都市公園における郷土種に配慮した 緑地整備に関する選択 ... · 2008. 2....

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都市公園における郷土種に配慮した 緑地整備に関する選択モデル分析 筑波大学大学院 環境科学研究科 中西智紀・吉田謙太郎 2007/01/19@広島大学 発表の概要 背景 横浜市の緑化に関する政策 ふるさとの緑事業 根岸森林公園の概要 分析モデル 条件付きロジットモデル 潜在クラス・ロジットモデル 結果・考察 今後の課題 郷土種への選好を潜在クラス・ロジットモデルを用いた選 択モデル分析によって明らかにした 2

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都市公園における郷土種に配慮した緑地整備に関する選択モデル分析

筑波大学大学院

環境科学研究科

中西智紀・吉田謙太郎2007/01/19@広島大学

発表の概要

背景

横浜市の緑化に関する政策

ふるさとの緑事業

根岸森林公園の概要

分析モデル

条件付きロジットモデル

潜在クラス・ロジットモデル

結果・考察

今後の課題

郷土種への選好を潜在クラス・ロジットモデルを用いた選択モデル分析によって明らかにした

2

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課題

横浜市根岸森林公園の仮想的な緑地整備計画をGraphicsとTextを用いて示し、周辺住民を対象としたアンケートによって選択型実験を行う

①公園緑地に関するより詳細な選好の分析

②選好の多様性を把握

研究の目的

選択型実験において、Graphicsを用いた属性の水準の提示により現実性を高める

都市公園の緑地に関する便益を、特に郷土種について推定する

3

背景

都市の緑地減少により、市民の樹木への関心は高い

市民の緑への選好は多様

生物多様性戦略の策定、生物の種への配慮も拡大

(外来種への規制、地域本来の種を用いるように附帯決議)

都市公園は、利用だけでなく都市環境の改善が期待されている重要な緑化拠点

事業評価には費用便益分析が用いられている

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選択モデル分析について

多属性の効用を同時に評価できる

属性が7つを超えると複雑になるので捨象する

現実性の高い財として提示しなければならない

Graphicsのみの属性も影響を与えている(Johnston[2004]、藤見[2006])

→直感的な選択が可能、より多くの属性を評価できる可能性

Text方式で属性の水準を提示するものがほとんどだが、順序バイアスの問題もある

マーケティング、交通工学などで用いられ、環境評価でも増えている。非市場財でも評価できるため、多くの分野で適用事例

行政の都市公園の便益評価にも用いられている

生物多様性の便益、外来種の外部不経済を評価した事例はあるが地域在来の生物である郷土種の事例はない

5

都市公園への選択モデル分析の適用

既往研究

武田[2004]公園の施設や機能の有無と負担額を示した選択モデル分析

施設の有無、緑や自然性が多い・少ないという属性で明確な尺度でない

田中[2005]仮想的な公園を増設する計画案を示した選択モデル分析

混合ロジットモデルの適用

広場面積、緑被率について個人の限界支払意志額を推定

満足度の違いによる限界支払意志額の平均・分散などを比較

都市公園の属性の中でも緑に対して高く評価されている

緑に関する属性は多様だが詳細に便益評価した事例はない

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横浜市の緑地の減少

緑化の重点拠点

1906年

1951年

1996年

貴重な緑地に対して市民の関心は高いと考え対象地とした

根岸森林公園

7

横浜市の緑化事業「ふるさとの緑事業」

潜在自然植生調査をもとに、地域本来の樹木を選定

宮脇方式による密植・混植による苗木からの緑化

植樹、育樹段階で小学生を中心とした住民参加

実績

2001~2004年にかけて12ヵ所(0.1~0.3ha/1ヶ所)

