工業力学宿題模範解答・解説 -...

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工業力学 宿題 模範解答・解説 担当: 茨城大学 工学部 機械システム工学科 井上 康介 2019 年度版 1 1.1. [1 点にはたらく 2 力の合成] 1 する 45 角を 2 大きさがそれぞれ 40 [N]50 [N] ある き,こ れら 大きさ れほ か. 考え方 すれ よい. 解答例 Fig.1.1 ように した き, x 50 + 20 2y 20 2 [N] まる. って 大きさ F = (20 2) 2 + (50 + 20 2) 2 83.2 [N]. 40 [N] 50 [N] O x y Fig. 1.1 1.2. [1 点にはたらく力の分解] Fig.1.2 ように xy において y 20 [N] する き,こ x および L せよ. 45° L x y 20 [N] O Fig. 1.2 考え方 すれ よい. 解答例 Fig.1.3 ように きるこ から,x x 20 [N]L L に沿って右 20 2 28.3 [N] ある. ※以 2 えて い. F 1 = 20 0 , F 2 = 20 20 . 45° L x y 20 [N] Fig. 1.3 1.3. [力のモーメント] Fig.1.4 ように, ジョイ ント された 20 [cm] から 30 け,他 きに 10 [kgf] 引いた. によるジョイント モーメントを めよ. 30° 10 [kgf] Fig. 1.4 考え方 モーメント モーメントアーム 大きさ あり,そ ある.また, ジョイントを し, x =(x, y) T ベクトルを F =(F x ,F y ) T する き, モーメント N = F y x F x y きる ( 1.3)解答例 1 Fig.1.5 おり,モーメントアーム 0.2 · cos 30 =0.1 3 [m] あり,そ ある から,モーメント N =0.1 3 · 10g 17.0 [Nm]. 30° x y 10 [kgf] O 0.1 [m] 0.1 3 [m] Fig. 1.5 解答例 2 Fig.1.6 すように, わる F T する F N した 1

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工業力学 宿題 模範解答・解説

担当: 茨城大学 工学部 機械システム工学科 井上 康介

2019年度版

1 力

1.1. [1点にはたらく 2力の合成] 1点に作用する 45◦ の角をなす 2 力の大きさがそれぞれ 40 [N],50 [N] であるとき,これらの合力の大きさはどれほどか.

考え方 力の平行四辺形を作図すればよい.

解答例 Fig.1.1 のように力の平行四辺形を作図したとき,合力の x方向成分は 50+ 20

√2,y方向成分は 20

√2 [N]と

求まる.従って合力の大きさは

F =

√(20

√2)2 + (50 + 20

√2)2 ≈ 83.2 [N].

40 [N]

50 [N]O x

y

Fig. 1.1

1.2. [1点にはたらく力の分解] Fig.1.2のように xy 平面の原点において y 軸方向に 20 [N]の力が作用するとき,この力をx軸方向および図上の直線 Lの方向に分解せよ.

45°

L

x

y

20 [N]

O

Fig. 1.2

考え方 力の平行四辺形を作図すればよい.

解答例 Fig.1.3のように力の平行四辺形を作図できることから,x軸方向の分力は x軸負の方向に 20 [N],直線 L方向の分力は直線 Lに沿って右上方向に 20

√2 ≈ 28.3 [N]で

ある.

※ 以下の 2つの分力を答えても良い.

F1 =

[ −200

],F2 =

[2020

].

45°

L

x

y

20 [N]

Fig. 1.3

1.3. [力のモーメント] Fig.1.4のように,端点を地面上のジョイントで固定された長さ 20 [cm] の棒を水平から 30◦ の角度に傾け,他方の端点を鉛直上向きに 10 [kgf]の力で引いた.このとき力によるジョイント周りのモーメントを求めよ.

30°

10 [kgf]

Fig. 1.4

考え方 力のモーメントはモーメントアームと力の大きさの積であり,その正負は反時計回りのとき正である.また,ジョイントを原点とし,着力点座標を x = (x, y)T,力のベクトルを F = (Fx, Fy)

T とするとき,力のモーメントはN = Fyx− Fxy と計算できる (例題 1.3).

解答例 1 Fig.1.5に示すとおり,モーメントアームは 0.2 ·cos 30◦ = 0.1

√3 [m]であり,その方向は反時計回りである

から,モーメントは

N = 0.1√3 · 10g ≈ 17.0 [Nm].

30° x

y10 [kgf]

O

0.1 [m]

0.1 3 [m]

Fig. 1.5

解答例 2 Fig.1.6に示すように,棒に加わる外力を棒の方向の分力 FT と棒に直交する方向の分力 FN に分解した時,

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FT の作用線はジョイントを通るため,ジョイント周りの力のモーメントに寄与しない.したがって,ジョイント周りの力のモーメントは

N = FN · 0.2 = 10√3g · 0.2 ≈ 17.0 [Nm].

30°

FT

FN

Fig. 1.6

解答例 3 Fig.1.5に示すとおり,ジョイントを原点として xy

座標系をとると,着力点座標は (0.2 cos 30◦, 0.2 sin 30◦)T =

(0.1√3, 0.1) [m] であり,力は (0, 10g) [N] であるから,力

による原点周りのモーメントは

N = 10g · 0.1√3− 0 · 0.1 ≈ 17.0 [Nm].

1.4. [着力点の異なる力の合成] Fig.1.7 のように,ジョイントで固定された直方体に大きさ 20 [N]の 2力,F1, F2 が作用している時,この 2力をジョイントに作用する一つの力と力のモーメントに合成せよ.

60°

1 [m]

0.5

[m]

0.5 [m]

20 [N]

20 [N]F1

F2

Fig. 1.7

考え方 教科書 1.4節参照.着力点の異なる複数の力を合成する際には,合力ベクトルは各力ベクトルの和として求め,合モーメントは各力が着目する回転中心まわりに作用する力のモーメントを足せば良い.例題 1.4 のように,座標系をとって表計算すると分かりやすい場合もある.

解答例 1 合力をRとすると,

R = F1 + F2 =

[10

−10√3

]+

[ −200

]

=

[ −10

−10√3

]≈

[ −10−17.3

][N].

各力による力のモーメントをそれぞれ N1, N2 とし,合力を N とする.ジョイントに原点をとり,鉛直上に y 軸,図中右方向に x軸をとるとし,F1 = (F1x, F1y)

T とし,F1 の着力点座標を (x1, y1)

T とすると,

N = N1 +N2

= (F1yx1 − F1xy1) +N2

= (−5− 5√3) + 20 · 0.5

= 5− 5√3 ≈ −3.66 [Nm].

解答例 2 解答例 1と同様に xy 座標系を取り,各力および着力点,原点まわりのモーメントを表にすると以下の通りとなる.

Fxi Fyi xi yi N

F1 10 −10√3 0.5 0.5 −5− 5

√3

F2 -20 0 1 0.5 10

-10 −10√3 5− 5

√3

以上から合力は (−10,−10√3)T ≈ (−10,−17.3)T [N],合

モーメントは 5− 5√3 ≈ −3.66 [Nm].

1.5. [3力以上の力系の合成] Fig.1.8のように,xy 平面上の異なる着力点に作用する 3つの力があるとき,これを原点に作用する一つの力および一つの力のモーメントに合成せよ.

4

2

303030

1 2 3

20 [N]

x [m]

y [m]

O454545

20 [N]

10 [N]

Fig. 1.8

考え方 教科書 例題 1.4 を参照.各力を「原点に作用する力 +力のモーメント」に変換して合算する.

