障がいのある子どもたちのための タブレット端末を利用した学習支援...

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障がいのある子どもたちのための タブレット端末を利用した学習支援マニュアル 魔法のふでばこプロジェクト

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Page 1: 障がいのある子どもたちのための タブレット端末を利用した学習支援 … · 特別支援教育の必要な子 どもたちにとっては彼らの苦手を補う魔法の道具がたくさん詰まったふでばこのようなもので

障がいのある子どもたちのための

タブレット端末を利用した学習支援マニュアル

魔法のふでばこプロジェクト

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タブレット端末は魔法のふでばこ

 タブレット端末は誰にも使いやすい道具として広がってきています。特別支援教育の必要な子どもたちにとっては彼らの苦手を補う魔法の道具がたくさん詰まったふでばこのようなものです。今後、その道具は使い方によってさまざまな目的に活用できます。魔法使いの先生たちのアイデアでさまざまな活用が生まれていくでしょう。

 道具を安易に使うと子どもたちが努力しなくなると心配する人もいます。努力が大切なことは理解できます。しかし、いくら努力してもうまくいかない子どもたちはどうでしょう。だんだんやる気が失せていくかもしれません。努力すればできるけど時間がかかる子どもはどうでしょう。一生懸命努力する間に時間切れになったり、勉強が遅れたりすることも起こります。コツをつかめば努力しなくてもすぐにできる子どももいます。彼らには、その道具を活用してコツを教えてあげることもできます。

 ふでばこ(タブレット端末)の中の魔法は誰もが使えますが、間違った使い方もあります。使い方によっては、子どもの能力を引き出すこともあれば、逆に子どもの力を封じ込めてしまう危険性もあります。ある子どもに効くからといって他の子どもにも効くとは限りません。

ここでは、魔法のふでばこ活用の 10 のポイントと事例を紹介してみます。

「魔法のふでばこプロジェクト」とは、東京大学先端科学技術研究センター・人間支援工学分野、ソフトバンクモバイル株式会社、株式会社エデュアス、特定非営利活動法人 e - AT利用促進協会の共同プロジェクトの名称です(2011年1月プロジェクト開始)。

タブレット端末が、障がいのある子どもの学習や社会参加を支援するさまざまな機能の詰まった「魔法のふでばこ」として活用されることを祈って名称が付けられた、障がいのある子どもの自立を支援する研究や啓発活動を共同で行うプロジェクトです。

本件に関するお問い合わせ先:<東京大学先端科学技術研究センター> 人間支援工学分野 問い合わせ先メールアドレス:[email protected]<ソフトバンクモバイル> カスタマーサポート 問い合わせ先:ソフトバンク携帯電話から 157 /フリーコール 080-919-0157(無料)<株式会社エデュアス> 問い合わせ先メールアドレス:[email protected]

  SOFTBANK およびソフトバンクの名称、ロゴは、日本国およびその他の国におけるソフトバンク株式会社の登録商標または商標です。

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Point● 楽に無理なく操作できる環境をつくろう1

 子どもたちにとってタブレット端末を無理なく利用できるようにすることは、継続的な利用のために不可欠です。あまり無理を続けると視力低下や体の痛みなど二次障がいを生むこともあります。

・姿勢をチェック 自分でタブレット端末を動かしてその位置を変えられない子どもの中には、かなり無理な姿勢でタブレット端末を操作している子どもがいます。痛みが生じたり側湾など体に変形が起こる場合もあります。子どもが楽に操作できる位置や高さにタブレット端末を固定してあげましょう。その傾斜も大切です。専用の固定台やアームが市販されていますが、ビーズクッションや自作した台などでも固定ができます。

○肢体不自由の子どもにとって・画面が見やすいかをチェック 寝たまま、あるいは、車いすに座ってタブレット端末を操作する子どもたちは、光の反射によって画面が見えにくいことがあります。子どもと同じ目線で画面を見てみましょう。もし見えにくい場合には、彼ら自身で液晶の角度を調節するのは容易ではありませんので、照明を落とす、カーテンを閉めるなどの工夫で見やすい画面にしてあげましょう。反射防止処理を施した液晶保護シートを画面に貼ることでも反射を防ぐことができます。

魔法活用の 10 のポイント

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・スムーズに使えているかをチェック 誤操作が多いとその使用をあきらめてしまう子どもがいます。場合によっては口述するアクセシビリティ機能を設定するといいでしょう。また、手がうまく伸ばせない子どものために、長いスタイラスペンやヘッドスティックなどの自助具を自作している人もいます。

○知的障がいや自閉症の子どもにとって 時に物品を乱暴に扱う子どもがいます。タブレット端末が破損しては大変と、彼らには使わせないような措置をとる人もいますが、道具を与えないとそのメリットは生じません。市販されているような頑丈なケースに入れる方法もあります。

 乱雑に扱う子どもの多くはタブレット端末が自分にとって役に立つ大切なものだと理解できていません。それに気付くときっと大事に扱うようになるでしょう。

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Point● タブレット端末の中のアクセシビリティ機能を知ろう2

 タブレット端末には、視覚障がいや肢体不自由など、障がいのある人が使用するために便利な機能(アクセシビリティ機能)が標準で備えられているものがあります。

○見ることや読むことの困難をサポートする機能

・スクリーンリーダー 全盲の人もタブレット端末を操作できるように、画面に表示されている文字やアイコンなどほぼすべての要素を読み上げる、一般的に「スクリーンリーダー」と呼ばれる機能があります。 例えば iPad には「VoiceOver」、Windows7 には「ナレータ」という機能です。文字を音声で読み上げるだけではなく、エラーメッセージや画面表示の状況など、タブレット端末の各種の状態を音声ガイドする機能があります。 ただし、この機能をオンにするとタブレット端末の操作方法が変わってしまい、操作方法が分からなくなる場合もあります。事前にマニュアルを読むなど、使用には注意が必要です。 なお、Windows7 には「ナレータ」機能は標準で搭載されていても、日本語の音声読み上げエンジンが搭載されていませんが、特別支援学校や障がい者の IT 支援に関わる人向けに、日本マイクロソフト社から日本語音声エンジンが無償で提供されています。

(http://www.microsoft.com/japan/enable/7narrator/)。

・音声読み上げ 読み上げたい文章や文字を任意に選択し、その部分だけを読み上げる機能で、スクリーンリーダーほど細かい音声ガイドを含まない機能があります。音声ガイドは不要でも、文字を読むサポートを必要とする生徒(弱視の人や読み障がいのある子どもなど)のサポートに役立ちます。 例えば iPad には「選択範囲を読み上げ」というアクセシビリティ機能が標準で備わっています。 Windows7 では、前出の音声エンジンと、任意の音声読み上げソフト(「MOSpeech」や