道路脇、法面緑化など

事業の利点

1. コスト低減

2. 啓蒙効果

3. 防災効果

4. 種子供給機能の強化

郷土種を選択型実験に取り入れることに現実性がある

8

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ふるさとの緑事業への認知度

事業を知っていると答えたのは、回答者全体の3割弱であった

知らない

73%

少しは知っている26%

詳しく知っている

1%

100.0%228合計

72.8%166知らない

26.3%60少しは知っている

0.9%2詳しく知っている

割合回答認知度

9

ふるさとの緑事業への態度

今後拡大するとよいという回答が、4割近くであった

事業を知らなかった人も事業の拡大や維持をしていると思われる

100.0%228合計

0.0%0やめたほうがよい

0.0%0現状より縮小したほうがよい

15.4%35どちらとも言えない

47.4%108現状のペースで続ける

37.3%85現状より拡充したほうがよい

割合度数今後の事業継続について現状より拡充したほうがよい

37%

現状のペースで続ける

48%

どちらとも言えない

15%

10

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根岸森林公園の位置

根岸台という台地の上にある西側からのアクセスは困難

11

根岸森林公園の概要・管理

面積:193,102m2(緑地約144,000m2 )

主園路:幅4m・長1,400m

付属施設

遊具広場

一等馬見所

池(1,000m2 )

駐車場:200台

公園内の生物

木本植物38種類

草本植物123種

土壌動物10種

鳥類16種類

昆虫類23種類

緑地の管理

市の緑地事務所、愛護会

景観のよい高台

桜・梅

根岸競馬記念公苑

認知度が高く、樹木を増やすスペースが広いため対象の公園とした

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根岸森林公園の風景

樹木に囲まれた散歩道 公園全体は丘の上の窪地

思い思いに利用されている広場

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根岸森林公園の風景

春になると桜の花

一等馬見所歴史的建造物も

梅林

最近の整備された法面

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根岸森林公園の利用頻度0 5 10 15 20 25 30

週7回

6回

5回

4回

3回

2回

1回

月3回

2回

1回

年10回

6回

5回

4回

3回

2回

1回

過去に利用

利用なし

週1~7回:28.5%月1~3回:18.0%年1~10回:40.8%過去に利用:9.2%利用なし:3.5%

回答者の95%以上が利用経験がある月1回以上の頻度が約半数を占めた

15

根岸森林公園の利用目的0 50 100 150

散策

自然の観察

子供を遊ばせる

休憩

スポーツ

動物の散歩

知人との交流

食事をする

読書

利用目的で最も多いのは、散策で回答者の半分以上が該当約3分の1が自然の観察・子供を遊ばせるために利用している

16

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根岸森林公園の樹木種

全38種類

17種類21種類

アラカシ、エゴノキ、エノキ、クスノキ、クロマツ、コナラ、コブシ、シラカシ、スダジイ、ネムノキ、ホルトノキ、マテバシイ、ミズキ、モッコク、ヤマグワ、オオシマザクラ、ヤマザクラ

アキニレ、アメリカフウ、イチョウ、カシワ、カツラ、サイカチ、スギ、トウネズミモチ、トチノキ、ヌマスギ、ハナミズキ、ヒノキ、ヒメシヤラ、ミズナラ、ミツミネモミ、ヤマボウシ、ヤマモモ、ユズリハ、ヤエザクラ、ソメイヨシノ、サトザクラ

郷土種の樹木郷土種でない樹木

およそ半分の樹木種が郷土種ではない

横浜市環境創造局資料、ヨコハマ植物散歩より作成

17

選択型実験の主効果変数

管理費の周辺住民による負担

<受益者負担の原則>

既存公園の緑を変えた場合を示し、便益を推定*施設などは現状のまま

③生物のための林

⑤緑地税

①広場

②利用のための林

④樹木の郷土種の種類が占める割合

芝生などがあり、レクリエーションを楽しみやすい場所

桜や梅もあり、人が自由に入れ、散歩が楽しめる林

保全のため外からの観察以外立入りが制限された林

樹木に郷土種がどのくらいの割合を占めるか

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選択型実験の属性の水準

4200円3000円2000円1200円600円5緑地税(円)