解答例 力を図上の上から順に F1,F2,F3 とすると,各力を原点に移動した際の力および力のモーメントは以下のTable 1.1のとおりとなる.ただし,(xi, yi)

T は i番目の力の着力点座標,Ni は i番目の力が原点周りに作用させる力のモーメントである.

よって求める合力は,原点に作用する力 (9.75,−2.93)T [N]

および力のモーメント 13.4 [Nm]である.

1.6. [平行力の合成] Fig.1.9 のように,水平に置かれた棒に 3

つの鉛直力が作用している時,これらの合力を求めよ.

15 [N]10 [N]

40 [cm] 20 [cm] 20 [cm]

20 [N]

Fig. 1.9

考え方 基本は前の問題と同様だが,力が鉛直であるため,水平方向の力を考慮する必要はない.合力は鉛直方向のみであり,その大きさは各力の足し引きで計算できる.「力およびモーメント」として回答する場合は,基準点を決めて,その点周りの合モーメントを求めれば良い.「一つの力」と

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Table 1.1

Fi Fix Fiy xi yi Ni

F1 −10√3 −10 3 4 −30 + 40

√3

F2 20 0 1 2 −40

F3 5√2 5

√2 2 0 10

√2

計 20 + 5√2− 10

√3 −10 + 5

√2 −70 + 10

√2 + 40

√3

して答える場合はその作用線位置を求める.

解答例 1 すべての力は鉛直なので,合力ベクトルは鉛直方向である.上向きを正とするとき,合力ベクトルの鉛直上向き成分は 10 + 15 − 20 = 5 [N]である.また,棒の左端まわりの合モーメントは

−20 · 0.4 + 15 · 0.6 = 1 [Nm].

これを合力の大きさで割ると,合力と棒の左端との距離は1/5 = 0.2 [m].

解答例 2 上の通り合力ベクトルは上向き 5 [N]である.その作用線の位置を左端から l [m]とすると,

5l = −20 · 0.4 + 15 · 0.6 = 1

より,l = 0.2 [m].

2 力のつりあい

2.1. [1 点にはたらく力のつりあい] Fig.2.1において,20 [kgf]

の力 F とつりあう力 F1,F2 の大きさを求めよ.

3045

FF1

F2

x

y

Fig. 2.1

考え方 Lamiの定理を使っても良いし,x軸方向成分と y

軸方向成分の力のつりあい式を連立させても良い.

解答例 1 Lamiの定理から,

F

sin 75◦=

F1

sin 135◦=

F2

sin 150◦

よって F1 ≈ 14.6 [kgf] ≈ 143 [N], F2 ≈ 10.4 [kgf] ≈101 [N].

解答例 2 x軸方向,y軸方向の力のつりあい式はそれぞれ,√3

2F1 +

1√2F2 = F,

1

2F1 =

1√2F2

以上の連立方程式を解いて,F1 ≈ 14.6 [kgf] ≈ 143 [N],

F2 ≈ 10.4 [kgf] ≈ 101 [N].

2.2. [着力点の異なる力のつりあい] Fig.2.2 に示すように,細い棒が回転支点 A,移動支点 Bによって水平に固定されており,この棒に 2つの力が作用しているとするとき,それぞれの支点で棒が受ける反力を求めよ.

300 [gf] 200 [gf]60A B

20 [cm] 30 [cm] 50 [cm]

Fig. 2.2

考え方 教科書 例題 2.5を参照.剛体の釣り合い問題では,次の 2 つ (式としては 3つ) のつりあい条件を考慮する:

(1) 力のつりあい:水平方向・鉛直方向のそれぞれにおいて,剛体が受けている合力は全体で 0 である (そうでなければ力の方向に移動し始める).

(2) 力のモーメントのつりあい:剛体が受けている合モーメントは 0 である (そうれなければモーメントの方向に回転しはじめる).

(1)については,各力の直角分力を求め,x軸方向ごと,y

軸方向ごとに合算して 0 とする式を立てる.(2) については,任意の回転中心を考え,その点まわりに各力がつくる力のモーメントを合計して 0とする式を立てる.

ここでの注意点がある.(1)の条件が成り立っているとき,残る力は偶力となっており,どの点回りで考えても同様となるため,基準点はどこを選んでも良い.逆に言えば,このときできるだけ計算が楽になる点を選択することが,問題を解くスピードとミスの可能性の小ささにつながる.例えば未知の斜めの力が存在し,これを求めるという問題を解く場合は,その力の作用線上に基準点を取れば,モーメントのつりあい式からその未知力の x 成分・y 成分を消せるため,式から未知数を 2つ除去できる.

この問題では,回転支点と移動支点がある.回転支点は,回転は自由なのでモーメントを逃がす,すなわち反モーメントを返さない支点であり,反力は水平・鉛直の両方の成分を持ちうる.一方で,移動支点は回転の他に一定の方向の力も逃がすので,反モーメントもなく移動方向に関する反力もない.したがって移動支点が返す反力は移動方向に垂直な方向を向いた力である.

解答例 図中右方向に x 軸,上方向に y 軸をとり,支点 A,B における反力をそれぞれ RA = (RAx, RAy)

T,RB = (0, RB)

T とする.また左右の外力をそれぞれ F1,F2 とすると,

F1 =

[0.15g

−0.15√3g

][N], F2 =

[0

−0.2g

][N]

である.

水平方向の力のつりあい式は

RAx + 0.15g = 0. (2.1)

よって RAx = −0.15g ≈ −1.47 [N]である.

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F1x

F2

F1y

RA

RB

Fig. 2.3

鉛直方向の力のつりあい式は以下の通り.

RAy +RBy = 0.15√3g + 0.2g. (2.2)

点 Aまわりの力のモーメントのつりあい式は

0.15√3g · 0.2 + 0.2g · 0.5 = RB · 1. (2.3)

連立方程式式 (2.2),式 (2.3)を解いて,

RAy = (0.12√3 + 0.1)g ≈ 3.02 [N],

RB = (0.1 + 0.03√3)g ≈ 1.49 [N].

2.3. [剛体のつりあい] Fig.2.4 に示すように,天井のジョイントで固定された質量 200 [g]の均一な直方体の箱が,別の物体に引っかかった状態にあるとき,箱が別の物体から受ける反力 R およびジョイントにおいて物体から受ける力 F

を求めよ.ただし,箱と物体との間の接触はなめらかであるとする.

20 [cm

]

30 [cm

]

15 [cm]

45

Fig. 2.4

考え方 剛体のつりあい問題では,剛体に関する 2方向の力のつりあい条件および力のモーメントのつりあい条件を定式化して解くことにより未知力を求める.

何にせよ,まずは作用している力や力のモーメントを列挙する作業をもれなく行うこと.Fig.2.5に示すように,箱に作用する力は,重心に作用する鉛直下向きの重力mg,ジョイントから受ける力 F,物体からの反力 R であり,R については「なめらかである」というから方向が既知となっている.一方で F については方向も大きさもわからないため,(Fx, Fy)

T と 2変数にする.

作用している力や力のモーメントが列挙できたら,あとはつりあい条件を求めれば良い.力のつりあい式は水平・鉛直方向の 2本であり,力のモーメントのつりあい式は任意の点まわりのモーメントを 0とするようにすればよい.ここで,「任意の点」を計算が楽になる点に選ぶことが重要である.この問題では,この点をジョイントに置くことで,ジョイントで作用する力 F の要素を式から除外することができ,計算が楽になる (と同時にミスの可能性も減る).

mg

F

R20

[cm]

30 [cm

]

15 [cm]

45

Fig. 2.5

解答例 図中水平右を x軸方向,鉛直上方向を y 軸方向とする xy座標系をとる.箱の質量をm (= 0.200) [kg],重力加速度を g [m/s2]と記載する.

