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eizojoho industrial 38 December 2015 従来、きわめて困難であった、金属表面や光沢表面をもつ物体の微細な表面状態や凹凸 に対して、その3D画像が1ショットで撮像できる画期的な照明が登場した。VISAメソッド 注1 を用い、照明から被写体表面までの距離に依らず、被写体表面の各点に対する照射立体 注2 を任意の形状で、しかも均一に制御することが可能になり、従来型照明では不可能 であった、金属表面や光沢表面をもつ物体上の微小なキズや凹凸など、特に検出条件の 厳しい特徴情報を安定に撮像することができる。 照明の常識を変える VISA(可変照射立体角)照明 VISA-Method Lighting (Variable Irradiation Solid Angle) マシンビジョンライティング株式会社増村茂樹 20 年ほど前から、LED を中心としたマシンビ ジョン用途向けの照明が特化され始め、現在では 様々な形や特性をもつ照明が、複数の照明メーカ から供給されている。しかし、その種類や製品の 数は膨大といってもいいほどで、どの場合にどん な照明を使用していいかは、もはやユーザには判 別が困難であろうと思われる。 なぜなら、マシンビジョン用途向けの照明は、 人間の視覚用途向けの一般照明のように、物体を 明るく照らすための照明ではないからである。特 に、マシンビジョンシステムで多用する明視野時 の照明系および撮像光学系の最適化に関しては、 照明や光学機器メーカでさえ、手探りの状態が続 いている。 そのために、日本インダストリアルイメージン グ協会JIIAを通じて世界規格に認証された世界 初の照明規格JIIA LI-001-2013があるが、メーカ そのものが従来型の、物を照らす照明としての既 成概念から抜け出せないでいるのが現状である。 マシンビジョン用途向けの照明系の最適化を行 うには、物体の光物性に着目し、物体から返され 1 背景と課題 注1 VISAメソッドとは、テレセントリック光学系を応用し、特殊なマスクパターンを用いて、被写体上の特徴情報、およびそれぞれの撮像 条件に応じて、最適な照射立体角を均一に形成する照射光学系のことで、現在、特許出願中である。 注2 照射立体角とは、物体面の各点に対して照射される光の角度範囲で、各点を頂点とする任意の底面形状を持つ錐体で表され、 この形状や大きさと、撮像光学系で形成される観察立体角との相関関係で決まる立体角要素で、明視野時の物体の各点の明る さの変化量を最適化することができる。(詳しくは、増村茂樹著「マシンビジョンライティング基礎編、応用編、実践編」および、増村茂 樹著「連載『光の使命を果たせ』第122回〜第140回・映像情報インダストリアル誌、およびJIIA照明規格、JIIA LI-001-2013を 参照されたい。)

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eizojoho industrial38︱December 2015

速報!新技術・新製品

従来、きわめて困難であった、金属表面や光沢表面をもつ物体の微細な表面状態や凹凸に対して、その3D画像が1ショットで撮像できる画期的な照明が登場した。VISAメソッド注1

を用い、照明から被写体表面までの距離に依らず、被写体表面の各点に対する照射立体角注2を任意の形状で、しかも均一に制御することが可能になり、従来型照明では不可能であった、金属表面や光沢表面をもつ物体上の微小なキズや凹凸など、特に検出条件の 厳しい特徴情報を安定に撮像することができる。

照明の常識を変えるVISA(可変照射立体角)照明

VISA-Method Lighting(Variable Irradiation Solid Angle)

マシンビジョンライティング株式会社/増村茂樹

 20年ほど前から、LEDを中心としたマシンビジョン用途向けの照明が特化され始め、現在では様々な形や特性をもつ照明が、複数の照明メーカから供給されている。しかし、その種類や製品の数は膨大といってもいいほどで、どの場合にどんな照明を使用していいかは、もはやユーザには判別が困難であろうと思われる。 なぜなら、マシンビジョン用途向けの照明は、人間の視覚用途向けの一般照明のように、物体を

明るく照らすための照明ではないからである。特に、マシンビジョンシステムで多用する明視野時の照明系および撮像光学系の最適化に関しては、照明や光学機器メーカでさえ、手探りの状態が続いている。 そのために、日本インダストリアルイメージング協会JIIAを通じて世界規格に認証された世界初の照明規格JIIA LI-001-2013があるが、メーカそのものが従来型の、物を照らす照明としての既成概念から抜け出せないでいるのが現状である。 マシンビジョン用途向けの照明系の最適化を行うには、物体の光物性に着目し、物体から返され

