条件付きの極値問題 その3 lagrange の未定乗数法 -...

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Revised at 08:09, November 13, 2020 解析学B 5 1 5 条件付きの極値問題 その3 Lagrange の未定乗数法 5.1 Lagrange の未定乗数法 条件付きの極値問題に於ける候補点(1階微分が0になる点に相当)の条件式は多変 数の場合に gradient の平行と云う形で拡張されることを見ました。 普通、2つのヴェクターが平行と云う事を『一方が他方の定数倍である』と云う風に 解釈して次の様に方程式化します: 定理 5.1 [ Lagrange の未定乗数法 ] 条件 G(x 1 ,...,x n )=0 のもとで F (x 1 ,...,x n ) が極値をとる可能性があるのは次の2種類の点のみです: iG =0 となる点で gradG = であるもの(特異点) iiG =0 となる点で gradF = p gradG となる様な実数 p が存在するもの 本当は (ii) に『特異でない点で』の一言を入れても良いのでしょうが、そこを気にし ながら連立方程式を解くのも面倒なので、削ってあります。従って (i)(ii) の双方に属 する点もあり得ます。 また、ヴェクターの平行条件をこの様に『定数倍』で解釈する場合ゼロヴェクター がネックになります。つまり、 ( 1 1 ) ( 0 0 ) は便宜上平行であると考えられ、確かに ( 0 0 ) ( 1 1 ) の定数倍になっています(0倍ですね)が、 ( 1 1 ) ( 0 0 ) の定数倍では書 けないのです。次のセクションでこれを注意しましょう。 5.2 gradF = p gradG か、gradG = p gradF 2つのヴェクターが平行である事を (ii) の式で gradF = p gradG としたわけですが、 これを gradG = p gradF としてはいけないのでしょうか? G(x, y)=(x - 2) 2 x - y 2 ,F (x, y)= x 2 + y 2 の場合で具体的に見てみましょう。 まず gradF = p gradG, G =0 の連立方程式は 2x = p(3x 2 - 8x + 4) ··· (1) 2y = -2py ··· (2) (x - 2) 2 x - y 2 =0 ··· (3) となり、(2) から y(p + 1) = 0 なので場合分けをします。 まず y =0 の時は、(3) から x =0, 2 であり、(1) によれば x =0 のとき p =0 となっ て解になりますが、x =2 のときは 4=0 となってしまい解ではありません。 一方 y ̸=0 の時は p = -1 ですから (1) に代入して 0=3x 2 - 6x + 4 = 3(x - 1) 2 +1 > 0 が得られ、このケースは解は存在しません。従って解は (x, y) = (0, 0) のみです。 一方、gradG = p gradF を具体的に書くと 3x 2 - 8x +4=2px ··· (4) -2y =2py ··· (5) であり、今見た解 (0, 0) は明らかに (4) を満たしません。 この様にどちらを選択するかで極値の候補点が違ってきます。どちらが正しいので しょうか? それはもちろん前者です。実際 F (x, y) の形から言って原点で最小値であ ることは自明であり、条件付きの極小値にもなっている筈ですからね。 なぜこの違いが生まれてしまったかと言うと、まず前者では gradF = となる点を 全て含んでいましたが、後者では gradF = だと自動的に左辺も gradG = になって しまい、gradF = かつ gradG ̸= である点を逃してしまっています。で、そのよう な点で極値をとる場合もありますから後者では駄目だと云う事なのです。 以上のような事情から、(i) を『gradG = または gradF = となる点』とするので あれば、(ii) gradF = p gradG でも、gradG = p gradF でもどちらでも構いません。 定理 5.2 [ Lagrange の未定乗数法・対称 Ver. ] 条件 G(x 1 ,...,x n )=0 のもとで F (x 1 ,...,x n ) が極値をとる可能性があるのは次の3種類の点のみです: iaG =0 となる点で gradG = であるもの ibG =0 となる点で gradF = であるもの iiG =0 となる点で gradF = p gradG となる様な実数 p が存在するもの

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Revised at 08:09, November 13, 2020 解析学B 第 5回 1

5 条件付きの極値問題 その3  Lagrangeの未定乗数法

5.1 Lagrangeの未定乗数法

条件付きの極値問題に於ける候補点(1階微分が0になる点に相当)の条件式は多変

数の場合に gradientの平行と云う形で拡張されることを見ました。

普通、2つのヴェクターが平行と云う事を『一方が他方の定数倍である』と云う風に

解釈して次の様に方程式化します:

定理 5.1 [ Lagrangeの未定乗数法 ] 条件G(x1, . . . , xn) = 0のもとでF (x1, . . . , xn)

が極値をとる可能性があるのは次の2種類の点のみです:

(i)G = 0となる点で gradG = o であるもの(特異点)

(ii)G = 0となる点で gradF = p gradGとなる様な実数 pが存在するもの

本当は (ii)に『特異でない点で』の一言を入れても良いのでしょうが、そこを気にし

ながら連立方程式を解くのも面倒なので、削ってあります。従って (i)、(ii)の双方に属

する点もあり得ます。

また、ヴェクターの平行条件をこの様に『定数倍』で解釈する場合ゼロヴェクター

がネックになります。つまり、

(1

1

)と

(0

0

)は便宜上平行であると考えられ、確かに(

0

0

)は

(1

1

)の定数倍になっています(0倍ですね)が、

(1

1

)は

(0

0

)の定数倍では書

けないのです。次のセクションでこれを注意しましょう。

5.2 gradF = p gradGか、gradG = p gradF か

2つのヴェクターが平行である事を (ii)の式で gradF = p gradG としたわけですが、

これを gradG = p gradF としてはいけないのでしょうか? G(x, y) = (x − 2)2x −y2, F (x, y) = x2 + y2 の場合で具体的に見てみましょう。

まず gradF = p gradG, G = 0の連立方程式は2x = p(3x2 − 8x+ 4) · · · (1)

2y = −2py · · · (2)

(x− 2)2x− y2 = 0 · · · (3)

となり、(2)から y(p+ 1) = 0なので場合分けをします。

まず y = 0の時は、(3)から x = 0, 2であり、(1)によれば x = 0のとき p = 0となっ

て解になりますが、x = 2のときは 4 = 0となってしまい解ではありません。

一方 y ̸= 0の時は p = −1ですから (1)に代入して

0 = 3x2 − 6x+ 4 = 3(x− 1)2 + 1 > 0

が得られ、このケースは解は存在しません。従って解は (x, y) = (0, 0)のみです。

一方、gradG = p gradF を具体的に書くと3x2 − 8x+ 4 = 2px · · · (4)

−2y = 2py · · · (5)

であり、今見た解 (0, 0)は明らかに (4)を満たしません。

この様にどちらを選択するかで極値の候補点が違ってきます。どちらが正しいので

しょうか? それはもちろん前者です。実際 F (x, y)の形から言って原点で最小値であ

ることは自明であり、条件付きの極小値にもなっている筈ですからね。

なぜこの違いが生まれてしまったかと言うと、まず前者では gradF = o となる点を

全て含んでいましたが、後者では gradF = oだと自動的に左辺も gradG = oになって

しまい、gradF = oかつ gradG ̸= o である点を逃してしまっています。で、そのよう

な点で極値をとる場合もありますから後者では駄目だと云う事なのです。

以上のような事情から、(i)を『gradG = oまたは gradF = oとなる点』とするので

あれば、(ii)は gradF = p gradGでも、gradG = p gradF でもどちらでも構いません。

定理 5.2 [ Lagrangeの未定乗数法・対称 Ver. ] 条件 G(x1, . . . , xn) = 0のもとで

F (x1, . . . , xn)が極値をとる可能性があるのは次の3種類の点のみです:

(ia)G = 0となる点で gradG = o であるもの

(ib)G = 0となる点で gradF = o であるもの

(ii)G = 0となる点で gradF = p gradGとなる様な実数 pが存在するもの

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例題 5.3 G(x, y) = x2

4 + y2 − 1 = 0と云う条件のもとでの関数 F (x, y) = xyの極

値の候補点リストを作って下さい。

Fx = y, Fy = x, Gx =x

2, Gy = 2y.