Fig.2.5 に示すとおり,箱に作用する力は箱の重心に作用する重力 mg,ジョイントにおいて作用する力 F =

(Fx, Fy)T,物体からの反力R = (R cos 135◦, R sin 135◦)T

である.

箱の水平方向の力の釣り合いから,

Fx +R cos 135◦ = 0. (2.4)

鉛直方向の力の釣り合いから,

Fy +R sin 135◦ −mg = 0. (2.5)

ジョイントと箱の重心との水平方向距離は,図の幾何学的関係から (15/4)

√2 であることを考え,ジョイントまわり

の力のモーメントの釣り合いから

mg · 154

√2−R · 20 = 0. (2.6)

式 (2.6)より R = 3√2/16 � 0.52 [N].これを式 (2.4),式

(2.5)に代入し,F = (0.37, 1.59)T [N].

2.4. [トラス (節点法)] Fig.2.6に示すトラスが節点 Aにおいて水平右向き 100 [N],節点 Bにおいて鉛直下向き 200 [N]の力を受けているとする.

(1) 支点 C,D においてトラスが受ける反力を求めよ.(2) すべての部材力を節点法により求めよ.

BA

C D

2[m]

2 [m]

Fig. 2.6

考え方 節点法でも切断法でも,まずはトラス全体が受けている全外力の計算を行う.つまり,支点 C,Dにおける反力を求めなければならない.そこで,Fig.2.7のようにトラス全体を一つの剛体と見立てて釣り合い条件を用いる.支点 Cは移動支点なので,水平方向の力は受け流してしまう.

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つまり,支点 Cで受ける反力RC は鉛直力である.支点 D

で受ける反力RD は,水平・鉛直の両方の成分を持ちうる.これらの力を変数化する際,「どちらを正としたか」に十分気をつける こと.例えば水平右方向および鉛直上方向を正としてRC = (0, RC)

T,RD = (RDx, RDy)T とする,とい

うのが一番一般的で分かりやすい.あとは,静力学の基本戦略どおりに,水平・鉛直方向の力のつりあい式,任意の点まわりのモーメントのつりあい式を立てる.

C D

B

A

100 [N]200 [N]

RC RD

Fig. 2.7

これで外力は全て求まったので,いよいよ内力つまり部材力の計算に入る.

まず,部材力を変数化する.注意すべきことは,どちらが正であるかが分からなくなるのを避けるため,必ず引張方向 (つまり,部材が節点を引っ張る方向) を正とすることを徹底する.値が負なら圧縮材である.Fig.2.8に示すように,変数名は,例えば FAB であれば,「部材 AB が節点 A

を引っ張る力」であるといった形で,決まったルールに基づいて定めることで,ミスを減らすことができる.

C D

B

200 [N]

RC

RD

FAB

FBA

FBD

FBC

FAC

FDB

FDC

FCA

FCB

FCD

100 [N]

A

Fig. 2.8

次に節点ごとのつりあい条件を用いて部材力を求めていく.ここでは「ある節点が受ける力 (部材に引かれる力および外力)のつりあい」を考え,これを水平方向・鉛直方向 (もしくは別の直交する 2方向)についてそれぞれ定式化する.例えば節点 Aについては,節点 Aは左から 100 [N]の外力に押され,右から部材 ABに FAB で引っ張られ,下から部材 AC に FAC で引かれている.その水平方向のつりあい式は 100 + FAB = 0のようになり,これから FAB = −100

が求まる.マイナスの値なので,部材 AB には 100 [N] の圧縮力が作用していることが分かる.

以上のように,節点 1つに対して使える式は「縦の力のつりあい」および「横の力のつりあい」の 2 本のみなので,未知力が 3つ以上存在する節点については,まだ解けない.そこで,未知力が 2以下の節点から作業を開始しなければならない.

解答例

(1) 図中,水平右向きに x 軸,鉛直上向きに y 軸をとる.

節点 C, D においてトラスが外部から受けている反力をそれぞれ RC = (0, RC)

T,RD = (RDx, RDy)T と

おく.トラス全体に関する力および力のモーメントのつりあいは以下の通りに定式化できる.• 水平方向の力のつりあい:100 +RDx = 0,

• 鉛直方向の力のつりあい:−200+RC +RDy = 0,

• 点 Dまわりの力のモーメントの釣り合い:−100 · 2−RC · 2 = 0.

以上を解いて,RC = −100,RD = (−100, 300)T [N].(2) 部材力を引張力と仮定し,Fig.2.8のように変数名をつける.節点 A における水平方向の力のつりあいから,100 +

FAB = 0.よって FAB = −100.鉛直方向の力のつりあいから,FAC = 0.節点Bにおける水平方向の力のつりあいから,−FBA−FBC cos 45◦ = 0.よって FBC = −√

2FBA = 100√2.

鉛直方向の力のつりあいから,−200 − FBC sin 45◦ −FBD = 0.よって FBD = −200 − (1/

√2)FBC =

−300.節点 C における水平方向の力のつりあいから,FCB cos 45◦ + FCD = 0.よって FCD =

−(1/√2)FCB = −100.

以上をまとめて,各部材に働く力は AB:100 [N] (圧縮材),AC:0 [N],BC:141 [N] (引張材),BD:300 [N]

(圧縮材),CD:100 [N] (圧縮材) である.

2.5. [トラス (切断法)] Fig.2.9に示すように,一辺 2 [m]の正方形に筋交いをくわえた構造を縦に 4つつなげたトラスがあるとする.このトラスに,図に示す 3つの鉛直もしくは水平な力が加わったとき,部材 CE,CFおよび DFの部材力を求めよ.

100 [N]

200 [N] AB

C D

E

JI

HG

F

100 [N]

Fig. 2.9

考え方 教科書 p.29をよく読むこと.

この場合の切断面は,部材 CE,CFおよび DFを通る面である.切断法の手順として,まず地面から受ける反力を計算すると教えているが,この問題のケースでは,上側の断

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片 (正方形 ABDC) についてのつりあいを計算すればよく,その計算に地面からの力は必要としないため,トラス全体のつりあい問題を解く必要はない.

解答例 Fig.2.10 に示すように,部材 CE,CF および DF

を通る面でトラスを仮想的に切断したと考え,その上側の部分,正方形 ABDCを一つの剛体と見なす.

また,部材 CE,CFおよび DFの部材力は引張力と仮定して,節点 Cおよび Dにおいて受ける部材力を同図の通り定義する.

100 [N]

B

C D

E

JI

HG

F

100 [N]

FDF

FCFFCE

200 [N] A

Fig. 2.10

正方形 ABDCの水平方向の力のつりあい式は

FCF cos 45◦ + 200 = 0

であるから,FCF = −200√2である.

節点 Cまわりのモーメントのつりあい式は

−200 · 2− 100 · 2− FDF · 2 = 0

であり,よって FDF = −300.

鉛直方向の力のつりあい式は

−100− 100− FCE − FCF sin 45◦ − FDF = 0.

よって,FCE = 300.

以上をまとめると,部材力は CE:300 [N] (引張材),CF:200

√2 ≈ 283 [N] (圧縮材),DF:300 [N] (圧縮材) である.

