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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1) (LCR規制を参考に) ムーディーズ・アナリティックス ディレクター [email protected] 201310流動性リスク管理シリーズ(1)

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

(LCR規制を参考に) ムーディーズ・アナリティックス

ディレクター

水 野 裕 二

[email protected]

2013年10月

流動性リスク管理シリーズ(1)

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

本資料は「流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える」シリーズの第1部と

して、LCR規制を中心にまとめたものです。資料は5部構成になっています。

第1部: LCR規制を中心にベスト・プラクティスを考えます。

第2部: バーゼル委員会による諸原則を中心にベスト・プラクティスを考えます。

第3部: 米国の流動性リスク規制を中心にベスト・プラクティスを考えます。

第4部: 日本の流動性リスク規制を中心にベスト・プラクティスを考えます。

第5部: 今後のIT対応のポイントを考えます。

本資料では、バーゼル委員会が2013年9月に公表した“Basel Ⅲ Monitoring

Report”に基づき、世界の銀行による流動性カバレッジ比率(LCR)の遵守状況

をご紹介すると共に、同じくバーゼル委員会が2013年1月に公表したLCR規制

の最終文書に基づき、流動性管理のベスト・プラクティスを検討します。

金融庁が9月に公表した「金融モニタリング基本方針」および「主要行等向け監

督方針」の中では、「外貨等の流動性リスク管理」および「グループ・ガバナンス

の強化」が言及されています。

はじめに

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

2013年9月6日に金融庁より発表された「平成25年事務年度 主要行等向け監督方針」に以

下の記述があります。

3. リスク管理と金融システムの安定/①注視すべきリスク分野

昨今、邦銀による海外進出が積極化していることや、金融機関にとって危機の深刻化は流動性の逼迫という面から生じる可能性があることから、外貨等の流動性リスクに関し、主要行等(本邦銀行の海外拠点、外国銀行の在日拠点を含む。)において、適切な管理態勢が構築されているかについて確認する。特に、グループ内の各社にまたがる流動性管理(国境をまたいだ本支店間の流動性管理を含む。)や外貨流動性管理の適切性、必要な流動性資産の保有状況について、日本銀行とも協力しつつ、確認する。

グループ・ガバナンスの強化

大規模で複雑な業務を行う金融グループ、特に多様なリスク特性を持った金融機関が含まれる金融グループにおいては、持株会社が主体的な役割を果たしながら、グループ全体のリスクを適切に把握・管理していく必要がある。このため、例えば、経営陣によりグループ全体の経営方針等が明確化されているか、グループ・ベースでの収益管理及びこれに伴う様々なグループ・ベースでのリスク管理を高度化していく態勢が構築されているか、リスクアペタイトフレームワーク(経営陣等がグループの経営戦略等を踏まえて進んで受け入れるリスクの水準について対話・理解・評価するためのグループ内共通の枠組み)の構築に向け、適切な取組みが進められているかについて確認する。

ご参考 主要行等向け監督方針との関連

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

1.バーゼルIIIモニタリングレポートに見るLCR遵守状況

2.流動性リスクの特性

(ベスト・プラクティスを考える前に)

3.ベスト・プラクティスを目指す流動性管理の方向性

(LCR規制遵守の次に目指すステップ)

4.まとめ

Appendix

流動性カバレッジ比率(LCR)の定義と2013年1月の見直し概要

目次

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

金融機関の状況に応じて、ベスト・プラクティスは異なる

バーゼル諸原則があくまでも「原則」であって、全ての金融機関に強制的に適用されるものではないように、リスク管理のベスト・プラクティスは各金融機関の状況に応じて異なり得ます。

たとえば、大手金融機関を対象とした流動性リスク管理に関する米国新基準においても、以下のような記述が見られます。

流動性リスク許容度、キャッシュフロー予測の詳細さ、流動性ストレステスト等々を検討する際には、対象会社の資本構造、リスク・プロファイル、複雑さ、業務内容、規模、その他のリスクファクターが考慮されるべきである。

本資料で検討している流動性リスク管理のベスト・プラクティスについて、全ての項目について全ての金融機関に対して同じ水準が要求されるとは限らない、ということをご承知おき下さい。

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

1.バーゼルIIIモニタリングレポートに見る

LCR遵守状況

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

流動性カバレッジ比率(LCR)の要件緩和(2013年1月)後、初めて公表された世界の銀行のLCR充足状況

バーゼル銀行監督委員会は2013年1月7日に流動性カバレッジ比率(LCR)の新たなテキスト(2013年テキスト)を公表しました。(“Basel Ⅲ The Liquidity Coverage Ratio and liquidity risk monitoring tools”)