によれば、gradG(x, y) = oとなるのは明らかに原点のみですが、原点は条件G(x, y) = 0

を満たしません。よって曲線 G(x, y) = 0に特異点はありません。

【解答例その1  Lagrangeの定理を使う方法】

  gradF (x, y) = w gradG(x, y)に条件式 G(x, y) = 0を加え

た連立方程式(右式)を解くことになります。

 第2式を第1式に代入すれば y = yw2、すなわち y(1−w2) =

0となるので場合分けをしましょう。

y = x

2w

x = 2yw

x2

4 + y2 = 1

y = 0のとき:第2式から x = 0でもあり、これは第3式と矛盾します。

y ̸= 0のとき:このとき w = ±1であり、第1式と第2式は同じ式となりますから、

連立方程式は x = ±2y

x2

4 + y2 = 1

であって、これを解けば良い事になります。第1式を第2式に代入して 2y2 = 1、すな

わち y = ± 1√2が得られ、更に第1式に戻して x = ±

√2です(複号同順でない)。

以上により、関数 F (x, y) が条件 G(x, y) = 0 の下での極値をとる候補点は4点:(±√2,± 1√

2

)(複号同順でない)である事が分かりました。

【解答例その2  FxGy = FyGx による方法】

極値の候補点はG = 0を満たす点で FxGy = FyGxすなわち 2y2 = x2

2 を満たすもの

ですから、x2 = 4y2 を G = 0に代入すれば 2y2 = 1となって y = ± 1√2が得られます。

また x = ±2yですから求める点は4点:(±√2,± 1√

2

)(複号同順でない)です。

この様に、2変数の場合は Lagrangeの定理を使わない方が簡単な場合も多々あります。

5.3 最大値・最小値の存在

例題 5.3では極値の候補点までは求まっているわけですから、当然次にやらねばなら

ないことはこの候補点の中に本当に極値はあるのか、あるとすればそれは極大なのか、

極小なのかを判別することです。

もちろん2変数の問題であればローカルに1変数化して2階微分を計算すれば良いの

ですが、3変数以上の場合にも通用する方法も考えなければなりません。完全な解決策

ではありませんが、場合によっては有効な方法がありますのでそれを見て行きましょう。

まず地面に条件式の表す曲線G(x, y) = x2

4 + y2− 4 = 0を描いて下さい(楕円周です

ね)。そしてこの曲線の上に柱を立てて、ジェットコースターのコースを作ります。当

然ですが滑らかなコースにして下さい。ジャンプとかは無しですよ、怖いですからね。

で、1周コースを造った時に、当然ですがどこかに一番高いところがある筈です。

楕円周上のジェットコースター� 放物線上のジェットコースター�

どんどん登って行き�最高地点は存在しない�

どこかが必ず最高地点�

しかし例えば最初に地面に描いた曲線が放物線だったら、これは周回コースではあり

ませんから、端の方に(端はないですが)行くにつれてどんどん高くなって行く様に設

計することが出来、最高地点(同様に最低地点も)があるとは限りません。

この『楕円と放物線の違い』が重要です。更に言えば、一般に楕円周の様にぐるっと

1周つながっている曲線のことを閉曲線と言いますが、閉曲線上のジェットコースター

を考えても同じですから、

閉曲線上のジェットコースターには必ず最高点・最低点がある

と言って良いはずです。これをもう少し数学的に表現してみましょう。

 まずこのコースの各地点での高さは関数 F (x, y)で表

されるわけですが、コースは“つながっている”わけです

から、これは少なくとも連続関数にはなっている筈です。

実はここが重要で、もしも F (x, y)が連続関数でなければ

最大値・最小値は存在するとは限りません(右図参照)。不連続なジェットコースター�

最高地点はない�

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Revised at 08:09, November 13, 2020 解析学B 第 5回 3

また、コースは地面に書かれた曲線G(x, y) = 0の上に作られていますから、コース

の各点での高さを考える事は、G(x, y) = 0を満たすような点 (x, y)(だけ)で2変数関

数 F (x, y)を見ていることになり、これは条件 G(x, y) = 0の下での関数 F (x, y)の値

を考えていることに他なりません。従って、

G(x, y) = 0の表す曲線が閉曲線であるならば、連続関数F (x, y)は条件G(x, y) =

0のもとでの最大値・最小値を必ずもつ

と言っているわけです。

更に、一般には最大値が極大値であるとは限りません(定義域の端点での最大値な

ど)が、今考えている様な閉曲線上で定義された関数の場合は、最大値は必ず極大値で

あり、最小値は必ず極小値になっていますので結局次のようにまとめる事が出来ます。

定理 5.4 [ 閉曲線上での連続関数の性質 ] G(x, y) = 0の表す曲線が閉曲線である

時、条件G(x, y) = 0のもとでの連続関数 F (x, y)の最大値・最小値は必ず存在し、

同時にそれらは極大値・極小値でもある。

5.4 極値の確定

この閉曲線上での連続関数の性質を使うと、既に求めてある候補の中から実際の極値

を直ちに確定出来る場合があります。

関数 F (x, y) = xyが条件 G(x, y) = x2

4 + y2 − 1 = 0のもとで極値をとる可能性があ

るのは4点(±√2,± 1√

2

)(複号同順でない)でした。

しかし、今考えている条件式の表す曲線は楕円周(即ち閉曲線)ですから、楕円周上

の連続関数の性質から、連続関数 F (x, y)はこの楕円周上で必ず最大値と最小値を達成

し、また、それらは同時に極値である事が分かります。

そうするとそれら最大値・最小値は極値であるが故にさっき求めた4つの候補点の中

のどれかでなければなりません。そこで4点での関数 f(x, y)の値を調べると、

F

(±√2,± 1√

2

)= 1, F

(±√2,∓ 1√

2

)= −1 (それぞれ複号同順)

なので、この前者が最大値(かつ極大値)であり、後者が最小値(かつ極小値)である

他ありません。他に極値となりうる点はありませんから結局これらが求める極値の全て

である事が分かります。

当然ですが、条件式の表す曲線が放物線や双曲線であるときにはこの連続関数の性質

は使えませんので極値をこの方法で確定することはできません。

また、候補点での関数の値のヴァリエーションが3種類以上あるときにも、最大値で

も最小値でもない点に関しては、極値であるかどうか何も言えません。

しかし少なくとも『最大値・最小値を求めよ』と云うタイプの問題に対しては、この

方法が非常に有効である場合があります。

5.5 3変数の場合

3変数関数 G(x, y, z)に対して方程式 G(x, y, z) = 0を満たす点の全体は一般には曲

面になります。例えば x2 + y2 + z2 = 1は球面を表しています。

2変数の時に閉曲線上の連続関数の性質を使って最大値等を決定しましたが、3変数

の場合には同様に『閉曲面』上の連続関数の性質が重要になります。

しかし、一般論を展開しようとするといろいろ難しい点があるので、ここでは閉曲面

として特に楕円面に限って話をする事にします。

正の定数 a, b, cに対して方程式 ax2 + by2 + cz2 = 1が表す曲面の事を楕円面と言い

ます。これは球面を各座標軸方向ごとにそれぞれの倍率で伸縮したものになっていま

す。楕円面上の連続関数 F (x, y, z)を考えることは、イメージとしては歪んだ地球で各

点での標高を考えている様なものです。

そうするとどんな地形を考えたとしても、必ずどこかが最高地点になっていなければ

なりませんし、どこかが最低地点になっています。楕円周上のジェットコースターと同

じ事です。従って次の事が分かります:

事実 5.5 楕円面(本当は“閉曲面”で良い)上で定義された連続関数は最大値と

最小値を必ずもち、それらは同時に極値でもあります。

これを3変数関数に対する Lagrangeの定理で得た極値の候補リストに対して適用し

て、最大値・最小値あるいは極値等を確定させる事が出来る場合があります。

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5.6 極値の候補点が判定出来ずに残った場合

例題 5.6 [ 富山大 H16 ] x2 + y2 = 1の条件のもとで、関数 f(x, y) = x3 + y3 の

極値を(ラグランジュの乗数法を用いて)求めて下さい。

この問題は一見何の問題も無く Lagrangeの乗数法と閉曲線(円周)上の連続関数の

性質で片が付くように思われますが、実際にやってみると極値の候補が思いのほか沢山

あり、最大値・最小値に相当する点は良くてもそれ以外の候補点について別の判断をし

なければならず案外難しいですね。

【Lagrangeの乗数法による候補点リスト】

ここは今回の話のメインではないので省略します。普通に計算すれば特異点はなく、

6点の候補点が得られるでしょう:

(0,±1), (±1, 0),

(± 1√

2,± 1√

2

)(複号同順).

【円周上の連続関数の性質による選別】

g(x, y) = x2 + y2 − 1とします。条件式 g(x, y) = 0の表す曲線は円周です。連続関

数 f(x, y)は円周上で最大値と最小値をもち、それらは同時に極値ですから、さっき求

めた極値の候補の中に最大値と最小値が入っている事になります。そこで各点での関数

値を計算すると

f(0,±1) = f(±1, 0) = ±1, f

(± 1√

2,± 1√

2

)= ± 1√

2

ですから、点 (1, 0), (0, 1)で最大値かつ極大値 1、点 (−1, 0), (0,−1)で最小値かつ極小

値 −1をとる事が分かります。

【残りの候補点の吟味】

しかし残念ながらまだ候補点が2点残っており、これらが極値かどうかはまだ判定さ

れていません。この場合も条件式の表す曲線が閉曲線でなかった場合と同様に、陰関数

定理を使って(ローカルに)1変数化して計算する方法でやってみましょう。

問題の2点(± 1√

2,± 1√

2

)では、gy ̸= 0となっていますからこの2点の近くでyをxの関

数で表すことが出来、それを y = y(x)と書く事にします。この点の付近で g(x, y(x)) = 0

が成り立つのでこの y(x)の微分は

x2 + y(x)2 − 1 = 0

2x+ 2yy′ = 0 すなわち、 y′ = −x

y

です。そこでローカルに ϕ(x) = f(x, y(x)) = x3 + y(x)3 と置いて1変数化すれば

ϕ′ = 3x2 + 3y2y′ = 3x2 − 3yx, ϕ′′ = 6x− 3y′x− 3y = 6x+ 3x2 − y2

y

であり、問題の2点では(x = yであることに注意すると分かり易いです)(1√2,1√2

) では ϕ′′ > 0,

(− 1√

2,− 1√

2

) では ϕ′′ < 0

となっていますから、前者は極小値、後者は極大値です。

【結論】

以上から求める極値は以下の通り:

極大値:(1, 0), (0, 1)での 1、(− 1√

2,− 1√

2

)での − 1√

2

極小値:(−1, 0), (0,−1)での −1、(

1√2, 1√

2

)での

1√2

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Revised at 08:09, November 13, 2020 解析学B 第 5回 5

