障がい者虐待防止 について - niigata · 2019-02-06 ·...
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障がい者虐待防止について
資料3
について
平成31年2月14日(木)
新潟市福祉部障がい福祉課
1
本日の研修内容
1 障害者虐待防止法について
2 新潟市における障がい者虐待の発生状況2 新潟市における障がい者虐待の発生状況
について
3 施設・事業所における障がい者虐待の防
止に向けて
2
1 障害者虐待防止法に
ついてついて
3
障害者虐待防止法(平成24年10月1日施行)「障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律」
目的
障害者に対する虐待が障害者の尊厳を害するものであり,障害者の自立及び社会参加にとって虐待を防止することが極めて重要であること等に鑑み,
障害者に対する虐待の禁止,障害者に対する虐待 禁止,
障害者虐待の予防及び早期発見,
障害者虐待の防止等に関する国等の責務,
虐待を受けた障害者に対する保護及び自立の支援のための措置,
養護者による虐待の防止に資する支援のための措置
を定めることにより,障害者虐待の防止,養護者に対する支援等に関する施策を促進し,障害者の権利利益の擁護に資することを目的とする。
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定義
「障がい者」
身体障害,知的障害,精神障害(発達障害含む),
その他心身の機能の障害があるものであって,障害及び社会
的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を
受ける状態にあるもの【障害者基本法第2条第1項】
「3種類の障がい者虐待」
①養護者による虐待
②施設従事者による虐待
③使用者による虐待
(第3条)「何人も,障がい者に対し,虐待をしてはならない。」 5
本来,障がい者を養護する立場にある人からの虐待
「障がい者虐待の5類型」
①身体的虐待
体に傷や痛みを負わせる暴行を加えること。また正当な理由なく身動
きがとれない状態にすること。
②性的虐待
無理やり(または同意と見せかけ)わいせつなことをしたり,させた
りすること。
③心理的虐待③心理的虐待
侮辱したり拒絶したりするような言葉や態度で,精神的な苦痛を与え
ること。
④放棄・放置(ネグレクト)
食事や入浴,洗濯,排泄などの世話や介助をほとんどせず,心身を衰
弱させること。
⑤経済的虐待
本人の同意なしに財産や年金,賃金などを使うこと。また理由なく
金銭を与えないこと。
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障害者の身体拘束等の禁止(指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準)
「福祉サービスの提供にあたっては、
利用者又は他の利用者の生命又は身体を保護するため
緊急やむを得ない場合を除き、
身体拘束その他利用者の行動を制限する行為を行って
はならない」
「やむを得ず身体拘束等を行う場合には、
その様態及び時間、その際の利用者の心身の
状況並びに緊急やむを得ない理由その他必要な事項
を記録しなければならない」
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3要因
①切迫性
利用者等の生命,身体,権利が危険にさらされる可能性が著しく高いこと
②非代替性
身体拘束,その他の行動制限を行う以外に代替する方法
やむを得ず身体拘束を行う場合の3要件「身体拘束ゼロへの手引き」より
身体拘束,その他 行動制限を行う以外に代替する方法がないこと(複数職員で確認する)
③一時性
身体拘束,その他の行動制限が一時的であること
(本人の状態像に応じ最も短い時間を想定)
以上の要件について検討し、
利用者・家族への説明と同意を得たうえで、
「様態及び時間・その際の利用者の心身の状況並びにやむを得ない理由、その他必要な事項」を記録する。
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やむを得ず身体拘束を行うときの手続き
① 組織による決定と個別支援計画への記載
管理者・責任者・虐待防止の責任者など際限を持つ職員の個別支援会議参加
② 本人 家族への十分な説明② 本人・家族への十分な説明
身体拘束の内容・目的・時間・期間など
③ 必要な事項の記録
身体拘束を行った際の様態および時間,その際の利用者の心身の状態並びにやむを得ない理由など
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「通報義務」
障がい者虐待を受けたと思われる障がい者を発見した者は,速やかに通報しなければならない
発見した人 サービス管理責任者 施設長・管理者
相談 相談
【例】
新潟市障がい者虐待防止センター(市町村障害者虐待防止センター)
通報義務 通報義務 通報義務
