浮体式設備(fsru/flng)によるlng · flng....

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– 1 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 更新日:201/11/10 調査部 加藤 望・田村 康昌 事業推進部 一丸 義和 浮体式設備(FSRU/FLNG)による LNG 市場の拡大 (各社ホームページ、各種報道、他) ○環境性に優れ、産出地域の偏在も少ない、天然ガス・LNG は中長期的にも需要拡大が見込まれて いる。一方で、2014 年の油価下落前に最終投資決定がなされた豪州・米国等における大型 LNG 液化プロジェクトが相次いで稼動し、2020 年代前半までは供給過剰の市場環境は継続する見通し となっている。 ○需要の確保を前提に、FID 可能な計画段階の LNG 液化プロジェクトも数多く存在するものの、 2017 年に FID に至ったのは、モザンビーク Coral FLNG 1 件のみ。従来の、信用力のある売 買主による油価連動・長期契約を前提としたプロジェクト開発が難しくなる中、需要・供給の両面で、 浮体式設備を用いたプロジェクトの開発が進んでいる。 2005 年の米国「Gulf Gateway」での受入開始以降、土地取得・地元合意、建設コスト・期間、初期 コスト、移動・撤去の容易さといった面で陸上 LNG 受入基地に対して優位性がある浮体式 LNG 入基地の普及が進んできた。その後、着工から稼動までの期間が短く、初期コストも抑えられること 等から、エネルギー需要が急増する新興国を中心に導入が進み、現在、23 基地の FSRU/FSU Floating Storage and Re-gasification Unit 浮体式貯蔵・再ガス化設備)が稼動、さらにアジア (インド・パキスタン・バングラディシュ)等を中心に、20 超の FSRU/FSU が建設・計画段階にある。 FSRU による LNG の受入には、船舶の建造・保有、船員の配乗、運航(LNG の受入・再ガス化オ ペレーション)が必要となるため、LNG 船の運航を担う船会社が事業実施主体としてサービスを提 供しとており、Excelarate EnergyGolar LNGHöegh LNG の主要 3 社に加え、BW LNG、商 船三井(MOL)等も参入してきている。なお、早期稼動・短期契約等の要望に即応するため、新造 船の先行発注や、戦略的な余剰船腹の保有も必要であり、また、造船所で建造・改造される FSRU は、陸上基地とくらべて完工・遅延リスクは少ないものの、陸側設備の建設遅延(ガーナ)、計画変更 (ウルグアイ)等、新興国特有の事業リスクへの対処等も課題となる。 2014 年以降の、低油価・供給過剰・流動性向上といった、LNG 市場の変化も、新興国での LNG 選択の要因であるが、不透明な中東・カタール情勢等、想定外の供給障害、建設遅延によるスポッ ト価格高騰も懸念される。経済発展の途中にある新興国において、LNG 価格の高騰時の需要減、 また、再エネ等他燃料の価格競争力が向上による、LNG 需要増の鈍化等も、長期的な懸念材料と して留意する必要がある。 FLNGFloating LNG、本稿では、洋上で天然ガスを液化する LNGFPSO FLNG と称して

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– 1 – Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

更新日:2017/11/10

調査部 加藤 望・田村 康昌

事業推進部 一丸 義和

浮体式設備(FSRU/FLNG)による LNG 市場の拡大

(各社ホームページ、各種報道、他)

○環境性に優れ、産出地域の偏在も少ない、天然ガス・LNG は中長期的にも需要拡大が見込まれて

いる。一方で、2014 年の油価下落前に最終投資決定がなされた豪州・米国等における大型 LNG液化プロジェクトが相次いで稼動し、2020 年代前半までは供給過剰の市場環境は継続する見通し

となっている。 ○需要の確保を前提に、FID 可能な計画段階の LNG 液化プロジェクトも数多く存在するものの、

2017 年に FID に至ったのは、モザンビーク Coral FLNG の 1 件のみ。従来の、信用力のある売

買主による油価連動・長期契約を前提としたプロジェクト開発が難しくなる中、需要・供給の両面で、

浮体式設備を用いたプロジェクトの開発が進んでいる。 ○2005 年の米国「Gulf Gateway」での受入開始以降、土地取得・地元合意、建設コスト・期間、初期

コスト、移動・撤去の容易さといった面で陸上LNG 受入基地に対して優位性がある浮体式LNG 受

入基地の普及が進んできた。その後、着工から稼動までの期間が短く、初期コストも抑えられること

等から、エネルギー需要が急増する新興国を中心に導入が進み、現在、23 基地の FSRU/FSU(Floating Storage and Re-gasification Unit 浮体式貯蔵・再ガス化設備)が稼動、さらにアジア

(インド・パキスタン・バングラディシュ)等を中心に、20 超の FSRU/FSU が建設・計画段階にある。 ○FSRU による LNG の受入には、船舶の建造・保有、船員の配乗、運航(LNG の受入・再ガス化オ

ペレーション)が必要となるため、LNG 船の運航を担う船会社が事業実施主体としてサービスを提

供しとており、Excelarate Energy、Golar LNG、Höegh LNG の主要 3 社に加え、BW LNG、商

船三井(MOL)等も参入してきている。なお、早期稼動・短期契約等の要望に即応するため、新造

船の先行発注や、戦略的な余剰船腹の保有も必要であり、また、造船所で建造・改造される FSRUは、陸上基地とくらべて完工・遅延リスクは少ないものの、陸側設備の建設遅延(ガーナ)、計画変更

(ウルグアイ)等、新興国特有の事業リスクへの対処等も課題となる。 ○2014 年以降の、低油価・供給過剰・流動性向上といった、LNG 市場の変化も、新興国での LNG

選択の要因であるが、不透明な中東・カタール情勢等、想定外の供給障害、建設遅延によるスポッ

ト価格高騰も懸念される。経済発展の途中にある新興国において、LNG 価格の高騰時の需要減、

また、再エネ等他燃料の価格競争力が向上による、LNG 需要増の鈍化等も、長期的な懸念材料と

して留意する必要がある。 ○FLNG(Floating LNG、本稿では、洋上で天然ガスを液化する LNG-FPSO を FLNG と称して

Page 2: 浮体式設備(FSRU/FLNG)によるLNG · FLNG. においては規模の経済を発揮できるほど設計製作技術が熟成されてい るとはいいがたく、比較的中規模な改造FLNG導入検討は進むものの、豪州を中心に規模を追求

– 2 – Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

説明:Floating Production, Storage and Off-loading system、浮体式生産・貯蔵・出荷設備)の研

究は 1990 年代に始まり、2011 年 5 月の Shell Prelude が世界初の最終投資決定(FID)に至っ

た。 ○ 2017 年に入り、①マレーシア Petronas FLNG1(120 万 t/年)の商業運転開始、②モザンビーク

Coral FLNG の FID、③Shell Prelude FLNG が造船所を出港、2018 年夏の稼動開始に向けた

作業開始、④Golar が主導する中古船を改造した初の FLNG が 2018 年のカメルーンでの稼動

開始に向け 2017 年 10 月に出港 といった、新たなエポックメーキングともいえる出来事が続いて

いる。 ○ FLNG は、①造船所で建造され、僻地・遠隔地での労働者の確保が不要であり、工期の圧縮も可

能、②海底ガス田近くに設置可能で、陸上 LNG までパイプライン搬送する費用を考慮すると採算

を採るのが困難な中小ガス田の開発を促進、③生産終了後の移転・転用が容易といった利点があ

る。一方、①対応可能な造船所が限られ、②気象海象条件に配慮する必要があり、③適用基準・規

格等に定まったものはなく、都度協議が必要で、④拡張性に乏しい、⑤現地での雇用創出効果が

少ないといった課題もある。 ○事業モデルとしては、当初は Shell などに代表される上流権益保持会社が井戸および海底生産施

設を整備するとともに FLNG も自社保有する形態であったが、近年、Golar 社のように中古船を改

造し液化加工を受託、さらに、FLNG を所有する船主が上流権益の一部も保有するモデルが出て

きている。 ○中国は、アフリカでの FLNG に、積極的に関与している。権益、Finance、EPC を通じた経済波及

効果を追求している ○Prelude が FID に至った 2011 年前後は、オフショア保険のキャパシティは 30 億ドル~40 億ドル

であり、Prelude のような大型オフショア構造物に対する案件は保険でフルにカバーされないリスク

が残っていた。その後、一貫して保険の限度額は増加し、2016 年には 80 億ドルに達しており、

Coral FLNG の推定 Capex が 54 億ドルであることを考えると、建造リスクをカバーできる額が確保

されるといえる。 ○これまでのところ、FLNG においては規模の経済を発揮できるほど設計製作技術が熟成されてい

るとはいいがたく、比較的中規模な改造 FLNG 導入検討は進むものの、豪州を中心に規模を追求

した FLNG は軒並み頓挫している。また、米国 Shale による豊富なガス資産および多様な Playerの出現、カタールの増産モラトリアム解除、豪州、ロシア等での LNG 基地増設計画等を考慮すれ

ば FLNG によって Stranded ガスを開発するという 2000 年代初頭のコンセプト自体の魅力、ある

いは競争力は相対的に低下してきている。 ○FLNG は、Shale 革命以前に期待されていたほど Game Changer として広く適用されることはな

いだろうと予想されるものの、今後は Niche な市場(信用力の低い産油国、石油ガス産業やインフラ

が未整備な産油国)で適用されるケースは存在すると予想される

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– 3 – Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれる

データおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に

関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いませ

ん。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

1.天然ガス・LNG 市場の動向

(1)中長期期なエネルギー需給見通しにおける天然ガス・LNG の役割

他の化石燃料に比べて環境性に優れ、産出地域の偏在も少ない天然ガスは、パリ協定に基づき各

国が自主的に定める目標達成に向け、また、地球温暖化対策と経済成長を両立させながら、長期的な

温室効果ガスの大幅削減を実現していく移行期の燃料として、その利用拡大が見込まれている。

2016 年 11 月、国際エネルギー機関(Internatioal Energy Agency:IEA)が公表した世界エネル

ギー見通しにおいても、その中心的なシナリオである“新政策シナリオ”では、2040 年までに世界の

一次エネルギー需要は約 30%上昇(年率 1.0%の増加)、天然ガスは一次エネルギーの伸びを上回

る約 43%(年率 1.5%)となる見通しとなっている。(図 1)

図 1 燃料別 世界のエネルギー需要見通し(IEA World Energy Outlook 2016 新政策シナリオ)

地域別にみると需要増(2014 年 3,502Bcm→2040 年 5,219Bcm)のうち、中東(2014 年

368Bcm→2040 年 804Bcm)、中国(2014 年 188Bcm →2040 年 605Bcm)の伸びが顕著であ

る。供給については、欧州(英国・蘭・ノルウエー等)での生産減(2014 年 260Bcm→2040 年

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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれる

データおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に

関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いませ

ん。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

178Bcm)に対し、シェールガス等により、米国(2014 年 729Bcm→2040 年 1,239Bcm)、中国

(2014 年 130Bcm→2040 年 341Bcm)での増加が見込まれている。

図 2 地域別天然ガス需要見通し 図 3 地域別天然ガス生産見通し

出所:IEA World Energy Outlook 2016 新政策シナリオ

<気候変動対策と中長期的な天然ガスの役割>

2015 年 12 月の気候変動枠組み条約第 21 回締約国会議(COP21)にて採択され、日本も含む各

国の批准により 2016 年 11 月に発効した“パリ協定”において、世界共通の長期目標として、“産業革

命前からの地球平均気温上昇を 2℃より十分下方に保持。または、1.5℃に抑える努力を追及”、“今

世紀後半に温室効果ガスの人為的な排出と吸収のバランスを達成” 等を含む歴史的な合意がなされ

た。

2016 年版の IEA 世界エネルギー見通し“新政策シナリオ”における試算(図 1)には、各国が提出

した約束草案(Intended Nationally Determined Contribution :INDC)を盛り込んでおり、また、

地球温暖化を 2℃未満に抑える可能性が 50%あるとする、“450 シナリオ“では、一次エネルギー使用

量は 2014 年から 2040 年までに年率 0.3%の増加、天然ガスについては新政策シナリオにくらべて

伸びは少ないものの年率 0.5%の伸びを見込み、石油(年率 2.6%の減少)、石炭(年率 2.6%の減少)

と比較しても化石燃料の中でより大きな役割が期待されている(図 2)。

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– 5 – Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれる

データおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に

関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いませ

ん。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

図 4 エネルギー需要見通し(IEA World Energy Outlook 2016 450 シナリオ)

なお、2017 年 6 月に、米国トランプ大統領がパリ協定からの脱退を表明し、2017 年 8 月には協定

脱退の意向を、国連事務局に通告した。パリ協定は発効から 3 年後(2019 年 11 月 4 日)から正式に

脱退を通告でき、通告の 1 年後に脱退が完了することができるとされており、今後、正式に脱退通告

が可能になり次第、書面での通告を行うこととなる。現時点では、トランプ政権からは、親条約である気

候変動枠組み条約からの脱退は言及されてはいないものの、気候変動に対する国家間・国際的な枠

組みの方向性については不透明な状況が続いている。

一方で、世界の金融当局で構成する金融安定理事会(FSB)の気候変動財務情報開示タスクフォ

ース(TCFD:Task Force on Climate-related Finacial Disclosures)は、2017 年 6 月に最終提言

をとりまとめ、企業が気候変動の財務への影響を把握し、開示するための原則等を明らかにした。投資

家・年金基金を中心に、株主として、気候変動リスクの開示を求める動きも進んでいる。特に、石炭開

発・石炭発電への投資については、新興国の経済発展に伴う需要増が見込まれるものの、化石燃料

投融資撤退(Divestment)の動きも出始めてきている。BP, Total を始め、メジャーも天然ガス・再生

可能エネルギーへのシフトも進んでいる。さらに、今世紀後半温室効果ガスの人為的な排出と吸収

のバランスを達成するには、革新的技術開発も含めたより踏み込んだ対応が必要となる可能性

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– 6 – Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれる

データおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に

関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いませ

ん。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

が高く、2020 年に提出が求められる各国の長期的な低炭素政略の策定ともあわせて、その影

響・方向性により、需要減要因として留意する必要がある。

(2) LNG 需給動向

世界のLNG 生産能力は豪州・米国を中心に大幅拡大局面にあり、最終投資決定(FID)を経

て、建設中の主なプロジェクトだけで 1 億 t を超える。一方、2014 年以降続く低油価・低ガス

価とその長期化により、2016 年に FID に至ったのは、インドネシア Tangguh(拡張)、米国

Elba Isand の 2 件、2017 年はモザンビーク Coral FLNG の 1 件に留まっている。(2017 年 9月末時点)

表 1 2017 年以降に稼動を開始する主な建設中 LNG プロジェクト

プロジェクト名 国 FID 生産開始 生産能力

(万t/年)

Gorgon (train3) 豪州 2009 2017 520

Petronas Floating マレーシア 2012 2017 120

Wheatstone LNG 豪州 2011 2017 890

Sabine Pass LNG

(train3・4) 米国 2013 2017 900

CovePoint LNG 米国 2014 2017 525

Yamal LNG ロシア 2013 2017 1,650

Cameroon FLNG カメルーン 2015 2018 120

Ichthys LNG 豪州 2012 2018 840

Prelude FLNG 豪州 2011 2018 360

Cameron LNG 米国 2014 2018 1,350

Freeport LNG 米国 2014 2018 1,390

Corpus Christi

LNG 米国 2015 2018 900

Sabine Pass LNG

(train5) 米国 2015 2019 450

Elba Island 米国 2016 2019 250

Tangguh (拡張) インドネシア 2016 2020 380

Coral FLNG モザンビーク 2017 2022 340

合計 1.1 億 t/年

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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれる

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関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いませ

ん。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

上記建設中のLNG プロジェクトに加え、米国、東アフリカ(モザンビーク)、ロシア(サハ

リン拡張)等、需要の確保を前提に最終投資決定に移行可能なプロジェクトも約 2 億tを超え、

適切なタイミングでの投資がなされれば、世界の需要増にも対応は可能と考えられる。

出所:各種情報をもとに JOGMEC 作成

図 5 計画段階の LNG 液化プロジェクト

なお、足元では、2011 年頃に想定された「天然ガスの黄金時代」の到来は中国における需要

増の鈍化もあり若干遅れており、現在建設段階のプロジェクトの多くが稼動を開始する 2019 年

から 2020 年頃には、需給ギャップが 6,000 万t/年を越える可能性もある。 その後、中期的には、新興国次第ではあるものの、需要の増加も想定され、適切なタイミング

での投資がなされなければ、2023 年以降は需要が供給を上回ることも想定されるが、カタール

も 2017 年 4 月に開発モラトリアムの解除を表明しており、こういった大規模プロジェクトの開

発が進めば需給均衡は 2020 年代以降にずれこむことも想定される。 なお、LNG 輸出国である豪州域内のガス需給逼迫、不透明な中東・カタール情勢等、想定外

の供給障害、建設遅延等により、需給がバランスする時期の早期化も懸念される。この場合、ス

ポット価格の高騰が一定期間(投資決定~生産開始までは約 4~5 年間)続く可能性にも留意が

必要であろう。

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データおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に

関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いませ

ん。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

出所:IEA, Natural Gas Information、 GIIGNL(国際 LNG 輸入者協会)、資源エネルギー庁委託調査「アジア・太平洋市場の天然ガ

ス需給動向調査報告書(2014 年 3 月)」等を基に JOGEMC 作成。2024~2030 年にかけては計画段階の 2 億 t/年が投資決定後、順次

稼働と仮定。

図 6 LNG 需給見通し

(3) 価格動向

図 7 世界の天然ガス・原油価格推移

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データおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に

関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いませ

ん。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

天然ガス・LNG の価格決定メカニズムとしては、産ガス国である米国・イギリスと、天然ガス・LNG

の輸入国から成る欧州大陸部、LNG による輸入を行う北東アジアの 3 つに大別される。日本向の

LNG は依然、長期契約・石油価格連動による価格決定方式が大半を占め、JCC(全日本平均原油輸

入価格)を指標とし、原油価格のレベルに応じた一定の調整要素を加味した上で算出される。これは、

WTI・ブレント原油価格から約 4~5 ヶ月、JCC(全日本平均原油輸入価格)と比較して約 3~4 ヶ月

のタイムラグを経て、日本向け輸入価格に反映されることなる。直近の 2017 年 9 月の JLC(全日本着

平均 LNG 輸入価格)は 8.2$/MMBtu となり、2017 年 4 月以降、8.2~8.6$/MMBtu の狭い範囲で

の値動きとななっている。

一方、スポット LNG 価格(経産省公表)は、冬季の需要期を終えた 2017 年 4 月以降は、

5$/MMBtu 台で推移したが、2017 年 9 月に入り、中国等を中心とした冬季需要の確保のため、油価

連動の LNG 価格と同水準(8$/MMBtu 台)まで上昇してきている。中期的には、新規 LNG プロジェ

クトの稼動開始が続くこともあり、油価連動の LNG 価格に対し、スポット LNG 価格が安値で推移する

可能性も高いと考えられる。

なお、IEA では需給見通しの前提として、日本着の天然ガス(LNG 価格)は、油価(2015 年

51$/bbl→2040 年 124$/bbl)にくらべて、緩やかな上昇(10.3$/MMBtu→12.4$/MMBtu)を想

定している。米エネルギー省情報局(EIA)のAnnual Energy Outlook(AEO)においても、

米国HH 価格は、5$/MMBtu 台前半としており、シェールガス開発により、過去に公表された

見通しとくらべても、安価なガス価格での推移を想定している。 足元の供給過剰な市場環境において、LNG 契約の価格見直し・契約更新・新規契約交渉に際

しても、買主側からは、価格、契約期間の短期化、数量・仕向地の柔軟性を求める中、信頼性・

価格競争力がこれまで以上に求められる状況となってきている。 表 2 IEA 油価・LNG 価格想定

油価($/bbl) 日本着 LNG 価格($/MMbtu)

2015 2020 2030 2040 2015 2020 2030 2040

WEO 2016

(2016 年 11 月) 51.00 79.00 111.00 124.00 10.30 9.60 11.90 12.40

WEO 2012 116.00 119.50 123.60 - 15.00 14.30 14.70 -

WEO 2007 57.30 - 62.00 - 7.33 - 7.84 -

出所:IEA: World energy outlook。 価格は、実質価格(2015 年、2011年、2006 年価格)

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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれる

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関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いませ

ん。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

図 8 IEA 油価想定 図 9 IEA 天然ガス(日本着 LNG)価格想定

表 3 米国エネルギー省情報局(Energy Information Center:EIA) 油価・HH 価格想定

油価(brent)($/bbl) HH 価格($/MMbtu)

2015 2020 2030 2040 2050 2015 2020 2030 2040 2050

AEO2017

(2017 年 1 月) 53.06 74.82 94.52 109.37 116.80 2.66 4.51 5.00 5.07 5.83

AEO2012 113.97 115.74 126.51 - - 4.29 4.58 6.29 - -

AEO2007 44.61 46.47 51.63 - - 5.46 5.71 6.52 - -

出所: 米EIA Annual Energy Outlook(AEO)。リファレンスケース価格は、実質価格(2016年、2010年、

2005年価格)

図 10 EIA 油価想定 図 11 EIA HH 価格想定

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(4)天然ガス・LNG 市場動向(まとめ) 環境性に優れ、産出地域の偏在も少ない、天然ガス・LNG は中長期的にも需要拡大が見込ま

れている。一方で、足元では、2014 年の油価下落前に最終投資決定がなされた豪州・米国等に

おける大型 LNG 液化プロジェクトの稼動により供給が需要を上回り、2019 年頃には、需給ギ

ャップが約 6,000 万トンに達する可能性がある。 2020 年代前半までは供給過剰の市場環境は継続すると想定されるが、カタール等での大規模

開発が進めば、需給均衡は 2020 年代後半に後ろ倒しになる。一方、新興国の需要増や、不透明

な中東・カタール情勢等、想定外の供給障害、建設遅延等により、需給がバランスする時期が早

期化も懸念される。 なお、現在、需要の確保を前提に移行可能なプロジェクトも数多く存在するものの、2017 年

にはFID に至ったのは、Coral FLNG の 1 件のみである。従来の、油価連動・長期契約を前提

としたプロジェクト開発が難しくなる中、柔軟性・価格競争力がこれまで以上に求められており、

後述の、浮体式設備による、需要、供給両面での取り組みが進んでいる。

2.LNG バリューチェーンにおける浮体式設備

従来の LNG のバリューチェーンにおいては、洋上もしくは陸上のガス田から産出された天然ガス

は、随伴するコンデンセートの分離、炭酸ガス・硫化水素・水銀等の除去、脱水処理等の前処理プロセ

スを経た後、冷却・液化・貯蔵され、LNG タンカーで輸送される。需要地では、LNG として陸上設備

において、受入・貯蔵され、需要に応じ、(海)水・空気・蒸気等により加温、再ガス化され、パイプライ

ンを通じ、発電・家庭向け等に利用される。 一方、図 12 LNG バリューチェーンにおける浮体式設備の活用(概念図)に示すとおり、バリュー

チェーンの一部を、浮体式設備としての導入が拡大してきている。広義の FLNG(Floating Liquefied Natural Gas)としては、天然ガスを液化(生産)・貯蔵・出荷を行う LNG-FPSO、需要地

における受入れ・再ガス化を担う FSRU 等を包含する。 本稿では、陸上の液化・貯蔵・積出基地を洋上の設備として代替するものを FLNG、陸上の受入・

貯蔵・再ガス化基地の機能を、LNG 船により代替するものを FSRU として、焦点を当て考察を行っ

た。 なお、各プロジェクトにより浮体式設備の形態、呼称も多種多様であり、FLNG、FSRU の一部の機

能だけを浮体式で担うもの(FPSO、FSU、FRU 等)、LNG 船としての輸送を担うもの(LNG RV、

SRV)、また、実績としてはないものの、受入基地において、浮体式の貯蔵・再ガス化設備に加えて、

発電設備も船上に設ける FSPPU についても、計画・検討が進んでいる。

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図 12 LNG バリューチェーンにおける浮体式設備の活用(概念図)

FLNG : Floating Liquefied Natural Gas(浮体式液化天然ガス) FPSO :Floating Production, Storage and Off-loading system、浮体式生産・貯蔵・出

荷設備 FSRU :Floating Storage and Re-gasification Unit(浮体式貯蔵・再ガス化設備) FSU :Floating Storage Unit(浮体式貯蔵設備) FRU :Floating Regasification Unit(浮体式 再ガス化設備) LNG RV :LNG Regasification Vessel(船上再ガス化装置付 LNG 船)。受入地点で LNG

の陸上基地への移送は行わず、液化基地からの LNG 輸送と受入れ地点では船

上で再ガス化・ガス送出まで一貫して行う。SRV:(Shuttle and Re-gasification Vessel)ともいわれる。

FSPPU :Floating Storage and Power Plant Unit (浮体式貯蔵・発電設備)

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3.浮体式 LNG 受入基地(FSRU・FSU)の動向

(1)浮体式 LNG 受入基地の特徴・普及拡大

浮体式 LNG 受入・再ガス化設備は、2005 年メキシコ湾(Gulf Gatway プロジェクト)で初めて導入さ

れた。米国では、新規受入れ基地の許可・地元同意が困難・時間を要するいった事情もあり、液化基

地で搭載した LNG を、LNG RV(LNG Regasification Vessel)で輸送し、沖合でタレットにより係留、船上

で再ガス化し、海底ガスパイプラインにより、陸上へガスの送出を行うものである。

なお、米国は、陸上の在来型ガス田の老朽化・生産減により、域外からの天然ガス供給を増やす必

要に迫られ、2000 年代に入り、多くの LNG 受入基地の建設・検討が進められていたが、2006 年以降

の水圧破砕・水平掘削といった技術進展に伴う、「シェールガス革命」による、ガス価格の低下により、

米国の浮体式受入基地については、相次いで操業を停止している。

図 13 STL(Submerged Turret Buoy)による係留

出所:Excelerate 社

図 14 LNG RV(LNG Regasification Vessel)による沖合係留&海底ガスパイプラインガス送出

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図 15 FSRU+York 式係留設備(主に浅海)