Exercise

基本演習 1 Lagrangeの未定乗数法により、G(x, y) = x2 + y2 − 4 = 0と云う条件

のもとでの F (x, y) = 3x2 + 2√3xy + y2 の極値を求めて下さい。

基本演習 2 [京都工芸繊維大 H13 ] 条件x2+y2−1 = 0の下で、関数 f(x, y) = 3x−y

が極値をとり得る点をすべて求め、その点で極大か極小かも判定して下さい。

基本演習 3 [ 鳥取大 H18 ] xy平面上の点 (x, y)が ϕ(x, y) = x2 + y2 − 1 = 0で表

される曲線上を動くとき、関数 Z = f(x, y) = x+ 2y + 5が極値をとる点 (x, y)と

その極値を求めて下さい。

基本演習 4 [ 東工大 H8 ] x2 + y2 = 1のもとで、f(x, y) = x2 + 4√2xy + 3y2 の

最大値、最小値、およびそれらを与える x, yを求めて下さい。

発展演習 5 [ 筑波大 H20 ] 制約 x2 + y2 − 1 = 0の下で目的関数 h(x, y) = xy− x

の極値を求めることを考えます。

(1) この制約を満たす点の軌跡、および目的関数の値を一定にする (x, y)の組み

合わせの軌跡を描いて下さい。

(2) 目的関数 h(x, y)の極値を与える点を求めて下さい。

基本演習 6 [ 京大 H7 ] x2 + y2 + z2 = 1として、f(x, y, z) = x+ y2 + z3の最大

値と最小値を求めて下さい。

基本演習 7 [ 京大 H18 ] R3のデカルト座標を x, y, zとします。x2 + y2 + z2 = 1

の拘束条件のもとで、関数 f(x, y, z) = 3x2 + 2xy + 2xz + 4yz の最大値、最小値

とそれらを与える (x, y, z)を求めて下さい。

基本演習 8 [ 信州大 H18 ] 変数 x, y, z が条件 2x2 + 3y2 + 6z2 = 1を満たしなが

ら動くときの関数 f(x, y, z) = ex+y+z の最大値と最小値を求めて下さい。また、対

応する x, y, zの値も書いて下さい。

基本演習 9 [東工大 H13 ] 条件 x2

a2 +y2

b2 +z2

c2 = 1のもとで、F (x, y, z) = lx+my+nz

(l,m, nは定数)の最大値、最小値を求めて下さい。

基本演習 10 [ 筑波大 H25 ] 実変数 x, y, z が x2 + 2y2 + 3z2 = 6を満たすとき

f(x, y, z) = xyzの最大値と最小値を求め、その時の x, y, zの値を示して下さい。

基本演習 11 [ 山梨大 H22 ] f(x, y) = x2 + xy とします。x2 + y2 = 4を満たす

(x, y)での f(x, y)の最大値と最小値を求めて下さい。

基本演習 12 [ 筑波大 H21 ] g(x, y) = x2 + 2y2- 1 = 0, x, y ≥ 0の条件の下で関

数 f(x, y) = xyの最大値と最小値を求めて下さい。

基本演習 13 [ 東京農工大 H26 ] x2+y2 = 1のとき、関数 f(x, y) = x3+ 12y

2−2x

の最大値と最小値を求めて下さい。

基本演習 14 [ 新潟大 H25 ] 条件 x2 − 4x + 2y2 − 4y + 3 = 0のもとで、関数

g(x, y) = x+ 2yの最大値と最小値を求めて下さい。

基本演習 15 [ 筑波大 H18 ] 関数 f(x, y) = x0.6y0.4 の値を、条件 x+ y = 4, x ≥0, y ≥ 0のもとで最大化する x と y の値を求めて下さい。

基本演習 16 [ 岩手大 H10 ] x-y 平面上の半楕円(x2

)2+ y2 = 1 (x ≥ 0) · · · (i)

と x, y の関数 z(x, y) = 2 + xy + 12 (x

2 + y2) を考えます。ただし、半楕円上の点

(x, y)に対し、原点と点(x2 , y)を結ぶ線分が x-軸となす角 θとします。次の問に答

えて下さい

(1) θを媒介変数とする半楕円 (i) の媒介変数方程式を求めてください。θのとる

範囲も明示するようにして下さい。

(2) 条件 (i) のもとでの関数 z(x, y)の極値を求めるために、関数 z(x, y)を θの

みの関数として表して下さい。

(3) 前問で得られた θの関数 f(θ)が極値をとる cos θ, sin θの値を求めて下さい。

(4) f(θ)の極値を求めて下さい

(5) f(0), f(±π

4

), f(±π

2

)を求めて下さい。

(6) f(θ)のおよそのグラフを描いて下さい。

(7) 媒介変数 θを用いずに、条件 (i) のもとでの関数 z(x, y)の極値を、ラグラン

ジュの乗数法で求めたいと思います。極値をとる (x, y)の値を求めるための条件式

を書いて下さい。

(8) 極値をとる (x, y)の値を求めてください。

発展演習 17 [ 東北大 H24 ] 実変数 x, yの関数 f(x, y) = x3- y2について以下の

問に答えて下さい。

(1) (x, y)が実平面全体をうごくとき、f(x, y)の臨界点(fx = fy = 0となる点)

をすべて求めて下さい。

(2) 点 (x, y)が円 x2 + y2 = 1の上をうごくとき、関数 f(x, y)の最大、最小とそ

のときの x, yの値を求めて下さい。

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Revised at 08:09, November 13, 2020 解析学B 第 5回 i

Exercise

基本演習 18 Lagrangeの未定乗数法により、G(x, y) = x2 + y2 − 4 = 0と云う条

件のもとでの F (x, y) = 3x2 + 2√3xy + y2 の極値を求めて下さい。

基本演習 19 [ 京都工芸繊維大 H13 ] 条件 x2 + y2 − 1 = 0の下で、関数 f(x, y) =

3x−yが極値をとり得る点をすべて求め、その点で極大か極小かも判定して下さい。

基本演習 20 [ 鳥取大 H18 ] xy平面上の点 (x, y)が ϕ(x, y) = x2 + y2 − 1 = 0で

表される曲線上を動くとき、関数 Z = f(x, y) = x+ 2y + 5が極値をとる点 (x, y)

とその極値を求めて下さい。

基本演習 21 [ 東工大 H8 ] x2 + y2 = 1のもとで、f(x, y) = x2 +4√2xy+3y2の

最大値、最小値、およびそれらを与える x, yを求めて下さい。

発展演習 22 [ 筑波大 H20 ] 制約 x2+ y2− 1 = 0の下で目的関数 h(x, y) = xy−x

の極値を求めることを考えます。

(1) この制約を満たす点の軌跡、および目的関数の値を一定にする (x, y)の組み

合わせの軌跡を描いて下さい。

(2) 目的関数 h(x, y)の極値を与える点を求めて下さい。

基本演習 23 [ 京大 H7 ] x2 + y2 + z2 = 1として、f(x, y, z) = x+ y2 + z3 の最

大値と最小値を求めて下さい。

基本演習 24 [ 京大 H18 ] R3のデカルト座標を x, y, zとします。x2+ y2+ z2 = 1

の拘束条件のもとで、関数 f(x, y, z) = 3x2 + 2xy + 2xz + 4yz の最大値、最小値

とそれらを与える (x, y, z)を求めて下さい。

基本演習 25 [ 信州大 H18 ] 変数 x, y, z が条件 2x2 + 3y2 + 6z2 = 1を満たしな

がら動くときの関数 f(x, y, z) = ex+y+z の最大値と最小値を求めて下さい。また、

対応する x, y, zの値も書いて下さい。

基本演習 26 [東工大 H13 ] 条件 x2

a2+y2

b2 +z2

c2 = 1のもとで、F (x, y, z) = lx+my+nz

(l,m, nは定数)の最大値、最小値を求めて下さい。

基本演習 27 [ 筑波大 H25 ] 実変数 x, y, z が x2 + 2y2 + 3z2 = 6を満たすとき

f(x, y, z) = xyzの最大値と最小値を求め、その時の x, y, zの値を示して下さい。

基本演習 28 [ 山梨大 H22 ] f(x, y) = x2 + xy とします。x2 + y2 = 4を満たす

(x, y)での f(x, y)の最大値と最小値を求めて下さい。

基本演習 29 [ 筑波大 H21 ] g(x, y) = x2 + 2y2- 1 = 0, x, y ≥ 0の条件の下で関

数 f(x, y) = xyの最大値と最小値を求めて下さい。

基本演習 30 [ 東京農工大 H26 ] x2+y2 = 1のとき、関数 f(x, y) = x3+ 12y

2−2x

の最大値と最小値を求めて下さい。

基本演習 31 [ 新潟大 H25 ] 条件 x2 − 4x + 2y2 − 4y + 3 = 0のもとで、関数

g(x, y) = x+ 2yの最大値と最小値を求めて下さい。

基本演習 32 [ 筑波大 H18 ] 関数 f(x, y) = x0.6y0.4 の値を、条件 x+ y = 4, x ≥0, y ≥ 0のもとで最大化する x と y の値を求めて下さい。

基本演習 33 [ 岩手大 H10 ] x-y 平面上の半楕円(x2

)2+ y2 = 1 (x ≥ 0) · · · (i)