100%75%50%

(現状)3

樹木の郷土種の種類の割合(%)

20%15%10%5%0%

(現状)5

生物のための林の面積(%)

65%60%55%

(現状)50%45%5

利用のための林の面積(%)

45%(現状)

100%-(利用のための林+生物のための林の割合)※事後的に決める

-広場の面積(%)

水準水準数

※広場、利用のための林、生物のための林の面積は、公園面積全体に占める割合

これらの属性と水準で直交計画により、プロファイルを作成

19

選択集合の例

アンケートではこのような

選択集合を5回繰り返した

選択肢1が現状を示す

現在のまま

緑地税(年額) 0円

45% (64,800m2)

55% (79,200m2) 00% (0m2)

広場 利用のための森 生物のための森

樹木の種類の50%が郷土種

緑地税(年額) 1200円

45% (64,800m2)

50% (72,000m2)

05% (7,200m2)

広場 利用のための森 生物のための森

樹木の種類の50%が郷土種

緑地税(年額) 3000円

40% (57,600m2)

50% (72,000m2)

10% (14,400m2)

広場 利用のための森 生物のための森

樹木の種類の100%が郷土種

緑地税(年額) 600円

25% (36,000m2) 65% (93,600m2)

10% (14,400m2)

広場 利用のための森 生物のための森

樹木の種類の75%が郷土種

アンケートの5つの選択集合において、すべて現状のまま(選択=1)を答えた人を「現状選好回答」として分類した

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選択モデル分析のデータ

根岸森林公園から約2km以内に1,000通ポスティング全回答数261(26.1%:2006/12/30現在)

無効回答33

現状選好回答44

全回答のうち、無効回答を除いた228の回答を用いた

性別、年齢に関して対象区(中区、磯子区、南区)の母集団をおおよそ反映する回答結果

26

ランダム効用理論による定式化

効用関数はランダム効用理論に基づく

)1( =jASCsV nn += 11 β

nnjnj xsV γβ += )4,3,2( =j

njs :選択肢の特性を表す主効果変数

nx :個人特性変数(態度変数、社会経済変数)

β γ :パラメータベクトル

ASCが正のとき、選択肢1(現状)が選ばれやすい→支払い行動がとられにくい変数xの係数が正のとき、変数xに正比例して選択肢2~3が選ばれやすい→支払い行動をして、なんらかの政策を支持する

ASC :Alternative Specific Constat: 選択肢固有項

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分析モデル1 条件付きロジットモデル

μ

∑=

J

V

V

nnj

nj

e

ej μ

μ

)(Pr

選択肢jの選択確率

∑ΣΣ +

+

=

J

xs

xs

njJN

nnj

nij

e

edL )(

)(

ln)(ln γβμ

γβμ

β

対数尤度関数

:スケールパラメータ(1に基準化)

njd :選択者nがjを選択するときは1、それ以外は0

22

分析モデル2 潜在クラス・ロジットモデル

jnδ

∑=

Jnjss

njsssn z

zjP

)exp(

)exp()(| βμ

βμ

∑=

Sns

nsns x

xP

)exp(

)exp(

λγλγ

セグメントsの回答者nが選択肢jを選ぶ確率 回答者nがセグメントsに分類される確率

⎥⎥⎥

⎢⎢⎢

⎥⎥⎥

⎢⎢⎢

⎡=⋅=

∑∑ ∑∑J

njss

njss

SS

ns

ns

Ssnnsn z

z

x

xjPPjP

)exp(

)exp(

)exp(

)exp()()( | βμ

βμλγ

λγ

回答者nが選択肢jを選ぶ確率

∑∑=N S

nj

n jPSL )(ln)|,(ln δβγ対数尤度関数

Boxall and Adamowicz[2002]