その際、同時に2010年12月に公表されたLCR定義(2010年テキスト)が変更され、要件緩和が行われました。また、2015年の導入当初の最低基準を60%とし、2019年に100%へ毎年10%引き上げる段階的導入が決定されました。

要件緩和の効果は、2013年9月に公表された“Basel Ⅲ Monitoring Report”で初めて明らかになりました。

2012年 2013年

2013年テキスト公表 (要件緩和+段階的導入)

バーゼルIIIモニタリングレポート (2012年末のLCR充足状況) =改訂後の充足状況(初)

バーゼルIIIモニタリングレポート (2011年末のLCR充足状況)

=改訂前の充足状況

改訂後 2013年テキスト

改訂前 2010年テキスト

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

流動性カバレッジ比率(LCR)の要件緩和の概要(2013年1月)

2013年1月に公表されたLCRの要件緩和の概要は以下の通りです。

◎ 適格流動資産(HQLA)の範囲の拡大

レベル2資産につき、従来のレベル2A資産に加え、より大きなヘアカットと一定の組入制限が適用されるレベル2B資産を導入。(1)BBB-以上A+以下の社債(ヘアカット50%)、(2)上場普通株式(ヘアカット50%)、(3)AA以上の住宅モーゲージ担保証券(ヘアカット25%)が追加された。

◎ 資金流入/資金流出率の変更

安定的なリテール預金、無担保ホールセール調達、コミットメントラインの流出率の引き下げ、など

◎ 段階的導入(フェーズイン期間)

【LCR最低基準の導入予定】

以下は代表的な緩和項目を限定的に列挙したものに過ぎず、全ての変更項目を網羅的に示したものではありません。正確な内容についてはバーゼル銀行監督委員会が公表している資料をご参照下さい。本資料のAppendixに資料を添付しております。

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

「バーゼル3モニタリングレポート」(2013年9月公表)に示された2012年12月末時点のLCR充足状況

バーゼル銀行監督委員会は2013年9月25日に“Basel Ⅲ Monitoring Report”を公表し、2012年12月末時点における世界の223銀行のバーゼル自己資本比率、レバレッジ比率、流動性指標等の遵守状況を発表しました。そこで示されたLiquidity Coverage Ratio (LCR)及びNet Stable Funding Ratio(NSFR)の遵守状況のサマリーは以下の通りです。

Group1(Tier1資本30億ユーロ以上)101行、Group2(それ以外)121行から成る

合計222行から結果を集計

Group1の加重平均LCRは119%、Group2の加重平均LCRは126%(いずれも2013

年テキスト基準に基づく。2010年テキストの基準ではそれぞれ95%と99%にな

る。) 222行のうち、151行(68%)が100%を超過、200行(90%)が60%を超過。

Group1の加重平均NSFRは100%、Group2の加重平均NSFRは99%。

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

LCR要件緩和の効果/定義変更によりLCRが大幅に上昇

“Basel Ⅲ Monitoring Report”の結果に示された、2011年12月末から2012年12月末にかけてのLCR充足状況の変化は以下の通りです。同じデータを新旧両基準で比較したことにより、要件緩和の効果が大きいことが分かりました。

対象行の数 対象行の数

Group 1(T1資本30億ユーロ以上) 101 102

Group 2(上記以外) 121 107

合計 222 209

データ基準時点 2012年12月末 2011年12月末

LCR定義 (2013年テキストベース) (2010年テキストベース) (2010年テキストベース)

Group 1 / LCR加重平均値 119% 95% 91%

Group 2 / LCR加重平均値 126% 99% 98%

LCR=100%以上の銀行 LCR=100%以上の銀行

銀行数 151 98

構成割合 68% 47%

銀行による自助努力 (主に)要件緩和効果

100%を満たす銀行が大幅に増加

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

LCR要件緩和の効果/HQLAに関するレベル2B資産追加

“Basel Ⅲ Monitoring Report”に基づく、2012年12月末時点の適格流動資産(HQLA)の構成比は以下の通りです。レベル2B資産は全体で約1.9%を占めており、これがLCR計算上の分子(HQLA)に加算され、LCRを押し上げました。