と x, y の関数 z(x, y) = 2 + xy + 12 (x

2 + y2) を考えます。ただし、半楕円上の点

(x, y)に対し、原点と点(x2 , y)を結ぶ線分が x-軸となす角 θとします。次の問に答

えて下さい

(1) θを媒介変数とする半楕円 (i) の媒介変数方程式を求めてください。θのとる

範囲も明示するようにして下さい。

(2) 条件 (i) のもとでの関数 z(x, y)の極値を求めるために、関数 z(x, y)を θの

みの関数として表して下さい。

(3) 前問で得られた θの関数 f(θ)が極値をとる cos θ, sin θの値を求めて下さい。

(4) f(θ)の極値を求めて下さい

(5) f(0), f(±π

4

), f(±π

2

)を求めて下さい。

(6) f(θ)のおよそのグラフを描いて下さい。

(7) 媒介変数 θを用いずに、条件 (i) のもとでの関数 z(x, y)の極値を、ラグラン

ジュの乗数法で求めたいと思います。極値をとる (x, y)の値を求めるための条件式

を書いて下さい。

(8) 極値をとる (x, y)の値を求めてください。

発展演習 34 [ 東北大 H24 ] 実変数 x, yの関数 f(x, y) = x3- y2について以下の

問に答えて下さい。

(1) (x, y)が実平面全体をうごくとき、f(x, y)の臨界点(fx = fy = 0となる点)

をすべて求めて下さい。

(2) 点 (x, y)が円 x2 + y2 = 1の上をうごくとき、関数 f(x, y)の最大、最小とそ

のときの x, yの値を求めて下さい。

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Revised at 08:09, November 13, 2020 解析学B 第 5回 1

Exercise 解答例

基本演習 1 Lagrangeの未定乗数法により、G(x, y) = x2 + y2 − 4 = 0と云う条件

のもとでの F (x, y) = 3x2 + 2√3xy + y2 の極値を求めて下さい。

【解答例】

Fx = 6x+ 2√3y, Fy = 2

√3x+ 2y, Gx = 2x,Gy = 2y

ですが、gradG(x, y) = o となるのは明らかに原点のみです。しかし原点は条件式

G(x, y) = 0を満たしませんのでこの曲線上には特異点はありません。

次に gradF (x, y) = m gradG(x, y) となる様な実数 mが存在する点を求めます。こ

の式に点 (x, y)が条件を満たすと云う式を加えて具体的に書けば:6x+ 2

√3y = 2mx

2√3x+ 2y = 2my

x2 + y2 = 4

ですからこれを解いて x, yを求めることになります。

第2式を xについて解けば x = y(m−1)√3なのでこれを第1式に代入すれば

2√3y = (2m− 6)x =

y(m− 1)(2m− 6)√3

6y = y(m− 1)(2m− 6)

0 = {(m− 1)(2m− 6)− 6}y = m(m− 4)y

となります。しかしここで y = 0の時には第2式から直ちに x = 0も出て来てしまい、

これが第3式と矛盾するのでm(m− 4) = 0です。

m = 0のとき:このとき第1式と第2式は同じ式である事がすぐに分かり、連立方程

式は実質的には √3x+ y = 0

x2 + y2 = 4

ですのでこれを解きます。第1式を第2式に代入して 4x2 = 4すなわち x = ±1が分か

るので、このとき yは y = ∓√3です(xと yで複号同順)。

m = 4のとき:このとき第1式と第2式は同じ式である事がすぐに分かり、連立方程

式は実質的には −x+√3y = 0

x2 + y2 = 4

ですのでこれを解きます。第1式を第2式に代入して 4y2 = 4すなわち y = ±1が分か

るので、このとき xは x = ±√3です(xと yで複号同順)。

以上により、求める極値の候補点は4点 (±1,∓√3), (±

√3,±1) である事が分かりま

した(複号同順)。

条件式 G(x, y) = 0の表す曲線は閉曲線(円周)です。

連続関数 F (x, y)は、閉曲線上で必ず最大値と最小値を持ち、かつそれらは同時に極

大値、極小値である事が知られています。

そうするとその存在する最大値・最小値は極値であるが故に先程求めた候補点4点の

いずれかで達成されていなければならないわけですが、この4点での F (x, y)の値を調

べてみると

F (±1,∓√3) = 0, F (±

√3,±1) = 16 (複号同順)

なので、この前者が最小値であり、後者が最大値である他ありません。

しかもこの最大値・最小値は同時に極値でもあったので、結局これらが求める極値で

ある事が分かります。

(±1,∓√3)において極小値 0 (複号同順)

(±√3,±1において極大値 16 (複号同順)

基本演習 2 [京都工芸繊維大 H13 ] 条件x2+y2−1 = 0の下で、関数 f(x, y) = 3x−y

が極値をとり得る点をすべて求め、その点で極大か極小かも判定して下さい。

【解答例】 p(x, y) = x2 + y2 − 1と置けば条件式は p(x, y) = 0と書けます。

px = 2x, py = 2y ですから、gradp(x, y) = o となるのは原点のみですが、原点は条

件式 p(x, y) = 0を満たしませんから曲線 p(x, y) = 0上には特異点はありません。

すると Lagrangeの乗数法によって、題意の極値の候補点は gradf(x, y) = tgradp(x, y)

となる様な定数 tが存在する様な点のみであることが分かります。

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これを具体的に成分で書いたものと条件式 p(x, y) = 0を連立させて方程式:

3 = 2tx, −1 = 2ty, 1 = x2 + y2

が得られます。

第1式の両辺をそれぞれ第2式の両辺で割れば −3 = xy、すなわち x = −3y が分か

りますからこれを第3式に代入すれば y = ± 1√10が得られ、このとき x = ∓ 3√

10です

(複号同順)。

以上により極値の候補点は2点(± 3√

10,∓ 1√

10

)のみです。

条件式が表す曲線は円周であり、連続関数 f(x, y)は円周上での最大値と最小値を必

ずもち、かつ、それらは同時に極値でもありましたから、この最大値・最小値はさっき

求めた極値の候補点の中になければなりません。

そこで2点での関数の値を見てみると

f

(± 3√

10,∓ 1√

10

)= ±

√10 (複号同順)

ですからこれが最大値・最小値に他なりません。同時にこれは極値ですから求める極値

は次の通り:

極大値:点(

3√10,− 1√

10

)での

√10

極小値:点(− 3√

10, 1√

10

)での −

√10.

基本演習 3 [ 鳥取大 H18 ] xy平面上の点 (x, y)が ϕ(x, y) = x2 + y2 − 1 = 0で表

される曲線上を動くとき、関数 Z = f(x, y) = x+ 2y + 5が極値をとる点 (x, y)と

その極値を求めて下さい。

【解答例】 ϕx = 2x, ϕy = 2yですから、gradϕ(x, y) = o となるのは原点のみですが、

原点は条件式 ϕ(x, y) = 0を満たしませんから曲線 ϕ(x, y) = 0は特異点をもたないこ

とが分かります。

するとLagrangeの乗数法によって、題意の極値の候補点は gradf(x, y) = k gradϕ(x, y)

となる様な定数 kが存在する点のみであることが分かります。

これを具体的に成分で書いたものと点 (x, y)が条件を満たすと云う式を連立させて方

程式:

1 = 2kx, 2 = 2ky, 1 = x2 + y2

が得られます。

第2式の両辺をそれぞれ第1式の両辺で割れば 2 = yx、すなわち y = 2xが分かりま

すからこれを第3式に代入すれば x = ± 1√5が得られ、このとき y = ± 2√

5です(複号

同順)。

以上により極値の候補点は2点(± 1√

5,± 2√

5

)のみです。

条件式が表す曲線は円周であり、連続関数 f(x, y)は円周上での最大値と最小値を必

ずもち、かつ、それらは同時に極値でもありましたから、この最大値・最小値はさっき

求めた極値の候補点の中になければなりません。

そこで2点での関数の値を見てみると

f

(± 1√

5,± 2√

5

)= 5±

√5 (複号同順)

ですからこれが最大値・最小値に他なりません。同時にこれは極値ですから求める極値

は次の通り:

極大値:点(

1√5, 2√

5

)での 5 +

√5

極小値:点(− 1√

5,− 2√

5

)での 5−

√5.

