嘔吐・下痢に対する経管栄養投与法の検討 -水先投与法の有効 ... · 2016....

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢 12-1-1 医療の質(1) 嘔吐・下痢に対する経管栄養投与法の検討 -水先投与法の有効性ー 1 聖仁会西部総合病院 脳神経外科,2 聖仁会西部総合病院 内科,3 聖仁会西部総合病院 看護部 たかの しょうじ ○高野 尚治(医師) 1 ,細渕 朋志 2 ,村山 晃 2 ,西村 直久 2 ,宗形 美智子 3 ,白井 奈美 3 ,日野 めぐみ 3 長谷川 啓子 3 はじめに:脳血管障害では、意識障害の遷延から嚥下不能と評価され長期経管栄養となる症例も多い。経管 栄養は経静脈栄養に比べて栄養吸収過程が生理的であるが、嘔吐・下痢などの合併症を常に伴っており、経管 栄養を中断することも多い。嘔吐・下痢に対して従来の白湯の混合投与法や後投与法から、先に白湯を投与す る水先投与法に変更して改善がみられたので報告する。 方法:まず、代表症例で白湯と経管栄養剤の胃内滞留時間の違いを腹部エコー検査とガストログラフィンマー カーの透視下法で比較した。次に、療養病棟と回復期リハビリ病棟で従来の混合法および後投与法を行ってい る18症例が対象症例で、1 ヶ月間での嘔吐の有無と便性状をブリストル便形状スケールを用いて評価し、そ の後の 1 ヶ月間を水先投与法に変えて比較検討した。これらの検討は患者家族の承諾下に行っている。 結果:代表症例で白湯と経管栄養剤の胃内滞留時間を腹部エコー検査で計測したが、白湯の胃内滞留時間は短 く、2 倍以上の滞留時間の差がみられた。透視下検査でも同様の結果となった。混合法および後投与法の18 症例で嘔吐を6例に認め、水先投与法にして 1 ヶ月間で嘔吐の症例は無かった。Fisher 正確検定、χ 検定イ ツ補正にて共に(P<0.05)にて有意差を認めた。また便性状に改善がみられ、排便回数も減少した。 考察:水先投与法は胃内滞留時間を短縮し、胃内容量を減らし、胃内圧の低下から逆流防止と嘔吐を有意に減 らすことが出来る。また水先投与法にして便性状の改善、排便回数の減少がみられたのは、従来の栄養剤投与 法では希釈され粘度低下により胃の通過が速まり下痢を誘発すると考えた。また遷延性意識障害の症例では自 律神経機能低下を伴っており、消化管蠕動異常が下痢の誘因である可能性がある。水先投与の白湯が刺激とな り蠕動運動の改善、消化機能改善になったと考える。今後症例を増やし便性有意性についても検討したい。

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Page 1: 嘔吐・下痢に対する経管栄養投与法の検討 -水先投与法の有効 ... · 2016. 10. 10. · 85.5% 「当院にNSTは必要だと思いますか」 はい84.1%「NST対象となる基準を知っていますか」はい

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-1-1 医療の質(1)嘔吐・下痢に対する経管栄養投与法の検討 -水先投与法の有効性ー

1 聖仁会西部総合病院 脳神経外科,2 聖仁会西部総合病院 内科,3 聖仁会西部総合病院 看護部

たかの しょうじ

○高野 尚治(医師)1,細渕 朋志 2,村山 晃 2,西村 直久 2,宗形 美智子 3,白井 奈美 3,日野 めぐみ 3,長谷川 啓子 3

はじめに:脳血管障害では、意識障害の遷延から嚥下不能と評価され長期経管栄養となる症例も多い。経管栄養は経静脈栄養に比べて栄養吸収過程が生理的であるが、嘔吐・下痢などの合併症を常に伴っており、経管栄養を中断することも多い。嘔吐・下痢に対して従来の白湯の混合投与法や後投与法から、先に白湯を投与する水先投与法に変更して改善がみられたので報告する。方法:まず、代表症例で白湯と経管栄養剤の胃内滞留時間の違いを腹部エコー検査とガストログラフィンマーカーの透視下法で比較した。次に、療養病棟と回復期リハビリ病棟で従来の混合法および後投与法を行っている18症例が対象症例で、1 ヶ月間での嘔吐の有無と便性状をブリストル便形状スケールを用いて評価し、その後の 1 ヶ月間を水先投与法に変えて比較検討した。これらの検討は患者家族の承諾下に行っている。結果:代表症例で白湯と経管栄養剤の胃内滞留時間を腹部エコー検査で計測したが、白湯の胃内滞留時間は短く、2 倍以上の滞留時間の差がみられた。透視下検査でも同様の結果となった。混合法および後投与法の18症例で嘔吐を6例に認め、水先投与法にして 1 ヶ月間で嘔吐の症例は無かった。Fisher 正確検定、χ2検定イエーツ補正にて共に(P<0.05)にて有意差を認めた。また便性状に改善がみられ、排便回数も減少した。考察:水先投与法は胃内滞留時間を短縮し、胃内容量を減らし、胃内圧の低下から逆流防止と嘔吐を有意に減らすことが出来る。また水先投与法にして便性状の改善、排便回数の減少がみられたのは、従来の栄養剤投与法では希釈され粘度低下により胃の通過が速まり下痢を誘発すると考えた。また遷延性意識障害の症例では自律神経機能低下を伴っており、消化管蠕動異常が下痢の誘因である可能性がある。水先投与の白湯が刺激となり蠕動運動の改善、消化機能改善になったと考える。今後症例を増やし便性有意性についても検討したい。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-1-2 医療の質(1)当院におけるNST活動の現状と課題 ~NST活動に対する看護師の意識調査を実施して~

1 広川病院 看護部,2 広川病院 栄養管理室,3 広川病院 内科

いなまた ともこ

○稲又 智子(看護師)1,今村 佳代 2,鞭馬 美希 1,白山 愛美 1,新堀 法代 1,佐伯 利加 1,松本 昌人 3

<はじめに>当院では、平成 26 年 12 月に栄養サポート委員会が発足し、入院患者の栄養状態を把握し低栄養患者の栄養改善及び維持を目的に平成 27 年 1 月にNST活動が開始された。今回、NST活動の継続、発展していくために看護師へNST活動に対する意識調査を実施し、今後の看護師教育へ繋げることができるよう、NST活動の現状と今後の課題について報告する。 <方法> NST活動に対する看護師の意識調査を目的にアンケート調査を実施した。 調査期日:平成 28 年 3 月 16 日~ 22 日調査対象:看護師・准看護師の 60 名回収率:94.5% <結果> アンケート結果は、「当院でNSTが活動していることを知っていますか」 はい 98.6% 「NSTに興味がありますか」 はい 76.8% 「現在のNST活動は患者に良い影響を与えていると思いますか」 はい85.5% 「当院にNSTは必要だと思いますか」 はい 84.1% 「NST対象となる基準を知っていますか」はい47.8% 「NSTへ依頼したいと思った事がありますか」 はい 30.4% 実際に依頼したのは 10 人であった。また、

「NSTに期待することは何ですか」の問いには、患者に応じた栄養状態の改善、褥瘡の予防・改善、職員への教育、各職種との連携などがあげられた。 <考察> NST対象となる患者の評価が不十分で、看護師の栄養管理に対するアセスメント能力が不足していることが一因と思われる。以上のことより、NST活動の情報共有の不十分さと看護師の栄養管理に対するアセスメント能力不足の 2 点の問題点が考えられる。入院時の栄養に関する情報収集の項目を見直し、身体的アセスメント能力の向上を図るために、院内・院外研修へ参加し教育の充実をさせることで、NSTメンバーを中心に看護師全員のレベルアップを目指す。看護師の視点から栄養管理を必要とする患者を適切に抽出し、NST介入することで患者の食に対する満足度を高めていきたい。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-1-3 医療の質(1)当院の NST 活動11年の軌跡 ~患者様へ最善の栄養ケア提供を目指す~

