流行りの形成過程 ~創るファッション・創られる...

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甲南大学 マネジメント創造学部 2017 年度 卒業研究プロジェクト 指導教員 佐 藤 治 正 流行りの形成過程 ~創るファッション・創られるファッション~ 1.ファッション市場の現状 2.創られるファッション 3.創るファッション 4.これからのファッション 11481135 向井 香織

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甲南大学 マネジメント創造学部

2017 年度 卒業研究プロジェクト

指導教員 佐 藤 治 正

流行りの形成過程 ~創るファッション・創られるファッション~

1.ファッション市場の現状

2.創られるファッション

3.創るファッション

4.これからのファッション

11481135 向井 香織

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目次

はじめに

第一章 ファッション市場の現状

1 世界のファッション市場

2 国内のファッション市場

3 現在のファッション市場分析

第二章 創られるファッション

1 ファッションリーダーから生まれるファッション

2 コレクションから生まれる流行

3 メディアの影響力

第三章 創るファッション

1 ファストファッションの存在

2 インターネットの時代

3 コンセプトで売るファッション

第四章 ファッションの未来

1 ファッションの概念

2 かつての日本人デザイナーによる新しいファッション

3 日本人とファッションのこれから

おわりに

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はじめに

ファッション(fashion)とは、服飾における流行,または流行の服飾そのものを指

す。その中でも特に服装を指し、他にも装飾品(帽子、アクセサリー、等)や美容(ヘア

スタイル、化粧)、香水も含まれている。また、フランス語では、モード(mode)という

言葉で表現されている。衣装は、個人を表現・主張するもの、変化や新しいものへの好奇

心であるのと同時に、世の中の慣習に従い、社会に溶け込むものである。

ファッションにおける流行は、発生→伝播・拡大→頂点→衰退→消滅というプロセスで

動いている。このプロセスをファッション・サイクル(ファッションの周期)と呼ばれて

いる。しかし、ファッションは非常に複雑で幅広い。近年、このサイクルの発生から消滅

まで期間は、ファストファッションの台頭により、短縮化傾向を辿っている。人々は、流

行に敏感で、常に、次の新しいファッションを待ちわびているのだ。音楽も、ファッショ

ンも、その時代の雰囲気を反映した流行がある。消費者の選考・選択の結果として流行が

生まれるが、消費者の選考・選択に影響を与え、その時々の流行を創ろうとする人達、仕

掛けも様々に存在する。特にファッション業界は、流行の変化が激しい業界。では、流行

は創ることができるのか。そもそもどのように流行が生まれるのか。ファッションにおけ

る流行は、ファッション雑誌やコレクションを通じて、映画や人気女優により、あるいは

SNS 等、様々な要因で形成・拡散されていくと考える。

本論文では、流行がどのように形成されるのかについて、時代ごとのファッションに注目

しながら、今後どのような流行が生まれるのか調べていく・

第一章 ファッション市場の現状

ファッションは、コミュニケーションと深く関わっている。衣服を着ることは、寒さを

防ぐといった機能だけでなく、自己を表現することでもある。自分がどのような人間なの

か、他人にどう見られたいか、ファッションはその人の生き方を物語る重要なツールであ

る。コミュニケーションのツールの一つであるがゆえに、社会の影響も必ず受ける。一つ

の社会の出来事が私たちの社会に影響を及ぼし、人々の生活を変え、価値観を変える。

今、そんなファッション業界は大きな変革を迎えている。本章では、近年における国内外

のファッション市場ついて、複数のグラフを用いながら、現状を把握する。

1 世界のファッション市場

世界のアパレル市場は年々増加している。全体として、ローランドベルガー社の予測に

よると、グローバルのアパレル市場は実質ベースで 2025 年までに年平均成長率 3.6%g 見

込まれている。(図 1-1)特に、伸びが大きい市場は中東・アフリカや東欧で、続いてアジ

アとなる。この背景には、人口の拡大、新興国における中間層の拡大、富裕層の拡大など

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がある。特に、グローバル SPA1によるファッションの浸透の影響は大きい。手軽な値段で

幅広いファッションを楽しめるため、所得の有無に左右されにくい。

図 1-2 より、主要国におけるファッション市場規模は、2013 年に 206 兆円、2020 年に

は 325 兆円へ成長すると予想されている。地域別に見てみると、まず中華圏は 2020 年ま

でに 60 兆円拡大し、113 兆円の世界最大の市場へと成長すると見込まれている。また中華

圏と同様に今後の成長が期待される東南アジア圏は大きく成長するも、2020 年時点で 8兆

円程度にとどまると考えられている。北米圏は堅調に成長し、2020 年までに 10 兆円拡大

し、63 兆円の市場規模になると予想される。そして、西欧圏は 2020 年時点で 40 兆円と一

定の市場規模があるものの、成長は限定的であると予測されている。

1SPA とは、specialty store retailer of private label apparel の略で製造小売ともいう。企画から製

造、小売までを一貫して行うアパレルのビジネスモデルを指す。消費者の嗜好の移り変わりを迅速に製品

に反映させ在庫のコントロールが行いやすいなどのメリットがある。グローバル SPA とは、H&M や

ZARA、ユニクロなど世界的に活躍する SPA 企業のことを指す。

図 1-1 世界のアパレル市場の推移

出所:ローランド・ベルガー分析

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次に、価格帯別に見ていく。これから 2020 年にかけて、ラグジュアリー帯が 14 兆円、

ミドル帯が 66 兆円、ロー帯が 40 兆円拡大の見通しである。特に拡大著しいミドル帯の増

分は、中国が約 5割である。これらの要因として、ファストファッション企業の台頭とマ

ス・ボリューム市場のブランドの品質向上により、ミドル帯の増加につながっていると考

えられる。今後さらに、成長が期待される価格帯であることが図から読み取れる。

2 国内のファッション市場

日本のファッション市場は、ここ 10 年緩やかに縮小傾向にある。2013 年は 18 兆円規模

で、10 年前と比べて 1%減少している。(図 1-3)その背景として、メルカリをはじめとす

る二次流通市場2の成長やファストファッション3ブームが考えられる。

2一度販売された製品を購入した後、再び販売すること。CtoC ビジネス。

3流行を採り入れつつ低価格に抑えた衣料品を、大量生産し、短いサイクルで販売するブランドやその業

態のこと。

図 1-2 主要国におけるファッションの市場規模

出所:経済産業省ファッション業況調査

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全体として市場の売上は 1%減っているが、大きくは変化していないように見える。だ

