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験震時報t 第41巻(1971) 31 ~48 頁
31
1975年 6月 10日北海道東方沖地震の調査報告*
札 幌管 区気象台林
~1. はじめに
1975年 6月10日22時47分頃,ゴ七海道東方沖に地震が発
生し,各地の震度は,根室,釧路,網走,浦河で Iであ
った.札幌管区気象台は,地震の規模を 7よりやや小
(6.8"-'6.9)と推定し,被害津波を伴う地震とは判断せず
津波警報を発表しなかった.しがし,現実には根室半島
i花咲港に高さ 95cmの津波が押し寄せ,ぞの後に津波
警報を発表するということになった.こり為に,社会的
にも関心を集め,津波予報をめぐる批判も多〈寄せられ,
技術的にも検討しなければならない問題も多かった.従
って,木報告では今後の検討材料となる点を中心にまと
めた.
地震課で決定した震源は下記の通りである***
震源時 6月10日22時47分07.4秒土1.1秒
震央 148013' E土06',42046' N :t 03'
深さ Okm
規模 (7.0)
なお,気象庁における規模決定は,通常,周期 5.0秒
以内の最大振幅を使用しているが, この地震ではi ほと
λJどの観測点で周期が 5.0秒をこえるため,周期12.0秒
以内の最大振幅を振動倍率で補正し,計算に使用してい
る.津波は,根室半島を始めとして,北海道・本州、!・回
国・九州の太宰洋沿岸,北海道のオホーツグ海沿岸にも
及んだが,被害は全くなかった.
~ 2. 地震の規模
Fig.1は, この地震について各観測点の最大振幅と震
央距離 (1000km以内〉との関係を示している.図の縦
軸は最大振幅で,地盤係数・振動倍率の補正をしていな
い.・印は周期 5.0秒以内 o印は 5;0秒をこえる資料
を示した.横軸は震央距離で, 500 km以内は北海道の,
* Sapporo District Meteorological Observatory : Report on the Earthquake Off E Coast of Hokkaido, June 10, 1975 (Receiv巴dJuly 10, 1976).
特石黒長蔵,梶田実(現稚内地方気象台),笹川巌, i青野政
明,横内恒雄.
料* 観測結果は気象庁地震月報昭和50年 6月号参照のこと.
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Fig. -1. 1975年 6月10日の本震の最大振幅主震央距
離との関係.
.:周期三5.0秒 0:周期>5.0秒
600km以上は主として東北地方の観測点の値である.
Fig.2は, 1975年6月14日03時08分頃の最大余震(震
源 147030'IE,42054' N, h=Okm, M=6.5)の最大
振幅と震央距離との関係を示した.この最大余震の震度
は,根室,長111路でII,網走,帯広,浦河,八戸で Iとな
り,本震と比較して震度・有感距離とも大きかったが,
津波は全く観測されなかった.
Fig.lと Fig.2とを比較Lてみると,最大振幅でも
みかけの規模でもほとんど同程度である. しかし,前者
に津波があり後者に津波がなかったことは,これらの地
震の場合に,津波予報の判断の主要素である最大振幅や
規模以外の要素を考えなければならないことを示唆して
いる. Fig.1 と Fig.2との顕著な相違は,本震の最大
振幅の周期が,最大余震と比較して著しく長く,ほとん
どが 8"-'16秒の範囲にある点である.ζのことから,長
周期の震動を持つ地震と, .津波とは,密接な関係を有す
ると推定することができる.じかし,津波予報への定量
- 31-
32 験震時‘報第 41巻第 1---2号
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Fig. ,2. 1975年 6月14日の最大余震の最大振幅と震
央距離との関係
.:周期豆5.0秒 0:周期>5.0秒
的応用となると,測器・調査研究のいず
多い.
