高力ボルト接合による鉄骨梁貫通孔の補強設計法およびその …ehf eq h q eh q...

4
61-1 1.序論 設備用配管などの設置のために鉄骨梁のウェブに設け られる貫通孔は,通常溶接によって補強材が設置されて いる.補強材としては鋼板やスリーブ管,各メーカーの 既製品を用いることが一般的である.しかし,実際の設 計において貫通孔に関する詳細決定の時期は遅く,貫通 孔周りの溶接歪の影響により梁の寸法精度の確保が難し い場合がある.鋼板を高力ボルトで接合する方法も検討 されている 1) が,具体的な設計手続きは提示されていな い.そこで本研究では,高力ボルト接合による補強設計 法を確立することを目的として,実大実験および 3 次元 有限要素法(以下,FEM)解析を行い,提案する設計法 の妥当性について検討した. 2.補強設計法 本研究で提案する補強設計法の手順を述べる.なお計 算式等の詳細は梗概では省略する.設計方針は,有孔梁 が無孔梁と同等の耐力を有するように貫通孔周辺に補強 を施すことであり,有孔部に作用する梁応力と無補強有 孔部の梁耐力の差を補強板が補うものとする. 対象とする梁に図 1 に示すような曲げモーメント分 高力ボルト接合による鉄骨梁貫通孔の補強設計法およびその検証 高橋 駿介 布を想定すると,有孔部に作用する梁の応力( dn M hi dn Q hi )が与えられる.また,文献 2) および 3) を参照 すると,図 2 に示す無補強有孔部の M h Q h 関係およ び有孔部の耐力( e M h e Q h ),( p M h p Q h )が得られる. ここで短期荷重時については( d1M hi d1Q hi )と( e M h e Q h )の差,終局耐力時については( d2M hi d2Q hi )と( p M h p Q h )の差で補強部の設計応力( req M s req Q s )が求まる. 補強部の設計において次の条件を与える.①短期荷重 時において,梁ウェブ-補強板間のすべりが発生しない, ②終局荷重時において,高力ボルトが破断せず,かつ補 強板が弾性に留まる. ボルトの設計については図 3 に示すような応力状態を 想定する.短期荷重時において接合部に生じる作用力(V B および H B の合力)に対してボルトのすべり耐力が大き くなるようにボルト種類を決定する.補強板の設計につ いては図 4 に示すような応力分布を想定し,ab 断面に ついて検討する.終局荷重時において,各断面で設定さ れた応力状態に対し,von Mises の降伏条件にて弾性範 囲に収まるように補強板のサイズを決定する. 3.実験概要 3.1 試験体概要 試験体一覧を表 1,使用材料の機械的性質を表 2,試 験体形状を図 5 に示す.中低層建築物を想定し,梁には H 496 × 199 × 9 × 14 SM490A)を使用した.貫 Meh eMh Mehf eQh Qeh Q M Ls1 (d1Mhi,d1Qhi) (d1Mhi,d1Qhi) reqMs reqQs reqMs reqQs (a) 短期荷重時 Mph pMh Mphf pQh Qph Q M Ls2 (d2Mhi,d2Qhi) (d2Mhi,d2Qhi) reqMs reqQs reqMs reqQs (b) 終局荷重時 2 有孔部の M Q 相関関係と設計応力 3 補強板およびボルト接合部に作用する応力 補強板 高力ボルト R B V B s req d M + s req Q + 2 B H s req Q + 2 2 B d b R θ a 4 補強板の応力分布 a 断面 σ 0 τ 0 σ 分布 τ分布 b 断面 τ θ σ θ σ 分布 τ分布 s req Q + 2 B s req d M 2 s d θ s d ML d1Mh1 d1Qh1 QL d1Mh2 d1Qh2 MR My QR l h l l h d2M h1 d2Qh1 QL d2Mh2 d2Qh2 α Mp QR α Mp 1 梁の曲げモーメント図 (b) 終局荷重時 (a) 短期荷重時 w 貫通孔