:選択者nがjを選択するときは1、それ以外は0 λ :スケールパラメータ(1に基準化)23

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モデル選択の指標

変数は、BICが最も小さくなるモデルに採択した

L:尤度関数、n:観測の数、k:独立変数の数

BICの最も小さな値のモデルがよい

( ) ( )nkLBIC lnln2 +−= ・

McFaddenのρ2によってモデルのデータへの適合を評価

LL:対数尤度、LL0:初期対数尤度

ρ2は0から1の値をとり、1に近いほど望ましい

0

2 1LL

LL−=ρ

24

アンケート配布地域:根岸森林公園の周辺住民

対象公園から約2km以内を主な利用者とする

公園からの距離を考慮し配布地を選定

ポスティング(1,000通)→非利用者の選好も計るため

2km

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回答者の性別

母集団と同様、男女からおよそ半々の回答が得られた

413672

205541

208131

対象区

228合計

126女性

102男性

人数性別

45%

55%50%50%

男性

女性

内側:アンケート回答者外側:横浜市対象区

27

※対象区は、横浜市中区、磯子区、南区

回答者の年齢

413672228合計

17000780代

458282970代

655833960代

740014250代

652085640代

820034630代

64049920代

対象区人数年代

内側:アンケート回答者外側:横浜市対象区

やや20代の回答が少ないが、各年代から回答が得られた

25%18%

17%

13%3%

16%18%

16%

11%4%

4%

20%

15%

20%

20代

30代

40代

50代

60代

70代

80代

28

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回答者の世帯員数

100.0%228合計

0.9%27人

1.3%36人

8.8%205人

24.1%554人

23.2%533人

28.5%652人

13.2%301人

割合人数世帯員数

4人

24%

3人

23%

6人

1%

7人

1%

2人

29%

1人

13%5人

9%

平均:2.94人/世帯

世帯員数が4人以下という回答が、全体の約9割を占めた

29

回答者の小学生以下の子供の有無

小学生以下の子供がいる世帯は回答者の約4分の1の世帯であった

100.0%228合計

73.2%167いない

26.8%61いる

割合人数子供の有無いる27%

いない73%

30

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現状選好回答の要因分析

(100.0%)(69.3%)(30.7%)

22815870合計

(100.0%)(72.8%)(27.2%)

18413450現状選好以外

(100.0%)(54.5%)(45.5%)

442420現状選好

あてはまらないあてはまる合計

利用目的:子供を遊ばせる

現状選好回答と利用目的:「子供を遊ばせる」のクロス集計

N=228Pearsonのχ2値=5.577(有意確率5%で棄却)尤度比=5.306(有意確率5%で棄却)

子供を遊ばせるために利用している回答者は、現状のままを選択する傾向にある小学生以下の子供がいることと現状選好回答のクロス集計も有意であった

31

郷土種によって地域独特な景観になることを望ましいと思うか

地域独特な景観の望ましさ

郷土種を植え、植物の絶滅を回避することへの関心

絶滅回避への関心

+2:とても関心がある(とても望ましい)+1:関心がある(望ましい)0:どちらでもない-1:関心がない(望ましくない)-2:全く関心がない(全く望ましくない)