が、衣類を価格帯別に分けてみると、各市場の動きがわかる。図 1-4 では、ファッション

関連市場の中の衣類に絞ったセグメント別(価格帯別)の国内アパレル市場規模の推移を

表している。市場規模で 9兆円の国内のアパレル市場であるが、その中身は大きく 3つの

市場に分かれている。主要価格帯別に、上からラグジュアリー市場、トレンド市場、マ

ス・ボリューム市場4である。市場全体としてはほぼ横ばいで推移する国内アパレル市場で

あるが、それぞれのセグメント市場ごとに動きが見られる。

ラグジュアリー市場では、景気の回復と海外高級ブランドを中心としたラグジュアリー

ブランドの積極的な事業拡大により、マーケットは横ばいしている。また、マス・ボリュ

ーム市場についても、消費の二極化が進む中で変化は少ない。一方、トレンド市場は、唯

4これら3つの市場に分類するための基準は、本論文ではローランド・ベルガー社が定めた基準に合わせ

る。以下、基準についての説明である。シャツの価格を例にすると、ラグジュアリー市場ではシャツ 1枚

が 2万円以上する高価格帯、トレンド市場では、1枚 7,000 円~2 万円といった中価格帯、マス・ボリュー

ム市場では、1枚 7,000 円以下のボリュームゾーンである。

図 1-3 日本のファッション市場の推移

出所:経済産業省「ファッション業況調査及びクールジャパンのトレンド・セ

ッティングに関する波及効果・波及経路の分析」より引用

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一大きく減少傾向である。その結果として、トレンド市場におけるブランド間の競争が激

化し、トレンド市場に軸足を置くアパレル各社の中には近年苦戦を強いられる企業が増え

ている。例えば、2015 年に入り複数の総合アパレル企業において、大規模なブランドの廃

止と店舗の閉鎖を発表されたが、これまでトレンド市場を牽引してきた企業にとっても極

めて厳しい競争環境に変化しつつある。

これらの 3つの市場のターゲットとなる消費者と実際のブランドをさらに細かく見てい

く。ローランド社の解説によると、ラグジュアリー市場は、富裕層や可処分所得の多い女

性層を狙った LVMH や Gucci に代表されるハイエンドブランド5と、トレンド層の消費者の

取り込みも狙ったアクセシブルラグジュアリー6の 2つに分かれる。トレンド市場では、流

行に敏感な消費者層を相手に、ワールドやオンワードなどの総合アパレル企業系のブラン

ドや、BEAMS や United Arrows に代表されるセレクトショップなどが展開している。そし

て、マス・ボリューム市場では、より一般層を相手に事業を展開するユニクロ、しまむ

ら、無印良品が代表的である。他にも、ZARA、H&M などの海外グローバル・ファストファ

ッション企業は、マス・ボリューム市場だけでなくトレンド市場にも侵食してきているよ

うだ。

5高価格・高性能・高品質志向の商品、傾向そのものを指す。

6ブランドとしての付加価値を高く保ちながらも、マスマーケットの消費者にも買いやすい価格帯で商品

を提供するのが特徴。

図 1-4 セグメント別国内アパレル

出所:ローランド・ベルガー分

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そして、これら 3 つの各市場の市場規模である。2014 年時点でラグジュアリー市場が 1

兆円、トレンド市場が 2.6 兆円、マス・ボリューム市場が 5.3 兆円となっている。(図 1-5)

やはり、マス・ボリューム市場の市場規模は金額から見ても、トレンド市場の約2倍であり、

ファッション市場の核となっていることが言えるだろう。

トレンド市場全体が縮小し、この市場で勝負する企業各社が苦戦を強いられる背景に

は、大きく 2つの要因が存在していると私は考える。

第一に、消費者の価値観の多様化に伴い、トレンドが細分化したことだ。これまで、ト

レンド市場が成長した背景には、国内のアパレルにおける消費トレンドの一様性が存在し

ていた。すなわち、ある一定規模の消費者が、一斉にトレンドにのったブランド・アイテ

ムを買い求める傾向があった。そのため、トレンド市場をターゲットにしたアパレル企業

は、トレンドを意図的に作り出して、継続的に収益を上げるということが容易だった。し

かし、2000 年頃を境に、消費者の価値観の多様化が一気に進んだ。消費者は自らのライフ

スタイルと価値観に合わせ、自分が好きなものを着るというスタイルに変化し、流されに

くい消費者が一般的となった。すなわち、服はトレンドにのっていることを示すファッシ

ョンではなく、自らのライフスタイルや価値観を示すファッションとなり、消費者はラグ

ジュアリー、トレンド、マス・ボリューム市場のブランドまでのアイテムを自由に組み合

わせて、自らを表現するように変化した。結果、アパレル企業は従来のようにトレンドを

作り出し、消費者をまとめて取り込むということが難しくなってしまったと考えられる。

一方で、消費者の多様化にあわせるべく、アパレル企業はブランドを増やし、ファストフ

図 1-5 アパレル市場の構成及び市場規模

出所:ローランド・ベルガー社

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ァッションの台頭も重なり、トレンド市場にはブランドの数だけが溢れ返るようになっ

た。結果、小粒なブランドが増えた。これにより、ブランドあたりの投資効率は直近 10

年で大きく低下してしまったようだ。

次に、第二の理由は、ファストファッション企業の台頭とマス・ボリューム市場のブラ

ンドの品質向上により、トレンド市場の単価が下落したことも挙げられる。ユニクロに代

表される SPA を行う企業が高品質で低価格なラインナップを増やし、加えて ZARA や H&M

が、今まさに街角で流行っている服装というのを比較的低価格で素早く市場に投入するよ

うになり、もともとトレンド市場にいた流行に敏感な消費者層の価格に対する目線が下が

ってしまった。昔のようにトレンド商品を流行の起点であるコレクションブランドのみを

意識した価格づけは困難となり、トレンド市場のブランドもファストファッション企業の

価格を意識した値段設定にせざるを得ないのが現状である。

3 今後の日本のファッション市場

1-1、1-2 より、国内外のファッション市場を見てきた。世界ではここでは、今後のファ

ッション市場、特にアパレル市場において、今後も成長していくことが窺えた。一方、国

内のファッション市場は変化に乏しい。アパレル市場では、トレンド市場がマス・ボリュ

ーム市場に飲み込まれてしまっている。それでは、なぜこのような事態になってしまった

のであろうか。その背景に注目すると同時に、今後、国内のファッション市場がどのよう

に変わっていくのかを分析していく。

そもそも大きな要因は、日本固有の市場の競争環境にある。アパレル市場を価格帯別に

分けると、日本は海外と比較して、中間価格帯のトレンド市場が非常に大きかった。(図

1-6)背景には、自らの価値観が希薄でトレンドに流されやすい中間層が存在していたこ

とにある。日本のファッションビジネスは、百貨店、ショッピングセンターといったそれ

らの人々が集まりやすい場所に対する出店と、雑誌を含むメディアと一体となったプロモ

ーションで成り立っている。いわば、その中間層に対し、毎シーズン業界をあげて新しい

トレンドを作り、トレンド消費を煽るというビジネスを繰り返してきた。結果、ブランド

の世界観やものづくりにおける独自性の追求が進まず、逆に同質化が進んでしまったと考

えられる。

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しかし、消費社会の成熟化、デジタル化に伴い、現在この層に分裂してきている。中間

