人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 ·...

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Institute for International Policy Studies Tokyo人口減少下での労働市場 ―女性、高齢者の労働力率引上げにより 2040 年にかけての労働力不足を乗り切れ― ・平和研レポート・ 主任研究員 藤江 泰郎 IIPS Policy Paper 345J October 2014 公益財団法人 世界平和研究所

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Page 1: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

Institute for International Policy Studies

・Tokyo・

人口減少下での労働市場

―女性、高齢者の労働力率引上げにより

2040年にかけての労働力不足を乗り切れ―

・平和研レポート・

主任研究員 藤江 泰郎

IIPS Policy Paper 345J October 2014

公益財団法人

世界平和研究所

Page 2: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

© Institute for International Policy Studies 2014 Institute for International Policy Studies 6th Floor, Toranomon 30 Mori Building, 3-2-2 Toranomon, Minato-ku Tokyo, Japan 〒105-0001 Telephone (03)5404-6651 Facsimile (03)5404--6650 HP:http//www.iips.org 本稿での考えや意見は著者個人のもので、所属する団体のものではありません。

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(はじめに)~要旨にかえて~

最近、人手不足の声がいろいろなところから聞こえてくるようになりました。思い起こ

してみれば、最初は、震災後、被災地での復興事業関係で人手不足が言われ始め、それが

アベノミクスによる景気の拡大とともに、いろいろなところから聞こえるようになってき

たように思えます。牛丼屋が人手不足で深夜営業が出来なくなったり、アルバイトの時給

が上がったり、某外資系コーヒーチェーンでは非正規雇用社員の正規雇用化を始めたりし

ています。また、2015 年 3 月卒の新卒者の就職環境も昨年、一昨年に比べるとかなり好転

してきているようです。こうした労働需給環境の好転は、景気の拡大という「労働需要」

の増大による面もあると考えられますが、一方で人口減少局面に入った我が国においては

「労働供給」の天井が低くなってきていることも少なからず影響しているのではないかと

思われます。

私は、本年 1 月に「出生率=2 を目標とした異次元の少子化対策政策を」と題する研究

レポートを出させていただき、「我が国の人口減少に歯止めをかけバランスのとれた人口構

成とするためには、2025 年までに出生率を 2.07 まで回復させる様な少子化対策政策をとる

べきである」ということを述べさせていただきました。本レポートは、1月のレポートの続

編で、労働市場について分析したものです。労働市場についてみると、仮に 2025 年までに

出生率を 2.07 まで回復できたとしても、生まれてくる子供たちが労働力になるまでの間(生

まれてくる子供が労働力となるのは 2040 年以降になると考えられます)は、現在の少子化

の影響を引きずり労働力人口の減少が続くことが見込まれます。労働力人口の減少幅は、

今後より大きくなります。このことは、現在見られ始めた労働力不足が早々には解決せず、

むしろ今後は一段と深刻化していく筋合いにあることを示唆しています。

こうした目先の労働力不足への対処として本レポートで提言しているのは 2 点です。1

点目は女性の労働市場参加の一段の促進です。2点目は高齢者の雇用の促進です。

1 点目の女性の労働市場参加の一段の促進については、これまでも女性の労働市場への

参加が労働供給面で大きく貢献してきたのですが、女性の非労働力人口をみるとまだ労働

市場への参入の余地は残っています。こうした層に対するケアが行き届けば、女性の一段

の労働市場への参加が期待されます。

2 点目の高齢者の雇用の促進については、年金の支給開始年齢の引上げとペアで実施し

てはどうかと考えています。本レポートでは、年金の支給開始年齢を 65 歳から 70 歳に引

き上げることと並行して、現在進められている 65 歳への雇用延長を 2040 年にかけて 70 歳

にまでさらに延長することを想定しています。年金の支給開始年齢の引上げに関しては、

当研究所の北浦修敏主任研究員が本年 3 月にディスカッション・ペーパーとして発表した

「世代会計の手法を活用した政府支出の長期推計と財政再建規模の分析」において試算さ

れたものです。ご関心のある方はご参照ください。

結論を先に述べてしまうとすれば、図表 23、24 のような年齢別労働力率の引上げが実現

すれば、2040 年にかけて労働力人口の減少を防げることとなります。では、図表 23、24 の

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ような労働力率の引上げが実現可能かどうかというと、3-2、3-3 での検証結果からすれば、

実現の可能性はあると考えられます。ただ、それは何もしなくても自動的に実現するので

はなく、女性や高齢者が労働市場に参入していけるよう、きめ細かく対応をしていくこと

も必要です。目前に広がる労働力不足の現実を乗り越えるよう、取り組んでいくことが必

要です。

本レポートは、極力データをもとに事実を確認しながら議論を進めるようにしました。

その結果、掲載した図表数は 159 になってしまいました。グラフを眺めながらお読みいた

だければ幸いです。

(本レポートの構成)

本レポートは下記の様な構成となっています。

1 現状の確認

1-1 最近の労働需給の状況

1-2 人口見通しを前提とした労働力人口の見通し

2 必要な対応:2040 年にかけての労働力率の引上げ

2-1 労働力率引き上げによる労働力人口の試算

2-2 労働力人口の前提別にみた中期的な成長率の試算

3 労働力率引き上げの可能性についての検証

3-1 これまでの労働市場の動きの確認

3-2 女性の労働力率引き上げの可能性の検証

3-3 高齢者の労働力率引き上げの可能性の検証

3-4 若年不就業者の就業の可能性の検討

3-5 フリーターの正規雇用化について

3-6 外国人労働者について

「1」では、労働市場の現状について確認するとともに、人口見通しを前提とした労働力

人口の見通しについてもみていきます。その結果、年齢別の労働力率が現在比横ばいで推

移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先 2040 年にかけては労働力人口が減少して

いくことが確認されます。

「2」では、そうした労働力人口の減少を防ぐための方策として女性と高齢者の労働力率

を引上げた場合の労働力人口の試算が行われます。また、労働力人口の前提の違いにより

中期的な成長率がどうなるかも確認します。結論としては、図表 23、24 のような年齢別労

働力率の引上げが行われれば、目先の労働力人口の減少は避けられ、我が国の潜在成長率

もマイナスとなることが避けられることが確認されます。

「3」では、「2」の試算の実現可能性について個別項目ごとに確認していきます。「2」の

試算は図表 23、24 のような年齢別労働力率の引上げが行われれば労働力人口がどうなるか

機械的に計算したものです。問題は、図表 23、24 のような年齢別労働力率の引上げが実際

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に可能かどうかということです。この点が検証されなければ、「2」の試算は絵に描いた餅

となってしまいます。検証結果からすれば、前述のとおり実現の可能性はあると考えられ

ます。なお、労働力人口の確保の観点では、女性と高齢者の年齢別労働力率の引上げが行

われれば十分ですが、若者の経済生活の安定の観点から、ニート、フリーターの状況につ

いても分析しています。また、最後に一時期議論となった外国人労働者についても状況の

確認を行っています。

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1

(本文)

1 現状の確認

「1」では、労働市場の現状について確認を行いたいと思います。ここでの「確認」は 2

点あります。一点目は、ここへきて急速にタイト化してきている労働需給について確認し

たいと思います。二点目は、現状の人口見通しを前提とした場合の将来の労働力人口がど

ういう見通しになっているかを確認します。

1-1 近の労働需給の状況

まず、労働需給の現状からみて参りましょう。

2014 年に入ってから「人手不足」がいろいろなかたちで報道されるようになって参りま

した。2013 年までは、震災復興関連事業での人手不足が取り上げられていましたが、2014

年に入ってからは、「牛丼屋がパート不足で営業できない」とか「居酒屋のパートが集まら

ない」とか「アルバイト確保のために時給を引き上げる」などの記事が新聞等でみられる

ようになってきています。

こうした人手不足の状況について、まずは図表1で、季節調整済みの完全失業率の状況

でみてみましょう。完全失業率はリーマンショックの後でいったん急速に上昇しその後

徐々に低下を続けてきましたが、直近時点ではリーマンショック直前の水準程度まで低下

してきています。

図表 2 は、こうした失業率の低下について求職理由別にみたものです。このように、こ

こへ来ての失業率の低下は、勤め先等の都合による非自発的失業が減少していることによ

ることが分かります。勤め先等の都合による非自発的失業は景気動向や労働需給が反映さ

れやすい指標ですので、こうした非自発的失業が減少していることは、景気の拡大や労働

需給のタイト化が影響していると考えられます。

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

1

9

5

3

1

9

5

5

1

9

6

0

1

9

6

5

1

9

7

0

1

9

7

5

1

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8

0

1

9

8

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9

9

5

2

0

0

0

2

0

0

5

2

0

1

0

2

0

1

4

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表1】完全失業率(季節調整済)の推移

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2

次に、企業の人手不足感を確認するために、日本銀行の短観における雇用人員判断をみ

てみましょう。図表 3 は全規模と大企業、中小企業別にみた雇用人員判断 D.I. (「人員過

剰」と判断する企業割合から「人員不足」と判断する企業割合を引いたもの)です。雇用

人判断 D.I.は、失業率同様にほぼリーマンショック前の水準まで低下してきています。

図表 4 は、こうした雇用人員のひっ迫感が業種別にどうなっているかをみたものです。

今回の局面では、製造業では人手不足感はさほどなく、非製造業が中心となっています。

建設では大企業、中小企業ともに人手不足感が強いほか、運輸・郵便、情報通信、対個人

サービスでは中小企業を中心に人手不足感が強くなっています。

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表2】求職理由別にみた失業率の内訳の推移

その他

その他の新たな求職

収入が必要となったため

学卒未就職

自発的失業

非自発的失業(勤め先等の

都合)

非自発的失業(定年・雇用契

約満了)

失業率

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

40(「過剰」-「不足」、%)

(データ)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」

【図表3】日銀短観からみる雇用人員ひっ迫感

雇用人員判断DI(全産業<全規模>)

雇用人員判断DI(全産業<大企業>)

雇用人員判断DI(全産業<中小企業>)

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労働需給を把握する統計としては有効求人倍率があります。有効求人倍率は、有効求人

数を有効求職者数で割ることにより、求職者一人に対して何人の求人があるかを示したも

のです。図表 5 はパート、パート以外および合計の有効求人倍率をみたものです。有効求

人倍率全体は、失業率、雇用人員判断 D.I.同様にリーマンショック前とほぼ同水準まで改善

しています。パートとパート以外で分けてみると、パートの求人倍率の方が常に高くなっ

ています。パートとパート以外の動きはほぼパラレルです。

有効求人倍率は「1」を超えると「求人超」となります。これをより分かりやすくする概

念として、「ミスマッチ比率」という数値を試算してみました。「ミスマッチ比率」は式①

により計算されます。

-45

-40

-35

-30

-25

-20

-15

-10

-5

0

5

10(「過剰」-「不足」、%)

(データ)日本銀行「全国企業短期経済観測」

【図表4】業種別にみた雇用人員ひっ迫感(2014年3月)

全規模

大企業

中小企業

1.08

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

1.20

1.40

1.60(倍)

(データ)厚生労働省「一般職業紹介状況」

【図表5】雇用形態別有効求人倍率

有効求人倍率計

うちパート以外

うちパート

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4

ミスマッチ比率=(有効求職者数—有効求人数)/(有効求職者数と有効求人数の平均)

・・・・・・・・・式①

ミスマッチ比率をグラフにしたのが図表 6 です。ミスマッチ比率は動きとしては有効求

人倍率と同じような動きになります(上下逆転しますが・・・)。これをみると、2014 年 4

月のミスマッチ比率は、リーマンショック以前の 2006 年、2007 年以来のマイナス(=求

人超)となっているのが分かります。またそれは、パート以外の労働需給の改善が大きく

貢献していることも分かります。

有効求人倍率が発表されている厚生労働省の「一般職業紹介状況」統計には、就職件数

という統計があります。これは、ハローワークに登録された求人、求職者のうちで実際に

就職となった件数です。この就職件数を有効求人数で割ると求人により人材が確保できた

確率となりますし、就職件数を有効求職者数で割ると求職者が就職できた確率となります。

これらの動きを示したのが図表 7、図表 8 になります。図表 7 をみると、求人を出している

企業側からみると、2010 年頃に比べて随分と人の確保が難しくなってきていることが分か

ります。また、図表 8 では、求職者側の就職環境は改善してきていることがわかります。

なお、2014 年 4 月の両者の比率は 0.08 で(0.08 で同じなのは偶然です<有効求人倍率が 1

近傍の場合に両者の比率は同じになります>)、100 件に 8 件しか就職が成立していないこ

とを示しています。

-7.5%-20%

-10%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

(データ)厚生労働省「一般職業紹介状況」

【図表6】雇用形態別ミスマッチ比率~(求職ー求人)/(求職・求人の平均)~

うちパート

うちパート以外

ミスマッチ比率

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「一般職業紹介状況」統計の年齢別統計をみたのが図表 9、10 です。図表 9 は、年齢別

有効求人倍率の推移です。2005 年から 2007 年にかけての年齢別のばらつきに比べて 近

は年齢別の差が縮まってきていることが分かりますが、それでもブルー系の若手とそれ以

外とで差がついていることも分かります。図表 10 は 2014 年 4 月現在の年齢別求職・求人

状況を式①により算出した「ミスマッチ比率」でみたものです。これでみると 34 歳までは

求職と求人がほぼ均衡しているのに対して、35 歳以降は求職超過が目立っています。特に

45~64 歳にかけては、ミスマッチ率が 20%前後となっています。

0.08

0.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

0.12

0.14

0.16

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014/4月

(倍)

(データ)厚生労働省「一般職業紹介状況」

【図表7】就職件数/有効求人数

就職件数/有効求人数

うちパート以外

うちパート

0.08

0.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

0.12

0.14

0.16

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014/4月

(倍)

(データ)厚生労働省「一般職業紹介状況」

【図表8】就職件数/有効求職者数

就職件数/有効求職者数

うちパート以外

うちパート

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

1.20

1.40

(倍)

(データ)厚生労働省「一般職業紹介状況」

【図表9】年齢別有効求人倍率

19歳以下 20~24歳25~29歳 30~34歳35~39歳 40~44歳45~49歳 50~54歳55~59歳 60~64歳65歳以上 -5%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

19歳

以下

20~

24歳

25~

29歳

30~

34歳

35~

39歳

40~

44歳

45~

49歳

50~

54歳

55~

59歳

60~

64歳

65歳

以上

-1.6%

0.6%

-0.4%

0.8%

5.6%

14.7%

21.0% 21.0%

18.3%

22.6%

15.8%

(データ)厚生労働省「一般職業紹介状況」

【図表10】ミスマッチ比率(2014/4月)

~(求職ー求人)/(求職・求人の平均)~

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6

2013 年の年齢別の就職件数をみたのが図表 11 です。件数としては 20 代から 40 代にか

けて高い姿となっています。また、図表 12 はこれを年齢別の有効求職者数および有効求人

数で割ることにより、求職者、求人者双方の就職確率を示したものです。これをみると、

就職確率自体は、図表 10 でみたほどの年齢別の差がないことが分かります。

次に「一般職業紹介状況」統計から職種別の有効求人倍率をみたのが図表 13 です。これ

をみると、保安、建設・採掘の有効求人倍率が高い一方、運搬・清掃・包装等、事務は低

くなっています。

図表 14、15 は図表 12 と同様の手法により、職種別の就職者を有効求人、有効求職者数

で割ったものです。求人側からみて人材を確保しやすいのは農林漁業、事務で、逆に確保

しにくいのは専門的・技術的、販売、保安、建設・採掘といった職種になります。また、

0

5

10

15

20

25

30

19歳

以下

20~

24歳

25~

29歳

30~

34歳

35~

39歳

40~

44歳

45~

49歳

50~

54歳

55~

59歳

60~

64歳

65歳

以上

4

20

25 23

25 24

19

16

13 15

6

(万件)

(データ)厚生労働省「一般職業紹介状況」

【図表11】年齢別就職件数(2013年)

/有効求職者数

/有効求人数

0.00

0.05

0.10

0.15

19歳

以下

20~

24歳

25~

29歳

30~

34歳

35~

39歳

40~

44歳

45~

49歳

50~

54歳

55~

59歳

60~

64歳

65歳

以上

0.09 0.08

0.07 0.07 0.08 0.08 0.07 0.07 0.06

0.05 0.04

0.02

0.08

0.10 0.10

0.12 0.12

0.10

0.08 0.07

0.09

0.04

(倍)