基本演習 4 [ 東工大 H8 ] x2 + y2 = 1のもとで、f(x, y) = x2 + 4√2xy + 3y2 の

最大値、最小値、およびそれらを与える x, yを求めて下さい。

【解答例】 p(x, y) = x2 + y2 − 1と置けば条件式は p(x, y) = 0と書けます。まずは関

数 f(x, y)の条件 p(x, y) = 0の下での極値の候補点を求めておきます。

gradp(x, y) =

(2x

2y

)であることと原点が条件式 p(x, y) = 0を満たさないことから条

件式の表す曲線上には特異点は無いことが分かります。

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Revised at 08:09, November 13, 2020 解析学B 第 5回 3

すると Lagrange の乗数法によって、題意の条件のもとでの極値の候補点は

gradf(x, y) = t gradp(x, y) となる様な定数 t が存在するような点のみであることが

分かります。

これを具体的に成分で書いたものと条件式を連立させて方程式:

2x+ 4√2y = 2tx, 4

√2x+ 6y = 2ty, 1 = x2 + y2

が得られます。(両辺2で割った上で)第 1、2式から(1 2

√2

2√2 3

)(x

y

)= t

(x

y

)

ですので左辺の係数行列の長さ1の固有ヴェクターを求めれば良い事が分かります。

0 =

∣∣∣∣∣1− t 2√2

2√2 3− t

∣∣∣∣∣ = t2 − 4t− 5 = (t− 5)(t+ 1)

から固有値は −1, 5ですのでそれぞれについて固有ヴェクターを求めましょう。

【固有値 −1について】{(1 2

√2

2√2 3

)+ E

}(x

y

)=

(2 2

√2

2√2 4

)(x

y

)=

(0

0

)

から連立方程式:

x+√2y = 0,

√2x+ 2y = 0

が得られますがこれは同じ式ですから(x

y

)=

(−√2y

y

)//

(−√2

1

)

となって長さ1の固有ヴェクターは ± 1√3

(√2

−1

)です。

【固有値 5について】{(1 2

√2

2√2 3

)− 5E

}(x

y

)=

(−4 2

√2

2√2 −2

)(x

y

)=

(0

0

)

から連立方程式:

−4x+ 2√2y = 0, 2

√2x− 2y = 0

が得られますがこれは同じ式ですから(x

y

)=

(x√2x

)//

(1√2

)

となって長さ1の固有ヴェクターは ± 1√3

(1√2

)です。

以上から極値の候補点は4点:(±√

23 ,∓

1√3

),(± 1√

3,±√

23

)です(複号同順)。

条件式が表す曲線は円周であり、連続関数 f(x, y)は円周上での最大値と最小値を必

ずもち、かつ、それらは同時に極値でもありましたから、この最大値・最小値はさっき

求めた極値の候補点の中になければなりません。

そこで4点での関数の値を見てみると

f

(±√

2

3,∓ 1√

3

)= −1, f

(± 1√

3,±√

2

3

)= 5

ですから、前者の2点で最小値であり後者の2点で最大値である事が分かります。従っ

て求める最大値・最小値は次の通り:

最大値:点(± 1√

3,±√

23

)での 5

最小値:点(±√

23 ,∓

1√3

)での −1.

発展演習 5 [ 筑波大 H20 ] 制約 x2 + y2 − 1 = 0の下で目的関数 h(x, y) = xy− x

の極値を求めることを考えます。

(1) この制約を満たす点の軌跡、および目的関数の値を一定にする (x, y)の組み

合わせの軌跡を描いて下さい。

(2) 目的関数 h(x, y)の極値を与える点を求めて下さい。

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【解答例】 (1) 幾つかの高さで“等高線”を書くと下図の双曲線群が書けるでしょう:

x

y

1

1

x2+y2=1

2 1

1/2

1/8

3√3/4

0

-1/2

-3√3/4

-1/8

-2 -1 0

-

+

+

-

制約条件式の表す曲線は円周です。

高さ ± 3√3

4 の等高線は条件式の表す曲線と接しています。

(2) g(x, y) = x2 + y2 − 1と置けば条件式は g(x, y) = 0と書けます。

gradg(x, y) =

(2x

2y

)ですから、gradg(x, y) = oとなるのは原点のみですが、原点は

条件式 g(x, y) = 0を満たしませんから条件式の表す曲線上には特異点はないことが分

かります。

すると Lagrangeの乗数法によって、題意の極値の候補点は

gradh(x, y) = t gradg(x, y)

となる様な定数 tが存在するような点のみであることが分かります。

これを具体的に成分で書いたものと点 (x, y)が条件を満たすと云う式を連立させて方

程式: y − 1 = 2tx

x = 2ty

1 = x2 + y2

が得られます。

第 1、2式から y(y − 1) = x2 なのでこれを第3式に代入すれば

0 = 2y2 − y − 1 = (2y + 1)(y − 1)

がわかり、極値の候補点は3点 (0, 1),(±

√32 ,− 1

2

)です。

条件式が表す曲線は円周であり、連続関数 h(x, y)は円周上での最大値と最小値を必

ずもち、かつ、それらは同時に極値でもありましたから、この最大値・最小値はさっき

求めた極値の候補点の中になければなりません。

そこで3点での関数の値を見てみると

h(0, 1) = 0, h

(±√3

2,−1

2

)= ∓3

√3

4

ですから、後者の2点が最大値・最小値であり、これは同時に極値にもなっています。

一方、点 (0, 1)について見ると、(1)で描いた絵から分かるように円周上のこの点付近

では関数 h(x, y)の値は正にも負にもなっていますのでこの点では極値ではありません。

以上から極値を与えるのは点(√

32 ,− 1

2

)で極小値− 3

√3

4 、点(−

√32 ,− 1

2

)で極大値 3

√3

4

です。

基本演習 6 [ 京大 H7 ] x2 + y2 + z2 = 1として、f(x, y, z) = x+ y2 + z3の最大

値と最小値を求めて下さい。

【解答例】 g(x, y, z) = x2 + y2 + z2 − 1と置けば条件式は g(x, y, z) = 0と書く事が出

来ます。

gradg(x, y, z) =

2x

2y

2z

ですからこれが oとなるのは原点に於いてのみですが、原点

は条件式 g(x, y, z) = 0を満たしていません。すると Lagrangeの未定乗数法によって極

値の候補点は gradf(x, y, z) = w gradg(x, y, z)となる様な定数 wが存在する点のみで

ある事が分かります。

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Revised at 08:09, November 13, 2020 解析学B 第 5回 5

これを具体的に成分で書いて条件式と連立させれば

1 = 2wx

2y = 2wy

3z2 = 2wz

x2 + y2 + z2 = 1

が得られますのでこれを解いて極値の候補点を求めます。

第2式の形から yが 0であるかないかで分類してみましょう。

y = 0の時は

1 = 2wx, z(3z − 2w) = 0, x2 + z2 = 1

となり、更に zで分類します。

z = 0の時は、x = ±1であって (x, y, z) = (±1, 0, 0)です。

z ̸= 0の時は、xz = 13 なので、

(x+ z)2 = 1 +2

3=

5

3, すなわち、 x+ z = ±

√5

3

ですから2次方程式 t2 ±√

53 t+

13 = 0の解を求めてみると

0 = t2 ±√

5

3t+

1

3=

(t± 1

2

√5

3

)2

− 1

12

となって t = ±1±√5

2√3ですから、(x, y, z)は(

±1 +√5

2√3

, 0,∓1 +

√5

2√3

),

(±1−

√5

2√3

, 0,∓1−

√5

2√3

)

です(複号同順)。

y ̸= 0の時は、w = 1が分かりますから

1 = 2x, z(3z − 2) = 0, x2 + y2 + z2 = 1

を解けば良く、まず x = 12 であり、z = 0, 2

3 ですから (x, y, z)は(1

2,±

√3

2, 0

),

(1

2,±

√11

6,2

3

)

です。以上から極値の候補点は 10点です。

条件式が表す曲面は球面であり、連続関数 f(x, y, z)は球面上での最大値と最小値を

必ずもち、かつ、それらは同時に極値でもありましたから、この最大値・最小値はさっ

き求めた極値の候補点の中になければなりません。そこで10点での関数の値を見てみ

ると

f(±1, 0, 0) = ±1

f

(±1 +

√5

2√3

, 0,∓1 +

√5

2√3

)=

5√5∓ 1

6√3

f

(±1−

√5

2√3

, 0,∓1−

√5

2√3

)=

−5√5∓ 1

6√3

f

(1

2,±

√3

2, 0

)=

5

4

f

(1

2,±

√11

6,2

3

)=

119

108

ですから最小値は点(

1−√5

2√3, 0, −1−

√5

2√3

)での − 5

√5+1

6√3であり、最大値は2点(

12 ,±

√32 , 0

)での 5

4 です。

基本演習 7 [ 京大 H18 ] R3のデカルト座標を x, y, zとします。x2 + y2 + z2 = 1

の拘束条件のもとで、関数 f(x, y, z) = 3x2 + 2xy + 2xz + 4yz の最大値、最小値

とそれらを与える (x, y, z)を求めて下さい。

【解答例】 g(x, y, z) = x2 + y2 + z2 − 1と置けば条件式は g(x, y, z) = 0と書く事が出

来ます。

gradg(x, y, z) =

2x

2y

2z

ですからこれが oとなるのは原点に於いてのみですが、原点

は条件式 g(x, y, z) = 0を満たしていません。すると Lagrangeの未定乗数法によって極

値の候補点は gradf(x, y, z) = wgradg(x, y, z)となる様な定数 w が存在する点のみで

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Revised at 08:09, November 13, 2020 解析学B 第 5回 6

ある事が分かります。これを具体的に書いて条件式と合わせれば

6x+ 2y + 2z = 2wx

2x+ 4z = 2wy

2x+ 4y = 2wz

x2 + y2 + z2 = 1

ですから、第 1~3式の両辺を 2で割って行列の形で書けば、行列M =

3 1 1

1 0 2

1 2 0

の長さ1の固有ヴェクターを求めれば良い事が分かります(wは固有値に相当します)。

まず固有方程式は

0 =

∣∣∣∣∣∣∣3− w 1 1

1 −w 2

1 2 −w

∣∣∣∣∣∣∣ =∣∣∣∣∣∣∣1− w 1 1

w − 1 −w 2

w − 1 2 −w

∣∣∣∣∣∣∣ですから w − 1をくくり出して

0 = (w − 1)

∣∣∣∣∣∣∣−1 1 1

1 −w 2

1 2 −w

∣∣∣∣∣∣∣ = (w − 1)