◎間接的に知り得た場合も通報義務がある◎守秘義務に係る各法律の規定は,この通報を妨げない◎通報を理由とする解雇などの不利な扱いは禁じられている
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養護者による障害者虐待
障害者福祉施設従事者等による障害者虐待
虐待発見
通報 ①事実確認(立入調査等)②措置(一時保護、後見審判請求)
市町村
「虐待対応の流れ」
使用者による障害者虐待
市町村
虐待発見
①監督権限等の適切な行使②措置等の公表
通報 報告
都道府県
都道府県
市町村
①監督権限等の適切な行使②措置等の公表
通報
通知
報告労働局虐
待発見
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2 新潟市における障がい者
虐待の発生状況について虐待の発生状況について
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新潟市の障がい者数
障がい者
5%
新潟市人口(H30.5月31日現在)人口 794,459人
障がい者 40,895人
療育手帳
精神障害者保健福祉手帳
15%(5,911人)
障害者手帳所持者数
人口
95%
13
身体障害者手帳72%
(29,509人)
療育手帳
13%(5,475人)
新潟市の障がい者虐待発生状況について
1 年度別状況
H24 H25 H26 H27 H28 H29 合計
相談・通報
21件 17件 12件 34件 33件 28件 145件
虐待判断 9件 6件 3件 8件 6件 7件 39件
2 区分別状況(H24~H29)
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養護者によるもの
施設従事者によるもの
使用者によるもの 合計
相談・通報 105件 34件 6件 145件
虐待判断 34件 4件 1件 39件
虐待と判断された割合
32.3% 11.7% 16.6% 26.8%
3 虐待と判断されたケースの内訳(H24~H29)
養護者によるもの
施設従事者によるもの
使用者によるもの 合計
虐待種別
身体的虐待 23 2 0 25
性的虐待 0 0 0 0
心理的虐待 13 1 1 15
放棄・放置 7 0 0 7
経済的虐待 8 1 1 10
※虐待種別,障がい種別が重複あり15
経済的虐待 8 1 1 10
被虐待者
男女別
男 13 3 0 16
女 22 1 1 24
障がい種別
身体障がい 11 2 0 13
知的障がい 19 3 1 23
精神障がい 12 2 1 15
4 相談・通報・届出(H24~H29)
本人
家族・親族
施設・事業所職員
相談支援事業所
職員
職場関係者
民生委員
医療機関関係者
警察
行政職員
その他
合
計
件数 17 14 34 20 4 2 6 17 17 14 145
「施設・事業所職員」が最も多い。
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件数 17 14 34 20 4 2 6 17 17 14 145
利用者と接する時間の長い施設や事業所の皆さんが,早期発見・早期対応のカギを握っている。
<事例1> 養護者による身体的虐待
■内容
職員が入浴介助の際に,本人(被虐待者)の背中に火傷による水ぶくれを発見
被虐待者 知的障がい (60代男性)
虐待者 母親(80代女性)
通報者 施設職員
職員が入浴介助の際に,本人(被虐待者)の背中に火傷による水ぶくれを発見
した。本人に確認すると,母が熱いやかんを本人の背中にあてたとのこと。
これまでも腕や足にあざをつくってきたことがあり,虐待の疑いがあると思い虐
待防止センターに相談。
■事実確認と対応
母は事実を認めようとしなかったが,「自分の身も思うようにならず,この子が言
うことを聞かないのでイライラする。」という言葉が聞かれ,話の状況から母のし
たことであると判断した。その後も本人はあざを作ってくることがあり,ショートス
ティ利用後,救護施設に入所。虐待は解消された。
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<事例2> 使用者による心理的・経済的虐待
■内容
10年勤めた会社を辞めたいが,「恩返ししてから辞めろ」と言われ退職すること
被虐待者 発達障がい(30代女性)
虐待者 上司 (40代女性)
通報者 本人・相談支援事業所
10年勤めた会社を辞めたいが,「恩返ししてから辞めろ」と言われ退職すること
ができない。上司には常に威圧的な態度で叱責されており,「仕事の尻拭いをし
てやっている。」と言われ罰金として毎月1万を渡している。今回はひと月分の給
与も全額返還させられたと相談支援事業所に相談し,通報に至った。
■事実確認と対応
本人提出のボイスレコーダーを確認。労働局とともに会社側に事実確認を行う
と,上司の独断で「給与を預かっている。」との回答があり,パワーハラスメントも
事実であると判明した。ひと月分の給与返還のほか退職願いの受理に加えて