(データ)厚生労働省「一般職業紹介状況」

【図表12】年齢別就職件数/有効求

人・求職者数(2013年)

0.00

1.00

2.00

3.00

4.00

5.00

4.03

2.37 1.74 1.48 1.38 1.07 0.90 0.74 0.72 0.47 0.26

(倍)

(データ)厚生労働省「一般職業紹介状況」

【図表13】職種別有効求人倍率(2013年)

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求職者側からみると、保安、農林漁業は就職がしやすく、事務、管理、販売、運搬・清掃・

包装等は就職がしにくい姿となっています。

以上、労働需給の現状について見て参りました。特徴としては以下のような点にまとめ

られると思います。

① 労働需給は、2014 年 4 月時点で、リーマンショック前の水準にまでほぼ戻ってき

ている。

② 人手不足感は、非製造業の内需関連業種で強い。

③ パートとパート以外に分けた場合に、労働需給のミスマッチは、これまで求人超だ

ったパートに加えパート以外でも求職の超過が急速に縮まっている。

④ 労働需給を年齢別でみると、35 歳未満の若手が相対的にタイト。

⑤ 労働需給を職種別にみると、保安、建設・採掘、サービスがかなり需要超過となっ

ている一方、事務、運搬・清掃・包装等は供給超過幅が大きい。

こうした労働需給環境の変化が、人口減少を背景とした労働力不足が原因なのか、アベ

ノミクス効果による景気の好転によるものなのか、区別することは困難ですが、次にお示

しするように、今後の人口見通しを前提とした労働力人口の見通しからすると、景気が拡

大した際に、労働力供給の天井が低い結果、労働力供給不足が原因で成長が阻まれる、あ

るいは物価上昇を招く・・・といったことが起こりやすくなっていると考えられます。

1-2 人口見通しを前提とした労働力人口の見通し

1-1でみてきた労働需給のタイト化の背景の一つには、我が国の人口減少に伴う労働

力人口の減少が考えられます。そこで、人口見通しを前提とした労働力人口の見通しにつ

いてみてまいりましょう。図表 16、図表 17 は、2014 年 1 月発表の研究レポート「出生率

=2を目標とした異次元の少子化対策を」で示した内容です。図表 16 では、国立社会保障・

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.06 0.06 0.07 0.05

0.09 0.05

0.18

0.07

0.13 0.13

0.18

(倍)

(データ)厚生労働省「一般職業紹介状況」

【図表14】職種別就職件数/有効求人数

(2013年)

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.23

0.14 0.12

0.07

0.13

0.06

0.17

0.05 0.09

0.06 0.05

(倍)

(データ)厚生労働省「一般職業紹介状況」

【図表15】職種別就職件数/有効求職者数

(2013年)

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人口問題研究所の中位推計と合計特殊出生率を 2.07 までに引き上げた場合の人口の推移を

示しています。また、図表 17 ではその前提となった合計特殊出生率を示しています。

また、国立社会保障・人口問題研究所の中位推計と 2025 年までに出生率を 2 にまでに回

復するケース1の場合の人口の変化率(年率)がどの程度違うかについてみると、図表 18

のとおり、中位推計では人口の減少率は今後減少幅を拡大し続け、2070 年以降は年率 1.4%

の勢いで人口が減少することとなります。一方、出生率を引き上げたケース1の場合では、

目先は人口の減少が続くものの、その減少幅は 大で 0.4%程度に止まり、2050 年以降は

減少幅が縮小していきます。

109百万人

87百万人

43百万人

2038年

119百万人2060年

110百万人

2110年

107百万人116百万人

105百万人

99百万人

2010年

128百万人 113百万人

100百万人

89百万人

0

20

40

60

80

100

120

140

1988年

2000年

2010年

2025年

2038年

2060年

2110年

(百万人)

(データ)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」

【図表16】合計特殊出生率のケース別人口見通し

社会保障・人口問題研究所中

位(出生・死亡)推計

ケース①(2011年以降改善、

2025年以降2.07)

ケース②(2011年以降改善、

2038年以降2.07)

ケース③(2026年以降改善、

2038年以降2.07)

社会保障・人口問題研究所出

生高位・死亡低位推計

社会保障・人口問題研究所出

生低位・死亡高位推計

1988年1.66

2005年1.26

2025年2.07

2010年1.392025年1.39

2038年2.07

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

2.0

2.2

1988

2000

2010

2025

2038

2060

(人)

(データ)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」

【図表17】合計特殊出生率の前提

社会保障・人口問題研究所中位(出生・死亡)推計

ケース①(2011年以降改善2025年以降2.07)

ケース②(2011年以降改善2038年以降2.07)

ケース③(2026年以降改善、2038年以降2.07)

社会保障・人口問題研究所出生高位・死亡低位推計

社会保障・人口問題研究所出生低位・死亡高位推計

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9

このように、出生率を引き上げた場合に、人口の減少が止まるまでには時間を要します

が、出生率を引き上げなかった場合に比べれば、その減少率は明らかに差が出ます。

それでは、労働力人口※はどうでしょうか。図表 19 は、2013 年以降、年齢区分別労働

力率※※が 2012 年の水準で横ばいであった場合の労働力人口の見通しです。青線は人口の前

提が国立社会保障・人口問題研究所の中位推計によるもので、赤線は人口の前提が 2025 年

までに合計特殊出生率を 2.07 まで引き上げた場合のものです。青線も赤線も 2030 年まで

は重なっており 2040 年以降差がでてくる形となっています。これは、出生率を引き上げて

も、出生した新生児が労働力となるには 20 年程度かかることによります。 ※「労働力人口」とは、15 歳以上の人口のうち実際に就業している方と失業中の方を合

計した人口です。いわば労働市場に参入している人口ということになります。なお、

「生産年齢人口」とは 15 歳以上 65 歳未満の人口をいい、生産活動の中核となりうる

年齢の人口をさします。「労働力人口」と「生産年齢人口」の違いは、①年齢面で「労

働力人口」は 65 歳以上も対象となっているのに対し「生産年齢人口」は 65 歳未満と

していること、②対象が「労働力人口」は就業者と失業者に限っているのに対し「生

産年齢人口」は就業者、失業者以外の非労働力人口も含めた人口全体としていること、

の 2 点です。 ※※「労働力率」とは、人口に占める労働力人口の割合のことです。「年齢別労働力率」

とは、年齢区分別の人口に占めるそれぞれの年齢区分の労働力人口の割合のことです。

図表 19 の推計は、2013 年以降の年齢区分別人口に 2012 年の年齢区分別労働力率を

乗じることにより算出しました。

-1.5%

-1.0%

-0.5%

0.0%

0.5% 0.3%0.1%

-0.3%

-0.6%

-0.8%-1.0%

-1.1%

-1.3% -1.4%-1.4%-1.4%-1.4%

-0.2%-0.3%

-0.4%-0.4%-0.3%-0.3%

-0.2%

0.0% 0.1% 0.1%

(データ)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」

【図表18】人口変化率(年率)見通し(社人研中位推計とケース①との比較)

中位推計

ケース①

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10

図表 19 の労働力人口を年率の変化率で示したのが図表 20 です。このように、2030 年

までは、国立社会保障・人口問題研究所の中位推計による人口見通しでも、2025 年に合計

特殊出生率を 2.07 に引き上げた場合の人口見通しでも同じ変化率となっています。言い換

えれば、「合計特殊出生率引き上げによる労働力人口の引き上げ効果は 2040 年までは顕れ

てこない」ということになります。

図表 21、22 は、図表 20 の労働力人口の年率変化率と人口の変化率を比較したもので

す。図表 22 のように、国立社会保障・人口問題研究所の中位推計の場合には、労働力人口

5,227 4,945

4,827

4,799

4,856

4,873 4,902

4,977

6,384 6,766 6,632

6,167

5,708

5,048 4,401

3,895

3,388

2,917 2,537

2,201

1,896

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000(万人)

(データ)総務省統計局「労働力調査」

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)

【図表19】労働力人口延長(2012年の労働力率で延長)

出生率2025年=2.07のケース

社人研中位推計ベース

-1.5%

-1.0%

-0.5%

0.0%

0.5%

1.0%

0.6%

-0.2%

-0.7% -0.8%

-1.2%-1.4%

-1.2%-1.4%

-1.5%-1.4%-1.4%

-1.5%

-0.9%

-0.6%

-0.2%-0.1%

0.1% 0.0% 0.1%0.2%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」

【図表20】労働力人口変化率(年率)見通し

労働力人口・中位推計

労働力人口・2025=2.07

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11

は人口の減少とほぼ同様のテンポで減少していきますが、図表21の2025年に出生率を2.07

までに引き上げた場合には、人口の減少幅は図表 22 に比べ小幅で済むにもかかわらず、

2040 年にかけては労働力人口が大きく減少していってしまいます。

図表 21 で示していることはどういうことかといえば、「出生率を 2.07 まで引き上げれば

将来的には我が国の人口バランスは安定するけれども、そうした出生率引き上げの効果が

労働市場に顕れてくるまでの目先 30 年間は、何とか労働力人口の減少を食い止めなければ

ならない」ということです。

-1.5%

-1.0%

-0.5%

0.0%

0.5%

1.0%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成

24年1月推計)」

【図表21】2025=2.07の場合の人口と

労働力人口の差

労働力人口・2025=2.07

人口・2025=2.07

-1.5%

-1.0%

-0.5%

0.0%

0.5%

1.0%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成

24年1月推計)」

【図表22】中位推計の場合の人口と

労働力人口の差

労働力人口・中位推計

人口・中位推計

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12

2 必要な対応:2040 年にかけての労働力率の引上げ

2-1 労働力率引き上げによる労働力人口の試算

図表 21 のように、今後出生率を 2.07 まで回復させていったとしても目先 2040 年にか

けて生じる人口の減少率と労働力人口の減少率とのギャップを埋めるためには、労働力率

を引き上げていくことが必要です。

では、労働力率を引き上げていくとして、どこまで引き上げるべきでしょうか?労働力

率を引き上げる対象は二つあります。一つは 60 歳代の高齢者です。もう一つは 20 代から

50 代の女性です。

まず 60 歳代の高齢者については、労働力率引き上げのきっかけとなるのが年金の支給で

す。当研究所の北浦修敏主任研究員が本年 3 月にディスカッション・ペーパーとして発表

した「世代会計の手法を活用した政府支出の長期推計と財政再建規模の分析」において、

未来に向けた改革である少子化対策の予算を、過去に対する給付である年金の削減でカバ

ーする一つの方策として、年金支給開始年齢を 65 歳から 70 歳に引き上げた場合※の財政バ

ランスを試算しています。年金の支給開始を後ずらしにした場合、年金の支給開始まで働

かざるを得なくなる方が増える(あるいは働けるよう雇用を確保することが必要となる)

と考えられます。こうしたことにより 60 歳代の高齢者の方々の労働力率が引き上げられる

ことが期待されます。今回の試算では、60 歳から 69 歳までの 2040 年の労働力率を 2015

年(=2010 年)の 55~59 歳の労働力率と同じ水準にまで引き上げられると想定しました。

また、70 歳以上も 2040 年には 2015 年(=2010 年)比 10%ポイント上昇するとしていま

す。 ※具体的には、男子は 2027 年度から 2035 年度にかけて、女子は 2032 年度から 2040 年

度にかけて、2 年に 1 歳ずつ支給開始年齢を引き上げ。

次が、20 代から 50 代の女性です。3-2 で詳しくは述べますが、これまでも女性の労働

市場への参入が我が国の労働力人口を底支えしてきました。今後もこうした女性の参入を

増やしていくことが労働力率引き上げの大きな要因になります。今回の試算では、20 代は

2040 年には 2015 年(=2010 年)比 10%ポイントの上昇、30 代は同 15%ポイントの上昇、

40 代、50 代は同 10%ポイントの上昇、60 代は年金支給年齢の引上げを反映して、65 歳か

ら 69 歳までの労働力率が 2040 年には 2015 年(=2010 年)の 55 歳から 59 歳の労働力率

並みとなると想定しています(60~64 歳の 2040 年の労働力率は 55~59 歳の労働力率と

65~69 歳の労働力率の平均と想定しました)。また、70 歳以上も 2040 年には 2015 年(=

2010 年)比 10%ポイント上昇するとしています。

こうした労働力率の想定を示したのが図表 23、図表 24 です。また、労働力率引き上げ

のパスを描いたのが図表 25、26 になります。

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13

このように労働力率を引き上げた結果の労働力人口の姿をみたのが図表 27 です。出生率

の想定にかかわらず、点線の年齢別労働力率を 2010 年以降横ばいとしたケースでは労働力

人口が今後減少傾向を続けるのに対して、年齢別労働力率を引き上げた場合には、2040 年

にかけて労働力人口をほぼ横ばいで維持できていることが分かります。ただ、2040 年以降

は、出生率を 2.07 まで引き上げた場合には労働力人口が下げ止まるのに対して、出生率の

想定が社人研の中位推計の場合には、労働力人口が再び減少傾向に転じることが分かりま

す。

93.1% 93.1%

30.0%

93.1%

76.3%

48.3%

20.0%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表23】年齢別労働力率引き上げ(男性)

2040

2015

+10%

年金の支給年

齢引上げに合

わせて引上げ

14.7%

79.4%

87.8%83.9% 83.0%

81.5%85.0%

83.2%

75.1%

70.1%

65.1%

18.6%

69.4%

77.8%

68.9%68.0%

71.5%75.0%73.2%

65.1%

46.3%

27.9%

8.6%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表24】年齢別労働力率引き上げ(女性)

2040

2015

+10% +15% +10%

+10%

年金の支給年

齢引上げに合

わせて引上げ

76.3%

48.3%

93.1%

20.0%

30.0%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

(データ)総務省統計局「労働力調査」、国立社会保障・

人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月

推計)」

【図表25】労働力率引き上げのパス(男性)

15~19歳

20~24歳

25~29歳

30~34歳

35~39歳

40~44歳

45~49歳

50~54歳

55~59歳

60~64歳

65~69歳

70歳以上

77.8%

87.8%

68.9%

83.9%

46.3%

70.1%

27.9%

65.1%

8.6%

18.6%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

(データ)総務省統計局「労働力調査」、国立社会保障・

人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月

推計)」

【図表26】労働力率引き上げのパス(女性)

15~19歳

20~24歳

25~29歳

30~34歳

35~39歳

40~44歳

45~49歳

50~54歳

55~59歳

60~64歳

65~69歳

70歳以上

Page 19: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

14

図表 28 は、図表 27 の労働力人口を人口全体で割った社会全体の労働力率の動きを示し

ています。年齢別労働力率を引き上げた場合には、社会全体の労働力率も上昇に転じます

が、年齢別労働力率を 2010 年比横ばいにした場合には、社会全体の労働力率は 2050 年に

かけて低下し、出生率を引き上げた場合には、その後上昇していくことが分かります。

ここで、ちょっとパラドックスな現象が起きています。すなわち、「年齢別労働力率が横

ばいにもかかわらず社会全体の労働力率は 2050 年にかけて低下している(あるいは出生率

を引き上げた場合には2050年以降社会全体の労働力率は上昇している)」ということです。

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000(万人)

(データ)総務省統計局「労働力調査」

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月集計)」

【図表27】労働力人口(2040年にかけて労働力率引き上げ)

年齢別労働力率引上げ(出生率:中位推計)

年齢別労働力率引上げ(出生率:2025年=2.07)

年齢別労働力率横ばい(出生率:中位推計)

年齢別労働力率横ばい(出生率:2025=2.07)

40

45

50

55

60

65

70(%)

(データ)総務省統計局「労働力調査」

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月集計)」

【図表28】労働力率(2040年にかけて労働力率引き上げ)

年齢別労働力率横ばい(出生率:中位推計)

年齢別労働力率横ばい(出生率:2025=2.07)

年齢別労働力率引上げ(出生率:中位推計)

年齢別労働力率引上げ(出生率:2025=2.07)