生物のために根岸森林公園の緑地を整備することへの関心

生物のための緑地整備への関心

+1:よく知っている0:知っている

-1:知らないふるさとの緑事業を知っているかふるさとの緑事業の認知度

変数の水準変数の説明変数名

33

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変数の水準変数の説明変数名

地域本来の自然を守ることを重要と思うか

地域本来の自然を守ることの重要性

公園が生物の生息地に適することを重要と思うか

公園の生物生息地としての重要性

公園がレクリエーションに適することを重要と思うか

公園がレクリエーション機能の重要性

公園が安全な場であることを重要と思うか

公園が安全であることの重要性

+2:大変重要である+1:重要である0:どちらでもない-1:重要でない-2:全く重要でない

公園の見た目が美しいことを重要と思うか

公園の美しさの重要性

34

変数の水準変数の説明変数名

+5:年ごとの利用+4:月ごとの利用+3:週ごとの利用+2:過去に利用+1:利用なし

カテゴリーに分けられた根岸森林公園への訪問頻度

訪問頻度

人回答者の世帯員数世帯員数

+1:いる0:いない

回答者に小学生以下の子供がいるかどうか

小学生以下の子供の有無ダミー

年代(20~80代)回答者の年齢年代

自然観察のため根岸森林公園を利用しているかどうか

公園の利用目的ダミー:自然の観察

+1:あてはまる0:あてはまらない

知人との交流のために根岸森林公園を利用しているかどうか

公園の利用目的ダミー:知人との交流

35

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全回答に対する条件付きロジットモデルの推定パラメータ

0.165McFaddenのρ21375.65BIC-1319.34対数尤度

1140N1.31E-01**世帯員数

-8.85E-01***小学生以下の子供の有無ダミー-3.77E-01**公園の利用目的ダミー:自然の観察7.55E-01***公園の利用目的ダミー:知人との交流7.34E-01***公園の生物生息地としての重要性-4.59E-01***公園のレクリエーション機能の重要性4.57E-01***公園が安全な場であることの重要性-2.82E-01**公園の美しい見た目の重要性7.66E-01***地域独特な景観の望ましさ3.69E-01**ふるさとの緑事業の認知度3.70E-01***生物のための緑地整備への関心

2.34***ASC-3.51E-04***緑地税

6.89E-03郷土種の種類の割合7.32E-05***生物のための林の面積4.93E-05***広場の面積

モデル1 ASC・態度変数

***1%有意**5%有意*10%有意左は係数右の( )はt値LL0: -1580.38

36

主効果変数

広場、生物のための林が広いほうが好まれる

同じ選好を持つと仮定した場合、郷土種の割合は選択に影響を与えない

ASC

プラスに有意であり、現在のままが選択されやすい傾向にある

態度変数・社会経済変数

計画案を選択しない傾向

公園が美しいことを重要と考える

レクリエーション機能を重要と考える

自然観察のため利用している

小学生以下の子供がいる

計画案を選択する傾向

生物のための緑地整備への関心がある

地域独特な景観を望ましい

公園を生物生息地として重要と考える

世帯員数が多い

モデル1の結果

37

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0.0862McFaddenのρ2

1179.521BIC

-1165.44対数尤度

920N

-2.90E-04***緑地税

1.60E-02***郷土種の種類の割合

8.52E-05***生物のための林の面積

4.94E-05***広場の面積

モデル2 主効果変数

現状選好回答除外データに対する条件付きロジットモデルの推定パラメータ

***1%有意 **5%有意 *10%有意、左は係数、右の( )はt値、LL0: -1275.39

主効果変数

広場面積、生物のための林については、モデル1・モデル2と同様の結果

郷土種の割合についてもプラスに有意であった

→公園を変えてもよいと考えている人の中では、郷土種の割合が増えることによって便益が発生する 38

0.127McFaddenのρ2

1155.566BIC

-1113.33対数尤度

920N

-5.83E-01**Ln(訪問頻度)

6.52E-01*公園の利用目的ダミー:知人との交流

4.43E-01***地域本来の自然を守ることの重要性

-4.14E-01***公園のレクリエーション機能の重要性

5.46E-01***公園が安全な場であることの重要性

4.56E-01***地域独特な景観の望ましさ

3.83E-01***絶滅回避への関心

1.03**ASC

-3.56E-04***緑地税

6.97E-03郷土種の種類の割合

7.58E-05***生物のための林の面積

4.99E-05***広場の面積

モデル3 ASC・態度変数

現状選好回答除外データに対する条件付きロジットモデルの推定パラメータ

***1%有意**5%有意*10%有意左は係数右の( )はt値LL0: -1275.39

39

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主効果変数、ASC

モデル2とほぼ同様の結果

態度変数・社会経済変数

計画案を選択しない傾向

レクリエーション機能を重要と考える

利用頻度が高い

計画案を選択する傾向

郷土種を植えることによる絶滅回避効果に関心がある

地域独特な景観を望ましい

公園が安全な場であることを重要と考える

地域本来の自然を守ることを重要と考える

知人との交流のために利用している

モデル3の結果

40

各属性の限界支払意志額

0.165McFaddenのρ2

19.6

[-4.43, 45.9]