一方、近年は、浮体式の LNG 受入基地は、着工から稼動までの期間が短く、初期コストも抑えられ

ること、移動・転用が容易であることから、エネルギー需要が急増する新興国を中心に導入が進んでい

る。当初米国で導入が進んだ沖合設置ではなく、FSRU を桟橋に係留し、桟橋を介しての安定した

LNG 移送や、LNG 船と FSRU を連結しフレキシブルホースで、STS(Ship to Ship)でのを介しての LNG

移送。

なお、新造船にくらべて燃費効率が劣るなど、LNG 船としての競争力が低下した経年船についても、

タンク部分を有効活用するため、改造等による FSRU・FSU としての活用も行われている。ただし、経年

船の LNG タンク容量が比較的小さい(13 万m3 以下が主流)こともあり、近年は、新造船かつ大型化す

る傾向にある。

図 16 FSRU+桟橋経由の LNG 荷役 図 17 FSRU+STS(Ship to Ship)での荷役

LNG タンク 再ガス化設備 沖合係留システム

海底ガスパイプライン

需要地域へ

陸地

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(2)浮体式 LNG 基地の特徴、陸上受入基地との比較

導入地域の気象・海象条件、保有エネルギー資源、エネルギーの需給動向・価格、経済発展の状

況等により異なるものの、LNG の受入れ基地とし、浮体式を選択する要因は以下が想定される。

① 新規受入れ基地の許可・地元同意が困難な地域での導入

新たな LNG 受入基地の建設に際し、特にエネルギー需要が見込まれ、港湾の整備がなされ

ている地域で、新たな土地取得、地元同意は困難が伴う。米国での導入では、沖合での係留で

あり、周辺環境への影響も少なく、また、既存の桟橋等を活用する場合でも、貯蔵タンク・気化設

備に必要な土地取得が不要となる。

②初期費用が安価

従来の陸上 LNG 受入基地を建設する場合のコストは、建設地の港湾の状況、現地人件費等

により大きく異なるものの、18 万 m3 のタンク容量を持つ基地で、附帯設備等も含め、750 億円程

度とも想定される。一方、FSRU では、基本的に通常の LNG 船と同様の形状・設計であり、新規

建造の場合で 240~280 億円程度、中古船の改造費用は 80 億円程度となる。

桟橋などの係留設備、附帯設備は必要となるが、造船所での作業が多いこともあり、完工遅延

等に伴う追加費用・予備費等も低減可能で、陸上 LNG 受入基地に比べて初期費用が安価とな

る。

また、契約形態についても、FSRU については、傭船契約・トーリング契約となり、初期コストの

ファイナンスが難しい新興国への導入に際してのメリットがあるといえる。

③建設期間(操業開始までのリードタイム)が短い

FSRU・FSU の建造期間は、新造船で約3 年程度(通常の LNG 船とほぼ同じ)、既存船の改造

の場合約 1 年程度である。陸上 LNG 受入基地の建設期間 4~5 年(環境影響評価・設計期間

等を除く)に対し、基地としての操業を開始できるまでのリードタイムは大幅に短縮することがで

きる。

なお、2015 年にエジプト Ain Skhna で BW LNG 社が導入した FSRU は、既存船・既存桟橋を

活用し、入札後約 5 ヶ月で LNG の初受入を行っている。

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④移動・転用が容易、季節需要への対応

船舶と同様の扱いであるので、当然移動は容易である。将来的に LNG 気化基地が不要とな

った場合には速やかに撤去可能で、場合によっては別の場所での使用に転用することも可能で

ある。2013 年受入を開始した中国天津 LNG 基地では、2016 年に陸上 LNG タンク・気化設備が

完成するまでの間、FSRU による LNG 受入を行った。

⑤LNG が他燃料(油等)に対し、相対的に割安な場合、迅速な燃料転換

従来、初期投資の大きな LNG 液化プロジェクトの開発は、長期の引取を前提に最終投資決

定がなされてきた。近年の低油価、北米・豪州等大型プロジェクトの稼動開始による需給緩和を

受け、短期・スポット契約の増加、北米 LNG の開始により仕向地制限も減少するなど、LNG 市場

の流動性の向上、特にスポット LNG は油等競合燃料に対して価格優位性が生じてきている。産

油国では原油は輸出用とし、自国内のエネルギー・電力需要の増加には FSRU による LNG の

輸入で賄うのも、経済性・環境性の両面からメリットがある。

一方で、長期の安定操業、拡張・大規模需要への対応等について、以下の点についても留意が必要

である。

① 安定した気象・海象条件

洋上設置であるため、気象・海象に大きく影響を受ける。特に係留索を用いての係留では、通

常船舶が桟橋に係留されるのと同様、波高が高くなると安全性にも大きく関わってくる。特に、外

洋に直接面した港湾では長周期波(周期が数十~数分の波で、ゆっくりと海面が上下する動き。

しばしば係留索切断等の事故の原因となる)の影響があるため、注意が必要である。従って、

FSU・FSRU の設置場所としては、波浪の影響が少ない湾内とされることが多い。また、台風やハ

リケーンなどが接近する場合には、安全のために離岸させ避難させることが必要になる可能性も

ある。

② 貯槽容量の拡張柔軟性が低い

現在の FSRU で最大の貯槽容量は 26 万 m3(世界最大の LNG 船である Q-Max クラス)であ

るが、FSRU・FSU ではタンクの貯槽容量は設置される船体の大きさによって画一的に決定され

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る。陸上では、順次タンクを増設する等の対応を行うのに対し、需要増加、輸送に用いられる

LNG 船の大型化の対応には、FSRU・FSU の隻数増加が必要で、その都度係留設備も増設して

いく必要がある。

なお、上記の特徴をふまえ、浮体式の受入基地と陸上受入れ基地について、タンク容量18万m3を

想定した場合の、比較を表 4 に示す。

表 4 陸上 LNG 受入基地、浮体式 LNG 受入基地比較(参考)

陸上 LNG 基地 浮体式 LNG 受入基地

初期コスト※ ・約 750 百万ドル

(内訳)

・桟橋:80 百万ドル

・LNG タンク:180 百万ドル

・プラント、再ガス化設備等:260 百

万ドル

・予備費等:230 百万ドル

・約 450 百万ドル

(内訳)

・桟橋:80 百万ドル

・FSRU:250 百万ドル

・附帯備等:30 百万ドル

・予備費等:90 百万ドル

建設期間 48-60 ヶ月

※現地作業進捗によっては遅延

新造船 :27-36 ヶ月

改造 :12-24 ヶ月

移転・転用 ・不可(長期・永続的な使用を前提

とする)

・LNG 需要がなくなった場合、他地

域への転用可能

・季節需要に応じた対応も可能

拡張 ・タンク増設、再ガス化設備増強に

よる対応

・船体の大きさにより決定。隻数増に

は、係留設備の増設が必要。

契約形態※ ・EPC 契約 ・リース契約(傭船契約 130 千ドル/d

~205 ドル/d)もしくは、トーリング契

約(0.45~1$/MMBtu)

契約期間 ・5~20 年

その他 ・安定操業

・大規模需要にも対応可

・気象海象による稼動影響

・必要な許認可が比較的少ない

出所:

※ OIES” The Outlook for Floating Storage and Regasification Units (FSRUs)“。タンク容量 18 万 m3 の一例。現地人件費、港湾の状況等により変動。FSRU 新造船:240~280 百万ドル 改造:約 230 百万ドル(改造 80 百万ドル、中古船 150 百万 ドル)を想定。

※ OIES” The Outlook for Floating Storage and Regasification Units (FSRUs)“。リース契約:Capex 110-160,000 ドル/d、Opex20-45,000 ドル/d。

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(3) 世界の浮体式受入基地

現在、アジア、中東、中南米等で 23 基地の FSRU/FSU が稼動しており、さらに、アジア(インド・パ

キスタン・バングラディシュ)等を中心に、20 超の FSRU/FSU が建設・計画中段階にある。

2016 年に稼動開始した 11 の LNG 受入・再ガス化基地のうち、5基地(コロンビア・インドネシア・ジ

ャマイカ・トルコ・UAE)は FSRU によるものである。また、2017 年に LNG の輸入を開始したマルタにお

いても、改造 FSU による受入となった。

今後も新興国需要増に対応し、FSRU による受入れ検討が進んでいるが、単なる FSRU の傭船(提

供)だけでなく、附帯設備、LNG の調達・再ガス化・送出・ガス利用(発電)等も含めたパッケージでの

提供へのニーズも高くなっている。また、LNG 供給者(Total,Exxonmobil,Cheniere 等)も、足元の供給

過剰の状況下において、需要創出・FSRU・下流事業への関与を強めている。

図 18 世界の主な浮体式 LNG 受入基地

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表 5 世界の主な浮体式 LNG 受入基地一覧(FSU・FSRU)(稼動済)

地域 国名 地域・プロジェクト 操業

開始 FSRU 事業者 船名

受入能力

百万 t/年

アジア パキスタン Port Qasim,

Karachi/(EETPL)

2015 Excelerate Energy Exquisite 5.7

インドネシア Nusantara Regas

Satu/West Java

2012 Golar LNG Nusantara Regas Satu 3.7

インドネシア PGN Lampung 2014 Höegh LNG PGN Lampung 3

インドネシア Benoa, Bali 2016 PERTAMINA FRU+FSU 0.4

中国 Tianjin LNG 2013 陸上タンク・再ガス

化設備

Neo Energy(FSU 運用) -

マレーシア Melaka 2013 Petronas Tenaga Satu 2.6

マレーシア Melaka 2013 Petronas Tenaga Empat 2.6

欧州 リトアニア Klaipeda 2014 Höegh LNG Independence 2.9

トルコ Etki LNG FSRU 2016 Höegh LNG GdF Suez Neptune 5.6

イタリア OLT Offshore LNG

Toscana

2013 OLT FSRU Toscana 4.4

マルタ Malta LNG 2016 BumiArmada ArmadaLNG

Meediterrana(FSU)

0.4

イギリス Teesside Gasport 2007 操業停止

中東 UAE Jebel Ali/Dubai 2010 Excelerate Energy Explorer 4.1

UAE Ruwais/Abu Dhabi

FSRU

2016 Excelerate Energy Excelerate 4.1

イスラエル Hadera Gateway 2013 Excelerate Energy Excellence -

エジプト Ain Sokhna 2015 Höegh LNG Höegh Gallant 4.1

エジプト Ain Sokhna 2015 BW Offshore BW Singapore 5.6

クェート Mina Al-Ahmadi 2009 Golar LNG Golar Igloo 5.5

ヨルダン Aquava/Al-Sheikh

Sabah LNG

2015 Golar LNG Golar Eskimo 5.5

北米 アメリカ Neptune 2010 操業停止

アメリカ Northeast Gateway 2008 操業停止

アメリカ Gulf Gateway 2005 操業停止

中南米 アルゼンチン Bahia Blanca 2008 Excelerate Energy Exemplar 4.1

アルゼンチン GNL Escobar 2011 Excelerate Energy Expedient 4.1

コロンビア Cartagena 2016 Höegh LNG Höegh Grace 4.1

ジャマイカ Montego Bay

/Bogue LNG

2016 Golar LNG Golar Arctic(FSU) 0.5

ブラジル Pecem 2009 Excelerate Energy Experience 6.6

ブラジル Bahia/TRBA

Salvador

2014 Golar LNG Golar Winter 3.8

ブラジル Baia de Guanabara 2009 Golar LNG 当初、Golar Sprit 号で受

1.9

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表 6 世界の主な浮体式 LNG 受入基地一覧(FSU・FSRU)(建設中・計画中)

地域名 国名 地域・プロジェクト 操業 開始

事業者・FSRU 船社 船名/プロジェクト名 受入能力 百万 t/

年 アジア パキスタン Port Qasim,

Karachi/PGPL 2017 BW Offshore BW Integrity 6.2

パキスタン Port Qasim, Karachi/Geil

2018 Höegh LNG,Geil,Total,ExxonMobil,Qatar Petroleum,Mitsubishi

HHI2909 5.6

バングラディシュ

Moheshkhali 2018 Excelerate Energy 未定(Excelsior) 4.1

バングラディシュ

Moheshkhali /Summit Power FSRU

2018 Excelerate Energy - 4.1

バングラディシュ

Reliance Power FSRU,Moheshkhali Island,

- Reliance Power - -

インド Jaigad Jaigarh port

2018 Höegh LNG GDF Suez Cape Ann 5.6

インド Jafrabad Port, Gujurat/Swan LNG FSRU

2020 商船三井(MOL) 未定(FSRU 18 万m3、FSU13.5-14.5 万m3)

5.0

インドネシア Cilacap,South central Java

- PERTAMINA - -

インドネシア Cilamaya,West Java

- PERTAMINA ,丸紅・双日

- -

フィリピン Batangas LNG - Shell - - オーストラリア South East

Australia 2020 AGL

- -

アフリカ ガーナ Tema/ LNG (WAGL)

2017 Golar LNG Golar Tundra 5.5

ガーナ Tema/Quantum 2018 Höegh LNG Hoegh Giant 5.6

コートジボアール

Ivory Coast LNG(CI-GNL)

2018 Total 、Golar 他 未定(Golar)

欧州 ロシア Kaliningrad FSRU 2017 Gazprom HHI2854 5

クロアチア Krk LNG 2020 Croatia LNG - -

イギリス Teesside Trafigura

- Trafigura - -

イギリス Port Meridian 2021 Höegh LNG 他 - 5.6

中東 バーレーン Khalifa Bin Salman Port

2018

DSME 2461 FSU -

中南米 ウルグアイ GNL Del Plata - MOL(商船三井) MOL FSRU CHALLENGER

4.1

チリ GNL Penco-Lirquén

2019 Höegh LNG,EDF, Cheniere 他

FSRU Esperanza(HN2865)

5.6

ブラジル Sergipe LNG/Celse

2020 Golar LNG Golar Nanook 5.5

プエルトリコ Aguirre GasPort 2018 PREPA, Excelerate Energy

- -

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– 21 – Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれる

データおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に

関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いませ

ん。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

(4) FSRU 提供事業者の取り組み

FSRU による受入には、船舶の建造・保有、船員の配乗、運航(LNG の受入・再ガス化オペレーショ

ン)が必要となるため、LNG 船の運航を担う船会社が事業実施主体としてサービスを提供している。

Excelarate Energy、Golar LNG、Höegh LNG の主要 3 社に加え、BW LNG、商船三井(MOL)等も参入

してきている。

一方で、顧客側から、早期受入開始・短期契約等の要望に即応するためには、新造船の先行発注

や、戦略的な余剰船腹を保有も場合によっては必要となるが、活用先・契約期間が不透明な中での投

資については、将来の市場動向もふまえた戦略的な検討も必要となる。陸上基地と異なり、他地域で

の転用は可能とはいえ、必要とされるタンク容量、係留方式、気化能力等も多種多様であり、転用に際

して一定の改造が必要な場合もあり、汎用性のある最適な船型選択も容易ではない。また、造船所で

建造・改造される FSRU は、陸上基地とくらべて完工・遅延リスクは少ないものの、陸側設備の建設遅

延(ガーナ)、計画変更(ウルグアイ)等、新興国特有の事業リスクへの対処も必要である。

表 7 主要 FSRU 事業者の動向

事業者 FSRU・FSU 隻数 備考

Excelerate

Energy 7 隻(就航済 7 隻)

・2003 年米国にて設立。世界初となる沖合 LNG 受入基地である

「Gulf Gateway Deepwater Port」を稼働。

Golar LNG

FSU1 隻

FSRU8 隻(建造中 1 隻)

※FSRU4 隻は改造船

・1970 年 LNG 輸送事業を開始。Gaslog、Dynagas との間で LNG 船

の共同運航“Cool Pool”を推進

・グループ企業では、FLNG(カメルーン・赤道ギニア)、発電事業

(Golar Power、ブラジル向)も手掛ける

Höegh LNG 10 隻

(就航済 7 隻、建造中 3 隻)