慰謝料の支払いが速やかに行われた。
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<事例3> 施設従事者による身体的虐待
■内容
被虐待者 身体・精神障がい (40代女性)
虐待者 生活指導員(20代女性)
通報者 施設管理者
■内容
排泄を終えた本人から交換要請コールがあるが,他利用者の介助中のため対応できなかった。五分後に行ったところ,遅れた理由を説明するが本人納得せず。「あんたなんか大嫌い,この仕事やめれば。」と繰り返す暴言に職員が感情的になり,介助中に臀部を本気で叩いてしまった。
■発生要因
・利用者と生活支援員の間に時間認識の相違があった。
・罵声を浴びせられて職員が感情的になった。
・本人に精神疾患による特性があったが,職員の対応にムラがあった。
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■施設の対応
・本人及び家族への謝罪を行う。
・職員の平常心をコントロールする工夫をする。
・時間間隔の相違については利用者主体で考えることを周知徹底する。
・障がい特性や対応について職員間で共有し,対応を標準化する。
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この一件で,対応の難しい利用者について職員間で情報共有を行い,本人の障がい特性に対応する支援を施設全体として取り組むことが出来た。また,相手の立場に立った行動が増え,職員の資質が向上した。
3 施設・事業所における
障がい者虐待の防止に障がい者虐待の防止に
向けて
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法施行後の虐待事件
○平成25年11月
千葉県袖ケ浦福祉センター養育園で男性利用者が職員から暴行を受け死亡。その後他にも職員5人が,死亡した利用者を含む利用者10人を日常的に暴行していたことが発覚した。
○平成27年5月
山口県下関市の障がい者支援施設大藤園で複数の職員が利用者山口県下関市の障がい者支援施設大藤園で複数の職員が利用者を平手で叩く,尻を蹴り上げる,「殺すぞ」と恫喝する映像を職員が撮影し内部告発した。
○平成28年7月
神奈川県立津久井やまゆり園で,元職員が施設に侵入して利用者を刃物で刺し,19人が死亡,27人が負傷した。
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これって虐待?
●野菜が嫌いな利用者に,野菜を食べてもらいたいので,他の副食類を遠ざけておく。
●職員からの指示に従わないときに,「○○するのだったら☓☓してあげない。」と交換条件をつける。
●訴えの多い利用者に対して,一時的に無視してしまう。
●他の利用者に他害行為があった時に,叱責したり,羽交い絞めにしたりすること。
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どこからが虐待?
虐待 不適切な支援 適切な支援
(グレーゾーン)
これくらい仕方ないよね。
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この支援ってどうなんだろう?
虐待防止の近道は虐待の芽を摘むこと!
その為には,支援者が『グレーゾーンは虐待である』という認識をもつことが大切。
虐待のピラミッド図
「ハインリッヒの法則」
(労働災害などの重大な事故を予防す
るために用いられる)
1つの重大事故の背景には,
29の軽微な事故があり,
刑法上の罪
認定された虐待
さらに300ものヒヤリハットが
存在する。
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虐待が疑われる
不適切ととらえられかねない支援
この部分をしっかりと認識し,発生要因を分析して,日頃から対策をとり,予防することが重要。
施設・事業所における虐待防止の責務
<障害者虐待防止法 第15条>
障害者福祉施設の従事者
障害福祉サービス事業等を行う者
①職員の研修の実施
施設・事業所における虐待防止の責務
①職員の研修の実施
②苦情解決のための体制整備
③障害者虐待防止のための措置(※)
(※)の一例
『虐待防止委員会』の設置
【役割】・研修計画の策定 ・職員のストレスマネジメント,苦情解決
・チェックリストの集計,分析と防止の取組検討
・事故対応の総括 ・他の施設との連携 等
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虐待を未然に防ぐポイント
ア 職員が自らの行為が虐待などの権利侵害に当たることを自覚
していない場合があることから,規範等を示す掲示物を施設
内の見やすい場所に掲示し,職員の自覚・自省を促す。
① 職員の人権意識の向上
虐待を未然に防ぐポイント
掲示物については,職員で話合って定期的に新しいものに貼
り替えるなど,関心が薄れないよう工夫する。
イ 倫理綱領,行動規範等を定め,職員に周知徹底する。