「Natural Reader」など)を追加導入する必要があります。

・拡大機能 表示されている画面全体を引き延ばして、任意の倍率に拡大する機能は、アクセシビリティ機能として一般的なものです。 例えば、iPad には「ズーム機能」、Windows7には「拡大鏡」というアクセシビリティ機能が標準で用意されています。

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・画面のコントラストを変更する まぶしさを感じやすい人や視力が低い人など、画面を見にくい人のために、画面のコントラストを反転したり調整したりできる(白地に黒い文字から、黒い背景に白い文字を表示するなど)機能があります。 例えば、iPad には「黒地に白」、Windows7 には「ハイコントラスト」という機能が標準で用意されています。

○肢体不自由のある人をサポートする機能

・操作の支援 肢体不自由のある人がタブレット端末を操作しやすいように、指一本だけですべての操作ができるように支援するアクセシビリティ機能があります。 例えば iPad には、通常は二本指や三本指など複数の指を使って行う必要のあるジェスチャー動作を一本指で行えるようにしたり、本体の側面に配置されているハードウェア・ボタンで操作する機能を画面タップで呼び出したりできる「AssistiveTouch」機能があります。Windows7には、画面に表示して使用する「スクリーンキーボード」を使えば、オプションの「キーをスキャンする」という機能により、外付けのスイッチひとつでキーを入力するといったことが可能になります。

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Point● 発想を変えて新しい使い方を見つけよう3

 障がいがある子どもが目標を達成するために、障がいがない子どもと同じようにやることは時に大きな無理を生みます。例えば、肢体不自由の子どもがメモをとるために鉛筆を持ってなかったらどうすれば良いでしょう。一生懸命練習して書けるようになるのは大切ですが、その目的達成には時間がかかり、また過度な努力を強いることにもなります。そんな時は機能を中心に考えてみると解決策が見つかります。「メモをとってください」と言われると、紙と鉛筆を準備する人が大半ですが、本来の行動の形を離れて目的ベースで考えてみると「録音・録画する」、「写真を撮る」などまったく違った解法が見えてきます。 タブレット端末には、ブラウザー・ワープロ・辞書・電卓・ゲーム・音声認識ソフトなど多くのアプリケーションが入っています。これらの一部の機能や複数のアプリケーションを組み合わせて面白い活動を行う子どももいます。

○辞書で筆順が正しくなった B君は文字の書き順が滅茶苦茶でした。先生がどんなに教えても正しく書けるようになりません。そんなB君が電子辞書を使っています。彼は手書き認識入力で調べたい漢字を出したいのですが書き順が違うと正しい漢字候補が出てきません。そんな試行錯誤をするうちに正しい漢字を出したいために筆順が自然と正しいものになっていきました。

○カメラ機能でノートをとる Cさんは書くことに時間がかかります。一生懸命書いても全部書き終わる前に先生が黒板を消して次の項目を書いていきます。そこで許可をとってカメラを使ってみることにしました。今まで書くことに精一杯で内容を十分理解できなかったのですが、カメラに写した黒板の内容を落ち着いて見る事ができるようになり理解も進みました。

○ワープロと音声アプリで漢字の読み方を調べる A君は読み障がいのある子どもです。本に出てきた「鰤」という漢字が読めません。そこでどうするのかを観察していると、ワープロの手書き文字認識機能を使いタブレット端末上に漢字を大きく書きました。すると画面に「鰤」という漢字に変換されて表示されます。これを選択して音声読み上げアプリで読み上げて「ぶり」という読み方にたどりつきニッコリ笑いました。

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Point● 情報の共有を考えてみよう4

 タブレット端末の特徴の1つは通信機能を内蔵していることです。この通信機能を利用して文書や画像データを離れた人と共有することができます。

○授業の中での観察 盲学校では、鍼灸の授業時にロービジョン(弱視)の子どもが先生の実技を顔を近づけて観察し学びますが、多くの生徒がそれを一緒に見ることができません。そこで、先生の施術をカメラで中継し、生徒がそれぞれ自分のタブレット端末で観察することにしました。こうすることによって生徒がゆっくり先生の実技を観察することができるようになりました。

○遠隔コミュニケーション 病院に入院し院内学級で学ぶ子どもたちは、それまで在籍していたクラスの友達との関係に変化が生じないかを心配しています。寄宿舎に入って生活する子どもたちも時に家族が恋しくなります。そんな時にテレビ電話でコミュニケーションを家族や友達と取ることがタブレット端末を使えば実現できます。

○生徒会での活用 病弱特別支援学校で学ぶ筋ジストロフィーの子どもたちは、生徒会活動を行う時に、自分たち自身で資料を印刷して配布したり、配布してもそれを簡単に読めないという悩みを抱えていました。そこでワープロで作成した生徒会資料をファイル共有サービスを利用し、全生徒が簡単に資料をダウンロードしてタブレット端末で読めるようにしたことで生徒会活動を先生に頼らずに実施することができるようになりました。

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Point● コミュニケーションに活用しよう 5

 タブレット端末には文字を打つ機能や写真を見る機能が標準で入っていますので、それらの機能を組み合わせて簡単なコミュニケーションを行うことができます。また、コミュニケーションに特化した専用のアプリケーションもあります。これらを利用するとすぐにコミュニケーションを取ることができる子どももいますが、タッチスクリーンを滅茶苦茶に押して全く使えない子どももいます。後者は、タブレット端末がコミュニケーションの道具として子どもが認識していないと考える必要があります。

○言葉の意味を理解できていない子ども 写真を見せると写っている物の意味を理解できる子どもは、タブレット端末に保存したたくさんの写真を使ってコミュニケーションをとることができるでしょう。シンボルや写真を整理できるようなコミュニケーション専用のアプリケーションもあります。 それが理解できていない子どもの多くは、画面の写真を滅茶苦茶に触ったり、写真に興味を示さなかったりするでしょう。タブレット端末がコミュニケーションの道具であることを認識できていないわけです。それが自分に便利なものだと認識できれば、きっと上手に使えるようになります。画面にタッチすれば「立て」、「座れ」などの音声が流れ、それに合わせて教師が立ったり座ったりという遊びをすることで、その意味に気付く子どもがいます。

○言葉の意味が理解できていて音声を発することが困難な子ども 字を書ける子どもは筆談ツールをすぐに使うことができます。また、字を書くのが困難な子どもにはキーボードが有効でしょう。障がいによってはアクセシビリティ機能を組み合わせることでさらに使いやすくなります。

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Point● 本を読んでみよう6

 タブレット端末で本を読めることは多くの人が知っていますが、どうやって本を入手し、どう利用できるのでしょうか?