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15

これは、「個々の年齢別の出生率は変わらなくても年齢別の人口構成比が変化することに

よって社会全体の労働力率は変化する」ということが起きているからです。

これはどういうことか図表 29 以降の設例で説明しましょう。図表 29 は、A組とB組か

らなる学年の 1 学期のテスト結果です。A組の平均点は 80 点、B組の平均点は 40 点で、

学年全体の平均点は 60 点でした。

【図表 29】

図表 30 は、2 学期の結果も加えたものです。A組、B組とも平均点はそれぞれ 80 点、

40 点と変わらなかったにもかかわらず、学年全体の平均点は 1 学期の 60 点から 50 点へと

低下してしまいました。

【図表 30】

その種明かしをしたのが図表 31 です。実は、1学期と 2 学期ではA組とB組の人数が

変わっていて、平均点の高いA組の人数が減り、平均点の低いB組の人数が増えた結果学

年全体の平均点が押し下げられてしまったのでした。

【図表 31】

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16

この図表 29 から 31 までの設例のクラスごとの平均点を年齢別の労働力率に、学年全体

の平均点を社会全体の労働力率に、クラスの人数を年齢別の人口ウェイトに置き換えて考

えると、図表 27 の点線が 2050 年にかけて低下していく理由が分かります。

図表 23、24 をみると分かるように、年齢別に見た労働力率は 20 代から 50 代にかけて

高く、60 代以上は低くなります。20 代から 50 代までの労働力率は図表 29 から 31 の設例

のA組の平均点にあたります。逆に 60 代以上の労働力率は図表 29 から 31 の設例のB組の

平均点にあたります。目先 2040 年にかけてはこれまでの少子高齢化の影響から高齢者の人

口割合が高まっていきます。こうした高齢者の人口割合の高まりは図表 29 から 31 の設例

でいえば平均点の低いB組の人数が増えることと同じことです。このように、平均点の低

い=労働力率の低い高齢者の割合が目先高まっていくので、年齢別の労働力率は横ばいで

あっても、社会全体の労働力率は低下してしまうことになります。

図表 32 は、図表 27 の労働力人口の 2013 年から 2040 年への変化を要因分解したもの

です。図表 27 の赤の点線(=労働力率を引き上げず、出生率は 2025 年=2.07)だと、2013

年から 2040年にかけて 13百万人労働力人口が減少するのに対して、図表 27の赤の実線(=

労働力率を引き上げ、出生率は 2025 年=2.07)は 2 百万人の減少に止まっています。

赤の点線が何故 13 百万人も減少するかというと、人口が減少することに加え、ほぼそれ

と同等の影響度をもって人口構成が変化することにより労働力率が低下すること(前述の

図表 31 参照)が足を引っ張っていることが分かります。そして赤の実線は 2 百万人の減少

に止まるのは、年齢別労働力率の引上げが貢献しています。その内訳は、60 歳未満の女性

の労働力率の引上げと、60 歳以上の女性の労働力率引上げ、60 歳以上の男性の労働力率引

上げがほぼ同程度貢献していることが分かります。

2.3百万人 3.4百万人1.5百万人

3.1百万人1.8百万人

3.8百万人

-0.7百万人

-1.9百万人

-5.9百万人

-12.7百万人

-20百万人

-15百万人

-10百万人

-5百万人

0百万人

5百万人

10百万人

15百万人

2013→2026 2013→2040

(データ)総務省統計局「労働力調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の

将来推計人口(平成24年1月集計)」

【図表32】労働力人口変化(2013→2040)の要因分解

~2025=2.07の場合~

労働力率要因(女性:60

歳以上)

労働力率要因(女性:60

歳未満)

労働力率変化要因(男

性=60歳以上)

人口構成変化要因

人口減少要因

労働力人口(労働力率

引上げ後)

労働力人口(労働力率

引上げなし)

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17

図表 33 は、出生率が 2025 年に 2.07 まで引き上げた場合でかつ、年齢別の労働力率を引

き上げた場合の労働力人口の年率の変化率をグラフにしたものです。うぐいす色の棒が労

働力率を引き上げた場合の変化率です。図表 21 において人口に比べて大きく減少していた

労働力人口(赤の棒)と対比して、うぐいす色の棒がかなりマイナス幅が小さくなり、ピ

ンクの人口の変化幅とほぼ同程度となったことがみてとれます。このように、2040 年にか

けて年齢別の労働力率を引き上げることにより、人口の変化率と労働力人口の変化率との

ギャップをなくすることが出来る訳です。

2-2 労働力人口の前提別にみた中期的な成長率の試算

次に、これまで検討してきた労働力人口の変化率を用いて、経済成長率について考えて

みたいと思います。

生産面から経済成長率を考える場合には、通常、資本と労働と全要素生産性の変化率か

ら算出される潜在成長率でみることが多いのですが、今回は、簡便法として、経済成長率

を労働力の変化率と労働生産性の変化率に要因分解してみてみようと思います。

図表 34 は、これまで経済成長率を労働力人口※と労働生産性の変化率に要因分解したも

のです。

※ 本来は生産活動に投入された労働量としては、労働力人口から失業者を差し引いた

就業者をベースとし、それに労働時間の変化を加味することがより精緻ですが、先

行きについて労働力人口の変化率で延長することから、過去についても労働力人口

の変化率で要因分解することとしました。したがって、失業者や労働時間の変動に

伴う経済成長への影響は労働生産性の変動に反映されることとなります。

-1.0%

-0.8%

-0.6%

-0.4%

-0.2%

0.0%

0.2%

0.4%

0.6%

0.8%

1.0%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」

【図表33】2025=2.07の場合の人口と労働力人口の変化率(年率)の差

~労働力率引き上げ後~

労働力人口・2025=2.07

労働力率を引き上げた場合の労働力人口

人口・2025=2.07

Page 23: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

18

図表 34 のように、これまでの経済成長は、労働力人口が減少に転じた 1998 年以降も、

労働生産性の伸びに支えられてきたことが分かります。また、図表 35 は、図表 34 の要因

分解を 10 年単位でみたものです。これをみると、2000 年以降は、労働力人口が徐々にマイ

ナス幅を拡大する中にあって、1%程度の労働生産性の改善により経済成長が支えられてい

ることが分かります。

2000 年以降続いている 1%の労働生産性の伸びが今後も持続すると想定して、今後の中

期的な成長率がどうなるかを試算してみたのが、図表 36 から図表 38 です。図表 36 と 37

は、労働力率を引き上げる前の試算です。社人研の中位推計をベースにした場合は、図表

36 のように、労働力人口の減少幅拡大から 2030 年以降マイナス成長となります。出生率を

引き上げた場合には、マイナス成長は避けることが出来ますが、2040 年にかけては、労働

-6%

-4%

-2%

0%

2%

4%

6%

8%

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

(データ)総務省統計局「労働力調査」

内閣府「国民経済計算統計」

【図表34】経済成長率の分解(労働力人口・労働生産性)

労働生産性

労働力人口

実質GDP

1.2%0.6%

-0.2%-0.6%

3.4%

0.5%

1.0%

1.1%

4.7%

1.1%0.8%

0.5%

-1%

0%

1%

2%

3%

4%

5%

1980→1990 1990→2000 2000→2010 2010→2012

(データ)総務省統計局「労働力調査」

内閣府「国民経済計算統計」

【図表35】中期的な成長率(年率)の要因分解

労働生産性

労働力人口

実質GDP

Page 24: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

19

力人口の減少の影響を受けて、かなり低い成長率なります。出生率を引き上げ、かつ労働

力率を引き上げた場合が図表 38 になります。出生率を引き上げ、労働力率を引き上げた場

合には、図表 36、37 でみられた 2010 年から 2040 年にかけての低成長を回避しながら成長

が続けられることが見て取れます。

このように、出生率を 2025 年にかけて 2.07 まで回復しても当面は直面してしまう労働

力人口の大幅な減少に対して、2040 年にかけて労働力率を引き上げることにより対応して

いけば、経済成長率も落ち込むことなく維持できることが分かります。

1.2%0.6%

-0.2%

-0.7% -0.8%-1.2%

-1.4%-1.2%-1.4%-1.5%-1.4%-1.4%-1.5%

3.4%

0.5%

1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0%

4.7%

1.1%

0.8%

0.3% 0.2%-0.2%

-0.4%

-0.2% -0.4%-0.5%

-0.4% -0.4%

-0.5%

-2%

-1%

0%

1%

2%

3%

4%

5%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

内閣府「国民経済計算統計」

【図表36】中期的な成長率(年率)の試算(中位推計を前提)

~労働生産性の伸びを年率1%と想定~

労働生産性

労働力人口

実質GDP

1.2%0.6%

-0.2%

-0.7%-0.8%-0.9%-0.6%-0.2%

-0.1%0.1% 0.0% 0.1% 0.2%

3.4%

0.5%

1.0% 1.0% 1.0% 1.0%1.0%

1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0%

4.7%

1.1%

0.8%

0.3% 0.2% 0.1%

0.4%

0.8% 0.9%1.1% 1.0%

1.1%

1.2%

-2%

-1%

0%

1%

2%

3%

4%

5%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

内閣府「国民経済計算統計」

【図表37】中期的な成長率(年率)の試算(2025=2.07を前提)

~労働生産性の伸びを年率1%と想定~

労働生産性

労働力人口

実質GDP

1.2%0.6%

-0.2% -0.5% -0.3% -0.4% -0.6%-0.3% -0.1%

0.1% 0.0% 0.0% 0.2%

3.4%

0.5%

1.0%1.0%

1.0% 1.0%1.0%

1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0%

4.7%

1.1%

0.8%0.5%

0.7%0.6% 0.4%

0.7%0.9%

1.1%1.0% 1.0% 1.2%

-1%

0%

1%

2%

3%

4%

5%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

内閣府「国民経済計算統計」

【図表38】中期的な成長率(年率)の試算(2025=2.07を前提)

<労働力率引き上げ後>

~労働生産性の伸びを年率1%と想定~

労働生産性

労働力人口

実質GDP

Page 25: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

20

3 労働力率引き上げの可能性についての検証

「2」では、合計特殊出生率を 2.07 に引き上げたとしても当面 2040 年にかけて避け得

ない労働力人口の減少について、年齢別の労働力率を引き上げることができれば、その悪

影響をほとんどなくすることが出来る、ということを確認しました。しかし、「2」でみた

ような労働力率の引上げが実際には出来ないのでは、「2」で描いた姿は「絵に描いた餅」

になってしまいます。「絵に描いた餅」にならないために、「3」では、労働市場の現状を分

析していくことにより、「2」の試算の前提となった点について、その実現可能性について

確認を行っていくこととしたいと思います。

3-1 これまでの労働市場の動きの確認

個別の確認を行っていく前に、これまでの労働市場の動きについて確認を行っていきた

いと思います。

図表 39 は、これまでの 15 歳以上人口、労働力人口(15 歳以上人口のうち就業者と失業

者の合計)、労働力率(=労働力人口÷15 歳以上人口)の長期推移を示したものです。この

特徴点は以下の 3点です。

① 15 歳以上人口は 2010 年をピークに減少に転じているのに対して、労働力人口は 1998

年をピークに減少に転じています。

② 労働力率は長期的には低下傾向を続けています。

③ また、やや子細に見ると、2012 年から 2013 年にかけては、15 歳以上人口は微減を

続けている中で、労働力人口、労働力率が増加・上昇に転じています。

こうした動きについて、男女別に見たのが図表 40、41 です。図表 40、41 をみるとさら

に次のような点が分かります。

④ 男性は、15 歳以上人口が 2010 年以降減少に転じており、また労働力人口も 1997 年

をピークに減少に転じており、また労働力率も低下傾向を続けている、など男女計

とほぼ同様の動きとなっています。

⑤ これに対して女性は、15 歳以上人口は 2011 年をピークに減少に転じており、この点

は男女計、男性の動きとほぼ同様ですが、労働力人口は継続的に増加を続けており、

男性のように減少に転じてきていません。このように、男性が労働力人口、労働力

率を押し下げる方向で推移しているのを女性が食い止める方向で働いて生きたこと

が分かります。

⑥ また、2012 年から 2013 年にかけての動きは、男性は労働力人口も労働力率も減少・

低下している一方、女性は労働力人口も労働力率も増加・上昇しており、男女計の

近の労働力人口、労働力率の増加・上昇は女性によって支えられていることが分

かります。

Page 26: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

21

ここで、特に労働力率の動きに注目したいと思います。男女計および男性は 2000 年以

前から低下しているのに女性は低下していません。この労働力率も、図表 29 から 31 の設

例でお示ししたのように、人口の少子高齢化に伴い、労働力率の低い高齢者の割合が高く

なることにより、押し下げる方向での力が働いております。男女計とか男性は、そうした

年齢構成の変化要因により労働力率が押し下げられている面が大きいと考えられます。言

い換えるならば、女性の労働力率が下がっていないのは、年齢構成変化要因による下押し

圧力に拮抗してそれぞれの年齢別の労働力率が引き上げられているからだと考えられます。

図表 42 は、男女計の労働力率の変化を、男女別の年齢別の労働力率変化要因と男女別の人

口構成変化要因に分けてみたものです。これをみると、①人口構成変化要因は男女とも 1970

年代頃から労働力率の押し下げ要因として働いてきていて、そのマイナス幅はだんだんと

大きくなってきていること、②男性の年齢別労働力率変化要因は総じてマイナス方向とな

っていること、そして③女性の年齢別労働力率要因がほぼ一貫して労働力率押し上げ方向

に貢献していること、が分かります。

59.159.3

111.1

67.9

65.665.8

52

54

56

58

60

62

64

66

68

70

72

0

20

40

60

80

100

120

1953

1955

1957

1959

1961

1963

1965

1967

1969

1971

1973

1975

1977

1979

1981

1983

1985

1987

1989

1991

1993

1995

1997

1999

2001

2003

2005

2007

2009

2011

2013

(労働力率、%)(15歳以上人口、労働力

人口、百万人)

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表39】15歳以上人口と労働力人口の推移(男女計)

労働力率

15歳以上人口

労働力人口

70.870.5

53.7

40.3

37.937.7

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0

10

20

30

40

50

60

1953

1955

1957

1959

1961

1963

1965

1967

1969

1971

1973

1975

1977

1979

1981

1983

1985

1987

1989

1991

1993

1995

1997

1999

2001

2003

2005

2007

2009

2011

2013

(労働力率、%)

(15歳以上人口、労働

力人口、百万人)

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表40】15歳以上人口と労働力人口の推移(男性)

48.248.9

57.5

27.7 28.0

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0

10

20

30

40

50

60

1953

1955

1957

1959

1961

1963

1965

1967

1969

1971

1973

1975

1977

1979

1981

1983

1985

1987

1989

1991

1993

1995

1997

1999

2001

2003

2005

2007

2009

2011

2013

(労働力率、%)

(15歳以上人口、労働力

人口、百万人)

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表41】15歳以上人口と労働力人口の推移(女性)

Page 27: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

22

こうした動きを確認するために、男女別の年齢別の労働力率(いわゆる M 字カーブ)の

変化をみたのが図表 43、44 です。これをみると以下のような点が分かります。

① 男性は若年者(高学歴化)、高齢者(就業者における雇用者割合の増加・自営業家族

従業者の減少<後述>)で労働力率が低下していますが、20 代後半から 50 代にか

けてはほぼ 100%に近い高い労働力率を維持しています。

② 女性は、以前は 20 代前半で就職し結婚、出産のため労働市場から一旦退出した後 40

代から労働市場に再び参入するといういわゆる M 字型の労働力率となっていました

が、徐々に M 字の谷が埋まるとともに、労働力率全体も引上げられています。

③ ただ、女性のピークの労働力率はまだ 8 割未満で、男性に比べて低い状態です。

-1.5%

-1.0%

-0.5%

0.0%

0.5%

1.0%

1969

1970

1971

1972

1973

1973

1974

1975

1976

1977

1978

1979

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

(データ)総務省統計局「労働力調査

【図表42】労働力率変化(男女計)の要因分解

年齢別労働力率・女

年齢別労働力率・男

年齢別人口構成・女

年齢別人口構成・男

労働力率変化幅計

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表43】M字カーブの推移(男性)

1968

2000

2012

2013

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表44】M字カーブの推移(女性)

1968

2000

2012

2013

Page 28: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

23

図表 45、46 は、男女計の労働力率の変化のうち年齢構成変化要因以外のそれぞれの年

齢別労働力率の寄与度を男女別に示したものです(図表 42 のシャドーがかかっていないピ

ンクとスカイブルーの部分の変化をさらに年齢別に分解したものです)。これをみると、男

性は、高学歴化(24 歳以下の労働力率の低下)と就業者の雇用者比率上昇(高齢者の労働

力率の低下)が中心であることが分かります。一方女性については、男性同様の要因での

マイナス要因もみられますが、その影響度は小さく、むしろ全年齢層にかけての労働力率

の上昇がみてとれます。

次に、労働力率の変化を就業形態、非就業者形態別にみてみましょう。図表 47 は 15 歳

以上の人口を就業形態(雇用者、自営業主・家族従業者、失業者)、非就業形態(通学、家

事、その他)別にみたものです。長期的には労働力率は低下していますが雇用者比率は上

昇しています。また非就業者の中では「その他」が増えています。非就業者の「その他」

は、家事もせず通学もしていない非就業者で、高齢者の増加に伴うものと考えられます。

-2.50%

-1.50%

-0.50%

0.50%

1.50%

2.50%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表45】労働力率(男女計)変化の年齢別

寄与度(男性)