3 重 心

3.1. [積分による図心の導出] xy 平面上における曲線 y = (x −1)2 と x軸,y 軸で囲まれる領域の図心を求めよ.

考え方 質量mの物体の重心座標が xG とするとき,物体を構成する微小部位の位置を x,質量を dmとすると,

mxG =

∫xdm

が成り立つ.また,大きさを持つ微小部位の重心位置を x,質量を dm とした場合も上の式が成り立つ.図心については,上式の質量のかわりに長さ,面積,体積を用いればよい.

x

y

1

O 1

Fig. 3.1

Fig.3.2のように,x = tの位置に微小幅 dtの微小部位をとるとき,その重心座標は x = (t, (t − 1)2/2)T であるから,これを上の式に代入すればよい.

x

y

1

O 1

dt

t

Fig. 3.2

解答例 求める領域の面積を S,図心を xG = (xG, yG)T

とすると,

S =

∫ 1

0

(x− 1)2dx =1

3.

よって,

xG =1

S

∫ 1

0

t(t− 1)2dt =1

4= 0.25,

yG =1

S

∫ 2

0

1

2(t− 1)4dt =

1

10= 0.1.

3.2. [重心位置の同定] 300 × 200 [mm] の長方形の形状で,質量が 30 [kg] の均一ではない物体の角に回転自由なジョイントを取り付け,その対角の角を真上に引き上げて支えることを考える.底面を水平としたときの引き上げ力の大きさは F1 = 100 [N],水平から 30◦ 傾けたときの引き上げ力は F2 = 90.0 [N] であったとするとき,この物体の重心位置を求めよ.ただし,重心位置は図 (b) のように物体上に設定した XY 座標系上の座標として示せ.

F1

200

[mm

]

300 [mm] 30°

F2

XY

XY

(a) (b)

Fig. 3.3

考え方 物体の各部位にかかる重力は,重心に全重量が加

6

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わったときと同じ作用をする.そこで,「重心に加わる重力と引き上げ力がそれぞれ生み出す力のモーメントがつりあっている (拮抗している)」と考えれば良い.そのモーメントの中心をジョイントに設定すれば,モーメントの計算からジョイントにおける反力を除外できる.

解答例 ジョイントを原点とし,水平右向きに x軸,鉛直上向きに y 軸をもつ xy 座標系 (絶対座標系または世界座標系) を設定する.また,物体座標系 XY における物体重心の位置を XG = (XG, YG)

T とする.なお,寸法の単位を[m]として計算する.

底面を水平としたとき,物体重心の絶対座標はX であるから,その際の重力と引き上げ力によるジョイントまわりの力のモーメントのつりあいから,

100 · 0.3− 30g ·XG = 0.

よって XG = 1/g ≈ 0.102.

水平から 30◦ に傾けた際の引き上げ点の x 座標は x′PU =

0.3 cos 30◦ − 0.2 sin 30◦ = 3√3

20 − 0.1 であるから,この際の引き上げ力によるジョイントまわりの力のモーメントは

M1 = 90x′PU =

27

2

√3− 9.

一方,この際の重心の絶対座標は回転変換行列を用いて(x′G

y′G

)=

(cos 30◦ − sin 30◦

sin 30◦ cos 30◦

)(XG

YG

)

と計算できるのでその x座標は

x′G = XG cos 30◦ − YG sin 30◦ =

√3

2g− YG

2

である.したがってこのときの重力によるジョイントまわりの力のモーメントは

M2 = −30g · x′G = −15

√3 + 15gYG.

モーメントのつりあいからM1 +M2 = 0 なので,これを解いて

YG =3√3 + 18

30g≈ 0.079.

以上から,物体重心はXG = (0.102, 0.079)T [m]の位置にある.

※ このように,物体などに固定された物体座標系あるいは相対座標系と,外部世界に固定された世界座標系または絶対座標系を使い分けて解析を行うことは今後よくある.例えばロボットマニピュレータでは,ロボットが固定された外部環境に貼り付く「世界座標系」のほか,リンク i に固定された「リンク i 座標系」やロボットハンドに固定された「手先座標系」など複数の座標系を用い,その相対的な位置・姿勢の関係を用いて制御を行う.

3.3. [一部を除去した物体の重心] Fig.3.4 に示すように 300 ×200 [mm] の長方形から半径 200 [mm] の 1/4 円を除去した領域の図心を求めよ.

O

x

y

200

300

Fig. 3.4

考え方 一部を除去した物体について,除去前の質量をmP,重心を xP,除去部分の質量を mD,重心を xD とすると,除去後の物体の重心は

xE =mPxP −mDxD

mP −mD

と計算できる.

この式は,結合体の重心の式 (m1+m2)xG = m1x1+m2x2

を変形したものである.

解答例 除去前の長方形の面積は AP = 60000 [mm2],重心は xP = (150, 100)T [mm] であり,除去される 1/4 円の面積は AD = 10000π [mm2],その重心は xD = (300 −800/(3π), 800/(3π))T [mm]である.

したがって,除去後の重心は

xE =APxP −ADxD

AP −AD≈

(78117

)[mm].

3.4. [Pappus-Guldinus の定理] Fig.3.5 に示す図形は,長方形から半円を除去したものである.この図形を直線 L を軸として一回転させてできる立体図形について,その表面積および体積を重心を利用して求めよ.ただし長さの単位は[mm]とする.

10

30

5

15L

Fig. 3.5

考え方 Pappus-Guldinus の定理によれば,長さ l,回転軸から重心への距離 dの曲線を回転軸の周りに一回転させてできる回転体の表面積は 2πld,面積 s,回転軸から重心への距離 dの平面領域を回転軸のまわりに一回転させてできる回転体の体積は 2πsd である.その証明については教科書を参照すること.

したがって,表面積を求めるには,図形の外周のうち,軸L に重ならない部分について長さ,重心を求め,これを定理の式に代入すればよい.また,体積を求めるには,図形の面積と重心を求めて代入すれば良い.なお,除去した半円の部分以外については単なる円柱形状であるから,その部分については重心を利用せずに求め,半円形に関連する部位だけについて定理を利用してもよい.

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解答例 Fig.3.6のように xy 座標系をとる.

x

y

O

Fig. 3.6

図形の上下の x 軸に平行な部分について,長さはそれぞれ l1 = 15,重心の x 座標は x1 = 15/2 である.また,y

軸に平行な部分については,長さはそれぞれ l2 = 5,重心の x 座標は x2 = 15 である.半円弧については,長さはl3 = 10π,重心の x 座標は x3 = 15 − 20/π である.以上から,図形の外周のうち,軸 Lに重ならない部分について,長さは L1 = 2l1 + 2l2 + l3 = 40 + 10π,重心の x座標は

X1 =2l1x1 + 2l2x2 + l3x3

2l1 + 2l2 + l3=

30π + 35

2π + 8.

よって回転体の表面積は

S = 2πL1X1 ≈ 4060 [mm2].

また,領域を長方形から半円を除去したものと考えたとき,長方形の面積は s4 = 450,重心の x座標は x4 = 15/2.半円の面積は s5 = 50π,重心の x座標は x5 = 15−40/(3π).よって図形の面積は S2 = s4 − s5 = 450 − 50π,重心の x

座標は X2 = (s4x4 − s5x5)/(s4 − s5).よって回転体の体積は

V = 2πS2X2 ≈ 10600 [mm3].

x

y

O

Fig. 3.7

3.5. [重心と安定性] Fig.3.8 に示すように,正方形の一つの角をカットした形状の断面を持つ棒材が床に置かれているとき,これが安定の座りとなる dの範囲を求めよ.ただし寸法の単位は [mm]である.