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  • 61-1

    1.序論

     設備用配管などの設置のために鉄骨梁のウェブに設け

    られる貫通孔は,通常溶接によって補強材が設置されて

    いる.補強材としては鋼板やスリーブ管,各メーカーの

    既製品を用いることが一般的である.しかし,実際の設

    計において貫通孔に関する詳細決定の時期は遅く,貫通

    孔周りの溶接歪の影響により梁の寸法精度の確保が難し

    い場合がある.鋼板を高力ボルトで接合する方法も検討

    されている1)が,具体的な設計手続きは提示されていな

    い.そこで本研究では,高力ボルト接合による補強設計

    法を確立することを目的として,実大実験および 3 次元有限要素法(以下,FEM)解析を行い,提案する設計法の妥当性について検討した. 2.補強設計法

     本研究で提案する補強設計法の手順を述べる.なお計

    算式等の詳細は梗概では省略する.設計方針は,有孔梁

    が無孔梁と同等の耐力を有するように貫通孔周辺に補強

    を施すことであり,有孔部に作用する梁応力と無補強有

    孔部の梁耐力の差を補強板が補うものとする.

     対象とする梁に図 1 に示すような曲げモーメント分

    高力ボルト接合による鉄骨梁貫通孔の補強設計法およびその検証

    高橋 駿介

    布を想定すると,有孔部に作用する梁の応力(dnMhi,

    dnQhi)が与えられる.また,文献 2) および 3) を参照すると,図 2 に示す無補強有孔部の Mh - Qh 関係および有孔部の耐力(eMh,eQh),(pMh,pQh)が得られる.ここで短期荷重時については(d1Mhi,d1Qhi)と(eMh,

    eQh)の差,終局耐力時については(d2Mhi,d2Qhi)と(pMh,

    pQh)の差で補強部の設計応力(reqMs,reqQs)が求まる. 補強部の設計において次の条件を与える.①短期荷重

    時において,梁ウェブ-補強板間のすべりが発生しない,

    ②終局荷重時において,高力ボルトが破断せず,かつ補

    強板が弾性に留まる.

     ボルトの設計については図 3 に示すような応力状態を想定する.短期荷重時において接合部に生じる作用力(VBおよび HB の合力)に対してボルトのすべり耐力が大きくなるようにボルト種類を決定する.補強板の設計につ

    いては図 4 に示すような応力分布を想定し,a,b 断面について検討する.終局荷重時において,各断面で設定さ

    れた応力状態に対し,von Mises の降伏条件にて弾性範囲に収まるように補強板のサイズを決定する.

    3.実験概要

    3.1 試験体概要 

     試験体一覧を表 1,使用材料の機械的性質を表 2,試験体形状を図 5 に示す.中低層建築物を想定し,梁にはH - 496 × 199 × 9 × 14 (SM490A)を使用した.貫

    MeheMhMehf

    eQh QehQ

    M

    Ls1

    (d1Mhi,d1Qhi)

    (d1Mhi,d1Qhi)reqMs

    reqQs

    reqMsreqQs

    (a) 短期荷重時

    MphpMhMphf

    pQh QphQ

    M

    Ls2

    (d2Mhi,d2Qhi)

    (d2Mhi,d2Qhi)reqMs

    reqQs

    reqMsreqQs

    (b) 終局荷重時図 2 有孔部の M-Q 相関関係と設計応力

    図 3 補強板およびボルト接合部に作用する応力

    補強板

    高力ボルト

    R

    2sreq

    BQ

    V =

    B

    sreqsreqB d

    MQH +=

    2

    B

    sreqsreqB d

    MQH +=

    2

    B

    sreqsreqB d

    MQH +=

    2

    B

    sreqsreqB d

    MQH +=

    2

    2Bd

    b

    a

    図 4 補強板の応力分布

    a 断面

    σ0 τ0

    σ 分布 τ分布b 断面

    τθσθ

    σ 分布 τ分布

    B

    sreqsreqB d

    MQH +=

    2

    B

    sreqsreqB d

    MQH +=

    2 2sd

    θsd

    MLd1Mh1d1Qh1

    QL d1Mh2

    d1Qh2

    MR=My

    QR

    lhl

    lh

    d2Mh1d2Qh1QL d2Mh2

    d2Qh2αMp

    QRαMp

    図 1 梁の曲げモーメント図 (b) 終局荷重時

    (a) 短期荷重時

    w

    貫通孔

  • 61-2

    通孔は梁端から 300mm 離れた位置の梁せい中央に配置し,孔径は梁せいのおよそ半分となる 250mm とした.補強板には PL - 9 × 420 × 450(厚さ×高さ×幅)を使用し,鋼種は SM490A とした.実験変数は貫通孔の有無,補強の有無とした.

