問題解決 - nissoken.com€¦ · そもそも問題とは何か?...

6
連載 第6回 実践 ノンテクニカルスキルの 院内教育 研修に使える資料をWebに掲載中! 今回のお役立ちアイテムは,問題解決フレームワークについて ビジュアルで学ぶためのスライドブックです。特に院内教育など組 織学習に利用し,即現場で実践していってください。 スライド 問題解決フレームワークをビジュアル で学ぶためのスライドブック (PDF) ※ダウンロードの手順はP.2参照 http://www.nissoken.com/ps/ ダウンロードしてご利用ください。 前回(本誌Vol.1,No.6)は,考えるチカラ(ロジカルシンキング)に とって最も重要な「かたまり=原因と結果」と「つながり=影響度」をハッ キリさせること,そしてSHELLモデルなどあらゆるモデルの基本である「フ レームワーク思考」について学びました。 今回は,問題を解決するためのフレームワークを学んでいきます。この フレームワークは,おそらく今後何年,何十年と皆さんの業務に貢献する 非常に実践的なフレームワークですので,ぜひ医療現場で自ら使いこなす だけではなく,ほかのスタッフにも広げていってください。 そもそも問題とは何か? 問題解決フレームワークの威力を感じていただく前に,そもそも問題と は何かを考えていきたいと思います。なぜなら,いくら正しく問題を解決 しようとしても,そもそもの問題を間違ってとらえていたら意味がないか らです。では,皆さんは「問題とは何ですか?」と問われた場合,どのよ うに答えますか? 「よくないこと」「困っていること」「解決すべきこと」 など,いろんな答えが浮かんでくるのではないでしょうか? もちろん, そのどれも間違っていないと思いますが,ここではハーバートA.サイモ ンが提唱する定義を基にした考え方をご紹介したいと思います。 「問題とは,『あるべき姿』と『現状』のギャップ」(図1) つまり,物事において,理想とする姿と今の状態に違いがあれば,そこ には必ず問題があるということです。そして,この定義からも分かるよう に,問題とは「インシデントが 起こった」などの典型的な事例 だけでなく,日常業務において 「あるべき姿」と「現状」に ギャップのある物事にはすべて 問題があるということでもあり ます。そう考えると,日頃何げ なく行っている業務の中に,た くさんの問題を見つけることが できるのではないでしょうか? そもそも問題とは何か? 使メディカルアートディレクター 佐藤和弘 医療教育団体 MEDIPRO! 創業者/代表 一般社団法人 LINK 共同創設者/元理事 Kazuhiro_SATO 臨床工学技士として複数の医療機 関で約10年間,透析医療に従事。 患者さんとかかわる中でテクニカ ルスキル以外にも医療に必要なス キルがあることを実感し,グロービ ス経営大学院に進学,MBAを取 得。そこで出会った経営学やケース メソッドなどのノンテクニカルスキ ル教育に感銘を受け,当時従事し ていた医療機関で事故対策委員長 としてノンテクニカルスキル教育を 導入し,医療安全の質の向上に貢 献。その実感から,非営利医療教 育団体MEDIPRO!を創業,代表に 就任し,ノンテクニカルスキルの普 及に努める。これまで,院内研修や スクールなどを通じて約1,100人の 医療者にノンテクニカルスキル教 育を提供。 図1 あるべき姿と現状のギャップ Gap=問題 あるべき姿 現状 齋藤嘉則:問題発見プロフェッショナル, ダイヤモンド社,2009. 病院安全教育 Vol.2 No.1 43

Upload: others

Post on 18-Jul-2020

2 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 問題解決 - nissoken.com€¦ · そもそも問題とは何か? 問題解決フレームワークの威力を感じていただく前に,そもそも問題と は何かを考えていきたいと思います。なぜなら,いくら正しく問題を解決

連載 第6回

実践!ノンテクニカルスキルの

院内教育

研修に使える資料をWebに掲載中!