○電子書籍とは 電子書籍とは、紙の印刷物ではなく、デジタルデータの形で記録された書籍データを指します。しかし実際には、それらの書籍データに加えて、それを閲覧するためのアプリケーション(ソフト)、それらのアプリケーションが動作するタブレット端末などの装置との組み合わせが不可欠です。

○電子書籍とタブレット端末のメリット タブレット端末は、視覚障がいや読み障がい、肢体不自由のある人が書籍や文書を読む際に便利な道具として使うことができます。画面の表示倍率を拡大したり、文字のサイズを変更したり、文字と背景のコントラストを変更したり、または文章を音声で読み上げたりと、視覚障がいや読み障がいのある子どもたちに便利な機能が使えます。また、肢体不自由のある子どもにとっても、画面のタップだけでページを切り替える機能を使って楽にページめくりができるようになったり、1 台のタブレット端末の中にはたくさんの本のデータを保存することができるので、持ち運びに困ることがなくなります。 紙に印刷された教科書や書籍は、障がいのある子どもたちにとっては扱いがとても難しいもののひとつです。タブレット端末を使うことで、障がいのある子どもたちが教材に触れる上での困難がひとつ少なくなります。

○電子書籍の入手 タブレット端末では、軽くて持ち運びが容易な機種も多いことから、電子書籍を閲覧する目的で用いられることが増えてきています。そのため電子書籍を閲覧するためのアプリケーションは多数登場しています。

特定のネット書店からの入手と専用アプリケーション 特定のインターネット上の書店から電子書籍を購入し、その購入した電子書籍を表示して読む機能を備えたアプリは多数あります。しかしながら、このようなアプリケーションでは、自作した教材の電子ファイルを読み込んで表示することができない場合が多いことに注意が必要です。

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自作による入手と汎用アプリケーション 電子書籍は、後述する一般的なデータ形式の電子書籍ファイルとして自作することもできます。文書をスキャナーにかけて印刷面の画像を作り、OCR ソフト(文字認識ソフト)にかけると、文字データを得ることができます。または、人間が文書を見ながらキーボードで手入力し、後述する一般的なファイル形式の電子書籍データを製作することができます。こうした一般的な形式の電子書籍ファイルを読み込むことができる、汎用の電子書籍閲覧アプリケーションはいくつもあります(資料 1 を参照)。また、自作するためのソフトもいろいろなものがあります(資料 2を参照)。

一般的な電子書籍のファイル形式 電子書籍は、従来の紙の上に印刷されていた文章や文字などのコンテンツをコンピュータの画面上に表示させるために、パッケージとしてまとめた電子データの形で配布または市販されています。この電子データの仕様として、電子書籍を製作している団体や企業が、さまざまな電子書籍データ形式を定めています。PDF、EPUB、DAISY といったデータ形式が、一般的によく使われています(資料 3 を参照)。ちょうどワード形式(.doc)の電子ファイルが、この形式に対応したソフト(マイクロソフト社製の Word など)だけで開くことができるのと同じように、特定の電子書籍のファイル形式は、それに対応した閲覧アプリで開く必要があります。

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Point● 著作権を守ろう7

 書籍などすべての著作物は、使用するのがその一部であっても、どの範囲まで複製が許されるのかを定めた著作権の理解が不可欠です。教育と障がい者への利用については、著作者に許諾を得ずに著作物を複製できる範囲が著作権法により定められています(それらの範囲に含まれてない範囲の複製については著作者に許諾を得る必要があります)。

○書籍の複製と著作権の遵守について著作物の複製について関連する例外措置

著作権法第 35 条 「学校その他の教育機関における複製等」により、学校が授業で使用するために著作物の一部を複製して使用することが認められています。ただし、学校で書籍や映像作品などを授業で使用する際に、教師が生徒に対してどの範囲まで、書籍などの著作物を授業の教材として複製して利用できるかについてのガイドライン(「学校その他の教育機関における著作物の複製に関する著作権法第 35 条ガイドライン」(http://www.jbpa.or.jp/guideline/index.html)が、日本書籍出版協会によりまとめられています。実際の使用については、このガイドラインにそって行う必要があります。

著作権法第 37 条 「視覚障害者等のための複製等」により、視覚障がいや読み書き障がいのある生徒に適した教材を作成するために、著作物を複製することは政令により学校図書館に許可されています。著作権法第 35 条では、「著作物の一部」への制限があります。障がい児のための拡大/点字/電子書籍など、特別な教材として一冊の本全体を複製するような作業は、学校図書館やその他、いくつかの事業者だけに許可されている点に注意が必要です。また、著作権法第 37 条で複製が許可されている事業者は、「著作権法施行令の一部を改正する政令(平成21年政令第299号)」に示されています。学校図書館はここに含まれています。その他の事業者は、以下の政令の概要を示した文書を参照してください。http://www.bunka.go.jp/chosakuken/pdf/21_houkaisei_seirei_gaiyou.pdf

○教科書デジタルデータの入手を助ける制度 教科書を視覚障がいや読み障がいのある生徒のために、点字教科書や拡大教科書、DAISY 教科書として作成するためには、紙の印刷物を何らかの形で電子化する必要があります。この作業を軽減するためには、教科書の PDF 形式のデータを教科書出版社から文部科学省を通じて入手するという方法があります。入手できるのは非営利のボランティア団体です。ただし、高等学校および特別支援学校高等部についてのみ、学校から文部科学省に申請することで教科書デジタルデータを入手できます。 この規定は、教科書バリアフリー法(2008 年 6 月 10 日成立『障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律』の通称)と著作権法第 33 条の 2 に定められています。 上記の法律に基づく教科書デジタルデータ提供の申請方法や、申請に必要な文部科学省への提出書類の様式については、文部科学省ウェブページ「教科書のデジタルデータの提供について

(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/kakudai/1246126.htm)」 を 参 照 してください。また、具体的な申請や利用の手続きについては、「文部科学省発行の教科書デジタルデータ運用ガイド・活用マニュアル(富士ゼロックス株式会社)」が公開されています

(http://www.fujixerox.co.jp/company/news/release/2011/1027_manual.html)。

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Point● 記録を残そう8

 タブレット端末の中にはさまざまな記録を簡単に残すことができます。写真、動画、録音データ、文章などを蓄積したデータをうまく活用できれば子どもが自分の苦手な部分を補ったり、先生が子どもの能力を把握したり変化に気付くことができるでしょう。

○子どもの苦手を補う電子連絡帳 知的障がいのD君は学校であった出来事をお母さんに話したいのですが、上手く伝えることができません。それが本人にとっても家族にとってもストレスになっていました。そこで担任の先生が撮った学校での出来事の写真を持って帰ってもらうことにしました。そうすることでD君も上手に伝えることができるようになりました。