     補強梁である No.3 は本設計法を満足した試験体である.ボルト本数は実用的な作業工数を考慮し,4本とした.使用ボルトは F14T M22 である.3.2 載荷概要

     図 6 に載荷装置を示す.試験体は冶具を介して反力フレームに固定し,油圧ジャッキを用いて片持ち梁形式

    で単調に載荷した.載荷は試験体が最大耐力到達後,最

    大耐力の 90% を下回るまで継続した.今回,冶具の不備により,No.1 については剛性低下後,全塑性耐力に到達してから,No.3 については最大耐力到達後,最大耐力の 90% を下回る前に載荷を中止した.冶具調整後,No.1,No.3 ともに最大耐力の 90% を下回るまで再載荷を行った.

    4.解析概要

    4.1 解析モデル

     実験を行った 3 体の試験体について FEM 解析を行った.解析モデルの一例を図7に示す.梁フランジ,ウェブ,エンドプレートには 8 節点六面体要素,溶接部には 6 節点くさび型要素および 4 節点四面体要素を用いた.梁端部の加力位置では応力集中を防ぐために剛体要素を用い

    た.補強板,梁ウェブおよび高力ボルトは接触要素とした.

    図 8 に示すように補強板-梁ウェブ間の摩擦係数μ はすべり試験で得られた値であるμ = 0.556 を用い,高力ボルト-補強板,梁ウェブ間についてはボルト接触面の標

    準的な摩擦係数であるμ = 0.2 を用いた.

    4.2 材料特性モデル

     解析で用いた材料特性は表 2 と同じ値を用いた.塑性域における構成則は von Mises の降伏条件と等方硬化則に基づいており,材料モデルには材料試験から得られた

    応力-歪関係を真応力-対数歪関係に換算した後,多直

    線近似したものが適用されている.板厚については公称

    値を用いた.エンドプレートについては材料試験を行っ

    ていないため降伏応力はミルシート値σy = 361N/mm2

    の完全弾塑性体とした.高力ボルトはヤング係数を公称

    値とした弾性体としてモデル化を行った.

    4.3 境界条件

     加力方法は単調載荷とし,高力ボルトに初期導入張力

    329kN を与えた後,梁先端部に鉛直変位が 200mm となるまで強制変位を与えた.拘束条件は図 7 に示すようにエンドプレートを全方向に拘束し,載荷点を y 方向に拘束した.ただし初期張力を導入する際はボルト頭頂部を

    一時的に全方向拘束している.

    5.実験および解析結果

    5.1 梁せん断力 Q -相対変位δ関係

     図 9 に梁せん断力 Q -相対変位δ 関係を示す.相対変位δ は図 10 および (1) 式で与えられる.再載荷については再載荷前の残留変形を考慮した結果を示してお

    り,No.3 の一回目載荷については再載荷までの交点までを示している.実験値,解析値ともに No.3 は No.2 に比べて各耐力は上昇し,No.1 程度まで回復していることがわかる.各耐力および初期剛性の解析値は実験値を

    表 2 材料の機械的性質

    部位板厚

    (mm)ヤング率

    (N/mm2)降伏応力

    (N/mm2)引張強さ

    (N/mm2)破断伸び

    (%) 降伏比

    梁フランジ 13.5 206,885 368 530 25.3 0.70 梁ウェブ 8.9 199,671 405 542 23.4 0.75 補強板 8.8 203,786 407 559 34.8 0.73

    ※鋼種はすべて SM490A

    図 6 載荷装置(No.3 設置)

    加力方向

    試験体

    振れ止め

    No.3

    1000kNロードセル

    試験体名 補強 梁断面孔 径(mm)

    孔-梁端距離(mm)

    補強板厚 さ(mm)

    No.1 無孔 H - 496 × 199 × 9 × 14

    (SM490A)

    - --No.2 無補強 250 300No.3 補強 9

    表 1 試験体一覧

    340

    340

    450 75

    2442

    024

    F14T-M22   

    b) 接合詳細図 5 試験体形状

    2000

    2000

    300

    496

    300

    H - 496 × 199 × 9 × 14(SM490A)

    φ250

    a) 試験体 (No.3)

    No.3

    2000300300

    2000

    2000

  • 61-3

    500

    400

    300

    200

    100

    00 50 100 150 200(d) 解析値

    Q(kN)

    δ(mm)

    No.1No.2No.3

    接触面:μ=0.556

    接触面:μ=0.2

    図 8 接触モデル(No.3,A-A断面)

    大きく上回る結果となった.初期剛性に関しては,実験

    では装置の不備で正確なδ を計測できなかったことが原

    因であり,解析値と理論値は良い対応を示した.各耐力

    に関しては,解析ではエンドプレートを全方向拘束して

    いる影響で梁端が 3 軸拘束状態になり,実験値を大きく上回ったと考えられる.しかし,各解析モデルの履歴の

    傾向は実験値を概ね再現できていることが確認できる.