考え方 物体が安定の座りとなるには,その重心が支持領域の真上に収まっていれば良い.その場合,物体を少し傾けた場合の重心の軌道は上向きとなるため,重力による復元力が発生する.

この問題では,支持領域は Fig.3.9 における線分 OA であり,重心がその真上の範囲に収まるための条件は,重心のx座標 xG について,0 < xG < 20− dが成り立つことである.これが成り立たない場合は,棒材は点 Aまわりに時計回りに転倒する.

20

d

20

10

Fig. 3.8

棒材断面上の重心を求めるには「一部を除去した物体の重心」の式を素朴に適用すれば良い.とくに問題文に明記していないが,材料は均一であると想定して図心を求める.

y

O

x

20

10

2020−d

G1

G2

G1

G2AA

Fig. 3.9

解答例 Fig.3.9のように棒材の断面に xy 座標系をとる.

角をカットする前の正方形の面積は s1 = 400,重心 G1 のx座標は x1 = 10である.一方,角をカットした直角三角形の部分については,その面積は s2 = 5d,重心G2 の x座標はは x2 = 20− d/3である.

以上から,棒材断面の図心の x座標は

xG =s1x1 − s2x2

s1 − s2=

4000− 5d

(20− d

3

)400− 5d

=

5

3d2 − 100d+ 4000

400− 5d.

棒材が安定の座りとなる条件は,重心が線分 OAの真上の範囲に入ることだから,0 < xG < 20 − dである.これに上で求めた xG を代入して解いて,d < 11.0 [mm].

6 剛体の運動

6.1. [積分による慣性モーメントの導出] xy 平面上における曲線 y = −x(x− 2)と x軸,y 軸で囲まれる領域の形状をした薄い板があるとする.この板の x軸まわりの慣性モーメントを求めたい.ただし,寸法の単位は [cm]とし,板の面密度は ρ = 0.2 [g/cm2]とする.

(1) y 軸に平行な直線 x = tに沿って,微小幅 dtの微小部位を考え,その部位の x軸まわりの慣性モーメント dI

を求めよ.(2) 全体の慣性モーメントを I =

∫dI の積分により求

めよ.

※ 質量m,長さ lの細く一様な棒を,棒の端点を通り棒に直交する回転軸のまわりで回転させる際の慣性モーメントはml2/3である.

解答例

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1

t dt

O x

y

1 2

Fig. 6.1

(1) 微小部位の長さは l = −t(t − 2),面積は −t(t − 2)dt

なので,その質量は dm = −ρt(t − 2)dt.よって微小部位を長さ l,質量 dmの棒とみなすと,その x軸まわりの慣性モーメントは

dI =1

3dm·l2 = −ρ

3t3(t−2)3dt = − 1

15t3(t−2)3dt.

(2)

I =

∫dI = − 1

15

∫ 2

0

t3(t− 2)3dt

= − 1

15

∫ 2

0

t6 − 6t5 + 12t4 − 8t3dt

= − 1

15

[1

7t7 − t6 +

12

5t5 − 2t4

]20

≈ 0.0610 [g · cm2]

6.2. [角運動方程式] Fig.6.2 に示すように,水平に置かれた長さ 1.00 [m],質量 20.0 [kg]の細く長い棒の端点に,鉛直な回転軸を持つモータを接続し,モータに一定のトルクをかけて棒を回転させてボールを打つことを考える.初期状態から 90◦ 回転した時点でボールに接触するとするとき,動き始めてから 1.00 [s] 後にボールに接触させるためにはどれほどのトルクで動かせばよいか?

Fig. 6.2

考え方 所定の時間で π/2 [rad] 回転させるために必要な角加速度 ω̇ を求め,棒の慣性モーメント I を用いて角運動方程式 N = Iω̇ に再入すれば N が求まる.

解答例 棒の回転軸まわりの慣性モーメントは I = (1/3) ·20 · 12 = 20/3 [kg m2] である.また,1.00 [s] で回転角がπ/2 [rad]となるために必要な角加速度を ω̇ とすると,

π

2=

1

2ω̇ · 12

より,ω̇ = π [rad/s2]である.

よって角運動方程式より必要トルクは N = Iω̇ = 20π/3 ≈20.9 [Nm].

6.3. [剛体の運動学] Fig.6.3 に示すように,水平面上を速さv = 20.0 [km/h] で等速直線運動しているトロッコにジョイントを取り付け,ジョイントに長さ l = 2.00 [m] の棒を取り付けた.ある瞬間の棒の角度が,図の x軸方向から120◦ であり,その際の角速度が ω = −1.00 [rad/s],角加速度が ω̇ = −2.00 [rad/s2]であったとき,棒先端の (地面から見た) 速さおよび加速度の大きさを求めよ.

l

θ, ω, ωv

x

y

Fig. 6.3

考え方 教科書 p.79のとおり.この問題ではトロッコの加速度は 0であることに注意.

解答例 まず速度については,Fig.6.4 に示すように,棒先端のトロッコに対する相対速度は棒に直交する大きさ|lω| = 2 [m/s]の速度であり,一方トロッコは x軸方向に大きさ v = 20.0 · 1000/3600 [m/s] の速度を持っている.これらを合成した速度は x軸方向に v + |lω| cos 30◦,y 軸方向に |lω| sin 30◦ であるから,その大きさは

√(√3 + 20/3.6)2 + 12 ≈ 7.36 [m/s].

l

θ, ω, ωv

l ωv

Fig. 6.4

次に加速度について,棒先端のトロッコに対する相対加速度は棒の角加速度による,棒に直交する方向で大きさ|lω̇| = 4.00 [m/s2]の加速度と,棒に沿って回転軸方向に向かう,大きさ lω2 = 2.00 [m/s2]の向心加速度である.これらは直交しているので,その大きさは√

42 + 22 ≈ 4.47[m/s2].

l

θ, ω, ωv

l ω

l ω2

Fig. 6.5

6.4. [Newton-Euler法] Fig.6.6に示すようなヨーヨーがあるとする.ヨーヨーの全体を (スリット部分や軸を無視して) 半径 R = 25.0 [mm],質量m = 100 [g]の均一な円柱とみなす.また,糸を巻き付ける中心軸の半径が r = 2.5 [mm]であるとする.このとき,糸を巻き付けて手で支えて静止さ

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(a) (b)

Fig. 6.6

せたヨーヨーから手を離してから,l = 500 [mm]下の地面にヨーヨーが接するまでに要する時間を求めよ.

考え方 教科書 p.81の例を少し複雑化しただけの問題である.作用している力は教科書の例と同様に,糸の張力 T とヨーヨー重心に作用する重力mg だけである.

単位について注意を要する.問題文のまま [mm] で計算するなら,重力加速度の大きさは g = 9800 [mm/s2] としなければならない.そのような煩雑さを避けるならば,すべての単位を SI単位系に揃える (質量は [kg],長さは [m]).

x

T

mg

Fig. 6.7

解答例 重力加速度を gとすると,g = 9800 [mm/s2]である.またヨーヨー重心の鉛直下向き加速度を a [mm/s2],ヨーヨーの角加速度を反時計回りを正として ω̇ [rad/s2]とする.ヨーヨーに作用する力は,ヨーヨー重心において鉛直下向きに作用する重力 mg とワイヤに沿って上向きにヨーヨーを引っ張る糸の張力 T である.