1 背景と課題

注1  VISAメソッドとは、テレセントリック光学系を応用し、特殊なマスクパターンを用いて、被写体上の特徴情報、およびそれぞれの撮像条件に応じて、最適な照射立体角を均一に形成する照射光学系のことで、現在、特許出願中である。

注2  照射立体角とは、物体面の各点に対して照射される光の角度範囲で、各点を頂点とする任意の底面形状を持つ錐体で表され、この形状や大きさと、撮像光学系で形成される観察立体角との相関関係で決まる立体角要素で、明視野時の物体の各点の明るさの変化量を最適化することができる。(詳しくは、増村茂樹著「マシンビジョンライティング基礎編、応用編、実践編」および、増村茂樹著「連載『光の使命を果たせ』第122回〜第140回・映像情報インダストリアル誌、およびJIIA照明規格、JIIA LI-001-2013を参照されたい。)

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マシンビジョンライティング株式会社

る物体光と照射光との関係、さらには撮像光学系との関係を正しく把握する必要があり、そのためには上記の規格の内容をしっかりと理解していなければ、従来の照明工学技術だけでは、なにをどのように最適化してよいかさえわからないであろう。 そんな中で、この照明規格に準拠し、特に明視野における物体光の明るさの変化量を精密に最適化することのできる、まさに画期的な照明が登場した。VISA照明である。

 VISAとはVariable Irradiation Solid Angleの略で、照射立体角が可変であるという意味である。 原理等の詳細は後述するとして、VISA照明の最大の特徴は、被写体面の撮像視野において、どの点に対する照射光も全く同じ照射条件に制御できるということである。これは、従来型照明からすると、夢のような話である。本当にそんなことができるのかと、思いたくなるのも当然であろう。

(1)従来型照明との比較 それでは、以下、従来型照明と比較しながら、VISA照明の特徴について述べる。 図1を、ご覧いただきたい。図の(a)は従来型照明、(b)はVISA照明の照射構造を示している。 図1の(a)では、従来型の一般的な照明として、一定の形をもった面光源を図示した。この場合、被写体面の異なる点、P1とP2では、その点に照射される光の角度や範囲が異なっており、照度も違えば、物体からの反射光の角度や強さも異なってしまい、物体から返される物体光の明るさもその伝搬方向も異なってしまうことが容易に予想される。これが、従来型の照明では、特に抽出条件の厳しい特徴情報に対して、その特徴情報を画像情報として安定に撮像できない最大の理由である。 これは、従来型のどんな照明をもってきても、同様のことが起こるわけだが、平行光を照射すると、照射角度や照度が一定となり、一見、平行光なら均一に照射されるので、これですべてが解決するのではないか、と思われるかもしれない。 実際、平行光が功を奏する場合もあることはあ

2 VISA照明の概要

図1 VISA照明と従来型照明の被写体面への照射立体角構造比較

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るが、平行光は照射立体角が0の照射光であり、特に明視野の場合、物体から返される物体光が直接光注3であって、照射光の立体角を維持するため、このような光を撮像光学系で捕捉しようとすると、物体光を連続的に補足できなくなってきわめて自由度が低くなり、目指す特徴情報を抽出するための最適化など、できなくなってしまうのである。 対して、図1の(b)に示したVISA照明では、被写体面の任意の異なる点、P1、P2においてはも

ちろん、どの点を取ってもその点に対する照射立体角は同じ形で、同じだけ傾いており、すなわちその照射条件はすべて同じとなる。したがって、VISA照明では照明からの距離に依らず、照度が一定となる。 なおかつ、VISA照明では、その照射立体角の大きさや形状を、ある一定の条件下で任意に設定することができる。そのいくつかの例を、図2に示す。

図2 VISA照明の照射立体角とその照射構造

注3  直接光とは、金属面の多くや、光沢面を有する物体から返される物体光で、照射光と同じ立体角をもち、照射光の正反射方向、または正透過方向に再放射される物体光のことで、直接光の明るさはは照度ではなく、照射光の輝度に比例する。(詳しくは、増村茂樹著「マシンビジョンライティング基礎編、応用編、実践編」および、JIIA照明規格、JIIA LI-001-2013を参照されたい。)

