W]、蛍光灯では約60[lm/W]である。

パッシブソーラー

○ 太陽光発電や太陽熱温水器のように、装置や動力を使って太陽エネルギーを取り入れるアクティブソーラーに対し、建築設計上の工夫等により、蓄熱や室内換気、あるいは昼間の太陽光を照明に利用すること。

ヒートポンプ ○ ○ ○ ヒートポンプは、熱媒の相変化時における吸熱、放熱等の特性を利用し、熱の移動を促すものであり、冷暖房や給湯器などに用いられる。熱媒を循環させるために、圧縮機などを稼動させる電力やガスなどの燃料が必要である。電動ヒートポンプでは、電気は熱エネルギーとしてではなく、熱を移動させる動力源として利用されるため高効率である。

光ダクト ○ 太陽光を鏡のダクトに取り込み目的の位置に搬送し、照明や補助照明として利用する技術。直接採光が困難な室内や地下空間などの照明用光源として利用することができる。

光伝送(照明用)

○ 自然光を集光もしくは集合発光して得られた光を、光ファイバーや反射面を有する光伝送路等により利用場所に伝送する技術。

負荷追従運転 ○ 負荷とは発電所から引出される電力のこと。負荷追従運転は負荷の変動に対応して発電量を調節する運転をいう。わが国では全発電量のなかで、原子力による発電は基底負荷(ベース・ロード)を担っているので、発電量の調節は主に原子力以外の火力発電等で行っているが、フランスでは原子力発電の割合が大きいため負荷追従運転を実施している。

副生水素 ○ ○ 製鉄所やソーダ工場、製油所などで製品を製造するときに、副産物として発生する水素ガス。再生可能エネルギーによる水素製造までの水素ソースとして利用が可能。

フライホイール ○ ○ 円盤あるいは回転体を電力で回転させて運動エネルギーの形でエネルギーを貯蔵するもの。一部、電車用、無停電電源用などで実用化されている。短時間のエネルギー貯蔵には向いているが、現在の技術では回転時のエネルギー損失をゼロに抑えることは困難であり大容量、長時間の貯蔵には若干のハードルがあると見られている。

フレキシブル太陽電池

○ ガラスの代わりにプラスチックフィルムを基板にした太陽電池。軽量でかつ可撓性に富み、場所やデザインの制約を受けずに設置することができる。

放射冷房 ○ 天井の輻射パネルに冷水を流して輻射により居室者を直接冷やす方式。対流方式に比べて快適性が高く、設定温度を冷房時には高く、暖房時には低くすることができる。氷蓄熱装置と組み合わせる方式が考案されている。

膨張動力回収技術

○ 気体の膨張過程において失われるエネルギーを回収する技術。ヒートポンプのCOP向上にも有効な技術。

マイクロキャビティー光源

○ LEDなどの発光素子の活性層に隣接して光の波長程度の大きさのマイクロキャビティーを形成し、様々な発光特性を実現する技術。R/G/Bの発光を行わせ、表示装置にも応用可能。

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Page 76: 分野別ロードマップ概要(資料1)...概-1 以下、分野毎のロードマップ概要版(素案)を示す。 分野毎に2枚構成。1枚目:主な技術目標と技術的備えの考え方。2枚目:技術的備えに対応する主要技術(点線はR&D段階、実線は商用開始以降)

用語 民生 運輸 産業 転換 解  説マイナアクチニド核変換

○ 使用済み燃料の再処理に伴って発生する高レベル放射性廃棄物には、放射性毒性が強く寿命の長いマイナーアクチノイド(MA;ネプツニウム、アメリシウム、キュリウム等)が含まれている。これら長寿命で有害な放射性核種を非放射性核種あるいは短寿命核種に変換することを核変換処理という。高レベル廃棄物の量を減らすことができ、隔離期間を著しく短縮することが可能となる。核変換処理に原子炉を用いる方法と加速器を用いる方法が研究対象となっている。

マテリアル・カスケード・マネージメント

○ 使用済の産業製造物を原材料などの原料として利用するために、容易に分別解体、また容易に再生可能となる製品製造を行い、また一方では、末端にまで散在した製品等を効率よく回収し、社会の中に排出・蓄積される物質を極力削減するための社会的共通理念、あるいはその理念の構築と実践。

有機EL照明 ○ EL(エレクトロルミネセンス、electro-luminescence)とは、物質がエネルギーにより励起され起こるルミネセンス(発光)現象の一つで、半導体などに電圧を加えて起きる。有機ELとは有機化合物に電流を流し発光させる技術のことで、低電圧により動作するため省エネが実現できる。また、有機化合物の種類によって自由なカラー表現ができる特徴があり、ディスプレイや照明に応用する開発が行われている。照明に応用するには、ディスプレイよりも高い輝度と効率が求められれる一方で、LEDとは異なりごく薄い“面”での発光が可能なため、基板にプラスチックなどを用いれば従来の形にとらわれない自由な形状による照明システムが可能である。

有機薄膜太陽電池

○ 有機半導体薄膜によって発電する太陽電池。プラスチックの特徴である、軽い、柔らかい、カラフル、低コストという特徴を持ち、従来のシリコン系ではできない用途、つまりウエアラブルやユビキタスといった身近なもののバッテリー源としての利用が期待されている。

ローカル・エネルギー・ネットワーク

○ 本研究会の造語。個人・集合住宅、地域のエネルギー事業者又は非エネルギー事業者が生成したエネルギーもしくはその余剰分を利用者間で相互利用するエネルギーネットワーク。有償によるエネルギー相互利用はHEMS、BEMS普及のドライビングフォースにもなる。

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