ヨーヨーに関する運動方程式は

mg − T = ma, (6.1)

ヨーヨーに関する角運動方程式は

Tr = Iω̇ =1

2mR2ω̇, (6.2)

また,ヨーヨーの回転角とヨーヨー位置の間の拘束関係から,

a = rω̇. (6.3)

式 (6.3)を式 (6.2)に適用して

Tr =1

2mR2 · a

r

すなわち

T =1

2mR2

r2a.

これを式 (6.1)に代入して変形し,

mg = T +ma =

(R2

2r2+ 1

)ma.

よって

a =g

R2

2r2 + 1.

ヨーヨーが地面に落ちるまでの時間を T [s]とすると,

1

2aT 2 = l

なので,

T =

√2l

a≈ 2.28 [s].

6.5. [Newton-Euler 法] Fig.6.8 に示すように,質量 m1 = 100

[kg] の荷物をワイヤに吊るし,ワイヤを質量 m2 = 50.0

[kg],直径 r = 0.800 [m]の定滑車に取り付けたところ,荷物は鉛直下方向に加速した.これについて,以下の問いに答えよ.

(1) 荷物がワイヤに引かれる力を T,荷物の加速度を鉛直下方向に a [m/s2]として,荷物に関する運動方程式を記せ.

(2) 滑車の角加速度を,反時計回りを正として ω̇ [rad/s2]

として,滑車に関する角運動方程式を記せ.(3) 荷物の加速度を求めよ.

Fig. 6.8

考え方 これも素朴な Newton-Euler法の適用である.並進運動するのが荷物で,回転運動するのは滑車であり,それらの運動は滑車の回転量と荷物の移動量の関係という形で拘束されている (連動している).

解答例 Fig.6.9に示すように,荷物が受ける力は重力m1g

とワイヤ張力 T であり,滑車が受ける力はワイヤ張力 −T

である.

T

m1g

−T

Fig. 6.9

10

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(1) m1a = m1g − T.

(2) −Tr =1

2m2r

2ω̇.

(3) 滑車の回転量と荷物の移動量の関係から,a = −rω̇ であり,これを (2)の結果に代入して整理すると,

T =1

2m2a

である.これを (1)の結果に代入して,

m1a = m1g − 1

2m2a.

よって

a =m1

m1 + 12m2

g ≈ 7.84 [m/s2].

7 衝 突

7.1. [運動量と力積] テニスのボールは約 60 [g]であり,一流のプレーヤーではそのサーブは 200 [km/h] のオーダにもなる.いま,x軸上を負の方向に向かって時速 180 [km/h]でサーブのボールが飛んできたとし,これを x軸上に正の方向に時速 90 [km/h]で打ち返すとする.

(1) 飛んできたサーブボールの運動量を (正負に気をつけて) 求めよ.

(2) リターン時のラケットとのインパクトによってボールが受ける力積を求めよ.

(3) インパクトの時間が 5 [ms]であり,その間ボールがラケットから受ける力が一定であるとすると,それはどれほどの大きさの力か.

考え方 教科書 p.89∼90を参照.

解答例

(1) 0.06 · (−180 · 1000/3600) = −3.00 [kgm/s].

(2) インパクト後の運動量は 0.06·(90·1000/3.0) = 1.50であるから,インパクト前後の増加量は 4.50 [kg m/s]であり,これが加えられた力積に等しいので,4.50 [Ns].

(3) 力の大きさを F,その作用時間を Δt = 0.005 [s]とすると,F = 4.50/Δt ≈ 900 [N].

7.2. [角運動量 (+ Newton-Euler 法)] Fig.7.1 に示すように,水平面上に置かれた質量 40.0 [kg],直径 50.0 [cm] の球の中心に 70.0 [N]の水平力を作用させたところ,球は滑ることなく転がり始めた.力を作用させてから 4.00 [s] 後の球の角運動量の大きさを求めよ.

FF

Fig. 7.1

考え方 しつこく Newton-Euler法の訓練をまたやってから,角運動量を求めるという問題.ふつうにNewton-Euler

をやれば球の角加速度がわかり,これにより 4 秒後の角速度の大きさが分かる.それに慣性モーメントをかければよい.

解答例 球質量を m (= 40.0 [kg]),球半径を r (= 0.25

[m])とおく.Fig.7.2に示すとおり,球に作用している力は中心に作用する力 F (F = 70.0 [N]),重力 mg,垂直抗力R (R = mg),摩擦力 F ′ である.

F

mgR

F’

F

mgR

Fig. 7.2

球の右向き加速度を a [m/s2]とすると,球の運動方程式は,

F − F ′ = ma. (7.1)

球の反時計回り角加速度を ω̇ とすると,球の角運動方程式は,

−F ′r =2

5mr2ω̇. (7.2)

球の回転量と並進移動量の関係から,

a = −rω̇. (7.3)

式 (7.3)を式 (7.2)に代入して整理すると,

F ′ =2

5ma

であり,これを式 (7.1)に代入して

F =7

5ma.

よって,a = 5F/(7m) = 5/4.したがって ω̇ = −a/r = −5

であり,4秒後の角速度は ω = 4ω̇ = −20 [rad/s].

したがって,4秒後の角運動量の大きさは

|L| =∣∣∣∣25mr2 · (−20)

∣∣∣∣ ≈ 20.0 [kg m2/s].

7.3. [運動量保存則] ある飛行機械 Fの質量は 200 [kg]であるとする.これに体重 70.0 [kg]の D氏,体重 40.0 [kg]の P

氏が搭乗し,時速 60 [km] で飛行しながら,空中に静止する体重 35.0 [kg]の T氏を捕まえて飛行し続けたとする.T

氏を捕まえた直後の Fの速さはどれほどか.

Fig. 7.3

考え方 ある物体群から構成されるシステムについて,外部からの力の作用がない限りは,システム内部の物体間に相互作用が生じたとしても,システム内の運動量の合計は不変である.これが運動量保存則である.この問題では,T氏を捕まえる前と後で,システムの構成要素 (F,D 氏,P

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氏,T氏) のもつ運動量の合計が変わらないこと,T氏救出直後において,この 4者の速度がおなじになることを利用する.

解答例 T 氏を捕まえる前での系全体の運動量は (200 +

70 + 40) · 60 + 35 · 0 [kg km/h] である.T 氏捕獲後のF の速度を v [km/h] とすると,その時点での運動量は(200 + 70 + 40 + 35)v である.運動量保存則から捕獲前後で運動量の合計は変わらないので,

310 · 60 = 345v,

よって v ≈ 53.9 [km/h].

7.4. [向心衝突] 水平面上に静止している質量m1 = 3 [kg]の物体 1に,v2 = 5 [m/s]の速さで滑ってきた質量m2 = 7 [kg]

の物体 2 が衝突した.2 物体の間の反発係数を e = 0.2 とし,2物体と水平面との間の接触をなめらかであるとして,以下の問いに答えよ.

(1) 衝突前の物体 2の速度方向を正として,衝突前の物体2の運動量を求めよ.

(2) 衝突前後の 2物体の運動量について,運動量保存則の式を記せ.

(3) 衝突後の 2物体の速度 v′1,v′2 を求めよ.

解答例

(1) m2v2 = 35 [kgm/s].(2) 衝突後の 2物体の速度を v′1,v′2 として,

m2v2 = m1v′1 +m2v

′2, (7.4)

すなわち

3v′1 + 7v′2 = 35.