今回のお役立ちアイテムは,問題解決フレームワークについてビジュアルで学ぶためのスライドブックです。特に院内教育など組

織学習に利用し,即現場で実践していってください。

スライドデータ

問題解決フレームワークをビジュアルで学ぶためのスライドブック(PDF)

※ダウンロードの手順はP.2参照

http://www.nissoken.com/ps/ダウンロードしてご利用ください。

 前回(本誌Vol.1,No.6)は,考えるチカラ(ロジカルシンキング)に

とって最も重要な「かたまり=原因と結果」と「つながり=影響度」をハッ

キリさせること,そしてSHELLモデルなどあらゆるモデルの基本である「フ

レームワーク思考」について学びました。

 今回は,問題を解決するためのフレームワークを学んでいきます。この

フレームワークは,おそらく今後何年,何十年と皆さんの業務に貢献する

非常に実践的なフレームワークですので,ぜひ医療現場で自ら使いこなす

だけではなく,ほかのスタッフにも広げていってください。

そもそも問題とは何か? 問題解決フレームワークの威力を感じていただく前に,そもそも問題と

は何かを考えていきたいと思います。なぜなら,いくら正しく問題を解決

しようとしても,そもそもの問題を間違ってとらえていたら意味がないか

らです。では,皆さんは「問題とは何ですか?」と問われた場合,どのよ

うに答えますか? 「よくないこと」「困っていること」「解決すべきこと」

など,いろんな答えが浮かんでくるのではないでしょうか? もちろん,

そのどれも間違っていないと思いますが,ここではハーバートA.サイモ

ンが提唱する定義を基にした考え方をご紹介したいと思います。

「問題とは,『あるべき姿』と『現状』のギャップ」(図1)

 つまり,物事において,理想とする姿と今の状態に違いがあれば,そこ

には必ず問題があるということです。そして,この定義からも分かるよう

に,問題とは「インシデントが

起こった」などの典型的な事例

だけでなく,日常業務において

「あるべき姿」と「現状」に

ギャップのある物事にはすべて

問題があるということでもあり

ます。そう考えると,日頃何げ

なく行っている業務の中に,た

くさんの問題を見つけることが

できるのではないでしょうか?

そもそも問題とは何か?

問題解決

フレームワークを

使いこなす

メディカルアートディレクター

佐藤和弘医療教育団体MEDIPRO! 創業者/代表一般社団法人LINK 共同創設者/元理事Kazuhiro_SATO̶̶̶̶̶̶臨床工学技士として複数の医療機関で約10年間,透析医療に従事。患者さんとかかわる中でテクニカルスキル以外にも医療に必要なスキルがあることを実感し,グロービス経営大学院に進学,MBAを取得。そこで出会った経営学やケースメソッドなどのノンテクニカルスキル教育に感銘を受け,当時従事していた医療機関で事故対策委員長としてノンテクニカルスキル教育を導入し,医療安全の質の向上に貢献。その実感から,非営利医療教育団体MEDIPRO!を創業,代表に就任し,ノンテクニカルスキルの普及に努める。これまで,院内研修やスクールなどを通じて約1,100人の医療者にノンテクニカルスキル教育を提供。

図1 あるべき姿と現状のギャップ

Gap=問題

あるべき姿

現状齋藤嘉則:問題発見プロフェッショナル,ダイヤモンド社,2009.

病院安全教育 Vol.2 No.1 43

Page 2: 問題解決 - nissoken.com€¦ · そもそも問題とは何か? 問題解決フレームワークの威力を感じていただく前に,そもそも問題と は何かを考えていきたいと思います。なぜなら,いくら正しく問題を解決