○先生が子どもの能力を把握するツール 発達障がいのEさんが書いた字はなんら問題がないように見えました。そんな時、タッチスクリーンで絵を描くアプリを使ってEさんに字を書いてもらいました。このアプリには書いた文字が書かれた動きで再生される機能がついていました。それを再生したことで、Eさんの書き順が全くでたらめであることに先生は初めて気がつきました。

 例えば、紙に書いたものは残りますが、そのプロセスは残りません。ですから漢字は書けていても、書くのにどれくらい時間がかかったか、書き順が正しかったどうかは分かりません。 アプリケーションによってはそのプロセスを記録に残せるものがあります。これまで気付かなかった特性が明らかになったり、子どもの発達を具体的に保護者と共有できたりします。

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Point● 教室の外に持ち出そう9

 タブレット端末の特徴は携帯性に優れることです。従来のノートパソコンに比べて小型軽量で電池が長くもつので充電さえしておけば電源の心配はいりません。また通信カードが内蔵されたモデルであればどこでもインターネットに接続することが可能です。こういった特徴を生かすことでさまざまな教育が可能になります。

○修学旅行で生徒の自由行動に 障がいのある子どもたちが修学旅行の自由行動で目的地に移動するために、これまでは紙の地図を用いていましたが、スマートフォンのGPS機能を活用しながら移動をしてみると、はじめは戸惑いながらも結果としては楽しんで目的地にたどり着けました。卒業して就職すると行動範囲は否応なしに広がります。そんな時にスマートフォンがあればすぐにどこにでも行けるかというと決してそうではなく、慣れる必要があります。GPS機能の活用もこういった教育活動の中で自然に使えるようになっていくでしょう。

○リアルな場面で ある知的障がい特別支援学校では、生徒が下校時に道の真ん中を歩くことが問題になりました。これまでなら、その生徒に危険性を教えるために現場の写真を撮って、教室で教えるのですが、機動性のあるタブレット端末の特性を生かして、写真を撮ってから「どこを歩くのが正しいか」といったクイズ形式の問題を作り、現場に持ち出して学習してみました。すると本人もよく理解ができたようで、きちんと道の端を歩くようになりました。教える場所と習う場所と教材が一致しないと、時に混乱が生じることがありますが、タブレット端末を用いることで避けられることがあります。

○職場実習に活用 タブレット端末で学んだことや学習に役立ったツールは教室の外にも持ち出したいものです。これまではメモ帳、録音機、カメラ、時計、仕事の手引きなどたくさんのツールを職場に持ち込む必要がありましたが、タブレット端末があればさまざまなツールを1つにまとめることができます。肢体不自由の子どもにとっては持ち歩きや取り出しの負担が軽減できますし、発達障がいの子どもにとっては忘れ物を減らすのに役立つでしょう。何より、タブレット端末をさっそうと使いこなす生徒はカッコよく見えるに違いありません。

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○野外で使う留意点 教室と違って、野外で用いる場合は落下や水が入る事故には注意する必要があります。落下しても衝撃を吸収できる専用のケースが市販されています。また雨の日や水場に持ち出す時は密閉性の優れたビニール袋に入れて持ち運べば良いでしょう。視認性は多少落ちますがタッチスクリーンは何の問題もなく利用できます。

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Point● 将来につながる使い方をしよう10

 タブレット端末があるからそれを子どもに使わせなければならないと考える人がいます。しかし、タブレット端末を用いなくても他の手段で同じことができることもあります。以下の 2 つのケースを考えてみましょう。しかし、同じように見えても道具を使うからこそ生まれる未来へのヒントがあります。

○タブレット端末で料理をつくる 一人で料理ができない知的障がいのある子どもに写真を中心としたレシピを作り、タブレット端末に入れたら、それを見ながら一人でカレーを作ることができました。今まで使っていた絵カードでも良いじゃないかという指摘もありましたが、これまで写真とカードを組み合わせてたくさん教えてきたホットケーキやみそ汁のレシピカードはどこに行ったのでしょう。子どもが家に帰ってカードなしにカレーを作ることができるでしょうか? タブレット端末で学校のウェブサイトにアクセスすると、いつもその写真レシピを使えるようにしておくと、卒業して自立生活を始めても、タブレット端末さえあれば料理を作ることができるわけです。教えることを点で捉えるのではなく、将来と結び付けるとタブレット端末の必要性、有効な活用方法が見えてきます。

○教育ゲームに集中する子どもたち いつも勉強に集中できない自閉症の子どもにタブレット端末の教育ゲームを与えてみたら熱中して取り組んでいました。タブレット端末の利用の目的を明確にしておかないと、学校の先生は必要ないかもしれないという指摘につながりかねません。 しかし、教育ゲームだから効率的に学べること、集中できるからこそ教えられることもあります。例えば、ゲームに集中している子どもにタイマーを併用し、時間を守ることを学習させることもできます。また、遊んでいる画面を手で塞いでみると、すっとゲームを止める子どももいれば、話せない子どもの中には怒りだす子どももいるかもしれません。怒り出す子どもは、話せないから「止めて」という気持ちを伝えられないわけです。 こういった場面を通じて子どもの状態、表現方法を把握できますし、子どもに新しいことを教えるきっかけがつかめます。

 タブレット端末を介してさまざまなことを教えることができることも忘れないでください。

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iPad 用のアプリ 「iBooks」という Apple 社製アプリで PDF や EPUB を読み込んで閲覧することができます。

「i 文庫 HD」というアプリを使えば、テキストファイルを読み込んで電子書籍の縦書きや横書き、文字のサイズ、文字色と背景色などを個人の好みに合わせて変更することができます。PDF 読み込みにも対応しています。また、インターネット上の「青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)」から著作権の切れた作者の書籍(例:芥川龍之介、夏目漱石、新美南吉など)や、任意のテキストファイルを読み込んで表示することもできます。 「金沢文庫」というアプリは、書籍を音声読み上げすることのできるアプリです。青空文庫から書籍を読み込んだり、任意のテキストファイルを読み込んで、アプリに内蔵された高性能の音声読み上げ機能で読み上げることができます。 「VOD(Voice of DAISY)」というアプリは、DAISY と呼ばれる形式の録音図書を表示/再生できます。DAISY 録音図書は、障がいのある人のための図書館「サピエ図書館(https://www.sapie.or.jp/)」などから入手することができます。Windows7 用のソフト 「Adobe Digital Editions」というソフトでは EPUB や PDF を、「Stanza」では EPUB を閲覧することができます。

 PDF や EPUB、DAISY などの電子書籍データを製作するためには、これらのデータ形式の出力対応したソフトウェアが必要です。 例えば、アクセシブルな PDF は、アドビ社製の Acrobat やマイクロソフト社製の Word などで製作することができます。DAISY についても、マイクロソフト社製のアドイン「DAISY Translator(http://www.microsoft.com/japan/enable/microsoft/daisy.mspx)」を Word に導入することで製作することができます。EPUB は、「Sigil」や「Calibre」という製作ソフトが定番ソフトとして使われています。また、Word ファイルやHTML などから EPUB に手軽に変換できる民生用の変換ソフトも登場し始めたところです(Smart ePub など)。

