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F: 輻射強度 2007年11月12日 単位名 学部 :天体輻射論I 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一 授業の最後に出す問題に対し、レポートを提出。 成績は「レポート+出欠」でつける。 授業の内容は下のHPに掲載される。 http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nakada/intro-j.html

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Page 1: 大学院:恒星物理学特論IVIntensity.pdfF.1.輻射強度(Intensity)の定義 光子(振動数、位置、方向)の分布の2つの表現法 (1)光子の分布関数(位置、運動量)

F: 輻射強度

2007年11月12日

単位名学部 :天体輻射論I

大学院:恒星物理学特論IV

教官名 中田 好一

授業の最後に出す問題に対し、レポートを提出。成績は「レポート+出欠」でつける。

授業の内容は下のHPに掲載される。

http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nakada/intro-j.html

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授業タイトル

A: 原子のエネルギー準位 2007年10月 1日

B: 化学平衡 2007年10月15日

C: 線吸収 2007年10月22日

D: 連続吸収 2007年10月29日

E: ダストの吸収 2007年11月 5日

F: 輻射強度 2007年11月12日

G: 黒体輻射 2007年11月19日

H: 等級 2007年11月26日

I: 色等級図 2007年12月 3日

J: 星間減光 2007年12月10日

K: 輻射方程式 2007年12月17日

L: エディントン近似 2008年 1月 7日

M: 吸収線の形成 2008年 1月21日

N: 星のスペクトル 2008年 1月28日

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F.1.輻射強度(Intensity)の定義

光子(振動数、位置、方向)の分布の2つの表現法

(1) 光子の分布関数(位置、運動量) (2) 輻射強度(インテンシティー)

f(x, p) I (x, ν , Ω )

物理 天文

光の強さをどう表現しようか?

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(1) f(x, p)

dN=dN´dx

=f(x,p)dxdp

=位置dx、運動量dpの箱内

の光子の数

(2) I (x, ν, Ω)

dE=I (x, ν, Ω)dνdΩdSdt

=位置x、法線方向Ωの微小面

dSを通り、Ω方向立体角dΩ

に時間dt内に流れる振動数

dν の光子エネルギー

f(x, p)=位相空間密度x

px

py

dx

dpx

dNdpy

dN

dS

dΩ

dE=I (x, ν, Ω)dνdΩdSdt

I (x, ν, Ω)

=輻射強度

(Intensity)

dE

dN=f(x,p)d3xd3p

下に位相空間の6軸中X、Px、Py

の3軸だけ描いた図を示す

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f と I をどうつなぐか?

(1) 分布関数 f を運動量に関し絶対値・角度表示する。

dN´=f(x,p)dp=f(x,|p|,Ω)・p2dpdΩ x

dΩdN

dp

dx

(2) dΩ方向に垂直な微小面をdSとする。

dn=dt 内に dΩ 方向へdSを通る光子数

=dN´・c・dS・dt

(3) dE=hν・dn

I (x, ν, Ω)dν・dΩ・dS・dt=hν・dN´・c・dS・dt

=hν・f(x,|p|,Ω)・p2dp・c・dΩ・dS・dt

輻射強度(Intensity)は基本的には

光子の位相密度関数 f を立体角表示したものである。

Py

Px

((4) 光子に対して、hν=c・p だから、dp=(h/c)dν

I (x, ν, Ω)=(h4ν3/c2)・f(x,p)

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注1: 光子に対しては、ε=hν=c・p からdp=(h/c)dνなので

f(x, p)d3p=f(x,p)・p2dp・dΩ

=(h3ν2/c3)・f(x,p)・dν・dΩ

したがって、 g (x, ν, Ω)=(h3ν2/c3)・f(x,hν/c) とおくと、

dN´=g (x, ν, Ω)・dν・dΩ

I (x, ν, Ω)=ε・c・g (x, ν, Ω)

注2:

したがって、輻射強度の変化は光子に対するボルツマン方程式で記述される。

これが輻射輸達方程式である。光子の吸収、放出はボルツマン方程式の衝突項にあたる。吸収、散乱のない輻射は無衝突ボルツマン方程式に相当する。

その場合に成立する「位相密度f(x、p、t)は軌道に沿って不変である」という

Liouvilleの定理は次に述べる輻射強度不変の法則に対応するわけである。

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dΩ´

dS´

Ⅰ´

dE =Ⅰ´dS´dΩ´=ⅠdSdΩ

dS=R2dΩ´ dS´=R2dΩ

Ⅰ´R2dΩdΩ´=ⅠR2dΩ´dΩ

よって、Ⅰ=Ⅰ´

一様に光る円盤dSから放射される光を考えよう。

F.2. 輻射強度不変の法則

吸収や散乱の無い時、輻射強度Ⅰは距離によって変化しない。

dS

dSから輻射強度Ⅰ、立体角dΩで放射した光が全てR離れたdS´を輻射強度Ⅰ´、立体角dΩ´で通過する。

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この光線の広がりを、光子の位相密度関数の立場で考えてみよう。