鳴門山上病院

やまもと ひろこ

○山本 浩子(管理栄養士),國友 一史,明賀 由佳,佐古 はるか,山橋 友香,NST コアスタッフ

【はじめに】 当院のNSTは平成17年7月に活動を開始し11年が経過した。発足当初から患者様へよりよい栄養 ケアを提供するために、平成24年度には大きな業務手順の見直しを図り新システムを導入した。NST レポートにPN I(予後栄養指数)や CONUT(総合栄養評価)の表記を追加、更に回診2ヶ月後の状態報告の際にはポイント制を導入し、またとろみ3段階の粘度の統一化など様々な改良をしてきた。その結果、患者様へ的確な栄養ケアが可能となり栄養改善へ繋げることが実現できた。それまでの経緯と成果を報告する。

【業務手順の見直しと改良点】 ( 1) 旧システムと新システム導入後を比較。 ( 2) 入院食の提供栄養量を病態に応じて個別化。 ( 3)NST レポートの明確化。 ( 4)PNI・CONUT の追加表記。 ( 5) 回診2ヶ月後の状態報告にポイント制を導入。 ( 6) とろみ3段階の粘度の統一化。 ( 7) 症例のリスクを年度別に集計。

【結果】 リスクの減少(改善)は新システム導入前10. 0%から導入後12. 7%と2. 7%改善。リスクの増加(悪化)は導入前16. 0%から導入後13. 5%と2. 5%の減少がみられ、どちらも良い結果が得られた。またNST 回診から2ヶ月後の評価でも改善率は導入前8. 3%から導入後は29. 3%にまで向上した。

【考察】 新システム導入により患者様の栄養状態の改善への効果が認識できた。また当院では肺炎予防のための呼吸ケアチームが発足しカフアシストを実施、褥瘡予防のために褥瘡予防対策委員会も活動している。今後も多職種共同により連携を図りながら、患者様へ更なる最善の栄養ケアが提供できるように目指したい。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-1-4 医療の質(1)当院外来における胃瘻患者の状況

1 宜野湾記念病院 栄養科,2 宜野湾記念病院 医局

みやぎ まさみつ

○宮城 将允(管理栄養士)1,小橋川 尚子 1,仲座 美香 1,仲村 美咲 1,湧上 聖 2

【はじめに】 当院に入院してくる患者は、るいそうが著名なことが多く、栄養評価では低栄養の状態を呈している。また、入院後に適切な栄養管理を実施できたとしても、退院後に悪化して再入院してくるケースも少なくない。その観点から、地域に目を向けた医療サービスの提供は必要不可欠と思われる。 2025 年を目処に地域包括ケアシステムの構築が推奨されているが、その整備はまだ不十分と思われる。そのような背景により、地域に生活の場を持ち、当院外来にて胃瘻交換を実施している患者の状況を調査してみた。

【対象】 対象は当院外来にて胃瘻交換を行っている患者 14 名とした。現状把握のために胃瘻造設後の期間、胃瘻造設の理由、胃瘻造設前と造設後の体重と BMI、必要栄養量に対する投与栄養量の比較、使用している栄養剤の種類、直近の血液検査(TP、Alb、Hb、Na)および検査後の日数を調査した。

【結果】 対象者の内訳は男性 6 名、女性 8 名、平均年齢は 82.9 ± 15.2 歳であった。胃瘻造設からの期間は平均 3.6 年。基礎疾患は認知症が 35.7%、脳血管疾患が 74.0%、精神疾患が 12.4%、外傷や手術の後遺症が 28.6% となった。胃瘻造設の理由としては嚥下障害 85.7%、摂食障害 35.7%、意識障害 7.1%、その他が 7.1% となった。造設前の体重は46.1kgに対し造設後は44.8kgと減少傾向を示した。栄養必要量に対する充足率は76.4%となっている。血液検査の結果では血清 Alb 値が平均 3.5g/dl と軽度の低栄養状態、血清 Na 値は平均 133mEq/L と軽度の低ナトリウム血症を認めた。

【考察およびまとめ】 今回の調査で対象者は認知症や脳血管疾患により栄養ルートを胃瘻へと変更されており、体重減少と必要栄養量を充足できていない現状が示唆された。それに伴う低栄養や電解質不足も予想されるため、定期的な栄養評価により食事内容を検討するなどの必要性があると思われた。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-1-5 医療の質(1)NST による認知症自立度別でみた低栄養リスクと食事摂取量の推移

橋本病院

みやもと あきとも

○宮本 明友(看護師)

(はじめに)回復期リハビリテーション病棟に入院した患者は入院時に SGA を用いて評価し、食思低下がある場合には、早期より食事形態、補食の検討を行い提供している。入院後、毎週体重測定を行い、2週間毎の栄養評価を実施し栄養状態の把握に努めている。当病棟には認知症を有する患者もリハビリ目的で入院している。今回、認知症患者の認知症自立度と食事摂取カロリーの推移を振り返ったので報告する。

(対象)平成 27 年4月1日~平成 28 年5月31日までの当病棟に入院した141中、認知症自立度Ⅰ~Ⅴの51 名を対象

(方法)認知症自立度と SGA 評価でグループに分けてそれらの食事摂取カロリーを比較。(結果)認知症自立度が低いほど、摂取カロリーは低値であった。入院時、1か月後、2か月後は摂取カロリーがアップしてきた。

(まとめ)認知症自立度で比較した場合、自立度が下がる程、摂取量は少なく低栄養になるリスクは高くなると言える。低栄養リスクを抱えている患者が多いということを念頭に置き、評価していく必要がある。認知症自立度の低い患者でも早期の NST 介入することで食事量はアップできた。回復期リハビリテーション病棟ではリハビリテーションの活動量が多く、リハビリテーションの効果を向上する為には栄養の確保が必須である。今後も摂取量アップに繋げていくために関わりを続けていきたい。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-1-6 医療の質(1)患者の覚醒時間に働きかけた経口摂取への取り組み ~ナイチンゲールの教えを看護実践に活かして

石巻健育会病院 看護部

あいはら まさよし

○相原 正宜(准看護師),遠藤 千恵,梶原 美惠子,木村 大輔

【はじめに】今回、寝たきりで覚醒の乏しい経管栄養の患者に対し、覚醒のタイミングに合わせた食事の援助と陽光や変化を取り入れた援助を試みた。その結果経口摂取が確立した事例を報告する。

【患者紹介】G 氏 88 歳女性 夫・孫と 3 人暮らし病名:脳梗塞(H27 年 7 月発症)家族の希望:病院での長期療養か施設入所現病歴:糖尿病、狭心症、認知症あり

【経過】 H27 年 9 月 16 日長期療養目的で入院。ADL 全介助で経鼻経管栄養を行っていたが、毎食 NG チューブの自己抜去が続いた。一方で覚醒状態は不良であり、声がけにうなづく程度ですぐに入眠する状態であった。この状態が数ヶ月続いたため、医療チームのカンファレンスで胃瘻造設の提案があった。しかし、ST と看護師より嚥下状態は良いが覚醒のタイミングが合わないとの情報があった。再度医療チームで話し合い、H28 年 3 月 17 日より看護師が食事時間を決めず、G 氏の覚醒しているタイミングを見計らい1日 3 回ゼリーの摂取を試る計画を実施した。さらに窓際にて陽光を取り入れ、日中はホールに移動するなど変化をつくり覚醒を促した。その結果、日中の覚醒時間が増え、食事量も安定した。3 月 28 日よりミキサー食となり、その後も嚥下状態良好で経口摂取での栄養が確立した。

【考察】 「患者が食事を摂れる時刻について考慮をめぐらすこと、食事の時刻を組みかえてみること、そのためには観察と創意工夫と忍耐力が要求される。」とナイチンゲールが述べているように、経口摂取困難と思われた事例に対し、食事時間を決めずに覚醒状態に合わせ、食事摂取を進めたことが経口摂取へのきっかけとなった。さらにナイチンゲールのいう陽光や生活に変化を取り入れた援助は、覚醒を促し生活リズムを整え、定時での経口摂取につながった。これらの取り組みが患者の小さな可能性を実現、そして「口から食べる」という人としての尊厳の実現につながると再認識した。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-2-1 医療の質(2)経穴(ツボ)-湧泉-を利用して栄養低下を防ぐ簡便な方法

