微量化学物質を光らせて測る - 新技術説明会...gc‐ms測定(ndma定量限界0.06...
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微量化学物質を光らせて測る ~化学発光を利用した
環境中の微量有害物質分析法の開発~
鹿児島大学大学院理工学研究科
助教
児玉谷
仁
研究背景
分析機器の発展に伴い
見えなかったものが見えるようになってきた
身近なモノの中にある有害物質に対する意識の向上
•より高感度な分析法•“誰でも何時でも何処でも”な分析法
⇒
どちらにも対応できる分析法
〝化学発光検出法″
化学発光検出法測定対象物と発光試薬を混ぜ合わせることで生じた光を測定する
測定法
・暗闇で光を見つける原理(高感度)
・化学発光を起こす物質の組み合わせは限られている(高選択性)
<よく知られた応用>
⇒
血痕検出のルミノール反応(警察の鑑識等で利用)
⇒
発光試薬をラベル剤として用いるアッセイ法(市販実用化)
⇒
高速液体クロマトグラフィーなどの分析機器の検出法・・・あまり一般的ではない?
(良いアプリケーションがない)
研究目的
高選択性の裏返しで適応(測定)可能な物質は限られている!⇒
化学発光検出法の応用範囲の拡大(基礎研究)
⇒
環境・食品・生体試料中の物質分析への応用(応用研究)
・水道水中のN‐ニトロソアミン類の分析法
・土壌・生体試料中のメチル水銀・エチル水銀の分析法・ジャガイモ中のソラニンの分析法etc.
化学発光検出法高感度・・・小型化が容易高選択性・・・共存物質との分離が不要(最小限で済む)
☛
小型で簡易で高感度な分析機器の開発が可能
ニトロソアミン類とは?
・酸性条件下,亜硝酸イオンと第二アミン類から容易に生成・発癌性・変異原性を持つとされ“食べ合わせの毒”として古くから
知られている
食品・飲料,化粧品,タバコの煙,工場排水などにも存在
亜硝酸塩(発色剤)
第二アミン類(魚や肉)
酸性条件(胃酸)
ニトロソアミン類
HNR R + NO2
NR R
NO
水道水中のニトロソアミン
近年,水道水の浄水処理過程においてニトロソアミンの一つであるN‐ニトロソジメチルアミン(NDMA)の発生が確認された
国際がん機関(IARC)NDMAをGroup2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)と分類
N NCH3
CH3 H
HN H
CH3
CH3
N ClH
H+ N
CH3
CH3
NO +
N-ニトロソジメチルアミン<1 %
oxidation
ジメチルヒドラジンクロラミン
Other products
W. A. Mitch et. al., Environ. Eng. Sci, 20 (2003) 389.
世界におけるNDMA規制
世界保健機構(WHO):
飲料水中ガイドライン 100 ng/L以下
ドイツ:
飲料水中ガイドライン10
ng/L 以下
カナダ(オンタリオ州):飲料水における基準値9 ng/L以下
米国環境保護庁: 10‐5の発がんリスク 7 ng/L (推奨値
0.69ng/L)
ニトロソアミン類6種に対しモニタリング計画中
日本:水道水質における要検討項目(目標値:100 ng/L)
代表的な消毒副生成物トリハロメタン(クロロホルムなど)・・・Group2Bに分類(ヒトに対する発がん性が疑われる)
水道水質基準:
総トリハロメタン
0.1
mg/L
現在の分析法
環境省:
水試料1Lをジクロロメタンで抽出し,GC‐MS測定(NDMA定量限界0.06 g/L)
より簡易で高感度な分析法が必要!⇒
化学発光検出法を用いた分析法を開発
10 ng/L レベルの監視をするには・・・・
他分析法:水試料250~1000mLを活性炭で固相抽出(1000倍の濃縮)
LC‐MS/MS法もしくはGC‐MS/MSによる測定(NDMA定量限界1 ng/L)
【問題点】
煩雑な前処理と高価な分析機器,高ランニングコスト
ルミノール化学発光
⇒
光を使ってニトロソアミン類から酸化剤を生成させる!
H2
O2
や次亜塩素酸などの酸化剤と発光反応を起こす
(触媒やエンハンサーとなる物質の検出にも利用可能)
ニトロソアミン類はルミノールと反応しないので検出不可能・・・
NH2
NHNH
O
O
+ 酸化剤(H2 O2 etc.) product + hv (427 nm)
Luminol
触媒
開発測定法の原理
窒素酸化物含有化合物 NO
(塩基性水溶液) O2‐・
ONOO‐
ONOO‐ + Luminol Product
+
photon
紫外線照射
紫外線照射によりNOを放出する物質・N
or S‐ニトロソアミン類
・硝酸,亜硝酸・ニトロ化合物 etc.が測定可能
強い酸化剤
⇒
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にこの検出原理を組み込む
HPLC‐PR‐CL装置
光化学反応器(254nm)
市販の殺菌灯(数千円)に
紫外線を透過するPTFEチューブ
を巻きつけたもの
開発法のパフォーマンス
定量限界:
2 ng/L (NDMA)
定量範囲:
5‐200 ng/L以上
分析時間:
20分(4種類測定)
NDMAN‐ニトロソモルフォリン(NMOR)N‐ニトロソメチルエチルアミン(NMEA)N‐ニトロソピロリジン(NPIR)
⇒
現在の日本のモニタリング目標値は十分に測定可能!
水道水の測定
全国の水道水調査
⇒
非常に有効なモニタリング技術となる
全国16か所の水道水(家庭蛇口水)の調査(平成24年6~7月)
トリハロメタンを生成を防ぐための高度浄水処理もNDMA生成抑制には効果なし?
本法と既存法の比較【メリット】(・・・既存法LC‐MS/MSで同レベルの測定を可能にするには)
・安価:数百万・・・数千万+人件費が必要
・前処理:ろ過のみ・・・1000倍の濃縮操作
・必要試料量:100L/1測定・・・250~1000mL
・分析時間:20分/1試料・・・前処理を含め数時間
【デメリット】
•物質同定は不可能(・・・MSでは可能)
本法の利用が想定される業界
・浄水場(水道局)
・下水処理場
・水・食品関連企業
・環境分析会社
実用化に向けた課題
分離面の改善
⇒
アルカリ耐性をもつ高分離カラムの開発
⇒
キャピラリー電気泳動分離との結合etc.
光化学反応器の高効率化による高感度化
⇒
特定波長のみ照射できる光反応器の開発
企業への期待(この研究に関して)
• 光化学反応器開発への協力
• より高感度な化学発光検出器の開発
• 一体型システム・試薬の開発・販売
本技術に関する知的財産権
発明の名称:
窒素酸化物含有化合物の検出方法
およびそれに用いる検出装置
出願番号:
特許第4984292号
出願人:
金沢工業大学
発明者:
児玉谷
仁,小松
優,渡辺
雄二郎,藤永
薫,
齊籐
惠逸,山崎
重雄
開発中の分析法
化学発光検出法はハマると非常に効果的!
この物質をモニタリングしたいという希望はないでしょうか?
⇒ ニーズが知りたい
必要とされる感度共存物質によっては・・・光試薬と混ぜるだけで測定可能!
・
ジャガイモ中ソラニンの簡易測定器・
硝酸・亜硝酸の測定システム
・
有機水銀の簡易測定法
問い合わせ先
国立大学法人
鹿児島大学
産学官連携推進センター
コーディネーター
(准教授)中武貞文
TEL: 099‐285‐8492FAX: 099‐285‐8495E‐mail: [email protected]‐u.ac.jp