電気化学発消色ならびに発光 を用いた 反射型・発光型デュア …dmt –...

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1 電気化学発消色ならびに発光 を用いた 反射型・発光型デュアルモード表示 千葉大学 大学院融合科学研究科 教授 小林 範久 近年,電子ペーパーなど環境ならびに人間に優しい新 規な表示素子開発に注目が集められている。ここでは, 電気化学的な発消色挙動ならびに発光挙動に基づく安 価・簡便に作成できる表示技術の新展開について述べ るとともに,両者の機能を一つのセル中に併せ持つ反射 型・発光型デュアルモード表示技術についても紹介する。 ○研究背景

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  • 1

    電気化学発消色ならびに発光を用いた

    反射型・発光型デュアルモード表示千葉大学 大学院融合科学研究科

    教授 小林 範久

    近年,電子ペーパーなど環境ならびに人間に優しい新規な表示素子開発に注目が集められている。ここでは,電気化学的な発消色挙動ならびに発光挙動に基づく安価・簡便に作成できる表示技術の新展開について述べるとともに,両者の機能を一つのセル中に併せ持つ反射型・発光型デュアルモード表示技術についても紹介する。

    ○研究背景

  • 2

  • 3

    想定される業界(市場規模)想定される業界(市場規模)

    Display Search社 E-paper Display Report 2009

    2009年2200万ユニット,4億3100万ドル

    2018年18億ユニット,96億ドル

    ”Display Search forecasts that electrochromic will become the leading technology in terms of unit volume for e-paper displays by 2013.”

  • 4

    エレクトロクロミック方式(電気化学方式)

  • 5

    シアン

    off

    on

    電圧 マゼンタイエロ

    エレクトロクロミズムによるエレクトロクロミズムによる3原色の発現3原色の発現

  • 6

    8×8単純マトリックス&7セグメントセル

  • 7

    Fig. Photographs of two of three primary color stacked EC cell.

    BlueBlue

    MagentaMagenta CyanCyan

    GreenGreen

    YellowYellowCyanCyan

    1515

    RedRed

    YellowYellow MagentaMagenta

    濃さの違う素子の積層によるカラー表示

    Y. Watanabe et al., Electrochim. Acta, in contribution (2010).

  • 8

    シアン,イエロー,マゼンタ三原色素子

    マゼンタイエローシアン

    Japan Chemical Innovation Institute (JCII)

    フレキシブル発色素子

  • 9

    各種ディスプレイの動向各種ディスプレイの動向

    発光型ディスプレイ 反射型ディスプレイ

    ・ 暗所での良好な視認性・ フルカラー化・ 動画等の表示

    ・ 明所での自然な視認性・ メモリー能による省エネルギー性・ 薄型化による携帯性向上

    デュアルモードディスプレイ(DMD)デュアルモードディスプレイ(DMD)

  • 10

    ECLECLととECECを用いたを用いたDMDDMD素子素子

    反射型ディスプレイ

    エレクトロクロミズム(EC)

    交流駆動型電気化学発光(ECL)

    発光型ディスプレイ

    表示ON

    明所暗所

    表示OFF

    発光

    消光

    着色

    消色

  • 11

    ElectrochemiluminescenceElectrochemiluminescence (ECL)(ECL)

    電気化学的に生成された酸化体と還元体の衝突による発光

    ニュートラル

    還元体

    酸化体

    発光

    ○簡易な素子構造

    ○低電圧発光×物質移動に依存するため応答速度が遅い

    従来のECL素子の特徴

  • 12

    ○応答速度の改善○発光効率の向上○素子負担の軽減

    ニュートラル

    還元体

    酸化体

    交流電圧駆動型交流電圧駆動型ECLECLの特徴の特徴

  • 13

    EC:着色層 ECL:発光層

    着色モード・・・直流電圧駆動・着色層:EC材料の酸化 or 還元反応→着色・発光層:酸化体か還元体片方のみ生成→未発光

    発光モード・・・交流電圧駆動・着色層:高速で着消色を繰り返す→事実上未着色(吸光度変化せず)・発光層:酸化体と還元体両方が生成される→発光

    ニュートラル

    還元体

    酸化体

    着色モード反射型表示

    本素子のコンセプト:本素子のコンセプト:ECLECLととECECの融合の融合

    直流駆動直流駆動

  • 14

    発光モード発光型表示

    EC:着色層 ECL:発光層

    本素子のコンセプト:本素子のコンセプト:ECLECLととECECの融合の融合

    着色モード・・・直流電圧駆動・着色層:EC材料の酸化 or 還元反応→着色・発光層:酸化体か還元体片方のみ生成→未発光

    発光モード・・・交流電圧駆動・着色層:高速で着消色を繰り返す→事実上未着色(吸光度変化せず)・発光層:酸化体と還元体両方が生成される→発光

    ニュートラル

    還元体

    酸化体

    交流駆動交流駆動

  • 15

    使用材料:使用材料:ECLECL材料材料

    2+

    Ru(bpy)32+(Ru(bpy)3(PF6)2)