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マシンビジョンライティング株式会社

(2)照射立体角の設定について 図2の(a)〜(f)は、VISA照明における照射立体角の設定例である。(a)、(b)は単に円形の立体角の大小であって、従来型照明でいうと面光源がこれに当たる。一般の面光源には矩形のものが多いが、どの角度からも同条件にしようとすると円形の方がより最適化が図られる。また、当然、照射立体角を矩形にすることも可能である。 (c)はライン光源、(d)はリング光源に対応する。(e)は左右方向に方向性をもたせたライン光源であり、(f)は縦横、それぞれ片方ずつに方向依存性をもたせた照射立体角となる。 図2の(g)には、リング光源を例に取り、たとえばこれを被写体に照射すると、リングの真下の点P1では、均等に光が照射されるが、P2やP3の点では、リング型の光が斜めに照射されることになり、同じ特徴点でも、これではその視野内で大きく異なって見えてしまうことになる。 対して、図2の(h)は、VISA照明を用いてリング型の照射立体角に設定した場合を模式的に示しているが、VISA照明では、その照射光が、被写体面上のどの点に対しても、真上にリング照明があるかのように作用するのである。 照射光の照射条件は、物体の各点に対して、どの方向からどのような範囲で光が照射されているかということで決まる。これを、すべての点において、全くの同条件で光が照射されるようにできるのがVISA照明なのである。 そうすると、何がうれしいか。従来型の照明では、ある方向から特定の条件で照射した場合にのみ、検出したい特徴点が見える、ということがよくある。 このような場合に、物体を移動させて、一定の条件下ではあるが、物体の移動方向にのみ照射光

の照射条件を比較的良好な状態に設定できるのがラインセンサーを用いた撮像技術である。しかし、それでは方向依存性が強く、ライン方向では、同じ特徴点でも見え方が変わってくるなど、不安定要素が色濃く残ってしまうのが現状である。 これを、ラインでもエリアでも、その視野範囲のすべての点において、同じ条件で光を照射できるとしたらどうだろうか。また、シート上の微かな凹みやキズといった通常では肉眼でも見えづらいものや、金属面や光沢面上の僅かな凹みや傾きなど、これまで検出がきわめて難しかった特徴点の抽出が、VISA照明では実現できるのである。

 新開発のVISA照明は、照明からの距離に依らず、照射立体角の形状と大きさ、および傾きを、全く同じにすることができる。 その結果、物体表面の凹凸に拘わらず、その山の部分でも谷の部分でも、同じ照射立体角を形成できるため、それぞれの面の傾きのみを光の濃淡に変換することが可能となる。 これを利用すれば、これまで、困難であった金属表面や光沢面を有する物体の3D画像を取得することができる。 VISA照明では、その照射立体角を任意に設定することができるので、これをRGB別の立体角として物体に照射すると、物体面のすべての点で、同一の立体角を形成することが可能となり、物体から返される直接光に対して、そのそれぞれの立体角の変化を画像の濃淡に変換注4 することによって、物体面の各点を含む微小面の傾きを正確にRGBの変化に変換することができる。

3 VISA照明による撮像例

注4  直接光の立体角の変化を画像の濃淡に変換する方法に関しては、増村茂樹著「マシンビジョンライティング 応用編、実践編」に詳しく、年6回1泊2日で開催される、厚生労働省所管の高度ポリテクセンターでの照明技術セミナーで詳解されている。また、産業開発機構刊の映像情報インダストリアル誌の連載「光の使命を果たせ」第125回〜140回(2014年8月〜2015年11月)には、そのメカニズムと最適化の方法論が詳述されており、理解・応用のための基礎としてはJIIA照明規格、JIIA LI-001-2013が必修である。)

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(1)金属鏡面の撮像 VISA照明の照射構造を理解するために、まずは金属鏡面の撮像例を示す。 図3(カラー図:P.34参照)に金属鏡面の僅かな凹凸、打痕に対して、従来型の同軸照明で撮像した画像とVISA照明で撮像した画像の比較を示す。 図3の(a)と(d)は、従来型の同軸照明で撮像した画像であり、大きな凹み部分や表面キズなどは撮像されているが、周囲の微妙な凹みなどは検出することができていない。 対して、図3の(b)、(e)は、VISA照明を用い、凹みやキズ等の平面でない部分のみの3D情報を抽出するように設定した画像である。従来型の同軸照明では抽出が難しい、表面の微妙な傾きが連続的にRGBの濃淡画像に変換されていることがわかる。 また、図3の(c)、(f)は、VISA照明を用い、被写体表面の傾きが1.75°程度の傾きまでは、Bの単色として撮像できるよう設定した3D画像である。 VISA照明では、視野サイズにも拠るが、現状、照射立体角を、平面半角で10°程度まで任意に設定可能なので、この範囲内であれば、たとえばRGBの角度領域を任意に設定することが可能である。