(3) 反発係数の定義から,

v′1 − v′2 = ev2 = 1. (7.5)

式 (7.4)と式 (7.5)から,v′1 = 4.2, v′2 = 3.2 [m/s].

7.5. [斜めの衝突] Fig.7.4 に示すように,x 軸上を速度 v1 =

(10, 0)T [m/s]で進んできた質量 m1 = 5 [kg],半径 1 [m]

の球 1 が,座標 (0, 1)T [m] に静止している質量 m2 = 15

[kg],半径 1 [m]の球 2に衝突したとする.2球の間の反発係数を 0.6 とするとき,衝突後のそれぞれの速度ベクトルv′1, v

′2 を求めよ.

x

y

O

10 [m/s]

Fig. 7.4

※ 衝突の瞬間の 2球の中心を結ぶ直線は x軸方向ではないことに注意.

考え方 教科書 7.4.2項「斜めの衝突」を参照.2球の斜め衝突では,衝突する瞬間の中心同士を結ぶ直線の方向を X

軸,これに直交する方向を Y 軸としたとき,X 軸方向の速度成分については衝突による相互作用を向心衝突と同様に扱うことができ,一方で Y 軸方向には力を受けないため,衝突前後で速度は同じである (Fig.7.5).

O

X

Y

V1

y

x

O’

Fig. 7.5

若干ややこしいのは,問題文で与えられている xy 座標系と,力の相互作用方向に基づいて設定する XY 座標系が30◦ ずれた方向をもつ*1ことであり,xy 座標系で定義された衝突前の速度をXY 座標系へ回転変換し,XY 座標系上で衝突の計算を行って衝突後の速度ベクトルを求めた後,再びそれらの速度ベクトルを xy 座標系で表現するための回転変換が必要となる.

解答例 衝突の瞬間において,接触点を原点 O′ とし,2球の中心を結ぶ直線を X 軸とする XY 座標系を Fig.7.5 のように設定する.XY 座標系における衝突前の 2球の速度を V1 = (V1X , V1Y )

T,V2 = (V2X , V2Y )T (= 0),衝突後

の 2球の速度を V ′1 = (V ′

1X , V ′1Y )

T,V ′2 = (V ′

2X , V ′2Y )

T とする.

この瞬間の球 1 の中心は XY 座標系において (−1, 0)T であり,球 2の中心は (1, 0)T である.また,XY 座標系における球 1の衝突前の速度は

V1 =

(cos(−30◦) − sin(−30◦)sin(−30◦) cos(−30◦)

)v1 =

(5√3

−5

).

衝突時の 2 球の間の相互作用は X 軸方向において起こるので,Y 軸方向の速度は不変.よって,V ′

1Y = V1Y = −5,

V ′2Y = V2Y = 0.

次に X 軸方向に関して運動量保存則を定式化すると

m1V1X +m2V2X = m1V′1X +m2V

′2X ,

すなわち

25√3 = 5V ′

1X + 15V ′2X . (7.6)

また,反発係数が e = 0.6であるから,

V ′2X − V ′

1X = e(V1X − V2X),

すなわち

V ′2X − V ′

1X = 3√3. (7.7)

式 (7.6)と式 (7.7)を連立させて解き,

V ′1X = −

√3, V ′

2X = 2√3

*1 Fig.7.5 において,中心間距離は 2,球 2 の中心と x 軸との距離は 1 であるから,x 軸と X 軸のなす角度を θ とすると,theta = sin−1(1/2)

である.

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を得る.

以上から,XY 座標系における 2球の衝突後の速度はそれぞれ,

V ′1 =

( −√3

−5

), V ′

2 =

(2√3

0

)である.

xy座標系における 2球の衝突後の速度を v′1,v

′2 とすると,

v′1 =

(cos 30◦ − sin 30◦

sin 30◦ cos 30◦

)( −√3

−5

)

=

(1

−3√3

)≈

(1

−5.20

)[m/s],

v′2 =

(cos 30◦ − sin 30◦

sin 30◦ cos 30◦

)(2√3

0

)

=

(3√3

)≈

(3

1.73

)[m/s].

7.6. [斜めの衝突] Fig.7.6 に示すように,深さ 3 [m],奥行き3 [m]の穴に向かって 3 [m/s]の速さで小さな球が転がってきたとする.その後球は穴に落ち,1 回だけバウンドして奥の壁に衝突した.このとき,衝突した点と穴の底との距離を求めよ.ただし,球と穴の底面との反発係数は 0.5,球の大きさは無視できるほど小さいとし,空気抵抗,底面と球との摩擦は無視する.

3 [m]

3 [m

]

3 [m/s]

Fig. 7.6

考え方 教科書 p.97 を参照.底面と球の間の摩擦を考えないので,衝突時に球が床から受ける反力は鉛直上向きである.すなわち,球の速度のうち,水平な成分は衝突の前後で変化しない.一方で,反発係数を e とすると,鉛直方向速度については,衝突直後の上向きの速度成分は衝突直前の下向き速度成分の −e 倍である.ここまで分かれば,後は物体の放物線軌道について計算を行えばよい.

バウンド後,球が放物線軌道の最高点に達するまでに壁に到達したか,もしくは最高点に達した後,下降しながら壁に到達したかによって計算が異なる点に注意する.

3 [m]

3 [m

]

Fig. 7.7

解答例 物体の水平右向き速度を vH (= 3) [m/s],底面までの高さを h (= 3) [m],穴の奥行きを l (= 3) [m]とする.

球が穴の縁に達してから穴の底面に落下するまでの時間をtF とすると,

tF =

√2h

g

である.従って,落下時の速度の鉛直方向成分 vV は,上向きを正にとるとき

vV = −gtF = −√

2gh.

従って,地面との衝突直後の球の速度の鉛直方向成分は,v′V = −evV = e

√2ghである.

一方,水平方向の運動について考えると,落下の間に球が水平右向きに進む距離を k とすると

k = vHtF = vH

√2h

g

である.従って,落下後に奥の壁面に到達するまでの時間 T は

T =l − k

vH=

3− 3√

6/9.8

3≈ 0.218 [s]

である.

初速が上向きに v′V の投げ上げにおいて,最高点に達するまでの時間は

T ′ = v′V/g = e

√2h

g≈ 0.391 [s]

であることから,壁面に到達する時点までに最高点には達しないことが分かる.

従って,壁面に衝突する高さを h′ とするとき,

h′ = v′VT − 1

2gT 2

= e√2gh ·

l − vH

√2hg

vH− 1

2g

⎛⎝ l − vH

√2hg

vH

⎞⎠

2

≈ 0.602 [m].

7.7. [偏心衝突] Fig.7.8に示すように,長さ 2 [m],質量 50 [kg]

の細く均一な棒に対して,質量 20 [kg]の球が 4 [m/s]の速さで垂直に衝突したとき,衝突後の棒の衝突点における速度を求めよ.ただし反発係数は e = 0.6とする.

2 [m

]

4 [m/s]

50 [c

m]

Fig. 7.8

13

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考え方 教科書 p.101の例題 7.9を参照.

解答例 球の質量を m1 (= 20), 棒の質量を m2 (= 50)

[kg],棒の長さを l (= 2)とする.また,衝突前の球の速度を v1 (= 4), 衝突後の棒の衝突点における速度を v′2 [m/s]

とする.

棒の重心に対する回転半径は

kG =l2

12=

1

3[m2].

衝突点と棒の重心との距離は a = 0.5 [m]であるから,換算質量は

mred =m2

1 +a2

k2G

≈ 15.4 [kg]

である.