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

LCR要件緩和の効果/資金流出・流入に見られた効果

“Basel Ⅲ Monitoring Report”の結果に見る、2011年12月末から2012年12月末にかけての資金流出/流入の変化は以下の通りです。要件緩和効果は無担保ホールセール調達の資金流出などの項目に見られます。

LCR↑

LCR↓

(単位:%) (単位:%)

カテゴリー 2012年12月末時点 2011年12月末時点 差異

Group 1 Group 2 Group 1 Group 2 Group 1 Group 2

資金流出(アウトフロー)合計 19.3 13.4 21.5 13.0 -2.2 0.4

リテール預金と中小企業預金 2.3 2.6 2.2 2.3 0.1 0.3

無担保ホールセール調達(非金融法人) 3.6 1.9 5.1 3.2 -1.5 -1.3

政府・中銀・公共セクターからの無担保調達 0.8 0.7 1.1 0.9 -0.3 -0.2

金融機関からの無担保調達 5.3 3.8 5.4 3.3 -0.1 0.5

その他の無担保ホールセール調達 1.2 0.7 1.6 0.9 -0.4 -0.2

有担保調達 1.9 0.8 1.6 0.9 0.3 -0.1

証券化、負債 0.9 0.4 0.9 0.3 0.0 0.1

与信・流動性ファシリティ 1.7 0.6 2.4 0.6 -0.7 0.0

デリバティブを含む、その他の偶発キャッシュ・アウトフロー 1.6 1.9 1.3 0.6 0.3 1.3

資金流入(インフロー)合計 5.6 4.6 5.7 4.4 -0.1 0.2

金融機関 1.9 1.8 2.3 2.2 -0.4 -0.4

リテール、中小企業、非金融法人、中央銀行、その他 1.4 1.3 1.5 1.5 -0.1 -0.2

有担保借入 1.7 0.6 1.8 0.6 -0.1 0.0

デリバティブを含む、その他のキャッシュ・インフロー 0.5 1 0.1 0.2 0.4 0.8

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

LCR要件緩和の効果/ LCR未充足額の大幅な減尐

“Basel Ⅲ Monitoring Report”によれば、2011年12月末から2012年12月末にかけてのLCR未充足実額の変化は以下の通りです。LCR未充足の実額が大幅に減尐しています。

◎ LCR未充足実額 =LCRが100%未満であった銀行に関する未充足額(HQLAとネット資金流出額の差異)を合計したもので、LCRが100%以上の銀行のデータを含まない。

2011年12月時点:1.8兆ユーロ

2012年12月時点:0.56兆ユーロ

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

次のステップに向かう流動性管理

LCRのグローバルな遵守状況を見ると、現時点ですでに多くの銀行が4年以上

先の最低基準である100%をクリアしています。目先の最低基準である60%に

ついて言えば、90%の銀行がクリアしています。段階的導入が決定されたもの

の、「導入当初から100%をクリアする」ことが強く意識されていることが明らかで

す。すなわち、LCR=100%は現段階で既に「先進的な金融機関にとってのミ

ニマム・スタンダード」として機能しています。

ただし、「LCR規制の充足=完璧な流動性管理」ということではありません。グ

ローバルな規制当局や先進的な銀行の関心はすでに次のステップに向かってい

ます。

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

2.流動性リスクの特性

(ベスト・プラクティスを考える前に)

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

流動性リスク管理が重視される理由/じわじわとではなく、危機時には一挙に顕在化して、突発的に破綻の危機をもたらす

信用リスクや市場リスクのような典型的なリスクが、段階的に悪化して徐々に金融機関を破たんに追い込むという性質があるのに対して、流動性リスクは金融危機のようなストレス時に突如として「資金繰りの悪化」として顕在化し、顕在化した場合には金融機関を突如として破綻の危機に追い込むという性質があります。

信用リスク

市場リスク

オペ・リスク

・・

損失

流動性リスク

破綻の危機

信用リスクや市場リスクが「損失」という目に見える形で徐々に経営を圧迫してくるのに対して、流動性リスクは顕在化したら、突発的に破綻の危機にさらされる、という点でフォワード・ルッキングな管理が強く求められる分野です。

段階的に悪化・・・

突発的に発生

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

流動性リスク管理が重視される理由/現実的な可能性を踏まえたリスク計量化が意外に難しい

流動性リスクは究極のところ「資金繰り」ですが、その計量化には不確定要素が多く、リスクの計量化には難しい側面が多いという特徴があります。

たとえば、将来の流動性の予測に関して様々な前提条件を置く場合、自らの行動が市場に与える影響や異なるリスク間の相互影響などを考慮に入れることが望ましいのですが、様々な波及効果を完全に勘案することは非常に困難な作業です。