(2)金属部材の撮像 次に、鏡面ではない、一般的な金属製部材に対する3D画像の撮像例を、図4(カラー図:P.35 参照)に示す。 図4の(a)と(d)は、従来型の同軸照明で撮像した画像である。 (a)は、円周上の3方向に配置された金属製の板があり、この内の1辺の板が僅かに傾いているものである。表面は光沢ではあるが鏡面ではない。 (d)は、切削加工が施された金属製の円板で、その端面に僅かな打痕がある。 従来型の同軸照明では、双方とも判別が難しいが、(b)、(c)、(e)、(f)に、それぞれ、RGBの照射立体角を適宜設定して、VISA照明で3D画像を撮像した例を示す。ぞれぞれ、RGBの立体角設定に対

応して、RGBのグラデーションが形成されていることがわかる。 RGBのグラデーションの度合いは、撮像光学系で形成される観察立体角(注2参照)が関係する立体角要素によって、最適化を図ることができる。すなわち、グラデーション部分をどのような角度範囲でどのように濃淡情報に変換するかは、立体角要素がその制御パラメータとなっている。 金属材料の表面検査は、一般に、不安定で難しいとされている。その理由は、金属から返される物体光に関しては、そのほとんどが直接光であることによる。

(3)物体光について 冒頭で述べたように、物体光の明るさ変化を制御可能とするには、従来のいわゆる物体を明るく照らすための照明技術ではなく、物体の光物性に着目し、光を電磁波として捉えた上で、その波の変化要素を最適化する手法を、照明技術に持ち込む必要がある。その基礎的な内容を整備したものが、日本発の世界規格として認証されている照明規格JIIA LI-001-2013である。 この照明規格では、光物性の手法を用いるために、物体から返される物体光に焦点を当て、その明るさを制御するために、その物体光を、直接光、散乱光、および分散直接光の3つに分類するところから始まっている。 当然ではあるが、物体の明るさ、すなわち物体光の明るさが同定されることなしに、その照明系の最適化を図ることはできないのである。 日本では、すでにこの10年来、厚生労働省所管の高度ポリテクセンターでの照明技術セミナーや、拙著「マシンビジョンライティング」シリーズ、およびこれをテキストとした照明セミナーにより、多くの照明技術者にこの考え方が浸透してきているが、世界レベルでは、照明規格は認証されたものの、その浸透はまだまだこれからである。 それが、このVISA照明の登場により、物体光の内、直接光の明るさが、照明の照度ではなく輝

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マシンビジョンライティング株式会社

度に比例していることや、立体角要素がその制御パラメータのキーになっていること、などが広く市場に浸透していくことを願っている。

(4)分散直接光の観察 一般に、鏡面ではない金属面からは、先の物体光の分類の内、分散直接光が放射されているが、完全な鏡面ではない表面をもち、なおかつ細密な立体構造をしている硬貨に対して、VISA照明を用い、3D画像を取得した例を示す。 硬貨の凹凸表面の3D撮像例を図5(カラー図:P.36 参照)に、また、その部分的な詳細画像を図6(カラー図:P.37参照)に示す。 両図とも、(a)と(d)は、従来型の面光源の同軸照明を使用して撮像した画像である。従来型照明であっても、物体から返される物体光が直接光であることにかわりはない。 では、その画像の濃淡は、どのようなメカニズムで生じているのだろうか。直接光の明るさは、照明規格JIIA LI-001-2013に規定されているごとく、次の式で与えられる。

  ・・・(1)

 ここで、 は立体角要素(Facor of Solid Angle)であり、 は反射/透過率、 は照射光の輝度である。 は分散直接光の輝度であり、直接光の場合は立体角要素の内容が若干異なるが、実際上、同じ形となる。  は反射/透過率ではあるが、伝搬方向の変化を含め、物体の光物性に依存する要素であり、 による伝搬方向の変化が、立体角要素の条件で物体光の明るさとして変換されている。したがって、従来型の同軸照明においても、物体面の傾きがその照射立体角に対して無視できない場合は、その分、観察方向からの明るさが減って暗くなる。 つまり、直接光の明るさは、照射光の輝度が一定だとすると、照射立体角とその傾き、および物体面の傾きと、観察立体角、およびその傾きで決