光ケ丘病院 医局

かまた てるあき

○鎌田 晃彰(医師)

【諸言】今日NSTなどの活動もあって、高齢者の栄養低下にそれなりの効果を収めているが、それでも時間の経過とともに栄養状態は徐々に低下してくる。その栄養状態の低下をさらに抑制する方法として、鍼灸の経穴(ツボ)の一つ「湧泉」に置鍼をする簡便な方法である。それを 6 ヵ月間観察し、比較検討したのでその効果を報告する。

【方法】対象:①比較的症状の安定している患者 ②経口摂取している者は食事摂取量の変動の少ない患者 ③歩けない患者 ④湧泉に圧痛のある患者 以上 4 条件に適合する 18 例を選び、無作為に 2 群に分け、治験者群(A群)は男 3 例、女 5 例(平均年齢 84.4 歳)、コントロール群(C群)は男 2 例、女 6 例(平均年齢 83.3 歳)とした。方法:治験者群には前述した両足の湧泉にセイリン社製パイオネックス(0.9)を貼り、当院の栄養検査評価項目であるアルブミン、中性脂肪、ヘモグロビン、リンパ球数を 6 ヵ月間観察し、比較検討した。

【結果】6 ヶ月後のアルブミンはA群では 2.72 ± 0.33g/dl から 3.06 ± 0.19g/dl に、C群では 3.25 ± 0.29g/dl から 2.90 ± 0.32g/dl となり、A群に有意差があった。ヘモグロビンもA群では 10.68 ± 1.11g/dl から 10.99 ± 0.34g/dl に、C 群では 11.01 ± 1.63g/dl から 10.58 ± 0.65g/dl で A 群に有意差があった。リンパ球数も A 群は 1330.8± 434.2/㎜ 3 から 1536.6 ± 248.0/㎜ 3 で、C 群では 1728.8 ± 356.3㎜ 3 から 1540.5 ± 301.1/㎜ 3 で、これも A群に有意差があった。一方中性脂肪は A 群では 80.78 ± 39.59㎎ /dl から 83.25 ± 10.35㎎ /dl となり、C 群では 125.25 ± 63.56㎎ /dl から 111.00 ± 31.69㎎ /dl で両群間に有意差はなかった。

【考察】アルブミン、ヘモグロビン、リンパ球数に有意差があったことから、湧泉への置鍼は高齢者の栄養状態の低下を防ぐ新しい方法となると考えられる。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-2-2 医療の質(2)回復期リハビリテーション病棟入院患者に対する循環器専門医の介入 ~入院時 Gate Keeping の有用性~

1 小林記念病院 循環器内科,2 小林記念病院 看護部,3 小林記念病院 医療技術部 リハビリ科,4 小林記念病院 看護部 3 階病棟,5 小林記念病院 医療技術部 薬剤科,6 小林記念病院 外科,7 名古屋大学大学院病態内科学循環器内科学

かのう なおあき

○加納 直明(看護師)1,7,友原 たき子 2,二村 由紀子 3,加藤 美紀 4,吉田 章悟 5,加藤 豊範 5,奥村 貴裕 7,小田 高司 6

回復期リハビリテーション(以下回リハ)病棟の転院・転棟率、急変・死亡率はそれぞれ、10.9%、7.2%と報告されている*。当院でも過去に慢性心不全の急性増悪など循環器疾患による緊急転送事例を経験している。 平成 26 年に非常勤循環器専門医(以下専門医)の勤務が実現し、効率的な介入方法を検討して、入院時ルチン検査結果を用いたスクリーニング ( 以下 SC) を行い、ターゲットを絞って介入する “ 循環器疾患に関するGate Keeping” を考案、試行した。

【患者と方法】 対象は、平成 27 年 5 月 1 日から平成 28 年 3 月 31 日の間の新規入院患者のうち、SC を行った 362 名の観察研究を行った。

SC;①20の指定心電図診断コードに該当、②血清 Brain Natriuretic Peptide(以下 BNP)値 140pg/dl 以上、①、②のいずれかに該当する患者を SC 陽性(以下陽性者)とした。

専門医は週に 1 回、新規陽性者のカテゴリー分類を行った。カテゴリー1(C1);専門医介入の必要なしカテゴリー2(C2);要診察カテゴリー3(C3);専門医による治療介入が必要。C3 には診療介入した。

【結果】SC 陽性者は 125 名で、C1 ~ C3 はそれぞれ、64 名、32 名、19 名、C3 には高度の大動脈弁狭窄症、慢性心不全症などの高リスクの症例が含まれた。SC の感度は 40.8%。緊急転送 7 名、入院死亡 5 名のうち、循環器疾患によるものは各 1 名であった(転送;心筋梗塞を発症、死亡;C3 で急性期病院への転院を提案したが、看取りを希望)。

【考案・結語】 回リハ病棟入院時に BNP 値と心電図自動診断コードによる SC を行い専門医の介入適応を決定する本法は、常勤の循環器内科専門医を配置できない回復期病院の循環器疾患管理に関する医療の質の向上に有用と考えられた。

*: 平成 27 年度版、実態調査報告書、日本回復期リハビリテーション病棟協会編

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-2-3 医療の質(2)当院回復期リハビリテーション病棟の現状 ―FIM を用いて、年齢別でのリハビリテーション効果の検討―

大宮共立病院 第一診療部 リハビリテ-ション科

たにぐち そうすけ

○谷口 創介(作業療法士),松原 絢野

【はじめに】急速な高齢化に伴い、当院回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)の対象においても後期高齢者や超高齢者が大半である。本研究では、FIM を用いて回復期リハ病棟の現状を調査し、また年齢別でのリハビリテーション(以下、リハ)効果について検討する。

【方法】対象は、平成 26 年 4 月~平成 27 年 3 月に回復期リハ病棟に入院した全患者 118 名のうち死亡 3 名を除く 115名(脳血管 43 名、整形 64 名、廃用 2 名、その他 6 名)とする。当院の現状を把握する為、①平均年齢②在宅復帰率③入退院時 FIM 合計④ FIM 利得を全国平均と比較する。また年齢別で 3 群(75 歳未満群、75 ~ 84 歳群、85 歳以上群;以下、A 群、B 群、C 群)に分類し、入退院時 FIM 合計と下位項目の平均値かつ利得を算出し比較する。統計処理について、利得は paired T 検定、3 群間比較は Kruskal-Wallis 検定を用いる(有意水準 5%未満)。

【結果】1.全国平均との比較{( )内は全国平均}①平均年齢 82.9 歳(72.4 歳)②在宅復帰率 72.0%(71.6%)③入院時 FIM 合計 70.3 点(73.2 点)、退院時 FIM合計 80.6 点(90.0 点)④ FIM 利得 10.3 点(16.8 点)2.年齢別 3 群間でのリハ効果の比較内訳(人数 / 在宅復帰率)は A 群(16 名 /93.8%)B 群(47 名 /78.7%)C 群(52 名 /63.5%)。FIM 利得では、FIM 合計が全群において有意な改善を認めた。しかし、下位項目の運動項目では AC 群の食事・BC 群の排尿管理・全群の排便管理に、認知項目では B 群の記憶・問題解決・理解以外の項目に有意な改善を認めなかった。FIM 下位項目を比較し、入退院時の記憶(A 群> C 群)に有意差を認めた。

【考察】後期高齢者や超高齢者に対しても ADL 能力の改善を認めた。しかし、全国平均と比較し FIM 利得が低い点や在宅復帰に重要である排泄機能や認知機能に有意な改善を認めなかった点は今後の課題である。リハ効果の向上を図る上で、高齢患者の活動意欲を促進する工夫を追及していきたい。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-2-4 医療の質(2)東京都慢性期医療協会 リハビリテーション部会の活動報告 ~慢性期医療の質の向上に向けた取り組み~