EPUB 形式 EPUB(イーパブ)は、国際電子出版フォーラム(International Digital Publishing Forum、IDPF)という団体により仕様が定められている国際規格です。特定の企業や団体が権利を持つ閉鎖的な規格ではないため、今後世界的に利用が広がることが期待されています。 もともと印刷物としてではなく、画面サイズの異なるさまざまな装置上で書籍データを閲覧することを前提として作られた規格です。画面サイズが装置によって違っていれば、文字の大きさを装置に合わせて変更することが必要です。その結果 1 行の文字数や、1 ページの行数を流動的に変更する必要が出てきます。そこで EPUB では、これらの変更が比較的自由にできるよう、文字の「リフロー(流し込み)」がしやすいように作られてきています。また、リフローして個々のページ構成が変更されても、読者が書籍の任意の部分に移動しやすいように、章や節などの「文書構造」が記述できる仕様になっています。 アクセシビリティについては、文字サイズなどの表示の変更がしやすいことや、章や節などに基づき文書が構造化されていることが視覚障害等のある人の利用を助けます。仕様の策定時から、障がいのある人の利用も配慮した仕様となるように配慮されてきた経緯があります。PDF 形式  PDF(ピーディーエフ、Portable Document Format)は、アドビ社が開発した、印刷物をコンピュータの画面上でも印刷物と同じようなレイアウトを再現することを目的として作られた規格です。EPUB と違い、リフローを前提としていないため、1 ページ当たりの行数や文字数は PDF ファイルの作成時に決めたものが保持されます。

資料 1 電子書籍閲覧のための汎用アプリ

資料 2 電子書籍データを製作するためのソフトウェア

資料 3 電子書籍のファイル形式

資 料

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閲覧する装置の環境に合わせて変更することはできません。したがって文字を拡大して見たいときには、ページ全体を拡大する操作が必要です。 1990 年代から世界中で使用されている歴史のある規格で、国際規格化もされています。日本でも官公庁がインターネット上で公開するファイルの形式として利用されるなど、一般的に使用されています。 アクセシビリティについては、「アクセシブル PDF」として PDF 制作時に特別に配慮することで、文書構造が記述できたり、音声読み上げなどのアクセシビリティ機能に対応できるようになります。参考:「アクセシビリティの高い PDF ファイルを作成する」http://office.microsoft.com/ja-jp/word-help/HA102478227.aspxDAISY 形式 DAISY(デイジー、Digital Accessible Information System)は、印刷物で本を読むことが困難な、障がいのある人のために作られた規格です。DAISY コンソーシアムという非営利の国際団体により仕様が定められています。もとは電子的な録音図書を製作する際に、人間が朗読した音声のデータを章や節、ページなどの文書構造に従って構造化するために作られて来た経緯があります。 現在では録音音声と文字データとの同期、画像(挿絵)や数式記述言語(Math ML)を取り込み、通常の印刷物を利用することが難しい障害のある人々が個々のニーズに合わせて、支援技術製品などさまざまな方法を使用して読書することを考慮したデータ形式として開発が続けられています。その成果は EPUB にも取り込まれており、今後 EPUB と DAISY という 2 つの規格は統合されて行くと言われています。テキスト形式 テキスト形式とは、文字装飾や文書のレイアウト、文書構造、挿絵画像などの情報を一切含まない、文字情報だけを記録したファイル形式を指します。コンピュータの利用において最も基本的なファイル形式であるため、最も利用しやすいものと言えます。PDF や EPUB、DAISY はこれらのファイル形式に対応した特別なアプリ(ソフト)が必要ですが、テキストファイルはさまざまなアプリで、標準で対応しているファイル形式となっています。音声読み上げソフトやワープロソフト、電子書籍閲覧ソフトにおいてもこのことは同様で、テキストファイルであれば多くのソフトで利用したり、または利用できるようにテキストファイルを元に製作したりと応用ができます。

情報リソース「魔法のプロジェクト」ウェブサイトhttp://maho-prj.org/

iPad、iPhone など iOS 製品のマニュアルhttp://support.apple.com/ja_JP/manuals/上記のマニュアルページから対応する Apple 製品の公式マニュアルを探すことができます。

青空文庫http://www.aozora.gr.jp/著作権の切れた作者の書籍(例:芥川龍之介、夏目漱石、新美南吉など)がボランティアにより電子書籍化され、無償公開されています。

サピエ図書館https://www.sapie.or.jp/視覚障がいその他印刷物を利用することに困難のある障がい者だけが利用することのできる図書館。インターネット経由で DAISY 録音図書などを借りることができます。

文部科学省ウェブページ「教科書のデジタルデータの提供について」http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/kakudai/1246126.htm教科書バリアフリー法に基づいた教科書 PDF データ提供の申請方法や、申請に必要な文部科学省への提出書類の様式があります。

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電子メールブラウザ/

ネット検索/辞書

コミュニケーション・エイド 地図・GPS メモ帳・

ワープロ 音声認識 概念マップ(マインドマップ)

ペイント/お絵かき

カメラ/動画や静止画の

撮影・録画・閲覧

ビデオ会議/動画配信/チャット

音楽再生 録 音 デジタル教科書/教材

シンプルテクノロジー/おもちゃ

時間管理(タイマー/スケジュール/リマインダー/アラーム/タイムエイド)

プレゼンテーション/スライド ファイル共有 アクセシビリティ

機能

知 的 障 が い、知的障がいを

伴う自閉症

音声言語でのやりとりが苦手でも、文字による視覚的なやり取りができる/ゆっくり時間をかけて読み、理解できる

発話や音声言語理解が困難でも、シンボルや文字、録音音声の組み合わせを通じて周囲とコミュニケーションできる

自分の居場所や目的地への経路を把握する助けとする/自分の居場所を伝えて支援を求められる(事例7)

生徒の動作や表情のフィードバックに鏡の代わりにカメラを通した動画を提示する(記録ができる/鏡より安全性が高い)

ことばの理解が難しい生徒にも、音楽やメロディを学習や作業のきっかけとして提示できる

音声や画像、動きのある教材で障がいのある生徒も読書を楽しむことができる/ページめくりもタッチ操作で容易に行える

画面を触ったり発声すると反応するアプリを使って子どもの周囲への自発的な反応を引き出す

先の予定/時間感覚を自分で把握することを助ける

校外学習や実習などの情報を教師が生徒にわかりやすく伝える/言葉だけではわかりにくい情報をイメージで伝える(事例4)