層は様々なグループに分かれ、独自の価値観を持った消費者の集まりを形成し、それぞれ

異なった消費行動をとり始めており、従来のファッションビジネスが通用しなくなってい

る。実は、この中間層の多様化はグローバルで見ると自然なことであり、海外では既に存

在しているタイプの普遍的な消費者の集まりが日本国内にも出現してきているだけのよう

である。

中間層は、戦後の高度経済成長と人口ピラミッドの偏りが生んだ日本固有の巨大な消費

者の集まりであり、国内アパレル企業のみならず百貨店などの流通業の多くが頼ってきた

市場である。この市場が消費者の変化に伴い大きく変容していること、そして従来のファ

ッションビジネス、ものづくりに慣れ親しんだ企業の多くがその変化に対応できていない

ことが、アパレル不振の原因であると考えられる。

これまで説明してきた通り、トレンド市場における競争環境は非常に厳しい。一言で言

えば、ブランド過多の状況である。このような状況下では、同じ業態の中でもそのブラン

ド力により勝ち負けがはっきりと分かれるようになる。これらの企業はこれまでの戦略

は、店舗があってこそのブランド作りであった。百貨店、ファッションビル、ショッピン

グセンターなどの店舗ごとに、そこに集まる人々向けにブランド開発を行ってきた。従っ

て、ブランド作りの考え方としては、どうしても売り場があってこそとなり、消費者の価

値観に合わなくなってしまう。結果として、個性の無い同じようなブランドが数多くで

き、売れない小規模ブランドが生まれ、会社全体の収益の悪化を招いている。生き残るに

はブランド力が求められる今、こうした企業はブランド作りのあり方を見直す必要に迫ら

れている。

図 1-6 国内と海外の市場構造の違い

出所:ローランド・ベルガー分析

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第二章 創られるファッション

前章より、近年における国内外のファッション市場の変化を見てきた。他国と比べて、

国内の市場の動きは活発ではなく、価格別のアパレル市場においてトレンド市場では、大

きな課題に直面している。このトレンド市場を支えていた中間層のどんな動きから、これ

まで流行が生まれていたのか。本章以降では、かつての流行の生み出され方について、創

られるファッション・創るファッションの二つに分け、説明する。

1 ファッションリーダーから生まれるファッション

ファッションとは歴史的に見ると、もともと上流階級の人々が、自分たちよりも下の階

級の人々に対して、自身の権威を示すために発展したものであった。同様に現代でも、世

の中において著名人と呼ばれる人々のファッションは一般人のファッションの感性に少な

からず影響する。ここで取り上げられるのが、ファッションリーダーと呼ばれる人達の存

在である。世間でこのファッションリーダーと呼ばれる人物は、モデル、俳優、王族、大

統領夫人、デザイナーなど、世の人々の憧れである著名人である場合が多かった。彼・彼

女らのファッションが世界に影響を与え、ブームとなり、ファッションにおける流行を巻

き起こす事もあった。ここからは、3人の女性を例に挙げて説明する。

(1)ダイアナ元皇太子妃

まず一人目は、ダイアナ元皇太子妃である。彼女は在位中、世界のトップデザイナーた

ちの助けを得て、英国王室のドレスコードに革命を起こした。彼女はその場にふさわしい

ドレスを着用する技を習得した。ホスピスを訪れる際は、温かく近づきやすい印象を与え

るために明るい色の服を着用し、海外を訪れる際はその国のナショナルカラーをイメージ

した服を選んだ。1986 年に来日した際は、白に赤いドットのドレスを着用している。(図

2-1)また、ダイアナは、王室のファッションルールを理解していたが、それを変えてい

くことも恐れなかった。王族女性は喪中にしか着ないとされていた黒いドレスを着て、王

室の儀礼を破ったのも彼女が初めてである。他にも、タキシードや蝶ネクタイなど、中性

的な装いをし、夜の催しでパンツルックを披露した初めての王室女性でもあるという。

ダイアナは、王室ファッションを現代化することにも貢献した。1985 年にホワイトハウ

スでの晩餐会の際、彼女が着用した、ビクター・エデルスタインによるミッドナイトブル

ーのベルベットドレスが最も有名な例である。このドレスを着て、映画「サタデー・ナイ

ト・フィーバー(Saturday Night Fever)」からのヒットソング「ユー・シュッド・ビ

ー・ダンシング(You Should Be Dancing)」に合わせ、主演した米俳優のジョン・トラボ

ルタ(John Travolta)と一緒に踊った。こうして、その時の時代に合わせた装いをする

ことで、王室ファッションを変えていった。

1996 年にチャールズ皇太子と離婚後は、イギリス人デザイナーに拘らず、「ディオール

(Dior)」や「クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)」、「シャネル(Chanel)」と

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いった国際的なファッションメゾンを支持した。ダイアナのファッションは広く真似さ

れ、今もキャットウォークやデザイナーたちにインスピレーションを与え続けている。

彼女の立場は、皇太子妃であり、自然と世界中からの注目度も高い。しかし、それまで

と同じように伝統的な王室ファッションを続けていれば、現在に至るまで指示され続ける

ようなファッションリーダーとはなりえなかったに違いない。彼女は、服装がどれだけ強

力なコミュニケーションツールになるかということに気づき、そこから世間にメッセージ

を発信したという。このように注目される著名人たちは、自分自身の仕事を通してだけで

なく、日々のファッションからも世の中に自分を表現してきた。これが、人々に影響を与

え、支持され、流行を作る時もあるのだ。

(2)オードリー・ヘップバーン

次に二人目は、女優オードリー・ヘップバーンである。彼女はこの時代のファッション

リーダーであり、世の女性たちに大きな影響を与えた。1950 年代、まだまだ戦争の傷跡が

色濃く残る中、ファッション対する関心は多くの人が持っていた。1947 年、クリスチャン

ディーオールが発表した「ニュー・ルック」とは、丸みある肩と胸、細く絞られたウエス

ト、裾の広がったスカートが女性の身体をスッキリ見せるファッションである。これは、

50 年代ファッションの基盤となり、日本にもその影響は大きく流れてきた。

まず、1953 年公開の映画「ローマの休日」。アン王女からアーニャへと変わる姿。ロン

グからショートにカットしたヘアスタイルと共にフレンチスリーブブラウス&フレアース

カートがヘプバーンのフレッシュな魅力にマッチ。これで衣装デザインを担当したイーデ

図 2-1 来日時のダイアナ妃の服装

出所:ELLE Girl

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ィス・ヘッドはアカデミー衣装デザイン賞を獲得、ヘプバーンの名が知れわたるきっかけ