1 永生病院,2 小平中央リハビリテーション病院

やながわ りゅういち

○柳川 竜一(理学療法士)1,田原 真悟 2

1. はじめに一般社団法人東京都慢性期医療協会(以下、当協会)リハビリテーション部会(以下、当会)では、東京都内にて慢性期医療の質の向上を目的に 15 年以上に亘り活動を行っている。これまでの取り組みについて以下に報告する。 2. 概要当会は、東京都内にて、慢性期医療に携わる 76 の会員病院のうち幹事 8 病院のリハビリテーション(以下、リハビリ)専門職にて構成されている。第一の目的は、東京都の慢性期医療現場をリハビリの視点から医療の質の向上を図っていくことである。年数回にわたり講習会を企画・運営している。昨年度より役員で討議し、従来の講習会に新たな工夫を加え、活動の拡大を図っている。 3. 活動内容昨年度から計 4 回の講習会を企画、運営している。また、今年度中に 4 回の講習会を予定している。(1) 介助技術講習会 基礎編(2 回)(2) 介助技術講習会 摂食嚥下編(3)3 部会合同講習会 4.成果 各講習会後のアンケートでも高評価を頂くことが多い。特に、昨年度は年間受講者数が 91 名から 215 名と、大幅に増加した。慢性期医療現場での当会の活動は意味あるものになっていると実感している。 5.考察当会は、主に患者様・利用者様と 1 番近い距離で日々のケアを行っている介護職を対象とし、『自立支援』を目的とした介助技術講習会を運営している。昨年度から、新入職員を対象に講習会を行った。新人教育の一環として当講習会を利用して頂ける病院・施設も見受けられるようになり、受講者も増加傾向にある。新入職員の方々に、より早い段階から自立支援の意識が定着することで慢性期医療の質の向上に貢献できているのではないかと考える。また、昨年度から当協会の看護部会・MSW 部会と連携し、3 部会合同講習会も開催することができた。当協会内での連携強化を図ることができたと考える。今後は、他の道府県慢性期医療協会との連携も視野に入れ、慢性期医療の質の向上に努めていきたいと考える。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-2-5 医療の質(2)東京都病院協会による回復期リハ病院機能クリニカル・インディケーター事業結果の報告

1 医療法人社団永生会,2 河野臨牀医学研究所,3 亀有病院,4 東京都保健医療公社豊島病院,5 東京都病院協会

いしはま ひろき

○石濱 裕規(理学療法士)1,5,小林 豊 2,5,横山 孝 2,5,石川 博久 3,5,安藤 高朗 1,5,山口 武兼 4,5

« 目的 » 回復期リハビリテーションにおける医療の質の向上と患者様への情報提供を図るため、東京都病院協会診療情報管理委員会では、クリニカル・インディケーター(以下、都病協版回復期 CI)を作成した。都病協版回復期 CI は、Ⅰ.ストラクチャー(7 項目)、Ⅱ.プロセス(8 項目)、Ⅲ.アウトカム(5 項目)の計20 項目より構成され、回答を数値・項目選択のみで求める点に特徴がある。作成に先立ち、2 施設で試験回答を実施し、うち 1 施設で全回答者 18 名が項目毎の簡易度・有用度を 5 段階評価し、2、 1、 0、 -1、 -2 で回答を重み付け得点化した。簡易度が負値を示した「退院前 CM 介入件数」「就労支援実施件数」の改定を行い、初版を作成した。上記事業は、平成 27 年度東京都医師会調査研究委託事業として実施された。本年度は、会員施設における都病協版回復期 CI の試験運用を通じて、本 CI を活用した経年変化の比較が、医療の質の向上にどの程度有用な資料となりうるかを検討することを目的とした。« 方法 » 東京都病院協会役員病院施設で回復期リハ病棟を有する病院を対象とし、FileMaker および Excelで無償頒布可能な入力フォームを作成し、過去 2 年間の回答、および項目毎の簡易度・有用度に関する 5 段階評価を依頼した。« 結果 » 本報告では、上記、多施設での試験運用の経過につき、報告を予定している。« 考察 » 同上結果に基づき、多施設活用、診療報酬改定に対応した二次指標作成、妥当性の検討を進めたい。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-3-1 医療の質(3)急変時対応における勉強会実施前後の意識調査~介護士の急変時対応向上に向けての取り組み~

介護老人福祉施設 ヴィラ町田

ねもと ちえ

○根本 千恵(看護師),白井 あかね,前島 美由紀,須田 啓史

[はじめに]当施設は 220 床の介護老人福祉施設である。入所利用者の平均年齢は 85 歳で、突発的または病状の悪化からの急変の場面も少なくない。その中で、看護師が1名となる夜間等、状況によっては介護士が一次救命処置(胸骨圧迫、AED)を行う場面も生じてくる。急変時対応の際、介護士がどのように行動したら良いのか戸惑う場面が多くみられ、具体的にどのように行動したら良いのか把握できていないことにより、行動できないのではないかと考えた。今回、急変時対応についての勉強会を実施し、知識、技術の向上を図り、より迅速かつ適切に急変時対応が行えることを目的とし、本研究に至った。

[方法]対象:夜勤業務を行う常勤介護士 51 名。急変時における勉強会を実施し、勉強会前後にアンケート調査を行い、知識や技術の習得状況や意識変容について分析検討する。勉強会内容:一次救命処置についての DVD 視聴と説明、胸骨圧迫トレーニングキット “ あっぱくん ” を用いた胸骨圧迫の模擬体験、より具体的なマニュアルを作成し配布等。

[結果]勉強会実施前のアンケートでは、急変時対応の経験や知識、技術不足、また、具体的な流れを把握していないことから、「どう行動したら良いかわからない」等、漠然とした不安や恐怖心が多くみられた。勉強会実施後のアンケートでは、知識、技術の向上と共に、「実際の場面でも実施してみようと思う」等、実施への意欲も多くみられた。また、9割以上が「勉強会参加により不安が緩和した」と答えた。

[考察]勉強会参加により、急変時対応の流れや方法等、介護士自身が具体的な役割を把握したことにより、漠然とした不安や恐怖心が緩和し、急変時対応の実施意欲向上へ繋がったものといえる。今後も実際の場面において、いかに冷静に迅速かつ適切に対応できるように、定期的、継続的に勉強会を実施し、知識、技術の維持、向上を図っていくことが重要であると考える。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-3-2 医療の質(3)新入介護職員教育体制における OJT の検討 ~介護職員教育プログラムの有効活用に向けて~

定山渓病院 看護部

おおもり しょうこ

○大森 祥子(介護福祉士),伊藤 沙織,倉岡 清美,安原 真美,梅津 光香

Ⅰ 目的当院では、新入介護職員を支える体制として、新しい環境への適応の支援を目的とした介護職員教育プログラムを作成し、OJT を展開している。しかし、自部署ではプログラムを有効に機能するための具体的な方法についての検討が不十分なまま運用している現状にあった。介護職員の成長を支援するため、病棟の教育体制を評価し、有効な OJT 実施を目的に取り組んだ。Ⅱ 方法介護職員教育プログラムに基づき、交替勤務による実地指導者の不在回避に向け、介護福祉士 3 名を実地指導者とする体制に変更する。次に OJT の現状分析を行い、プログラムの具体的な活用に向けた課題を明らかにする。Ⅲ 結果・考察新入介護職員に対する介護福祉士 3 名の実地指導者体制に変更したことにより、交替勤務による実地指導者の不在が解消され、実地指導者による新入介護職員の教育が可能となった。 現状分析においては、実地指導者間に、具体的な教育内容に差異が生じていることが明確となった。介護技術の教育にあたり、説明不足を生じる可能性のある項目を抽出し、実地指導者が解説する際の表現の標準化が必要と考えた。そのため、介護職員教育プログラムの日常生活ケア評価表の項目毎に、介護技術を解説する際の視点を明記した用紙を作成し、活用することとした。解説する際のポイントを明確にしたことで、実地指導者間での教育内容の差異が解消するとともに、過不足の無い内容で教育を行えるように整った。また、実地指導者以外のスタッフが、新入介護職員へ教育する場面においても、活用可能となった。日常のケア場面においては、基本的な介護技術を習得したうえで、患者の状況に応じてケア方法を選択する必要が生じる。今回の検討は、介護技術の視点を再学習し、その根拠を理解することにより、新入介護職員の新しい環境への適応を促進し、多様な患者の状況に対応するための思考につながることが示唆された。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-3-3 医療の質(3)医療療養病棟における介護職員の質の向上にむけて ~アンケート調査からみえる現状~