・FLNG 事業からは、2016 年撤退

・市場投入までの時間短縮のため、未契約の FSRU 1 隻を戦略的

に建造・保有

BW LNG 3 隻

(就航済 1 隻、建造中 2 隻)

・LNG 船全 16 隻運航中(うち、1 隻が FSRU)、5 隻建造中(うち 2

隻が FSRU)

・グループ企業では、FPSO・FSO 計 38 プロジェクト実施。

商船三井

(MOL) 1 隻(就航済 1 隻)

・当初ウルグアイ向を予定していた世界最大(26.3 万 m3)の

FSRU“MOL FSRU CHALLENGER”は、トルコ向けに活用予定。

・インド Gujurat 州にて FSU(13.5~14 万 m3 型)、FSRU(約 18 万

m3 型)を計画中。

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表 8 事業者別 FSRU・FSU

船社/事業者 船名/プロジェクト名 就航 国名 地域・プロジェクト・事業者

受入能

力百万

t/年

タンク容量

m3

Excelerate

Energy Excelsior 2005 LNG 輸送(今後、バン

グラディシュ他) 4.1 138,000

Excellence 2005 イスラエル Hadera Gateway 4.1 138,000

Excelerate 2006 UAE Ruwais/Abu Dhabi

FSRU 4.1 138,000

Explorer 2008 UAE Jebel Ali/Dubai 4.1 151,000

Express 2009 LNG 輸送(今後、バン

グラディシュ他) 4.1 150,900

Exquisite 2009 パキスタン

Port Qasim,

Karachi/Engro Elengy

(EETPL)

5.7 151,000

Exemplar 2010 アルゼンチン Bahia Blanca 4.1 150,900

Expedient 2010 アルゼンチン GNL Escobar 4.1 150,900

Experience 2014 ブラジル Pecem 6.6 173,000

Golar LNG Golar Arctic

(FSU) 2003 ジャマイカ

Montego Bay /Bogue

LNG terminal 0.5 138,000

Golar Spirit(1981

年就航、改造

2008)

2008 - LNG 輸送/待機 1.8 129,000

Golar

Winter(2004 年就

航、改造 2009)

2009 ブラジル

West of Ilha dos

Frades, Bahia/TRBA

Salvador

3.8 138,000

Golar Freeze

(1971 就航、改造

2010)

2010 - LNG 輸送/待機 3.6 125,000

Nusantara Regas

Satu(1977 就航、

改造 2012)

2012 インドネシア Nusantara Regas

Satu/West Java 3.7 125,000

Golar Igloo 2014 クェート Mina Al-Ahmadi 5.5 170,000

Golar Eskimo 2014 ヨルダン Aquava/Al-Sheikh

Sabah LNG 5.5 160,000

Golar Tundra 2015 ガーナ Ghana LNG

(WAGL)/Tema 5.5 170,000

Golar Nanook 2018 ブラジル Sergipe LNG/Celse 5.5 170,000

Höegh LNG GdF Suez

Neptune 2009 トルコ Etki LNG FSRU 5.6 145,000

GDF Suez Cape

Ann 2009 インド

Jaigad Jaigarh port 予

定 5.6 145,000

PGN Lampung 2014 インドネシア PGN Lampung 2.7 170,000

Independence 2014 リトアニア Klaipeda 2.9 170,000

Hoegh Gallant 2014 エジプト Ain Sokhna 3.8 170,000

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Hoegh Grace 2015 コロンビア Cartagena 3.8 170,000

Hoegh Giant 2017 ガーナ LNG 輸送(今後

Tema/Quantum 予定) 5.6 170,000

FSRU Esperanza

(HN2865) 2018 チリ GNL Penco-Lirquén 5.6 170,000

HHI2909 2018 パキスタン Port Qasim,

Karachi/Geil 5.6 170,000

SHI 2220 2019 未定 未定 5.6 170,000

OLT FSRU Toscana

(Golar Frost 号

改造)

2014 イタリア OLT Offshore LNG

Toscana 4.4 137,500

BW Offshore BW Singapore 2015 エジプト Ain Sokhna 5.6 170,000

BW Integrity 2017 パキスタン Port Qasim,

Karachi/PGPL 6.2 173,400

DSME 2489/TBA 2019 TBA n/a 173,000

PERTAMINA FRU+FSU インドネシア Benoa, Bali 0.4

Petronas Tenaga Satu(FSU

1982 就航、2012

改造)

2012 マレーシア Melaka 2.6 130,000

Tenaga Empat

(FSU、1981 就

航、2012 改造)

2012 マレーシア Melaka 2.6 130,000

BumiArmada ArmadaLNG

Meediterrana(改

造 FSU)

2016 マルタ Malta LNG 0.4 125,000

MOL(商船三

井)

MOL FSRU

CHALLENGER 2017 ウルグアイ トルコ 4.1 263,000

未定(FSRU 18 万

m3、FSU13.5-

14.5 万 m3)

2020 インド Jafrabad Port, Gujurat

State/Swan LNG FSRU 5.0

18 万 m3

+14 万

m3

Gazprom HHI2854 2017 ロシア Kaliningrad FSRU 5.0 174,100

DSME 2461 FSU 2018 バーレーン Khalifa Bin Salman Port 3.3

Maran Gas

Maritime DSME 2468 2020 TBA n/a 173,000

(5) FSRU の拡大(課題・まとめ)

2005 年の米国「Gulf Gateway」での受入開始以降、土地取得・地元合意、建設コスト・期間、初期コス

ト、移動・撤去の容易さといった面で陸上 LNG 受入基地に対して優位性がある浮体式 LNG 受入基地

の普及が進んできた。2016 年に新たに稼動した 11 の LNG 受入・再ガス化基地のうち、5基地(コロン

ビア・インドネシア・ジャマイカ・トルコ・UAE)は FSRU であり、今後も新興国需要増に対応し浮体式

FSRU による受入れ検討が進むと想定される。

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今後は、単なる FSRU の傭船(提供)だけでなく、LNG の供給、附帯設備の調達、FSRU による受入・

再ガス化、ガス利用(発電)等も含めたパッケージでの提供へのニーズも高まっており、LNG供給者(メ

ジャー等)も、需要創出のため FSRU・下流事業への関与を進めている。

一方で、陸側設備等も含めたスケジュール遅延・変更等、新興国特有の事業リスクも顕在化してきて

いる。陸上基地とは違い、FSRU は他地域での転用は可能とはいえ、必要とされるタンク容量、係留方

式、気化能力等も多種多様であり、転用に際して一定の改造が必要なケースもあり、短期間・早期での

事業開始を求める顧客ニーズに即応するための余剰船腹の保有、傭船期間終了後の活用等、拡大

傾向にはあるものの、長期的な事業環境については不確実性が残る。

また、2014 年以降の低油価、米国・豪州を始めとする供給増に伴う、流動性向上、油価連動の LNG

価格対するスポット価格の相対的に優位な価格の実現といった、LNG 市場の環境化も、新興国での

FSRU による急速な需要拡大の一要因として考えられる。

今後、中長期的な需要を賄うための、計画段階の LNG プロジェクトも多くあるものの、豪州域内のガ

ス需給逼迫、不透明な中東・カタール情勢等、想定外の供給障害、建設遅延で需給均衡の早期化で

一定期間のスポット価格高騰も懸念される。経済発展の途中にある、新興国において、LNG 価格の高

騰時の需要減、また、再エネ等他燃料の価格競争力が向上による、LNG 需要増の鈍化等も、超長期

的な懸念材料として留意する必要がある。

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4.FLNG 動向

(1) FLNG の概要・進捗状況

FLNG の研究は 1990 年代に始まり、2011 年 5 月の Shell の Prelude の FID で FLNG ブームの高ま

りを見せた。

出所:Shell Website 出所:JOGMEC作図

図 19 FLNG の設備構成例

その後、豪州を中心に多くの FLNG 計画が持ち上がったが、米国が LNG 輸入国(2000 年代前半に

は大輸入国になるという予想)から、輸出国になるという一大転換(2018 年見込み)とそれに一部関連

して 2014 年から始まった、原油価格の下落により FLNG を取り巻く景色も随分と変化してきた。

特に、2017 年に入り、新たなエポック・メーキングと呼んでもよい出来事が続いており、このような状

況下における FLNG の現状を俯瞰していきたい。

① 2012 年 6 月に最終投資決定(FID:Final Investment Decision)を行った、Petronas の PFLNG1

(年産 120 万 t)が 2016 年末にマレーシアサラワク沖でコミッショニングを完了し、世界で初の

FLNG による LNG の生産を開始、2017 年 4 月に初出荷を行った。

② 2017 年 6 月、年産 300 万 t を超える(3.4mmtpa)モザンビーク Area 4Coral FLNG (新造船)が

FID に至った。

③ 2011 年に世界で初めて FID を行った Shell の年産 360 万 t の Prelude FLNG が、韓国にお

ける建造が 1 年ほど遅れたものの Samsung 重工業の造船所を 2017 年6 月に出港(Sail away)

し、現場海域において 2018 年夏のコミッショニングに向け作業が始まった。

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④ Golar LNG 社を中心とする LNG タンカー船を保有する船会社が、船齢の比較的古いモス型

タンカーを FLNG に改造し、最初の改造 FLNG が 2017 年 10 月 12 日にカメルーンに向け

Sail Away した。

(2) FLNG の特徴

① FLNG の強みと弱み

天然ガスの成分は、C1 メタン成分が主で、常温常圧では気体である。天然ガスを液化して輸送に

適した体積(1/600)にするには、マイナス 162℃まで冷却する必要がある(液化天然ガス:Liquefied

Natural Gas = LNG)。その技術は 19 世紀末には理論的には分かっていたが、LNG の商業生産は

1964 年のアルジェリアから英国向けの出荷が初めてといわれ、その後液化プロセスが改良されてきた。

2000 年代以降は、カタールペトロリウム(Qatar Petroleum:Qatargas および RasGas の持株会社)のよう

に陸上に 1 トレイン 780 万 t/年といった大型の LNG プラントが計 6 トレイン建設された。陸上LNG の

場合は、一般的に言われているのはガス田の大きさが最低でも 5tcf (trillion cubic feet) 以上あること、

規模の経済を追求するのであれば、1 トレインのキャパシティは、400 万 t/年程度が適当と言われてい

る。

世界における天然ガスの産出量のうち約 10%液化(LNG 化)されているが、Floating LNG プラント

(FLNG)が選択される特性・着目点は主に以下の観点から考慮される。これらの特性は単独で考慮さ

れる場合もあるし、複数の要因から選択される場合もあり、最終的には、技術的な課題とも相俟ってコ

スト(建設コスト Capex と運転コスト Opex)へと反映される。

表 9 FLNG の強み・弱み

強み 弱み

建造(大型造船所) ・ 高い品質、熟練労働者の確保 ・ 大型造船所限定

設置(海洋) ・ 長距離 P/L 不要

・ 環境負荷低減

・ 気象海象による影響

・ 適用基準の都度確認要

・ 船級取得

工期 ・ 新規陸上、インフラ未整備地に

おける許認可等で工期短縮 ・ ローカルコンテンツ問題

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移転・転用(拡張)

・ 中小ガス田の活用(0.5~5Tcf)