    5.2 破壊性状

     図 11 に載荷後の変形状態と解析における変形図を示す.変形図は実験における除荷前のδ と等しい変形時を

    示している.いずれの試験体も梁ウェブの面外変形とと

    もに下フランジが面外変形することにより耐力の低下

    が生じた.No.3 では補強板の拘束効果によって No.1,No.2 に見られる梁ウェブおよびフランジの面外変形が抑えられた.さらに,No.2 に見られる有孔部のせん断変形も抑えられていることがわかる.また,変形図は実

    験結果と良く対応していることが確認できる.

    6.設計方法の検証

     以上の結果より解析についても概ね実験を再現できて

    いるとして,実験値とともに本設計方法の検証を行う.

    6.1 ボルト張力と補強板のすべり

     本設計方法では短期荷重時にすべりを生じさせない設

    図 11 変形図

    a)No.1

    b)No.2

    c)No.3(e) 実験値

    500

    400

    300

    200

    100

    00 50 100 150 200

    Q(kN)

    δ(mm)

    図 9 解析値と実験値(梁せん断力 Q -相対変位δ 関係)

    図 10 鉛直相対変位δ

    v2v1 (1)

    試験体

    δ

    載荷方向

    21 vvδ −=

    計としている.そこで,No.3 の補強板のすべり時期について検討する.3 体行ったすべり試験のすべり荷重時のボルト張力平均値をすべり時ボルト張力と定義し,ボ

    ルト張力がすべり時ボルト張力に達すると補強板が主す

    べりを生じたとみなす.図 12 にボルト張力と有孔部に作用するモーメント Mo関係を示す.ボルトの識別記号については図 13 を参照されたい. 図 12 より,実験値,解析値ともに引張力を受ける固定端側の B1 で張力低下が著しく,全塑性耐力付近ですべり時ボルト張力に達した.また,図 14 に補強板-ウェブ間の相対変位- Mo 関係を示す.降伏耐力到達後からすべり時 Mo 付近で若干相対変位の変化率が大きくなっていることがわかる.ただし,この相対変位には梁端の

    塑性変形も含まれている.図 16 に B1 ボルト孔周辺の材軸方向摩擦力の合計と Mo関係を示す.摩擦力は図 15に示す範囲の節点から得られる値の和である.すべり時

    ボルト張力に到達時の Mo付近で急激に摩擦力が減少していることが確認できる.したがって,降伏耐力以降の

    図 7 解析モデル(No.3)

    y

    z

    x 載荷点(変位制御)

    A

    A

    :補強板

    :梁フランジ

    :高力ボルト

    :エンドプレート

    :梁ウェブ

    :降伏耐力(1/3 接線剛性) :全塑性耐力(1/6 接線剛性) :最大耐力500

    400

    300

    200

    100

    00 50 100 150 200

    Q(kN)

    δ(mm)

    (a)No.1

    500

    400

    300

    200

    100

    00 50 100 150 200

    Q(kN)

    δ(mm)

    (b)No.2

    500

    400

    300

    200

    100

    00 50 100 150 200

    Q(kN)

    δ(mm)

    (c)No.3

    実験値

    解析値

    剛性理論値

  • 61-4

    参考文献

    1)

    2)

    3)

    土井康生,他:円形孔を有するはりの耐力と設計法 3. 実用的算定式の提案,日本建築学会論文報告集,第 357 号,pp.44-51,1985.11加藤勉,他:鉄骨梁貫通孔の梁端からの限界距離について , 日本建築学会構造系論文集 , 第 496 号,pp.105-112,1997.6

    鈴木敏郎,他:有孔 H 形鋼梁の変形性状に着目した塑性変形性能改善手法に関する一提案,日本建築学会構造系論文集,第 477号,pp.115-122,1995.11

    すべり時ボルト張力付近ですべりが生じ始めている可能

    性があると考えられる.