になった。女性の心の変化をファッションに託す、そんなファッションの本質が、散りば

められている作品である。次に、1954 年公開の映画「麗しのサブリナ」で着用して大ブー

ムになったサブリナ・パンツ。(図 2-2)細身のシルエットと、八分丈・九分丈くらいの短

めのズボン丈に特徴がある。サブリナ・パンツでさっそうと自転車に乗るのも流行した。

サブリナ・パンツに合わせて選ぶのはサブリナ・シューズ。オードリー・ヘップバーン演

じる主人公サブリナの名前がファッションアイテムに使われることとなった。

この時代のファッションリーダーは、映画に出演している女優や俳優である。その理由

として、オードリーが活躍した 1950 年代は、第二次世界大戦が終わり、混乱の中から新

しいモノを生み出そうというエネルギーに満ちた時代だった。この時代、日本では NHK の

放送が開始し、アメリカではカラー放送が始まる。そうして一般家庭にも徐々にテレビが

普及し始めていたが、この頃はまだ映画の影響力が強かった。しかし、1960 年代に突入す

ると、その関係が崩れ、テレビの時代になっていく。ファッションも、テレビに出演して

いる人物達から影響を受けるようになるのだ。

(3)ツイッギー

そして三人目は、1967 年に来日して“ミニスカートの女王”と呼ばれたモデルのツイッ

ギーである。(図)ファッションリーダーとして 60 年代の文化を象徴するトップ・モデル

図 2-2 サブリナ・パンツをはくオードリー・ヘップバーン

出所:ELLE

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の一人として世界的に活躍した。ツイッギーとは、小枝のような細い手足が特徴であった

彼女の愛称である。この時代、日本は激動の時代だった。学生運動をはじめ、社会的な解

放運動を行う人々のファッションから生まれたヒッピー、ビートルズの影響で流行ったモ

ッズファッションや流行に敏感な若者「みゆき族7」の間で大流行したファッションがアイ

ビー・ルック8といろんなファッションが生まれた。そんな世の中で、日本では若い女性か

ら羨望の的とされ、ツイッギーをイメージしたコンテストが催されるほどの加熱ぶりであ

った。1967 年にツイッギーが来日した時に日本国内で爆発的にミニスカートが人気とな

る。このことがきっかけで女性が脚を露出する事にさほど抵抗がなくなったといわれてい

る。ミニスカート人気が冷めぬ間に、ホットパンツが国内に伝わり、欧米と同様に女性の

抵抗なく流行した。特に 1971 年から 1972 年までは海岸でのカジュアルスタイルとして、

若い女性を中心に流行したアイテムの一つである。ここでも、彼女による影響力の強さが

見受けられるだろう。また、当時の彼女の「ピクシーショート」と呼ばれるボーイッシュ

なショートヘア、人形のように幾重にも重ねられたバサバサまつ毛は、50 年近くたった今

もなおレトロ・ファッション好きの女性たちに愛され続けている。

764 年の 5月頃から銀座のみゆき通りや並木通りに大勢の若者がたむろするようになり、みゆき通りにち

なんで「みゆき族」と名づけられた。

8アメリカの 8 大学により結成されたフットボール連盟があり、その彼らが来ていたファッション。連盟

となっている各校にはレンガ造りの校舎に生い茂る蔦(アイビー)がシンボルとなっていたことからアイ

ビールックと呼ばれる。

図 2-3 ミニスカートワンピースを纏ったツイッギー

出所:フロントロウ

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映画からテレビへシフトチェンジされると、ニュースや CM で話題になった人々は注目

の的となる。ツイッギーも森永製菓やトヨタといった日本企業の CM に出演しており、テ

レビを通して彼女を見ることができた。当時、白黒テレビからカラーテレビへ移行してい

る時期であり、都会においてテレビの普及率は約 100%である。このことから、当時、最新

のメディアとはテレビであり、そこから受ける影響は大きかったと考えられる。テレビが

世間一般に普及されていくことで、著名人はさらに大勢多数の人々に見られることとな

る。

彼女ら三人が活躍したこの時代には、スタイリスト9という職業も存在が曖昧で、ファッ

ション誌も日本には洋裁本しかなかった。世の中でおしゃれな人と言えば、映画やテレビ

に出てくる著名人であり、彼・彼女達がおしゃれのお手本だった。そのため、流行は彼・

彼女たちから生まれ、メディアを通して一般人へと流れていったのだ。

2 コレクションから生まれる流行

その年の色・モードといった、ファッションの流行(トレンド10)は、消費者が商品を

目にする 2年前から創り出されている。例えば、Fall/Winter 2017-18 のカラーは 38 色あ

る。これらの色のテーマは、「Different meanings of MIGRATION Humanity - Tensions -

Divergence - Breaking the box – Millennials(移住の異なる意味人類 - 緊張 - 発散

- 箱を破る - ミレニアム)」である。流行色を作るというよりも、あくまで未来の社会に

ついて予想し、流行色決定後のファッション業界の方向性を定めることが趣旨である。ト

レンドが創られる過程は、主に下の表 2-1 の流れで進められていく。各工程について、説

明をする。

9 日本人初のスタイリストは、高橋靖子さん。フリーランスのスタイリスト業として確定申告の第 1号に

登録された。

10 市場におけるファッションの流行・動向や売れ筋のことをトレンドという。

表 2-1 トレンドが創られるサイクル

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はじめに、流行色の決定だ。流行色の方向性を決めているのは、1963 年に発足したイン