通常のリスク管理手法を補う方法として行われるストレステストにしても、「どこまで悲観的なストレス状況を想定するか」は非常に難しい問題です。ここには自然災害シナリオとの類似性があり、あまりに悲観的なシナリオを考えてしまうと、そもそもゴーイングコンサーンとしての流動性リスク管理の意義が損なわれてしまいます。

しかしながら、致命的な悲観シナリオが半永久的に継続する、ということが考えにくいのも事実です。最悪シナリオにおいて金融機関が生き残りを図るための「保険」としての対策を検討しておくことが極めて重要です。

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

流動性リスク管理が重視される理由/実際に危機的な状況が発生したら、LCR比率は金融機関を救ってくれない

LCRやNSFRなどの規制は一定の前提にもとづいて、フォワード・ルッキング的にストレス状況への耐久度をモニタリングするものです。しかし、実際に危機的な状況が発生して、資金繰りが悪化してきたら、たとえばLCRが最低要件を割り込んでしまう事態が発生し得ます。

LCRの計算前提となっている流動性状況がストレスの対象そのものである以上、ストレス状況を考えることはLCRが悪化する事態を想定することに他なりません。ストレス状況が顕在化した際に重要となるのは、LCRが最低要件を割り込んでしまった後に何ができるか、という対策と潜在能力の問題です。

LCRはフォワードルッキングな指標で、通常時の管理ツールとして有用ですが、それとは別に、ストレス状況における対策と潜在能力を把握しておく必要もあります。

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

海外での流動性管理は国際的な業務ネットワーク維持のための規制コスト

流動性リスクは金融機関の破綻のみならず、システミック・リスクの要因として、国際的な金融当局による最重要モニタリング項目の1つになっています。

国際的に活動する金融機関にとって、海外での(外貨の)流動性管理の失敗は、その国や市場からの「撤退」を余儀なくされるほどのペナルティを覚悟すべき事項です。その意味で、海外での流動性リスク管理は国際的な営業ネットワークを維持するための規制コストとして考えるべきものです。

上記に呼応して、最近の金融庁の金融モニタリング方針や監督方針では「金融グループレベル」でのリスク管理が重視されています。流動性管理面では特に、外貨流動性についても指摘されているところです。国内の関連会社はもちろんのこと、海外拠点を含む金融グループレベルで流動性状況をモニタリングすることに注目が集まっています。

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

邦銀の海外ビジネス拡大に伴い、外貨流動性のリスク管理がグループレベルでの流動性リスク管理の重要なポイントに

邦銀による海外での融資業務が拡大する中、為替リスクを避けるために海外での資金調達が増加する傾向が見られています。海外ネットワークにおける外貨流動性の管理は国内流動性の管理よりも検討すべきリスク要因が多く、より慎重かつ徹底した対処が必要となります。

(BIS International banking and financial market developments: Quarterly Review for Sep 2013より)

【地域別の貸し手による対外債権シェア】

←邦銀の世界シェア推移(赤太線)

【邦銀の対外債権・債務のセクター別内訳】

邦銀の対外債権

邦銀の対外債務

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

3.ベスト・プラクティスを目指す流動性管理の方向性

(LCR規制遵守の次に目指すステップ)

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

流動性リスク管理に対処するためのポイント/LCR規制を遵守すること以外に、金融機関として準備しておくべきことは多くある

突発的な流動性危機に備えて「予測力」を高める

「突発的」とは言え、リーマン危機の際には状況把握の時間はありました。タイ

ムリーかつスピーディーに状況を把握するためのITインフラを構築しておくこと

が、ストレス時の生き残りの成否を左右します。(報告頻度の日次化、LCRを

補完する情報の併用、経営情報システムの高度化など)

バランスシート上の顧客行動予測を組み合わせて将来の予測力を高めること

により、より多くの準備期間を稼ぐことができます。

危機的な状況が発生してしまった際の「保険」を高める

危機が顕在化した後、一定期間の危機を乗り越えるための保険が確保できて

いるかどうか。(キーワード:調達先の集中、担保拠出可能な資産の把握等)

国際ネットワーク維持のためにグループレベルでの「規制対応力」を高める

海外における外貨流動性を金融グループ全体で把握します。

把握する

対策を打つ

グループ管理

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

バーゼル委員会により「要件緩和」とセットで示された「次の課題」

バーゼル銀行監督委員会が2013年1月7日に公表したLCRの2013年テキストでは、要件緩和とは別に次のステップの課題とも言うべき諸項目が「今後の検討課題」として指摘されています。