    Tris(2,2’-bipyridyl)ruthenium(II) hexafluorophosphate「Ru(bpy)32+」

    5 mM Ru(bpy)3 (PF6)250 mM TBAPDMSO

    交流電圧4 V, 200 Hz

    2価の錯イオン電気化学的な還元反応により

    1価、酸化反応により3価に変化

    ECL駆動の様子

    赤色の交流駆動ECLを発する

  • 16

    使用材料:使用材料:ECEC材料材料

    ○VYLON200 (東洋紡)ポリエチレンテレフタレート(PET)誘導体

    フタル酸エステル誘導体

    C CO OH3C CH3O O

    ○ジメチルテレフタレート (DMT)

    C COCH2O O

    CH2O

    n400 500 600 700

    0.0

    0.5

    1.0

    Abs

    orba

    nce

    Wavelength / nm

    DMT VYLON200

    直流電圧印加による電気的還元によって透明からマゼンタに色変化を示す

  • 17

    0 V DC 4 V AC 4 V

    Intensity (a.u.)

    DMT DMT –– RuRu錯体セルのデュアルモード駆動錯体セルのデュアルモード駆動

    400 500 600 700 800

    0.0

    0.4

    0.8

    1.2

    1.6

    400 500 600 700 800

    0

    2000

    4000

    6000

    8000

    Abs

    orba

    nce

    chan

    ge (a

    .u.)

    Wavelength / nm

    着色モード (DC 4 V)

    発光モード (AC 4 V)

    DMD素子の吸収・発光スペクトル変化

    溶液系素子においてDMD素子の駆動を実証した

    直流電圧印加:EC材料の色変化

    交流電圧印加:ECL材料の発光

  • 18

    従来技術とその問題点発色素子は、電気泳動,粉流体法が実用化。

    粒子移動であるため混色ができない →

    積層化が不可能・カラー化が困難

    発光素子としては、低分子蒸着法等が実用化。

    ナノメートルレベルでの制御が必要 →

    作業工程複雑化・生産性の低下・高価格化

    デュアルモード素子としては、実用化技術無し。従来技術の問題点であった、複雑な素子構造を単純化することに成功した。

  • 19

    新技術の特徴・従来技術との比較

    • 本技術はnmレベルでの膜厚制御を必要としないため、従来技術の問題点であった、製造工程の複雑化を改善することに成功した。

    • 電気化学系であるため単3二本程度の低電圧駆動が可能である。

    • 本技術の適用により、印刷法等が適用できるため、コストの低下が期待される。

  • 20

    想定される用途

    • 発色素子およびデュアルモード素子は電子ペーパーや電子ポスター、電子表示ボード、電子サイネージなど幅広い展開が可能。

    • 低電圧駆動の観点からアメニティ、おもちゃ等への展開も可能

    • 発光素子については、照明や電子表示ボード、ディスプレイ分野への展開が可能。

  • 21

    実用化に向けた課題

    • 発色素子・・・現在、フルカラー色表示、フレキシブル化が可能なところまで開発済み。高メモリー性発現が未解決。

    • 発光素子・・・現在、発光の確認、多色発光も可能なところまで開発済み。長寿命化が未解決である。

    • デュアルモ-ド素子・・・現在、発色、発光の確認、繰返しも可能なところまで開発済み。長寿命化が未解決である。

  • 22

    企業への期待

    • デバイス化の技術を持つ、企業との共同研究を希望。

    • また、調光素子や光学シャッター(発色素子)、簡易薄膜光源、多色発光デバイス(発光素子)、新規作像技術(デュアルモード素子)を開発中の企業、本技術の導入は有効と思われる。

  • 23

    本技術に関する知的財産権

    • 発明の名称 :カラーリライタブル表示素子• 出願番号 :特願2004-252381• 出願人 :千葉大学

    • 発明の名称 :交流駆動電気化学発光素子• 出願番号 :特願2005-325476• 出願人 :千葉大学

    発色素子

    発光素子

    デュアルモード素子• 発明の名称 :表示装置• 出願番号 :特願2010-154498,2010-055170• 出願人 :千葉大学

  • 24

    お問い合わせ先

    千葉大学産学連携・知的財産機構

    産学官連携コーディネーター 阿草 一男

    TEL 043-290 - 3565

    FAX 043-290 - 3519

    e-mail [email protected]