光風園病院 看護部

かねさき みゆき

○兼﨑 美由紀(介護福祉士),中村 翔太,小坂 安枝

はじめに 医療療養病棟の入院患者の医療依存度は高く、そこで働く介護職員には高度な知識・技術が求められている現状がある。また介護職の質の向上のためには、介護に対する姿勢や意識の高さも重要となる。しかし、介護職員の資格や教育背景は様々で、日々の実践の中では介護に対する姿勢も一定ではないのではという疑問を感じている。そこで今回、介護職員の知識や介護に対する考え方について現状を把握することを目的に研究を行った。 この研究結果を基に、医療療養病棟で働く介護職員の課題を明らかにし、質の向上をめざすための方策を検討していきたいと考えた。 研究目的 当院の介護職員の介護に対する思い、自らの質向上に対する態度についての現状を明らかにする。 研究方法 医療療養病棟に勤務するこの研究への参加に同意を得た介護職員23名を対象とし、記述8問、選択9問のアンケートによる意識調査を実施した。分析方法としては、選択肢による質問は単純集計とし、記述式の質問に関してはKJ法を用いた。 結果・考察 20~30歳代が12人で比較的若い職員が多く、勤務年数では、5年未満8名、5年以上10名と半数近い職員が5年以下であった。 業務が確実に行えていると思うかという問いに対して「できていない」との回答は 8 名であった。そのうち6名は経験年数が5年未満で、その内容として、直接的ケアに関する課題、間接的業務に関する課題などがあげられていた。特に経験年数の少ないスタッフを対象とした研修を企画していく必要性が明らかになった。 質向上に向けての勉強会参加についての質問には、大多数の職員が参加したいと回答していた。テーマとして認知症が最も多く、次いで多かったのが緩和ケアであったのは、現在の病棟の状況を反映していると考えられた。 ケアの質向上のために勉強会等を企画するにあたっては、年齢層や病棟での役割なども考慮する必要があることが分かった。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-3-4 医療の質(3)医療療養病床におけるケアの質管理・向上のための工夫:病棟看護管理者への全国調査より

1 東京大学大学院医学系研究科 高齢者在宅長期ケア看護学分野,2 群馬県立群馬県民健康科学大学大学院看護学研究科 看護学専攻

やまもと のりこ

○山本 則子(看護師)1,齋藤 弓子 1,二見 朝子 1,野口 麻衣子 1,山花 令子 1,高井 ゆかり 2,五十嵐 歩 1

【目的】本研究では、医療療養病床におけるケアの質管理・改善の為に病棟看護管理者がどのような工夫を試みているか、全国調査の中の自由記載をまとめた。

【方法】対象:全国の医療療養病床を有する病院のうち 2000 施設に参加を募り協力が得られた施設から 1 施設1 名の病棟看護管理者に質問紙への回答を依頼した。調査期間:2015 年 8 月~ 11 月。調査内容:病院・病棟、看護管理者の個人属性、病棟のケアの質など。質問紙の最後に、「療養病床でのケアの質改善のために工夫されていること、効果があるとお感じになる取り組みについて教えてください。」と質問し自由記載による回答を得た。分析:自由記載の内容をエクセルに書き出し、質改善の方法とどのようなケア内容に関する取り組みかについて分類整理した。

【結果】病棟看護管理者 257 名(回収率 12.9%)から回答を得た。そのうち 128 名(49.8%)が自由記載欄に書き込んでいた。多職種カンファレンスなどによる各種の情報共有、学習会・外部研修、目標管理・勤務表の工夫・サンキューカードなどによるスタッフ支援は多くの管理者が試みて効果があると指摘していた。看護職と介護職がペアで患者を受持ち、介護職もケア計画を立案するなど、スタッフによる患者全体像の把握やケア提供者としての主体性を涵養する取り組み、チームでの取り組みによる質改善意欲の向上の工夫、症例発表会・看護研究などによる実践のリフレクションの取り組みも見られた。ケア内容としては口腔ケア、スキンケアと褥瘡予防、オムツのあて方、ポジショニング、離床、レクリエーションなどが言及されていた。一方、「工夫だけでは質改善に限界」などの書き込みもあり、厳しい病棟の様子が窺われた。

【考察】各病棟で多くの工夫が試みられていた。質改善の工夫を多施設で共有できるようウェブサイトなどで情報発信したり、看護研究や事例研究の取り組みを支援したりする方策を構築してゆきたい。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-3-5 医療の質(3)生活カードを利用した水分管理が必要な患者様のケア

中洲八木病院

かめい だいすけ

○亀井 大輔(介護職員),倉田 浩充,亀井 紗季,仲須 よう子

【はじめに】 慢性期医療において、心疾患等の為水分摂取の管理が必要な患者様がおり、介護の現場で何時どれだけの飲水を勧めるかの判断に困ることが多い。私たちは患者様の毎日の生活の様子を一枚の生活カードに記録してベッドサイドに置き、食事 ・ 水分 ・ 排泄に関して多職種で情報を共有している。この生活カードを利用した水分管理ケアについて報告する。

【方法 ・ 結果】 当院では平成 12 年より生活カードを作成しベッドサイドに置いている。このカードには毎日の食事量 ・ 排尿時間と排尿量・排便時間と排便量 ・ 水分量 ・ 服薬 ・ 体位変換・口腔ケア ・ シーツ交換を記録している。特に飲水管理が必要な患者様には、飲んだ量と時間も飲水管理専用カードに記録している。飲水管理をしている患者様については毎食前に専用ボトルに決められた量のお茶をいれて患者様へ提供している。朝 / 昼 / 夕と細かく記載することで、何時に何 ml 摂取したか、食事はどれだけ摂れているか等、患者様個々の状態と指示量に合わせたケアをする上で、生活カードがない時と比べ非常にやりやすくなった。

【考察・まとめ】 生活カードを使うまでは、医師より飲水量の制限などが指示されると、罫紙にその日ごとに時刻と飲水量を書いていたが、統一されていなかった。かつ飲水以外の情報がないため、尿量の確認をしたいときはわざわざカルテを出して、確認しなければならなかった。現在利用している生活カードは何らかの介助が必要な患者様全員に使われており、水分だけでなく食事量、尿量なども一目でわかることが、最大の利点である。そのため回診時など医師 ・ 看護師 ・ その他各スタッフが生活カードを見て患者様の状態をより分かりやすく把握出来るようになった。今後も記載漏れ防止などの課題に対応しながら、継続活用していきたい。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-4-1 臨床検査(1)音羽リハビリテーション病院に入院した患者の深部静脈血栓症検出状況

1 洛和会音羽リハビリテーション病院 臨床検査部,2 洛和会音羽リハビリテーション病院 医療経営戦略部

うしやま たえこ

○牛山 多恵子(臨床検査技師)1,貞廣 美智子 1,花山 慎一 2,長谷川 聡 2

音羽リハビリテーション病院は病床数180、脳神経疾患の慢性期患者、整形外科疾患の回復期リハビリテーション目的の患者が入院している。当院に入院する患者は四肢麻痺、片側麻痺、また、整形外科疾患による運動機能低下等DVTの発生しやすい状況にある。当院では入院時にすべての患者にリハビリテーションを始める前のスクリーニング検査として下肢静脈エコーを実施し、DVTの有無を確認して、患者に安心してリハビリテーションが受けられる体制をとっている。しかし、下肢静脈エコー検査において、当院の入院患者は健常者とはことなり、常に術者の期待通りの体位が取れないことも少なくない。今回は、当院における入院時の下肢静脈エコー検査結果より当院のDVT検出頻度、年齢、病型別等の検出状況ならびに検査時の検査体位の工夫などを報告する。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-4-2 臨床検査(1)臨床検査技師による検体採取の意義~看護部のアンケート調査から~