・ 生産終了後次のガス田への移動

可能

・ 拡張原則不可

・ 設計寿命長めに取る必要

<FLNG の強み>

i) 造船所で建造される

・ 僻地、遠隔地での建設労働者の確保が不要。造船所において熟練労働者の確保が容易。

すなわち、信頼できる造船所が活用でき品質確保が容易である。

・ 労働者単価の高い国で工事の人件費が削減できる。

ii) 海底ガス田のすぐ上に設置可能

・ 長距離海底パイプラインが不要(離岸距離が長い場合や大水深の場合)。

iii) 建設期間短縮

・ 開発地沿岸のインフラが未整備の場合、土地の収用を含む建設用地の確保、建設工事用

アクセス道路、港湾設備の建設および浚渫、空港設備、環境審査・許認可等に長時間要す

る場合に時間が短縮できる。

iv) 移転・転用が容易

・ 生産終了後次のガス田への移動が可能であり、また中古LNG タンカーの改造で中・小型の

転用型 FLNG が可能

v) 小規模ガス田の開発推進

・ 従来、陸上 LNG までパイプライン搬送する費用を考慮すると採算を採るのが困難な中小ガ

ス田(Stranded field, 小規模可採量 0.5-2tcf、中規模 2~5tcf)でも生産が可能となる。

※ 1tcf =LNG 換算 2,081 万 t(20.81 百万 t)。仮に、可採ガス量が 1.0Tcf のガス田に、年産 100

万 tLNG の FLNG を投入したとすると、ガスを取りきるまで約 21 年要することになる。実際は、

ガス田が枯渇してくると産出量が減少することから、可採量を取りきるまで FLNG を稼動させる

という選択肢は小さく、減衰してきた時点で他の Stranded ガス田に移動すると想定される。

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vi) 陸上でのプラント建設が、環境・住民運動等で困難

・ 陸上での LNG プラントの建設が先住民族、環境負荷、住民運動等の問題から困難な場合

においても、FLNG を沿岸部(Near Shore)に設置し、洋上・内陸部ガス田からパイプライン

でガスを送り込み陸上 LNG の代替としての輸出基地となりうる。

<FLNG の弱み>

i) 対応可能な造船所(ドック)が限られる

・ 一般にトップサイドと呼ばれる甲板より上のプロセス部分の必要面積と重量およびタンク容

量によって船殻(Hull)が決まり、船体全体の大きさ重量等の構造が決定する。また、限られ

たエリアでの建設にも困難が伴い、HSE を考慮したエンジニアリングも重要。

・ Shell の Prelude は韓国 Samsung Heavy Industry(SHI)、Petronas の PFLNG1 は Daewoo

Shipbuilding and Marine Engineering(DSME)で建造された。

ii) 気象条件すなわち遥動条件

・ 遥動条件(高さ、うねり、縦揺れ、横揺れ)を加味したプロセス性能と疲労、スロッシング対策

が必要。

iii) FLNG の設計、適用基準

・ トップサイドに設置される機器の設計にあたっては、船体揺動条件を考慮する必要がある。

また、また、API/ASME(American Society of Mechanical Engineering)の LNG 基準で設計さ

れるトップサイドと船級基準による船体設計の適用基準については、定まったものがなく、両

基準の差異については両基準の差異については都度協議・調整が必要となり、設計現地

作業の遅れとコスト増の要因となる。

・ ガス田が枯渇するまで使い続けるため、設計寿命を長く(最長 40 年程度)とる必要がある。

通常の原油処理海洋構造物の設計寿命は 20~25 年。したがって通常の慣習を超えた設

計寿命を要求することで Capex の増加要因となる。

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iv) 拡張性

・ 液化プラントの拡張は船体のスペースの制約から基本的に不可能。

v) その他

・ 海外の造船所でそのほとんどが建造されるFLNGの場合、産業が未発達である産油国が求

めるローカルコンテンツを達成することが難しい。

・ 船舶や海洋構造物の構造・健全性当を審査する船級協会の審査が必要。改造型を除き

FLNG はメインの推進機関がなく自走しないが、風による回転への補助、LNG 積み込みの

ため LNG タンカーの着舷補助のため、Thruster と呼ばれる位置修正用エンジンとプロペラ

を装備する場合が多い。オペレーター、所有者、リースやチャーターの場合の使用者、保

険の引受人(Underwriter)や投資家(フィナンサー)など多くの関係者が船舶同様関与して

来るため船級協会の船級取得が必要となる。

・ 陸上 LNG プラントと比べると洋上に FLNG を設置する場合、LNG タンカーを横付けするた

めのタグボート(3 隻は必要)、サポートベッセル(運搬船、警戒船等)、要員交替のヘリコプ

ター等の移動手段により Opex は高くなる。ただし、全体費用の中では軽微。

② FLNG の建造・造船所動向

i) 建造プロセス

建造プロセスとしては、トップサイドのプロセス・ユニットはモジュール毎に製造、その後、船

体部分(Hull)に大型クレーン(Floating Crane)を使用し搭載する。

造船所岸壁での試運転前検査(Pre-Commissioning), 造船所近傍の沿岸部での試運転

(Commissioning), 現地据え付け後の試運転の 3 Phase それぞれの作業仕分けと極力現地作

業を減らす必要があること。一般に FLNG ではその巨大さゆえ、通常の LNG 船の

Commissioning 作業のように LNG 受け入れ基地で LNG を受け取り、ガステストを実施すること

が不可能である。そのため、現地到着据え付け後に LNG 船より試運転用 LNG Cargo を受け入

れる手順が必要となる。

ii) 造船所動向

大型ドックを有し、価格競争力があり品質も兼ね備えた新造 FLNG を建造できる能力を有す

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– 30 – Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれる

データおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に

関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いませ

ん。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

る造船所は、FPSO や LNG タンカーの建造実績を有する韓国の造船所(Samsung, Daewoo,

Hyundai)が有利であるが、Golar FLNG 社のように改造タイプ FLNG はシンガポールで建造を

行っている。

モジュールは造船所の陸機工場で建設されるのが望ましいが、価格と品質次第であり、プラ

ントのモジュール建設に実績を有し、近年その品質管理技術も向上してきている中国の造船所

が韓国を追随する可能性もある。

なお、日本の造船所も LNG 船の建造実績は豊富なため、トップサイドのエンジニアリング会

社と組みトップサイドモジュールの建造を自営あるいは海外ヤードに委託することにより中・小

型 FLNG の建造は可能と思われる。

(3) 現在の FLNG 全体的な趨勢

既 FID もしくは実現性の高いプロジェクトにおける開発の特徴は下表のとおり。事業の実施主体は、

当初、石油開発会社であったが、近年、Golar 社のように中古船を改造し、液化加工を受託するような

事例も出てきている。

表 10 FLNG の分類

プロジェクト名 Offshore /Nearshore 石油開発会社

/船会社 新造/改造

事業

モデル

Shell Prelude Offshore IOC (Shell) 新造 Integrated

ペトロナス

PFLNG 1&2 Offshore NOC (Petronas) 新造

P1Integrated/P2

tolling

Coral FLNG Offshore IOC (Eni) 新造 Integrated(契約

上 Tolling)

Kribi FLNG,

Cameroon Near Shore 船会社(Golar) 改造 Tolling

Fortuna FLNG,

赤道ギニア Offshore 船会社(Golar) 改造 Tolling

Tortue FLNG,

モーリタニア/セネ

ガル

Near Shore

IOC(BP,Kosmos

Energy)/船会社

(Golar 他)

改造(最初の

2 隻の内 1 隻

目 Golar)

Tolling

Delfin LNG,

USA

Near Shore (陸上

LNG 代替)

Energy (Delfin) /

船会社 Golar 改造(Golar) Tolling

Exmar FLNG Near Shore 船会社(Exmar) 新造 Tolling

※ 上段の 4件は FID済み。最下段の Exmarについては、完成済みであるが行き先が未定。

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※ Integrated はプロジェクト実施者が、上流開発・液化・出荷まで一貫して事業主体が実施。Tolling

は、原料ガスを受け取り、液化加工を受託。事業者は、FLNGの投資(建造)・運転。

(4) FLNG プロジェクト事例

① Shell Prelude(石油会社主導 FLNG)

2011 年に世界で初めて FID に至った Shell の Prelude は、当初の予定より約 1 年遅れ、2017 年 6

月 29 日に韓国巨済島(Geoje) の Samsung Heavy Industries 造船所からオーストラリア Browse 海盆

Prelude ガス田に向け4隻のタグボート(2 隻はサポート)によって牽引され出発した。現場には 2017 年

7 月末に到着し、その後、約 9 ヶ月~12 ヶ月をかけ海底ガス田設備(SPS: Subsea Production System)

との接続作業(Hook-up)、試運転(Commissioning)、LNG 積出しテストを経て、2018 年夏頃の操業開始

を予定している。

表 11 Prelude の主要諸元

Name Prelude

Production Capacity 3.6 mtpa (360 万 t/年)

Production Field Prelude Gas Field, Browse Basin 250km from the nearest

seashore

Operator of the Field Shell (67.5%), INPEX (17.5%), KOGAS (10%), CPC (5%)

Reserved gas 2.7 tcf

Water Depth 250m

FID May 2011

Engineering / Shipbuilding Technip /SHI(Samsung Heavy Industries)

Liquefaction Process Shell DMR

Turbine Steam Turbine (Mitsubishi)

Design Life Period 25 年間(トップサイド)、40 年間(Hull)

Size L-488m, B-74m

*従来世界最大の 27 万 m3 の LNG を運搬する Q-Max の長さ 400m を超

える。

Turret Internal type – non-disconnectable (SBM Offshore)

Tank メンブレンタンク GTT Mark III

POB(乗船定員:Person on

Board)

通所運転時 120-140 人、定期保守時 340 人

Sail Away June 2017

First Drop 2018

First Cargo 2018

※ 単純計算では 19.1年で採取完了。

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出所:Shell ウエブサイト

図 20 Prelude 概観

② マレーシア FLNG(石油会社主導 FLNG)

Petronas は、ストランデッド・ガス田(遠隔地にあり且つ小規模なため開発が難しかったガス田)の開

発に注力しており、2 隻の FLNG プロジェクトを実施している。PFLNG1 は 2017 年 4 月に世界で初の

FLNG の商業運転に至っており、また、二隻目の PFLNG2 も途中油価の下落で中断期間があったもの

の再開し 2020 年に運転見込みである。なお、PFLNG1 最初の出荷はインド向けで、年内に 5 タンカー

分の出荷予定であり、いずれも Spot LNG としての出荷である。

表 12 PFLNG の主要諸元

Name PFLNG 1 (Satu) PFLNG 2 (Dua)

Production Capacity 1.2 mtpa (120 万 t/年) 1.5 mtpa (150 万 t/年)

Reserved gas amount 1.1 tcf 0.95 tcf

Water Depth 77-220m 250-1,500m

FID June 2012 February 2014

Engineering / Shipbuilding Technip / DSME (Daewoo JGC / Samsung Heavy

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Shipbuilding & Marine

Engineering)

Industry

Liquefaction Process Air Products “AP-NTM” 同左

Turbine GE Oil & Gas four PGT25+G4

gas turbine

-

Design Life Period 20 年間 20 年間

Size Lpp-365m, B-60m Lpp-381m, B-60m

Turret External type (Sofec) 同左 (Sofec)

Tank 仏ガストランスポート&テクニ

ガス(GTT) メンブレンタンク

No.96

GTT メンブレンタンク Mark III

Persons on Board Max 155 -

Sail Away May 2016 -

Production Field Kanowit Gas Field, 180km

offshore Sarawak

Rotan Gas Field and other 3

fields in Block H, 240 km

offshore Sabah

Operator and other partners Petronas 100% Murphy 42%, Petronas 40%,

Pertamina 18%

First Drop 5th December 2016 2020 planned (originally in

2018)

First Cargo 1st April 2017 --

出所:Petronas

図 21 PFLNG1 概観

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③ モザンビーク FLNG FID(石油会社主導 FLNG)

モザンビーク沖では、イタリア炭化水素公社(Eni)がオペレーターを務めるエリア 4 鉱区で LNG プ

ロジェクトが計画されており、これとは別に、Eni はエリア 4 の南部に位置する Coral ガス田に関しては

独自に浮体式液化設備(FLNG)を用いた LNG 輸出プロジェクト「コーラル・プロジェクト」について、

2017 年 6 月に FID を下したと発表した。2021-22 年の操業開始を目指している。Eni とその他参画

企業との構成は次のとおりである。

表 13 コーラル FLNG 社(Coral FLNG SA)(モザンビーク法人)構成

出資者 出資比率

ENI East Africa

(ENI)

70%

(25%)

(Exxon Mobil) (25%)

(CNPC) (20%)

ENH FLNG UM, S.A. 10%

GALP ENERGIA ROVUMA B.V. 10%

KOGAS 10%

<プロジェクトの概要>

コーラル FLNG 社が開発を進めるモザンビーク共和国のタンザニア国境沿いにある沖合のガス田

向けに、アフリカ地域初となる FLNG プラントを新設。

本プロジェクトにより建設される FLNG は、水深 2,000 メートルを超える深海ガス田向け FLNG プロ

ジェクトとして世界初の事例となる。

可採埋蔵量からすると、FLNG 340 万 t/年で 25 年間操業し 3.3tcf 強を採取、残りは、最初の FLNG

の操業を見てから、追加の FLNG おを投入するかどうかの判断となるといわれている。

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表 14 Coral FLNG 主要諸元

Name Coral FLNG (船名未定)

Production Capacity 3.4 mtpa (340 万 t/年)

Production Field Coral Gas Field, Area 4, Mozambique

50km offshore

Operator of the Field ENI East Africa (70%), ENH (10%), Galp Energia (ポ

ルトガル:10%), KOGAS (10%)

Reserved gas 4.7 tcf

Water Depth 2,260m

FID June 2017

Engineering / Shipbuilding Technip FMC/JGC/SHI

Liquefaction Process APCI DMR

Turbine Gas Turbine

Design Life Period 不明

Size L-414m, B-66m,

Turret Internal type (SOFEC)

Tank Membrane Type

POB(乗船定員 Person on Board) 不明

Sail Away 不明

First Drop 2021-22

First Cargo 2022

図 22 Coral FLNG 完成イメージ図(出所:Eni)

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図 23 モザンビーク Area4 (出所:JOGMEC 作図)

コーラル FLNG 社(Coral FLNG SA)は、Coral FLNG 建設プロジェクトについて、以下 3 グループに

よる FEED 評価、見積評価を経て、2017 年 6 月 1 日に Technip/JGC/Samsung Heavy Industry (SHI)を

選定したと発表した。

・ Technip/JGC/Samsung Heavy Industry (SHI)

・ Saipem/Chiyoda/Hyundai Industry (HHI)

・ KBR/Daewoo Shipbuilding & Marine Engineering (DSME)

日揮(JGC)とテクニップ FMC は、主に FLNG トップサイドの設計・機材調達、及びプロジェクト全体

の管理を担当し、共同受注者である韓国サムスン重工が FLNG 船体の EPC およびトップサイドのファ

ブリケーションを所掌する。

i) FLNG 建設の契約内容:

LNG プラント 1 基(生産能力:年産約 340 万 t)に係わる EPCIC(Engineering, Procurement,

Construction, Installation and Commissioning:設計、機材調達、建設工事、据付および試運転)。

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ん。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

さらにもう 1 基の計画あり。

ii) 契約形態

ランプサム契約(契約金額推定 USD5.4bln)。掘削費用や、ライザー、海底機器(SPS: Subsea

Production System)を含めた Capex は約$8bln と推定。

iii) その他

生産された LNG は全量BP が引取りを予定。BP の信用力を背景としたプロジェクトファイナンス

であり、主要な貸し手としては中国系の銀行といわれ、処理量に対して支払われる対価(Tolling

scheme)にて返済される。

④ 船会社(Golar LNG 社)主導による FLNG (中古 LNG タンカー改造)

Golar LNG 社はノルウェーベースの LNG タンカー船 16 隻、FSRU7 隻を保有する会社である。ま

た、2016 年に FLNG の Upstream と Midstream を統合する目的で Schlumberger 社と共同で One

LNG 社を設立し、本格的に FLNG ビジネスに乗り出している。現時点で Golar 社のみが中古 LNG

タンカーを FLNG に転用することをビジネスとしている。

2016 年末までに就航し稼動している LNG タンカーは、10 万 m3 以上のクラスは世界で約 450 隻

ある。そのうちスロッシングの問題が少なく比較的安全であるとされる MOSS 型タンク(球形タンク)を

搭載するタンカーは 135 隻であり、更に 1997 年までに建造された船暦 20 年超が約 35 隻ある。今

後 FLNG への改造(Conversion)が更に進んでも、供給サイドの古い船暦を有するタンカーは充分

な数があると言えよう。

Golar LNG 社は、FSRU で展開したビジネスモデルと同じく、3 年以内という比較的短期で既存の

LNG タンカーを FLNG に転換するビジネスを目指している(Golar FLNG = GoFLNG)。このため、

LNG タンカーの Hilli Episeyo 号(1975 年製造 125,000m3)と Gandaria 号(1978 年製造 126,000m3)