Ωo

SoS

Ω

X

左から右に進む光子の運動を考える。位置空間を位置Xとそれに垂直な面 S で表す。運動量空間としては、運動量Pと運動方向の広がり立体角Ωをとる。面Soを立体角Ωoで出たN= no・So・Ωo 個の光子の集団が位置Xに達する。その時の光子の空間的な広がりSはS=Ωo・X2で与えられ、方向の広がりはΩ=S/X2 で与えられる。、

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Ω

S

X1

S1

Ω1

位相密度 f(x,p) は経路に沿って不変(Liouvilleの定理)

Ω0

S0

X

実空間(S)で広がる。 ⇔ 運動量空間(Ω)で絞られる。(SΩ=一定)

光子の総数N=n・S・Ωは変わらず、SΩ一定であるから位相密度 nは

不変である。これが光子の運動の最も単純な場合に対するLiouvilleの定理

の一例である。

位相密度nは輻射強度Iに比例するから n=一定 は I=一定 を意味する。

つまり、光束が広がると角度が絞られ、光束が縮むと角度が広がる結果、

輻射強度 I は一定に保たれるのである。

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F.3. 表面輝度(輻射強度の別名)

等方的に光る壁A-Bを点Xから見る。

A

XB

I(A,ωA)

I(X,ωA)

I(B,ωB)I(X,ωB)

I(X,ωA) =I(A,ωA)

斜めに見ると光線が圧縮されるので濃く見える。

遠くなると光が弱くなるので壁の輝きが弱まる。

××

XからAを見ると、A点はI(X,ωA)=I(A,ωA)の強さで光って見える。この強さはXによらず、A点固有の量である。そこで、I(A,ωA)を、[ 天文では実際に測定するのはI(X,ωA)だが ] A点でのωA方向

の表面輝度と呼ぶ。説明から分かるように表面輝度は輻射強度と同じである。

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zy

点yから見た壁

点zから見た壁

黄色い部分は小さく見えるが、そこの色、明るさは変わらない

壁から離れた点 y、 z での輻射強度は?

銀河の表面輝度は距離で変わらない。大きさが変わるだけ。

輻射強度=表面輝度は距離で変わらない。

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S=S k=法線ベクトルkの微小面

F. 4.フラックス(Flux)

dΩ=kdΩ=Ω方向の微小立体角(kはΩ方向の単位ベクトル)

θk

k´

k=Sの法線ベクトル(長さ1)

最初に定義を少し。(見にくいけれど太字はベクトル)

S=Sk

dΩ(k)

(k・k´)=cosθ

k´=kと角度θをなす単位ベクトル

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dΩ´=k´dΩ´=Ω´方向の微小立体角

θk

k´

cosθ SS

S=kS

単位時間にSを通る光子のエネルギーEを計算してみよう。

dΩ´=k´dΩ ´

θ

k′

Sを通る光(Ω ´方向)は法線k(Ω方向)に対し角度(θ)を持つ。

Ω´方向の光がSを通過するときは、Sを斜めに見るので、その有効面積は

S・cosθ= (k・k´) S=(S・k´)

Sを通り、dΩ´方向に流れるエネルギーdE´は、

dE´=I´(Ω´)(S・k´)dΩ´

= I´(Ω´)(S・dΩ´)

したがって、

E=∫dE´=∫I´(Ω´)(S・dΩ´)

=S・∫I´(Ω´)dΩ´

=S・F

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F=∫I(Ω)dΩ=輻射流束ベクトル=フラックスベクトル

F(k)=(k・F)

=k・ ∫I(Ω´)dΩ´

=∫I(Ω´)(k・dΩ´)

=∫I(Ω´)(k・k´)dΩ´

=∫I(Ω´)cosθdΩ´

Sを単位面積にしたときの F=(k・F) もフラックスというので注意。

I(k´)

θ

dΩ´=k´dΩ´

dS=kdS

F(k)=k方向の面を通るフラックス

=(k・F)

=フラックス(輻射流束)ベクトルFのk方向成分

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フラックスとインテンシティ

フラックス F インテンシティ I

周波数表示 W/m2/Hz W/m2/Hz/Str.