なお,本震の規模は, ~ 1にふれたように現在の気象
庁の方法では旭川の最大振幅しか使用できず, この 1点
だけからでは M=6.0とな,り,資料の数,値のいず
みても適当なものとならない.従って,気象庁地震課で
は,‘相当数の資料を生かす為に周期12.0秒以内の最大振
幅を振動倍率で補正して規模を決定する方法をとり, M
=7.0と決定した.しかし,周期12.0秒以上の資料を加
える'と地震の規模はさらに大きくなるという点,過去の
津波を伴った地震の規模と同列には比較できない点など
、の問題があろう.長宗・中礼(1975)は,本震の地震波
から数十秒~数百秒の長周期の波をとり出し,過去の地
震と比較して M= 6'. '9---7. 1と推定し, 己の地域で地震
の震源、が海溝に近いほど津波が大きくなり易いことを指
摘している.
~ 3. 発震機構
本震および6月14日03時08分ごろの最大余震の発震機
構を,気象庁の観測結果と USGS のデータ報告から調
ー査した.
本震のP波初動は日本と向、憾に世界各地のそれも不明
りょう、らしく,得られた結果は82に過ぎず, しかも混乱
、していて妥当な節線を引くことは出来なかった.この
tことは,本地震の特異性を示唆するものであって,長周
期地震計記録のS波や表面波に基づくメカニズムの研究
が望まれる.
一方,、最大余震に対しては,世界各地から 160以上の
P波'押し引きが報告されている.これから次のどうな発
震機構が推定できるi
走向 dip
節面A 、 N270E
// B N840W
方向
圧力 N340W
張力 N730E
断層型 逆断層
700
450
軸の傾き
750
420
なお,とのメカニズムは, この付近に発生した地震の
メカニズムの平均的な状態とよく調和している (Ichi.
kawa, ,1971).
~ 4. 余震活動
Fig. 3は,根室の 67型磁気テープ式地震計によって
観測された余震活動で,本震発生後 1ヶ月間の日毎の余
震数の変化を示した.余震数は 6月14日の最大余震,
6月231=1の余震〈λ1=6.0)の直後にピークを示しなが
ら減衰し 7月下旬には少なくなっている.
Fig.4は本震が発生してから 6月末日まで,、気象庁
で決定じた余震の震央分布図である.図中@印は本震,
O印は M:26.0 の余震を表わしている破線で示され
、た余震域は,長径 130km,短径 75kmの楕円で,面積
は 7.7'x 103 km2 となる.UTSU(1969)により求められ
た地震規模と余震域の面積との関係からみると,今回の
地震規模を 7.0としてこの面積は平均的値の約4倍と大
〆/
lune 、
Fig. 3 日毎の余震数の変化
一 32ー
1975年6月10日北海道東方沖地震の調査報告一一札幌管区気象台 33
44'N 十
4'3" 十
42。
Fig.4. 本震および余震の震央分布図
④本'震,0:Mミ6.0,の余震
L:N
-. 10 • • •
4.0 5.0-6.o~ M~方-
Fig., 5. 余震の規模別累積頻度分布
(・): ':本震
6,0
(t
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65 ↓』62
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/ .
〉、
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Fig.6.,日単位の余震の度数分布
きい.
本震発生後 6月末まで,気象庁で規模を決定した地震,
十
は93個あり,'Fig.5は地震の規模と累積度数との関係を
1 示している.この余震活動で、も ,M'24.6で Gutenberg-
Richterの式
log (~N)=α-bM
を適用で、き, b=Q.88となり,通常の余震の値と変りは'
ない.
Fig.6は,縦軸に日単位に換算じた地震数,横軸に本
震発生後の日数をとっているが,これは改良大森公式
N(t)=一一主二一,(A, p, C は常数),(t十c)p
で近似できるはず、である.しかし,今回の地震では最大
余震がこの関係'をかなり乱しているので, この部分を除
いて平沼イlニすれぼ Pキ0.85 となる. この値は,過去の
地震の例 (0.9----1.'5).,と比較してやや小さい.
十
S 5. ,~章波
F本震による津波は"Tab.l に各地の観測l結果を示し
たように,日本の太平洋沿岸一帯,伊豆・小笠原諸島,
北海道オホーツク海沿岸という広い範囲で観測された.
又, Tab. 1 の他に,尾鷲,浦神,舞阪" i由津の各検潮
所でも津波とみられる潮位変化が観測されている Fig.