を改造のために 2014 年にシンガポールの Keppel 造船所および液化プロセス技術を提供する

Black & Veach 社と提携した。その後、Gandaria 号(1975 年製造 125,000m3)の改造に着手した。

Black & Veach は、液化技術の PRICO ライセンスの提供にとどまらずトップサイドのプロセス設計、

詳細設計および主要機器の仕様決定ならびにコミッショニングサポートまで行っている。

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LNG タンカーの改造といえども同社の FLNG は、ガス田から直接得られるガス中の水分、二酸化

炭素や硫化水素(H2S)といった不純成分の分離のための前処理設備は搭載している。また、海気

象条件の厳しい海域で安定操業するには一点繋留(SPM: Single Point Mooring)で固定するだけで

はリスクを伴う。カメルーンでは、Golar 社は SPM の Yoke タイプを採用した。水深が浅いと通常の係

留(カテナリー係留)が効かないためタワーのようなものを立て、その周りを Weathervane(風見鶏の

様)させるタイプである。一方、赤道ギニアでは Offshore なので本格的な Turret 形式であり、これも

SPMの一種であるが大型ベアリングを船首部分に搭載し、これを中心に船体は回転する。これに対

して多点係留は回転しない固定型で東南アジアの穏やかな地域やあるいは西アフリカにおける

FPSO に使用されている。

表 15 Golar 社 GoFLNG 計画

Operator 船名 Location Capacity Eng’g/

Shipbuilder FID 生産開始予定

Perenco

Cameroon

/ SNH

Hilli

Episeyo

Kribi, offshore

Cameroon 2.4 mtpa

シンガポール

Keppel 造船所

にて改造

Sep 2015

2017 年 10 Sail

away

11 月中旬現地到着

Ophir

Energy

Golar

Fortuna

Block R,

Equatorial

Guinea

(赤道ギニア)

2.4 mtpa 同上 2017 年内 2020 年

BP/ Kosmos

Energy 未定

Tortue 1-

Mauritania /

Senegal

2.4 mtpa x

2

1 隻目は Golar

に発注予定

2018 年 9

月予定 2022 年

Delphin

LNG 未定 USA

3.0-3.3

mtpa x 4

Golar に て 検

討中 2018 年末 2020 年~2021 年

Golar が進めている各プロジェクトを以下順に紹介する。

i) カメルーン沖 Kribi FLNG プロジェクト (Hilli Episeyo 号)

カメルーン沖 Kribi Field(Kribi 市より沖合い 15km)にあり 1979 年に Mobil によって発見され

た。 Kribi Field の Sanaga Sud および Ebome Marine ガス田(水深 60m)より生産された天然ガ

スはパイプラインで陸上の Bipaga Plant に送られ、ここのガス処理プラントで脱水、分離が行わ

れた後、ガス成分のみが再度パイプラインで沖合 20km に設置した Hilli Episeyo FLNG に送ら

れ液化される。可採埋蔵量は 0.7tcf、当初 8 年間は、半分の 2 トレインで運転予定。

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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれる

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ガス田はシンガポールベースの Perenco 社が 75%権利を有し、残りの 25%はカメルーンの

炭化水素公社(SNH:Societe Nationale des Hydrocarbures)が保有する。

FLNGはGolar LNG社が保有し、UpstreamのPerenco社とSNHより処理代金(Tolling Charge)

が支払われる契約は 2015 年 9 月に締結し、同時に Golar は FID を行った)。LNG はロシアの

Gazprom が全量引き取る。液化加工委託(Tolling)価格は Brent 油価連動となっている。

表 16 カメルーン Kribi FLNG Hilli Episeyo 主要諸元

Name Hilli Episeyo

Production Capacity 2.4~2.8 mtpa (240~280 万 t/年) 0.6mtpa トレイン x 4 、最初の 8 年間

は 2 トレイン(半分)

Production Field Kribi Field, 15km from Kribi city

Operator of the Field Perenco Cameroon (75.0%), SNH (25.0%)

Reserved gas 0.7 tcf (ただし、生産開始 8 年で、0.5tcf 採取予定)

Water Depth 60m

FID Sep 2015

Engineering / Shipbuilding Keppel造船所, Golar所有のモス型LNG 船(12 万5,000m3、1975

年建造)を改造

Liquefaction Process

Black & Veach PRICO

Liquefaction 部分は船体に Pontoon を取り付け設置(添付写真

参照)

Design Period (設計寿命) 20 年間(リース期間は 8 年間)

Size 不明

Tank Moss type

Mooring Single Point Mooring Yoke

POB (Person on Board) 不明

Sail Away 12 Oct. 2017

First Drop 2018

First Cargo 2018

Offtake Gazprom 全量引取り

※ ブラック&ビーチの PRICO プロセスは簡易型の冷却システムで、一つの混合冷媒を使用したル

ープを採用することにより、設備が最小限となり、他の技術に比べて操業コスト(OPEX)が低く、

制御及びメンテナンスが単純化されるという。ブラック&ビ-チは処理工程の設計や液化設備の

コミッショニング(試運転)も担当する。

※ 当初 Sail Away は 2017 年 7 月を予定していた。遅延の理由としては、Pre-Commissioning を厳格

に行っているためと説明している。

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図 24 Keppel 造船所で改造中の Hilli Episeyo (出所:Golar)

ii) 赤道ギニア Golar Fortuna FLNG プロジェクト

Fortuna FLNG プロジェクトは、赤道ギニアのニジェール・デルタ堆積盆南東部に位置する R

沖合鉱区(権益保有比率:Ophir Energy、オペレーター、80%/政府系 GEPetrol 20%)で生産

される天然ガスを供給源に、15-20 年間に亘り 220-250 万 t/年の LNG を生産・販売するも

の。Ophir Energy の Website では資源量 3.0tcf とされている。

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図 25 赤道ギニア 位置図

FLNG は、赤道ギニアの北西にあるビオコ島から沖合 140 キロメートル、水深 1,600 メートル

の洋上に設置される。FID 後の権益は Fortuna JOC(Joint Operation Company)が Ophir の権益

を引き継ぐ。JOC の構成は OneLNG(Golar LNG と Schlumberger の JV)が 66.2%、英国独立系

の Ophir Energy 社が 33.8%である。既に、10 年分の LNG はエネルギー商社の Gunvor が買い

取ることが決定しているが、現時点において FID 条件をクリアしていないと言われ見通しは立っ

ていないとのことである。

FLNG は、Golar LNG 社が保有していた Gandaria 号を改造し Fortuna FLNG に転用する予

定であるが、Golar によると Keppel の作業はエンジニアリング段階で中断している模様。

このガス田の特徴は、不純物がほとんど含まれないメタン(98%超)ガスであることから原料ガ

スの前処理は最小限で済むとのことである。沖合での生産のため Turret は必要で、船首部分を

改造して取り付ける予定となっている。。

カメルーン向け Hilli Episeyo 号と赤道ギニア向け Gandaria 号は、Golar 社では Mark1 デザイ

ンと呼ばれている。

赤道ギニア

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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれる

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関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いませ

ん。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

表 17 赤道ギニア Fortuna FLNG 主要諸元

Name Fortuna

Production Capacity 2.4 mtpa~2.8mtpa (240~280 万 t/年) 、0.6mtpa トレイン x 4

Production Field Block R, 首都マラボが置かれるビオコ島沖 140km

Operator of the Field FID 後は Fortuna JOC 80%、GEPetrol 20%

Reserved gas 2.5~3.0 tcf (23~25 年で採取完了)

Water Depth 1,600m

FID 2017 年下半期。ただし、Keppel 造船所への発注は、2017 年

5 月 10 日。

Engineering / Shipbuilding Keppel造船所, Golar所有のモス型LNG 船Gandaria号(12 万

6,000m3、1975 年建造)を改造予定

Liquefaction Process Black & Veach PRICO

Liquefaction 部分は船体に Pontoon を取り付け設置

Design Period (設計寿命) 20 年

Size 不明

Tank Moss type

Turret Mooring External Type

POB (Person on Board) 不明

Sail Away 4Q 2017

First Drop 2020

First Cargo 2020

Offtake 10 年間、全量 Gunvor Group(エネルギー商社)が買い取り。

ブレント連動価格。

iii) モーリタニア/セネガル沖 Tortue ガス田開発

Tortue ガス田は、西アフリカのモーリタニアとセネガル沖にまたがるガス田で、2015 年に米

国の Kosmos Energy が発見した。Great Tortue を呼ばれる鉱区は、3 つのガス田で構成され、

それぞれ Tortue-1(モーリタニア)、Guembeul-1 (セネガル)および Ahmeym-2 (モーリタニア)

と呼ばれ、合計の可採量は 25tcf と推定される。その後、BP が 2016 年 12 月に参入し、開発オ

ペレーターと将来生産される LNG の引き取り権を取得した。

Kosmos Energy は引き続き探鉱オペレーターを務めるが、更に 25tcf の埋蔵量を期待できる

としており、将来的には 50tcf の一大 LNG Hub になる可能性が秘められている。

なお、Great Tortue に対するモーリタニアとセネガルの持分は 50:50 であり、両国政府間に

持分比率に関する論争は生じていない。

フェーズ 1 は Tortue-1 (水深 1,500m)の開発であり、可採埋蔵量は BP によれば 15tcf であ

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る。現状は、探鉱段階で行われたドリル・ステム・テスト(DST)によって得られたデータを解析期

間中に、BP は生産開発のための Pre-FEED を 2017 年 8 月 17 日に KBR に発注したようであ

る。また並行して EPCI の RFQ も発行されたとの情報もあり全体スケジュールは作成中と思われ

る。なお、DST の解析結果は良好であったと報道(Upstream 2017 年 8 月 25 日)された。

図 26 Tortue の開発コンセプト図 (出所:Kosmos Energy)

図 27 モーリタニア/セネガル沖鉱区図 (出所:JOGMEC)

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ファーストフェーズ(1st Phase)での開発コンセプトは次のとおりである。

モーリタニアとセネガルの中間線あたりの浅海(防波堤のすぐ外あたり)に VLCC サイズでトッ

プサイド重量13,000t の FPSO を浮かべる。6 つの井戸から生産されるガスをここでガス、コンデン

セートと水に分離、精製する。DST の結果次第であるが、FPSO はコンデンセートをおそらく 9,000

~18,000 バレルを取り扱うことになるだろう。FPSO に関しては、新造するかタンカーを転用するか

は未定である。

ガスの 10%相当 150-200MMcfd はそのまま発電用燃料としてモーリタニアとセネガル内陸部の

発電所にパイプラインで送られる。コンデンセートはシャトルタンカーで輸出される。

精製されたガスは、二隻の FLNG(Floating LNG)にパイプラインで送られ液化され LNG が生

産される。各 FLNG の Capacity は、それぞれ 230 万 t/年である。生産計画の FID は 2018 年 9

月を予定しており、ファーストガスは 2022 年の下期を目標としている。

一隻目の FLNG は Golar 社に発注する予定とのことから、LNG タンカーからの転用となろう。二

隻目の FLNG は 2023 年に就航予定である。

EPCI(Engineering、Procurement、Construction および Installation)の見積依頼(Request

for Quotation)は、Technip FMC, KBR、Modec、SBM Offshore, Hyundai Heavy Industry (HHI)、

Samsung Heavy Industry(SHI)、Aker および Fluor の 8 社に出された模様である。ただし、Scope

of Work は明確ではない。EPCI の概算一括(Lump Sum)金額の回答期限は 2017 年9 月である。

Phase1の Capex は Kosmos によれば US$ 5.8 bln である。

iv) Delfin LNG

米国 Delfin 社と Golar LNG 社は、2017 年 6 月 21 日にルイジアナ州沖で推進する Delfin LNG

プロジェクトに関わる共同開発合意書を締結した。

Delfin LNG は、メキシコ湾に面するルイジアナ州 Cameron Parish の沖合 50 マイル(約 80km、

直線離岸距離)に 1 隻あたり 3.0~3.3mtpa の生産能力を持つ 4 隻の FLNG を設置し、合計で

13mtpa(将来的には 21mtpa まで増加)の LNG 輸出基地を作る計画である。50 マイル沖に設置

する理由は、この地域が遠浅で LNG タンカーは喫水が浅い沿岸部に近づけないこと、および既

設の Pipe Line があり内陸からの原料ガスを容易に沖合まで搬送できるためである。ハリケーンが

頻繁に襲来する地域であるため、来襲時は退避が可能なように着脱可能な Turret(Dis-

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ん。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

connectable Turret)による設計をするとのことである。

原料ガスは、天然ガス/シェールガスを処理し、パイプライン網から調達し、沿岸部にコンプレッ

サーステーションをおき 50 マイルの距離を圧送する。下図 WC167 ポイントまでの 30 マイルの既

設の 42 インチパイプライン(UTOS パイプライン)は 2012 年に買収済みで、WC167 から WC327

までの 66 マイルのパイプラインが新たに敷設された上、リースする。建設許可は、すでに米国運

輸省海事局(MARAD)および沿岸警備隊(USCG)から得ており、陸上でのガス圧縮ステーション

などの建設許可は現在米国連邦エネルギー委員会(FERC)が審査中である。またエネルギー省

(DOE)より non-FTA 国への輸出許可も下りている(2017 年 6 月)。おそらく FID は早くとも 2018 年

末になりそうである。順調に進めば生産開始は 2020 年から 2021 年を予定している。

Tolling によるビジネスモデルであり、LNG オフテイカーとしては、リトアニア国営電力会社およ

び同国石油会社ならびにブラジルの投資銀行と 1 隻目の液化加工委託に関する覚書を締結して

いる。

図 28 Delfin LNG 位置図 (出所:Delfin LNG)