問題を発見できなければ設定する

 では,「あるべき姿」と「現状」にギャッ

プがなければよいのか,というとそうではあ

りません。その場合は,さらに一段高い「あ

るべき姿」を意図的に設定し,それに「現状」

を合わせていくということを延々繰り返して

いくのです(問題設定,図2)。これがいわ

ゆる「KAIZEN(カイゼン)」です。つまり,

まずは「あるべき姿」と「現状」を比べて問

題を見つける,問題が見つからなければ「あ

るべき姿」を引き上げて問題を設定するとい

うことが大切なのです。

問題解決フレームワークを理解する

 それでは,問題とは何かを確認したところ

で,本題の問題解決フレームワークについて

理解していきましょう。ここから皆さんには,

自施設のホームページをリニューアルするこ

とを目的としたあるミーティングを2つ見て

もらいます。1つはきちんと問題解決のため

の議論ができていないダメなミーティング

(Before)で,もう1つはきちんと問題解決

のための議論ができているよいミーティング

(After)です。このBeforeとAfterで何が違う

のか,なぜAfterはきちんとした議論ができ

ているのかを考えながら見てみてください。

当院ホームページリニューアルミーティング劇的Before→After 【Before】

Aさん「問題はデザインかな,今は手作り感があるからね」

Bさん「プロに頼んだ方がいいんじゃない?」

Cさん「原因は患者さんに必要な情報を載せていないからよ」

Dさん「そもそも本当にホームページって大事なの?」

Eさん「いつまでに変えなきゃいけないのかなー」

Fさん「いくらかかるんだろうね」

Aさん「ところで,これ誰がしていくの?」

【After】

ファシリテーター「それでは,まずホームページに関する問題点を整理してください」

Aさん「そもそもデザインが古いのに更新もされておらず,患者さんのニーズに合っていません」

ファシリテーター「では,その原因は何でしょうか?」

Bさん「ホームページのデザインが得意な人がいないからですね。あとは,これまで患者さん

が何を求めているのかをきちんと把握してこなかったことが原因だと思います」

ファシリテーター「では,患者さんが求めていることを把握していないという原因について対

策を挙げてください」

Cさん「ホームページや院内でアンケートをとってみたり,ほかの病院のホームページを観察

問題を発見できなければ設定する

問題解決フレームワークを理解する

ケース1

図2 問題設定

齋藤嘉則:問題発見プロフェッショナル,ダイヤモンド社,2009.

問題解決

あるべき姿

現状

問題

あるべき姿

現状

問題設定あるべき姿

現状

病院安全教育 Vol.2 No.144

Page 3: 問題解決 - nissoken.com€¦ · そもそも問題とは何か? 問題解決フレームワークの威力を感じていただく前に,そもそも問題と は何かを考えていきたいと思います。なぜなら,いくら正しく問題を解決

してみるのがいいと思います」

ファシリテーター「では,アンケート担当はAさん,ほかの病院のホームページの観察担当は

Bさんお願いします。3週間後の7月13日までにアンケート結果,および観察結果をまとめ

て私に提出してください。それをまとめて次回の会議で議論します」

 いかがでしょうか? BeforeとAfterのミー

ティングは何が違いますか? もちろん,

Afterにはきちんとファシリテーター(議論の

進行役)がいるということもそうですが,ヒ

ントはファシリテーターの発言にあります。

次を読み進める前に少し考えてみてください。

 それでは,Afterのケースのファシリテー

ターの発言を取り上げながら,問題解決フレー

ムワークの威力をひも解いていきましょう。

 「それでは,まずホームページに関する問題

点を整理してください」

 これは,どんな観点での発言でしょうか。

そう,「問題は何か(What)?」についての

発言です。次に,

 「ではその原因は何でしょうか?」

 これはいかがでしょう。すぐに分かります

ね。「原因は何か(Why)?」についての発

言です。そして,

 「では,患者さんが求めていることを把握し

ていないという原因について対策を挙げてく

ださい」

 これはどうでしょう。そうです,「対策は

何か(How)?」についての発言です。

 これらを改めて見てみると,ファシリテー

ターはプロセス1:問題は何か(What)?→

プロセス2:原因は何か(Why)?→プロセ

ス3:対策は何か(How)? の流れで発言

を先導していることが分かります。その結果,

「ではアンケート担当はAさん,ほかの病院

のホームページの観察担当はBさんお願いし

ます。3週間後の7月13日までにアンケート

結果,および観察結果をまとめて私に提出し

てください。それをまとめて次回の会議で議

論します」というきちんとした対策の立案ま

で議論がたどり着いたのではないでしょうか。

この2W1H(What→Why→Howの頭文字)が

問題解決のフレームワークです(図3)。

 このシンプルなフレームワークを組織で使

いこなすことができれば,議論が驚くほど効

率的・効果的になるのです。なぜでしょう

か? その理由を解き明かすために,今度は

主張が右往左往しているBeforeのケースの発

言を見ていきましょう。

Aさん「問題はデザインかな,今は手作り感

があるからね」

 この発言は,2W1Hでいうとどの部分につ

いての主張でしょうか? これは「What」の

部分についての主張ですね。それでは,

Bさん「プロに頼んだ方がいいんじゃない?」

 この発言は,どの部分についての主張でしょ

うか? これは対策なので「How」について

の主張です。では,

Cさん「原因は患者さんに必要な情報を載せ

ていないからよ」

 この発言は? 原因と言っているので「Why」

についての主張です。気がつきましたか?