    6.2 補強板の応力

     本設計法では補強板の応力分布を図 4 のように仮定しており,a 断面のσ0 およびτ0 は以下の式で与えられる.

      0 02req s Bσ M d A= ⋅ (2)

     0 01.5 4req sτ Q A= (3)

    ここで,reqQs と reqMs は補強部の設計応力である.A0 は図4のa断面の補強板一枚当たりの断面積である.(2),(3)式で算出したσ0 およびτ0 を計算値 calσ0 および calτ0 とし,

    表 3,4 に全塑性耐力時(実強度を用いた計算値)の各算定値を比較する.実験値は,図 17 に示す三軸歪ゲージと,有孔部中央鉛直軸上に貼付した 4 枚の 1 軸歪ゲージで算出した.表 3 より,τ0 では実験値と解析値は良い対応を示しているが,計算値と比べ 2 倍以上大きい値となった.表 4 より,σ0 では引張側は解析値が低い値であるが概ね良い対応を示している.圧縮側は実験値が他の

    算定値と比べて小さい値となり,引張側と圧縮側で差が

    みられた.結果的にτ0 については大きく危険側の設計

    となったが,図 18 に示す補強板の相当応力コンター図からもわかるように von Mises の降伏条件による降伏判定では弾性範囲内に留まっている.

    図 12 ボルト張力―有孔部作用モーメント Mo 関係(b) 解析値(a) 実験値(一回目載荷)

    350

    300

    250

    2000 200 400 600 800

    350

    300

    250

    2000 200 400 600

    B1B2B3B4

    すべり時ボルト張力

    全塑性耐力降伏耐力

    ボルト張力(kN)

    Mo(kNm)

    ボルト張力(kN)

    Mo(kNm)

    0

    -100

    -200

    -300

    摩擦力 (kN)

    Mo(kNm)

    すべり時 Mo

    図 16 摩擦力―Mo関係

    0 200 400 600 800

    600

    400

    200

    0

    負担 M(kNm)

    Mo(kNm)

    No.2全塑性耐力

    No.3全塑性耐力

    図 19 負担 M―Mo関係

    補強板

    0 200 400 600

    6.3 梁の負担モーメント

     本設計方法では終局荷重時に梁有孔部が全塑性状態に

    達していると仮定し補強板の作用応力を決めている.そ

    こで梁と補強板の負担モーメントを確認する.図 19 に梁と補強板の有孔部中央の負担モーメントと Mo 関係を示す.全塑性耐力時には梁の負担モーメントは No.2 の全塑性耐力以上のモーメントを負担しており,断面性能

    を十分に発揮しているといえる.

    7.まとめ

     本研究で得られた知見を以下に示す.

    ・製作精度の改善策として高力ボルト接合による鉄骨梁

    貫通孔の補強方法を提案した.

    ・提案した設計方法で設計した試験体は無孔梁と同等の

    耐力を示し , 補強効果が確認された.・提案した設計方法について実験結果や解析結果を用い

    て妥当性を検証した.

    値引張側平均値

    (N/mm2)圧縮側平均値

    (N/mm2)実験値 182 -123解析値 136 -141計算値 177

    表 4 全塑性耐力時の補強板のσ0

    3軸歪ゲージ

    貼付位置

    図 17 

    固定端側

    載荷方向

    図 14 補強板相対変位―Mo 関係

    降伏耐力すべり時 Mo

    Mo(kNm)200 400 600

    2

    1

    0

    相対変位 (mm)

    Uwr1Vwr1

    固定端側

    載荷方向

    Uwr1

    75

    120

    B1

    B2

    B3

    B4

    Vwr1(裏側)

    ボルト識別番号

    および相対変位計測位置

    図 13 

    0 200 400

    図 18 全塑性耐力時(計算値)

    補強板相当応力コンター

    固定端側

    載荷方向

    参照範囲

    図 15 B1 ボルト孔

    19mm載荷方向

    ボルト孔

    値引張側平均値

    (N/mm2)圧縮側平均値

    (N/mm2)自由端側

    (N/mm2)固定端側

    (N/mm2)実験値 62.7 61.6 58.4 40.9解析値 65.5 64.6 56.7 48.8計算値 25.4 21.6

    表 3 全塑性耐力時の補強板のτ0