高機能自閉症、アスペルガー

症候群

音声言語でのやりとりが苦手でも、文字による視覚的なやり取りができる

発話や音声言語理解が困難でも、シンボルや文字、録音音声の組み合わせを通じて周囲とコミュニケーションできる

自分の居場所や目的地への経路を把握する助けとする/自分の居場所を伝えて支援を求められる

音声言語でのやりとりが苦手でも、文字による視覚的なやり取りができる

文章つづって表現することが難しい感情や意見、考えを概念マップを通して表現する

口頭で表現できないことを写真で伝える/作業手順を視覚的に見せてもらって理解できる

音声言語の理解が難しい生徒にも、音楽やメロディを学習や作業のきっかけとして提示できる

本人が聞き取れなくても、録音しておいた内容を人から説明してもらえる/聞き直して確認できる

音声や画像、動きのある教材で障がいのある生徒も読書を楽しむことができる/ページめくりもタッチ操作で容易に行える

先の予定/時間感覚を自分で把握することを助ける

校外学習や実習などの情報を生徒にわかりやすく伝える/言葉だけではわかりにくい情報をイメージで伝える(事例4)

読み書き障がい(ディスレクシア、

ディスグラフィア)

紙とペンで文字を書くことが困難でも、キー入力して書ける(予測変換や仮名漢字変換との併用も有効)

漢字や言葉の意味がわからなくても、すぐに調べられる

紙とペンで文字を書けなくても、キー入力して書ける(予測変換や仮名漢字変換との併用)

紙とペンで文字を書けなくても、音声入力で文章を書くことができる

文章をつづって表現することが難しい感情や意見、考えを概念マップを通して表現する

書字の過程を動画記録できるペイントアプリで、生徒の書字の結果からは見えづらい困難を教師が把握する

(事例1)

手書きで書字をしてメモをとる代わりに撮影して記録できる

文字がよくわからなくても、書字メモの代わりに録音して記録できる

音声や画像、動きのある教材で障がいのある生徒も読書を楽しむことができる/文字の大きさなど見やすい表示に調整できる

音声読み上げ機能や、画面のズーム機能を使い見えにくさを補ったり、白黒反転機能によりコントラストを調整して見やすくできる

注意欠損多動性障がい(AD/HD)

注意の転導で見落としが あっても、落ち着いて理解する、事後的に内容を確認する

他人に質問することが苦手でも、自分で調べられる

気が散って覚えておきたいと思ったことを忘れやすくても、見たままを撮影して記録できる

気が散って覚えておきたいと思ったことを忘れやすくても、聞いたままを録音して記録できる

音声や画像、動きのある教材で障がいのある生徒も読書を楽しむことができる/ページめくりもタッチ操作で容易に行える

気が散って(または過集中のために)作業を見失っても、継続中の作業内容、休憩や作業時間の終了に気づける

授業等の進行に合わせたスライドで、今何が行われているかを生徒が把握しやすく/注意を向けるべき場所をわかりやすくする

肢体不自由

手紙などで文字を書く動作が困難でも、キー入力とメールならば伝達内容を書き、伝えられる

通常の紙の辞書を持ち運び、頁めくりすることが困難でも、調べられる

移動が困難でも自分の居場所を伝えて支援を求められる

文字を書く動作/メモした用紙を手でめくることが困難でも、キー入力で可能となる

紙とペンで文字を書けなくても、音声入力で文章を書くことができる

鉛筆で紙に書く動作が困難でも、直接指や体の一部を使って/自助具の補助により画面に書字や描画ができる(事例2)

文字を書く動作が困難でも、書字メモの代わりに撮影して記録できる

文字を書く動作が困難でも、書字メモの代わりに録音して記録できる

音声や画像、動きのある教材で障がいのある生徒も読書を楽しむことができる/ページめくりもタッチ操作で容易に行える/持ち運びも容易

画面を触ったり発声すると反応するアプリを使って子どもの周囲への自発的な反応を引き出す

印刷物を他者へ渡したり持ち運ぶことが困難でも、タブレットPCやパソコンを経由してファイルの形でやりとりができる(事例9)

指一本の動きだけで操作できるようにOSの機能を調整できる(例:iOS標準のAssistiveTouch)

聴覚障がい

電話などでの音声の聞き取りが困難でも、文字による視覚的なやり取りができる

漢字の形と意味はわかっていても音声での読みがわからずキー入力できない場合にも、手書き入力機能により読みが調べられる

音声の聞き取りが困難でも、筆談のツールとして使える

他者の発話を文字に変換して読む事ができる/音声認識アプリに対して発声してみて、自分の発声の正しさを自分で確認できる

撮影したものを相手に見せて、状況説明の材料にできる/字幕付きの動画を教材として活用できる

授業や講演等の遠隔要約筆記(ビデオ会議を通じて届く音声を遠隔地でタイピングし、テキストチャットで生徒に送り返す)

本人が聞き取れなくても、録音しておいた内容を人から説明してもらえる

聴覚を通じて得られにくい言語的な情報を、教師が生徒に視覚的な情報で提示することで補う

予定に気がつきにくくても、自分で気づける(バイブレータとの併用も有効)

聴覚を通じて得られにくい言語的な情報を、教師が生徒に視覚的な情報で提示することで補う

構音障がい

音声での発話が困難でも、文字による視覚的なやり取りができる

発話や音声言語理解が困難でも、シンボルや文字、録音音声の組み合わせを通じて周囲とコミュニケーションできる

音声での発話が困難でも、筆談のツールとして使える

タブレットPCの画面に書き込んで筆談ボードとして使い周囲とのコミュニケーションを助ける

撮影したものを相手に見せて、状況説明の材料にできる

視覚障がい

書いた文字が見えないため自分が書いた内容が確認できなくても、伝達内容をキー入力して書き、音声読み上げを併用することで確認できる

紙の辞書が文字が見えないため使えなくても、キー入力とネット検索により調べ物ができる

自分のいる場所がわからなくても、人に伝えて支援を求められる(音声読み上げ、電子メールとの併用)

書いた文字が見えないため紙とペンの使用が困難でもキー入力で記録できる(音声読み上げとの併用)

生徒に見えにくい情 報( 例:鍼 灸 治療の手元の動きなど)を画面に表示した動画を通じて見やすく調整する

(事例8)

生徒に見えにくい情報(例:鍼灸治療の手元の動きなど)を画面に表示した動画を通じて見やすく調整する(事例8)

書いた文字が見えないため紙とペンの使用が困難でも、録音して記録できる

音声や画像、動きのある教材で障がいのある生徒も読書を楽しむことができる/文字の大きさなど見やすい表示に調整できる(事例10)