(円/種)郷土種の樹木の割合

0.209[0.173, 0.256]

(円/㎡)生物のための林

0.140[0.116, 0.173]

(円/㎡)広場

モデル1単位属性

ρ2が最も高いモデル1では、広場1m2に0.140円、生物のための林1m2に0.209円であったモデル2で推定された郷土種に対する限界支払意志額は、郷土種1種あたりに55.172円であった

41

※有意な結果は太字※数値は上段が限界支払意志額、下段がその90%信頼区間※信頼区間はモンテカルロシミュレーションで推定

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潜在クラス・ロジットモデルにおける回答者の分類

潜在セグメントへの分類に用いた変数

根岸森林公園をより多くの生き物のため整備することへの関心

ふるさとの緑事業の認知度

利用頻度

メンバーシップ関数の係数は、セグメント3の係数を全て0とした場合の相対的な値である

セグメント数を3としたときのBICが最も小さな値となった

42

0.185McFaddenのρ2

1323.782BIC

-1288.628対数尤度

1140N

-9.72E-017.16E-01*ふるさとの緑事業の認知度

-1.12E-016.08E-01**生物のための緑地整備への関心

--1.96***-3.82E-01Ln(訪問頻度)

-2.14*1.03E-01Constant

-8.21E-01***-1.61***1.18***ASC

-1.20E-04***-1.12E-03***-5.92E-04***緑地税

2.34E-031.23E-023.61E-02***郷土種の種類の割合

9.89E-05***4.32E-05***7.21E-05***生物のための林の面積

6.14E-05***-5.78E-069.16E-05***広場の面積

セグメント3セグメント2セグメント1変数

全回答に対する潜在クラス・ロジットモデルの推定パラメータ

***1%有意 **5%有意 *10%有意、左は係数、右の( )はt値、LL0: -1580.38

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潜在クラス・ロジットモデルの結果

セグメント1多くの生物のために整備することへの関心が高いふるさとの緑事業の認知度が高い回答者が分類されている広場と生物のための林が広いほうを好む傾向にある郷土種の割合も高いほうがよい

セグメント2ふるさとの緑事業への認知度が高い利用頻度が低い回答者が分類されている生物のための林が広いことを好む傾向にある

セグメント3広場と生物のための林が広いことを好む傾向にあるt検定の結果、広場より生物のための林のほうが好まれる

広場と生物のための林への選好は、セグメント1では広場のほうが大きいが、セグメント3では逆になっている

44

潜在クラス・ロジットモデルの限界支払意志額

19.5

[-56.0, 110]

11.0

[-3.11, 24.7]

61.1[30.9, 97.2]

(円/種)郷土種の割合

0.824[0.558, 1.58]

0.0386[0.0237, 0.0560]

0.122[0.0826, 0.171]

(円/㎡)生物のための林

0.512[0.343-0.972]

-0.00516

[-0.0168, 0.00691]

0.155[0.121, 0.207]

(円/㎡)広場

セグメント3セグメント2セグメント1単位属性

生物のための林は共通してプラスに有意に推定された広場や生物のための林の便益はセグメント3の方がセグメント1よ

りも大きい利用頻度の低いセグメント2は広場の便益が有意でなかったセグメント1は郷土種の割合に関してプラスに有意

※有意な結果は太字※数値は上段が限界支払意志額、下段がその90%信頼区間※信頼区間はモンテカルロシミュレーションで推定

45

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結果の考察

生物のために緑地整備することが選好される利用頻度が低い人にとっては、公園でなくてもよいのでは

利用のための林よりも、広場や生物のための林が選好される公園において、人と生物の両方に配慮することで便益が高まるのでは

ふるさとの緑事業について知っている人ほど、郷土種への便益が高い

現在の認知度は低い

今後、生物多様性に配慮した制度が増える中、郷土種の効果を伝えるのに有効と考えられる

潜在クラス・ロジットモデル回答者の特性を考慮し、より正確な便益評価を行える可能性

46

今後の課題

都市公園への選好の一般化より多くの属性を含んだ評価(緑地以外の施設なども含めて)