永生病院 検査科

いけだ さゆみ

○池田 サユミ(臨床検査技師),恩田 栄子,佐藤 れい子

【はじめに】当院の検査科には 18 名の臨床検査技師が勤務しており、検査室は永生病院と隣接する永生クリニック内にある。以前より病棟などへの業務拡大を検討しており、平成 24 年 7 月から一般病棟の早朝採血を始めた。その後、平成 27 年 4 月に臨床検査技師等に関する法律の一部が改正され、採血に加え鼻腔などからの検体採取が業務として認められた。そこで、新たに加わった業務の実施に向けた取り組みを報告する。

【計画から実施】新たに加わった業務は厚生労働省指定講習会の受講者でなければ行なえないため、検査科全員が受講した。そして初めての取り組みとして、永生クリニックでのインフルエンザ検体採取を行なうことにした。インフルエンザは冬場を中心とする検査であるため、準備期間に余裕があり、クリニックでの実施はワンフロアで業務が行えることが実施を決めた大きな理由である。検体採取開始時期は看護部と協議し、平成 27 年 10 月からとした。開始までに、検体採取を行う場所の確保、感染管理、業務マニュアルの作成、検体採取のトレーニングなど、いろいろ検討しなくてはならなかったが、看護部の協力もあり、順調に進んだ。そして平成 27 年 10 月~平成28年3月までで444名のインフルエンザ検体採取を行なった。さらに現在ではインフルエンザだけでなく、咽頭からの検体採取も行なっている。

【まとめと考察】臨床検査技師の検体採取実施に向けた取り組みを報告した。初めて取り組む業務であったため、インフルエンザ流行のピーク時では、うまく業務が回るのか心配したが、思いのほかうまく乗り越えることができた。看護部の業務軽減も図られ、臨床検査技師が検体採取から検査実施までを一連の業務としたことで、検査の迅速化が図れたと考える。現在はクリニックのみで行っているが、今後は臨床検査技師が病棟での検体採取を行っていくことも視野に入れ取り組んでいこうと考えている。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-4-3 臨床検査(1)福島寿光会病院平成 26 年のアンチバイオグラム

1 福島寿光会病院 検査室,2 福島寿光会病院内科,3 福島寿光会病院看護部

はが しんいち

○芳賀 伸一(臨床検査技師)1,木田 雅彦 2,五十嵐 渉 2,玉坂 恵子 3,近内 光代 3,秋山 芙美代 3,原 七重 3

【目的】採用抗菌薬に対する感受性を調べ、抗菌薬選択に資する情報を提供する。【方法】2014 年 2 月から 1 年間に依頼した 648 回の培養検査で分離された株に対する感受性検査の結果を、検査会社から提供された。加えて、その結果と検査会社が発表した 2014 年度における福島県の感受性検査成績結果とを比較した。

【結果】分離された 675 株における年平均分離率 1 位は緑膿菌 18.4%、2 位は大腸菌 12.9%、3 位は黄色ブドウ球菌 12.3%、4 位は肺炎桿菌 7.1%、5 位は Proteus mirabilis5.6%であった。感受性検査の結果(%)と県の平均 ( カッコ内 ) は、緑膿菌で PIPC69.1(82.8)、TAZ/PIPC83.6、SBT/CPZ40.0、CAZ67.2(81.1)、IPM/CS48.9

(81.4)、MEPM44.2(78.0)、DRPM、61.8、AZT34.3(63.9)、AMK80.6(96.0)、ABK0.0、EM0.0、MINO0.0(0.0)、LVFX53.2(81.6)、PZFX53.2、ST5.1(0.0)、 大 腸 菌 で PIPC15.9(64.1)、TAZ/PIPC99.4、SBT/CPZ61.6、CAZ58.1(92.3)、IPM/CS100.0(100.0)、MEPM100.0(100.0)、DRPM、100.0、AZT41.2(88.0)、AMK92.3(99.6)、ABK0.0、EM0.0、MINO94.1(93.2)、LVFX32.7(63.1)、PZFX32.7、ST53.9(82.8)であった。

【考察】県平均と比較できる値は全般的に当院の方が感受性は低い傾向にあり、これは当院に長期の治療後の終末期高齢者が多いことに起因すると考えられた。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-4-4 臨床検査(1)糖尿病を有する患者と有さない患者の頸動脈エコー検査

江藤病院

しみず ゆきよ

○清水 幸喜代(臨床検査技師),岩城 正輝,由宇 教浩

[はじめに]当院では平成 27 年 4 月から臨床検査技師による頸動脈エコー検査を開始した。糖尿病(以下、DM)患者の短期強化インスリン療法クリニカルパス入院では、入院中に頸動脈エコー検査を実施している。 今回、DMを有する患者群と DM を有さない患者群で頸動脈エコーの所見を比較検討した。

[方法]平成 27 年 4 月~ 12 月までの 9 ヶ月間に頸動脈エコー検査を実施した 48 歳から 96 歳までの 34 症例(男性 10 例、女性 24 例)(入院 29 例、外来 5 例)を対象とし、日本糖尿病学会の定めるガイドラインに基づき DM と診断された A 群と DM と診断されてない B 群に分け、mean IMT、max IMT、プラーク出現率、有意狭窄率を評価項目とした。なお今回は DM 以外の基礎疾患の有無に関係なく検討した。

[結果]A 群は 21 例(男性 8 例、女性 13 例)平均年齢 74.4 歳、B 群は 13 例(男性 2 例、女性 11 例)平均年齢 79.2歳であった。mean IMT 平均値は A 群 1.02mm、B 群 0.95mm。max IMT 平均値は A 群 2.64mm、B 群 2.02mm。プラーク出現率は A 群 90%、B 群 85%、有意狭窄率は A 群 19%、B 群 0%であり、いずれの項目においてもA 群が高値という結果であった。更に A 群を良好な血糖コントロール状態にある HbA1c7.0% 未満の群と 7.0%以上の群に分け比較したところ、max IMT、有意狭窄率において 7.0% 以上の群が高値であった。

[考察]少数の症例検討であったが、DM が動脈硬化進展に影響を与えているという傾向が当院でも確認された。またDM 患者の中でも HbA1c7.0% 以上の群が 7.0% 未満の群より max IMT と有意狭窄率が高値であったことから、血糖コントロール状態も重要であると考える。今後は症例数を重ね更なる検討を続けていきたい。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-4-5 臨床検査(1)当院入院患者における細菌培養検査及び薬剤感受性検査の結果について ~多剤耐性菌を中心に~

西宮回生病院

なかむら じゅんいち

○中村 淳一(臨床検査技師),中晴 徹,井上 馨

[はじめに]現在、医療施設において、MRSA、MDRP(多剤耐性緑膿菌)を代表とするさまざまな薬剤耐性菌が、院内感染防止のうえで重要視されている。今回は当院入院患者における 2015 年の多剤耐性菌の検出状況を報告する。

[方法]2015 年 1 月から 12 月の間に細菌検査依頼のあった入院患者検体を BML 社に外部委託し分離培養、薬剤感受性検査を行った。検査材料:153 件(材料別 喀痰 54 件 便 29 件 血液 19 件 尿 17 件 IVH16 件 髄液 10 件 咽頭ぬぐい液 3 件 胸水・眼脂各 2 件 鼻腔粘液 1 件)薬剤感受性検査実施薬剤:当院採用抗菌薬 25 剤