70歳以上

65~69

60~64

55~59

50~54

45~49

40~44

35~39

30~34

25~29

20~24

15~19歳

合計

-2.50%

-1.50%

-0.50%

0.50%

1.50%

2.50%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表46】労働力率(男女計)変化の年齢別

寄与度(女性)

70歳以上

65~69

60~64

55~59

50~54

45~49

40~44

35~39

30~34

25~29

20~24

15~19歳

合計

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1953 60 70 80 90 2000 10 13

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表47】労働力率の内訳(男女計)

その他

家事

通学

完全失業率

自営業主・家族従業者

雇用者比率

労働力率

就業者比率

Page 29: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

24

ただ、これを男女別にみると様子が少し異なります。図表 48、49 は、図表 47 を男女別

に分けてみたものです。男性はおおよそ男女計と同じような動きをしていますが、女性は、

労働力率が 1980 年以降、おおよそ横ばいで推移しています。女性の非就業者の内訳をみる

と、その他は男性同様に増えていますが、それを相殺するように家事の割合が低下してお

り、これにより労働力率が横ばいとなっていることが分かります。

ただ、図表 47~49 にかけての労働力率の変化には、図表 29~31 で例示した人口の年齢

構成の変化要因が含まれている点には留意が必要です。例えば図表 47~49 で、黄色の通学

者の割合は低下してきています。しかし、これは高校や大学への進学率が低下したからで

はありません。むしろ大学への進学率は上昇しています。通学者の割合が低下しているの

は、少子化により通学する年齢の人口割合が低下したからです。こうした、人口の年齢構

成の変化要因を取り除いて 2000 年以降の労働力率の変化要因を分解したのが図表 50、図

表 51 です。

図表 50 は、図表 47~49 の労働力率の線より下側の要因による労働力率の変化要因分解

です。どういう就業形態での労働需要があるかという観点で、労働力率変化の「需要」要

因の内訳と名付けました。これをみると、人口の年齢構成要因が足を引っ張っている中で、

女性の雇用者が労働力率の引上げに貢献してきていることが分かります。

図表 51 は、図表 47~49 の労働力率の線より上側の要因による労働力率の変化要因分解

です。どういった非就業者から労働力人口へとシフトしてかという観点で、労働力率変化

の「供給」要因の内訳と名付けました。これをみると、人口の年齢構成要因が足を引っ張

る姿は「需要」要因と同様ですが、女性の家事から労働力人口へのシフトが貢献している

ことが分かります。

以上のように、図表 42 や 44、46 で確認された女性の労働市場への参入は、需要形態と

しては「雇用者」として、どこから供給されたかといえば「家事」から、行われてきたこ

とが分かります。

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1953 60 70 80 90 2000 10 13

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表48】労働力率の内訳(男性)

その他

家事

通学

完全失業率

自営業主・家族従業者

雇用者比率

労働力率

就業者比率0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1953 60 70 80 90 2000 10 13

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表49】労働力率の内訳(女性)

その他

家事

通学

完全失業率

自営業主・家族従業者

雇用者比率

労働力率

就業者比率

Page 30: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

25

次に、雇用形態についてみてみましょう。図表 52、53 は、2013 年時点の男女別の年齢

別雇用形態を示しています。男性は 20 代後半から 50 代までは 9 割前後が正規雇用で 60 歳

以降は正規雇用比率が下がり、嘱託、契約社員、アルバイトの比率が高くなります。一方

女性については、正社員比率は 20 代後半がピークで、それも男性の 9 割よりはかなり低い

6 割程度となっています。一方で年齢が高くなるにつれウェイトが高まるのがパートで、45

歳を超えると、パートの比率の方が正規雇用を上回るようになります。

図表 50 でもみたように、女性の雇用者比率は 2000 年以降継続して上昇しています。こ

の女性の雇用者比率の変化の内訳をみたのが図表 54 になります。図表 54 をみると、2005

-2.00%

-1.50%

-1.00%

-0.50%

0.00%

0.50%

1.00%

1.50%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表50】労働力率の変化要因

(労働需要内訳・男女別)

年齢構成変化要

完全失業者(女)

完全失業者(男)

雇用者(女)

雇用者(男)

自営業主・家族

従業者(女)

自営業主・家族

従業者(男)

労働力率

-2.00%

-1.50%

-1.00%

-0.50%

0.00%

0.50%

1.00%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表51】労働力率の変化要因

(労働供給要因・男女別)

年齢構成変化

要因

その他(女)

その他(男)

家事(女)

家事(男)

通学(女)

通学(男)

労働力率

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

15~

19歳

20~

24歳

25~

29歳

30~

34歳

35~

39歳

40~

44歳

45~

49歳

50~

54歳

55~

59歳

60~

64歳

65歳

以上

34.9%

59.3%

80.5%86.5%90.2%91.1%91.4%90.5%87.0%

45.5%

29.9%

58.1%

29.4%

7.9%4.0%

2.4%2.1%2.2%1.8%2.3%

7.4%17.4%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表52】年齢別雇用形態(男性・2013年)

その他

嘱託

契約社員

派遣社員

アルバイト

パート

正規雇用

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

15~

19歳

20~

24歳

25~

29歳

30~

34歳

35~

39歳

40~

44歳

45~

49歳

50~

54歳

55~

59歳

60~

64歳

65歳

以上

20.9%

53.6%61.9%

55.6%48.0%

42.6%40.9%40.4%38.9%

24.7%26.3%

4.7%

9.2%

16.4%24.3%34.3%41.6%43.5%45.3%47.9%

55.3%52.5%

69.8%

27.6%

9.0%6.3%5.1%4.6%4.0%3.3%3.3%5.3%7.6%

0.0%2.6%3.3%4.6%4.3%3.3%2.9%2.0%1.4%

1.8%2.5%

2.3%5.6%6.6%6.7%5.4%5.2%5.4%4.9%4.7%

5.9%3.4%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表53】年齢別雇用形態(女性・2013年)

その他

嘱託

契約社員

派遣社員

アルバイト

パート

正規雇用

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26

年~2010 年の変化のように正社員比率の上昇が大きい時期もありますが、期間を通じて雇

用者比率の上昇に貢献しているのはパートです。

図表 55 は、図表 54 のパート比率要因をさらに年齢別に分解したものです。これをみる

と、ほぼどの年代もパート比率を押し上げる方向に貢献していることが分かります。この

中で、特に貢献度が大きいのは 45~54 歳、55 歳~64 歳の年代であることがみてとれます。

なお、図表 54 においてパート比率に次いでプラスの貢献度の高いアルバイト比率の年齢

別変化要因をみたのが図表 56 です。アルバイトについては 15 歳~24 歳、25 歳~34 歳まで

-1.50%

-1.00%

-0.50%

0.00%

0.50%

1.00%

1.50%

2.00%

2002→2005 2005→2010 2010→2012 2012→2013

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表54】雇用比率変化(男女計)の雇用形態別要因分解

(女性要因)

人口ウェイト要因

その他比率

契約・嘱託社員比率

派遣社員比率

アルバイト比率

パート比率

正社員比率

雇用者比率変化幅

-0.20%

0.00%

0.20%

0.40%

0.60%

0.80%

2002→2005 2005→2010 2010→2012 2012→2013

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表55】パート比率要因の年齢別寄与度(女性)

65歳以上

55~64歳

45~54歳

35~44歳

25~34歳

15~24歳

パート比率要因

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27

の上昇の貢献度が高いことが分かります。図表 56 は図表 55 とグラフの目盛サイズを同じ

にしてあります。図表 55 と図表 56 で棒グラフの縦幅を比較すると、45~54 歳、55 歳~64

歳のパートへの参入の影響度合いがかなり大きいことが分かります。

3-2 女性の労働力率引上げの可能性の検証

これまで、労働力率引き上げの可能性を検討するうえでの前提となる労働市場の動きに

ついてみてきました。これからは、個別の論点について可能性の検証を行っていきます。

まず 初は、女性の労働力率の引上げの可能性についてみてみたいと思います。3-1 で

みてきた点を改めて整理するとすれば、①人口構成要因により全体として労働力率を引き

下げる方向に力がかかっている中にあって、女性の労働力率は年齢別の労働力率が上がる

ことにより横ばいを維持している、②その大きな要因としては女性のパートによる参入が

ある、③年齢的にはほぼすべての年齢で労働力率が高まっていますが、パートは 45 歳~64

歳、アルバイトは 15 歳~34 歳で上昇している、ということになります。

そこで、まずは女性のパートによる参入が増えている要因を確認し、今後もこうした傾

向が持続するのかどうかを検証していきたいと思います。

図表 57 は、パートを採用する企業側の理由(複数回答)をみたものです。これをみると、

5 割の企業が「人件費の割安」を挙げています。これに続いて、「仕事内容が簡単」「忙しい

時間帯に対処」「人が集めやすい」などが挙がっています。一方、定年退職者や中途退職者

の再雇用や正社員の採用や確保が困難であることはパート採用とはあまり関係がないとい

うことも分かります。また、企業規模別にみると、規模の大きい企業ほどこうした理由が

強まっていることがみてとれます。ここからは、仕事の内容が簡単で繁閑の差の大きな仕

事について、割安なパートを用いて対応しようとしている企業の姿がみてとれます。

-0.50%

-0.30%

-0.10%

0.10%

0.30%

0.50%

2002→2005 2005→2010 2010→2012 2012→2013

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表56】アルバイト比率要因の年齢別寄与度(女性)

65歳以上

55~64歳

45~54歳

35~44歳

25~34歳

15~24歳

アルバイト比率要因

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28

図表 58 は、パートとして雇われている女性がどんな職種に就いているか、年齢別に見た

ものです。これをみると、10 代後半から 20 代前半はサービスの割合が高く、30 代から 40

代にかけては事務の割合が高くなります。そして 50 代後半からは徐々に運搬・清掃・包装

の割合が高くなっていることが分かります。ここにも、年代別にニーズが変わる需要に、

パートという形態が柔軟に適応しうる面があることが分かります。

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

(データ)厚生労働省「平成23年パートタイム労働者総合実態調査」

【図表57】企業がパートを採用する理由(2011年)

~複数回答~

全体

従業員1000人以上

従業員300~499人

従業員5~29人

0%

20%

40%

60%

80%

100%

(データ)厚生労働省「平成23年パートタイム総合労働調査」

【図表58】年齢別にみたパートの職種(女性、2011年)

その他

生産工程

運搬・清掃・包装

専門的・技術的

販売

事務

サービス

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29

図表 59 はパートとして働いている女性のパートをする理由(複数回答)です。これをみ

ると、 も大きな理由は「家計の足し」で、このほかにも「学費や娯楽費獲得」(3 位)、「子

供の養育負担減」(4 位)など、経済的な理由の順位が高いのが特徴です。ただ、こうした

中で「生きがい・社会参加」が 2 位となっているのは注目されます。図表 60 は図表 59 の

回答を年齢別にみたものです。1 位の「家計の足し」は 20 歳代後半から 50 歳代前半が高

くなっています。2 位の「生きがい・社会参加」は年齢が上がっていくにつれ割合が高くな

っています。65 歳以上ですと 1 位の「家計の足し」とほぼ同じくらいの割合となっていま

す。また 3 位の「学費や娯楽費獲得」は若い年代が高く年齢が上がるにつれ低下していき

ます。4 位の「子供の養育負担減」は 30 代後半から高まっていき、40 代後半から 50 代前

半がピークとなっています。このように、パートをする理由は、年代に応じて異なってい

るのが特徴であり、言い換えるならば、年代に応じたニーズに合わせてパートは選べると

いう特徴があるといえます。

図表 61 はいろいろな勤務形態の中でパートを選んだ理由についてです。1 位は「都合の

いい時間に働ける」、2 位は「勤務が短い」、3 位が「就業調整が出来る」など、パートの時

間的制約が大きくない点が判断材料になっているようです。図表 62 はこれを年齢別にみた

ものです。1 位の「都合のいい時間に働ける」は若い世代が高く、2 位の「勤務が短い」は

年齢が上がるにつれ高くなる傾向があるようです。4 位の「育児・介護等で正社員で働けな

い」は 20 歳代後半から 30 代にかけて高くなっています。

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

(データ)厚生労働省「平成23年パートタイム総合

実態調査」

【図表59】パートをする理由

(女性、2011年)~複数回答~

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

15~

19歳

20~

24歳

25~

29歳

30~

34歳

35~

39歳

40~

44歳

45~

49歳

50~

54歳

55~

59歳

60~

64歳

65歳

以上

(データ)厚生労働省「平成23年パートタイム総合実態調査」

【図表60】年齢別にみたパートをする理由

(女性、2011年)~複数回答~

家計の足し

生きがい・社会参加

学費や娯楽費獲得

子供の養育負担減

時間が余っている

稼ぎ手として生活を維持

資格・技能の活用

以前の経験の活用

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30

図表 63 は年齢別にみたパート継続希望です。20 歳代から 30 歳代前半にかけて正社員と

しての雇用を希望する割合が高い年代もありますが、多くは正社員にはならずパートのま

までの雇用継続を希望していることが分かります。これは、やはり図表 61 のような理由が

大きいと考えられます。

主婦がパートを選択する理由として、「妻の所得が 103 万円以内であれば夫が配偶者控

除を受けられる」ことが挙げられますが、実際のパートの年収を確認してみたのが図表 64

です。このように、25 歳から 69 歳までの年代はいずれも 103 万円よりも高くなっていま

す。ただこれは、「平均値」でみた場合なので、「分布」で確認したのが図表 65 です。これ

をみると、約 6 割のパートが 103 万円を下回る年収となっていることが確認できます。

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

(データ)厚生労働省「平成23年パートタ

イム総合労働調査」

【図表61】パートを選んだ理由

(女性、2011年)―複数回答―

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

15~

19歳

20~

24歳

25~

29歳

30~

34歳

35~

39歳

40~

44歳

45~

49歳

50~

54歳

55~

59歳

60~

64歳

65歳

以上

(データ)厚生労働省「平成23年パートタイム総合労働調

査」

【図表62】年齢別パートを選んだ理由

(女性、2011年)ー複数回答ー

都合にいい時間に働ける

勤務が短い

就業調整ができる

育児・介護等で正社員で働

けない

正社員としての募集がない

正社員は体力的・精神的に

困難

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

(データ)厚生労働省「平成23年パートタイム総合労働調査」

【図表63】年齢別パート継続希望(女性、2011年)

その他

パートを続けたい

正社員になりたい

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31

こうした女性のパートの割合は配偶関係別にどのようになっているのでしょうか。図表

66、図表 67 は、男女の配偶関係別に見た雇用形態です。男性は、有配偶者は 8 割以上が正

社員で、未婚、死別・離別の場合も 7 割前後が正規雇用となっています。これに対して女

性は、正規雇用は、未婚で 6 割弱、有配偶、死別・離別は 4 割程度となっている一方で、

パートは未婚が 1 割程度であるのに対して、有配偶、死別・離別は正規雇用を上回るパー

トの割合となっています。有配偶者の場合、図表 61 のような理由からパートを選択する割

合が高いと考えられます。なお、死別・離別でパートが高いのは、後述のように死別・離

別は高齢者の割合が高いので、図表 53 において高齢者のパート比率が高いことが反映され

ているものと考えられます。

0万円

20万円

40万円

60万円

80万円

100万円

120万円

140万円

~19

20~

24歳

25~

29歳

30~

34歳

35~

39歳

40~

44歳

45~

49歳

50~

54歳

55~

59歳

60~

64歳

65~

69歳

70歳

58万円

79万円

116万円

120万円

123万円

116万円

120万円

119万円

118万円

114万円

117万円

102万円

(データ)厚生労働省「平成25年賃金構造基本統計調査」

【図表64】女性の短期労働者(≒パートタイ

マー)年収(2013年)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

60万

74万

80万

84万

88万

93万

97万

106万

117万

128万

147万

169万

207万

251万

59.2%

(データ)厚生労働省「平成25年賃金構造基本統計調査」

【図表65】女性の短期労働者(≒パートタ

イマー)年収の累積分布(2013年)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

未婚 有配偶 死別・離別

70.3%83.6%

68.4%

3.6%

3.3%

7.0%

15.1%2.8%

7.9%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表66】配偶関係別雇用形態

(男性・2013年)

