「東アジア内海の新石器化と現代化：景観の形成史」（代表、内山純蔵）2006.6.25

『遅れてきた稲作－農耕社会周縁部の農耕景観の形成と変容－』

池谷和信（国立民族学博物館）

１ 狩猟採集社会から農耕社会、そして都市社会へ：景観論の視座

○目的、方法：モンスーンアジアの水田景観に注目・・・

今回のプロジェクト地域に共通する景観（温帯とその周辺）熱帯モンスーン地域、棚田（イフガオ、バリ）、川沿いの小規模潅漑（モン）、デルタ（ベンガル）

○枠組み：内海沿岸を地域設定する意義は？

多様な環境の接点（山地、海、平野）：山地の稲作、平野の稲作

○水田景観に関わる先行研究：高谷好一、菊地利夫、元木靖、中嶋峰広ほか多数。

２ 景観の歴史的形成：新石器化と現代化期

＊一般的（内山氏）な枠組み

①新石器化：定住化、農耕中心経済、交易など

②現代化：都市化、農耕食物への依存

＊各地域に応じてどういう枠組が可能であるのか？どのスケールでみていくのか？

３つのゾーン設定：中心、中間、周縁（東北日本：北海道、東北）

３つの水田類型：棚田、川沿いの段丘、デルタ

３ 景観の構造（物理的環境、知的・精神的風景）＊水田景観の形成にともなう変化：土地利用から｢土地所有｣へ。１）北海道（明治以降の和人・アイヌ複合社会）

ｃｆ。狩猟採集社会は水田に抵抗するか？（水田の導入の仕方、農耕儀礼は）

２）東北（近世以降の山村社会）自然、生業、社会、儀礼ｃｆ。水田はスムーズに受け入れられたのか？

４ 周縁部における水田景観の特徴－地域間比較－

＊3つの地域類型(A)『初期農耕社会』（水田・ブタ・ニワトリ）：中国浙江省

(B)『早い段階からの水田耕作』：韓国、九州北部、琵琶湖 ｃｆ 農民漁労

(C)『周縁部における水田景観の形成史の特徴』水田・狩猟・採集・漁労・焼畑複合の構造解明

ｃｆ 農民狩猟

５ 研究内容・研究テーマ： 『農耕社会周縁部の農耕景観の形成史』農耕景観（水田、畑作）の形成と「複合生業社会」の形成：中心部での階層化と周縁部での平等化？水田の導入：土地利用から｢土地所有｣へ。精神性の変化。・対象地：北海道およびその隣接地域・枠組み：【２つの農耕化：畑作化と水田化】北海道・千島 １）アイヌ・・・『中世から近世』

千島（非農耕）、道内（畑作化）２）アイヌ・和人複合社会・・『近現代』の水田化

東北 １）平地（川の下流）・・・・ 『弥生』（縄文、栽培）の水田化

２）山地（川の上流）・・・・ 『江戸』（縄文、栽培）の水田化