7は,根室測候所、の現地調査による根室半島周辺の津波
の状況である.花咲港以外で津波が大きかった所は,落
石港で高さ 80clI1程度,最高水位は23時45分頃であっ
た.羽鳥 (1975)によると,津波の規模階級は1.5と見
積られ, 1973年 6月17日の根室半島沖地震 (M=7:4)
による津波と同程度となる.
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01Okm
…Pen. 72(ー}
fヤド(30ケ3(20)J)、
むよ(ー)Fig.7. 根室半島周辺の津波の高さ(根室測候所)"
1.温根元 2.納沙布 3. 語稽璃 4~: 歯舞5.沖根婦 6.'友知 7.花咲 8.長節
9. 昆布盛 10:落石
( )内は津波の高さ(単位 cm)
- 33ー
34 験震時報第 41巻、第 1----2号
Tab. 1.津波観 t 測表.
第 1i皮(初動〉 | 津波の高さの最大 最大波高 言己 事検潮所'¥
言 Z走時出品zfJ主凶器員高さ 周 期 | 言 雪 波 高 周 期,所 属
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イじ 咲 23 '29 42 23 34 +81 23 54 95、 8 2354 182 8 メメー~ 象 庁
釘!I 路 23 36 49 23 43 + 7 03 .31 13 31 03 31 22 31 ノメーUー 象 庁
十勝港 23 45 58 23 51 +27 23 51 32 10 04 03 49 13 北海道開発局
, i甫 河 ←ー* 02 56 38 12 02 56 67 12 海上保安庁
室 蘭 一一* 03 .33 3 15 03 33 5 15 北海道開発局
芹升木て 一一一ー ー一一 、 一一* 05 40 '4 10 06 02 7 12 北海道開発局
網 走 00 30 103 00 34 +10 01 56 16 4 01 56 24 4 メメ(¥,ー 象 庁
平住 内、 02 08 201 02 11-' + 1 03 (05 2 6' 02' 28 3 5 気 象 庁
)¥. 戸 00 .06 79 00 10 +14 00 21' 22 9 00 36 32 7 メメ<¥,ー 象 11' r凸』一・ 古 2342 55 23 58 +19 23 58 19 10 01 41 23 12 メE アL 象 庁
大船渡 23 55 68 00 00 ¥+12 08 26 18 5 08 55 33 5 メ5<( 象 庁
東占 ) 11 00 12 85 00 17 +12 02 20 14 7 0211 23 9 気・象
小‘名浜 00 .30 103 00. 33 + 5 02 33 13 15 10 26 31 15 メメ=ァL 象 庁
八重根 00' 51 124 06 30 18 5 、気 象 庁
神津港 00 36? 109 03 57 10 5 04 00 14 6 海上保安庁
三宅島 00 40? 113 0737、20 5 07 37 38 5 海上保安庁
父 島 0110 143, 01 16 十 4 01 49 22 20 . 01 .49 50 20 気 象 庁
土佐清水 02 30? 223 05 05 10 5 08 01 17 4 メメ(¥,・ 象 庁
*潮汐の副振動のため'津波のはじまり時刻は不明
Tab. 1 で,比較的明瞭な第 1波を持つ観測点から逆 いが, Fig.8から判断して波源域の南東側限界は,
2伝播図を用いて津波の波源域を推定した結果が, Fig. 8 147. 30E; 42. 70 N 付近であろう.しかし, これと余震
である.図の破線は Fig.4で、きめfこ余震域で、ある.日 域とは一致せずi 約 40kmのずれが生じている.この
本の太平洋沿岸の資料だけでは波源域全体を推定できな ずれは,逆伝播図の誤差や震央の誤差などが関係してい
..44'N
4tN
1440
E 146-E 14S0
E
+ 十
寸
Fig. 8 逆伝播図の最終波面と余震域
1.花咲 2. 釧路 3.広尾(十勝港〉
4. 八戸 5,父島
ると思わ~0 る.