その他

嘱託

契約社員

派遣社員

アルバイト

パート

正規雇用

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%

100%

58.8%37.1% 40.0%

11.0% 48.0% 40.8%

16.0%4.7%

5.3%4.2% 2.3% 3.0%7.2% 4.3% 6.4%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表67】配偶関係別雇用形態

(女性・2013年)

その他

嘱託

契約社員

派遣社員

アルバイト

パート

正規雇用

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32

こうした配偶関係別の労働力率の状況についてもう少しみてみましょう。図表 68 は、女

性の婚姻関係比率を年齢別にみたものです。年齢が上がるにつれて未婚の割合が低下する

一方有配偶の割合が高まります。ただ、徐々に死別・離別の割合も高まる傾向が確認でき

ます。図表 69 は、この年齢別の婚姻関係比率の 2000 年~2013 年にかけての変化幅をとっ

たものです。未婚化、晩婚化の進展を反映して、20 歳代から 50 歳代にかけて有配偶比率が

低下し未婚比率が高まっています。一方 60 歳代以上では平均寿命の伸びを反映して死別・

離別比率が低下し、有配偶比率が高くなっています。

図表 70 は婚姻関係別にみた女性の年齢別労働力率です。これをみると、女性全体の労働

力率(赤線)の M 字カーブの「くぼみ」は、20 歳代後半がピークの未婚者の労働力率と

50 歳代前半がピークの有配偶者の労働力率が図表 68 のウェイトで合成された結果形作られ

ていることが分かります。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

15~

19歳

20~

24歳

25~

29歳

30~

34歳

35~

39歳

40~

44歳

45~

49歳

50~

54歳

55~

59歳

60~

64歳

65歳

以上

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表68】女性の年齢別婚姻関係比率

(2013年)

死別・離別

有配偶

未婚

-15%

-10%

-5%

0%

5%

10%

15%

15~

19歳

20~

24歳

25~

29歳

30~

34歳

35~

39歳

40~

44歳

45~

49歳

50~

54歳

55~

59歳

60~

64歳

65歳

以上

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表69】女性の年齢別婚姻関係比率

の変化幅(2000→2013年)

死別・離別

有配偶

未婚

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表70】婚姻関係別に見た女性の年齢別労働力率(2013年)

女性計

未婚者

有配偶者

死別・離別者

Page 38: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

33

図表 71~73 は、女性の年齢別労働力率の変化を婚姻関係別にみたものです。未婚者は 40

歳代から 50 歳代にかけての労働力率の上昇が目立っています。有配偶者は 20 歳代後半か

ら 50 歳代にかけてまんべんなく比率が上昇しています。死別・離別者は 20 歳代後半から

50 歳代にかけて上昇しています。

こうした図表71~73の労働力率の変化が女性全体の労働力率の変化にどのように貢献し

たのかを寄与度分解したのが図表 74 です。寄与度変化は基本的には図表 71~73 の変化に図

表 68 での年代別のウェイトが加味される形となります(このほか図表 29~31 で例示した人

口の年齢構成変化要因が加わります)。図表 68 のウェイトの高い部分での変化が大きいと

寄与度も大きくなります。図表 74 をみると、2000 年以降の女性の労働力率の上昇には、

有配偶者の労働力率の上昇が貢献してきたことが分かります。これは、有配偶者の割合が

高い 30 歳代から 50 歳代にかけて有配偶者の労働力率が上昇していることが寄与している

と考えられます。

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

15~

19歳

20~

24歳

25~

29歳

30~

34歳

35~

39歳

40~

44歳

45~

49歳

50~

54歳

55~

59歳

60~

64歳

65歳

以上

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表71】女性の年齢別労働力

率の変化:未婚者

2000年

2005年

2013年

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

15~

19歳

20~

24歳

25~

29歳

30~

34歳

35~

39歳

40~

44歳

45~

49歳

50~

54歳

55~

59歳

60~

64歳

65歳

以上

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表72】女性の年齢別労働力

率の変化:有配偶者

2000年

2005年

2013年

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

15~

19歳

20~

24歳

25~

29歳

30~

34歳

35~

39歳

40~

44歳

45~

49歳

50~

54歳

55~

59歳

60~

64歳

65歳

以上

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表73】女性の年齢別労働

力率の変化:死別・離別者

2000年

2005年

2013年

-2.00%

-1.50%

-1.00%

-0.50%

0.00%

0.50%

1.00%

1.50%

2.00%

2000→2005 2005→2010 2010→2012 2012→2013

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表74】女性の労働力率変化の婚姻関係別寄与度分解

人口ウェイト変化要因

死別・離別者の労働力率変化要因

有配偶者の労働力率変化要因

未婚者の労働力率変化要因

労働力率変化幅

Page 39: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

34

図表 75~77 は、図表 74 の婚姻関係別の寄与度をさらに年齢別に寄与度分解したもので

す。これをみると、図表 74 で女性の労働力率引き上げへの貢献度の高い有配偶者は、年齢

別にみると、30 歳代、50 歳代、60 歳代前半の寄与度が高いことが分かります。

次に、育児と女性の労働市場への参画との関係を確認してみましょう。図表 78 は、年齢

別に見た女性の就業状況です。有業者と有業者でない方(=無業者)は就業希望がある方

とない方に分けてあります。無業者のうち就業希望者は、失業者として実際に求職活動を

されている方のほか、求職活動はしていないが就業希望を持っている方も含まれます。こ

れをみると 20 歳代から 40 歳代では 2 割近い方が無業者だが就業を希望していることが分

かります。このあたりの年代は、図表 24 において、2040 年にかけて労働力率を 15%ポイ

ント引き上げようとしている年代です。現時点で 2 割近くの無業者が就業希望をしている

ことは、潜在的には 15%ポイントの労働力率引き上げは可能であることを示唆しています。

-1.00%

-0.50%

0.00%

0.50%

1.00%

1.50%

2.00%

2.50%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表75】女性の労働力率変化要

因の年齢別分解:未婚者

65歳以上60~64歳55~59歳50~54歳45~49歳40~44歳35~39歳30~34歳25~29歳20~24歳15~19歳未婚者計

-1.00%

-0.50%

0.00%

0.50%

1.00%

1.50%

2.00%

2.50%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表76】女性の労働力率変化要因

の年齢別分解:有配偶者

65歳以上 60~64歳55~59歳 50~54歳45~49歳 40~44歳35~39歳 30~34歳25~29歳 20~24歳15~19歳 有配偶者計

-1.00%

-0.50%

0.00%

0.50%

1.00%

1.50%

2.00%

2.50%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表77】女性の労働力率変化

要因の年齢別分解:死別・離別者

65歳以上60~64歳55~59歳50~54歳45~49歳40~44歳35~39歳30~34歳25~29歳20~24歳15~19歳死別離別者計

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

15~

19歳

20~

24

25~

29

30~

34

35~

39

40~

44

45~

49

50~

54

55~

59

60~

64

65~

69

70~

74

75~

79

80~

84

85歳

以上

14%

14%16%

19%20%18%14%11%11%

11%

9%

7%4%

2% 1%

(データ)総務省統計局「平成24年就業構造基本調査」

【図表78】年齢別にみた就業希望者割合(女性、2012年)

無業者のうち非就業希望者

無業者のうち就業希望者

有業者

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35

なお、図表 79 は、男性についてみたものです。このように、男性の場合には、20 歳代

から 50 歳代にかけては無業者のうち就業希望のある方はかなり限られており、もともと労

働力率が高いこともあって、この年代に今以上の労働力率引き上げを求めるのは難しいと

考えられます(3-3 での検証の対象となる 60 歳代は労働力率引き上げの余地があります)。

図表 80 は、年齢別、就業状況別にみた育児中の女性の割合です。このように、有業者で

育児中の方の割合はピークの 30 歳代でも 3 割強であるのに対し、無業者は、就業希望の有

無にかかわらず、ピークは 7 割前後の水準となっています。これは、出産を機に無業者と

なっている方が多いためと考えられます。

それを確認したのが、図表 81、82 です。図表 81 は、結婚に伴う就業の変化を結婚時期

別にみたものです。これをみると、結婚を機に退職する割合は低下してきており、就業を

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

15~

19歳

20~

24

25~

29

30~

34

35~

39

40~

44

45~

49

50~

54

55~

59

60~

64

65~

69

70~

74

75~

79

80~

84

85歳

以上

13%

15%

8% 6% 5% 5% 4% 5% 6%

10%

12%

11%

8%3%

2%

(データ)総務省統計局「平成24年就業構造基本調査」

【図表79】年齢別にみた就業希望者割合(男性、2012年)

無業者のうち非就業希望者

無業者のうち就業希望者

有業者

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

15~24歳 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50歳以上

(データ)総務省統計局「平成24年就業構造基本調査」

【図表80】年齢別、就業状況別育児中の割合(女性、2012年)

有業者

無業者うち就業希望者

無業者うち非就業希望者

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36

継続する割合が高まってきていることが分かります。図表 82 は、第1子出産に伴う就業の

変化を結婚時期別にみたものです。これをみると、出産を機に退職する割合が高まってき

ているのが分かります。妊娠前から無職の割合が下がってきているのは、図表 81 で結婚を

機に退職する割合が低下していることと平仄が一致しているところです。ただ、結婚を機

に退職する割合が低下したにもかかわらず、出産を機に退職する割合が高まっているのは、

労働力を確保するという意味ではもったいないことだといえます。図表 82 の就業継続の割

合が徐々に増えてきてはいますが、出産退職の割合が減ることにより就業継続の割合が一

段と高くなることが求められます。特に、育休利用による就業継続が高まってくることが

期待されます。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

56.6% 56.9% 58.3% 62.4% 61.0%

37.3% 34.5% 31.2% 25.6% 25.6%

(データ)国立社会保障・人口問題研究所「結婚と出産に関する全国調査(夫婦編)」

【図表81】結婚年別の妻の結婚前後の就業変化

不詳

結婚前から無職

結婚後就業

結婚退職

就業継続

0%

20%

40%

60%

80%

100%

5.7% 8.1% 11.2% 14.8% 17.1%18.3% 16.3% 13.0% 11.9% 9.7%

37.4% 37.7% 39.3%40.6% 43.9%

35.5% 34.6% 32.8% 28.5% 24.1%

(データ)国立社会保障・人口問題研究所「結婚と出産に関する全国調査(夫婦編)」

【図表82】結婚年別の妻の第1子出産前後の就業変化

不詳

妊娠前から無職

出産退職

就業継続(育休利用せず)

就業継続(育休利用)

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37

(女性の労働力率引上げの可能性検証のまとめ)

以上、女性の労働力率引上げの可能性について検証して来ましたが、これまでの検証結

果をまとめると次のようになります。

① 女性の労働力率引き上げの原動力となっているパートについては、採用する側の企

業も、採用される側の女性も、パートでの雇用形態を望んでいる割合が高く、今後

も、パートでの労働力率引き上げの余地は高いと考えられます。

② これまでの女性の労働力率引き上げは、いったん労働市場から退出した有配偶者の

労働参加により実現してきており、有配偶者の就業環境整備は重要となります。

③ 無業者のうち就業を希望している方の割合を見る限り、現時点でも 20 歳代~50 歳

代にかけて 15%程度労働力率を引き上げることは可能と考えられます。ただ、出産

を機に退職する方の割合が高いことを考えると、育児の負担というのが女性の労働

参入にあたってやはり大きな障害になっていると考えられます。したがって、女性

の労働力率を引き上げるに際しては、育休制度の利用のしやすさや保育施設の整備

等により出産・育児の際の退職を極力減らすことが重要といえます。

3-3 高齢者の労働力率引き上げの可能性の検証

次に、女性と同様に労働力率引上げの重要性の高い高齢者についてみていくことにしま

す。まず、高齢者が労働市場から退出する要因となっている定年についてみていくことと

します。図表 83 は、定年を定めている企業割合です。従来から規模の大きな企業を中心に

定年を定めている企業割合は多かったのですが、 近の傾向としては、定年を定めない企

業割合が少し増えてきていることが分かります。

図表 84 は実際に高齢者を雇用している企業の割合を示しています。全規模で 60 歳以上

を雇用している企業は約 6割になります。また、約 1/3 の企業は 65 歳以上も雇用していま

2008年

2004年

0%

20%

40%

60%

80%

100%73.5% 99.8%

97.9%

69.6%

74.4%

100.0%99.0%

70.6%

(データ)厚生労働省「高年齢者雇用実態調査」

【図表83】定年を定めている企業割合

Page 43: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

38

す。企業規模別にみると、定年を定めている企業割合が低い規模の小さい企業の方が、高

齢者の雇用割合が高くなっています。

図表 85 は、図表 83 で定年を定めている企業における定年の設定方法の割合です。2004

年に比べ 2008 年は、一律に定年を設定している企業の割合が低下し、職種ごとに定年を設

定する企業の割合が増えてきています。また、図表 86 は、一律に定年を定めている企業の

定年年齢です。これをみると、現状なお 60 歳を定年とする企業がほとんどですが、2004 年

に比べ 2008 年では、60 歳を定年とする企業割合が規模の小さい企業を中心に減り、65 歳

以上を定年とする企業の割合が規模の小さい企業を中心に増えていることが分かります。

これらの動きは、団塊世代の退職や年金の支給開始年齢の引上げを控えて、企業側も従

来以上に柔軟な雇用体制で対応しようとしていることがうかがわれます。

76.5

59.4

33.1

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

55歳以上を雇用 60歳以上を雇用 65歳以上を雇用

(データ)厚生労働省「平成20年高年齢者雇用実態調査」

【図表84】高齢者を雇用している企業割合(2008年)

全規模

5,000人以上

100~299人

5~29人

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

(データ)厚生労働省「高年齢者雇用実態調査」

【図表85】定年の設定方法

一律の定年

(2008年)

一律の定年

(2004年)

職種ごとの定

年(2008年)

職種ごとの定

年(2004年)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

(データ)厚生労働省「高年齢者雇用実態調査」

【図表86】定年年齢~一律に定年を定めている企業に占める割合~

60歳(2008

年)

60歳(2004

年)

61~64歳

(2008年)

61歳~64歳

(2004年)

65歳以上

(2008年)

65歳以上

(2004年)

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39

また、図表 87 は定年到来者を継続雇用している割合です。このように、7割の企業が定

年到来後も60~64歳の継続雇用を行っています。ただ、現状では65~69歳の継続雇用は6%

弱、70 歳以上の継続雇用はほとんどないのが実情です。図表 23 で掲げたように、70 歳ま

での労働力率を高めるためには、今後は 65~69 歳の継続雇用の割合も高める必要がありま

す。

図表 88 は継続雇用制度による継続雇用を希望しなかった定年到達者がいる事業所の割

合です。全規模で 3 割近い企業で継続雇用を希望しない定年到達者がいることになってい

ます。図表 89 はその理由(複数回答)です。 も多いのが本人に定年退職後に働く意思が

ないという結果になっています。このことは、高齢者の労働力率を上げていくためには、

定年到達者自身が継続雇用を希望するようにしていく必要があることを示しています。

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%

100%

69.8 60.2

74.0 76.9

5.7 5.8

5.3 13.7

(データ)厚生労働省「平成20年高年齢者雇用実態調査」

【図表87】企業規模別にみた定年到達者の継続雇用を

行っている割合(2008年)