ターカラー(国際流行色委員会:INTERNATIONAL COMMISSION FOR COLOR)という組織であ

る。加盟国を代表する色彩情報団体で構成されており、協議でファッション流行色を選定

していく。色の数は指定されていない。前に述べたように色を決めるよりも、消費者の心

理や世界情勢の変化から未来を予測し、カラーを決める。

ここで、加盟国各国の色彩情報団体が選んでおいた色をプレゼンし、提案に対する理解

を深めながら流行色を決める。実際のシーズンの約 2年前の 5月に春夏カラー、11 月に秋

冬カラーが決められる。ここから各国の色彩情報団体が、国内の市場にあわせてトレンド

カラーを発信する。日本においては、JAFCA(一般社団法人 日本流行色協会)がその役割

を担う。実際には、(1)レディスウェア、(2)メンズウェア、(3)プロダクツ&インテリ

ア、(4)メイクアップというカテゴリごとに、JAFCA 会員に対して情報が提供される。

流行色が決まると、次は総合的なトレンドが発信される。世界各国には複数のトレンド

情報会社が存在する。その中でも、パリやロンドンを中心に世界的に影響力の強い会社が

数社ある。これらトレンド情報会社はシーズンの約 1年半〜1年前にトレンドブックを発

表し、これを購読している企業に向けにセミナーやコンサルティングを行い、商品開発に

貢献している。その情報はカラー・素材・柄・スタイルなど多岐に渡り、アパレルだけで

なく、インテリアやエレクトロニクス、プロダクトデザインの分野まで網羅している。な

ぜこの本が重要であるかと言えば、消費者の心理や世界の経済や政治状況の変化を捉え、

ライフスタイル価値観の変化についての予測も立てられているからである。このような貴

重な情報は、一般の消費者の目に直接触れることはなく、企業間でやり取りされている。

これらの情報を踏まえた上で、素材が決められる。ここで言う素材とは、糸と布地であ

る。 インターカラー決定後、半年〜1年後までの期間にそれぞれの展示会が行われる。そ

の選りすぐりの素材を元に、各ブランドでデザインされた服が実際に作られて発表される

のが、販売される半年前である。デザイナーやパタンナーが作り上げた服が、世界中のコ

レクションやファッションウィークを通して披露される。その直後、VOGUE や ELLE などの

海外ファッションメディアから新作情報が消費者に届く。近年は、雑誌を通してだけでな

く、ファッションショーのネット配信もよく見られる。その後、国内のアパレル小売店・

ファッションメディアからトレンド情報が発信され、徐々に消費者の間で次のトレンドが

浸透し始める。そして、各ショップの店頭にトレンドの商品が並べられ、実売期に突入し

ていく。こうして、私たち消費者の間で、ファッション業界の業界人によって創られた流

行のアイテムが広がっていくのだ。流行とは、自然と生まれるものではなく、ファッショ

ン業界で働く人々によって、創られたものであったことがわかる。

3 メディアの影響力

ファッションリーダーの時代もコレクションから生まれる時代もメディアが世の人々に

もたらす影響力は非常に大きい。時代とともに、形態を変えながら人々にファッションの

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情報を与えてきた。この時代のメディアの特徴は、大衆に向けてのメディアであったこと

である。新聞、ラジオ、テレビ、雑誌と、戦後の人々の生活が豊かになるとともに発達し

てきた放送のメディアに注目する。

まず、オードリー・ヘップバーンのような映画に出演する女優・俳優が、ファッション

リーダーであった時代には、メディアの中で影響力を持っていたのは、映画である。図 2-

4 の入場者数に注目して見てみると、1955 年から 1960 年代前半までは入場者数が多かっ

た時代であることがわかる。ピーク時の 1958 年では約 11 億人である。同年の世界人口は

2,946,253,650 人(資料: International Data Base(IDB)(アメリカ商務省国勢調査

局))であり、およそ半数が映画を見ていたことになる。特に、1953 年に公開された「ロ

ーマの休日」は、1950 年代の人気の映画の一つである。国外はもちろん、国内でも評価が

高く、オードリー・ヘップバーンブームとなった。このように、この時代における映画の

存在は娯楽としてだけでなく、ファッションの情報メィアの役割を担っていた。しかし、

1958 年のピーク後、入場者数は減少し続ける。この急激な減少の原因は、「家庭用テレビ

の普及」によるものに他ならない。

図 2-4 映画に係る市場状況 興行収入及び入場者の推移

出所:内閣府 知的財産戦略推進事務局「(参考資料)映画に関する基礎データ」(平成 28

年 12 月 12 日)より引用

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図 2-5 を見ると、1950 年代後半から瞬く間に白黒テレビが家庭に普及される。東京オリ

ンピックが開催された 1964 年には、9割以上の家庭にテレビがある。続いて 1960 年代後

半からカラーテレビが普及し始める。1967 年には、TV 受信契約 2000 万突破し、1968 年に

は民放全局がカラー化した。その頃の日本は、高度経済成長期の真っ只中だ。テレビを通

して、都会で街行く人々のファッション、ニュースや CM で目にする著名人、バラエティ

や音楽番組に出てくるアイドルや芸能人を見て、憧れを抱き、自分のファッションにもそ

の要素を取り入れてみる。みんなが同じものを見ている時代であるため、大勢の人々が同

じようなファッションになってくる。それがこの時代の流行だ。みんながいいと思うもの

が流行りとなる時代であった。

そんな時代を後押ししたのが、ファッション誌の存在である。1970 年創刊された若い女

性向きの雑誌『an・an(アンアン)』と、1971 年創刊の『non-no』(ノンノ)は、その時代

の多くの女性に強い影響力があった。ファッションに関してはもちろん、雑誌に掲載され

ているスポットの美しい写真や記事に刺激され、雑誌を片手に持った多数の若い女性が特

定の観光地に押しかけたので、アンノン族と命名されるほど、世の女性たちのバイブルと

なっていた。以降、ファッション雑誌11の刊行総数は 83 誌(2008 年時点)と増加していっ

11 ここで述べている「ファッション雑誌」は、各世代別ファッション 66 誌、モード 9 誌、コスメ&メイ

ク 5誌、ネイルアート 3 誌の合計である。 「出版指標年報 2008」p168-169

出所:経済企画庁「経済要覧」

図 2-5 需要家庭電気製品の普及率

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た。日本は世界の中でも有数の、若者がファッションへの関心が高い国の一つであり、先