画面を触ったり発声すると反応を振動で返すアプリを使って生徒の周囲への自発的な反応を引き出す

音声読み上げ機能や、画面のズーム機能を使い見えにくさを補ったり、白黒反転機能によりコントラストを調整して見やすくできる

記憶障がい

やりとりの内容を覚えることが困難でも、メールであれば記録が残り、いつでも内容を確認できる(検索も可能)

自分行った場所を記録して、事後の確認や思い出しを助ける(カメラとの併用)

記録内容を覚える・思い出すことが困難でも、いつでも内容を確認できる(検索も可能)

思い出す手助けとなるメモを絵として描いて残すことができる

覚えておくことが困難でも、撮影して記録できる

覚えておくことが困難でも、録音して記録できる

先の予定を覚える・適切なときに思い出すことの手がかりにすることができる

病 弱

離れた場所との間(病院にいる生徒から教室の同級生)でコミュニケーションを行うことができる

外出が難しくても、インターネットを通じて多くの情報に触れることができる

外出が難しくても、地図と現地の映像を使って現地の状況を知ることができる

タブレットPCの画面をベッドサイドで書き込み可能な電子黒板として利用できる

学校生活の様子など入院中に知ることのできない様子を動画を通じて知る

離れた場所との間(病院にいる生徒から教室の同級生)でコミュニケーションを行い経験を広げる

音声や画像、動きのある教材で障がいのある生徒も読書を楽しむことができる/ページめくりもタッチ操作で容易に行える/持ち運びも容易

タブレットPCに授業のスライドを入れることで多くの資料をベッドサイドに持ち込み、充実した授業を実現できる

学校と病院間、生徒間等で資料のやりとりを円滑にすることができる

重度重複障がい

発話や音声言語理解が困難でも、シンボルや文字、録音音声の組み合わせを通じて生徒のYes/Noの 表 出 を引き出す

生徒の動作や表情のフィードバックに鏡の代わりにカメラを通した動画を提示する(記録ができる/鏡より安全性が高い)

ことばの理解が難しい生徒にも、音楽やメロディを学習や作業開始の予告として提示できる

音声や画像、動きのある教材で障がいのある生徒も読書を楽しむことができる/ページめくりもタッチ操作で容易に行える/持ち運びも容易

画面を触ると反応するアプリを使って生徒の周囲への自発的な反応を引き出す

(事例5)

アプリ種別

障がい種別

凡例   … 教師が行うもの(この表示のないものは生徒が行う)    … 事例集に事例が挙げられているもの

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電子メールブラウザ/

ネット検索/辞書

コミュニケーション・エイド 地図・GPS メモ帳・

ワープロ 音声認識 概念マップ(マインドマップ)

ペイント/お絵かき

カメラ/動画や静止画の

撮影・録画・閲覧

ビデオ会議/動画配信/チャット

音楽再生 録 音 デジタル教科書/教材

シンプルテクノロジー/おもちゃ

時間管理(タイマー/スケジュール/リマインダー/アラーム/タイムエイド)

プレゼンテーション/スライド ファイル共有 アクセシビリティ

機能

知 的 障 が い、知的障がいを

伴う自閉症

音声言語でのやりとりが苦手でも、文字による視覚的なやり取りができる/ゆっくり時間をかけて読み、理解できる

発話や音声言語理解が困難でも、シンボルや文字、録音音声の組み合わせを通じて周囲とコミュニケーションできる

自分の居場所や目的地への経路を把握する助けとする/自分の居場所を伝えて支援を求められる(事例7)

生徒の動作や表情のフィードバックに鏡の代わりにカメラを通した動画を提示する(記録ができる/鏡より安全性が高い)

ことばの理解が難しい生徒にも、音楽やメロディを学習や作業のきっかけとして提示できる

音声や画像、動きのある教材で障がいのある生徒も読書を楽しむことができる/ページめくりもタッチ操作で容易に行える

画面を触ったり発声すると反応するアプリを使って子どもの周囲への自発的な反応を引き出す

先の予定/時間感覚を自分で把握することを助ける

校外学習や実習などの情報を教師が生徒にわかりやすく伝える/言葉だけではわかりにくい情報をイメージで伝える(事例4)

高機能自閉症、アスペルガー

症候群

音声言語でのやりとりが苦手でも、文字による視覚的なやり取りができる

発話や音声言語理解が困難でも、シンボルや文字、録音音声の組み合わせを通じて周囲とコミュニケーションできる

自分の居場所や目的地への経路を把握する助けとする/自分の居場所を伝えて支援を求められる

音声言語でのやりとりが苦手でも、文字による視覚的なやり取りができる

文章つづって表現することが難しい感情や意見、考えを概念マップを通して表現する

口頭で表現できないことを写真で伝える/作業手順を視覚的に見せてもらって理解できる

音声言語の理解が難しい生徒にも、音楽やメロディを学習や作業のきっかけとして提示できる

本人が聞き取れなくても、録音しておいた内容を人から説明してもらえる/聞き直して確認できる

音声や画像、動きのある教材で障がいのある生徒も読書を楽しむことができる/ページめくりもタッチ操作で容易に行える

先の予定/時間感覚を自分で把握することを助ける

校外学習や実習などの情報を生徒にわかりやすく伝える/言葉だけではわかりにくい情報をイメージで伝える(事例4)

読み書き障がい(ディスレクシア、

ディスグラフィア)

紙とペンで文字を書くことが困難でも、キー入力して書ける(予測変換や仮名漢字変換との併用も有効)

漢字や言葉の意味がわからなくても、すぐに調べられる

紙とペンで文字を書けなくても、キー入力して書ける(予測変換や仮名漢字変換との併用)

紙とペンで文字を書けなくても、音声入力で文章を書くことができる

文章をつづって表現することが難しい感情や意見、考えを概念マップを通して表現する

書字の過程を動画記録できるペイントアプリで、生徒の書字の結果からは見えづらい困難を教師が把握する

(事例1)

手書きで書字をしてメモをとる代わりに撮影して記録できる

文字がよくわからなくても、書字メモの代わりに録音して記録できる

音声や画像、動きのある教材で障がいのある生徒も読書を楽しむことができる/文字の大きさなど見やすい表示に調整できる

音声読み上げ機能や、画面のズーム機能を使い見えにくさを補ったり、白黒反転機能によりコントラストを調整して見やすくできる

注意欠損多動性障がい(AD/HD)