他の公園も対象とした評価(現在の状態が選好に影響を与えている可能性があり、それを排除するため)

主効果の属性すべてを含んだ分析(相関するため、今回は除外した利用のための林も含めて)

利用価値、非利用価値を考慮するため、利用行動をモデルに組み入れる

Graphicsを使用した選択型実験郷土種に関しても面積などとしてGraphicsで表現

3DのGraphicsにより、より多くの属性が認識される可能性も

選好の多様性だけでなく潜在構造の多様性を考慮したモデルセグメントごとのメンバーシップ関数に含まれる変数が異なるモデル

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参考文献

Boxall, P. C., Adamowicz W. L., 2002. Understanding heterogenouspreference in random utility models: a latent class approach. Environmental and Resource Economics 23, p421-446Johnston, R. J., Swallow, S. K., Bauer, D. M., 2002. Spatial factors and stated preference values for public goods: considerations for rural land use. Land Economics 78(4), p481-500田中・河野・松岡 2005. コンジョイント分析による都市公園の経済的評価 環境経済・政策学会2005年大会資料

武田・藤原・米澤 2004. コンジョイント分析による都市公園の経済的評価に関する研究 ランドスケープ研究67(5), p709-712藤見・渡邉・浅野 2006. 耕作放棄や圃場整備による棚田景観劣化の経済損失 環境科学会誌19(3), p195-207 横浜植物会編 1995. ヨコハマ植物散歩-市民の森と身近な自然- 神奈川新聞かなしん出版

横浜市環境創造局 ふるさとの緑事業資料

48

参考資料:データの平均・標準偏差

標準偏差標準偏差 平均平均

1.092

1.312

0.420

15.183

0.473

0.092

0.578

0.655

0.959

0.490

0.776

0.603

0.723

0.689

0.481

1.099

1.289

0.443

15.177

0.479

0.289

0.600

0.749

0.927

0.469

0.749

0.649

0.796

0.791

0.469

0.337

1.658

1.418

0.924

1.793

1.370

1.293

0.092 0.092 利用目的ダミー:知人との交流

0.355 利用目的ダミー:自然の観察

48.152 47.500 年代

0.228 0.268 小学生以下の子供の有無ダミー

2.951 2.943 世帯員数

3.620 3.588 訪問頻度

1.364 1.382 公園の美しさの重要性

1.803 公園が安全であることの重要性

0.974 公園のレクリエーション機能の重要性

1.320 公園の生物生息地としての重要性

1.614 地域本来の自然を守ることの重要性

1.281 地域独特な景観の望ましさ

1.215 絶滅回避への関心

1.435 1.333 生物のための緑地整備への関心

-0.701 -0.719 ふるさとの緑事業の認知度

現状選好除外全回答変数名

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全回答に対する条件付きロジットモデルの推定パラメータ

0.0845McFaddenのρ2

1460.908BIC

-1446.83対数尤度

1140N

-3.75E-04***緑地税

2.88E-03郷土種の種類の割合

6.54E-05***生物のための林の面積

4.72E-05***広場の面積

主効果変数

***1%有意 **5%有意 *10%有意、左は係数、右の( )はt値、LL0: -1580.38

主効果変数利用のための林と相対的に見た場合、広場、生物のための林が広いほうが好まれる

回答者が同じ選好を持つと仮定した場合、郷土種の割合は選択に影響を与えない