図3 問題解決のフレームワーク

Issue

What

論点

Process①

問題は?

Why

Process②

原因は?

How

Process③

対策は?

病院安全教育 Vol.2 No.1 45

Page 4: 問題解決 - nissoken.com€¦ · そもそも問題とは何か? 問題解決フレームワークの威力を感じていただく前に,そもそも問題と は何かを考えていきたいと思います。なぜなら,いくら正しく問題を解決

そうですね。なぜ議論が右往左往しているの

かというと,それはWhat→Why→Howの順

番できちんと議論していないからです。逆に

言えば,Afterでも明らかなように,What→

Why→Howで議論をするだけで効率的・効果

的な議論になるのです。

 それでは,2W1Hの問題解決フレームワー

クを使いこなすために,実際の医療事故対策

会議を想定しながら,まずは次のBeforeの

ケースをご覧ください。

薬剤の渡し間違いに関する事故対策会議Before Aさん「ミーティングを始めます。よろしくお願いします」  院長「議題は?」

Aさん「あ,前回の検討事項として,患者さんへの薬剤の渡し間違いがあります」

全員「(ヒソヒソ)あ,そんなことあったね…」  Aさん「では,皆さん何かご意見を…」

全員「…(シーン)」  Aさん「えっと,では,どのように対策しますか?」

Bさん「渡し間違いの内容に注意して気をつける…」  Cさん「原因は何なんですかー?」

Dさん「そもそも,どんな状況でしたっけ?」  院長「誰がやったんだ?」

…………(あーだこーだ)

Aさん「時間となりましたので,これはまた次回の懸案事項で…」

 これは,ダメな議論の典型ですね(笑)

 検討事項に関する前提情報が共有されてい

ませんし,「何かご意見を」と言って発言して

くれる人はいませんし,原因も考えずに対策

を挙げようとしていますし,挙げ句の果てに

犯人探し。でも皆さんは,もうこんな不毛な

議論をすることはありませんよね。それでは,

このBeforeの議論を,問題解決フレームワー

クを用いたAfterの議論に変えてみてくださ

い。できれば数人でグループになって考えて

みるのがいいですね。一通りAfterの議論が

できた後に参考ケースのAfterを見て,何が

どう一緒か,あるいは違うか,それはなぜか

を考えてみてください。

薬剤の渡し間違いに関する事故対策会議After Aさん「ミーティングを始めます。よろしくお願いします。まずは,ホワイトボードをご覧

ください。本日の議題は先日起こった『薬剤の渡し間違い』に関する内容です。ゴールは有

効な解決策を立案することです。また,状況は事前に皆さんにお渡しして読んでいただいた

とおりです。それではこれから,①何が問題か,②原因は何か,③どのように対策するかの

3つの観点で,順番に議論していきますので,よろしくお願いします。では,まずは①薬が

間違って配られた問題についてどのような視点で見ていくべきか,Bさんお願いします」

Bさん「当事者の視点と環境の視点で問題が考えられます」

Aさん「皆さん,ほかの立場に目線を変えた場合,さらに見ておく視点はありませんか?」

Cさん「患者さんの視点の視点が考えられます」

Aさん「ありがとうございます。それでは②原因は何かについて当事者,患者さん,環境の視

点でのそれぞれの原因を挙げてください。これは3グループに分けて,それぞれの原因を考

えてください」

…………(あーだこーだ)

ケース2

参考 ケース

病院安全教育 Vol.2 No.146

Page 5: 問題解決 - nissoken.com€¦ · そもそも問題とは何か? 問題解決フレームワークの威力を感じていただく前に,そもそも問題と は何かを考えていきたいと思います。なぜなら,いくら正しく問題を解決

Aさん「では,皆さんで合意した特に重要と考えられる患者さんの視点での原因について,対

策を考え,いつものように①実現性,②スピード,③コストの観点で優先順位をつけましょう」

…………(あーだこーだ)