波長表示 W/m2/mμ W/m2/mμ/Str.

全エネルギー表示 W/m2 W/m2/Str.

と、フラックスとインテンシティは単位としては立体角(Str)当たりかどうかが違いであるが、立体角は無次元なので、実際にはフラックスとインテンシティは同じ単位で表される。

天文では、ジャンスキー(Jansky)=Jy=10-26W/m2/Hzという単位が多用される。

星などの点光源に用いられるときはフラックスの意味である。しかし、空の背景輻射など広がった天体の話で Jansky が現れたら、インテンシティの意味で使われているから注意が必要である。

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F.5. 体積輻射率ε

インテンシティ Iのソースはどこだろうか?

1) 壁 I2=I1

I2I1

2) 途中からの輻射の集積 I2 =∫dI

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A点でのインテンシティ I への、途中B点での微小区間dXからの寄与をもう少し

丁寧に考えてみる。

長さ=dX,断面積=dsの微小体積dV=dsdXを考える。dV内で生み出される

光エネルギー率を、4πεdV とする。4πは後での記述の整理のために入れ

た定数。ε=体積放射係数と呼ぶ。4πεdVのエネルギーはB点から四方八

方に放出される。その内でA点でのインテンシティに寄与する割合を考える。

dX

ds=X2dω

dωdΩ

dS=X2dΩ

A点に微小面積dSを立てる。A点からB点のdsを見る立体角=dω=ds/X2

逆に、B点からdSを見込む立体角dΩ=dS/X2

A点

B点

dω

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dX X

ds=X2dω

dΩdS

したがって、dVからdSを通ってdωに放出されるエネルギー率は、

(4πεdV)(dΩ/4π)=(4πεX2dωdX)(dS/ 4πX2)=εdXdSdω

この式を見ると、dX部分からの I への寄与dIは dI=εdX である。

したがって、2)の場合は I=∫dI=∫εdx

注意: テキストによっては、dV内でのエネルギー放出率をεdVとしている。

この場合には dI=(ε/ 4π)dx I=∫dI=∫(ε/ 4π)dx となる。

dV内で発生する輻射(4πεdV)のうち、(dΩ/4π)がA点でdSを通り、dΩの方向に

流れていく。

4πεdV

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(a) 壁表面でのフラックス F

(1) F =∫I cosθdΩ

=∫∫I(θ、φ)cosθsinθdθdφ

(2) I(θ、φ)が壁の法線に関して軸対称 (φによらない) と、

F=2π∫0π/2 I (θ)cosθsinθdθ

=2π∫01 I (μ)μdμ (μ=cosθ)

(3) I(θ、φ)が一定 (等方) I=Io な場合、

F=2πIo∫0π/2cosθsinθdθ

=2πIo∫01μdμ

=πI0

Fを求める際の立体角Ωは壁前面なので2πに渡る。しかし、Fの計算には

Iにcosθの重みがかかる(F=∫IcosθdΩ)ので、<cosθ>=0.5のためF=2πIoでなく、F=πIoになるのである。

F.6. 簡単な例

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(b) 望遠鏡のF比

星雲を焦点距離 f、口径Dの望遠鏡で撮影する。簡単のため、望遠鏡の収差は無視する。

A

星雲上の点Aの像が焦点位置Bにできたとする。Bに置いた画像検出器(写真乾板、CCDなど)が受ける輻射量、すなわち像の明るさを考えよう。

D2η

A点から輻射強度=IAで出た光は、Dを通り、輻射強度=IBでB点に集まる。

A.2.でやったようにIA=IBである。B点でのフラックスFは収束光の立体角をωとすると、

F=∫IBcosθdΩ≒IBω≒πIBη2≒πIA(D/2f)2

(tanη=D/2f)

IA

IB

広がった像の単位面積当たりの光量=フラックス は (f / D)=F比 で決まる。

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焦点距離 = f

F比 = F

L

画像の長さ L=f・θ

θ

η

D

像が大きい

像が小さい

像が明るい像が暗い

tanη=D/2f=1/(2F)

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前頁の式に出てくる f/D を望遠鏡のF比(F-ratio)と呼ぶ。