70歳以上

65~69歳

60~64歳

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

(データ)厚生労働省「平成20年高年齢者雇用実態調査」

【図表88】定年到達者が継続雇用制度による雇用

を希望しなかった労働者のある事業所割合

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

(データ)厚生労働省「平成20年高年齢者雇用実態調査」

【図表89】継続雇用を希望しなかった理由別事

業所割合(2008年)~複数回答~

全規模

5,000人以上

1,000~4,999人

100~299人

5~29人

Page 45: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

40

高齢者の働く動機、働かない動機とはどんなものなのでしょうか。図表 90 は高齢者が仕

事をしている理由(複数回答)です。年齢が低いほど「生活費の確保」や「将来の蓄え」

が高く、年齢の高い高齢者は「生きがい」とか「健康維持」といった動機がうかがえます。

また、図表 91 で仕事を選ぶにあたっての重視する条件をみると、年齢が低いほど「収入」

や「勤務時間」などの割合が高く、年齢が高くなると「体力面」が重視される傾向があり

ます。

図表 92 は、高齢者がどの年齢まで仕事を続けたいかを調べたものです。自分の年代の 5

歳上の年代より長く仕事を続けようと思っている割合は、55~59 歳で約 8 割、60~64 歳、

65~69 歳で約 5割ですが、それより年齢が上がると、「働けるうちはいつでも」と思う方が

増える結果、70~74 歳だと 6 割強、75~79 歳、80 歳以上だと 8 割と逆に上がってきます。

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

(データ)内閣府「平成23年度高齢者の経済生活に関する意識調査」

【図表90】仕事をしている理由~複数(3つ)回答~

80以上

75~79

70~74

65~69

60~64

55~59

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

(データ)内閣府「平成23年度高齢者経済生活に関する意識調査」

【図表91】仕事を選ぶにあたって重視する条件

~複数回答~

80以上

75~79

70~74

65~69

60~64

55~59

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

40.6

8.921.8

2.53.8

11.6

1.40.3

1.0

11.3

22.4 25.3

40.753.8

82.180.0

(データ)内閣府「平成23年度高齢者の経済生活に関する意識調査」

【図表92】仕事を続けたい年齢

わからない

働けるうちはいつまでも

76歳 以上

75歳ぐらいまで

70歳ぐらいまで

65歳ぐらいまで

60歳ぐらいまで

Page 46: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

41

図表 93 は、仕事をしていない方の理由(複数回答)です。年齢が低いと、「家でするこ

とがある」「仕事以外に時間を使う」「年齢制限」「条件が合わない」との理由が高いですが、

年齢が高くなるにつれ「体力」「年齢制限」が理由となっています。高齢者の労働力率引上

げの観点でみると、雇う側の年齢制限の緩和が求められるとともに仕事以外をやりたいと

思っている方々に仕事を続けようとの意識を持ってもらうことも必要だと考えられます。

次に定年延長について労使の意識をみてみましょう。図表 94 は高齢者が定年を 65 歳に

延長する際に会社に要望することです。「賃金を含めた労働条件が変わらないこと」を希望

する割合が 5 割超と多いですが、一方で賃金が下がっても負担が軽減されることを望む声

も多いのが特徴です。

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

(データ)内閣府「平成23年度高齢者経済生活に関する意識調査」

【図表93】仕事をしていない理由~複数(3つ)回答~

80以上

75~79

70~74

65~69

60~64

55~59

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

53%

32% 27%

10%2%

(データ)労働政策研究・研修機構「高年齢者の継続雇用、就業実態に関する調査(2012年)」

【図表94】定年を65歳に延長する際に会社に望むこと(対象:55-59歳、複数回答)

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42

図表 95 は、定年時と比較した継続雇用後の賃金水準についてのアンケート結果です。8

割以上の方の賃金が下がったとの結果となっており、「賃下げをしない」との要望とは裏腹

に、実際には賃金は下がっているのが実情です。

このような継続雇用後の賃金に対する満足度をみたのが図表 96 です。このように、「あ

まり満足していない」「全く満足していない」を合計すると 6割強の方々が賃金に対しては

満足していないかたちとなっています。ただ、図表 97 のように、総合的な満足度をみると、

満足している割合と満足していない割合がほぼ拮抗しており、継続雇用自体については肯

定的に受け止めている方も多いとみられます。

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

上がった 下がった 変わらない

1%

83%

10%

(データ)労働政策研究・研修機構「高年齢者の継続雇用、就業実態に関する調

査(2012年)」

【図表95】定年時と比較した継続雇用後の賃金水準

(対象:60-64歳)

0%5%

10%15%20%25%30%35%40%

3%

26%36%

25%

(データ)労働政策研究・研修機構「高年齢者の継続

雇用、就業実態に関する調査(2012年)」

【図表96】継続雇用後の賃金の満足度

(対象:60-64歳)

0%5%

10%15%20%25%30%35%40%45%

3%

41%33%

10%

(データ)労働政策研究・研修機構「高年齢者の継続

雇用、就業実態に関する調査(2012年)」

【図表97】継続雇用後の総合的満足度

(対象:60-64歳)

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43

次に企業側の高齢者雇用に対する意識をみてみましょう。図表 98 は、高齢者雇用のため

に事業者が採っている特別な措置(複数回答)についてです。配置や仕事量の調整、勤務

時間の弾力化などに取り組んでいるようです。

図表 99 は、企業が雇用延長にどのような表をしているかというものです。このように、

専門能力の活用や定着度、仕事の成果、管理能力・指導力などいろいろな分野で効果があ

ったと判断していることが分かります。

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

(データ)厚生労働省「平成20年高年齢者雇用実態調査」

【図表98】高齢者雇用のために採っている特別な措置の事

業所割合(2008年)~複数回答~

全規模

5,000人以上

100~299人

5~29人

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

87% 86%73% 68% 67% 62% 61% 61% 60%

(データ)高齢・障害・求職者雇用支援機構「60歳以降の人事管理と人材活用(2013年)」

【図表99】雇用延長の企業側の評価

~「効果があった」「ある程度効果があった」とする企業割合~

Page 49: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

44

次に、体力的にみて高齢者の雇用延長が可能であるかについてみていきたいと思います。

図表 100、101 は、男女別に見た年齢別平均余命の推移です。このように、男女とも 1960

年に比べるとかなり余命が延びてきていることが分かります。

図表 102、103 は、図表 100、101 の平均余命の変化幅をみてみたものです。労働力率を

引上げの対象となっている 65 歳、70 歳をみると 1960 年対比では男性で 6、7年、女性で 9、

10 年、1980 年対比でも男性で 4年、女性で 6年程度平均余命が延びています。余命でみた

労働力率引上げのの余地はあると判断できます。

22.39

31.70

18.45

27.23

14.84

22.93

11.62

18.89

8.85

15.11

4.91

8.48

0年

5年

10年

15年

20年

25年

30年

35年

40年

(データ)厚生労働省「完全生命表」「簡易生命表」

【図表100】年齢別平均余命の推移(男性)

50歳

55歳

60歳

65歳

70歳

80歳

26.03

37.59

21.83

32.92

17.83

28.33

14.10

23.82

10.78

19.45

8.01

15.27

5.88

11.43

0年

5年

10年

15年

20年

25年

30年

35年

40年

(データ)厚生労働省「完全生命表」「簡易生命表」

【図表101】年齢別平均余命の推移(女性)

50歳

55歳

60歳

65歳

70歳

75歳

80歳

9.31 8.78

8.09

7.27

6.26

4.97

3.57

5.13 4.88 4.62 4.33

3.93 3.23

2.40 1.79 1.65 1.49 1.35 1.14

0.82 0.52

0年

2年

4年

6年

8年

10年

12年

50歳 55歳 60歳 65歳 70歳 75歳 80歳

(データ)厚生労働省「完全生命表」「簡易生命表」

【図表102】年齢別平均余命の変化幅(男性)

1960→2012

1980→2012

2000→2012

11.56 11.09

10.50

9.72

8.67

7.26

5.55

6.75 6.62 6.44 6.14

5.72 5.03

4.10

1.58 1.52 1.48 1.40 1.26 1.08 0.83

0年

2年

4年

6年

8年

10年

12年

50歳 55歳 60歳 65歳 70歳 75歳 80歳

(データ)厚生労働省「完全生命表」「簡易生命表」

【図表103】年齢別平均余命の変化幅(女性)

1960→2012

1980→2012

2000→2012

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45

図表 104、105 は男女の年齢別の体力を 1999 年と 2012 年で比較したものです。テスト項

目が異なるので 64 歳以下と 65 歳以上ではグラフがつながっていません。30 歳代、40 歳代

では体力が低下している年代も見られますが、年齢が高い部分は体力が向上していること

がみてとれます。

図表 106 は、図表 104、105 での 1999 年から 2012 年への改善率(実線)、2012 年時点で

の世代の体力が 1999 年時点での 5歳下の年代と比べてどの程度か(点線)を示したもので

す。実線をみると、年齢が高くなるにつれ 1999 年対比で体力が向上していることがみてと

れます。また、点線をみると 70 歳代では 1999 年の 5 歳下の年代と同等程度かそれを上回

る体力となっていることが分かります。

ただし、一点だけ留意点があります。図表 107 は、年代別にみた疾病なしの人の割合で

す。40 代後半から傾向的に低下していく姿がみてとれます。図表 108 は、図表 107 の疾病

20

25

30

35

40

45

(点)

(データ)文部科学省「体力・運動能力調査」

【図表104】年齢別体力(男性)

男性(2012年、64歳以下)

男性(2012年、65歳以上)

男性(1999年、64歳以下)

男性(1999年、65歳以上)

20

25

30

35

40

45

(点)

(データ)文部科学省「体力・運動能力調査」

【図表105】年齢別体力(女性)

女性(2012年、64歳以下)

女性(2012年、65歳以上)

女性(1999年、64歳以下)

女性(1999年、65歳以上)

95

100

105

110

115

120

125

(1999=100)

(データ)文部科学省「体力・運動能力調査」

【図表106】年齢別体力の改善状況

1999→2012改善率(男性)

1999→2012五歳若手への追い

付き率(男性)

1999→2012改善率(女性)

1999→2012五歳若手への追い

付き率(女性)

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46

なしの割合を基に「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研

究班」が算定した健康寿命(=日常生活に制限のない期間)です。これによると、男性の

場合、平均寿命 79.6 年のうち健康寿命は 70.4 年になります。また、女性は寿命 86.4 年に

対して健康寿命は 73.6 年になります。高齢者の労働力率を高めるためにリタイア時期を 70

歳にまで延ばしたとすると、男性の場合には健康寿命とほぼ一致することになります。こ

のことは、「健康でいられる間は働くことが出来る」とも捉えることも出来ますが、価値観

が多様化する中で、「健康でいられる間に自分のやりたいことをしたい」と考える人もある

と思われます。したがって、「一律に 70 歳まで働く」という仕組みではなく、早めにリタ

イアも出来るといったオプションも可能な枠組み作りが必要と考えられます。

(高齢者の労働力率引き上げの可能性検証のまとめ)

以上高齢者の労働力引上げの可能性について検証して来ましたが、これまでの検証結果

をまとめると以下のようになります。

① 高齢者の雇用延長については、企業側は、年金の支給時期の後ずらしに合わせてこ

れまでも取り組まれてきており、年金の支給時期を 70 歳にまで後ずらしにするとす

れば、それに合わせて雇用の延長もなされる可能性は高いと考えられます。

② 働く側の高齢者の雇用に対する意識についても、経済的な理由で雇用を延長する方

が多い点を考慮すると、年金の支給時期を後ずらしにすることにより、70 歳まで働

こうという方も増えてくるものと考えられます。

③ また、体力面でも、近年の平均余命の延びや高齢者の体力の改善からすると、70 歳

までの雇用延長は可能と考えられます。

④ ただし、健康寿命との観点では、価値観の多様化に合わせて、70 歳まで働かないと

いう選択肢(70 歳まで働かなくとも年金は受給できるが、年金の支給額が減額とな

る等)も準備する必要があるかと考えられます。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0歳

1~

5~

10~

14

15~

19

20~

24

25~

29

30~

34

35~

39

40~

44

45~

49

50~

54

55~

59

60~

64

65~

69

70~

74

75~

79

80歳

以上

88%86%82%84%87%86%

82%80%78%75%70%

62%55%

45%

33%

24%18%15%

(データ)厚生労働省「国民生活基礎調査」

【図表107】年代別にみた「疾病なし」の割

合(2012年)

70.4年 73.6年

9.2年12.8年

79.6年86.4年

0年

10年

20年

30年

40年

50年

60年

70年

80年

90年

男性 女性(データ)「健康寿命における将来予測と生活習慣

病対策の費用対効果に関する研究班」

【図表108】平均寿命と健康寿命

(2010年)

日常生活に

制限のある

期間の平均

(年)日常生活に

制限のない

期間の平均

(年)平均寿命

(年)

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47

3-4 若年不就業者の就業の可能性の検討

次に、若年不就労者についてみていきたいと思います。不就労者が労働市場に参入する

ことは、今後の労働力不足への対応としての意味合いもありますが、若年者の自立、社会

の安定の観点からも若年不就労者の問題は考える必要があります。

まず、不就労者の状況についてみてみたいと思います。図表 109 は、15 歳以上人口に占

める就業希望のある無業者(男女計)の推移をみたものです。長期的にみて 1 割程度が就

業希望のある無業者であることが分かります。

図表 110 は、2012 年時点の年齢別にみた就業希望のある無業者の割合です。70 歳代前半

にかけてだいたい 1割程度の割合となっていますが、10 歳代後半から 30 代にかけて、やや

高めとなっていることがみてとれます。

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

9% 8% 7% 8%10%11%11%11%12%12%11%11% 9% 11%12% 9% 10%

(データ)総務省「平成24年就業構造基本調査」

【図表109】15歳以上人口に占める就業希望のある無業者(男女計)

就業希望のない無業者

就業希望のある無業者

自営業等

雇用者

0%

20%

40%

60%

80%

100%

15~19歳

20~24

25~29

30~34

35~39

40~44

45~49

50~54

55~59

60~64

65~69

70~74

75~79

80~84

85歳以上

14%

15%

12%12%12%11% 9% 8%8%

10%

11%

9%

6%2%

1%

(データ)総務省統計局「平成24年就業構造基本調査」

【図表110】年齢別にみた無業者のうち就業希望者割合

(男女計、2012年)

非就業希望者

就業希望者

有業者

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48

図表 111 は、就業希望のある無業者の就業希望理由を年齢別にみたものです。ほぼどの

年代も収入が必要という理由が多いですが、15~24 歳では「社会へ出たい」とか「知識技

能を生かしたい」との理由も高めです。なお本題からはそれますが、高齢者になるほど「健

康維持」のための就業希望が高いのも特徴です。

図表 112 は就業希望のない無業者の就業を希望しない理由を年齢別にみたものです。15

~24 歳、25~34 歳は通学、出産・育児、家事の割合が高いことが分かります。

ただ、図表 112 だと、男女の違いが分からないので、図表 113、114 では男女別に就業希

望のない無業者の就業を希望しない理由をみてみました。男性は、通学と病気・けが以外

では 25~34 歳、35 歳~44 歳で「仕事をする自信なし」の割合が比較的高いことが分かり

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

(データ)総務省「平成24年就業構造基本調査」

【図表111】就業希望の無業者の年齢別希望理由(2012年、男女計)

その他

健康維持

時間に余裕

社会に出たい

知識技能生かしたい

収入が必要

学校卒業

失業

0%

20%

40%

60%

80%

100%

(データ)総務省「平成24年就業構造基本調査」

【図表112】就業希望のない無業者の年齢別希望しない理由

(2012年、男女計)

理由なし

その他

仕事をする自信なし

ボランティア活動

資格取得等のための勉強

高齢

病気・けが

通学

家事

介護・看護

出産・育児

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ます。女性では、通学、出産・育児、家事、病気けが、介護・看護が高いですが、「仕事を

する自信なし」の割合は、男性よりも年齢の高い 45~54 歳、55~64 歳でやや多くなってい

ます。

図表 115 は、失業率の年齢構成別推移をみたものです。若年者の失業状況との観点でみ

ると、15~34 歳の失業者の割合が高いことが分かります。

図表 116 は、年齢別にみた失業率です。図表 115 でもみたように、やはり 15~24 歳、25

~34 歳の失業率が高めとなっていることが確認できます。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

(データ)総務省「平成24年就業構造基本調査」

【図表113】就業希望のない無業者の年齢別希

望しない理由(2012年、男性)

理由なし

その他

仕事をする自信なし

ボランティア活動

資格取得等のための勉強

高齢

病気・けが

通学

家事

介護・看護

出産・育児

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%

100%

(データ)総務省「平成24年就業構造基本調査」

【図表114】就業希望のない無業者の年齢別

希望しない理由(2012年、女性)

理由なし

その他

仕事をする自信なし

ボランティア活動

資格取得等のための勉強

高齢

病気・けが

通学

家事

介護・看護

出産・育児

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表115】失業率の年齢構成別推移(男女計)