Aさん「それでは,対策『スタッフと患者のダブルチェック体制』が採用となりました。お疲

れさまでした」

 この問題解決の論理展

開を視覚化すると図4の

ようになります。ここで

は応用的に,問題をただ

漠然と眺めるのではなく,

「当事者」「患者さん」「環

境」のフレームワークで

分けて考えてみました。

そして,それぞれのWhat

の視点ごとにWhyを考え,

WhyごとにHowを考えて

います。ちなみに,皆さ

んも普段の議論で,複数

の対策を挙げてはいるが

どれからやっていくべき

かが曖昧で決まらない場

合や,そのために対策が

行われないような経験を

されたことがあると思い

ます。参考ケースにもあ

るように,どの対策から

行っていくかを決めるた

めの判断とそのための判

断基準が必要です。今回

の場合は「実現性」「ス

ピード」「コスト」の観

点ですが,状況によって

適切な判断基準を設け,

優先順位をつけていく必

要があります。

図4 問題解決の論理展開の視覚化

What

当事者

患者

環境

マニュアルの見直しとコミットメント

業務プロセスの見直し

使用薬剤の種類の再教育と共有

決められた手順を踏まなかった

薬の把握が分かりにくかった

Why

忙しかった

How

薬剤の渡し間違え論点

What

当事者

患者

環境

調剤がしにくかった

配薬の置き場が悪かった

部屋が暗くて視認しにくかった

Why

薬剤の渡し間違え論点

分かりやすく見つけやすい置き場の決定

調剤場所のデザインし直し

照明などの調整

How

What

当事者

患者

環境

間違いを見つける知識がなかった

スタッフにまかせきり

間違いに気づいた後の対応が分からなかった

Why

薬の確認の方法の継続的教育

スタッフと患者のダブルチェック体制

連絡プロセスの共有

How

薬剤の渡し間違え論点

病院安全教育 Vol.2 No.1 47

Page 6: 問題解決 - nissoken.com€¦ · そもそも問題とは何か? 問題解決フレームワークの威力を感じていただく前に,そもそも問題と は何かを考えていきたいと思います。なぜなら,いくら正しく問題を解決

組織で使ってこそ威力を発揮する

 いかがでしたか? 一見簡単そうな問題解

決フレームワークですが,実際に自分の頭で

考えてみると,あるいはグループで議論しな

がら使ってみると難しいと感じたと思います。

しかし,問題解決フレームワークを使いこな

すためには極論,繰り返し使い続けるしかあ

りません。そして重要なことは,この問題解

決フレームワークは個人だけではなく,組織

で使ってこそ威力を発揮するということです。

ですので,まずは今回のケースで疑似体験し

ながら,実際のミーティングやカンファレン

スに問題解決フレームワークを導入し,組織

でドンドン経験値を高めていってください。【参考文献&ポイント学習ガイド】〈問題発見思考について参考になる資料〉・ドナルド・C・ゴース,G. M. ワインバーグ著,木村泉訳:ライト,ついてますか―問題発見の人間学,共立出版,1987.・齋藤嘉則:問題発見プロフェッショナル「構想力と分析力」,ダイヤモンド社,2009.・内田和成:仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法,東洋経済新報社,2006.・内田和成:論点思考 BCG流 問題設定の技術,東洋経済新報社,2010.

〈問題解決思考について参考になる資料〉・グロービス経営大学院:改訂3版 グロービスMBAクリティカル・シンキング,ダイヤモンド社,2012.・照屋華子,岡田恵子:ロジカル・シンキング―論理的

な思考と構成のスキル,東洋経済新報社,2001.・グロービス:[実況]ロジカルシンキング教室(グロービスMBA集中講義),PHP研究所,2011.

・齋藤嘉則:新版 問題解決プロフェッショナル―思考と技術,ダイヤモンド社,2010.

・高田貴久,岩澤智之:問題解決―あらゆる課題を突破するビジネスパーソン必須の仕事術,英治出版,2014.

〈参考Webサイト〉MEDIPRO!:www.medi-pro.org

〈参考Facebookページ〉ノンテクニカルスキル:www.facebook.com/nontechnicalskills

医療ケースメソッド教育:www.facebook.com/casemethodeducation

組織で使ってこそ威力を発揮する

今回のポイント

問題とは「あるべき姿」と「現状」のギャップ。

問題がなければ「設定」する。

問題を発見,設定し続けることがまさしく「KAIZEN(カイゼン)」。

最強問題解決フレームワークは2W1H(問題は何か〈What〉?→原因は何か〈Why〉?→対策は何か〈How〉?)

問題解決フレームワークを使いこなすには繰り返し使い続ける。

問題解決フレームワークは組織で使いこなすことで威力を発揮する。

123

病院安全教育 Vol.2 No.148