1)LCRを補完する定量的情報・定性的情報の開示

LCRとは別の流動性モニタリングツールの開発・高度化が推奨されています。これは別途見直しが検討されているNSFR(安定調達比率)とは別の議論です。

2)LCR報告頻度

監督当局への報告は月次を最低限とするが、ストレス状況下では週次・日次での報告ができる能力を備えるべき、とされています。LCRとは別に、「日中流動性の管理」については規制導入の議論が既に進んでいます。

3)グループレベルでの監視

2013年テキストで触れられているほか、金融庁が2013年9月に公表した金融モニタリング基本方針や主要行等向け監督方針において、「金融グループレベル」でのリスク監視が求められています。国別エンティティの流動性モニタリングに関連し、通貨別管理の要求も強化される可能性があります。

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

LCRを補完する定量的情報・定性的情報の開示

LCRの2013年テキストでは、以下の流動性モニタリングツールが記載され、LCRを補完するために活用することが推奨されています。

1)契約ベースのマチュリティ・ミスマッチ

2)資金調達の集中リスク

3)担保拠出可能な資産

4)重要通貨ごとの外貨LCRモニタリング

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

LCRを補完する流動性モニタリング/マチュリティ・ミスマッチ

1)契約ベースのマチュリティ・ミスマッチ(+顧客行動ベースの資金フロー予測)

一定期間における取引契約上の資金流入額と資金流出額のマチュリティ・ギャップを分析する。

期間としては、オーバーナイト、7日間、14日間、1、2、3、6、9か月、1、2、3、5年及び5年超についてマチュリティ・ギャップを把握すべき。

Maturityのない取引についてはMaturity予測は加えずに(*)、別途の報告がなされるべきである。(*すなわち、預金等に見られる顧客行動上の予測を含めずに)

取引種類に関するデータカテゴリーは、尐なくともLCRで使用されるカテゴリーと同一とすべきである。

一方、当局や個別金融機関は通常時とストレス時における顧客行動上の予測も勘案した上で、資金流出・流入の分析も行うべきである。この分析は業務戦略に基づくものであるべきで、金融機関と当局の間の協議対象となされるべきである。

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

LCRを補完する流動性モニタリング/顧客行動モデリング

2013年テキストは具体的な手法論にまでは触れていませんが、資金キャッシュフローの予測において、契約ベースとは別に顧客行動モデルベースの予測を行う手法は、すでにグローバルな大手金融機関でベスト・プラクティス化しています。

アセット・サイドはプリペイメントによってキャッシュフローが前倒しに

ライアビリティ・サイドはロールオーバーによってキャッシュフローが後倒しに

契約ベースで把握されているキャッシュフロー

顧客行動モデルによって把握される期待キャッシュフロー

ムーディーズ・アナリティックスのALMソフトウェアは、この機能を標準装備しています。

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

LCRを補完する流動性モニタリング/調達の集中リスク

2)資金調達の集中リスク

資金調達(特にホールセール調達)の集中リスクを把握するため、以下をモニタリングすることが推奨されています。

A)全体の調達額に占める、重要なカウンターパーティーからの調達割合

B)全体の調達額に占める、重要な商品・プロダクトからの調達割合

C)重要な通貨における資産・負債金額のリスト

「重要なカウンターパーティー」とは、単体もしくは関連企業を含むグループとして、バランシシート額の1%以上の調達額を依存している先を言う。グループ化する際の考え方は、その国の「大口与信規制」の方法に従う。

「重要な商品・プロダクト」の定義も同様に、バランシシート額の1%以上の調達額を依存する商品やプロダクトを指す。「重要な通貨」の定義は総負債額の5%以上とする。

対象期間としては1か月未満、1-3カ月、3-6か月、6-12か月、12か月以上、とする。

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

LCRを補完する流動性モニタリング/担保拠出可能な資産

3)担保拠出可能な資産

金融機関の潜在的な資金調達能力(追加的な適格流動資産を創出する能力)を把握するために、以下の項目をモニタリングすることが推奨されています。

セカンダリー市場で担保として利用可能な資産額

中央銀行からのファンディングに際して担保として活用可能な資産額

単純合計金額のみならず、重要通貨別に分類することが必要。「重要」の定義は該当資産合計の5%以上。

各資産について、推定ヘアカット率(セカンダリー市場でのヘアカットもしくは中央銀行が要求するヘアカット)およびその結果として得られる予想資金調達額の報告も必要。

この項目はストレス時にLCRをどれだけ素早く回復させることができるか、という意味での潜在的な資金調達能力を示す。ただし、ヘアカット等はストレス時に変化する可能性があり、誤った安心感をもたらすことのないよう注意が必要。マチュリティ・ミスマッチなどの他の指標と組み合わせて監視することが肝要。