~ 6. 過去の津波について
Tab.2は 1952年から 1975年までに北海道東方海域
で発生した津波地震で、ある.地震の規模別にみると,M
が 6.3で津波を伴うものもあれば 7.1で伴わないものも
ある.震源が 90km以浅の,Mが 6.3以上の地震で,
津波かなかったものは21個あった(注〉が" M~ど.7.2 の
地震は大きさはともかく津波を伴っている.これらの中
で,今回の地震と良く似た地震は, 1963年10月20日のエ
ト円フ沖地震ゼ,規模の割には津波が大きく,地震波の
最大振幅の周期も12秒前後の観測点が多かった.
- 34-
日本周辺海域に発生した,震源が90km以浅の地震(注〉
(注) 但し, 1952~1960年の,深さ 70~90km の地震は,資
料として久よっていない.
1975年6月10日北海道東方沖地震の調査報告一一札幌管区気象台 35
Tab.2. 北海道東方海域における津波を伴った地震(1952""""'1975年〉
年 月日 l時分 l場 所 l緯度(N)経度∞深さ(km)/'M / 津波の高さ
1958 11 7 07. 58 エトロフ島付近 44.3 148.5 80 8""""'8弘 3m(エトロフ), 1.1m(霧多布〉
1961 2 13 ノ06 53 北海道東方沖 43.2 147.9 80 6.6 6cm (花咲〉
8 12、00 51 根室半島南東沖 42.9 145..6 80 7.2 7 cm (花咲〉
11 15 16 17 根室半島南東沖 42. 7 145.6 60 6.9 7 cm (花咲〉
ノ 1963 10.12 2026 エトロフ島付近 44.9 148.9 O 6.3 3 cm (エトロプ〉
10 13 14 17 エトロフ沖 43.8 150.0 20 8.1
481Ec4724m 1m51cC5(mm (mマウt〔ツル(気八ウア仙戸ッル〉プ沼ク〕4), プcm〕, (花咲〕10 20 09 53' エトロフ沖 44. 1 150. 1 O 6. 7
1964 7 24 17 14 千島中部東方沖 45,8 153.4 20 6.4
1965 6 11 12 34 北海道東方沖 43.'7 148.8 O 6.4 5cm (広尾〉
1968 1 29 19 19 根室半島南東沖 43.2 147.0 30 6.9 13cm (花咲〉
1969 8 12 06 28 北海道東方沖、 42.-6 147~6 30 7.8 129 cm (花咲〉
1973 6 17 12 55 根室半島南東沖 43.Q 146.0 40 7.4 2.8 m (花咲〉
6 24 11 43 根室半島南東沖 43.0 146.8 30 7.1 64 cm (花咲〉
1974 9 27 14 47 根室半島南東沖 , 42.8 146. 7 30 6.6 22cm (花咲〉
1975 6 10 22 47 北海道東方沖 42.8 148.2 O (7.0) 95cm (花咲〉
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6.0 M
~ig. 9. 日本周辺海域における地震規模と津波の高さ(1952,.......,1975年).
e:北海道東方海域 0:沖縄海域 0:他海域 (・):今回の本震
の規模と津波の高さとの関係は, Fig.9に示したようにー 同じ M'に対して津波の高さは 1,.......,2桁のパラツキを有
明らかな相関を持っている.従って,津波の量的予報に 'し,特に北海道東方海域がノミラツキを有し,特に北海道
とり地震の規模を決定する ζ とは重要である.しかし, 東方海域がパラツキを大きく司している(沖縄海域も同傾
-'35→
36 験 E堅持報第 41巻 r 第 1----2号
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Fig. 10.本震と 1963年10月20日のエトロフ沖地震との
最大振幅の比較.
0: 1975年6月10日.:1963年10月20日1.根室 2.〆網走 3. 帯広 4. 八戸
5. 函館 6. 大船渡 7.仙台 8. 福島
9.小名浜 10.水戸、
lていない.これから判断して,今回の地震は1963年の地ノ
震より M で 0.3程度小きいといえる.従って, 1963年
の地震 CM=6.7)と比較する限り,今回の地震は M二
6.5程度に算定される.このことは, Fig.9のような調
査をする場合,今回の地震を M=7.0と決めるならば,
他の地震も同じ方法で、 M を決め直して比較する必要が、
あることを示唆している.