に述べた刊行総数がそれを物語っている。表 2-2 は、 「自分のファッションは何を参考に

して決めているか」 について示したもので、 ファッションリソースセンターが行った 1997

年の調査12である。学生から 29 歳までの回答として、 「ファッション雑誌を参考にする」

の支持率が 80%以上と断トツの1位だ。日本におけるファッション雑誌の種類は、ファッ

ションに関心を持つ女性たちの種類の増加とともに増えていく。1970〜2000 年代頃まで

は、こうして雑誌から自分のファッションを決めるスタイルが確立され、日本人のセルフ

コーディネート力が磨かれていくことになる。しかし、この時はまだ、雑誌の編集者たち

が提案するファッション、万人受けのファッションに誘導され、それを真似する、あくま

でも他人に創られていたファッションだった。

12ファッションリソースセンターが行った 1997 年の調査で、 日本では 「ファッション雑誌を参考にする」

の支持率が 80%以上と断トツの1位であったために以後はデータがとられていなかった。この調査の対象

は、日本人女性である。

表 2-2 自分のファッションは何を参考にして決めているか

出所:廣田勘治、小谷利子、石井冨久「日本女性のファッション意識とライフスタイ

ル」より引用

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第三章 創るファッション

消費者はこれまでより、ファッションやライフスタイルに自分らしさを求め、個性を主

張するようになってきている。その個々の性質や価値観が多様化しているため、同様に、

現在トレンドは非常に細かく分かれている。女性に注目してみると、キャリアウーマン、

カメラ女子、森ガール・山ガール、歴女・リケジョのように、それぞれの趣味やライフス

タイルが細分化されている。今まで流行はファッション業界の限られた人々によって創ら

れていたが、こうした変化により、流行をリードすることが難しくなった。その要因とし

て、3点の変化が挙げられる。これから、それぞれの要因について説明する。

1 ファストファッションの存在

供給側でいうと、昨今のアパレル市場は数年前と比べて大きく変化した。21世紀に入

って、日本は急速にグローバル化した。世界経済に揉まれながら、生活も劇的に変化し

た。そのようなグローバル市場の中では、いかに安く商品を提供できるかが非常に重要に

なってくる。そこで、ファストファッションの台頭してきた。このファストファッション

が受け入れられるきっかけとなった出来事が3つある。一つ目は、2008 年 9 月に起きたリ

ーマンショックである。米国投資銀行のリーマン・ブラザーズが破たんしたことを発端

に、世界的金融危機が発生し、日本の日経平均株価も大急落した。その後、二つ目の出来

事である、2011 年未曾有の大災害である東日本大震災に見舞われる。この震災を契機に、

人と人の「絆(つながり)」の大切さを改めて感じさせ、消費社会に対する疑問や価値観

の変化にも影響を与えた。そして三つ目は、2014 年 4 月、消費税が 8%に増税された。今

までの感覚で買い物をしていると 8%が意外に大きく、自身の出費に気遣うことも増え

た。そこで、ファッションにかける金額も見直され、高品質でファッション性の高いもの

をできるだけ安く手に入れたい、と言う消費者の気持ちを高めた。これらの3つのショッ

クな出来事が、結果的にファストファッションを後押しする契機となったのだ。

また、「いかに安く提供するか」という課題点で、解決策としてとられたのは、アジア

各国での工場生産だ。ブランドの本拠地は自国に構え、生産はアジアや新興国でというス

タイルも、グローバル化に伴い確立された。世界的企業である apple もそのスタイルで、

市場に大きな革命を起こした。ファッション業界でも同様にこのスタイルがスタンダード

となっていった。こういった動きにより、安さを追求する消費者の希望に沿い、支持され

ることとなった。

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ファストファッション業界の中でも、日本の代表的ファストファッションブランドのフ

ァーストリテイリングのユニクロがある。世間に知名度を上げることになったのは、2000

年のフリースブームだ。従来の常識を打ち破り、低価格、高品質、豊富なバリエーション

を生み出した。しかし、世界的に見ると、ZARA や H&M(ヘネス・アンド・マウリッツ)

がその上に存在する。両社は流行発信力があり、且つ開発のスピードが速い「多品種少量

生産」である。それに対し、ユニクロは素材にこだわる商品開発型の「少品種大量生産」

だ。近年、POS データで消費者のニーズをつかみ、スピーディーに売り場や商品企画、製

造に反映している。消費者にとっては、見栄えの良い最新デザインの服が比較的安価に手

に入るため、購入する人が多い。UNIQLO のようにベーシックアイテムを提供するブランド

もあれば、ZARA のようにトレンドデザインを提供するブランドもあり、選択肢も豊富であ

るため、ファストファッションだけで満足する人も多い。安く、より自分の好みに合った

服を手に入れことができるファストファッションは、消費者のニーズにしっかりと応えて

いるといえる。

2 インターネットの時代

需要者側の変化としては、ファッション情報をインターネットから得ていることだ。ブ

ランドの公式サイトではなくて、人気のあるタレントや読者モデル、またはおしゃれな友

だちのブログである。街の人やショップの販売員、美容師などが情報ソースになっている

ことも多い。インターネットなどの新たなメディアが加わることで、より自分の好みに近

図 3-1 世界の主なアパレル製造小売業の売上高推移

出所:FAST RETAILING「アニュアルレポート 2016」

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い人を自分で見つけてマイファッションの参考にするような時代になった。この現象は、

ファッションメディアのプロたちにとって脅威となっている。ファッション好きの素人の

ブロガーたちのファッションやライフスタイルを読者たちに支持され有名になり、コレク

ションの最前列に席が用意されるような存在にまでなってきている。これは、ファッショ

ンジャーナリストやプロの編集者たちがスポンサーやブランドに対して遠慮し、思った記

事が書けない状況になってきていることにも関係している。読者達は無意識ながらそれに

気がつき。雑誌ではなく SNS から自分好みの人を探し、その人の個性が自由に表現される

投稿が新たなファッションメディアとなり、そこからファッションに対するヒントを得る

ようになってきたと考えられる。

SNS の中でも、ファッションに特化して現在最も影響力を持っているのが、

「Instagram」である。昨年 10 月 3 日に開催された Facebook 社主催のイベント

「Instagram Day」によると、2015 年では国内ユーザー数が 810 万人だったのに対し、

2017 年は 2000 万人を突破したという。また Instagram で何を投稿しているかについてで

は、有名人に関する投稿、友人に関する投稿、そしてファッションと以上 3つが上位を占

めている。ここから、Instagram とファッションの強い関係性が窺える。そこで、ファッ

ションに関心が高く、自分のコーディネートを乗せる人の中で、多くの人々の共感を得た

人の中からインスタグラマーと呼ばれる人が生まれるのだ。最近では、そのようなファッ

ション感度の高い一般人のインスタグラマーが、出版社からオファーされ、図 3-2-1 のよ

うなスタイリングブックを発行することもある。

図 3-2 インスタグラマーから生まれたスタイリングブック

出所:Woman excite

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こうしたインスタグラマーが出てきた背景には、インターネットを通して世界中の情報