[結果]【培養結果】 主な分離菌は MRSA15 件 P.aeruginosa25 件 MRCNS10 件 Enterococcus6 件 その他 ESBL 産生の腸内細菌群が 7 件 PRSP(PC 耐性肺炎球菌)1 件であった。

【薬剤感受性結果】 主な分離菌の抗菌薬に対する感受性率は以下の通りであった。【MRSA】 ABK,VCM,ST 合剤 100% FOM,AMK54% MINO46%【P.aeruginosa】 AMK100% CFPM,SBT/CPZ76% CAZ,MEPM72% TAZ/PIPC60%【MRCNS】 ABK,VCM,ST 合剤 100% MINO90%  CLDM,LVFX,PZFX20%

[考察]今回、従来院内感染防止上重要とされてきた菌種以外に、これまであまり重要視されていなかった ESBL 産生の腸内細菌群、多剤耐性傾向を示す肺炎球菌の検出が認められた。今後はこういった菌種の多剤耐性菌の検出状況にも注視する必要があると思われる。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-4-6 臨床検査(1)検査室内での適切な手袋着脱のタイミング統一へ向けての取り組み

博愛記念病院

くしたに まな

○櫛谷 麻奈(臨床検査技師),検査部 一同

[はじめに]標準予防策に従い、検体を取り扱う際には手袋を着用しているが、その着脱のタイミングは技師間でバラツキがあり、手袋を着用したままパソコンを使うなど、清潔と不潔の細かな区域分けが曖昧になっている部分があった。しかし、検査室では臨床検体を常に扱うことから、汚染・感染の危険性が高い環境にある上、限られた広さの中で複数の技師が様々な業務にあたるため、改善したいと考えた。

[方法]清潔と不潔の区域分けを明確にするため、適切な手袋着脱のタイミングを統一させることを目的として下記を実施した。①検体を扱うと、汚染・感染の危険性があることを確実に意識付けるため、通常は透明である尿や血清を、蛍光塗料と染色液を用いて『見える化』させることを試みた②手袋をスムーズに着脱できるよう、設置・廃棄場所等の環境面の見直しを行った

[結果]検査時の作業動作により、手袋が汚染してしまうことがはっきりと確認できた。このことから、適切に手袋の着脱を行わなければ汚染が広がることが認識でき、一部の検査においては手袋着脱の適切なタイミングを統一することができた。また、環境の見直しによりスムーズな着脱が可能となり、手袋の使用枚数は 1 人あたり 1日平均約 13 枚から 25 枚へ増加した。

[考察]やるべきことと分かっていても、その意識付けが弱ければ、徹底することは難しい。今回の取り組みにより、「検体に触れることは、汚染・感染の危険性が高く、適切に手袋を着脱しなければ、自分がその危険性を広げてしまう」ということを技師全員が強く再認識することができ、この成果はこれからの徹底へ繋いでいけるものと考える。今後は、様々な業務場面に対応できる手順書の作成とともに、手袋の着脱前後の手指消毒についても徹底していけるよう、意識付けと環境づくりをしていく。また、他職種にも検体採取における汚染・感染の危険を広く知ってもらえるようにしていきたい。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-5-1 臨床検査(2)・画像診断遠心条件の違いによる HbA1c 値への影響

緑成会病院

じんぐうじ さき

○神宮司 早紀(臨床検査技師),川島 智樹,金児 萌依,飯田 良雄,佐藤 禎二

[はじめに]HbA1c は、過去 1 ~ 2 ヶ月の平均血糖値を示し糖尿病患者の管理指標となる。高血糖状態が続くと重大な合併症を招く恐れがある。正確な値を報告する為には適切な検体処理が必要であり、今回は遠心条件の違いに着目した。血糖採血管で採血した検体を遠心条件 800g5 分間で遠心分離して測定を行うが、生化学検体の遠心条件 1509g(3000rpm)5 分間で遠心分離して測定した場合、どの程度 HbA1c 値に誤差が生じるのか比較検討した。

[方法]対象:当院患者 110 名(年齢:27 ~ 97 歳、平均年齢 72 歳、性別:男性 62 名女性 48 名) 試薬:日本電子社製 BM テスト HbA1c 測定原理:酵素法 検討方法:同一検体を 800 gと 1509 gで 5 分間遠心分離。血球層上端3mm の所から 20 μ L を吸引し、前処理液 500 μ L に入れ溶血させ測定を行った。以上の条件で、測定した結果を HbA1c の基準値 4.6 ~ 6.2%(NGSP 値 ) をもとに 4 つに区分し、遠心条件の違いによる値の差を比較検討した。

[結果]< 4.6%では 800g が平均 0.020 大きくなった。4.6%≦~≦ 6.2%では 1509 gが平均 0.089 大きくなった。6.2%<~< 10%では 1509 gが平均 0.122 大きくなった。10%≦では 1509 gが平均 0.373 大きくなった。

[考察]HbA1c 値が高値になるほど 800g と 1509 gの値の乖離が大きくなった。これは遠心力が強いと血球がより沈み濃縮される為であったと考えられる。HbA1c 値へ影響を与える要因は遠心条件の違いの他に、技師間のピペット操作誤差、手希釈と自動希釈の違い、抗凝固剤の違いなどが挙げられこれらも今後比較する必要がある。業務を行う上で適切な検査手技や遠心条件などの検体処理が精密、正確性に通じる事を再確認した。良質で安全な医療を提供するために精確な検査結果を報告していくよう努めていく。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-5-2 臨床検査(2)・画像診断検査科コスト意識改革 ~ HbA1c 検査の試薬費削減を通して~

安来第一病院

いけだ ともみ

○池田 智美(臨床検査技師),田中 未来,大野 節子,山口 麻美

はじめに 試薬費は検査科の支出の大半を占めている。よって試薬費の削減が大きなコスト削減効果を生むことから、現状の検査コストを見直し、どのようにしてコストを削減できるかを検討した。そこで、検査方法の見直しや試薬の無駄を無くすことが試薬費の削減に繋がると考え、スタッフの意識改革を行ったのでここに報告する。 方法①「検査コスト一覧表」を作成し、「検査コストの可視化」を行う②スタッフで改善可能な検査項目及び改善方法を検討する③ HbA1c 検査において「キャリブレーション間隔の見直し」、「試薬交換時のマニュアル及び試薬管理表の作成」、「試薬購入方法の見直し」を実践する 結果HbA1c 検査において、キャリブレーション間隔の見直しにより使用する試薬量の削減が可能となった。また、マニュアルや試薬管理表の作成によって試薬交換方法を確立し、業務効率を上げることができた。改善前後の年間経費を比較すると、試薬費は現行の 1,214,400 円から 889,350 円となり、325,050 円 (26.8%) の削減を可能とした。これらの検査コストの見直しや改善策の検討・実践を通して、検査科スタッフのコスト意識の向上を図ることができた。 考察 スタッフ一人ひとりがコスト意識を持ち、業務の改善・効率化を考えて行動することが試薬費削減に繋がった結果を受け、意識を常に持つことの重要性を改めて実感した。経費そのものに焦点を当てるだけでなく、経費が発生するまでの過程における問題点を考え、改善に取り組むことがコスト削減を可能にするといえる。今後の課題として、医療の質の向上や医療サービスへの貢献とともに、経営意識やコスト意識を常に持つことで病院経営における経済的貢献も目指していきたい。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-5-3 臨床検査(2)・画像診断円背患者の MRI 検査におけるポジショニングについて

1 並木病院 放射線科,2 並木病院 リハビリテーション科

たかす りょうさく

○高須 嶺策(放射線技師)1,掛樋 和巳 2,後藤 奨 2,酒井 亮輔 2,今村 圭輔 2,岩田 裕太郎 2

【はじめに】 近年の高齢化に伴い当院でも入院患者の高齢化が進んでいる。東北労災病院の千葉らは、頭部および脊椎領域の MRI 検査において高齢者の割合が多い傾向にあるが、身体的・精神的特性のために検査に適応できない場合も多くあると述べている。しかし、主な記述内容は検査時間の短縮や検査条件の選択性であり、その他の文献報告でもポジショニングについての内容は見られなかった。当院の状況を踏まえて MRI 検査時のポジショニングについての研究を行った。