ウ 普段から研修などを通して,職員の人権意識を高める。
(H17.10.20 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
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研修などを通して,職員の知識や技術,特に行動障がいなどの問題
行動を有する利用者が虐待を受けるケースが高いと言われているこ
とから,それぞれの施設において,次のような取組みを行うこと。
ア 研修などを通して,職員の知識や技術,特に行動障がいなど
特別な支援を必要とする障がい者(児) 支援 関する知識
② 職員の知識や技術の向上
特別な支援を必要とする障がい者(児)の支援に関する知識
や技術の向上を図る。
イ 個々の障がい者(児)の状況に応じた個別支援計画を作成す
るなどして,適切な支援を行う。
ウ 職員が支援に当たっての悩みや苦労を相談できる体制を整え
る他,職員が利用者の権利擁護に取り組める環境を整備する。
(H17.10.20 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)28
苦情解決制度については,社会福祉法のおいて社会福祉事業の経営
者に対して,利用者等からの苦情の適切な解決に努めるべきことと
されており,更に施設運営者と中立的立場にある第三者委員を積極
的に活用することにより,障がい者(児)虐待を未然に防止する見
地から苦情解決制度の実効性を確保すること。
③ 苦情解決制度の利用
「福祉サービス第三者評価事業に関する指針について」等を参考に
して利用者の権利擁護がなされるよう積極的に取り組むこと。
(H17.10.20 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)29
④ サービス評価などの利用
自ら権利を擁護することに困難を抱える障がい者については,
成年後見制度を活用して権利擁護を行っていくことが重要で
ある。
(H17.10.20 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
⑤ 成年後見制度の利用
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さらに詳しい対策は・・・
「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(厚生労働省)
※厚生労働省HPの障害者福祉関係「通知・関係資料等」のページからダウンロード可能
【参考】 「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」 より
虐待の行われる背景には組織の閉塞性・閉鎖性・職員のストレス
(相談しにくい雰囲気,相談しても無駄という諦め,相談・協力体制の欠如)
・職員の不適切な対応に気づいたら話し合い,全職員で取り組める対応を
・相談しやすい体制,小さな気づきをオープンに情報共有できる体制
風通しの良い職場づくり
・夜間の人員配置を含め,管理者は職場の状況を把握することが必要
・職員個々が抱えるストレス要因を把握・改善しメンタルヘルスの向上を
・ストレス把握には「職業性ストレス簡易調査票」等の活用を
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ハードな仕事
疲労
ストレス 人間関係 人手不足
労働環境
逃げ場のなさフラストレーション
職員のメンタルヘルス
虐待通報後の障がい者施設等の責任
① 通報者の保護
障害者福祉施設従事者等は通報をしたことを理由として,解雇その他不利益な取扱いを受けない。
<障害者虐待防止法 第16条>
虐待通報後の障がい者施設等の責任
・速やかに利用者が安心できる環境づくりに努める。
・家族や家族会に対して,起こった事態についての報告や
謝罪を含め,誠意ある対応に務める。
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② 虐待を受けた障がい者,家族への対応
③ 市町村・都道府県による事実確認への協力
通報後,市町村及び都道府県が,事実確認のために施設等(職員,利用者等)に聞き取り調査を実施。
(障害者総合支援法では,立入調査に対して,虚偽の答弁や調査の妨害を行った場合,罰則規定が設けられている)
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④ 原因の分析と再発の防止
「なぜ虐待が起こったのか」「その背景に何があったのか」について,施設自らがしっかりと調査し,原因究明を行う責任がある。(組織内だけでなく,第三者的立場の有識者に集まってもらい,検証委員会により調査・分析を行うなど)
どこでも虐待の芽は生まれる
「虐待はぜったいにない」
虐待を否定する心理から,虐待の芽を見逃してしまう
「虐待はいつおこるか分からない」
感性,謙虚さ,風通しの良い職場を醸成
虐待をエスカレートさせない 34