を得て純粋に自分自身のコーディネートを追求することが可能になったことがあげられ

る。そして、極めて独創的な発想のコーディネートをしても、どこかにその価値を認めて

くれる人がいて、その誰かと繋がれる、共感してもらえることが、こういった状況を加速

させているだろう。かつてのように、他人がいいといったものに縛られていた時代から、

自分がいいと思えるものを着る時代になった。これこそが今の流行だと言える。

3 コンセプトで売るファッション

ファッションとアパレル(服)、これらはイコールの存在のように扱われてきた。しか

し、本来の意味は異なる。ファッションとは流行を意味し、アパレルを含むライフスタイ

ル全体の流行を指すようになってきている。自己表現の手段も同様に変化してきている。

アパレルが自己表現の最も典型なアイテムであったが、ここ数十年でその範囲が広がり、

いつも聴く音楽、好みの雑貨、よく買う雑誌、お気に入りの場所やお店など自分のライフ

スタイルすべてから自分自身を表現する時代に変わった。このような変化の背景の一つ

に、「核家族化の進行」13が関係していると考えられている。最小単位の家族あるいは一人

暮らしをする人が植えたことで、服に限らず家具や食器などの雑貨を自分好みに自由にア

レンジできるようになったからだ。その流れを汲み、現在に至るまで、ライフスタイル提

案する企業が増えてきている。そのブランドの服を着てどのような時間を過ごしたいか、

実際に着た時の場面を想像しながら買ってもらうためにも、店内の家具や雑貨にもこだわ

り、ブランドのコンセプトごと販売する。そのようなビジネスモデルの一つの例として、

一定の価値観で商品を仕入れ販売するセレクトショップが挙げられる。セレクトショップ

の商品は、言葉の通りオーナーのセンスによって選ばれた商品が店頭に並ぶ。早くからラ

イフスタイル提案型のセレクトショップとして 1976 年に登場した「ビームス」が挙げら

れる。

セレクトショップ業界最大手のビームスでは、2012 年に新業態「B:MING LIFE STORE

(ビーミング ライフストア)」を立ち上げ、ライフスタイル化の流れを勢いづかせた。

(図 3-3、3-4)暮らしを取り巻くさまざまなコトやモノについて、3世代に向けて提案し

ていくセレクトショップである。幅広い世代に向け、メンズ、ウィメンズのカジュアルか

らビジネス、キッズやベビー、雑貨まで多彩である。ビームスは 1976 年に創業した当時

から、「アメリカンライフショップ ビームス」と店名を掲げていた。UCLA(米カリフォル

ニア大学ロサンゼルス校)の男子学生の部屋をイメージして、インテリアも手作りだった

そうだ。洋服が売れたので、アパレル主体の業態に向かっていったという。つまり、「ア

メリカのライフスタイルを売る店」というコンセプトから始まったビームスは、創業当初

から先駆けてライフスタイル提案型のセレクトショップとして展開していた。

13 針生拓郎(2011 年)

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現在、もっと個性的なコンセプトでファッションアイテムを販売している例もある。1

年間漁師がはいた中古のデニムを売る、という「尾道デニムプロジェクト」が広島県尾道

市で行われている。漁師や農家など、様々な職業の住民がはき古して色落ちさせる。味が

出た1点もののデニムは、全国のファンを引きつけている。企画したのは町おこしを手が

ける会社「ディスカバーリンクせとうち」(尾道市)。同じ備後地方の広島県福山市などで

つくられたデニムを漁師や農家、大学教授や寺の住職など様々な職業の人たちに1年間は

いてもらう。普段の生活や仕事で色落ちさせた中古デニムを尾道に来て買ってもらうこと

で、観光や地場産業の発信につなげる狙いだ。ジーンズははけばはくほど味が出るアイテ

ムをうまく活用した斬新なアイデアである。もとは2万2千円の新品デニムが、1年とい

う期限の中でジーンズの色落ちや生地の傷みができ、そこに加えてはいていた人の物語も

含めて、4万2千円の値がついた。

図 3-4 B:MING LIFE STORE で取り扱う雑貨

出所:Fashionsnap.com

図 3-3 B:MING LIFE STORE 2014 年春夏展示会の様子

出所:Fashionsnap.com

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今までファッションは変化し続けてきた。業界関係者いわゆる供給者側が誘導してきた

ファッションから、消費者が自身のライフスタイルに合わせたファッションを選ぶ時代へ

移っていった。これらの動きをまとめると、トップダウン型の流行からボトムアップ型の

流行に変わっていたと言える。

「トップダウン型」とは、いわゆる著名人や業界人達が世の中のファッションの主導権

を握り、彼・彼女らの流行りが一般多数の人々に流れていく。これが 2章で述べた創られ

るファッションの時代の典型だった。一方、現在はトップダウン型の反対である「ボトム

アップ型」の流行に変わった。今までプロと呼ばれてきていた人々の影響力が落ち、一般

人が新しいファッションの価値を生み、市場を開拓するようになった。SNS を通して発信

する人々が流行を創るようになった。(図 3-5)

このような変化が起きた要因の一つに、ファッションにおける「おしゃれ」の基準が変

わってきていることが考えられる。2000 年以前は、他人に認められるファッションが「お

しゃれ」の基準とされていた。そもそも、この時代、ファッション=アパレルのみを指し

ていた。みんなと同じコーディネート、誰もが知っているブランドのアイテムなど、分か

りやすく価値を示すものがおしゃれだった。それが 2000 年以降、「おしゃれ」の基準が一

つではなくなった。他人に認められなくても、自分がいいと思うファッションがおしゃれ

と思う人が増えてきたのだ。さらに言うと、他人と異なるコーディネートでもいいと思う

人が増えた。そういった人々が自分の個性、センス、ライフスタイルを自由に表現する場

として SNS が活用され、主要ファッションメディアとして Instagram のようなサービスが

成長した。どれだけ独創的なファッションでも、世界のどこかでその価値を共有できる誰

かがいる。著名人や業界人でなくても、自分の好きなスタイル・テイストで生活している

人を探し、その人とリアルタイムでつながることができる時代だからこそ、おしゃれの基

準も変わってきた。

図 3-5 流行の形成過程の変化

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第四章 ファッションの未来

ファッションは、自己表現の手段だ。自分がどんな人間か、他人からどのように見られ

たいか、ファッションを通して表現する。つまり、自分のためであり、自分以外の誰かに

見せるために服を着ているのだ。第2章では著名人・業界関係者から創られるファッショ

ン、第3章では自分で創るファッション、この2つのファッションから流行が生まれる過

程をみてきた。その変化を経て、個々にファッションを楽しむ時代となった。

1 ファッションの概念

しかし、私がいままで示してきたような2つのファッションにすべての人々が分けられ

るわけではない。おしゃれの基準が変わっても、自分のセンスを誰かに魅せたい、つまり

他人の評価を気にしている人は多い。逆に、おしゃれそのものにこだわらず、流行にもこ

だわらず、服を着ている人もいる。自己表現の手段は、ファッション以外にも、仕事、趣

味、好きなものなどライフスタイルからでも表現できる。ファッションが1番わかりやす

い自己表現ではなく、ライフスタイル全体が自分を表現し、そのあとからファッションが

付いてくるというカタチもある。このことから、今後、ファッションという概念自体がな

くなる可能性があると私は考える。その概念とは、流行・自己表現に対する意識のことで

ある。それらに対して、これから疑問を抱き始める人が出てくるのではないだろうか。

ファッションの概念がなくなると考えるに至ったきっかけは、現代アートの存在だ。現

代アートとは、「現代社会の情勢や問題を反映し、美術史や社会への批評性を感じさせる

作品のこと」14である。この現代アートが生まれるきっかけとなったのが、現代アートの

父といわれるマルセル・デュシャンの作品「泉」(1917 年)だ。工業製品の男性用小便器

に、自分のサインをしただけのオブジェ「泉」が物議を醸し撤去されたことから、自由と

言われるアートにも既成ルールがあるという事実を明かした。アートとは美しくなくては

ならない、書き手の「美」ではなく買い手の「美」の基準で美しさが決まる、そんな古典

的な既成概念にとらわれ続けていた世界で、アートの概念そのものを変えてしまった。そ

れが現代アートの始まりだった。この出来事と同様に、ファッションでも「おしゃれ」と

いうことに対して、自分の「おしゃれ」ではなく、他人の「おしゃれ」の感覚に左右され

てしまっていることに気がついていくのではないか。この違和感に気がつくことができる

のが、私は日本が一番早いかもしれないと思っている。それは、かつて世界のファッショ

ンに対して大きな疑問をぶつけたのが日本人デザイナーだったからだ。

2 かつての日本人デザイナーによる新しいファッション

三宅一生、川久保玲、山本耀司、1980 年代のファッション業界に「日本」の存在感を見

せつけた。「衣服は一枚の布」、「ボロルック」、「黒の衝撃」といった、今まで考えつかな

14 日経新聞「10 分で分かる現代アート 理解深める 20 のキーワード」(2012/4/5)