∣∣∣∣∣∣∣−1 1 1

0 1− w 3

0 3 1− w

∣∣∣∣∣∣∣更に余因子展開すれば

0 = −(w − 1)

∣∣∣∣∣1− w 3

3 1− w

∣∣∣∣∣ = −(w − 1)(−w − 2)(4− w)

ですから固有値は 1,−2, 4です。

【固有値 1について】 固有ヴェクターは (M − E)x = o なるヴェクター x を求めれ

ば良く、これを成分で書けば 2x+ y + z = 0

x− y + 2z = 0

x+ 2y − z = 0

ですが、これは 3本あるように見えても実質的には 2本しかなく(具体的には第 1式か

ら第 2式を引けば第 3式になっています)、第 1、2式をとって z を諦めて x, yを z で

表す事にすれば、x = −z, y = zが得られますのでx

y

z

=

−z

z

z

//

−1

1

1

より、長さ1の固有ヴェクターは ± 1√3

−1

1

1

です。【固有値 −2について】 固有ヴェクターは (M + 2E)x = o なるヴェクター x を求め

れば良く、これを成分で書けば 5x+ y + z = 0

x+ 2y + 2z = 0

x+ 2y + 2z = 0

ですが、第1、2式をとって yを諦めて x, zを yで表す事にすれば、x = 0, z = −yが

得られますので x

y

z

=

0

y

−y

//

0

1

−1

より、長さ1の固有ヴェクターは ± 1√2

0

1

−1

です。【固有値 4について】 固有ヴェクターは (M − 4E)x = oなるヴェクター x を求めれ

ば良く、これを成分で書けば −x+ y + z = 0

x− 4y + 2z = 0

x+ 2y − 4z = 0

ですが、これは 3本あるように見えても実質的には 2本しかなく(具体的には第 2、3

式を足せば第 1式になっています)、第 1、2式をとって z を諦めて x, yを z で表す事

にすれば、x = 2z, y = zが得られますのでx

y

z

=

2z

z

z

//

2

1

1

Page 13: 条件付きの極値問題 その3 Lagrange の未定乗数法 - ReSET.JPmy.reset.jp/~gok/math/pdff/analysis/20awanb05.pdfRevised at 08:09, November 13, 2020 解析学B 第5 回 1

Revised at 08:09, November 13, 2020 解析学B 第 5回 7

より、長さ1の固有ヴェクターは ± 1√6

2

1

1

です。以上から極値の候補点は 6点:(

± 1√3,∓ 1√

3,∓ 1√

3

),

(0,± 1√

2,∓ 1√

2

),

(± 2√

6,± 1√

6,± 1√

6

)です(複号同順)。

条件式が表す曲面は球面であり、連続関数 f(x, y, z)は球面上での最大値と最小値を

必ずもち、かつ、それらは同時に極値でもありましたから、この最大値・最小値はさっ

き求めた極値の候補点の中になければなりません。そこで6点での関数の値を見てみると

f

(± 1√

3,∓ 1√

3,∓ 1√

3

)= 1, f

(0,± 1√

2,∓ 1√

2

)= −2, f

(± 2√

6,± 1√

6,± 1√

6

)= 4

ですから求める最大値は2点(± 2√

6,± 1√

6,± 1√

6

)での 4 であり、最小値は2点(

0,± 1√2,∓ 1√

2

)での −2です。

基本演習 8 [ 信州大 H18 ] 変数 x, y, z が条件 2x2 + 3y2 + 6z2 = 1を満たしなが

ら動くときの関数 f(x, y, z) = ex+y+z の最大値と最小値を求めて下さい。また、対

応する x, y, zの値も書いて下さい。

【解答例】 q(x, y, z) = 2x2 + 3y2 + 6z2 − 1と置けば条件式は q(x, y, z) = 0と書け

ます。

gradq(x, y, z) =

4x

6y

12z

ですからこれが o となるのは原点に於いてのみですが、原

点は条件式 q(x, y, z) = 0を満たしていませんから Lagrangeの未定乗数法によって極値

の候補点は gradf(x, y, z) = rgradq(x, y, z)となる様な定数 rが存在する点のみである

事が分かります。これを具体的に成分で書けばex+y+z = 4rx

ex+y+z = 6ry

ex+y+z = 12rz

ですから、r ̸= 0に注意して 4x = 6y = 12zが分かります。従って

x

y

z

//

121316

ですが、条件 2x2 + 3y2 + 6z2 = 1を満たさねばならないのでx

y

z

= ±

121316

であることが分かります。

条件式が表す曲面は楕円面であり、連続関数 f(x, y, z)は楕円面上での最大値と最小

値を必ずもち、かつ、それらは同時に極値でもありましたから、この最大値・最小値は

上の2点の中になければなりません。

そこで2点での関数の値を見てみると点(12 ,

13 ,

16

)で最大値 e、点

(− 1

2 ,−13 ,−

16

)で最

大値 e−1 であることが分かります。

基本演習 9 [東工大 H13 ] 条件 x2

a2 +y2

b2 +z2

c2 = 1のもとで、F (x, y, z) = lx+my+nz

(l,m, nは定数)の最大値、最小値を求めて下さい。

【解答例】 w(x, y, z) = x2

a2 + y2

b2 + z2

c2 − 1と置けば条件式は w(x, y, z) = 0と書く事が

出来ます。

gradw(x, y, z) =

2a2x2b2 y2c2 z

ですからこれが oとなるのは原点のみですが、原点は条件

式 w(x, y, z) = 0を満たしません。従って Lagrangeの未定乗数法によって極値の候補

点は gradF (x, y, z) = h gradw(x, y, z)となる様な定数 hが存在する点のみである事が

分かります。

これを具体的に成分で書けばl = 2

a2hx

m = 2b2hy

n = 2c2hz

すなわち 2h

x

y

z

=

a2l

b2m

c2n

が分かります。

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Revised at 08:09, November 13, 2020 解析学B 第 5回 8

h = 0があり得るのは元々問題に於いて l = m = n = 0だった場合のみで、この時は

題意の関数 F は定数関数であり、最大値・最小値は自明です。

従って (l,m, n) ̸= (0, 0, 0)、すなわち、h ̸= 0の場合のみ考えれば、x

y

z

=1

2h

a2l

b2m

c2n

であり、これを条件式に代入すれば

1

4h2

(a2l2 + b2m2 + c2n2

)= 1

1

2h= ± 1√

a2l2 + b2m2 + c2n2

ですから、極値の候補点は(± a2l√

a2l2 + b2m2 + c2n2,± b2m√

a2l2 + b2m2 + c2n2,± c2n√

a2l2 + b2m2 + c2n2

)の2点です。

条件式が表す曲面は楕円面であり、連続関数 F (x, y, z)は楕円面上での最大値と最小

値を必ずもち、かつ、それらは同時に極値でもありましたから、この最大値・最小値は

上の2点の中になければなりません。

そこで2点での関数の値を見てみると

最大値: 点(

a2l√a2l2+b2m2+c2n2

, b2m√a2l2+b2m2+c2n2

, c2n√a2l2+b2m2+c2n2

)値

√a2l2 + b2m2 + c2n2

最小値: 点(− a2l√

a2l2+b2m2+c2n2,− b2m√

a2l2+b2m2+c2n2,− c2n√

a2l2+b2m2+c2n2

)値 −

√a2l2 + b2m2 + c2n2

であることが分かります。

基本演習 10 [ 筑波大 H25 ] 実変数 x, y, z が x2 + 2y2 + 3z2 = 6を満たすとき

f(x, y, z) = xyzの最大値と最小値を求め、その時の x, y, zの値を示して下さい。

【解答例】 G(x, y, z) = x2 + 2y2 + 3z2 − 6と置けば条件式は G(x, y, z) = 0と書くこ

とが出来ます。Gx = 2x,Gy = 4y,Gz = 6z によれば gradG = o となる点は原点のみ

ですが、原点は条件G = 0を満たしていません。従って Lagrangeの定理により、極値

の候補点は gradF = pgradGとなるような実数 pが存在するような点のみです。この

式と条件式を連立させれば

yz = 2px

zx = 4py

xy = 6pz

x2 + 2y2 + 3z2 = 6

ですからこれを解きます。

第 1、2、3式を辺々掛ければ (xyz)2 = 48p3xyzとなり、これは xyz(xyz− 48p3) = 0

と因数分解されますから場合分けが生じます。

【x = 0の場合】この場合、第1式から yか zのいずれかも 0ですが、第3式によれ

ば (0, 0,±√2)、(0,±

√3, 0)が解となります。

【x ̸= 0の場合】もしも y = 0であれば第2式から z = 0となり、第4式から (±√6, 0, 0)

が解です。また、y ̸= 0であれば第3式から p, z共に 0ではあり得ず、先に求めた式か

ら xyz = 48p3 が得られます。

すると第1式の両辺に xを掛ければ 48p3 = 2px2すなわち 24p2 = x2が得られます。

同様に第2、3式から 12p2 = y2, 8p2 = z2 が得られ、これらを第4式に代入すれば

24p2 + 24p2 + 24p2 = 6すなわち p2 = 112 が分かります。

これを戻せば x2 = 2, y2 = 1, z2 = 23 が分かります。従って

(±√2,±1,±

√23

)が得

られますが、これらは全て(適当な pの下で)連立方程式を満たしています。

以上から極値の候補点は

(0, 0,±√2), (0,±

√3, 0), (±

√6, 0, 0),

(±√2,±1,±

√2

3

)