なお,過去の北海道周辺海域で,地震の規模lと比較し
て津波が大きいと思われる地震は,.Tab. 3 の通りであ
る.ただし,古い地震の M は検討し直す必要もあるよ
jうで, 1803年の色丹沖地震は理科年表(1976)むよると、
M>7.5と推定されている. 1940'年の神威岬沖地震は,
札l院・仙台・名古屋・神戸・福岡の最大振幅を選び,
'M=1. 7310g s+log A-O: 83
、を用し!、て平均を求めると M三 7.6になる、今回の地震
や津波を調査じ,‘津波予報に役立てるために,過去の参
考にすべき地震も幾つかあるが,地震の規模などを改め
て調査することも必要であろう.
~ 7~ むすび
今回の地震は幸いに被害は全くなかった」しがし,‘港
湾によっては高さ 1m程度でも小被害はありうるし,今
向をもっ).そのために,この海域では津波の量的予報が ,回の地震まりやや大きいものがもっと北海道近くで発生'
他海域と違った困難な要素を持っと言えよう.その原因内 した場合,津波の被害も大きくなると思わすもる.
は,この海域の地震の震源や規模の誤差が大きくなるこ 北海道東方海域の地震は,観測点の分布からみて,震
と,発震機構の特徴などを考えることができょう. 源要素や規模の誤差が大きくなり易い.その為に, M三二
Fig.9の(・〉印は今回の地震であるが,この図から 7. 1程度の地震に対する津波予報Fは他の海域と違った難
みて M の割に津波が特に大きいようにはみえないが しさを持っている.また,長周期地震波を津波予報陀
他の地震と M の決定方法が違っているので同列には論・ ー利用する問題は地震計など測器から改善する必要もあろ
じられな川、今回の地震と1963年10月20日のエトロフ沖
地震とを比較するために,観測点毎に両地震の最大振幅
の周期差が土50パーセント以内のものを選び,長周期の
資料を生かしたものが Fig.10である.図中, 0印が今
回の地震の最大振幅,.・印が1963年10月20日のエト戸フ
沖地震の最大振幅で,地盤係数,振動倍率の補正はされ
う.しかし,現用の地震計から得られる資料によって
も,津波予報に定量的議論ができるよ、うな調査研究が急
カ;v...る.
おわりに,本調査報告を出すに当って御協力いただい
'た北海道大学理学部地球物理学教室,気象庁地震課の関
係者に厚くお礼申し上げる.
Tab.3
年月日 l場 所 M 津波の高さ
1893 6 4 色丹島沖e 6~6 2.5m (色丹〉
1940 8 2 神威岬沖 7.0 約 3m(利尻島〉
1947 11 4 留崩沖 7.0 2m (利尻島〉
1956 3 6 北海道北東沖1 5.8 20cm(網fジ走エ〉1971 9 6 サハリン南西沖 6.9 約 1m( ブニノ〉
- 36-
1975年 6月10日北海道東方沖地震の調査報告一一札幌管区気象台
参考文献
羽鳥徳太郎 (1975): 1973年根室半島沖津波とその後の津波活
動地震, 28; 461~4 71. 、Ichikawa, M.. (1971) : R巴analysesof Mechanisms of Earth-
quakes which Occurred in and .near Japan and Statistical
Studies on the, Nodal Plane Solutions Obtained, 1926~ 1968, Geophys. Mag., 35, 207~274.
長宗留男・中礼正明 (1975): 1975年 6月10日の北海道東方沖の
地震の大きさと津波の規模験震時報, 40, 105':'-'107. UTSU, T. (1969): Aftershocks and EarthquakeStatistics
(1); J. Fac. Sci. Hokkaido Univ.,Ser. VII, 3, 129~195.
資料
( 1 ) 地震記録集
記録を収集した地震は次のこつで、ある.
1975年 6月10日22時47分
1975年 6月14日03時08分
強震計記録
V=l, To=(H: 6記 c.,Z: 5 sec.), v=8
54型普通地震計記録
V与50,To=2 sec., v=8
59型直視式電磁地震計記録
V =100, To=5 sec.,-hキ0.55
'61型直視式電磁地震計記録
V =200, To=10 sec., h与0.55
(2 ) 津波記録集
1975年 6月10""""11日
~ 37 -.-
37
38
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