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かったようなファッションの概念、タブーとされていたことを覆す表現を行った。この3

人は、ファッションの中心だったヨーロッパで、ファッションの概念を変えた。それは、

日本発のテキスタイルデザインが当時珍しかったこともあるが、それに加えて彼・彼女ら

の独特の感性が生み出したファッションだった。日本は、他の国とは異なる特殊な文化を

持っている。多神教であり、和の心があり、独特の文化を持っている。そんな日本人だか

らこそ、またファッションの概念を変えられるのではないだろうか。

図 4-2 ヨウジヤマモト(1983 年の作品)

出所:朝日新聞 DIGITAL

図 4-3 コムデギャルソン

(1982 年の作品、ピーター・リンドバーグ氏撮影)

出所:朝日新聞 DIGITAL

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ファッションは、他人のためではない。おしゃれではなく、自分がどんな考えを持ち、

どう生きているかを伝える手段がファッションではないか。これからのファッションと

は、そんな自分のライフスタイルから自然と生まれるファッションがあると思う。スティ

ーブ・ジョブズのように、こだわりのアイテムを一つずつ選び、毎日同じものを着る。本

当に自分に似合うものだけを選び、値段よりもその服が作られた過程を楽しみ、コンセプ

トで購入する。自分のライフスタイルに合わせて暮らしている中で、気づけば、この服を

選んでいた。そのような究極のミニマリズムのファッションができるかもしれない。自然

とアイテムの数も限られ、洗練されていく。このようなファッションの選択を実践してい

く可能性が今の日本では充分に考えられる。

3 日本人とファッションのこれから

日本人の「ファッション編集能力」15の高さが挙げられる。ファッション編集能力と

は、自分自身で着こなしを考える力のことである。日本人はこの能力が非常に高いと言わ

れている。例えば、ファッション雑誌の種類の多さは世界でもトップレベルだ。細かく分

けられたテイストごとの雑誌、世代やシチュエーション別の雑誌と千差万別である。小学

生用のファッション雑誌もあり、幼い頃からファッションに触れる機会があることもファ

ッション編集能力の向上につながっていると考えられる。また、日本のユニフォーム文化

にも注目したい。日本では基本的に中学校・高校では制服が決められている。厳しい校則

の中でも個性を出そうとアレンジし、流行を生み出すこともある。腰パンやルーズソック

スなど制服の着こなしのアレンジから、世の中のファッションにまで流行が浸透するほど

の影響力を持つこともある。図 4-3 のように、それぞれの地域に合わせた制服の着こなし

があり、このような工夫をすることも日本ならではだ。

15 黒田清子(2011)

図 4-4 東阪の制服の着こなし

出所:NIKKEI STYLE(2013/12/22)

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このようにファッション編集能力が高い日本人だからこそ、ファッションの在り方自体

に違和感を受け止め、その概念について考える日がくるのだろう。

おわりに

私は、服飾における流行の形成過程について研究してきた。流行とは、業界人によって

創られ操作されるものだと思っていた私にとって、流行が操作できないほど個々人の価値

観やライフスタイルが多様化していることに驚いた。特に今の時代、インターネットの発

達、SNS の影響により、流行は全体にではなく、一部の人々へ向けて生まれ消えていくこ

とがわかった。ファッション業界の関係者でなくても、自分のライフスタイルにこだわり

を持ち、外へ発信することで、どんな人でも流行を創ることができる。今、そんな時代に

入っている。しかし、今後、流行自体どうなるかわからない。私が考えるように、流行の

存在を疑い、概念から変わってしまうかもしれない。そうすれば、現代アートのように、

より複雑で個人のメッセージを含んだファッションが生まれるかもしれない。次の時代の

ファッションがどう変わるのか、楽しみだ。

最後に、卒業論文を書く上で、1年間指導してくださった佐藤治正教授に感謝の気持ち

を述べたい。この卒業論文の作成期間、何度も議論を重ねてきた。私の意見に対して、

「なぜ」を問い続け、どうすれば論理的に説明できるのか、1年間共に考えてきた。その

時間は非常に有意義で、楽しく、思い出深い。この経験が無駄にならないよう、日々努力

を惜しまず、より計画的に行動できるようにしていきたい。

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〔参考文献〕

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集」光文社新書

2. 岩崎剛幸(2017)「アパレル業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本」秀和システム

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23. 廣田勘治、小谷利子、石井冨久

「日本女性のファッション意識とライフスタイル (1)」

http://www.kobe-yamate.ac.jp/library/journal/pdf/college/kiyo54/54hirota.pdf

(アクセス日 2018/01/29)

24. 廣田勘治、小谷利子、石井冨久

「日欧の女子学生のファッション意識とライフスタイル」

http://www.kobe-yamate.ac.jp/library/journal/pdf/college/kiyo52/52hirota.pdf

(アクセス日 2018/01/29)

25. 一般社団法人 日本雑誌協会

https://www.j-magazine.or.jp/user/printed/index/1

(アクセス日 2018/01/29)

26. 一般社団法人 日本流行色協会

Page 32: 流行りの形成過程 ~創るファッション・創られる …’論/4向井.pdf甲南大学 マネジメント創造学部 2017年度 卒業研究プロジェクト 指導教員

102

http://www.jafca.org/colortrend/

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27. Intercolor

http://www.intercolor.nu/welcome.html

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28. TREND UNION

https://www.trendunion.jp/trendunion/

29. FAST RETAILING アニュアルレポート 2016

http://www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/ar2016.pdf

(アクセス日 2018/01/29)

30. 日本経済新聞 「10 分で分かる現代アート 理解深める 20 のキーワード」

https://www.nikkei.com/article/DGXBZO39979240Z20C12A3000000/

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31. 朝日新聞 『「黒の衝撃」受け継ぐ若手 ヨウジヤマモトら登場30年』

http://www.asahi.com/fashion/topics/TKY201112140412.html

(アクセス日 2018/01/29)

32. Fashionsnap.com 「服は脇役?「ライフスタイル提案」ショップが増えた理由」

https://www.fashionsnap.com/article/lifestyle-shop-1314/

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