です(複号同順でない)。

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Revised at 08:09, November 13, 2020 解析学B 第 5回 9

これらの点での関数 f(x, y, z) = xyzの値を調べると、

f(0, 0,±√2) = f(0,±

√3, 0) = f(±

√6, 0, 0) = 0, f

(±√2,±1,±

√2

3

)= ± 2√

3

です(符号は適宜解釈する)。

条件式の表す曲面は楕円面であり、楕円面上で連続関数 f(x, y, z) = xyzは必ず最大

値と最小値を達成し、しかもそれは同時に極値にもなっていますから、今求めた極値の

候補の中に最小値と最大値がある筈です。値を比べれば、明らかに最大値は(√2, 1,

√2

3

),

(√2,−1,−

√2

3

),

(−√2, 1,−

√2

3

),

(−√2,−1,

√2

3

)

での 2√3であり、最小値は(−√2,−1,−

√2

3

),

(−√2, 1,

√2

3

),

(√2,−1,

√2

3

),

(√2, 1,−

√2

3

)

での − 2√3です。

基本演習 11 [ 山梨大 H22 ] f(x, y) = x2 + xy とします。x2 + y2 = 4を満たす

(x, y)での f(x, y)の最大値と最小値を求めて下さい。

【解答例】 g(x, y) = x2 + y2 − 4とします。gx = 2x, gy = 2yより、gradg = oとなる

のは原点のみですが原点は条件を満たしていません。従って Lagrangeの定理から極値

の候補点は gradf = pgradgとなる実数 pが存在する点のみです。この式と条件式を連

立させれば 2x+ y = 2px

x = 2py

x2 + y2 = 4

ですからこれを解きます。第2式を第1式に代入すれば

4py + y = 4p2y すなわち y(4p2 − 4p− 1) = 0

ですが、y = 0のとき第2式から x = 0であり第3式と矛盾します。y ̸= 0のときは

0 = 4p2 − 4p− 1 = (2p− 1)2 − 2

から p = 1±√2

2 が分かり、第2式から x = (1±√2)yなのでこれを第3式に代入して

(4± 2√2)y2 = 4 すなわち y2 =

2

2±√2= 2∓

√2

より y = ±√2∓

√2が得られます。従って4点の解が見つかりました(複号同順):(

±(1 +√2)

√2−

√2,±

√2−

√2

),

(±(1−

√2)

√2 +

√2,±

√2 +

√2

).

条件式の表す曲線は円周であり、円周上で連続関数は最大値と最小値をとり、しかも

それは同時に極値でもありますから、最大値と最小値はこの候補点の中にある筈です。

そこで各点での f(x, y)の値を調べてみると

f

(±(1 +

√2)

√2−

√2,±

√2−

√2

)= 2 + 2

√2

f

(±(1−

√2)

√2 +

√2,±

√2 +

√2

)= 2− 2

√2

となっていますから、前者が最大値、後者が最小値である事が分かりました。

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Revised at 08:09, November 13, 2020 解析学B 第 5回 10

基本演習 12 [ 筑波大 H21 ] g(x, y) = x2 + 2y2- 1 = 0, x, y ≥ 0の条件の下で関

数 f(x, y) = xyの最大値と最小値を求めて下さい。

【解答例】 gradg = o となるのは原点のみですが、原点は条件を満たしていません。

従って Lagrangeの定理により、この条件の下での極値の候補点は gradf = wgradgと

なる実数 wが存在するような点のみである事が分かります。この式と条件式を具体的

に書けば y = 2wx

x = 4wy

x2 + 2y2 = 1

ですから、まず第2式を第1式に代入して

y = 8w2y, すなわち y(8w2 − 1) = 0

が得られますが、y = 0のとき第2式から x = 0となりこれは第3式と矛盾するので

y ̸= 0であってw = ± 12√2が分かります。いずれの場合も第1、2式は同じ式x = ±

√2y

となり、これを第3式に代入すれば

4y2 = 1 すなわち y =1

2

が得られます。従って求める候補点は1点(

1√2, 12

)です(x, y ≥ 0に注意)。

条件 g = 0, x, y ≥ 0の表す曲線は楕円周の一部であり、有界閉集合です。有界閉集合

上の連続関数は必ず最大値と最小値をとりますが、それはこの曲線の端点で達成される

か、端点以外で達成されるかのどちらかです。そこで各点での関数値を調べます:

f

(1√2,1

2

)=

√2, f(1, 0) = 0, f

(0,

1√2

)= 0.

この様に、端点での値は少なくとも最大値でない事が分かりますから、最大値は端点

以外で達成され、それは同時に極大値ですから今求めた候補点の中にある筈です。しか

しそれは値を見れば明らかで、最大値は(

1√2, 12

)での

√2です。また、最小値が端点以

外にあったとするとそれは極小値にもなっている筈ですが、生憎そのような点はない事

が既に分かっています。従って最小値は端点で達成され、最小値は2点(0, 1√

2

), (1, 0)

での 0です。

基本演習 13 [ 東京農工大 H26 ] x2+y2 = 1のとき、関数 f(x, y) = x3+ 12y

2−2x

の最大値と最小値を求めて下さい。

【解答例】 g(x, y) = x2 + y2 − 1 とおけば条件式は g(x, y) = 0 と書けます。gx =

2x, gy = 2yであって gradg = oとなるのは原点のみですが、原点は条件式を満たしてい

ません。従ってLagrangeの定理から、この条件下で fが極値となるのは gradf = wgradg

となるような実数 wが存在するような点のみです。この式と条件式を連立させて方程

式を解きます。 3x2 − 2 = 2wx

y = 2wy

x2 + y2 = 1

第2式は y(2w − 1) = 0と変形されますから場合分けします。

【y = 0のとき】 このとき第3式から x = ±1です。いずれの場合も第1式を満た

す実数 wが存在しています。従って2つの解 (±1, 0)が得られました。

【y ̸= 0のとき】 この場合 w = 12 です。従って第1式から

0 = 3x2 − x− 2 = (3x+ 2)(x− 1)

となって x = 1,− 23 が分かります。

x = 1の場合は y = 0なので既に見ました。一方 x = − 23 のときは

y2 = 1− x2 = 1− 4

9=

5

9

となって y = ±√53 です。従って新たに2つの解

(− 2

3 ,±√53

)が得られました。

条件式の表す曲線は円周であり、円周上で連続関数は最大値と最小値をもち、それら

は同時に極値でもありました。従って存在する最大値と最小値は今求めた極値の候補点

の中にある筈です。

そこで候補点での関数の値を調べてみると

f(±1, 0) = ∓1, f

(−2

3,±

√5

3

)=

71

54

となっていますから、最大値は(− 2

3 ,±√53

)での 71

54、最小値は (1, 0)での−1です。

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Revised at 08:09, November 13, 2020 解析学B 第 5回 11

基本演習 14 [ 新潟大 H25 ] 条件 x2 − 4x + 2y2 − 4y + 3 = 0のもとで、関数

g(x, y) = x+ 2yの最大値と最小値を求めて下さい。

【解答例】 h(x, y) = x2 − 4x + 2y2 − 4y + 3と置きます。hx = 2x − 4, hy = 4y − 4

ですから、gradh = o となるのは (2, 1)のみですが、この点は条件式を満たしません。

従って Lagrangeの定理からこの条件の下での極値の候補点は、gradg = wgradhとな

るような実数 wが存在する点のみです。条件式と合わせて具体的に書けば1 = w(2x− 4)

2 = w(4y − 4)

x2 − 4x+ 2y2 − 4y + 3 = 0

第1式から x− 2 = 12w、第2式から y − 1 = 1

2w です。しかも第3式は

(x− 2)2 + 2(y − 1)2 − 3 = 0

と変形されますから

1

4w2+ 2

1

4w2− 3 = 0

4w2 = 1 すなわち w = ±1

2

が分かります。従って2つの解 (x, y) = (3, 2), (1, 0)が得られます。

条件式の表す曲線は円周であり、円周上で連続関数 g(x, y)は最大値・最小値をとり、

それらは同時に極値でした。従って極値であるが故にこの最大値・最小値は今求めた極

値の候補点の中にある筈です。そこで候補点での関数の値を調べてみると

f(3, 2) = 7, f(1, 0) = 1

ですから前者が最大値(かつ極大値)、後者が最小値(かつ極小値)です。

基本演習 15 [ 筑波大 H18 ] 関数 f(x, y) = x0.6y0.4 の値を、条件 x+ y = 4, x ≥0, y ≥ 0のもとで最大化する xと yの値を求めて下さい。

【解答例 その1 グローバルな1変数化】 条件式から y = 4−xですからこれを使っ

て関数を1変数化します:

F (x) = f(x, 4− x) = x0.6(4− x)0.4.

log tは単調増加関数ですから、H(x) = logF (x) = 0.6 log x+0.4 log(4−x)を 0 < x < 4

で考えたときの極値は元の関数 f(x, y)の極値にもなっています。微分計算をすると

H ′(x) =0.6

x− 0.4

4− x=

0.4(4− x)− 0.6x

x(4− x)=

1.6− x

x(4− x)