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

LCRを補完する流動性モニタリング/外貨LCRモニタリング

4)重要通貨ごとの外貨LCRモニタリング

金融機関は主要通貨でのLCR以外に、その他の重要な通貨ごとのLCRを把握すべきである。

「重要な通貨」の定義はその通貨建ての負債が全負債額の5%以上。

外貨LCRは規制対象ではないものの、各国当局はその通貨での調達能力や別の通貨からの流動性移転の能力を踏まえて、最低基準等を設定すべきである。

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

LCRの報告頻度/ストレス時に日次報告ができる体制を目指す

監督当局への報告は月次を最低限とするが、ストレス状況下では週次・日次での報告ができる能力を備えるべき、とされています。月次で当局に報告できるITインフラを目指すのみでは不十分な対応になる可能性があります。

一方、LCRとは別に「日中流動性の管理」に関する規制導入の議論も進んでいます。そこで管理対象として検討されているのは以下のような項目です。

【モニタリング指標】

①所要流動性の日次最大値

②利用可能な日中流動性

③資金受払の総額

④時限性のある決済債務額

⑤顧客金融機関に代わって決済する支払額

⑥顧客金融機関に供与している日中クレジットライン

⑦日中支払のタイミング

⑧日中の決済進捗

【ストレステスト】

①自行に対する金融上のストレス

②カウンターパーティに対するストレス

③顧客金融機関に対するストレス

④市場全体の信用・流動性ストレス

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

ただし、「LCRを補完する定量的・定性的情報」はベスト・プラクティス実現に向けた過渡的なステップ

LCRの2013年テキストで示された流動性モニタリングツールは非常に有用なものです。しかし、それらのツールは流動性リスク管理のベスト・プラクティスの一部に過ぎません。流動性リスク管理のベスト・プラクティスについては本資料シリーズの第2号以降で検討していきます。

LCR規制

(30日の資金流動性)

NSFR規制

(1年間の安定調達)

流動性リスク管理のベスト・プラクティス

LCRを補完する

流動性モニタリング・ツール

*2015年導入 *2018年導入

本資料のフォーカス

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

5.まとめ

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

LCR規制を中心とした流動性リスク管理/まとめ

今号では、グローバルな金融機関によるLCR規制遵守状況、流動性リスクの特

性、LCRを補完するモニタリング・ツールなどを通じて、流動性リスク管理のベス

ト・プラクティスに近づくことを試みました。ただし、最後に指摘した通り、LCR規

制及びLCRを補完するモニタリング・ツールなどは、ベスト・プラクティスの一部に

過ぎません。

次号では、バーゼル銀行監督委員会による流動性リスク管理の諸原則に立ち

戻って、流動性リスク管理のベスト・プラクティスを再考します。

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

Appendix

流動性カバレッジ比率(LCR)の定義と2013年1月の見直し概要

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

(ご参考)流動性カバレッジ比率(LCR)の定義

LCR = 適格流動資産(HQLA) (=レベル1資産+レベル2A資産+レベル2B資産)

30日間のストレス期間のネット資金流出額 (=資金流出額-資金流入額)

【LCRの主な項目と掛け目一覧】

『流動性規制(流動性カバレッジ比率)に関するバーゼルⅢテキスト公表─流動性カバレッジ比率の主要な項目の確定』(金融庁/日本銀行2013年1月)より抜粋

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

(ご参考)LCRの適格流動資産に関する主な見直し一覧

『流動性規制(流動性カバレッジ比率)に関するバーゼルⅢテキスト公表─流動性カバレッジ比率の主要な項目の確定』(金融庁/日本銀行2013年1月)より抜粋

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流動性リスク管理のベスト・プラクティスを考える(1)

(ご参考)LCRの資金流出・流入に関する主な見直し一覧

『流動性規制(流動性カバレッジ比率)に関するバーゼルⅢテキスト公表─流動性カバレッジ比率の主要な項目の確定』(金融庁/日本銀行2013年1月)より抜粋

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