従って,

v′2 =m1(1 + e)

m1 +mredv1 ≈ 3.62 [m/s].

8 仕事,エネルギー,動力

8.1. [仕事] Fig.8.1に示すように,1/4円弧形状の斜面の水平から 30◦ の位置に置かれた荷物に水平右方向の 20 [N]の力を加えて,荷物を斜面の一番上まで押し上げた.この際の仕事量を求めよ.

2 [m

]

30

20 [N]

Fig. 8.1

考え方 教科書 p.105を参照.力の大きさを F,物体の微小移動距離を ds,力の方向と移動方向のなす角を θ とするとき,なされる微小仕事は dF = F · ds cos θ であり,このdF を積分した値

∫F cos θ dsが全仕事量となる.この問題

の場合,F は一定であり,ds cos θ は物体の水平方向の微小移動量に対応するため,初期位置から最終位置までの水平方向の移動量を sH とするとき,最終的な仕事量は

W =

∫F cos θ ds = F

∫cos θ ds = FsH

となる.

※ 出題時,図中で力が “40 [N]” となっていました.そこで,これを本文中の値 “20 [N]” で計算した解答も,図中の値 “40 [N]” で計算した解答も正解として採点します.

解答例 物体を水平から角度 θ まで持ち上げた時点において,物体の進行方向は力との間に π/2− θ [rad]の角をなしている (Fig.8.2).

従って,この瞬間に微小距離 ds動くとき,なされる微小仕事 dW は

dW = 20ds cos(π/2− θ) = 20ds sin θ

2 [m

]30

20 [N]θ

θ

Fig. 8.2

である.一方,この微小移動の間に物体の水平からの角度が微小角度 dθ 変化するとすれば,ds = 2dθ である.

以上から,

W =

∫dW =

∫ π/3

π/6

20 · 2 sin θdθ

= 40

∫ π/3

π/6

sin θ dθ = 20√3 ≈ 34.6 [J].

※ 角度の単位を [rad]にして計算しないと,ds = r ·dθのところで値がおかしくなるので注意.

別解 荷物の初期位置から最終位置までの水平方向の移動距離は 2 · cos 30◦ =

√3 [m]である.従って,なされる仕事

をW とすると,

W = 20 ·√3 ≈ 34.6 [J].

※ 上の解答例における積分の計算についてよく考えてみれば,この別解の計算に対応していることが分かる.結局のところ「(20 [N]の力)・(水平方向の微小移動距離)」の積分をすればよいわけである.

8.2. [バネ力のなす仕事] 水平に置かれたバネ定数 80 [kgf/cm]

の圧縮バネを 10 [cm]縮め,ここに荷物を置いて手を離したところ,バネは 5 [cm]だけ伸びて止まった.バネが荷物を押す際になした仕事を求めよ.

考え方 10 [cm]縮んだ状態から x [cm]だけ伸びた時点を考え,ここからさらにバネが微小距離 dx [cm]伸びる間になされる微小仕事を dW とすると,dW = k(10−x)dx [kgf cm]

= kg(10 − x) dx/100 [J]である (ただし k [kgf/cm]はバネ定数).この微小仕事を x = 0 の時点から x = 5 [cm] の時点まで積分すればよい.単位で混乱しそうなら,あらかじめバネ定数や寸法等をすべて SI単位系 ([N]や [m])に変換してから計算すればよい.下の解答例では,[kgf] や [cm]

ベースで計算を行い,最後に補正のために g/100倍した.

解答例

W =g

100

∫ 5

0

80(10− x) dx = 30g ≈ 294 [J].

8.3. [重力のなす仕事] Fig.8.3に示すように,半径 r = 10 [m]

の円弧状のスロープの,水平から π/6 [rad] の角度の位置に,質量m = 10 [kg]の物体を置き,手を離したところ,物体はスロープの一番下まで滑り降りた.この際,重力が物体になした仕事を求めよ.

考え方 Fig.8.4 に示すように,水平からの角度が θ [rad]

となった瞬間を考えると,このとき物体が受ける重力 mg

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π/6

10 [m

]

Fig. 8.3

は,その瞬間の物体の移動方向との間に θ の角をなしている.従って,この位置において微小変位 dsだけ移動する際になされる仕事は dW = mg cos θ dsである.一方で,その際の微小角度変位を dθとすれば,ds = rdθである (ただしr はスロープ半径).従って,微小仕事 dW = mrg cos θ dθ

を θ = π/6から π/2まで積分すればよい.

θπ/6

θmg

10 [m

]Fig. 8.4

解答例 (「考え方」に記載した部分は省略)

W =

∫ π/2

π/6

mgr cos θ dθ = mgr[sin θ]π/2π/6

=1

2mgr ≈ 490 [J].

別解 重力は保存力なので,重力のなす仕事は,仕事の開始時点および終了時点の高低差を h [m]とすると,W = mgh

と表される.従って,

W = mgr{1− sin(π/6)} = 490 [J].

8.4. [回転の仕事] 半径 50 [cm]の船の帆船の舵輪の円周方向に5 [kgf]の力をかけ続けて舵輪を半回転させたとき,なした仕事はどれほどか.

考え方 教科書 p.108.

解答例 W = 5g · 0.5 · (π/2) ≈ 38.5 [J].

8.5. [力学的エネルギー保存則] 傾斜 30◦ の斜面上に置かれた質量 m [kg],半径 r [m]の球から支えを外すと,球は滑ることなく転がり始めたとする.

(1) 支えを外してから t [s]後における球の速度・角速度を求めよ.

(2) 支えを外してから t [s]後における球の運動エネルギーを求めよ.

(3) この t [s]の間に球が失った位置エネルギーを求めよ.

考え方 Newton-Euler 法を用いて球中心の加速度および角加速度を求め,これに基づいて球の速度・角速度を求めれ

ば,運動エネルギーを計算できる.また,加速度が求まったことで 2.00 [s] 間の移動距離がわかり,この運動の結果高さがどれほど減ったかがわかるので,位置エネルギーを計算できる.

解答例 Fig.8.5に示すとおり,球に作用する力は重力mg

[N],斜面からの垂直抗力R [N],斜面に沿って作用する摩擦力 F [N]である.球中心の加速度は斜面に沿って下方向であり,その大きさを a [m/s2]とする.また,球の角加速度を反時計回りを正として ω̇ [rad/s]とする.

mg

F

Rmg

F

Fig. 8.5

(1) 斜面に沿った方向における球の運動方程式は

ma = mg sin 30◦ − F,

角運動方程式は

−Fr =2

5mr2ω̇,

また,滑りなく転がることから

a = −rω̇.

以上を解き,a = 514g.よって t [s]後の速さを v とす

ると

v = at =5

14gt [m/s] (斜面下向き).

また,ω̇ = −a/r = − 5g14r から

ω = ω̇t =5g

14rt [rad/s].

(2) 並進の運動エネルギーと回転の運動エネルギーを足して,

EK =1

2mv2 +

1

2· 25mr2ω2

=25

392mg2t2 +

5

196mg2t2 =

5

56mg2t2 [J].

(3) 球の移動距離は

s =1

2at2 =

5

28gt2.

傾斜は 30◦ なので,この間に球が失った高さは

h = s sin 30◦ =5

56gt2.

よってこの間に失った重力による位置エネルギーは

EP = mgh =5

56mg2t2 [J].

※ (2)の答えと一致する → 力学的エネルギー保存則.

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