65歳以上

55~64歳

45~54歳

35~44歳

25~34歳

15~24歳

失業率

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50

図表 117 は、年齢別にみた失業率の理由別内訳です。若年者の失業率が高いのは、学卒

での未就職が多いことのほか、自発的失業の割合が高いことが分かります。

このように若年者の自発的失業が多い点について、新規学卒者の離職状況からみたのが

図表 118~120 です。高卒では、過去は 3年間で 5割近い離職者があり 近でも 4割近い離

職者があることが分かります。短卒等でも 4 割近い離職者となっているほか、大卒でも 3

割が 3 年間で離職しており、こうしたことが若年者の失業率を高くしている要因となって

いることが分かります。

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表116】年齢別失業率の推移

全世代失業率

15~24歳

25~34歳

35~44歳

45~54歳

55~64歳

65歳以上

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

7%

8%

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表117】年齢別失業率の理由別内訳(2013年)

その他

その他の新たな求職

収入が必要となったため

学卒未就職

自発的失業

非自発的失業(勤め先等の都合)

非自発的失業(定年・雇用契約

満了)

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51

これまでは、若年労働者の離職全般についてみてきましたが、次からはニートの問題に

絞ってみていきたいと思います。ニート(Not in Education, Employment or Training, NEET)

は、日本では、若年無業者のことをさします。若年無業者とは、厚生労働省で「15~34 歳

の非労働力人口のうち、通学、家事を行っていない者」と定義しています。

図表 121 は、2012 年の我が国の就業構造を示しています。2012 年時点で 15~34 歳の人

口は 2,711 万人ですが、そのうち有業者は約 6 割の 1,704 万人。無業者は約 4 割の 1,008

万人です。無業者のうち家事も通学もしていない人は約 5%の 132 万人となっています。ニ

ートは、この家事も通学もしていない人のうち就業を希望していない人(1.2%、33 万人)

と就業を希望しているが実際の求職活動をしていない人(1.1%、30 万人)を合計した 2.3%、

63 万人をさします。63 万人というニートの規模は、15 歳以上人口の 0.6%ですので、ニー

トが労働市場に参加しても、労働力率の引上げへの寄与度はさほど大きなものではありま

せん。したがって、ニートの問題は、労働需給の問題というよりは、若い世代の自立の観

点の方がより大きいと考えます。

%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

96年卒

96年卒

00年卒

02年卒

04年卒

06年卒

08年卒

10年卒

12年卒

(データ)厚生労働省「新規学

卒者の離職状況」

【図表118】新規学卒者

の離職状況(高卒)

3年目

2年目

1年目

3年目までの累計%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

96年卒

96年卒

00年卒

02年卒

04年卒

06年卒

08年卒

10年卒

12年卒

(データ)厚生労働省「新規学

卒者の離職状況」

【図表119】新規学卒者

の離職状況(短卒等)

3年目2年目1年目3年目までの累計

%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

96年卒

96年卒

00年卒

02年卒

04年卒

06年卒

08年卒

10年卒

12年卒

(データ)厚生労働省「新規学

卒者の離職状況」

【図表120】新規学卒者

の離職状況(大卒)

3年目2年目1年目3年目までの累計

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52

【図表 121】

図表 122 は、ニート人口の推移をみたものです。ニート人口は、2005 年以降 60 万人前

後でさほど増加はしていません。ニート比率も 2%強の水準で推移しています。

2012年の若年者の就業構造

有業者

1,704万人

(62.8%) 家事をしている者

15~34歳人口 206万人

2,711万人 (7.6%)

(100.0%)

無業者 通学している者

1,008万人 669万人

(37.2%) (24.7%)

その他

132万人

(4.9%)

※15歳以上人口の0.6%

(データ)総務省統計局「平成24年就業構造基本調査」 (2.3%)

求職者

非求職者

30万人

(3.7%)

就業希望者

99万人

非就業希望者

33万人

(1.2%)

69万人

(1.1%)

(2.6%)

ニート

63万人※

1.3%

2.0%2.0%

2.3%2.2%

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

2.0%

2.5%

3.0%

0

10

20

30

40

50

60

70

2000 2005 2010 2012 2013

(ニート比率)(万人)

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表122】ニート人口の推移(男女計)

30~34歳

25~29歳

20~24歳

15~19歳

ニート比率(右目盛)

Page 58: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

53

図表 123 と 124 はニート人口の推移を男女別にみたものです。水準的には男性が多いこ

とが分かります。

図表 125 は、2012 年時点での年代別にみた若年者の就業構造です。棒グラフのうちの上

の 2 つがニートの対象となっている部分です。比率的にはかなり低いことがこのグラフか

らみても分かります。この中で、ニート比率が高いのは、25~29 歳です。

1.6%

2.5%2.6%

2.9%

2.8%

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

2.0%

2.5%

3.0%

0万人

5万人

10万人

15万人

20万人

25万人

30万人

35万人

40万人

45万人

2000 2005 2010 2012 2013

(ニート比率)

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表123】ニート人口の推移(男性)

30~34歳

25~29歳

20~24歳

15~19歳

ニート比率

(右目盛) 0.9%

1.4%

1.6%1.7%

1.5%

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

2.0%

2.5%

3.0%

0万人

5万人

10万人

15万人

20万人

25万人

30万人

35万人

40万人

45万人

2000 2005 2010 2012 2013

(ニート比率)

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表124】ニート人口の推移(女性)

30~34歳

25~29歳

20~24歳

15~19歳

ニート比率

(右目盛)

2.3%

1.4%

2.5%

3.0%

2.3%

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

2.0%

2.5%

3.0%

3.5%

4.0%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

合計 15~19歳 20~24歳 25~29歳 30~34歳

(ニート比率)

(データ)総務省統計局「平成24年就業構造基本調査」

【図表125】若年者の就業構造(2012年・男女計)

②無業者・非就業希望者

①無業者・就業希望・非

求職者

無業者・就業希望・求職

無業者・通学

無業者・家事

有業者

ニート(①+②)(右目

盛)

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54

図表 126 は、ニートの家庭の暮らし向きについてのアンケート結果です。「苦しいほう」

との割合は 4 割程度となっています。ただ、ニート期間が長くなるにつれ、「苦しいほう」

との回答比率が上昇する傾向がうかがわれます。

図表 127 は、年齢別にみたニート期間です。全体としては 5 割がニート歴 1 年以下とい

うことで、ニートが固定化はしていないようです。ただ、年齢別にみると、年齢が高まる

につれニート歴 5 年超の割合が高くなる傾向があるようです。

14.2%

46.4%

39.4%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

余裕があるほう ふつう 苦しいほう

(データ)財団法人 社会経済生産性本部「ニートの状態にある若年者の実

態及び支援策に関する調査研究報告書」(厚生労働省委託、2007年)

【図表126】ニート期間別にみた家庭の暮らし向き

合計

ニート歴1年以下

ニート歴1年~2年以下

ニート歴2年~3年以下

ニート歴3年~5年以下

ニート歴5年超

51.7%

16.5%9.6% 7.8%

14.4%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

(データ)財団法人 社会経済生産性本部「ニートの状態にある若年者の実態および支援策に関する調

査研究報告書」(厚生労働省委託、2007年)

【図表127】年齢別に見たニートの期間

合計

19歳以下

20~24歳

25~29歳

30~34歳

35歳以上

Page 60: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

55

図表 128 は、ニートのこれまでの生活経験を示しています。「いじめ経験」「引きこもり

経験」「心療内科での治療経験」が 5 割前後であるほか、「職場での人間関係トラブル経験」

や「不登校経験」も 4 割前後の高い割合となっています。傾向として、対人関係の構築が

難しい人がニートになっている傾向がみてとれます。

図表 129 は、ニートがどの程度就労経験があるかをみたものです。ニートのうち 79%が

連続 1 か月以上の就労経験があり、一人当たりの就労経験回数は 2.6 回となっています。そ

の就労形態は、アルバイトが 6 割強と も高く、正社員や派遣・契約社員の割合は 2 割以

下となっています。

0%

20%

40%

60%55.0%

41.4%35.9%

49.5% 49.5%

(データ)財団法人 社会経済生産性本部「ニートの状態にある若年者の実態および支援策に関

する調査研究報告書」(厚生労働省委託、2007年)

【図表128】ニートのこれまでの生活経験

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

正社員 アルバイト 派遣・契約 その他

19.3%

64.4%

11.5%

4.8%

連続1か月以上の就

労経験あり:79.0%

就労経験回数:2.6回

(データ)財団法人 社会経済生産性本部「ニートの状態にある若年者の実態及び

支援策に関する調査研究報告書」(厚生労働省委託、2007年)

【図表129】ニートの就労経験

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56

図表 130 は、ニートが苦手とする基本的スキルです。 も多いのが「人に話をする」で

3 分の 2 のニートが苦手と感じています。このほか、「手先が不器用」「計算をする」等が苦

手のようです。

図表 131 は、ニートが生活行動の中での苦手に感じている点です。面接関係や友人関係

の構築、上司との信頼関係の構築、仕事を覚えるなどへの苦手意識が高く、対人関係の構

築が苦手な結果、ニートとなっているのではないかと推測されます。

0%

20%

40%

60%

19.1%

35.6%42.8%

47.6%

64.4%

34.7%

(データ)財団法人 社会経済生産性本部「ニート状態にある若年者の実態および支援

策に関する調査研究報告書」(厚生労働省委託、2007年)

【図表130】ニートの基礎的スキルの苦手意識

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%75

65 65 6462 61 60 60 60 58 58 57 57

53 5248

44 44 43

3732 30 28

2320

(データ)財団法人 社会経済生産性本部「ニートの状態にある若年者の実態および支援策に関する調査研究報告書」(厚生労働省委託、2007年)

【図表131】ニートの生活行動の苦手意識

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57

図表 132 はニートの生活価値観です。これをみると、人間関係に不安を感じたり、自分

らしく生きたいと思ったり社交性は低いものの、仕事をすることに価値観を持つニートが

多く、決して仕事をしたくないからニートとなっているという訳でないことが分かります。

図表 133、134 は、のニートと一般企業の新入社員に対して行った同一のアンケート結

果において、ニートの回答と新入社員の回答との差が大きい項目を示したものです。図表

133 はニートの回答割合の方が上回っている項目、図表 134 は新入社員の回答割合の方が

上回っている項目です。これをみると、ニートの回答割合が上回っている項目は、「上司同

僚とは職場以外では付き合わない」「一人の方がいい」「意見の違う人と付き合いたくない」

などニートの社交性が低い示すものとなっています。逆に、新入社員の回答割合が上回っ

ている項目は、「自分はいい時代に生まれた」「明るく積極的に行動する」「世の中はよくな

る」「人間関係を広げたい」など、ポジティブで社交性が高いことを示すものとなっていま

す。

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90% 83 83 81 80 78 78 77 77 75 74 73 73 71 71 69 6965 65 63 63

57 57 5552

49 48 4742

32

(データ)財団法人 社会経済生産性本部「ニートの状態にある若年者の実態および支援策に関する調査研究報告書」(厚生労働省委託、2007年)

【図表132】ニートの生活価値観

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58

こうしたニートの就業支援のために、現在各地に「地域若者サポートステーション」(以

下「サポステ」)が設置されています。2012 年度で 116 のサポステが設置され、2012 年度

で 1 万 4 千人が就業等の進路を決定しています。サポステでは、具体的には、①キャリア

コンサルタントによる相談、②コミュニケーション訓練などのプログラムの実施、③職場

見学・職場体験、といったステップを踏んで就業への支援を行っています。

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

30%

23%22%20%

18%17%15%14%

11%11%8%

5%

(データ)財団法人 社会経済生産性本部「ニートの状態にある若年者の実

態および支援策に関する調査研究報告書」(厚生労働省委託、2007年)

【図表133】「ニートがそう思う割合」と「新入

社員がそう思う割合」の差

(ニートの割合が上回っている項目)

0%

10%

20%

30%

40%38%

31%

21%18%

13%12%11%10%

6% 6%

1%

(データ)財団法人 社会経済生産性本部「ニートの状態にある若年者の実

態および支援策に関する調査研究報告書」(厚生労働省委託、2007年)

【図表134】「ニートがそう思う割合」と「新入

社員がそう思う割合」の差

(新入社員の割合が上回っている項目)

25

50

77

92100

110116

0人

2,000人

4,000人

6,000人

8,000人

10,000人

12,000人

14,000人

16,000人

0か所

20か所

40か所

60か所

80か所

100か所

120か所

140か所

160か所

※進路決定者数は4~8月計数を年率換算

(データ)厚生労働省職業能力開発局キャリア形成支援室資料

【図表135】地域若者サポートステーションの活動状況

サポステ設置個所数(左目盛)

就職等進路決定者数(右目盛)

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59

図表 136 は、サポステ利用者の年齢構成です。これをみると約 3 分の 2 が 10 代から 20

代であることが分かります。また、図表 137 は、サポステ利用者の初回登録時から進路決

定までの期間です。これをみると 6 割が半年未満、8 割が 1 年以内に進路を決定しているこ

とが分かります。

(若年不就労者の就業の可能性の検討のまとめ)

これまで若年不就業者の就業の可能性について検討してきました。これまでの検討をま

とめるとすると以下のようになると考えられます。

① まず、人口の約 1 割が就業希望のある無業者であり、就業希望のある無業者を労働

人口として取り入れることで、労働力の増加にはかなり貢献すると考えられます。

特に、若年者の割合が高いことから、若年者の就業希望のある無業者を労働人口と

して取り込むことは有効だと考えられます。

② 若年者は、自発的失業により失業率が高くなっています。新規学卒者の離職も高水

準が続いています。こうした新規学卒者の離職を少なくするような、企業側の努力

も必要と考えられます。

③ ニートについては、労働力の確保との観点では、規模が小さいことから、ニートを

取り込むことによって労働力不足を解消していくことまでは至らないと考えられま

す。ただ、若い世代の自立の観点から、対人関係の構築などニートが苦手とする就

業への障害を出来るだけ取り除き、就業を後押しする取り組みは、今後も重要だと

考えられます。

15%

26%

25%

16%

11%

4%

4%

【図表136】「サポステ」利用者の年齢構成

~2012年4~8月中~

15~19歳

20~24歳

25~29歳

30~34歳

35~39歳

40歳以上

不明

(データ)厚生労働省職業能力開発局キャリア形成支援室資料

36%

24%

21%

12%

3% 3%

【図表137】利用者の初回登録時から進路

決定までの期間~2012年4~8月中~

3か月未満

3~6か月未満

6~1年未満

1年~2年未満

2年~3年未満

3年以上

(データ)厚生労働省職業能力開発局キャリア形成支援

室資料

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60

3-5 フリーターの正規雇用化について

次に、フリーターについて考えてみたいと思います。フリーターは、現在すでに労働力

として労働市場に参加しているので、フリーターを減らして正規雇用化を進めても、本ペ

ーパーのテーマである「労働力率の引上げ」には貢献はしません。ただ、後述のとおり、

生涯年収規模等を加味すると、フリーターのままでは結婚し、家庭を持ち、育児に取り組

むといったことはなかなか困難であると考えられます。以下では、フリーターが正規雇用

化する際の障害等について考えてみたいと思います。

まず、フリーターの規模についてみてみましょう。図表 138 によるとフリーター※の合計

は 2003 年頃には 217 万人を記録しましたが、 近では 170 万人から 180 万人規模となって

います。年齢別に人口に占める割合をみますと、15~24 歳はひと頃の 8%台から 6%へと下

がってきていますが、25~34 歳は 5%から 7%へと上昇してきており、2012 年には 25~34

歳の割合の方が 15~24 歳の割合を上回るようになっています。傾向として、フリーターか

らの脱却時期が後ずれしてきていることがうかがわれます。

※「フリーター」:男性は卒業者,女性は卒業者で未婚の者とし,①雇用者のうち勤め先

における呼称が「パート」か「アルバイト」である者,②完全失業者

のうち探している仕事の形態が「パート・アルバイト」の者,③非労

働力人口で家事も通学もしていない「その他」の者のうち,就業内定

しておらず,希望する仕事の形態が「パート・アルバイト」の者

フリーターの も大きな問題点は、生涯賃金にあるといえます。図表 139 は年齢別にみ

た高卒正社員とパートタイム労働者の年収差です。図表 140 は、これを累積したもので、

64 歳までの賃金は、高卒正社員とパートタイム労働者の生涯賃金としてみることができま

す。図表 139 のように、高卒正社員の場合には年功により 50 歳にかけて年収が増加してい

117 119 115 104 95 89 83 87 86 86 77

91 98 9997

92 9287 91 97 98 103

208 217 214201

187 181170 178 183 184 180

6.2

6.9

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

7%

8%

0万人

50万人

100万人

150万人

200万人

250万人

300万人

(対人口比割合)(フリーター数)