一般に望遠鏡の画像の大きさは焦点距離 f で決まり、

画像の明るさはF比で決まる。

F比 大 F比 小

焦点距離f 大

焦点距離f 小

したがって淡い画像、例えば銀河の周りに広がる薄いエンベロープ、を検出しようとする際には口径の大きさよりもF比を重視しなければいけない。

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いくつかの例

すばる望遠鏡 口径=8m 主焦点(主鏡の焦点)の焦点距離=15m

F=15/8=1.9

岡山天体物理 口径=1.88m 主焦点(主鏡の焦点)の焦点距離=9.15m

観測所 F=9.15/1.88=4.9

1.88m望遠鏡

木曽観測所 口径=1.05m 主焦点(主鏡の焦点)の焦点距離=3.3m

シュミット望遠鏡 F=3.3/1.05=3.1

ニコン 口径=36mm 焦点距離=50mm

カメラ標準レンズ F=50/36=1.4

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(c) マゼラン雲内の恒星コラム数密度

光度(エネルギー総放出率)Lの星が数密度nで分布しているとする。体積dV内の星の総数=ndVだから、

4πεdV=LndV ε=Ln/4π

マゼラン雲の面輝度Bを測ったところ、B=10-5W/m2であった。マゼラン雲内の星の光度を仮に太陽の光度の100倍

Lo=3.85・1028W とし、途中の光吸収をゼロと仮定すると、

B=∫(Lo・n/4π)dx=(Lo/4π)(n・X)N=(n・X)=(4π・10-5/3.85・1028)/m2

=3.26・10-33/m2

=3.26・10-33・(3.08・1016)2/pc2

=3/pc2

次ページに示すのは マゼラン雲バーの中心7.8分角のJHK3色画像で

ある。 マゼラン雲までの距離を50kpcとすると、113pc四方となる。 この画像に写っている星は大部分が赤色巨星で100Loよりは明るく、星の数は1万程度なので、上の見積もりと大体合う。

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大マゼラン雲(LMC)

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(d) オルバースのパラドックス

オルバース(1758-1840)は、星が地球(太陽)の周りにどこまでも存在する宇宙を考えた。

星の半径=Ro、明るさ=Lo、星の数密度=n とする。

dN=4πR2dR・n=球殻中の星の数

R

dR

半径=R、厚み=dRの球殻

S=πRo2=一つの星の断面積ω=S/R2=π(Ro/R)2

=一つの星の立体角dΩ=ω・dN

=π(Ro/R)2・4πR2dR・n=4π2Ro2・n・dR

=球殻内の星が空を覆う立体角Ω(R)=∫0

RdΩ=4π2Ro2・n・R=地球から距離R以内の星全体が空を覆う立体角

オルバースは、「宇宙が一様で無限であるならΩ(R)が4πとなり全天が太陽表面と同じ明るさで輝くはずなのに、なぜ夜空は暗いのか」という問題を提唱した。

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この問題を輻射強度Iの言葉で表現してみよう。

例(c)で見たように、恒星数密度nの時ε=Lo・n/4π

だから、地球から距離R以内の恒星による輻射強度は、

I(R)=∫0RεdR=Lo・n・R/4π

I(R)はRに比例するので、Rが無限大になるとI(R)も発散する。

前頁のΩを数値で当ってみると、簡単のためRo=6.96・108m、n=1/pc3 として、

Ω(R)=4π2Ro2・n・R=4π2(6.96・108/3.08・1016)2R(pc)

=4π2・5.11・10-16R(pc)

Ω(R)=4πとなるのは、R=6.23・1014pc=2.03・1015光年

R=100億光年=1010光年とすると、

Ω=4π(1010/2.031015)=π・1.97・10-5=π・(4.43・10-3)2

1′=π/180=2.91・10-4なので、4.43・10-3=15.2′

太陽の視半径=16′なので、太陽近傍の恒星密度で宇宙が100億光年まで一様

であったら、夜空は昼間と同じくらいにまでは明るかったであろう。

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問題F 出題:平成19年11月12日解答レポートの第1頁には、氏名、学科、学年、提出月日を忘れず記入せよ。(なるべく) 翌週の授業に提出すること。

F-1黒体表面での輻射強度は等方的である。すなわち、黒体表面をどのような

角度から見ても同じ輝き(表面輝度)に見える。

下の写真はグリフィス公園から見たロサンゼルスの夜景である。市街地を無限に広がる平面とみなし、W=100ワットの電球がN=0.1個/m2の密度で灯っているとしよう。公園の高さを市街からh=50mとし、公園における輻射強度を鉛直方向からの角度θ(°)の関数として求めよ。

等方的に光る電球を一様に並べたのに、なぜ市街地の表面輝度は一様でないのか、その理由を述べよ。

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F-2下の花火の写真を見ると、中央よりも縁の方が火の粉が多いこと(リムブライト

ニング)に気付くであろう。写真上での火の粉の面密度を測って、花火の中心からの距離の関数としてグラフにせよ。次にそれを適当なモデルで説明せよ。