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ん。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

Delfin LNG のパートナー企業に、韓国産業銀行(韓国の政府系政策投資銀行)が入っており必要資

金のうち 15 億米ドルを貸し付けることになっている。この 4 隻の FLNG は新造か中古 LNG タンカーの

改造か不明であるが、韓国の造船所乃至メーカーが関与してくると思われる。

⑤ Exmar 社 FLNG(Exmar 社 Caribbean FLNG)

これまではGolar 社の動きを中心に説明してきたが、世界初のFLNGを手がけたのはベルギーのア

ントワープをベースとした Exmar 社であり、同社は LPG タンカー、小型・中型 LNG タンカー、FSRU お

よびオフショア作業宿泊 Barge を保有・運用する中堅のエネルギー系商船会社である。

コロンビア La Creciente ガス田(2017 年 1 月時点埋蔵量 0.083tcf)からの陸上パイプラインガスを原

料として、2012 年 3 月、Pacific Rubiales Energy 社(現 Frontera Energy)は、Exmar 社に対し、バージタ

イプの FLNG 施設の建造・操業を委託する契約を締結した。生産された LNG は Gazprom が引き取る

ことになっていた。同年 6 月に Exmar 社は、中国の Wison 造船に発注した。Black & Veach 社がサブ

コンとして PRICO ライセンス(一段階圧力式混合冷媒方式)を提供した。予定では 2014 年に完成する

筈であった。

同船は、FLNG としては小型の年産 50 万 t であると同時に、加えてコロンビア政府の指示により緊

急時には LNG の受入機能も持つように LNG の再ガス化も併設されたデザインとなっているのが特徴

である。従い、FLRSU(Floating LNG Liquefaction, Regasification and Storage Unit)と呼ばれることもあ

る。その後、油価の下落により経済性が疑問視され建造も遅れ、ようやく 2017 年 7 月になって Examr

社は中国銀行等から 2 億ドルの融資を受け Wison 社へ最終払いを行い、同 FLNG は Commissioning

終了後に Exmar に引き渡された。同時に Caribbean FLNG と命名されたが、現在まだ行き先は決まっ

ていない。Exmar 社は第二船の FLNG(年産 60 万 t)の計画を進めていたが、Wison 造船に発注した

もののその後キャンセルした。

⑥ その他の FNG 計画

そのほか計画中もしくは過去に計画された FLNG プロジェクトについてその後の状況については表

18 のとおり。豪州の計画の多くは、延期もしくは中止となっている。Golar LNG 社の事業モデルに追随

しようという船会社(SBM Offshore 社、Höegh 社)もあったが、現在、進展はみられていない。

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表 18 FLNG 計画

国名 プロジェクト名

/Location

生産能

力 参加企業

可採埋

蔵量 予定生産年/中断/中止した年

オースト

ラリア

Browse

425km offshore

Broome

3 x 3.9

mtpa

Woodside 30.6%

Shell 27%

PetoroChina

10.67%

BP 17.33%

Mitsubishi 7.2%

Mitsui 7.2%

ガ ス 約

15tcf、コ

ン デ ン

セート 4

億 バ レ

2016 年 3 月 FEED の結果を踏まえ経済

性が取れないことから中止。ただし、大

型ガス田でありコンデンセートも多いこと

から時間は掛かるが開発に至るといわ

れている。

Bonaparte 2.4mtpa Engie 60%

Santos 40% 約 2.5tcf

2014 年6 月pre-FEED の結果FEED に

は進まないと決定。経済性が出ないこと

が理由。Darwin LNG に繋ぎ込む検討を

進めるというも進展は見られない。

Scarborough 6-7mtpa

ExxonMobil 50%

BHP 25%

Woodside 25%

7tcf

BHP が操業中の North West Shelf

(NWS)への繋ぎ込みも含め検討中と公

表した後は、進展見られず。NWS のパ

イプラインに余裕が生ずるのは 2021 年

以降。

オースト

ラ リ ア /

東 チ モ

ール

Greater Sunrise

共同開発エリ

4mtpa

Woodside 33.4%

ConocoPhillips

30%

Shell 26.6%

Osaka Gas 10%

ガ ス

5.13tcf

コンデン

セ ー ト

2.26 億

バレル

東チモールと豪州政府間の境界線につ

いては2017年9月に合意。今後共同開

発の合意が進展するかどうか不透明。

東チモールは陸上 LNG を Woodside は

FLNG を主張している。政治問題もあり

先行き不透明。

インドネ

シア Masela Abadi

2.5mtpa

→ 7.5

mtpa

(評価井

の結果)

INPEX 65%

Shell 35%

9.5tcf ~

22tcf

FEED 完了後地元への貢献を求められ

2016 年 4 月に大統領の指示により陸上

LNGに転換。陸上LNGのpre-FEED検

討再開。

米国

Lavaca Bay

輸出用Bargeタ

イプ

4mtpa Excelerate Energy

(100%) -

2014 年 12 月に原油価格の下落を理由

に中止を決定。

パプア・

ニューギ

ニア

Pandora FLNG 1mpta Repsol 14.3tcf

2014 年生産開始の PNG LNG の拡張案

として FLNG を調査した経緯があるが、

その後の動きは見られない。

コンゴ

Congo-

Brazzaville (コ

ンゴ共和国)

1.1mtpa ENI(65%)/

NewAge (25%) 5.5tcf

NewAge が進めているアフリカ 3 プロジ

ェクトの一つ。SBM、JGC,中国 COOEC

および CSSC と共同開発により 2022 年

に生産開始予定。

カメルー

ン Etinde 1.1mtpa

NewAge (30%),

Lukoil (30%) 1.2tcf 同上、2023 年生産開始予定

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ナイジェ

リア Aje 1.1mtpa

YFP(アルゼンチン

41.9%) 、 New Age

(24.1%)

0.6tcf 同上、生産開始未定

※ コンゴ、カメルーン、ナイジェリアの 3件は、英国NewAge社が進めるアフリカでの案件。中国コンテンツは

60%以下。

(5) FLNG の保険キャパシティについて

FLNG を新造する場合は、オフショアの建設工事保険を付保し、建造中の損害リスクを担保する。

Prelude が FID になった 2011 年前後は、オフショア保険のキャパシティは 30 億米ドル乃至 40 億米ド

ルであった。そのため Prelude のような大型オフショア構造物に対する案件は保険でフルにカバーさ

れないリスクが残り、パートナーや投資家の不安を払拭することができない状況があった。

図 28 は英国の保険ブローカーである Willis Towers Watson のレポートからオフショア構造物の建

設に関する保険キャパシティの年度ごとの推移を示している。2011年以降は一貫して保険の限度額は

増加し、2016 年には 80 億米ドルに達しようとするまで伸びている。この金額は、世界中の保険引受人

(Underwriter)から引き受け額を満額集めることが出来たとした場合の仮定の額であり、実際はプロジ

ェクトごとの特性や各 Underwriter の判断などから 80 億米ドルの 80%程度、約 60 億米ドルが限度額

となると言われている。

保険の限度額も他の金融商品の動向により、より安全で利回りの高い金融商品が出てくればそちら

に流れてしまうが、Eni の Coral FLNG の、FLNG 本体の推定 Capex が 54 億米ドルであることを考える

と、年産 300 万 t を超える大型 FLNG の新造の場合でも建造リスクをカバーできる額が確保されるよう

になった。

一方、Golar 社等の LNG タンカー改造型の保険の場合は、通常の船舶の建造や改修の際に使用さ

れる、造船所の建造保険と就航後は船舶としての Hull & Machinery 保険および P&I 保険によって船体

の損害および第三者への賠償責任保険などを付保しているものと思われる。保険料率については、オ

ペレーター、ロケーション、その時のマーケット環境等により大きく左右されるので都度保険会社に確

認することになる。

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出所:Willis Towers Watson

図 29 オフショア構造物の建設に関する保険キャパシティの推移

(6) FLNG スケジュール比較

図 30 FLNG スケジュール一覧

プロジェ ク ト 国・ 地域

オペレータ ー

斜字: FLN Gオー

ナー

LN G生産

能力

百万ト ン/

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022

Prelude オースト ラ リ アShell 3.6

PFLNG1 マレーシア  Petronas 1.2

Exmar FLNG 未定 Exmar 0.5

PFLNG2 マレーシア  Petronas 1.5

Golar FLNG1 カ メ ルーン

Krib i

Perenco

Golar LNG1.2

Coral モザンビーク Eni 3.4

Golar FLNG2赤道ギニア

Fortuna

Ophir Energy,One

LNG

Golar LNG

2.2

2011.05FID

2017.06Sail-away 2018.夏

1st cargo(予定)

2012.06FID

2016.05Sail-away

2017.041st cargo

2014.01FID

再開2016.03開発延期

20201st cargo(予定)

2014.07Speculation発注

2015.09FID

2017.10Sail-away (予定)

20181st cargo(予定)

2014.10FEED開始

2015.12FEED完了

2017.05FID

2020~2021操業開始

(予定)

2012.06FID

2017.07Handover

2015.07FEED開始

2017.末FID(予定)

20201st cargo(予定)

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FID 済および FID が近いといわれている FLNG プロジェクトの実績ベースのスケジュールを図 29

に示す。 Shell Prelude は FID から生産開始(1st Cargo)まで約 7 年、また PFLNG1 においても 5 年で

あるのに対し、Golar FLNG によるカメルーン Kribi FLNG プロジェクトでは FID から約 3 年と短納期で

あるのが特徴である。Kribi FLNG プロジェクトでは先行的に中古 LNG 船の改造を FID 前に実施して

いたことにもよるが、Golar 社および改造を実施したシンガポール Keppel 造船所での作業工程が Shell

Prelude を建造した韓国 SHI や PFLNG1 を建造した韓国 DSME に比べて効率よく建造作業が行われ

たことが伺える。2017 年に FID を迎えた Eni Coral FLNG も予定では 5 年程度の期間を予定している

のに対し、Golar の 2 隻目の FLNG である FID が近いといわれる赤道ギニア Fortuna FLNG プロジェ

クトでも 1 隻目同様に 3 年の期間を予定していることから、Golar 社による改造 FLNG モデルの短納期

が特徴付けられる。

(7) 陸上液化基地、FLNG との比較(ケーススタディー)

ここでは、FLNG が陸上LNG に対して有利か否かを、PFLNG1 を例題にとりケーススタディーを実施

した結果を紹介する。PFLNG はマレーシア Bintulu の陸上 LNG 基地から 180 ㎞沖合の Kumang

Cluster と呼ばれる一連のガス田群のなかの Kanowit フィールド上に設置されている。Kanowit フィー

ルドから、Bintulu の陸上 LNG 基地に 28 インチガス Pipeline が既に敷設されており、ガスが送出され

ているが Petronas はより早期の回収を目論み PFLNG1 を Kanowit フィールド上に投入している。

図 31 PFLNG1 設置位置

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今回のケーススタディーでは、仮想的に Kanowit フィールドから陸上までの P/L がなくかつ陸上に

も一切 LNG 基地がないとの想定で、FLNG による開発案と陸上 LNG 案(つまり洋上でのガス処理施

設、Pipeline、陸上 LNG 基地)の Capex を相対比較している。なお、FLNG ケースおよび陸上 LNG ケ

ースともに井戸は海底仕上げを想定したため、双方の井戸コストおよび海底生産施設コストは差がな

い、また生産規模も同一とする。むろん、年産 120 万 t 規模の陸上 LNG 基地を建設することは一般的

ではないため、本検討は、あくまで、仮想の比較を行ったものである。

図 32 PFLNG1 vs 陸上 LNG

表 19 ケーススタディーにおける 前提条件

可採埋蔵量 1.1Tcf

生産レート 210MMscfd(1.1mtpa 相当)

CGR(コンデンセ

ートガス比)

12bbl/MMscfd

CO2 10%

水深 100m

陸上案では水深が 100mということもあり、着底式ジャケット構造を設置し気液分離後、ガスおよび原

油を Pipeline 品質まで処理し(CO2 4%想定)、その後 20 インチパイプランでガスおよび原油ともに昇圧

後陸送する。パイプラインの距離は 180 ㎞を想定する。その後陸上 LNG 基地で液化および出荷を行

う想定とする。また、PFLNG1の Capex は各種報道情報により、陸上案については JOGMEC 試算によ

るが、陸上案のみ Contingency として 40%を加味している。

井戸、Subsea(海底生産施設)を除いた部分の Capex 試算結果を図 32 に示す。

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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれる

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関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いませ

ん。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

図 33 FLNG、陸上 LNG 比較 試算結果

試算結果としては、FLNG の方が陸上案より高価となった。陸上案では上記のように年産 120 万 t の

陸上 LNG プラントがどの程度の価格で建造できるかのデータが不足しているため LNG 年間生産量ト

ン※当たり 1,000 ドルと仮定した数値である。現在の LNG 建設市場相場で言えば例えば米国でこれ

から FID を目論む陸上 LNG プラントの EPC 費用は各種プロジェクトの公表値によれば軒並みトン当

たり 500 ドルを狙っていることを考えればトン当たり 1,000 ドルというのは高めの設定である。

※tonne per annum、仮に 10mtpa のプラント EPC 価格が$5bln でトン当たり 500 ドルとなる。。

一方で、今回の想定では可採埋蔵量は双方案ともに 1.1tcf を想定しているが、PFLNG1は上記のよ

うに同一ガス田から Pipeline で陸送するとともにその直上に FLNG を設置する特殊な配置である。つま

り 1.1tcf すべてを FLNG にて生産するわけではない。(注:1.1tcf を年産 120 万 t で生産すると生産プ

ラトー期間は約 20 年)