まっていることにかわりはない。 要は、従来型の照明では、照射立体角を均一に設定できないので、その変化を無視できるようにするために照射立体角を大きくして、明視野の用に供しているだけなのである。これが、明視野では、一般に面光源を使用する理由である。 対して、VISA照明では、照射立体角を照明からの距離や視野内の場所に拠らず、一定にすることができるので、照射立体角を理論上、いくらでも小さくすることができるのである。 照射立体角が0の場合が平行光であるが、この場合は、物体の濃淡プロファイルに自由度がなくなってしまう。すなわち、平行光の場合、被写体表面が完全な鏡面であれば、そのまま平行光として返される正反射光となるが、この平行光を均一に捕捉するには、たとえばテレセントリックレンズを使った光学系を利用することになる。そうすると、平行光対平行光学系ということで、その最適化の幅は大きく狭まってしまう。 たとえば、表面が鏡面でない物体の場合には、まず物体光を均一に捉えることが難しく、また明るさの変化が急峻で大きくなってしまい、物体光の変化を連続的に画像の濃淡に変換することが難しくなってしまう。これに対して、VISA照明では、その照射立体角を平面半角で10°近辺にまで均一に制御することができ、照射光の最適化の自由度は格段に上がることになる。 すなわち、図5、および図6の(b)、(c)、(e)、(f)においては、RGBがそれぞれ或る有限の幅をもつ立体角を取ることによって、RGBの連続的な濃淡プロファイルが形成されているのである。 通常、その最適化プロセスは、そのシステムで得ようとする特徴情報の種類によって、その特徴情報を抽出するに足る光の変化が得られるよう、そして同時にそのS/Nを低下させる要素を最少化するよう、光の4つの変化要素それぞれに対して最適化を図るプロセスで構成される。(最適化プロセスに関しては、拙著「マシンビジョンライティング 実践編」を参照されたい。)

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 VISA照明では、明視野における明暗を制御する場合に欠くことのできない照射立体角を均等に制御できるようにしたことにより、明視野で使用する照明に革命的な変化をもたらすことを確信するものである。 最後に、図7に、VISA照明の現時点での外観と概略仕様を示す。

 今回、ご紹介したVISA照明は、現在、特許出願中の、マシンビジョンライティング株式会社の開発製品です。 マシンビジョンライティングは、機械の視覚のための照明ということで、様 な々画像処理システムにおいて必須の技術です。しかし、専門家の間でもその認知度は意外と低く、人間の視覚用途向けの従来の照明技術と同じように考えられていることも少なくないのです。 弊社代表は、これが、マシンビジョンシステム画像処理市場の活性化を妨げている最大の要因のひとつであると考え、この新しい照明技術の普及に取り組み、本誌への連載を始め、公的機関である高度ポリテクセンターでの講義(次回は実践編:2015年12月17、18日)や、照明技術そのものの規格化などに力を注いで参りました。 2014年7月7日に創業したマシンビジョンライティング株式会社は、この名前を冠し、照明技術その

ものを提供する世界初の会社であり、本誌の連載においても紹介している照明技術を駆使し、2011年に国際認証された照明規格に則って、定量的な照明系の最適化設計プロセスを提供しています。 マシンビジョンシステムを構築しようとする、すべての方が対象です。VISA照明へのご質問を始め、その他簡単なご質問も受けていますので、お気軽に御連絡をいただければ幸いです。 URL:http://www.mvl-inc.com e-mail:[email protected]

増村 茂樹(ますむら しげき)マシンビジョンライティング株式会社代表取締役社長1981年京都大学工学部卒。15年間日立製作所 中央研究所にてマイコンをはじめとするシステムLSIの研究開発に従事。その後出家し、仏門に入って

5年間仏教を学ぶ。還俗後、シーシーエス株式会社に入社、マシン ビジョン用途向けライティング技術を確立し、2011年この技術がJIIAを通じてグローバル標準として認証された。その後、2014年7月マシンビジョンライティング株式会社を創立、代表取締役社長に就任し、現在に到る。各学会等での招待論文・講演をはじめ、各種専門誌への論文投稿、 連載記事執筆、大学等での講義、各企業向けの講演を随時実施。 電子情報通信学会正員、精密工学会正員、OSA(Optical Society of America)正員、厚生労働省所管 高度職業能力開発促進センタ

(愛称:高度ポリテク)外部講師、日本インダストリアルイメージング協会(JIIA)第1期(2006.6〜)理事を経て第2第3期(〜2013.6)副代表理事、同協会照明分科会主査(2006.6〜2014.4)、同撮像技術専門委員会委員長(〜2014.4)。著書に「マシンビジョンライティング基礎編」2007、

「マシンビジョンライティング応用編」2010、「マシンビジョンライティング 実践編」2013がある。

図7 VISA照明シリーズの外観、および概略仕様