(データ)総務省統計局「労働力調査」

【図表138】フリーターの推移

25~34歳

15~24歳

合計

対人口比割合(15~24歳)(右目盛)

対人口割合(25~34歳)(右目盛)

「フリーター」:男性は卒業者,女性は卒業者で未婚

の者とし,①雇用者のうち勤め先における呼称が

「パート」か「アルバイト」である者,②完全失業者のう

ち探している仕事の形態が「パート・アルバイト」の者,

③非労働力人口で家事も通学もしていない「その他」

の者のうち,就業内定しておらず,希望する仕事の形

Page 66: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

61

きますが、パートタイム労働者の場合には、年収水準が百万円強ということで高卒正社員

の 10 代時点の年収の約半分である上年齢とはほぼ関係なく横ばいの年収となっています。

このため、図表 140 のように年収を累積させると、高卒正社員の生涯賃金が約 2 億円ある

のに対してパートの生涯賃金は 6 千万円とその 3 分の 1 程度になっています。こうした低

水準の生涯賃金、不安定な雇用環境の中では、生活を安定させたり、生活の将来設計を描

くことは困難であると考えられます。

このような状況の中で、フリーターは何故フリーターとなったのでしょうか。図表 141

は、若者が正社員として就職しなかった理由のアンケート結果です。これをみると、「正社

員として就職するつもりがない」という理由もみられますが、「正社員を希望したが採用さ

れなかった」「希望する企業の求人がなかった」「資格・技能の習得のため」といった正社

員を目指しているが実現できなかったことが理由となっている人も多いことが分かります。

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

~19歳

20~

24歳

25~

29歳

30~

34歳

35~

39歳

40~

44歳

45~

49歳

50~

54歳

55~

59歳

60~

64歳

2.3

2.93.3

3.7

4.24.4

4.74.84.8

3.3

0.60.8

1.21.31.31.21.21.31.21.3

(百万円)

(データ)厚生労働省「平成24年賃金構造基本調査」

【図表139】高卒正社員とパートタイム労働

者の年収差(2012年)

高卒正社員

パートタイム労働者

1.9億円

0.6億円

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

2.0(億円)

(データ)厚生労働省「平成24年賃金構造基本調査」

【図表140】高卒正社員とパートタイム労働

者の累積賃金差(2012年)

高卒正社員

パートタイム労働者

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

(データ)厚生労働省「平成21年若年者雇用実態調査」

【図表141】正社員として就職しなかった理由

男女計

男性

女性

Page 67: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

62

図表 142 はフリーターの正社員への転換希望です。女性では「今後も正社員以外」を希

望する割合が高いものの、男性では、現在の会社あるいは別の会社かどちらかで正社員と

なりたいとの割合が高いことが分かります。ここからみると、フリーターは、必ずしも自

ら好んでフリーターとなっていない、将来にわたってフリーターを続けようと思っている

人ばかりでない、ことが分かります。

図表 143 は、若年者の卒業 1 年後の就業状況変化を調べたものです。これをみると男性

は、正社員から非正社員になる割合が 8%あるものの、非正社員から正社員になる割合も 9%

あり非正社員はネットでは減っていますが、女性は、正社員から非正社員へが 19%である

一方、非正社員から正社員が 7%で、非正社員がネットで増えています。

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

(データ)厚生労働省「平成21年若年者雇用実態調査」

【図表142】フリーターの正社員への転換希望

男女計

男性

女性

0%

20%

40%

60%

80%

100%

男女計 男性 女性

58 67

48

13 8

19

8 9

7

15 11 19

2 3 1

4 3 5

(データ)厚生労働省「平成21年若年者雇用実態調査」

【図表143】若年者の卒業1年後の就業状況変化

無業⇒非正社員

無業⇒正社員

非正社員⇒非正社員

非正社員⇒正社員

正社員⇒非正社員

正社員⇒正社員

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63

図表 144 は、今度は企業としてフリーターの採用をどう考えているかアンケートしても

のです。このように、「採用する場合がある」としている企業は 88%と多く、「フリーター

は採用しない」としている企業は 8%と少ない結果となっており、正社員を希望するフリー

ターに対してはフリーターから脱却できる道はあるといえます。

図表 145 は、企業がフリーターを正社員として採用する際の着眼点についてのアンケー

ト結果です。これをみると、「勤労意欲」「社会常識」にかなり重点が置かれていることが

分かります。

それではフリーターは、このような企業が求めているような勤労意欲や社会常識を備え

ているのでしょうか。図表 146 から 151 は、若者の考え方を職業別に集計したものです。

0%

50%

100%

88%

8% 4%

(データ)厚生労働省「平成21年若年者雇用実態調査」

【図表144】正社員の募集にフリーターが応募してきた時に

採用するか

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70% 62

50

30

21 21 21 18 16

6 4 1 0 1

(データ)厚生労働省「平成21年若年者雇用実態調査」

【図表145】フリーターを正社員採用する際の着眼点

Page 69: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

64

これをみると、パート・アルバイトをしている若者の意識が突出しておらず、むしろ、公

務員や派遣社員よりも積極性があるような面も窺われます。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

19 21 30

18 19

36 3530

33 36

45 44 4049 44

(データ)厚生労働省「若者の意識に関する調査」(2013年)

【図表146】フリーターの考え方①

~日本の将来は明るいか~

否定

どちらともいえない

肯定

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%

100%

28 32 44

26 21

9 90

67

7 6 6

85

27 23 25

34 29

7 7 3 12

9

22 24 22 14

29

(データ)厚生労働省「若者の意識に関する調査」(2013年)

【図表147】フリーターの考え方②

~日本をよくするために行動しているか~

どれともいえない

政府や他人がやること

具体的にはない

寄付・チャリティー

起業・ボランティアに参画

仕事や学業をしっかりする

0%

20%

40%

60%

80%

100%

6 6 8 12 9

73 76 7076

70

21 18 22 13 21

(データ)厚生労働省「若者の意識に関する調査」(2013年)

【図表148】フリーターの考え方③

~物事がうまくいかない時の考え方~

自分が悪い

相手や環境も悪いが自分も

悪い

相手や環境が悪い 0%

20%

40%

60%

80%

100%

27 27 15 19 26

52 57

58 5351

10 915 14 12

4 2 4 4 5 3 3 8 6 2

(データ)厚生労働省「若者の意識に関する調査」(2013年)

【図表149】フリーターの考え方④

~仕事をどの程度頑張るか~

わからない

仕事はしたくない

自分の仕事は少ない方がいい

与えられた仕事をする

必要があれば与えられた以上

の仕事をする

進んで仕事をする

0%

20%

40%

60%

80%

100%

63 66 75

56 56

37 3425

44 44

(データ)厚生労働省「若者の意識に関する調査」(2013年)

【図表150】フリーターの考え方⑤

~現在の生活に満足しているか~

否定

肯定

0%

20%

40%

60%

80%

100%

6 7 15 5 2 9 11 6

7 63 4 6

5 57 7

9 9 10

17 15 4 14 20

55 56 58 59 54

3 2 4 2 3

(データ)厚生労働省「若者の意識に関する調査」(2013年)

【図表151】フリーターの考え方⑥

~何故現在の生活に満足しているか~

その他

好きな家族、恋人、友人がい

好きな趣味がある

学業や仕事が面白い

周囲から認められている

治安がいい

経済的に豊か

Page 70: 人口減少下での労働市場 · 2014-10-01 · 移すると、出生率の前提の違いにかかわらず目先2040年にかけては労働力人口が減少して いくことが確認されます。

65

(フリーターの正規雇用化についての検証結果のまとめ)

これまで、フリーターの正規雇用化について検証を行ってきました。これまでの結果を

まとめると以下のようになるかと思います。

① 「労働力率の引上げ」の観点では、フリーターはすでに労働力として取り込まれて

いるので、効果はニュートラルですが、生涯賃金の差を考慮すると、家計を支える

立場の方がフリーターであることは望ましくなく、出来るだけ正規雇用化を図って

いく必要があると考えられます。また、人手不足の中で企業側に、雇用の安定確保

の観点から雇用の正規化を進める動きがある点も支援材料になると考えられます。

② フリーターも男性を中心に正規雇用を望んでいる割合が高く、企業側もフリーター

の正規雇用を拒む姿勢でもなく、またフリーターの考え方も社会の平均から突出し

ていないことから、フリーターの正規雇用化を進めようとすれば可能ではないかと

考えられます。

3-6 外国人労働者について

後に外国人労働者について見ていきたいと思います。国内での労働力確保が困難とい

うことになるとよく話題に上るのが外国人労働者を増やすかどうかです。図表 152 は我が

国の在留外国人の推移です。1991 年時点では在日の方々を中心に韓国・朝鮮籍の外国人が

多かった訳ですが、その後、韓国・朝鮮籍の外国人が緩やかに減少する中で中国、ブラジ

ル、フィリピン籍の外国人が増え、2008 年には在留外国人数が 222 万人になりました。た

だその後は減少しており 2013 年時点では 207 万人となっています。図表 153 は 2008 年か

ら 2013 年にかけての変化幅の内訳を示しています。このように、韓国・朝鮮のほかブラジ

ル籍の外国人が大きく減少していることが分かります。これは、リーマンショックやブラ

ジル本国での経済発展の影響が反映されていると考えられます。その中でベトナム籍の外

国人が 近増えてきていることが分かります。

122 136

169

201 208

215 222 219 213 208 203 207

0万人

50万人

100万人

150万人

200万人

250万人

(データ)法務省「在留外国人統計」

【図表152】在留外国人の推移

その他

米国

ベトナム

フィリピン

ペルー

ブラジル

中国

韓国・朝鮮

在留外国人総数

-25万人

-20万人

-15万人

-10万人

-5万人

0万人

5万人

10万人

2008→2013

(データ)法務省「在留外国人統計」

【図表153】在留外国人の

2008→2013年の変化幅

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図表 154 は、在留資格別にみた在留外国人の推移です。特別永住者が在日の方々の減少

を反映して減少傾向を続ける中で、定住者からの振り替わりも含めて永住者が増えてきて

いるのと、留学等、研修・技能実習が増加してきていることが分かります。図表 155 は、

こうした在留資格別の構成比を国籍別にみたものです。韓国・朝鮮は特別永住者の割合が

高くなっています。中国、ベトナムは留学等、研修・技能実習の割合が高く、ブラジル、

ペルー、フィリピンは永住者、定住者、日本人の配偶者の割合が高いのが特徴です。なお、

米国は就労資格を持った在留割合が高くなっています。

図表 156 は、2013 年 10 月現在の外国人労働者の業種別就労状況です。圧倒的に多いの

が製造業で、次いでサービス、宿泊・飲食業、卸売・小売が続いています。図表 157 はこ

うした外国人労働者が多い業種で働いている外国人労働者の在留資格についてみたもので

す。製造業では技能実習(≒中国、ベトナム)と永住者(≒ブラジル、ペルー等)が中心

である一方、卸・小売、宿泊・飲食業では資格外活動(≒留学<中国、ベトナム>)が多

いのが特徴的です。

0万人

50万人

100万人

150万人

200万人

250万人

(データ)法務省「在留外国人統計」

【図表154】在留外国人の在留資格別推移

その他

就労資格

研修・技能実習

留学等

定住者

永住者の配偶者

日本人の配偶者

永住者

特別永住者

0%

20%

40%

60%

80%

100%

(データ)法務省「在留外国人統計」

【図表155】国別にみた在留資格の構成比

その他

就労資格

研修・技能実習

留学等

定住者

永住者の配偶者

日本人の配偶者

永住者

特別永住者

0万人

5万人

10万人

15万人

20万人

25万人

30万人 26万人

2万人3万人2万人

8万人

2万人

8万人

5万人

9万人7万人

(データ)厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」

【図表156】外国人労働者の業種別就労

状況(2013年10月)

0万人

5万人

10万人

15万人

20万人

25万人

30万人

(データ)厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」

【図表157】業種別にみた外国人労働者の

在留資格(2013年10月)

定住者

日本人の配偶者

永住者

資格外活動

技能実習

特定活動

専門的技術的分野

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近の労働力不足を理由に外国人の受け入れを増やしたらどうかとの議論がされます。

昨年には、毎年 20 万人ずつ外国人を受け入れてはどうかとの議論がありました。図表 158

は、2014 年以降毎年 20 万人ずつ在留外国人数を増やした場合の外国人数の推移です。こ

うすると、現在 200 万人程度の在留外国人が 2060 年には約 6 倍の 1,147 万人にまで増える

ことになります。図表 159 はこれだけ在留外国人を増やした場合の人口の見通しです。社

人研の中位推計の場合には 2060 年の人口が 87 百万人から 96 百万人に、出生率が 2025 年

に 2.07 まで回復した場合には、2060 年の人口が 109 百万人から 119 百万人にと、それぞ

れ約 9 百万人増えることになります。この結果、人口に占める割合も、2013 年時点の 1.7%

が 2060 年には、社人研の中位推計で 11.9%、出生率が 2025 年に 2.07 まで回復したケー

スで 9.7%にまで上昇と、いずれのケースでも人口の約1割が外国人という姿となります。

図表 158、159 のグラフをみると、毎年 20 万人ずつ外国人を受け入れるということは、

かなり無理があることが分かります。第一には、どの国から受け入れるかということです。

現状でも、2008 年をピークに在留外国人が頭打ちとなっている中で、日本にやってくる外

国人をコンスタントに 20万人ずつ確保するということは難しいのではないかと考えられま

す。もちろん、現在は各種規制をおこなっているので、そうした規制を取り払うことによ

り潜在的な在留希望の外国人を一時的に呼び込むことは可能と考えられますが、コンスタ

ントに 20 万人規模の外国人を毎年受け入れることが可能かというと、疑問が残ります。第

二には、仮に毎年 20 万人の外国人を受け入れた場合の人口に占める割合の上昇です。人口

の 1 割が外国人となった場合の社会的な受け皿が現在の我が国に用意できるか懸念されま

す。そうした受け皿が用意されずに外国人の流入が起きた場合には、よく懸念されるよう

な社会的な不安定要因の増大を覚悟する必要があると考えられます。

(外国人労働者に関するまとめ)

① 我が国の在留外国人は、2000 年以降、その構成比を変化させながらも総数は約 200

1147万人

0万人

200万人

400万人

600万人

800万人

1000万人

1200万人

9100 10 20 30 40 50 60

(データ)法務省「在留外国人統計」

【図表158】毎年20万人外国人を受け入れ

た場合の在留外国人数

その他

米国

ベトナム

フィリピン

ペルー

ブラジル

中国

韓国・朝鮮

在留外国人計

2百万人

11百万人

87

109

96

119

11.9%

1.7%

9.7%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

14%

16%

18%

20%

0百万人

20百万人

40百万人

60百万人

80百万人

100百万人

120百万人

140百万人

9100 10 20 30 40 50 60(データ)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人

口(平成24年1月推計」、法務省「在留外国人統計」

【図表159】毎年20万人外国人を受け

入れた場合の我が国の総人口見通し

年間20万人増の場合の

外国人数社人研中位推計

2025=2.07

社人研中位推計+外国

人増加(ケース①)2025=2.07+外国人増

加(ケース②)ケース①の外国人割合

ケース②の外国人割合

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万人で横ばいで推移しています。

② 在留資格は、国別にずいぶん異なっています。

③ 一頃話題となった毎年 20 万人の外国人を受け入れるということは、人口の減少幅を

小幅にする効果はある程度はみられるものの、これまでの在留外国人規模からする

とかなり急激な増加となるほか、人口に占める外国人割合の増加等も加味すると、

慎重な検討が必要と考えられます。

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(参考文献)

北浦修敏(2014.3)「世代会計の手法を活用した政府支出の長期推計と財政再建規模の分

析」 公益財団法人 世界平和研究所 ディスカッションペーパー

厚生労働省(2013)「平成 25 年版 厚生労働白書」

内閣府経済財政諮問会議専門調査会「選択する未来」委員会(2014)「未来への選択」

内閣府(2010)「平成 22 年版子ども・若者白書」

斉藤太郎(2006.5)「非正規雇用の拡大が意味するもの」 株式会社ニッセイ基礎研究所

REPORT

橋本修二、川戸美由紀、尾島俊之「健康寿命の指標化に関する研究」