したがって、もし 15 年程度しか PFLNG1で生産しない場合などは FLNG の耐用年数(設計寿命)が

25 年程度であることから、転用可能となり施設のもつ残存価値を考慮に入れることができる。陸上 LNG

プラントの場合は近傍にタイインできるガス田がある場合を除いてはリロケーションできないことを考え

れば、場合によっては 25 年間の全生産期間でみればこの Capex の差はその生涯収入によって逆転

する可能性があるものであること、まさにそれこそがFLNGの持つモビリティ(転用可能性)であるとも評

価できる。

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(8) FLNG の米国 LNG に対する競争力

次に、他の LNG プロジェクト特に今後 FID が予見されまた、市場のペースセッターとしてベンチマ

ークとなることが予想される米国 LNG プロジェクトに対して FLNG の価格競争力がどの程度であるの

かについて考察を加える。下記の図 34 が FLNG の Capex 比較である。Golar 社による FLNG はトン

当たり(正確には Tonne per annum 当たり)600 ドルであり他の FLNG に比べて非常に競争力があるこ

とが分かる。

図 34 FLNG capex 比較

トン当たり 600 ドルの FLNG であると仮定したうえで、それらを米国で計画されている LNG プロジェ

クトとの比較を図 34 に示す。米国 LNG の LNG FOB 価格はプラントコスト分として 3$/MMBtu(プラン

ト Capex 500 ドル/t 相当)に、原料となるガス料金、自家消費、Opex に相当する 115%HH 価格の合

計として値付けされ、FOB 価格で約 6.5 ドル程度である(HH 価格として 3 ドル想定)。一方、トン当たり

600 ドルで建造した FLNG を投入した場合は液化コストとして 3.45 ドル程度となる。つまり米国 LNG に

対抗するためには上流としての井戸、海底生産施設、Opex、自家消費(Integrated 型 FLNG の場合、

自家消費の影響は極めて軽微)に使用できるコスト分が図 35 に示すポーションとなる。つまり、FLNG

の Capex がトン当たり 600 ドルからさらに上昇すると(例えば倍)、それだけで FOB6.5 ドル超となり米

国 LNG に対して価格競争力を失うことが分かる。むろん、実際の LNG 市場で契約される LNG 販売価

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格は輸送費の影響もあること、また上流コストもフィールドごとに差異があるためあくまでも目安としてご

覧いただきたいが、これまで FID された FLNG の中で米国 LNG に対して競争力を持ちうるのは Golar

社のモデルのような価格帯であることが理解いただければと思う。

図 35 米国 LNG と FLNG のコスト比較

(9) FLNG の適用可能なガス田、開発余地

FLNG が適用できそうな既発見未開発ガス田を使用して集計した。条件は①ファイナンスおよび

LNG 販売契約を考慮し最低操業期間 10 年~Offshore での一般的な設計寿命としての 25 年を最長

操業期間、②陸上での一般的な LNG プラント 1 系列が年産 400 万 t であることを考慮し上記 2 条件

から可採埋蔵量を計算したところ 0.5~5.0tcf が FLNG の適用できる既発見未開発ガス田であると仮定

した。

結果として全 Offshore 海域における既発見未開発ガス田(開発移行しているものあるいは開発計画

があるもの等は除き、Stranded 化しているものを抽出)を集計したところ、その数は合計 240 フィールド

で約 325Tcf であった。これは BP 統計 2016 による世界のガス確認埋蔵量 6,589tcf の約 4~5%に相

当する。考察としては FLNG を現時点で適用したとしても確認埋蔵量の増加は数%程度にとどまること

を意味する。むろん、世界で消費されているガスのうち約 10%のみが LNG 化されていることを考えれ

ば LNG に充てられるガス確認埋蔵量に対する増加インパクトは上記よりは多くなるとは言えるものの、

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さりとて 2000 年代初頭、シェール革命以前に期待されていた時ほどの Game Changer としての役割を

満たすほどの規模ではなく、FLNG の適用が LNG 供給全体に果たす役割はマージナルであると言え

よう。

図 36 0.5~5Tcf の既発見未開発ガス田

世界中でのそれらガス田の分布を図 35 に示す。豪州海域にその太宗が存在すること、また東南ア

ジアや東西アフリカにも分布していることが分かる。なお実際に FLNG を適用する場合は海気象条件

によるスクリーニングをさらに付加することが必要である。

(10) FLNG のビジネスモデルの変化

図 36 にこれまで紹介した FLNG プロジェクトのビジネスモデル類型を示す。

① IOC 型

Shell Prelude や PFLNG1などに代表されるように上流権益保持会社が井戸および海底生産

施設を整備するとともに FLNG も自社保有する古典的なモデル。上流と液化施設が Integrate さ

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れ LNG プロジェクトにおいてはこれまで一般的であったビジネスモデルである。

② IOC による自社リース型

Coral および PFLNG2 が相当するモデルで、上流権益を保持している会社(あるいは JV)が

FLNG を所有し操業するものの、自社リースの形をとる。税制面等での考慮から採用しているビ

ジネスモデルであるものの、基本的には IOC 型と同様である。

③ Tolling 型

Golar カメルーン FLNG に代表されるように、上流権益を保持しているいわゆる石油会社が

第 3 者保有の FLNG を利用して開発するモデルである。操業も FLNG を所有する船主に委託

する。Time Charter Party を Day レートで契約するリース契約の場合もあれば、液化した

MMBTU あたりで支払いをうける Tolling 契約もあるが、ここではそれらをまとめて Tolling 型と称

する。Crude FPSO でよくあるモデルである。

米国 Delfin FLNG ではそもそも米国型 LNG 開発であるため原料ガスは Pipeline グリッドから

購入するため上流とは分離されている。液化基地だけを見た場合、Project スポンサーである

Delfin が Golar から FLNG を傭船し、操業も委託するという意味での Tolling となる。

④ 権益 Farm out & Tolling 型

上記 Tolling 型がさらに発展し FLNG を所有する船主が上流権益の一部も保有するモデル

で FID が近いと言われている赤道ギニア FLNG で適用されているモデルである。上流権益を

保有する Ophir 社から FLNG を提供する Golar とシュランベルジェの JV である One Subsea が

権益を譲り受けている。このモデルの場合、FLNG の船主は上流権益者としての利益を享受す

るとともに、FLNG 船主としての Tolling フィー(リースフィー)を享受することとなる。またシュラン

ベルジェも同様に上流権益からの利益を享受するとともに、自社と資本関係にある会社の機器

等の販売につなげることができる。上流権益を有する石油会社の金融体力および技術力が不

足している場合に成立するモデルであると考えられるが、FLNGによる開発の場合は、FLNG技

術が開発全体に占める価値(Capex および技術的重要性)が極めて高くなるため、それを保有

している会社(即ち船主)が FLNG を梃に上流権益を保持しているとみることができる。このよう

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なモデルが成立するのも FLNG の一つの特殊性であると言えよう。

図 37 FLNG ビジネスモデル

(11) 中国の FLNG への関与

これまで紹介してきた FLNGプロジェクトの中で、特にアフリカのプロジェクトについては中国企業が

金融面からの関与に始まり、場合によっては FLNG の建造に至るまで影響力を与えている。

・ CSSC(China State Shipping Corp)は Golar Cameroon 向けに 960 百万ドル融資

・ 赤道ギニア FLNG (Ophir)への中国銀行団による融資 1,200 百万ドルの予定。

・ Exmar FLNG は中国 Wison 造船所で建造。Bank of China と Sinosure が 200 百万ドル融資、保

険付与。

・ Coral FLNG に、CNPC が出資。

・ Newage(アフリカに特化した E&P 会社、元マラソンオイル役員が設立)によるコンゴ、カメルーン

での小型FLNG投入計画。中国銀行団によるFinance、Topside建造はCOOEC、HullはCSSC。

LNG 購入も中国系 Utility が担う計画。

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・ 中国はアフリカの複数の FLNG に計7,000 百万ドルの資金投入(Reuters 2017/6/27 記事)

・ 中国企業 Plly-GCL 社はエチオピアからの FLNG よる LNG の中国への輸出を計画。

中国企業および政府は一体一路政策のもとアフリカを含む全世界への経済的影響力を強化しようと

していることは知られていることであるが、FLNG プロジェクトに関する特殊性として上流権益に参画す

ることによる利益および LNG の調達のみならず、中国自国内への供給、さらには FLNG の建造自体も

中国国内ヤード・造船所を利用し中国国内への経済波及効果を狙っているといえよう。中国では「国

船国造(国輪国造)」政策として中国に輸入する製品を運搬する船舶は中国で建造するという政策を通

じて造船・海洋産業を育成していることはよく知られている。同様な考え方による政策が現下の LNG 供

給過多の状況下、LNG を購入する余地のある自国内市場の強みを活かし、他の金融機関がともすれ

ば技術的リスクあるいはプロジェクト遂行上のリスク(コスト・スケジュール増加)に対して躊躇しがちな

FLNG に対して金融支援を与え、同時に海洋産業の観点から「国船国造(国輪国造)」政策を遂行して

いると言えよう。

(12) FLNG/FSRU に関する国際基準制定の動き

ISO(国際標準化機構)には上流部分を主に扱う TC67 Materials, equipment and offshore structures

for petroleum, petrochemical and natural gas industries という TC(Technical Committee)が存在する。そ

の中の一つの SC9(Sub Committee)の Working Group7 が Offshore Installations for LNG production or

regasification に関する基準、つまり FLNG と FSRU に関する ISO 基準を制定することになっている。現

在の計画は下記の3つの基準を 2019 年~20 年にかけて策定すべくドラフト作業が進んでいる。なお

主導しているのはフランス Engie 社であり、Total、フランス船級協会、GTT、Tecnip-FMC 等フランス勢

が積極的に関与してドラフトを作成中である。

ISO 20257 consists of the following parts, under the general title Installation and equipment for

liquefied natural gas — Design of floating LNG installations:

Part 1 : General Requirements for Floating LNG installations (FSRU/FLNG 共通の要求)

Part 2 : Specific Requirements for FSRU (Floating Storage and Regasification Unit) (FSRU 特有

の要求)

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Part 3 : Specific Requirements for FLNG (Floating Liquefied Natural Gas Facilities) (FLNG 特有

の要求)

FLNG や FSRU に関する国際的な基準というものは、現在は存在せず各船級協会が IMO ルールに

準拠する形で船級ルールを定めているのが実情である。

(13) FLNG の課題

以下に FLNG の課題を纏める。

① 規模の経済が発揮できていないこと

FLNG においては規模の経済を発揮できるほど設計製作技術が熟成されているとはいいがた

い。コスト低減が必須であり、先述のように規模を追求した FLNG は軒並み頓挫しているのが現実

である。例えば、Exxon Scarborough 600 万 t、Woodside Browse 400 万 t×3基など。

Browse プロジェクトは当初 Shell 型 FLNG による開発を志向していたが、2016 年開発凍結を宣

言した。その直後のオペレーターWoodside 社 CEO の下記の発言がその事実を物語っている。

”We don’t need to build the latest long-range passenger aircraft or spaceships to Mars.”

Woodside CEO 2016Apr。

② Shale 以降の相対的な競争力の低下、あるいは競争激化

米国 Shale による豊富なガス資産および多様な Player の出現、カタールの増産モラトリアム

解除、豪州、ロシア等での低価格な Backfill(既存 LNG プラントへのつなぎ込み)、増設計画等

を考慮すれば FLNG によって Stranded ガスを開発するという 2000 年代初頭のコンセプト自体

の魅力、あるいは競争力は相対的に低下してきているのが事実といえよう。

③ 産油国によっては地元での雇用効果が減少すること

産油国、特に中程度に発展した途上国では、自国内雇用は政治課題であり、FLNG の場合

Capex の支出場所の多くは当該産油国ではなく、海外(造船所)となることから開発コンセプトと

して好まれないリスクが存在する。一方でアフリカに代表される低所得途上国では石油ガス産

業そのものが未発達であることから自国内経済波及効果よりも LNG 販売による税収(またそれ

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による社会公共投資を通じた所得再分配)が優先する。当該産油国政府がその様に判断する

場合は FLNG のメリットが産油国目線のビジネスケースとして成立する。そのケースを成立させ

たのが中古船改造型の Golar による FLNG であり短納期、低コストを売りにアフリカ諸国を中心

に躍進しそうな勢いである。またリース型ビジネスによるファイナンス負担がないこと、既存イン

フラが周辺に存在しない箇所へ適用することでそうした信用力の低い産油国との間での Win-

Win を成立させるビジネスモデルであると言えよう。

④ IOC から船会社へ

課題ということではないが、成立している FLNG を見ると IOC による所有モデルから船会

社によるTolling(リ―ス)モデルに移行してきている。Crude FPSO の歴史をひも解けば 1977

年世界初FPSOがShell Castellonで実現し、その後、SBM社が世界初のリースFPSO、Cadlao

を 1981 年実現した。その後今日に至るまで SBM 社に代表されるようないわゆる FPSO 会社

による FPSO の保有およびリースのビジネスモデルが IOC による FPSO の所有よりも数が多

い。FLNG においても油田開発における FPSO で起きた IOC 所有モデルからリースへの流

れが FLNG の世界ではより迅速に出現していると言えよう。

(14) FLNG まとめ

以下に本論のまとめを示す。

・ FLNG の実績は出始めている。PFLNG1(2017 年生産開始)、Prelude(2018 年予定)、Golar

Cameroon(2018 年予定)

・ 規模の追求はコストダウンにはつながっていない…今のところ

・ 将来の陸上大型 LNG 基地への第一段階として、早期キャッシュを生む FLNG の適用可能性が

ある。

・ IOC 型から船会社など多様な Player による「リース」または「リース+上流権益」などのビジネスモ

デルへと変化のきざしが見られる。

・ 現時点の FLNG 市場規模については、保険付保は可能。

・ 中国のアフリカ FLNG への積極的関与がある。権益、Finance、EPC を通じた経済波及効果を

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追求している。

・ Offshore のガス資源量自体はあるものの、米国 、カタール等の計画段階のプロジェクトに比べ

て相対的な競争力は低下。LNG の契約も短期化、価格低下傾向の中、ますます競争が激しく

なっている。

では本論のタイトルに立ち返って、今後の FLNG の可能性は如何に?と問われれば、Shale 革命以

前に期待されていたほど Game Changer として広く適用されることはないだろうと予想されるものの、今

後は Niche な市場(信用力の低い産油国、石油ガス産業やインフラが未整備な産油国)で適用される

ケースは存在すると予想される。

以上