注意の転導で見落としが あっても、落ち着いて理解する、事後的に内容を確認する

他人に質問することが苦手でも、自分で調べられる

気が散って覚えておきたいと思ったことを忘れやすくても、見たままを撮影して記録できる

気が散って覚えておきたいと思ったことを忘れやすくても、聞いたままを録音して記録できる

音声や画像、動きのある教材で障がいのある生徒も読書を楽しむことができる/ページめくりもタッチ操作で容易に行える

気が散って(または過集中のために)作業を見失っても、継続中の作業内容、休憩や作業時間の終了に気づける

授業等の進行に合わせたスライドで、今何が行われているかを生徒が把握しやすく/注意を向けるべき場所をわかりやすくする

肢体不自由

手紙などで文字を書く動作が困難でも、キー入力とメールならば伝達内容を書き、伝えられる

通常の紙の辞書を持ち運び、頁めくりすることが困難でも、調べられる

移動が困難でも自分の居場所を伝えて支援を求められる

文字を書く動作/メモした用紙を手でめくることが困難でも、キー入力で可能となる

紙とペンで文字を書けなくても、音声入力で文章を書くことができる

鉛筆で紙に書く動作が困難でも、直接指や体の一部を使って/自助具の補助により画面に書字や描画ができる(事例2)

文字を書く動作が困難でも、書字メモの代わりに撮影して記録できる

文字を書く動作が困難でも、書字メモの代わりに録音して記録できる

音声や画像、動きのある教材で障がいのある生徒も読書を楽しむことができる/ページめくりもタッチ操作で容易に行える/持ち運びも容易

画面を触ったり発声すると反応するアプリを使って子どもの周囲への自発的な反応を引き出す

印刷物を他者へ渡したり持ち運ぶことが困難でも、タブレットPCやパソコンを経由してファイルの形でやりとりができる(事例9)

指一本の動きだけで操作できるようにOSの機能を調整できる(例:iOS標準のAssistiveTouch)

聴覚障がい

電話などでの音声の聞き取りが困難でも、文字による視覚的なやり取りができる

漢字の形と意味はわかっていても音声での読みがわからずキー入力できない場合にも、手書き入力機能により読みが調べられる

音声の聞き取りが困難でも、筆談のツールとして使える

他者の発話を文字に変換して読む事ができる/音声認識アプリに対して発声してみて、自分の発声の正しさを自分で確認できる

撮影したものを相手に見せて、状況説明の材料にできる/字幕付きの動画を教材として活用できる

授業や講演等の遠隔要約筆記(ビデオ会議を通じて届く音声を遠隔地でタイピングし、テキストチャットで生徒に送り返す)

本人が聞き取れなくても、録音しておいた内容を人から説明してもらえる

聴覚を通じて得られにくい言語的な情報を、教師が生徒に視覚的な情報で提示することで補う

予定に気がつきにくくても、自分で気づける(バイブレータとの併用も有効)

聴覚を通じて得られにくい言語的な情報を、教師が生徒に視覚的な情報で提示することで補う

構音障がい

音声での発話が困難でも、文字による視覚的なやり取りができる

発話や音声言語理解が困難でも、シンボルや文字、録音音声の組み合わせを通じて周囲とコミュニケーションできる

音声での発話が困難でも、筆談のツールとして使える

タブレットPCの画面に書き込んで筆談ボードとして使い周囲とのコミュニケーションを助ける

撮影したものを相手に見せて、状況説明の材料にできる

視覚障がい

書いた文字が見えないため自分が書いた内容が確認できなくても、伝達内容をキー入力して書き、音声読み上げを併用することで確認できる

紙の辞書が文字が見えないため使えなくても、キー入力とネット検索により調べ物ができる

自分のいる場所がわからなくても、人に伝えて支援を求められる(音声読み上げ、電子メールとの併用)

書いた文字が見えないため紙とペンの使用が困難でもキー入力で記録できる(音声読み上げとの併用)

生徒に見えにくい情 報( 例:鍼 灸 治療の手元の動きなど)を画面に表示した動画を通じて見やすく調整する

(事例8)

生徒に見えにくい情報(例:鍼灸治療の手元の動きなど)を画面に表示した動画を通じて見やすく調整する(事例8)

書いた文字が見えないため紙とペンの使用が困難でも、録音して記録できる

音声や画像、動きのある教材で障がいのある生徒も読書を楽しむことができる/文字の大きさなど見やすい表示に調整できる(事例10)

画面を触ったり発声すると反応を振動で返すアプリを使って生徒の周囲への自発的な反応を引き出す

音声読み上げ機能や、画面のズーム機能を使い見えにくさを補ったり、白黒反転機能によりコントラストを調整して見やすくできる

記憶障がい

やりとりの内容を覚えることが困難でも、メールであれば記録が残り、いつでも内容を確認できる(検索も可能)

自分行った場所を記録して、事後の確認や思い出しを助ける(カメラとの併用)

記録内容を覚える・思い出すことが困難でも、いつでも内容を確認できる(検索も可能)

思い出す手助けとなるメモを絵として描いて残すことができる

覚えておくことが困難でも、撮影して記録できる

覚えておくことが困難でも、録音して記録できる

先の予定を覚える・適切なときに思い出すことの手がかりにすることができる

病 弱

離れた場所との間(病院にいる生徒から教室の同級生)でコミュニケーションを行うことができる

外出が難しくても、インターネットを通じて多くの情報に触れることができる

外出が難しくても、地図と現地の映像を使って現地の状況を知ることができる

タブレットPCの画面をベッドサイドで書き込み可能な電子黒板として利用できる

学校生活の様子など入院中に知ることのできない様子を動画を通じて知る

離れた場所との間(病院にいる生徒から教室の同級生)でコミュニケーションを行い経験を広げる

音声や画像、動きのある教材で障がいのある生徒も読書を楽しむことができる/ページめくりもタッチ操作で容易に行える/持ち運びも容易

タブレットPCに授業のスライドを入れることで多くの資料をベッドサイドに持ち込み、充実した授業を実現できる

学校と病院間、生徒間等で資料のやりとりを円滑にすることができる

重度重複障がい

発話や音声言語理解が困難でも、シンボルや文字、録音音声の組み合わせを通じて生徒のYes/Noの 表 出 を引き出す

生徒の動作や表情のフィードバックに鏡の代わりにカメラを通した動画を提示する(記録ができる/鏡より安全性が高い)

ことばの理解が難しい生徒にも、音楽やメロディを学習や作業開始の予告として提示できる

音声や画像、動きのある教材で障がいのある生徒も読書を楽しむことができる/ページめくりもタッチ操作で容易に行える/持ち運びも容易

画面を触ると反応するアプリを使って生徒の周囲への自発的な反応を引き出す

(事例5)

アプリ種別

障がい種別

凡例   … 教師が行うもの(この表示のないものは生徒が行う)    … 事例集に事例が挙げられているもの

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魔法のふでばこプロジェクト 2011 年度レポート

東京大学先端科学技術研究センター・人間支援工学分野ソフトバンクモバイル株式会社株式会社 EDUAS特定非営利活動法人 e-AT 利用促進協会

2012 年6月 3 版