【目的】 MRI 検査における円背患者の同一姿勢に対し、ポジショニング介入によって苦痛や疼痛の軽減を目指していく事である。

【期間】 平成 28 年 1 月~ 6 月上旬迄

【対象および方法】 当院に入院中の円背が認められ MRI 検査が実施可能であると判断された 10 名とした。自在曲線定規を用いた Milne らの方法をもとに側臥位での円背指数計測を実施した。円背指数 7.0 以上の患者を対象とした。 円背患者にポジショニングを行わずに MRI 検査を実施した。体圧分布マット (Molten 社製アルテスタ ) を使用し、患者の体圧を測定後にポジショニングを行い患者への分圧を測定した。そのポジショニングと同一体位で MRI 検査を実施した。ポジショニング実施前後で患者の安楽度を比較するため患者の言動や体動、動きによる画像へのアーチファクト、フェイススケールを用いて苦痛の程度を評価した。

【倫理的配慮】 事前に倫理委員会の承認と本人、家族への同意書の作成により同意を得られた。

【結果】身体的アライメントに着目し、ポジショニング介入を行った我々の先行研究と同様に、ポジショニングを行った事で、円背部への痛みの訴えが減り検査をスムーズに行うことができた。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-5-4 臨床検査(2)・画像診断オープン型MRI装置での脊椎撮像体位の検討

西宮回生病院

ひらの とものり

○平野 友則(放射線技師),山田 一貴,山口 眞一郎,神原 俊一郎,井上 馨

[はじめに]MRI脊椎撮像は通常仰臥位での体位で検査が行われるが、炎症や極度の痛みのある患者様、円背の患者様には大変苦痛な場合がある。その場合斜位、側臥位での体位が選択となるが、装置ガントリー内は空間的制約がありその体位がとれない場合もある。当院装置で斜位、側臥位での脊椎撮像がどの程度可能かまた、画像も仰臥位の撮像と差異がないかを確認した。

[方法]①コイル装着時にどのくらいの体型の方が斜位、側臥位になれるかを調べた。a.頸椎撮像に装着するコイルb.胸腰椎撮像に装着するボディーコイルボディーコイルは横向きにはガントリー内に入らない形状のため、通常通り仰臥位装着後にコイル内で斜位、側臥位にした。②健常ボランティアで仰臥位とそれ以外の体位で撮像した画像を MRI 業務に携わっている技師3名と整形外科医1名で読影ポイントを中心に観察を行った。使用機器:日立 APERTO

[結果]①体型別撮像可能体位の目安を別に示す。a.頸椎撮像コイル側臥位体位での撮像は視界が広がることで閉所恐怖症の患者様、体位的にも円背の患者様に有用と思われた。b.胸腰椎撮像ボディ-コイル胸椎撮像は細身の体型でないと上腕部がガントリー内上部に当たり体位的に難しい。円背の患者様はガントリー内に側臥位で入れても膝が屈曲拘縮しコイルが装着できない場合がある。②組織の見え方等で多少の差異を認めたが、撮像体位による差が読影の支障にはならなかった。

[考察]通常ではあまり行わない体位の目安と画像を知ることにより、いろんな状態の患者様の対応に役立つと考える。斜位、側臥位での撮像は痛みがあるなし関係なく、狭い空間内で体勢を保持するのは難しい。ある程度の画像の質が担保されるのであれば時間短縮のため加算回数を減らす等も選択肢のひとつだと考える。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-5-5 臨床検査(2)・画像診断当院 16 列マルチスライス CT の使用経験

1 国分中央病院 放射線室,2 国分中央病院 理事長

たじつ たけとも

○田實 武知(放射線技師)1,南田 寿康 1,藤﨑 剛斎 2

【はじめに】 マルチスライス CT(以下 MDCT)普及時代に 4 列 MDCT を導入し、約十年間使用してきたが経年変化による老朽化に伴い、16 列 MDCT に更新し画質の向上や thin slice ボリュームデータの収集による 3D、多断面変換表示、最大値投影表示などの画像再構成の時間短縮につながった。選定にあたっては装置が高性能化するにつれ、複雑化していく様相が窺えるため、安全性や操作性の観点で著しく変化することは得策ではないと考え、前装置と同様の東芝メディカルシステムズ社製とした。約 1 年における使用経験から画像の比較や更新した16 列 MDCT が有効であった臨床画像も含めて報告する。

【使用機器】Asteion Super4 Edition (4 列)、Aquilion Lightning (16 列):(共に東芝メディカル社製)撮影条件 120kV、VolumeEC、AIDR3D: 胸部 300mm、腹部 400mm水ファントム

【装置概要】16 列 MDCT では最大となる 780mm の開口径を有し検査による圧迫感の減少や高齢で動きに制限がかかる患者の検査に対応できる環境を考えた。従来の検出器から出力を 40%向上させノイズも最大 28%低減され(自社比)画質の S/N 比が向上し、設置面積も従来の CT 検査室を拡張することなく設置できた。【結果】撮影時間の短縮(約 48 ~ 41%)及び被ばく線量の低減(47 ~ 42%)となりスループットの向上に繋がった。尿管結石症の診断において尿路をトレースすることにより拡張像や結石も良好に観察できた。新しく導入した体脂肪面積計測ソフトは操作性が良く、視覚的に情報提供することにより生活改善の動機付けの一役となった。機器の全体的な操作性は前装置と変りなく検査が遅滞し患者を待たせることはなかった。

【まとめ】ワークステーションなしでも症例に応じて必要な画像処理をスムーズに行うことができる。今後の課題として造影件数が少ないため至適造影条件の模索や画像処理をルーチン化し技師間の技術差を無くすことにより統一性のある画像を提供して行きたい。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-5-6 臨床検査(2)・画像診断機器共同利用システムの現状と改善に向けて

南ヶ丘病院

やまがみ のりひろ

○山上 教宏(放射線技師)

当院の理念は、「理想的な地域医療の体系の探求と実現」である。その中で、平成 18 年 6 月に当院と地域開業医間で、地域医療連携、患者医療費削減、紹介率向上、収益増加を目的として、高度検査機器であるMRI、CT装置の機器共同利用システムを構築した。これは通常の患者紹介とは異なり、医科診療報酬点数表(36 診療情報提供料 3.5)にある「紹介先の保険医療機関が単に検査又は画像診断の設備の提供にとどまる場合には、診療情報提供料(Ⅰ)、初診料、検査料、画像診断料等は算定できない。なおこの場合、検査料、画像診断料等を算定する紹介元保険医療機関との合議の上、費用の清算を行うものとする。」の文面に沿ったものである。内容は、当院と地域開業医間で機器共同利用の委託契約を結び、放射線診断専門医の読影(希望施設のみ)を含めた単純撮影検査を実施する。紹介患者は当院での診察と会計は無く、CD-Rに保存した画像データを開業医に持ち帰り、開業医にて画像説明と会計(保険請求)をする。読影を希望する施設には読影レポートをFAXと郵送にて知らせる。翌月、当院は紹介元開業医に検査費用を請求するものである。特徴としては、患者は当院に検査のみを受ける目的であるため、当院での診療情報提供料、初診料が発生せず、時間的、経済的負担が削減される。また、地域開業医との医療連携ができ、患者診療に役立てることである。 その後、平成 23 年 4 月より開業医からの希望で、超音波と胸部レントゲン検査も行っている。当初は 10 施設と機器共同利用を開始したが、平成 27 年には 22 施設となり、年間 1000 件程度の検査依頼がある。今回機器共同利用システム開始から 9 年が経過し、地域開業医との連携の現状把握と今後の運用改善に向けて、検査件数の集計を行い、さらに、機器共同利用施設にアンケート調査を実施し検討したので報告する。