H ′′(x) = −0.6

x2− 0.4

(4− x)2< 0

ですから、H ′(x) = 0となるのは x = 1.6のときであり、ここでH(x)は極大値である

事が分かります。また、0 < x < 1.6でH ′(x) > 0、1.6 < x < 4でH ′(x) < 0ですから

この極大値はH(x)の (0, 4)での最大値でもあります。

更に f(0, 4) = f(4, 0) = 0である事を考え合わせれば、結局 (x, y) = (1.6, 2.4)のとき

f(x, y)は最大値 1.60.62.40.4 である事が分かります。

【解答例 その2 有界閉集合上の連続関数の性質を使う方法】 g(x, y) = x + y − 4

と置けば条件式は g(x, y) = 0となります。

gradg(x, y) =

(1

1

)̸= o なので a, b > 0として点 (a, b)で f(x, y)は条件 g(x, y) = 0

の下での極値であると仮定すると Lagrangeの乗数法から

gradf(a, b) = wgradg(a, b)

となる様な実数 wが存在します。そこでこの方程式と条件式を合わせて連立すれば

0.6a−0.4b0.4 = w, 0.4a0.6b−0.6 = w, a+ b = 4

が得られます。第1式と第2式を辺々割れば

3

2

b

a= 1, すなわち、 b =

2

3a

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Revised at 08:09, November 13, 2020 解析学B 第 5回 12

が得られますのでこれを第3式に代入して a = 125 , b = 8

5 が分かります。

条件式の表す曲線は2点 (0, 4), (4, 0)を結ぶ線分であり、これは有界閉集合なので問

題の関数 f(x, y)はこの線分上で必ず最大値をとります。

その最大値は条件式の表す曲線の端点 (0, 4), (4, 0)および(125 , 8

5

)のいずれかで達成

されますからこの3点での関数値を比較すると

f(0, 4) = 0, f(4, 0) = 0, f

(12

5,8

5

)=

120.680.4

50.650.4> 0

ですから最大値は点(125 , 8

5

)で達成される事が分かります。

基本演習 16 [ 岩手大 H10 ] x-y 平面上の半楕円(x2

)2+ y2 = 1 (x ≥ 0) · · · (i)

と x, y の関数 z(x, y) = 2 + xy + 12 (x

2 + y2) を考えます。ただし、半楕円上の点

(x, y)に対し、原点と点(x2 , y)を結ぶ線分が x-軸となす角 θとします。次の問に答

えて下さい

(1) θを媒介変数とする半楕円 (i) の媒介変数方程式を求めてください。θのとる

範囲も明示するようにして下さい。

(2) 条件 (i) のもとでの関数 z(x, y)の極値を求めるために、関数 z(x, y)を θの

みの関数として表して下さい。

(3) 前問で得られた θの関数 f(θ)が極値をとる cos θ, sin θの値を求めて下さい。

(4) f(θ)の極値を求めて下さい

(5) f(0), f(±π

4

), f(±π

2

)を求めて下さい。

(6) f(θ)のおよそのグラフを描いて下さい。

(7) 媒介変数 θを用いずに、条件 (i) のもとでの関数 z(x, y)の極値を、ラグラン

ジュの乗数法で求めたいと思います。極値をとる (x, y)の値を求めるための条件式

を書いて下さい。

(8) 極値をとる (x, y)の値を求めてください。

【解答例】 (1) x2 = cos θ, y = sin θですから、媒介変数方程式は次の通り:(

x

y

)=

(2 cos θ

sin θ

),(−π

2≤ θ ≤ π

2

).

(2)f(θ) = z(2 cos θ, sin θ) = 2 + 2 cos θ sin θ +

1

2(4 cos2 θ + sin2 θ)

=5

2+ 2 cos θ sin θ +

3

2cos2 θ

(3),(4)f ′(θ) = −2 sin2 θ + 2 cos2 θ − 3 cos θ sin θ

= −2 + 4 cos2 θ − 3 cos θ sin θ

= 2 cos 2θ − 3

2sin 2θ

極値の候補点は f ′(θ) = 0となる点であり、その点では

2 cos 2θ =3

2sin 2θ, すなわち

4

3= tan 2θ

が成り立っています。このとき

sin 2θ = ±4

5, cos 2θ = ±3

5(複号同順)

ですから、cos 2θ = 35 , sin 2θ = 4

5 のときは 0 < 2θ < π2 であって

2 cos2 θ − 1 =3

5, 従って cos θ =

2√5, sin θ =

1√5

となっていますし、cos 2θ = − 35 , sin 2θ = − 4

5 のときは −π < 2θ < −π2 であって

2 cos2 θ − 1 = −3

5, 従って cos θ =

1√5, sin θ = − 2√

5

となっている事が分かります。

また2階微分は、cos θ = 2√5, sin θ = 1√

5である点では

f ′′(θ) = −4 sin 2θ − 3 cos 2θ = −44

5− 3

3

5< 0

より極大値である事が分かります。一方 cos θ = 1√5, sin θ = − 2√

5である点では

f ′′(θ) = −4 sin 2θ − 3 cos 2θ = 44

5+ 3

3

5> 0

ですからこれは極小値である事が分かります。

また、cos θ = 2√5, sin θ = 1√

5となる点で

f(θ) =5

2+ 2

2

5+

6

5=

9

2

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Revised at 08:09, November 13, 2020 解析学B 第 5回 13

であり、また、cos θ = 1√5, sin θ = − 2√

5となる点で

f(θ) =5

2− 2

2

5+

6

5= 2

ですから、f(θ)の極値は、cos θ = 2√5, sin θ = 1√

5となる点での極大値 9

2 と、cos θ =1√5, sin θ = − 2√

5となる点での極小値 2 のみです。

(5)

f(0) = 4, f(π4

)=

17

4, f

(−π

4

)=

9

4, f

(±π

2

)=

5

2

(6) 上の値と極値を使って描いてみて下さい(略)。

(7) g(x, y) =(x2

)2+ y2 − 1と置けば、条件式は g = 0であり、この条件を満たす点

の中には gradg = o となる点はありません。

従って Lagrangeの定理から、極値の候補点は連立方程式:y + x = px

2

x+ y = 2py(x2

)2+ y2 = 1

の解(のうちの x, y)です。従ってこの連立方程式を満たす実数 pが存在するような

x, yであることが条件です。

(8) p = 0のとき、第1、2式から y = −xであり、これを第3式に代入して(x2

)2+ x2 = 1 すなわち x2 =

4

5

がわかり、x = 2√5(x ≥ 0による)、y = − 2√

5も分かります。

p ̸= 0のときは、第1式から第2式を引いて x2 − 2y = 0であり、x = 4yが得られま

す。これを第3式に代入すれば(4y

2

)2

+ y2 = 1 すなわち y2 =1

5

となって 0 ≤ x = 4yから y = 1√5, x = 4√

5が得られます。

条件式の表す曲線は半楕円であり、これは有界閉集合です。有界閉集合上で連続関数

z(x, y)は最大値と最小値をとりますが、それは半楕円の端点であるか、そうでなけれ

ば端点以外の点であって極値になっている筈です。

そこで今求めた2つの候補点と端点での関数の値を調べてみると

z

(2√5,− 2√

5

)= 2− 4

5+

1

2

8

5= 2

z

(4√5,1√5

)= 2 +

4

5+

1

2

17

5=

9

2

z(0,±1) = 2 +1

2=

5

2

となっていますから、端点では最大値でも最小値でもない事が分かります。従って存在

する最大値・最小値は半楕円の端点以外の部分にあり、従ってそれらは極値になってい

ます。極値であるが故にそれらはさっき求めた候補点の中にあり、今調べた値から最大

値が 92、最小値が 2である事が分かります。

以上から、極値をとる点は(

4√5, 1√

5

)(極大値 9

2)、(

2√5,− 2√

5

)(極小値 2)です。

発展演習 17 [ 東北大 H24 ] 実変数 x, yの関数 f(x, y) = x3- y2について以下の

問に答えて下さい。

(1) (x, y)が実平面全体をうごくとき、f(x, y)の臨界点(fx = fy = 0となる点)

をすべて求めて下さい。

(2) 点 (x, y)が円 x2 + y2 = 1の上をうごくとき、関数 f(x, y)の最大、最小とそ

のときの x, yの値を求めて下さい。

【解答例】 (1) fx = 3x2, fy = −2yですから fx = fy = 0となるのは原点のみです。

(2) g(x, y) = x2 + y2 − 1と置くと条件式は g = 0と書けます。gradg = o となる

点は g = 0を満たす範囲ではありませんから、Lagrangeの定理から、極値の候補点は

gradf = wgradg となるような実数 w が存在する点しかありません。この式と条件式

を連立させれば 3x2 = 2wx

−2y = 2wy

x2 + y2 = 1

ですからこれを解きます。

まず y = 0のときは x = ±1であり、それぞれに対して第1式を満たす wが存在し

ます(第2式は自明)。y ̸= 0のときは第2式から w = −1であって、第1式は

0 = 3x2 − 2wx = 3x2 + 2x = x(3x+ 2)

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と変形され、x = 0,− 23 が分かります。

x = 0のときは第3式から y = ±1であり、x = − 23 のときは y = ±

√53 です。

以上から極値の候補点は (±1, 0), (0,±1),(− 2

3 ,±√53

)の6点です。

条件式の表す曲線は円周であり、円周上で連続関数は最大値と最小値をとり、かつそ

れらは極値にもなっています。極値であると云う事はこれらの最大値・最小値はさっき

求めた候補点の中にあると云う事になります。そこで各点での関数の値を調べると、

f(±1, 0) = ±1, f(0,±1) = −1, f

(−2

3,±

√5

3

)= −23

27

ですから、求める最大値は f(1, 0) = 1、最小値は f(−1, 0) = f(0,±1) = −1です。